特許異議申立
2023-701079
直動案内装置
- 審判番号
- 2023-701079
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-105615
- 登録番号
- 7255367
- 請求日
- 2023年10月10日
- 審決日
- 2024年06月03日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】日本精工株式会社
- 【権利者代理人】小西 恵
- 【権利者代理人】永岡 重幸
- 【異議申立人】伊藤 雅一
- 審判長/審判官
- 審判長 小川 恭司
- 審判官 中屋 裕一郎
- 審判官 尾崎 和寛
- 分類
- P1651.121-ZC (F16C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 行政事件訴訟法46条特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7255367号発明「直動案内装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7255367号の請求項7、11、12に係る特許を取り消す。
同請求項1ないし6、8ないし10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7255367号の請求項1~12に係る特許についての出願は、令和元年6月5日の出願であって、令和5年4月3日にその特許権の設定登録がされ、令和5年4月11日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年10月10日に特許異議申立人 伊藤 雅一(以下「異議申立人」という。)により、本件特許の請求項1~12に係る発明の特許について本件特許異議の申立てがされた。
当審は、令和6年1月15日付けで、請求項7、11及び12に係る特許について取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からの応答はなかった。
その後、令和6年4月18日に異議申立人から、上申書が提出された。
第2 本件特許発明
特許第7255367号の請求項1~12の特許に係る発明(以下、それぞれを「本件特許発明1」~「本件特許発明12」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
案内レールと、スライダと、複数の転動体と、を備える直動案内装置であって、
前記スライダは、前記案内レールの幅方向の両側に配置された一対の袖部と、前記一対の袖部を連結する基部と、を有するスライダ本体を備え、前記案内レールの長手方向に移動可能であり、
前記一対の袖部には、前記スライダの前記長手方向における中心線に対して対称に一対のひずみセンサがそれぞれ配置されており、
一方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサと、他方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサとは、前記スライダの前記幅方向における中心線に対して対称に配置されており、
前記ひずみセンサの検出値を比較し、前記スライダに作用しているモーメント荷重の方向を判別する判別部を備え、
前記判別部は、判別するモーメント荷重の方向に応じて、前記一方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサと、前記他方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサとのうち、対とすべきひずみセンサの組み合わせを変えることを特徴とする直動案内装置。
【請求項2】
前記判別部は、
前記スライダに作用しているモーメント荷重の方向が、
前記長手方向の軸回りのローリング方向、前記幅方向の軸回りのピッチング方向、および前記長手方向と前記幅方向とに直交する厚さ方向の軸回りのヨーイング方向のうちいずれであるかを判別することを特徴とする請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項3】
前記判別部は、
前記ひずみセンサの検出値に基づいて、前記モーメント荷重の大きさを判別することを特徴とする請求項1または2に記載の直動案内装置。
【請求項4】
前記ひずみセンサは、前記袖部の前記幅方向における外側面に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の直動案内装置。
【請求項5】
前記ひずみセンサは、いずれも検出方向が一様であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の直動案内装置。
【請求項6】
前記ひずみセンサは、小型チップにセンサ素子とアンプを含む回路とを集積したMEMSひずみセンサであり、無線通信機能を有した機器と組み合わせることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の直動案内装置。
【請求項7】
案内レールと、スライダと、複数の転動体と、を備える直動案内装置であって、
前記スライダは、前記案内レールの幅方向の両側に配置された一対の袖部と、前記一対の袖部を連結する基部と、を有するスライダ本体を備え、前記案内レールの長手方向に移動可能であり、
前記一対の袖部には、前記スライダの前記長手方向における中心線に対して対称に一対のひずみセンサがそれぞれ配置されており、
一方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサと、他方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサとは、前記スライダの前記幅方向における中心線に対して対称に配置されており、
前記ひずみセンサは、前記袖部の前記幅方向における外側面の表面に配置されていることを特徴とする直動案内装置。
【請求項8】
前記ひずみセンサの検出値を比較し、前記スライダに作用しているモーメント荷重の方向を判別する判別部をさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の直動案内装置。
【請求項9】
前記判別部は、
前記スライダに作用しているモーメント荷重の方向が、
前記長手方向の軸回りのローリング方向、前記幅方向の軸回りのピッチング方向、および前記長手方向と前記幅方向とに直交する厚さ方向の軸回りのヨーイング方向のうちいずれであるかを判別することを特徴とする請求項8に記載の直動案内装置。
【請求項10】
前記判別部は、
前記ひずみセンサの検出値に基づいて、前記モーメント荷重の大きさを判別することを特徴とする請求項8または9に記載の直動案内装置。
【請求項11】
前記ひずみセンサは、いずれも検出方向が一様であることを特徴とする請求項7から10のいずれか1項に記載の直動案内装置。
【請求項12】
前記ひずみセンサは、小型チップにセンサ素子とアンプを含む回路とを集積したMEMSひずみセンサであり、無線通信機能を有した機器と組み合わせることを特徴とする請求項7から11のいずれか1項に記載の直動案内装置。
第3 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が令和6年1月15日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性)本件特許発明7、11及び12は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明7、11及び12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
甲第1号証:欧州特許出願公開第1502700号明細書
甲第2号証:加藤総一郎,「リニアガイド、ローラガイド計算技術と最新技術動向」,主要工作機器活用ガイド2008,日刊工業新聞社,平成20年3月31日,機械設計2008年3月臨時増刊号Vol.52,No.4,p43~47
甲第4号証:特開2008-14327号公報
なお、上記甲各号証は、それぞれ異議申立人が提出した甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証であり、以下、それぞれ、「甲1」、「甲2」、及び「甲4」という。
2 甲各号証の記載事項
(1)甲1について
甲1には、次の記載がある(日本語訳文は、段落[0043]及び[0050]は当審が作成した仮訳であり、その他は甲1の2から摘記したもの。日本語訳文中の下線は、当審にて付したもの。)。
「
[図:0001413339000001.jpg]
[図:0001413339000002.jpg]
」
「
[図:0001413339000003.jpg]
[図:0001413339000004.jpg]
[図:0001413339000005.jpg]
」
「
[図:0001413339000006.jpg]
[図:0001413339000007.jpg]
」
「
[図:0001413339000008.jpg]
[図:0001413339000009.jpg]
」
「
[図:0001413339000010.jpg]
[図:0001413339000011.jpg]
」
「
[図:0001413339000012.jpg]
[図:0001413339000013.jpg]
」
「
[図:0001413339000014.jpg]
[図:0001413339000015.jpg]
」
「
[図:0001413339000016.jpg]
[0043]
本発明による測定システムのさらなるセンサが図3および図4に示されている。これらは、ガイドのガイド軸、すなわちレール2に対するキャリッジ8の横方向の相対運動を検出するために使用される。この目的のために、キャリッジ8には、レール2の4つの転動面5、6のそれぞれに対向する当該キャリッジ8の2つの端部領域に取り付けられた変位センサ31、32、33、34、35、36、37、38を有する。」
「
[図:0001413339000017.jpg]
[図:0001413339000018.jpg]
[0050]
力とモーメントは次の式を使用して決定できる。ここでS31~S38は、図4のセンサ31、32、33、34、35、36、37、38の測定値:」
「Fig1
[図:0001413339000019.jpg]
Fig2
[図:0001413339000020.jpg]
Fig3
[図:0001413339000021.jpg]
」
「Fig5
[図:0001413339000022.jpg]
」
上記記載から、甲1には次の技術的事項が記載されていると認められる。
ア “リニアガイド”は、“レール2”(段落【0034】)と、“キャリッジ8”(段落【0035】)、と“転動体”(段落【0036】)を備えている。また、段落【0035】には「転動体が前記レール(2)の前記支持面(10)及び前記転動面(5,6)の両方に密接し」との記載があるが、図1から、支持面10と転動面5、6の間に“複数”の円筒形の回転物らしきものが見て取れるし、技術常識から考えても、“転動体”は“複数”と認められる。
イ U字型の“キャリッジ8”は、“基本体”(段落【0035】)を有している。また、基本体は、“脚”(段落【0035】)を有するものであるが、図3から、基本体は、“一対の脚”とその“一対の脚を連結する部分”とによりU字型を形成している点が見て取れ、同じく図3から、“一対の脚”が、“レール2の幅方向の両側に配置”に配置されている点が見てとれる。
また、技術常識を踏まえれば、“キャリッジ8”は、図1や図3における“レール2の長手方向”に移動可能となっていると認められる。
ウ キャリッジの“側面21、22”(段落【0037】)は、図3から、“一対の脚の表面”であると認められる。そして、図3において符号20として示される複数の測定点の位置、及び段落【0037】の記載から、“一対の脚の表面である側面21、22”に、“それぞれ2つのひずみゲージ”が合計で4箇所に配置されていると認められる。
また、図3から、一対の脚うちの一方の脚の表面である側面21に2つの測定点20が見て取れるが、図3におけるその2つの測定点20の位置から、2つの歪みゲージが、“一対の脚うちの一方の脚の表面である側面21”において、“キャリッジ8の長手方向における中心線に対して対称に”配置されていると認められる。
エ 段落【0042】から、評価装置26は、“ひずみゲージからの測定信号を評価し測定力を決定する評価装置26”であるといえる。
以上を総合すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明]
レール2と、キャリッジ8と、複数の転動体と、を備えるリニアガイドであって、
前記キャリッジ8は、前記レール2の幅方向の両側に配置された一対の脚と、前記一対の脚を連結する部分と、を有する基本体を備え、前記レール2の長手方向に移動可能であり、
前記一対の脚の表面である側面21、22には、それぞれ2つのひずみゲージが配置されており、前記一対の脚うちの一方の脚の表面である側面21において、前記キャリッジ8の長手方向における中心線に対して対称に2つのひずみゲージが配置されており、
前記ひずみゲージからの測定信号を評価し測定力を決定する評価装置26を備えた、
リアニアガイド。
(2)甲2について
甲2には、次の記載がある(枠は異議申立人が付したもの。下線は当審が付したもの。)。
「
[図:0001413339000023.jpg]
」(第46頁左欄中程~最終行)
「
[図:0001413339000024.jpg]
」(第46頁右欄第1~6行)
「
[図:0001413339000025.jpg]
」(第46頁の図8)
「
[図:0001413339000026.jpg]
」(第46頁の図9)
上記記載から、甲2には次の技術的事項が記載されていると認められる。
ア 甲2に記載された“リニアガイド”は、その図8及び図9から、レール状のもの(以下、“レール”という。)と、そのレール上を移動するようにされもの(以下、“移動体”という。)とから構成されている点が見てとれる。また、「直動転がり案内」との記載(上記で摘記した第46頁左欄中程~最終行の上から4行目)や、「玉荷重」との記載(図9)があるところ、技術常識に照らして考えれば、レールと移動体との間に転動体しての“複数の玉”が配置されていると認められる。
イ 「リニアガイドの裾部に歪みケージを取り付け」との記載(上記で摘記した第46頁左欄中程~最終行の上から9~10行目)や、図8右側の写真に見られる歪みケージ配置状況から、移動体の幅方向の両側部分が“裾部”であると認められる。そうすると、図8右側の写真及び技術常識から、移動体は、“一対の裾部”とその“一対の裾部間を連結する部分”とにより構成されており、その“一対の裾部”が“レールの幅方向の両側に配置”されていると認められる。
そして、技術常識に照らして考えれば、移動体は“レールの長手方向に移動可能”となるように構成されているものと認められる。
ウ 図8右側の写真からは、一対の裾部うちの一方の裾部の表面に歪みゲージが配置されていて、その歪みゲージから白いコードが延びている点が見て取れる。同写真からは他方の裾部(裏側の裾部)の表面の様子は見て取れないものの、他方の裾部から白いコードが延びている点が見てとれ、図9左側の図において、各移動体の幅方向の両側部に玉荷重増加や玉荷重減少を示す表示があることに鑑みれば、他方の裾部の表面にも歪みゲージが配置されていると認められる。すなわち、図8右側の写真及び図9左側の図から、“一対の裾部の表面には、それぞれ歪みゲージが配置”されていると認められる。
また、図8右側の写真から、“一対の裾部のうち一方の裾部の表面”に“4つの歪みゲージ”が配置されている点が見て取れるが、その歪みゲージの配置は図8右側の写真や図8左側の図から、“上下で対をなし、かつ、移動体の長手方向における中心線に対して対称に4つの歪みゲージが対をなして配置”されているといえる。なお、図9左側に示された4つのリニアガイドのうち、右下のリニアガイドの丸1(甲2中の丸で囲んだ数字の1を本決定中では「丸1」と表記。「丸2」も同様。)の位置で丸1上溝と丸1下溝のベアリング荷重を測定し、丸2の位置で丸2上溝と丸2下溝のベアリング荷重を測定していることからも、歪みゲージが“上下で対をなし”ているといえる。
エ 「事前にアムスラー試験機を用いてベアリングに各方向の荷重を作用させ、そのときの歪み量を測定し校正する。次に実稼働時の測定を行い、どのような荷重が作用しているか確認することが可能になった。」との記載があり(上記で摘記した第46頁左欄中程~最終行の下から2~4行目)、また、図9右側に示されるようなリニアガイドのベアリングの荷重測定結果を得ている。これらのことから、リニアガイドは、図9右側に示されるような測定結果の取得を可能にするための、何らかの“歪みケージで得られる歪み量からリニアガイドのベアリングに作用する荷重を測定する部分”(以下、「測定する部分」のことを「測定部」という。)を備えているといえる。
以上を総合すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲2発明]
レールと、移動体と、複数の玉と、を備えるリニアガイドであって、
前記移動体は、前記レールの幅方向の両側に配置された一対の裾部と、前記一対の裾部間を連結する部分とを有しており、前記レールの長手方向に移動可能であり、
前記一対の裾部の表面には、それぞれ歪みゲージが配置されており、前記一対の裾部のうち一方の裾部の表面において、上下で対をなし、かつ、前記移動体の長手方向における中心線に対して対称に4つの歪みゲージが対をなして配置されており、
前記歪みケージで得られる歪み量からリニアガイドのベアリングに作用する荷重を測定する測定部を備えた、
リニアガイド。
(3)甲4について
甲4には、図面とともに次の記載がある(下線は当審が付したもの。)。
「【0010】
即ち、従来から一般的に使用されている加速度センサ(圧電体型、サーボ型、歪みゲージ型等の加速度センサ)には、計測レンジが狭い、検出精度が低いと言った制限が多くある。例えば、サーボ型加速度センサは、DC(直流)成分~100Hz程度の周波数成分であれば高精度に検出する事ができるが、これ以外の周波数成分を高精度に検出する事はできない。これに対し、圧電セラミック等を利用した圧電体型加速度センサは、高域周波数の検出に適しており、10kHzを越える様な周波数成分を検出する事もできるが、低域周波数の検出には適さず、DC成分を検出する事はできない。又、従来から多数軸(2軸或いは3軸)対応の加速度センサが知られているが、この様な加速度センサの場合には、その大きさが問題となると共に、やはり計測レンジ、方向性、感度等による制限がある。この様な従来からの加速度センサに対し、上記MEMS加速度センサは、計測レンジがDC成分~数kHzと非常に広く、方向性及び感度も高い。更に、多数軸(2軸或いは3軸)対応とした場合にも、非常に小型にできる。又、上記MEMS加速度センサは、出力回路を一体としたICパッケージとして使用できる為、無線装置と組み合わせる事が容易になる。従って、この様な優れた特性を有するMEMS加速度センサを利用すれば、複数の加速度センサとしての役割を担う事が可能になる。」
上記記載から、甲4には次の技術的事項が記載されていると認められる。
[甲4記載の技術的事項]
歪みゲージ型の加速度センサを、出力回路を一体としたICパッケージとして使用できるMEMSとして構成し、無線通信機能を有した機器と組み合わせる点。
3 当審の判断
3-1 甲1発明に基いて
(1)本件特許発明7について
ア 対比
本件特許発明7と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「レール2」、「キャリッジ8」、及び「リニアガイド」は、それぞれ本件特許発明7の「案内レール」、「スライダ」、及び「直動案内装置」に相当する。
(イ)甲1発明の「脚」は、本件特許発明7の「袖部」に相当する。甲1発明の「前記一対の脚を連結する部分」は、本件特許発明7の「前記一対の袖部を連結する基部」ないし「基部」に相当する。甲1発明の「基本体」は、本件特許発明7の「スライダ本体」に相当する。
(ウ)甲1発明の「ひずみゲージ」は本件特許発明7の「ひずみセンサ」に相当する。「2つのひずみゲージ」は、「一対のひずみゲージ」ということもできるから、甲1発明の「前記一対の脚の表面である側面21、22には、それぞれ2つのひずみゲージが配置され」るという構成は、本件特許発明7の「前記一対の袖部には、前記スライダの前記長手方向における中心線に対して対称に一対のひずみセンサがそれぞれ配置され」るという構成のとの対比において、「前記一対の袖部には、」「一対のひずみセンサがそれぞれ配置され」るという限りにおいて一致する。
(エ)甲1発明における一対の脚の表面である「側面21、22」は、一対の脚の幅方向外側の表面にあたるところ、甲1発明の「前記一対の脚の表面である側面21、22」は、本件特許発明7の「袖部の前記幅方向における外側面の表面」に相当する。そうすると、甲1発明の「前記一対の脚の表面である側面21、22には、それぞれ2つのひずみゲージが配置され」るという構成は、「前記ひずみセンサは、前記袖部の前記幅方向における外側面の表面に配置されている」という構成に相当する。
以上を総合すると、本件特許発明7と甲1発明とは以下の点で一致し、以下の点で相違する。
[一致点]
案内レールと、スライダと、複数の転動体と、を備える直動案内装置であって、
前記スライダは、前記案内レールの幅方向の両側に配置された一対の袖部と、前記一対の袖部を連結する基部と、を有するスライダ本体を備え、前記案内レールの長手方向に移動可能であり、
前記一対の袖部には、一対のひずみセンサがそれぞれ配置されており、
前記ひずみセンサは、前記袖部の前記幅方向における外側面の表面に配置されている、
直動案内装置。
[相違点1]
「前記一対の袖部には、」「一対のひずみセンサがそれぞれ配置され」る点に関し、本件特許発明7においては、一対の袖部には、「前記スライダの前記長手方向における中心線に対して対称に」一対のひずみセンサがそれぞれ配置され、さらに「一方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサと、他方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサとは、前記スライダの前記幅方向における中心線に対して対称に配置」されているのに対し、甲1発明では、一対の脚うちの一方の脚の表面である側面21に「前記キャリッジ8の長手方向における中心線に対して対称に」2つのひずみゲージ配置されているものの、他方の脚の表面である側面22において、2つのひずみゲージがどのように配置されているか不明であり、一方の脚の表面である側面21に配置された2つのひずみゲージと他方の脚の表面である側面22に配置された2つのひずみゲージとがキャリッジ8に幅方向における中心線に対して対称となっているか否かも不明である点。
イ 判断
上記相違点1について、検討する。
甲1発明における「一対の脚の表面である側面21、22」にそれぞれ配置される「2つのひずみゲージ」は、これらのひずみゲージで測定される測定力を合算して(甲1の段落【0042】)、キャリッジ8に作用する荷重を測定するために配置されるものであるが、甲1発明におけるキャリッジ8は、図3の記載や技術常識にかんがみれば、キャリッジ8の長手方向における中心線に対して対称な形状を有しているし、キャリッジ8の幅方向における中心線に対しても対称な形状を有している。キャリッジ8に作用する荷重を測定するためのひずみゲージを、線対称な形状を有するキャリッジ8の両側面に2つずつ配置するにあたり、キャリッジの線対称な形状に対応させて、ひずみゲージを線対称な位置に配置しようとすることは、当業者にとって自然な発想であり、ひずみゲージを線対称な位置に配置するべく、キャリッジ8の一対の脚うちの他方の脚の表面である側面22に2つのひずみゲージを、一方の脚の表面である側面21におけるひずみゲージの配置と同様に、「前記キャリッジ8の長手方向における中心線に対して対称」となるように配置し、一方の脚の表面である側面21に配置された2つのひずみゲージと、他方の脚の表面である側面22に配置された2つのひずみゲージとを、キャリッジ8の幅方向における中心線に対して対称となるように配置することは、当業者が容易になし得た事項である。
したがって、本件特許発明7は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件特許発明7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)本件特許発明11について
本件特許発明11と甲1発明とを対比すると、両者は上記相違点1に加え、次の相違点2で相違する。
[相違点2]
本件特許発明11においては、ひずみセンサは「いずれも検出方向が一様である」に対して、甲1発明においては、ひずみゲージの検出方向について明らかでない点。
この相違点2について検討する。
甲1発明において、複数のひずみゲージで力を測定する際に、ひずみゲージを配置したそれぞれの場所で同じ方向の同じ量のひずみが生じた場合に、配置したそれぞれのひずみゲージから同じ値の力が測定されるようにしようとすることは、当業者にとって自然な発想であり、甲1発明において、複数のひずみゲージを配置するにあたり、すべてのひずみゲージの「検出方向」が「一様」となるように配置することは、当業者が容易になし得た事項である。
したがって、本件特許発明11は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件特許発明11は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(3)本件特許発明12について
本件特許発明12と甲1発明とを対比すると、両者は上記相違点1及び2に加え、次の相違点3で相違する。
[相違点3]
本件特許発明12においては、ひずみセンサが「小型チップにセンサ素子とアンプを含む回路とを集積したMEMSひずみセンサであり無線通信機能を有した機器と組み合わせ」ているのに対して、甲1発明のひずみゲージはそのような構成を有していない点。
この相違点3について検討する。
甲4には、歪みゲージ型の加速度センサを出力回路を一体としたICパッケージとして使用できるMEMSとして構成し、それを無線通信機能を有した機器と組み合わせる点が記載されているが、この甲4記載の技術的事項のように、センサを小型チップにセンサ素子とアンプを含む回路を集積したMEMSとして構成し、それを無線通信機能を有した機器と組み合わせることは周知技術であり、甲1発明のひずみゲージに当該周知技術を適用し、相違点3に係る本件特許発明12の構成に想到することは当業者が容易になし得た事項である。
したがって、本件特許発明12は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件特許発明12は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3-2 甲2発明に基いて
(1)本件特許発明7について
ア 対比
本件特許発明7と甲2発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「レール」、「移動体」、「玉」、及び「リニアガイド」は、それぞれ本件特許発明7の「案内レール」、「スライダ」、「転動体」、及び「直動案内装置」に相当する。
(イ)甲2発明の「前記レールの幅方向の両側に配置された一対の裾部」ないし「裾部」は、本件特許発明7の「前記案内レールの幅方向の両側に配置された一対の袖部」ないし「袖部」に相当する。甲2発明の「前記一対の裾部を連結する部分」は、本件特許発明7の「前記一対の袖部を連結する基部」ないし「基部」に相当する。そして、甲2発明において、「移動体」を形作っている構造体が、本件特許発明7の「スライダ本体」に相当する。さらに、甲2発明において、「移動体」が「前記レールの長手方向に移動可能」であることは、本件特許発明7において、「スライダ」が「前記案内レールの長手方向に移動可能」であることに相当する。
(ウ)甲2発明の「歪みゲージ」は本件特許発明7の「ひずみセンサ」に相当する。そして、甲2発明の「前記一対の裾部の表面には、それぞれ歪みゲージが配置され」るという構成は、本件特許発明7の「前記一対の袖部には、上下で対をなし、かつ、前記スライダの前記長手方向における中心線に対して対称に一対のひずみセンサがそれぞれ配置され」るという構成のとの対比において、「前記一対の袖部には、」「ひずみセンサがそれぞれ配置され」るという限りにおいて一致する。
(エ)甲2発明は「前記一対の裾部の表面には、それぞれ歪みゲージが配置され」るという構成を有するところ、甲2発明の「裾部の表面」は、“裾部の幅方向における外側面の表面”に当たるので、甲2発明も、本件特許発明7の「前記ひずみセンサは、前記袖部の前記幅方向における外側面の表面に配置されている」という構成を有しているといえる。
以上を総合すると、本件特許発明7と甲2発明とは以下の点で一致し、以下の点で相違する。
[一致点]
案内レールと、スライダと、複数の転動体と、を備える直動案内装置であって、
前記スライダは、前記案内レールの幅方向の両側に配置された一対の袖部と、前記一対の袖部を連結する基部と、を有するスライダ本体を備え、前記案内レールの長手方向に移動可能であり、
前記一対の袖部には、ひずみセンサがそれぞれ配置されており、
前記ひずみセンサは、前記袖部の前記幅方向における外側面の表面に配置されている、
直動案内装置。
[相違点4]
「前記一対の袖部には、」「ひずみセンサがそれぞれ配置され」る点に関し、本件特許発明7においては、一対の袖部に「前記スライダの前記長手方向における中心線に対して対称に」「一対のひずみセンサがそれぞれ」配置され、さらに「一方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサ」と「他方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサ」とが「前記スライダの前記幅方向における中心線に対して対称に配置」されているのに対し、甲2発明では、一対の裾部のうちの一方の裾部の表面には4つの歪みゲージが「上下で対をなし、かつ、前記移動体の長手方向における中心線に対して対称に」「対をなして」配置されているものの、他方の裾部の表面については歪みゲージがどのように配置されているか不明であり、一方の裾部の表面に配置された4つの歪みゲージと他方の裾部の表面に配置された歪みひずみゲージとがレールの幅方向における中心線に対して対称となっているか否かも不明である点。
イ 判断
上記相違点4について、検討する。
甲2発明における「一対の裾部の表面」にそれぞれ配置される「歪みゲージ」は、ベアリングにどのような荷重が作用しているか確認することを可能とするものであるが(甲2第46頁左欄下から2行目~同頁右欄1行目)、甲2発明における移動体は、図8右側の写真や技術常識にかんがみれば、移動体の長手方向における中心線に対して対称な形状を有しているし、移動体の幅方向における中心線に対しても対称な形状を有している。ベアリングに作用している荷重を確認するための歪みゲージを線対称な形状を有する移動体の裾部に配置するにあたり、移動体の線対称な形状に対応させて、歪みゲージを線対称な位置に配置しようとすることは、当業者にとって自然な発想であり、歪みゲージを線対称な位置に配置するべく、移動体の一対の裾部のうちの他方の裾部の表面にも、一方の裾部の表面と同じように、「4つの歪みゲージ」を「上下で対をなし、かつ、前記移動体の長手方向における中心線に対して対称に」「対をなして」配置し、一方の裾部の表面に対をなして配置された4つの歪みゲージと他方の裾部に対をなして配置した4つの歪みゲージとを、移動体の幅方向における中心線に対して対称となるように配置することは、当業者が容易になし得た事項である。
したがって、本件特許発明7は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件特許発明7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)本件特許発明11について
本件特許発明11と甲2発明とを対比すると、両者は上記相違点4に加え、次の相違点5で相違する。
[相違点5]
本件特許発明11においては、ひずみセンサは「いずれも検出方向が一様である」に対して、甲2発明においては、歪みゲージの検出方向について明らかでない点。
この相違点5について検討する。
甲2発明において、複数の歪みゲージでベアリングに作用する荷重を確認する際に、歪みゲージを配置したそれぞれの場所で同じ方向の同じ量のひずみが生じた場合に、配置したそれぞれの歪みゲージから同じ値の荷重が確認されるようにすることは、当業者にとって自然な発想であり、甲2発明において、複数の歪みゲージを配置するにあたり、すべての歪みゲージの「検出方向」が「一様」となるように配置することは、当業者が容易になし得た事項である。
したがって、本件特許発明11は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件特許発明11は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(3)本件特許発明12について
本件特許発明12と甲2発明とを対比すると、両者は上記相違点4及び5に加え、次の相違点6で相違する。
[相違点6]
本件特許発明12においては、ひずみセンサが「小型チップにセンサ素子とアンプを含む回路とを集積したMEMSひずみセンサ」であり、それを「無線通信機能を有した機器と組み合わせ」ているのに対して、甲2発明の歪みゲージはそのような構成を有していない点。
この相違点6について検討する。
甲4には、歪みゲージ型の加速度センサを出力回路を一体としたICパッケージとして使用できるMEMSとして構成し、それを無線通信機能を有した機器と組み合わせる点が記載されているが、この甲4記載の技術的事項のように、センサを小型チップにセンサ素子とアンプを含む回路を集積したMEMSとして構成し、それを無線通信機能を有した機器と組み合わせることは周知技術であり、甲2発明における歪みゲージに当該周知技術を適用し、相違点3に係る本件特許発明12の構成に想到することは当業者が容易になし得た事項である。
したがって、本件特許発明12は、甲2発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとである。
よって、本件特許発明12は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由の概要
取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について、甲1発明に基くもの、甲2発明に基くもの、それぞれについて整理すると、以下のとおりである。
なお、以下において、異議申立人が提出した甲第3号証(特開2015-218888号公報)を「甲3」と記す。
(1)甲1発明に基いて
・本件特許発明8及び10は、甲1発明である。本件特許発明8及び10は、甲1発明及び甲3記載の技術的事項から容易想到な発明である。
・本件発明9は、甲1発明及び甲3記載の技術的事項から容易想到な発明である。
・本件特許発明1~4は、甲1発明及び甲3記載の技術的事項から容易想到な発明である。
・本件特許発明5及び6は、甲1発明、甲3記載の技術的事項及び周知技術から容易想到な発明である。
(2)甲2発明に基いて
・本件特許発明8及び10は、甲2発明である。本件特許発明8及び10は、甲2発明及び甲3記載の技術的事項から容易想到な発明である。
・本件発明9は、甲2発明及び甲3記載の技術的事項から容易想到な発明である。
・本件特許発明1~4は、甲2発明及び甲3記載の技術的事項から容易想到な発明である。
・本件特許発明5及び6は、甲2発明、甲3記載の技術的事項及び周知技術から容易想到な発明である。
2 甲3の記載事項
甲3には、次の記載がある(下線は当審が付したもの。)。
「【0016】
[第1実施形態]
図1~3に示すように、この実施形態の直動案内装置10は、案内レール1と、スライダ2と、ボール(転動体)3と、第一のリニアゲージ4aと、第二のリニアゲージ4bと、第三のリニアゲージ4cと、第四のリニアゲージ5aと、第五のリニアゲージ5bと、からなる。」
「【0019】
この直動案内装置は、スライダ本体21の胴部211の下面と案内レール1の上面との間に空間161を有する。また、スライダ本体21の脚部212と案内レールの側面(上下の転動溝11,12間の面)13との間に空間162を有する。また、スライダ本体21の角部213に、上面に開口する雌ねじ穴213aが形成されている。
さらに、スライダ本体21の胴部211の三箇所に、上面から下面まで垂直に貫通する第一の貫通穴218a、第二の貫通穴218b、および第三の貫通穴218cが形成されている。スライダ本体21の一方の脚部212の二箇所に、脚部212の外側面から内側面まで垂直に貫通する第四の貫通穴219aおよび第五の貫通穴219bが形成されている。
【0020】
三個の貫通穴218a~218cは、各貫通穴218a~218cの中心点が、特定の長方形(2本の対角線の交点がスライダ本体21の上面の中心と一致する長方形)の三個の頂点と一致する位置に配置されている。各貫通穴218a~218c内に、各リニアゲージ4a~4cの本体部42a~42cが固定されている。
リニアゲージ4a~4c,5a,5bは、それぞれ本体部42a~42c,52a,52bとスピンドル43a~43c,53a,53bを有する。各リニアゲージ4a~4cのスピンドル43a~43cが空間161に配置され、スピンドル43a~43cの先端が案内レール1の上面(胴部と対向する面)14に接触している。本体部42a~42cの貫通穴218a~218cに対する固定は、本体部42a~42cの直径を貫通穴218a~218cより僅かに小さく形成し、しまり嵌めにより行っている。
【0021】
二個の貫通穴219a,219bは、案内レール1の側面13に対応する位置に配置され、両貫通穴219a,219bの中心点の案内レール1の長手方向に沿った位置は、第二および第三の貫通穴218b,218cの中心点の位置と同じである。各貫通穴219a,219b内に、各リニアゲージ5a,5bの本体部52a,52bが固定されている。
各リニアゲージ5a、5bのスピンドル53a,53bが空間162に配置され、スピンドル53a,53bの先端が案内レール1の一方の側面13に接触している。本体部52a,52bの貫通穴219a,219bに対する固定は、本体部52a,52bの直径を貫通穴218a~218cより僅かに小さく形成し、しまり嵌めにより行っている。
【0022】
つまり、この実施形態の直動案内装置では、第一のリニアゲージ4aと第二のリニアゲージ4bと第三のリニアゲージ4cからなる上面変位計測センサが、案内レール1の上面14の異なる三点に対する胴部211の変位が計測できるように、スライダ2に設置されている。第一のリニアゲージ4aと第二のリニアゲージ4bは、案内レール1の長手方向で同じ位置に配置されている。第二のリニアゲージ4bと第三のリニアゲージ4cは、案内レール1の長手方向に垂直な方向で同じ位置に配置されている。
すなわち、第一のリニアゲージ4aは、案内レール1の上面14の異なる三点のうちの第一の点に対する計測を行う。第二のリニアゲージ4bは、案内レール1の上面14の異なる三点のうちの第二の点に対する計測を行う。第三のリニアゲージ4cは、案内レール1の上面14の異なる三点のうちの第三の点に対する計測を行う。
【0023】
また、第四のリニアゲージ5aと第五のリニアゲージ5bからなる側面変位計測センサが、案内レール1の一方の側面13の異なる二点(案内レール1の長手方向に垂直な方向では同じ位置)に対する脚部212の変位が計測できるように、スライダ2に設置されている。
この直動案内装置では、スピンドル43a~43c,53a,53bが本体部42a~42c,52a,52bから進退することで、案内レール1の上面14および側面13に対するスライダ2の変位が計測される。各リニアゲージ4a~4c,5a,5bによる変位計測値は、本体部42a~42c,52a,52bから延びるケーブル(不図示)を介して、制御盤のモニタ(不図示)に表示される。
【0024】
この直動案内装置によれば、第一のリニアゲージ4aによる第一の点での変位計測値と第二のリニアゲージ4bによる第二の点での変位計測値から、スライダ2に作用しているローリング方向のモーメント荷重が測定できる。第三のリニアゲージ4cによる第三の点での変位計測値と第二のリニアゲージ4bによる第二の点での変位計測値から、スライダ2に作用しているピッチング方向のモーメント荷重が測定できる。
【0025】
また、第一のリニアゲージ4aによる第一の点での変位計測値、第二のリニアゲージ4bによる第二の点での変位計測値、または第三のリニアゲージ4cによる第三の点での変位計測値から、それぞれスライダに作用している上下方向の荷重が測定できる。
また、第四のリニアゲージ5aによる変位計測値と第五のリニアゲージ5bによる変位計測値とから、スライダ2に作用しているヨーイング方向のモーメント荷重が測定できる。また、第四のリニアゲージ5aによる変位計測値または第五のリニアゲージ5bによる変位計測値から、スライダ2に作用している左右方向の荷重が測定できる。」
「図1
[図:0001413339000027.jpg]
」
「図2
[図:0001413339000028.jpg]
」
「図3
[図:0001413339000029.jpg]
」
3 当審の判断
3-1 甲1発明に基いて
(1)本件特許発明8について
本件特許発明8と甲1発明とを対比すると、上記第3 3 3-1(1)ア 対比 における(ア)~(エ)に加えて、次の相当関係がいえる。
(オ)甲1発明の「前記ひずみゲージからの測定信号」は、本件特許発明8の「前記ひずみセンサの検出値」に相当する。そして、甲1発明の「前記ひずみゲージからの測定信号を評価し測定力を決定する評価装置26」は、本件特許発明8の「前記ひずみセンサの検出値を比較し、前記スライダに作用しているモーメント荷重の方向を判別する判別部」との対比において、“前記ひずみセンサの検出値を処理する処理部”であるという限度で一致する。
そうすると、本件特許発明8と甲1発明とは、上記第3 3 3-1(1)ア 対比 であげた相違点1のほか、次の相違点7で相違する。
[相違点7]
「前記ひずみセンサの検出値を処理する処理部」に関し、本件特許発明8は、その処理部が、「前記ひずみセンサの検出値を比較し、前記スライダに作用しているモーメント荷重の方向を判別する判別部」として構成されているのに対して、甲1発明は、「前記ひずみゲージからの測定信号を評価し測定力を決定する評価装置26」である点。
相違点1については、上記第3 3 3-1(1)イ 判断 で述べたとおり、相違点1に係る本件特許発明8の構成に想到することは当業者が容易になし得た事項である。
以下、相違点7について、(a)甲1発明から容易想到か、(b)甲1発明及び甲3記載の技術的事項から容易想到か、の順で検討する。
(a)甲1発明から
甲1発明の「評価装置26」は、キャリッジ8の「一対の脚の表面である側面21、22」に配置されたひずみゲージの測定信号を用いて、測定力を決定するものである。
そして、この「評価装置26」の荷重の測定に関し、甲1の段落[0038]には「複数の測定点(20)が設けられているため、純粋な引張又は圧縮荷重以外にも、他のタイプの荷重も認識し、その量を測定することが可能である」との記載、段落[0042]には、「スケール因子は、発生した力の大きさと方向が判明している場合、比較測定によって決定され得る。」との記載があり(下線は、当審が付したもの。)、甲1の図3には、キャリッジ8の表面にMr、Mn、Mgのモーメントを示す円弧状矢印が記載されている。しかし、甲1には「評価装置26」において、ひずみゲージからの測定信号を用いて、「純粋な引張又は圧縮荷重以外」の他の荷重としてモーメント荷重を認識し、測定する旨の記載はない。
そして、甲1の図3で示されたMr、Mn、Mgのモーメントに関し、甲1の段落[0050]には、「力とモーメントは次の式を使用して決定できる。ここでS31~S38は、図4のセンサ31、32、33、34、35、36、37、38の測定値:」(当審にて作成した仮訳。)との記載があり、例えばMrについて、「Mr=C*B*((S31+S33+S36+S38)-(S32+S34+S35+S37))」との記載がある。しかし、このS31~S38はひずみゲージではなく、「変位センサ」(段落[0043]参照)であり、甲1の図3及び図4から看て取れるように、これら「変位センサ」は、キャリッジ8の一対の脚の表面ではなく、キャリッジ8とレール2との間に配置されている。すなわち、甲1発明の「ひずみゲージ」と、甲1の図3等で看て取れるモーメントを決定するために用いる「変位センサ」とは、センサの種類及び配置場所に違いがある。
甲1に接した当業者にとって、純粋な引張又は圧縮荷重以外の他のタイプの荷重としてモーメント荷重を認識しようとする場合、甲1の図3等で看て取れる「変位センサ」を用いた手法を採用しようとするのが自然な発想であり、「変位センサ」とはセンサとしての種類及び配置場所が異なる甲1発明のキャリッジ8の「前記一対の脚の表面である側面21、22」に配置されたひずみゲージの測定信号を用いてモーメント荷重を認識しようとする動機付け、さらには、そのように配置されたひずみゲージの測定信号を比較することによって、キャリッジに作用しているモーメント荷重の方向を判別できるように「評価装置26」を構成しようとする動機付けはない。
また、後述の「第5」のとおり、スライダの「一対の袖部には、前記スライダの前記長手方向における中心線に対して対称に一対のひずみセンサがそれぞれ配置されており」、「一方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサと、他方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサとは、前記スライダの前記幅方向における中心線に対して対称に配置され」るというひずみセンサの配置をとるものにおいて、ひずみセンサの検出値を比較し、前記スライダに作用しているモーメント荷重の方向を判別することが周知技術であるとはいえない。
したがって、甲1発明の「前記ひずみゲージからの測定信号を評価し測定力を決定する評価装置26」を本件特許発明8の「前記ひずみセンサの検出値を比較し、前記スライダに作用しているモーメント荷重の方向を判別する判別部」のように構成することは、当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。
(b)甲1発明及び甲3記載の技術的事項から
甲3には、スライダ本体21の胴部211の上面から下面まで垂直に貫通する3つの貫通穴に3つのリニアゲージ4a~4c(段落【0020】等参照)を配置し、スライダ本体21の一方の脚部212の外側面から内側面まで垂直に貫通する2つの貫通穴に2つのリニアゲージ5a、5bを配置し(段落【0021】等参照)、これらの5つのリニアゲージにより得られる案内レール1に対するスライダ本体21の変位に係る変位計測値(段落【0022】、【0023】参照)から、ローリング方向のモーメント荷重、ピッチング方向のモーメント荷重、及びヨーイング方向のモーメント荷重を測定する(段落【0024】~【0025】参照)点が記載されている(以下、「甲3記載の技術的事項」という。)。
しかし、甲3記載の技術的事項におけるスライダ本体21に配置されるセンサは「リニアゲージ」、すなわち、配置場所での「案内レール1に対するスライダ本体21の変位」を測定するものであり、配置場所におけるひずみを測定する甲1発明の「ひずみゲージ」とはセンサ種類が異なる。また、甲3記載の技術的事項における「リニアゲージ」の配置場所は、「スライダ本体21の胴部211の上面から下面まで垂直に貫通する3つの貫通穴」と「スライダ本体21の一方の脚部212の外側面から内側面まで垂直に貫通する2つの貫通穴」となっており、甲1発明のようにキャリッジ8の「前記一対の脚の表面である側面21、22」ではなく、センサの配置場所も甲1発明と異なっている。
このような甲3記載の技術的事項の「リニアゲージ」と甲1発明の「ひずみゲージ」との間のセンサ種類の違い及びセンサの配置場所の違いにかんがみれば、甲1発明において、引張又は圧縮荷重以外の他のタイプの荷重も認識できるようにしたいという課題があったとしても、当業者が甲1発明に対して甲3記載の技術的事項を適用することに想到し得えたとはいえない。
したがって、甲1発明の「評価装置26」を本件特許発明8の「前記ひずみセンサの検出値を比較し、前記スライダに作用しているモーメント荷重の方向を判別する判別部」のように構成することが、甲1発明及び甲3記載の技術的事項から、当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。
(本件特許発明8についてのまとめ)
本件特許発明8と甲1発明とは、相違点1及び7で相違するものであるから、本件特許発明8は、甲1発明ではない。
また、上記(a)のとおり、本件特許発明8は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。そして、上記(b)のとおり、本件特許発明8は、甲1発明及び甲3記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
(2)本件特許発明9について
請求項9は請求項8の記載を直接的に引用しており、本件特許発明9は、本件特許発明8の発明特定事項を全て有するものである。
よって、上記(1)と同様に、本件特許発明9は、甲1発明及び甲3記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
(3)本件特許発明10について
請求項10も請求項8の記載を直接的又は間接的に引用しており、本件特許発明10は、本件特許発明8の発明特定事項を全て有するものである。
よって、上記(1)と同様に、本件特許発明10発明は、甲1発明ではない。また、上記(1)と同様に、本件特許発明10は、甲1発明に基いて、又は甲1発明及び甲3記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものでもない。
(4)本件特許発明1について
本件特許発明1は、本件特許発明8の発明特定事項のうち、「前記ひずみセンサは、前記袖部の前記幅方向における外側面の表面に配置されている」との発明特定事項は有していないが、その他の本件特許発明8の発明特定事項は全て備えており、その上で、「前記判別部は、判別するモーメント荷重の方向に応じて、前記一方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサと、前記他方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサとのうち、対とすべきひずみセンサの組み合わせを変える」という発明特定事項を有するものである。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明とは、上記第3 3 3-1(1)ア 対比 であげた相違点1、上記(1)であげた相違点7のほか、次の相違点8で相違する。
[相違点8]
本件特許発明1は、「前記判別部は、判別するモーメント荷重の方向に応じて、前記一方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサと、前記他方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサとのうち、対とすべきひずみセンサの組み合わせを変える」ものであるのに対して、甲1発明の「評価装置26」はこのような構成を有していない点。
相違点7については、上記(1)の(b)で述べたとおり、甲1発明の「評価装置26」を本件特許発明1の「前記ひずみセンサの検出値を比較し、前記スライダに作用しているモーメント荷重の方向を判別する判別部」のように構成することは、甲1発明及び甲3記載の技術的事項から、当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。
したがって、相違点8について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明及び甲3記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
(5)本件特許発明2~4について
請求項2~4は請求項1の記載を直接的又は間接的に引用しており、本件特許発明2~4は、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
よって、上記(4)と同様に、本件特許発明2~4は、甲1発明及び甲3記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
(6)本件特許発明5及び6について
請求項5及び6は請求項1の記載を直接的又は間接的に引用しており、本件特許発明5及び6は、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
仮に、本件特許発明5の「前記ひずみセンサは、いずれも検出方向が一様である」という発明特定事項、本件特許発明6の「前記ひずみセンサは、小型チップにセンサ素子とアンプを含む回路とを集積したMEMSひずみセンサであり、無線通信機能を有した機器と組み合わせる」という発明特定事項が周知技術であったとしても、上記(4)と同様に、相違点7に係る本件特許発明5及び6の発明特定事項については、甲1発明と甲3記載の技術的事項から、当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。
したがって、本件特許発明5及び6は、甲1発明、甲3記載の技術的事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
3-2 甲2発明に基いて
(1)本件特許発明8について
本件特許発明8と甲2発明とを対比すると、上記第3 3 3-2(1)ア 対比 における(ア)~(エ)に加えて、次の相当関係がいえる。
(オ)甲2発明の「前記歪みケージで得られる歪み量」は、本件特許発明8の「前記ひずみセンサの検出値」に相当する。そして、甲2発明の「前記歪みケージで得られる歪み量からリニアガイドのベアリングに作用する荷重を測定する測定部」は、本件特許発明8の「前記ひずみセンサの検出値を比較し、前記スライダに作用しているモーメント荷重の方向を判別する判別部」との対比において、“前記ひずみセンサの検出値を処理する処理部”であるという限度で一致する。
そうすると、本件特許発明8と甲2発明とは、上記第3 3 3-2(1)ア 対比 であげた相違点4のほか、次の相違点9で相違する。
[相違点9]
「前記ひずみセンサの検出値を処理する処理部」に関し、本件特許発明8は、その処理部が、「前記ひずみセンサの検出値を比較し、前記スライダに作用しているモーメント荷重の方向を判別する判別部」として構成されているのに対して、甲2発明は、「前記歪みケージで得られる歪み量からリニアガイドのベアリングに作用する荷重を測定する測定部」である点。
相違点4については、上記第3 3 3-2(1)イ 判断 で述べたとおり、相違点4に係る本件特許発明8の構成に想到することは当業者が容易になし得た事項である。
以下、相違点9について、(a)甲2発明から容易想到か、(b)甲2発明及び甲3記載の技術的事項から容易想到か、の順で検討する。
(a)甲2発明から
甲2発明は、移動体の裾部で「上下で対をなし、かつ、前記移動体の長手方向における中心線に対して対称に」「対をなして」配置された「4つの歪みゲージ」を有するものである。そして、甲2の図9の右側には、そのような「4つの歪みゲージ」を用いたベアリング測定結果の一例が示されていおり、甲2には、「図9に測定例を示す。テーブルがボールねじのオフセットした仕様によって、加減速時の慣性力で回転し、ベアリンリングにヨーイング方向の荷重が作用している結果が得られる。」との記載がある。甲2の図9右側の測定結果は、同図左側に図示された4つのリニアガイドのうち右下のリニアガイドにおける丸1上溝、丸1下溝、丸2上溝及び丸2下溝の荷重を示すグラフであるが、このグラフのどの部分に基づきヨーイング方向の荷重が作用していると判断しているかの明記はないものの、例えば、「加速」時(図9右側の測定結果の左側に「加速」との表記がグラフ中にある。)に丸2下溝の荷重が他の3つの部分の荷重より大きくなっていることが看て取れる。
しかしながら、甲2の図9の測定結果から、甲2発明がヨーイング方向の荷重が作用していると判断できるものであるとしても、その判断はあくまで、移動体の片方の裾部の丸1上溝、丸1下溝、丸2上溝、丸2下溝の4点、すなわち、片方の裾部の表面において、上下で対をなし、かつ、前記移動体の長手方向における中心線に対して対称に対をなして配置された4つの歪みゲージで得られる歪み量を使った判断である。
これに対して、本件特許発明8の「判別部」は、「前記一対の袖部には、前記スライダの前記長手方向における中心線に対して対称に一対のひずみセンサがそれぞれ配置されており」、「一方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサと、他方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサとは、前記スライダの前記幅方向における中心線に対して対称に配置され」るというひずみセンサの配置を前提とし、そのように配置されたひずみセンサの検出値を比較することにより、前記スライダに作用しているモーメント荷重の方向を判別するものである。すなわち、この本件特許発明8のひずみセンサの配置は、ひずみセンサがスライダの片方のみではなく「一対の袖部」(すなわち、両方の袖部)に配置される点、ひずみセンサが袖部の長手方向における中心線に対して対称に一対配置されていればよく、上下に対をなして配置される必要がない点で、甲2発明がヨーイング方向の荷重を判断する際の前提となる歪みゲージの配置とは異なっている。
このようなセンサの配置の違いにかんがみれば、甲2発明から、本件特許発明8のような、スライダの一対の袖部に、袖部の長手方向における中心線に対して対称にひずみセンサを配置して、それらひずみセンサの検出値を比較して、モーメント荷重の方向を判別するという構成に想到することは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
また、後述の「第5」のとおり、スライダの「一対の袖部には、前記スライダの前記長手方向における中心線に対して対称に一対のひずみセンサがそれぞれ配置されており」、「一方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサと、他方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサとは、前記スライダの前記幅方向における中心線に対して対称に配置され」るというひずみセンサの配置とし、ひずみセンサの検出値を比較し、前記スライダに作用しているモーメント荷重の方向を判別することが周知技術であるとはいえない。
したがって、甲2発明に基づいて、相違点9に係る本件特許発明8の構成に想到することは、当業者が容易に想到し得た事項であるとはいえない。
(b)甲2発明及び甲3記載の技術的事項から
甲3記載の技術的事項は、上記第4 3 3-1(1)(b)で記載したとおりのものである。
しかし、甲3記載の技術的事項におけるスライダ本体21に配置されるセンサは「リニアゲージ」であって、配置場所での「案内レール1に対するスライダ本体21の変位」を測定するものであり、配置場所における歪みを測定する甲2発明の「歪みゲージ」とはセンサ種類が異なる。また、甲3記載の技術的事項における「リニアゲージ」の配置場所は、「スライダ本体21の胴部211の上面から下面まで垂直に貫通する3つの貫通穴」と「スライダ本体21の一方の脚部212の外側面から内側面まで垂直に貫通する2つの貫通穴」となっており、甲2発明のように移動体の「一対の裾部の表面」ではないし、一対の裾部のうち一方の裾部の表面において、「上下に対をなし、かつ、前記移動体の長手方向における中心線に対して対称」な場所でもなく、センサの配置場所も甲2発明と異なっている。
このような甲3記載の技術的事項の「リニアゲージ」と甲2発明の「歪みゲージ」との間のセンサ種類の違い及びセンサの配置場所の違いにかんがみれば、甲2発明において、様々な方向の荷重の作用を確認できるようにしたいという課題があったとしても、当業者が甲2発明に対して甲3記載の技術的事項を適用することに想到し得たとはいえない。
したがって、甲2発明の「測定部」を本件特許発明8の「前記ひずみセンサの検出値を比較し、前記スライダに作用しているモーメント荷重の方向を判別する判別部」のように構成することが、甲2発明と甲3記載の技術的事項から、当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。
(本件特許発明8についてのまとめ)
本件特許発明8と甲2発明とは、相違点4及び9で相違するものであるから、本件特許発明8は、甲2発明ではない。
また、上記(a)のとおり、本件特許発明8は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。そして、上記(b)のとおり、本件特許発明8は、甲2発明及び甲3記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
(2)本件特許発明9について
請求項9は請求項8の記載を直接的に引用しており、本件特許発明9は、本件特許発明8の発明特定事項を全て有するものである。
よって、上記(1)と同様に、本件特許発明9は、甲2発明及び甲3記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
(3)本件特許発明10について
請求項10も請求項8の記載を直接的又は間接的に引用しており、本件特許発明10は、本件特許発明8の発明特定事項を全て有するものである。
よって、上記(1)と同様に、本件特許発明10発明は、甲2発明ではない。また、上記(1)と同様に、本件特許発明10は、甲2発明に基いて、又は甲2発明及び甲3記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものでもない。
(4)本件特許発明1について
本件特許発明1は、本件特許発明8の発明特定事項のうち、「前記ひずみセンサは、前記袖部の前記幅方向における外側面の表面に配置されている」との発明特定事項は有していないが、その他の本件特許発明8の発明特定事項は全て備えており、その上で、「前記判別部は、判別するモーメント荷重の方向に応じて、前記一方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサと、前記他方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサとのうち、対とすべきひずみセンサの組み合わせを変える」という発明特定事項を有するものである。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明とは、上記第3 3 3-2(1)ア 対比 であげた相違点4、上記(1)であげた相違点9のほか、次の相違点10で相違する。
[相違点10]
本件特許発明1は、「前記判別部は、判別するモーメント荷重の方向に応じて、前記一方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサと、前記他方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサとのうち、対とすべきひずみセンサの組み合わせを変える」ものであるのに対して、甲2発明の「測定部」はこのような構成を有していない点。
相違点9については、上記(1)の(b)で述べたとおり、甲2発明の「測定部」を本件特許発明1の「前記ひずみセンサの検出値を比較し、前記スライダに作用しているモーメント荷重の方向を判別する判別部」のように構成することは、甲2発明と甲3記載の技術的事項から、当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。
したがって、相違点10について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明及び甲3記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
(5)本件特許発明2~4について
請求項2~4は請求項1の記載を直接的又は間接的に引用しており、本件特許発明2~4は、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
よって、上記(4)と同様に、本件特許発明2~4は、甲2発明及び甲3記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
(6)本件特許発明5及び6について
請求項5及び6は請求項1の記載を直接的又は間接的に引用しており、本件特許発明5及び6は、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものである。
仮に、本件特許発明5の「前記ひずみセンサは、いずれも検出方向が一様である」という発明特定事項、本件特許発明6の「前記ひずみセンサは、小型チップにセンサ素子とアンプを含む回路とを集積したMEMSひずみセンサであり、無線通信機能を有した機器と組み合わせる」という発明特定事項が周知技術であったとしても、上記(4)と同様に、相違点9に係る本件特許発明5及び6の発明特定事項については、甲2発明と甲3記載の技術的事項から、当業者が容易に想到し得た事項とはいえない。
したがって、本件特許発明5及び6は、甲2発明、甲3記載の技術的事項、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。
第5 上申書における異議申立人の主張
異議申立人は、令和6年4月18日に提出した上申書において、甲第1号証の「評価装置」において、ひずみセンサの検出値の比較がされることは明示されていないものの、「測定信号の評価」として、ひずみセンサの検出値の比較を行うこと、ひずみセンサの検出値の比較からモーメント荷重の方向の判別をすることは特許第4435104号公報(以下、「参考文献1」という。)に示されるように周知技術であるから、甲1発明において、複数配置されたひずみゲージの測定信号の評価を行う際に、具体的に、「ひずみゲージの検出値を比較し、モーメント荷重の方向を判別する」ものとし、本件特許発明8に到達することは当業者が容易になし得たこであり、本件特許発明8は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもと思料すると主張している。
そして、本件特許発明9及び10についても、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと思料すると主張している。
上記異議申立人の主張について検討する。
参考文献1には、その段落、【0016】、【0017】及び図2にあるとおり、ケーシングCの一対の袖部3の表面における「圧縮ひずみがもっとも強く発生する位置X1の部分に凹み部X」に「圧縮ひずみ検出用センサ7」を配置し、「引張りひずみがもっとも強く発生する位置Y1の部分に膨らみ部Y」に「引張ひずみ検出用センサ8」を配置する点が記載されている。そして、これら「圧縮ひずみ検出用センサ7」及び「引張ひずみ検出用センサ8」は、参考文献1の図2からも明らかなとおり、袖部3の表面に“上下に一対”配置されるものである。
そして、参考文献1には、上記のように配置された圧縮ひずみ検出用センサ7と引張ひずみ検出用センサ8で検出されたひずみ値から、「圧縮ひずみ/引張ひずみの算式で求めるひずみ割合」を算出し(段落【0020】参照)、両袖部のひずみ値から算出された“ひずみ割合を比較”することで、ローリング方向のモーメントが作用していると判断する(段落【0025】参照)という技術が記載されている。
本件特許発明8と参考文献1記載の技術とを対比すると、本件特許発明8は「前記スライダの前記長手方向における中心線に対して対称に一対のひずみセンサがそれぞれ配置され」るのに対し、参考文献1記載の技術は、圧縮ひずみ検出用センサ7と引張ひずみ検出用センサ8とが上下に一対配置されるものである点において相違する。すなわち、本件特許発明8と参考文献1記載の技術とでは、前提となるセンサの配置が異なっており、それ故に、検出値の処理手法も異なるっている。
したがって、参考文献1記載の技術を根拠として、本件特許発明8のように、スライダの「一対の袖部には、前記スライダの前記長手方向における中心線に対して対称に一対のひずみセンサがそれぞれ配置されており」、「一方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサと、他方の前記袖部に配置された前記一対のひずみセンサとは、前記スライダの前記幅方向における中心線に対して対称に配置され」るというひずみセンサの配置をとるものにおいて、ひずみセンサの検出値を比較し、前記スライダに作用しているモーメント荷重の方向を判別することが周知技術であるということはできない。
また、甲1発明は「脚の表面である側面21において、前記キャリッジ8の長手方向における中心線に対して対称に2つのひずみゲージが配置され」るものであり、圧縮ひずみ検出用センサ7と引張ひずみ検出用センサ8とを上下に一対配置するという参考文献1記載の技術と、センサの配置が異なっている。そして、このようなセンサの配置の違いにかんがみれば、甲1発明において、引張又は圧縮荷重以外の他のタイプの荷重も認識できるようにしたいという課題があったとしても、当業者が甲1発明に対して参考文献1記載の技術を適用することに想到し得えたとはいえない。
以上のとおり、本件特許発明8のようにひずみセンサの検出値を比較し、前記スライダに作用しているモーメント荷重の方向を判別することが周知技術とはいえないから、本件特許発明8が甲1発明に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
また、本件特許発明8は、甲1発明及び参考技術1記載の技術に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
そして、請求項9及び10は請求項8の記載を直接的又は間接的に引用しており、本件特許発明9及び10は、本件特許発明8の発明特定事項を全て有するものであるから、上記同様に本件特許発明9及び10は、甲1発明に基いて、又は甲1発明及び参考技術1記載の技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
よって、上記異議申立人の主張は採用できない。
なお、甲2発明は、「裾部の表面において、上下に対をなし」て歪みゲージが配置されているが、この上側及び下側の位置が、それぞれ圧縮歪みが発生する部分及び引張り歪みが発生する部分であるとの記載も示唆も、甲2にはない。そうすると、甲2発明に対して参考文献1記載の技術を適用する動機付けがあるとはいえない。
したがって、本件特許発明8~10は、甲2発明及び参考技術1記載の技術に基いて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項7、11及び12に係る特許は、特許許法第29条第2項に規定に違反してなされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件特許の請求項1ないし6、及び8ないし10に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。さらに、他に本件特許の請求項1ないし6、及び8ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、結論のとおり決定する。
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2023-701079