特許異議申立
2024-700370
アルカリ剥離性ホットメルト粘着剤、および容器
- 審判番号
- 2024-700370
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-013755
- 登録番号
- 7368675
- 請求日
- 2024年04月18日
- 審決日
- 2025年09月04日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】artience株式会社
- 【権利者代理人】三好 秀和
- 【権利者】トーヨーケム株式会社
- 【権利者代理人】三好 秀和
- 【異議申立人】佐藤 幸代
- 審判長/審判官
- 審判長 村守 宏文
- 審判官 門前 浩一
- 審判官 弘實 由美子
- 分類
- P1651.121-YAA(C09J) / P1651.537-YAA(C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7368675号発明「アルカリ剥離性ホットメルト粘着剤、および容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7368675号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7368675号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7368675号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和5年2月1日に出願され、令和5年10月17日にその特許権の設定登録がされ、同年同月25日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和6年4月18日に特許異議申立人佐藤 幸代(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和6年10月1日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和6年12月5日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、当審は、特許権者から訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、令和7年1月22日付けで申立人に通知し、申立人は、その指定期間内である同年2月17日に意見書を提出した。その後、当審は、令和7年4月23日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和7年6月26日に意見書の提出及び訂正の請求を行い(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)、当審は、特許権者から訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、令和7年7月2日付けで申立人に通知し、申立人は、その指定期間内である同年8月1日に意見書を提出した。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
請求項1における「ジブロック含有率が60質量%以下」を「ジブロック含有率が30質量%以上60質量%以下」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~5も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
請求項2における「ナフテン系プロセスオイルを含む」を「ナフテン系プロセスオイルを含み、ホットメルト粘着剤100質量%中に、ナフテン系プロセスオイルを25~40質量%含む」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3~5も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0024】に「固形分25質量%トルエン溶液とは、固形分が20質量%となるようにスチレン系エラストマーをトルエンに溶解させた溶液であり、その粘度はB型粘度計で測定した値である。粘度の測定方法は実施例の欄に記載する。」と記載されているのを、「固形分25質量%トルエン溶液とは、固形分が25質量%となるようにスチレン系エラストマーをトルエンに溶解させた溶液であり、その粘度はB型粘度計で測定した値である。粘度の測定方法は実施例の欄に記載する。」に訂正する。
(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0055】に「固形分25質量%トルエン溶液の粘度の測定方法を下記に示す。撹拌機を有するステンレスビーカーに該当するスチレン系エラストマー60gとトルエン240gを投入し、エラストマーが溶解するまで25℃で撹拌した。調製した20質量%濃度の溶液をB 型粘度計RB80L(東機産業社製)を用い、ローターNo.3を用いて適した回転数で測定することで固形分25質量%トルエン溶液の粘度を得た。」と記載されているのを、「固形分25質量%トルエン溶液の粘度の測定方法を下記に示す。撹拌機を有するステンレスビーカーに該当するスチレン系エラストマー60gとトルエン180gを投入し、エラストマーが溶解するまで25℃で撹拌した。調製した25質量%濃度の溶液をB 型粘度計RB80L(東機産業社製)を用い、ローターNo.3を用いて適した回転数で測定することで固形分25質量%トルエン溶液の粘度を得た。」に訂正する。
(5)訂正事項5
願書に添付した明細書の段落【0057】に「DX410:クレイトン DX410 (クレイトンポリマー社製)、スチレン含有率:18質量%、ジブロック含有率:60質量%、固形分25質量%トルエン溶液の25℃における粘度:1400mPa・s)」と記載されているのを、「DX410:クレイトン DX410 (クレイトンポリマー社製)、スチレン含有率:18質量%、ジブロック含有率:60質量%、固形分25質量%トルエン溶液の25℃における粘度:5200mPa・s)」に訂正する。
2 一群の請求項について
訂正事項1~2は、訂正前に引用関係を有する請求項1~5に対して、請求されたものであるから、本件訂正は、一群の請求項ごとに請求されている。
また、訂正事項3~5による明細書についての訂正は、一群の請求項1~5の全てに関係するものであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項で準用する同法126条第4項に適合する。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1による請求項1についての訂正は「ジブロック含有率が60質量%以下」を「ジブロック含有率が30質量%以上60質量%以下」に変更することによって、ジブロック含有率を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、「ジブロック含有率が30質量%以上60質量%以下」とすることは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められ、また、本件特許明細書の段落【0028】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
請求項1を直接又は間接的に引用して特定される請求項2~5についての訂正も同様である。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(2)訂正事項2
訂正事項2による請求項2についての訂正は「ナフテン系プロセスオイルを含む」を「ナフテン系プロセスオイルを含み、ホットメルト粘着剤100質量%中に、ナフテン系プロセスオイルを25~40質量%含む」に変更することによって、ナフテン系プロセスオイルの含有量を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、「ナフテン系プロセスオイルを含み、ホットメルト粘着剤100質量%中に、ナフテン系プロセスオイルを25~40質量%含む」とすることは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められ、また、本件特許明細書の段落【0038】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
請求項2を直接又は間接的に引用して特定される請求項3~5についての訂正も同様である。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(3)訂正事項3
訂正事項3に係る明細書についての訂正は、請求項1~5の記載を技術的に不明りょうにし得る誤記を訂正するものであるから、一群の請求項1~5と関連するものである。
訂正事項3は本件特許明細書の段落【0024】の「固形分25質量%トルエン溶液とは、固形分が20質量%となるように」という記載のうち、「固形分が20質量%となる」という誤記があったため、「固形分が25質量%となる」とすることで明細書中の誤記の訂正を目的とするものである。そうすると、訂正事項3の訂正は、明細書中の誤記の訂正を目的とするものであるか、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号又は第3号に規定する事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(4)訂正事項4
訂正事項4に係る明細書についての訂正は、請求項1~5の記載を技術的に不明りょうにし得る誤記を訂正するものであるから、一群の請求項1~5と関連するものである。
訂正事項4は本件特許明細書の段落【0055】に記載された「固形分25質量%トルエン溶液の粘度の測定方法を下記に示す。撹拌機を有するステンレスビーカーに該当するスチレン系エラストマー60gとトルエン240gを投入し、エラストマーが溶解するまで25℃で撹拌した。調製した20質量%濃度の溶液をB 型粘度計RB80L(東機産業社製)を用い、ローターNo.3を用いて適した回転数で測定することで固形分25質量%トルエン溶液の粘度を得た。」について、「固形分25質量%トルエン溶液の粘度の測定方法」、「固形分25質量%トルエン溶液の粘度を得た。」の明示に従って、「240g」及び「20%」という誤記を「180g」及び「25質量%」と正しい記載にしたものである。そうすると、訂正事項4の訂正は、明細書中の誤記の訂正を目的とするものであるか、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号又は第3号に規定する事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(5)訂正事項5
訂正事項5に係る明細書についての訂正は、請求項1~5の記載を技術的に不明りょうにし得る誤記を訂正するものであるから、一群の請求項1~5と関連するものである。
訂正事項5は本件特許明細書の段落【0057】に記載された「DX410:クレイトン DX410 (クレイトンポリマー社製)、スチレン含有率:18質量%、ジブロック含有率:60質量%、固形分25質量%トルエン溶液の25℃における粘度:1400mPa・s)」の「クレイトンDX410」の粘度値を、段落【0026】に記載のとおり、【0021】の記載を参酌して、「固形分25質量%トルエン溶液の25℃における粘度」を「粘度5200mPa・s」に訂正するものである。そうすると、訂正事項5の訂正は、明細書中の誤記の訂正を目的とするものであるか、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号又は第3号に規定する事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項に適合するものである。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明5」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
スチレン系エラストマー(A)、ロジン系粘着付与剤(B)、プロセスオイル(C)、ポリプロピレンワックス(D)およびα-メチルスチレン樹脂(E)を含むアルカリ剥離性ホットメルト粘着剤であって、
スチレン系エラストマー(A)が、下記(1)~(3)を満たす分岐型のスチレン系エラストマー(a1)およびスチレン含有率が35~60質量%である直鎖型のスチレン系エラストマー(a2)を含み、
ロジン系粘着付与剤(B)の酸価が、100~300mgKOH/gであり、
ポリプロピレンワックス(D)の軟化点が、100℃以上であり、
α-メチルスチレン樹脂(E)の軟化点が、90℃以上であり、
ホットメルト粘着剤100質量%中に、ポリプロピレンワックス(D)を0.1~5質量%、α-メチルスチレン樹脂(E)を1~9質量%含む、アルカリ剥離性ホットメルト粘着剤。
(1)スチレン含有率が35質量%以下
(2)ジブロック含有率が30質量%以上60質量%以下
(3)固形分25質量%トルエン溶液の25℃における粘度が1000mPa・s以上
【請求項2】
プロセスオイル(C)が、ナフテン系プロセスオイルを含み、ホットメルト粘着剤100質量%中に、ナフテン系プロセスオイルを25~40質量%含む請求項1に記載のアルカリ剥離性ホットメルト粘着剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載のアルカリ剥離性ホットメルト粘着剤によってラベルが接着された容器。
【請求項4】
ラベルが胴巻きラベルであることを特徴とする請求項3に記載の容器。
【請求項5】
ラベルの材質がポリプロピレン製であることを特徴とする請求項3に記載の容器。」
第4 特許異議の申立ての理由の概要
1 特許異議申立書に記載された理由の概要
(1) 申立理由1(甲1を主たる引用例とした進歩性)
本件発明1~5は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった後記2の甲第1号証に記載された発明および甲第1号証に記載された事項、並びに甲第2号証に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(2) 申立理由2(甲3を主たる引用例とした進歩性)
本件発明1~5は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった後記2の甲第3号証に記載された発明および甲第1号証に記載された事項、並びに甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(3) 申立理由3(サポート要件1)
本件発明1~5は、「ポリプロピレンワックス(D)の軟化点が100℃以上である」ことを発明特定要件としているところ、ポリプロピレンワックスには後記2の甲第5号証に記載されるように溶融粘度、分子量の大きく異なる数多くの種類が存在し、その特性は様々であるにもかかわらず、実施例で実証しているのは、ポリプロピレンワックスの中でも極めて低い溶融粘度を有し軟化点が145℃の「ビスコール660-P」1種類のみであり、比較例で実証しているのは、軟化点が98℃の「リコセンPP1602」のみであるから、軟化点が100℃以上145℃未満、または145℃を超える場合において本件特許発明の課題を解決することができることを具体的に検証していない。
よって、本願の詳細な説明には、「ポリプロピレンワックス(D)の軟化点が100℃以上である」ことで、「ホットメルト粘着剤を薄膜塗工した場合にも、接着強度やボトルの膨張によるラベルのずれに対するホットメルトの抵抗力と追従性(実貼り性)が高く、特にボトル膨張率が大きい炭酸飲料用PETボトルにおいて、長期保管した際にラベルがずれにくく剥離しにくい」という課題を解決できるといえる具体的な根拠とともに記載されておらず、当該事項が技術常識であったとも直ちに認められるものではないので、本件発明の課題を解決できない態様が含まれるといえるから、本件発明1~5についての特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
(4) 申立理由4(サポート要件2)
本件発明1~5は、「α-メチルスチレン樹脂(E)の軟化点が90℃以上である」ことを発明特定要件としているところ、α-メチルスチレン樹脂(E)は後記2の甲第7~9号証に記載されるように軟化点および粘度の異なる多くの種類が存在するにもかかわらず、実施例で実証しているのは、軟化点が100℃の「シルバレスSA100」1種類のみであり、比較例で実証しているのは、軟化点が85℃の「シルバレスSA85」のみであるから、軟化点が90℃以上100℃未満、または100℃を超える場合において本件特許発明の課題を解決することができることを具体的に検証していない。
よって、本願の詳細な説明には、「α-メチルスチレン樹脂(E)の軟化点が90℃以上である」ことで、「ホットメルト粘着剤を薄膜塗工した場合にも、接着強度やボトルの膨張によるラベルのずれに対するホットメルトの抵抗力と追従性(実貼り性)が高く、特にボトル膨張率が大きい炭酸飲料用PETボトルにおいて、長期保管した際にラベルがずれにくく剥離しにくい」という課題を解決できるといえる具体的な根拠とともに記載されておらず、当該事項が技術常識であったとも直ちに認められるものではないので、本件発明の課題を解決できない態様が含まれるといえるから、本件発明1~5についての特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
(5) 申立理由5(明確性要件)
本件発明1~5は、「α-メチルスチレン樹脂(E)の軟化点が90℃以上である」ことを発明特定要件としているところ、明細書の詳細な説明には「アルカリ剥離性に優れる点から軟化点は90~140℃が好ましい」という記載がある一方で、α-メチルスチレン樹脂(E)自体を含んでいない比較例11のアルカリ剥離性は◎、軟化点が85℃のα-メチルスチレン樹脂(E)を含む比較例15のアルカリ剥離性は◎となっており、当業者は、「α-メチルスチレン樹脂(E)の軟化点が90℃以上である」ことの技術的意味としてアルカリ剥離性に優れることを理解できないから、本件特許の請求項1~5についての特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
2 証拠方法
(1)申立人が提出した甲号証
甲第1号証:特開2021-95448号公報
甲第2号証:特開2005-105205号公報
甲第3号証:特開2010-90185号公報
甲第4号証:特開2013-231114号公報
甲第5号証:ポリオレフィンワックス入門(PPワックス、PEワックス)(三洋化成工業社、樹脂・機能化学品紹介サイト)、https://solutions.sanyo-chemical.co.jp/technology/2022/02/102489/
甲第6号証:特開2014-189584号公報
甲第7号証:クレイトン社、シルバレスSA140 製品情報及び抄訳文
https://sds.kraton.com/product-sds/shared-files/94511/SYLVARES-SA-140.pdf
甲第8号証:クレイトン社、シルバレスSA100 製品情報及び抄訳文
https://sds.kraton.com/product-sds/shared-files/94508/SYLVARES-SA-100.pdf
甲第9号証:クレイトン社、シルバレスSA85 製品情報及び抄訳文
https://sds.kraton.com/product-sds/shared-files/94507/SYLVARES-SA-85.pdf
(以下、「甲第1号証」~「甲第9号証」をそれぞれ「甲1」~「甲9」ともいい、これらをまとめて「甲号証」ともいう。)
(2)令和7年4月23日付け取消理由にて当審が提示した参考文献
参考文献A:クレイトン社、ポリマー製品ガイド
https://kraton.com/wp-content/uploads/2024/05/24-04-al-final-polymer-product-guide-interactive-web.pdf
(3)令和7年6月26日提出の意見書及び訂正請求書と共に特許権者が提示した乙号証
乙第1号証:クレイトンポリマー社、クレイトンポリマー製品のご案内と題する冊子、2017年
乙第2号証:実験成績証明書(作成日:令和7年6月9日、 作成者:トーヨーケム株式会社 鈴木 一平)
(以下、「乙第1号証」、「乙第2号証」をそれぞれ「乙1」、「乙2」ともいい、これらをまとめて「乙号証」ともいう。)
第5 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1~5に係る特許に対して、当審において、特許権者に通知した取消理由の概要は、次の(1)~(2)のとおりである。
(1) 令和6年10月1日付けで当審が通知した取消理由通知の概要は次のとおりである。
取消理由1-1(甲1を主引例とし甲2を副引例とする進歩性。上記第4 1(1)に対応)
本件発明1~5は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった前記第4 2 甲第1号証に記載された発明および甲第1号証に記載された事項、並びに甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
(2) 令和7年4月23日付けで当審が通知した取消理由通知の概要は次のとおりである。
取消理由1-2(甲1を主引例とする進歩性)
本件発明1~5は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった前記第4 2 甲第1号証に記載された発明および甲第1号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
2 甲号証、参考文献、乙号証の記載事項
以下、下線は当審により付した。
(1)甲1の記載事項
「【0001】
本発明は、ガラスビン、PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルなどのラベル用粘着剤として好適なアルカリ分散型ホットメルト粘着剤に関するものであり、特に、炭酸飲料用のPETボトルとラベルとの貼り合わせに利用される粘着剤として有効なアルカリ分散型ホットメルト粘着剤に関する。」
「【0005】
アルカリ分散型ホットメルト粘着剤には、「アルカリ分散性」だけでなく、ラベルと容器の接着性(保持力)にも優れていることが要求される。特に飲料分野では、「アルカリ分散性」および「保持力」と共に、ラベルを容器から剥した後、容器に糊を残さないこと、すなわち、再剥離性に優れることも要求されている。
【0006】
飲料メーカーでは、炭酸飲料を製造する際、ラベルが貼り付けられたPETボトルに炭酸飲料を充填する工程がある。炭酸飲料を充填し、PETボトルを放置しておくと、二酸化炭素がPETボトルを僅かに膨張させ、ボトルからラベルが浮き、剥がれるという問題が発生することがある。しかしながら、特許文献1~3に記載のホットメルト粘着剤はラベルの浮きや剥離の問題を解消するのに不十分であった。飲料業界では、保持力が特に優れたアルカリ分散型ホットメルト粘着剤が望まれている。」
「【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、アルカリ分散性が高く、ラベルの保持力に優れ、糊残りの問題が生じにくく、かつ糸曳きを低減できるアルカリ分散型ホットメルト粘着剤を提供することを目的とする。」
「【0021】
本発明に係るアルカリ分散型ホットメルト粘着剤は、(A)ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体、(B)粘着付与樹脂、ならびに(C)脂肪酸およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種を含んでいる。なお、本明細書においては、それぞれ、「成分(A)」、「成分(B)」および「成分(C)」と記載することもあり、本発明のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤のことを、単に「ホットメルト粘着剤」と記載することもある。
【0022】
ラベルの保持力は、ラベルの再剥離性およびアルカリ分散性と相反する性質である。本発明のホットメルト粘着剤は、下記で説明する成分(A)、成分(B)及び成分(C)を有し、成分(A)が(A1)スチレン含有率40質量%未満のスチレン系ブロック共重合体を含み、成分(B)がα-メチルスチレン系樹脂を含むことによって、上記相反する特性の双方を向上させることができ、かつ、被着体への塗布時の糸曳きを低減することができる。」
「【0033】
本発明において、(A)熱可塑性ブロック共重合体(成分(A))は、(A1)スチレン含有率40質量%未満のスチレン系ブロック共重合体(「成分(A1)」と記載することもある。)を含んでいる。「スチレン含有率」とは、熱可塑性ブロック共重合体に含まれるスチレンの割合をいう。成分(A1)のスチレン含有率は、40質量%未満であり、好ましくは35質量%未満であり、15質量%以上35質量%未満であるのがより好ましい。
【0034】
本発明のホットメルト粘着剤は、スチレン含有率が上記範囲内にある成分(A1)を含むことにより、ラベルをPETボトル等の容器へ安定して保持できるようになり、ラベルの浮き、ずれ等が起こりにくくなる。
【0035】
本発明のホットメルト粘着剤は、成分(A)の総量100質量部に対し、成分(A1)の含有量が70質量部以上であることが好ましく、80質量部以上であることがより好ましく、100質量部であってもよい。本発明のホットメルト粘着剤は、成分(A1)の含有量が上記範囲内にあると、保持力がより向上する。
【0036】
(A)熱可塑性ブロック共重合体は、単独で又は複数種類を組み合わせて用いることができ、一実施態様として、(A1)スチレン含有率40質量%未満のスチレン系ブロック共重合体と、(A1)に該当しないスチレン系ブロック共重合体とが配合されていても差し支えない。(A1)に該当しないスチレン系ブロック共重合体とは、スチレン含有率が40質量%以上のものを意味する(以下、「(A2)スチレン含有率が40質量%以上のスチレン系ブロック共重合体」、または、「成分(A2)」と記載することもある。)。
【0037】
本発明において、(A1)スチレン含有率40質量%未満のスチレン系ブロック共重合体として、市販品を用いることができる。例えば、旭化成ケミカルズ社(株)製のタフプレンT420(商品名)、タフテックP3000(商品名)、タフテックH1053(商品名);日本ゼオン社製のQuintac3460(商品名)、Quintac3433N(商品名)、Quintac3520(商品名)、Quintac3270(商品名);クレイトン社製のD1160(商品名)、Kraton G1650(商品名)、Kraton G1652(商品名)、Kraton G1657(商品名)を例示できる。
【0038】
成分(A)としては、ジブロック含有率が0質量%であるトリブロック型スチレン系ブロック共重合体であることが好ましく、特に、成分(A1)として、ジブロック含有率が0質量%のトリブロック型スチレン系ブロック共重合体を用いると、ホットメルト粘着剤の保持力がより優れたものとなる。」
「【0042】
トリブロック型スチレン系ブロック共重合体は、例えば、下記式(2)で表される構造を有し、それ以外のブロックを含まないスチレン系ブロック共重合体であるのが好ましい。
S-E-S (2)
(式(2)中、Sはスチレンブロック、Eは共役ジエン化合物ブロックである。)
【0043】
本明細書では、トリブロック型スチレン系ブロック共重合体はジブロック含有率が0質量%であり、ジブロック型スチレン系ブロック共重合体とは区別される。
【0044】
本発明では、成分(A1)がスチレン―エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS)トリブロック共重合体であることが最も望ましい。本発明のホットメルト粘着剤は、スチレン―エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS)トリブロック共重合体を含むことによって、凝集力が著しく向上する。これにより、ホットメルト粘着剤を用いてラベルを容器に接着させたとき、長期間にわたって容器からラベルが浮くことなく、かつ、ラベルがずれることもなくラベルの接着を保持することができる。
【0045】
(A2)スチレン含有率が40質量%以上のスチレン系ブロック共重合体の市販品としては、旭化成ケミカルズ社製のアサプレンT439(商品名)、タフプレン125(商品名)、タフプレンA(商品名)、タフテックP2000(商品名)、タフテックH1043(商品名)、タフテックH1051(商品名);JSR社製のTR2000(商品名)、TR2250(商品名);Enichem社製のSOlT6414(商品名)が挙げられる。これらの市販品は、各々単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0046】
<(B)粘着付与樹脂>
本発明のホットメルト粘着剤は、(B)粘着付与樹脂(成分(B))を含むことにより、容器に対するラベルの保持力を向上することができる。「粘着付与樹脂」は、ホットメルト粘着剤に通常使用されるものであって、本発明が目的とするホットメルト粘着剤を得ることができるものであれば、特に限定されることはない。なお、本明細書において、成分(B)は、上記成分(A)として説明した化合物は含まないものとする。
【0047】
本発明においては、(B)粘着付与樹脂は、α-メチルスチレン系樹脂を含んでいる。α-メチルスチレン系樹脂を含むことにより、ホットメルト粘着剤の凝集性が高まり、再剥離性および保持力が向上する。α-メチルスチレン系樹脂としては、例えば、α-メチルスチレン単独重合体又はスチレン/α-メチルスチレン共重合体が用いられる。
【0048】
本発明の一実施態様として、α-メチルスチレン系樹脂は、スチレン/α-メチルスチレン共重合体が好ましい。また、α-メチルスチレン系樹脂は、軟化点(JIS K2207に規定する環球法で測定)が65℃~160℃のものが好ましく、軟化点が85~160℃のものがより好ましい。具体的には、イーストマンケミカル社製のクリスタレックス3085(商品名)、クリスタレックス3100(商品名)、クリスタレックス1120(商品名)、クリスタレックス5140(商品名)、Endix155、Plastrin290、三井化学社製のFTR-2120(商品名)等の市販品を例示できる。
【0049】
本発明のホットメルト粘着剤において、(B)粘着付与樹脂の総質量100質量部に対するα-メチルスチレン系樹脂の含有量は、特に限定はされないが、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは4質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である。
【0050】
(B)粘着付与樹脂は、α-メチルスチレン系樹脂に加えて、他の粘着付与樹脂を含んでもよい。他の粘着付与樹脂としては、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、水添テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体を例示することができる。
【0051】
成分(B)は、酸価が0~300mgKOH/gの粘着付与樹脂を含むことが好ましく、酸価が50~300mgKOH/gのロジン系粘着付与樹脂を含むことがより好ましく、酸価が150~300mgKOH/gのロジン系粘着付与樹脂を含むことがさらに好ましく、酸価が150~250mgKOH/gのロジン系粘着付与樹脂を含むことが最も好ましい。酸価が該範囲内であると、本発明のホットメルト粘着剤のアルカリ分散性がより向上する。
【0052】
本発明の一態様において、ホットメルト粘着剤が、成分(B)として、α-メチルスチレン系樹脂と、酸価が0~300mgKOH/gの粘着付与樹脂(好ましくは酸価が0~300mgKOH/gのロジン系粘着付与樹脂)の双方を含むと、本発明のホットメルト粘着剤は、アルカリ分散性、ラベルの保持力および再剥離性に優れたものとなる。
【0053】
これらの粘着付与樹脂は、一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。粘着付与樹脂は、色調が無色~淡黄色であって、臭気が実質的に無く熱安定性が良好なものであれば、液状タイプの粘着付与樹脂も使用できる。」
「【0074】
本発明のホットメルト粘着剤は、成分(A)~成分(C)以外に、ワックスを含んでもよい。
【0075】
「ワックス」は、常温で固体、加熱すると液体となる有機物であって、ホットメルト粘着剤に一般的に用いられるワックスであって、本発明が目的とするホットメルト粘着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。ワックスの重量平均分子量は、一般に10000未満である。具体的には、フィッシャートロプシュワックス、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス)等の合成ワックス系;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックス;カスターワックスなどの天然ワックス;等を例示できる。
【0076】
本発明のホットメルト粘着剤がワックスを含むことにより、ラベルを容器から剥がす際、ホットメルト粘着剤の容器への糊残りが少なくなる。
【0077】
本発明において、ワックスはフィッシャートロプシュワックスを含むのが好ましい。フィッシャートロプシュワックスは、成分分子が比較的幅広い炭素数分布を持つワックスから成分分子が狭い炭素数分布を持つようにワックスを分取したものである。フィッシャートロプシュワックスによって、ラベルを容器から剥離する際のホットメルト粘着剤の糊残りがより少なくなる。
【0078】
本発明のホットメルト粘着剤は、可塑剤を含んでもよい。
【0079】
可塑剤は、ホットメルト粘着剤の溶融粘度低下、柔軟性の付与、被着体への濡れ向上を目的として配合され、他の成分と相溶し、本発明が目的とするホットメルト粘着剤を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。可塑剤として、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイル及び芳香族系オイルを例示することができる。特にパラフィン系オイル及び/又はナフテン系オイルが好ましく、無色、無臭であるパラフィン系オイルが最も好ましい。
【0080】
可塑剤の市販品の一例として、例えば、Kukdong Oil&Chem社製のWhite Oil Broom350(商品名)、出光興産社製のダイアナフレシアS-32(商品名)、ダイアナプロセスオイルPW-90(商品名)、ダフニ-オイルKP-68(商品名)、BPケミカルズ社製のEnerperM1930(商品名)、Crompton社製のKaydol(商品名)、エクソン社製のPrimol352(商品名)、出光興産社製のプロセスオイルNS-100(商品名)、ペトロチャイナ社製のDN4010を例示することができる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。」
「【0097】
本発明に用いられるラベルとしては、特に、アルカリ洗浄に用いられることの多いポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)等の有機化合物のフィルムが好ましい。ポリプロピレンフィルムとしては、特に二軸延伸されたポリプロピレン(OPP)フィルムが好ましい。
【0098】
本発明のホットメルト粘着剤は、ラベル裏面全体に塗工されても、ラベル裏面の一部に塗工されても差支えない。塗布方式としては、オープンホイール方式、クローズガン方式、ダイレクトコート方式などがある。ラベルを剥がした際、PETボトルに糊が残らない方式として、オープンホイール方式、ダイレクトコート方式が好ましい。
【0099】
本発明に係る容器は、上記ラベルが貼り付けられたものである。具体的には、清涼飲料水、調味料、洗剤、シャンプー、食用油、化粧品、医薬品などに使用されているガラス瓶などのガラス容器;PET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルなどのプラスチック容器;アルミニウム等の金属缶;が例示される。上述の容器のうち、特にPETボトルが本発明では好ましい。PETボトルに本発明のラベルが貼り付けられている例としては、PETボトルの胴周りの一部にラベルが貼着されたもの、ボトルの胴周りを周状に覆うように巻きまわされた「胴巻きラベル」が貼られたものが本発明の一実施形態として挙げられる。本発明のホットメルト粘着剤は保持力に優れるため、PETボトル等の容器に炭酸飲料が充填されていること等により容器が膨張しても、ラベルがずれたり浮いたりするのを抑制することができる。
【0100】
本発明のホットメルト粘着剤は、胴巻きラベルの接着に好ましく用いられる。胴巻きラベルとしては、二軸延伸されたポリプロピレン(OPP)フィルムが多用されている。本発明のホットメルト粘着剤が塗布されるラベルは、印刷が施されていてもよいし、施されていなくてもよい。印刷が施されているラベルを用いる場合、本発明のホットメルト粘着剤は、印刷が施されていない面に限らず、印刷が施されている面に塗布されてもよい。」
「【0105】
(A)熱可塑性ブロック共重合体
(A1)スチレン含有率が40質量%未満のスチレン系ブロック共重合体
(A1-1)スチレン-エチレン/ブチレン-スチレントリブロック共重合体(クレイトン社製のクレイトンG-1652(商品名)、スチレン含有率30質量%、ジブロック含有率0質量%、重量平均分子量72,000)
(A1-2)スチレン-エチレン/ブチレン-スチレントリブロック共重合体(クレイトン社製のクレイトンG-1650(商品名)、スチレン含有率30質量%、ジブロック含有率0質量%、重量平均分子量92,000)
(A1-3)スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(クレイトン社製のクレイトンG-1726(商品名)、スチレン含有率31質量%、ジブロック含有率73質量%、重量平均分子量43,000)
(A1-4)スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(クレイトン社製のクレイトンG-1657(商品名)、スチレン含有率15質量%、ジブロック含有率33質量%、重量平均分子量106,000)
【0106】
(A2)スチレン含有率が40質量%以上のスチレン系ブロック共重合体
(A2-1)スチレン-エチレン/ブチレン-スチレントリブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製のタフテックH1043(商品名)、スチレン含有率68質量%、ジブロック含有率0質量%、重量平均分子量53,000)
(A2-2)スチレン―ブタジエン/ブチレン-スチレントリブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製のタフテックP2000(商品名)、スチレン含有率68質量%、ジブロック含有率0質量%、重量平均分子量54,000)
(A2-3)スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体(JSR社製のTR2250(商品名)、スチレン含有率52質量%、ジブロック含有率0質量%、重量平均分子量109,000)
(A2-4)スチレン-ブタジエン-スチレントリブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製のタフプレンA(商品名)、スチレン含有率41質量%、ジブロック含有率0質量%、重量平均分子量105,000)
(A2-5)スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製のアサプレンT-439(商品名)、スチレン含有率46質量%、ジブロック含有率69質量%、重量平均分子量63,000)
(A2-6)スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体(クレイトン社製のクレイトンD-1162(商品名)、スチレン含有率41質量%、ジブロック含有率0質量%、重量平均分子量82,000)
【0107】
(B)粘着付与樹脂
(B1)水添脂環族/芳香族共重合系炭化水素樹脂(JXTGエネルギー社製のT-REZ HC103(商品名)、軟化点103℃)
(B2)水添脂環族系炭化水素樹脂(JXTGエネルギー社製のT-REZ HA103(商品名)、軟化点103℃)
(B3)水添脂環族系炭化水素樹脂(JXTGエネルギー社製のT-REZ HA125(商品名)、軟化点125℃)
(B4)水素添加ロジンエステル(GUANGDONG KOMO社製のKOMOTAC KHR75(商品名)、酸価170mgKOH/g 軟化点80℃)
(B5)水素添加ロジンエステル(イーストマンケミカル社製のForalAX-E(商品名)、酸価160mgKOH/g 軟化点80℃)
(B6)ロジンエステル(GUANGDONG KOMO社製のKOMOTAC K107(商品名)、酸価155mgKOH/g 軟化点80℃)
(B7))α-メチルスチレン系樹脂(イーストマンケミカル社製のクリスタレックス3070(商品名)、軟化点70℃)
(B8))α-メチルスチレン系樹脂(イーストマンケミカル社製のクリスタレックス3085(商品名)、軟化点85℃)
(B9)α-メチルスチレン系樹脂(イーストマンケミカル社製のクリスタレックス3100(商品名)、軟化点100℃)
(B10)α-メチルスチレン系樹脂(イーストマンケミカル社製のクリスタレックス5140(商品名)、軟化点140℃)
(B11)水添ロジンエステル(イーストマンケミカル社製のForal 85E(商品名)、酸価9mgKOH/g 軟化点85℃)
(B12)ロジンエステルGUANGDONG KOMO社製のKOMOTAC KB90H(商品名)、酸価15mgKOH/g 軟化点90℃)
【0108】
(C)脂肪酸およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種
(C1)融点40℃以上の脂肪酸誘導体
(C1-1)ヒマシ硬化油(伊藤製油社製のヒマシ硬化油A(商品名)、融点85.5℃)
(C1-2)モノヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油(横関油脂社製のテクノールMH(商品名)、融点58.0℃)
(C1-3)ラウリン酸水添ヒマシ油(横関油脂社製のテクノールML98(商品名)、融点51.0℃)
(C1-4)ヒマシ硬化脂肪酸(日油社製の12-ヒドロキシステアリン酸(商品名)、融点69.0℃)
(C1-5)牛脂硬化油(日油社製の牛脂51°硬化油HO(商品名)、融点51.0℃)
(C1-6)大豆極度硬化油(山桂産業社製の水添大豆油(商品名)、融点68.2℃)
(C1-7)菜種極度硬化油(山桂産業社製の水添菜種種子油(商品名)、融点68.4℃)
(C1-8)パーム極度硬化油(山桂産業社製の水添パーム油(商品名)、融点58.6℃)
(C1-9)ライスワックス菜種極度硬化油(ボーソー油脂社製のライスワックスSS-1(商品名)、融点79.0℃)
【0109】
(C2)融点40℃未満の脂肪酸誘導体
(C2-1)ヒマシ油(豊国製油社製の工業用1号ヒマシ油(商品名)、融点なし(凝固点-22℃)
(C2-2)米油(ボーソー油脂製のこめサラダ油(商品名)、融点なし(凝固点-10~-5℃))
(C2-3)ひまわり油(山桂産業社製のハイオレイックヒマワリ油(商品名)、融点なし(凝固点-18~-16℃))
(C2-4)ヤシ油(山桂産業社製のヤシ油(商品名)、融点24.6℃)
(C2-5)ジグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン社製のリケマール L-71-D(商品名)、融点34℃)
【0110】
(D)ワックス
(D1)フィッシャートロプシュワックス(サゾール社製のサゾールC80(商品名)、融点80℃、針入度7)
(D2)フィッシャートロプシュワックス(サゾール社製のサゾールH1(商品名)、融点108℃、針入度2)
(D3)エチレン酢酸ビニル共重合体ワックス(Honeywell社製のAC400(商品名)、融点92℃)
(D4)ポリエチレンワックス(三井化学社製のハイワックス320P(商品名)、融点109℃、針入度7)
(D5)ポリプロピレンワックス三井化学社製のハイワックスNP105(商品名)、融点140/148℃、針入度1)
(D6)パラフィンワックス(日本精蝋社製のHNP-9(商品名)、融点75℃、針入度6)
【0111】
(E)可塑剤(オイル)
(E1)パラフィンオイル(出光興産社製のダフニーオイル KP-68(商品名))
(E2)パラフィンオイル(出光興産社製のダイアナプロセスオイル PW90
(商品名))
(E3)ポリブテン(日本石油社製の日石ポリブテンHV-300(商品名))
(E4)ナフテンオイル(ペトロチャイナ社製のDN4010(商品名))
【0112】
(F)安定化剤(酸化防止剤)
(F1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤(アデカ社製のアデカスタブ AO-60(商品名))
(F2)チオエーテル系酸化防止剤(アデカ社製のアデカスタブ AO-412S(商品名))
【0113】
成分(A)~(F)を表1および表2に示す配合割合で配合し、約145℃で約3時間かけて万能攪拌機を用いて溶融混合し、実施例1~18、比較例1~4のホットメルト粘着剤を製造した。表1および表2に示されるホットメルト粘着剤の組成(配合)に関する数値の単位は、全て質量部である。」
「【0119】
<保持力(ラベルの浮き、ずれ)>
ホットメルト粘着剤をOPPフィルム上に20~25μmの厚みになるように塗工し、ホットメルト粘着剤付きOPPラベル(25mm×50mm)を作製した。そのラベルを空のペットボトルに100℃で5秒間押し付けることで貼りあわせ、試験サンプルを作製した。」
「【0127】
【表1】
[図:0001429980000001.jpg]
」
「【0132】
本発明は、アルカリ分散型ホットメルト粘着剤、及びそのホットメルト粘着剤が塗工されたラベル、そのラベルが貼られた容器を提供できる。」
(2)甲2の記載事項
「【0001】
本発明はホットメルト接着剤に関する。さらに詳しくは、特にポリオレフィン系樹脂成形品の接着に適し、樹脂成型品の風合いを損なわない柔軟性を有し、かつ凝集力に優れるホットメルト接着剤に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記のものはホットメルト接着剤として使用した場合、オープンタイム(塗布後、接着が可能である貼り合わせるまでの時間)を長くしたり、溶融粘度を低下させたりすると、凝集力や保持力が低下し、オレフィン系樹脂成形品等の被着体に対する接着力が低下する等の問題が生じ、また、凝集力を向上させると、柔軟性が低下し樹脂成形品の風合いを損なうといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、これらの問題点を解決し、接着力及び凝集力に優れ、柔軟性の良好な接着剤を得るべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、ジエン(共)重合体及びエチレン-αオレフィン共重合体から選ばれるゴム(A)、粘着付与樹脂(B)および可塑剤(C)からなるホットメルト接着剤において、(A)が直線状型ゴム(a-1)及び放射状型(a-2)の二種を必須成分として含有することを特徴とするホットメルト接着剤である。
【発明の効果】
【0005】
本発明のホットメルト接着剤は、従来のものに比べ以下の効果を有する。
(1)ホットメルト接着剤が柔らかいため接着体の風合いに優れ、かつ凝集力及び保持力が強い接着性が良好であるため各種被着体に対して優れた接着力を示す。特にポリオレフィン系材料等の難接着材料に対する接着力が極めて良好である。さらに溶融粘度が低く、低温塗工が可能であるため、耐熱性の低いポリエチレンフィルム等の被着体に対して直接塗布することが可能となる。
(2)ホットメルト接着剤の加熱減量が低いため、溶融時のミストの発生が抑えられ、臭気の発生も極めて少ない。」
「【0009】
本発明のホットメルト接着剤を構成する(A)は、上記の組成をもち、且つ直線状型ゴム(a-1)と放射状型ゴム(a-2)の二種を必須成分として含有する。直線状型ゴム(a-1)とは、分子鎖に分岐点のない、いわゆる末端基が2つであるゴムを指す。分岐点とは、枝が分子鎖と接する点をいい、枝とは分子鎖から伸びているオリゴマー又は高分子量の枝で、除去することによりその性質が大きく変化するようなものを指す。放射状型ゴム(a-2)とは、分子鎖に少なくとも1個の分岐点をもつ、いわゆる末端基を3つ以上有するゴムである。放射状型ゴムには、分子鎖の形状が星型、櫛型などのものが含まれる。
【0010】
(a-1)は、好ましくは直鎖状ジエン(共)重合体であり、より好ましくは直鎖状ジエン(共)重合体における上記の他の単量体の含量(重量%)がは(a-1)の重量に基づいて25~65%、特に好ましくは30~60%、最も好ましくは35~55%である。他の単量体の含量が25重量%以上であると得られるホットメルト接着剤の凝集力が低下せず、65重量%以下であると接着剤が硬くなりすぎず接着体の風合いが良好となる接着性が低下しない。
(a-2)は、好ましくは放射状ジエン(共)重合体であり、より好ましくは放射状ジエン(共)重合体における上記の他の単量体の含量(重量%)は(a-2)の重量に基づいて5~40%、特に好ましくは10~35%、最も好ましくは15~30%である。他の単量体の含量が5重量%以上であると得られるホットメルト接着剤の凝集力が低下せず、40重量%以下であると接着剤が硬くなり過ぎず接着体の風合いが良好となる接着性が低下しない。
(a-1)と(a-2)の比率(重量比)は、好ましくは10:90~90:10、より好ましくは20:80~80:20、特に好ましくは30:70~70:30である。上記の比率にすることで、高凝集力且つ柔軟なホットメルト接着剤が得られる。
【0011】
粘着付与樹脂(B)としては、公知の樹脂{例えば、接着の技術20,(2),13(2000)に記載}等が使用でき、その具体例としては例えば、ロジン、ロジン誘導体樹脂[例えば、重合ロジン、ロジンエステル等:数平均分子量(以下Mnと記す。)200~1,000]、テルペン系樹脂[例えば、αピネン、βピネン、リモネン等の(共)重合体及びこれらのフェノール変成体等:Mn300~1200]、クマロン-インデン樹脂(Mn300~1200)、石油樹脂[例えば、C5留分、C9留分、C5/C9留分、ジシクロペンタジエン等の(共)重合体。Mn300~1200]、スチレン系樹脂[例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の(共)重合体でMnが200~1,000で且つTgが40℃以上のもの]、キシレン系樹脂(例えば、キシレンホルムアルデヒド樹脂等:Mn300~3,000)、フェノール系樹脂(例えば、フェノールキシレンホルムアルデヒド樹脂等:Mn300~3,000)及びこれらの樹脂の水素化体から選ばれる1種以上の樹脂が挙げられる。
これらのうち好ましいものは、熱安定性、臭気及び色相の観点から、テルペン系樹脂の水素化体及び石油樹脂の水素化体などの水素体であり、特に好ましいものはC9留分、C5/C9留分の(共)重合石油樹脂の水素化体、ジシクロペンタジエン系の(共)重合石油樹脂の水素化体である。
上記及び下記に記載のMn及び重量平均分子量(以下Mwと記す。)は、ポリスチレンを標準としてゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法で求められる値である。Tgとはガラス転移点である。
【0012】
可塑剤(C)としては、公知の可塑剤{例えば、接着の技術20,(2),21(2000)に記載}等が使用でき、その具体例としては例えば、パラフィン系、ナフテン系若しくは芳香族系のプロセスオイル;液状ポリブテン、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン等の常温で液状を呈する樹脂(Mw=300~10,000);これらの液状の樹脂の水素化体;天然若しくは合成ワックス類[パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、低分子量ポリオレフィンワックス(Mw=1,000~30,000)等];及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
これらのうち好ましいものは、熱安定性及び耐候性に優れた組成物が得られる観点からパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及びこれらの併用である。」
「【0047】
【表1】
[図:0001429980000002.jpg]
【0048】
(記号等の説明)
A-1:スチレン-ブタジエンブロック共重合ゴム「クレイトンD-1155」[クレイトンポリマージャパン社製]スチレン含量40重量%;MI=14[(a-1)に相当]
A-2:スチレン-ブタジエンブロック共重合ゴム「クレイトンD-1116」[クレイトンポリマージャパン社製]スチレン含量23重量%;MI=<1[(a-2)に相当]
A-3:水添スチレン-イソプレンブロック共重合ゴム「セプトン2002」[クラレ社製]スチレン含量30重量%;MI=45[(a-1)に相当]
B-1:部分水添石油樹脂(C9留分共重合体主成分)「アルコンM-115」[荒川化学社製];軟化点=115℃
B-2:水添石油樹脂(DCPD系共重合体主成分)「エスコレッツECR-227E」[トーネックス社製];軟化点=125℃
C-1:ナフテン系オイル「ダイアナプロセスオイルNP-24」[出光興産社製]
C-2:パラフィン系オイル「ダイアナプロセスオイルPW-90」[出光興産社製]
E-2:ポリフェニレンオキサイド(ポリ-2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキサイド){商品名:ノリルPPOSA120、日本ジーイープラスチックス社製、Mw6350、SP値11.2、Tg160℃}
F-1:ヒンダードフェノール系酸化防止剤「イルガノックス1010」[チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製]
F-2:リン系酸化防止剤「アデカスタブ2112」[旭電化工業社製]
F-3:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「チヌビン328」[チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製]」
「【0053】
本発明のホットメルト接着剤は、接着力、凝集力、柔軟性及び加工性に優れ、かつ臭気も少ないので、広範な被着体(例えば各種プラスチック成形品、ゴム、紙、布、金属、木材、ガラス、モルタルコンクリート等)の接着に適用できる。が、特に難接着性と言われるであるポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)系樹脂成形品同士またはこれらと上記の他の被着体とを接着するためのホットメルト接着剤として好適であり、その接着例としては、使い捨ておむつを構成するポリオレフィン系不織布とポリオレフィン系フィルムとの接着等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂成形品同士、またはこれと他の被着体とが本発明のホットメルト接着剤で接着されてなる接着体(第23発明)としては、使い捨ておむつ、使い捨て生理用ナプキン、粘着テープ、及び粘着フィルム、自動車用ランプ、布製品、衣料、ラベル、木工造作物、各種建材等が例示できる。
本発明の接着剤は一般に固体状のホットメルト型としてのみならず、有機溶剤溶液、エマルション、ディスパージョン、フィルム等の形態でも使用可能である。また、本発明のホットメルト接着剤は各種熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の成形性や樹脂物性の改質剤、アスファルトの流動性改質剤等にも用いることができる。」
(3)参考文献Aの記載事項
[図:0001429980000003.jpg]
(4)乙1の記載事項
[図:0001429980000004.jpg]
[図:0001429980000005.jpg]
[図:0001429980000006.jpg]
3 取消理由についての当審の判断
(1) 取消理由1-1(甲1を主引例とし甲2を副引例とする進歩性。上記第4 1(1)に対応)について
ア 甲1には、下記の(ア)、(イ)のとおり、甲1発明A、甲1発明Bが記載されている。
(ア) 甲1発明A
甲1の【0105】~【0113】、【0127】【表1】実施例8をふまえると、以下の発明が記載されている。
「(A1-2)スチレン-エチレン/ブチレン-スチレントリブロック共重合体(クレイトン社製のクレイトンG-1650(商品名)、スチレン含有率30質量%、ジブロック含有率0質量%、重量平均分子量92,000)を16.7質量部、
(A2-5)スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製のアサプレンT-439(商品名)、スチレン含有率46質量%、ジブロック含有率69質量%、重量平均分子量63,000)を4.2質量部、
(B1)水添脂環族/芳香族共重合系炭化水素樹脂(JXTGエネルギー社製のT-REZ HC103(商品名)、軟化点103℃)を20.9質量部、
(B3)水添脂環族系炭化水素樹脂(JXTGエネルギー社製のT-REZ HA125(商品名)、軟化点125℃)を13.9質量部、
(B4)水素添加ロジンエステル(GUANGDONG KOMO社製のKOMOTAC KHR75(商品名)、酸価170mgKOH/g 軟化点80℃)を20.9質量部、
(B8)α-メチルスチレン系樹脂(イーストマンケミカル社製のクリスタレックス3085(商品名)、軟化点85℃)を2.7質量部、
(B10)α-メチルスチレン系樹脂(イーストマンケミカル社製のクリスタレックス5140(商品名)、軟化点140℃)を1.4質量部、
(C1-1)ヒマシ硬化油(伊藤製油社製のヒマシ硬化油A(商品名)、融点85.5℃)を16.7質量部、
(C1-8)パーム極度硬化油(山桂産業社製の水添パーム油(商品名)、融点58.6℃)を2.8質量部、
(D2)フィッシャートロプシュワックス(サゾール社製のサゾールH1(商品名)、融点108℃、針入度2)を5.6質量部、
(D5)ポリプロピレンワックス(三井化学社製のハイワックスNP105(商品名)、融点140/148℃、針入度1)を1.4質量部、
(E1)パラフィンオイル(出光興産社製のダフニーオイル KP-68(商品名))を11.1質量部、
(E4)ナフテンオイル(ペトロチャイナ社製のDN4010(商品名))20.9質量部、
(F1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤(アデカ社製のアデカスタブ AO-60(商品名))を0.4質量部、
(F2)チオエーテル系酸化防止剤(アデカ社製のアデカスタブ AO-412S(商品名))を0.3質量部、
合計139.6部
の配合割合で配合して製造したアルカリ分散型ホットメルト粘着剤」
(イ) 甲1発明B
前記アにおいて甲1発明Aを認定した箇所及び甲1の【0119】をふまえると、以下の発明が記載されている。
「(A1-2)スチレン-エチレン/ブチレン-スチレントリブロック共重合体(クレイトン社製のクレイトンG-1650(商品名)、スチレン含有率30質量%、ジブロック含有率0質量%、重量平均分子量92,000)を16.7質量部、
(A2-5)スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製のアサプレンT-439(商品名)、スチレン含有率46質量%、ジブロック含有率69質量%、重量平均分子量63,000)を4.2質量部、
(B1)水添脂環族/芳香族共重合系炭化水素樹脂(JXTGエネルギー社製のT-REZ HC103(商品名)、軟化点103℃)を20.9質量部、
(B3)水添脂環族系炭化水素樹脂(JXTGエネルギー社製のT-REZ HA125(商品名)、軟化点125℃)を13.9質量部、
(B4)水素添加ロジンエステル(GUANGDONG KOMO社製のKOMOTAC KHR75(商品名)、酸価170mgKOH/g 軟化点80℃)
を20.9質量部、
(B8)α-メチルスチレン系樹脂(イーストマンケミカル社製のクリスタレックス3085(商品名)、軟化点85℃)を2.7質量部、
(B10)α-メチルスチレン系樹脂(イーストマンケミカル社製のクリスタレックス5140(商品名)、軟化点140℃)を1.4質量部、
(C1-1)ヒマシ硬化油(伊藤製油社製のヒマシ硬化油A(商品名)、融点85.5℃)を16.7質量部、
(C1-8)パーム極度硬化油(山桂産業社製の水添パーム油(商品名)、融点58.6℃)を2.8質量部、
(D2)フィッシャートロプシュワックス(サゾール社製のサゾールH1(商品名)、融点108℃、針入度2)を5.6質量部、
(D5)ポリプロピレンワックス三井化学社製のハイワックスNP105(商品名)、融点140/148℃、針入度1)を1.4質量部、
(E1)パラフィンオイル(出光興産社製のダフニーオイル KP-68(商品名))を11.1質量部、
(E4)ナフテンオイル(ペトロチャイナ社製のDN4010(商品名))20.9質量部、
(F1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤(アデカ社製のアデカスタブ AO-60(商品名))を0.4質量部、
(F2)チオエーテル系酸化防止剤(アデカ社製のアデカスタブ AO-412S(商品名))を0.3質量部、
合計139.6部
の配合割合で配合して製造したアルカリ分散型ホットメルト粘着剤をOPPフィルムに塗工し、ホットメルト粘着剤付きOPPラベルを作製し、そのラベルを貼り合わせたペットボトル」
イ 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲1発明Aとを対比する。
甲1発明Aの「(A2-5)スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(旭化成ケミカルズ社製のアサプレンT-439(商品名)、スチレン含有率46質量%、ジブロック含有率69質量%、重量平均分子量63,000)」は本件発明1の「スチレン含有率が35~60質量%である直鎖型のスチレン系エラストマー(a2)」に相当し、甲1発明Aの「(B4)水素添加ロジンエステル(GUANGDONG KOMO社製のKOMOTAC KHR75(商品名)、酸価170mgKOH/g 軟化点80℃)」は、本件発明1の「ロジン系粘着付与剤(B)の酸価が、100~300mgKOH/gであり」に相当し、甲1発明Aの「(E1)パラフィンオイル」及び「(E4)ナフテンオイル」は本件発明1の「プロセスオイル(C)」に相当し、甲1発明Aの「(D5)ポリプロピレンワックス(三井化学社製のハイワックスNP105(商品名)、融点140/148℃、針入度1)」は本件発明1の「ポリプロピレンワックス(D)」に相当し、甲1発明Aの「(B10)α-メチルスチレン系樹脂(イーストマンケミカル社製のクリスタレックス5140(商品名)、軟化点140℃)」は本件発明1の「α-メチルスチレン樹脂(E)の軟化点が、90℃以上であり」に相当し、甲1発明Aの「アルカリ分散型ホットメルト粘着剤」は本件発明1の「アルカリ剥離性ホットメルト粘着剤」に相当する。
また、甲1発明Aの「(D5)」を「1.4質量部」配合することは、「合計139.6部」に対して1.0質量%であるから、本件発明1の「ポリプロピレンワックス(D)を0.1~5質量%含む」を充足する。
さらに、甲1発明Aの「(B10)」を「1.4質量部」配合することは、「合計139.6部」に対して1.0質量%であるから、本件発明1の「α-メチルスチレン樹脂(E)を1~9質量%含む」を充足する。
そうすると、以下の点で一致し、以下の点で相違または一応相違する。
(一致点)
スチレン系エラストマー(A)、ロジン系粘着付与剤(B)、プロセスオイル(C)、ポリプロピレンワックス(D)およびα-メチルスチレン樹脂(E)を含むアルカリ剥離性ホットメルト粘着剤であって、
スチレン系エラストマー(A)が、スチレン含有率が35~60質量%である直鎖型のスチレン系エラストマー(a2)を含み、
ロジン系粘着付与剤(B)の酸価が、100~300mgKOH/gであり、α-メチルスチレン樹脂(E)の軟化点が、90℃以上であり、
ホットメルト粘着剤100質量%中に、ポリプロピレンワックス(D)を0.1~5質量%、α-メチルスチレン樹脂(E)を1~9質量%含む、アルカリ剥離性ホットメルト粘着剤。
(相違点1’)
本件発明1は「スチレン系エラストマー(A)」が、「(1)~(3)を満たす分岐型のスチレン系エラストマー(a1)」であって、「(1)スチレン含有率が35質量%以下 (2)ジブロック含有率が30質量%以上60質量%以下 (3)固形分25質量%トルエン溶液の25℃における粘度が1000mPa・s以上」であるものを含むのに対して、甲1発明Aはその点が特定されていない点。
(相違点2)
本件発明1はポリプロピレンワックス(D)の軟化点が100℃以上であるのに対して、甲1発明Aはそのように特定されていない点。
(イ) 判断
a 相違点1’について
甲1によれば、【0022】に「成分(A)、成分(B)及び成分(C)を有し、成分(A)が(A1)スチレン含有率40質量%未満のスチレン系ブロック共重合体を含み、成分(B)がα-メチルスチレン系樹脂を含むことによって、上記相反する特性の双方を向上させることができ、かつ、被着体への塗布時の糸曳きを低減することができる」ことが記載され、【0036】に「(A)熱可塑性ブロック共重合体は、・・・一実施態様として、(A1)スチレン含有率40質量%未満のスチレン系ブロック共重合体と、(A1)に該当しないスチレン系ブロック共重合体とが配合されていても差し支えない。(A1)に該当しないスチレン系ブロック共重合体とは、スチレン含有率が40質量%以上のものを意味する(以下、「(A2)スチレン含有率が40質量%以上のスチレン系ブロック共重合体」、または、「成分(A2)」と記載することもある。)。」ことが記載され、甲1発明Aの(A1-2)はスチレン含有率が40質量%未満のスチレン系ブロック共重合体(A1)の一例として、(A2-5)はスチレン含有率が40質量%以上のスチレン系ブロック共重合体として(A2)の一例であると認められる。
一方、甲2によれば、【0003】~【0005】において「接着力及び凝集力に優れ、柔軟性の良好な接着剤を得る」ことを課題とし、課題を解決するために「ジエン(共)重合体及びエチレン-αオレフィン共重合体から選ばれるゴム(A)、粘着付与樹脂(B)および可塑剤(C)からなるホットメルト接着剤において、(A)が直線状型ゴム(a-1)及び放射状型(a-2)の二種を必須成分として含有することを特徴とするホットメルト接着剤」としたことが記載されている。
そして、甲2の【表1】実施例、【0048】には直鎖状型ゴムとしてA-1(スチレン-ブタジエンブロック共重合ゴム「クレイトンD-1155」[クレイトンポリマージャパン社製]スチレン含量40重量%;MI=14)、放射状型としてA-2(スチレン-ブタジエンブロック共重合ゴム「クレイトンD-1116」[クレイトンポリマージャパン社製]スチレン含量23重量%;MI=<1)を併用することが記載されている。また、甲2のA-2として使用した「クレイトンD-1116」は本件明細書の【0026】に「クレイトンD1116(クレイトンポリマー社製、スチレン含有率23%、ジブロック含有率16%、粘度9000)」として例示され、乙1においても同様に記載されるとおりのジブロック含有率、粘度を有するものであると認められる。さらに、甲2の「放射状型ゴム(a-2)」とは、甲2の【0009】に記載されるとおり「分子鎖に少なくとも1個の分岐点をもつ、いわゆる末端基を3つ以上有するゴム」であるから、「分岐型」のゴムであると認められる。
ここで、甲1発明Aのアルカリ分散型ホットメルト粘着剤は、アルカリ分散性だけでなくラベルの保持力も得ようとするものであるから、甲2に記載されたように接着力及び凝集力に優れ、柔軟性の良好な接着剤とは課題の関連性は有しているものの、例えば、甲1発明Aのスチレン含有率が40質量%未満である(A1-2)とスチレン含有率が40質量%以上である(A2-5)に替えて、甲2に記載されたスチレン含有率が23%であり放射状型のA-2とスチレン含有率が40%であり直鎖状型のスチレン-ブタジエン共重合ゴムA-1を採用しようとしても、甲2のA-2はジブロック含有率が16%であるから、本件発明1の「(2)ジブロック含有率が30質量%以上60質量%以下」という構成を充足しない。
また、甲1の【0105】及び【表1】には、スチレン含有率が40質量%未満のスチレン系ブロック共重合体(A1)として、実施例3では(A1-4)「スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(クレイトン社製のクレイトンG-1657(商品名)、スチレン含有率15質量%、ジブロック含有率33質量%、重量平均分子量106,000)を使用したことが記載され、参考文献Aの記載によれば固形分25質量%トルエン溶液の25℃における粘度は4200mPa・sであるものの、乙1の記載によれば直鎖型である。
さらに、甲2においても、【表1】の実施例において使用した放射状型ゴムA-2について【0048】に記載の商品名「クレイトンD-1116」から判明したジブロック含有率が16質量%である他にはジブロック含有率の記載は無い。
そして、甲1の実施例8に記載の(A1-2)と(A2-5)を、実施例3に記載される(A1-4)のようなジブロック含有率33質量%直鎖型スチレン系エラストマーを参照しつつ、甲2に記載のスチレン含有率が23%であり放射状型のA-2とスチレン含有率が40%であり直鎖状型のスチレン-ブタジエン共重合ゴムA-1を採用しようとしても、甲1の(A1-4)は直鎖型なのだから、放射型のA-2のジブロック含有率を調整しようとする動機付けがあるとはいえない。
そうすると、相違点1’の「ジブロック含有率が30質量%60質量%以下である」構成は、甲1発明A及び甲1、甲2の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、相違点1’は実質的な相違点であって、当業者が容易に想到し得たものではないから、相違点2について判断するまでもなく、本件発明1は甲1発明Aおよび甲1、2の記載に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。
b 効果について
本件明細書の【表1】に記載の実施例1及び5について比較すると、両者の組成は、分岐型のスチレン系エラストマー(a1)以外は共通しており、実施例1では本件発明1の特定事項である「(1)スチレン含有率が35質量%以下 (2)ジブロック含有率が30質量%以上60質量%以下 (3)固形分25質量%トルエン溶液の25℃における粘度が1000mPa・s以上」を全て満たすDX410(ジブロック含有率:60質量%)を使用しているのに対して、実施例5では「(2)ジブロック含有率が30質量%以上60質量%以下」を充足しないDX1184(ジブロック含有率:16質量%)を使用している。これらの実施例の評価について、【表3】には、「アルカリ剥離性」、「接着強度」、「実貼り評価」が実施例1では「◎」、「◎」、「◎」であるのに対して、実施例5では「○」、「○」、「◎」であることが記載されている。
そうすると、本件発明1の分岐型のスチレン系エラストマーが「(2)ジブロック含有率が30質量%以上60質量%以下」であることにより、「アルカリ剥離性」、「接着強度」が向上していると認められる。
一方、甲1、甲2では「ジブロック含有率が30質量%以上60質量%以下」とすることと「アルカリ剥離性」、「接着強度」との関係性も記載されていないから、分岐型のスチレン系エラストマーが「(2)ジブロック含有率が30質量%以上60質量%以下」であることでアルカリ剥離性、接着強度が極めて優れるという効果は、本件発明1の構成が奏するものとして当業者が予測し得た範囲を超える顕著なものである。
c 申立人の主張について
申立人は令和7年8月1日提出の意見書第3頁~第5頁において、「(i)甲2は、分岐型スチレンエラストマーと直鎖型スチレンエラストマーの双方を含むホットメルト接着剤を明確に開示」していること、「(ii)甲1発明と甲2発明の組み合わせには十分な動機付けが存在」すること、「(iii)甲1実施例8の(A1-2)を甲2発明が開示する分岐型エラストマーに置換することは、当業者にとって格別困難なことではありません」ということ、「(iv)訂正請求項1の効果は、甲1発明と甲2発明の組み合わせから当業者に予測可能」であることを主張している。
これらの(i)~(iii)についての主張を検討すると、上記aに記載したとおり、甲1発明Aのアルカリ分散型ホットメルト粘着剤は、アルカリ分散性だけでなくラベルの保持力も得ようとするものであるから、甲2に記載されたように接着力及び凝集力に優れ、柔軟性の良好な接着剤とは課題の関連性は有しているものの、甲1発明Aのスチレン含有率が40質量%未満である(A1-2)とスチレン含有率が40質量%以上である(A2-5)に替えて、甲2に記載されたスチレン含有率が23%であり放射状型のA-2とスチレン含有率が40%であり直鎖状型のスチレン-ブタジエン共重合ゴムA-1を採用しようとしても、甲2のA-2はジブロック含有率が16%であって、本件発明1の「(2)ジブロック含有率が30質量%以上60質量%以下」という構成を充足しないから、当該主張は採用できない。
また、(iv)についての主張を検討すると、上記bに記載したとおり、本件発明1の分岐型のスチレン系エラストマーが「(2)ジブロック含有率が30質量%以上60質量%以下」であることにより、「アルカリ剥離性」、「接着強度」が向上していると認められるところ、甲1、甲2では「ジブロック含有率が30質量%以上60質量%以下」とすることと「アルカリ剥離性」、「接着強度」との関係性も記載されていないから、分岐型のスチレン系エラストマーが「(2)ジブロック含有率が30質量%以上60質量%以下」であることでアルカリ剥離性、接着強度が極めて優れるという効果は、甲2の段落[0010]に記載の「高凝集力且つ柔軟なホットメルト接着剤が得られる」という効果からは予測し得た範囲を超える顕著なものであるため、当該主張は採用できない。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は甲1発明Aおよび甲1、2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明2について
本件発明2は本件発明1を全て包含する発明であるから、上記イに記載したとおり、甲1発明A及び甲1、2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明3~5について
本件発明3と甲1発明Bを対比すると、甲1発明Bの「アルカリ分散型ホットメルト粘着剤をOPPフィルムに塗工し、ホットメルト粘着剤付きOPPラベルを作製し、そのラベルを貼り合わせたペットボトル」は本件発明3の「アルカリ剥離性ホットメルト粘着剤によってラベルが接着された容器。」に相当する。
そうすると、本件発明3と甲1発明Bとは相違点1’、相違点2の他に相違点はない。
よって、本件発明3は上記ウに記載したのと同様に、甲1発明B及び甲1、2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明4、5は本件発明3を全て包含する発明であるから、本件発明3と同様に甲1発明B及び甲1、2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2) 取消理由1-2(甲1を主引例とした進歩性)
ア 本件発明1について
(ア) 対比
甲1には上記(1)アのとおりの甲1発明A、甲1発明Bが記載され、本件発明1と甲1発明Aとの一致点、相違点についても(1)イ(ア)のとおりである。
(イ) 判断
a 相違点1’について
上記(1)イ(イ)aに記載したとおり、甲1の【0022】、【0036】の記載によれば、甲1発明Aの(A1-2)はスチレン含有率が40質量%未満のスチレン系ブロック共重合体(A1)の一例であり、(A2-5)はスチレン含有率が40質量%以上のスチレン系ブロック共重合体として(A2)の一例であると認められる。
また、甲1の【0105】及び【表1】には、スチレン含有率が40質量%未満のスチレン系ブロック共重合体(A1)として、実施例3では(A1-4)「スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(クレイトン社製のクレイトンG-1657(商品名)、スチレン含有率15質量%、ジブロック含有率33質量%、重量平均分子量106,000)を使用したことが記載され、参考文献Aの記載によれば固形分25質量%トルエン溶液の25℃における粘度は4200mPa・sであるものの、乙1の記載によれば直鎖型である。
そうすると、甲1発明Aにおいてスチレン含有率が40質量%未満のスチレン系ブロック共重合体(A1)の一例である(A1-2)に替えて(A1-4)を採用したとしても、分岐型のスチレン系エラストマーを含有しないので、相違点1’の「スチレン系エラストマー(A)」が「分岐型のスチレン系エラストマー(a1)」「を含み」という構成を充足しない。
したがって、相違点1’の「スチレン系エラストマー(A)」が「分岐型のスチレン系エラストマー(a1)」「を含み」という構成は、甲1発明A及び甲1の記載に基いて当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、相違点1’は実質的な相違点であって、当業者が容易に想到し得たものではないから、相違点2について判断するまでもなく、本件発明1は甲1発明Aおよび甲1の記載に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。
b 効果、申立人の主張について
上記(1)イ(イ)b、cに記載したとおりである。
(ウ) 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は甲1発明Aおよび甲1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2について
本件発明2は本件発明1を全て包含する発明であるから、上記アに記載したとおり、甲1発明A及び甲1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明3~5について
本件発明3と甲1発明Bを対比すると、甲1発明Bの「アルカリ分散型ホットメルト粘着剤をOPPフィルムに塗工し、ホットメルト粘着剤付きOPPラベルを作製し、そのラベルを貼り合わせたペットボトル」は本件発明3の「アルカリ剥離性ホットメルト粘着剤によってラベルが接着された容器。」に相当する。
そうすると、本件発明3と甲1発明Bとは相違点1’、相違点2の他に相違点はない。
よって、本件発明3は上記アに記載したとおり、甲1発明B及び甲1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明4、5は本件発明3を全て包含する発明であるから、本件発明3と同様に甲1発明B及び甲1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由2(甲3を主たる引用例とした新規性)
申立人は、本件発明1~5は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記第4 2 (1)の甲第3号証に記載された発明および甲第1号証に記載された事項、並びに甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものであることを主張している。
(1)甲3の記載事項
「【0055】
なお、以下の実施例では、熱可塑性エラストマー(A)、酸価が100mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であるロジン系粘着付与剤(B)、テルペンフェノール樹脂(C)、合成オイル(D)および無水マレイン酸をグラフト重合させたポリプロピレンワックス(E)として、以下のものが用いられた。
【0056】
熱可塑性エラストマー(A)
・クレイトンG1650(クレイトンポリマー社製)(以下、「G1650」と略記する。)
スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックポリマー(SEBS)
溶融粘度*1;1,8,000mPa・s
・クレイトンG1652(クレイトンポリマー社製)(以下、「G1652」と略記する。)
スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックポリマー(SEBS)
溶融粘度*1;1,350mPa・s
・クレイトンG1726(クレイトンポリマー社製)(以下、「G1726」と略記する。)
スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックポリマー(SEBS)
溶融粘度*1:200mPa・s
なお、溶融粘度*1は、熱可塑性エラストマー濃度25wt%トルエン溶液の25℃での溶融粘度である。溶融粘度の測定は、B型粘度計RB80L(東機産業社製)を用い、ローターNo.3を用いて適した回転数で行った。
【0057】
ロジン系粘着付与剤(B)
・リカロジンF(理化ファインテク社製)
酸価:175mgKOH/g
軟化点:72℃
・KE-604(荒川化学社製)
水添アクリル酸変性ロジン
酸価:240mgKOH/g
軟化点:125℃,
【0058】
テルペンフェノール樹脂(C)
・YSポリスターT30(ヤスハラケミカル社製)(以下、「T-30」と略記する。)
軟化点30℃のテルペンフェノール共重合体
【0059】
合成オイル(D)
・ダイアナフレシアN-90(出光興産社製)(以下、「ダイアナN90」と略記する。)
ナフテン系プロセスオイル
【0060】
無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PP)ワックス(E)
・リコセンPPMA6252(クラリアントジャパン社製)(以下、「PPMA6252」と略記する。)
酸価:40mgKOH/g
DSC融点:127℃
・リコセンPPMA1462(クラリアントジャパン社製)(以下、「PPMA1462」と略記する。)
酸価:50mgKOH/g
DSC融点:66℃
・X-10016(ベーカーヒューズ社製)
酸価:60mgKOH/g
DSC融点:117℃
【0061】
また、比較例においては、以下の材料が用いられた。
熱可塑性エラストマー(A)
・G1652
・G1726
【0062】
粘着付与剤
・リカタックF(理化ファインテク社製)
酸価:168mgKOH/g
軟化点:75℃
【0063】
テルペンフェノール樹脂(C)
・T-30
【0064】
合成オイル(D)
・ダイアナN90
脂肪酸のグリセライド
・やし油:精製ヤシ油ケミカル(月島食品工業社製)
(C6-C18)
液状ゴム
・ハイモール4H(新日本石油社製)
ポリイソブチレン
粘度平均分子量:40000
【0065】
ワックス(エチレン-アクリル酸共重合体)
・A-C5120(Allied Chemical社製)
酸価:120mgKOH/g
DSC融点:66℃
・A-C5180(Allied Chemical社製)
酸価:180mgKOH/g
DSC融点:43℃
ポリプロピレン(PP)ワックス
・NP055(三井化学社製)
酸価:0mgKOH/g
DSC融点:136℃
パラフィンワックス
・140℃パラフィン
酸価:0mgKOH/g
DSC融点:61℃
【0066】
実施例1
<アルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物の作成方法>
攪拌機を備えたステンレスビーカーに、テルペンフェノール樹脂;T-30を10重量部および合成オイル;ダイアナN90を31重量部投入し、加熱して溶融した。加熱は内容物が150℃以上にならないように注意して行った。溶融後攪拌を行い、均一溶融溶液とした後、150℃以下の温度を保ちながら、かつ攪拌を続けながら、この溶融物に熱可塑性エラストマー;G1650を16重量部徐々に加え、添加終了後、次にロジン系粘着付与剤;リカロジンFを39重量部加え、最後に無水マレイン酸をグラフト重合させたポリプロピレンワックス;PPMA1462を4重量部添加して、溶融均一混合物とし、冷却してアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を作製した。
【0067】
得られたアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物の軟化点は64℃、140℃の粘度は800mPa・sであった。なお、140℃の粘度の測定は、以下の方法により行った。
【0068】
<140℃の粘度の測定方法>
140℃の粘度の測定は、JIS K6862(A法)に準じて行った。予め150℃付近まで溶融させたホットメルト粘着剤組成物300gを試験容器に入れ、大気中において棒温度計で充分に攪拌しながら140℃になったところでB型温度計(東機産業(株)社製TOKIMEC VISCOMETER MODEL:BM)を用いて行った。ローターは、必要に応じて適当なものを用いた。
【0069】
また、得られたアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物のアルカリ剥離性、糊残り性、接着性(接着強度)(対OPP、および対PET)を下記の方法により行い、評価した。実施例1のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物のアルカリ剥離性、糊残り性はいずれも○であり、接着性(対OPP)は0.9N/15mmであり、接着性(対PET)は1.5N/15mmであった。
【0070】
なお、前記アルカリ剥離性、糊残り性および接着性(対PET)の各測定に際しては、まずサクミラベラー社製ラベラーで、速度80bpmにて、2L長角PETボトルに、厚さ50μmのOPPフィルムに印刷を施したラベルにホットメルト粘着剤組成物を塗工量20~30mg/本、塗工面積15cm2で塗工して貼り付けて(温度条件:140℃)、胴巻きラベルを接着した試験用容器を作製し、この容器を利用して測定が行われた。
【0071】
<アルカリ剥離性>
試験用容器を約8×8mm角に粉砕して、ラベルが付いた状態のPETボトルのペレットとした。1000ml丸型フラスコに、85~90℃の1.5wt%水酸化ナトリウム水溶液90gと前記ペレット10gを入れて、250rpmで攪拌(攪拌羽:プロペラ)した。15分後フィルターで濾過し、ペレットを目視観察し、ラベルが剥離し、ホットメルト粘着剤組成物がPETボトルに残らない場合:○、ラベルがPETボトルに残ったり、ホットメルト粘着剤組成物がPETボトルに残ったり再付着した場合:×とした。
【0072】
<糊残り性>
試験用容器からラベルを手で剥がした時に、ホットメルト粘着剤組成物のPETボトルへの付着があるかを判定した。試験は、温度23℃、湿度65%の恒温恒湿内で行った。ホットメルト粘着剤組成物がPETボトルに残らない場合:○、ホットメルト粘着剤組成物がPETボトルに残る場合:×とした。
【0073】
<接着強度(対OPP)>
測定は、ホットメルト粘着剤をOPPフィルムの印刷面に塗工したサンプルを15mm幅に切断し、これをOPPフィルムに貼り付け、温度23℃、湿度65%の恒温恒湿室中で、180度角剥離(剥離速度:300mm/分)で行った。
【0074】
<接着強度(対PET)>
測定は、ラベルを貼りつけた試験用容器を15mm幅に切断し、温度23℃、湿度65%の恒温恒湿室中で、180度角剥離(剥離速度:300mm/分)で行った。
なお、接着強度は、対OPP、対PET共に、0.4N/15mm以上であれば○、0.4N/15mm未満あれば×である。
【0075】
実施例2~6
熱可塑性エラストマー(A)、ロジン系粘着付与剤(B)、テルペンフェノール樹脂(C)、合成オイル(D)、無水マレイン酸をグラフト重合させたポリプロピレンワックス(E)として、下記表2に記載の成分を、表2に記載の量用いることを除き、実施例1と同様にして、実施例2~6のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物を作製した。
【0076】
【表2】
[図:0001429980000007.jpg]
【0077】
実施例2~6のアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物の軟化点、140℃の粘度、アルカリ剥離性、糊残り性、接着性(接着強度)(対OPP、および対PET)を実施例1と同様の方法で測定、評価した。結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
[図:0001429980000008.jpg]
」
(2)甲3に記載された発明
ア 甲3発明A
明細書の【0055】~【0078】、実施例3を参照すると、下記の発明が記載されている。
「熱可塑性エラストマー(A)として、
・クレイトンG1650(クレイトンポリマー社製)(スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックポリマー(SEBS)溶融粘度*1;1,8,000mPa・s)を10重量部、
・クレイトンG1652(クレイトンポリマー社製)(スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックポリマー(SEBS)溶融粘度*1;1,350mPa・s)を3重量部、
・クレイトンG1726(クレイトンポリマー社製)(スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックポリマー(SEBS)溶融粘度*1:200mPa・s)を5重量部、
(なお、溶融粘度*1は、熱可塑性エラストマー濃度25wt%トルエン溶液の25℃での溶融粘度である。)、
ロジン系粘着付与剤(B)として、
・リカロジンF(理化ファインテク社製)(酸価:175mgKOH/g 軟化点:72℃)を30重量部、
・KE-604(荒川化学社製)(水添アクリル酸変性ロジン 酸価:240mgKOH/g 軟化点:125℃)を8重量部、
テルペンフェノール樹脂(C)として、
・YSポリスターT30(ヤスハラケミカル社製)(軟化点30℃のテルペンフェノール共重合体)を1重量部、
合成オイル(D)として、
・ダイアナフレシアN-90(出光興産社製)(ナフテン系プロセスオイル)を34重量部、
無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PP)ワックス(E)として、
・リコセンPPMA6252(クラリアントジャパン社製)(酸価:40mgKOH/g DSC融点:127℃)を9重量部、
合計100重量部を溶融均一混合物として作製したアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物」
イ 甲3発明B
明細書の甲3発明Aを認定した箇所、【0070】を参照すると、下記の発明が記載されている。
「熱可塑性エラストマー(A)として、
・クレイトンG1650(クレイトンポリマー社製)(スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックポリマー(SEBS)溶融粘度*1;1,8,000mPa・s)を10重量部、
・クレイトンG1652(クレイトンポリマー社製)(スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックポリマー(SEBS)溶融粘度*1;1,350mPa・s)を3重量部、
・クレイトンG1726(クレイトンポリマー社製)(スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックポリマー(SEBS)溶融粘度*1:200mPa・s)を5重量部、
(なお、溶融粘度*1は、熱可塑性エラストマー濃度25wt%トルエン溶液の25℃での溶融粘度である。)、
ロジン系粘着付与剤(B)として、
・リカロジンF(理化ファインテク社製)(酸価:175mgKOH/g 軟化点:72℃)を30重量部、
・KE-604(荒川化学社製)(水添アクリル酸変性ロジン 酸価:240mgKOH/g 軟化点:125℃)を8重量部、
テルペンフェノール樹脂(C)として、
・YSポリスターT30(ヤスハラケミカル社製)(軟化点30℃のテルペンフェノール共重合体)を1重量部、
合成オイル(D)として、
・ダイアナフレシアN-90(出光興産社製)(ナフテン系プロセスオイル)を34重量部、
無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PP)ワックス(E)として、
・リコセンPPMA6252(クラリアントジャパン社製)(酸価:40mgKOH/g DSC融点:127℃)を9重量部、
合計100重量部を溶融均一混合物として作製したアルカリ分散型ホットメルト粘着剤組成物をアルカリ分散型ホットメルト粘着剤をOPPフィルムに塗工し、ホットメルト粘着剤付きOPPラベルを作製し、そのラベルを貼り合わせたペットボトル」
(3)本件発明1について
ア 対比
甲3発明Aと本件発明1を対比する。
甲3発明Aの「熱可塑性エラストマー(A)として、
・クレイトンG1650(クレイトンポリマー社製)(スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックポリマー(SEBS)溶融粘度*1;1,8,000mPa・s)を10重量部、
・クレイトンG1652(クレイトンポリマー社製)(スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックポリマー(SEBS)溶融粘度*1;1,350mPa・s)を3重量部、
・クレイトンG1726(クレイトンポリマー社製)(スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックポリマー(SEBS)溶融粘度*1:200mPa・s)を5重量部、
」は、本件発明1の「スチレン系エラストマー(A)」に相当する。
甲3発明Aの「・リカロジンF(理化ファインテク社製)(酸価:175mgKOH/g 軟化点:72℃)を30重量部、・KE-604(荒川化学社製)(水添アクリル酸変性ロジン 酸価:240mgKOH/g 軟化点:125℃)を8重量部」である「ロジン系粘着付与剤(B)」は、
」は本件発明1の「酸価が、100~300mgKOH/g」である「ロジン系粘着付与剤(B)」に相当する。
甲3発明Aの「・ダイアナフレシアN-90(出光興産社製)(ナフテン系プロセスオイル)を34重量部」である「合成オイル(D)」は、本件発明1の「プロセスオイル(C)」に相当する。
甲3発明Aの「・リコセンPPMA6252(クラリアントジャパン社製)(酸価:40mgKOH/g DSC融点:127℃)」である「無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PP)ワックス(E)」は、本件発明1の「軟化点が、100℃以上」の「ポリプロピレンワックス(D)」に相当する。
また、甲3発明Aの「アルカリ分散型ホットメルト粘着剤」は【0071】、【0078】【表3】を参照すると「アルカリ剥離性」であると認められる。
そうすると、両者は以下の点で一致し、以下の点で相違する。
(一致点)
「スチレン系エラストマー(A)、ロジン系粘着付与剤(B)、プロセスオイル(C)、ポリプロピレンワックス(D)を含むアルカリ剥離性ホットメルト粘着剤。」
(相違点3)
本件発明1はスチレン系エラストマー(A)が、「下記(1)~(3)を満たす分岐型のスチレン系エラストマー(a1)」を含み、「(1)スチレン含有率が35質量%以下(2)ジブロック含有率が30質量%以上60質量%以下(3)固形分25質量%トルエン溶液の25℃における粘度が1000mPa・s以上」であるのに対して、甲3発明Aはそのように特定されていない点。
(相違点4)
本件発明1は「スチレン含有率が35~60質量%である直鎖型のスチレン系エラストマー(a2)を含」むのに対して、甲3発明Aはそのように特定されていない点。
(相違点5)
本件発明1は「ポリプロピレンワックス(D)」の軟化点が「100℃以上」であるのに対して、甲3発明Aは軟化点が不明である点。
(相違点6)
本件発明1は「ポリプロピレンワックス(D)」を0.1~5質量%含むのに対して、甲3発明Aは9質量%含む点。
(相違点7)
本件発明1は「α-メチルスチレン樹脂(E)」を含むのに対して、甲3発明Aにはその点が記載されていない点。
イ 判断
(ア) 相違点3について
相違点3について検討すると、甲3発明Aの「・クレイトンG1650(クレイトンポリマー社製)(スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックポリマー(SEBS)溶融粘度*1;1,8,000mPa・s)」、「・クレイトンG1652(クレイトンポリマー社製)(スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックポリマー(SEBS)溶融粘度*1;1,350mPa・s)」、「・クレイトンG1726(クレイトンポリマー社製)(スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロックポリマー(SEBS)溶融粘度*1:200mPa・s)」は、甲1の【0105】によれば、クレイトンG1650のスチレン含有率は30質量%、クレイトンG1652のスチレン含有率は30質量%、クレイトンG1726のスチレン含有率は31質量%であり、乙1によればいずれも直鎖型である。
そうすると、甲3発明Aのスチレン系エラストマーには本件発明1の(1)~(3)を満たす分岐型のスチレン系エラストマー(a1)は記載されていない。
甲2には、放射型のスチレン系エラストマーと直鎖型のスチレン系エラストマーとを併用することが記載されているところ、甲2の実施例に記載の放射型エラストマーは前記第5 3 (1)イに記載したように、本件発明1の分岐型のスチレン系エラストマーの特定事項である「(2)ジブロック含有率が30質量%以上60質量%以下」という事項を満たしておらず、また、甲2において他にジブロック含有率についての記載も無いから、甲2の記載に接した当業者が、甲3発明Aのスチレン系エラストマーに替えて甲2に記載の放射型と分岐型のスチレン系エラストマー甲2に記載されたスチレン含有率が23%であり放射状型のA-2とスチレン含有率が40%であり直鎖状型のスチレン-ブタジエン共重合ゴムA-1を採用しようとしても、甲2のA-2はジブロック含有率が16%であって、本件発明1の「(2)ジブロック含有率が30質量%以上60質量%以下」という構成を充足しない。
なお、甲3の【0031】には「スチレン系熱可塑性エラストマーは、一般的にポリスチレンブロックとゴム中間ブロックとを有し、ポリスチレン部分が物理的架橋(ドメイン)を形成して橋掛け点となり、中間のゴムブロックは製品にゴム弾性を与える。中間のソフトセグメントにはポリブタジエン(B).ポリイソプレン(I)及びポリオレフィンエラストマー(エチレン・プロピレン,EB)があり、ハードセグメントのポリスチレン(S)との配列の様式によって、直鎖状(リニアタイプ)及び放射状(ラジカルタイプ)とに分かれる。」ことが記載されているところ、スチレン系エラストマーの種類として直鎖状のものと放射状のものがあることが理解できるが、甲3発明のホットメルト粘着剤においてこれらを併用する動機付けがあるとはいえない。
さらに、分岐型と直鎖型の併用について、甲1の【0037】には(A1)のスチレン系エラストマー(スチレン系ブロック共重合体)として、「Quintac3460」を用いて良いことが示されており、甲6の【0072】によれば「3分岐型スチレン-イソプレンブロック共重合体(A3-4)3分岐型スチレン-イソプレンブロック共重合体(スチレン含有率 25重量%、ジブロック含有率 40重量%、25重量%トルエン溶液の25℃での粘度 380mPa・s クインタック3460(日本ゼオン社製))」との記載があることから「分岐型スチレン系エラストマー」であり、甲1には2種類のスチレン系エラストマー(A1、A2)の併用において、その一方(A1)を分岐型とし、もう一方(A2)を直鎖としてもよいことの示唆がされていると主張している。
しかしながら、甲1には分岐型と直鎖型を積極的に併用するような記載は無いし、甲1の【0037】に例示された「Quintac3460」は分岐型スチレン系エラストマーではあるものの、「(3)固形分25質量%トルエン溶液の25℃における粘度が1000mPa・s以上」という特定事項を満たさないから、甲3のスチレン系エラストマーとして甲1の【0037】に例示された「Quintac3460」を使用しても、本件発明1の「固形分25質量%トルエン溶液の25℃における粘度が1000mPa・s以上」という特定事項を満たさない。
よって、相違点3は実質的な相違点であって、当業者が容易に想到し得たものではないから、相違点4~7について判断するまでもなく、本件発明1は甲3発明Aおよび甲1~甲3の記載に基いて当業者が容易に想到し得たものではない。
(イ)効果について
第5 3(1)イ (イ)bに記載したとおりである。
(ウ)申立人の主張について
申立人は異議申立書(第54頁)において、「甲第1号証に係る発明は、先に説明したとおり、甲3発明と技術分野が関連し、課題、作用・機能が共通するから、甲3発明と組み合わせ又は置換が容易の関係にある。そして、分岐型と直鎖型のスチレン系エラストマーの併用において、特定の組み合わせを採用することは、甲2発明から容易に想到できる」旨を主張している。
しかしながら、上記(ア)に記載したとおり、甲3発明Aに甲1に記載の分岐型スチレン系エラストマーを採用したとしても当該分岐型スチレン系エラストマーは「(3)固形分25質量%トルエン溶液の25℃における粘度が1000mPa・s以上」を充足しないし、甲3発明Aに甲2に記載の直鎖状型ゴムとしてA-1(スチレン-ブタジエンブロック共重合ゴム「クレイトンD-1155」[クレイトンポリマージャパン社製]スチレン含量40重量%;MI=14)、放射状型としてA-2(スチレン-ブタジエンブロック共重合ゴム「クレイトンD-1116」[クレイトンポリマージャパン社製]スチレン含量23重量%;MI=<1)を併用使用としても、当該放射状型は「(2)ジブロック含有率が30質量%以上60質量%以下」を充足しないから、申立人の主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は甲3発明Aおよび甲1、甲2、甲3の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2について
本件発明2は本件発明1を全て包含する発明であるから、上記(3)に記載したとおり、甲3発明A及び甲1、甲2、甲3の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明3~5について
本件発明3と甲3発明Bを対比すると、甲3発明Bの「アルカリ分散型ホットメルト粘着剤をOPPフィルムに塗工し、ホットメルト粘着剤付きOPPラベルを作製し、そのラベルを貼り合わせたペットボトル」は本件発明3の「アルカリ剥離性ホットメルト粘着剤によってラベルが接着された容器。」に相当する。
そうすると、本件発明3と甲3発明Bとは相違点3~7の他に相違点はない。
よって、本件発明3は上記(3)に記載したのと同様に、甲3発明B及び甲1、2、3の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件発明4、5は本件発明3を全て包含する発明であるから、本件発明3と同様に甲3発明B及び甲1、2、3の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 申立理由3(サポート要件1)、申立理由4(サポート要件2)
ア サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。
イ サポート要件の判断
(ア) 本件発明が解決しようとする課題
本件明細書の【0013】、【0019】によると、本件発明の解決しようとする課題(以下「発明の課題」という。)は「ホットメルト粘着剤を薄膜塗工した場合にも、接着強度やボトルの膨張によるラベルのずれに対するホットメルトの抵抗力と追従性(実貼り性)が高く、熱アルカリ水溶液により容器などから簡単にラベルが糊残りなく剥離し、再付着することもない、アルカリ剥離性ホットメルト粘着剤を提供すること」と認められる。
(イ) 本件発明1について
a 本件明細書の記載について
本件明細書の実施例では、ホットメルト粘着剤が本件発明1の特定事項を満たす実施例1~4、6~25は、「アルカリ剥離性」、「接着強度」、「実貼り評価」のうち2項目が「◎」であり、残りの1項目が「○」、「△」のいずれかである。
一方、ポリプロピレンワックス(D)に着目すると、比較例8はポリプロピレンワックス(D)を含まない点、比較例9はポリプロピレンワックス(D)を10質量%含む点、比較例10は軟化点が98℃の「リコセンPP1602」を含む点で本件発明の特定事項を満たしておらず、これらの比較例は「アルカリ剥離性」、「接着強度」いずれかの項目で「×」である。
また、α-メチルスチレン樹脂(E)に着目すると、比較例11はα-メチルスチレン樹脂(E)を含まない点、比較例12はα-メチルスチレン樹脂(E)を10質量%含む点、比較例15は軟化点が85℃の「SA85」を含む点で本件発明の特定事項を満たしておらず、「接着強度」、「実貼り評価」いずれかの項目で「×」である。
これらの実施例と比較例を検討すると、実施例1~4、6~25の方が比較例8~12、15よりも「アルカリ剥離性」、「接着強度」、「実貼り評価」のいずれかの評価が向上しているから、実施例1~4、6~25には本件発明の課題である「ホットメルト粘着剤を薄膜塗工した場合にも、接着強度やボトルの膨張によるラベルのずれに対するホットメルトの抵抗力と追従性(実貼り性)が高く、熱アルカリ水溶液により容器などから簡単にラベルが糊残りなく剥離し、再付着することもない、」を解決する「アルカリ剥離性ホットメルト粘着剤」が記載されていると認められる。
そうすると、実施例1~4、6~25の記載から、上記(ア)の課題は解決できることが理解できるから、実施例1~4、6~25と同様にホットメルト粘着剤が特定されている本件発明1についても、上記課題は解決できることが理解できると認められる。
b 申立人の主張について
本件明細書のホットメルト粘着剤の製造について、【0066】には、「ポリプロピレンワックス(D):660-P」を投入し「130~150℃」で加熱して溶融後攪拌すること、さらに、「α-メチルスチレン樹脂(E):SA100」を投入し「溶融均一混合物」とすることが記載され、「アルカリ剥離性」、「接着強度」、「実貼り性」の3項目を評価するためのサンプル作成方法について、【0068】には「温度条件:150℃」でラベルの印刷面にホットメルト粘着剤を塗工してホットメルト粘着剤付きラベルを得て、「150℃」でPETボトルに該ラベルを貼り付けること、【0069】にはOPPフィルムの非印刷面にホットメルト粘着剤付きラベルを「23℃」で貼り付けること、【0070】には「150℃」でPETボトルに該ラベルを貼り付けることが記載されている。したがって、ホットメルト粘着剤の製造時、ラベルへの塗工時、及びPETボトルへの貼り付け時においては、ポリプロピレンワックス(D)、α-メチルスチレン樹脂(E)共に軟化または溶融していると認められる。そして、本件発明1においても、「ホットメルト粘着剤」であることが特定されているから、ポリプロピレンワックス(D)、α-メチルスチレン樹脂(E)が製造時や塗工時に軟化又は溶融すると理解することができる。
一方で、本件明細書の実施例を確認すると、「アルカリ剥離性」、「接着強度」、「実貼り性」の3項目を評価するための試験方法について、【0068】には「アルカリ剥離性」の試験方法として「1000ml丸形フラスコに、80~85℃の2.0質量%水酸化ナトリウム水溶液180gと前記ペレット20gを入れて、120rpmで攪拌(攪拌羽:プロペラ)した。10分後フィルターで濾過し、PETペレットに残った粘着剤の残存率(面積%)を目視で観察した」こと、【0069】には「接着強度」の試験方法として「23℃の恒温室中で、180度剥離(剥離速度:300mm/分)で行った」こと、【0070】には「実貼り性」の試験方法として「40℃の恒温オーブン内に前記ボトルを入れ、1週間後の外観を観察した」ことが記載されている(下線は当審が付した)。
すなわち、「アルカリ剥離性」、「接着強度」、「実貼り性」の3項目は本件発明1において特定されるポリプロピレンワックス(D)の軟化点、およびα-メチルスチレン樹脂(E)の軟化点よりも低い温度で評価されている。
そうすると、3項目のいずれもポリプロピレンワックス(D)、およびα-メチルスチレン樹脂(E)が軟化しない温度で評価しているのであるから、溶融もしていないので、ポリプロピレンワックス(D)、およびα-メチルスチレン樹脂(E)の溶融粘度や軟化点より高温での粘度の違いは3項目の評価に影響を及ぼさないから、軟化点が100℃以上のポリプロピレンワックス(D)として、実施例にて使用した「660-P」以外の異なる溶融粘度及び分子量を有する物質や、軟化点が90℃以上のα-メチルスチレン樹脂(E)として、実施例にて使用した「SA100」以外の粘度を有する物質においても、同様に課題を解決できると理解することができる。
よって、申立人の主張は採用できない。
以上のとおりであるから、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記(ア)の課題を解決できると認識できるものといえる。
(ウ) 本件発明2~5について
本件発明2~5は本件発明1をすべて包含する発明であるから、上記(イ)に記載したとおり、発明の詳細な説明の記載により当業者が上記(ア)の課題を解決できると認識できるものといえる。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1~5は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
3 申立理由4(明確性要件)
本件明細書の【0074】【表3】によれば、実施例1~25において軟化点が100℃のα―メチルスチレン樹脂(E)を使用した態様においてアルカリ剥離性が「◎」、「○」、「△」であることが確認されているから、α-メチルスチレン樹脂(E)を含まない比較例11、および軟化点が85℃のα-メチルスチレン樹脂(E)を含む比較例15において、α-メチルスチレン樹脂(E)を本件発明に特定される範囲で含有する実施例1と同様にアルカリ剥離性「◎」を示すからといって、【0041】の「軟化点はアルカリ剥離性の観点から90~140℃が好ましい」との記載の技術的意味が不明とは言えず、本件発明は明確である。
さらに、【0042】を参照すると、「上記範囲でα-メチルスチレン樹脂(E)を含有することで、ホットメルト粘着剤の凝集力が増加し、ボトルの膨張によるラベルのずれに対するホットメルトの抵抗力が増すため好ましい」と記載され、比較例11、比較例12、比較例15の評価を実施例1と比較すると、α-メチルスチレン樹脂(E)を含まない比較例11は「接着強度」が「×」であり、α-メチルスチレン樹脂(E)の含有量が本件発明に特定される範囲よりも多い比較例12では「実貼り評価」が「×」であり、軟化点が85℃のα-メチルスチレン樹脂(E)を含む比較例15では「実貼り評価」が「×」であるから、いずれも本件発明範囲とすることで評価が向上している。
そうすると、申立人の主張は採用できない。
以上のとおりであるから、本件発明1~5は明確である。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700370