特許異議申立
2024-700939
二水石膏の不溶化方法、半水石膏の不溶化方法、石膏組成物の製造方法
- 審判番号
- 2024-700939
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-002200
- 登録番号
- 7458654
- 請求日
- 2024年09月30日
- 審決日
- 2025年08月27日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三友プラントサービス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人むつきパートナーズ
- 【異議申立人】大石 友子
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 尚之
- 審判官 深草 祐一
- 審判官 塩谷 領大
- 分類
- P1651.113-YAA(C04B) / P1651.121-YAA(C04B) / P1651.537-YAA(C04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7458654号発明「二水石膏の不溶化方法、半水石膏の不溶化方法、石膏組成物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7458654号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7458654号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7458654号の請求項1~5に係る特許(以下、それぞれ「本件特許1」などといい、まとめて「本件特許」という。)についての出願は、令和4年1月11日に出願され、令和6年3月22日にその特許権の設定登録がされ、同年4月1日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許1~5に対して、令和6年9月30日に特許異議申立人大石友子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和7年1月28日付けで取消理由が通知され、同年3月13日に特許権者により意見書及び訂正請求書の提出がされ、同年5月7日に申立人により意見書の提出がされた。
第2 訂正の適否についての判断1 訂正の内容
令和7年3月13日付けの訂正請求書における訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1~5〕を訂正の単位として訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである(訂正箇所に下線を付した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を12%~67%とし、」
と記載されているのを、
「前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を12%~50%とし、」
に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、5も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に
「前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を5%以上65%以下の範囲で選択される第1値にするとともに前記鉄粉を3%以上60%以下の範囲で選択される第2値とし、かつ前記第1値と前記第2値の合計値の前記混合物の質量に対する比が15%以上87%以下となるようにし、」
と記載されているのを、
「前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を5%以上57%以下の範囲で選択される第1値にするとともに前記鉄粉を3%以上60%以下の範囲で選択される第2値とし、かつ前記第1値と前記第2値の合計値の前記混合物の質量に対する比が15%以上72%以下となるようにし、」
に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4、5も同様に訂正する。)。
2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、それぞれを「本件明細書」などといい、まとめて「本件明細書等」という。)の「主剤(酸化マグネシウム)と第1助剤(硫酸第一鉄)を用いた最適混合割合について検討した。上記の実験から、添加する薬剤(混合物)の全体質量に対する硫酸第一鉄の質量比を25%~50%とした場合にフッ素の溶出量の抑制に効果が見られた。」との記載(【0040】)に基づき、「酸化マグネシウムと硫酸第一鉄の混合物」に対する「硫酸第一鉄」の混合割合の範囲を限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件明細書等の「MgO:FeSO4:Fe 28:57:15」との記載(【図14】)に基づき、「酸化マグネシウム、硫酸第一鉄及び鉄粉の混合物」に対する「硫酸第一鉄」の混合割合(第1値)の範囲、及び「硫酸第一鉄」の混合割合(第1値)と「鉄粉」の混合割合(第2値)の合計値の範囲を限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件特許請求の範囲の記載(本件発明)
前記第2のとおり、本件訂正請求は適法にされたものであるから、本件特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。そして、請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、その記載事項により特定されるとおりのものである。
「 【請求項1】
廃石膏由来であり少なくともフッ素及びカドミウムを含む二水石膏の不溶化方法であって、
前記二水石膏に対して酸化マグネシウムと硫酸第一鉄の混合物を添加することを含み、
前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を12%~50%とし、残部を酸化マグネシウムとするものであって、前記フッ素及び前記カドミウムを不溶化することが可能である、
二水石膏の不溶化方法。
【請求項2】
前記二水石膏は、鉛を更に含み、
前記混合物の添加によりpHを9.5~11とすることが可能であり、硫化水素の発生が抑制されるとともに前記鉛の再溶解も抑制される、
請求項1に記載の二水石膏の不溶化方法。
【請求項3】
廃石膏由来であり少なくともフッ素、カドミウム及びセレンを含む半水石膏の不溶化方法であって、
前記半水石膏に対して酸化マグネシウム、硫酸第一鉄及び鉄粉の混合物を添加することを含み、
前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を5%以上57%以下の範囲で選択される第1値にするとともに前記鉄粉を3%以上60%以下の範囲で選択される第2値とし、かつ前記第1値と前記第2値の合計値の前記混合物の質量に対する比が15%以上72%以下となるようにし、残部を酸化マグネシウムとするものであって、前記フッ素、前記カドミウム及び前記セレンを不溶化することが可能である、
半水石膏の不溶化方法。
【請求項4】
前記半水石膏は、鉛を更に含み、
前記混合物の添加によりpHを9.5~11とすることが可能であり、硫化水素の発生が抑制されるとともに前記鉛の再溶解も抑制される、
請求項3に記載の半水石膏の不溶化方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載の不溶化方法によって石膏組成物を得る、石膏組成物の製造方法。」
第4 特許異議申立理由、取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人が主張する特許異議申立理由は、概略、以下の(1)~(4)のとおりである。
ここで、申立人が提出した証拠方法は、次のものである。
甲第1号証:特開2010-201320号公報
甲第2号証:特開2014-57949号公報
甲第3号証:特許第6053004号公報
甲第4号証:特許第5013005号公報
甲第5号証:国際公開第2016/158914号
甲第6号証:特許第6323498号公報
甲第7号証:特開2007-302885号公報
甲第8号証:特開2019-136676号公報
(1)申立理由1(新規性欠如)
設定登録時の請求項1、2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(進歩性欠如)
ア 設定登録時の請求項1、2、5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証~甲第5号証、甲第7号証、甲第8号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
イ 設定登録時の請求項1、2、5に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証~甲第5号証、甲第7号証、甲第8号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
ウ 設定登録時の請求項3~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第5号証、甲第7号証、甲第8号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
エ 設定登録時の請求項3~5に係る発明は、甲第6号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第5号証、甲第7号証、甲第8号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)申立理由3(サポート要件違反)
ア 本件図面は「発明の詳細な説明」に記載したものではない点について
本件図面の図2~16は、特許法第36条第3項で、明細書に記載しなければならないと規定されている「発明の詳細な説明」に記載したものではない。本件図面である図2~16における膨大な量の2値化された情報を、本件明細書の発明の詳細な説明に記載された文字情報であるとみなすことは許されるものではなく、そうすると、設定登録時の請求項1~5に係る発明は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとする要件を満たすものではないことは明らかであり、その特許は、特許法第36条第6項第1号に違反してされたものである。
イ 特有の効果が得られない態様を含んでいる点について
(ア)設定登録時の請求項1に係る発明は、混合物を添加しない未処理の廃石膏Aのフッ素の溶出量が15mg/Lであったのに対して、酸化マグネシウムのみを添加した場合の溶出量は1.9mg/Lである。これに対し、「硫酸第一鉄が66.67%で残部が酸化マグネシウム」である混合物を添加した場合は、溶出量が4.7mg/Lであり、酸化マグネシウムのみを添加した場合の1.9mg/Lの約2.5倍の高い溶出量の値を示しており、設定登録時の請求項1に係る発明に特有の効果があるものとは到底言えない。
また、設定登録時の請求項1に係る発明が対象としているカドミウムについては、混合物を添加しない未処理の廃石膏Aのカドミウムの溶出量が0.022mg/Lであったのに対して、酸化マグネシウムのみを15%添加することで、土対法(基準)の<0.003mg/Lを達成していことから、設定登録時の請求項1に係る発明の「前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を12%~67%とし、残部を酸化マグネシウムとするものであって」との構成によって実現される特有の効果については全く認められない。
(イ)設定登録時の請求項3に係る発明は、硫酸第一鉄が8.33%(第1値)、鉄粉が8.33%(第2値)、第1値+第2値=16.67%で、残部の酸化マグネシウムが83.33%の混合物を添加した例では、フッ素の溶出量が2.5mg/L、セレンの溶出量が0.013mg/Lであり、「酸化マグネシウム」のみを添加した例よりもフッ素及びセレンとともに溶出量が減っているものの、「硫酸第一鉄を1%、残部を酸化マグネシウム」とした混合物を添加した例と比べて、フッ素の溶出量は増加したことが示されており溶出量の低減の効果を認められない。また、設定登録時の請求項3に係る発明が目的としているカドミウムについては、「酸化マグネシウム」のみの添加で土対法(基準)を達成しており、効果の確認はできない。
また、鉄粉を含まない酸化マグネシウムを90.91%と、硫酸第一鉄9.09%からなる混合物を添加して処理した例での溶出試験の結果では、フッ素の溶出量が2.1mg/Lであるのに対し、設定登録時の請求項3に係る発明の要件を満たす、酸化マグネシウム:硫酸第一鉄:鉄粉=28:57:15とした例では、フッ素の溶出量が2.6mg/Lと多く、設定登録時の請求項3に係る発明の要件を満たす例で特有の効果が得られていないことが記載されていることから、設定登録時の請求項3に係る発明は特有の効果が得られない構成を含んで成立しており、サポート要件を有さない発明が特許されている。
(ウ)したがって、設定登録時の請求項1、3に係る発明、当該請求項1の記載を引用する請求項2、5に係る発明、及び当該請求項3の記載を引用する請求項4、5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでなく、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(4)申立理由4(明確性要件違反)
ア 設定登録時の請求項1に係る発明の「前記フッ素及び前記カドミウムを不溶化することが可能である、」における「不溶化することが可能」は明確でない。設定登録時の請求項1に係る発明では、溶出試験の評価で用いている不溶化の基準値を用いることなく、未処理の場合の溶出量と比べて処理したことで溶出量が少なくなっていれば、全て不溶化したとして扱っており、発明の効果を極めて不明確なものにしている。
また、設定登録時の請求項3に係る発明の「前記フッ素、前記カドミウム及び前記セレンを不溶化することが可能である、」の「不溶化することが可能」についても、上記と同様に、明確でない。
イ 設定登録時の請求項2、4に係る発明の「前記混合物の添加によりpHを9.5~11とすることが可能であり、」における「可能であり、」の記載について「混合物の添加により(処理物の)pHを9.5~11とすること」は、必須の要件として規定したものであるのか否かが不明である。
ウ したがって、設定登録時の請求項1~4に係る発明、当該請求項1の記載を引用する請求項2、5に係る発明、及び当該請求項3の記載を引用する請求項4、5に係る発明は、不明確であり、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 取消理由の概要
令和7年1月28日付けで通知した取消理由は、要するに、以下の(1)、(2)に示した取消理由である。
(1)取消理由1(サポート要件違反)
設定登録時の請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)取消理由2(進歩性欠如)
ア 設定登録時の請求項1、2、5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
イ 設定登録時の請求項3~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第6号証、甲第7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第5 各証拠について
1 甲第1号証について
甲第1号証には、以下のことが記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
700℃~1000℃で焼成され粉末度7000cm2/g以上に調整した酸化マグネシウムを水と共に廃石膏ボード粉に添加・混練することにより該廃石膏ボード粉を固化することを特徴とする廃石膏ボード粉の固化方法。
【請求項2】
廃石膏ボード粉に、酸化マグネシウム及び水と共に、pH調整剤を添加・混練することを特徴とする請求項1に記載の廃石膏ボード粉の固化方法。」
「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0004】
また、前記解体系廃石膏ボードから紙等を除去して粉末状にした廃石膏ボード粉をロータリーキルン等の焼成炉を用いて150℃前後で焼成し、半水石膏を作り、そのまま地盤改良材として再利用する方法もあるが、廃石膏ボード粉に含有していたフッ素や砒素等の有害物質が焼成後においても残留しているため、上記半水石膏を地盤改良材として用いた場合には、この有害物質が土壌に溶出するおそれがあるので一般的には行なわれていない。」
「【発明の効果】
【0012】
このような本発明の廃石膏ボード粉の固化方法によれば、
700℃~1000℃で焼成され粉末度7000cm2/g以上に調整した酸化マグネシウムを水と共に廃石膏ボード粉に添加・混練することにより該廃石膏ボード粉を固化することにより、
固化した当該廃石膏ボード粉から再生路盤材や骨材等を生成した場合に、これらの生成物から、廃石膏ボードに含有していたフッ素や砒素等の有害物質の溶出を長期に亘って土壌環境基準若しくはそれ以下に抑えることができることにより、解体系廃石膏ボードの有効利用に道を開くことができる。」
「【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の廃石膏ボード粉の固化方法の実施の形態について説明する。
本発明の一実施の形態に係る廃石膏ボード粉の固化方法は、700℃~1000℃で焼成され粉末度7000cm2/g以上に調整した酸化マグネシウムを、廃石膏ボードから紙等を除去した後に破砕して粉末状にした廃石膏ボード粉に添加・混合し、さらに水を加えて混練乾燥固化させるようにする。
【0016】
このように生成された固形物のうち、粒状に固化したものは再生路盤材として用い、大塊に固化したものは破砕することで再生路盤材として用いる他、再生骨材として用いることもできる。また、上記廃石膏ボード粉に酸化マグネシウム及び水を添加する際に、併せて強度増加剤を添加すれば、舗道や法面等を補強するための補強用材料、建築ブロック等の二次製品等を容易に作ることができる。
【0017】
ところで、酸化マグネシウム(MgO)には、低温焼成品と高温焼成品があるが、本実施の形態に係る廃石膏ボード粉の固化方法に用いる酸化マグネシウムとしては、廃石膏ボード粉の良好な不溶化の効果(有害物質の溶出を抑制・防止する効果)を図るため、700℃~1000℃で焼成された低温焼成品を用いることが好ましい。他方、高温焼成品の酸化マグネシウムを用いると、有害物質に対する不溶化の効果が低下することがある。
・・・
【0020】
酸化マグネシウムは水と共に、それ単独で用いることもできるが、以下に説明するように、pH調整剤や強度増加剤等の助剤を併用することができる。なお、pH調整剤や強度増加剤等は、必要に応じて、2種以上のものを併用してもよい。
【0021】
酸化マグネシウムで処理された廃石膏ボード粉のpHは、概ね9~11程度であり、廃石膏ボード粉を土壌環境基準若しくはそれ以下に固化・不溶化を図るには十分であるが、さらに中性域で処理が求められることがある。
【0022】
このような場合には、助剤として、pH調整剤を用いると効果的である。pH調整剤には、例えば、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、リン酸、第一リン酸ナトリウム、重過リン酸カルシウム、過リン酸カルシウム等を用いることができる。これらのpH調整剤は、単独又は必要に応じて2種以上を混合して用いることができる。
・・・
【0025】
pH調整剤や強度増加剤等の助剤を用いる場合には、酸化マグネシウムと助剤との質量比が(20:80)~(95:5)の範囲内に納まるように使用することが好ましい。
・・・
【0028】
次に、廃石膏ボード粉に対して、本実施の形態に係る廃石膏ボード粉の固化方法を適用したときの検証結果について説明する。
【0029】
下記の表1から表3は、廃石膏ボード粉の3つの試料それぞれに対して、本実施の形態に係る固化方法を適用したものについて、平成3年環境庁告示第46号付表に定める方法に基づく測定試験を行なったときの結果を示す表である。
・・・
【0032】
【表1】
[図:0001429008000001.jpg]
【0033】
【表2】
[図:0001429008000002.jpg]
【0034】
【表3】
[図:0001429008000003.jpg]
【0035】
上記の表1から表3に示すように、本実施の形態に係る固化方法を適用する前の3つの廃石膏ボード粉の試料それぞれは、カドミウム、セレン、フッ素のそれぞれの含有量の数値が、平成3年環境庁告示第46号別表に定める環境基準値以上の数値となっている。
【0036】
これに対して、3つの廃石膏ボード粉の試料それぞれに対し本実施の形態に係る固化方法を適用したものは、その適用の際に酸化マグネシウムを10%又は20%添加した場合のいずれにおいても、カドミウム、セレン、フッ素のそれぞれが検出されないようになるか、又は環境基準値を超えないようになっている。
【0037】
以上、本実施の形態に係る廃石膏ボード粉の固化方法は、廃石膏ボードから生成される廃石膏ボード粉に限定して適用されるものである。
【0038】
このような本実施の形態に係る廃石膏ボード粉の固化方法によれば、廃石膏ボードを再生路盤材や骨材の原料として有効利用することができる。」
2 甲第2号証について
甲第2号証には、以下のことが記載されている。
「【請求項5】
カドミウムまたはヒ素成分の単独成分もしくは2成分が環境基準値を超えて共存している公害型廃石膏類を処理対象として、もしくは請求項1ないし4記載の公害型廃石膏類の処理法によって脱フッ素処理が施されてカドミウムまたはヒ素成分が環境基準値を超えて共存している脱フッ素石膏類を処理対象として、以上の該処理対象に対して、重金属類固定化剤と水系溶媒を均質に混和して、含水固定化剤混和物を調製して、共存するカドミウムおよびヒ素成分の固定・不溶化処理を施す重金属類固定化工程に付し、カドミウムおよびヒ素成分の固定・不溶化処理が施された二水石膏、半水石膏ないし無水石膏を主成分とする無公害型石膏類を回収する公害型廃石膏類の処理法において:
上記の重金属類固定化剤が、熱履歴シリケート100質量部に対して、無水物換算でナトリウム塩化合物の5ないし110質量部、無水物換算で硫酸塩化合物の20ないし90質量部、マグネシヤないしカルシヤの零を含む60質量部未満を加えて、少なくとも系内のシリカ:アルミナ:酸化ナトリウムのモル比が1:0.5:0.5になるように調整されて均質混和されて粉粒形態でワンパック化されて、pH値10未満にある低アルカリ性が確保されており、水を介して水可溶性重金属類を取り込んで、水可溶性重金属類の固定・不溶化処理機能を発揮するアルミノケイ酸塩組成物からなる重金属類固定化剤であり;
上記の重金属類固定化剤を構成する熱履歴シリケートが、乾燥物の酸化物基準で表してシリカ成分を20ないしは80質量%、アルミナ成分を5ないしは35質量%、およびカルシヤ成分を1ないしは40質量%を含有して熱履歴を受けているアルミノケイ酸塩系化合物を主成分とする人工合成品、ゴミ・廃棄物・紙類・下水汚泥の焼却灰、高炉スラグ、セメント類、窯業関連廃材・資材もしくは火山噴出物からなる乾粉形態にあるアルミノケイ酸塩化合物を主成分とするシリケートであり;
上記の重金属類固定化剤を構成するナトリウム塩化合物が、ナトリウム金属元素の酸化物、水酸化物、ケイ酸塩、硫酸塩、アルミン酸塩ないしリン酸塩の群より選ばれる単独ないし2種以上の組み合わせの乾粉形態にあるナトリウム塩化合物であり;
上記の重金属類固定化剤を構成する硫酸塩化合物が、アルミニウム、鉄(II)ないし鉄(III)の群より選ばれる単独ないし2種以上の組み合わせからなる乾粉形態にある硫酸塩化合物であり;
上記の重金属類固定化工程が、上記の公害型廃石膏類からなる処理対象100質量部に対して、重金属類固定化剤の2ないし8質量部および水系溶媒の10ないし40質量部を加えて均質混和して、pH値で少なくとも10未満の低アルカリ性域にある含水固定化剤混和物を調製し、該含水固定化剤混和物を少なくとも常温ないしは180℃の範囲で10分間以上放置養生・脱水して処理対象に環境基準値を超えて共存する水可溶性のカドミウムないしヒ素成分をここに形成するゼオライト前駆体ないしはゼオライトに取り込み固定・不溶化処理を完成させ、系内に存在する水を揮散せしめて、二水石膏ないし半水石膏の何れかを主成分とする無公害型石膏類を回収する工程であり;
上記の公害型廃石膏類の処理法が、上記の処理対象に対して、水を伴って上記の重金属類固定化剤を加えて均質混和した含水固定化剤混和物を少なくとも常温に24時間放置養生して、処理対象に共存している水可溶性のカドミウムないしヒ素成分に固定・不溶化処理が施されて、10μmないし1mm粒径にある粉状または1ないし7mmφ粒径にある粉粒体形状にあって、pH値が8ないし10の低アルカリ性域にあってカドミウムないしヒ素成分が固定・不溶化処理の施されている二水石膏、半水石膏ないし無水石膏の何れかを主成分とする無公害型石膏類を回収する重金属類固定化工程で構成されている請求項1ないし4記載の公害型廃石膏類の処理法。」
「【請求項9】
請求項1ないし6記載の公害型廃石膏類の処理法を駆使して、予め脱フッ素処理もしくはカドミウムないしヒ素成分の固定・不溶化処理を伴う無害化処理が施された無公害型の二水石膏、半水石膏または無水石膏の何れかを主成分とする低アルカリ性域にある無公害型石膏類が有する無機質素材特性を基礎とし、無公害型石膏類に対してアルミノケイ酸塩、無機酸塩およびナトリウム塩の3者で構成される重金属類固定化体を付加均質接触混和する重金属類固定化体複合化工程に付して、乾粉状態ないし粉粒形態が確保されており、重金属類の不溶・固定化機能が付加されて石膏類の基本機能である分散展性機能、充填補強機能、水硬固化機能ないし土質造成機能を発揮させる無公害型石膏類-重金属類固定化体の複合組成物からなる無公害型石膏組成物において;
上記の重金属類固定化体が、請求項5記載の重金属類固定化剤100質量部に対して、粉末形態にあるリン元素のオキソ酸ないしは該リン元素のオキソ酸の塩化合物の5ないし20質量部ならびにメタケイ酸ナトリウムの5ないし20質量部を加えて均質混和されてワンパック化されている粉粒形態にあって、pH値として10未満が確保されており、水を介して水可溶性重金属類を取り込んで固定・不溶化する機能を発揮するアルミノケイ酸塩組成物を主成分とする重金属類固定化体であり;
上記の重金属類固定化体複合化工程が、予め脱フッ素を伴った無害化処理が施されて無公害型の二水石膏、半水石膏または無水石膏の何れかを主成分とする低アルカリ性域にある無公害型石膏類100質量部に対して、粉粒体形状にあるアルミノケイ酸塩組成物からなる重金属類固定化体の50ないし100質量部範囲で付加均質接触混和が施されて、pH値10未満であって粉粒体形状にある水可溶性重金属類の不溶・固定化機能が付与された無公害型石膏類-重金属類固定化体の複合組成物からなる無公害型石膏組成物を調製する複合化工程であり;
上記の無公害型石膏組成物が、予め脱フッ素を伴った無害化処理の施された無公害型の二水石膏、半水石膏または無水石膏の何れかを主成分とする低アルカリ性域にある無公害型石膏類に対して、重金属類固定化体複合化処理が施され、10μmないし1mmの粒径にある乾粉状ないしは1ないし7mmφ粒径にある砂粒・顆粒状の粉粒体形状にあって、pH値10未満である水可溶性重金属類の不溶・固定化機能が付加されて石膏類の基本機能を発揮する無公害型石膏類-重金属類固定化体の複合組成物として調製されていることを特徴とする無公害型石膏組成物。」
3 甲第3号証について
甲第3号証には、以下のことが記載されている。
「【請求項1】
石膏ボード廃材から再利用可能な造粒物を製造する方法であって、
石膏ボード廃材を破砕して破砕材を得る工程と、
前記破砕材から紙成分を除去する工程と、
紙成分が除去された前記破砕材に、高炉セメントB種と、水と、所定の添加剤とを加えて混合物を生成する混合工程と、
前記混合物を造粒処理して造粒物を生成する造粒工程と、を含み、
前記混合工程において、
(i)前記所定の添加剤として、pHを8以上にするためのアルカリと、還元性を有する鉄分である第一鉄とを加えて、酸化還元電位が負電位(還元雰囲気)の環境下で混合することにより、前記造粒処理によって生成される前記造粒物からの硫化水素の発生を抑制し、
(ii)前記破砕材に対して前記高炉セメントB種を15~25重量%加えることにより、前記造粒処理によって生成される前記造粒物中のヒ素及びフッ素の溶出量を環境基準以下に抑制し、さらに、
(iii)前記破砕材に対して25~50重量%でリサイクル・コンクリート(RC)40の細粒成分であるゼロ分を加えることにより、前記造粒物の圧縮強度を向上させることを特徴とする、製造方法。」
「【0029】
混合工程S3において、所定の添加剤として鉄分を添加するのは、造粒物中の硫酸カルシウムが還元されて硫化水素が発生してしまった場合に、造粒物中の鉄分と反応させて硫化鉄(FeS)として閉じ込めることにより、硫化水素が環境に放出されることを防ぐためである。鉄分を上述した硫酸第一鉄(FeSO4)によって供給した場合、同時に従来から知られているように、高炉セメントB種中の六価クロムを還元させてその溶出を抑制することができる。
【0030】
さらに、本発明者が得た実験結果によれば、鉄分を上述した硫酸第一鉄(FeSO4)によって供給した場合、造粒物中の有害な重金属(ヒ素、フッ素)のヒ素及びフッ素の溶出を抑制する効果があることが分かった。具体的には、例えば、硫酸第一鉄(FeSO4)を0.5重量%添加した場合、造粒物からのヒ素の溶出量は平均で0.0065mg/Lとなり、指定基準(環境基準)である0.01mg/Lを下回ることが判明した。同様な条件において、フッ素の溶出量は平均で0.46mg/Lとなり、指定基準(環境基準)である0.8mg/Lを下回ることが判明した。」
4 甲第4号証について
甲第4号証には、以下のことが記載されている。
「【請求項1】
酸化マグネシウム含有率が75質量%以上であり、未燃カーボン含有率が1.0質量%以下であり、BET比表面積が20~50m2/gであり、かつ水溶性苦土含有率が1.0~2.0質量%であり、鉛、六価クロム、水銀、カドミウム、砒素、セレン、フッ素およびホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の物質を不溶化することを特徴とする不溶化剤。」
「【請求項7】
請求項1~4の何れか1項記載の不溶化剤および/又は請求項5記載の不溶化剤組成物を、廃石膏ボード、焼却灰、煤塵、ガラス、陶磁器くず、建設廃材、スラッジ、金属くずおよび鉱滓から選ばれる少なくとも一種以上である廃棄物100質量部に対して、1~30質量部添加し、混合して、廃棄物に含まれる鉛、六価クロム、水銀、カドミウム、砒素、セレン、フッ素およびホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の有害物質を不溶化する、有害物質の不溶化方法。」
「【0035】
また、本発明の不溶化剤は、本来の酸化マグネシウムの有害物質の不溶化効果を損なわない範囲で、炭酸カルシウム、石灰石粉、珪石粉、高炉スラグ、製鋼スラグ、脱硫スラッジ、硫化カルシウム、シリカ、フライアッシュ、ベントナイト、カオリン、バーミュキュライト、ハイドロタルサイト、ハイドロカルマイト、硬焼マグネシア、死焼マグネシア、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、パーライト、珪藻土、ゼオライト、セピオライト、アパタイト、アタパルジャイト、活性炭、ホワイトカーボン、各種石膏、アルミナセメント、キレート、鉄粉等の各種添加剤と任意に混合して不溶化剤組成物にすることができる。各種添加剤の混合量は、特に限定されないが、通常、不溶化剤組成物全量に対して、好ましくは5~90質量%であり、より好ましくは10~80質量%であり、更に好ましくは20~70質量%であり、特に好ましくは30~65質量%であり、最も好ましくは40~60質量%である。」
「【0062】
【表1】
[図:0001429008000004.jpg]
」
5 甲第5号証について
甲第5号証には、以下のことが記載されている。
「[0033] 本発明の有害物質不溶化剤は、鉄含有化合物及びアルミニウム含有化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましい。これらの化合物を含有することで、強アルカリ性を示す有害固形物であっても不溶化することができる。
[0034] 鉄含有化合物としては、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、及びこれらの水和物、鉄粉等が挙げられる。なかでも、硫酸第一鉄1水和物が好ましい。鉄含有化合物は、有害物質不溶化剤中に3~30質量%含有されていることが好ましく、5~10質量%含有されていることがより好ましい。3質量%以上含有されていることで、鉄化合物による吸着作用や溶出pHを下げることができる。また、30質量%以下含有されていることで、材料の固結を防止することができる。」
6 甲第6号証について
甲第6号証には、以下のことが記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0005】
そこで、本発明は、従来の不溶化剤よりも更に砒素やセレンの不溶化効果が高い不溶化剤および不溶化処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、軽焼酸化マグネシウムを必須成分とする無機質粉末組成物に、特定量以上のマンガンを含む硫酸第一鉄を添加して得られた不溶化剤が、従来の不溶化剤よりもヒ素やセレンの不溶化効果がより高いことを見出し、本発明を完成するに至った。」
「【発明を実施するための形態】
・・・
【0019】
軽焼酸化マグネシウム中のMgO含有率は80質量%以上、かつCaO含有率は3質量%以下であることが好ましい。軽焼酸化マグネシウム中のMgO含有率は85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、95質量%以上が特に好ましい。MgO含有率が80質量%以上であれば、処理土の周辺環境(地下水等)のpH緩衝能が低下する恐れがなく、また不溶化性能が低下する恐れがないため好ましい。
また、軽焼酸化マグネシウム中のCaO含有率は2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が特に好ましい。CaO含有率が3質量%以内であれば、処理土の周辺環境(地下水等)のpHがアルカリ性になる恐れがなく、または不溶化性能が低下する恐れがないため好ましい。
・・・
【0023】
本発明の不溶化剤には、汚染土壌の性状に応じて、また本来の不溶化性能を損なわない範囲で、石灰石粉、珪石粉、硫酸アルミニウム、ハイドロタルサイト、ハイドロカルマイト、炭酸マグネシウム、セピオライト、キレート、鉄粉、塩化第一鉄、パーライト,廃瓦などの各種添加剤を任意に添加、混合することができる。なお、各種添加剤の添加、混合については、事前の室内配合試験の結果および/又は現地混合機を使用した配合試験の結果によって決定するのが好ましい。
【0024】
<不溶化処理方法>
本発明の不溶化処理方法は、上記不溶化剤を、土壌1m3に対して20~200kg添加し、混合して、土壌中の有害物質を不溶化することを含む。
【0025】
処理対象土壌に含まれる有害物質は、鉛、六価クロム、水銀、カドミウム、ヒ素、セレン、フッ素およびホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の物質である。本発明の不溶化剤は、処理対象土壌に含まれるヒ素およびセレンから選択される少なくとも1種を不溶化する効果に優れ、処理対象土壌からのヒ素およびセレンから選択される少なくとも1種の溶出量を、低コストで効率的に土壌溶出量基準以下まで低減することができる。」
「【実施例】
・・・
【0032】
【表1】
[図:0001429008000005.jpg]
・・・
【0035】
[硫酸第一鉄の化学組成]
使用した硫酸第一鉄の化学組成を表3に示す。硫酸第一鉄の化学組成は、塩酸で溶解および残渣がある場合は炭酸ナトリウムとほう素の合剤にてアルカリ溶融して調製した溶液を用いて、FeOは吸光光度計(日立社製,U-2800A)を用い、SO3は重量法(硫酸バリウム沈殿生成)を用い、MnOは原子吸光分光光度計(島津製作所製,AA-6300)またはICP(日立社製,Z-5000またはZ-2710)を用いて、それぞれ測定した。」
7 甲第7号証について
甲第7号証には、以下のことが記載されている。
「【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の有害物質の不溶化剤について詳細に説明する。
【0028】
本発明の有害物質の不溶化剤は、酸化マグネシウムと珪酸アルカリ金属塩とを基本組成として含有する。そして、重金属等の有害物質で汚染された土壌,有害物質を含有するごみ,製紙スラッジ,下水汚泥,石炭等の飛灰及び燃え殻,高炉スラグ,ガス化炉のスラグ等の焼却灰などの被処理物に加え、加水して混練することによって、酸化マグネシウムの水和と珪酸アルカリ金属塩との固化反応、空気との接触による炭酸化により硬化する作用を利用して、有害物質を土壌等に固定,不溶化する。
・・・
【0040】
なお、本発明の有害物質不溶化剤はさらに還元剤を含有してもよい。この添加量は酸化マグネシウム100質量部に対して100質量部以下、好ましくは50質量部以下である。ここで還元剤とは、二価の硫酸鉄、塩化鉄、水酸化鉄など鉄化合物、金属鉄粉、硫化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどがある。また、これらの一部は本発明では同時に無機硫酸化合物や吸着剤としても用いることができる。本発明の不溶化剤組成に還元剤を添加することで、六価クロム、ヒ素、セレンなどの不溶化に大きな効果を発揮する。
・・・
【0043】
本発明の有害物質の不溶化剤は、10質量%以下の添加割合で弱酸性から中性を呈する被処理物と混練したときのpHが11.5以下となり、低アルカリ条件下で、被処理物中の有害物質を固定,不溶化することが可能である。これにより、特に鉛、ヒ素、六価クロムの不溶化効果を高め、さらに不溶化効果の長期間安定性を保持することができる。また、低アルカリ条件であるため、pH3~11の範囲で良好な吸着特性を有するゼオライト,アロフェン,イモゴライトなどの吸着剤の吸着特性を損なうことがなく、また、有機成分からなる重金属用キレート剤などへの影響も少ない。」
「【実施例1】
・・・
【0054】
なお、仮焼マグネシアは、馬居化成工業(株)製の中国産仮焼マグネシア(MgO:92.4%、CaO:2.1%、Cl:2.0%、Fe2O3:0.6%、Al2O3:0.2%、325メッシュ通過95%)を用いた。また、水ガラス3号は富士化学(株)製JIS K1408を用い、仮焼明礬石は、東海工業(株)製(SiO2:57.4%、Al2O3:12.1%、Fe2O3:0.4%、SO3:11.1%、K2O:1.6%、Na2O:0.8%、CaO:0.3%、粉末度3000ブレーン)を600℃で焼成して得たものを用いた。
・・・
【実施例7】
・・・
【0079】
【表10】
[図:0001429008000006.jpg]
」
8 甲第8号証について
甲第8号証には、以下のことが記載されている。
硫酸第一鉄の配合比は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、無機系固化剤100質量部に対し、5~50質量部の割合で配合される。硫酸第一鉄が、このような割合で配合されると、泥土処理剤中の無機系固化剤(焼石膏)から硫化水素が発生することが抑制される。」
第6 当審の判断
1 サポート要件違反(取消理由1、申立理由3)について
(1)サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定するいわゆるサポート要件に適合するものであるか否かについては、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくても当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
そこで、上記観点に立って、以下検討する。
(2)本件特許請求の範囲の記載
本件特許請求の範囲の記載は、上記第3のとおりである。
(3)本件明細書の発明の詳細な説明、本件図面の記載
ア 本件明細書の発明の詳細な説明には、次の各記載がある。
「【0001】
本発明は、二水石膏の不溶化方法、半水石膏の不溶化方法、石膏組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本では40年以上経過する家屋解体が進み建築材の内装材として廃石膏ボードが大量に発生するとされている。しかし、廃石膏ボード由来の再生石膏粉の一部は再生製品としてリサイクルされているがそれほど進んでいないのが現状である。また、特定の廃石膏ボードにはヒ素やカドミウムなどの重金属を高濃度で含有するものもあるため、その不溶化処理が必要である。例えば、特許第4802255号公報(特許文献1)には、硫化水素が発生しにくい石膏組成物が記載されているが、廃石膏に含まれる重金属の不溶化に関しては特段の言及がない。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明に係る具体的態様は、廃石膏から溶出する重金属などの不溶化処理技術を提供することを目的の1つとする。
本発明に係る具体的態様は、重金属などの溶出が抑えられた石膏組成物を提供することを他の目的の1つとする。」
「【0012】
図2は、本試験で使用する廃石膏のそれぞれにおけるフッ素及び重金属の含有量及び溶出量の一覧を示す図である。なお、含有量は、底質調査方法(試験方法:再生石膏粉の有効利用ガイドライン(第一版)参照」)による。また、溶出量は、環境庁告示46号溶出試験による。本明細書でいう「重金属」とは、ヒ素、セレン、カドミウム及び鉛である。廃石膏A、Bはそれぞれ二水石膏であり、廃石膏a、bは半水石膏である。
【0013】
フッ素及び重金属の各々の含有量は、土壌汚染対策法(以下、「土対法」と略称する)及び肥料取締法(以下、「肥料法」と略称する)と底質調査方法では試験方法が異なり単純に比較することは困難であるが結果はいずれも基準未満であった。
【0014】
これに対して、溶出量については廃石膏A,B,a,bの全てにおいてフッ素が基準超過であった。ヒ素及びセレン、カドミウムが土壌環境基準を超過する廃石膏も見られた。
【0015】
また、pHは中性からpH9.5未満であり、硫黄還元菌による硫化水素発生を抑制するとされるpH9.5以上とするにはアルカリ剤の添加が必要である。なお、試験に用いた廃石膏では管理型埋め立て基準を超過するものはなかった。
【0016】
次に、主体(主剤)となる不溶化薬剤の選定について説明する。
主体となる不溶化薬剤を選定するにはその添加量と不溶化の効果を評価する必要がある。廃石膏はフッ素を含有しその溶出量は土壌環境基準を満たさないことが資源化の足枷となっていることも踏まえ、不溶化に最良な薬剤を決定するためフッ素の溶出量が高い廃石膏A(二水石膏)を用いて薬剤効果の比較を行った。
・・・
【0020】
酸化マグネシウムは、重金属の溶出基準及びpH9.5以上の条件を満たすがフッ素の溶出量が基準超過であるため、他の薬剤と併用することによりフッ素の溶出抑制を検討する必要がある。
・・・
【0025】
以上の結果より、フッ素及び重金属の溶出基準、pH9.5以上のすべてを満たす薬剤はなかった。しかし、使用した薬剤の中では酸化マグネシウムがフッ素及びカドミウムを不溶化し、pH12以上の高アルカリとならないため鉛も再溶解せず硫化水素の発生も抑制される。従って、酸化マグネシウムを主剤とすることが望ましいという結果が得られた。
【0026】
上記の実験結果より、主剤とする酸化マグネシウムに対する助剤(第1助剤)の候補として、図6に示すように、鉄系薬剤(硫酸第一鉄、酸化鉄)、フッ素の不溶化効果が見られるリン酸カルシウム系薬剤、一般的なフッ素処理薬剤のアルミニウム塩(硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム)の各々について、酸化マグネシウム単独で処理した場合と比較することで薬剤効果の比較を行った。なお、上記と同様に、廃石膏A(二水石膏)を用いて実験を行った。
【0027】
図7は、各薬剤の混合割合とフッ素及び重金属の溶出量を示す図である。なお、ホウ素と六価クロムについては処理前後のすべての結果で基準未満となったため溶出量の記載を省略している。廃石膏Aに酸化マグネシウムを単独で加えて処理するよりも、一定の割合の硫酸第一鉄を添加した方がフッ素の溶出量が減少する傾向が見られた。具体的には、廃石膏Aに対する硫酸第一鉄の割合(質量比)が30%の場合には、当該割合が5%、10%、15%の場合に比べてフッ素の溶出量が増加する傾向が見られた。つまり、硫酸第一鉄の添加量は多すぎてもフッ素に対する不溶化の効果は低くなる傾向が見られた。ここでの検討では、最適な混合割合は、廃石膏Aに対する質量比で、酸化マグネシウム15%とした場合の硫酸第一鉄の質量比が少なくとも5~15%の範囲であるといえる。ただし、硫酸第一鉄の質量比を30%とした場合でも、未処理(処理前)の状態での廃石膏Aに比べればフッ素の溶出量は低下しており、ある程度の不溶化の効果は得られるといえる。
【0028】
一方、酸化マグネシウムに一定の割合の酸化鉄を添加した場合、酸化マグネシウムを単独で用いる場合に比べてフッ素の溶出量は増加した。また、酸化マグネシウムに一定の割合のリン酸カルシウム系を添加した場合、酸化マグネシウムを単独で用いた場合とフッ素の溶出量は同程度であった。リン酸カルシウム系を用いたフッ素不溶化時の最適pHは中性付近であるとされるため、酸化マグネシウムを添加したことでpHが上昇し更なるフッ素不溶化効果が見られなかったと予測される。
【0029】
酸化マグネシウムに一定割合の硫酸アルミニウムを添加した場合、酸化マグネシウムを単独で用いる場合に比べてフッ素の溶出量は若干の低下又は同程度であった。しかし、硫酸アルミニウムの割合を多くするとフッ素の溶出量が増加する傾向が見られ、最適な混合割合は、廃石膏Aに対する質量比で、酸化マグネシウム15%に対して硫酸アルミニウムが5%程度であった。
【0030】
酸化マグネシウムに一定割合の酸化アルミニウムを添加した場合、酸化マグネシウムを単独で用いる場合に比べてもフッ素の溶出量は同程度又はそれ以上であった。
【0031】
主剤を酸化マグネシウムとし、第1助剤の候補として種々の薬剤を添加した結果、すべての薬剤及び添加量でカドミウムの不溶化が可能であったがフッ素の不溶化効果は薬剤によって異なる傾向が見られた。なかでも、主剤を酸化マグネシウムとした場合、第1助剤として一定範囲の質量比で硫酸第一鉄を添加することによりフッ素の不溶化促進及びカドミウムの不溶化が可能であり、かつpHが9.5~11程度に抑えられるため鉛の再溶解が抑制されると同時に硫化水素の発生抑制も可能であると考えられる。
【0032】
以上の結果を踏まえ、酸化マグネシウムを主剤とし、硫酸第一鉄を第1助剤として用いることが好ましいといえる。廃石膏は、原料及び製造場所、製造年度等によってその含有量及び溶出量が様々であるが、フッ素、ヒ素、カドミウム、鉛のほか、セレンの溶出が見られる場合がある。廃石膏中でのセレンの存在形態は不明であるが、溶解性のセレンにはセレン(IV)[亜セレン酸]とセレン(VI)[セレン酸]があり、共沈法を用いる場合はセレン(VI)を還元しなければ不溶化効果が低い。そこで、セレンの溶出基準が超過した廃石膏aを用いて、酸化マグネシウムと硫酸第一鉄によるセレンの不溶化効果が見られるか実験を行った。また、第2助剤として鉄粉及びカルシウムとアルミニウムの焼成物I、IIの各々についてセレン及びフッ素、ヒ素、カドミウムの不溶化が可能か実験を行った。次に、主剤の酸化マグネシウム及び第1助剤の硫酸第一鉄に対する第2助剤の候補として、図8に、主剤、第1助剤、及び第2助剤の各薬剤の一覧を示す。なお、使用した廃石膏aの溶出量は、フッ素15mg/L、ヒ素0.013mg/L、セレン0.023mg/L、カドミウム0.058mg/Lであり、それぞれ基準超過である。
【0033】
図9は、各薬剤の混合割合とフッ素及び重金属の溶出量を示す図である。主剤の酸化マグネシウムは廃石膏aに対する質量比で0%又は10%、第1助剤の硫酸第一鉄は廃石膏aに対する質量比で0%又は1%とし、第2助剤の各候補については廃石膏aに対する質量比で0~20%とした。なお、ホウ素と六価クロムについては処理前後のすべての結果で基準未満となったため溶出量の記載を省略している。
【0034】
酸化マグネシウムを10%かつ硫酸第一鉄を0%とした場合、又は酸化マグネシウムを10%かつ硫酸第一鉄を1%とした場合、ヒ素とカドミウムは溶出基準未満であり、他方でセレンは若干減少したものの基準未満とはならなかった。フッ素については硫酸第一鉄を添加すると溶出量が抑制される傾向が見られた。pHは10程度となった。
【0035】
鉄粉のみを1%、5%、10%添加とした場合、ヒ素、セレン、カドミウムの溶出量は、鉄粉1%以上で基準未満となり、フッ素の溶出量は未処理の場合と同程度であった。pHは未処理の場合とほぼ同程度の中性であった。
【0036】
酸化マグネシウムを10%かつ鉄粉を1%、5%、10%添加とした場合、セレンの溶出量は鉄粉が5%以上で基準未満、フッ素の溶出量は酸化マグネシウム単独で用いる場合よりも若干高くある傾向が見られた。ヒ素とカドミウムの溶出量については鉄粉の有無によらず基準未満であり、pHは10~11程度であった。
【0037】
酸化マグネシウムを10%、硫酸第一鉄を1%かつ鉄粉を1%、5%、10%、20%添加とした場合、セレンの溶出量は鉄粉が5%以上で基準未満となった。フッ素の溶出量は、鉄粉を1~20%添加してもほとんど変わらなかった。なお、ヒ素とカドミウムの溶出量については鉄粉の有無によらず基準未満であり、pHは10程度であった。
【0038】
酸化マグネシウムを10%、硫酸第一鉄を1%、カルシウムとアルミニウムの焼成物I、IIをそれぞれ1%、5%の添加とした場合、フッ素の溶出量は未処理の場合と同程度であり、セレンの溶出量は減少するが基準未満とはならなかった。また、カルシウムとアルミニウムの焼成物IIについては添加量を多くするとpHが12以上となり、鉛が再溶解した。
【0039】
以上の結果より、酸化マグネシウム、又は酸化マグネシウムと硫酸第一鉄を用いることでヒ素、カドミウムの不溶化処理が可能であるが、他方、セレンに対しては若干の溶出抑制効果が見られるものの基準未満とはならなかった。また、鉄粉のみを用いた場合、ヒ素及びセレン、カドミウムの不溶化効果が見られたがフッ素の不溶化効果は見られなかった。しかし、酸化マグネシウム、硫酸第一鉄及び鉄粉を混合するとフッ素及びヒ素、セレン、カドミウムを同時に不溶化することが可能であり、pHは最大でも11程度に抑えられるため鉛の再溶解及び硫化水素の発生抑制も可能である。従って、セレンが基準超過する廃石膏に対しては、主剤として酸化マグネシウム、第1助剤として硫酸第一鉄、第2助剤として鉄粉を用いることが好ましいといえる。
【0040】
次に、主剤(酸化マグネシウム)と第1助剤(硫酸第一鉄)を用いた最適混合割合について検討した。上記の実験から、添加する薬剤(混合物)の全体質量に対する硫酸第一鉄の質量比を25%~50%とした場合にフッ素の溶出量の抑制に効果が見られた。そこで、添加する薬剤の全体質量に対して硫酸第一鉄の質量比を12%~67%の範囲で設定し、これに対する残部としての酸化マグネシウムの質量比を88%~33%の範囲で設定し、それぞれの質量比による薬剤を用い、廃石膏A、Bに添加した際の不溶化効果と最適な添加量を評価した。具体的には、図10に示すように、酸化マグネシウムと硫酸第一鉄の質量割合を88:12、75:25、60:40、33:67の4通りに設定して評価を行った。なお、廃石膏A、Bはセレンの溶出量が基準未満の試料である。
【0041】
図11は、廃石膏A(二水石膏)の試験結果を示す図である。廃石膏Aの溶出量はフッ素とカドミウムについて基準超過であり、具体的にはフッ素15mg/L、カドミウム0.022mg/Lである。主剤と第1助剤の混合薬剤(混合物)の添加量は廃石膏Aに対する質量比で20%又は30%とした。図中の判定結果「○」は土壌環境基準未満又はpH9.5以上、判定結果「△」は土壌環境基準超過又はpH9.5未満を示す。なお、ホウ素と六価クロムについては処理前後のすべての結果で基準未満となったため記載を省略している。
【0042】
図示の結果より、混合薬剤(混合物)を30%の割合で添加した場合、フッ素及びカドミウムが基準未満となった。しかし、硫酸第一鉄の質量比が40%ないし67%と高い場合、pHが低下し、フッ素の溶出量が高くなる傾向が見られた。いずれにしても、未処理の場合との比較ではフッ素の溶出量が低下していた。酸化マグネシウムと硫酸第一鉄の質量割合を88:12又は75:25とした混合薬剤(混合物)を廃石膏Aに対する質量比で30%添加した場合には、基準未満かつpH9.5以上となった。なお、カドミウムの溶出量はすべての場合で基準未満であった。
【0043】
図12は、廃石膏B(二水石膏)の試験結果を示す図である。廃石膏Bの溶出量はフッ素について基準超過であり、具体的にはフッ素3.6mg/Lである。主剤と第1助剤の混合薬剤(混合物)の添加量は廃石膏Bに対する質量比で10%又は15%とした。なお、図中の判定結果「○」は土壌環境基準未満又はpH9.5以上、判定結果「△」は土壌環境基準超過又はpH9.5未満を示す。なお、ホウ素と六価クロムについては処理前後のすべての結果で基準未満となったため記載を省略している。
【0044】
図示の結果より、酸化マグネシウムと硫酸第一鉄の質量割合を88:12又は75:25とした薬剤(混合物)を廃石膏Bに対する質量比で10%添加とした場合、フッ素が基準未満かつpH9.5以上となった。また、酸化マグネシウムと硫酸第一鉄の質量割合を88:12、75:25又は60:40とした混合薬剤(混合物)を廃石膏Bに対する質量比で15%添加とした場合、フッ素が基準未満かつpH9.5以上となった。しかし、酸化マグネシウムと硫酸第一鉄の質量割合を33:67とした場合、すなわち硫酸第一鉄の割合を増加させた場合には、pHが低下しフッ素の溶出量が高くなる傾向が見られた。処理前との比較では、pHが大きく変化することはなく、またフッ素の溶出量も低下していた。つまり、実施例で示した質量割合のいずれとした場合でも、処理前との比較では改善効果が得られているといえる。なお、混合割合は代表的な数値例であり、得られたデータの傾向から特定の混合割合において特異的な変化を呈する傾向は見られないことから、混合割合については以下のことがいえる。すなわち、混合物の質量に対する比で、硫酸第一鉄を12%以上67%以下の範囲で設定し、残部を酸化マグネシウムとすることにより、廃石膏から溶出する重金属などの不溶化を実現できる。
【0045】
次に、主剤(酸化マグネシウム)、第1助剤(硫酸第一鉄)及び第2助剤(鉄粉)を用た場合の最適混合割合について検討した。上記の実験から、添加する薬剤の全体質量に対する鉄粉の質量比を31%~65%とした場合にフッ素及びヒ素、セレン、カドミウムの溶出量の抑制に効果が見られた。そこで、添加する薬剤(混合物)の全体質量に対して酸化マグネシウムの質量比を85%~13%の範囲で設定し、硫酸第一鉄の質量比を5%~65%の範囲で設定し、鉄粉の質量比を3%~60%の範囲で設定し、それぞれの質量比による薬剤を用い、廃石膏a、bに添加した際の不溶化効果と最適な添加量を評価した。具体的には、図13に示すように、酸化マグネシウム、硫酸第一鉄及び鉄粉の質量割合を設定した。なお、廃石膏a、bはセレンの溶出量が基準超過の試料である。
【0046】
図14及び図15は、廃石膏a(半水石膏)の試験結果を示す図である。処理前の廃石膏aの溶出量はフッ素、ヒ素、セレン及びカドミウムについて基準超過であり、具体的にはフッ素15mg/L、ヒ素0.013mg/L、セレン0.023mg/L、カドミウム0.058mg/Lである。主剤、第1助剤及び第2助剤からなる薬剤(混合物)の添加量は廃石膏aに対する質量比で40%とした。図中の判定結果「○」は土壌環境基準未満又はpH9.5以上、判定結果「△」は土壌環境基準超過又はpH9.5未満を示す。なお、ホウ素と六価クロムについては処理前後のすべての結果で基準未満となったため記載を省略している。
【0047】
図示の結果より、酸化マグネシウム、硫酸第一鉄及び鉄粉の質量比を75:10:15とした場合並びに64:21:15とした場合において、フッ素、ヒ素、セレン及びカドミウムのすべての場合で基準未満であった。フッ素については、硫酸第一鉄の割合が増加すると溶出量が増加し、鉄粉の割合による差は見られなかった。セレンについては、硫酸第一鉄の割合が多くても溶出量は減少せず、鉄粉の割合が多いほうが溶出量が減少する傾向が見られた。具体的には、鉄粉の質量比を60%まで増やしてもセレンの溶出量が減少した。また、鉄粉の質量比を60%まで増やしてもフッ素の溶出量にはほとんど影響がなかった。なお、ヒ素及びカドミウムに対してはすべての混合割合で不溶化効果が見られ、pHについては硫酸第一鉄の混合割合が少ない場合、具体的には酸化マグネシウム、硫酸第一鉄及び鉄粉の質量比が84:11:5の場合、71:24:5の場合、57:38:5の場合、75:10:15の場合、64:21:15の場合、62:8:30の場合、35:5:60の場合で9.5以上であった。なお、混合割合は代表的な数値例であり、得られたデータの傾向から特定の混合割合において特異的な変化を呈する傾向は見られないことから、混合割合については以下のことがいえる。すなわち、混合物の質量に対する比で、硫酸第一鉄を5%以上65%以下の範囲で選択される第1値にするとともに鉄粉を3%以上60%以下の範囲で選択される第2値とし、かつ第1値と第2値の合計値の混合物の質量に対する比が15%以上87%以下となるようにし、残部を酸化マグネシウムとすることにより、廃石膏から溶出する重金属などの不溶化を実現できる。
【0048】
図16は、廃石膏b(半水石膏)の試験結果を示す図である。廃石膏bの溶出量はフッ素及びセレンについて基準超過であり、具体的にはフッ素4.7mg/L、セレン0.011mg/Lである。主剤、第1助剤及び第2助剤からなる混合薬剤(混合物)の添加量は廃石膏bに対する質量比で10%とした。図中の判定結果「○」は土壌環境基準未満又はpH9.5以上、判定結果「△」は土壌環境基準超過又はpH9.5未満を示す。なお、ホウ素と六価クロムについては処理前後のすべての結果で基準未満となったため記載を省略している。
【0049】
図示の結果より、酸化マグネシウム、硫酸第一鉄及び鉄粉の質量比を85:12:3とした場合、73:24:3とした場合、58:39:3とした場合、84:11:5とした場合、71:24:5とした場合並びに57:38:5とした場合においてフッ素及びセレンが基準未満となった。フッ素及びセレンは、硫酸第一鉄の割合が増加すると溶出量が増加し、鉄粉の割合による差は見られなかった。pHについては硫酸第一鉄の混合割合が少ない場合、具体的には酸化マグネシウム、硫酸第一鉄及び鉄粉の質量比を85:12:3とした場合、73:24:3とした場合、58:39:3とした場合、84:11:5とした場合、71:24:5とした場合並びに57:38:5とした場合において9.5以上であった。」
イ 本件図面には、次の記載がある。
「【図7】
[図:0001429008000007.jpg]
」
「【図9】
[図:0001429008000008.jpg]
」
「【図11】
[図:0001429008000009.jpg]
【図12】
[図:0001429008000010.jpg]
」
「【図14】
[図:0001429008000011.jpg]
【図15】
[図:0001429008000012.jpg]
【図16】
[図:0001429008000013.jpg]
」
(4)サポート要件の充足性
ア 本件発明の課題について
本件発明の課題に関して、発明の詳細な説明には、上記(3)アによれば、「廃石膏から溶出する重金属などの不溶化処理技術を提供することを目的の1つとする」こと(【0004】)、「酸化マグネシウムは、重金属の溶出基準及びpH9.5以上の条件を満たすがフッ素の溶出量が基準超過であるため、他の薬剤と併用することによりフッ素の溶出抑制を検討する必要がある」こと(【0020】)が記載されている。
また、本件特許の出願時前に公開している甲第1号証(特開2010-201320号公報)の【0012】には、上記第5の1に摘記したとおり、「このような本発明の廃石膏ボード粉の固化方法によれば、700℃~1000℃で焼成され粉末度7000cm2/g以上に調整した酸化マグネシウムを水と共に廃膏ボード粉に添加・混練することにより該廃石膏ボード粉を固化することにより、固化した当該廃石膏ボード粉から再生路盤材や骨材等を生成した場合に、これらの生成物から、廃石膏ボードに含有していたフッ素や砒素等の有害物質の溶出を長期に亘って土壌環境基準若しくはそれ以下に抑えることができることにより、解体系廃石膏ボードの有効利用に道を開くことができる。」と記載されている。つまり、廃石膏ボード粉に酸化マグネシウムを添加・混練することで、廃石膏ボードに含有していたフッ素や砒素等の有害物質の溶出を抑えることができることは、本件特許の出願時点における本技術分野の技術水準である。
これらを踏まえると、本件発明の課題は、廃石膏から溶出するフッ素及び重金属の不溶化処理技術において、廃石膏に酸化マグネシウムを添加するよりもフッ素及び重金属の溶出量を低減できる不溶化処理技術を提供することであるといえる。
イ 本件発明1について
(ア)発明の詳細な説明には、本件図面を参酌すると、廃石膏A(二水石膏)に対して酸化マグネシウムを添加割合(廃石膏に対する質量比。以下同様。)15%で添加することに加えて、硫酸第一鉄を添加割合5%、10%、15%で添加した、すなわち、酸化マグネシウム及び硫酸第一鉄の混合物に対する硫酸第一鉄の混合割合が25%、40%、50%で添加した二水石膏の不溶化方法の具体例が記載され、これらの具体例のフッ素溶出量は、それぞれ1.1mg/L、1.2mg/L、1.6mg/Lであり、廃石膏Aに酸化マグネシウムのみを添加割合15%で添加した不溶化方法(以下「比較不溶化方法1」という。)のフッ素溶出量(1.9mg/L)より低いこと、さらに、具体例のカドミウム溶出量が、いずれも0.003mg/L未満となっており、比較不溶化方法1のカドミウム溶出量(0.003mg/L未満)と同程度となっていることが記載されている(上記(3)【0027】~【0032】、【図7】)。
また、発明の詳細な説明には、廃石膏A、B(二水石膏)に対する薬剤の添加割合が10~20%であり、薬剤における酸化マグネシウムと硫酸第一鉄との混合割合を88:12、75:25、60:40に変化した二水石膏の不溶化方法のフッ素、カドミウム等の溶出量が記載され、上記比較不溶化方法1のフッ素溶出量(1.9mg/L)より低く、カドミウム溶出量(0.003mg/L未満)と同程度となることが記載されている(上記(3)の【0041】~【0044】、【図11】、【図12】)。
(イ)上記アの記載によれば、当業者において、二水石膏の廃石膏に対して酸化マグネシウムと硫酸第一鉄の混合物を添加することを含み、前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を12%~50%とし、残部を酸化マグネシウムとする、二水石膏の不溶化方法は、酸化マグネシウムのみ添加する不溶化方法と比べて、フッ素溶出量を低く、カドミウム溶出量を同程度にできること、すなわち、本件発明の課題を解決できることを認識できる。
(ウ)これに対して、本件発明1は、「前記二水石膏に対して酸化マグネシウムと硫酸第一鉄の混合物を添加することを含み、前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を12%~50%とし、残部を酸化マグネシウムとするものであって」と特定されており、上記(イ)での検討のとおり、当業者において、発明の詳細な説明の記載又は出願時の技術常識に照らして、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
よって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものである。
ウ 本件発明2、5について
請求項1の記載を引用する本件発明2、5も、上記イと事情は同じである。
したがって、本件発明2、5も、発明の詳細な説明に記載したものである。
エ 本件発明3について
(ア)発明の詳細な説明には、本件図面を参酌すると、廃石膏a(半水石膏)に対して酸化マグネシウムを添加割合10%で添加することに加えて、硫酸第一鉄を添加割合1%、鉄粉を添加割合1~20%で添加した、すなわち、酸化マグネシウム、硫酸第一鉄及び鉄粉の混合物に対する硫酸第一鉄の混合割合が約4.7~約8.3%、鉄粉の混合割合が約8.3~約48%、硫酸第一鉄及び鉄粉の合計混合割合が約17~約52%で添加した半水石膏の不溶化方法の具体例が記載され、これらの具体例のフッ素溶出量は2.0~2.5mg/L、セレン溶出量は0.01mg/L未満あるいは0.013mg/Lであり、廃石膏aに酸化マグネシウムのみを添加割合10%で添加した不溶化方法(以下「比較不溶化方法2」という。)のフッ素溶出量(2.8mg/L)、セレン溶出量(0.016mg/L)より低いこと、具体例のカドミウム溶出量は0.003mg/L未満であり、比較不溶化方法2のカドミウム溶出量(0.003mg/L未満)と同程度となっていることが記載されている(上記(3)【0033】~【0039】、【図9】)。
また、発明の詳細な説明には、廃石膏a、b(半水石膏)に対する薬剤の添加割合が10~40%であり、薬剤における酸化マグネシウムと硫酸第一鉄と鉄粉の混合割合を84:11:5、71:24:5、57:38:5、75:10:15、64:21:15、51:34:15、28:57:15、62:8:30、52:18:30、42:28:30、35:5:60、30:10:60、85:12:3、73:24:3、58:39:3、32:65:3、84:11:5、57:38:5、31:64:5に変化した半水石膏の不溶化方法のフッ素、セレン、カドミウム等の溶出量が記載され、上記比較不溶化方法2のフッ素溶出量(2.8mg/L)、セレン溶出量(0.016mg/L)より低く、カドミウム溶出量(0.003mg/L未満)と同程度となることが記載されている(上記(3)の【0046】~【0049】、【図14】~【図16】)。
さらに、発明の詳細な説明には、「鉄粉の質量比を3%~60%の範囲で設定し、それぞれの質量比による薬剤を用い、廃石膏a、bに添加した際の不溶化効果と最適な添加量を評価した。」と記載されている(【0045】)。
(イ)上記アの記載によれば、当業者において、前記半水石膏に対して酸化マグネシウム、硫酸第一鉄及び鉄粉の混合物を添加することを含み、前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄の混合割合を5%以上57%以下の範囲とし、前記鉄粉の混合割合を3%以上60%以下の範囲とし、前記硫酸第一鉄と前記鉄粉の合計混合割合を15%以上72%以下とし、残部を酸化マグネシウムとする、半水石膏の不溶化方法は、酸化マグネシウムのみ添加する不溶化方法と比べて、フッ素溶出量とセレン溶出量を低く、カドミウム溶出量を同程度にできること、すなわち、本件発明の課題を解決できることを認識できる。
(ウ)これに対して、本件発明3は、「前記半水石膏に対して酸化マグネシウム、硫酸第一鉄及び鉄粉の混合物を添加することを含み、前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を5%以上57%以下の範囲で選択される第1値にするとともに前記鉄粉を3%以上60%以下の範囲で選択される第2値とし、かつ前記第1値と前記第2値の合計値の前記混合物の質量に対する比が15%以上72%以下となるようにし、残部を酸化マグネシウムとするものであって」と特定されているところ、上記(イ)での検討のとおり、当業者において、発明の詳細な説明の記載又は出願時の技術常識に照らして、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
よって、本件発明3は、発明の詳細な説明に記載したものである。
オ 本件発明4、5について
請求項3の記載を引用する本件発明4、5も、上記エと事情は同じである。
したがって、本件発明4、5も、発明の詳細な説明に記載したものである。
カ したがって、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定された要件に適合する。
(5)申立人の主張について
ア 意見書における主張について
(ア)申立人は、令和7年5月7日提出の意見書において、本件発明1について、(i)本件明細書に、「廃石膏由来の二水石膏に酸化マグネシウムを添加することよりもカドミウムの溶出量を低減できる「新たな」不溶化処理技術」についての開示は全くされていない。」こと、(ii)本件明細書には、二水石膏である廃石膏Aに対して、酸化マグネシウムと硫酸第一鉄の混合物を30%、内酸化マグネシウムを26.4%、又は22.5%添加した例が記載されているが、本件明細書には、この2例にあるような高い添加量で酸化マグネシウムのみを廃石膏Aに添加してフッ素の不溶化を確認したことについての記載がされていないため、この2例の効果が、多量な酸化マグネシウムの添加によるものか、2成分からなる混合物を添加したことによる効果であるのかについて判断をすることができないこと、(iii)当業者が、複数種の不溶化材についての効果を比較して確認する場合、不溶化する対象である二水石膏に対しての不溶化材の混合割合を一定にするのが技術常識であるところ、本件明細書には、廃石膏Aに対して酸化マグネシウムのみを20%、25%、30%添加した場合の例がないことを論拠にして、本件発明1のサポート要件違反を主張している。
また、本件発明3について、上記(i)に加えて、(iv)本件発明3の「鉄粉を3%以上」の下限値3%は、「半水石膏である廃石膏b」の検討例の結果を根拠にしているところ、「半水石膏である廃石膏b」について、酸化マグネシウムのみで処理した例についての開示がなく課題の解決が確認できないこと、(v)本件明細書には、半水石膏である廃石膏aに対して、酸化マグネシウムと硫酸第一鉄と鉄粉の混合物を添加した例、内酸化マグネシウムを33.6%、又は28.4%、30%、25.6%添加した4例がフッ素の溶出基準を達成した例として記載されているが、フッ素の溶出基準を満たさない例と比較すると、酸化マグネシウムの添加量が多く、この効果が、酸化マグネシウムの量が増えたことによる課題の達成なのか、第一硫酸鉄及び鉄粉を加えたことによる課題の達成なのかわからないこと、(vi)当業者が、複数種の不溶化材についての効果を比較して確認する場合、不溶化する対象である二水石膏に対しての不溶化材の混合割合を一定にするのが技術常識であるところ、本件明細書には、廃石膏aに対して酸化マグネシウムのみを12%、16%、21%添加した場合の例がないことを論拠にして、本件発明3のサポート要件違反を主張している。
(イ)上記(ア)の(i)~(vi)について検討する。
上記(i)について、前記(4)アで検討したとおり、本件発明の課題は、廃石膏から溶出するフッ素及び重金属の不溶化処理技術において、廃石膏に酸化マグネシウムを添加するよりもフッ素及び重金属の溶出量を低減できる不溶化処理技術を提供することであるところ、酸化マグネシウムを添加するよりもフッ素及び重金属の溶出量を低減できるとは、重金属の溶出量を同程度以下とすることを含むものである。そして、上記(4)イ~オで検討したとおり、本件発明1~5は、カドミウムの溶出量が、酸化マグネシウムのみを添加する場合と同程度となっていることから、サポート要件を満足するものである。
次に、上記(ii)、(v)について、得られる効果が、多量な酸化マグネシウムの添加によるものか、2成分(酸化マグネシウム、硫酸第一鉄)又は3成分(酸化マグネシウム、硫酸第一鉄、鉄粉)からなる混合物を添加したことによる効果であるか判断できないと主張するが、前記(4)イ、エで検討したとおり、酸化マグネシウムの添加割合を一定にして、硫酸第一鉄を添加した場合や、硫酸第一鉄及び鉄粉を添加した場合に、フッ素溶出量の低減が確認されているから、2成分又は3成分からなる混合物を添加したことによる効果も確認できる。
さらに、上記(iii)、(vi)について、前記ア~オで検討したとおり、廃石膏Aについて酸化マグネシウムのみを添加割合15%で添加したとき、さらに、それに加えて添加する硫酸第一鉄の添加割合を検討し、また、廃石膏aに酸化マグネシウムのみを添加割合10%で添加したとき、さらに、それに加えて添加する硫酸第一鉄と鉄粉の割合を検討しているところ、酸化マグネシウムの添加量に応じて、フッ素及びカドミウムの不溶化、又はフッ素、カドミウム及びセレンの不溶化を達成できるように調整できることは、当業者であれば認識できるから、本件発明1~5はサポート要件を満足するものである。
最後に、上記(iv)について、発明の詳細な説明には、「半水石膏である廃石膏b」を使った比較は行われていないが、上記(4)エで検討したとおり、発明の詳細な説明の記載から、当業者において、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲といえるため、本件発明3は、サポート要件を満足するものである。
したがって、申立人の上記(ア)の主張はいずれも採用できない。
イ 申立理由3における主張ついて
(ア)上記第4の1(3)アの主張について検討すると、上記(4)で検討したとおり、本件明細書には、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できるように、本件図面を参照しつつ、発明の詳細な説明にも発明の課題を解決できる程度の記載がある。
また、本件図面の内容は当業者が理解できるものであるから、本件図面である図2~16における膨大な量の2値化された情報があることがサポート要件違反の根拠にはならない。
したがって、上記第4の1(3)アの主張は採用できない。
(イ)次に、上記第4の1(3)イの主張について検討すると、上記(4)で検討したとおり、本件発明1~5は、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲であり、特有の効果が得られない態様、すなわち、本件発明の課題を解決できない態様を含んでいないから、当該主張も採用できない。
(6)サポート要件違反(取消理由1、申立理由3)についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由1、申立理由3に理由はない。
2 新規性・進歩性欠如(取消理由2、申立理由1、2)について
(1)甲第1号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如について
ア 甲第1号証に記載された発明
(ア)甲第1号証には、上記第5の1によれば、廃石膏ボード粉に対して、本実施の形態に係る廃石膏ボード粉の固化方法が記載され(【0028】)、廃石膏ボード粉の固化方法は、酸化マグネシウムを、廃石膏ボードから紙等を除去した後に破砕して粉末状にした廃石膏ボード粉に添加・混合し、さらに水を加えて混練乾燥固化させるようにし、また、酸化マグネシウムには、廃石膏ボード粉の良好な不溶化の効果、すなわち、有害物質の溶出を抑制・防止する効果を図ること(【0015】、【0017】)が記載されていることから、廃石膏における有害物質の不溶化方法が記載されているといえる。
また、甲第1号証には、上記第5の1によれば、酸化マグネシウムを添加することで、廃石膏に含まれるカドミウム、鉛、セレン、フッ素等の溶出を抑制・防止することが記載されているといえる(【0032】、【表1】)。
また、甲第1号証には、上記第5の1によれば、助剤として硫酸第一鉄を添加すること、助剤を用いる場合は、酸化マグネシウムと助剤との質量比が20:80~95:5の範囲に収まるように使用することが記載されている(【0025】)。
(イ)これらの記載を「廃石膏の有害物質の不溶化方法」に着目して整理すると、次の発明(以下、「甲1発明」が記載されていると認められる。
〔甲1発明〕
「廃石膏におけるフッ素、カドミウム、セレン、鉛を含む石膏の不溶化方法であって、廃石膏に対して、酸化マグネシウムと硫酸第一鉄を添加し、酸化マグネシウムと硫酸第一鉄との質量比が20:80~95:5の範囲に収まるものであり、フッ素、カドミウム、セレン、鉛を不溶化する、石膏の不溶化方法。」
イ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明との対比
甲1発明の「廃石膏におけるフッ素、カドミウム、セレン、鉛を含む石膏の不溶化方法であって」、「廃石膏に対して、酸化マグネシウムと硫酸第一鉄を添加し」、「フッ素、カドミウム、セレン、鉛を不溶化する」、「石膏の不溶化方法」は、それぞれ本件発明1の「廃石膏由来であり少なくともフッ素及びカドミウムを含む」「石膏の不溶化方法であって」、「石膏に対して酸化マグネシウムと硫酸第一鉄の混合物を添加することを含み」、「前記フッ素及び前記カドミウムを不溶化することが可能である」、「石膏の不溶化方法」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、「廃石膏由来であり少なくともフッ素及びカドミウムを含む」「石膏の不溶化方法であって、前記」「石膏に対して酸化マグネシウムと硫酸第一鉄の混合物を添加することを含み、」「前記フッ素及び前記カドミウムを不溶化することが可能である、」「石膏の不溶化方法」の点で一致し、本件発明1の廃石膏は「二水石膏」であるのに対し、甲1発明の廃石膏は、それを特定していない点(以下、「相違点1」という。)、及び、本件発明1は「前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を12%~50%とし、残部を酸化マグネシウムとするもの」であるのに対し、甲1発明は「酸化マグネシウムと硫酸第一鉄との質量比が20:80~95:5の範囲に収まるもの」である点(以下、「相違点2」という。)で相違する。
(イ)判断
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
上記(ア)の相違点2について示したとおり、酸化マグネシウムと、硫酸第一鉄の質量比の数値範囲は、甲1発明と本件発明1とで一部重複しているものの、上記1(4)イ(イ)で検討したとおり、本件発明1は、「前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を12%~50%とし、残部を酸化マグネシウムとするもの」とすることで、フッ素溶出量を低く、カドミウム溶出量を同程度にできるものであることが理解できるため、相違点2は、実質的なものである。
次に、甲1発明において、相違点2に係る本件発明の構成とすることの容易想到性を検討する。
甲第1号証には、廃石膏ボードにおいて酸化マグネシウムを添加することによる、カドミウム及びフッ素の検出量の測定値が記載されている(【0032】~【0035】)。そして、甲第1号証については、硫酸第一鉄について、pH調整剤として用い(【0022】)、酸化マグネシウムとpH調整剤との質量比が20:80~95:5の範囲に収まる(【0025】)ことについて記載されている。
しかしながら、甲第1号証には、酸化マグネシウムにpH調整剤又は硫酸第一鉄を加えることで、酸化マグネシウム単体で用いる場合に比べて、廃石膏ボードからのカドミウム及びフッ素の検出の測定値が下がることについて記載されておらず、その測定値を下げるために「前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を12%~50%とし、残部を酸化マグネシウムとするもの」との構成とするための動機付けがあるとは言えない。
また、甲第2~5号証、甲第8号証には、酸化マグネシウムと硫酸第一鉄を組み合わせて用いる記載はなく「前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を12%~50%とし、残部を酸化マグネシウムとするもの」との構成とするための動機付けとなる記載があるとは言えない。
さらに、甲第6号証の【0042】~【0052】には、ヒ素模擬汚染土、セレン模擬汚染土に対する軽焼酸化マグネシウムと硫酸第一鉄とを混合して得られた不溶化剤が記載されているものの、廃石膏に用いること及び廃石膏に用いたとしても、その際に「前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を12%~50%とし、残部を酸化マグネシウムとするもの」との構成とするための動機付けとなる記載があるとは言えない。
そして、甲第7号証の【0074】~【0076】には、高濃度汚染土壌に、仮焼マグネシア、硫酸第1鉄、水ガラスからなる不溶化剤が記載されているものの、廃石膏に用いること及び廃石膏に用いたとしても、その際に「前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を12%~50%とし、残部を酸化マグネシウムとするもの」との構成とするための動機付けとなる記載があるとは言えない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載されている発明ではなく、また、甲第1号証に記載されている発明、及び甲第2号証~甲第8号証に記載されている事項に基づき当業者であれば容易に想到し得た発明ではない。
ウ 本件発明3について
(ア)本件発明3と甲1発明との対比
甲1発明の「廃石膏におけるフッ素、カドミウム、セレン、鉛を含む石膏の不溶化方法であって」、「廃石膏に対して、酸化マグネシウムと硫酸第一鉄を添加し」、「フッ素、カドミウム、セレン、鉛を不溶化する」、「石膏の不溶化方法」は、それぞれ本件発明3の「廃石膏由来であり少なくともフッ素、カドミウム及びセレンを含む」「石膏の不溶化方法であって」、「石膏に対して酸化マグネシウム、硫酸第一鉄」「の混合物を添加することを含み」、「前記フッ素、前記カドミウム及び前記セレンを不溶化することが可能である、」「石膏の不溶化方法」に相当する。
したがって、本件発明3と甲1発明とは、「廃石膏由来であり少なくともフッ素、カドミウム及びセレンを含む」「石膏の不溶化方法であって、前記」「石膏に対して酸化マグネシウム、硫酸第一鉄及び鉄粉の混合物を添加することを含み、」「前記フッ素、前記カドミウム及び前記セレンを不溶化することが可能である、」「石膏の不溶化方法」の点で一致し、本件発明3の廃石膏は「半水石膏」であるのに対し、甲1発明の廃石膏は、それを特定していない点(以下、「相違点3」という。)、及び、本件発明3の混合物は「酸化マグネシウム、硫酸第一鉄及び鉄粉の混合物を添加することを含み、前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を5%以上57%以下の範囲で選択される第1値にするとともに前記鉄粉を3%以上60%以下の範囲で選択される第2値とし、かつ前記第1値と前記第2値の合計値の前記混合物の質量に対する比が15%以上72%以下となるようにし、残部を酸化マグネシウムとするもの」であるのに対し、甲1発明の添加するものの特定が「酸化マグネシウムと硫酸第一鉄との質量比が20:80~95:5の範囲に収まるもの」である点(以下、「相違点4」という。)で相違する。
(イ)判断
事案に鑑み、まず相違点4について検討する。
甲1発明は、「鉄粉」を添加する構成を備えていないことから、相違点4は、実質的なものである。
次に、甲1発明において、相違点4に係る本件発明の構成とすることの容易想到性を検討する。
甲第1号証には、廃石膏ボードにおいて酸化マグネシウムを添加することによる、カドミウム及びフッ素の検出量の測定値が記載されている(【0032】~【0035】)。そして、甲第1号証については、硫酸第一鉄について、pH調整剤として用い(【0022】)、酸化マグネシウムとpH調整剤との質量比が20:80~95:5の範囲に収まる(【0025】)ことについて記載されている。
また、甲第6号証には、セレン等の不溶化を図るため、酸化マグネシウムを不溶化剤として用いる際に、鉄粉を任意に添加、混合してもよいこと(【0006】、【0019】、【0023】)が記載されている。また、甲第7号証には、セレン等の不溶化に大きな効果を発揮するために、有害物質不溶化剤である酸化マグネシウムに金属鉄粉を添加すること(【0028】、【0040】)が記載されている。
しかしながら、甲第1号証には、酸化マグネシウムにpH調整剤又は硫酸第一鉄を加えることで、酸化マグネシウム単体で用いる場合に比べて、廃石膏ボードからのカドミウム及びフッ素の検出の測定値が下がることについて記載されていない。
そして、甲第6号証と甲第7号証に、セレン等の不溶化について記載されていたとしても、甲第1号証の廃石膏ボードにおいて、カドミウム、フッ素、セレンの測定値を下げるために「酸化マグネシウム、硫酸第一鉄及び鉄粉の混合物を添加することを含み、前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を5%以上57%以下の範囲で選択される第1値にするとともに前記鉄粉を3%以上60%以下の範囲で選択される第2値とし、かつ前記第1値と前記第2値の合計値の前記混合物の質量に対する比が15%以上72%以下となるようにし、残部を酸化マグネシウムとするもの」との構成とするための動機付けがあるとは言えない。
甲第2~5号証、甲第8号証については、イ(イ)で検討したとおりである。
したがって、本件発明3は、甲第1号証に記載されている発明、及び甲第2号証~甲第8号証に記載されている事項に基づき当業者であれば容易に想到し得た発明ではない。
エ 本件発明2、4、5について
請求項1の記載を引用する本件発明2、5も、上記イと事情は同じである。
請求項3の記載を引用する本件発明4、5も、上記ウと事情は同じである。
したがって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明でなく、また、本件発明2、4、5は、甲第1号証に記載されている発明、及び甲第2号証~甲第8号証に記載されている事項に基づき当業者であれば容易に想到し得た発明ではない。
オ 申立人の意見書における主張について
(ア)申立人は、令和7年5月7日提出の意見書において、本件発明1、3は、少なくともフッ素の不溶化に必要となる、廃石膏由来の二水石膏又は半水石膏への酸化マグネシウム等の添加量が規定されておらず、本件特許の効果が得られる発明を特定することができない構成のものであること、及び、甲第1号証の【0025】に、「助剤を用いる場合には、酸化マグネシウムと助剤との質量比が(20:80)~(95:5)の範囲内に納まるように使用することが好ましい。」との記載があり、助剤が硫酸第一鉄である場合、硫酸第一鉄を5%~80%、残部を酸化マグネシウムとする混合物に該当することを論拠にして、本件発明の新規性、進歩性欠如を主張している。
(イ)しかしながら、上記1で検討したとおり、本件発明1~5は、当業者において、発明の詳細な説明の記載又は出願時の技術常識に照らして、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
そして、上記イ(イ)のとおり、甲第1号証には、酸化マグネシウムにpH調整剤又は硫酸第一鉄を加えることで、酸化マグネシウム単体で用いる場合に比べて、廃石膏ボードからのカドミウム及びフッ素の検出の測定値が下がることは記載されておらず、その測定値を下げるために「前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を12%~50%とし、残部を酸化マグネシウムとするもの」との構成とするための動機付けがあるとは言えない。
したがって、申立人の上記主張はいずれも採用できない。
(2)甲第2号証、又は甲第6号証を主たる証拠とした進歩性欠如について
ア 申立人は、上記第4の1(2)イ、エのとおり、設定登録時の請求項1、2、5に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証~甲第5号証、甲第7号証、甲第8号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであること、並びに、設定登録時の請求項3~5に係る発明は、甲第6号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第5号証、甲第7号証、甲第8号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであることを主張している。
イ しかしながら、甲第2号証~甲第5号証、甲第7号証、甲第8号証には、前記(1)イ(イ)で検討したとおり、本件発明1のように、廃石膏ボードからのカドミウム及びフッ素の流出量を下げるために、「前記二水石膏に対して酸化マグネシウムと硫酸第一鉄の混合物を添加することを含み、前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を12%~50%とし、残部を酸化マグネシウムとする」ことは記載も示唆もされていないから、その余の点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証~甲第5号証、甲第7号証、甲第8号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
本件発明1の特定事項を全て含む本件発明2、5についても同様である。
ウ また、甲第2号証~甲第8号証には、前記(1)ウ(イ)で検討したとおり、本件発明3のように、廃石膏ボードのカドミウム、フッ素、セレンの溶出量を下げるために、「酸化マグネシウム、硫酸第一鉄及び鉄粉の混合物を添加することを含み、前記混合物の質量に対する比で、前記硫酸第一鉄を5%以上57%以下の範囲で選択される第1値にするとともに前記鉄粉を3%以上60%以下の範囲で選択される第2値とし、かつ前記第1値と前記第2値の合計値の前記混合物の質量に対する比が15%以上72%以下となるようにし、残部を酸化マグネシウムとする」ことは記載も示唆もされていないから、その余の点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲第6号証に記載された発明及び甲第2号証~甲第5号証、甲第7号証、甲第8号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。
本件発明3の特定事項を全て含む本件発明4、5についても同様である。
(3)新規性・進歩性(取消理由2、申立理由1、2)についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由2、申立理由1、2に理由はない。
3 明確性要件(申立理由4)について
(1)明確性要件の判断手法
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるかという観点から判断されるべきである。
(2)明確性要件の充足性
ア まず、申立人の指摘事項(上記第4の1(4)ア、イ)について検討する。
(ア)本件発明1には、「前記フッ素及び前記カドミウムを不溶化することが可能である」と特定されているところ、本件明細書の【0031】には、主剤を酸化マグネシウムとし、第1助剤として種々の薬剤を添加することでフッ素及びカドミウムの不溶化が可能であるかについて具体的に記載されている。そして、不溶化の程度については、上記1(4)で検討したとおり、本件発明1は、酸化マグネシウムのみを添加した場合と同程度以下であることは明らかであるから、「前記フッ素及び前記カドミウムを不溶化することが可能である」との記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるといえない。
また、本件発明3の「前記フッ素、前記カドミウム及び前記セレンを不溶化することが可能である」との記載も、同様に、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるといえない。
(イ)本件発明2、4には、「前記混合物の添加によりpHを9.5~11とすることが可能であり」と特定されているところ、本件明細書では、「主剤を酸化マグネシウムとした場合、第1助剤として一定範囲の質量比で硫酸第一鉄を添加することによりフッ素の不溶化促進及びカドミウムの不溶化が可能であり、かつpHが9.5~11程度に抑えられるため鉛の再溶解が抑制されると同時に硫化水素の発生抑制も可能であると考えられる。」(【0031】)と記載されているとおり、混合物を添加することでpHが9.5~11とすることが具体的に記載されていることから、「前記混合物の添加によりpHを9.5~11とすることが可能であり」との記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるといえない。
イ そして、請求項1~5のその余の記載をみても、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確な記載は見当たらない。
ウ したがって、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定された要件に適合する。
(3)明確性要件(申立理由4)についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由4に理由はない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1~5に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由、及び、取消理由通知書に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700939