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特許異議申立

2022-700098

ヒンジ

審判番号
2022-700098
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-082399
登録番号
6913933
請求日
2022年02月04日
審決日
2023年10月27日
公報発行日
2024年01月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】下西技研工業株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人矢野内外国特許事務所
  • 【異議申立人】株式会社 ナチュラレーザ・ワン
  • 【異議申立人代理人】伊藤 捷雄
審判長/審判官
  • 審判長 平城 俊雅
  • 審判官 尾崎 和寛
  • 審判官 久島 弘太郎
分類
P1651.113-YAA(F16C) / P1651.121-YAA(F16C) / P1651.851-YAA(F16C) / P1651.853-YAA(F16C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6913933号発明「ヒンジ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6913933号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 特許第6913933号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6913933号の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成29年4月18日に出願され、令和3年7月15日にその特許権の設定登録がされ、令和3年8月4日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年2月4日 :特許異議申立人株式会社ナチュラレーザ・ワン (以下、「特許異議申立人」という。)による 特許異議の申立て 令和4年3月3日 :特許異議申立人による手続補正書の提出 令和4年6月13日付け:取消理由通知書 令和4年8月10日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和4年11月11日 :訂正拒絶理由通知書 令和4年12月15日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提出 令和5年2月1日 :特許異議申立人による意見書の提出 令和5年3月13日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和5年5月16日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和5年7月5日 :特許異議申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和5年5月16日に提出された訂正請求書の(以下、この訂正請求書での請求を「本件訂正請求」という。)での訂正の内容は、次のとおりのものである(下線は訂正箇所である。)。 なお、令和4年8月10日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、取り下げられたものとみなす(特許法第120条の5第7項)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を 「 蓋部と、一端側に底部、他端側に開口部が形成されて本体部に固定される筒状のケース部材と、該ケース部材の内部で摺動可能に収容されるスライド部材と、前記ケース部材の開口部で回動軸により回動可能に軸支されて前記蓋部に固定される回動部材と、前記ケース部材の前記底部と前記スライド部材との間に介挿されるバネ部材と、を備え、前記本体部と前記蓋部とを回動可能に連結するヒンジであって、 前記蓋部は複合機の原稿圧着板を構成し、 前記本体部は前記複合機の本体を構成し、 前記回動部材は、前記ケース部材に対して相対的に回動することにより、前記ケース部材に最も近接する閉塞状態と、前記ケース部材から最も離間する開放状態と、前記閉塞状態と前記開放状態との間で、前記ケース部材に対する角度が第一の所定角度となる第一状態と、前記ケース部材に対する角度が前記第一の所定角度よりも大きな第二の所定角度となる第二状態と、を遷移可能に構成され、 前記第一の所定角度は、前記開放状態よりも前記閉塞状態に近い角度に設定され、 前記第二の所定角度は、前記閉塞状態よりも前記開放状態に近い角度に設定され、 前記回動部材における前記スライド部材の側には、前記スライド部材に当接するとともに、前記回動部材の回動によって前記スライド部材に近接離間するカム部が形成され、 前記回動部材は、前記バネ部材の付勢力により前記ケース部材から離間する回動方向に回動トルクを付与されるとともに、前記蓋部の重量により前記ケース部材に近接する回動方向に重量トルクが付与され、 前記重量トルクは、前記ケース部材に対する前記回動部材の角度の減少に伴って増加し、 前記回動部材が前記開放状態に位置する際の前記回動トルクは、前記重量トルクよりも大きく、 前記回動部材が前記開放状態から前記第二状態に変位する際の前記回動トルクは、前記ケース部材に対する前記回動部材の角度の減少に伴って減少し、 前記回動部材が前記第二状態に位置する際の前記回動トルクは、前記重量トルクよりも小さく、 前記回動部材が前記第二状態から前記第一状態に変位する際の前記回動トルクは、前記重量トルクの増加分と同程度増加し、 前記回動部材が前記第一状態に位置する際の前記回動トルクは、前記重量トルクよりも小さく、 前記回動部材が前記閉塞状態に位置する際の前記回動トルクは、前記回動部材が前記第一状態に位置する際の前記回動トルクよりも小さく、 前記回動部材が前記閉塞状態に位置する際の前記回動トルクは、前記重量トルクよりも小さく、 前記回動部材が前記第一状態から前記閉塞状態へ変位する際の前記回動トルクは、前記第一状態から前記閉塞状態へ変位する過程の一部分で増大しつつ、前記ケース部材に対する前記回動部材の角度の減少に伴って全体として減少する、ヒンジ。」に訂正する(請求項1を引用する請求項2~4についても同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を 「 前記回動部材における前記カム部には、他の部分よりも前記スライド部材との摩擦力を高くした高摩擦部が形成され、 前記回動部材が前記第一状態から前記閉塞状態に変位する間に前記高摩擦部が前記スライド部材に当接することにより、前記回動部材が前記本体部の上面に当接する衝撃を緩和する、請求項1に記載のヒンジ。」に訂正する(請求項2を引用する請求項3及び4についても同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 願書に添付した明細書の段落【0008】を、「即ち、請求項1においては、蓋部と、一端側に底部、他端側に開口部が形成されて本体部に固定される筒状のケース部材と、該ケース部材の内部で摺動可能に収容されるスライド部材と、前記ケース部材の開口部で回動軸により回動可能に軸支されて前記蓋部に固定される回動部材と、前記ケース部材の前記底部と前記スライド部材との間に介挿されるバネ部材と、を備え、前記本体部と前記蓋部とを回動可能に連結するヒンジであって、前記蓋部は複合機の原稿圧着板を構成し、前記本体部は前記複合機の本体を構成し、前記回動部材は、前記ケース部材に対して相対的に回動することにより、前記ケース部材に最も近接する閉塞状態と、前記ケース部材から最も離間する開放状態と、前記閉塞状態と前記開放状態との間で、前記ケース部材に対する角度が第一の所定角度となる第一状態と、前記ケース部材に対する角度が前記第一の所定角度よりも大きな第二の所定角度となる第二状態と、を遷移可能に構成され、前記第一の所定角度は、前記開放状態よりも前記閉塞状態に近い角度に設定され、前記第二の所定角度は、前記閉塞状態よりも前記開放状態に近い角度に設定され、前記回動部材における前記スライド部材の側には、前記スライド部材に当接するとともに、前記回動部材の回動によって前記スライド部材に近接離間するカム部が形成され、前記回動部材は、前記バネ部材の付勢力により前記ケース部材から離間する回動方向に回動トルクを付与されるとともに、前記蓋部の重量により前記ケース部材に近接する回動方向に重量トルクが付与され、前記重量トルクは、前記ケース部材に対する前記回動部材の角度の減少に伴って増加し、前記回動部材が前記開放状態に位置する際の前記回動トルクは、前記重量トルクよりも大きく、前記回動部材が前記開放状態から前記第二状態に変位する際の前記回動トルクは、前記ケース部材に対する前記回動部材の角度の減少に伴って減少し、前記回動部材が前記第二状態に位置する際の前記回動トルクは、前記重量トルクよりも小さく、前記回動部材が前記第二状態から前記第一状態に変位する際の前記回動トルクは、前記重量トルクの増加分と同程度増加し、前記回動部材が前記第一状態に位置する際の前記回動トルクは、前記重量トルクよりも小さく、前記回動部材が前記閉塞状態に位置する際の前記回動トルクは、前記回動部材が前記第一状態に位置する際の前記回動トルクよりも小さく、前記回動部材が前記閉塞状態に位置する際の前記回動トルクは、前記重量トルクよりも小さく、前記回動部材が前記第一状態から前記閉塞状態へ変位する際の前記回動トルクは、前記第一状態から前記閉塞状態へ変位する過程の一部分で増大しつつ、前記ケース部材に対する前記回動部材の角度の減少に伴って全体として減少するものである。」に訂正する。 ここで、訂正前の請求項1~4は、請求項2~4が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正請求書での特許請求の範囲に係る訂正は一群の請求項1~4について請求されている。 また、明細書に係る訂正は、一群の請求項1~4について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明における「本体部と蓋部を回動可能に連結するヒンジ」に関し、 「前記蓋部は複合機の原稿圧着板を構成し、前記本体部は前記複合機の本体を構成し」との限定、及び「前記回動部材が前記第一状態から前記閉塞状態へ変位する際の前記回動トルクは、前記第一状態から前記閉塞状態へ変位する過程の一部分で増大しつつ、前記ケース部材に対する前記回動部材の角度の減少に伴って全体として減少する」との限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無 訂正事項1の内、「前記蓋部は複合機の原稿圧着板を構成し、前記本体部は前記複合機の本体を構成し」との構成は、願書に添付した明細書の段落【0014】、【0019】及び願書に添付した図面の【図1】に記載されている。 さらに、訂正事項の内、「前記回動部材が前記第一状態から前記閉塞状態へ変位する際の前記回動トルクは、前記第一状態から前記閉塞状態へ変位する過程の一部分で増大しつつ、前記ケース部材に対する前記回動部材の角度の減少に伴って全体として減少する」との構成は、願書に添付した明細書の段落【0036】及び願書に添付した図面の【図9】に記載されている。 したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものといえる。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1によって、発明のカテゴリーや対象、目的は何ら変更されておらず、また、訂正事項1による訂正前の請求項1に係る発明に含まれないとする事項が、訂正後の請求項1に係る発明に含まれるとの事情は伺えないから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2 請求項2は請求項1の記載を引用するものであるところ、訂正前の請求項2における「前記本体の」の「本体」は、請求項1には、発明特定事項として記載されておらず、不明瞭な記載であったものを、訂正事項2による訂正によって、「本体部」とすることにより、明瞭な記載とする、すなわち、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるといえる。 訂正事項2は、上述のとおり訂正後の請求項2の記載を請求項1の記載と整合させるものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、訂正事項1に伴って明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるための訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。 また、上記(1)イ及びウで述べたのと同様の理由により、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 [本件発明1] 「 蓋部と、一端側に底部、他端側に開口部が形成されて本体部に固定される筒状のケース部材と、該ケース部材の内部で摺動可能に収容されるスライド部材と、前記ケース部材の開口部で回動軸により回動可能に軸支されて前記蓋部に固定される回動部材と、前記ケース部材の前記底部と前記スライド部材との間に介挿されるバネ部材と、を備え、前記本体部と前記蓋部とを回動可能に連結するヒンジであって、 前記蓋部は複合機の原稿圧着板を構成し、 前記本体部は前記複合機の本体を構成し、 前記回動部材は、前記ケース部材に対して相対的に回動することにより、前記ケース部材に最も近接する閉塞状態と、前記ケース部材から最も離間する開放状態と、前記閉塞状態と前記開放状態との間で、前記ケース部材に対する角度が第一の所定角度となる第一状態と、前記ケース部材に対する角度が前記第一の所定角度よりも大きな第二の所定角度となる第二状態と、を遷移可能に構成され、 前記第一の所定角度は、前記開放状態よりも前記閉塞状態に近い角度に設定され、 前記第二の所定角度は、前記閉塞状態よりも前記開放状態に近い角度に設定され、 前記回動部材における前記スライド部材の側には、前記スライド部材に当接するとともに、前記回動部材の回動によって前記スライド部材に近接離間するカム部が形成され、 前記回動部材は、前記バネ部材の付勢力により前記ケース部材から離間する回動方向に回動トルクを付与されるとともに、前記蓋部の重量により前記ケース部材に近接する回動方向に重量トルクが付与され、 前記重量トルクは、前記ケース部材に対する前記回動部材の角度の減少に伴って増加し、 前記回動部材が前記開放状態に位置する際の前記回動トルクは、前記重量トルクよりも大きく、 前記回動部材が前記開放状態から前記第二状態に変位する際の前記回動トルクは、前記ケース部材に対する前記回動部材の角度の減少に伴って減少し、 前記回動部材が前記第二状態に位置する際の前記回動トルクは、前記重量トルクよりも小さく、 前記回動部材が前記第二状態から前記第一状態に変位する際の前記回動トルクは、前記重量トルクの増加分と同程度増加し、 前記回動部材が前記第一状態に位置する際の前記回動トルクは、前記重量トルクよりも小さく、 前記回動部材が前記閉塞状態に位置する際の前記回動トルクは、前記回動部材が前記第一状態に位置する際の前記回動トルクよりも小さく、 前記回動部材が前記閉塞状態に位置する際の前記回動トルクは、前記重量トルクよりも小さく、 前記回動部材が前記第一状態から前記閉塞状態へ変位する際の前記回動トルクは、前記第一状態から前記閉塞状態へ変位する過程の一部分で増大しつつ、前記ケース部材に対する前記回動部材の角度の減少に伴って全体として減少する、ヒンジ。」 [本件発明2] 「 前記回動部材における前記カム部には、他の部分よりも前記スライド部材との摩擦力を高くした高摩擦部が形成され、 前記回動部材が前記第一状態から前記閉塞状態に変位する間に前記高摩擦部が前記スライド部材に当接することにより、前記回動部材が前記本体部の上面に当接する衝撃を緩和する、請求項1に記載のヒンジ。」 [本件発明3] 「 前記回動部材における前記高摩擦部には、他の部分よりも前記スライド部材との摩擦力を高くした高摩擦部材が組み込まれる、請求項2に記載のヒンジ。」 [本件発明4] 「 前記回動部材における前記高摩擦部にはシボ加工によって凹凸が形成される、請求項2又は請求項3に記載のヒンジ。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由 訂正前の請求項1に係る特許に対して、当審が令和5年3月13日付けで特許権者に対して通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。 請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第14号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 甲第1号証:実願平5-41185号(実開平7-6455号)のCD-ROM 甲第14号証:特開2015-17678号公報 なお、上記甲第1号証、甲第14号証は、特許異議申立人が特許異議申立書に添付した甲第1号証、甲第14号証である。 第5 当審の判断 1 引用文献の記載等 (1)甲第1号証 取消理由通知(決定の予告)で引用された甲第1号証には次の記載がある(下線は当審で付し たもの。甲第14号証においても同様。)。 「【請求項1】 装置本体上に縦方向に取リ付ける構造のスプリングケースと、このスプリングケースと直交する方向に回動自在に軸支されたところの開閉体を取り付ける構造を有する回転シャフトと、前記スプリングケース内に一方向に附勢されて摺動自在に収装されたスライダーと、このスライダーを附勢力に抗して摺動させるために前記回転シャフトに取り付けられたカム部材と、前記スライダーの摺動動作を緩衝させるために前記スプリングケース内に収装されたスラストダンパー機構とで構成したことを特徴とする、ダンパー付ヒンジ。」 「【図面の簡単な説明】 【図1】この考案に係るダンパー付ヒンジを用いた洋式便器の平面図である。 【図2】この考案に係るダンパー付ヒンジ便用状態を示す正面図である。 【図3】図2のA-A線断面図である。 【図4】図3のB-B線断面図である。 【図5】カム部材の背面図である。 【図6】カム部材の図5において見た左側面図ある。 【図7】カム部材の図5において見た右側面図である。 【図8】回転シャフトの正面図である。 【図9】回転シャフトの左側面図である。 【図10】回転シャフトの右側面図である。 【図11】図3に対応しこの考案に係るダンパー付ヒンジの動作を説明するための説明図である。 【図12】図3乃至図10に示したダンパー付ヒンジを便座開閉用に用いた場合のトルク曲線図である。 【図13】ダンパー付ヒンジの他の実施例のものに用いるカム部材の左側面図である。 【図14】図14に係るカム部材を用いたダンパー付ヒンジのトルク曲線図である。」 「【0001】 【産業上の利用分野】 この考案は、とくに洋式便器の便座や便蓋等の開閉体の開閉用に用いて好適なダンパー付ヒンジに関する。」 「【0004】 【課題を解決するための手段】 上述した目的を達成するためにこの考案は、装置本体上に縦方向に取リ付ける構造のスプリングケースと、このスプリングケースと直交する方向に回動自在に軸支されたところの開閉体を取り付ける構造を有する回転シャフトと、前記スプリングケース内に一方向に附勢されて摺動自在に収装されたスライダーと、このスライダーを附勢力に抗して摺動させるために前記回転シャフトに取り付けられたカム部材と、前記スライダーの摺動動作を緩衝させるために前記スプリングケース内に収装されたスラストダンパー機構とで構成したものである。」 「【0007】 【作用】 開閉体を取り付けた回転シャフトが該開閉体の開閉操作と共に回転すると、該回転シャフトはカム部材を一方向へ摺動附勢させているスライダーを介して一方向へ回転を附勢されているので、開閉体を開く際にはこれを軽く開くことができ、閉じる際には開閉体の急激な落下を防止することができる上に、この落下動作はダンパー機構によっても制御され、とくに開閉体の重量(回転トルク)がスライダーに対する附勢力より勝り始める20°からの閉成角度において、スラストダンパー機構によるダンパー作用により開閉体はよりソフトに閉じられる。尚、ダンパー作用は開閉体の閉成時にのみ機能し、開成時にはほとんど機能し ない。」 「【0010】 【実施例】 図面はこの考案を洋式便器の便座や便蓋の開閉用として実施した実施例を示し、図1において、1は洋式便器の装置本体、2は水タンクである。装置本体1の上部後方の両側部には一対のダンパー付ヒンジ3、3を介して便座4や便蓋5が開閉自在に装置本体1へ取り付けられている。即ち、便座4及び便蓋5の各取付部4a、4b・5a、5bは、後述する構造のダンパー付ヒンジ3、3の各回転シャフトに取り付けた支軸によって軸支されているが、その際各取付部4a、4b・5a、5bはその各々の一方のみが支軸に固定され、他方は該支軸に回転自在に軸支されている。したがって、一対のダンパー付ヒンジ3、3の一方のものは便座用のものであり、他方のものは便蓋用のものということになる。 【0011】 図2乃至図10はこの考案に係るダンパー付ヒンジの内部構造とその機能を示す。以下に図1の右側のダンパー付ヒンジ3について説明するが、左側のダンパー付ヒンジ3も後述するように一部の構造が相違するのみで他は同じである。 【0012】 図面によれば10は例えば洋式便器の装置本体1上にその取付部10a、10aを固着させたスプリングケースであり、その上部に突設した両側板10b、10b間には回転シャフト11が回転自在に軸支されている。この回転シャフト11の一側部には後述する様に変形穴11eが設けられ、この変形穴11aに変形部12aを有する支軸12が嵌入係止されると共に、この支軸12の変形部12aに便座4の取付部の一方4aが係合軸支され、円形部12bに便蓋5の取付部5aが回動自在に軸支されている。スプリングケース10内には上部に円柱状の当接部13aを有するスライダー13が摺動自在に収納されており、このスライダー13とスプリングケース10の底部との間にはコンプレッションスプリング14が弾設されている。回転シャフト11の略中央部にはカム部材15が固着されており、図3に示したようにそのカム部15aの始端部15bをスライダー13の当接部13aと当接させている。この当接部13aは図3に示したように回転シャフト11の軸芯より若干左側に位置している。」 「【0014】 カム部材15のカム部15aは、とくに図5乃至図7に示したように始端部15bから次第に軸芯に近ずく軌跡を描き、該始端部15bに続いて第一凹部15c、湾曲部15d、第2凹部15e、凸部15f及び第3凹部15gが順に設けられている。カム部材15の軸芯部には回転シャフト11と嵌合する変形孔15hが設けられている。」 「【0016】 図12は上述したダンパー付ヒンジで便座を開閉する場合のトルク曲線図であり、図面によればカム部材とコンプレッションスプリングの示すヒンジトルク曲線(b)は90°近くまで便座の示すモーメント曲線(a)を下回っているが、90°を超えるとヒンジトルク(b)が勝り始めることから便座は自動的に図11に示したように110°まで開かれる。ダンパー機構16による緩衝機能は片ぎきであり、便座4の閉成時のみしか機能しないが、そのモーメント(c)は常に便座のモーメント曲線(a)を上回っているので、便座はソフトかつ静かに閉じられる。」 「【0018】 以上の実施例は本願考案に係るダンパー付ヒンジをいずれも洋式便器の便座や便蓋の開閉用として用いたものを示したが、このものに限定されるものではなく、他の例えば複写機や印刷機の原稿圧着板開閉装置や、ピアノの蓋等の開閉装置としても応用できるものである。」 「【図1】 [図:0001405773000001.jpg] 」 「【図2】 [図:0001405773000002.jpg] 」 「【図3】 [図:0001405773000003.jpg] 」 「【図4】 [図:0001405773000004.jpg] 」 「【図5】 [図:0001405773000005.jpg] 」 「【図6】 [図:0001405773000006.jpg] 」 「【図7】 [図:0001405773000007.jpg] 」 「【図12】 [図:0001405773000008.jpg] 」 図12より、便座のモーメント曲線(a)は、概ね、110°から0°までの間、閉成角度の減少に伴って増加し、110°のヒンジトルク(b)は、便座のモーメント曲線(a)よりも大きく、110°から100°までのヒンジトルク(b)は、閉成角度の減少に伴って増加し、100°から80°までのヒンジトルク(b)は、概ね、閉成角度の減少に伴って減少し、80°を少し上回った角度のヒンジトルク(b)は、便座のモーメント曲線(a)よりも小さく、80°から20°を少し上回った角度までのヒンジトルク(b)は、同角度範囲の便座のモーメント曲線と同程度の傾きの曲線であるから、80°から20°を少し上回った角度までのヒンジトルク(b)は、概ね、便座のモーメント曲線(a)の増加分と同程度増加しているといえ、20°を少し上回った角度のヒンジトルク(b)は、便座のモーメント曲線(a)よりも小さく、0°のヒンジトルク(b)は、20°を少し上回った角度近傍のヒンジトルク(b)と同等であり、かつ、0°の便座のモーメント曲線(a)よりも小さく、ヒンジトルク(b)は、20°を少し上回った角度から0°にかけて一度増大していると認められる。 以上の甲第1号証の記載及び図12より認定される上記事項より、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 [甲1発明] 「洋式便器の装置本体1上に縦方向に取リ付ける構造のスプリングケース10と、 前記スプリングケース10と直交する方向に回動自在に軸支された回転シャフト11と、前記回転シャフト11に嵌入係止された支軸12であって、便座4又は便蓋5の取付部4a、5aが係合軸止又は回転自在に軸止された支軸12と、 前記スプリングケース10内に一方向に附勢されて摺動自在に収納され、上部に円柱状の当接部13aを有するスライダー13と、 前記スプリングケース10の底部と前記スライダー13との間に弾設されたコンプレッションスプリング14と、 前記スライダー13を附勢力に抗して摺動させるために前記回転シャフト11に取り付けられ、カム部15aの始端部15bを前記スライダー13の前記当接部13aに当接されたカム部材15と、 前記スライダー13の摺動動作を緩衝させるために前記スプリングケース10内に収装されたスラストダンパー機構とで構成したダンパー付ヒンジ3であって、 前記カム部材15の前記カム部15aは、前記始端部15bから次第に軸芯に近づく軌跡を描き、前記始端部15bに続いて第一凹部15c、湾曲部15d、第2凹部15e、凸部15f及び第3凹部15gが順に設けられたものであって、 便座4及び便蓋5は、110°まで開くものであり、 前記カム部材15を含むダンパー付ヒンジ3を便座開閉用に用いた場合のトルク曲線図は、便座のモーメント曲線(a)及びヒンジトルク(b)が図12に図示した態様であって、 当該態様とは、便座のモーメント曲線(a)は、概ね、110°から0°までの間、閉成角度の減少に伴って増加し、110°のヒンジトルク(b)は、便座のモーメント曲線(a)よりも大きく、110°から100°までのヒンジトルク(b)は、閉成角度の減少に伴って増加し、100°から80°までのヒンジトルク(b)は、概ね、閉成角度の減少に伴って減少し、80°を少し上回った角度のヒンジトルク(b)は、便座のモーメント曲線(a)よりも小さく、80°から20°を少し上回った角度までのヒンジトルク(b)は、概ね、便座のモーメント曲線(a)の増加分と同程度増加し、20°を少し上回った角度のヒンジトルク(b)は、便座のモーメント曲線(a)よりも小さく、0°のヒンジトルク(b)は、20°を少し上回った角度近傍のヒンジトルク(b)と同等であり、かつ、0°の便座のモーメント曲線(a)よりも小さく、ヒンジトルク(b)は、20°を少し上回った角度から0°にかけて一度増大する態様である、 ダンパー付ヒンジ3。」 (2)甲第14号証 取消理由通知(決定の予告)で引用された甲第14号証には次の記載がある。 「【0026】 図6、図7、図8に示すようにカバー開閉装置100は、シュレッダ1に取り付けられる取付け部材110と、この取付け部材110に回動軸ピン120を介して回動可能に設けられているとともにカバー3に取り付けられる回動部材130と、回動部材130を開く方向へスライダー140を介して付勢する圧縮コイルバネ150,151とを備えている。 【0027】 取付け部材110は全体として段付きの角状を成し、上部が開口しており、一対の相向かい合う側板111a、111bで回動支持部112を形成する。下半部を成す角筒形状の部分の内部には空間が形成される。角筒部113の一端部は閉塞されており、底壁114には円筒形状のバネ位置決め突起115が突設されている。また、角筒部(脚部)113の外側面部には外方に向けて複数のリブ160a、160b、160cを突設し、底面に突設した複数のリブ161a、161b、161cと底面で直交し対向する外側面まで延設している。これらのリブによって、後述する圧縮コイルバネの付勢力が大きくかかる角筒部113の底壁114、及び角筒部(脚部)113全体の補強を図っている。取付け部116は矩形を成した板状で、ネジ孔117が複数穿設されている。カバー開閉装置100をシュレッダ1の後端部41に設置するには、前記角筒部(脚部)113を前記後端部41に埋め込んで前記取付け部116を図示しない複数のネジで螺接する。」 「【図6】 [図:0001405773000009.jpg] 」 「【図7】 [図:0001405773000010.jpg] 」 「【図8】 [図:0001405773000011.jpg] 」 以上の甲第14号証の記載より、甲第14号証には次の事項(以下、「甲14事項」という。)が記載されているといえる。 [甲14事項] 「カバー開閉装置100の取付け部材110は、上部が開口しており、下半部を成す角筒形状の部分の内部に空間が形成されること。」 (3)特許異議申立人の提出したその他の証拠 特許異議申立人は、上記甲第1号証及び甲第14号証に加え、特許異議申立書の提出と共に、以下の甲第2号証~甲第13号証及び甲第15号証を提出し、また、令和5年7月5日に提出した意見書と共に以下の甲第16号証~甲第18号証を提出している。 甲第2号証:特開昭61-275738号公報 甲第3号証:特開平3-184059号公報 甲第4号証:特開2009-115928号公報 甲第5号証:特開2009-71804号公報 甲第6号証:特開平10-220093号公報 甲第7号証:実開平1-153542号公報 甲第8号証:特開2013-137555号公報 甲第9号証:特開2017-21244号公報 甲第10号証:特開2007-309381号公報 甲第11号証:特開2009-115928号公報 甲第12号証:特開2010-216564号公報 甲第13号証:特開2013-47544号公報 甲第15号証:特開2001-242559号公報 甲第16号証:特開2012-57663号公報 甲第17号証:特開平9-62399号公報 甲第18号証:特開2015-148296号公報 3 本件発明1についての当審の判断 (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、次のとおりである。 (ア)ヒンジの構成 a 甲1発明の「洋式便器の装置本体1」は、本件発明1の「複合機の本体を構成」する「本体部」との対比において「本体部」との限度で一致する。 同様に、甲1発明の「便座4」及び「便蓋5」は、本件発明1の「複合機の原稿圧着板を構成」する「蓋部」との対比において、「蓋部」の限度で一致する。 甲1発明の「スプリングケース10」は、本件発明1の「ケース部材」に相当し、同様に、「支軸12」は「回動軸」に、「取付部4a、5a」及び「回転シャフト11」は「回動部材」に、「スライダー13」は「スライド部材」に、「コンプレッションスプリング14」は「バネ部材」に、「カム部材15」は「カム部」に、「ダンパー付ヒンジ3」は「ヒンジ」に、それぞれ相当する。 b 甲1発明の「洋式便器の装置本体1上に縦方向に取リ付ける構造のスプリングケース10」であって「底部」を有する「スプリングケース10」は、上記a及び甲1の図3,4の図示された態様によれば、本件発明1の「一端側に底部、他端側に開口部が形成されて本体部に固定される」「ケース部材」に相当する。 c 上記a及びbによれば、甲1発明の「前記スプリングケース10内に一方向に附勢されて摺動自在に収納され、上部に円柱状の当接部13aを有するスライダー13」は、本件発明1の「該ケース部材の内部で摺動可能に収容されるスライド部材」に相当する。 d 上記a及びbによれば、甲1発明の「前記スプリングケース10と直交する方向に回動自在に軸支された回転シャフト11」、及び、当該「回転シャフト11」に「嵌入係止された支軸12」に「係合軸止又は回転自在に軸止された」「便座4又は便蓋5の取付部4a、5a」は、本件発明1の「前記ケース部材の開口部で回動軸により回動可能に軸支されて前記蓋部に固定される回動部材」に相当する。 e 上記a~cによれば、甲1発明の「前記スプリングケース10の底部と前記スライダー13との間に弾設されたコンプレッションスプリング14」は、本件発明1の「前記ケース部材の前記底部と前記スライド部材との間に介挿されるバネ部材」に相当する。 f 上記a~eによれば、甲1発明の「洋式便器の装置本体1上に縦方向に取リ付ける構造のスプリングケース10と、前記スプリングケース10と直交する方向に回動自在に軸支された回転シャフト11と、前記回転シャフト11に嵌入係止された支軸12であって、便座4又は便蓋5の取付部4a、5aが係合軸止又は回転自在に軸止された支軸12と、前記スプリングケース10内に一方向に附勢されて摺動自在に収納され、上部に円柱状の当接部13aを有するスライダー13と、前記スプリングケース10の底部と前記スライダー13との間に弾設されたコンプレッションスプリング14と、前記スライダー13を附勢力に抗して摺動させるために前記回転シャフト11に取り付けられ、カム部15aの始端部15bを前記スライダー13の前記当接部13aに当接されたカム部材15と、前記スライダー13の摺動動作を緩衝させるために前記スプリングケース10内に収装されたスラストダンパー機構とで構成したダンパー付ヒンジ3」は、本件発明1の「蓋部と、一端側に底部、他端側に開口部が形成されて本体部に固定される」「ケース部材と、該ケース部材の内部で摺動可能に収容されるスライド部材と、前記ケース部材の開口部で回動軸により回動可能に軸支されて前記蓋部に固定される回動部材と、前記ケース部材の前記底部と前記スライド部材との間に介挿されるバネ部材と、を備え、前記本体部と前記蓋部とを回動可能に連結するヒンジ」に相当する。 (イ)回動部材の構成 a 甲1発明の「閉成角度」は、本件発明1の「前記ケース部材に対する前記回動部材の角度」に相当する。 b 甲1発明の「閉成角度」が「0°」の状態は、本件発明1の「回動部材」が「前記ケース部材に最も近接する閉塞状態」に相当し、以下同様に、「閉成角度」が「110°」の状態は「前記ケース部材から最も離間する開放状態」に、「閉成角度」が「20°を少し上回った角度近傍」の状態は「前記閉塞状態と前記開放状態との間で、前記ケース部材に対する角度が第一の所定角度となる第一状態」に、「閉成角度」が「80°を少し上回った角度」の状態は「前記ケース部材に対する角度が前記第一の所定角度よりも大きな第二の所定角度となる第二状態」に、それぞれ相当する。 そして、甲1発明の「閉成角度」が「20°を少し上回った角度」は、110°よりも0°に近い角度といえるから、本件発明1の「前記開放状態よりも前記閉塞状態に近い角度に設定され」た、「第1の所定角度」に相当し、同様に、甲1発明の「閉成角度」が「80°を少し上回った角度」は、0°よりも110°に近い角度といえるから、本件発明1の「前記閉塞状態よりも前記開放状態に近い角度に設定され」た、「第2の所定角度」に相当する。 c 甲1発明の「前記カム部材15を含むダンパー付ヒンジ3を便座開閉用に用いた場合のトルク曲線図は、便座のモーメント曲線(a)及びヒンジトルク(b)が図12に図示した態様であ」る「カム部材15」が「取り付けられ」た「回転シャフト11」は、上記(ア)a~f及び上記a~bに照らして、本件発明1の「前記ケース部材に対して相対的に回動することにより、前記ケース部材に最も近接する閉塞状態と、前記ケース部材から最も離間する開放状態と、前記閉塞状態と前記開放状態との間で、前記ケース部材に対する角度が第一の所定角度となる第一状態と、前記ケース部材に対する角度が前記第一の所定角度よりも大きな第二の所定角度となる第二状態と、を遷移可能に構成され」た「前記回動部材」に相当する。 d 甲1発明の「前記始端部15bから次第に軸芯に近づく軌跡を描き、前記始端部15bに続いて第一凹部15c、湾曲部15d、第2凹部15e、凸部15f及び第3凹部15gが順に設けられた」「前記カム部材15の前記カム部15a」が「取り付けられ」た「回転シャフト11」は、上記(ア)a~f及び上記a~cに照らして、本件発明1の「前記回動部材における前記スライド部材の側には、前記スライド部材に当接するとともに、前記回動部材の回動によって前記スライド部材に近接離間するカム部が形成され」た「前記回動部材」に相当する。 (ウ)回動トルク及び重量トルクの構成 a 甲1発明の「ヒンジトルク(b)」は、蓋部材である便座を開く方向に作用する力であるので、本件発明1の「回動トルク」に、甲1発明の「便座のモーメント曲線(a)」は、蓋部材である便座の重量により発生する力を示すものなので、本件発明1の「重量トルク」に、それぞれ相当する。 b 甲1発明の「前記カム部材15を含むダンパー付ヒンジ3を便座開閉用に用いた場合のトルク曲線図は、便座のモーメント曲線(a)及びヒンジトルク(b)が図12に図示した態様であ」ることは、上記(ア)、(イ)及び上記aに照らして、本件発明1の「前記回動部材は、前記バネ部材の付勢力により前記ケース部材から離間する回動方向に回動トルクを付与されるとともに、前記蓋部の重量により前記ケース部材に近接する回動方向に重量トルクが付与され」ることに相当する。 c 上記(イ)並びに上記a及びbによれば、甲1発明の「便座のモーメント曲線(a)は、概ね、110°から0°までの間、閉成角度の減少に伴って増加し」は、本件発明1の「前記重量トルクは、前記ケース部材に対する前記回動部材の角度の減少に伴って増加し」に相当する。 d 上記(イ)並びに上記a及びbによれば、甲1発明の「110°のヒンジトルク(b)は、便座のモーメント曲線(a)よりも大きく」は、本件発明1の「前記回動部材が前記開放状態に位置する際の前記回動トルクは、前記重量トルクよりも大きく」に相当する。 e 上記(イ)並びに上記a及びbによれば、甲1発明の「80°近傍のヒンジトルク(b)は、便座のモーメント曲線(a)よりも小さく」は、本件発明1の「前記回動部材が前記第二状態に位置する際の前記回動トルクは、前記重量トルクよりも小さく」に相当する。 f 上記(イ)並びに上記a及びbによれば、甲1発明の「80°から20°を少し上回った角度までのヒンジトルク(b)は、概ね、便座のモーメント曲線(a)の増加分と同程度増加し」は、本件発明1の「前記回動部材が前記第二状態から前記第一状態に変位する際の前記回動トルクは、前記重量トルクの増加分と同程度増加し」に相当する。 g 上記(イ)並びに上記a及びbによれば、甲1発明の「20°を少し上回った角度のヒンジトルク(b)は、便座のモーメント曲線(a)よりも小さく」は、本件発明1の「前記回動部材が前記第一状態に位置する際の前記回動トルクは、前記重量トルクよりも小さく」に相当する。 h 上記(イ)並びに上記a及びbによれば、甲1発明の「0°のヒンジトルク(b)は、20°を少し上回った角度のヒンジトルク(b)よりも小さく」は、本件発明1の「前記回動部材が前記閉塞状態に位置する際の前記回動トルクは、前記回動部材が前記第一状態に位置する際の前記回動トルクよりも小さく」に相当する。 i 上記(イ)並びに上記a及びbによれば、甲1発明の「0°のヒンジトルク(b)は」「0°の便座のモーメント曲線(a)よりも小さい態様である」は、本件発明1の「前記回動部材が前記閉塞状態に位置する際の前記回動トルクは、前記重量トルクよりも小さい」に相当する。 j 上記(イ)並びに上記a及びbによれば、甲1発明の「ヒンジトルク(b)は、20°を少し上回った角度から0°にかけて一度増大する」は、本件発明1の「前記回動部材が前記第一状態から前記閉塞状態へ変位する際の前記回動トルクは、前記第一状態から前記閉塞状態へ変位する過程の一部で増大」することに相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明は、次の点で一致し、相違するものと認められる。 (一致点) 「蓋部と、一端側に底部、他端側に開口部が形成されて本体部に固定されるケース部材と、該ケース部材の内部で摺動可能に収容されるスライド部材と、前記ケース部材の開口部で回動軸により回動可能に軸支されて前記蓋部に固定される回動部材と、前記ケース部材の前記底部と前記スライド部材との間に介挿されるバネ部材と、を備え、前記本体部と前記蓋部とを回動可能に連結するヒンジであって、 前記回動部材は、前記ケース部材に対して相対的に回動することにより、前記ケース部材に最も近接する閉塞状態と、前記ケース部材から最も離間する開放状態と、前記閉塞状態と前記開放状態との間で、前記ケース部材に対する角度が第一の所定角度となる第一状態と、前記ケース部材に対する角度が前記第一の所定角度よりも大きな第二の所定角度となる第二状態と、を遷移可能に構成され、 前記第一の所定角度は、前記開放状態よりも前記閉塞状態に近い角度に設定され、 前記第二の所定角度は、前記閉塞状態よりも前記開放状態に近い角度に設定され、 前記回動部材における前記スライド部材の側には、前記スライド部材に当接するとともに、前記回動部材の回動によって前記スライド部材に近接離間するカム部が形成され、 前記回動部材は、前記バネ部材の付勢力により前記ケース部材から離間する回動方向に回動トルクを付与されるとともに、前記蓋部の重量により前記ケース部材に近接する回動方向に重量トルクが付与され、 前記重量トルクは、前記ケース部材に対する前記回動部材の角度の減少に伴って増加し、 前記回動部材が前記開放状態に位置する際の前記回動トルクは、前記重量トルクよりも大きく、 前記回動部材が前記第二状態に位置する際の前記回動トルクは、前記重量トルクよりも小さく、 前記回動部材が前記第二状態から前記第一状態に変位する際の前記回動トルクは、前記重量トルクの増加分と同程度増加し、 前記回動部材が前記第一状態に位置する際の前記回動トルクは、前記重量トルクよりも小さく、 前記回動部材が前記閉塞状態に位置する際の前記回動トルクは、前記回動部材が前記第一状態に位置する際の前記回動トルクよりも小さく、 前記回動部材が前記閉塞状態に位置する際の前記回動トルクは、前記重量トルクよりも小さい、ヒンジ。」 (相違点1) 本件発明1の蓋部は、「複合機の原稿圧着板を構成し」、本体部は、「前記複合機の本体を構成」しているものであるのに対し、甲1発明の蓋部は、「便座4」及び「便蓋5」であり、甲1発明の本体部は、「洋式便器の装置本体1」である点。 (相違点2) 本件発明1は、「前記回動部材が前記開放状態から前記第二状態に変位する際の前記回動トルクは、増大することなく前記ケース部材に対する前記回動部材の角度の減少に伴って減少する」ものであるのに対し、甲1発明は、「110°から100°までのヒンジトルク(b)は、閉成角度の減少に伴って増加し、100°から80°までのヒンジトルク(b)は、概ね、閉成角度の減少に伴って減少」するものとされている点。 (相違点3) 本件発明1は、「前記回動部材が前記第一状態から前記閉塞状態へ変位する際の前記回動トルクは、前記第一状態から前記閉塞状態へ変位する過程の一部分で増大しつつ、前記ケース部材に対する前記回動部材の角度の減少に伴って全体として減少する」ものであるのに対し、甲1発明は、「0°のヒンジトルク(b)は、20°を少し上回った角度のヒンジトルク(b)と同等であり、かつ、0°の便座のモーメント曲線(a)よりも小さく、ヒンジトルク(b)は、20°を少し上回った角度から0°にかけて一度増大する態様である」である、すなわち、ヒンジトルク(b)は、20°を少し上回った角度から0°へ変位する過程の一部分で一度増大するものの、角度の減少に伴って全体として減少するものとはされていない点。 (相違点4) 本件発明の「ケース部材」は「筒状」であるのに対して、甲1発明の「スプリングケース10」は「筒状」であることの特定がなされていない点。 (2)判断 ア 事案に鑑み、相違点3について検討する。 甲1発明では、「0°のヒンジトルク(b)は、20°を少し上回った角度のヒンジトルク(b)と同等」とされており、便座が20°を少し上回った角度から0°へ変位する際の回動トルクは、便座の角度の減少に伴って全体として減少するものではない。そして甲第1号証には、便座が20°を少し上回った角度から0°へ変位する際の回動トルクを、便座の角度の減少に伴って全体として減少するものとすることは開示も示唆もされていない。 また、特許異議申立人の提出した甲第2号証~甲第13号証及び甲第15号証並びに甲第16号証~甲第18号証にも、ヒンジにおいて、ヒンジの閉塞状態の少し前の状態から閉塞状態までの間で、ヒンジが閉じることに伴ってヒンジを開く方向に作用する力(本件発明1の「回動トルク」に相当する。)を、ヒンジを閉じるに伴って一部分で増大しつつ、全体として減少させることは開示されていないし、当業者にとってかかる技術が周知・慣用であるとの証拠もない。 そうだとすれば、甲1発明において、相違点3に係る本件発明1の構成となすことは当業者といえども容易に想到し得たことではない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 異議申立人の意見書での主張について 特許異議申立人は、令和5年7月5日に提出した意見書において、甲第16号証を示しつつ、概略、甲第16号証には、相違点3に係る本件発明1の構成を含め、本件訂正後の請求項1~4に係る発明に対応する発明が記載されているから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべき旨主張しているので、以下この点について検討する。 (ア)甲第16号証について 相違点3に関し、甲第16号証(特開2012-57663号公報)には、次の記載がある(下線は、当審で付したもの。)。 「【0066】 以下では、図1および図5を用いてバネ150について説明する。 バネ150は本発明に係る付勢部材の実施の一形態である。 本実施形態のバネ150は金属材料からなる巻きバネであり、圧縮バネ(圧縮された状態で使用されるバネ)である。 図5に示す如く、バネ150はケース部材110の内部に収容される。 ケース部材110の内部に収容されたバネ150の一端部(下端部)は底板115の上側の板面に当接し、バネ150の他端部(上端部)はスライダ140のバネ受け穴148に挿入され、バネ受け穴148の頂面に当接する。 バネ150はスライダ140をケース部材110の開口部分(上端部)から突出する方向、すなわちケース部材110に回動可能に連結された回動部材120に接近する方向(本実施形態では上方)に付勢し、スライダ140の上面141に形成された突起147を回動部材120のカム部121のカム面121aに当接させる。 その結果、バネ150の付勢力(圧縮される方向に弾性変形したバネ150が元の形状に戻ろうとする力)はスライダ140を経て回動部材120に伝達され、回動部材120はケース部材110に対して右側面視で反時計回りに回動する方向に付勢され、原稿圧着板13は本体12に対して開く方向に付勢される(図1参照)。 このように、バネ150は原稿圧着板13が本体12に対して開く方向に回動するように回動部材120にトルクを付与する。」 「【0090】 以下では(2)「フリーストップ領域」および「落下領域」について説明する。 図1に示す如く、本実施形態では、原稿圧着板13の回動角度θが10°以上(θ≧10°)の場合には原稿圧着板13が「フリーストップ領域」に属し、原稿圧着板13の回動角度θが10°未満(0°≦θ<10°)の場合には原稿圧着板13が「落下領域」に属する。 【0091】 本実施形態における「フリーストップ領域」は、(A)「原稿圧着板13の重量に起因して回動ピン130を中心として回動部材120に作用する回転力(トルク)」と(B)「バネ150の付勢力に起因して回動ピン130を中心として回動部材120に作用する回転力(トルク)」とが概ね平衡する領域である。 ここで、『本実施形態における「フリーストップ領域」では(A)の回転力と(B)の回転力とが概ね平衡する』としたのは、本実施形態における「フリーストップ領域」には、(α)「(A)の回転力と(B)の回転力とが完全に平衡する領域((A)-(B)=0が成立する領域)」だけでなく、(β)「(A)の回転力と(B)の回転力との間に差分があり((A)-(B)≠0)、かつカム面121aと突起147との当接部分に発生する摩擦力が当該差分を相殺可能な領域」も含まれるからである。なお、(A)の回転力と(B)の回転力との間の差分は正の値の場合も負の値の場合もあり得る。」 「【0094】 本実施形態における「落下領域」は(A)の回転力が(B)の回転力よりも大きくなる領域である。より厳密には、本実施形態における「落下領域」は「(A)の回転力が(B)の回転力よりも大きく、かつカム面121aと突起147との当接部分に発生する摩擦力が(A)の回転力と(B)の回転力との差分を相殺不能な領域」である。 原稿圧着板13が「落下領域」に属するときに作業者が原稿圧着板13から手を離した場合、原稿圧着板13は自重(より厳密には、(A)の回転力と(B)の回転力との差分)により閉じる方向に回動する。 【0095】 本実施形態では、原稿圧着板13が「落下領域」に属するとき、原稿圧着板13の回動角度θが変化してもケース部材110に対するスライダ140の位置がほとんど変化しない。 より厳密には、原稿圧着板13が「落下領域」に属するときには原稿圧着板13の回動角度θが変化してもケース部材110に対するスライダ140の位置がほとんど変化しないように回動部材120(カム部121)およびスライダ140(突起147)の形状が予め設定される。 その結果、原稿圧着板13が「落下領域」に属するときには(B)の回転力は実質的にゼロとなり、(A)の回転力が(B)の回転力よりも大きくなる。」 「【図1】 [図:0001405773000012.jpg] 」 「【図5】 [図:0001405773000013.jpg] 」 (イ)当審の判断 上記甲第16号証の記載によれば、甲第16号証には、事務機器の原稿圧着板13(本件発明1の「原稿圧着板」に相当する。以下、()内は同様。)について、原稿圧着板13が落下領域(第一領域から閉塞状態へ変位する際)に属するときには、バネ150によって原稿圧着版13が本体12に対して開く方向に回動するように回動部材120に作用する回転力(B)の回転力(回動トルク)が実質的にゼロとなり、原稿圧着版13の重量に起因して原稿圧着版13が本体12に対して閉じる方向に回動するように回動部材120作用する回転力(A)(重量トルク)の回転力が(B)の回転力よりも大きくなるという技術的事項(以下、「甲16事項」という。)が記載されているといえる。 しかしながら、甲16事項においても、本件発明1の「第一領域から閉塞状態へ変位する際」に相当する「落下領域」において、本件発明1の「回動トルク」に相当する、「バネ150によって原稿圧着版13が本体12に対して開く方向に回動するように回動部材120に作用する回転力(B)の回転力」が、原稿圧着板13の角度の減少に伴って全体として減少することは開示ないし示唆されているとはいえない。 この点について、より詳細にみれば、甲第16号証の段落【0095】には、「より厳密には、原稿圧着板13が「落下領域」に属するときには原稿圧着板13の回動角度θが変化してもケース部材110に対するスライダ140の位置がほとんど変化しないように回動部材120(カム部121)およびスライダ140(突起147)の形状が予め設定される。」と記載されていることからすれば、甲16事項における「バネ150によって原稿圧着版13が本体12に対して開く方向に回動するように回動部材120に作用する回転力(B)の回転力(回動トルク)が実質的にゼロ」となるとは、原稿圧着板13の落下領域においては、ケース部材110に対するスライダ140の位置が変化しないため、バネ150によって発生する回転力(A)が変化しないことと理解できる。 このように、甲16事項は、落下領域において、回転力(B)の回転力が、原稿圧着板13の角度の減少に伴って全体として減少することを開示するものではないから、甲第16号証には、相違点3に係る本件発明1の構成である、「前記回動部材が前記第一状態から前記閉塞状態へ変位する際の前記回動トルクは、前記第一状態から前記閉塞状態へ変位する過程の一部分で増大しつつ、前記ケース部材に対する前記回動部材の角度の減少に伴って全体として減少する」に相当する構成は記載も示唆もされていない。 したがって、本件発明1は、甲第16号証に記載された発明であるともいえないし、甲第16号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 よって、異議申立人の意見書での主張は採用できない。 4 本件発明2~4についての当審の判断 本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものである。 上記3で述べたように、本件発明1は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2~4も同様の理由により、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび 以上のとおり、本件の請求項1~4に係る発明の特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。また、他に請求項1~4に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700098

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