特許異議申立
2024-700991
アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物、該粘着剤組成物を用いてラベルが接着された容器
- 審判番号
- 2024-700991
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-066851
- 登録番号
- 7473764
- 請求日
- 2024年10月09日
- 審決日
- 2025年01月28日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】artience株式会社
- 【権利者】トーヨーケム株式会社
- 【異議申立人】齊藤 整
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 宮澤 浩
- 審判官 本田 博幸
- 分類
- P1651.121-Y (C09J) / P1651.537-Y (C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7473764号発明「アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物、該粘着剤組成物を用いてラベルが接着された容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7473764号の請求項〔1-7〕に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7473764号の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和5年4月17日に出願され、令和5年12月21日付けで拒絶理由が通知され、これに対し令和6年2月19日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年3月4日付けで特許査定がなされた。そして、同年4月16日にその特許権の設定登録がされ、同年4月24日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和6年10月9日付けで特許異議申立人(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第7473764号の請求項1~7の特許に係る発明(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明7」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
熱可塑性エラストマー(A)、酸価が100~300mgKOH/gである固体粘着付与剤(B)、ワックス(C)、ポリブテン(D)(但し、水素未添加ポリブテンを除く)およびプロセスオイル(E)を含有し、
熱可塑性エラストマー(A)が、スチレン含有率が25~50質量%のスチレン系エラストマー(A-1)およびスチレン含有率が5質量%以上25質量%未満のスチレン系エラストマー(A-2)を含み、
ポリブテン(D)の100℃における動粘度150~300mm2/sであり、
ホットメルト粘着剤組成物100質量%中、スチレン系エラストマー(A-1)およびスチレン系エラストマー(A-2)の含有率が、それぞれ2.5~35質量%であり、
プロセスオイル(E)の含有率が3~45質量%であることを特徴とするアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項2】
ワックス(C)の融点が、70~150℃であることを特徴とする請求項1記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項3】
アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物100質量%中、熱可塑性エラストマー(A)の含有率が5~40質量%、固体粘着付与剤(B)の含有率が20~70質量%、ワックス(C)の含有率が1~20質量%、ポリブテン(D)の含有率が5~40質量%であることを特徴とする請求項1記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を用いてラベルが接着された容器。
【請求項5】
ラベルが胴巻きラベルであることを特徴とする請求項4記載の容器。
【請求項6】
材質がポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項4記載の容器。
【請求項7】
炭酸飲料用であることを特徴とする請求項6記載の容器。」
第3 申立理由の概要
申立人による特許異議の申立ての理由は、概略、以下のとおりである。
理由1(進歩性欠如)
本件特許発明1~7は、甲1-1発明(甲第1号証の実施例2)と、甲第2号証の実施例10、甲第3号証及び甲第4号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
理由2(進歩性欠如)
本件特許発明1~7は、甲1-2発明(甲第1号証の比較例23)と、甲第2号証の実施例10に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
理由3(サポート要件違反)
本件特許発明1の裏付けとなる実施例に用いられるポリブテンは、水素未添加ポリブテンと水添ポリブテンとの混合品によるものであって、「ポリブテン(但し、水素未添加ポリブテンを除く)」に該当するものではない。また、本件特許発明1の効果を推認できないから、本件特許発明1の範囲まで、本件特許明細書において開示された内容を拡張ないし一般化することはできない。本件特許発明1に従属する本件特許発明2~7においても同じである。よって、本件特許発明1~7は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない。
理由4(サポート要件違反)
本件特許発明1における「ワックス」について、温度範囲90~150℃までしか裏付けがないから、ワックスの融点が特定されていない本件特許発明1の範囲にまで拡張ないし一般化できない。本件特許発明1に従属する本件特許発明2~7においても同じである。よって、本件特許発明1~7は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない。
理由5(明確性要件違反)
本件特許発明1における「プロセスオイル(E)の含有率が3~45質量%である」との特定について、技術的意味を当業者が理解できず、発明特定事項が不足していることが明らかであるため、本件特許発明1~7は不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさない。
なお、申立人が提示する証拠は以下に示すとおりであり、理由1では、甲第1号証を主たる証拠として、また、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証を従たる証拠として用いている。さらに、理由2では、甲第1号証を主たる証拠として、また、甲第2号証、甲第6号証を従たる証拠として用いている。
甲第1号証:特開2016-204588号公報
甲第2号証:特開2021-95448号公報
甲第3号証:特許第6906596号公報
甲第4号証:特開2017-160377号公報
甲第5号証:日石ポリブテンHV-100安全データシート
https://www.eneos-materials.com/products/hp_polymer/pdf/sds/91135_r.pdf
甲第6号証:特開昭61-252254号公報
甲第7号証:岩波国語辞典第5版
甲第8号証:超淡色ロジン誘導体「パインクリスタル」製品情報
https://www.arakawachem.co.jp/jp/products/adhesive/12.html
第4 申立人が提示する文献
1 甲第1号証
(1)甲第1号証の記載事項
申立人により甲第1号証として引用され、本件特許に係る出願前に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2016-204588号公報(平成28年12月8日出願公開)には、以下の記載事項がある。なお、発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。
ア 技術分野
「【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤、および該ホットメルト接着剤を用いてなるホットメルト接着剤付きプラスチックラベル、ならびに該ホットメルト接着剤付きプラスチックラベルを貼り付けた容器に関する。」
イ 発明が解決しようとする課題
「【0009】
ところで、寒冷地において使用後のPETボトルから胴巻きラベルを剥がす場合、23℃付近だけでなく低温環境下でも、基材であるプラスチックフィルムを破くことなく、プラスチックフィルムと接着剤とをできるだけ1回で速やかに剥がしたいという要求もある。
また、内容物に炭酸が含まれる場合、夏場の輸送時などの高温下(40~50℃)で放置されると、PETボトルが膨張する。PETボトルの膨張により胴巻きラベルに負荷がかかり、それにより胴巻きラベルの巻き終端部のプラスチックフィルムが、内側に位置するプラスチックフィルムから剥がれることがある。胴巻きラベルは、PETボトルの膨張に抗して、PETボトルの胴部外周を巻き続けることが求められる。そこで、胴巻きラベルの巻き終端部の剥がれを抑えるためには、ラベルを構成する基材であるプラスチックフィルム同士間の接着強度(剥離強度)や、プラスチックフィルム同士間の保持力の大きいことが求められる。
一方、PETボトル飲料は店舗や一般家庭で冷却されることが多い。従って、低温環境下においてもプラスチックフィルム同士間の接着強度(剥離強度)の大きいことが求められる。
【0010】
引用文献2~4に開示されるホットメルト接着剤を用いたラベルは、PETボトルから熱いアルカリ水溶液で剥がせ、手でも簡単に剥がせる。
しかし、近年ではラベルを構成するプラスチックフィルムや接着剤の薄膜化が進んでおり、引用文献2~4に開示されるホットメルト接着剤を用いたラベルは、低温(5℃付近)でのPETからの剥離性、低温(5℃付近)および高温(40~50℃)でのプラスチックフィルム同士の接着強度、高温(40~50℃)でのプラスチックフィルム同士間の保持力に問題があった。
【0011】
本発明の目的は、低温~高温にわたってプラスチックフィルム同士の接着強度に優れ、高温でのプラスチックフィルム同士間の保持力に優れる胴巻きラベルであって、胴巻きラベルの基材であるプラスチックフィルムを破くことなく、接着剤を残さずに、低温環境下でもPETボトルから手で剥がせる胴膜ラベルを提供することであり、そのためのホットメルト接着剤を提供することである。」
ウ 課題を解決するための手段
「【0012】
本発明は、ホットメルト接着剤100質量%中に、下記(A)~(D)を合計90~100質量%含み、
下記(A)~(D)の合計100質量%中、
スチレン系エラストマー(A):10~30質量%、
酸価が100mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下であるロジン系粘着付与剤(B):30~50質量%、
流動点が-10℃以下のプロセスオイル100質量%中にパラフィンを50質量%以上含むプロセスオイル(C):20~40質量%、および
融点が100℃以上の無水マレイン酸をグラフト重合させたポリオレフィンワックス(D):5~15質量%を含む、
ホットメルト接着剤に関する。
・・・
【0014】
さらに、本発明は、容器の外周に、前記本発明のホットメルト接着剤付きプラスチックラベルを巻き、一方の端部のホットメルト接着剤を容器に貼り付け、他方の端部のホットメルト接着剤をプラスチックフィルムの背面に貼り付けてなる、プラスチックラベル付き容器に関する。」
エ 発明の効果
「【0015】
本発明のホットメルト接着剤により、低温~高温にわたってプラスチックフィルム同士の接着強度に優れ、高温でのプラスチックフィルム同士間の保持力に優れる胴巻きラベルであって、胴巻きラベルの基材であるプラスチックフィルムを破くことなく、接着剤を残さずに、低温環境下でもPETボトルから手で剥がせる胴膜ラベルを提供することができるようになった。また、PETボトルに胴巻きラベルが貼付された状態であったとしても、熱いアルカリ水溶液に漬けるとPETボトルから、簡単に胴巻きラベルが糊残りなく剥離し、再付着することもない。」
オ 発明を実施するための形態
「【0016】
まず、本発明のホットメルト接着剤について説明する。
本発明のホットメルト接着剤は、上記したように、スチレン系エラストマー(A)、酸価が100mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下であるロジン系粘着付与剤(B)、流動点が-10℃以下のプロセスオイル100質量%中にパラフィンを50質量%以上含むプロセスオイル(C)、および無水マレイン酸をグラフト重合させ、融点が100℃以上のポリオレフィンワックス(D)を含む。
【0017】
スチレン系エラストマー(A)は、分子中に弾性を持つゴム成分(ソフトセグメント:軟質相)と塑性変形を防止するための分子拘束成分(ハードセグメント:硬質相)との両方を持っているため、ゴムとプラスチックの中間の性質を持つ。よって、スチレン系エラストマー(A)は、常温では加硫ゴムと同様な性質を持ち、弾性を有し、高温では普通のスチレン系樹脂と同じく、既存の成形機をそのまま使用できる。
・・・
【0018】
酸価が100mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下であるロジン系粘着付与剤(B)は、松から得られる琥珀色、無定形の天然樹脂で、製造の違いでガムロジン,ウッドロジン,トール油ロジンに分けられる。その主成分は、3つの環構造、共役2重結合、カルボキシル基を有するアビエチン酸とその異性体の混合物であり、反応性に富んだバルキーな構造を有している。反応性が高い為に熱安定性が悪く、一般的にロジンを水添あるいは酸変性し、安定性を良好にしている。
・・・
【0020】
本発明で用いられるプロセスオイル(C)は、流動点が-10℃以下であり、プロセスオイル100質量%中にパラフィンを50質量%以上含むものである。
・・・
【0021】
本発明で用いられる無水マレイン酸をグラフト重合させたポリプロピレンワックス(D)は、融点が100℃以上であり、100~150℃であることが好ましい。融点が100℃以上であることにより、高温環境下におけるプラスチックフィルム同士の接着強度や保持力を向上することができる。
・・・
【0024】
本発明においては、スチレン系エラストマー(A)は、接着剤の凝集力を上げるために用いられる。スチレン系エラストマー(A)を10質量%以上とすることにより、ラベルを手剥がす際に糊残りしない。また、スチレン系エラストマー(A)を30質量%以下とすることにより、‘指定PETボトルの自主設計ガイドライン’に規定される熱アルカリ水による剥離要件を達成することができる。
【0025】
また、酸価が100mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下であるロジン系粘着付与剤(B)は、プラスチックフィルムやPETボトルとの接着力を強くするために用いられる。その配合量が30質量%以上であることにより、前記ガイドラインに規定される熱アルカリ水による剥離要件を達成でき、接着強度の点でも優れる。また、50質量%以下であることにより、ラベルを手剥がしした時に糊残りしない。
【0026】
また、流動点が--10℃のプロセスオイル100質量%中にパラフィンを50質量%以上含むプロセスオイル(C)は、手剥がし性および手剥がし時のPETボトルなどへの糊残りをなくすために用いられる。その配合量が20質量%以上であることにより、低温での接着性及び低温での剥離性に優れる。40質量%以下であることにより、アルカリ剥離性が向上し、高温環境下で接着強度に優れる。
【0027】
また、無水マレイン酸をグラフト重合させ、融点が100℃以上のポリプロピレンワックス(D)は、プラスチックフィルム同士、特に二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下、OPPという)同士の接着強度と保持力を強くするために用いられる。その配合量が5質量%以上であることにより、OPPフィルム同士の接着強度、保持力を向上でき、ボトルが膨張してもラベルが剥がれず、ラベルを手剥がしする際、糊残りしない。15質量%以下とすることにより、アルカリ剥離性を向上できる。
・・・
【0029】
本発明のホットメルト接着剤においては、必要に応じ、熱劣化、熱分解を防ぐための酸化防止剤、蛍光発色剤などの色材などを添加することができる。
・・・
【0033】
次に本発明のプラスチックラベル付き容器について説明する。
本発明のホットメルト接着剤付きプラスチックラベルは、容器胴部に適用される胴巻きラベルとして用いられることが好ましい。
・・・
【0034】
容器としては、飲料用のPETボトルの他、洗剤用の容器などのポリエチレン製、ポリプロピレン製、ポリスチレン製の容器が挙げられる。」
カ 実施例
「【0035】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げてさらに具体的に説明する。しかし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
<スチレン系エラストマー(A)>
・クレイトンG1643(クレイトンポリマー社製)(以下、「G1643」と略記する。)スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックポリマー(SEBS)
・・・
・クレイトンG1652(クレイトンポリマー社製)(以下、「G1652」と略記する。)スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックポリマー(SEBS)
・・・
【0037】
<酸価が100mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であるロジン系粘着付与剤(B)>
・ハリタックF(ハリマ化成社製)、酸価:175mgKOH/g、軟化点:72℃
・・・
【0038】
<<流動点-10℃以下のプロセスオイル100質量%中にパラフィンを50質量%以上含むプロセスオイル(C)>>
・ダイアナプロセスPW-90(出光興産社製)(以下、「PW90」と略記する。)パラフィン系プロセスオイル(パラフィン:71質量%、ナフテン:29質量%、芳香族:0質量%)、流動点:-15℃
・ダイアナプロセスPW-380(出光興産社製)(以下、「PW380」と略記する。)パラフィン系プロセスオイル(パラフィン:73質量%、ナフテン:27質量%、芳香族:0質量%)、流動点:-15℃
【0039】
<<無水マレイン酸をグラフト重合させ、融点が100℃以上のポリプロピレンワックス(D)>>
・リコセンPPMA6252(クラリアントジャパン社製)(以下、「PPMA6252」と略記する。)、酸価:40mgKOH/g、融点:127℃
・・・
【0041】
<パラフィン系プロセスオイル(C)以外のプロセスオイル>>
<<流動点:-10℃以下ではないパラフィン系プロセスオイル>>
・出光ポリブテン100R:水素未添加ポリブテン(出光興産社製)、(パラフィン:100質量%、ナフテン:0質量%、芳香族:0質量%)流動点:-7.5℃
<<パラフィン系以外のプロセスオイル>>
・ダイアナフレシアN-90(出光興産社製)(以下、「N90」と略記する。)ナフテン系プロセスオイル(パラフィン:48質量%、ナフテン:46質量%、芳香族:6質量%)流動点:-32.5℃
・・・
【0044】
実施例1
<ホットメルト接着剤の作製方法>
攪拌機を備えたステンレスビーカーに、流動点が-15℃のプロセスオイル100質量%中にパラフィンを50質量%以上含むプロセスオイル(C)としてPW90:25質量部と、その他成分としてPEG1000:2質量部、PEG6000:2質量部を投入し、加熱撹拌した。加熱は内容物が150℃以上にならないように注意して行った。
この溶融物にスチレン系エラストマー(A)として、G1650:10質量部、G1652:10質量部を徐々に加え、添加終了後、次に酸価が100mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下であるロジン系粘着付与剤(B)としてハリタックF:46質量部加え、最後に無水マレイン酸をグラフト重合させ、融点が100℃以上のポリプロピレンワックス(D)としてPPMA6252:5質量部を添加して、溶融均一混合物とし、冷却してホットメルト接着剤を作製した。
なお、PPMA6252の量は、(A)~(D)の合計100質量%中、5.2質量%である。
・・・
【0046】
<アルカリ剥離性>
サンプル作製方法:厚さ20μmのOPPフィルムに印刷を施したラベルの印刷面にホットメルト接着剤を塗工量20~30g/m2、塗工面積15cm2で塗工(温度条件:150℃)し、ホットメルト接着剤付きラベルを得た。
その後、サクミラベラー社製ラベラーで、速度80bpmにて、150℃で、2L長角PETボトルに、前記ホットメルト接着剤付きラベルを貼り付けた。
次いで、ホットメルト接着剤付きラベルごとPETボトルを、約8mm×8mm角に粉砕して、ラベルが付いた状態のPETのペレットとした。
試験方法:1000ml丸型フラスコに、85~90℃の1.5質量%水酸化ナトリウム水溶液90gと前記ペレット10gを入れて、600rpmで攪拌(攪拌羽:プロペラ)した。15分後フィルターで濾過し、PETのペレットの状態を目視観察した。
評価基準:ホットメルト接着剤がPETのペレットに残らない場合を○、ラベルがPETのペレットに残ったり、ホットメルト接着剤がPETのペレットに残ったり、PETのペレット同士が再付着した場合を×とした。
・・・
【0050】
実施例2~3、比較例1~23
表1、2に示す質量比にて、スチレン系エラストマー(A)、酸価が100mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下であるロジン系粘着付与剤(B)、流動点が-10℃以下のプロセスオイル100質量%中にパラフィンを50質量%以上含むプロセスオイル(C)、無水マレイン酸をグラフト重合させ、融点が100℃以上のポリプロピレンワックス(D)およびその他成分を実施例1と同様に溶融・混合して、ホットメルト接着剤を作製し、同様に評価した。
なお、比較例2におけるPPMA6252の量は、(A)~(D)の合計100質量%中、4.2質量%である。また、比較例23はホットメルト接着剤100質量%中に含まれる(A)~(D)の合計量が82.5質量%である。
【0051】
【表1】
[図:0001420355000001.jpg]
【0052】
【表2】
[図:0001420355000002.jpg]
【0053】
表1および表2の実施例1~3から、本発明のホットメルト接着剤は、PETボトルからラベル破れおよび糊残りすることなく手剥がしすることができ、また高い保持力と接着強度を有し、さらにアルカリ剥離性適性を有する。
一方、比較例1~23のホットメルト接着剤は、ラベル破れ、糊残り、接着強度および保持力の全てを満足する結果は得られなかった。」
(2)甲第1号証に記載された発明
ア 甲1-1発明(実施例2)
甲第1号証の記載事項カに基づけば、甲第1号証には、実施例2に係るホットメルト接着剤の発明として、次の発明(以下「甲1-1発明」という。)が記載されていると認められる。
「流動点が-15℃のプロセスオイル100質量%中にパラフィンを50質量%以上含むプロセスオイル(C)としてダイアナプロセスPW-90:17.5質量部及びダイアナプロセスPW-380:17.5質量部を投入し、加熱撹拌し、
この溶融物にスチレン系エラストマー(A)として、クレイトンG1643:10質量部、クレイトンG1652:10質量部を徐々に加え、添加終了後、次に酸価が100mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下であるロジン系粘着付与剤(B)としてハリタックF:37質量部加え、最後に無水マレイン酸をグラフト重合させ、融点が100℃以上のポリプロピレンワックス(D)としてリコセンPPMA6252:8質量部を添加して、溶融均一混合物とし、冷却して作製した、アルカリ剥離性適性を有するホットメルト接着剤。」
イ 甲1-2発明(比較例23)
甲第1号証の記載事項カに基づけば、甲第1号証には、比較例23に係るホットメルト接着剤の発明として、次の発明(以下「甲1-2発明」という。)が記載されていると認められる。
「流動点が-15℃のプロセスオイル100質量%中にパラフィンを50質量%以上含むプロセスオイル(C)としてダイアナプロセスPW-380:17.5質量部と、その他成分として、水素未添加ポリブテンである出光ポリブテン100R:17.5質量部を投入し、加熱撹拌し、
この溶融物にスチレン系エラストマー(A)として、クレイトンG1643:10質量部、クレイトンG1652:10質量部を徐々に加え、添加終了後、次に酸価が100mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下であるロジン系粘着付与剤(B)としてハリタックF:40質量部加え、最後に無水マレイン酸をグラフト重合させ、融点が100℃以上のポリプロピレンワックス(D)としてリコセンPPMA6252:5質量部を添加して、溶融均一混合物とし、冷却して作製した、アルカリ剥離性適性を有するホットメルト接着剤。」
2 甲第2号証
(1)甲第2号証の記載事項
申立人により甲第2号証として引用され、本件特許に係る出願前に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2021-95448号公報(令和3年6月24日出願公開)には、以下の記載事項がある。なお、技術的事項の認定等に用いた箇所に下線を付した。
ア 技術分野
「【0001】
本発明は、ガラスビン、PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルなどのラベル用粘着剤として好適なアルカリ分散型ホットメルト粘着剤に関するものであり、特に、炭酸飲料用のPETボトルとラベルとの貼り合わせに利用される粘着剤として有効なアルカリ分散型ホットメルト粘着剤に関する。」
イ 発明が解決しようとする課題
「【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、アルカリ分散性が高く、ラベルの保持力に優れ、糊残りの問題が生じにくく、かつ糸曳きを低減できるアルカリ分散型ホットメルト粘着剤を提供することを目的とする。」
ウ 課題を解決するための手段
「【0012】
本発明および本発明の好ましい態様は以下のとおりである。
【0013】
1.(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体、
(B)粘着付与樹脂、ならびに、
(C)脂肪酸およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種
を含み、
(A)熱可塑性ブロック共重合体が(A1)スチレン含有率40質量%未満のスチレン系ブロック共重合体を含み、
(B)粘着付与樹脂がα-メチルスチレン系樹脂を含む、アルカリ分散型ホットメルト粘着剤。
【0014】
2.成分(A)~(C)の総質量100質量部に対し、α-メチルスチレン系樹脂が1~20質量部含まれる、上記1に記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤。
【0015】
3.さらに、フィッシャートロプシュワックスを含む、上記1または2に記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤。
【0016】
4.上記1~3のいずれかに記載のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤が塗布されたラベル。
【0017】
5.上記4に記載のラベルが貼り付けられた容器。」
エ 発明の効果
「【0018】
本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤は、PETボトル、ガラス瓶等の容器にラベルを接着するのに用いることができ、ラベルの保持力に優れる。例えば、炭酸飲料が充填されたPETボトル等の容器に、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤でラベルを貼り付けると、容器が膨張してもラベルのずれおよび浮きが発生しにくくなる。
【0019】
また、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤はアルカリ分散性が高く、ラベルが貼付された状態で容器をアルカリ水溶液に浸したとき、糊残りなくラベルを綺麗に剥がすことができる。さらに、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤は、手の力等で再剥離することができ、ラベルを再剥離した時の糊残りが少ない。よって、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤は、リサイクル処理する容器等に用いるのに適している。
【0020】
また、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤は、専用の塗布装置等を用いてラベル等に塗布されるが、塗布される際に糸曳きが発生するのを抑えることができる。」
オ 発明を実施するための形態
「【0021】
本発明に係るアルカリ分散型ホットメルト粘着剤は、(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体、(B)粘着付与樹脂、ならびに(C)脂肪酸およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種を含んでいる。
・・・
【0078】
本発明のホットメルト粘着剤は、可塑剤を含んでもよい。
【0079】
可塑剤は、ホットメルト粘着剤の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として配合され、他の成分と相溶し、本発明が目的とするホットメルト粘着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。可塑剤として、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル及び芳香族系オイルを例示することができる。特にパラフィン系オイル及び/又はナフテン系オイルが好ましく、無色、無臭であるパラフィン系オイルが最も好ましい。
【0080】
可塑剤の市販品の一例として、例えば、Kukdong Oil&Chem社製のWhite Oil Broom350(商品名)、出光興産社製のダイアナフレシアS-32(商品名)、ダイアナプロセスオイルPW-90(商品名)、ダフニ-オイルKP-68(商品名)、BPケミカルズ社製のEnerperM1930(商品名)、Crompton社製のKaydol(商品名)、エクソン社製のPrimol352(商品名)、出光興産社製のプロセスオイルNS-100(商品名)、ペトロチャイナ社製のDN4010を例示することができる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0081】
可塑剤を配合することで、本発明のホットメルト粘着剤に含まれる成分(A)~(C)の相溶性が向上し、さらには、その他成分との相溶性も向上し、結果的に、ホットメルト粘着剤の粘着性、接着性や塗工適正が向上する。」
カ 実施例
「【0104】
以下、本発明を、更に詳細に、かつ、具体的に説明することを目的として、実施例を用いて説明するが、これら実施例は、本発明を何ら制限するものではない。実施例および比較例において、ホットメルト粘着剤に配合する成分を以下に示す。
【0105】
(A)熱可塑性ブロック共重合体
(A1)スチレン含有率が40質量%未満のスチレン系ブロック共重合体
(A1-1)スチレン-エチレン/ブチレン-スチレントリブロック共重合体(クレイトン社製のクレイトンG-1652(商品名)、スチレン含有率30質量%、ジブロック含有率0質量%、重量平均分子量72,000)
(A1-2)スチレン-エチレン/ブチレン-スチレントリブロック共重合体(クレイトン社製のクレイトンG-1650(商品名)、スチレン含有率30質量%、ジブロック含有率0質量%、重量平均分子量92,000)
・・・
【0107】
(B)粘着付与樹脂
(B1)水添脂環族/芳香族共重合系炭化水素樹脂(JXTGエネルギー社製のT-REZ HC103(商品名)、軟化点103℃)
(B2)水添脂環族系炭化水素樹脂(JXTGエネルギー社製のT-REZ HA103(商品名)、軟化点103℃)
・・・
(B4)水素添加ロジンエステル(GUANGDONG KOMO社製のKOMOTAC KHR75(商品名)、酸価170mgKOH/g 軟化点80℃)
・・・
(B8))α-メチルスチレン系樹脂(イーストマンケミカル社製のクリスタレックス3085(商品名)、軟化点85℃)
・・・
【0108】
(C)脂肪酸およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種
(C1)融点40℃以上の脂肪酸誘導体
(C1-1)ヒマシ硬化油(伊藤製油社製のヒマシ硬化油A(商品名)、融点85.5℃)
・・・
(C1-9)ライスワックス菜種極度硬化油(ボーソー油脂社製のライスワックスSS-1(商品名)、融点79.0℃)
・・・
【0110】
(D)ワックス
(D1)フィッシャートロプシュワックス(サゾール社製のサゾールC80(商品名)、融点80℃、針入度7)
(D2)フィッシャートロプシュワックス(サゾール社製のサゾールH1(商品名)、融点108℃、針入度2)
・・・
【0111】
(E)可塑剤(オイル)
(E1)パラフィンオイル(出光興産社製のダフニーオイル KP-68(商品名))
(E2)パラフィンオイル(出光興産社製のダイアナプロセスオイル PW90(商品名))
(E3)ポリブテン(日本石油社製の日石ポリブテンHV-300(商品名))
・・・
【0112】
(F)安定化剤(酸化防止剤)
(F1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤(アデカ社製のアデカスタブ AO-60(商品名))
(F2)チオエーテル系酸化防止剤(アデカ社製のアデカスタブ AO-412S(商品名))
【0113】
成分(A)~(F)を表1および表2に示す配合割合で配合し、約145℃で約3時間かけて万能攪拌機を用いて溶融混合し、実施例1~18、比較例1~4のホットメルト粘着剤を製造した。表1および表2に示されるホットメルト粘着剤の組成(配合)に関する数値の単位は、全て質量部である。
・・・
【0127】
【表1】
[図:0001420355000003.jpg]
(2)甲第2号証に記載された技術的事項
甲第2号証の記載事項オの段落【0078】、【0079】及び記載事項カの実施例10及び実施例11に基づけば、甲第2号証には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「ホットメルト粘着剤の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として、ホットメルト粘着剤に、可塑剤としてポリブテン(日本石油社製の日石ポリブテンHV-300)を配合すること。」
第5 当審の判断
1 理由1(甲1-1発明に基づく進歩性欠如)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1-1発明とを対比する。
(ア)熱可塑性エラストマー(A)
甲1-1発明の「クレイトンG1643」及び「クレイトンG1652」は、「スチレン系エラストマー(A)」である。また、本件特許明細書の段落【0067】の記載に基づけば、「クレイトンG1643」及び「クレイトンG1652」は、スチレン含有率が、それぞれ、「19質量%」及び「30質量%」の「熱可塑性エラストマー」である。
そうすると、甲1-1発明の「クレイトンG1643」及び「クレイトンG1652」は、それぞれ、本件特許発明1の「スチレン含有率が5質量%以上25質量%未満のスチレン系エラストマー(A-2)」及び「スチレン含有率が25~50質量%のスチレン系エラストマー(A-1)」に相当する。また、甲1-1発明の「クレイトンG1643」及び「クレイトンG1652」は、いずれも、本件特許発明1の「熱可塑性エラストマー(A)」に相当する。
(イ)固体粘着付与剤(B)
甲1-1発明の「ハリタックF」は、「酸価が100mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下であるロジン系粘着付与剤(B)」である。そうすると、甲1-1発明の「ハリタックF」は、本件特許発明1の「酸価が100~300mgKOH/gである固体粘着付与剤(B)」に相当する。
(ウ)ワックス(C)
甲1-1発明の「リコセンPPMA6252」は、「ポリプロピレンワックス(D)」である。そうすると、甲1-1発明の「リコセンPPMA6252」は、本件特許発明1の「ワックス(C)」に相当する。
(エ)プロセスオイル(E)
甲1-1発明の「ダイアナプロセスPW-90」及び「ダイアナプロセスPW-380」は、「プロセスオイル(C)」である。そうすると、甲1-1発明の「ダイアナプロセスPW-90」及び「ダイアナプロセスPW-380」は、本件特許発明1の「プロセスオイル(E)」に相当する。
(オ)ホットメルト粘着剤組成物
甲1-1発明の「ホットメルト接着剤」は、前記(ア)~(エ)に挙げた成分を含んでおり、「アルカリ剥離性適性」を有している。そして、甲1-1発明の「ホットメルト接着剤」100質量%中の、「クレイトンG1652」の含有率、「クレイトンG1643」の含有率、及び、「ダイアナプロセスPW-90」及び「ダイアナプロセスPW-380」の合計の含有率は、それぞれ、10質量%(=10÷(10+10+37+17.5+17.5+8)×100)、10質量%(=10÷(10+10+37+17.5+17.5+8)×100)、35質量%(=(17.5+17.5)÷(10+10+37+17.5+17.5+8)×100)である。
そうすると、甲1-1発明の「ホットメルト接着剤」は、本件特許発明1の「アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物」に相当し、「ホットメルト粘着剤組成物100質量%中、スチレン系エラストマー(A-1)およびスチレン系エラストマー(A-2)の含有率が、それぞれ2.5~35質量%」であるとする要件、「プロセスオイル(E)の含有率が3~45質量%」であるとする要件を、いずれも満たしている。
(カ)一致点及び相違点
以上より、本件特許発明1と甲1-1発明とは、
「 熱可塑性エラストマー(A)、酸価が100~300mgKOH/gである固体粘着付与剤(B)、ワックス(C)、およびプロセスオイル(E)を含有し、
熱可塑性エラストマー(A)が、スチレン含有率が25~50質量%のスチレン系エラストマー(A-1)およびスチレン含有率が5質量%以上25質量%未満のスチレン系エラストマー(A-2)を含み、
ホットメルト粘着剤組成物100質量%中、スチレン系エラストマー(A-1)およびスチレン系エラストマー(A-2)の含有率が、それぞれ2.5~35質量%であり、
プロセスオイル(E)の含有率が3~45質量%であることを特徴とするアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本件特許発明1は、「100℃における動粘度150~300mm2/s」である「ポリブテン(D)(但し、水素未添加ポリブテンを除く)」を含有するのに対し、甲1-1発明は、ポリブテンを含有しない点。
イ 判断
[相違点1]について検討する。
甲第1号証には、記載事項カの段落【0041】に、「<パラフィン系プロセスオイル(C)以外のプロセスオイル>>」として、「出光ポリブテン100R:水素未添加ポリブテン(出光興産社製)」が記載されている。しかし、「出光ポリブテン100R:水素未添加ポリブテン(出光興産社製)」は、比較例のみに用いられる「その他」の成分の一つであって、甲第1号証には、ホットメルト接着剤に「ポリブテン」を用いることを示唆する他の記載はない。そうすると、甲1-1発明について、さらに、「ポリブテン」を加えようとする動機付けがあったとはいえない。
また、記載事項カの段落【0041】に記載された「出光ポリブテン100R」は「水素未添加ポリブテン」であり、本件特許発明1の[相違点1]に係る要件を満たすものではない。
さらに、甲第2号証には、前記第4の2(2)に記載したとおり、「ホットメルト粘着剤の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として、ホットメルト粘着剤に、可塑剤としてポリブテン(日本石油社製の日石ポリブテンHV-300)を配合すること。」という技術的事項が開示されていると認められる。しかし、甲第2号証に示される「日石ポリブテンHV-300」は、本件特許の明細書の段落【0070】の「HV-300(ENEOS社製)100℃動粘度:590mm2/s」との記載からみて、本件特許発明1の[相違点1]に係る「100℃における動粘度150~300mm2/s」との要件を満たすものではない。
以上の事項を勘案すると、甲1-1発明において、「100℃における動粘度150~300mm2/s」である「ポリブテン(D)(但し、水素未添加ポリブテンを除く)」を採用する動機付けを見出すことができず、また、仮に、甲第1号証の段落【0041】に記載された「出光ポリブテン100R」、あるいは、甲第2号証に記載された技術的事項を採用する動機付けがあったとしても、本件特許発明1の[相違点1]に係る構成に当業者が容易に想到し得たとはいえない。
また、申立人は、特許異議申立書の36頁32~35行において、「甲2発明(甲第2号証の実施例10)に、100℃における動粘度を150~300mm2/sの範囲の水添ポリブテンを用いることは、甲第3,4号証に開示されているように当業者が容易に想到できると認められる。」とも主張している。しかし、仮に、100℃における動粘度が150~300mm2/sの範囲の水添ポリブテンを用いることが周知技術であったとしても、甲1-1発明において、既に検討したとおり、そのような周知技術を採用する動機付けを見出すことができない。
ウ 小括
以上のとおり、上記[相違点1]は、当業者であっても、容易に想到し得たということはできないから、本件特許発明1は、甲1-1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件特許発明2~7について
本件特許発明2及び本件特許発明3は、本件特許発明1に、さらに限定を付加した「アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物」に係る発明である。また、本件特許発明4~7は、当該「アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物」を用いた「容器」に係る発明である。そうすると、本件特許発明2~7と甲1-1発明とを対比した場合、少なくとも前記[相違点1]において相違する。
そして、前記[相違点1]は、前記(1)イにおいて検討したとおり、当業者が容易に想到し得たということができないものであるから、本件特許発明2~7も、同じ理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件特許発明1~7は、甲1-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
2 理由2(甲1-2発明に基づく進歩性欠如)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1-2発明とを対比する。
(ア)熱可塑性エラストマー(A)
甲1-2発明の「クレイトンG1643」及び「クレイトンG1652」は、「スチレン系エラストマー(A)」である。また、本件特許の明細書の段落【0067】の記載に基づけば、「クレイトンG1643」及び「クレイトンG1652」は、スチレン含有率が、それぞれ、「19質量%」及び「30質量%」の「熱可塑性エラストマー」である。
そうすると、甲1-2発明の「クレイトンG1643」及び「クレイトンG1652」は、それぞれ、本件特許発明1の「スチレン含有率が5質量%以上25質量%未満のスチレン系エラストマー(A-2)」及び「スチレン含有率が25~50質量%のスチレン系エラストマー(A-1)」に相当する。また、甲1-2発明の「クレイトンG1643」及び「クレイトンG1652」は、いずれも、本件特許発明1の「熱可塑性エラストマー(A)」に該当する。
(イ)固体粘着付与剤(B)
甲1-2発明の「ハリタックF」は、「酸価が100mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下であるロジン系粘着付与剤(B)」である。そうすると、甲1-2発明の「ハリタックF」は、本件特許発明1の「酸価が100~300mgKOH/gである固体粘着付与剤(B)」に相当する。
(ウ)ワックス(C)
甲1-2発明の「リコセンPPMA6252」は、「ポリプロピレンワックス(D)」である。そうすると、甲1-2発明の「リコセンPPMA6252」は、本件特許発明1の「ワックス(C)」に相当する。
(エ)ポリブテン(D)
甲1-2発明の「出光ポリブテン100R」は、「水素未添加ポリブテン」である。そうすると、甲1-2発明の「出光ポリブテン100R」は、本件特許発明1の「ポリブテン(D)」に相当するものの、「(但し、水素未添加ポリブテンを除く)」とする要件を満たしていない。
(オ)プロセスオイル(E)
甲1-2発明の「ダイアナプロセスPW-380」は、「プロセスオイル(C)」である。そうすると、甲1-2発明の「ダイアナプロセスPW-380」は、本件特許発明1の「プロセスオイル(E)」に相当する。
(カ)ホットメルト粘着剤組成物
甲1-2発明の「ホットメルト接着剤」は、前記(ア)~(エ)に挙げた成分を含んでおり、アルカリ剥離性が「○」であるから「アルカリ剥離性適性」を有している。そして、甲1-2発明の「ホットメルト接着剤」100質量%中の、「クレイトンG1652」の含有率、「クレイトンG1643」の含有率、及び、「ダイアナプロセスPW-380」の合計の含有率は、それぞれ、10質量%(=10÷(10+10+37+17.5+17.5+8)×100)、10質量%(=10÷(10+10+37+17.5+17.5+8)×100)、17.5質量%(=17.5÷(10+10+37+17.5+17.5+8)×100)である。
そうすると、甲1-2発明の「ホットメルト接着剤」は、本件特許発明1の「アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物」に相当し、「ホットメルト粘着剤組成物100質量%中、スチレン系エラストマー(A-1)およびスチレン系エラストマー(A-2)の含有率が、それぞれ2.5~35質量%」であるとする要件、「プロセスオイル(E)の含有率が3~45質量%」であるとする要件を、いずれも満たしている。
(キ)一致点及び相違点
以上より、本件特許発明1と甲1-2発明とは、
「 熱可塑性エラストマー(A)、酸価が100~300mgKOH/gである固体粘着付与剤(B)、ワックス(C)、ポリブテン(D)およびプロセスオイル(E)を含有し、
熱可塑性エラストマー(A)が、スチレン含有率が25~50質量%のスチレン系エラストマー(A-1)およびスチレン含有率が5質量%以上25質量%未満のスチレン系エラストマー(A-2)を含み、
ホットメルト粘着剤組成物100質量%中、スチレン系エラストマー(A-1)およびスチレン系エラストマー(A-2)の含有率が、それぞれ2.5~35質量%であり、
プロセスオイル(E)の含有率が3~45質量%であることを特徴とするアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。
[相違点2]
本件特許発明1は、「ポリブテン(D)」が「(但し、水素未添加ポリブテンを除く)」とされるのに対し、甲1-2発明は、「水素未添加ポリブテン」である点。
[相違点3]
本件特許発明1は、「ポリブテン(D)」が、「100℃における動粘度150~300mm2/s」であるのに対し、甲1-2発明の「出光ポリブテン100R」の100℃における動粘度が明らかでない点。
イ 判断
事案に鑑みて[相違点2]について検討する。
甲1-2発明は、甲第1号証において、比較例として開示されるものであり、甲1-2発明の「水素未添加ポリブテンである出光ポリブテン100R」は、甲第1号証の段落【0041】の記載からみて、課題を解決するための手段として挙げられた「流動点が-10℃以下のプロセスオイル100質量%中にパラフィンを50質量%以上含むプロセスオイル(C)」の要件を満たさない「流動点:-10℃以下ではないパラフィン系プロセスオイル」として用いられたものである。
そして、既に前記1(1)イにおいて検討したとおり、甲第1号証には、ホットメルト接着剤に他の「ポリブテン」を用いることを示唆する記載はない。そうすると、当業者が、比較例として開示された甲1-2発明において、甲第1号証に示唆のない特定の「ポリブテン」を採用しようとする動機付けがあるとは考えがたい。また、そもそも、甲第1号証の記載に接した当業者が、甲第1号証において比較例として位置づけられている甲1-2発明を改良の出発点として選択すること自体、想定しがたいことである。
また、前記1(1)イで検討したとおり、甲第2号証に示される「日石ポリブテンHV-300」は、本件特許発明1の[相違点2]に係る「100℃における動粘度150~300mm2/s」との要件を満たすものではないから、仮に、当業者が甲1-2発明を改良の出発点として、甲第2号証に示される「日石ポリブテンHV-300」を採用したとしても相違点2に係る本件特許発明1の構成には到らない。
以上の事項を勘案すると、甲1-2発明において、「100℃における動粘度150~300mm2/s」であるポリブテンを採用する動機付けを見出すことができず、また、仮に、甲第2号証に記載された技術的事項を採用する動機付けがあったとしても、本件特許発明1の[相違点2]に係る構成に当業者が容易に想到し得たとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、上記[相違点2]は、当業者であっても、容易に想到し得たということはできないから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件特許発明2~7について
本件特許発明2及び本件特許発明3は、本件特許発明1に、さらに限定を付加した「アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物」に係る発明である。また、本件特許発明4~7は、当該「アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物」を用いた「容器」に係る発明である。そうすると、本件特許発明2~7と甲1-2発明とを対比した場合、少なくとも前記[相違点2]において相違する。
そして、前記[相違点2]は、前記(1)イにおいて検討したとおり、当業者が容易に想到し得たということができないものであるから、本件特許発明2~7も、同じ理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件特許発明1~7は、甲1-2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
3 理由3(サポート要件違反)について
(1)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書の43頁22~25行において、「本件特許発明1の裏付けとなる実施例に用いられるポリブテンは、水素未添加ポリブテンと水添ポリブテンとの混合品によるものであって、ポリブテン(但し、水素未添加ポリブテンを除く)に該当するものではないといえる。」と主張している。
申立人の上記主張は、本件特許の実施例において用いられた「ポリブテン」のうち、「100℃における動粘度150~300mm2/s」という要件を満たすものは、「HV-100(ENEOS社製)100℃動粘度:220mm2/s」のみであるところ、この「HV-100」は、本件特許発明1の「ポリブテン(D)(但し、水素未添加ポリブテンを除く)」とする要件を満たさないという、申立人の理解に基づくものである。
(2)合議体の判断
申立人が提出する甲第5号証(日石ポリブテンHV-100の安全データシート)には、「ポリブテン(水添ポリブテン)を含む」と記載されている。当該記載からみて、本件特許の実施例において用いられた「HV-100(ENEOS社製)100℃動粘度:220mm2/s」は、ポリブテンの少なくとも一部に、ポリブテン末端に残る二重結合に水素を添加して得られた「水添ポリブテン」を含むもの、つまり、水素未添加ポリブテンと水添ポリブテンとの混合物であるといえる。
次に、本件特許発明1の「ポリブテン(D)(但し、水素未添加ポリブテンを除く)」という要件について検討すると、本件特許の明細書に「水素未添加ポリブテン」に関する記載はない。しかし、「ポリブテン(D)(但し、水素未添加ポリブテンを除く)・・・を含有し」とされる特許請求の範囲の記載に基づけば、アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物における必須の成分が、水素未添加ポリブテン以外のポリブテンであることを特定するものであって、水添ポリブテンを含有しさえすれば上記要件を満たすのであり、さらに、他の成分を含有することを妨げないものと解釈するのが自然である。この点について、令和6年2月19日に提出された意見書には、「補正後の請求項1において、ポリブテン(D)から「水素未添加ポリブテン」を除く補正を行ないました。引用文献2で使用されている出光興産社製「出光ポリブテン100R」は水素未添加ポリブテンであることから、これを除くための補正であります。」と記載されている。当該記載によれば、「ポリブテン(D)(但し、水素未添加ポリブテンを除く)」との要件は、ポリブテンの中から、水添ポリブテンを含まないものを除くことを意味する、言い換えれば、水添ポリブテンを含有しさえすれば、他の成分を含有することを妨げないとする上記解釈と整合している。
そうすると、本件特許発明1の裏付けとなる実施例に用いられたポリブテンは、水素未添加ポリブテンと水添ポリブテンとの混合品によるものであって、「ポリブテン(但し、水素未添加ポリブテンを除く)」に該当するものであることは明らかである。理由3に係る申立人の主張は、本件特許発明1の「ポリブテン(D)(但し、水素未添加ポリブテンを除く)」との要件についての誤った解釈に基づくものであり、採用することができない。
(3)まとめ
以上より、本件特許発明1~7は、発明の詳細な説明に記載されたものといえるから、特許法36条6項1号に規定する要件を満たすものである。
4 理由4(サポート要件違反)について
(1)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書の44頁22~28行において、「本件特許明細書には、実際に実施例で裏付けられたワックスの融点は95℃、136℃、140℃の3点であるから、本件特許発明1のワックスの融点は、本件特許明細書の段落0031に記載の更に好ましい温度範囲90~150℃までしか裏付けがないことになる。」、「ワックスの融点が特定されていない本件特許発明1の範囲まで、本件特許明細書において開示された内容を拡張ないし一般化することはできない。」と主張している。
(2)合議体の判断
本件特許の明細書段落【0030】には、「(ワックス(C)」について、「本発明で用いられるワックス(C)は、天然ワックス:動物系ワックス(蜜蝋、オゾケライトなど)、植物系ワックス(木蝋、米糠蝋など)、石油系ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなど)、合成ワックス(フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレン及び酸などの変性ワックスなど)に大別される。」と説明されている。また、例えば岩波国語辞典では「パラフィンなどの蝋類。家具・床などのつや出しや、スキーの滑走面に塗ったりする。」と説明されており、本件特許発明1における「(ワックス(C)」は、一般に常温で柔らかい固体であり、加熱すると液体となるものを意味すると理解できる。
さらに、本件特許の明細書の段落【0031】には、「ワックス(C)の示差熱走査熱量計(DSC)により測定した融点は、70~150℃の範囲であることが好ましい、ワックス(C)の融点が70℃以上であることで耐熱性及び接着性(凝集力)が良好となり、150℃以下であることによりホットメルト粘着剤組成物の塗工性及びアルカリ分散性が良好となる。ワックス(C)の融点が、90~150℃以下であることが更に好ましい。」と記載されているが、当該記載は、「ワックス」が一般に常温で柔らかい固体であり、融点によってその柔軟性が異なることによる効果を説明したものと理解できる。そうすると、段落【0031】の記載は、段落【0030】に列記されるような、一般にワックスと称されるものを含有することにより奏される、耐熱性及び接着性(凝集力)、塗工性及びアルカリ分散性の効果の程度を説明したものであり、ワックスであれば程度の差があれども当然奏される効果を説明したものと理解できる。そして、その効果が、「アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物」に含まれる熱可塑性エラストマー(A)の種類や含有量、固体粘着付与剤(B)の酸価、ポリブテン(D)の種類や動粘度、プロセスオイルの含有量の各条件との組み合わせによって初めて奏されるものということはできない。
また、本件特許の実施例及び比較例を参酌しても、ワックスの融点の範囲や、上記他の成分との組み合わせによって、本件特許発明1が解決しようとする課題を解決できない場合があるということもできない。
以上より、本件特許発明1、3~7において、ワックスの融点を特定しておらず、本件特許発明2において、ワックスの融点の範囲が「70~150℃」であったとしても、当業者は本件特許発明1~7が、解決しようとする課題を解決できると認識できるといえる。
(3)まとめ
以上より、本件特許発明1~7は、発明の詳細な説明に記載されたものといえるから、特許法36条6項1号に規定する要件を満たすものである。
5 理由5(明確性要件違反)について
(1)申立人の主張
申立人は、「プロセスオイル(E)の含有率が3~45質量%である」との特定について、特許異議申立書の45頁22~25行において、「補正後の本件特許発明1は、実施例でないものを根拠にプロセスオイル(E)の含有率を特定しているから、本件特許発明1の技術的意味を当業者が理解できず、発明特定事項が不足していることが明らかであるため、発明が不明確である。」と主張している。
(2)合議体の判断
本件特許発明1における「プロセスオイル(E)の含有率が3~45質量%である」との特定について、プロセスオイルの範囲やその含有量のいずれもその文言からみて不明確であるとはいえない。また、実施例に該当するものであるか否かによって、「プロセスオイル(E)」及びその「含有率」の技術的意味が理解できないという事情が存在するともいえない。
なお、申立人は、「実施例でないものを根拠にプロセスオイル(E)の含有率を特定している」と主張していることから、当該主張はサポート要件違反(特許法36条6項1号)を意図した主張と善解できるので、念のため以下検討する。
本件特許の明細書段落【0038】の「ホットメルト組成物粘着剤100質量%中のプロセスオイル(E)の含有率は、0~50質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましく、10~30質量%がさらに好ましい。上記範囲でプロセスオイル(E)を含有することで、アルカリ分散性と衝撃性が両立できる。特にプロセスオイル(E)を含有することによりPETボトルの形状によらず、落下させて衝撃を与えた時ラベルが剥がれなくなる。」との記載に基づけば、アルカリ分散性を阻害しない範囲である「0~50質量%」で「プロセスオイル(E)」を含有することにより、落下させて衝撃を与えた時ラベルが剥がれなくなるという効果を奏するものと当業者であれば理解できる。本件特許発明1は、「プロセスオイル(E)」の含有率が、「0~50質量%」に内包される「3~45質量%である」から、当然同様の効果を奏するといえる。
そして、その効果は、「アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物」に含まれる特定の酸価を示す「固体粘着付与剤(B)」との組み合わせによって初めて奏されるものということはできない。
また、本件特許の実施例及び比較例を参酌しても、特定の酸価を示す「固体粘着付与剤(B)」との組み合わせによって、本件特許発明1が解決しようとする課題を解決できない場合があるということもできない。
以上より、本件特許発明1~7において、「プロセスオイル(E)の含有率が3~45質量%である」との特定が不明確とはいえず、また本件特許発明1~7が明細書の発明の詳細な説明に記載されたものでないともいえない。
(3)まとめ
以上より、本件特許発明1~7は、特許を受けようとする発明が明確に特定されたものであり、発明の詳細な説明に記載されたものでもあるから、特許法36条6項2号及び同1号に規定する要件を満たすものである。
第6 むすび
以上のとおり、本件特許発明1~7は、その特許が特許法29条の規定に違反してされたものではなく、また、特許法36条6項1号又は2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものでもない。
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700991