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特許異議申立

2023-700055

スペクトル選択性光制御フィルム

審判番号
2023-700055
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-527513
登録番号
7103717
請求日
2023年01月19日
審決日
2024年08月30日
公報発行日
2024年12月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
  • 【権利者代理人】藤井 憲
  • 【権利者代理人】野村 和歌子
  • 【権利者代理人】佃 誠玄
  • 【権利者代理人】浅村 敬一
  • 【権利者代理人】赤澤 太朗
  • 【異議申立人】鈴木 佐知子
審判長/審判官
  • 審判長 里村 利光
  • 審判官 廣田 健介
  • 審判官 河原 正
分類
P1651.113-YAA(G02B) / P1651.121-YAA(G02B) / P1651.55 -YAA(G02B) / P1651.536-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第36条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7103717号発明「スペクトル選択性光制御フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7103717号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 特許第7103717号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7103717号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願(特願2019-527513号、以下「本件出願」という。)は、2016年(平成28年)12月1日(パリ条約に基づく優先権主張 外国庁受理2016年11月22日(以下「優先日」という。) 米国)を国際出願日とする出願であって、令和4年7月11日にその特許権の設定登録がされ、同年7月20日に特許掲載公報が発行された。 その後、本件特許について、特許掲載公報の発行から6月以内である令和5年1月19日に、特許異議申立人 鈴木 佐知子(以下「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 その後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 令和5年 6月 5日付け:取消理由通知 同年 9月 6日 :特許権者による訂正請求書、意見書の提出 同年 9月20日 :手続補正書(2通)の提出(上記訂正請求書の「請求の趣旨」の誤記を補正するためのもの、及び、上記意見書の「添付書類又は添付物件の目録」に「包括委任状番号」を追加するためのものである。) 同年11月 9日 :異議申立人による意見書の提出 令和6年 1月15日付け:取消理由通知(決定の予告) 同年 4月17日 :特許権者による訂正請求書、意見書の提出 同年 6月 6日 :異議申立人による意見書の提出 なお、令和5年9月6日に提出された訂正請求書による訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1 訂正内容 令和6年4月17日に提出された訂正請求書でなされた訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである(下線は、訂正箇所として特許権者が付したものである。)。 なお、本件訂正は、一群の請求項である請求項1~6について請求されている。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「所定の重複しない第2の波長範囲において実質的に低い透過率を有し、」と記載されているのを、「所定の重複しないかつ可視光に対応する第2の波長範囲において実質的に低い透過率を有し、」に訂正(以下「訂正1-1」という。)し、「前記第1の材料および前記第2の材料は、」と記載されているのを、「前記第1の材料および前記第2の材料のそれぞれは、」に訂正(以下「訂正1-2」という。)する(請求項1の記載を引用する請求項4~6も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記光制御フィルムの平均光透過率が、より短い波長を有する所定の第1の波長範囲において10%未満であり、」と記載されているのを、「前記光制御フィルムの平均光透過率が、より短い波長を有する所定の第1の波長範囲において10%末満であり、ここで、前記所定の第1の波長範囲は可視光に対応し、」に訂正(以下「訂正2-1」という。)し、「前記光制御フィルムの前記平面から30度以上で入射する光については、」と記載されているのを、「前記光制御フィルムの前記平面と垂直な線から30度以上で入射する光については、」に訂正(以下「訂正2-2」という。)し、「前記第1の材料および前記第2の材料は、」と記載されているのを、「前記第1の材料および前記第2の材料のそれぞれは、」に訂正(以下「訂正2-3」という。)する(請求項2の記載を引用する請求項5~6も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「より短い波長を有する所定の第1の波長範囲においては、10%未満に、及び より長い波長を有する所定の第2の波長範囲においては、40%超に、」と記載されているのを、「より短い波長を有する所定の第1の波長範囲においては、10%未満、及び 可視光に対応しかつより長い波長を有する所定の第2の波長範囲においては、40%超、」に訂正(以下「訂正3-1」という。)し、「前記第1の材料および前記第2の材料は、」と記載されているのを、「前記第1の材料および前記第2の材料のそれぞれは、」に訂正(以下「訂正3-2」という。)する(請求項3の記載を引用する請求項5~6も同様に訂正する。)。 2 訂正の許否の判断 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的 (ア)訂正1-1 訂正1-1は、請求項1に係る発明の「各第1の領域」が「実質的に低い透過率を有」する波長範囲について、訂正前は「所定の重複しない第2の波長範囲」であることを特定しているところ、「所定の重複しないかつ可視光に対応する第2の波長範囲」であることに特定し、上記波長範囲を更に限定するものである。 (イ)訂正1-2 訂正1-2は、請求項1に係る発明において「前記第1範囲、前記第2範囲および前記第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて少なくとも光の70%を吸収および/または反射する」との記載で特定される対象が、訂正前は「前記第1の材料および前記第2の材料」であったものを、「前記第1の材料および前記第2の材料のそれぞれ」と、より具体的に特定するものである。 (ウ)小括 上記(ア)~(イ)より、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 (ア)訂正1-1 本件特許明細書の【0005】には「光制御フィルムは、複数の離間した第1の領域を含み、各第1の領域は、約300nm~約400nmの第1の波長範囲、約400nm~約700の第2の波長範囲、及び約700nm~約1200nmの第3の波長範囲のうちの1つ又は2つにおいて実質的に低い透過率を有し、残りの波長範囲において実質的に高い透過率を有する。」と記載されており、当該記載から、「複数の離間した第1の領域」が「実質的に低い透過率を有」する波長範囲は、約300nm~約400nm(紫外光範囲)、約400nm~約700(可視光範囲)、約700nm~約1200nm(赤外光範囲)から任意に、1つ又は2つ選択できる波長範囲であることが把握でき、さらに【0034】には、「いくつかの場合には、・・・第2の波長範囲は可視光範囲である。例えば、いくつかの場合には、・・・第2の波長範囲は約400nm~約700nmであり得る。」ことも記載されている。 したがって、請求項1に係る発明の「各第1の領域」が「実質的に低い透過率を有」する波長範囲について、「可視光に対応する」波長範囲を選択する態様は、本件特許明細書に明示的に記載された事項であるか又は記載から自明な事項といえる。 (イ)訂正1-2 訂正1-2は、本件特許明細書の【0027】の「第1及び第2の材料132及び142のそれぞれは、約300nm~約400nmの第1の紫外波長範囲、約400nm~約700nmの第2の可視波長範囲、及び約700nm~約1200nmの第3の近赤外波長範囲のうちの1つ又は2つにおける光を吸収及び/又は反射する。」との記載、【0031】の「いくつかの場合には、第1の材料332及び第2の材料342は、約300nm~約400nmの第1の波長範囲、約400nm~約700nmの第2の波長範囲、及び約700nm~約1200nmの第3の波長範囲のうちの1つ又は2つにおいて実質的に低い透過率を有し、残りの波長範囲において実質的に高い透過率を有するよう、光を吸収、反射、又は遮断する。」、「いくつかの場合には、第1の材料332及び第2の材料342の両方は、紫外光、可視光、及び赤外光のうちの少なくとも1つの少なくとも一部においてスペクトル選択性を有する材料の中から選択することができ、その結果、LCF300を通過する光の透過は、紫外光、可視光、及び赤外光の範囲のうちの少なくとも2つにおいてスペクトル選択性を有する。」との記載等に基づくものである。 したがって、上記訂正1-2が本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかである。 (ウ)小括 上記(ア)~(イ)より、訂正事項1に係る訂正は、新規事項を追加するものではない。 ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 上記訂正内容からみて、訂正事項1に係る訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれなかった発明が訂正後に特許請求の範囲に含まれることにならないことは明らかである。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 エ 小括 以上のとおりであるから、訂正事項1に係る訂正は、訂正要件を満たしている。 また、訂正後の請求項1の記載を引用して記載された訂正後の請求項4~6についても同様である。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的 (ア)訂正2-1 訂正2-1は、請求項2に係る発明の「光制御フィルム」が、「前記光制御フィルムの平面に対して垂直に入射する光については、」「前記光制御フィルムの平均光透過率が、より短い波長を有する所定の第1の波長範囲において10%未満であ」ることを特定しているところ、「所定の第1の波長範囲」を「可視光に対応」することを更に特定し、波長範囲を更に限定するものである。 (イ)訂正2-2 訂正2-2は、「光制御フィルム」を特定する「前記光制御フィルムの平均光透過率が、前記所定の第1及び第2の波長範囲のそれぞれにおいて20%未満であり」との記載について、「平均光透過率」を測定する際の「入射する光」の角度を、訂正前は「前記光制御フィルムの前記平面から30度以上」とされていたものを、「前記光制御フィルムの前記平面と垂直な線から30度以上」へと訂正するものである。 ここで、本件訂正前の請求項2に係る発明は、「光制御フィルム」が「所定の第1の方向に沿って70度未満の第1の視野角を含」むものであるが、本件特許明細書の【0025】の「ルーバ構造体は、・・・観察者がルーバ構造体の視野角内にいる場合にのみ、観察者が、表示された画像を見ることができ、・・・太陽光が、ルーバ構造体の視野角内にある光線についてのみ窓を通過することができるような、角度選択性を有するものとして知られている。「視野角」は、本明細書において、構造体の平面の法線に対して、ルーバ構造体が実質的に透過性である角度の範囲として定義される。例えば、光制御フィルムの視野角は、光制御フィルムの透過率がピーク透過率の60%以内、又は50%以内、又は40%以内である角度の範囲として定義することができる。」との記載や、【図2】及び【0028】等の記載によれば、本件特許明細書に記載される「光制御フィルム」は、構造体(フィルム)の平面の法線を略中心として定義される「視野角」を有し、所定の波長範囲において、該「視野角」の範囲内で実質的に高い透過率を有する一方、該「視野角」を超えた範囲では実質的に低い透過率を有するという光学特性が前提とされていることが理解される。 上記理解を前提として、本件訂正前の請求項2の記載について検討する。 本件訂正前の請求項2に係る発明では、「所定の第2の波長範囲」における「光制御フィルムの平均光透過率」が、「光制御フィルムの平面に対して垂直に入射する光については」「50%超」と特定される一方、「光制御フィルムの前記平面から30度以上で入射する光については」「20%未満」と特定されているところ、「光制御フィルム」の上記光学特性との整合性に照らせば、本件訂正前の請求項2に係る発明における「50%超」が「第1の視野角」の範囲内で入射した場合の平均光透過率であって、「20%未満」が前記「第1の視野角」を超えた範囲で入射した場合の平均光透過率を意味するものと解釈すべきことは当業者に自明といえる。 そうすると、「入射角」は、構造体(フィルム)の平面の法線(垂直な線)を略中心として定義されるものであるから、「所定の第2の波長範囲」における「光制御フィルムの平均光透過率」が「20%未満」となる「入射する光」の角度を、「光制御フィルムの前記平面から30度以上」と特定する訂正前の請求項2の記載に誤記があって、これが「前記光制御フィルムの前記平面と垂直な線から30度以上」を本来意図したものであることは明らかである。さらにいえば、訂正前の請求項2の記載に上記誤記があることは、光の入射角が入射面の法線からの角度として定義される光学分野の技術常識からみても明らかである。 したがって、上記誤記を本来の意味に訂正する訂正2-2は、誤記の訂正を目的としたものと認められる。 (ウ)訂正2-3 訂正2-3の目的は、上記訂正1-2と同様であり、上記(1)ア(イ)で説示したとおり、より具体的に発明を限定するものである。 (エ)小括 上記(ア)~(ウ)より、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 (ア)訂正2-1 本件特許明細書の【0039】には、「いくつかの場合には、所定の第1の波長範囲は約400~約700nmであり得、所定の第2の波長範囲は約700nm~約1200nmであり得る。」と記載され、「約400~約700nm」が「可視光に対応」することは、本件特許明細書の【0027】の記載や技術常識より明らかである。 したがって、請求項2に係る発明の「所定の第1の波長範囲」が「可視光に対応」する態様は、本件特許明細書に明示的に記載された事項であるか又は記載から自明な事項といえる。 (イ)訂正2-2 上記ア(イ)で説示したとおり、上記訂正2-2は、訂正前の請求項2に含まれる誤記を、本件特許明細書の記載から明らかな内容に正すものであるから、本件出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。 (ウ)訂正2-3 上記(1)イ(イ)で説示したのと同様である。 (エ)小括 上記(ア)~(ウ)より、訂正事項2に係る訂正は、新規事項を追加するものではない。 ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 上記ア~イで説示したとおり、訂正事項2に係る訂正によって、訂正前の特許請求の範囲には含まれなかった発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることにならないことは明らかである。 エ 異議申立人の主張 本件訂正の適否について、異議申立人は、令和5年11月9日に提出された意見書において、上記訂正2-2について、訂正前の要件を充足しない構成の一部が、変更後の要件を充足する旨主張しているが、この点は上記ア(イ)で説示したとおり、訂正前の「前記光制御フィルムの前記平面から30度以上」との記載は誤記を含むものであって、これが「前記光制御フィルムの前記平面と垂直な線から30度以上」を意図したものであることは明らかであることから、上記主張は採用できない。 オ 小括 以上のとおりであるから、訂正事項2に係る訂正は、訂正要件を満たしている。 また、訂正後の請求項2の記載を引用して記載された訂正後の請求項5~6についても同様である。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的 (ア)訂正3-1 訂正前の「光制御フィルムに入射する光の入射角が前記光制御フィルムの平面に対して90度から60度に変化するとき、前記光制御フィルムの平均光透過率は、 より短い波長を有する所定の第1の波長範囲においては、10%未満に、及び より長い波長を有する所定の第2の波長範囲においては、40%超に、変化し、」との特定事項について、本件特許明細書の【0049】の「LCFに入射する光の入射角が、LCFの平面に対して約90度から約60度に・・・変化するとき、LCFの平均光透過率は、より短い波長を有する所定の第1の波長範囲において約10%未満、及びより長い波長を有する所定の第2の波長範囲において約40%超、変化し得る。」(下線は当審が付したものである。)との記載や、この具体的な実施形態を示す本件特許の図面の【図9】の「光制御フィルムの透過率対波長のプロット」をみれば、本件訂正前の請求項3の「10%未満」、「40%超」との数値範囲は、光制御フィルムに入射する光の入射角が光制御フィルムの平面に対して90度のときの所定の第1の波長範囲及び所定の第2波長範囲における光制御フィルムの平均光透過率の値から60度のときの値を引くことによってそれぞれ算出される値(平均光透過率の差分)を示すものであることは自明である。 したがって、訂正3-1における「10%未満に」、「40%超に」との記載をそれぞれ「10%未満」、「40%超」と訂正すること(以下「訂正3-1-1」という。)は、誤記または誤訳の訂正を目的としたものと認められる。 また、訂正3-1における「可視光に対応しかつ」との記載を追加すること(以下「訂正3-1-2」という。)は、「光制御フィルムに入射する光の入射角が前記光制御フィルムの平面に対して90度から60度に変化するとき、前記光制御フィルムの平均光透過率」について、「40%超、変化」する波長範囲を訂正前は「より長い波長を有する所定の第2の波長範囲」と特定しているものを「可視光に対応」するものであることを特定し、波長範囲を更に限定するものである。 (イ)訂正3-2 訂正3-2の目的は、上記訂正1-2と同様であり、これは上記(1)ア(イ)で説示したとおり、より具体的に発明を限定するものである。 (ウ)小括 上記(ア)~(イ)より、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 (ア)訂正3-1 上記ア(ア)で説示したとおり、上記訂正3-1-1は、訂正前の請求項3に含まれる誤記を、本件特許明細書の記載から明らかな内容に正すものであるから、本件出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。 また、上記訂正3-1-2について、「光制御フィルムに入射する光の入射角が前記光制御フィルムの平面に対して90度から60度に変化するとき」の「平均光透過率」が実質的に変化する波長範囲(「40%超、変化」する「より長い波長を有する所定の第2の波長範囲」)とは、光制御フィルムの構成を踏まえれば、「複数の離間した第1の領域」において実質的に低い透過率を有する波長範囲のことと理解される。そして、「複数の離間した第1の領域」において実質的に低い透過率を有する波長範囲は、本件特許明細書の【0005】、【0028】等で、可視光を含む形で選択的に記載されているから、この波長範囲を「可視光」を選択した態様は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内のものである。 (イ)訂正3-2 上記(1)イ(イ)で説示したのと同様である。 (ウ)小括 上記(ア)~(イ)より、訂正事項3に係る訂正は、新規事項を追加するものではない。 ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 上記ア~イで説示したとおり、訂正事項3に係る訂正は、訂正前の特許請求の範囲には含まれない発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることにならないことは明らかである。 この点、異議申立人は、令和5年11月9日に提出された意見書において、上記訂正3-1について、訂正前の要件を充足しない構成の一部が、変更後の要件を充足する旨主張しているが、この点は上記ア(ア)で説示したとおり、訂正前の請求項3の「10%未満に」、「40%超に」との記載は誤記を含むことは明らかであるのだから、上記主張は採用できない。 したがって、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 エ 小括 以上のとおりであるから、訂正事項3に係る訂正は、訂正要件を満たしている。 また、訂正後の請求項3の記載を引用して記載された訂正後の請求項5~6についても同様である。 (4)小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものである。また、同訂正は、同条第9項で準用する同法第126条第5項~第6項の規定に適合する。 よって、結論に記載のとおり、特許第7103717号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 本件訂正は上記第2のとおり認められたので、本件訂正後の請求項1~6に係る発明(以下「本件訂正発明1」~「本件訂正発明6」といい、これらを総称して「本件訂正発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 複数の離間した第1の領域、及び第2の領域を含む光制御フィルムであって、各第1の領域は、幅W及び高さH、H/W≧1を有し、各第1の領域は、所定の第1の波長範囲において実質的に高い透過率を有し、所定の重複しないかつ可視光に対応する第2の波長範囲において実質的に低い透過率を有し、前記第2の領域は、前記所定の第1及び第2の波長範囲のそれぞれにおいて実質的に高い透過率を有し、前記第2の領域は、前記第1の領域と交互になった複数の離間した第2の領域区分を含み、 前記第1の領域は第1の材料を含み、前記第2の領域区分は第2の材料を含み、 各第1の領域は、300nm~400nmの第1範囲、400nm~700nmの第2範囲、及び700nm~1200nmの第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて実質的に低い透過率を有し、残りの範囲において実質的に高い透過率を有し、前記光制御フィルムは、所定の第1の方向に沿って70度未満の第1の視野角を含み、 前記第1の材料および前記第2の材料のそれぞれは、前記第1範囲、前記第2範囲および前記第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて少なくとも光の70%を吸収および/または反射する、 光制御フィルム。 【請求項2】 複数の離間した第1の領域、及び第2の領域を含む光制御フィルムであって、前記光制御フィルムの平面に対して垂直に入射する光については、 前記光制御フィルムの平均光透過率が、より短い波長を有する所定の第1の波長範囲において10%未満であり、ここで、前記所定の第1の波長範囲は可視光に対応し、 前記光制御フィルムの平均光透過率が、より長い波長を有する所定の第2の波長範囲において50%超であり、 前記光制御フィルムの前記平面と垂直な線から30度以上で入射する光については、 前記光制御フィルムの平均光透過率が、前記所定の第1及び第2の波長範囲のそれぞれにおいて20%未満であり、 前記第2の領域は、前記第1の領域と交互になった複数の離間した第2の領域区分を含み、 前記第1の領域は第1の材料を含み、前記第2の領域区分は第2の材料を含み、 各第1の領域は、300nm~400nmの第1範囲、400nm~700nmの第2範囲、及び700nm~1200nmの第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて実質的に低い透過率を有し、残りの波長範囲において実質的に高い透過率を有し、前記光制御フィルムは、所定の第1の方向に沿って70度未満の第1の視野角を含み、 前記第1の材料および前記第2の材料のそれぞれは、前記第1範囲、前記第2範囲および前記第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて少なくとも光の70%を吸収および/または反射する、 光制御フィルム。 【請求項3】 複数の離間した第1の領域、及び第2の領域を含む光制御フィルムであって、前記光制御フィルムに入射する光の入射角が前記光制御フィルムの平面に対して90度から60度に変化するとき、前記光制御フィルムの平均光透過率は、 より短い波長を有する所定の第1の波長範囲においては、10%未満、及び 可視光に対応しかつより長い波長を有する所定の第2の波長範囲においては、40%超、変化し、 前記第2の領域は、前記第1の領域と交互になった複数の離間した第2の領域区分を含み、 前記第1の領域は第1の材料を含み、前記第2の領域区分は第2の材料を含み、 各第1の領域は、300nm~400nmの第1範囲、400nm~700nmの第2範囲、及び700nm~1200nmの第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて実質的に低い透過率を有し、残りの波長範囲において実質的に高い透過率を有し、前記光制御フィルムは、所定の第1の方向に沿って70度未満の第1の視野角を含み、 前記第1の材料および前記第2の材料のそれぞれは、前記第1範囲、前記第2範囲および前記第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて少なくとも光の70%を吸収および/または反射する、 光制御フィルム。 【請求項4】 請求項1に記載の光制御フィルムであって、 前記所定の第1の波長範囲は700nm~1200nmの範囲であり、 前記所定の第2の波長範囲は400nm~700nmの範囲である、 光制御フィルム。 【請求項5】 請求項1から4の何れか一つに記載の光制御フィルムであって、 前記第1の材料および前記第2の材料は、互いに異なる波長範囲の光を吸収および/または反射する、 光制御フィルム。 【請求項6】 請求項1から5の何れか一つに記載の光制御フィルムであって、 前記第1領域および前記第2の領域区分は、光学フィルム内に設けられている、 光制御フィルム。 第4 取消しの理由の概要及び証拠方法 1 令和5年6月5日付け取消理由通知で通知した取消しの理由の概要 訂正前の特許請求の範囲に記載された発明に対して、令和5年6月5日付け取消理由通知で通知した取消理由は、概略以下のとおりである 理由1(明確性要件違反):本件特許の請求項2、3、5及び6に係る発明は、特許を受けようとする発明が明確であるということができないから、請求項2、3、5及び6に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 理由2(新規性違反):本件特許の請求項1、4及び6に係る発明は、優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、請求項1、4及び6に係る特許は、特許法29条1項3号の規定に違反してされたものである。 理由3(進歩性違反):本件特許の請求項1~6に係る発明は、優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 (甲1及び甲2はそれぞれ主引用文献であり、甲3及び甲4は周知技術を示す文献である。) 2 令和6年1月15日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した取消しの理由の概要 令和6年1月15日付け取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由は、概略以下のとおりである 理由(進歩性):本件特許の請求項2、5~6に係る発明は、優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2、5~6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 (甲1が主引用文献であり、甲3及び甲4は周知技術を示す文献である。) 3 証拠方法 甲第1号証:特開2015-101855号公報(甲1) 甲第2号証:特開2011-34031号公報(甲2) 甲第3号証:特開2014-137574号公報(甲3) 甲第4号証:国際公開第2013/141375号(甲4) 甲第5号証:特開2015-146026号公報(甲5) 甲第6号証:特表2011-501219号公報(甲6) 甲第7号証:特開2014-229484号公報(甲7) 第5 当合議体の判断 1 甲1を主引用文献とした新規性、進歩性 (1)甲1の記載事項及び甲1に記載された発明 ア 甲1の記載事項 甲1には、次の事項が記載されている。 なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定及び判断等において活用した箇所を示す。以下同様である。 (ア)「【0018】 以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。 図1は本発明の一実施形態による窓1の主切断面での概略断面図、図2は窓1の平面図である。図1の窓1は、採光用の窓材(基材)2と、窓材2に積層された熱線吸収シート(シート材)10とを備えている。熱線吸収シート10は、本発明の光制御部材の一態様である。図1は、図2のA-A線方向の断面図である。図1および図2では、窓1を鉛直方向に配置する例を示しており、図1および図2の上下方向が鉛直方向を表している。すなわち、図1および図2の上側の端辺が窓1の最上部を表し、下側の端辺が窓1の最下部を表している。 【0019】 窓1は、光源からの光の入射方向に応じて、熱線の遮断および可視光線の透過を選択的に行うものである。なお、ここでいう光源からの光とは、少なくとも可視光領域または赤外光領域に波長を有する光であれば特に限定されるものではなく、例えば、太陽光等の自然光、赤外線LED、ハロゲンランプ、キセノンランプ等の光源からの光が挙げられる。また、ここで説明する窓1は、上記光を発する光源の位置が変化する環境下で好適に用いられる。より具体的には、本実施形態では、光源として、季節や時間帯に応じて高度や方位が異なる太陽を想定している。 【0020】 さらに、本明細書において、可視光領域および赤外光領域とは、それぞれ一般的に定義される波長領域をいい、380nm~780nmの範囲内を可視光領域、それよりも長波長領域を赤外光領域とする。また、本明細書において、赤外光領域の光のことを熱線と略す場合がある。つまり、熱線とは、可視光よりも長波長域の光のことであり、780nmを越える波長を有する赤外線を含む光をいう。」 (イ)「【0021】 (熱線吸収シート10) 先ず、熱線吸収シート10について説明する。図1に示すように、熱線吸収シート10は、第1面11と当該第1面11に対向する第2面12とを有する。本実施形態では、窓1が家屋に設置された状態において、第1面11は屋外を向く入光側の面であり、第2面12は屋内を向く出光側の面である。また、熱線吸収シート10は、その第1面11に設けられた接合層3を介して、窓材22に接合されている。 【0022】 図1に示すように、熱線吸収シート10は、第1面11に沿って離隔して配置される複数の溝14が形成されるベース部30と、ベース部30の複数の溝14の内部にそれぞれ形成され熱線吸収材料を含有する複数のルーバー部20とを備えている。複数のルーバー部20は、図2に示すように、それぞれの長手方向が窓1の基準となる端辺に対して傾斜する角度方向に配置されている。この場合の基準となる端辺とは、水平面に平行な窓1の端辺であり、より具体的には窓1の底辺および上辺(以下では、窓1の上下端辺と呼ぶ)である。」 (ウ)「【0024】 複数のルーバー部20は、少なくとも熱線を吸収する機能を持っている。各ルーバー部20は、図1に示すように、熱線吸収シート10の第1面11に接する底面21と、底面21からその法線方向に延びる第1側面22と、底面21から第1側面22に向かって斜めに延びる第2側面23とを有する。」 (エ)「【0029】 次に、ルーバー部20を構成する材料について説明する。図3は図1に示す熱線吸収シート10のルーバー部20の拡大断面図である。図3に示すように、ルーバー部20は、熱線を吸収する熱線吸収材25を少なくとも含んでいる。本実施形態の熱線吸収材25は、可視光線を透過しつつ熱線を吸収するという機能を有する。 ・・・中略・・・ 【0033】 加えて、ルーバー部20は、黒色粒子26を含んでいてもよい。本実施形態において、ルーバー部20とベース部30との界面には光の屈折率差があるため、上記界面で反射された可視光線は、上記熱線吸収シート10内において繰り返し多重反射を起こす場合もあり得る。その結果、反射光と入射光とが干渉して、上記熱線吸収シート10を介して視認される像が多重像となるおそれもある。本実施形態では、ルーバー部20が黒色粒子26を含むため、ルーバー部20に光が入射する際に黒色粒子26が可視光線の一部を吸収し、ルーバー部20とベース部30との界面において反射する可視光線の強度を減衰させる。これにより、熱線吸収シート10内での可視光線の多重反射の発生および干渉現象の発生を抑制することができ、熱線吸収シート10全体の可視光領域における透過率を大幅に低減させることなく、多重像の発現を抑制することができる。」 (オ)「【0039】 次に、ベース部30を構成する材料について説明する。ベース部30は、太陽光等の光源からの光を透過して、屋内に光を取り込むための部分である。上述したように、ベース部30は、図1に示す主切断面において、隣り合う溝14によって区画された略台形形状の断面部分を有する。より詳細には、ベース部30は、第1面11上において隣り合うルーバー部20の底面21の間に延びる底面31と、ルーバー部20の第2側面23と、隣り合うルーバー部20の第1側面22と、隣り合う2つのルーバー部20の先端同士を結ぶ仮想面としての上面34と、によって、略台形形状の断面部分に区画されている。 【0040】 このベース部30の材料として、例えば、電離放射線の照射により硬化する材料、すなわち電離放射線硬化性樹脂が用いられる。上記電離放射線硬化性樹脂は、具体的には、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、可視光線硬化性樹脂、近赤外線硬化性樹脂等である。このうち紫外線硬化性樹脂および電子線硬化性樹脂としては、一例として、従来から慣用されている重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。また、ベース部30に紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、光重合開始剤を併用することが好ましい。 【0041】 さらに、ベース部30は上述した材料に加え、耐候性をさらに向上させるために、紫外線吸収剤(UVA)を含有していてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば酸化チタン等の無機系、および、トリアジン系等の有機系、のいずれであってもよい。さらに、ベース部30は、さらにハードコート性や光安定剤(HALS)や耐傷フィラー、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤等の添加剤を含有していてもよい。 【0042】 また、ベース部30は、可視光領域において所望の透過率を有するように調整され得る。ベース部30の可視光領域における平均透過率は、一例として、70%以上に調整される。前記平均透過率が上記範囲を満たすと、熱線吸収シート10全体としての可視光領域における透過率を十分に得られるため、熱線吸収シート10の外観が暗くなることや、室内等へ十分な採光が確保できずに室内等の照度が不足することを効果的に抑制することができる。なお、可視光領域における平均透過率は、測定対象となる部位をなすようになる材料を、後述する基材フィルムとしての東洋紡績製PETフィルム(品番:コスモシャインA4300、厚さ100μm)の上に膜厚1μmで成膜し、分光光度計((株)島津製作所製「UV-2450」、JISK0115準拠品)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値である。」 (カ)「【0046】 窓1が真南に面して設置されている場合、どの季節においても、南中高度付近にある太陽からの光が窓1に入射されることになる。南中高度は、図4(a)に示す夏至のときに最も高くなり、図4(b)に示す冬至のときに最も低くなる。したがって、窓1が真南に面して設置されている場合は、上述した熱線吸収シート10内の複数のルーバー部20をその長手方向が窓1の上下端辺に略平行になるように配置するのが望ましい。これにより、夏季はルーバー部20に太陽光が入射されて熱線が吸収され、太陽高度の低い冬季は太陽光の一部をルーバー部20の隙間から屋内に採り込むことができる。」 (キ)「【0051】 本実施形態による熱線吸収シート10は、西側に設置された窓1において、水平面に対する太陽光の入射角度が約30度以上のときに十分な遮熱機能を発揮する。例えば、緯度が北緯35度の場合、夏至の南中高度は90-35+23.4=78.4度である。したがって、太陽光の入射角度が30度になるのは、太陽が南西から西寄りに傾いた夕方である。太陽光の入射角度が30度以上であれば、熱線吸収シート10内の複数のルーバー部20に太陽光が入射されるようになり、所望の遮熱機能が発揮される。」 (ク)「【0053】 一方、南西よりも南側では、太陽は南中高度に近い高い高度を移動するため、ルーバー部20を斜めに配置するよりも、ルーバー部20の長手方向を窓1の上下端辺に略平行に配置するのが望ましい。」 (ケ)「【図1】 [図:0001417593000001.jpg] 」 イ 甲1発明 (ア)本件特許明細書の【0028】に記載された視野角θvの定義及び【図2】等の記載に鑑みれば、甲1の【図1】(下図を参照。)から、ルーバー部20は、幅W及び高さH、H/W≧1を有し、熱線吸収シート10は、上下方向(鉛直方向)に沿った視野角を有することが見て取れる。ここで、下図は、当合議体が、上記定義及び上記【図2】に示された高さH及び幅Wの位置関係に基づいて、甲1の【図1】に、対応する幅W、高さH、上下方向(鉛直方向)及び視野角に関する情報(矢印等)を追記したものである。 [図:0001417593000002.jpg] (イ)上記ア及び(ア)から、甲1には「熱線吸収シート10」の発明(以下「甲1発明」という。)として以下のものが記載されている。 「光源からの光の入射方向に応じて、熱線(赤外光領域の光)の遮断および可視光線の透過を選択的に行う窓1が備えている熱線吸収シート10であって、(【0018】~【0020】) 熱線吸収シート10は、第1面11に沿って離隔して配置される複数の溝14が形成されるベース部30と、ベース部30の複数の溝14の内部にそれぞれ形成される熱線吸収材料を含有する複数のルーバー部20とを備え、(【0022】) ルーバー部20は、幅W及び高さH、H/W≧1を有し、(上記(ア)) 複数のルーバー部20は、少なくとも熱線(赤外光領域の光)を吸収する機能を持っており、(【0024】) ベース部30は、太陽光等の光源からの光を透過して、屋内に光を取り込むための部分であり、ベース部30の可視光領域における平均透過率は、70%以上に調整され、(【0039】、【0042】) ルーバー部20は、熱線(赤外光領域の光)を吸収する熱線吸収材25を少なくとも含んでおり、(【0029】) ベース部30の材料として、電離放射線硬化性樹脂が用いられ、(【0040】) 熱線吸収シート10は、上下方向(鉛直方向)に沿って視野角を有し、(【図1】) 熱線吸収材25は、可視光線を透過しつつ熱線(赤外光領域の光)を吸収するという機能を有し、(【0029】) ベース部30は、耐候性をさらに向上させるために、紫外線吸収剤(UVA)を含有していてもよく、(【0041】) 南西よりも南側では、ルーバー部20の長手方向を窓1の上下端辺に略平行に配置する、(【0053】) 熱線吸収シート10。」 (2)本件訂正発明1 ア 対比 本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)第1の領域及び第2の領域 a 甲1発明の「ルーバー部20」は、「第1面11に沿って離隔して配置される複数の溝14」「の内部にそれぞれ形成される」ものであるから、その構成からみて、本件訂正発明1の、「複数の離間した」とされる、「第1の領域」に相当する。 b 甲1発明の「ベース部30」は、「第1面11に沿って離隔して配置される複数の溝14が形成される」ものであるから、その構成からみて、本件訂正発明1の「第2の領域」に相当する。 また、上記aより、甲1発明は、本件訂正発明1の「前記第2の領域は、前記第1の領域と交互になった複数の離間した第2の領域区分を含み、」との要件を満たす。 (イ)光制御フィルム 甲1発明の「熱線吸収シート10」は、「光源からの光の入射方向に応じて、熱線(赤外光領域の光)の遮断および可視光線の透過を選択的に行う窓1が備えている」ものであるから、その構造が奏する機能からみて、本件訂正発明1の「光制御フィルム」に相当する。 また、甲1発明の「熱線吸収シート10」は、「ルーバー部20」(「第1の領域」)と「ベース部30」(「第2の領域」)を備えるものであるから、本件訂正発明1の「複数の離間した第1の領域、及び第2の領域を含む光制御フィルム」との要件を満たす。 (ウ)H/W≧1 甲1発明の「ルーバー部20」(「第1の領域」)は、「幅W及び高さH、H/W≧1」を有するものであるから、本件訂正発明1の「各第1の領域は、幅W及び高さH、H/W≧1を有し」との要件を満たす。 (エ)第1の材料及び第2の材料 甲1発明の「ルーバー部20」(「第1の領域」)は、「熱線(赤外光領域の光)を吸収する熱線吸収材25を少なくとも含んでおり」、甲1発明の「ベース部30」(「第2の領域区分」を含む「第2の領域」)は、材料として、「電離放射線硬化性樹脂」を含むものである。 してみれば、甲1発明の「熱線吸収剤25」及び「電離放射線硬化性樹脂」は、本件訂正発明1の「第1の材料」及び「第2の材料」にそれぞれ相当し、甲1発明は、本件訂正発明1の、「前記第1の領域は第1の材料を含み、前記第2の領域区分は第2の材料を含み、」との要件を満たす。 (オ)第1の範囲、第2の範囲及び第3の範囲 甲1発明の「紫外線」領域、「可視光領域」及び「赤外光領域」は、本件訂正発明1の「300nm~400nmの第1範囲」、「400nm~700nmの第2範囲」及び「700nm~1200nmの第3範囲」にそれぞれ相当する。 また、甲1発明の「ルーバー部20」(「第1の領域」)は、「可視光線を透過しつつ熱線(赤外光領域の光)を吸収するという機能」を有する「熱線吸収材25」(「第1の材料」)を含むものであるから、本件訂正発明1の「各第1の領域は、300nm~400nmの第1範囲、400nm~700nmの第2範囲、及び700nm~1200nmの第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて実質的に低い透過率を有し、残りの範囲において実質的に高い透過率を有し」との要件を満たす。 (カ)第1の視野角 甲1発明の「ルーバー部20」(「第1の領域」)は、「光源からの光の入射方向に応じて、熱線(赤外光領域の光)の遮断」を行うものであるから、その構成や材料からみて、甲1発明の「視野角」は赤外光領域におけるものであり、甲1発明の「上下方向(鉛直方向)」及び「視野角」は、本件訂正発明1の「所定の第1の方向」及び「第1の視野角」にそれぞれ相当する。 また、甲1発明の「熱線吸収シート10」は、本件訂正発明1の「光制御フィルム」における、「所定の第1の方向に沿って」「第1の視野角を含み、」との要件を満たす。 イ 一致点及び相違点 本件訂正発明1と甲1発明とを対比すると、一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (ア)一致点 「複数の離間した第1の領域、及び第2の領域を含む光制御フィルムであって、各第1の領域は、幅W及び高さH、H/W≧1を有し、前記第2の領域は、前記第1の領域と交互になった複数の離間した第2の領域区分を含み、 前記第1の領域は第1の材料を含み、前記第2の領域区分は第2の材料を含み、 各第1の領域は、300nm~400nmの第1範囲、400nm~700nmの第2範囲、及び700nm~1200nmの第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて実質的に低い透過率を有し、残りの範囲において実質的に高い透過率を有し、前記光制御フィルムは、所定の第1の方向に沿って第1の視野角を含む、 光制御フィルム。」 (イ)相違点 (相違点1-1-1) 「第1の領域」及び「第2の領域」について、本件訂正発明1は、「各第1の領域は、所定の第1の波長範囲において実質的に高い透過率を有し、所定の重複しないかつ可視光に対応する第2の波長範囲において実質的に低い透過率を有し、前記第2の領域は、前記所定の第1及び第2の波長範囲のそれぞれにおいて実質的に高い透過率を有」するのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。 (相違点1-1-2) 「第1の視野角」が、本件訂正発明1は、「70度未満の」ものであるのに対して、甲1発明においては、そのように特定されていない点 (相違点1-1-3) 本件訂正発明1は、「前記第1の材料および前記第2の材料のそれぞれ」は、「前記第1範囲、前記第2範囲および前記第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて少なくとも光の70%を吸収および/または反射する」との特性を有するものであるのに対し、甲1発明においては、「熱線吸収材25」(「第1の材料」)および「電離放射線硬化性樹脂」(「第2の材料」)のそれぞれが、上記特性を有することが特定されていない点。 ウ 判断 (ア)新規性 上記イのとおりであって、本件訂正発明1は、甲1発明と同一ではない。 (イ)進歩性 上記相違点1-1-1について検討する。 甲1発明の「ルーバー部20」(「第1の領域」)は、「可視光線を透過しつつ熱線(赤外光領域の光)を吸収するという機能」を有する「熱線吸収材25」を含むものである。そして、甲1発明は、「光源からの光の入射方向に応じて、熱線(赤外光領域の光)の遮断および可視光線の透過を選択的に行う窓1」が備えるものであるところ、「ルーバー部20」が、可視光に対応する波長範囲においても実質的に低い透過率であると、窓1(熱線吸収シート10)を介しての採光が十分でなくなることは明らかである。してみると、甲1発明において、「ルーバー部20」(「第1の領域」)を、上記相違点1-1-1に係る「所定の重複しないかつ可視光に対応する第2の波長範囲において実質的に低い透過率を有し」という構成を採用することには阻害要因があるといえる。 そして、甲1発明を主引用発明としている以上、甲2~甲7の開示内容を考慮しても上記判断は変わらない。 したがって、甲1発明において、上記相違点1-1-1に係る本件訂正発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。 エ 小括 以上のとおり、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 また、本件訂正発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1に記載された発明、及び、甲2~甲7に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件訂正発明2 ア 対比 本件訂正発明2と甲1発明とを対比する。 (ア)第1の領域及び第2の領域 上記(2)ア(ア)と同様である。 (イ)光制御フィルム 上記(2)ア(イ)と同様である。 (ウ)第1の材料及び第2の材料 上記(2)ア(エ)と同様である。 (エ)第1の範囲、第2の範囲及び第3の範囲 上記(2)ア(オ)と同様である。 (オ)第1の視野角 上記(2)ア(カ)と同様である。 イ 一致点及び相違点 本件訂正発明2と甲1発明とを対比すると、一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (ア)一致点 「複数の離間した第1の領域、及び第2の領域を含む光制御フィルムであって、 前記第2の領域は、前記第1の領域と交互になった複数の離間した第2の領域区分を含み、 前記第1の領域は第1の材料を含み、前記第2の領域区分は第2の材料を含み、 各第1の領域は、300nm~400nmの第1範囲、400nm~700nmの第2範囲、及び700nm~1200nmの第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて実質的に低い透過率を有し、残りの波長範囲において実質的に高い透過率を有し、前記光制御フィルムは、所定の第1の方向に沿って第1の視野角を含む、 光制御フィルム。」 (イ)相違点 (相違点1-2-1) 本件訂正発明2は、「第1の視野角」が「70度未満の」ものであり、「前記光制御フィルムの平面に対して垂直に入射する光については、 前記光制御フィルムの平均光透過率が、より短い波長を有する所定の第1の波長範囲において10%未満であり、ここで、前記所定の第1の波長範囲は可視光に対応し、 前記光制御フィルムの平均光透過率が、より長い波長を有する所定の第2の波長範囲において50%超であり、 前記光制御フィルムの前記平面と垂直な線から30度以上で入射する光については、 前記光制御フィルムの平均光透過率が、前記所定の第1及び第2の波長範囲のそれぞれにおいて20%未満であ」るのに対して、甲1発明においては、そのように特定されていない点。 (相違点1-2-2) 本件訂正発明2は、「前記第1の材料および前記第2の材料のそれぞれ」は、「前記第1範囲、前記第2範囲および前記第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて少なくとも光の70%を吸収および/または反射する」との特性を有するものであるのに対し、甲1発明においては、「熱線吸収材25」(「第1の材料」)および「電離放射線硬化性樹脂」(「第2の材料」)のそれぞれが、上記特性を有することが特定されていない点。 ウ 判断 (ア)新規性 上記イのとおりであって、本件訂正発明2は、甲1発明と同一ではない。 (イ)進歩性 上記相違点1-2-1について検討する。 甲1発明の「熱線吸収シート10」(「光制御フィルム」)における「ベース部30」(「第2の領域」)は、「太陽光等の光源からの光を透過して、屋内に光を取り込むための部分であり、ベース部30の可視光領域における平均透過率は、70%以上に調整され」、「熱線吸収シート10は、第1面11に沿って離隔して配置される複数の溝14が形成されるベース部30と、ベース部30の複数の溝14の内部にそれぞれ形成される熱線吸収材料を含有する複数のルーバー部20とを備え」る。 上記構造からみて、「熱線吸収シート10」(「光制御フィルム」)は、平面に対して垂直に入射する光については、可視光が十分に透過するものであることは当業者に明らかである。 以上を前提として検討すると、甲1発明において、「熱線吸収シート10」(「光制御フィルム」)の平面に対して垂直に入射する光について、「平均光透過率が、より短い波長を有する所定の第1の波長範囲において10%未満であり、ここで、前記所定の第1の波長範囲は可視光に対応し」との要件を満たす構成に改変することは、窓1を介して屋内に光を取り込む機能(室内への採光機能)を損なうことを意味することから、甲1発明において、そのような改変を行うことには阻害要因があるというほかない。。そして、甲2~甲7を考慮してもこの判断が変わらないことは上記(2)ウ(イ)と同様である。 してみると、甲1発明において、相違点1-2-1に係る本件訂正発明2の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。 エ 小括 以上のとおり、本件訂正発明2は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 また、本件訂正発明2は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1に記載された発明、及び、甲2~甲7に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件訂正発明3 ア 対比 本件訂正発明3と甲1発明とを対比する。 (ア)第1の領域及び第2の領域 上記(2)ア(ア)と同様である。 (イ)光制御フィルム 上記(2)ア(イ)と同様である。 (ウ)第1の材料及び第2の材料 上記(2)ア(エ)と同様である。 (エ)第1の範囲、第2の範囲及び第3の範囲 上記(2)ア(オ)と同様である。 (オ)第1の視野角 上記(2)ア(カ)と同様である。 イ 一致点及び相違点 本件訂正発明3と甲1発明とを対比すると、一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (ア)一致点 「複数の離間した第1の領域、及び第2の領域を含む光制御フィルムであって、 前記第2の領域は、前記第1の領域と交互になった複数の離間した第2の領域区分を含み、 前記第1の領域は第1の材料を含み、前記第2の領域区分は第2の材料を含み、 各第1の領域は、300nm~400nmの第1範囲、400nm~700nmの第2範囲、及び700nm~1200nmの第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて実質的に低い透過率を有し、残りの波長範囲において実質的に高い透過率を有し、前記光制御フィルムは、所定の第1の方向に沿って第1の視野角を含む、 光制御フィルム。」 (イ)相違点 (相違点1-3-1) 本件訂正発明3は、「第1の視野角」が「70度未満の」ものであり、「前記光制御フィルムに入射する光の入射角が前記光制御フィルムの平面に対して90度から60度に変化するとき、前記光制御フィルムの平均光透過率は、 より短い波長を有する所定の第1の波長範囲においては、10%未満、及び 可視光に対応しかつより長い波長を有する所定の第2の波長範囲においては、40%超、変化」するのに対して、甲1発明においては、そのように特定されていない点。 (相違点1-3-2) 本件訂正発明3は、「前記第1の材料および前記第2の材料のそれぞれ」は、「前記第1範囲、前記第2範囲および前記第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて少なくとも光の70%を吸収および/または反射する」との特性を有するものであるのに対し、甲1発明においては、「熱線吸収材25」(「第1の材料」)および「電離放射線硬化性樹脂」(「第2の材料」)のそれぞれが、上記特性を有することが特定されていない点。 ウ 判断 (ア)新規性 上記イのとおりであって、本件訂正発明3は、甲1発明と同一ではない。 (イ)進歩性 上記相違点1-3-1について検討する。 本件訂正発明3の「入射する光の入射する光の入射角が前記光制御フィルムの平面に対して90度から60度に変化するとき、前記光制御フィルムの平均光透過率は、」「可視光に対応しかつより長い波長を有する所定の第2の波長範囲においては、40%超、変化」との要件は、入射角に従って「可視光に対応」する「所定の第2の波長範囲」における「前記光制御フィルムの平均光透過率」が実質的に変化(大きく低下)することを意味している。 ここで、甲1発明の「ルーバー部20」(「第1の領域」)は、「可視光線を透過しつつ熱線(赤外光領域の光)を吸収するという機能」を有する「熱線吸収材25」を含み、「ベース部30」(「第2の領域」)は、「太陽光等の光源からの光を透過して、屋内に光を取り込むための部分であ」るところ、甲1発明において、入射角に従って可視光の平均光透過率が実質的に変化(大きく低下)する構成、すなわち、「ルーバー部20」が可視光に対して実質的に低い透過率を有する構成を採用すると、窓1を介しての採光が悪化することは明らかであるから、甲1発明に上記相違点1-3-1に係る構成を採用することには阻害要因があるといえる。この点は、甲2~甲7を考慮しても同様である。 してみると、甲1発明において、相違点1-3-1に係る本件訂正発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 (ウ)異議申立人による意見書(令和5年11月9日提出)での主張について 異議申立人は、意見書(令和5年11月9日提出)において、上記相違点1-3-1に関連して、概略、以下の点を主張している。 (主張) 甲1の【0033】には、「ルーバー部20」が可視光を吸収する構成も開示されているから、甲1発明において、光制御フィルムに入射する光の入射角が光制御フィルムの平面に対して90度から60度に変化するとき、光制御フィルムの平均光透過率が「可視光」において40%超変化するように設定することは当業者が容易に想到することであるといえる。 上記主張について検討する。 甲1の【0033】には、「ルーバー部20は、黒色粒子26を含んでいてもよい。」との記載があるものの、これは、「ルーバー部20が黒色粒子26を含むため、ルーバー部20に光が入射する際に黒色粒子26が可視光線の一部を吸収し、ルーバー部20とベース部30との界面において反射する可視光線の強度を減衰させ」、「これにより熱線吸収シート10内での可視光線の多重反射の発生および干渉現象の発生を抑制することができ、熱線吸収シート10全体の可視光領域における透過率を大幅に低減させることなく、多重像の発現を抑制すること」(【0033】)を目的としたものと解される。 上記目的に照らせば、仮に甲1発明の「ルーバー部20」に黒色粒子26を含有させることが、可視光線の多重反射の発生及び干渉現象の発生の抑制との点から動機づけられたとしても、熱線吸収シート10全体の可視光領域における透過率を実質的に低減させることなく、採光性が悪化しない程度に含有させれば足りるのであって、甲1の前記記載が、ルーバー部20の可視光領域における光透過率を実質的に低くする程度にまで、すなわち、上記相違点1-3-1の要件を満たす程度にまで黒色粒子26を含有させることを動機づけるものではない。 以上より、上記主張を採用することはできない。 エ 小括 以上のとおり、本件訂正発明3は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 また、本件訂正発明3は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1に記載された発明、及び、甲2~甲7に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件訂正発明4~6 本件訂正発明4~6は、本件訂正発明1~3のいずれかの構成を全て備えるものであるから、本件訂正発明4~6も、少なくとも上記(2)~(4)のいずれかで述べた理由と同じ理由により、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1発明において、本件訂正発明4~6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 2 甲2を主引用文献とした新規性、進歩性 (1)甲2の記載事項及び甲2に記載された発明 ア 甲2の記載事項 令和5年6月5日付け取消理由通知で引用された甲2には、次の事項が記載されている。 (ア)「【0015】 図1に示される光学シート1は、映像光源(図示せず)から投射された映像光を制御して観察者側に出射させる透過型スクリーンに用いられるものである。図1に示されるように、光学シート1は、映像光を入射させる映像光入射面1aと、映像光を出射させる映像光出射面1bとを有しており、主に、入射した映像光を拡散させる光透過部2、および主に観察者側から入射する可視光である外光を吸収する光吸収部3等から構成されている。なお、図2に示されるように光透過部2の映像光入射側にプリズム部4を備えていてもよい。 【0016】 光透過部2は、映像光出射面1bの一部を構成し、シート面に沿って配置された複数の単位光透過部2aを備えるものである。本実施の形態においては、単位光透過部2aは、その断面形状が略台形となっている。この台形は、映像光入射側が下底、映像光出射側が上底とするものである。 【0017】 光透過部2は、屈折率N1を有する、映像光および赤外光を透過する光透過性樹脂で構成されている。これは、通常、電離放射線、紫外線等により硬化する特徴を有する例えばエポキシアクリレート等により形成されている。 【0018】 光吸収部3は、映像光出射面1bの一部を構成するように形成されている。本実施の形態では、光吸収部3が隣り合う単位光透過部2aにより形成される断面形状が略三角形の空間に形成されている。すなわち、光吸収部3の断面形状は光学シート1の厚さ方向において映像光出射側を底辺とする略三角形となっている。 【0019】 光吸収部3は、透明樹脂3aおよび透明樹脂3aに含有された可視光吸収赤外光透過材3b等から構成することが可能である。透明樹脂3aは、屈折率N1より小さい屈折率N2を有する材料により構成されていることが好ましい。また、透明樹脂3aとして用いられるものも特に限定されることはないが、例えば、電離放射、紫外線等により硬化する特徴を有するウレタンアクリレート等が挙げられる。 【0020】 可視光吸収赤外光透過材3bは、赤外光を透過させるととともに可視光である外光を吸収する機能を有する。可視光吸収赤外光透過材3bとしては、顔料または染料を混ぜたインキからなるものが挙げられる。このような顔料としては、ペリレンブラック顔料、アニリンブラック顔料、フォーマット墨(イエロー、マゼンダ、シアン顔料の混合顔料)、フタロシアニンブルー、ブリリアントカーミン6B等が挙げられる。」 (イ)「【0047】 試料 (実施例) まず、基材を流しながら、基材上に光透過部となる紫外線硬化樹脂を供給した。次いで、基材とロール状のレンズ成型用金型との間に、紫外線硬化樹脂を挟んだ状態で、紫外光照射装置により紫外光を樹脂に照射して、硬化させて、光透過部を形成した。 【0048】 光透過部を形成した後、光透過部が形成された基材を流しながら光透過部上に、可視光吸収赤外光透過材としての可視光吸収赤外光透過インキを含む、透明樹脂としての紫外線硬化樹脂を供給した。 【0049】 次いで、ドクター刃で光透過部の成型面を掻き、光透過部の溝のみに可視光吸収赤外光透過インキを含む紫外線硬化樹脂を充填させた。最後に、紫外光照射装置により紫外光を紫外線硬化樹脂に照射して、硬化させて、光吸収部を形成した。このようにして、実施例に係る光学シートを得た。」 (ウ)「【0054】 ゲイン測定 光学シートに可視光を照射し、視野角を変えながら実施例および比較例の光学シートのゲインを測定した。ゲインとは、光学シートの映像光入射側の明るさ(照度)と映像光出射側の明るさ(輝度)との比率であり、比例定数をp、輝度(ある方向へ出射する光の単位立体角あたりの光束の量)をK,照度(単位面積あたりに入射する光の光束の量)をIとし、ゲインをGとしたときに、G=p×(K/I)で表わされる値である。視野角に対するゲインの測定には、偏角輝度測定器である村上色彩技術研究所製スクリーン光学特性評価装置GP-500型を使用した。 【0055】 図10は、実施例および比較例に係る光学シートの視野角に対するゲインを示したグラフである。図10に示されるように比較例の光学シートにおいては視野角0°のときのゲインが約0.325であり、このゲインの値が1/2となるときの視野角は12°付近であった。一方、実施例の光学シートにおいては視野角0°のときのゲインが約0.27であり、このゲインの値が1/2となるときの視野角は12°付近であった。」 (エ)「【図1】 [図:0001417593000003.jpg] 」 (オ)「【図10】 [図:0001417593000004.jpg] 」 イ 甲2発明 (ア)本件特許明細書の【0028】に記載された視野角θvの定義及び【図2】等の記載に鑑みれば、甲2の【図1】(下図を参照。)から、光吸収部は、幅W及び高さH、H/W≧1を有することが見て取れる。ここで、下図は、当合議体が、上記定義及び上記【図2】に示された高さH及び幅Wの位置関係に基づいて、甲2の【図1】に、対応する幅W、高さHに関する情報(矢印等)を追記したものである。 [図:0001417593000005.jpg] (イ)甲2の【図10】から、実施例の光学シートは、可視光領域では視野角-30°以下および30゜以上のゲイン(光学シートの映像光入射側の明るさ(照度)と映像光出射側の明るさ(輝度)との比率)がほぼ0であること、すなわち、所定の第1の方向に沿って70度未満の第1の視野角を含むことが見て取れる。 (ウ)上記ア、(ア)~(イ)から、甲2には「光学シート」の発明(以下「甲2発明」という。)として以下のものが記載されている。 「映像光源から投射された映像光を制御して観察者側に出射させる透過型スクリーンに用いられる光学シート1であって、(【0015】) 光学シート1は、入射した映像光を拡散させる光透過部2、および観察者側から入射する可視光である外光を吸収する光吸収部3等から構成されており、(【0015】) 光透過部2は、シート面に沿って配置された複数の単位光透過部2aを備えるものであり、(【0016】) 光吸収部3が隣り合う単位光透過部2aにより形成される断面形状が略三角形の空間に形成されており、(【0018】) 光吸収部は、幅W及び高さH、H/W≧1を有し、(【図1】) 光透過部2は、映像光および赤外光を透過する光透過性樹脂で構成され、(【0017】、【0047】) 光吸収部3は、透明樹脂3aおよび透明樹脂3aに含有された可視光吸収赤外光透過材3bから構成され、可視光吸収赤外光透過材3bは、赤外光を透過させるととともに可視光である外光を吸収する機能を有し(【0019】、【0020】、【0048】、【0049】) 光学シートは、可視光領域では視野角-30°以下および30゜以上のゲイン(光学シートの映像光入射側の明るさ(照度)と映像光出射側の明るさ(輝度)との比率)がほぼ0である、(【図10】、【0054】) 光学シート。」 (2)本件訂正発明1 ア 対比 本件訂正発明1と甲2発明とを対比する。 (ア)第1の領域および第2の領域 甲2発明の「光吸収部3」は、「光吸収部3が隣り合う単位光透過部2aにより形成される断面形状が略三角形の空間に形成されて」いるものであるから、その構成からみて、本件訂正発明1の「第1の領域」に相当し、本件訂正発明1の「複数の離間した第1の領域」との要件を満たす。 また、甲2発明の「光透過部2」及び「単位光透過部2a」は、「光透過部2は、シート面に沿って配置された複数の単位光透過部2aを備えるものであり、」「光吸収部3が隣り合う単位光透過部2aにより形成される断面形状が略三角形の空間に形成されて」いるものであるから、その構成からみて、本件訂正発明1の「第2の領域」及び「第2の領域区分」にそれぞれ相当し、本件訂正発明1の「前記第2の領域は、前記第1の領域と交互になった複数の離間した第2の領域区分を含み、」との要件を満たす。 (イ)光制御フィルム 甲2発明の「光学シート1」は、「映像光源から投射された映像光を制御して観察者側に出射させる透過型スクリーンに用いられる」ものであるから、その用途や形状からみて、本件訂正発明1の「光制御フィルム」に相当する。 また、甲2発明の「光学シート1」(「光制御フィルム」)は、「光吸収部3」(「第1の領域」)と「光透過部2」(「第2の領域」)を備えるものであるから、本件訂正発明1の「複数の離間した第1の領域、及び第2の領域を含む光制御フィルム」との要件を満たす。 (ウ)H/W≧1 甲2発明の「光吸収部」(「第1の領域」)は、「幅W及び高さH、H/W≧1」を有するものであるから、本件訂正発明1の「各第1の領域は、幅W及び高さH、H/W≧1を有し、」との要件を満たす。 (エ)第1の材料および第2の材料 甲2発明の「光吸収部3」(「第1の領域」)は、「可視光吸収赤外光透過材3bから構成され」、甲2発明の「光透過部2」(「第2の領域」)は、「光透過性樹脂で構成され」るものである。 してみれば、甲2発明の「可視光吸収赤外光透過材3b」及び「光透過性樹脂」は、本件訂正発明1の「第1の材料」及び「第2の材料」にそれぞれ相当する。 (オ)第1の範囲、第2の範囲及び第3の範囲 甲2発明の「可視光」領域及び「赤外光」領域は、本件訂正発明1の「400nm~700nmの第2範囲」及び「700nm~1200nmの第3範囲」にそれぞれ相当する。 また、甲2発明の「光吸収部3」(「第1の領域」)は、「透明樹脂3aおよび透明樹脂3aに含有された可視光吸収赤外光透過材3bから構成され、可視光吸収赤外光透過材3bは、赤外光を透過させるととともに可視光である外光を吸収する機能を有」するものであるから、本件訂正発明1の「各第1の領域は、300nm~400nmの第1範囲、400nm~700nmの第2範囲、及び700nm~1200nmの第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて実質的に低い透過率を有し、残りの範囲において実質的に高い透過率を有し、」との要件を満たす。 (カ)第1の視野角 甲2発明の「光学シート」(「光制御フィルム」)は、「可視光領域では視野角-30°以下および30゜以上のゲイン(光学シートの映像光入射側の明るさ(照度)と映像光出射側の明るさ(輝度)との比率)がほぼ0である」から、その構成からみて、甲2発明の「視野角」は、可視光領域におけるものであり、本件訂正発明1の「所定の第1の方向に沿って70度未満の第1の視野角」に相当する。 してみれば、甲2発明の「光学シート」(「光制御フィルム」)は、本件訂正発明1の「前記光制御フィルムは、所定の第1の方向に沿って70度未満の第1の視野角を含み、」との要件を満たす。 (キ)第1の材料および第2の材料における光の吸収および/または反射 甲2発明の「可視光吸収赤外光透過材3b」(「第1の材料」)は、「赤外光を透過させるととともに可視光である外光を吸収する機能」を有するものであるから、可視光領域(400nm~700nmの第2範囲)の光を十分に遮蔽するものであり、本件訂正発明1の「前記第1範囲、前記第2範囲および前記第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて少なくとも光の70%を吸収および/または反射する」との要件を満たすから、本件訂正発明1と「前記第1の材料」「は、前記第1範囲、前記第2範囲および前記第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて少なくとも光の70%を吸収および/または反射する」点で共通する。 イ 一致点及び相違点 本件訂正発明1と甲2発明とを対比すると、一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (ア)一致点 「複数の離間した第1の領域、及び第2の領域を含む光制御フィルムであって、各第1の領域は、幅W及び高さH、H/W≧1を有し、 前記第2の領域は、前記第1の領域と交互になった複数の離間した第2の領域区分を含み、 前記第1の領域は第1の材料を含み、前記第2の領域区分は第2の材料を含み、 各第1の領域は、300nm~400nmの第1範囲、400nm~700nmの第2範囲、及び700nm~1200nmの第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて実質的に低い透過率を有し、残りの範囲において実質的に高い透過率を有し、前記光制御フィルムは、所定の第1の方向に沿って70度未満の第1の視野角を含み、 前記第1の材料は、前記第1範囲、前記第2範囲および前記第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて少なくとも光の70%を吸収および/または反射する、 光制御フィルム。」 (イ)相違点 (相違点2-1-1) 「第1の領域」及び「第2の領域」について、本件訂正発明1は、「各第1の領域は、所定の第1の波長範囲において実質的に高い透過率を有し、所定の重複しないかつ可視光に対応する第2の波長範囲において実質的に低い透過率を有し、前記第2の領域は、前記所定の第1及び第2の波長範囲のそれぞれにおいて実質的に高い透過率を有」するのに対し、甲2発明は、そのように特定されていない点。 (相違点2-1-2) 本件訂正発明1は、「前記第1の材料および前記第2の材料のそれぞれ」は、「前記第1範囲、前記第2範囲および前記第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて少なくとも光の70%を吸収および/または反射する」との特性を有するものであるのに対し、甲2発明においては、「光透過性樹脂」(「第2の材料」)は、上記特性を有することが特定されていない点。 ウ 判断 (ア)新規性 上記イのとおりであって、本件訂正発明1は、甲2発明と同一ではない。 (イ)進歩性 事案に鑑み、上記相違点2-1-2について検討する。 a 甲2発明の「光透過性樹脂」(「第2の材料」)は、「映像光および赤外光を透過する」ものであるところ、当該「映像光」は可視光領域の光であることは明らかであり、仮に「光透過性樹脂」(「第2の材料」)が映像光(可視光)に透過性を有しなければ、「映像光源から投射された映像光を制御して観察者側に出射させる透過型スクリーン」として機能しなくなることが技術的に明らかであるから、甲2発明において、「光透過性樹脂」(「第2の材料」)は、可視光(400nm~700nmの第2範囲)、及び赤外光(700nm~1200nmの第3範囲)の波長範囲において、「少なくとも光の70%を吸収および/または反射する」との特性を有するようにすることには阻害要因が存在する。 b さらに、甲2発明の「光学シート」は、「映像光源から投射された映像光を制御して観察者側に出射させる透過型スクリーンに用いられる」ものである。そして、甲2には、甲2発明において、紫外領域の光の透過率をどのように設定するかについて記載も示唆もない。そうすると、甲2発明の「光透過部2」に対して、「紫外線」に対する実質的な吸収性(または反射性)を持たせるような動機づけはない。 c 上記a~bによれば、甲2発明において、当業者が「光透過性樹脂」(第2の材料)を上記相違点2-1-2に係る要件を満たすように設計するよう動機づけられることはないというべきである。この点は、甲1及び甲3~甲7を考慮しても同様である。 してみると、甲2発明において、上記相違点2-1-2に係る本件訂正発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たものではない。 (ウ)異議申立人による意見書(令和5年11月9日提出)での主張について 異議申立人は、意見書(令和5年11月9日提出)において、上記相違点2-1-2に関連して、概略以下の点を主張している。 (主張ア) 甲2発明の「光透過部2」(第2の領域)は、紫外線等により硬化する特徴を有する光透過性樹脂で構成されている(甲2の段落【0017】)。そして、紫外線等により硬化する特徴を有する光透過性樹脂は、紫外光を吸収する物質が残留し、紫外光を吸収する性質を有するものとなっている。そのため、「光透過部2」(第2の領域)に含まれる紫外線を吸収する物質(第2の材料)は、紫外光領域(第1範囲)において「少なくとも光の70%を吸収および/または反射する」ものといえる。 (主張イ) 光制御フィルムの耐候性の向上などのためにその光透過部(第2の領域)に紫外線吸収剤を含有させることは周知技術であることから(甲1、3-4)、甲2発明の光学シート1の耐候性の向上などのために、その光透過部(第2の領域)に紫外光を吸収する材料を含有させることは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。 上記主張アについて検討する。 甲2発明において、仮に「光透過部2」を「紫外線により硬化する光透過性樹脂で構成」した場合、紫外線による硬化を行うために、硬化性材料に紫外線吸収剤を含有させることが動機づけられたとしても、紫外線硬化剤に含有させる紫外線吸収剤の含有量は、硬化反応が効率的に行われる程度に含有されていれば足りるのであり、当該光透過部2を構成する「光透過性樹脂」(第2の材料)が、「少なくとも光の70%を吸収および/または反射する」との要件を満たす程度まで、その含有量を多くする動機づけはない。 上記主張イについて検討する。 甲2発明は、「映像光源から投射された映像光を制御して観察者側に出射させる透過型スクリーンに用いられる光学シート1」の発明であるが、甲2には、当該「光学シート1」の紫外線による耐候性の向上を図ることを課題とすることは明記されていない。また、甲2発明が、特に屋外等、紫外線光量の多い場所で用いることを想定したものであることが明らかであるなど、紫外線による耐候性の向上を図ることという課題が甲2発明に内在しているといえる特段の事情も認められない。してみれば、甲2発明において、「光透過部2」に、耐候性の向上を目的に「少なくとも光の70%を吸収および/または反射する」との特性を有する程度に紫外光を吸収する材料を含有させる動機づけもない。 以上より、上記主張ア~イはいずれも採用できない。 エ 小括 以上のとおり、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえない。 また、他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明、及び、甲1、甲3~甲7に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件訂正発明2 ア 対比 本件訂正発明2と甲2発明とを対比する。 (ア)第1の領域及び第2の領域 上記(2)ア(ア)と同様である。 (イ)光制御フィルム 上記(2)ア(イ)と同様である。 (ウ)第1の材料及び第2の材料 上記(2)ア(エ)と同様である。 (エ)第1の範囲、第2の範囲及び第3の範囲 上記(2)ア(オ)と同様である。 (オ)第1の視野角 上記(2)ア(カ)と同様である。 (カ)第1の材料および第2の材料における光の吸収および/または反射 上記(2)ア(キ)と同様である。 イ 一致点及び相違点 本件訂正発明2と甲2発明とを対比すると、一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (ア)一致点 「複数の離間した第1の領域、及び第2の領域を含む光制御フィルムであって、 前記第2の領域は、前記第1の領域と交互になった複数の離間した第2の領域区分を含み、 前記第1の領域は第1の材料を含み、前記第2の領域区分は第2の材料を含み、 各第1の領域は、300nm~400nmの第1範囲、400nm~700nmの第2範囲、及び700nm~1200nmの第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて実質的に低い透過率を有し、残りの波長範囲において実質的に高い透過率を有し、前記光制御フィルムは、所定の第1の方向に沿って70度未満の第1の視野角を含み、 前記第1の材料は、前記第1範囲、前記第2範囲および前記第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて少なくとも光の70%を吸収および/または反射する、 光制御フィルム。」 (イ)相違点 (相違点2-2-1) 本件訂正発明2は、「前記光制御フィルムの平面に対して垂直に入射する光については、 前記光制御フィルムの平均光透過率が、より短い波長を有する所定の第1の波長範囲において10%未満であり、ここで、前記所定の第1の波長範囲は可視光に対応し、 前記光制御フィルムの平均光透過率が、より長い波長を有する所定の第2の波長範囲において50%超であり、 前記光制御フィルムの前記平面と垂直な線から30度以上で入射する光については、 前記光制御フィルムの平均光透過率が、前記所定の第1及び第2の波長範囲のそれぞれにおいて20%未満であ」るのに対して、甲2発明においては、そのように特定されていない点。 (相違点2-2-2) 本件訂正発明2は、「前記第1の材料および前記第2の材料のそれぞれ」は、「前記第1範囲、前記第2範囲および前記第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて少なくとも光の70%を吸収および/または反射する」との特性を有するものであるのに対し、甲2発明においては、「光透過性樹脂」(「第2の材料」)は、上記特性を有することが特定されていない点。 ウ 判断 (ア)新規性 上記イのとおりであって、本件訂正発明2は、甲2発明と同一ではない。 (イ)進歩性 事案に鑑み、上記相違点2-2-2について検討する。 上記相違点2-2-2は、上記(2)イ(イ)の上記相違点2-1-2と同様であるから、その判断は、上記(2)ウ(イ)、(ウ)で述べたとおりである。 エ 小括 以上のとおり、本件訂正発明2は、甲2に記載された発明であるとはいえない。 また、本件訂正発明2は、他の相違点について検討するまでもなく、甲2に記載された発明、及び、甲1、甲3~甲7に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件訂正発明3 ア 対比 本件訂正発明3と甲2発明とを対比する。 (ア)第1の領域及び第2の領域 上記(2)ア(ア)と同様である。 (イ)光制御フィルム 上記(2)ア(イ)と同様である。 (ウ)第1の材料及び第2の材料 上記(2)ア(エ)と同様である。 (エ)第1の範囲、第2の範囲及び第3の範囲 上記(2)ア(オ)と同様である。 (オ)第1の視野角 上記(2)ア(カ)と同様である。 (カ)第1の材料および第2の材料における光の吸収および/または反射 上記(2)ア(キ)と同様である。 イ 一致点及び相違点 本件訂正発明3と甲2発明とを対比すると、一致点及び相違点は、以下のとおりである。 (ア)一致点 「複数の離間した第1の領域、及び第2の領域を含む光制御フィルムであって、 前記第2の領域は、前記第1の領域と交互になった複数の離間した第2の領域区分を含み、 前記第1の領域は第1の材料を含み、前記第2の領域区分は第2の材料を含み、 各第1の領域は、300nm~400nmの第1範囲、400nm~700nmの第2範囲、及び700nm~1200nmの第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて実質的に低い透過率を有し、残りの波長範囲において実質的に高い透過率を有し、前記光制御フィルムは、所定の第1の方向に沿って第1の視野角を含み、 前記第1の材料は、前記第1範囲、前記第2範囲および前記第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて少なくとも光の70%を吸収および/または反射する、 光制御フィルム。」 (イ)相違点 (相違点2-3-1) 本件訂正発明3は、「第1の視野角」が「70度未満の」ものであり、「前記光制御フィルムに入射する光の入射角が前記光制御フィルムの平面に対して90度から60度に変化するとき、前記光制御フィルムの平均光透過率は、 より短い波長を有する所定の第1の波長範囲においては、10%未満、及び 可視光に対応しかつより長い波長を有する所定の第2の波長範囲においては、40%超、変化」するのに対して、甲2発明においては、そのように特定されていない点。 (相違点2-3-2) 本件訂正発明3は、「前記第1の材料および前記第2の材料のそれぞれ」は、「前記第1範囲、前記第2範囲および前記第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて少なくとも光の70%を吸収および/または反射する」との特性を有するものであるのに対し、甲2発明においては、「光透過性樹脂」(「第2の材料」)は、上記特性を有することが特定されていない点。 ウ 判断 (ア)新規性 上記イのとおりであって、本件訂正発明3は、甲2発明と同一ではない。 (イ)進歩性 事案に鑑み、上記相違点2-3-2について検討する。 上記相違点2-3-2は、上記(2)イ(イ)の上記相違点2-1-2と同様であるから、その判断は、上記(2)ウ(イ)、(ウ)で述べたとおりである。 エ 小括 以上のとおり、本件訂正発明3は、甲2に記載された発明であるとはいえない。 また、本件訂正発明3は、他の相違点について検討するまでもなく、甲2に記載された発明、及び、甲1、甲3~甲7に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件訂正発明4~6 本件訂正発明4~6は、本件訂正発明1~3のいずれかの構成を全て備えるものであるから、本件訂正発明4~6も、少なくとも上記(2)~(4)のいずれかと同じ理由により、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2発明において、本件訂正発明4~6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 3 明確性要件違反 令和5年6月5日付け取消理由通知書で通知した明確性要件違反については、本件訂正により解消された。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての当合議体の判断 1 明確性要件違反 (1)「前記光制御フィルムは、所定の第1の方向に沿って70度未満の第1の視野角を含み」(請求項1~3) 異議申立人は、特許異議申立書の4(2)ア(ア)(第17~18頁)において、概略、以下のア~イの旨主張している。 (主張ア) 本件訂正発明1~3は、いずれも、「前記光制御フィルムは、所定の第1の方向に沿って70度末満の第1の視野角を含み」と規定するところ、その規定の意義が不明確である。 本件特許明細書の【0025】の記載から、請求項1~3の「第1の視野角」は、ピーク透過率の60%以内、50%以内又は40%以内のうちのいずれに基づいて定義されるものであるのか、不明である。視野角の判定の基礎となる光制御フィルムの透過率の意義及び測定方法を特定することもできない。 (主張イ) 請求項1~3では、「第1の視野角」がどの波長範囲におけるものであるのかについて特定されていない。そのため、請求項1~3の「視野角」は、どのような波長範囲における視野角であるのかが不明である。この点、請求項1~3の「第1の視野角」は、その「第1の視野角」がどの波長範囲におけるものであるのかについて規定されていないのであるから、少なくとも第1の波長範囲、第2の波長範囲、300nm~400nmの第1範囲、400nm~700nmの第2範囲及び700nm~1200nmの第3範囲のすべてを含む波長範囲における視野角である必要がある。 上記主張アについて検討する。 本件訂正発明における「視野角」について、本件特許明細書には、「「視野角」は、本明細書において、構造体の平面の法線に対して、ルーバ構造体が実質的に透過性である角度の範囲として定義される。」(【0025】)との記載、【図2】やその関連記載(【0028】)の「溝230及び/又はリブ280の間隔及び形状が視野角2θvを決定する」との記載等から、本件訂正発明において、「視野角」は、実質的には、「複数の離間した第1の領域」の幅、高さ、ピッチ等によって幾何学的に定義できることが理解される。 一方、本件訂正発明の「光制御フィルム」は、その発明特定事項より、特定の波長範囲の光について、その透過率に入射角依存性、すなわち、視野角の角度の範囲内においては実質的に透過性とし、視野角の角度の範囲外では実質的に非透過性とすることを意図したものであることが理解される。そして、実際の光制御フィルムにおいては、幾何学的に定義される視野角を境に透過率が100%から0%に変化するのではないため、幾何学的に視野角を定義することに馴染まない場合も十分に想定されるところ、【0025】の「光制御フィルムの視野角は、光制御フィルムの透過率がピーク透過率の60%以内、又は50%以内、又は40%以内である角度の範囲として定義することができる」との記載は、光制御フィルムの光学特性(光透過率)によって視野角を定義するための何らかの閾値を例示したものであることは当業者が当然に理解することである。しかるところ、視野角を幾何学的に定義するか、光学特性により定義するか、また、光学特性により定義する際の閾値を「ピーク透過率の60%以内、50%以内又は40%以内のうちのいずれ」とするかは、その用途等に応じて当業者は解釈し得るから、これが一義的に定まっていないからといって直ちに、本件訂正発明が第三者に不測の不利益をもたらすほど不明確であるとまではいえない。 上記主張イについて検討する。 異議申立人が主張するとおり、請求項1~3では、「第1の視野角」がどの波長範囲におけるものであるのかについて特定されていない。したがって、本件訂正発明の「第1の視野角」が、「少なくとも第1の波長範囲、第2の波長範囲、300nm~400nmの第1範囲、400nm~700nmの第2範囲及び700nm~1200nmの第3範囲のうち特定の波長範囲に前記「第1の視野角」に係る波長範囲が限定されていると理解することは文言上できない。 そうすると、上記主張イは、前提に誤りがあるから採用できない。 以上より、上記主張ア~イはいずれも採用できない。 (2)「前記第2の領域は、前記第1の領域と交互になった複数の離間した第2の領域区分を含み、・・・前記第2の領域区分は第2の材料を含み」(請求項1-3) 異議申立人は、特許異議申立書の4(2)ア(イ)(第19~20頁)において、概略、以下の旨主張している。 (主張) 本件訂正発明1~3は「前記第2の領域は、前記第1の領域と交互になった複数の離間した第2の領域区分を含み、・・・前記第2の領域区分は第2の材料を含み」と規定するところ、その規定の意義が不明確である。 具体的には、下図に示すように、第2の領域が、第2の領域区分と、第2の領域区分を相互接続するランドと、を有するとともに、第2の材料が、第2の領域区分だけでなく、ランドを含む第2の領域の全体に含まれるような場合に、「前記第2の領域は、前記第1の領域と交互になった複数の離間した第2の領域区分を含み、・・・前記第2の領域区分は第2の材料を含み」といえるのか否かについて明確でない。 [図:0001417593000006.jpg] (当合議体注:上図は異議申立人が特許異議申立書で示したものである。) 上記主張について検討する。 本件訂正発明の「前記第2の領域は、前記第1の領域と交互になった複数の離間した第2の領域区分を含み、・・・前記第2の領域区分は第2の材料を含み」との記載自体は明確であり、異議申立人が主張する「第2の材料が、第2の領域区分だけでなく、ランドを含む第2の領域の全体に含まれるような場合」であっても、上図のように「第2の領域区分」を設定すれば「前記第2の領域は、前記第1の領域と交互になった複数の離間した第2の領域区分を含み」、「前記第2の領域区分は第2の材料を含み」との本件訂正発明の要件を文言上満たすことが明らかである。さらに、本件特許明細書には、特許請求の範囲の記載の上記文言どおりの解釈以外の解釈を採用すべきとする特段の記載もない。 よって、上記主張を採用することはできない。 (3)「前記第1の材料および前記第2の材料は・・・少なくとも光の70%を吸収および/または反射する」(請求項1-3) 異議申立人は、特許異議申立書の4(2)ア(ウ)(第20~22頁)において、概略、以下の旨主張している。 (主張ア) 本件訂正発明1-3は、いずれも、「前記第1の材料および前記第2の材料は、・・・少なくとも光の70%を吸収および/または反射する」と規定するところ(以下「本件規定」という。)、本件規定の意義が不明確である。 具体的には、本件規定における「光の70%を吸収および/または反射する」が、第1の領域又は第2の領域区分に含まれる「第1の材料」又は「第2の材料」そのものを意味するのか、それとも、第1の材料又は第2の材料を含む「第1の領域」又は「第2の領域区分」を意味するのか、が不明である。 (主張イ) さらに、本件規定における「光の70%を吸収および/または反射する」は、どのような条件で測定されるものであるのかが明らかでなく、「光の70%を吸収および/または反射する」の意義も明確でない。 上記主張アについて検討する。通常、ある材料それ自体が「少なくとも光の70%を吸収および/または反射する」との特性を有することを定義するためには、少なくとも当該材料の濃度や光路長等の条件が必須であることが技術常識であるところ、これらの条件が請求項や、本件特許明細書に何ら記載されていないことからみて、本件規定を、「第1の材料」、「第2の材料」それ自体の特性を特定するものと解するのは相当でない。 そうすると、本件規定における「光の70%を吸収および/または反射する」は、第1の材料又は第2の材料を含む「第1の領域」又は「第2の領域区分」を意味すると解するのが相当である。 次に、上記主張イについて検討すると、本件訂正発明は「光制御フィルム」の発明であるから、本件規定における「吸収および/または反射」は「光制御フィルム」において測定されるものと解することが自然であって、光制御フィルムにおける「第1の領域」、「第2の領域区分」に実質的に光が入射される際の対象の波長範囲(第1範囲、第2範囲、第3範囲)における「吸収および/または反射」率の平均値を採用すれば足りることは明らかであるから、詳細な測定条件が一義的に定まらなかったとしても、第三者に不測の不利益をもたらすほどに、本件訂正発明が明確でないとはいえない。 (4)「平均光透過率」(請求項2-3) 異議申立人は、特許異議申立書の4(2)ア(エ)(第22頁)において、概略、以下の旨主張している。 (主張) 本件訂正発明2-3は、いずれも、「平均光透過率」について規定するところ、その「平均光透過率」の意義が不明確である。本件特許明細書には、「平均光透過率」の定義や測定方法に関する記載は一切存在しない。そのため、本件特許明細書に接した当業者は、「平均光透過率」の意義や、光学的な入射条件や測定角度や試料の形状などの測定条件を含む「平均光透過率」の測定方法を特定することができない。 上記主張について検討する。請求項2、3で特定される「平均光透過率」について、請求項の記載から、「所定の第1の波長範囲」または「所定の第2の波長範囲」において測定されるものであることは明らかである。そして、ある波長範囲における「平均光透過率」とは、請求項の記載それ自体から、当該波長範囲にわたって「光透過率」を測定して得られた値の「平均」と解することが相当といえ、本件特許明細書を参照しても、このように解することが相当でないとする根拠も見いだせない。 したがって、上記主張は採用できない。 2 サポート要件違反 (1)本件訂正発明1 異議申立人は、特許異議申立書の4(2)イ(ア)(第25~26頁)において、概略、以下の旨主張している。 (主張ア) 本件訂正発明1は、「前記光制御フィルムは、所定の第1の方向に沿って70度未満の第1の視野角を含み」と規定する。本件訂正発明1の「第1の視野角」は、少なくとも第1の波長範囲、第2の波長範囲、300nm~400nmの第1範囲、400nm~700nmの第2範囲及び700nm~1200nmの第3範囲のすべてを含む波長範囲における視野角であると解釈され、すべての波長範囲における視野角が70度未満であることを規定するものといえる。しかし、当業者は、「前記光制御フィルムは、所定の第1の方向に沿って70度未満の第1の視野角を含み」との構成に基づく作用効果を認識することはできず、ひいては、どのように本件訂正発明1の課題が解決できるのか認識することができない。 (主張イ) 本件訂正発明1は、「前記第1の材料および前記第2の材料」は、「前記第1範囲、前記第2範囲および前記第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて少なくとも光の70%を吸収および/または反射する」と規定するが、本件特許明細書の記載からは、当業者は、構成に基づく作用効果を認識することはできず、ひいては、どのようにして本件訂正発明1の課題が解決できるのか認識することができない。 上記主張アについて検討する。 当該主張は、上記1(1)における「主張イ」に関して説示したとおりであって、その前提が誤ったものであるから、採用することはできない。 上記主張イについて検討する。 本件訂正発明の課題は、本件特許明細書の記載より、「異なる波長範囲に対して異なる視野角を有する光制御フィルム」(【0004】)を提供すること、と認められる。そして、本件訂正発明1は、「複数の離間した第1の領域、及び第2の領域を含む光制御フィルム」であって、「各第1の領域は、幅W及び高さH、H/W≧1を有し、各第1の領域は、所定の第1の波長範囲において実質的に高い透過率を有し、所定の重複しないかつ可視光に対応する第2の波長範囲において実質的に低い透過率を有し、前記第2の領域は、前記所定の第1及び第2の波長範囲のそれぞれにおいて実質的に高い透過率を有し、前記第2の領域は、前記第1の領域と交互になった複数の離間した第2の領域区分を含み」、「各第1の領域は、300nm~400nmの第1範囲、400nm~700nmの第2範囲、及び700nm~1200nmの第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて実質的に低い透過率を有し、残りの範囲において実質的に高い透過率を有し、前記光制御フィルムは、所定の第1の方向に沿って70度未満の第1の視野角を含み」との構成を有することで、本件訂正発明の課題を解決できることが理解できる。 したがって、本件訂正発明1は、発明の課題を解決できると認識できる特定事項を有し、さらに「前記第1の材料および前記第2の材料のそれぞれは、前記第1範囲、前記第2範囲および前記第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて少なくとも光の70%を吸収および/または反射する」との特定も有するものであるから、当然、発明の課題を解決できると認識できる。 (2)本件訂正発明2、3 異議申立人は、特許異議申立書の4(2)イ(イ)、(ウ)(第27~28頁)における主張は、概略、上記(1)と同様であり、上記(1)で説示したとおりであるから、異議申立人の主張を採用することはできない。 (3)本件訂正発明4 異議申立人は、特許異議申立書の4(2)イ(エ)(第29~30頁)において、上記(1)の点に加え、以下の旨主張している。 (主張) 本件訂正発明4は、各第1の領域は、700nm~1200nmの範囲である第1の波長範囲において実質的に高い透過率を有し、400nm~700nmの範囲である第2の波長範囲において実質的に低い透過率を有し、第2の領域は、第1及び第2の波長範囲のそれぞれにおいて実質的に高い透過率を有することを規定する。しかし、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、この規定に対応する技術事項を示す記載は存在しない。 上記主張について検討する。 本件特許明細書には「光制御フィルムは、複数の離間した第1の領域を含み、各第1の領域は、約300nm~約400nmの第1の波長範囲、約400nm~約700の第2の波長範囲、及び約700nm~約1200nmの第3の波長範囲のうちの1つ又は2つにおいて実質的に低い透過率を有し、残りの波長範囲において実質的に高い透過率を有する。・・・中略・・・いくつかの場合では、光制御フィルムはまた、複数の第1の領域と交互になった複数の第2の領域も含む。このような場合には、各第2の領域は、第1の領域が実質的に低い透過率を有する各波長範囲において実質的に高い透過率を有し得る。」(【0005】)と記載され、当該記載から、「各第1の領域」が「実質的に低い透過率」、「実質的に高い透過率」を示す波長範囲を、「約300nm~約400nmの波長範囲」、「約400nm~約700の波長範囲」、「約700nm~約1200nmの波長範囲」のうちから任意に選択し得ること、「各第1の領域」が「実質的に低い透過率」を有するものとして選択した波長範囲において、「第2の領域」は、実質的に高い透過率を有するものとすることは、当業者が当然に把握できることといえる。また、本件特許明細書の【0013】、【0016】の記載等から、「第2の領域」を、「第1の領域」が「実質的に高い透過率」を有する波長範囲で「実質的に高い透過率」を有する形態とすることも把握できる。 請求項4で特定される事項は、この具体的な態様の一つを特定したものであって、本件訂正発明4は、本件特許明細書の記載から本件訂正発明の課題を解決できると認識できるものであり、発明の詳細な説明に記載されたものといえる。 (4)本件訂正発明5~6 異議申立人が、特許異議申立書の4(2)イ(オ)~(カ)(第30頁)において主張することは、上記(1)~(3)と同様であり、既に説示したとおりである。 3 実施可能要件違反 異議申立人は、特許異議申立書の4(2)ウ(第31頁)において、概略、以下の旨主張している。 (主張ア) 特に、本件訂正発明1~3については、すべての波長範囲において70度未満の第1の視野角を有する構成をとる場合に、どのようにして「異なる波長範囲に対して異なる視野角を有する光制御フィルム」を提供すればよいのかが認識できない。 (主張イ) また、本件訂正発明2については、どのようにすれば、第2の波長範囲において、光制御フィルムの平面に対して垂直に入射する光の平均光透過率を50%超として、光制御フィルムの平面に対して30度以上で入射する光の平均光透過率を20%末満とすればよいのかが認識できない。 上記主張アについては、上記1(1)における「主張イ」に関して説示したとおりであって、その前提が誤ったものであるから、採用することはできない。 上記主張イは、本件訂正の上記訂正2-2によって解消されたものである。 4 新規事項の追加 異議申立人は、特許異議申立書の4(3)(第32~34頁)において、概略、以下の旨主張している。 (主張) 令和4年1月4日付け手続補正書によってなされた請求項4に係る補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてなされたものでない。 上記主張については、上記2(3)で説示したとおりであって、請求項4で特定される事項は、当初明細書等の【0005】、【0013】、【0016】等より当業者が把握できるものであって、新たな技術的事項を導入したものとはいえない。 したがって、上記主張を採用できない。 第7 令和6年6月6日に提出された意見書における異議申立人の主張 令和6年6月6日に提出された意見書において、異議申立人は、概略、以下の旨主張している。 (主張) 請求項1は、「各第1の領域は、所定の第1の波長範囲において実質的に高い透過率を有し、所定の重複しないかつ可視光に対応する第2の波長範囲において実質的に低い透過率を有し、前記第2の領域は、前記所定の第1及び第2の波長範囲のそれぞれにおいて実質的に高い透過率を有し」との規定を有し、請求項1~3は、「各第1の領域は、300nm~400nmの第1範囲、400nm~700nmの第2範囲、及び700nm~1200nmの第3範囲のうちの1つ又は2つにおいて実質的に低い透過率を有し、残りの範囲において実質的に高い透過率を有し」との規定を有する。しかし、「実質的に低い透過率」及び「実質的に高い透過率」との記載について、本件特許明細書には、「実質的に低い透過率」及び「実質的に高い透過率」を説明する記載は存在せず、上述の規定の意義は不明確である。 上記主張について検討する。 本件訂正発明の「光制御フィルム」は、「異なる波長範囲に対して異なる視野角を有する光制御フィルム」(【0004】)に関するものである。そして、本件特許明細書の【0025】における「視野角」に関する記載から、視野角外では、ある波長範囲の光を実質的に透過させないことを想定していることが解され、このような入射角依存性を実現するためには、本件訂正発明における「実質的に高い透過率」や「実質的に低い透過率」は、透過率の相対的な関係を意味するではなく、絶対的な値としての意味を有するものであることは当業者に明らかである。この点は、例えば、本件特許明細書の【0039】や【0042】において例示される光透過率の具体的な値からも看取されることである。そして、「実質的に低い透過率」や「実質的に高い透過率」の閾値は用途等によって当業者が適宜に定めるものであり、これが請求項において一義的に定められていないからといって、本件訂正発明が第三者に不測の不利益をもたらすほどに不明確であるということはできない。 よって、上記意見書での主張は採用できない。 第8 むすび 請求項1~6に係る特許は、いずれも、令和5年6月5日付け及び令和6年1月15日付け取消理由通知書に記載した取消しの理由並びに特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。 また、他に請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700055

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