特許異議申立
2023-701323
コーティング組成物、および積層体
- 審判番号
- 2023-701323
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-194157
- 登録番号
- 7292596
- 請求日
- 2023年12月14日
- 審決日
- 2024年11月21日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】artience株式会社
- 【権利者代理人】家入 健
- 【権利者代理人】秦 恵子
- 【権利者】トーヨーケム株式会社
- 【権利者代理人】家入 健
- 【権利者代理人】秦 恵子
- 【異議申立人】小林 瞳
- 審判長/審判官
- 審判長 門前 浩一
- 審判官 弘實 由美子
- 審判官 瀬下 浩一
- 分類
- P1651.113-YAA(C09D) / P1651.121-YAA(C09D) / P1651.537-YAA(C09D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7292596号発明「コーティング組成物、および積層体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7292596号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
特許第7292596号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7292596号の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和4年12月5日に出願され、令和5年6月9日にその特許権の設定登録がされ、令和5年6月19日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和5年12月14日に特許異議申立人小林 瞳(以下「申立人」という)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和6年3月13日に取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和6年5月8日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行い、当審は、特許権者から訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年同月28日付けで申立人に通知したが、その指定期間内に申立人から応答がなかったものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。
請求項1に係る「前記シリカ粒子(B)の含有量が、前記重合性化合物(A)100質量部に対して155~500質量部であり」を「前記シリカ粒子(B)の含有量が、前記重合性化合物(A)100質量部に対して250~500質量部であり」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する)。
(2)一群の請求項について
訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は、請求項1を引用しているものであって、訂正事項1に関連する請求項1に連動して訂正されるものである。従って、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1に係る訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は「前記シリカ粒子(B)の含有量が、前記重合性化合物(A)100質量部に対して155~500質量部であり」を「前記シリカ粒子(B)の含有量が、前記重合性化合物(A)100質量部に対して250~500質量部であり」に変更する訂正であって、数値範囲を狭めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、「シリカ粒子(B)の含有量」の下限値を「重合性化合物(A)100質量部に対して250~・・・質量部」とすることは、本件特許明細書の段落【0039】に記載されていることから、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明4」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
基材と、無機酸化物層との間に配置されるプライマー層を形成するためのコーティング組成物であって、
前記コーティング組成物は、重合性化合物(A)と、平均粒径2~150nmの(メタ)アクリロイル基を有するシリカ粒子(B)とを含有し、
前記重合性化合物(A)が、3官能以上の(メタ)アクリレートおよび3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートを含み、
前記シリカ粒子(B)の含有量が、前記重合性化合物(A)100質量部に対して250~500質量部であり、
基材上に前記コーティング組成物より形成された膜厚5μmのプライマー層を有する基材のヘイズ値が1%以下であることを特徴とする、
コーティング組成物。
【請求項2】
3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートの含有率が、前記重合性化合物(A)100質量%中、50~100質量%であることを特徴とする請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートが、脂環構造を有することを特徴とする請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
少なくとも、基材、請求項1~3いずれか1項に記載のコーティング組成物により形成されたプライマー層、無機酸化物層がこの順に配置されている積層体。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1~4に係る特許に対して、当審が令和6年3月13日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。以下、申立人の提示した甲第1号証、甲第2号証を甲1、甲2という。
取消理由1(明確性):請求項1~4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、取り消されるべきものである。
取消理由2(新規性):請求項1,2,4に係る発明は、甲2に記載された発明と相違しない。よって、請求項1,2,4に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
取消理由3(進歩性):請求項1,2,4に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、または、甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に想到することができたものであり、請求項3に係る発明は、甲2に記載された発明と甲1及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることが出来たものである。よって、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 取消理由で採用した甲号証
甲1:特開2019-142164号公報
甲2:特開2013-35275号公報
3 甲号証の記載
(1)甲1には、次の記載がある。
「【請求項1】
環状オレフィン系樹脂基材(I)上に、活性エネルギー線硬化型組成物による硬化被膜層(II)、及び無機物質層(III)が順次積層されてなる積層体であって、前記活性エネルギー線硬化型組成物が、平均一次粒子径が1~100nmの範囲内であるシリカ微粒子(A)、重合性不飽和化合物(B)、及び光重合開始剤(C)を含み、前記シリカ微粒子(A)の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型組成物の全硬化被膜形成成分を基準として、30~85質量%である、積層体。
【請求項2】
前記シリカ微粒子(A)が、不飽和基を有する有機物変性シリカ微粒子を含むものである、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記重合性不飽和化合物(B)が、ウレタン結合を有する重合性不飽和化合物(b1)を含有する、請求項1又は2に記載の積層体。」
「【0001】
本発明は、環状オレフィン系樹脂基材を含む積層体に関するものであり、より具体的には、環状オレフィン樹脂基材上に、同基材に対して優れた密着性を有し、かつ、耐擦傷性等の特性を付与することができる活性エネルギー線硬化型組成物の硬化被膜層と、無機物質層とが順次積層されてなる積層体、及びその製造方法に関する。」
「【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、環状オレフィン樹脂基材上に硬化性樹脂組成物の硬化被膜層と無機物質層とが順次積層されてなる積層体であって、環状オレフィン樹脂基材上と樹脂組成物の硬化被膜層との層間密着性に優れる積層体を提供することであり、さらには、樹脂組成物の硬化被膜層と無機物質層との層間密着性にも優れる積層体を提供することである。また、本発明のさらなる目的は、透明性や対擦傷性、硬度、耐カール性等の面でも優れた特性を示し得る積層体を提供することである。さらに本発明は、そのような積層体の製造方法にも関する。」
「【0023】
また、シリカ粒子(A)の総含有量は、耐擦傷性、耐カール性及び付着性の点から、前記活性エネルギー線硬化型組成物中の全硬化被膜形成成分に対して、30質量%以上であり、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、55質量%以上が特に好ましい。また、透明性の点から、85質量%以下であり、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。本発明において用いられる活性エネルギー線硬化型組成物から得られる被膜は、シリカ粒子(A)の含有率が高くても、透明性に非常に優れ、かつ、基材との密着性及び耐擦傷性にも優れる。」
「【0029】
上記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、(1)ポリイソシアネート化合物と水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを反応させる、(2)ポリイソシアネート化合物とポリオールとを反応させて得られるポリウレタンポリオールにイソシアネート基含有(メタ)アクリレートモノマーを反応させる、等の方法により製造される反応生成物が挙げられる。
【0030】
ウレタン(メタ)アクリレートの製造に使用されるポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環族ジイソシアネート化合物、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、これらのジイソシアネートの2量体又は3量体(ビウレット付加物又はイソシアヌレート環タイプ付加物等)等が挙げられる。
【0031】
ウレタン(メタ)アクリレートの製造に使用される水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、及び、これらにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ε-カプロラクトン、γ-ブチロラクトン等を付加して得られるアルキレンオキサイド変性又はラクトン変性の化合物等や、これらの化合物にポリイソシアネートを付加した化合物等を挙げることができる。」
「【0068】
以下、製造例、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらにより限定されるものではない。各例において、「部」及び「%」は、別記しない限り「質量部」及び「質量%」を示す。
【0069】
(製造例1)活性エネルギー線硬化型組成物No.1
シリカ微粒子No.1(*1)を150部(固形分60部)、重合性不飽和化合物No.1を40部(固形分40部)(*5)、光重合開始剤としてDETX(*10)を6.0部、DAROCURE 1173(*14)を固形分で0.8部、BYK-354(*15)(商品名、アクリル系表面調整剤)を固形分で0.10部、紫外線吸収剤としてTINUVIN 1130(*16)を固形分で0.20部、及び光安定剤としてHOSTAVIN 3052(*17)を固形分で0.20部配合し、酢酸エチルで固形分含有率40%まで希釈し攪拌し、活性エネルギー線硬化型組成物No.1を製造した。表1-1に各成分の配合量を固形分質量比で示した。また、表中のシリカ粒子含有量は、活性エネルギー線硬化型組成物の全硬化被膜形成成分を基準とした質量%である。
【0070】
(製造例2~28)活性エネルギー線硬化型組成物No.2~28
製造例1において、各成分の配合を表1-1~1-3に示すものとする以外は製造例1と同様にして、製造例2~28の固形分含有率40%の活性エネルギー線硬化型組成物No.2~28を得た。表1-1~1-3に示す各組成物の配合は、各成分の固形分質量比である。
【0071】
【表1-1】
[図:0001419334000001.jpg]
【表1-2】
[図:0001419334000002.jpg]
」
「【0074】
表1-1~表1-3中における(*1)~(*17)は下記を意味する。
(*1)シリカ微粒子No.1:MEK-ST-40、商品名、日産化学社製、MEK-ST40、商品名、日産化学社製、コロイダルシリカ、平均一次粒子径13nm、メチルエチルケトン分散液、固形分含有率40質量%
(*2)シリカ微粒子No.2:下記製造方法にて得られた不飽和基を有する有機物変性シリカ微粒子分散液、平均一次粒子径23nm、固形分40質量%;
<シリカ微粒子No.2の製造方法>還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコにコロイダルシリカ(スノーテックスST-O-40;商品名、分散媒;水、シリカ濃度;40質量%、平均一次粒子径;23nm、日産化学工業社製)を250部(シリカ微粒子量は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを10部、p-メトキシフェノールを0.2部及びイソプロパノールを143部配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶媒を置換した。続いて、95℃で2時間攪拌しながら反応を行った後、60℃に温度を下げて4級アンモニウム塩を0.03部加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶媒を置換し、不飽和基を有する有機物変性シリカ微粒子No.2を得た。得られたシリカ微粒子No.2の平均一次粒子径は23nm、該シリカ微粒子No.2の分散液の固形分含有率は40質量%であった。
【0075】
(*3)シリカ微粒子No.3:MEK-ST-ZL、商品名、日産化学社製、コロイダルシリカ、平均一次粒子径85nm、メチルエチルケトン分散液、固形分含有率30質、
(*4)シリカ微粒子No.4:前記<シリカ微粒子No.2の製造方法>において、コロイダルシリカをスノーテックスMP-2040(商品名、分散媒;水、シリカ濃度;40質量%、平均一次粒子径;200nm、日産化学工業社製)にする以外は同様にして不飽和基を有する有機物変性シリカ微粒子分散液、平均一次粒子径200nm、固形分40質量%を得た。
(*5)重合性不飽和化合物No.1:KARAYAD-DPHA、商品名、日本化薬株式会社製、平均重合性不飽和基数6個、分子量524、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、
(*6)重合性不飽和化合物No.2:EBECRYL 884、商品名、ダイセル・オルネクス株式会社性、平均重合性不飽和基数3個、重量平均分子量1,250、多価アルコールとアクリル酸のエステル化物(ポリエステルアクリレート)、
(*7)重合性不飽和化合物No.3:アロニックス M-325、商品名、東亞合成社製、平均重合性不飽和基数3個、重量平均分子量538、ε-カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチルイソシアヌレート、ウレタンアクリレート
(*8)重合性不飽和化合物No.4:ウレタンアクリレート、平均重合性不飽和基数9個、重量平均分子量3,700、
(*9)重合性不飽和化合物No.5:ウレタンアクリレート、平均重合性不飽和基数10個、重量平均分子量4,900、
(*10)DETX:光重合開始剤(a1)、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、チオキサントン系開始剤、」
「【0077】
<積層体の製造方法>
(実施例及び比較例)
基材1(環状オレフィン樹脂基材:COP基材(I)表中COPと表記)に、易接着処理せずそのまま前記活性エネルギー線硬化型組成物No.1をバーコーターで硬化後の膜厚が4μmとなる条件で塗装し、100℃で30秒プレヒートして溶媒を除去した後、紫外線照射装置で、紫外線(ピークトップ波長365nm)を照度150mW/cm2で積算照射量500mJ/cm2となる条件で照射し、被膜を硬化させて硬化被膜層(II)を作製した。次いでその上に、表2-1に示す無機物質層(III)を膜厚が1.5μmとなるようプラズマCVD装置を用いて積層させた(実施例1)。同様にして、表2-1~表2-3、及び表3に示す実施例2~31、比較例1~4の試験積層体を得た。得られた各試験積層体について、下記評価試験に供した。評価結果を表2-1~表2-3及び表3に示す。
【0078】
基材1は下記のものを使用した。
基材1:A4サイズの厚さ100μmの環状オレフィン樹脂基材〔「ゼオノアフィルム、ZF16-100」商品名、日本ゼオン(株)社製、ヘーズ値0.1%未満、全光線透過率92%以上、鉛筆硬度HB〕。
また、前記基材1にかえて、基材2(ポリエチレンテレフタレート樹脂基材:PET基材、表中PETと表記)にして、非易接着処理面に塗装したものを参考例1として、易接着処理面に塗装したものを参考例2として、各々積層体を作製した。得られた各積層体を試験板として、実施例1と同じく各種試験に供した。
基材2は下記のものを使用した。
基材2:A4サイズの厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート製フィルム(「コスモシャインA4100」商品名、東洋紡(株)社製、ヘーズ値0.9%、全光線透過率92.0%」)。
【0079】
【表2-1】
[図:0001419334000003.jpg]
【表2-2】
[図:0001419334000004.jpg]
」
「【0083】
試験項目1.透明性
JIS K7361-1(1997)に準拠して、各得られた積層体の全光線透過率を無機層(III)側から測定を行った。また、JIS K7136(2000)に準拠して、同様に積層体のヘーズ値を無機層(III)側から測定を行った。下記基準にて評価を行った。全光線透過率は91.0%以上、ヘーズ値は5%以下であれば透明性が良好である。
<全光線透過率>
3:91%以上、
2:90%以上91%未満
1:90%未満、
<ヘーズ値>
3:0.5%未満
2:0.5%以上5%未満
1:5%以上
【0084】
試験項目2.付着性
各試験板の無機層(III)面にJIS K 5600-5-6(1990)に準じて1mm×1mmのゴバン目100個を素地に到達するまで作り、その面に粘着テープを貼着し、急激に剥がした後のゴバン目被膜の残存状態と剥離界面を調べ、下記基準で付着性を評価した。
5:残存個数/全体個数=100個/100個で縁欠けなし、
4:残存個数/全体個数=95~100個/100個で縁欠けあり、
3:残存個数/全体個数=90~95個未満/100個で、縁欠けあり、
2:残存個数/全体個数=80~90個未満/100個縁欠けあり、
1:残存個数/全体個数=79個以下/100個縁欠けあり。
【0085】
試験項目3.鉛筆硬度
JIS K 5600-5-4に準拠し、各積層体の無機層(III)面に、該面に対して角度45度、荷重750gで、次第に硬度を増して鉛筆を押し付け、キズ跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を鉛筆硬度として評価する。鉛筆硬度F以上を良好とする。
【0086】
試験項目4.耐擦傷性
スチールウール法:各試験板の無機層(III)面に、市販のスチールウール(#0000)を荷重1000gで50往復擦り、積層体表面を目視で観察し下記の基準に従って評価した。耐擦傷性がよいため、傷の個数で評価した。
5:ワレ、剥がれがない、若しくは傷がまったくない、
4:ワレ、剥がれがない、若しくは傷の数が5個未満である、
3:ワレ、剥がれがない、若しくは傷が5個以上10個未満認められるが実用上問題ない
2:ワレ、剥がれがない、若しくは傷が10個以上20個未満認められる、
1:ワレ、剥がれ、若しくは著しい傷等が認められる。
【0087】
試験項目5.耐カール性
各積層体の中央部分を10cm角に切り出して試験サンプルとした。評価は4隅の反りを定規で計測し、その4点の合計を試験サンプルにおけるカール値とした。
4:5mm未満、
3:5mm以上20mm未満、
2:20mm以上50mm未満、
1:50mm以上。」
(2)甲2には、次の記載がある。
「【請求項1】
樹脂基材に、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物による硬化塗膜層(I)
、及び無機物質層(II)が順次積層されてなる積層体であって、
該活性エネルギー線硬化型プライマー組成物が、
有機物変性シリカ粒子(A)、
重合性不飽和化合物(B)、及び
光重合開始剤(C)を含有するものであり、
該無機物質層(II)が乾式成膜工法によって形成されたものであることを特徴とする積層体。
【請求項2】
上記有機物変性シリカ粒子(A)が、シリカ微粒子(a-1)表面に(メタ)アクリロイルオキシ基及びイソシアヌレート環構造を併有する基を持つ反応性粒子(a)であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。」
「【0001】
本発明は、樹脂基材と硬化塗膜層、硬化塗膜層と無機物質層の双方の付着性に優れ、しかも耐候性、耐擦傷性に非常に優れた積層体及び積層体の製造方法に関する。」
「【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、樹脂基材と硬化塗膜層、硬化塗膜層と無機物質層の双方の付着性に優れ、しかも耐候性、耐擦傷性に非常に優れた積層体及び積層体の製造方法を提供することである。」
「【0020】
有機物変性シリカ粒子(A)として特に限定されるものではないが、シリカ微粒子(a-1)表面に(メタ)アクリロイルオキシ基を存在させてなる反応性粒子が付着性及び耐候性の点から好適に使用でき、特にシリカ微粒子(a-1)表面に(メタ)アクリロイルオキシ基及びイソシアヌレート環構造を併有する基を持つ反応性粒子(a)が、透明性、付着性及び耐候性の点からより好適に使用できる。」
「【0027】
シリカ微粒子(a-1)の平均一次粒子径は、1~200nmが好ましく、5~100nmがより好ましい。これら範囲の下限値は、加水分解性シラン(a-2)と反応させる際にゲル化を抑制する点で意義がある。これら範囲の上限値は、本発明の積層体に使用する活性エネルギー線硬化型プライマー組成物により得られる硬化塗膜の透明性の点で意義がある。」
「【0116】
活性エネルギー線硬化型プライマー組成物による硬化塗膜層(I)おける有機物変性シリカ粒子(A)の含有量は、特に限定されるものではない。得られる積層体の耐擦傷性や耐磨耗性向上、ワレ防止及び透明性の点から、好ましくは活性エネルギー線硬化型プライマー組成物の不揮発分100質量部に対して、5~80質量部であり、より好ましくは10~75質量部であり、特に好ましくは20~70質量部である。」
「【0122】
多官能重合性不飽和化合物としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデンカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、水素化ヘキサフルオロビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシ)ヘキサヒドロフタル酸、5-エチル-2-(2-ヒドロキシ-1,1ジメチルエチル)-5-(ヒドロキシメチル)-1,3-ジオキサンジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のトリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート化合物;その他、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、重合性不飽和基含有アクリル樹脂、(メタ)アクリロイル基含有ウレタン樹脂、(メタ)アクリロイル基含有エポキシ樹脂、(メタ)アクリロイル基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。重合性不飽和基含有アクリル樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有アクリル樹脂にグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有重合性不飽和化合物を付加して得られる重合性不飽和基含有アクリル樹脂、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂に2-イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基と重合性不飽和基とを有する化合物を付加して得られる重合性不飽和基含有アクリル樹脂等が挙げられる。これら重合性不飽和化合物は単独で又は2種以上組合せて使
用することができる。」
「【0198】
(製造例5)A-5
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、コロイダルシリカ微粒子(分散媒;イソプロパノール、シリカ濃度;30質量%、平均一次粒子径;12nm、商品名;IPA-ST、日産化学工業社製) 333部(シリカ微粒子は100部)、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン 10部、p-メトキシフェノール 0.20部及びイソプロパノール233部を配合した後、攪拌しながら昇温した。揮発成分の還流が始まったところで、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させ、反応系内の溶剤を置換した。続いて、95℃で2時間攪拌しながら脱水縮合反応を行った後、60℃に温度を下げてテトラブチルアンモニウムフルオリド 0.03部を加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、減圧状態で揮発成分を留出させ、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出させた。プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて共沸留出する操作を数回行うことで溶剤を置換し、反応性粒子の不揮発分30%分散液を得た。なお、本製造例で得られた反応性粒子を生成物(A-5)と称する。
【0199】
≪重合性不飽和化合物(B)の製造≫
(製造例6)B-1
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコにスミジュールN3300(住化バイエルウレタン社製) 179部、2-ヒドロキシエチルアクリレート 109部、酢酸イソブチル 192部及びp-メトキシフェノール 1.0部を配合し、攪拌した。空気を吹き込みながら100℃まで昇温させ、100℃で8時間反応させた。反応後、エチレングリコールモノブチルエーテル192部を配合して80℃まで昇温させ、80℃で1時間攪拌した後、減圧蒸留にて酢酸イソブチルを除去し、生成物(B-1)の不揮発分60%溶液を得た。
【0200】
得られた生成物(B-1)はNCO価=0mgNCO/gであった。上記の結果から、生成物(B-1)は、下記式(P-I)で表される化合物であった。
【0201】
【化15】
[図:0001419334000005.jpg]
」
「【0205】
≪硬化塗膜層(I)用活性エネルギー線硬化型プライマー組成物の作製≫
(製造例8) 活性エネルギー線硬化型プライマー組成物 No.1
製造例2で得られた生成物(A-2)溶液 33部(不揮発分 10部)、
Ebecryl(登録商標) 8804(注1)18部、
製造例6で得られた生成物(B-1)溶液 90部(不揮発分 54部)、
アロニックス(登録商標) M-313(注4) 18部、
イルガキュア(登録商標) 184(注7) 3.0部、
イルガキュア(登録商標) 819(注9) 0.40部、
TINUVIN(登録商標) 928(注11) 3.0部、
TINUVIN(登録商標) 292(注14) 1.0部、
及びBYK(登録商標)-333(注15) 0.10部を混合し、
1-メトキシ-2-プロパノールで不揮発分を調整して、不揮発分30%の活性エネルギー線硬化型プライマー組成物No.1を得た。
【0206】
(製造例9~32)
製造例8において、各成分の種類及び配合量を表1及び表2に記載の各成分の種類及び配合量にする以外は製造例8と同様にして、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物No.2~25を得た。なお、表1及び表2の配合量は不揮発分量を示す。
【0207】
(注1)Ebecryl(登録商標) 8804:ダイセル・サイテック社製、商品名、2官能ウレタンアクリレート
(注2)Ebecryl(登録商標) 8402:ダイセル・サイテック社製、商品名、高耐候性2官能ウレタンアクリレート
(注3)CN9001:サートマー社製、商品名、2官能ウレタンアクリレート
(注4)アロニックス(登録商標) M-313:東亞合成社製、商品名、イソシアヌル酸EO変性-ジ及びトリアクリレートの混合物、ジアクリレート比率(%)30~40%
(注5)アロニックス(登録商標) M-315:東亞合成社製、商品名、イソシアヌル酸EO変性-ジ及びトリアクリレートの混合物、ジアクリレート比率(%)3~13%
(注6)アロニックス(登録商標) M-325:東亞合成社製、商品名、1分子あたり1個のカプロラクトンにより変性されたトリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート。」
「【0212】
【表1】
[図:0001419334000006.jpg]
」
「【0214】
積層体の作製及び評価結果
(実施例1~25、比較例1~2)
ポリカーボネート樹脂板に、表3及び表4に示す活性エネルギー線硬化型プライマー組成物No.1~25を乾燥膜厚が8μmとなるようエアスプレー塗装した。続いて、80℃で10分間プレヒートした後、高圧水銀ランプを用い2,000mJ/cm2の照射量で活性エネルギー線を照射して硬化塗膜を作製した。次いでその上に、表3及び表4に示す無機物質層(II)を膜厚が5μmとなるようプラズマCVD装置を用いて積層させた。得られた各試験積層体について、下記評価試験に供した。評価結果を表3及び表4に示す。」
「【0216】
性能試験および評価基準
<透明性>
ガラス板上に各プライマー組成物を3滴滴下し、80℃で15分乾燥した後、高圧水銀ランプメタルハライドランプを用い2,000mJ/cm2の照射量で活性エネルギー線を照射して硬化塗膜層を作製した。さらに、ポリカーボネート(PC)樹脂基材上には、実施例1と同様に各プライマー組成物を乾燥膜厚が8μmとなるようエアスプレー塗装し、続いて80℃で10分間プレヒートした後高圧水銀ランプメタルハライドランプを用い2,000mJ/cm2の照射量で活性エネルギー線を照射して硬化塗膜層を作製した。それぞれの硬化塗膜層を目視により観察し、下記基準により評価した。
【0217】
◎:ガラス板上の硬化塗膜層及びPC樹脂基材上の硬化塗膜層の両方で濁りが確認できない
○:ガラス板上の硬化塗膜層で濁りが確認され、PC樹脂基材上の硬化塗膜層では濁りが確認できず、製品とした時に問題ないレベル
×:ガラス板上の硬化塗膜層及びPC樹脂基材上の硬化塗膜層の両方で濁りが確認される。
【0218】
<耐擦傷性>
各試験体について、ASTM D1044に準じて、テーバー磨耗試験(磨耗輪CF-10F、荷重500g、1000回転)を行った。試験前後の積層膜についてヘイズ値を測定してその変化(ΔH)を求め、下記基準により評価した。
【0219】
◎:ΔHが2未満
○:ΔHが2以上5未満
△:ΔHが5以上10未満
×:ΔHが10以上。
【0220】
<付着性(初期)>
JIS K 5600-5-6(1990)に準じて素地に達するまで積層膜に1mm×1mmのゴバン目100個を作り、その面に粘着テープを貼着し、急激に剥がした後に、塗面に残ったゴバン目積層膜の数を評価した。
【0221】
◎:残存個数/全体個数=100個/100個で縁欠けなし
○:残存個数/全体個数=100個/100個で縁欠け5個以下である
△:残存個数/全体個数=99個~90個/100個、
又は100個/100個で縁欠け6個以上
×:残存個数/全体個数=89個以下/100個。
【0222】
<耐水性>
各試験体について、40℃の温水に240時間浸漬した後、水洗いした試験体の外観及び付着性を下記基準にて評価した。外観は目視で評価し、付着性(耐水試験後)は上記≪付着性(初期)≫と同じ方法及び評価基準で評価した。
【0223】
〔外観(耐水試験後)〕
◎:試験前の試験体の積層膜に対して、全く外観の変化のないもの
〇:試験前の試験体の積層膜に対して、若干ツヤびけ又は白化が見られるが、
製品とした時に問題ないレベル
△:試験前の試験体の積層膜に対して、若干ツヤびけ又は白化が見られる
×:試験前の試験体の積層膜に対して、著しくツヤびけ又は白化が見られる。
【0224】
<耐候性>
各試験体について、スーパーUVテスター(大日本プラスチック社製、W-13型、促進耐候性試験機)を用いて、ブラックパネル温度60℃、24時間紫外線照射-24時間水噴霧のサイクル条件を1サイクルとして20サイクルまで試験を行った。外観及び付着性を下記基準にて評価した。外観は目視で評価し、付着性(耐候試験後)は上記<付着性(初期)>と同じ方法及び評価基準で評価した。
【0225】
<外観(耐候試験後)>
◎:試験体の積層膜にワレが生じていない、かつ、ツヤびけ又は変色はほぼ見られない
〇:試験体の積層膜にワレが生じていない、かつ、若干ツヤびけ又は変色が見られるが、製品とした時に問題ないレベル
△:試験体の積層膜にワレが生じていないが、顕著なつやびけ又は変色が見られる
×:試験体の積層膜にワレが生じている。
【0226】
【表3】
[図:0001419334000007.jpg]
」
(3)甲1に記載された発明
甲1の請求項1~3を参酌しつつ、【0072】【表1-2】製造例19、【0074】、【0075】を参照して【0077】、【0080】【表2-2】の実施例19に着目すると、甲1には、以下の発明が記載されているといえる。
<甲1発明>
「環状オレフィン系樹脂基材(I)上に、活性エネルギー線硬化型組成物による硬化被膜層(II)、及び無機物質層(III)であるSiOxが順次積層されてなる積層体を形成するために用いられる活性エネルギー線硬化型組成物であって、シリカ微粒子No.2(平均一次粒子径23nm、シリカ微粒子に3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを反応させて製造された不飽和基を有する有機物変性シリカ微粒子)を60質量部、
重合性不飽和化合物No.1(平均重合性不飽和基数6個、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)を18質量部、
重合性不飽和化合物No.4(ウレタンアクリレート、平均重合性不飽和基数9個)を22質量部、
開始剤として、メチルベンゾフェノンを6.0質量部、DAROCURE 1173を0.8質量部、
表面調整剤としてBYK-354を0.10質量部、
紫外線吸収剤・光安定剤として、TINUVIN 1130を0.20質量部、
HOSTAVIN 3052を0.20質量部含み、
前記シリカ微粒子No.2の含有量が、前記活性エネルギー線硬化型組成物の全硬化被膜形成成分を基準として、56質量%である、活性エネルギー線硬化型組成物。」
(4)甲2に記載された発明
甲2の請求項1~2を参酌しつつ、【0198】~【0201】、【0207】、【0212】【表1】製造例19を参照して【0214】、【0226】【表3】の実施例12に着目すると、甲2には、以下の発明が記載されているといえる。
<甲2発明>
「樹脂基材に、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物による硬化塗膜層(I)、及び無機物質層(II)であるSiOxが順次積層されてなる積層体を形成するための活性エネルギー線硬化型プライマー組成物であって、生成物(A-5)(平均一次粒子径12nmのコロイダルシリカ微粒子に、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを反応させて製造した反応性粒子)を63質量部、
Ebecryl8804(2官能ウレタンアクリレート)を7.0質量部、
生成物(B-1)(式P-Iで表される化合物)を20質量部、
アロニックスM-313(イソシアヌル酸EO変性-ジ及びトリアクリレートの混合物、ジアクリレート比率(%)30~40%)を10質量部、
光重合開始剤として、イルガキュア-184を3.0質量部、イルガキュア-819を0.40質量部、
紫外線吸収剤として、TINUVIN928を3.0質量部、
光安定剤として、TINUVIN292を1.0質量部、
表面調整剤としてBYK-333を0.10質量部含み、
該無機物質層(II)が乾式成膜工法によって形成されたものである、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物。」
4 当審の判断
(1)取消理由1(明確性)について
本件発明1~4は、「平均粒径2~150nmの(メタ)アクリロイル基を有するシリカ粒子(B)」を含有するものであり、シリカ粒子の「平均粒径」が特定されたものである。そして、「平均粒径」の測定方法は、本件明細書【0069】の実施例に開示されたシリカ粒子「B1:PGM-AC-2140Y」、「B2:PGM-AC-4130Y」、「B3:MEK-AC-5140-Z」について特許権者が提出した乙第1号証(以下、乙1という)によればBET法であることが明らかである。
乙1:日産化学株式会社、「オルガノシリカゾル」<URL:https://www.nissanchem.co.jp/products/materials/inorganic/products/02/>
よって、本件発明1~4の特許請求の範囲の記載は明確である。
(2)取消理由2(新規性)、取消理由3(進歩性)について
ア 甲1を主引用例とした進歩性について
(ア)本件発明1についての対比・判断
甲1発明の「活性エネルギー線硬化型組成物」は、「環状オレフィン系樹脂基材(I)上に、活性エネルギー線硬化型組成物による硬化被膜層(II)、及び無機物質層(III)であるSiOxが順次積層されてなる積層体を形成するために用いられる」ものであるから、本件発明1の「基材と、無機酸化物層との間に配置されるプライマー層を形成するためのコーティング組成物」に相当する。甲1発明の「シリカ微粒子No.2」は、平均一次粒子径23nmであり、メタクリロイル基を不飽和基として有するといえるから、本件発明1の「平均粒径2~150nmの(メタ)アクリロイル基を有するシリカ粒子(B)」に相当する。甲1発明の「重合性不飽和化合物No.1」は、平均重合性不飽和基数6個である、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートであるから、本件発明1の「重合性化合物(A)」、「3官能以上の(メタ)アクリレート」に相当する。
甲1発明の「重合性不飽和化合物No.4」は、ウレタンアクリレートであり、平均重合性不飽和基数9個であるから、本件発明1の「重合性化合物(A)」、「3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点を有するといえる。
<一致点>
「基材と、無機酸化物層との間に配置されるプライマー層を形成するためのコーティング組成物であって、前記コーティング組成物は、重合性化合物(A)と、平均粒径2~150nmの(メタ)アクリロイル基を有するシリカ粒子(B)とを含有し、前記重合性化合物(A)が、3官能以上の(メタ)アクリレートおよび3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートを含む、コーティング組成物。」
<相違点1-1>
シリカ粒子(B)の含有量について、本件発明1は、「前記重合性化合物(A)100質量部に対して250~500質量部」であると特定するのに対し、甲1発明は、重合性不飽和化合物No.1(18質量部)と重合性不飽和化合物No.4(22質量部)との合計40質量部に対して60質量部(重合性不飽和化合物100質量部に対して150質量部)である点。
<相違点1-2>
ヘイズ値について、本件発明1は、「基材上に前記コーティング組成物より形成された膜厚5μmのプライマー層を有する基材のヘイズ値が1%以下である」と特定するのに対し、甲1発明は、当該ヘイズ値の値が不明である点。
a 相違点についての検討
<相違点1-1>について
甲1の【0023】には、「シリカ粒子(A)の総含有量は、耐擦傷性、耐カール性及び付着性の点から、前記活性エネルギー線硬化型組成物中の全硬化被膜形成成分に対して、30質量%以上であり、40質量%以上が好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、55質量%以上が特に好ましい。また、透明性の点から、85質量%以下であり、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。本発明において用いられる活性エネルギー線硬化型組成物から得られる被膜は、シリカ粒子(A)の含有率が高くても、透明性に非常に優れ、かつ、基材との密着性及び耐擦傷性にも優れる。」と記載されている。また、甲1の【0071】【表1-1】製造例10、【0072】【表1-2】製造例11、12、15-18には、シリカ粒子含有量が66~78%である例が記載されている。しかしながら、シリカ微粒子No.2の含有量が、活性エネルギー線硬化型組成物の全硬化被膜形成成分を基準として56質量%である甲1発明において、シリカ微粒子No.2の含有量を増やして66.6質量%以上とし(すなわちシリカ微粒子No.2を71.4質量部以上として重合性不飽和化合物100質量部に対して250以上とし)、重合性不飽和化合物100質量部に対して250~500質量部の範囲内とすることは記載されていない。また、甲1発明において、シリカ粒子(A)を増やしつつ重合性不飽和化合物(B)、開始剤(C)、表面調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の配合量を調整し所定の(A)/(B)比とすることは記載も示唆も無いから、シリカ微粒子No.2の含有量を増やして重合性不飽和化合物100質量部に対して250~500質量部の範囲内とすることが容易であるとはいえない。
<相違点1-2>について
ヘイズ値についても、甲1発明のシリカ微粒子No.2の含有量を重合性不飽和化合物100質量部に対して250以上とした場合において、【0080】【表2-2】、【0083】の記載からは、本件発明1に規定された「基材上に前記コーティング組成物より形成された膜厚5μmのプライマー層を有する基材のヘイズ値が1%以下である」を充足するとはいえない。また、甲1発明において、シリカ微粒子の含有量を調整した際にヘイズ値がどのように変化するかは記載も示唆も無いから、ヘイズ値を本件発明1に規定された程度とするように調製することが容易とはいえない。
b 効果についての検討
本件明細書の実施例において、シリカ粒子(B)の含有量を重合性化合物(A)100質量部に対して200質量部とした実施例16と、290質量部とした実施例1との評価結果を参照すると、290質量部とした実施例1の方が実施例16よりも積層体における「初期密着性」「煮沸後密着性」の評価が良好であるとの効果が認められる。そして、甲1には、シリカ微粒子の含有量を重合性不飽和化合物100質量部に対して250以上とすることと積層体における初期密着性、煮沸後密着性については記載も示唆もないのであるから、当該効果は当業者が予測し得たとは到底認められない。
c 小括
したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明及び甲1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2~4について
本件発明2~4は本件発明1をすべて包含する発明であるから、上記(ア)に記載したとおり、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明及び甲1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 甲2を主引用例とした新規性、進歩性について
(ア)本件発明1についての対比・判断
甲2発明の「活性エネルギー線硬化型プライマー組成物」は、「樹脂基材に、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物による硬化塗膜層(I)、及び無機物質層(II)であるSiOxが順次積層されてなる積層体を形成するため」のものであるから、本件発明1の「基材と、無機酸化物層との間に配置されるプライマー層を形成するためのコーティング組成物」に相当する。
甲2発明の「生成物(A-5)」は、平均一次粒子径12nmのコロイダルシリカ微粒子が、メタクリロイル基を有するものといえるから、本件発明1の「平均粒径2~150nmの(メタ)アクリロイル基を有するシリカ粒子(B)」に相当する。
甲2発明の「Ebecryl8804」は、2官能ウレタンアクリレートであるから、本件発明1の「重合性化合物(A)」に相当する。
甲2発明の「生成物(B-1)」は、式P-Iで表される化合物であり、【0201】を参照すると、ウレタン結合を有し、アクリロイル基を3個有する化合物であるから、本件発明1の「重合性化合物(A)」、「3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート」に相当する。
甲2発明の「アロニックスM-313」は、イソシアヌル酸EO変性-ジ及びトリアクリレートの混合物、ジアクリレート比率(%)30~40%であるから、本件発明1の「重合性化合物(A)」に相当し、トリアクリレートが、本件発明1の「3官能以上の(メタ)アクリレート」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは、以下の一致点及び相違点を有するといえる。
<一致点>
「基材と、無機酸化物層との間に配置されるプライマー層を形成するためのコーティング組成物であって、
前記コーティング組成物は、重合性化合物(A)と、平均粒径2~150nmの(メタ)アクリロイル基を有するシリカ粒子(B)とを含有し、
前記重合性化合物(A)が、3官能以上の(メタ)アクリレートおよび3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートを含むコーティング組成物。」
<相違点2-1>
シリカ粒子(B)の含有量について、本件発明1は、「前記重合性化合物(A)100質量部に対して250~500質量部」であると特定するのに対し、甲2発明はそのように特定されていない点。
<相違点2-2>
ヘイズ値について、本件発明1は、「基材上に前記コーティング組成物より形成された膜厚5μmのプライマー層を有する基材のヘイズ値が1%以下である」と特定するのに対し、甲2発明は、当該ヘイズ値の値が不明である点。
a 相違点についての検討
<相違点2-1>について
甲2発明は、Ebecryl8804(2官能ウレタンアクリレート)を7.0質量部、生成物(B-1)(式P-Iで表される化合物)を20質量部、アロニックスM-313(イソシアヌル酸EO変性-ジ及びトリアクリレートの混合物、ジアクリレート比率(%)30~40%)を10質量部、すなわち重合性化合物を37質量部含み、生成物(A-5)(平均一次粒子径12nmのコロイダルシリカ微粒子に、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを反応させて製造した反応性粒子)を63質量部含むため、重合性化合物100質量部に対して生成物(A-5)を170質量部含むものである。
甲2の【0116】には、「活性エネルギー線硬化型プライマー組成物による硬化塗膜層(I)おける有機物変性シリカ粒子(A)の含有量は、特に限定されるものではない。得られる積層体の耐擦傷性や耐磨耗性向上、ワレ防止及び透明性の点から、好ましくは活性エネルギー線硬化型プライマー組成物の不揮発分100質量部に対して、5~80質量部であり、より好ましくは10~75質量部であり、特に好ましくは20~70質量部である。」と記載されている。しかしながら、平均一次粒子径12nmのコロイダルシリカ微粒子に、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを反応させて製造した反応性粒子)である生成物(A-5)が、活性エネルギー線硬化型プライマー組成物の不揮発分100質量部を基準として63質量部である甲2発明において、生成物(A-5)の含有量を増やして71.4質量部以上とし、重合性不飽和化合物100質量部に対して250~500質量部の範囲内とすることは記載されていない。また、甲2発明において、生成物(A-5)を増やしつつ重合性化合物の配合量を調整し所定の比率とすることは記載も示唆も無いから、生成物(A-5)の含有量を増やして重合性化合物100質量部に対して250~500質量部の範囲内とすることが容易であるとはいえない。
<相違点2-2>について
甲2の【0226】【表3】の実施例12では、透明性の評価が「○」となっており、【0216】、【0217】には、「○」は、「ガラス板上の硬化塗膜層で濁りが確認され、PC樹脂基材上の硬化塗膜層では濁りが確認できず、製品とした時に問題ないレベル」と記載され、ポリカーボネート(PC)樹脂基材については、基材上にプライマー組成物を乾燥膜厚が8μmとなるように形成したものを評価したことが記載されている。そして、本件明細書【0072】、【0074】に、「ヘイズ値」は、PETフィルム上に5.0μmとなるようにプライマー層を形成した基材を対象に測定したものであり、「1%以下」は、実用上問題ないレベルであり、1%を超えると「実用不可」のレベルであると記載されている。しかしながら、甲2発明において、生成物(A-5)の含有量を増やして71.4質量部以上とした際に、ポリカーボネート(PC)樹脂基材について、基材上にプライマー組成物を乾燥膜厚が8μmとなるように形成したものがどのような評価となるかは明らかでないから、樹脂基材であるPETフィルム上に、より薄い5.0μm厚の硬化塗膜層を形成した場合でも、製品とした時に問題ないレベルになるとはいえないから、本件発明1で規定する「ヘイズ値」は「1%以下」になることが明らかとはいえない。また、生成物(A-5)の含有量を増やして71.4質量部以上とした際に「ヘイズ値」がどのような評価となるか記載も示唆もないから、本件発明1で規定する「ヘイズ値」を「1%以下」となるように調製することが容易であるともいえない。
よって、<相違点2-1>、<相違点2-2>は相違点である。
b 効果についての検討
本件明細書の実施例において、シリカ粒子(B)の含有量を重合性化合物(A)100質量部に対して200質量部とした実施例16と、290質量部とした実施例1との評価結果を参照すると、290質量部とした実施例1の方が実施例16よりも積層体における「初期密着性」「煮沸後密着性」の評価が良好であるとの効果が認められる。そして、甲2には、シリカ微粒子である生成物(A-5)の含有量を重合性化合物100質量部に対して250以上とすることと積層体における初期密着性、煮沸後密着性については記載も示唆もないのであるから、当該効果は当業者が予測し得たとは到底認められない。
c 小括
したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)本件発明2~4について
本件発明2~4は本件発明1をすべて包含する発明であるから、上記(ア)に記載したとおり、甲2に記載された発明ではなく、甲2に記載された発明及び甲2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知で採用しなかった特許異議の申立理由の概要
取消理由で採用しなかった特許異議の申立理由は、次のとおりである。以下、申立人の提示した甲3号証~甲5号証を甲3~甲5などという。
取消理由(新規性):請求項1~4に係る発明は、甲1に記載された発明と相違しない。よって、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
取消理由(進歩性):請求項3に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲4,5に記載された事項に基いて、また、甲2に記載された発明及び甲4,甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に想到することができたものである。請求項1~4に係る発明は、甲3に記載された発明及び甲4,5に記載された事項に基いて当業者が容易に想到することができたものである。よって、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
取消理由(明確性):請求項1~4に係る特許は、特許請求の範囲の記載が同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、取り消されるべきものである。
甲3:国際公開第2018/181572号
甲4:国際公開第2015/186434号
甲5:特開2009-173755号公報
2 甲1を主引用例とした新規性について
前記第4の4(2)アにて記載したとおり、本件発明1と甲1発明はシリカ微粒子の含有量が異なるから、申立人の主張は採用できない。
3 甲1,甲2を主引用例とした本件発明3に対する進歩性について
本件発明3は本件発明1をすべて包含する発明であるから、前記第4の4(2)ア、前記第4の4(2)イにて記載したとおり、申立人の主張は採用できない。
また、甲1または甲2に甲4,甲5の周知技術を適用することについて検討すると、甲1発明は前記第4の4(2)ア、甲2発明は前記第4の4(2)イに記載されるとおりのものであるところ、甲1発明の重合性不飽和化合物No.4、甲2発明の生成物(B-1)のウレタン(メタ)アクリレートとして、甲4,甲5に記載されるような脂環構造のものを採用することを動機付ける記載も示唆もないから、甲1発明の重合性不飽和化合物No.4、甲2発明の生成物(B-1)に替えて甲4,甲5に記載の脂環構造のウレタン(メタ)アクリレートを採用することが当業者にとって容易であるとはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。
4 甲3を主引用例とした進歩性について
(1)甲3に記載された事項
「[0001] 本発明は、ハードコート層付高分子基板に関するものである。特に本発明は、耐摩耗性、高硬度、および耐熱性に優れ、厳しい使用環境下でも長期的に使用する事のできるハードコート層付高分子基板に関するものである。このハードコート層付高分子基板は例えば、自動車窓材、建築部材、太陽電池の表面保護板等に利用する事ができる。」
「[0031] これらの状況を踏まえ、本発明では、表層にプラズマ誘起の化学気相成長法(PE-CVD法)による高硬度ハードコート層を積層してなるハードコート層付高分子基板に関し、無機ガラス並みの極めて高度な耐摩耗性と、耐環境性の代表特性としての耐沸水性(密着性の「経時結果」も含む)と、耐熱性に優れ、これらの3つの特性を両立できる構成体を得る事を目的とする。」
「[0049] 〈下地硬化層70-第1の態様〉
第1の態様の下地硬化層70は、高分子基板の表面上に積層されており、有機珪素化合物の加水分解縮合物を主成分として含み多官能アクリレート10~90重量部、無機酸化物微粒子および/または珪素化合物加水分解縮合物90~10重量部を含み、かつ厚みが1~20μmである。この厚みは例えば、1μm以上、3μm以上、5μm以上であってよく、また20μm以下、15μm以下、又は10μm以下であってよい。
[0050] この下地硬化層(70)は、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート10~90重量部、無機酸化物微粒子および/または珪素化合物加水分解縮合物90~10重量部を含む前駆組成物(以下、前駆組成物という)を、熱硬化又は活性エネルギー線硬化して得られる層であること、特に活性エネルギー線硬化して得られる層であることが好ましい。
[0051] なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基とメタクリロイル基の一方又は両方をいう。
[0052] このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
[0053] これらの(メタ)アクリレート1種を用いることもできるが2種以上を併用し、硬度と柔軟性のバランスを取ることが好ましく行われる。また、これらの(メタ)アクリレートの中でも、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートは、耐擦傷性を向上できるため一定量配合されていることが好ましい。
[0054] 無機酸化物微粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ケイ素等が挙げられる。上記無機酸化物微粒子の一次粒径は1nm~200nmであることが好ましく、1nm~100nmであることがより好ましい。上記範囲とすることで、透明性、耐候性に優れた下地硬化層を形成できるため好ましい。」
「[0058] また、無機微粒子の分散性の向上のため、側鎖にアルコキシシリル基を持つ(メタ)アクリル樹脂や側鎖に極性の高い水酸基、アミン基、カルボキシル基を持つ(メタ)アクリル樹脂と無機酸化物微粒子および/または珪素化合物加水分解縮合物をもつ化合物を反応させて用いることも好ましく行われる。」
「[0208] 〈全光線透過率および曇値(ヘイズ値)の測定〉
日本電色工業株式会社製のヘイズメーターNDH2000を用いて測定した。尚、曇値(H)は、H=Td/Tt×100(Td:散乱光線透過率、Tt:全光線透過率)で示される。」
「[0217] 〈下地硬化層の前駆材料液の調製方法〉
<表面被覆コロイダルシリカ分散液(A‘)調製法>
水分散型コロイダルシリカ分散液(触媒化成工業株式会社製 カタロイドSN-30、粒子径約17nm、固形分濃度30重量%)81.2重量部に酢酸12重量部を加えて攪拌し、この分散液に氷水浴で冷却下メチルトリメトキシシラン128.8重量部を加えた。この混合液を30℃で1時間半攪拌後、60℃で8時間攪拌した反応液を氷水冷却し、これに、硬化触媒として酢酸ナトリウム2重量部を氷水冷却下で混合し、表面被覆コロイダルシリカ分散液(A‘)を得た。
[0218] <下地硬化層原料(A1)調製法>
反応容器にメトキシプロパノール164重量部を加え80度まで昇温し、メチルメタクリレート(MMA)40重量部、ブチルメタクリレート(BMA)8重量部、ブチルアクリレート(BA)36重量部、アクリル酸(AA)24重量部、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTS)4重量部、及びtert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(TBPEH)6重量部を含有する混合物を、前記反応容器中へ4時間で滴下した後、更に同温度で2時間反応させることによって、カルボキシル基と加水分解性シリル基とを有する数平均分子量が10200のアクリル重合体有機溶剤溶液(A1“)を得た。A1“中の水酸基、アミノ基、カルボキシル基、およびアルコキシシリル基の組合せ(特定官能基)の含有量は、3.13mol/kgであった(下記の表1-1参照)。
[0219] 更に同温度で前記表面被覆コロイダルシリカ分散液(A‘)224部を加えて1時間攪拌し、次いでグリシジルアクリレート50部、メトキノン0.07部を加えて1時間攪拌することで重合体有機溶剤溶液(A“)中の加水分解性シリル基と表面被覆コロイダルシリカが結合した下地硬化層原料(A1)を得た。
・・・
[0221] 更に同温度で前記表面被覆コロイダルシリカ分散液(A‘)224部を加えて1時間攪拌し、次いでグリシジルアクリレート50部、メトキノン0.07部を加えて1時間攪拌することで重合体有機溶剤溶液(A“)中の加水分解性シリル基と表面被覆コロイダルシリカが結合した下地硬化層原料(A2)を得た。
[0222]
[表1]
[図:0001419334000008.jpg]
[0223] <下地硬化層用コート剤(I)の調製>
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(東亜合成(株)製アロニックスM-450)40重量部、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート(東亜合成(株)製アロニックスM-350)20重量部、前記下地硬化層原料(A1)50重量部、有機溶剤分散型表面修飾コロイダルシリカ(日産化学(株)製MEK-AC-2140Z 固形分濃度40%)50重量部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤チヌビン400(BASF(株)製)10重量部、フェニル1-ヒドロキシエチルケトン(BASF(株)製イルガキュア184)10重量部、メチルエチルケトン20重量部、メトキシプロパノール100重量部、イソプロパノール40重量部を加え、下地硬化層用コート剤(I)を調製した。下地硬化層用コート剤(I)の原料組成について、下記の表1-2にまとめている。」
「[0230]
[図:0001419334000009.jpg]
[0231] [ハードコート層付高分子基板の作成]
〈実施例1〉
ポリカーボネート樹脂(帝人株式会社パンライトL1250Z)を射出プレス成形装置投入し、4mm厚み、600mm四方の透明なポリカーボネート樹脂板を得た。
[0232] 本ポリカーボネート樹脂板を基板として、その両面に、前記下地硬化層コート剤(I)をディップコーティングし、風乾の後、両面から高圧水銀ランプで1000mJ/cm2の紫外線を照射し、膜厚約8μmの下地硬化層をポリカーボネート基板の両面に形成した。
・・・
[0235] 前記プラズマ処理後、アルゴンガスの導入を停止し、引き続いて、PE-CVD法による酸化珪素層の形成工程を行った。」
「[0267]
[表7]
[図:0001419334000010.jpg]
」
(2)甲4に記載された事項
「[0001]本発明は、ガスバリアーフィルムに関する。より詳しくは、ガスバリアー性を保持しつつ、クリアハードコート層とガスバリアー層との密着性に優れたガスバリアーフィルムに関する。」
「[0006]本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、ガスバリアー性を保持しつつ、クリアハードコート層とガスバリアー層との密着性に優れるガスバリアーフィルムを提供することである。」
「[0026]また、クリアハードコート層とガスバリアー層との親和力及び応力緩和効果の観点から、ウレタン(メタ)アクリレートがペンタエリスリトール(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートとの反応物であることが好ましい。」
「[0057]≪クリアハードコート層(CHC層)(4)≫
本発明に係るクリアハードコート層は、樹脂基材とガスバリアー層との密着性向上、高温高湿下での樹脂基材及びガスバリアー層の膨張・収縮の差から生じる内部応力の緩和、樹脂基材からのモノマー、オリゴマー等の低分子量成分のブリードアウト防止等の機能を有する。
クリアハードコート層における炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対する酸素原子比率は、25~45at%の範囲内であることが好ましい。また、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子の総原子数(100at%)に対するケイ素原子数の比率(ケイ素原子比率)は、10~30at%の範囲内であることが好ましい。
なお、クリアハードコート層内の酸素原子比率及びケイ素原子比率は、組成傾斜領域を除くクリアハードコート層内の平均値として求めた。」
「[0139] <クリアハードコート材料>
・ウレタンアクリレートA:共栄社化学製 UA-306I(ペンタエリスリトールトリアクリレートとイソホロンジイソシアネートの反応物)
・ウレタンアクリレートB:共栄社化学製 UA-306H(ペンタエリスリトールトリアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートの反応物)
・アクリレートモノマーC:共栄社化学製 ライトアクリレートPE-4A(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)
・アクリレートモノマーD:新中村化学製 A-9300(エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート)
・光重合開始剤:BASFジャパン製 イルガキュア819
・SiO2微粒子E:コロイダルシリカ(日産化学社製「スノーテックスO」)
・SiO2微粒子F:コロイダルシリカ(日産化学社製「スノーテックスO」)10質量部をペンタエリスリトールトリアクリレート50質量部とイソホロンジイソシアネート20質量部で処理したもの
・フッ素系活性剤:AGCセイミケミカル製 S651」
(3)甲5に記載された事項
「【0001】
本発明は、プラスチック基材用塗料組成物、およびこれより形成された複合塗膜に関する。」
「【0005】
本発明は上記事情を鑑みてなされたもので、プラスチック基材と硬化保護膜との付着性が良好な複合塗膜を形成できるプラスチック基材用塗料組成物、およびこれより形成された複合塗膜の実現を目的とする。」
「【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
[プラスチック基材用塗料組成物]
本発明のプラスチック基材用塗料組成物(以下、「塗料組成物」という場合がある。)は、塗膜形成成分を有する。
塗膜形成成分は、活性エネルギー線硬化性化合物(A)とシランカップリング剤(B)を含有する。
【0011】
<塗膜形成成分>
(活性エネルギー線硬化性化合物(A))
活性エネルギー線硬化性化合物(以下、「A成分」という場合がある。)は、ウレタン(メタ)アクリレートを含む。」
「【0016】
A成分は、環状構造を有する活性エネルギー線硬化性成分(以下、「環状成分」という場合がある。)をA成分100質量%中、30質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは40質量%以上である。環状成分の含有量が30質量%以上であれば、本発明の塗料組成物より形成される塗膜上に塗布される硬化保護膜が剥離しにくくなる。
【0017】
環状構造としては特に制限されず、例えば脂環構造や芳香環構造などが挙げられる。
また、環状成分は、上述したウレタン(メタ)アクリレートおよび/または他の化合物からなる。よって、環状構造のウレタン(メタ)アクリレートおよび/または環状構造の他の化合物の含有量が、合計して上記範囲内であることが好ましい。
【0018】
環状構造のウレタン(メタ)アクリレートは、例えばポリイソシアネート化合物として、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環構造を有するポリイソシアネート化合物や、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香環構造を有するポリイソシアネート化合物を用い、上述したポリオールを反応させ、得られた生成物に水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させることによって得られる。脂環構造を有するポリイソシアネート化合物を用いれば脂環構造のウレタン(メタ)アクリレートが、芳香環構造を有するポリイソシアネート化合物を用いれば芳香環構造のウレタン(メタ)アクリレートが得られる。・・・」
(4)甲3に記載された発明
甲3の[0218]、[0219]、[0223]、[0230]~[0232]の実施例1、[0267][表7]を参照すると、甲3には以下の発明が記載されている。
<甲3発明>
「基板と酸化珪素層との間に配置される下地硬化層を形成するための下地硬化層用コート剤(I)であって、前記下地硬化層用コート剤(I)は、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(東亜合成(株)製アロニックスM-450)40重量部、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート(東亜合成(株)製アロニックスM-350)20重量部、前記下地硬化層原料(A1)50重量部、有機溶剤分散型表面修飾コロイダルシリカ(日産化学(株)製MEK-AC-2140Z 固形分濃度40%)50重量部、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤チヌビン400(BASF(株)製)10重量部、フェニル1-ヒドロキシエチルケトン(BASF(株)製イルガキュア184)10重量部、メチルエチルケトン20重量部、メトキシプロパノール100重量部、イソプロパノール40重量部を含み、基板上に前記コート剤(I)より形成された膜厚約8μmの下地硬化層を有するハードコート層付高分子基板のヘイズ値が0.5%である、コート剤(I)。」
ア 本件発明1について
甲3発明の「下地硬化層用コート剤(I)」は、基板と酸化珪素の間に下地硬化層を設けるために塗布されるから、本件発明1の「基材と、無機酸化物層との間に配置されるプライマー層を形成するためのコーティング組成物」に相当する。甲3発明の「有機溶剤分散型表面修飾コロイダルシリカ(日産化学(株)製MEK-AC-2140Z 固形分濃度40%)」は、平均一次粒子径10~15nmで(メタ)アクリロイル基で表面修飾されたシリカである(必要であれば、国際公開2022/44743号 [0068]参照)から、本件発明1の「平均粒径2~150nmの(メタ)アクリロイル基を有するシリカ粒子(B)」に相当する。甲3発明の「ペンタエリスリトールテトラアクリレート」、「トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート」は、本件発明1の「3官能以上の(メタ)アクリレート」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲3発明とは、以下の一致点及び相違点を有するといえる。
<一致点>
「基材と、無機酸化物層との間に配置されるプライマー層を形成するためのコーティング組成物であって、前記コーティング組成物は、重合性化合物(A)と、平均粒径2~150nmの(メタ)アクリロイル基を有するシリカ粒子(B)とを含有し、前記重合性化合物(A)が、3官能以上の(メタ)アクリレートを含む、コーティング組成物。」
<相違点3-1>
本件発明1は重合性化合物(A)が3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートを含むのに対して、甲3発明はその点が記載されていない点。
<相違点3-2>
シリカ粒子(B)の含有量について、本件発明1は、「前記重合性化合物(A)100質量部に対して250~500質量部」であると特定するのに対し、甲3発明は、ペンタエリスリトールテトラアクリレート40重量部、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート20重量部、下地硬化層原料A1((メタ)アクリル樹脂)50重量部の合計110質量部に対して、表面修飾コロイダルシリカ(固形分濃度40%)を50質量部(重合性化合物100質量部に対して18質量部)である点。
<相違点3-3>
ヘイズ値について、本件発明1は、「基材上に前記コーティング組成物より形成された膜厚5μmのプライマー層を有する基材のヘイズ値が1%以下である」と特定するのに対し、甲3発明は、当該ヘイズ値の値が不明である点。
(ア) 相違点についての検討
<相違点3-1>について
甲3には下地硬化層用コート剤(I)にウレタンアクリレートを混合することについて記載されていない。この点について、申立人は異議申立書において、甲4には「脂環構造を有する」「3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート」が開示され、「前記クリアハードコート層と前記ガスバリアー層との密着性に優れる」ことも開示されること、甲5には「脂環構造を有するウレタン(メタ)アクリレートを用いることが開示され、硬化保護膜が剥離しにくくできることも開示」されることを主張し、「3官能以上のウレタン(メタ)アクリレート」や「3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートが脂環構造を有する」ことは周知技術である旨主張した。
しかしながら、甲3発明においては、ペンタエリスリトールテトラアクリレート40重量部、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート20重量部、(メタ)アクリル系樹脂である下地硬化層原料(A1)50重量部を使用しているところ、3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートを配合した場合には、甲3発明においてすでに達成している密着性をさらに向上ないし改善することが明らかであるともいえないから、脂環構造を有するウレタン(メタ)アクリレートを使用することで密着性が改善するまたは剥離しにくくなるとの甲4,甲5の記載が、甲3発明に甲4,甲5に記載の3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートを配合することを当業者に動機付けるとはいえない。
<相違点3-2>について
甲3の[0050]には、「下地硬化層(70)は、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート10~90重量部、無機酸化物微粒子および/または珪素化合物加水分解縮合物90~10重量部を含む前駆組成物(以下、前駆組成物という)を、熱硬化又は活性エネルギー線硬化して得られる層である」と記載されている。しかしながら、表面修飾コロイダルシリカを重合性化合物100重量部に対して18重量部含有する甲3発明において、表面修飾コロイダルシリカの含有量を増やして250~500質量部の範囲内とすることは記載されていない。
<相違点3-3>について
ヘイズ値についても、甲3発明の表面修飾コロイダルシリカの含有量を重合性化合物100質量部に対して250以上とした場合において、[表7]の記載からは、本件発明1に規定された「基材上に前記コーティング組成物より形成された膜厚5μmのプライマー層を有する基材のヘイズ値が1%以下である」を充足するとはいえない。
以上のとおりであるから、申立人の異議申立書における主張は採用できない。
(イ) 効果についての検討
本件明細書の実施例において、シリカ粒子(B)の含有量を重合性化合物(A)100質量部に対して200質量部とした実施例16と、290質量部とした実施例1との評価結果を参照すると、290質量部とした実施例1の方が実施例16よりも積層体における「初期密着性」「煮沸後密着性」の評価が良好であるとの効果が認められる。そして、甲3には、表面修飾コロイダルシリカの含有量を重合性化合物100質量部に対して250以上とすることと積層体における初期密着性、煮沸後密着性については記載も示唆もないのであるから、当該効果は当業者が予測し得たとは到底認められない。
(ウ) 小括
したがって、本件発明1は、甲3に記載された発明及び甲4,5の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~4について
本件発明2~4は本件発明1をすべて包含する発明であるから、上記アに記載したとおり、甲3に記載された発明及び甲4,5の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 明確性要件について
申立人は、「本件特許発明1では、「基材」に使用される原料成分について、何ら規定されていない。そうすると、本件特許発明1で規定する「プライマー層を有する基材のヘイズ値」とは、基材に使用される原料成分が明らかにされず、どのような基材を使用すればよいか明確ではないため、当業者にとって、本件特許発明1は不明確であるといえる。」旨主張する。
しかしながら、「基材」とは通常使用される用語であって、不明確とはいえない。さらに、本件明細書の【0058】には基材の原料成分について例示されており、その点からも不明確とはいえない。
以上のとおりであるから、申立人の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701323