特許異議申立
2024-701039
女性特有の嗜好変化に伴う広告配信システムおよび広告配信方法
- 審判番号
- 2024-701039
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-119718
- 登録番号
- 7473261
- 請求日
- 2024年10月22日
- 審決日
- 2025年12月11日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ロゴスサイエンス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人高橋特許事務所
- 【異議申立人】弁理士法人 エピファニー特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 相崎 裕恒
- 審判官 古川 哲也
- 審判官 小池 堂夫
- 分類
- P1652.537-ZE (G06Q) / P1652.121-ZE (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第36条、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7473261号発明「女性特有の嗜好変化に伴う広告配信システムおよび広告配信方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7473261号の請求項1に係る特許を取り消す。
特許第7473261号の請求項2、3、5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7473261号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和5年7月24日に出願され、令和6年4月15日にその特許権の設定登録がされ、同月23日に特許掲載公報が発行された。
そして、本件特許の請求項1~3、5に対して、同年10月22日に特許異議申立人 弁理士法人エピファニー特許事務所により、特許異議の申立てがされた。
その後の手続の経緯は、次のとおりである。
令和 6年12月 5日付け:取消理由通知書
令和 7年 2月 7日 :特許権者による訂正請求、意見書の提出
同年 3月13日付け:手続補正指令書
同年 4月 3日 :訂正請求書に対する手続補正書の提出
同月25日付け:訂正拒絶理由通知書
(特許権者による応答なし)
同年 6月12日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年 8月15日 :特許権者による訂正請求、意見書の提出
同年 9月11日付け:訂正拒絶理由通知書
(特許権者による応答なし)
なお、令和7年8月15日の訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)により、同年2月7日の訂正請求は、取り下げられたものとみなされる(特許法120条の5第7項)。
第2 訂正の適否について
合議体は、令和7年9月11日付け訂正拒絶理由通知書で通知したのと同様の理由により、本件訂正請求を認めないと判断する。
その具体的理由は以下のとおりである。
1 訂正請求の内容
本件訂正請求は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「前記広告情報に含まれる商品またはサービスの生理における広告時期と前記ユーザの生理周期とが一致する日付で、前記ユーザ端末に対して、前記配信機能によって、前記商品またはサービスの広告を配信または通知する機能」を、「前記広告情報に含まれる商品またはサービスの生理における広告時期と前記ユーザの生理周期とが一致する日付で、前記ユーザ端末に対して、前記配信機能によって、前記商品またはサービスの広告を配信または通知して、前記ユーザの生理周期におけるどんより期、キラキラ期、スロー期、イライラ期の各々で、前記広告情報に含まれる商品またはサービスであって広告主が希望する商品またはサービスの広告時期を、ユーザのどんより期、キラキラ期、スロー期、イライラ期と一致させる機能」に訂正する。
また、請求項1の記載を引用する請求項2~5も、一群の請求項として同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の「前記ユーザの現在の生理周期における基礎体温の変動を算出し、基礎体温周期を算出する機能を有し」を「前記ユーザの現在の生理周期における基礎体温の変動を算出し、基礎体温周期を算出して、現在の前記ユーザがどんより期、キラキラ期、スロー期、イライラ期の何れに該当するのかを算出する機能を有し」に訂正する。
また、請求項1の記載を引用する請求項2~5も、一群の請求項として同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1の「発送状況」を「発送情報」に訂正する。
また、請求項1の記載を引用する請求項2~5も、一群の請求項として同様に訂正する。
2 訂正の適否についての判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、令和6年12月5日付けの取消理由通知書で不明確と指摘した記載を明確にするためのものであるから、特許法120条の5第2項ただし書3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
イ 新規事項の追加の有無について
本件特許の明細書の段落【0011】、【0013】、【0014】、【0016】、及び図1、図4、図5を参照すれば、訂正事項1に係る訂正は、本件特許の明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の
「前記広告情報に含まれる商品またはサービスの生理における広告時期と前記ユーザの生理周期とが一致する日付で、前記ユーザ端末に対して、前記配信機能によって、前記商品またはサービスの広告を配信または通知する」
との機能について、当該機能がさらに
「前記ユーザの生理周期におけるどんより期、キラキラ期、スロー期、イライラ期の各々で、前記広告情報に含まれる商品またはサービスであって広告主が希望する商品またはサービスの広告時期を、ユーザのどんより期、キラキラ期、スロー期、イライラ期と一致させる」
ものである旨の記載を付加して限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張するものではなく、変更するものでもない。
よって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、令和6年12月5日付けの取消理由通知書で不明確と指摘した記載を明確にするためのものであるから、特許法120条の5第2項ただし書3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
イ 新規事項の追加の有無について
本件特許の明細書の段落【0011】、【0013】、【0014】、【0016】、及び図1、図4、図5を参照すれば、訂正事項2に係る訂正は、本件特許の明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
よって、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の
「前記ユーザの現在の生理周期における基礎体温の変動を算出し、基礎体温周期を算出する」
との機能について、当該機能がさらに
「現在の前記ユーザがどんより期、キラキラ期、スロー期、イライラ期の何れに該当するのかを算出する」
ものである旨の記載を付加して限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張するものではなく、変更するものでもない。
よって、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、誤記と認められる記載を訂正するためのものであり、かつ、令和6年12月5日付けの取消理由通知書で不明確と指摘した記載を明確にするためのものであるから、特許法120条の5第2項ただし書2号及び3号に規定する誤記又は誤訳の訂正及び明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。
イ 新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張又は変更について
訂正前の請求項1には「発送状況」と記載されていたのに対し、訂正後の請求項1には「発送情報」と記載されている。
本件特許の明細書【0017】をはじめとした明細書等全体を参照すれば、訂正前の請求項1の「発送状況」は誤記と認められ、「発送情報」を意図していたことは明らかである。そのため、訂正事項3は、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上のとおりであるから、訂正事項3に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。
ウ 独立特許要件について
(ア)請求項4は、特許異議の申立てがされていない請求項であり、訂正事項3に関する訂正は、誤記又は誤訳の訂正も目的とするものであるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条7項で規定するとおり、請求項4に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。
そこで、請求項4に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否かについて検討する。
(イ)訂正後の請求項4が引用する請求項1には、依然として「生理における広告時期と前記ユーザの生理周期とが一致する日付」との記載(令和6年12月5日付けの取消理由通知書及び令和7年6月12日付け取消理由通知書(決定の予告)(以下、単に「決定の予告」という。)で不明確であると指摘した記載)が含まれる。
当該記載は、決定の予告の第5の1(1)にも示したとおり、生理における期間のうち広告を行う期間を意味する「広告時期」と、月経から次の月経までの日数を意味する「生理周期」とが「一致する」とはどのような意味か、「一致する日付」とはどのような日付かについて、請求項1の記載から特定することができず、明細書の記載を参酌しても、記載の意味を特定することができないから、不明確であり、当該記載を含む請求項1の記載を引用する請求項4に係る発明は、不明確である。
この点について、特許権者は、同年8月15日付け意見書の5(4)において、当該文言は、ユーザが生理周期における「どんより期」、「キラキラ期」、「スロー期」、「イライラ期」の何れに属するのかを判断して、各々の時期において、ユーザの購入意欲が喚起されると推測される商品またはサービスの広告を配信、通知することを広告主が希望すれば、係る広告主の希望に沿って、前記商品又はサービスの広告をユーザに対して配信、通知する事を意味しており、そのことが明確になる様に訂正事項1のとおり訂正することで当該理由が解消した旨を主張している。
しかしながら、訂正事項1に係る訂正により、訂正前の機能に対して、
「前記ユーザの生理周期におけるどんより期、キラキラ期、スロー期、イライラ期の各々で、前記広告情報に含まれる商品またはサービスであって広告主が希望する商品またはサービスの広告時期を、ユーザのどんより期、キラキラ期、スロー期、イライラ期と一致させる」
との事項を限定したとしても、当該事項は、「前記ユーザの生理周期」が「どんより期、キラキラ期、スロー期、イライラ期」に分けられることを特定するものであって、訂正事項1に係る訂正後においても、「前記ユーザの生理周期」が、月経から次の月経までの日数を指すことや「一致する日付」がどのような日付かは、訂正前と同様に不明確であって、先に通知した取消理由は解消していない。
(ウ)さらに、訂正後の請求項4が引用する請求項1には、依然として「前記ユーザの現在の生理周期における基礎体温の変動を算出し、基礎体温周期を算出」する旨の記載(令和6年12月5日付けの取消理由通知書及び令和7年6月12日付け決定の予告で不明確であると指摘した記載)が含まれる。
当該記載は、決定の予告の第5の1(2)にも示したとおり、「前記ユーザの現在の生理周期」における「基礎体温の変動を算出」した上で、その時点で既知である「前記ユーザの現在の生理周期」と一致するはずの「基礎体温周期」を「算出する」ことを意味するから、技術的な意義が不明確であり、当該記載を含む請求項1の記載を引用する請求項4に係る発明は、不明確である。
この点について、特許権者は、同年8月15日付け意見書の5(5)において、当該文言は、基礎体温の変動と基礎体温周期から、前記ユーザが生理周期におけるどんより期、キラキラ期、スロー期、イライラ期の何れかにあるかを判断する機能を本発明の広告配信システムが有していることを意味しており、そのことが明確になる様に訂正事項2のとおり訂正することで当該理由が解消した旨を主張している。
しかしながら、訂正事項2に係る訂正により、訂正前の機能に対して、
「現在の前記ユーザがどんより期、キラキラ期、スロー期、イライラ期の何れに該当するのかを算出する」
との事項を限定したとしても、決定の予告の第5の1(2)で指摘したとおり、「生理周期」と「基礎体温の周期」が一般に一致するものであることに変わりはない。
そうすると、請求項1に記載の「前記ユーザの現在の生理周期における基礎体温の変動を算出し、基礎体温周期を算出する」こととは、「前記ユーザの現在の生理周期」における「基礎体温の変動を算出」した上で、その時点で既知である「前記ユーザの現在の生理周期」と一致するはずの「基礎体温周期」を「算出する」こととなり、依然として技術的な意義が不明確である。
(エ)以上(イ)、(ウ)を踏まえると、訂正後の請求項4に係る発明は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たさず、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
(オ)よって、訂正事項3に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条7項の規定に適合しない。
(4)まとめ
上記(3)で検討したとおり、訂正事項3に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条7項の規定に適合しないから、訂正事項1~3からなる本件訂正請求は、一体として全て認められない。
よって、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認めない。
第3 本件特許発明
本件訂正請求は、上記第2のとおり認めることはできないので、本件特許の請求項1~3、5に係る発明(以下「本件特許発明1」などという。)は、本件特許の特許公報における特許請求の範囲の請求項1~3、5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
ユーザの生理に関する情報を含むユーザ情報と、生理と関連づけされた販売者の商品またはサービスの情報を含む広告情報とを記憶した記憶装置と、
カレンダー機能と、
広告情報を配信する配信または通知機能と、
システムの動作を制御する制御部と、
ユーザ端末を含む広告配信システムにおいて、
制御部が、
カレンダー機能によって提供される日時情報と、前記ユーザの生理とを関連付けて、前記広告情報に含まれる商品またはサービスの生理における広告時期と前記ユーザの生理周期とが一致する日付で、前記ユーザ端末に対して、前記配信機能によって、前記商品またはサービスの広告を配信または通知する機能と、
前記ユーザの現在の生理周期における基礎体温の変動を算出し、基礎体温周期を算出する機能を有し、
前記ユーザ端末を介して経験サンプリング法により症状メモリに入力された前記ユーザの生理周期に合わせた身体症状、精神症状、社会的症状或いは基礎体温を生理周期と関連付けて記憶する機能と、前記ユーザが妊娠を望んでいるか否か、前記ユーザの月経感・月経イメージ或いは前記ユーザの母性性・性役割パーソナリティを記憶する機能と、
症状メモリに入力された情報を用いて前記ユーザの生理周期をカテゴライズする機能と、
ユーザのデータを順次記憶するユーザリストにユーザを特定するための情報とそのユーザの直近の生理日を記憶させる機能と、
前記カレンダー機能から取得した前記日時情報を一時記憶し、前記日時情報に基づいてユーザリストに記憶された次回生理日を更新し、一時記憶された日時情報から前記症状メモリに入力された情報を用いてカテゴライズされた前記ユーザの生理周期におけるどの周期であるかを取得して更新する機能と、取得し更新したユーザの生理周期を一時記憶する機能と、
前記広告情報に含まれる商品またはサービスの発送状況に基づいて広告情報を提供する時期を修正する機能を有し、
一時記憶された前記ユーザの生理周期におけるどの時期であるかに基づいて、前記配信機能によって前記商品またはサービスの広告を配信または通知することを特徴とする広告配信システム。
【請求項2】
前記ユーザの生理の周期を、気分が沈みがちで生理痛を感じる時期と、明るい気分で前向きになる時期と、気分が不安定になる時期と、マイナス思考になり易い時期とにカテゴライズする機能と、
前記ユーザの生理と関連付ける広告として、気分が沈みがちで生理痛を感じる時期には心と体をいたわる商品の広告を、気分が不安定になる時期には肌荒れ予防のための商品の広告を関連付ける機能と、
前記ユーザが明るい気分で前向きになる時期には、化粧品新製品やソルト系入浴剤或いはダイエットプログラムを関連付ける機能を有することを特徴とする請求項1に記載の広告配信システム。
【請求項3】
ユーザ情報が過去のユーザの生理と関係した購買情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の広告配信システム。」
「【請求項5】
前記ユーザの生理の周期に関連してアドバイス情報を記憶したリストを作成し、ユーザにメッセージを配信・通知することを特徴とする請求項1に記載の広告配信システム。」
第4 決定の予告に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審において、決定の予告で特許権者に通知した取消理由は、請求項1に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである、というものである。
2 判断
(1)「生理における広告時期と前記ユーザの生理周期とが一致する日付」について
本件特許の請求項1には、「生理における広告時期と前記ユーザの生理周期とが一致する日付」と記載されている。
ここで、「広告時期」とは、文言上、「広告を行う時期」を意味し、「時期」とは一般に、ある幅を持った期間を意味するから、「生理における広告時期」は、文言の上では、生理における期間のうち広告を行う期間を意味することになる。
他方、「生理周期」とは、一般に「月経の周期」を意味し、「周期」は、循環して起こる現象や動作が、ひと回りして前と同じ状態になるまでの時間を意味するから、「生理周期」は、通常は、月経(生理日、段落【0013】)から次の月経までの日数を指すと解される。当該解釈は、明細書の「月経周期が平均的な28日の場合、」(段落【0011】)や、「直近の生理日情報と周期情報から次回の生理日を算出し、また、生理周期を4等分し、(A)どんより期、(B)キラキラ期、(C)スロー期、(D)イライラ期、とし、」(段落【0013】)等の記載からも裏付けられる。
そうすると、請求項1の記載は、生理における期間のうち広告を行う期間を意味する「広告時期」と、月経から次の月経までの日数を意味する「生理周期」とが「一致する」とはどのような意味か、「一致する日付」とはどのような日付かについて、請求項1の記載から特定することができず、当該記載の意味が不明確である。さらに、明細書の記載を参酌しても、当該記載の意味を特定することができない。
よって、請求項1の「生理における広告時期と前記ユーザの生理周期とが一致する日付」との記載は、不明確である。
(2)「前記ユーザの現在の生理周期における基礎体温の変動を算出し、基礎体温周期を算出する機能」について
本件特許の請求項1には、「前記ユーザの現在の生理周期における基礎体温の変動を算出し、基礎体温周期を算出する機能」と記載されており、上記(1)で検討したとおり、「生理周期」は月経から次の月経までの日数を示すものであるところ、この記載によれば、「基礎体温の変動を算出」する時点で「前記ユーザの現在の生理周期」は既知であるものと解される。
ここで、一般に「生理周期」と「基礎体温の周期」は一致するものであることが技術常識であって、明細書段落【0011】の以下の記載も、当該事項を前提としたものと解される。
「多くの女性の月経周期の母集団に含まれる基礎体温の時系列変化を表す情報の中にユーザにおける現月経周期のそれまでの基礎体温の変動傾向に近似しているものがあれば、ユーザのその後の基礎体温はその近似した基礎体温の時系列にほぼ従うものとして、その近似した基礎体温の時系列を予測結果としてユーザに提示することもできる。また、図2で左側の温度の低い時期(低温期)を卵胞期、右側の温度の高い時期(高温期)を黄体期と呼び、低温期から高温期への遷移の時期に排卵が行われ、さらに、月経周期における、低温期の前半を月経期、後半を卵胞期、排卵の前後を排卵期、その後を黄体期と呼ぶこともある。」
そうすると、「前記ユーザの現在の生理周期における基礎体温の変動を算出し、基礎体温周期を算出する」こととは、「前記ユーザの現在の生理周期」における「基礎体温の変動を算出」した上で、その時点で既知である「前記ユーザの現在の生理周期」と一致するはずの「基礎体温周期」を「算出する」こととなり、技術的な意義が不明確である。
よって、請求項1の「前記ユーザの現在の生理周期における基礎体温の変動を算出し、基礎体温周期を算出する機能」との記載は、不明確である。
(3)「前記広告情報に含まれる商品またはサービスの発送状況に基づいて広告情報を提供する時期を修正する機能」について
本件特許の請求項1には、「前記広告情報に含まれる商品またはサービスの発送状況に基づいて広告情報を提供する時期を修正する機能」と記載されている。
これに対する明細書の記載を参照すると、段落【0017】に以下のとおり記載されている。
「日時情報に関して、発送情報を加味して広告時期を修正することもできる。たとえば、A社からユーザ1までの配送所要日時が2日だったとすると、保湿クリームの広告はユーザ1のスロー期が始まる2日前に配信される。」
請求項1の用語「発送状況」が、明細書における用語「発送情報」、あるいはその例示である「配送所要日時」と同一の意味であるのか、異なる意味であるのか、不明確である。
それに伴い、請求項1の「発送状況に基づいて広告情報を提供する時期を修正する」との記載も、時期が具体的にどのように修正されるのか不明確である。
よって、請求項1の「前記広告情報に含まれる商品またはサービスの発送状況に基づいて広告情報を提供する時期を修正する機能」との記載は、不明確である。
3 小括
以上のとおり、本件特許に係る出願の請求項1の記載は、上記(1)~(3)に示した点において、特許法第36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
よって、請求項1に係る本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきものである。
第5 取消理由通知書において採用しなかった特許異議申立理由について
1 請求項2、3、5に係る特許に対する申立理由及び主張の概要
特許異議申立書の申立理由のうち、上記第4に示した請求項1以外の請求項に係る特許についての申立理由は、下記(1)及び(2)のとおりである。
(1) 進歩性欠如(特許異議申立書7~10頁)
請求項2に係る発明(以下「本件特許発明2」という。)は、下記甲第1号証~甲第4号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明2についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
(2) サポート要件違反(特許異議申立書14頁)
請求項2、3及び5に係る本件特許は、下記ア~ウの点で、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ア 請求項2では「前記ユーザの生理の周期を、気分が沈みがちで生理痛を感じる時期と、明るい気分で前向きになる時期と、気分が不安定になる時期と、マイナス思考になり易い時期とにカテゴライズする機能と、前記ユーザの生理と関連付ける広告として、気分が沈みがちで生理痛を感じる時期には心と体をいたわる商品の広告を、気分が不安定になる時期には肌荒れ予防のための商品の広告を関連付ける機能と、前記ユーザが明るい気分で前向きになる時期には、化粧品新製品やソルト系入浴剤或いはダイエットプログラムを関連付ける機能」を発明特定事項としている。ここで、発明の詳細な説明の段落【0011】、【0013】、【0014】に記載された実施形態には、いずれの構成がこの制御を行うかは記載されていない。(特許異議申立書14頁1段落目)
イ 請求項3では「ユーザ情報が過去のユーザの生理と関係した購買情報を含む」ことを発明特定事項としているが、発明の詳細な説明の段落【0019】に記載された実施形態には「ユーザリストがユーザの過去の生理周期と関係した購買情報を含み」ことが記載されるだけで、生理周期以外と関係した生理と関係した購買情報を含むことは明細書に記載されていない。また、いずれの構成がこの制御を行うかも記載されていない。(特許異議申立書14頁2段落目)
ウ 請求項5では「前記ユーザの生理の周期に関連してアドバイス情報を記憶したリストを作成」ことを発明特定事項としているが、発明の詳細な説明の段落【0020】に記載された実施例には「生理周期のカテゴリごとのアドバイス情報を記憶したリストを作成し」ことが記載されるだけで、生理周期のカテゴリ以外と関係したアドバイス情報を含むことは明細書に記載されていない。また、いずれの構成がこの制御を行うかも記載されていない。(特許異議申立書14頁3段落目)
2 証拠方法
甲第1号証:特開2003-36392号公報
甲第2号証:テルル(株式会社P-UP World),“ルナルナってどんなサービス?使い方や有料版のサービス内容を徹底解説!”,[online],2022年3月26日,[検索日2025年11月17日],取得先<https://www.teluru.jp/posts/1220>
甲第3号証:特開2019-63027号公報
甲第4号証:登録実用新案第3125776号公報
3 甲号証の記載
特許異議申立の証拠方法として提出された甲第1号証から甲第4号証(以下「甲1」などという。)には、それぞれ以下の事項が記載されている。
(1) 甲1(特開2003-36392号公報)
ア 甲1の摘記
本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1(平成15年2月7日公開。)には、次の記載がある。(下線は当審において付与した。下記(2)から(4)において同様。)
「【0001】
本発明は、広告の有効な表示に関する。」
「【0002】
女性特有の生理現象として月経がある。月経の状態として、「月経中」、「危険日」(妊娠しやすい時期)などがある。従来より、このような月経の状態に対処するための商品が販売されている。例えば、「月経中」に見られる生理現象に対処するために生理用品が、「危険日」に見られる生理現象に対処するために避妊具が販売されている。また、このような商品の販売を促進するために広告が行われている。」
「【0007】
よって、指定された期日における月経の状態に基づきどのような広告を行うかが決定されるため、月経の状態に対処するための商品等の広告を適切な時期に表示できる。」
「【0017】
図1は、本発明の実施の形態にかかるクライアント1およびサーバ2を有する通信システムの構成を示すブロック図である。クライアント1は、コンピュータ又は無線移動体通信端末(例えば携帯電話)である。サーバ2は、クライアント1にインターネットなどのネットワークにより接続されている。
【0018】
クライアント1は、ユーザ認証要求部10、月経情報処理インタフェース20を備える。サーバ2は、ユーザ認証部30、認証情報記録部32、広告決定装置40を備える。」
「【0020】
月経情報処理インタフェース20は、月経情報入力部21、月経情報表示部22、予測法選択部23、期日指定部24、予測結果表示部25、広告表示部26を有する。月経情報処理インタフェース20は、ユーザ認証要求部10から動作を許可する旨の信号を受けた場合に作動する。
【0021】
月経情報入力部21は、ユーザの月経に関する情報を入力する。入力された情報はサーバ2に送られる。月経に関する情報は、例えば、前回の月経開始日、月経周期および月経期間である。ただし、月経周期および月経期間は、ばらつきがあるので、過去の平均値をとることが好ましい。また、前回の月経開始日等に代えて、あるいは付加して過去の一定期間の基礎体温を入力するようにすることが好ましい。また、必要に応じて、年齢、居住地、職業、血圧等の基礎データを入力してもよい。」
「【0030】
広告決定装置40は、月経情報記録部42、月経情報予測部44、広告記録部46、表示広告決定部48、広告頻度カウンタ49を有する。広告決定装置40は、ユーザ認証部30から動作を許可する旨の信号を受けた場合に作動する。
【0031】
月経情報記録部42は、月経情報入力部21から送られた月経に関する情報を記録する。
【0032】
月経情報予測部44は、期日指定部24により指定された期日あるいは期日指定部24により予測の要求が送られた日(すなわち、広告決定装置40を利用した当日)における月経の状態を、月経情報記録部42の記録内容に基づき予測する。ただし、予測法は予測法選択部23により選択されたものとする。予測結果は、予測結果表示部25および表示広告決定部48に送られる。
【0033】
予測法が荻野式である場合の、月経情報予測部44の予測動作について図2を参照して説明する。図2(a)は、月経周期、月経期間および排卵日の関係を示す線図である。図2(a)に示すように、月経はある一定の周期(例えば28日)に起こる。月経の期間はおよそ4~7日である。また、排卵日は月経開始からおよそ14日とされている。ここで、精子の生存期間をおよそ3日、卵子の生存期間をおよそ1日とする。すると、図2(b)に示すように、月経中(4~7日)、危険日(妊娠しやすい日)(11~15日)となり、他は安全日(一応、妊娠しにくい日)となる。また、月経開始日の前の数日を月経直前と定義してもよい。このような理論に基づけば、前回の月経開始日、月経周期および月経期間がわかれば、月経中、危険日、安全日、月経直前が予測できる。
【0034】
ただし、排卵日は変動が激しいため、基礎体温法の方が月経中、危険日、安全日、月経直前の予測精度が高い。基礎体温法は、基礎体温が低温域から高温域に変動する日が排卵日であること、排卵日からおよそ14日で月経開始となることに着目したものである。ただし、基礎体温法の採用にあたっては基礎体温を計測し続けることが困難であるため、簡便な荻野式の意義がある。
【0035】
広告記録部46は、月経状態に対応した広告を記録する。広告記録部46の記録内容の一例を図3に示す。月経状態が「月経中」の場合は生理用品の広告を、月経状態が「危険日」の場合は避妊具の広告を、月経状態が「月経直前」の場合はプリメンストレーションの広告を対応づけて記録する。なお、プリメンストレーションとは、月経前に服用して月経の苦痛を和らげることを目的とする薬剤である。例えば、生理痛を軽減するための鎮痛剤などである。なお、ユーザの居住地のデータを活用して、居住地に応じてさらに広告の種類を変えてもよい。
【0036】
表示広告決定部48は、月経情報予測部44によって予測された月経の状態に基づき、広告記録部46から広告を読出し、どのような広告を行うかを決定する。決定された広告は、広告表示部26に送られる。」
「【0046】
本発明の実施形態によれば、指定された期日における月経の状態に基づきどのような広告を行うかが決定されるため、月経の状態に対処するための商品等の広告を適切な時期に表示できる。」
「【0049】
よって、指定された期日における月経の状態に基づきどのような広告を行うかが決定されるため、月経の状態に対処するための商品等の広告を適切な時期に表示できる。」
「【図1】
[図:0001432050000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001432050000002.jpg]
」
イ 甲1の記載事項
上記アで摘記した記載によると、甲1には、次の技術的事項が記載されているに等しいといえる。
(ア)甲1の段落【0017】【0018】【0020】【0030】【図1】を参照すれば、甲1には、月経情報記録部42、月経情報予測部44、広告記録部46、表示広告決定部48を備えるサーバ2と、広告表示部26を備えるクライアント1と、を有する通信システムが記載されているといえる。
(イ)甲1の段落【0021】【0031】を参照すれば、甲1には、月経情報記録部42は、ユーザの月経に関する情報を記録することが記載されているといえる。ここで、段落【0021】を参照すれば、月経に関する情報とは、例えば、前回の月経開始日、月経周期、月経期間、過去の一定期間の基礎体温である。
(ウ)甲1の段落【0032】には、月経情報予測部44は、指定された期日あるいは要求が送られた日における月経の状態を、月経情報記録部42の記録内容に基づき予測することが記載されている。
当該予測の方法に関し、甲1の段落【0032】【0034】には、基礎体温が低温域から高温域に変動する日が排卵日であること、排卵日からおよそ14日で月経開始となることに着目したものである基礎体温法を選択できることが記載されているといえる。
また、甲1の段落【0002】【0035】【図3】によれば、月経の状態として「月経中」、「危険日」、「月経直前」などに分類されることが記載されているといえる。
以上によれば、甲1には、月経情報予測部44は、指定された期日あるいは要求が送られた日における月経の状態を、月経情報記録部42の記録内容に基づき予測し、その予測法は、基礎体温が低温域から高温域に変動する日が排卵日であること、排卵日からおよそ14日で月経開始となることに着目したものである基礎体温法を選択でき、月経の状態として「月経中」、「危険日」、「月経直前」などに分類されることが記載されているといえる。
(エ)甲1の段落【0035】【図3】には、広告記録部46は、月経状態に対応した広告を記録するものであり、記録内容の一例として、月経状態が「月経中」の場合は生理用品の広告を、月経状態が「危険日」の場合は避妊具の広告を、月経状態が「月経直前」の場合はプリメンストレーションの広告を対応づけて記録することが記載されている。
(オ)甲1の段落【0036】【0018】【0020】を参照すれば、甲1には、表示広告決定部48は、月経情報予測部44によって予測された月経の状態に基づいて、広告記録部46から広告を読出して、どのような広告を行うかを決定し、決定した広告をクライアント1の広告表示部26に送ることが記載されているといえる。
ウ 甲1発明
上記イから、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
月経情報記録部42、月経情報予測部44、広告記録部46、表示広告決定部48を備えるサーバ2と、
広告表示部26を備えるクライアント1と、
を有する通信システムであって、(上記イ(ア))
サーバ2において、
月経情報記録部42は、ユーザの月経に関する情報を記録し、月経に関する情報とは、例えば、前回の月経開始日、月経周期、月経期間、過去の一定期間の基礎体温であり、(上記イ(イ))
月経情報予測部44は、指定された期日あるいは要求が送られた日における月経の状態を、月経情報記録部42の記録内容に基づき予測し、その予測法は、基礎体温が低温域から高温域に変動する日が排卵日であること、排卵日からおよそ14日で月経開始となることに着目したものである基礎体温法を選択でき、月経の状態として「月経中」、「危険日」、「月経直前」などに分類され、(上記イ(ウ))
広告記録部46は、月経状態に対応した広告を記録するものであり、記録内容の一例として、月経状態が「月経中」の場合は生理用品の広告を、月経状態が「危険日」の場合は避妊具の広告を、月経状態が「月経直前」の場合はプリメンストレーションの広告を対応づけて記録し、(上記イ(エ))
表示広告決定部48は、月経情報予測部44によって予測された月経の状態に基づいて、広告記録部46から広告を読出して、どのような広告を行うかを決定し、決定した広告をクライアント1の広告表示部26に送る(上記イ(オ))
通信システム。
(2) 甲2(ルナルナってどんなサービス?使い方や有料版のサービス内容を徹底解説!)
ア 甲2の摘記
甲2には次の記載がある。
「ルナルナとはどんなサービス?
[図:0001432050000003.jpg]
累計ダウンロード数1,700万を突破した大人気アプリ・ルナルナは、生理周期の記録ができ、排卵日・生理日の予想などを知らせてくれる生理日管理アプリです。
ルナルナでは、次の機能を利用できます。
▽ルナルナの基本的な機能一覧
生理日予測・排卵日予測
妊娠可能性の予測
指数表示による体調アドバイス
生理日などがすぐにチェックできるカレンダー機能
「おりもの」や「不正出血」、「体調不良」などの記録
基礎体温の記録
パスコードロック
・・・」
「使い方その4|ID登録をする
・・・
認証が完了したら、プロフィールを入力していきましょう。
▽プロフィールの入力事項
ニックネーム
生年月日
性別
お住まいの地域
妊娠についての希望・状況
婚姻状況
子どもの有無
婦人科通院状況
ルナルナの利用目的
情報提供に関する協力について
これでユーザー登録が完了です!」
「使い方その7|生理がきたら登録する
[図:0001432050000004.jpg]
生理に関する情報は、アプリ画面の[入力する]をタップしてデータを入力していきましょう。
生理期間以外にも、様々なデータを入力し、データ管理することができます。
▽データ入力できる内容
生理期間
基礎体温
体重
体脂肪
排卵日
SEX
体調
気分(メンタル)
生理痛
経血量
イベント
カラダに関する情報(おりもの、便通、頭痛など)
薬・病院に関する情報(服薬、サプリメントなど)
生活に関する情報(睡眠時間、眠気、喫煙、疲労など)
メモ
生活にまつわるさまざまな情報を入力できるので、ご自分の体調やメンタルヘルスの管理をするために非常に役立つアプリといえるでしょう。」
イ 甲2に記載の技術的事項
上記アで摘記した記載によると、甲2には、次の技術的事項が記載されている。
生理周期の記録ができ、排卵日・生理日の予想などを知らせてくれる生理日管理アプリであって、
プロフィールの入力事項として、妊娠についての希望・状況を入力でき、
生理に関する情報に加えて、基礎体温、体調、気分(メンタル)及びカラダに関する情報(おりもの、便通、頭痛など)を入力し、データ管理することができる生理日管理アプリ。
(3) 甲3(特開2019-63027号公報)
ア 甲3の摘記
甲3には次の記載がある。
「【0094】
このような態様により、特定対象者の月経のタイプのみならず、基礎体温の状態も考慮した情報を提供することができるため、例えば女性の月経周期内の時期(生理期、卵胞期、排卵期、黄体期)に応じた情報が提供可能になる。」
「【0118】
ユーザに提供される情報には、ユーザがより健康的で快適な毎日を送れるようになるために有用と考えられる様々な情報が含むことができ、例えば、月経の症状を軽減する効果が期待できる運動や食事、睡眠、気分転換、休息、体操、体質改善などに関するアドバイスや、商品の紹介、医療情報などが含まれる。」
イ 甲3に記載の技術的事項
上記アで摘記した記載によると、甲3には、次の技術的事項が記載されている。
例えば女性の月経周期内の時期(生理期、卵胞期、排卵期、黄体期)に応じた情報が提供可能であり、
ユーザに提供される情報には、例えば、商品の紹介が含まれる。
(4) 甲4(登録実用新案第3125776号公報)
甲4には次の記載がある。
「【0004】
上記目的を達成するため、本考案の主な特徴は、放射線上に引かれた線の外周に月の日付(1日から31日)を順に表示したカレンダー用主部材の中心部位に、女性ホルモンの影響等を表示した回転盤を設けたことである。この主部材は必要に応じ補助部材に直接表示してもよく、或いはこの部材を補助部材と組み合わせて使用することもできる。形状そのものは特に限定されず、真円ばかりでなく楕円形でもよく、さらには三角形や四角をはじめ多くの多角形でもかまわない。月の日付の外側や内側に、曜日欄はなくてもよいが、あると便利である。月の日付の欄と回転盤の間には、間隔はなくても構わないが、あった方が個人の予定を表示する事ができるなど有益である。回転盤には、最低でも月経開始日を表示する。好ましくは、月経期、排卵予定日(表示例:危険日・妊娠可能期)、卵胞期(表示例:キラキラ期)、黄体期(表示例:アンバランス期)や、個人が必要とするホルモンの影響「イライラ期」「ダイエットに効果的な時期」等も表示できるようにすると、個人の月の予定と、回転盤に表示する女性ホルモンが及ぼす影響を照らし合わせて、一目で確認できる利点があるが、表示の仕方は適当で構わない。又、回転盤に月経周期を示す数字を表示することで、簡易に翌月の月経開始予定日が確認できるので、表示するのが好ましい。
・・・」
4 判断
上記1に挙げた特許異議申立の理由について、以下検討する。
(1)進歩性欠如について
本件特許発明2の進歩性を検討するため、請求項2の被引用請求項である請求項1に係る発明である本件特許発明1の進歩性について検討する。
ア 本件特許発明1について
(ア) 甲1発明との対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
a 「記憶装置」について
甲1発明において、月経情報記録部42に記録された「月経に関する情報とは、例えば、前回の月経開始日、月経周期、月経期間、過去の一定期間の基礎体温」であるから、甲1発明の「ユーザの月経に関する情報」は、本件特許発明1の「ユーザの生理に関する情報を含むユーザ情報」に相当する。
甲1発明において、広告記録部46の「記録内容の一例として、月経状態が「月経中」の場合は生理用品の広告を、月経状態が「危険日」の場合は避妊具の広告を、月経状態が「月経直前」の場合はプリメンストレーションの広告を対応づけて記録」する点について、当該記録内容は、生理と関連づけされた販売者の商品の情報を含むといえるから、本件特許発明1の「生理と関連づけされた販売者の商品またはサービスの情報を含む広告情報」に相当する。
そして、以上の情報を記録する甲1発明の「月経情報記録部42」及び「広告記録部46」は、本件特許発明1の「記憶装置」に相当する。
b 「広告情報を配信する配信または通知機能」について
甲1発明の「表示広告決定部48」の「広告をクライアント1の広告表示部26に送る」機能は、本件特許発明1の「広告情報を配信する配信または通知機能」に相当する。
c 「システムの動作を制御する制御部」について
甲1発明の「月経情報予測部44」及び「表示広告決定部48」は、通信システムの動作を制御するものといえるから、「システムの動作を制御する制御部」と称し得るものである。
d 「ユーザ端末」について
甲1発明の「クライアント1」は、本件特許発明1の「ユーザ端末」に相当する。
e 「広告配信システム」について
甲1発明の「通信システム」は、広告を配信するシステムであるから、「広告配信システム」と称し得るものである。
上記a~dも踏まえると、本件特許発明1と甲1発明は、
「ユーザの生理に関する情報を含むユーザ情報と、生理と関連づけされた販売者の商品またはサービスの情報を含む広告情報とを記憶した記憶装置と、
広告情報を配信する配信または通知機能と、
システムの動作を制御する制御部と、
ユーザ端末を含む広告配信システム」
である点において共通する。
f 「・・・広告を配信または通知する機能」について
前記第4の2(1)に示したとおり、本件特許発明1の「生理における広告時期と前記ユーザの生理周期とが一致する日付」との記載は不明確なものの、上記a~dを踏まえると、甲1発明の「表示広告決定部48は、月経情報予測部44によって予測された月経の状態に基づいて、広告記録部46から広告を読出して、どのような広告を行うかを決定し、決定した広告をクライアント1の広告表示部26に送る」点に関し、本件特許発明1と甲1発明は、少なくとも「前記ユーザ端末に対して、前記配信機能によって、商品またはサービスの広告を配信または通知する」点で共通し、下記相違点2において相違する。
g 「・・・基礎体温周期を算出する機能」について
甲1発明で選択可能な「基礎体温法」は、基礎体温の変動に着目したものであって、基礎体温の変動を算出するものといえる。そうすると、前記第4の2(2)に示したとおり、本件特許発明1の「前記ユーザの現在の生理周期における基礎体温の変動を算出し、基礎体温周期を算出する機能」との記載は不明確なものの、本件特許発明1と甲1発明は、少なくとも「基礎体温の変動を算出」する機能を有する点で共通し、下記相違点3において相違する。
h 「・・・前記ユーザの生理周期をカテゴライズする機能」について
甲1発明の「月経情報予測部44」が「月経の状態として「月経中」、「危険日」、「月経直前」などに分類」して予測する機能は、ユーザの生理周期をカテゴライズする機能といえる。そうすると、当該機能は、本件特許発明1と「前記ユーザの生理周期をカテゴライズする機能」である点で共通し、下記相違点5において相違する。
i 「・・・そのユーザの直近の生理日を記憶させる機能」について
甲1発明の「前回の月経開始日」は、本件特許発明1の「直近の生理日」に相当する。
甲1発明の「月経情報記録部42」に記録される「ユーザの月経に関する情報」は、ユーザのデータを順次記憶したものといえ、かつ、ユーザのデータのリストといえるものである。また、ユーザの情報を記憶するにあたり、あわせてユーザを特定するための情報が記憶されるのは明らかである。
以上を踏まえると、甲1発明において、月経情報記録部42に例えば前回の月経開始日などのユーザの月経に関する情報を記録する機能は、本件特許発明1の「ユーザのデータを順次記憶するユーザリストにユーザを特定するための情報とそのユーザの直近の生理日を記憶させる機能」に相当する。
j 「一時記憶された前記ユーザの生理周期における・・・広告を配信または通知する」について
甲1発明の「月経情報予測部44」が予測する「月経の状態」は、本件特許発明1の「前記ユーザの生理周期におけるどの時期であるか」に相当する。
してみれば、甲1発明の表示広告決定部48が、予測された月経の状態に基づいて、どのような広告を行うかを決定し、決定した広告をクライアント1の広告表示部26に送る点は、本件特許発明1と、「前記ユーザの生理周期におけるどの時期であるかに基づいて、前記配信機能によって前記商品またはサービスの広告を配信または通知する」点で共通し、下記相違点8において相違する。
(イ) 一致点及び相違点
上記(ア)によれば、本件特許発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「 ユーザの生理に関する情報を含むユーザ情報と、生理と関連づけされた販売者の商品またはサービスの情報を含む広告情報とを記憶した記憶装置と、
広告情報を配信する配信または通知機能と、
システムの動作を制御する制御部と、
ユーザ端末を含む広告配信システムにおいて、
制御部が、
前記ユーザ端末に対して、前記配信機能によって、商品またはサービスの広告を配信または通知する機能と、
基礎体温の変動を算出する機能を有し、
前記ユーザの生理周期をカテゴライズする機能と、
ユーザのデータを順次記憶するユーザリストにユーザを特定するための情報とそのユーザの直近の生理日を記憶させる機能と、
を有し、
前記ユーザの生理周期におけるどの時期であるかに基づいて、前記配信機能によって前記商品またはサービスの広告を配信または通知することを特徴とする広告配信システム。」
<相違点1>
本件特許発明1は「カレンダー機能」を含むのに対し、甲1発明はそのような機能を含むか明らかでない点。
<相違点2>
本件特許発明1は、
「カレンダー機能によって提供される日時情報と、前記ユーザの生理とを関連付けて、前記広告情報に含まれる商品またはサービスの生理における広告時期と前記ユーザの生理周期とが一致する日付で、前記ユーザ端末に対して、前記配信機能によって、前記商品またはサービスの広告を配信または通知する機能」
を有するのに対し、甲1発明は、
「前記ユーザ端末に対して、前記配信機能によって、商品またはサービスの広告を配信または通知する」機能
を有するものの、当該配信又は通知が、「カレンダー機能によって提供される日時情報と、前記ユーザの生理とを関連付けて」行われるものではなく、「前記広告情報に含まれる商品またはサービスの生理における広告時期と前記ユーザの生理周期とが一致する日付で」行われるものか不明な点。
<相違点3>
本件特許発明1は、「前記ユーザの現在の生理周期における基礎体温の変動を算出し、基礎体温周期を算出する機能」を有するのに対し、甲1発明は、「基礎体温の変動を算出」する機能を有するものの、当該基礎体温の変動が「前記ユーザの現在の生理周期における」ものか不明であり、「基礎体温周期を算出する」ものかも不明な点。
<相違点4>
本件特許発明1は、
「前記ユーザ端末を介して経験サンプリング法により症状メモリに入力された前記ユーザの生理周期に合わせた身体症状、精神症状、社会的症状或いは基礎体温を生理周期と関連付けて記憶する機能と、前記ユーザが妊娠を望んでいるか否か、前記ユーザの月経感・月経イメージ或いは前記ユーザの母性性・性役割パーソナリティを記憶する機能」
を有するのに対し、甲1発明は、そのような機能を有しない点。
<相違点5>
「前記ユーザの生理周期をカテゴライズする機能」に関し、本件特許発明1は、「症状メモリに入力された情報を用いて」カテゴライズするのに対し、甲1発明は、基礎体温の変動に着目してカテゴライズする点。
<相違点6>
本件特許発明1は、
「前記カレンダー機能から取得した前記日時情報を一時記憶し、前記日時情報に基づいてユーザリストに記憶された次回生理日を更新し、一時記憶された日時情報から前記症状メモリに入力された情報を用いてカテゴライズされた前記ユーザの生理周期におけるどの周期であるかを取得して更新する機能と、取得し更新したユーザの生理周期を一時記憶する機能」
を有するのに対し、甲1発明は、そのような機能を有しない点。
<相違点7>
本件特許発明1は「前記広告情報に含まれる商品またはサービスの発送状況に基づいて広告情報を提供する時期を修正する機能」を有するのに対し、甲1発明は、そのような機能を有しない点。
<相違点8>
本件特許発明1は、
「一時記憶された前記ユーザの生理周期におけるどの時期であるかに基づいて、前記配信機能によって前記商品またはサービスの広告を配信または通知する」
のに対し、甲1発明は、
「前記ユーザの生理周期におけるどの時期であるかに基づいて、前記配信機能によって前記商品またはサービスの広告を配信または通知する」
ものの、当該「前記ユーザの生理周期におけるどの時期であるか」は、「一時記憶された」ものではなく、「月経情報予測部44によって予測された」ものを使用する点。
(ウ) 相違点に関する判断
事案に鑑み相違点7について検討する。
甲2~甲4には、上記3(2)~(4)のとおりの事項が記載されているものの、「前記広告情報に含まれる商品またはサービスの発送状況に基づいて広告情報を提供する時期を修正する機能」については、甲2~甲4のいずれにも記載されておらず、甲1発明並びに甲2~甲4に記載の技術的事項に基づいて当該相違点7の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
また、上記相違点7の構成とすることで、ユーザが必要とする商品、サービスを適切な時期に提供することができるという格別顕著な作用効果を奏するものである。
(エ) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、上記相違点7に関連して、特許異議申立書で以下のとおり主張している。
「なお、(F-6)「前記広告情報に含まれる商品またはサービスの発送状況に基づいて広告情報を提供する時期を修正する機能を有し、」については技術的事項ではなく、当業者が適宜選択し得た設計的事項に過ぎません。
したがいまして、本件特許発明1と甲1発明との相違点は、甲2発明、甲3発明、設計事項(技術常識の寄せ集め)によってすべて埋められます。」(特許異議申立書9頁19行~23行)
しかしながら、上記(ウ)のとおり、相違点7の構成は、広告情報を提供する時期を修正する機能という技術的な構成であって、格別顕著な作用効果を奏するものであるから、設計的事項に過ぎないとの特許異議申立人の主張は採用できない。
(オ) 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1発明及び甲2~甲4に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1の構成を全て含むから、上記ア(イ)に示した相違点に係る構成を有する。
したがって、上記アに示した理由と同様の理由により、本件特許発明2についても、甲1発明及び甲2~甲4に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 進歩性欠如についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明2は、甲1発明及び甲2~甲4に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものではない。
(2) サポート要件違反について
ア 本件特許の明細書の記載について
本件特許の明細書には以下のとおり記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、ユーザーが商品や商品情報へアクセスしたことによってユーザーの嗜好情報を分析しているが、女性の場合、一部の商品やサービスに関しては、女性ホルモンの変化などにより、その嗜好性が変化する場合があり、この分析した情報が一時的なものであったり、女性特有の周期に影響を受けており、得られた嗜好情報に基づく広告配信が有効に機能しない場合がある。」
「【0011】
(基礎体温周期の算出方法)
基礎体温周期の算出方法は、例えば、WO2015/147174号公報に記載される方法を利用することができる。WO2015/147174号公報には、ユーザによって定期的に測定された基礎体温の情報に基づいて、月経開始日T1からの経過日数と基礎体温との関係が折れ線グラフによって表現される。この生データを構成する各要素にガウシアンフィルタを適用して月経開始日からの日数と基礎体温との関係を連続した関数で表現できるように平滑化する。これにより図2に示したように基礎体温の周期変化の関係式が得られる。また、基礎体温の変動予測のために、まず、母集団として、1周期分の基礎体温の時系列変化を表す情報を多数用意しておき、ユーザは基礎体温を継続して測定する。多くの女性の月経周期の母集団に含まれる基礎体温の時系列変化を表す情報の中にユーザにおける現月経周期のそれまでの基礎体温の変動傾向に近似しているものがあれば、ユーザのその後の基礎体温はその近似した基礎体温の時系列にほぼ従うものとして、その近似した基礎体温の時系列を予測結果としてユーザに提示することもできる。また、図2で左側の温度の低い時期(低温期)を卵胞期、右側の温度の高い時期(高温期)を黄体期と呼び、低温期から高温期への遷移の時期に排卵が行われ、さらに、月経周期における、低温期の前半を月経期、後半を卵胞期、排卵の前後を排卵期、その後を黄体期と呼ぶこともある。ここで、卵胞ホルモン、黄体ホルモンのバランスから出る影響として、月経周期が平均的な28日の場合、月経開始日(図2の左端)から1週間ごとに、どんより期(気分が沈みがちで、生理痛、疲れなどを感じる)、キラキラ期(明るい気分で前向き。代謝が上がり、肌や髪がきれいに、ダイエットにも最適)、スロー期(気分が不安定になり、むくみやすく便秘がちに)、イライラ期(イライラしやすく、マイナス思考になりやすく、むくみ、便秘、太りやすい、乳房の張りなどの症状が出る)などと分類することもある。」
「【0013】
(ユーザ情報リスト)
次に、ユーザ情報について図4を用いて説明する。図4は本システムの利用者登録を行っているユーザ1、ユーザ2、ユーザ3のユーザリスト(データレコード)を例にとって説明する。実際にはユーザ登録されるごとに同様の様式でデータが順次記憶される。新規にユーザ登録する際に、ユーザ登録用のプログラムによって、ユーザ端末を介して、ユーザはユーザ特定情報(氏名、年齢、メールアドレスなど)、周期情報と直近の生理日を入力し、基礎データとして、記憶装置に記憶される。制御プログラムはカレンダー機能を用いながら、直近の生理日情報と周期情報から次回の生理日を算出し、また、生理周期を4等分し、(A)どんより期、(B)キラキラ期、(C)スロー期、(D)イライラ期、とし、また、症状メモリの入力がなされていた場合は、過去の入力結果から対応する時期の予測として、症状の欄に心体、背景情報を導出して記録する。生理日予測や周期は、生理が始まるたびにユーザからの入力を受け付けるようにプログラムし、更新しても良いが、毎日、基礎体温と、身体症状を入力するようにして、それらのデータから周知の方法によって、これらの周期や、生理日予測、周期情報を更新するようにしても良い。生理周期はストレスなどによってずれやすいので、定期的なユーザ入力、基礎体温の測定、症状メモリの入力とそこからの算出によって修正すると都合がよい。また、上記では生理周期を単純に4等分して周期をカテゴライズしたが、症状メモリ情報単独、あるいは、症状メモリ情報とその他の情報の組み合わせでカテゴライズして作成したものを用いても良い。こらは例えば、月経期間をどんより期、症状メモリから得られたPMS症状が出る期間をイライラ期、その間の期間をキラキラ期とするなどが考えられ、カテゴライズはいくつに分けても良いが、2-4に分類するのが都合がよい。上記例ではメールアドレスを用いてメールによる広告配信を想定しているがこれに限られず、本システムが特定のアプリなどで用いられている場合、そのアプリ内通知など他の通知方法が利用できる。
【0014】
(広告情報リスト)
次に、広告情報について図5を用いて説明する。図5は本システムの広告主として登録を行っている企業である、A社~E社の広告情報リスト(データレコード)を例にとって説明する。実際には広告主として登録されるごとに同様の様式でデータが順次記憶される。企業が新規に広告を登録する際に、広告登録用のプログラムによって、広告主端末(図示しない)を介して、広告主企業は属性(必要な場合)、広告商品・サービス(時期)あるいは広告商品・サービス(症状)を入力し、広告情報データとして、記憶装置に記憶される。ここで、化粧品メーカーであるA社は、肌荒れしやすい生理予定日の2週間前ぐらいからは、油分の多い化粧品をさけ、いつもよりきちんと洗顔&保湿できる保湿クリームをスロー期に、肌の調子の整っている時期(キラキラ期)に新製品の宣伝を提供することを希望している。アパレルメーカーであるB社は、生理中は体内の水分量が増えるため、体が冷えやすくなるので保温効果のあるタイツ製品の宣伝をどんより期に提供することを希望している。製薬メーカーであるC社は、生理直後から排卵までの2週間はダイエット効果も出やすいので、発泡タイプやソルト系の入浴剤で積極的に汗をかくようにキラキラ期に、黄体期や月経中は、心と体をいたわりたい時期なので、保湿効果の高い入浴剤や好きな香りのアロマ系入浴剤をどんより期に、フィットネスジム運営会社であるE社は、女性ホルモンは肥満に関係する「血糖値」にある程度影響すると言われているので、生理から排卵前は血糖値が下がりやすく、脂肪を貯蓄しにくくダイエットに適しているのでキラキラ期にダイエットプログラムの宣伝を提供することを希望している。本発明は特に生理用品やピルなどの生理に直接関連した商品やサービス以外の、生理と直接関連のない商品やサービスの広告に有効である。
【0015】
(実施例)
次に本発明の広告配信システムの実施例を以下に例示する。本実施例で用いられる広告配信(ソフトウェア)プログラムは情報処理端末110の記憶装置102に記憶され、記憶装置102から読み出されたプログラムが制御装置101で制御され、表示装置103や入力装置104、測定装置106,116等と連携しながら実行される。本実施例では対象者の情報処理端末110としてスマートフォンを例として示す。また、本実施例ではソフトウェアプログラムを例に説明するが、各機能単位をFPGAなどのハードウェアで実現してすべてハードウェアとして構成することも、あるいは、ソフトウェアプログラムとハードウェアの混合として構成することもできる。また、前述のように、各機能をスマートフォンやタブレット、PC、ウェアラブルデバイスなどの情報処理端末110だけでスタンドアロンとして構成することも、ネットワークを介したサーバを用いて、サーバとユーザ端末101が共同して動作するもの、サーバでの情報処理のために、ユーザ端末101が入出力の用途としてだけ機能する構成として構成することもできる。
【0016】
次に図6を参照しながら本発明のプログラムの制御の流れを説明する。なお、以下の制御は本件システムが行うものである。(601)まず制御プログラムはカレンダー機能から日時情報を取得し、一時記憶する、(602)次にその日時情報に基づいて、ユーザリスト情報を更新し、記録する。この更新のプロセスにはユーザ入力や、基礎体温測定、症状メモリからのシステムによる算出などにより、生理日が来たユーザに対して、次回生理日の更新、カテゴライズの日時情報の更新が含まれる。次に(603)カレンダー機能から取得し、一時記憶された日時情報、ここでは8月22日だったものとする、からユーザリストの項目と日時情報を対比することによって、ユーザのその日に含まれるカテゴリを取得する。図4のユーザに関しては、ユーザ1はカテゴリB(キラキラ期)、ユーザ2はカテゴリC(スロー期)、ユーザ3はカテゴリA(どんより期)であることが取得されシステムに一時記憶される。つづいて、(604)広告情報リストより、ユーザ1に配信する情報として、カテゴリBの商品・サービスを検索し、A社 化粧品新製品、C社 ソルト系入浴剤、E社 ダイエットプログラムの広告が選択される、ユーザ2に配信する情報として、カテゴリCの商品・サービスを検索し、A社 保湿クリーム、また、ユーザ3に配信する情報として、カテゴリAの商品・サービスを検索し、B社 タイツ、C社 アロマ系入浴剤、D社 ナプキンの広告が選択され、一時記憶される。最後に(605)前ステップで一時記憶されたユーザと配信広告に基づいて、システムの配信機能がそれぞれのユーザに広告を配信する。」
「【0019】
ユーザーリストがユーザの過去の生理周期と関係した購買情報を含み、その商品・サービスと同種の商品・サービスが広告情報リストに含まれる際にその商品・サービスの広告をそのユーザに配信・通知するようにしても良い。また、ユーザが一度購入した商品についての購買履歴情報も含ませ、例えば、1日1錠の利用が想定された30錠入りのサプリメントの販売実績があった場合、30錠が使い切るタイミングで広告を配信する、ユーザの利用を考慮した配信を行っても良い。
【0020】
広告情報リストのほかに、生理周期のカテゴリごとのアドバイス情報を記憶したリストを作成し、たとえば、イライラ期のユーザに対して、「イライラ期なので人と接する際は気を付けましょう」といったメッセージを配信・通知するようにしても良い。」
イ 本件特許発明2について(特許異議申立書14頁1段落目)
請求項2の「前記ユーザの生理の周期を、気分が沈みがちで生理痛を感じる時期と、明るい気分で前向きになる時期と、気分が不安定になる時期と、マイナス思考になり易い時期とにカテゴライズする機能」については、上記段落【0011】【0013】【0016】に対応する記載がある。
請求項2の「前記ユーザの生理と関連付ける広告として、気分が沈みがちで生理痛を感じる時期には心と体をいたわる商品の広告を、気分が不安定になる時期には肌荒れ予防のための商品の広告を関連付ける機能」及び「前記ユーザが明るい気分で前向きになる時期には、化粧品新製品やソルト系入浴剤或いはダイエットプログラムを関連付ける機能」については、上記段落【0011】【0014】に対応する記載がある。
そして以上の機能については、上記段落【0015】【0016】等の記載から、広告配信システムが有すると理解でき、請求項2の機能に係る制御のための構成は記載されているといえる。
してみれば、請求項2は、発明の詳細な説明に記載された発明を記載したものである。
ウ 本件特許発明3について(特許異議申立書14頁2段落目)
特許異議申立人は、請求項3は、「ユーザ情報が過去のユーザの生理と関係した購買情報を含む」のに対し、発明の詳細な説明には、段落【0019】に「ユーザリストがユーザの過去の生理周期と関係した購買情報を含」むことが記載されるだけで、生理周期以外の生理と関係した購買情報を含むことは記載されていない旨主張している。
しかしながら、請求項3が引用する請求項1の構成により段落【0005】の本件特許発明の課題は解決可能であって、「ユーザ情報が過去のユーザの生理と関係した購買情報を含む」との構成は、付加的なものにすぎないといえる。
また、段落【0019】の「また、ユーザが一度購入した商品についての購買履歴情報も含ませ、例えば、1日1錠の利用が想定された30錠入りのサプリメントの販売実績があった場合、30錠が使い切るタイミングで広告を配信する、ユーザの利用を考慮した配信を行っても良い。」との記載もあることを参酌すれば、特許異議申立人が根拠として主張する段落【0019】の記載は、選択的に記載された実施形態のひとつにすぎない。
以上を踏まえれば、発明の詳細な説明の段落【0019】の記載は、「生理周期と関係した購買情報」との記載を拡張ないし一般化して「生理と関係した購買情報」とするための技術的事項を開示するものといえる。
したがって、請求項3は、発明の詳細な説明に記載された発明を記載したものである。
エ 本件特許発明5について(特許異議申立書14頁3段落目)
特許異議申立人は、請求項5は、「前記ユーザの生理の周期に関連してアドバイス情報を記憶したリストを作成」するのに対し、発明の詳細な説明には、段落【0020】に「生理周期のカテゴリごとのアドバイス情報を記憶したリストを作成」することが記載されるだけで、生理周期のカテゴリ以外と関係したアドバイス情報を含むことは記載されていない旨主張している。
しかしながら、上記ウで検討したのと同様に、当該構成も、付加的なものにすぎず、発明の詳細な説明の段落【0020】の記載は、「生理周期のカテゴリごとのアドバイス情報を記憶」との記載を拡張ないし一般化して「生理の周期に関連してアドバイス情報を記憶」とするための技術的事項を開示するものといえる。
したがって、請求項5は、発明の詳細な説明に記載された発明を記載したものである。
オ サポート要件違反についてのまとめ
以上のとおり、請求項2、3及び5は、発明の詳細な説明に記載された発明を記載したものであり、これらの請求項に係る本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に規定する要件に違反する特許出願についてなされたものとはいえない。
5 小括
してみると、請求項2、3及び5に係る本件特許についての申立理由は、いずれも成り立たない。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1に係る本件特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法113条4号に該当するから、取り消されるべきものである。
また、請求項2、3、5に係る本件特許は、特許異議の申立ての理由及び特許異議申立人の提出した証拠によっては取り消すことはできず、他に請求項2、3、5に係る本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701039