特許異議申立
2024-701090
高分散二酸化ケイ素を製造する方法
- 審判番号
- 2024-701090
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-571723
- 登録番号
- 7479849
- 請求日
- 2024年11月08日
- 審決日
- 2025年01月31日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】浅野 真理
- 【異議申立人】金田 綾香
- 審判長/審判官
- 審判長 三崎 仁
- 審判官 小野 久子
- 審判官 後藤 政博
- 分類
- P1652.113-Y (C01B) / P1652.121-Y (C01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7479849号発明「高分散二酸化ケイ素を製造する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7479849号の請求項1~4、6~10、13に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7479849号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)7月13日を国際出願日として出願した特願2019-571723号であって、令和6年4月26日にその特許権の設定登録がされ、同年5月9日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1~4、6~10、13に係る特許に対して、同年11月8日に特許異議申立人金田綾香(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第7479849号の請求項1~13の特許に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明13」といい、それらをまとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
微粉化二酸化ケイ素の製造方法であって、
-炭素を含有する少なくとも1つのケイ素化合物と、炭素を含有しない少なくとも1つのケイ素化合物との少なくとも2つのケイ素化合物の混合物をSi源として使用し、
-燃料ガスを供給し、
-酸素含有源を供給し、
-前記ケイ素化合物と、前記燃料ガスと、前記酸素含有源とを含有するこの混合物のC/Siモル比が、10/BET~35/BETであり、および
この混合物のモルH/Cl比が、0.45+(BET/600)~0.95+(BET/600)であり、
BETは、BET法(DIN ISO9277 に準拠)によって測定した、製造される熱分解法二酸化ケイ素の比表面積であり、
-この混合物を主流として反応空間中へ導入し、強熱し、それを反応させ、ならびに
-得られた固体を単離すること、
を含んでなる、方法。
【請求項2】
使用される前記炭素含有ケイ素化合物が、メチルトリクロロシラン(MTCS)、メチルジクロロシラン(MDCS)、またはMTCSとMDCSとの混合物を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
使用される前記炭素非含有ケイ素化合物が、四塩化ケイ素(STC)、トリクロロシラン(TCS)、ジクロロシラン(DCS)、または前記化合物のうち少なくとも2つの混合物を含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
使用される前記Si源が、少なくとも3種のケイ素化合物の混合物を含んでなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
利用した前記Si源が、四塩化ケイ素、トリクロロシラン、ジクロロシラン、およびメチルトリクロロシランを含んでなる混合物を含んでなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
使用される前記燃料ガスが、水素を含んでなる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
使用される前記酸素含有源が、空気を含んでなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
火炎が、二次ガスによって包囲されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
使用される前記二次ガスが、空気を含んでなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記主流に対する二次ガスの体積比が、0.01~0.4である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記二次ガスの流速と前記主流の流速との比率が、0.1~0.8である、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応空間への導入における前記二次ガスが、前記主流の温度まで加熱されている、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
得られる単離された固体が、高温ガスで処理される、請求項1~12のいずれか一項以上に記載の方法。」
第3 特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
申立人が主張する特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。
ここで、申立人が提出した証拠方法は、次のものである。
甲第1号証:特開2006-193403号公報
甲第2号証:特開2006-193404号公報
甲第3号証:特表2012-511416号公報
甲第4号証:令和5年1月16日付けの手続補正書(方式)(特願201
9-571723号)
甲第5号証:令和3年12月13日付けの意見書(特願2019-571
723号)
(以下、各甲号証をそれぞれ「甲1」などという。)
(1)申立理由1(甲1を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如)
本件発明1~4、6~10、13は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3項に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
本件発明10は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(甲2を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如)
本件発明1~4、6~10、13は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3項に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
本件発明10は、甲2に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)申立理由3(甲3を主たる証拠とした新規性欠如)
本件発明1~4、6~9、13は、甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3項に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2 各甲号証の記載事項
(1)甲1の記載事項
甲1には、「熱分解法により製造された二酸化ケイ素粉末」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている(なお、下線は当審が付した。以下、同様。)。
ア「【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の二酸化ケイ素粉末の製造方法であって、
- ケイ素化合物の混合物を、別個に又は一緒に蒸発させ、その蒸気をキャリヤガスにより混合室に移送し、その際、
- 第一成分としてのSiCl4は混合物に対して60~100質量%の割合であり、
- H3SiCl、H2SiCl2、HSiCl3、CH3SiCl3、(CH3)2SiCl2、(CH3)3SiCl、(n-C3H7)SiCl3を含む群から選択される第二成分は混合物に対して0~40質量%であり、
- 前記のものとは別個に、燃焼ガス、場合により酸素富化されかつ/又は予熱されていてよい一次空気を混合室に移送し、
- ケイ素化合物の蒸気、燃焼ガス及び一次空気よりなる混合物を燃焼器中で着火させ、そしてその火炎を反応室で燃焼に用い、
- その火炎を取り囲む二次空気を反応室に取り込み、その際、二次空気/一次空気の比率は0.05~4であり、
- 引き続き固体を気体状物質から分離し、そして次いでその固体を水蒸気で処理し、その際、
- 酸素全量は、燃焼ガス及びケイ素化合物の完全な燃焼のために少なくとも十分であり、かつ
- ケイ素化合物、燃焼ガス、一次空気及び二次空気からなる出発物質の量は、1390~1450℃の断熱火炎温度Tadが得られるように選択され、その際、
Tadは、出発物質温度+部分反応の反応エンタルピーの合計/反応室から排出される、二酸化ケイ素、水、塩化水素、二酸化炭素、酸素、窒素及び場合によりキャリヤガス(これが空気又は窒素でない場合)を含む物質の熱容量であり、その際、前記物質の1000℃での比熱を基礎とする
ことを特徴とする方法。」
イ「【実施例】
【0028】
BET表面積はDIN66131に従って測定される。
・・・
【0031】
実施例1:二酸化ケイ素粉末の製造
180kg/時間の四塩化ケイ素を蒸発させ、そして窒素を用いて燃焼器の混合室に移送する。同時に58Nm3/時間の水素及び190Nm3/時間の一次空気を混合室に添加する。該混合物は90℃の温度を有する。該混合物を着火させ、そしてその火炎を反応室で燃焼に用いる。燃焼器からの排出速度は30.3m/秒である。更にその火炎を取り囲む60Nm3/時間の二次空気を反応室に取り込む。二次空気と一次空気との比率は0.32である。
【0032】
反応ガス及び生じた二酸化ケイ素を、低圧の印加により冷却装置を通して吸引し、そしてその際には100~160℃の値にまで冷却される。フィルタ又はサイクロン中で固体を排ガス流と分離し、そして引き続き560℃の温度で水蒸気により処理する。
【0033】
実施例2~9は同様に実施する。
【0034】
第2表は、実施例1~9の出発物質と量を示すものである。
・・・
【0036】
実施例1~5は、本発明による粉末を生ずる。実施例6~9は比較例である。
・・・
【0043】
第4表は、製造された二酸化ケイ素粉末の分析データ並びに商慣習で得られる熱分解法により製造された二酸化ケイ素粉末(実施例10)の分析データを示すものである。」
ウ「【0050】
【表2】
[図:0001420366000001.jpg]
・・・
【0052】
【表4】
[図:0001420366000002.jpg]
」
(2)甲2の記載事項
甲2には、「熱分解法により製造された二酸化ケイ素粉末及びこの粉末を含有するシリコーンシーラント」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
ア「【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の二酸化ケイ素粉末の製造方法であって、
- ケイ素化合物の混合物を、別個に又は一緒に蒸発させ、その蒸気をキャリヤガスにより混合室に移送し、その際、
- 第一成分としてのSiCl4は混合物に対して60~95質量%の割合であり、
- H3SiCl、H2SiCl2、HSiCl3、CH3SiCl3、(CH3)2SiCl2、(CH3)3SiCl、(n-C3H7)SiCl3を含む群から選択される第二成分は混合物に対して5~40質量%であり、
- 前記のものとは別個に、燃焼ガス、場合により酸素富化されかつ/又は予熱されていてよい一次空気を混合室に移送し、
- 塩化ケイ素の蒸気、燃焼ガス及び一次空気よりなる混合物を燃焼器中で着火させ、そしてその火炎を反応室で燃焼に用い、
- その火炎を取り囲む二次空気を反応室に取り込み、その際、二次空気/一次空気の比率は0.05~3、有利には0.15~2であり、
- 引き続き固体を気体状物質から分離し、そして次いでその固体を250℃~750℃で水蒸気により処理し、その際、
- 酸素全量は、燃焼ガス及びケイ素化合物の完全な燃焼のために少なくとも十分であり、かつ
- ケイ素化合物、燃焼ガス、一次空気及び二次空気からなる出発物質の量は、1670~1730℃の断熱火炎温度Tadが得られるように選択され、その際、
Tadは、出発物質温度+部分反応の反応エンタルピーの合計/反応室から排出される、二酸化ケイ素、水、塩化水素、二酸化炭素、酸素、窒素及び場合によりキャリヤガス(これが空気又は窒素でない場合)を含む物質の熱容量であり、その際、前記物質の1000℃での比熱を基礎とする
ことを特徴とする方法。」
イ「【実施例】
【0030】
BET表面積はDIN66131に従って測定される。
・・・
【0032】
二酸化ケイ素粉末の製造
実施例1:
100kg/時間の四塩化ケイ素及び5kg/時間のトリクロロシラン及び35kg/時間のメチルトリクロロシランを蒸発させ、そして窒素を用いて燃焼器の混合室に移送する。同時に35Nm3/時間の水素及び155Nm3/時間の一次空気を混合室に添加する。該混合物は90℃の温度を有する。該混合物を着火させ、そしてその火炎を反応室で燃焼に用いる。更にその火炎を取り囲む25Nm3/時間の二次空気を反応室に取り込む。
【0033】
反応ガス及び生じた二酸化ケイ素を、低圧の印加により冷却装置を通して吸引し、そしてその際には100~160℃の値にまで冷却される。フィルタ又はサイクロン中で固体を排ガス流と分離し、そして引き続き550℃の温度で水蒸気により処理する。
【0034】
実施例2~11は同様に実施する。
【0035】
第2表は、実施例1~11の出発物質と量を示すものである。第3表は、反応エンタルピー、熱容量及び断熱火炎温度についての計算値を示すものである。
【0036】
第4表は、製造される二酸化ケイ素粉末の分析データ並びに商慣習で得られる熱分解法により製造された2種の二酸化ケイ素粉末(実施例12及び13)の分析データを示すものである。
【0037】
実施例1~5は、本発明による粉末を生ずる。実施例5~10は比較例である。」
ウ「【0060】
【表2】
[図:0001420366000003.jpg]
・・・
【0062】
【表4】
[図:0001420366000004.jpg]
」
(3)甲3の記載事項
甲3には、「小規模製造工場で製造される発熱性ケイ酸」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
ア「【請求項12】
反応器内の炎中でケイ素含有反応ガスを反応させることによりヒュームドシリカを製造する方法であって、前記反応ガス中の有機非ケイ素化合物の含量が5モル%未満であることを特徴とする方法。」
イ「【実施例】
【0149】
(実施例1)
ガス混合物は、ガス速度58m/秒のノズルから燃焼チャンバの上端のノズルを介してバーナーチャンバに入り、前記燃焼チャンバの長さは4,650mmであり、断面積は0.71m2であり、圧力は外気圧と同程度であり、ガス混合物の温度は100℃~200℃のであり、反応領域の長さは3,875mmであり、ガス混合物が燃焼チャンバに導入される速度は2,085m3(STP)/時間であり、ガス混合物(メチルトリクロロシラン0.049モル%、水素0.019モル%、酸素0.17モル%、及び窒素0.70モル%を含む)は、1,000℃~2,000℃で前記燃焼チャンバの入り口にて反応する。生成物を前記燃焼チャンバから吸引し、200℃未満に冷却し、形成されたヒュームドシリカからメッシュフィルタを通して形成された塩化水素ガスを除去し、多段階吸収及び脱離プロセスにおいて乾燥塩化水素ガスを回収し、過剰の塩素ガスを還元させ、オフガスをクリーニングし、400℃~800℃の熱ガスを用いて流動床において残留塩化水素及び他の揮発性化合物を除去した後、以下のヒュームドシリカが得られる:BET比表面積が150m /gであり、10kgの紙袋に袋詰めした後のタップ密度が43g/Lであり、4重量%の水分散液のpHが4.2であり、40μm超のMocker法による篩残分が0.003重量%であり、シリコーンオイル中の増粘作用η/η0が3.5であり、0.3重量%、温度25℃、pH10で超音波分散させた後、173°の後方散乱角でMalvern Zetasizer Nano ZS(登録商標)を用いて測定したときの平均流体力学的球相当径が220nmである。
【0150】
(実施例2)
予め混合されているガス混合物は、ガス速度73m/秒のノズルから燃焼チャンバの上端のノズルを介してバーナーチャンバに入り、前記燃焼チャンバは、その時点の外気圧に対して50mbar未満のゲージ圧を有し、温度が100℃~200℃である前記ガス混合物は、1,000℃~2,000℃で燃焼チャンバ内にて反応し、前記燃焼チャンバ内の反応物質は、90体積%超がメチルトリクロロシランであるシラン6体積%と、環境由来の空気88体積%と(空気の94体積%程度はノズルから供給され、6体積%程度は、燃焼チャンバの上端においてノズルの外側に存在する更なる供給装置から供給される)、燃焼ガス5体積%(燃焼ガスは、90体積%超の水素ガスを含有する)とを含む。生成物を前記燃焼チャンバから吸引し、200℃未満に冷却し、形成されたヒュームドシリカからメッシュフィルタを通して形成された塩化水素ガスを除去し、多段階吸収及び脱離プロセスにおいて乾燥塩化水素ガスを回収し、過剰の塩素ガスを還元させ、オフガスをクリーニングし、400℃~800℃の熱ガスを用いて流動床においてヒュームドシリカを精製した後、以下のヒュームドシリカが得られる:BET比表面積が150m2/gであり、10kgの紙袋に袋詰めした後のタップ密度が40g/Lであり、4重量%の水分散液のpHが4.1であり、40μm超のMocker法による篩残分が0.005重量%であり、シリコーンオイル中の増粘作用η/η0が4.0であり、0.3重量%、温度25℃、pH10で超音波分散させた後、173°の後方散乱角でMalvern Zetasizer Nano ZS(登録商標)を用いて測定したときの平均流体力学的球相当径が220nmである。
【0151】
(実施例3)
ガス混合物は、投入速度1,630m3(STP)/時間で、ガス速度34m/秒のノズルから燃焼チャンバの上端のノズルを介してバーナーチャンバに入り、前記ガス混合物は、メチルトリクロロシラン4.9モル%、水素5.8モル%、二酸化炭素1.9モル%、酸素17モル%、及び窒素70モル%をガスとして含み、前記燃焼チャンバの体積は1.7m3であり、高さに対する体積の比は0.38m2であり、断面積は0.38m2であり、前記ガス混合物は、1,000℃~2,000℃で燃焼チャンバ内にて反応する。生成物を前記燃焼チャンバから吸引し、200℃未満に冷却し、形成されたヒュームドシリカからメッシュフィルタを用いて形成された塩化水素ガスを除去し、多段階吸収及び脱離プロセスにおいて乾燥塩化水素ガスを回収し、過剰の塩素ガスを還元させ、オフガスをクリーニングし、400℃~800℃の熱ガスを用いて流動床においてヒュームドシリカを精製した後、以下のヒュームドシリカが217kg/時間(年間製造力8,864時間で1年間当たり1,920トンに相当)得られる:BET比表面積が150m2/gであり、10kgの紙袋に袋詰めした後のタップ密度が40g/Lであり、4重量%の水分散液のpHが4.1であり、40μm超のMocker法による篩残分が0.005重量%であり、シリコーンオイル中の増粘作用η/η0が6.5であり、未架橋不飽和ポリエステル樹脂中の増粘作用η/η0が4.5であり、0.3重量%、温度25℃、pH10で超音波分散させた後、173°の後方散乱角でMalvern Zetasizer Nano ZS(登録商標)を用いて測定したときの平均流体力学的球相当径が220nmである。
【0152】
(実施例4)
ガス混合物は、投入速度1,630m3(STP)/時間で、ガス速度34m/秒のノズルから燃焼チャンバの上端のノズルを介してバーナーチャンバに入り、前記ガス混合物は、メチルトリクロロシラン4.9モル%、水素5.8モル%、酸素17モル%、及び窒素71.9モル%をガスとして含み、前記燃焼チャンバの体積は1.7m3であり、高さに対する体積の比は0.38m2であり、断面積は0.38m2であり、前記ガス混合物は、1,000℃~2,000℃で燃焼チャンバ内にて反応する。生成物を前記燃焼チャンバから吸引し、200℃未満に冷却し、形成されたヒュームドシリカからメッシュフィルタを用いて形成された塩化水素ガスを除去し、多段階吸収及び脱離プロセスにおいて乾燥塩化水素ガスを回収し、過剰の塩素ガスを還元させ、オフガスをクリーニングし、400℃~800℃の熱ガスを用いて流動床においてヒュームドシリカを精製した後、以下のヒュームドシリカが217kg/時間(年間製造力8,864時間で1年間当たり1,920トンに相当)得られる:BET比表面積が150m2/gであり、10kgの紙袋に袋詰めした後のタップ密度が40g/Lであり、4重量%の水分散液のpHが4.1であり、40μm超のMocker法による篩残分が0.005重量%であり、シリコーンオイル中の増粘作用η/η0が6.5であり、未架橋不飽和ポリエステル樹脂中の増粘作用η/η0が4.5であり、0.3重量%、温度25℃、pH10で超音波分散させた後、173°の後方散乱角でMalvern Zetasizer Nano ZS(登録商標)を用いて測定したときの平均流体力学的球相当径が220nmである。
【0153】
(実施例5)
ガス混合物は、投入速度1,405m3(STP)/時間で、ガス速度34m/秒のノズルから燃焼チャンバの上端のノズルを介してバーナーチャンバに入り、前記ガス混合物は、四塩化ケイ素4.3モル%、水素12モル%、二酸化炭素4モル%、酸素16モル%、及び窒素64モル%をガスとして含み、前記燃焼チャンバの体積は1.7m3、高さに対する体積の比は0.38m2、断面積は0.38m2であり、1,000℃~2,000℃で燃焼チャンバ内にて反応する。生成物を前記燃焼チャンバから吸引し、200℃未満に冷却し、形成されたヒュームドシリカからメッシュフィルタを用いて形成された塩化水素ガスを除去し、多段階吸収及び脱離プロセスにおいて乾燥塩化水素ガスを回収し、過剰の塩素ガスを還元させ、オフガスをクリーニングし、400℃~800℃の熱ガスを用いて流動床においてヒュームドシリカを精製した後、以下のヒュームドシリカが161kg/時間(年間製造力8,864時間で1年間当たり1,420トンに相当)得られる:BET比表面積が150m2/gであり、10kgの紙袋に袋詰めした後のタップ密度が40g/Lであり、4重量%の水分散液のpHが4.1であり、40μm超のMocker法による篩残分が0.005重量%であり、シリコーンオイル中の増粘作用η/η0が6.5であり、未架橋不飽和ポリエステル樹脂中の増粘作用η/η0が4.5であり、0.3重量%、温度25℃、pH10で超音波分散させた後、173°の後方散乱角でMalvern Zetasizer Nano ZS(登録商標)を用いて測定したときの平均流体力学的球相当径が220nmである。
【0154】
(実施例6)
ガス混合物は、投入速度1,405m3(STP)/時間で、ガス速度34m/秒のノズルから燃焼チャンバの上端のノズルを介してバーナーチャンバに入り、前記ガス混合物は、四塩化ケイ素4.3モル%、水素12モル%、酸素16モル%、及び窒素68モル%をガスとして含み、前記燃焼チャンバの体積は1.7m3であり、高さに対する体積の比は0.38m2であり、断面積は0.38m2であり、前記ガス混合物は、1,000℃~2,000℃で燃焼チャンバ内にて反応する。生成物を前記燃焼チャンバから吸引し、200℃未満に冷却し、形成されたヒュームドシリカからメッシュフィルタを用いて形成された塩化水素ガスを除去し、多段階吸収及び脱離プロセスにおいて乾燥塩化水素ガスを回収し、過剰の塩素ガスを還元させ、オフガスをクリーニングし、400℃~800℃の熱ガスを用いて流動床においてヒュームドシリカを精製した後、以下のヒュームドシリカが161kg/時間(年間製造力8,864時間で1年間当たり1,420トンに相当)得られる:BET比表面積が150m2/gであり、10kgの紙袋に袋詰めした後のタップ密度が40g/Lであり、4重量%の水分散液のpHが4.1であり、40μm超のMocker法による篩残分が0.005重量%であり、シリコーンオイル中の増粘作用η/η0が6.5であり、未架橋不飽和ポリエステル樹脂中の増粘作用η/η0が4.5であり、0.3重量%、温度25℃、pH10で超音波分散させた後、173°の後方散乱角でMalvern Zetasizer Nano ZS(登録商標)を用いて測定したときの平均流体力学的球相当径が220nmである。
【0155】
(実施例7)
ガス混合物は、投入速度2,600m3(STP)/時間で、ガス速度54m/秒のノズルから燃焼チャンバの上端のノズルを介してバーナーチャンバに入り、前記ガス混合物は、メチルトリクロロシラン4.6モル%、水素7.6モル%、二酸化炭素2.5モル%、酸素17モル%、及び窒素68モル%をガスとして含み、前記燃焼チャンバの体積は3.3m3であり、高さに対する体積の比は0.71m2であり、断面積は0.71m2であり、前記ガス混合物は、1,000℃~2,000℃で燃焼チャンバ内にて反応する。生成物を前記燃焼チャンバから吸引し、200℃未満に冷却し、形成されたヒュームドシリカからメッシュフィルタを用いて形成された塩化水素ガスを除去し、多段階吸収及び脱離プロセスにおいて乾燥塩化水素ガスを回収し、過剰の塩素ガスを還元させ、オフガスをクリーニングし、400℃~800℃の熱ガスを用いて流動床においてヒュームドシリカを精製した後、以下のヒュームドシリカが321kg/時間(年間製造力8,864時間で1年間当たり2,850トンに相当)得られる:BET比表面積が200m2/gであり、10kgの紙袋に袋詰めした後のタップ密度が40g/Lであり、4重量%の水分散液のpHが4.0であり、40μm超のMocker法による篩残分が0.005重量%であり、シリコーンオイル中の増粘作用η/η0が7.5であり、未架橋不飽和ポリエステル樹脂中の増粘作用η/η0が6.7であり、0.3重量%、温度25℃、pH10で超音波分散させた後、173°の後方散乱角でMalvern Zetasizer Nano ZS(登録商標)を用いて測定したときの平均流体力学的球相当径が200nmである。
【0156】
(実施例8)
ガス混合物は、投入速度2,600m3(STP)/時間で、ガス速度54m/秒のノズルから燃焼チャンバの上端のノズルを介してバーナーチャンバに入り、前記ガス混合物は、メチルトリクロロシラン4.6モル%、水素7.6モル%、酸素17モル%、及び窒素70.5モル%をガスとして含み、前記燃焼チャンバの体積は3.3m3であり、高さに対する体積の比は0.71m2であり、断面積は0.71m2であり、前記ガス混合物は、1,000℃~2,000℃で燃焼チャンバ内にて反応する。生成物を前記燃焼チャンバから吸引し、200℃未満に冷却し、形成されたヒュームドシリカからメッシュフィルタを用いて形成された塩化水素ガスを除去し、多段階吸収及び脱離プロセスにおいて乾燥塩化水素ガスを回収し、過剰の塩素ガスを還元させ、オフガスをクリーニングし、400℃~800℃の熱ガスを用いて流動床においてヒュームドシリカを精製した後、以下のヒュームドシリカが321kg/時間(年間製造力8,864時間で1年間当たり2,850トンに相当)得られる:BET比表面積が200m2/gであり、10kgの紙袋に袋詰めした後のタップ密度が40g/Lであり、4重量%の水分散液のpHが4.0であり、40μm超のMocker法による篩残分が0.005重量%であり、シリコーンオイル中の増粘作用η/η0が7.5であり、未架橋不飽和ポリエステル樹脂中の増粘作用η/η0が6.7であり、0.3重量%、温度25℃、pH10で超音波分散させた後、173°の後方散乱角でMalvern Zetasizer Nano ZS(登録商標)を用いて測定したときの平均流体力学的球相当径が200nmである。
【0157】
(実施例9)
ガス混合物は、投入速度3,300m3(STP)/時間で、ガス速度63m/秒のノズルから燃焼チャンバの上端のノズルを介してバーナーチャンバに入り、前記ガス混合物は、四塩化ケイ素14モル%、メチルトリクロロシラン0.1モル%、水素6.4モル%、二酸化炭素2.1モル%、酸素17モル%、窒素69モル%、及びハイドロジェンメチルジクロロシラン7.2モル%、三塩化シラン1.3モル%、テトラメチルシラン2モル%、トリメチルクロロシラン1.4モル%、及びアルカン(プロパンとブタンとペンタン、プロペンとブテンとペンテン、及びクロロプロパンとクロロブタンとクロロペンタンとの混合物)1.1モル%をガスとして含み、前記燃焼チャンバの体積は3.3m3であり、高さに対する体積の比は0.71m2であり、断面積は0.71m2であり、前記ガス混合物は、1,000℃~2,000℃で燃焼チャンバ内にて反応する。生成物を前記燃焼チャンバから吸引し、200℃未満に冷却し、形成されたヒュームドシリカからメッシュフィルタを用いて形成された塩化水素ガスを除去し、多段階吸収及び脱離プロセスにおいて乾燥塩化水素ガスを回収し、過剰の塩素ガスを還元させ、オフガスをクリーニングし、400℃~800℃の熱ガスを用いて流動床においてヒュームドシリカを精製した後、以下のヒュームドシリカが323kg/時間(年間製造力8,864時間で1年間当たり2,860トンに相当)得られる:BET比表面積が200m2/gであり、10kgの紙袋に袋詰めした後のタップ密度が40g/Lであり、4重量%の水分散液のpHが4.0であり、40μm超のMocker法による篩残分が0.005重量%であり、シリコーンオイル中の増粘作用η/η0が7.5であり、未架橋不飽和ポリエステル樹脂中の増粘作用η/η0が6.7であり、0.3重量%、温度25℃、pH10で超音波分散させた後、173°の後方散乱角でMalvern Zetasizer Nano ZS(登録商標)を用いて測定したときの平均流体力学的球相当径が200nmである。
【0158】
(実施例10)
ガス混合物は、投入速度2,450m3(STP)/時間で、ガス速度51m/秒のノズルから燃焼チャンバの上端のノズルを介してバーナーチャンバに入り、前記ガス混合物は、四塩化ケイ素0モル%、メチルトリクロロシラン5.2モル%、水素6.2モル%、二酸化炭素2.1モル%、酸素17モル%、窒素69モル%、ハイドロジェンメチルジクロロシラン0モル%、三塩化シラン0モル%、テトラメチルシラン0モル%、トリメチルクロロシラン0モル%、及びアルカン(プロパンとブタンとペンタン、プロペンとブテンとペンテン、及びクロロプロパンとクロロブタンとクロロペンタンとの混合物)0モル%をガスとして含み、前記燃焼チャンバの体積は3.3m3であり、高さに対する体積の比は0.71m2であり、断面積は0.71m2であり、前記ガス混合物は、1,000℃~2,000℃で燃焼チャンバ内にて反応する。生成物を前記燃焼チャンバから吸引し、200℃未満に冷却し、形成されたヒュームドシリカからメッシュフィルタを用いて形成された塩化水素ガスを除去し、多段階吸収及び脱離プロセスにおいて乾燥塩化水素ガスを回収し、過剰の塩素ガスを還元させ、オフガスをクリーニングし、400℃~800℃の熱ガスを用いて流動床においてヒュームドシリカを精製した後、以下のヒュームドシリカが341kg/時間(年間製造力8,864時間で1年間当たり3,020トンに相当)得られる:BET比表面積が150m2/gであり、10kgの紙袋に袋詰めした後のタップ密度が40g/Lであり、4重量%の水分散液のpHが4.1であり、40μm超のMocker法による篩残分が0.005重量%であり、シリコーンオイル中の増粘作用η/η0が5.5であり、未架橋不飽和ポリエステル樹脂中の増粘作用η/η0が4.5であり、0.3重量%、温度25℃、pH10で超音波分散させた後、173°の後方散乱角でMalvern Zetasizer Nano ZS(登録商標)を用いて測定したときの平均流体力学的球相当径が220nmである。
【0159】
(実施例11)
ガス混合物は、投入速度2,690m3(STP)/時間で、ガス速度56m/秒のノズルから燃焼チャンバの上端のノズルを介してバーナーチャンバに入り、前記ガス混合物は、四塩化ケイ素1.6モル%、メチルトリクロロシラン0.1モル%、水素5.7モル%、二酸化炭素1.9モル%、酸素17モル%、窒素69モル%、ハイドロジェンメチルジクロロシラン0.8モル%、三塩化シラン0.15モル%、テトラメチルシラン0.24モル%、トリメチルクロロシラン1.6モル%、及びアルカン(プロパンとブタンとペンタン、プロペンとブテンとペンテン、及びクロロプロパンとクロロブタンとクロロペンタンとの混合物)1.3モル%をガスとして含み、前記燃焼チャンバの体積は3.3m3であり、高さに対する体積の比は0.71m2であり、断面積は0.71m2であり、前記ガス混合物は、1,000℃~2,000℃で燃焼チャンバ内にて反応する。生成物を前記燃焼チャンバから吸引し、200℃未満に冷却し、形成されたヒュームドシリカからメッシュフィルタを用いて形成された塩化水素ガスを除去し、多段階吸収及び脱離プロセスにおいて乾燥塩化水素ガスを回収し、過剰の塩素ガスを還元させ、オフガスをクリーニングし、400℃~800℃の熱ガスを用いて流動床においてヒュームドシリカを精製した後、以下のヒュームドシリカが343kg/時間(年間製造力8,864時間で1年間当たり3,040トンに相当)得られる:BET比表面積が150m2/gであり、10kgの紙袋に袋詰めした後のタップ密度が40g/Lであり、4重量%の水分散液のpHが4.1であり、40μm超のMocker法による篩残分が0.005重量%であり、シリコーンオイル中の増粘作用η/η0が5.5であり、未架橋不飽和ポリエステル樹脂中の増粘作用η/η0が4.5であり、0.3重量%、温度25℃、pH10で超音波分散させた後、173°の後方散乱角でMalvern Zetasizer Nano ZS(登録商標)を用いて測定したときの平均流体力学的球相当径が220nmである。
・・・
【0165】
試験方法:
BET比表面積:DIN 9277/66132
・・・」
(4)甲4の記載事項
甲4には、次の事項が記載されている。
「 (10)既存の製造プロセスが最適化された本願発明の利点を実証することは極めて容易です。
・US2006/155042AA[2]の実施例1では、152m2/gの表面積を有するシリカが、STC(SiCl4)100kg/h、TCS(SiHCl3)5kg/hおよびMTCS(SiCH3Cl3)35kg/h)から得られます。所定のシラン混合物のC/Si比は0.272であり、これはBETが152m2/gのシリカについて本願で規定する範囲から外れるものです(C/Si比は0.066~0.230でなければなりません)。この比を本願の請求項の範囲内にするには、MTCS(炭素質シラン)の量を減らさなければなりません。請求項の範囲の中央にある最適なC/Si値(0.148)は、MTCS量を35から16.3kg/hに減らすことによって達成されます。調整されたシラン混合物(STC100kg/h;TCS5kg/h;MTCS16.3kg/h)および35Nm3/hの指定された燃料ガス(H2)のH/Cl比は1.250であり、これもBETが152m2/gのシリカについて本願で指定する範囲から外れるものです(H/Cl比は0.703~1.203でなければなりません)。請求項の範囲の中央にある最適なH/Cl値(0.953)は、H2の体積を35から25.7Nm3/hに減らすことで達成されます。調整されたシランと水素の混合物は、与えられた量の一次空気(PL=155Nm3/g)と二次空気(SL=25Nm3/h)を用いると、398℃の低い断熱火炎温度を示します。[2]の計算に従ってBETが152m2/gのシリカを得るのに必要な1706℃まで火炎温度を上げるには(同時に、前調整においてC/Si比およびH/Cl比を変動させない)、空気量を約66Nm3/h減らす必要があります。[2]に示されるSL/PL比(0.16)を維持するということは、PLを155から98.2Nm3/hに、SLを25から15.8Nm3/hに減らす必要があることを意味します。
以下の表は、US2006/155042AA[2]の実施例1に記載されたプロセスと、本発明によるその最適化されたバージョンを示します。
【表3】
[図:0001420366000005.jpg]
」
(第7頁第16行~第8頁)
(5)甲5の記載事項
甲5には、次の事項が記載されている。
「 文献または経験に基づいて、燃焼プロセスにおける、目的とする比表面積を有するヒュームドシリカをもたらす断熱火炎温度が決定され、
C/SiおよびH/Cl比が請求項の目的とする比表面積の範囲となるように、原料(Si含有ガスおよび場合によっては燃焼ガス)が選択され、
選択された原料の量/比が、断熱火炎温度を算出するためのソフトウェアに入力され、
さらに、すべてのSi含有ガスおよび燃焼ガスを燃焼させるために必要な酸素含有ガス(主に空気)の量がソフトウェアに入力され、
設定された混合物について上記で決定された断熱火炎温度をソフトウェアが算出するまで、酸素含有ガス(主に空気)の量を変化させ(通常、増加させ)、
その混合物は、目的とする比表面積を有するヒュームドシリカの製造に用いられ得る。」(第3頁第10~19行)
3 当審の判断
(1)申立理由1(甲1を主たる証拠とした新規性欠如)について
ア 甲1に記載された発明(甲1発明)
甲1には、上記2(1)アによれば、「二酸化ケイ素粉末の製造方法」に関して、同イの実施例1として、「180kg/時間の四塩化ケイ素を蒸発させ」、「燃焼器の混合室に移送する」と「同時に58Nm3/時間の水素及び190Nm3/時間の一次空気を混合室に添加」し、「該混合物を着火させ、そしてその火炎を反応室で燃焼に用い」、「生じた二酸化ケイ素を」「排ガス流と分離」することが記載されている。
また、甲1には、上記2(1)イの【0028】、及び同ウの表4によれば、実施例1で得られた二酸化ケイ素粉末の「BET表面積」が「298m2/g」であり、「DIN66131に従って測定され」たことが記載されている。
以上の記載事項を、実施例1に注目して整理すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「180kg/時間の四塩化ケイ素を蒸発させ、燃焼器の混合室に移送すると同時に、58Nm3/時間の水素及び190Nm3/時間の一次空気を混合室に添加し、該混合物を着火させ、そしてその火炎を反応室で燃焼に用い、生じた二酸化ケイ素を排ガス流と分離する、DIN66131に従って測定されたBET表面積が298m2/gである、二酸化ケイ素粉末の製造方法。」
イ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明との対比
a 甲1発明の「二酸化ケイ素粉末の製造方法」は、その「粉末」が上記2(1)ウの表4より「微粉」であるから、の本件発明1の「微粉化二酸化ケイ素の製造方法」に相当する。
b 甲1発明の「四塩化ケイ素」は、本件発明1の「炭素を含有しない少なくとも1つのケイ素化合物」「をSi源として使用」することに相当する。
c 甲1発明の「水素」、「一次空気」は、それぞれ本件発明1の「燃料ガス」、「酸素含有源」に相当する。
d 上記a~cの対応関係を踏まえると、甲1発明の「180kg/時間の四塩化ケイ素を蒸発させ、燃焼器の混合室に移送すると同時に、58Nm3/時間の水素及び190Nm3/時間の一次空気を混合室に添加し、該混合物を着火させ、そしてその火炎を反応室で燃焼に用い、生じた二酸化ケイ素を排ガス流と分離する」ことは、本件発明1の「燃料ガスを供給し、-酸素含有源を供給し、-前記ケイ素化合物と、前記燃料ガスと、前記酸素含有源とを含有するこの混合物」「を主流として反応空間中へ導入し、強熱し、それを反応させ、ならびに-得られた固体を単離すること」に相当する。
e したがって、本件発明1と甲1発明とは、
「 微粉化二酸化ケイ素の製造方法であって、
-炭素を含有しない少なくとも1つのケイ素化合物をSi源として使用し、
-燃料ガスを供給し、
-酸素含有源を供給し、
-前記ケイ素化合物と、前記燃料ガスと、前記酸素含有源とを含有するこの混合物を主流として反応空間中へ導入し、強熱し、それを反応させ、ならびに
-得られた固体を単離すること、
を含んでなる、方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1-1>
Si源が、本件発明1では、「炭素を含有する少なくとも1つのケイ素化合物と、炭素を含有しない少なくとも1つのケイ素化合物との少なくとも2つのケイ素化合物の混合物」であるのに対して、甲1発明では、「四塩化ケイ素」(炭素を含有しない少なくとも1つのケイ素化合物)のみである点。
<相違点1-2>
「前記ケイ素化合物と、前記燃料ガスと、前記酸素含有源とを含有するこの混合物」について、本件発明1では、「C/Siモル比が、10/BET~35/BETであり、および」「モルH/Cl比が、0.45+(BET/600)~0.95+(BET/600)であり」、「BETは、BET法(DIN ISO9277 に準拠)によって測定した」ものであるのに対して、甲1発明では、そのような特定がない点。
(イ)相違点の検討
a 甲1発明は、Si源が「四塩化ケイ素」のみであり、「炭素を含有する少なくとも1つのケイ素化合物」を含まないから、相違点1-1は実質的なものである。
そして、甲1発明は、「炭素を含有する少なくとも1つのケイ素化合物」を含まないから、甲1発明におけるC/Siモル比は0であり、「10/BET~35/BET」を満たさないことが明らかであるため、H/Cl比について検討するまでもなく、相違点1-2も実質的なものである。
b ここで、甲1の上記2(1)イの【0033】には、実施例2~9を実施例1と同様に実施することが記載されているので、実施例1以外の実施例を基に甲1発明を認定する場合について、念のため検討する。
(a)上記2(1)ウの表2、4によれば、実施例2には、160kg/時間の四塩化ケイ素、20kg/時間のメチルトリクロロシラン、53Nm3/時間の水素、及び215Nm3/時間の一次空気を用いて、BET表面積が298m2/gの二酸化ケイ素粉末を製造したことが記載されているので、この記載に基づき、上記甲1発明の「180kg/時間の四塩化ケイ素」を、「160kg/時間の四塩化ケイ素、及び20kg/時間のメチルトリクロロシラン」とし、「水素」、「一次空気」の流量及び「BET表面積」の値を、上記実施例2の値とした発明を認定することができる。
(b)そうすると、実施例2の四塩化ケイ素及びメチルトリクロロシランの流量の値から、それぞれの分子量(四塩化ケイ素:169.9g/mol、メチルトリクロロシラン:149.5g/mol)を用いて、C/Siモル比=0.124(計算式:20/149.5/(20/149.5+160/169.9))と算出され、実施例2のBET比表面積の値(302m2/g)から、10/BET=0.033、35/BET=0.116と算出されるが、当該C/Siモル比=0.124は、0.033~0.116の範囲外であるから、10/BET~35/BETを満たさない。なお、甲1のBETは、DIN66131によって測定されたものであるが、本件発明1のDIN ISO9277によって測定した値と著しい差異はないとの申立人の前提を採用している。
よって、実施例2を基に甲1発明を認定したとしても、H/Cl比について検討するまでもなく、上記相違点1-2で少なくとも相違し、この相違点は実質的なものである。
(c)そして、上記(a)と同様に、実施例3~5を基に甲1発明を認定することもでき、上記(b)と同様にC/Siモル比、10/BET及び35/BETを算出すると、以下のとおりであり、いずれのC/Siモル比も、10/BET~35/BETを満たさない。
実施例3:C/Siモル比=0.282、10/BET=0.032、35/BET=0.113
実施例4:C/Siモル比=0.391、10/BET=0.033、35/BET=0.114
実施例5:C/Siモル比=0、10/BET=0.034、35/BET=0.119
よって、実施例3~5のいずれを基に甲1発明を認定したとしても、H/Cl比について検討するまでもなく、上記相違点1-2で少なくとも相違し、この相違点1-2は実質的なものである。
(d)また、上記2(1)イの【0036】及び同ウの表2、4によれば、実施例6~9は比較例に相当するものであるが、実施例6~9のBET表面積は記載されておらず、10/BET及び35/BETを算出不可能であるため、実施例6~9を基に甲1発明を認定して検討するに及ばない。
c 次に、申立理由ではないが、甲1発明において、相違点1-1、及び相違点1-2に係る本件発明1の特定事項とすることの容易想到性について念のため検討する。
本件発明は、本件特許明細書の【0030】に「本発明の方法は、特許請求の範囲に記載のC/SiおよびH/Cl比によって特徴付けられるケイ素化合物の特定の組成物が本方法で使用される場合、本方法は、破壊およびフラッシュバックなしで実行されるだけでなく、低グリット画分(low grit fraction)または粗材料画分を有する微粉化二酸化ケイ素を生成するため、したがって高品質であるという利点に注目する。同時に、この方法は優れた時空収率を示すことで、本方法が経済的に適切であることを意味する。」と記載され、それらが実施例(【表2】参照)と比較例(【表1】参照)を対照することで裏付けられているように、C/Siモル比を10/BET~35/BET、及び、モルH/Cl比を0.45+(BET/600)~0.95+(BET/600)とすることに格別な技術的意義のあるものである。
それに対し、上記甲1~3には、このような技術的思想については開示されておらず、そして、甲1には、「10/BET~35/BET」を満たすように、「C/Siモル比」を変化させることは記載も示唆もされていないし、また、甲3の記載を見ても、記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明に基いて、あるいは、甲1発明及び甲3に記載された事項に基いて、相違点1-1、及び相違点1-2に係る本件発明1の特定事項を満たすようにすることは、当業者にとって容易に想到し得たことといえない。
(ウ)申立人の主張について
a 申立人の主張の概要
申立人は、特許異議申立書において、概略、以下のとおり主張している。
(a)甲1の実施例1において、第二成分としてのCH3SiCl3を、混合物に対して5質量%とする条件に修正する場合を考える。この条件は、甲1の【0018】に記載の有利な条件である。
このとき、第一成分としてのSiCl4は95質量%となり、前記実施例1で用いる180kg/hのSiCl4は、180kg/h×95%/100%=171kg/hとなる。また、第二成分としてのCH3SiCl3は、混合物に対して5質量%であるため、180kg/h×5%/100%=9kg/hとなる。これらの値から、それぞれの分子量を用いて、C/Siモル比を求めると、0.059となる。
そして、実施例1の二酸化ケイ素粉末のBET比表面積が298m2/gであるから、10/BET=0.03、及び35/BET=0.12となり、上記C/Siモル比である0.059は、10/BET~35/BETであるという本件発明1の要件を充足する(特許異議申立書第15頁第11行~第16頁第11行)。
(b)混合物である原料シランにおいて、成分の混合比率を変化させた場合、所望の比表面積を得るためには、他の製造条件を変化させることが必要となる。
しかし、甲5にも記載されている通り、文献または経験に基づいて、燃焼プロセスにおける目的とする比表面積を有するヒュームドシリカをもたらす断熱火炎温度が決定され、任意の混合比率に対しC/Si及びH/Cl比を変えることなく、本件発明1の目的とする比表面積の範囲となるように、原料(Si含有ガス及び燃焼ガス)の量/比が、断熱火炎温度を算出するためのソフトウェアに入力され、さらに、すべてのSi含有ガス及び燃焼ガスを燃焼されるために必要な酸素含有ガス(主に空気)の量がソフトウェアに入力され、設定された混合物について上記で決定された断熱火炎温度をソフトウェアが算出するまで、酸素含有ガス(主に空気)の量を変化させることで、その混合物の混合比率で目的とする比表面積を有するヒュームドシリカの製造を行うことができる。かかる製造は、当業者であれば容易に行うことができる(特許異議申立書第16頁第12行~第17頁第7行)。
(c)甲3の【0082】には、「40μm超のMocker法による篩残分が0重量%~0.01重量%であ」ることが記載されている。
本件特許明細書の【0030】には、「本方法は、破壊およびフラッシュバックなしで実行されるだけでなく、低グリット画分(low grit fraction)または粗材料画分を有する微粉化二酸化ケイ素を生成する」こと、同【0037】には、「粗粒子含有量(グリットまたは粗分画とも呼ばれる)は、粗粒子の画分を分離および測定するために、メッシュサイズ40μmのふるいを用いて、DIN EN ISO787-18法に従って測定した」こと、同【0057】には、「単離および脱酸の後、150m2/gのBET表面積を有する生成物を得た。比較例V1とは対照的に、燃焼は乱されず、低粗粒子画分を有する微粉末(グリット含量0.008%)が生成された」ことが記載されている。
このように、甲3の【0082】に記載の篩残分の重量%は、本件発明1によって得られる微粉化二酸化ケイ素のグリット含有量(篩残分)と同様の数値となっている。
そのため、甲1に甲3を組み合わせることによって、本件特許明細書の【0030】に記載の「本方法は、破壊およびフラッシュバックなしで実行されるだけでなく、低グリット画分(low grit fraction)または粗材料画分を有する微粉化二酸化ケイ素を生成するため、したがって高品質であるという利点に注目する。同時に、この方法は優れた時空収率を示すことで、本方法が経済的に適切であることを意味する」との効果が奏されることを、当業者であれば予測することができる(特許異議申立書第42頁第27行~第43頁第29行)。
b 申立人の主張の検討
(a)上記a(a)、(b)の主張について
申立人は、甲1の実施例1において、第二成分としてCH3SiCl3を、混合物に対して5質量%とする条件に修正した場合、10/BET~35/BETを満たすC/Siモル比となる旨主張しているが、このような修正は、事後分析的に本件発明1を見た上で、本件発明1のC/Siモル比となるように、甲1の実施例1のSi源の種類と比率を恣意的に修正したものであり、いわゆる後知恵であるから、上記a(a)の主張は採用できない。
そして、上記a(b)の主張は、上記a(a)の主張を前提としたものであるから、上記a(a)の主張が採用できない以上、上記a(b)の主張も採用できない。
(b)上記a(c)の主張について
上記(イ)cで検討したとおり、甲1発明に、甲3に記載された事項を組み合わせたとしても、相違点1-1、1-2に係る本件発明1の特定事項を満たさない。そして、申立人の上記主張は、甲1発明に、甲3に記載された事項を組み合わせたときの効果に関する言及のみであり、前記特定事項を満たすことの根拠とはならないから、採用できない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明であるといえないし、甲1発明に基いて、あるいは、甲1発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件発明2~4、6~10、13について
本件発明2~4、6~10、13は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、上記イで検討したのと同様の理由により、本件発明2~4、6~10、13は、甲1発明であるといえないし、甲1発明に基いて、あるいは、甲1発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
エ 申立理由1についての結論
以上の検討のとおり、申立理由1に理由はない。
(2)申立理由2(甲2を主たる証拠とした新規性欠如)
ア 甲2に記載された発明(甲2発明)
甲2には、上記2(2)アによれば、「二酸化ケイ素粉末の製造方法」に関して、上記同イの実施例1として、「100kg/時間の四塩化ケイ素及び5kg/時間のトリクロロシラン及び35kg/時間のメチルトリクロロシランを蒸発させ」、「燃焼器の混合室に移送する」と「同時に35Nm3/時間の水素及び155Nm3/時間の一次空気を混合室に添加」し、「該混合物を着火させ、そしてその火炎を反応室で燃焼に用い」、「生じた二酸化ケイ素を」「排ガス流と分離」することが記載されている。
また、甲2には、上記2(2)イの【0030】及び同ウの表4によれば、実施例1で得られた二酸化ケイ素粉末の「BET表面積」が「152m2/g」であり、「DIN66131に従って測定され」たことが記載されている。
以上の記載事項を、実施例1に注目して整理すると、甲2には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「100kg/時間の四塩化ケイ素及び5kg/時間のトリクロロシラン及び35kg/時間のメチルトリクロロシランを蒸発させ、燃焼器の混合室に移送すると同時に、35Nm3/時間の水素及び155Nm3/時間の一次空気を混合室に添加し、該混合物を着火させ、そしてその火炎を反応室で燃焼に用い、生じた二酸化ケイ素を排ガス流と分離する、DIN66131に従って測定されたBET表面積が152m2/gである、二酸化ケイ素粉末の製造方法。」
イ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲2発明との対比
a 甲2発明の「二酸化ケイ素粉末の製造方法」は、その「粉末」が上記2(2)ウの表4より「微粉」であるから、本件発明1の「微粉化二酸化ケイ素の製造方法」に相当する。
b 甲2発明の「四塩化ケイ素」、及び「トリクロロシラン」は、本件発明1の「炭素を含有しない少なくとも1つのケイ素化合物」に相当し、甲2発明の「メチルトリクロロシラン」は、本件発明1の「炭素を含有する少なくとも1つのケイ素化合物」に相当するので、これらを使用することは、本件発明1の「少なくとも2つのケイ素化合物の混合物をSi源として使用」することに相当する。
c 甲2発明の「水素」、「一次空気」は、それぞれ本件発明1の「燃料ガス」、「酸素含有源」に相当する。
d 上記a~cの対応関係を踏まえると、甲1発明の「100kg/時間の四塩化ケイ素及び5kg/時間のトリクロロシラン及び35kg/時間のメチルトリクロロシランを蒸発させ、燃焼器の混合室に移送すると同時に、35Nm3/時間の水素及び155Nm3/時間の一次空気を混合室に添加し、該混合物を着火させ、そしてその火炎を反応室で燃焼に用い、生じた二酸化ケイ素を排ガス流と分離する」ことは、本件発明1の「燃料ガスを供給し、-酸素含有源を供給し、-前記ケイ素化合物と、前記燃料ガスと、前記酸素含有源とを含有するこの混合物」「を主流として反応空間中へ導入し、強熱し、それを反応させ、ならびに-得られた固体を単離すること」に相当する。
e したがって、本件発明1と甲2発明とは、
「 微粉化二酸化ケイ素の製造方法であって、
-炭素を含有する少なくとも1つのケイ素化合物と、炭素を含有しない少なくとも1つのケイ素化合物との少なくとも2つのケイ素化合物の混合物をSi源として使用し、
-燃料ガスを供給し、
-酸素含有源を供給し、
-前記ケイ素化合物と、前記燃料ガスと、前記酸素含有源とを含有するこの混合物を主流として反応空間中へ導入し、強熱し、それを反応させ、ならびに
-得られた固体を単離すること、
を含んでなる、方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点2-1>
「前記ケイ素化合物と、前記燃料ガスと、前記酸素含有源とを含有するこの混合物」について、本件発明1では、「C/Siモル比が、10/BET~35/BETであり、および」「モルH/Cl比が、0.45+(BET/600)~0.95+(BET/600)であり」、「BETは、BET法(DIN ISO9277 に準拠)によって測定した」ものであるのに対して、甲2発明では、そのような特定がない点。
(イ)相違点の検討
a 甲2発明の四塩化ケイ素、トリクロロシラン、及びメチルトリクロロシランの流量の値から、それぞれの分子量(四塩化ケイ素:169.9g/mol、トリクロロシラン:135.5g/mol、メチルトリクロロシラン:149.5g/mol)を用いて、C/Siモル比=0.272(計算式:35/149.5/(35/149.5+100/169.9+5/135.5))と算出され、甲2発明のBET比表面積の値(152m2/g)から、10/BET=0.066、及び35/BET=0.230と算出される。なお、甲2発明のBETは、DIN66131によって測定されたものであるが、本件発明1のDIN ISO9277によって測定した値と著しい差異はないとの申立人の前提を採用していることは、上記(1)イ(イ)b(b)で述べたとおりである。
よって、甲2発明のC/Siモル比=0.272は、0.066~0.230の範囲外であるから、「10/BET~35/BET」を満たさないため、H/Cl比について検討するまでもなく、相違点2-1は実質的なものである。
b ここで、甲2の上記2(2)イの【0034】には、実施例2~11を実施例1と同様に実施することが記載されているので、実施例1以外の実施例を基に甲2発明を認定する場合について、念のため検討する。
(a)上記2(2)ウの表2、4によれば、実施例2において、100kg/時間の四塩化ケイ素、50kg/時間のメチルトリクロロシラン、40Nm3/時間の水素、及び185Nm3/時間の一次空気を用いて、BET表面積が162m2/gである二酸化ケイ素粉末が得られたことが記載されているので、この記載に基づき、上記アに記載した甲2発明の「100kg/時間の四塩化ケイ素及び5kg/時間のトリクロロシラン及び35kg/時間のメチルトリクロロシラン」を、「100kg/時間の四塩化ケイ素、及び50kg/時間のメチルトリクロロシラン」とし、「水素」、「一次空気」の流量及び「BET表面積」の値を、上記実施例2の値とした発明を認定することができる。
(b)そうすると、実施例2の四塩化ケイ素とメチルトリクロロシランの流量及び分子量、及びBET比表面積の値を用いて、上記aと同様に計算すると、C/Siモル比=0.362、10/BET=0.062、35/BET=0.216となるが、当該C/Siモル比=0.362は、0.062~0.216の範囲外であるから、10/BET~35/BETを満たさない。
よって、実施例2を基に甲2発明を認定したとしても、H/Cl比について検討するまでもなく、上記相違点2-1で少なくとも相違し、この相違点2-1は実質的なものである。
(c)そして、上記(a)と同様に、実施例3~11を基に甲2発明を認定することもでき、上記(b)と同様にC/Siモル比、10/BET及び35/BETを算出すると、以下のとおりであり、いずれのC/Siモル比も、10/BET~35/BETを満たさない。なお、上記2(2)イの【0037】、同ウの表2、4によれば、実施例6~11は、比較例に相当するものである。
実施例3:C/Siモル比=0、10/BET=0.068、35/BET=0.236
実施例4:C/Siモル比=0.410、10/BET=0.063、35/BET=0.220
実施例5:C/Siモル比=0.288、10/BET=0.065、35/BET=0.229
実施例6:C/Siモル比=0.362、10/BET=0.053、35/BET=0.187
実施例7:C/Siモル比=0.362、10/BET=0.093、35/BET=0.324
実施例8:C/Siモル比=0、10/BET=0.065、35/BET=0.227
実施例9:C/Siモル比=2.716、10/BET=0.068、35/BET=0.240
実施例10:C/Siモル比=0.374、10/BET=0.062、35/BET=0.216
実施例11:C/Siモル比=0.288、10/BET=0.065、35/BET=0.229
よって、実施例3~11のいずれを基に甲2発明を認定したとしても、H/Cl比について検討するまでもなく、上記相違点2-1で少なくとも相違し、この相違点は実質的なものである。
c 次に、申立理由ではないが、甲2発明において、相違点2-1に係る本件発明1の特定事項とすることの容易想到性について念のため検討する。
上記(1)イ(イ)cで述べたように、本件発明は、C/Siモル比を10/BET~35/BET、及び、モルH/Cl比を0.45+(BET/600)~0.95+(BET/600)とすることに格別な技術的意義のあるものであり、上記甲1~3には、このような技術的思想については開示されておらず、そして、甲2には、「10/BET~35/BET」を満たすように、「C/Siモル比」を変化させることは記載も示唆もされていないし、また、甲3の記載を見ても、記載も示唆もされていない。
したがって、甲2発明に基いて、あるいは、甲2発明及び甲3に記載された事項に基いて、相違点2-1に係る本件発明1の特定事項を満たすようにすることは、当業者にとって容易に想到し得たことといえない。
(ウ)申立人の主張について
a 申立人の主張の概要
申立人は、特許異議申立書において、概略、以下のとおり主張している。
(a)甲4の表3には、甲2に対応するUS2006/155042A1の実施例1によるプロセスを、本件発明により最適化したバージョンが示されている。つまり、甲4に記載されている前記バージョンの発明は、本件発明1である。
このとき、上記バージョンのSiCl4は100kg/h、SiHCl3は5kg/h、SiCH3Cl3は16.3kg/hであり、これらの値から、それぞれの分子量を用いて、C/Siモル比を求めると、0.15となる。そして、甲4の表3に記載のBET比表面積は152m2/gであるから、前記C/Siモル比は、10/152~35/152、すなわち10/BET~35/BETの範囲内となり、本件発明1の要件を充足する(特許異議申立書第17頁第8行~第19頁第2行)。
(b)混合物である原料シランにおいて、成分の混合比率を変化させた場合、所望の比表面積を得るためには、他の製造条件を変化させることが必要となる。
しかし、甲5にも記載されている通り、文献または経験に基づいて、燃焼プロセスにおける目的とする比表面積を有するヒュームドシリカをもたらす断熱火炎温度が決定され、任意の混合比率に対しC/Si及びH/Cl比を変えることなく、本件発明1の目的とする比表面積の範囲となるように、原料(Si含有ガス及び燃焼ガス)の量/比が、断熱火炎温度を算出するためのソフトウェアに入力され、さらに、すべてのSi含有ガス及び燃焼ガスを燃焼されるために必要な酸素含有ガス(主に空気)の量がソフトウェアに入力され、設定された混合物について上記で決定された断熱火炎温度をソフトウェアが算出するまで、酸素含有ガス(主に空気)の量を変化させることで、その混合物の混合比率で目的とする比表面積を有するヒュームドシリカの製造を行うことができる。かかる製造は、当業者であれば容易に行うことができる(特許異議申立書第19頁第3行~第19頁第16行)。
(c)甲3の【0082】には、「40μm超のMocker法による篩残分が0重量%~0.01重量%であ」ることが記載されている。
本件特許明細書の【0030】には、「本方法は、破壊およびフラッシュバックなしで実行されるだけでなく、低グリット画分(low grit fraction)または粗材料画分を有する微粉化二酸化ケイ素を生成する」こと、同【0037】には、「粗粒子含有量(グリットまたは粗分画とも呼ばれる)は、粗粒子の画分を分離および測定するために、メッシュサイズ40μmのふるいを用いて、DIN EN ISO787-18法に従って測定した」こと、同【0057】には、「単離および脱酸の後、150m2/gのBET表面積を有する生成物を得た。比較例V1とは対照的に、燃焼は乱されず、低粗粒子画分を有する微粉末(グリット含量0.008%)が生成された」ことが記載されている。
このように、甲3の【0082】に記載の篩残分の重量%は、本件発明1によって得られる微粉化二酸化ケイ素のグリット含有量(篩残分)と同様の数値となっている。
そのため、甲2に甲3を組み合わせることによって、本件特許明細書の【0030】に記載の「本方法は、破壊およびフラッシュバックなしで実行されるだけでなく、低グリット画分(low grit fraction)または粗材料画分を有する微粉化二酸化ケイ素を生成するため、したがって高品質であるという利点に注目する。同時に、この方法は優れた時空収率を示すことで、本方法が経済的に適切であることを意味する」との効果が奏されることを、当業者であれば予測することができる(特許異議申立書第42頁第27行~第43頁第29行)。
b 申立人の主張の検討
(a)上記a(a)、(b)の主張について
上記2(4)によれば、甲4には、甲2に対応するUS2006/155042A1の実施例1におけるC/Siモル比が0.272であり、これは本件発明1で規定する範囲から外れるものであること、及び、このC/Siモル比を本件発明1で規定の範囲内にするには、MTCS(炭素質シラン)の量を35から16.3kg/hに減らさなければならないことが記載されている。
すなわち、申立人の主張する「最適化したバージョン」は、事後分析的なものであり、C/Siモル比を、本件発明1で規定の範囲内にするために、MTCS(炭素質シラン)の量を恣意的に変化させたものであり、いわゆる後知恵に基づくものであるから、上記a(a)の主張は採用できない。
そして、上記a(b)の主張は、上記a(a)の主張を前提としたものであるから、上記a(a)の主張が採用できない以上、上記a(b)の主張も採用できない。
(b)上記a(c)の主張について
上記(イ)cで検討したとおり、甲2発明に、甲3に記載された事項を組み合わせたとしても、相違点1-1、1-2に係る本件発明1の特定事項を満たさない。そして、申立人の上記主張は、甲2発明に、甲3に記載された事項を組み合わせたときの効果に関する言及のみであり、前記特定事項を満たすことの根拠とはならないから、採用できない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明であるといえないし、甲2発明に基いて、あるいは、甲2発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件発明2~4、6~10、13について
本件発明2~4、6~10、13は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、上記イで検討したのと同様の理由により、本件発明2~4、6~10、13は、甲2発明であるといえないし、甲2発明に基いて、あるいは、甲2発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
エ 申立理由2についての結論
以上の検討のとおり、申立理由2に理由はない。
(3)申立理由3(甲3を主たる証拠とした新規性欠如)
ア 甲3に記載された発明(甲3発明)
甲3には、上記2(3)アによれば、「ヒュームドシリカを製造する方法」に関して、同イの【0154】の実施例6として、「四塩化ケイ素4.3モル%、水素12モル%、酸素16モル%」「をガスとして含」む「ガス混合物」を、「燃焼チャンバの上端のノズルを介してバーナーチャンバに入」れ、「前記ガス混合物」を、「1,000℃~2,000℃で燃焼チャンバ内にて反応」させ、「生成物を前記燃焼チャンバから吸引し」、「ヒュームドシリカを精製し」、「BET比表面積が150m2/gであ」る「ヒュームドシリカが」「得られる」ことが記載されている。
また、甲3には、「試験方法」として、「BET比表面積:DIN 9277/66132」が記載されている。
以上の記載事項を、実施例6に注目して整理すると、甲3には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「四塩化ケイ素4.3モル%、水素12モル%、酸素16モル%をガスとして含むガス混合物を、燃焼チャンバの上端のノズルを介してバーナーチャンバに入れ、前記ガス混合物を、1,000℃~2,000℃で燃焼チャンバ内にて反応させ、生成物を前記燃焼チャンバから吸引し、ヒュームドシリカを精製し、DIN 9277/66132によって測定されたBET比表面積が150m2/gであるヒュームドシリカが得られる、ヒュームドシリカを製造する方法。」
イ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲3発明との対比
a 甲3発明の「ヒュームドシリカを製造する方法」は、「ヒュームドシリカ」が微粉であるから、本件発明1の「微粉化二酸化ケイ素の製造方法」に相当する。
b 甲3発明の「四塩化ケイ素」は、本件発明1の「炭素を含有しない少なくとも1つのケイ素化合物」「をSi源として使用」することに相当する。
c 甲3発明の「水素」、「酸素」は、それぞれ本件発明1の「燃料ガス」、「酸素含有源」に相当する。
d 上記a~cの対応関係を踏まえると、甲3発明の「四塩化ケイ素4.3モル%、水素12モル%、酸素16モル%をガスとして含むガス混合物を、燃焼チャンバの上端のノズルを介してバーナーチャンバに入れ、前記ガス混合物を、1,000℃~2,000℃で燃焼チャンバ内にて反応させ、生成物を前記燃焼チャンバから吸引し、ヒュームドシリカを精製」することは、本件発明1の「燃料ガスを供給し、-酸素含有源を供給し、-前記ケイ素化合物と、前記燃料ガスと、前記酸素含有源とを含有するこの混合物」「を主流として反応空間中へ導入し、強熱し、それを反応させ、ならびに-得られた固体を単離すること」に相当する。
e 甲3発明の「DIN 9277/66132によって測定されたBET比表面積が150m2/gであるヒュームドシリカ」は、本件発明1の「BET法(DIN ISO9277 に準拠)によって」、「製造される熱分解法二酸化ケイ素の比表面積」を「測定」することに相当する。
f したがって、本件発明1と甲3発明とは、
「微粉化二酸化ケイ素の製造方法であって、
-炭素を含有しない少なくとも1つのケイ素化合物をSi源として使用し、
-燃料ガスを供給し、
-酸素含有源を供給し、
-前記ケイ素化合物と、前記燃料ガスと、前記酸素含有源とを含有するこの混合物を主流として反応空間中へ導入し、強熱し、それを反応させ、ならびに
-得られた固体を単離すること、
を含んでなり、
BET法(DIN ISO9277 に準拠)によって、製造される熱分解法二酸化ケイ素の比表面積を測定する、
方法。」の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点3-1>
Si源が、本件発明1では、「炭素を含有する少なくとも1つのケイ素化合物と、炭素を含有しない少なくとも1つのケイ素化合物との少なくとも2つのケイ素化合物の混合物」であるのに対して、甲3発明では、「四塩化ケイ素」(炭素を含有しない少なくとも1つのケイ素化合物)のみである点。
<相違点3-2>
「前記ケイ素化合物と、前記燃料ガスと、前記酸素含有源とを含有するこの混合物」について、本件発明1では、「C/Siモル比が、10/BET~35/BETであり、および」「モルH/Cl比が、0.45+(BET/600)~0.95+(BET/600)であり」、「BETは、BET法(DIN ISO9277 に準拠)によって測定した」ものであるのに対して、甲3発明では、そのような特定がない点。
(イ)相違点の検討
a 甲3発明は、Si源が「四塩化ケイ素」のみであり、「炭素を含有する少なくとも1つのケイ素化合物」を含まないから、相違点3-1は実質的なものである。
そして、甲3発明は、「炭素を含有する少なくとも1つのケイ素化合物」を含まないから、甲3発明におけるC/Siモル比は0であり、「10/BET~35/BET」を満たさないことが明らかであるため、H/Cl比について検討するまでもなく、相違点3-2も実質的なものである。
b ここで、甲3の上記2(3)イの【0149】~【0159】には、実施例1~5、7~11を実施例6と同様に実施することが記載されているので、実施例6以外の実施例を基に甲1発明を認定する場合について、念のため検討する。
(a)上記2(3)イの【0149】によれば、実施例1には、メチルトリクロロシラン0.049モル%、水素0.019モル%、酸素0.17モル%を含むガス混合物を用いて、BET比表面積が150m2/gであるヒュームドシリカが得られたことが記載されているので、この記載に基づき、上記アに記載した甲3発明の「四塩化ケイ素4.3モル%」を、「メチルトリクロロシラン0.049モル%」とし、「水素」、「酸素」の流量及び「BET比表面積」の値を、上記実施例1の値とした発明を認定することができる。
(b)ここで、Si源が、本件発明1では、「炭素を含有する少なくとも1つのケイ素化合物と、炭素を含有しない少なくとも1つのケイ素化合物との少なくとも2つのケイ素化合物の混合物」であるのに対して、上記(a)で認定した発明では、「メチルトリクロロシラン」のみである点、及び、上記実施例1のC/Siモル比=1、10/BET=0.067、35/BET=0.233と算出されるから、本件発明1の10/BET~35/BETを満たさない点で相違する。
よって、実施例1を基に甲3発明を認定したとしても、H/Cl比について検討するまでもなく、上記相違点で少なくとも相違し、この相違点は実質的なものである。
(c)また、上記(a)と同様に、実施例2~4、7、8を基に甲3発明を認定することもできるが、これらの実施例においてもSi源が「メチルトリクロロシラン」のみであり、C/Siモル比は10/BET~35/BETを満たさないから、上記(b)と同様の相違点で少なくとも相違しており、この相違点は実質的なものである。
(d)そして、上記(a)と同様に、実施例5を基に甲3発明を認定することもできるが、実施例5のSi源は、「四塩化ケイ素」のみであるから、上記(ア)fに示した点で相違し、上記aで検討したとおり、相違点3-1、及び相違点3-2は実質的なものである。
(e)さらに、実施例9~11については、上記2(3)の【0157】~【0159】によれば、反応ガスに「アルカン(プロパンとブタンとペンタン、プロペンとブテンとペンテン、及びクロロプロパンとクロロブタンとクロロペンタンとの混合物)」を含むことが記載されており、これらの成分の混合比が不明であるため、C/Siモル比を算出不可能であるから、実施例9~11を基に甲1発明を認定して検討するに及ばない。
c 次に、申立理由ではないが、甲3発明において、相違点3-1、相違点3-2に係る本件発明1の特定事項とすることの容易想到性について念のため検討する。
上記(1)イ(イ)cで述べたように、本件発明は、C/Siモル比を10/BET~35/BET、及び、モルH/Cl比を0.45+(BET/600)~0.95+(BET/600)とすることに格別な技術的意義のあるものであり、甲3には、このような技術的思想については開示されておらず、そして、甲3には、「10/BET~35/BET」を満たすように、「C/Siモル比」を変化させることは記載も示唆もされていない。
したがって、甲3発明に基いて、相違点3-1、相違点3-2に係る本件発明1の特定事項を満たすようにすることは、当業者にとって容易に想到し得たことといえない。
(ウ)申立人の主張について
a 申立人の主張の概要
申立人は、特許異議申立書において、概略、以下のとおり主張している。
(a)甲3の請求項19には、「前記ガス混合物が、四塩化ケイ素0.1モル%~100モル%、メチルトリクロロシラン0モル%~100モル%、水素1モル%~20モル%、二酸化炭素0.001モル%~15モル%、酸素10モル%~30モル%、窒素50モル%~100モル%、ハイドロジェンメチルジクロロシラン0モル%~50モル%、三塩化シラン0.001モル%~100モル%、テトラメチルシラン0モル%~50モル%、トリメチルクロロシラン0モル%~50モル%、及びアルカン、アルケン、又はハロアルキルの混合物0モル%~20モル%を含」むこと、請求項17には、「10モル%超の四塩化ケイ素を含有する混合物が用いられる」こと、及び、同【0059】には、「濃度10モル%超のメチルシリコントリクロリドが特に好ましい」ことが記載されている。
上記記載事項を参照して、甲3の実施例6を、四塩化ケイ素:10.68モル%、メチルトリクロロシラン:1.32モル%に修正して、BET比表面積が150m2/gのヒュームドシリカを得る場合を考えると、C/Siモル比=0.11となる。このとき、10/BET=0.07、35/BET=0.23となるため、前記C/Siモル比は、10/BET~35/BETであるという本件発明1の要件を充足する(特許異議申立書第19頁第17行~第20頁第19行)。
(b)混合物である原料シランにおいて、成分の混合比率を変化させた場合、所望の比表面積を得るためには、他の製造条件を変化させることが必要となる。
しかし、甲5にも記載されている通り、文献または経験に基づいて、燃焼プロセスにおける目的とする比表面積を有するヒュームドシリカをもたらす断熱火炎温度が決定され、任意の混合比率に対しC/Si及びH/Cl比を変えることなく、本件発明1の目的とする比表面積の範囲となるように、原料(Si含有ガス及び燃焼ガス)の量/比が、断熱火炎温度を算出するためのソフトウェアに入力され、さらに、すべてのSi含有ガス及び燃焼ガスを燃焼されるために必要な酸素含有ガス(主に空気)の量がソフトウェアに入力され、設定された混合物について上記で決定された断熱火炎温度をソフトウェアが算出するまで、酸素含有ガス(主に空気)の量を変化させることで、その混合物の混合比率で目的とする比表面積を有するヒュームドシリカの製造を行うことができる。かかる製造は、当業者であれば容易に行うことができる(特許異議申立書第20頁第20行~第21頁第5行)。
b 申立人の主張の検討
申立人は、甲3の実施例6において、四塩化ケイ素:10.68モル%、メチルトリクロロシラン:1.32モル%に修正した場合、10/BET~35/BETを満たすC/Siモル比となる旨主張しているが、このような修正は、事後分析的に本件発明1を見た上で、本件発明1のC/Siモル比となるように、甲3の実施例6のSi源の種類と比率を恣意的に修正したものであり、いわゆる後知恵であるから、上記a(a)の主張は採用できない。
そして、上記a(b)の主張は、上記a(a)の主張を前提としたものであるから、上記a(a)の主張が採用できない以上、上記a(b)の主張も採用できない。
(エ) 小括
以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明であるといえないし、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件発明2~4、6~10、13について
本件発明2~4、6~10、13は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、上記イで検討したのと同様の理由により、本件発明2~4、6~10、13は、甲3発明であるといえないし、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
エ 申立理由3についての結論
以上の検討のとおり、申立理由3に理由はない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~4、6~10、13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~4、6~10、13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701090