特許異議申立
2024-701079
窯業系無機質基材の塗装方法、及び窯業系無機質基材塗装品
- 審判番号
- 2024-701079
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-058344
- 登録番号
- 7478563
- 請求日
- 2024年11月06日
- 審決日
- 2025年03月19日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】大日本塗料株式会社
- 【権利者代理人】アクシス国際弁理士法人
- 【異議申立人】小池 潤一
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 弘實 由美子
- 審判官 関根 裕
- 分類
- P1651.121-Y (C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7478563号発明「窯業系無機質基材の塗装方法、及び窯業系無機質基材塗装品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7478563号の請求項1~11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7478563号(以下「本件特許」ともいう。)の請求項1~11に係る特許についての出願は、令和2年3月27日の出願であって、令和6年4月24日にその特許権の設定登録がされ、同年5月7日に特許掲載公報が発行された。その後、令和6年11月6日に特許異議申立人である小池 潤一(以下「申立人」という。)により、その全請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件特許の特許請求の範囲の記載
本件特許の請求項1~11に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
窯業系無機質基材に、水系シーラーを塗布し、含浸させる工程と、
前記水系シーラーを含浸させた窯業系無機質基材上に、紫外線硬化型目止め塗料組成物を塗布し、紫外線照射により硬化させて、目止め塗膜を形成する工程と
を有し、
前記水系シーラーが、水と、ケイ酸アルカリ金属塩とを含み、
前記水系シーラー中のケイ酸アルカリ金属塩の40質量%以上が、ケイ酸ナトリウムであり、
前記紫外線硬化型目止め塗料組成物が、多官能(メタ)アクリレートと、単官能(メタ)アクリレートと、顔料と、光重合開始剤とを含み、
前記紫外線硬化型目止め塗料組成物中の多官能(メタ)アクリレートと、単官能(メタ)アクリレートとの含有比率が、質量比で、95~50:5~50であり、
前記多官能(メタ)アクリレートとして、エポキシ(メタ)アクリレートと、エポキシ(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレートを含み、
前記エポキシ(メタ)アクリレートと、エポキシ(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレート及び単官能アクリレートとの含有比率が、質量比で、90~25:10~75であることを特徴とする窯業系無機質基材の塗装方法。
【請求項2】
前記紫外線硬化型目止め塗料組成物が、エポキシ(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレートとして、2官能(メタ)アクリレート、または2官能(メタ)アクリレートと3官能(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする請求項1に記載の窯業系無機質基材の塗装方法。
【請求項3】
前記紫外線硬化型目止め塗料組成物中の顔料の含有量が、30~70質量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の窯業系無機質基材の塗装方法。
【請求項4】
前記目止め塗膜の上に、さらに、上層用紫外線硬化型目止め塗料組成物を塗布し、紫外線照射により硬化させて、上層目止め塗膜を形成する工程
をさらに有し、
前記上層用紫外線硬化型目止め塗料組成物が、多官能(メタ)アクリレートと、顔料と、光重合開始剤とを含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の窯業系無機質基材の塗装方法。
【請求項5】
前記上層用紫外線硬化型目止め塗料組成物が、多官能(メタ)アクリレートとして、エポキシ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレートとを含むことを特徴とする請求項4に記載の窯業系無機質基材の塗装方法。
【請求項6】
前記上層用紫外線硬化型目止め塗料組成物が、エポキシ(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレートとして、2官能(メタ)アクリレート、または2官能(メタ)アクリレートと3官能(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする請求項5に記載の窯業系無機質基材の塗装方法。
【請求項7】
前記上層用紫外線硬化型目止め塗料組成物が、単官能(メタ)アクリレートをさらに含んでもよく、
前記上層用紫外線硬化型目止め塗料組成物中のエポキシ(メタ)アクリレートと、エポキシ(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレート及び単官能(メタ)アクリレートとの含有比率が、質量比で、75~20:25~80であり、かつ、多官能(メタ)アクリレートと、単官能(メタ)アクリレートとの含有比率が、質量比で、100~50:0~50であることを特徴とする請求項5または6に記載の窯業系無機質基材の塗装方法。
【請求項8】
前記上層用紫外線硬化型目止め塗料組成物中の顔料の含有量が、30~70質量%であることを特徴とする請求項4~7のいずれかに記載の窯業系無機質基材の塗装方法。
【請求項9】
前記窯業系無機質基材上に形成された上層目止め塗膜の表面を切削または研磨する工程と、
表面が切削または研磨された上層目止め塗膜上に、上塗り塗料組成物を塗布し、上塗り塗膜を形成する工程と
をさらに有することを特徴とする請求項4~8のいずれかに記載の窯業系無機質基材の塗装方法。
【請求項10】
前記下層用紫外線硬化型目止め塗料組成物から形成される下層目止め塗膜の平均膜厚が、1~150μmであり、
前記上層用紫外線硬化型目止め塗料組成物から形成される上層目止め塗膜の平均膜厚(但し、上層目止め塗膜の表面を切削または研磨する場合は、上層目止め塗膜の切削・研磨後の平均膜厚)が、1~150μmであることを特徴とする請求項4~9のいずれかに記載の窯業系無機質基材の塗装方法。
【請求項11】
前記窯業系無機質基材が、ケイ酸カルシウム板であることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の窯業系無機質基材の塗装方法。」
第3 特許異議の申立ての理由及び証拠方法
1 概要
申立人は、後記2の申立理由を主張し、その証拠方法として後記3の甲第1号証~甲第8号証(以下「甲1」等ともいう。)を提出した。甲1~甲8は、いずれも本件特許に係る出願の出願日よりも前に公開されたものである。
2 申立理由:甲1を主引例とした進歩性
本件発明1~11は、甲1に記載された発明、及び甲1~甲8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、本件発明1~11に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
3 証拠方法
甲第1号証:特開2011-246301号公報
甲第2号証:特開2019-43089号公報
甲第3号証:特開2016-65122号公報
甲第4号証:特開2019-26832号公報
甲第5号証:特開2004-331695号公報
甲第6号証:特開2015-117349号公報
甲第7号証:特開2007-186603号公報
甲第8号証:特開2019-23276号公報
第4 当審の判断
1 甲号証等の記載
(1)甲1には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、不燃性化粧板の基板として多く用いられるケイ酸カルシウム板の改質方法に関する。」
「【0006】
本発明が解決しようとする課題は下記の4点についてである。
1.健康被害や地球環境を悪化させる有機溶剤を使用しない下地処理方法が求められており、
2.下地処理をすることによりケイ酸カルシウム板の不燃性能を低下させることがない下地処理方法が求められており、
3.残塗料が次回使用に持ち越せ、機械の洗浄廃水が次回生産の原料水として使用できる省資源的方法が求められており、
4.化粧板として望ましい品質を確保できるケイ酸カルシウム板の改質方法が求められている。」
「【0012】
カルシウムシリケートのアルカリ金属塩の種類とその混合割合とそれを用いて改質されたケイ酸カルシウム板の塗膜性能を表1に示す。テスト条件は下記のとおりである。
ケイ酸カルシウム板:商品名 ハイラック 6mm厚 メーカー名 (株)エーアンドエーマテリアル 比重0.8
表面改質剤:A ナトリウムシリケート20%含有水溶液
表面改質剤:B カリウムシリケート20%含有水溶液
表面改質剤:C ナトリウムシリケート、カリウムシリケート混合水溶液
(A:B = 1:0.5、1:1、1:2、1:3、1:4)
表面改質材塗布量: 表面 100g/m2 裏面 50g/m2
目止め剤: 塗布量 150g/m2 商品名 AC-12 メーカー名 DIC(株)
研磨: ワイドベルトサンダーを用いて #240、#320で研磨
エナメル塗装: 塗布量 100g/m2 商品名 UCカラー メーカー名 DIC(株)
【0013】
【表1】
[図:0001422456000001.jpg]
【0014】
上記結果よりカリウムシリケート単体では硬度が低く、ナトリウムシリケート単体では耐水性が悪く、ナトリウムシリケート1部に対してカリウムシリケート1~2部混合することにより硬度を落とさないで耐水性が向上することが分かった。」
「【0030】
(実施例1)
表裏面を研削加工した6mm厚ケイ酸カルシウム板(商品名:ハイラックM 比重1.0 メーカー名:(株)エーアンドエーマテリアル)の表裏面にケイ酸のアルカリ金属塩水溶液(商品名:RCLガード メーカー名:(株)中日)を主剤100に対し水道水500の割合で調整し表面100g/m2、裏面30g/m2の割合で荒目スポンジロールコーターを用いて塗布する。RCLガードの組成はナトリウムシリケート(Na2SO3)30%、カリウムシリケート(K2SiO3)60%、水10%から成るものでこれを水道水5倍量混合して使用する。塗布後堆積し常温で2時間以上静置する。
【0031】
次に紫外線硬化型目止め剤(商品名:UV目止めAC-12 メーカー名:DIC(株))を表面側にリバースコーターで150g/m2の割合で塗布し、直ぐにUVランプ(80W/cm×5本)を照射し硬化させる。照射条件はコンベヤースピード15m/分でUVランプを通過させる。その表面を#280,#320番のサンドペーパーを装着した2ヘッドワイドベルトサンダーを通過させ、ロールコーター及びフローコーターを用いてアクリルウレタンエナメル塗料をイワタカップで30秒にウレタン用シンナーで調整し110g/m2の割合で塗布し3分間セッティングさせた後80℃、100℃、120℃の3つのゾーンに分かれたジェットゾーンドライヤーを合計5分間通過させて乾燥させ、40℃以下に冷却して積載する。上記工程を経て図1の化粧板を得た。
【0032】
次に7日間定温で養生後、塗膜付着性、60℃温水浸漬10日間テスト、表面鉛筆硬度テスト、表裏面のエフロ発生テストを実施した結果を表3に示す。
【0033】
【表3】
[図:0001422456000002.jpg]
*エフロテストは湿った砂に化粧板を半没させ日陰で扇風機で風を送り24時間後に表面にエフロの有無を確認する。結果から本発明による化粧板は従来技術による製品に比べ表面硬度が高く発熱量が1.9MJ/m2低くなることが確認された。」
(2)甲2には、次の記載がある。
「【0039】
目どめ処理層は、樹脂及び必要に応じて体質顔料等の添加剤を含有する目止め処理層用塗料から形成される。使用する顔料としては、炭酸カルシウム、タルク等の顔料を好ましく使用できる。目止め処理層用塗料においては使用する樹脂の使用量を増加するとより表面平滑性を高めることができ、その上に形成する化粧層の平滑性や光沢を高めることが可能である。しかし本発明の化粧板においては、無機質系基材の高い不燃性能を最大限発揮させることを重視し、樹脂の使用はむしろ必要最低限に留めつつ化粧板の意匠性や諸機能を発揮させることが好ましく、上記目どめ処理層の塗布量は乾燥塗膜で50~200g/m2、有機固形分配合比は30~60質量%が好ましく、40~50質量%がさらに好ましい。」
「【0046】
<実施例1>
[クリア層形成前の化粧板(白色塗装板)の作製]
まず、厚さ6mmの珪酸カルシウム板(三菱マテリアル建材社製ヒシタイカ#70)の片面に対して、珪酸カルシウム板の表層強化及びアルカリ成分の溶出を防止するための固形分比50%MDI(日本ポリウレタン製MR-100)をロールコーターで乾燥時の塗布量が40g/m2となるように塗工し、ベースコート層の一つであってシーラー処理を行うシーラー層を形成し、十分に乾燥させた。次に、その上から目どめ処理層として固形分比100%のエポキシアクリレート系紫外線硬化型塗料(DIC製AC-12)をロールコーターで乾燥時の塗布量100g/m2となるように塗工し、上記シーラー層と併せてベースコート層を形成した。次に、その上からサンディング加工を行い、表面が平滑な下地処理済み珪酸カルシウム板を得た。」
(3)甲3には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、ハードコーティング組成物、特にポリカーボネート基材との優れた密着力を発揮するハードコート層を提供するハードコーティング組成物、およびそれを用いたハードコートフィルムに関する。」
「0027】
本発明で用いるアクリル樹脂(A)は、好ましくは重量平均分子量5000~100000、好ましくは10000~20000を有するが、必ずしもこれらに限定されない。分子量が高くなり過ぎると、粘度が高くなる傾向があり、平滑性が損なわれ干渉縞が悪化し、分子量が低すぎると、粘度が下がる傾向があり、塗面の平滑性が保てず干渉縞が悪化する。」
(4)甲4には、次の記載がある。
「【請求項1】
(A)(メタ)アクリレート化合物 100質量部;及び、
(B)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物 1~45質量部;
を含み、ここで上記(A)(メタ)アクリレート化合物は
(a1)エポキシ変性(メタ)アクリレート 1~90質量%;及び、
(a2)エポキシ変性(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレート 99~10質量%;からなり、
ここで上記(a1)エポキシ変性(メタ)アクリレートと上記(a2)エポキシ変性(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートとの和は100質量%である、塗料。
【請求項2】
上記(a2)エポキシ変性(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートが、
(a2-1)エポキシ変性(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレート 10~80質量%;及び、
(a2-2)エポキシ変性(メタ)アクリレート以外の1官能(メタ)アクリレート 90~20質量%;からなり、
ここで上記(a2-1)エポキシ変性(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレート、及び上記(a2-2)エポキシ変性(メタ)アクリレート以外の1官能(メタ)アクリレートの和は100質量%である、請求項1に記載の塗料。」
「【0001】
本発明は塗料に関する。更に詳しくは、フィルム基材との密着性に優れた塗膜を形成することのできる塗料、及びこれを用いた化粧シートに関する。」
「【0108】
使用した原材料
(A)活性エネルギー線硬化性樹脂:
(a1)エポキシ変性(メタ)アクリレート:
(a1-1)日本化薬株式会社のエピクロロヒドリン変性1-6ヘキサンジオールジアクリレート「カヤラッドR-167(商品名)」。上記一般式(1)において、R1が水素、R2が水素、R3が(CH2)6の化合物。
【0109】
(a2)エポキシ変性(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレート:
(a2-1)エポキシ変性(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレート:
(a2-1-1)日本化薬株式会社のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート「カヤラッドDPHA(商品名)」。
【0110】
(a2-2)エポキシ変性(メタ)アクリレート以外の1官能(メタ)アクリレート:
(a2-2-1)共栄社化学株式会社のm-フェノキシベンジルアクリレート(CAS番号409325-06-0)「ライトアクリレートPOB-A(商品名)」。
(a2-2-2)共栄社化学株式会社のイソボルニルアクリレート「ライトアクリレートIB-XA(商品名)」。
【0111】
(B)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物:
(B-1)旭化成株式会社のヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(1,3,5-トリス(6-イソシアネートヘキシル)ビウレット)「デュラネート24A-100(商品名)」。
(B-2)旭化成株式会社のヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体「デュラネートTPA-100(商品名)」。」
「【0115】
例1
1.塗料の調製:
上記成分(a1-1)20質量部、上記成分(a2-1-1)30質量部、上記成分(a2-2-1)50質量部、上記成分(B-1)10質量部、上記成分(C-1)2質量部、上記成分(C-2)3質量部、及び上記成分(C-3)3質量部を混合攪拌して塗料を得た。
【0117】
例2~16
塗料の配合を表1~3の何れか1に示すように変更したこと以外は、例1と同様に行った。結果を表1~3の何れか1に示す。」
「【0121】
【表1】
[図:0001422456000003.jpg]
」
(5)甲5には、次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、活性エネルギー線照射による硬化反応を応用した注型重合用に用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。更に詳しくは、母型を用いて支持体上に必要な形状の樹脂硬化物からなる樹脂層を設けた物品の製造に使用される注型重合用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。」
「【0033】
本発明の注型重合用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物において、エポキシ(メタ)アクリレート(a)と、2官能(メタ)アクリレート(b)と、単官能(メタ)アクリレート(c)の合計100重量部中の各成分の含有量は、プラスチック基材に対する密着性が良好で、硬化させた樹脂層が優れた機械強度と、特に高い屈折率を発現することから、エポキシ(メタ)アクリレート(a)が20~70重量部、2官能(メタ)アクリレート(b)が5~50重量部、単官能(メタ)アクリレート(c)が5~40重量部であることが好ましい。」
「【0060】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるべきものではない。尚、例中の部及び%は、特に記載のない限り、すべて重量基準である。
【0061】
実施例1~5及び比較例1~4
第1表及び第2表に示す配合により、注型重合用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を調製した。なお、比較例2の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物については、50℃に加温して、またそれ以外の実施例及び比較例については、40℃に加温して樹脂組成物の粘度を低下させ、各試験用の硬化サンプルを作成した。」
「【0071】
【表1】
[図:0001422456000004.jpg]
【0073】
<第1表及び第2表の脚注>
(a-1) :ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量640g/eq)とアクリル酸を反応させたエポキシアクリレート
(b1-1):一般式(1)においてR1及びR2が水素原子で、m1+m2の平均値が4であるエチレンオキシド変性ビスフェノールAのジアクリレート
(b2-1):一般式(1)においてR1及びR2が水素原子で、m1+m2の平均値が10であるエチレンオキシド変性ビスフェノールAのジアクリレート
(b2-2):一般式(1)においてR1及びR2が水素原子で、m1+m2の平均値が14であるエチレンオキシド変性ビスフェノールAのジアクリレート
(b3-1):トリプロピレングリコールジアクリレート
(b3-2):ポリプロピレングリコール(分子量400)ジアクリレート
(b3-3):ポリエチレングリコール(分子量200)ジアクリレート
(c-1) :フェノキシエチルアクリレート
(d-1) :トリメチロールプロパンにプロピレンオキシドが平均6モル付加した多価アルコールのトリアクリレート(光開始剤):1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン」
(6)甲6には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、電子線又は紫外線等の活性エネルギー線の照射により、基材表面に硬化膜によるコーティング層を形成し、コーティング膜が有機溶剤に浸漬しても膨潤や剥離を起こすことなく良好な密着性を発現することが可能な活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物に関するものである。
本発明の組成物は、金属基材へのコーティング剤として好適に使用され、金属への密着性だけではなく、耐溶剤性も要求されるリチウムイオン電池の電極保護材の製造に好適に使用されるものであり、これら技術分野で賞用され得るものである。・・・」
「【0087】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。尚、以下の各例における「部」は重量部を意味する。
【0088】
1.実施例1~同9、比較例1~同4(活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物の製造)
下記表1~表3に示す各成分を、60℃で1時間加熱撹拌して溶解させ、活性エネルギー線硬化型コーティング剤組成物を製造した。
【0089】
【表1】
[図:0001422456000005.jpg]
」
「【0092】
表1~表3における数字は部数を意味する。又、表1~表3における略号は、下記の通りである。」
「【0095】
3)(C)成分
・P-2M:2-メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、共栄社化学(株)製 ライトエステルP-2M)
・OT-2501:ビスフェノールA型エポキシアクリレート、東亞合成(株)製 アロニックスOT-2501
・M-305:ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレート混合物、東亞合成(株)製 アロニックスM-305
・M-5700:2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート 東亞合成(株)製 アロニックス M-5700
・M-211B:ビスフェノールAエチレンオキサイド変性(平均4モル)ジアクリレート、東亞合成(株)製 アロニックスM-211B
・M-313:イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性物のジアクリレートとトリアクリレートの混合物、東亞合成(株)製 アロニックスM-313
・HPMA:2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、共栄社化学(株)製 ライトエステルHOP
・M-106:o-フェニルフェノキシエチルアクリレート、東亞合成(株)製 アロニックスM-106
・HPA:2-ヒドロキシプロピルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製 HPA」
(7)甲7には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、活性エネルギー線照射による硬化反応を応用した注型重合用に用いられる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。更に詳しくは、母型を用いて支持体上に必要な形状の樹脂硬化物からなる樹脂層を設けた物品の製造に使用される注型重合用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。」
「【0058】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。例中の部及び%は、透過率以外は特に記載のない限り、全て重量基準である。
【0059】
実施例1
第1表に示す配合により、注型重合用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物1を調整した。この注型重合用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物1を用いて硬化サンプル(硬化樹脂フィルム及び平滑硬化物)を作成し、外観、透過率、硬化性の評価を行った。硬化サンプルの調製方法と各評価方法を以下に示す。なお、硬化サンプルは活性エネルギー線硬化型樹脂組成物1を、40℃に加温して粘度を低下させて作成した。」
「【0066】
【表1】
[図:0001422456000006.jpg]
」
(8)甲8には次の記載がある。
「【請求項1】
エポキシアクリレート(A)と、多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、充填剤(D)とを含有する組成物で、粘度が35~180Pa・sの第1の目止め用樹脂組成物を塗布した上に、粘度が5~30Pa・sの第2の目止め用樹脂組成物を塗布し、当該第2の目止め用樹脂組成物の(C)の配合量がラジカル重合成分100重量部に対し1.5-7重量部である、窯業系無機基材の目止め方法。」
「【請求項5】
窯業系無機基材上にシーラーを塗布後、その上に請求項1または2いずれか記載の第1の目止め剤組成物を塗布して硬化後、更にその上に請求項1~3いずれか記載の第2の目止め剤組成物を塗布して硬化させ、その後に表面切削を行い、その上から上塗り塗装剤を塗布して紫外線硬化することを特徴とする、窯業系無機基材化粧板の製造方法。」
「【0001】
本発明は、窯業系無機基材の表面凹部分に対して、フラットな平面が得られる目止め方法と、該方法を用いた窯業系無機基材化粧板の製造方法に関する。」
「【0022】
本発明に使用される充填剤(D)は、基材凹部への目止め効果の主体となるものであり、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク、カオリンクレー、マイカ、シリカ、珪藻土、ガラスビーズ、有機微粒子などの公知の充填材をあげることができる。これらの中では樹脂との分散性、硬化後の切削性、コストなどの点から炭酸カルシウム及びタルクが好ましい。特に第2の目止め樹脂組成物では、硬度が低いタルクを併用することで切削性を向上させることができる。」
「【0028】
第1の目止め用樹脂組成物は窯業系無機基材に塗布されたシーラーの上に塗布される目止め剤で、粘度は35~180Pa・sである。35Pa・s未満では反応性希釈剤の基材への吸い込み量が多くなりすぎ、180Pa・s超では基材凹部への埋め込み性が低下する。第2の目止め用樹脂組成物は第1の組成物の上に塗布される目止め剤で、粘度は5~30Pa・sである。5Pa・s未満では液たれ等で作業性が低下し、30Pa・s超では塗布面の平滑性が低下する。粘度が比較的高い第1の目止め用樹脂組成物を塗布することで基材への反応性希釈剤の浸み込みを押さえで基材凹部への目止めを行い、更に粘度が低い第2の目止め用樹脂組成物を塗布することで表面を平滑にできるため、上塗り塗装剤を塗布しても優れた仕上がり外観を得ることが可能となる。なお第1の目止め用樹脂組成物粘度はBH型粘度計を用い、No.7ローターで25±1℃、回転数20rpmで測定し、第2の目止め樹脂組成物粘度はBM型粘度計を用い、No.4ローターで25±1℃、回転数12rpmで測定する。
【0029】
本発明の塗料組成物を珪酸カルシウム板などの窯業系無機質基材に塗布する前には、目止め剤との密着性向上、基材への反応性希釈剤の吸い込みを低減する目的で、シーラーを塗布することが好ましい。シーラー塗料は特に指定はなく、水系、溶剤系、無溶剤系いずれでも良い。水系および溶剤系は塗布後に乾燥させる必要があり、生産性の面では無溶剤系のプライマーが好適である。シーラー層の塗布量は乾燥塗膜で15~100g/m2が好ましい。」
「【0035】
目止め用樹脂組成物の調整
(A)としてAgysin1010(商品名:DSM-AGI社製、ビスフェノールA型エポキシジアクリレート)を、(B1)としてAPG-200(商品名:新中村化学社製、トリプロピレングリコールジアクリレート)を、(B2)としてTMP-A(商品名:共栄社製、トリメチロールプロパントリアクリレート)を、(C)としてIrgacure184(商品名:BASFジャパン社製)を、(D)として重質炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、平均粒径3μm)およびホワイトンSB(商品名:白石カルシウム社製、平均粒径1.8μm)およびナノックス23(商品名:丸尾カルシウム社製、平均粒径0.9~1.5μm)およびタルクRS515(商品名:富士タルク工業社製、平均粒径15μm:メディアン径D50)を、ポリオールとしてHSポリオール2000(商品名:豊国製油社製、ポリエステルポリオール)用い、表1および表2記載の配合にて遮光ビンに入れ均一になるまで撹拌脱泡し、実施例1~13および比較例1~2の目止め用樹脂組成物を調整した。
【0036】
表1 第1の目止め樹脂組成物
[図:0001422456000007.jpg]
」
2 甲1に記載された発明
甲1の【0030】~【0031】の実施例1に着目すれば、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
(甲1発明)
「ケイ酸カルシウム板の表裏面にケイ酸のアルカリ金属塩水溶液(商品名:RCLガード メーカー名:(株)中日)を塗布し、塗布後堆積し常温で2時間以上静置し、
次に紫外線硬化型目止め剤(商品名:UV目止めAC-12 メーカー名:DIC(株))を表面側に塗布し、直ぐにUVランプを照射し硬化させ、
サンドペーパーを装着した2ヘッドワイドベルトサンダーを通過させ、ロールコーター及びフローコーターを用いてアクリルウレタンエナメル塗料を塗布し、乾燥させ、化粧板を得る方法であって、
前記RCLガードは、ナトリウムシリケート30%、カリウムシリケート60%、水10%から成る、方法。」
3 対比・判断
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「ケイ酸カルシウム板」は、本件発明1の「窯業系無機質基材」に相当する。
甲1発明の「ケイ酸のアルカリ金属塩水溶液」は、本件発明1の「水系シーラー」及び「水系シーラーが、水と、ケイ酸アルカリ金属塩とを含み」に相当するから、甲1発明の「ケイ酸のアルカリ金属塩水溶液・・・を塗布し、塗布後堆積し常温で2時間以上静置し」は、本件発明1の「水系シーラーを塗布し、含浸させる工程」に相当する。
甲1発明の「紫外線硬化型目止め剤・・・を表面側に塗布し、直ぐにUVランプを照射し硬化させ」は、本件発明1の「紫外線硬化型目止め塗料組成物を塗布し、紫外線照射により硬化させて、目止め塗膜を形成する工程」に相当する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「窯業系無機質基材に、水系シーラーを塗布し、含浸させる工程と、
前記水系シーラーを含浸させた窯業系無機質基材上に、紫外線硬化型目止め塗料組成物を塗布し、紫外線照射により硬化させて、目止め塗膜を形成する工程と
を有し、
前記水系シーラーが、水と、ケイ酸アルカリ金属塩とを含む、
窯業系無機質基材の塗装方法。」
<相違点1>
水系シーラーが、本件発明1は「水系シーラー中のケイ酸アルカリ金属塩の40質量%以上が、ケイ酸ナトリウム」であるのに対し、甲1発明は、ナトリウムシリケート30%及びカリウムシリケート60%、すなわち、ケイ酸アルカリ金属塩の33.3%がケイ酸ナトリウムである点。
<相違点2>
紫外線硬化型目止め塗料組成物が、本件発明1は「多官能(メタ)アクリレートと、単官能(メタ)アクリレートと、顔料と、光重合開始剤とを含」むのに対し、甲1発明は「紫外線硬化型目止め剤(商品名:UV目止めAC-12 メーカー名:DIC(株))」であるが、顔料や光重合開始剤を含むか否かは定かでない点。
<相違点3>
紫外線硬化型目止め塗料組成物が、本件発明1は「紫外線硬化型目止め塗料組成物中の多官能(メタ)アクリレートと、単官能(メタ)アクリレートとの含有比率が、質量比で、95~50:5~50であり、前記多官能(メタ)アクリレートとして、エポキシ(メタ)アクリレートと、エポキシ(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレートを含み、前記エポキシ(メタ)アクリレートと、エポキシ(メタ)アクリレート以外の多官能(メタ)アクリレート及び単官能アクリレートとの含有比率が、質量比で、90~25:10~75である」であるのに対し、甲1発明は「紫外線硬化型目止め剤(商品名:UV目止めAC-12 メーカー名:DIC(株))」であるが、その組成の詳細は定かでない点。
イ 判断
事案に鑑み、まず、相違点3について検討する。以下、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と略記することもある。
甲1発明の「紫外線硬化型目止め剤(商品名:UV目止めAC-12 メーカー名:DIC(株))」は、甲2の【0046】の「エポキシアクリレート系紫外線硬化型塗料(DIC製AC-12)」との記載によれば、少なくともエポキシアクリレートを含むものと認められるが、その官能基数は不明であり、また、エポキシアクリレート以外の多官能アクリレートや単官能アクリレートを含むか否かも不明である。
また甲3の【0001】及び【0027】には、特にポリカーボネート基材との優れた密着力を発揮するハードコーティング組成部において、分子量が高くなりすぎると、粘度が高くなる傾向があり、平滑性が損なわれ干渉縞が悪化し、分子量が低すぎると、粘度が下がる傾向があり、塗面の平滑性が保てず干渉縞が悪化すること、すなわち、分子量との相関で粘度を適度な値に調整することにより、塗面の平滑性を保つことが記載されているが、エポキシアクリレート以外の多官能アクリレートや単官能アクリレートを添加することについては記載も示唆もない。
また、甲4の【請求項1】、【請求項2】及び【0001】には、フィルム基材との密着性に優れた塗膜を形成する塗料について、エポキシ変性アクリレート1~90質量%に対してエポキシ変性アクリレート以外のアクリレートを99~10質量%であり、エポキシ変性アクリレート以外のアクリレートは、多官能アクリレート10~80質量%に対して1官能アクリレートが90~20質量%である塗料と記載され、特に、甲4の【0121】の【表1】の「例3」には、エポキシ変性アクリレート35質量部と、エポキシ変性アクリレート以外の多官能アクリレート25質量部と、単官能アクリレート40質量部を含む塗料が記載され、この「例3」の塗料は、前記本件発明1の相違点3に係る構成を充足するものである。同様に、甲4の「例4」及び「例5」も、前記本件発明1の相違点3に係る構成を充足する。
しかしながら、甲4の【0121】の【表1】には、前記本件発明1の相違点3に係る構成を充足しない例1、例6及び例7(エポキシアクリレートが25未満)、並びに例2(単官能アクリレートが50超)も示されており、これら例1、例2、例6及び例7は、例3と同様に、甲4における特性が優れたものとされている。そうすると、甲4の記載に基づいて、例3の組成を選択して採用することは後知恵といわざるを得ないことであり、さらに特性に劣る例4及び例5の組成の塗料を選択する動機付けは全くない。
そもそも甲4の塗料は、窯業系無機質基材に塗布されるものではなく、フィルム基材に塗布されるものであることも考慮すると、甲1発明において、甲4の記載を参酌したとしても、前記相違点3に係る構成を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
また、甲5~甲7にも、甲4と同様に、実施例の一部に、前記本件発明1の相違点3に係る構成を充足する例が示されているが、前記甲4で検討したのと同様に、甲5~甲7の実施例には、前記本件発明1の相違点3に係る構成を充足しない例も示されていること、及び塗布対象が窯業系無機質基材ではないことを考慮すれば、甲1発明において、甲5~甲7の記載を参酌したとしても、前記相違点3に係る構成を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
また、甲8の【0028】には、窯業系無機基材に塗布されたシーラーの上に塗布される目止め用樹脂組成物は、粘度が35Pa・s未満では反応性希釈剤の基材への吸い込み量が多くなりすぎ、180Pa・s超では基材凹部への埋め込み性が低下するため、粘度が35~180Pa・sが好ましいことが記載され、その目止め用樹脂組成物の具体的な組成について、同【請求項1】等には「エポキシアクリレート(A)と、多官能(メタ)アクリレートモノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、充填剤(D)とを含有する組成物」と記載されている。しかしながら、当該組成物は、単官能アクリレートを含むものではなく、同【0036】の表1の実施例1~4を見ても、単官能アクリレートを含むものは示されていない。
そうすると、甲8の記載に基づいて、前記本件発明1の相違点3に係る構成を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
ウ 申立人の主張
申立人は、本件発明1の「多官能アクリレートとして、エポキシアクリレートと、エポキシアクリレート以外の多官能アクリレートを含み、前記エポキシアクリレートと、エポキシアクリレート以外の多官能アクリレート及び単官能アクリレートとの含有比率が、質量比で、90~25:10~75であること」との特定事項について、特許異議申立書の40頁11行~24行において、本件特許の明細書の【0033】及び【0047】には、その特定事項によりどのような効果を奏するのかについて何ら記載がなく、また、同【0093】の【表4-2】の「実施例8」と「参考例2」の比較、及び同【表4-4】の「実施例15」と「参考例3」の比較(実施例8及び実施例15は、エポキシアクリレート以外の多官能アクリレートを含む「配合例2-5」を使用し、参考例2及び参考例3は、エポキシアクリレート以外の多官能アクリレートを含まない「配合例2-6」を使用。)に基づいて、アクリレートが、エポキシアクリレート以外の多官能アクリレートを含んでいても含んでいなくても塗料としての性能に差がないから、当該特定事項は本件発明1の進歩性に何ら影響しない、との趣旨の主張をしている。
しかしながら、本件特許の明細書の【0086】の【表2】の「配合例2-5」は、「配合例2-6」と比べると、エポキシアクリレート以外の多官能アクリレートの有無だけでなく、エポキシアクリレートの添加量(配合例2-5は36.5、配合例2-6は31.5)も異なっており、配合例2-6を用いた参考例2と、エポキシアクリレートの添加量が同量である配合例2-1~配合例2-3を用いた実施例5~実施例7を比べると、エポキシアクリレート以外の多官能アクリレートを含まない参考例2よりも、エポキシアクリレート以外の多官能アクリレートを含む実施例5~実施例7の方が、外観の評価値が良好であるから、エポキシアクリレート以外の多官能アクリレートを含まない参考例2よりも、エポキシアクリレート以外の多官能アクリレートの有無が、本件発明1の効果に影響しないとはいえない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
エ 小括
以上をまとめると、前記相違点1及び2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲1~甲8に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明2~11
本件発明2~11は、いずれも本件発明1を全て包含し、それぞれ個別の技術事項を追加したものである。そうすると、本件発明2~11は、前記(1)に示した理由と同様の理由により、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲1~甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、異議申立人による特許異議申立書の理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701079