特許異議申立
2024-700905
センサ付き軸受及びセンサユニット
- 審判番号
- 2024-700905
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-170585
- 登録番号
- 7452369
- 請求日
- 2024年09月19日
- 審決日
- 2025年06月30日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本精工株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 【異議申立人】安藤 慶治
- 審判長/審判官
- 審判長 石井 孝明
- 審判官 小川 恭司
- 審判官 山田 由希子
- 分類
- P1652.121-YAA(F16C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7452369号発明「センサ付き軸受及びセンサユニット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7452369号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~6]、[7~12]について訂正することを認める。
特許第7452369号の請求項1、7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯の概略
1 手続の経緯
特許第7452369号の請求項1~12に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和2年10月8日(優先権主張 令和元年10月10日)の出願であって、令和6年3月11日に特許権の設定登録がされ、令和6年3月19日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許について、特許異議申立人安藤慶治(以下「申立人」という。)により請求項1、7に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立ての経緯は、概ね、次のとおりである。
令和6年 9月19日 特許異議の申立て
令和6年12月 2日付け 取消理由通知書
令和7年 2月 4日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和7年 4月25日 申立人による意見書の提出
以下、令和7年2月4日に提出された訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」といい、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲、又は図面を「本件明細書等」という。
2 証拠
特許異議申立書に記載されている証拠は以下のとおりである。
甲第1号証:特開2003-42151号公報、以下「甲1」という。
甲第2号証:特開2005-98941号公報、以下「甲2」という。
甲第3号証:特開平11-321256号公報、以下「甲3」という。
甲第4号証:特開平8-339430号公報、以下「甲4」という。
甲第5号証:特開2018-74238号公報、以下「甲5」という。
甲第6号証:特開2005-114465号公報、以下「甲6」という。
甲第7号証:特開2007-99051号公報、以下「甲7」という。
甲第8号証:特開2015-198484号公報、以下「甲8」という。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の請求は、特許第7452369号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(請求項1~6に係る訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に「相対的に回転する外輪及び内輪を有する軸受本体と、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、前記回路基板を収容し、前記軸受本体に隣接配置される蓋部材と、前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、を備えるセンサ付き軸受」と記載されているのを、「相対的に回転する外輪及び内輪を有する軸受本体と、前記外輪及び前記内輪の相対的な回転に応じて発電する発電コイルを含むコイル基板と、前記コイル基板で発電した電力が供給され、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、前記コイル基板及び前記回路基板を収容し、前記軸受本体に隣接配置される蓋部材と、前記コイル基板を除く領域で、かつ前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、を備えるセンサ付き軸受」に訂正する。
(請求項1~6に係る訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項2に「前記カバーは、前記無線モジュールにしまりばめされ、前記樹脂が硬化して固定されている請求項1に記載のセンサ付き軸受」と記載されているのを、「相対的に回転する外輪及び内輪を有する軸受本体と、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、前記回路基板を収容し、前記軸受本体に隣接配置される蓋部材と、前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、を備え、前記カバーは、前記無線モジュールにしまりばめされ、前記樹脂が硬化して固定されているセンサ付き軸受」に訂正する。
(請求項1~6に係る訂正事項3)
特許請求の範囲の請求項3に「前記カバーは、前記回路基板にネジ止めされ固定されている請求項1に記載のセンサ付き軸受」と記載されているのを、「相対的に回転する外輪及び内輪を有する軸受本体と、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、前記回路基板を収容し、前記軸受本体に隣接配置される蓋部材と、前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、を備え、前記カバーは、前記回路基板にネジ止めされ固定されているセンサ付き軸受」に訂正する。
(請求項1~6に係る訂正事項4)
特許請求の範囲の請求項4に「前記カバーと前記回路基板との接触面に撥油コーティングが施されている請求項1から3の何れか一項に記載のセンサ付き軸受」と記載されているのを、「相対的に回転する外輪及び内輪を有する軸受本体と、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、前記回路基板を収容し、前記軸受本体に隣接配置される蓋部材と、前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、を備え、前記カバーと前記回路基板との接触面に撥油コーティングが施されているセンサ付き軸受」に訂正する。
(請求項1~6に係る訂正事項5)
特許請求の範囲の請求項5に「前記カバーは、前記回路基板との接触面に接着剤が塗布されている請求項1から3の何れか一項に記載のセンサ付き軸受」と記載されているのを、「相対的に回転する外輪及び内輪を有する軸受本体と、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、前記回路基板を収容し、前記軸受本体に隣接配置される蓋部材と、前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、を備え、前記カバーは、前記回路基板との接触面に接着剤が塗布されているセンサ付き軸受」に訂正する。
(請求項1~6に係る訂正事項6)
特許請求の範囲の請求項6に「前記カバーは、前記樹脂よりも比重が大きい材料で構成されている請求項1から5の何れか一項に記載のセンサ付き軸受」と記載されているのを、「相対的に回転する外輪及び内輪を有する軸受本体と、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、前記回路基板を収容し、前記軸受本体に隣接配置される蓋部材と、前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、を備え、前記カバーは、前記樹脂よりも比重が大きい材料で構成されているセンサ付き軸受」に訂正する。
(請求項7~12に係る訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項7に「軸受に取り付けられるセンサユニットであって、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、前記回路基板を収容し、前記軸受に固定される蓋部材と、前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、を備えるセンサユニット」と記載されているのを、「軸受に取り付けられるセンサユニットであって、前記軸受の外輪及び内輪の相対的な回転に応じて発電する発電コイルを含むコイル基板と、前記コイル基板で発電した電力が供給され、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、前記コイル基板及び前記回路基板を収容し、前記軸受に固定される蓋部材と、前記コイル基板を除く領域で、かつ前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、を備えるセンサユニット」に訂正する。
(請求項7~12に係る訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項8に「前記カバーは、前記無線モジュールにしまりばめされ、前記樹脂が硬化して固定されている請求項7に記載のセンサユニット」と記載されているのを、「軸受に取り付けられるセンサユニットであって、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、前記回路基板を収容し、前記軸受に固定される蓋部材と、前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、を備え、前記カバーは、前記無線モジュールにしまりばめされ、前記樹脂が硬化して固定されているセンサユニット」に訂正する。
(請求項7~12に係る訂正事項3)
特許請求の範囲の請求項9に「前記カバーは、前記回路基板にネジ止めされ固定されている請求項7に記載のセンサユニット」と記載されているのを、「軸受に取り付けられるセンサユニットであって、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、前記回路基板を収容し、前記軸受に固定される蓋部材と、前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、を備え、前記カバーは、前記回路基板にネジ止めされ固定されているセンサユニット」に訂正する。
(請求項7~12に係る訂正事項4)
特許請求の範囲の請求項10に「前記カバーと前記回路基板との接触面に撥油コーティングが施されている請求項7から9の何れか一項に記載のセンサユニット」と記載されているのを、「軸受に取り付けられるセンサユニットであって、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、前記回路基板を収容し、前記軸受に固定される蓋部材と、前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、を備え、前記カバーと前記回路基板との接触面に撥油コーティングが施されているセンサユニット」に訂正する。
(請求項7~12に係る訂正事項5)
特許請求の範囲の請求項11に「前記カバーは、前記回路基板との接触面に接着剤が塗布されている請求項7から9の何れか一項に記載のセンサユニット」と記載されているのを、「軸受に取り付けられるセンサユニットであって、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、前記回路基板を収容し、前記軸受に固定される蓋部材と、前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、を備え、前記カバーは、前記回路基板との接触面に接着剤が塗布されているセンサユニット」に訂正する。
(請求項7~12に係る訂正事項6)
特許請求の範囲の請求項12に「前記カバーは、前記樹脂よりも比重が大きい材料で構成されている請求項7から11の何れか一項に記載のセンサユニット」と記載されているのを、「軸受に取り付けられるセンサユニットであって、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、前記回路基板を収容し、前記軸受に固定される蓋部材と、前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、を備え、前記カバーは、前記樹脂よりも比重が大きい材料で構成されているセンサユニット」に訂正する。
2 本件訂正の適否について
(1)請求項1~6に係る訂正事項1について
ア 訂正の目的について
請求項1~6に係る訂正事項1に係る本件訂正は、訂正前の請求項1に係る特許発明の「センサ付き軸受」について「前記外輪及び前記内輪の相対的な回転に応じて発電する発電コイルを含むコイル基板」を備えるものとより具体的に特定し、「回路基板」について「前記コイル基板で発電した電力が供給され」、「蓋部材」について「前記コイル基板」を収容するもの、及び、「蓋部材に充填された樹脂」について「前記コイル基板を除く領域で」と更に限定するものである。
よって、請求項1~6に係る訂正事項1に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加について
(ア) 本件明細書等には、「外輪122及び蓋部材10が筐体80に固定されるため、外輪122は回転せず、内輪121、リテーナ50、マグネット31及びスペーサ33が回転シャフト70と一体に回転する。また、コイル基板20とマグネット31とは軸方向に対向して配置されるため、コイル基板20とマグネット31との相対的な回転によって発電が行われる。」(【0074】)、「蓋部材10は、リング状の天板12と、天板12の外周に設けられた筒状の側板11とを有する。」(【0042】)、「図3に示すように、回路基板40(部品)及びコイル基板20は、天板12の裏面12aに取り付けられている。」(【0043】)、「図4に示すように、コイル基板20は、フレキシブル基板21と、フレキシブル基板21に設けられたコイルパターン23と、フレキシブル基板21に設けられた複数のヨーク25と、を有する。」(【0049】)と記載されており(下線は当審にて付与した。以下同様。)、外輪122と同じく筐体80に固定されて回転しない蓋部材10に設けられたコイル基板20と、内輪121と同じく回転シャフト70と一体に回転するマグネット31との相対的な回転によって、コイルパターン23を含むコイル基板20で発電が行われることが理解できるから、本件明細書等には、「前記外輪及び前記内輪の相対的な回転に応じて発電する発電コイルを含むコイル基板」が記載されていると認められる。
(イ) 本件明細書等には、「回路基板40は、電源基板41と、センサ基板42とを有する。」(【0043】)、「電源基板41には、電源部43が実装されている。コイル基板20とマグネット31とで発電部が構成される。電源部43は、発電部から供給された単相交流電力を直流電圧に変換して、センサ基板42へ供給する。」(【0045】)と記載されているから、本件明細書等には、回路基板が「前記コイル基板で発電した電力が供給され」るものであることが記載されていると認められる。
(ウ) 本件明細書等には、「蓋部材10は、リング状の天板12と、天板12の外周に設けられた筒状の側板11とを有する。」(【0042】)、「図3に示すように、回路基板40(部品)及びコイル基板20は、天板12の裏面12aに取り付けられている。」(【0043】)と記載されているから、本件明細書等には、蓋部材が「前記コイル基板」を収容するものであることが記載されていると認められる。
(エ) 本件明細書等には、「蓋部材10は、リング状の天板12と、天板12の外周に設けられた筒状の側板11とを有する。」(【0042】)、「図4に示すように、天板12の裏面12aのコイル基板20を除く領域に樹脂49が充填(以下、「ポッティング加工」ともいう)される。」(【0055】)と記載されているから、樹脂が「前記コイル基板を除く領域で」蓋部材に充填されたものであることが記載されていると認められる。
(オ) そうすると、請求項1~6に係る訂正事項1に係る本件訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
請求項1~6に係る訂正事項1に係る本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
エ 独立特許要件について
本件において、訂正前の請求項1について特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(2)請求項1~6に係る訂正事項2について
請求項1~6に係る訂正事項2に係る本件訂正は、請求項1を引用していた訂正前の請求項2を独立形式としたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、請求項1~6に係る訂正事項2に係る本件訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
そして、請求項1~6に係る訂正事項2に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)請求項1~6に係る訂正事項3について
請求項1~6に係る訂正事項3に係る本件訂正は、請求項1を引用していた訂正前の請求項3を独立形式としたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、請求項1~6に係る訂正事項3に係る本件訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
そして、請求項1~6に係る訂正事項3に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(4)請求項1~6に係る訂正事項4について
ア 訂正の目的について
請求項1~6に係る訂正事項4に係る本件訂正は、請求項1から3の何れか一項を引用していた訂正前の請求項4について、引用関係を解消するとともに、この引用関係の解消により生じる3つの請求項のうち2つを削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、同法同条同項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加について
請求項1~6に係る訂正事項4に係る本件訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
請求項1~6に係る訂正事項4に係る本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
エ 独立特許要件について
訂正前の請求項4について特許異議の申立てがされていないところ、上記アのとおり、請求項1~6に係る訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とする訂正であるから、請求項1~6に係る訂正事項4に係る本件訂正により訂正された訂正後の請求項4に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件が課される。
そこで、独立特許要件について検討する
訂正後の請求項4に係る発明は「前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、を備える」ものにおいて、「前記カバーと前記回路基板との接触面に撥油コーティングが施されている」ものであるが、このようなものは甲1~甲8のいずれにも記載又は示唆されておらず、本願出願時において当業者の技術常識であったと認めるに足る根拠もないから、甲1~甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、他に訂正後の請求項4に係る発明が独立特許要件を満たさないとする理由は発見しない。
よって、請求項1~6に係る訂正事項4に係る本件訂正により訂正された訂正後の請求項4に係る発明は独立特許要件を満たす。
(5)請求項1~6に係る訂正事項5について
ア 訂正の目的について
請求項1~6に係る訂正事項5に係る本件訂正は、請求項1から3の何れか一項を引用していた訂正前の請求項5について、引用関係を解消するとともに、この引用関係の解消により生じる3つの請求項のうち2つを削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、同法同条同項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加について
請求項1~6に係る訂正事項5に係る本件訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
請求項1~6に係る訂正事項5に係る本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
エ 独立特許要件について
訂正前の請求項5について特許異議の申立てがされていないところ、上記アのとおり、請求項1~6に係る訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とする訂正であるから、請求項1~6に係る訂正事項5に係る本件訂正により訂正された訂正後の請求項5に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件が課される。
そこで、独立特許要件について検討する。
訂正後の請求項5に係る発明は「前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、を備える」ものにおいて、「前記カバーは、前記回路基板との接触面に接着剤が塗布されている」ものであるが、このようなものは甲1~甲8のいずれにも記載又は示唆されておらず、本願出願時において当業者の技術常識であったと認めるに足る根拠もないから、甲1~甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。また、他に訂正後の請求項5に係る発明が独立特許要件を満たさないとする理由は発見しない。
よって、請求項1~6に係る訂正事項5に係る本件訂正により訂正された訂正後の請求項5に係る発明は独立特許要件を満たす。
(6)請求項1~6に係る訂正事項6について
ア 訂正の目的について
請求項1~6に係る訂正事項6に係る本件訂正は、請求項1から5の何れか一項を引用していた訂正前の請求項6について、引用関係を解消するとともに、この引用関係の解消により生じる5つの請求項のうち4つを削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、同法同条同項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加について
請求項1~6に係る訂正事項6に係る本件訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
請求項1~6に係る訂正事項6に係る本件訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
エ 独立特許要件について
訂正前の請求項6について特許異議の申立てがされていないところ、上記アのとおり、請求項1~6に係る訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とする訂正であるから、請求項1~6に係る訂正事項6に係る本件訂正により訂正された訂正後の請求項6に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件が課される。
そこで、独立特許要件について検討する。
訂正後の請求項6に係る発明は「前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、を備える」ものにおいて、「前記カバーは、前記樹脂よりも比重が大きい材料で構成されている」ものであるが、このようなものは甲1~甲8のいずれにも記載又は示唆されておらず、本願出願時において当業者の技術常識であったと認めるに足る根拠もないから、甲1~甲8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。また、他に訂正後の請求項6に係る発明が独立特許要件を満たさないとする理由は発見しない。
よって、請求項1~6に係る訂正事項6に係る本件訂正により訂正された訂正後の請求項6に係る発明は独立特許要件を満たす。
(7)請求項7~12に係る訂正事項1について
請求項7~12に係る訂正事項1に係る本件訂正は、訂正前の請求項7に係る特許発明の「センサユニット」について「前記軸受の外輪及び内輪の相対的な回転に応じて発電する発電コイルを含むコイル基板」を備えるものとより具体的に特定し、「回路基板」について「前記コイル基板で発電した電力が供給され」、「蓋部材」について「前記コイル基板」を収容するもの、及び、「蓋部材に充填された樹脂」について「前記コイル基板を除く領域で」と更に限定するものである。
よって、請求項7~12に係る訂正事項1に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記(1)のイ~エと同様の理由により、請求項7~12に係る訂正事項1に係る本件訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではなく、独立特許要件は課されない。
(8)請求項7~12に係る訂正事項2について
請求項7~12に係る訂正事項2に係る本件訂正は、請求項7を引用していた訂正前の請求項8を独立形式としたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、請求項7~12に係る訂正事項2に係る本件訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
そして、請求項7~12に係る訂正事項2に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(9)請求項7~12に係る訂正事項3について
請求項7~12に係る訂正事項3に係る本件訂正は、請求項7を引用していた訂正前の請求項9を独立形式としたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、請求項7~12に係る訂正事項3に係る本件訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
そして、請求項7~12に係る訂正事項3に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号又は第2号に掲げる事項を目的とする訂正ではないから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(10)請求項7~12に係る訂正事項4について
請求項7~12に係る訂正事項4に係る本件訂正は、請求項7から9の何れか一項を引用していた訂正前の請求項10について、引用関係を解消するとともに、この引用関係の解消により生じる3つの請求項のうち2つを削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、同法同条同項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、請求項7~12に係る訂正事項4に係る本件訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
そして、訂正前の請求項10について特許異議の申立てがされていないところ、上述のとおり、請求項7~12に係る訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とする訂正であるから、請求項7~12に係る訂正事項4に係る本件訂正により訂正された訂正後の請求項10に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件が課されるが、上記(4)エと同じ理由により、請求項7~12に係る訂正事項4に係る本件訂正により訂正された訂正後の請求項10に係る発明は独立特許要件を満たす。
(11)請求項7~12に係る訂正事項5について
請求項7~12に係る訂正事項5に係る本件訂正は、請求項7から9の何れか一項を引用していた訂正前の請求項11について、引用関係を解消するとともに、この引用関係の解消により生じる3つの請求項のうち2つを削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、同法同条同項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、請求項7~12に係る訂正事項5に係る本件訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
そして、訂正前の請求項11について特許異議の申立てがされていないところ、上述のとおり、請求項7~12に係る訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とする訂正であるから、請求項7~12に係る訂正事項5に係る本件訂正により訂正された訂正後の請求項11に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件が課されるが、上記(5)エと同じ理由により、請求項7~12に係る訂正事項5に係る本件訂正により訂正された訂正後の請求項11に係る発明は独立特許要件を満たす。
(12)請求項7~12に係る訂正事項6について
請求項7~12に係る訂正事項6に係る本件訂正は、請求項7から11の何れか一項を引用していた訂正前の請求項12について、引用関係を解消するとともに、この引用関係の解消により生じる5つの請求項のうち4つを削除したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、同法同条同項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、請求項7~12に係る訂正事項6に係る本件訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。
そして、訂正前の請求項12について特許異議の申立てがされていないところ、上述のとおり、請求項7~12に係る訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とする訂正であるから、請求項7~12に係る訂正事項6に係る本件訂正により訂正された訂正後の請求項12に係る発明に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件が課されるが、上記(6)エと同じ理由により、請求項7~12に係る訂正事項6に係る本件訂正により訂正された訂正後の請求項12に係る発明は独立特許要件を満たす。
(13)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~6は、本件訂正前の請求項1を引用する関係であるから、本件訂正前の請求項1~6は、一群の請求項である。
本件訂正前の請求項8~12は、本件訂正前の請求項7を引用する関係であるから、本件訂正前の請求項7~12は、一群の請求項である。
よって、請求項1~6に係る訂正事項1~6及び請求項7~12に係る訂正事項1~6は、いずれも一群の請求項に対して請求されたものである。
さらに、特許権者から、本件訂正後の請求項2、3、4、5、6、8、9、10、11、12については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の他の請求項とは別の訂正単位として扱われることの求めがあった。
(14)まとめ
以上のとおりであるので、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対して請求されたものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項から第7項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕、〔7~12〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~12に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明12」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される次のとおりである。
「【請求項1】
相対的に回転する外輪及び内輪を有する軸受本体と、
前記外輪及び前記内輪の相対的な回転に応じて発電する発電コイルを含むコイル基板と、
前記コイル基板で発電した電力が供給され、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、
前記コイル基板及び前記回路基板を収容し、前記軸受本体に隣接配置される蓋部材と、
前記コイル基板を除く領域で、かつ前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、
前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、
を備える
センサ付き軸受。
【請求項2】
相対的に回転する外輪及び内輪を有する軸受本体と、
センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、
前記回路基板を収容し、前記軸受本体に隣接配置される蓋部材と、
前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、
前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、
を備え、
前記カバーは、前記無線モジュールにしまりばめされ、前記樹脂が硬化して固定されている
センサ付き軸受。
【請求項3】
相対的に回転する外輪及び内輪を有する軸受本体と、
センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、
前記回路基板を収容し、前記軸受本体に隣接配置される蓋部材と、
前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、
前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、
を備え、
前記カバーは、前記回路基板にネジ止めされ固定されている
センサ付き軸受。
【請求項4】
相対的に回転する外輪及び内輪を有する軸受本体と、
センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、
前記回路基板を収容し、前記軸受本体に隣接配置される蓋部材と、
前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、
前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、
を備え、
前記カバーと前記回路基板との接触面に撥油コーティングが施されている
センサ付き軸受。
【請求項5】
相対的に回転する外輪及び内輪を有する軸受本体と、
センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、
前記回路基板を収容し、前記軸受本体に隣接配置される蓋部材と、
前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、
前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、
を備え、
前記カバーは、前記回路基板との接触面に接着剤が塗布されている
センサ付き軸受。
【請求項6】
相対的に回転する外輪及び内輪を有する軸受本体と、
センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、
前記回路基板を収容し、前記軸受本体に隣接配置される蓋部材と、
前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、
前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、
を備え、
前記カバーは、前記樹脂よりも比重が大きい材料で構成されている
センサ付き軸受。
【請求項7】
軸受に取り付けられるセンサユニットであって、
前記軸受の外輪及び内輪の相対的な回転に応じて発電する発電コイルを含むコイル基板と、
前記コイル基板で発電した電力が供給され、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、
前記コイル基板及び前記回路基板を収容し、前記軸受に固定される蓋部材と、
前記コイル基板を除く領域で、かつ前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、
前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、
を備える
センサユニット。
【請求項8】
軸受に取り付けられるセンサユニットであって、
センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、
前記回路基板を収容し、前記軸受に固定される蓋部材と、
前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、
前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、
を備え、
前記カバーは、前記無線モジュールにしまりばめされ、前記樹脂が硬化して固定されている
センサユニット。
【請求項9】
軸受に取り付けられるセンサユニットであって、
センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、
前記回路基板を収容し、前記軸受に固定される蓋部材と、
前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、
前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、
を備え、
前記カバーは、前記回路基板にネジ止めされ固定されている
センサユニット。
【請求項10】
軸受に取り付けられるセンサユニットであって、
センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、
前記回路基板を収容し、前記軸受に固定される蓋部材と、
前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、
前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、
を備え、
前記カバーと前記回路基板との接触面に撥油コーティングが施されている
センサユニット。
【請求項11】
軸受に取り付けられるセンサユニットであって、
センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、
前記回路基板を収容し、前記軸受に固定される蓋部材と、
前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、
前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、
を備え、
前記カバーは、前記回路基板との接触面に接着剤が塗布されている
センサユニット。
【請求項12】
軸受に取り付けられるセンサユニットであって、
センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、
前記回路基板を収容し、前記軸受に固定される蓋部材と、
前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、
前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバーと、
を備え、
前記カバーは、前記樹脂よりも比重が大きい材料で構成されている
センサユニット。」
第4 取消理由通知の概要
本件訂正前の本件特許に対し通知した取消理由は、概ね、次のとおりである。
本件発明1、7は、甲1に記載された発明、甲2~甲6に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第5 取消理由について
1 甲1について
甲1の特に「本発明の第9の実施形態」に係る記載に着目すると(特に、【0025】~【0029】、【0071】~【0074】、及び、【図11】を参照。)、甲1には次の発明(以下、「甲1発明1」、「甲1発明2」という。)が記載されている。
[甲1発明1]
「外輪2と内輪3及び玉5、シールド7を備える軸受100と、
検出部10と発信装置11と制御部12とを備えたセンサ9と、例えばボタン形状の電池でありセンサ9に電力を供給する電源13と、アンテナ107を実装したフレキシブルプリント基板と、
前記軸受100の外輪2と一体的に動くように設けられているセンサ付きリング101であって、センサ付きリング101の内周には、軸Sに向かって突出するフランジ104が形成され、フランジ104の内面104aには、前記フレキシブルプリント基板が貼り付けられている、センサ付きリング101と、
前記センサ9と前記電源13と前記アンテナ107をモールド成形する非導電性の樹脂と、
を備える
軸受装置。」
[甲1発明2]
「軸受100の外輪2と一体的に動くように設けられているセンサ付きリング101であって、
検出部10と、発信装置11と、この発信装置を制御する制御部12とを備えたセンサ9と、例えばボタン形状の電池でありセンサ9に電力を供給する電源13と、アンテナ107を実装したフレキシブルプリント基板と、
前記センサ付きリング101の内周には、軸Sに向かって突出するフランジ104が形成され、フランジ104の内面104aには、前記フレキシブルプリント基板が貼り付けられている、センサ付きリング101と、
前記センサ9と前記電源13と前記アンテナ107をモールド成形する非導電性の樹脂と、
を備える
センサ付きリング101。」
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明1とを対比する。
ア
甲1発明1の「外輪2」、「内輪3」及び「軸受100」は、それぞれ本件発明1の「外輪」、「内輪」及び「軸受本体」に相当する。また、甲1発明1の「外輪2」と「内輪3」が相対的に回転することはその軸受としての機能上明らかである。
したがって、甲1発明1の「外輪2と内輪3及び玉5、シールド7を備える軸受100」は、本件発明1の「相対的に回転する外輪及び内輪を有する軸受本体」に相当する。
イ
甲1発明1の「検出部10」は、本件発明1の「センサ」に相当する。
甲1発明1の「発信装置11」と、「制御部12」と、「電源13」と、「アンテナ107」は、この4つの構成によって検出部10の検出結果に基づいて何らかのデータを送信するものであることは明らかであるから、本件発明1の「無線モジュール」に相当する。また、甲1発明1の「フレキシブルプリント基板」は、本件発明1の「回路基板」に相当する。そして、甲1発明1の「電源13」が「フレキシブルプリント基板」に実装される「センサ9」に「電力を供給する」から、「フレキシブルプリント基板」は「電源13」から「電力が供給される」ことは明らかである。
したがって、甲1発明1の「検出部10と発信装置11と制御部12とを備えたセンサ9と、例えばボタン形状の電池でありセンサ9に電力を供給する電源13と、アンテナ107を実装したフレキシブルプリント基板」は、本件発明1の「前記コイル基板で発電した電力が供給され、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板」との対比において、「電力が供給され、センサの検出結果に基づくデータを送信する無線モジュールが実装された回路基板」との限度で一致する。
ウ
甲1発明1の「センサ付きリング101」は、「内周には、軸Sに向かって突出するフランジ104が形成され」ているから、蓋状の部材であるといえる。また、甲1発明1の「センサ付きリング101」は、その「フランジ104の内面104aには、前記フレキシブルプリント基板が貼り付けられている」から、フレキシブルプリント基板を収容しているといえる。さらに、甲1発明1の「センサ付きリング101」は、「前記軸受100の外輪2と一体的に動くように設けられている」から、軸受100に隣接配置されているといえる。
したがって、甲1発明1の「前記軸受100の外輪2と一体的に動くように設けられているセンサ付きリング101であって、センサ付きリング101の内周には、軸Sに向かって突出するフランジ104が形成され、フランジ104の内面104aには、前記フレキシブルプリント基板が貼り付けられている、センサ付きリング101」は、本件発明1の「前記回路基板を収容し、前記軸受本体に隣接配置される蓋部材」に相当する。
エ
甲1発明1の「非導電性の樹脂」は、本件発明1の「樹脂」に相当する。
また、甲1発明1の「非導電性の樹脂」は、「前記センサ9と前記電源13と前記アンテナ107をモールド成形する」ものであり、センサ9と電源13とアンテナ107は、「フレキシブルプリント基板」に「実装されて」おり、また、「フレキシブルプリント基板」は、「フランジ104の内面104a」に「貼り付けられて」いることを踏まえると、センサ9と電源13とアンテナ107を実装したフレキシブルプリント基板を覆うようにフランジ104の内面104aに充填してモールド成形しているものといえる。
したがって、甲1発明1の「フランジ104の内面104a」に「貼り付けられ」た「検出部10と発信装置11と制御部12とを備えたセンサ9と、電源13と、アンテナ107を実装したフレキシブルプリント基板」の「前記センサ9と前記電源13と前記アンテナ107をモールド成形する非導電性の樹脂」は、本件発明1の「前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂」に相当する。
オ
甲1発明1の「軸受装置」は、センサ9付き軸受100であるから、本件発明1の「センサ付き軸受」に相当する。
カ
以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明1との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
[一致点1]
「相対的に回転する外輪及び内輪を有する軸受本体と、
電力が供給され、センサの検出結果に基づくデータを送信する無線モジュールが実装された回路基板と、
前記回路基板を収容し、前記軸受本体に隣接配置される蓋部材と、
前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、
を備える
センサ付き軸受。」
[相違点1]
「無線モジュール」によって「送信」される「センサの検出結果に基づくデータ」について、本件発明1は、「センサにより検出された物理量又は化学量」であるのに対し、甲1発明1は、そのような特定がされていない点。
[相違点2]
本件発明1は、「前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバー」を備えるものであるのに対し、甲1発明1は、そのような特定がされていない点。
[相違点3]
「回路基板」に「供給」される「電力」について、本件発明1は、「前記外輪及び前記内輪の相対的な回転に応じて発電する発電コイルを含むコイル基板」「で発電した」ものであるのに対し、甲1発明1は、「例えばボタン形状の電池」である点。
[相違点4]
「蓋部材」に関し、本件発明1は、「前記コイル基板及び前記回路基板を収容」するものであり、「前記コイル基板を除く領域で、かつ前記回路基板を覆うように、」「樹脂」が「充填され」ているのに対し、甲1発明1は、「前記回路基板を収容」するものである点。
(2)判断
事案に鑑み上記相違点3及び相違点4から検討する。
甲2~甲6並びに取消理由通知において採用しなかった甲7及び甲8のいずれにも、上記相違点3及び相違点4に係る本件発明1の構成は記載又は示唆されておらず、本願出願時において当業者の技術常識であったと認めるに足る根拠もない。
したがって、甲1発明1及び甲2~甲8に記載された技術的事項に基いて、「前記外輪及び前記内輪の相対的な回転に応じて発電する発電コイルを含むコイル基板」を設け、回路基板に「前記コイル基板で発電した」電力を供給し、蓋部材に「前記コイル基板」を収容し、樹脂が「前記コイル基板を除く領域で」充填される構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本件発明1は、相違点1、相違点2について検討するまでもなく、甲1発明1及び甲2~甲8に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明7について
(1)対比
本件発明7と甲1発明2とを対比する。
ア
甲1発明2の「センサ付きリング101」は、本件発明7の「センサユニット」に相当し、「軸受100の外輪2と一体的に動くように設けられている」ものであるから、軸受100に取り付けられているといえる。
したがって、甲1発明2の「軸受100の外輪2と一体的に動くように設けられているセンサ付きリング101」は、本件発明7の「軸受に取り付けられるセンサユニット」に相当する。
イ
さらに、前記2(1)イ~エを踏まえると、本件発明7と甲1発明2との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
[一致点2]
「軸受に取り付けられるセンサユニットであって、
電力が供給され、センサの検出結果に基づくデータを送信する無線モジュールが実装された回路基板と、
前記回路基板を収容し、前記軸受に固定される蓋部材と、
前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、
を備える
センサユニット。」
[相違点1’]
「無線ジュール」によって「送信」される「センサの検出結果に基づくデータ」について、本件発明7は、「センサにより検出された物理量又は化学量」であるのに対し、甲1発明2は、そのような特定がされていない点。
[相違点2’]
本件発明7は、「前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバー」を備えるものであるのに対し、甲1発明2は、そのような特定がされていない点。
[相違点3’]
「回路基板」に「供給」される「電力」について、本件発明7は、「前記外輪及び前記内輪の相対的な回転に応じて発電する発電コイルを含むコイル基板」「で発電した」ものであるのに対し、甲1発明2は、「例えばボタン形状の電池」である点。
[相違点4’]
「蓋部材」に関し、本件発明1は、「前記コイル基板及び前記回路基板を収容」するものであり、「前記コイル基板を除く領域で、かつ前記回路基板を覆うように、」「樹脂」が「充填され」ているのに対し、甲1発明1は、「前記回路基板を収容」するものである点。
(2)判断
事案に鑑み上記相違点3’及び相違点4’から検討すると、上記2(2)と同様の理由により、甲1発明2及び甲2~甲8に記載された技術的事項に基いて、「前記外輪及び前記内輪の相対的な回転に応じて発電する発電コイルを含むコイル基板」を設け、回路基板に「前記コイル基板で発電した」電力を供給し、蓋部材に「前記コイル基板」を収容し、樹脂が「前記コイル基板を除く領域で」充填される構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本件発明7は、相違点1’、相違点2’について検討するまでもなく、甲1発明2及び甲2~甲8に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由の概要
取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由は、概ね、次のとおりである。
本件特許の請求項1、7に係る発明は、甲2に記載された発明および周知の技術(甲3~甲8に記載された技術的事項)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 甲2について
甲2の段落【0016】には「センサユニット9は、検出対象を検出するセンサ部26と、このセンサ部26が出力するセンサ信号を送信するセンサ信号送信部29と、電源部27とを一体化したものである。この一体化は、樹脂ケースなどのケース内に、センサ部26、センサ信号送信部29、および電源部27を収容することで一体化したものであっても、これらセンサ部26、センサ信号送信部29、および電源部27を搭載した基板を樹脂モールドしたものであっても良い。」と記載されており、「樹脂ケースなどのケース内に、センサ部26、センサ信号送信部29、および電源部27を収容することで一体化したもの」と、「センサ部26、センサ信号送信部29、および電源部27を搭載した基板を樹脂モールドしたもの」がそれぞれ記載されていると認められるから、甲2の記載(特に、【0001】、【0008】、【0015】~【0017】、【0021】~【0024】、【0038】、及び、【図1】~【図4】参照。)からみて、甲2には次の発明(以下、「甲2発明1」、「甲2発明2」という。)が記載されている。
[甲2発明1]
「固定側輪3と回転側輪2及び転動体4を備える軸受1と、
回転、温度、振動、加速度、軸受の予圧、荷重、トルク等を検出するセンサを有するセンサ部26と、センサ部26が出力するセンサ信号を送信するセンサ信号送信部29と、回転型の発電機から成りセンサ部26やセンサ信号送信部29に電力を供給する電源部27と、
センサ部26、センサ信号送信部29、および電源部27を収容し、軸受1に隣接配置される樹脂ケースなどのケースと、
を備える
ワイヤレスセンサ付軸受装置。」
[甲2発明2]
「固定側輪3と回転側輪2及び転動体4を備える軸受1と、
回転、温度、振動、加速度、軸受の予圧、荷重、トルク等を検出するセンサを有するセンサ部26と、センサ部26が出力するセンサ信号を送信するセンサ信号送信部29と、回転型の発電機から成りセンサ部26やセンサ信号送信部29に電力を供給する電源部27と、
センサ部26、センサ信号送信部29、および電源部27を基板に搭載して樹脂モールドすることで一体化したセンサユニット9と、
を備える
ワイヤレスセンサ付軸受装置。」
また、甲2には次の発明(以下、「甲2発明3」という。)も記載されている。
[甲2発明3]
「軸受1の固定外輪3に着脱自在に取付けるセンサユニット9であって、
センサ部26と、センサ部26が出力するセンサ信号を送信するセンサ信号送信部29と、回転型の発電機から成りセンサ部26やセンサ信号送信部29に電力を供給する電源部27とを、樹脂ケースなどのケース内に収容することで、または、基板に搭載して樹脂モールドすることで一体化した
センサユニット9。」
3 本件発明1について
(1)甲2発明1を主引用発明とする場合
ア 対比
本件発明1と甲2発明1とを対比する。
(ア)
甲2発明1の「固定側輪3」、「回転側輪2」及び「軸受1」は、それぞれ本件発明1の「外輪」、「内輪」及び「軸受本体」に相当する。また、甲2発明1の「固定側輪3」と「回転側輪2」が相対的に回転することはその軸受としての機能上明らかである。
したがって、甲2発明1の「固定側輪3と回転側輪2及び転動体4を備える軸受1」は、本件発明1の「相対的に回転する外輪及び内輪を有する軸受本体」に相当する。
(イ)
甲2発明1の「センサ」が検出する「回転、温度、振動、加速度、軸受の予圧、荷重、トルク等」は、本件発明1の「センサにより検出された物理量又は化学量」に相当する。
甲2発明1の「センサ信号送信部29」と、「電源部27」とは、本件発明1の「無線モジュール」に相当する。
甲2発明1の「回転型の発電機から成りセンサ部26やセンサ信号送信部29に電力を供給する電源部27」は発電した電力を供給するものであることは明らかである。
したがって、甲2発明1の「回転、温度、振動、加速度、軸受の予圧、荷重、トルク等を検出するセンサを有するセンサ部26と、センサ部26が出力するセンサ信号を送信するセンサ信号送信部29と、回転型の発電機から成りセンサ信号送信部29に電力を供給する電源部27」は、本件発明1の「前記コイル基板で発電した電力が供給され、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板」との対比において、所定の手段で「発電した電力」が所定の対象に「供給」される構成と「センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュール」との限度で一致する。
(ウ)
甲2発明1の「センサ部26、センサ信号送信部29、および電源部27を収容し、軸受1に隣接配置される樹脂ケースなどのケース」は、本件発明1の「前記回路基板を収容し、前記軸受本体に隣接配置される蓋部材」との対比において、所定の物を「収容し、」「前記軸受本体に隣接配置される」「部材」との限度で一致する。
(エ)
甲2発明1の「ワイヤレスセンサ付軸受装置」は、本件発明1の「センサ付き軸受」に相当する。
(オ)
以上のとおりであるから、本件発明1と甲2発明1との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
[一致点3]
「相対的に回転する外輪及び内輪を有する軸受本体と、
所定の手段で発電した電力が所定の対象に供給され、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールと、
所定の物を収容し、前記軸受本体に隣接配置される部材と、
を備える
センサ付き軸受。」
[相違点5]
本件発明1は「無線モジュールが実装された回路基板」を備えるものであるのに対し、甲2発明1は、そのような特定がされていない点。
[相違点6]
「電力」に関し、本件発明1は、「前記外輪及び前記内輪の相対的な回転に応じて発電する発電コイルを含むコイル基板」「で発電した電力」が「回路基板」に「供給」されるのに対し、甲2発明1は、「回転型の発電機」で発電した電力が「無線モジュール」に供給される点。
[相違点7]
「軸受本体に隣接配置される」「部材」に関し、本件発明1は、「前記コイル基板及び前記回路基板を収容」するものであり、「前記コイル基板を除く領域で、かつ前記回路基板を覆うように、」「樹脂」が「充填」されているものであり、「蓋部材」であるのに対し、甲2発明1は、「センサや無線モジュールを収容」するものであり、上記のような「樹脂」の「充填」は特定されておらず、「樹脂ケースなどのケース」であり「蓋部材」であるか不明な点。
[相違点8]
本件発明1は、「前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバー」を備えるものであるのに対し、甲2発明1は、そのような特定がされていない点。
イ 判断
事案に鑑み上記相違点6及び相違点7から検討する。
上記「第5」2(2)に示したとおり、「前記外輪及び前記内輪の相対的な回転に応じて発電する発電コイルを含むコイル基板」を備え、回路基板に「前記コイル基板で」発電した電力を供給し、蓋部材に「前記コイル基板」を収容し、樹脂が「前記コイル基板を除く領域で」充填される構成は、甲2~甲8のいずれにも、記載又は示唆されておらず、本願出願時において当業者の技術常識であったと認めるに足る根拠もない。さらに、これらの構成は、上記「第5」2(1)に示したとおり、本件発明1と甲1発明1との相違点であり、甲1に記載又は示唆されているものではない。
したがって、甲2発明1及び甲1~甲8に記載された技術的事項に基いて、「前記外輪及び前記内輪の相対的な回転に応じて発電する発電コイルを含むコイル基板」を設け、「回路基板」に「前記コイル基板で」発電した電力を供給し、「樹脂ケースなどのケース」を「蓋部材」とし、当該蓋部材に「前記コイル基板及び前記回路基板」を収容し、樹脂が「前記コイル基板を除く領域で、かつ前記回路基板を覆うように、」充填される構成とすることで、相違点6及び相違点7に係る本件発明1の構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲2発明1及び甲1~甲8に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)甲2発明2を主引用発明とする場合
ア 対比
本件発明1と甲2発明2とを対比する。
(ア)
前記3(1)ア(ア)~(イ)、(エ)の対比に加えて、甲2発明2の「センサ部26、センサ信号送信部29、および電源部27を基板に搭載して樹脂モールドすることで一体化した」という事項は、本件発明1の「無線モジュールが実装された回路基板と、」「前記回路基板を覆う」「樹脂と」を備えるという事項に相当する。
また、甲2発明2の「電源部27」は「回転型の発電機から成りセンサ部26やセンサ信号送信部29に電力を供給する」ものであり、「センサ部26、センサ信号送信部29、および電源部27」は「基板に搭載」されるものであるから、電源部27からの電力は、センサ部26、センサ信号送信部29、および電源部27を搭載する基板に供給されるものであると言える。
したがって、甲2発明2の「回転、温度、振動、加速度、軸受の予圧、荷重、トルク等を検出するセンサを有するセンサ部26と、センサ部26が出力するセンサ信号を送信するセンサ信号送信部29と、回転型の発電機から成りセンサ部26やセンサ信号送信部29に電力を供給する電源部27と、センサ部26、センサ信号送信部29、および電源部27を基板に搭載して樹脂モールドすることで一体化したセンサユニット9と、を備える」という事項は、本件発明1の「前記コイル基板で発電した電力が供給され、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、」「前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、」「を備える」との対比において、所定の手段で「発電した電力が供給され、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、」「前記回路基板を覆う」「樹脂と、」「を備える」との限度で一致する。
(イ)
以上のとおりであるから、本件発明1と甲2発明2との一致点及び相違点は次のとおりとなる。
[一致点4]
「相対的に回転する外輪及び内輪を有する軸受本体と、
所定の手段で発電した電力が供給され、センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、
前記回路基板を覆う樹脂と、
を備える
センサ付き軸受。」
[相違点9]
「回路基板」に「供給」される「電力」について、本件発明1は、「前記外輪及び前記内輪の相対的な回転に応じて発電する発電コイルを含むコイル基板」「で発電した」ものであるのに対し、甲2発明2は、「回転型の発電機」で発電したものである点。
[相違点10]
「蓋部材」に関し、本件発明1は、「前記コイル基板及び前記回路基板を収容」するものであり、「前記軸受本体に隣接配置」されるものであり、「前記コイル基板を除く領域で、かつ前記回路基板を覆うように、」「樹脂」が「充填され」ているのに対し、甲2発明2は、蓋部材が特定されていない点。
[相違点11]
本件発明1は、「前記無線モジュールのアンテナと前記樹脂との間に空気層を設けるカバー」を備えるものであるのに対し、甲2発明2は、そのような特定がされていない点。
イ 判断
事案に鑑み上記相違点9及び相違点10から検討すると、上記(1)イと同様の理由により、甲2発明2及び甲1~甲8に記載された技術的事項に基いて、「前記外輪及び前記内輪の相対的な回転に応じて発電する発電コイルを含むコイル基板」を設け、回路基板に「前記コイル基板で」発電した電力を供給し、「前記軸受本体に隣接配置」される「蓋部材」を設け、当該蓋部材に「前記コイル基板及び前記回路基板」を収容し、樹脂が「前記コイル基板を除く領域で」充填される構成とすることで、相違点9及び相違点10に係る本件発明1の構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲2発明2及び甲1~甲8に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)まとめ
上記(1)(2)のとおりであるから、本件発明1は、甲2に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 本件発明7について
本件発明7と甲2発明3とを対比する。
甲2発明3の「軸受1の固定外輪3に着脱自在に取付ける」という事項は、本件発明7の「軸受に取り付けられる」という事項に相当し、甲2発明3の「センサユニット9」は、本件発明7の「センサユニット」に相当する。
そして、前記3(1)ア、3(2)アを踏まえると、本件発明7と甲2発明3とは、少なくとも、本件発明7は、「前記外輪及び前記内輪の相対的な回転に応じて発電する発電コイルを含むコイル基板」を備え、回路基板に「前記コイル基板で発電した」電力を供給し、蓋部材に「前記コイル基板」を収容し、樹脂が「前記コイル基板を除く領域で」充填されるものであるのに対し、甲2発明3では、そのような特定がされていない点で相違するところ、上記3(1)イ、3(2)イと同様の理由で、本件発明7は、他の相違点について検討するまでもなく、甲2発明3及び甲1~甲8に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件発明7は、甲2に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第7 申立人の主張について
1 甲2について
申立人は特許異議申立書において、甲2には
「B センサ部26により検出された回転、温度、振動、加速度、軸受の与圧、加重、トルク等を送信するセンサ信号送信部29が実装された基板と、
C 前記基板を収容し、前記軸受1に隣接配置されるケースと、
D 前記基板を覆うように、前記ケースにモールドされた樹脂と、を備え」るものが記載されており、甲2発明の「基板」は本件発明1の「回路基板」に相当し、同様に、「ケース」は「蓋部材」に、「前記ケースにモールドされた樹脂」は「前記蓋部材に充填された樹脂」にそれぞれ相当するから、
「B センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、
C 前記回路基板を収容し、前記軸受本体に隣接配置される蓋部材と、
D 前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、を備える、」点は一致点である旨、主張する(特許異議申立書第16ページ第7行~第11行、第35ページ第15行~第17行、第35ページ第23行~第27行参照)。
しかし、甲2の段落【0016】には「センサユニット9は、検出対象を検出するセンサ部26と、このセンサ部26が出力するセンサ信号を送信するセンサ信号送信部29と、電源部27とを一体化したものである。この一体化は、樹脂ケースなどのケース内に、センサ部26、センサ信号送信部29、および電源部27を収容することで一体化したものであっても、これらセンサ部26、センサ信号送信部29、および電源部27を搭載した基板を樹脂モールドしたものであっても良い。」と記載されており、「樹脂ケースなどのケース内に、センサ部26、センサ信号送信部29、および電源部27を収容することで一体化したもの」と、「センサ部26、センサ信号送信部29、および電源部27を搭載した基板を樹脂モールドしたもの」がそれぞれ記載されていると認められるが、「センサ部26、センサ信号送信部29、および電源部27を搭載した基板」を「樹脂ケースなどのケース内に」「収容」し、かつ、基板を覆うようにケースに樹脂をモールドすることが記載されているとは認められない。
よって、
「B センサにより検出された物理量又は化学量を送信する無線モジュールが実装された回路基板と、
C 前記回路基板を収容し、前記軸受本体に隣接配置される蓋部材と、
D 前記回路基板を覆うように、前記蓋部材に充填された樹脂と、を備える、」点は一致点である旨の主張は採用できない。
2 訂正後の本件発明1、7について
申立人は、本件発明1、7が、訂正によって限定された「前記外輪及び前記内輪の相対的な回転に応じて発電する発電コイルを含むコイル基板」を備え、回路基板に「前記コイル基板で発電した」電力を供給し、蓋部材に「前記コイル基板」を収容し、樹脂が「前記コイル基板を除く領域で」充填されるものであるとの構成を有することについて、何ら主張をしていない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件の請求項1、7に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件の請求項1、7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700905