特許異議申立
2024-700865
鋳造用石膏
- 審判番号
- 2024-700865
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-155852
- 登録番号
- 7451363
- 請求日
- 2024年09月11日
- 審決日
- 2025年08月26日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ノリタケ株式会社
- 【権利者代理人】池田 治幸
- 【権利者代理人】池田 光治郎
- 【異議申立人】金澤 毅
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 大山 健
- 審判官 田々井 正吾
- 分類
- P1651.537-YAA(B22C) / P1651.121-YAA(B22C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7451363号発明「鋳造用石膏」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7451363号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第7451363号の請求項1、3~4に係る特許を維持する。
特許第7451363号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7451363号の請求項1~4に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和2年9月16日に出願され、令和6年3月8日にその特許権の設定登録がされ、令和6年3月18日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての主な経緯は、次のとおりである。
1 経緯
(1)令和6年 9月11日
特許異議申立人金澤毅(以下「申立人」という。)による請求項1~4に係る特許に対する特許異議の申立て
(2)令和7年 1月22日付け
特許権者ノリタケ株式会社(以下「特許権者」という。)に対して取消の理由(以下「取消理由」という。)を通知
(3)令和7年 3月25日
特許権者による訂正請求書と意見書の提出
(4)令和7年 4月30日付け
上記(3)の訂正請求書を対象とする手続補正の指令
(5)令和7年 5月28日
特許権者による上記(3)の訂正請求書を対象とする手続補正書の提出
(6)令和7年 6月 4日
特許権者による上記(5)の手続補正書を対象とする手続補正書の提出
((5)及び(6)の手続補正書により補正された訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」といい、当該本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)
2 特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情について
次の第2の6のとおり、本件訂正請求は、一部の請求項の削除のみをするものであり、訂正の請求の内容が実質的な判断に影響を与えるものではなく、申立人に意見を聴くまでもないことが明らかである。
したがって、特許法第120条の5第5項ただし書きの「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるとき」に該当する(審判便覧:67-05.4の2.「特別の事情について」)ため、申立人に、同項に規定する意見書の提出の機会を与えないこととした。
第2 本件訂正の適否
本件訂正の適否について検討する。
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲、及び明細書を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲、及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを求めるものである。
2 一群の請求項についての説明
訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は、直接的又は間接的に請求項1を引用しているものであって、本件訂正によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 独立特許要件
本件特許異議申立ては、本件訂正前の全ての請求項1~4が対象とされているので、本件訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 一群の請求項である請求項1~4に係る訂正の訂正要件
(1)訂正事項
ア 訂正事項1(下線は訂正箇所に付した。以下第2において同じ。)
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「 耐火物から構成される骨材を含む鋳造用石膏であって、
前記骨材は、平均体積粒径が30~50μmであり且つタップ密度が0.95~1.30g/cm3である
ことを特徴とする鋳造用石膏。」と記載したのを、
「 耐火物から構成される骨材を含む鋳造用石膏であって、
前記骨材は、平均体積粒径が30~50μmであり且つタップ密度が0.95~1.30g/cm3であり、
前記骨材は、酸化アルミニウム粉体であって、25~75wt%の割合で含まれる
ことを特徴とする鋳造用石膏。」に訂正する。(請求項1を引用する請求項3~4も同様に訂正をする。)
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
ウ 訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項3に、
「 鋳込み型内に流し込むために請求項1又は2の鋳造用石膏を混練するに際して、25~100%の混水量が用いられている
ことを特徴とする用いられた鋳造用石膏スラリー。」と記載されているのを、
「 鋳込み型内に流し込むために請求項1の鋳造用石膏を混練するに際して、25~100%の混水量が用いられている
ことを特徴とする用いられた鋳造用石膏スラリー。」に訂正する。(請求項3を引用する請求項4も同様に訂正をする。)
(2)訂正要件の検討
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の鋳造用石膏に含有される耐火物から構成される骨材に関し、請求項2の「酸化アルミニウム粉体であって、25~75wt%の割合で含まれる」ことの内容を繰り上げて付加し、限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)本件の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1について、請求項1に付加された「酸化アルミニウム粉体であって、25~75wt%の割合で含まれる」ことの内容は、上記(ア)のとおり、本件明細書等の特許請求の範囲の請求項2を繰り上げて付加したものであり、また、本件明細書等の段落【0009】、【0013】、【0034】、【0037】に対応する内容が記載されているから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であると認められる。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記(ア)のとおり、訂正前の請求項1における骨材の物質と含有割合について減縮するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
イ 訂正事項2
(ア)訂正の目的
訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、本件明細書等に新たな事項を付け加えるものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記(ア)のとおり、請求項2を削除するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことが明らかである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 訂正事項3
(ア)訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は請求項2を引用していたものを、訂正事項2の請求項2の削除に伴い、請求項1のみを引用するようにして、請求項2を引用しないようにするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、請求項3が引用していた請求項について、請求項1のみを引用するようにして、請求項2を引用しないようにするものであるから、本件明細書等に新たな事項を付け加えるものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、請求項3が引用していた請求項について、請求項1のみを引用するようにして、請求項2を引用しないようにするものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)一群の請求項の訂正
訂正事項1~3は、上記2の特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である請求項1~4について行うものである。
5 明細書の訂正の訂正要件
(1)訂正事項
ア 訂正事項4
訂正前の明細書の段落【0008】に
「 すなわち、第1発明の要旨とするところは、耐火物から構成される骨材を含む鋳造用石膏であって、前記骨材は、平均体積粒径が30~50μmであり且つタップ密度が0.95~1.30g/cm3であることにある。」と記載したのを、
「 すなわち、第1発明の要旨とするところは、耐火物から構成される骨材を含む鋳造用石膏であって、前記骨材は、平均体積粒径が30~50μmであり且つタップ密度が0.95~1.30g/cm3であり、前記骨材は、酸化アルミニウム粉体であって、25~75wt%の割合で含まれることにある。」に訂正する。
イ 訂正事項5
明細書の段落【0009】を削除する。
ウ 訂正事項6
訂正前の明細書の段落【0010】に
「 第3発明の要旨とするところは、鋳込み型内に流し込むために第1発明又は第2発明の鋳造用石膏を混練するに際して25~100%の混水量(石膏100g当たりの水の量(g))が用いられた鋳造用石膏スラリーであることにある。」と記載したのを、
「 第2発明の要旨とするところは、鋳込み型内に流し込むために第1発明の鋳造用石膏を混練するに際して25~100%の混水量(石膏100g当たりの水の量(g))が用いられた鋳造用石膏スラリーであることにある。」に訂正する。
エ 訂正事項7
訂正前の明細書の段落【0011】に
「 第4発明の要旨とするところは、第3発明の鋳造用石膏スラリーが鋳込み型内で硬化された、前記鋳込み型の形状を有する鋳造用石膏型であることにある。」と記載したのを、
「 第3発明の要旨とするところは、第2発明の鋳造用石膏スラリーが鋳込み型内で硬化された、前記鋳込み型の形状を有する鋳造用石膏型であることにある。」に訂正する。
オ 訂正事項8
訂正前の明細書の段落【0012】に
「 第1発明の鋳造用石膏によれば、前記骨材は、平均体積粒径が30~50μmであり且つタップ密度が0.95~1.30g/cm3であることから、鋳造用石膏型の熱伝導率が高められるので、鋳造時において金属の固形化が均一となり易く、鋳造された金属製品内の鬆(ス)の発生が抑制される。」と記載したのを、
「 第1発明の鋳造用石膏によれば、前記骨材は、平均体積粒径が30~50μmであり且つタップ密度が0.95~1.30g/cm3であることから、鋳造用石膏型の熱伝導率が高められるので、鋳造時において金属の固形化が均一となり易く、鋳造された金属製品内の鬆(ス)の発生が抑制される。また、珪砂(シリカ)よりも大幅に高い熱伝導率を有する酸化アルミニウム粉体が25~75wt%の割合で鋳造用石膏に含まれるので、熱伝導率が高められた鋳造用石膏型において、鋳造時の金属の固形化が均一となり易く、鋳造された金属製品内に鬆(ス)の発生が抑制される。酸化アルミニウム粉体の割合が25wt%よりも小さいと、石膏の熱伝導率が不足し、鋳造された金属製品内に鬆(ス)が発生する。逆に75wt%よりも大きいと、相対的に鋳造型を形成する半水石膏の割合が減少するため、鋳造型全体の強度が低下する。」に訂正する。
カ 訂正事項9
明細書の段落【0013】を削除する。
キ 訂正事項10
訂正前の明細書の段落【0014】に
「 第3発明の鋳造用石膏スラリーによれば、スラリー化するための混練に際して25~100%の混水量(石膏100g当たりの水の量(g))が用いられている。これにより、鋳込みについて適度の粘度を有する鋳造用石膏スラリーが得られるので、鋳造用石膏スラリーを流し込む作業において、作業能率が高められる。混水量が20%を下回ると、鋳造用石膏スラリーの粘度が高くなるので、作業能率が低下し、形状が複雑であるときには細部に充填できず欠けが発生する。反対に、混水量が100%を上回ると、乾燥時の収縮が大きくなり、鋳造用石膏型に引けが発生する。」と記載したのを、
「 第2発明の鋳造用石膏スラリーによれば、スラリー化するための混練に際して25~100%の混水量(石膏100g当たりの水の量(g))が用いられている。これにより、鋳込みについて適度の粘度を有する鋳造用石膏スラリーが得られるので、鋳造用石膏スラリーを流し込む作業において、作業能率が高められる。混水量が20%を下回ると、鋳造用石膏スラリーの粘度が高くなるので、作業能率が低下し、形状が複雑であるときには細部に充填できず欠けが発生する。反対に、混水量が100%を上回ると、乾燥時の収縮が大きくなり、鋳造用石膏型に引けが発生する。」に訂正する。
ク 訂正事項11
訂正前の明細書の段落【0015】に
「 第4発明の鋳造用石膏型によれば、第3発明の鋳造用石膏スラリーが鋳込み型内で硬化された、前記鋳込み型の形状を有する。これにより、鋳込み型の表面形状に対応したキャビティを有する鋳造用石膏型が得られる。」と記載したのを、
「 第3発明の鋳造用石膏型によれば、第2発明の鋳造用石膏スラリーが鋳込み型内で硬化された、前記鋳込み型の形状を有する。これにより、鋳込み型の表面形状に対応したキャビティを有する鋳造用石膏型が得られる。」に訂正する。
(2)訂正要件の検討
ア 訂正事項4
(ア)訂正の目的
訂正事項4は、訂正事項1で請求項1を訂正するのに伴い、明細書の段落【0008】の内容を、訂正後の請求項1の内容と整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4について、段落【0008】に付加された「酸化アルミニウム粉体であって、25~75wt%の割合で含まれる」ことの内容は、訂正事項1と同様に、本件明細書等の特許請求の範囲の請求項2、明細書の段落【0013】、【0034】、【0037】に対応する内容が記載されているから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であると認められる。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、上記(ア)のとおり、訂正事項1に対して、明細書の段落【0008】の内容を整合させるものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
イ 訂正事項5
(ア)訂正の目的
訂正事項5は、訂正事項2で請求項2が削除されたことに伴い、明細書の段落【0009】を削除して整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、明細書の段落【0009】を削除するものであって、本件明細書等に新たな事項を付け加えるものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、明細書の段落【0009】を削除するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことが明らかである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
ウ 訂正事項6
(ア)訂正の目的
訂正事項6は、訂正事項2で特許請求の範囲の請求項2が削除され、訂正事項3により、訂正前の特許請求の範囲の請求項3が請求項1又は請求項2を引用していたものを請求項1のみを引用するものに訂正をすることに伴い、明細書の段落【0010】の記載について、「第3発明」を「第2発明」に、「第1発明又は第2発明」を「第1発明」にして、整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6は、上記(ア)のとおり、訂正事項2及び訂正事項3で訂正をする内容に明細書の段落【0010】の内容を整合させるために、明細書記載の発明に付された番号を整合させるものであって、本件明細書等に新たな事項を付け加えるものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、上記(ア)のとおり、訂正事項2及び訂正事項3で訂正をする内容に明細書の段落【0010】の内容を整合させるものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことが明らかである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 訂正事項7
(ア)訂正の目的
訂正事項7は、訂正事項2で特許請求の範囲の請求項2が削除されて発明の数が変更されるのに合わせて、明細書の段落【0011】の内容を、「第4発明」を「第3発明」に、「第3発明」を「第2発明」にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項7は、上記(ア)のとおり、訂正事項2により発明の数が変更されるのに合わせて、明細書の段落【0011】の内容を整合させるために、明細書記載の発明に付された番号を整合させるものであって、本件明細書等に新たな事項を付け加えるものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかである。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項7は、上記(ア)のとおり、訂正事項2により発明の数が変更されるのに合わせて、明細書の段落【0011】の内容を整合させるものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことが明らかである。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
オ 訂正事項8
(ア)訂正の目的
訂正事項8は、訂正事項1で請求項1が訂正されたことに伴い、本件明細書等の段落【0012】に、段落【0013】の内容を加入して、訂正後の請求項1の内容と整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項8について、上記(ア)のとおり、本件明細書等の段落【0012】に、段落【0013】の内容を加入したものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であると認められる。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項8は、上記(ア)のとおり、訂正事項1で訂正する内容に明細書の段落【0012】の内容を整合させるものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
カ 訂正事項9
(ア)訂正の目的
訂正事項9は、訂正事項2で請求項2が削除されたことに伴い、明細書の段落【0013】を削除して整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項9は、明細書の段落【0013】を削除するものであって、本件明細書等に新たな事項を付け加えるものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかである。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項9は、明細書の段落【0013】を削除するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことが明らかである。
したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
キ 訂正事項10
(ア)訂正の目的
訂正事項10は、訂正事項2で特許請求の範囲の請求項2が削除されたことで、請求項1、請求項3及び請求項4が残ったことに伴い、明細書の段落【0014】の記載について、請求項3に対応する「第3発明」を「第2発明」にして、整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項10は、上記(ア)のとおり、訂正事項2で訂正をする内容に明細書の段落【0014】の内容を整合させるために、明細書記載の発明に付された番号を整合させるものであって、本件明細書等に新たな事項を付け加えるものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかである。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項10は、上記(ア)のとおり、訂正事項2で訂正をする内容に明細書の段落【0014】の内容を整合させるものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことが明らかである。
したがって、訂正事項10は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
ク 訂正事項11
(ア)訂正の目的
訂正事項11は、訂正事項2で特許請求の範囲の請求項2が削除されて発明の数が変更されるのに合わせて、明細書の段落【0015】の内容について、「第4発明」を「第3発明」に、「第3発明」を「第2発明」にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項11は、上記(ア)のとおり、訂正事項2により発明の数が変更されるのに合わせて、明細書の段落【0015】の内容を整合させるために、明細書記載の発明に付された番号を整合させるものであって、本件明細書等に新たな事項を付け加えるものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることが明らかである。
したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
(ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項11は、上記(ア)のとおり、訂正事項2により発明の数が変更されるのに合わせて、明細書の段落【0015】の内容を整合させるものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことが明らかである。
したがって、訂正事項11は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)明細書の訂正と関係する請求項についての説明
願書に添付した明細書の訂正をする訂正事項4~11は、いずれも特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項で規定する当該明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てである請求項1~4について訂正をするものである。
6 本件訂正が一部の請求項の削除のみをするものであることについて
本件訂正は、訂正事項1で訂正前の請求項1に請求項2の内容を追加した上で訂正後の請求項1とし、訂正事項2で訂正前の請求項2を削除し、訂正事項3で訂正前の請求項3が請求項1及び請求項2を引用していたものを、訂正前の請求項2(訂正後の請求項1)のみを引用するものとし、訂正事項4~11で、明細書の記載をこれらの訂正事項1~3に合わせて整合させたものである。
すなわち、訂正後の請求項1は、訂正前の請求項2の内容と同じであり、訂正後の請求項3及び4は、引用する請求項から訂正前の請求項1を削除したものであるから、訂正後の特許請求の範囲には、訂正前の請求項2~4に係る発明が残り、訂正前の請求項1に係る発明及び当該請求項1を引用する発明のみが削除されたものといえる。
したがって、本件訂正は、実質的に、訂正前の請求項1の削除のみをするものと同義であり、上記第1の2の「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情」に該当するといえる。
7 小括
以上のとおりであるから、本件訂正の訂正事項1~11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮、又は第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とし、同法同条第9項で準用する同法第126条の第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、本件特許の明細書、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり本件訂正を認めたから、本件特許の請求項1、3~4に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件特許発明1」といい、同様に請求項○に係る発明を「本件特許発明○」という。また、「本件特許発明1」~「本件特許発明4」をまとめて「本件特許発明」ということがある。)は、本件訂正請求により訂正をした特許請求の範囲の請求項1、3~4に記載した次の事項により特定されるとおりのものである(本件訂正により、請求項2は削除された。)。
「【請求項1】
耐火物から構成される骨材を含む鋳造用石膏であって、
前記骨材は、平均体積粒径が30~50μmであり且つタップ密度が0.95~1.30g/cm3であり、
前記骨材は、酸化アルミニウム粉体であって、25~75wt%の割合で含まれる
ことを特徴とする鋳造用石膏。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
鋳込み型内に流し込むために請求項1の鋳造用石膏を混練するに際して、25~100%の混水量が用いられている
ことを特徴とする用いられた鋳造用石膏スラリー。
【請求項4】
請求項3の鋳造用石膏スラリーが前記鋳込み型内で硬化された、前記鋳込み型の形状を有する
ことを特徴とする鋳造用石膏型。」
第4 令和7年1月22日付け取消理由通知書で通知した取消理由
1 取消理由の要旨
当審が、令和7年1月22日付け取消理由通知書(以下、単に「取消理由通知書」という。)で、訂正前の本件特許発明に対して通知した取消理由の要旨は以下のとおりである。
A.(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 取消理由の説明
上記1の理由A(サポート要件)の内容は、概略以下のとおりである。
(1)対象請求項
請求項1、3~4
(2)概要
ア 骨材を構成する耐火物の限定について
本件特許発明1の骨材は、請求項1に記載した発明特定事項からみて、耐火物について限定がないから、本件の発明の詳細な説明の段落【0016】に記載した耐火物の全てを含み、従来技術である珪砂(シリカ)も含むが、酸化アルミニウムは、シリカよりも大幅に熱伝導率が高いことが説明されている(段落【0013】、【0037】)ことを考慮すると、シリカを骨材とする場合は、仮に、平均体積粒径が本件特許発明1の数値範囲を満たし、さらに、耐火物割合が25wt%であるとしても、石膏型の熱伝導率が本件特許発明1の課題を解決し得る程度に高くなるとはいえない。
そして、段落【0016】に記載された珪砂(シリカ)以外の耐火物についてみても、当該耐火物を含有する石膏種が本件特許発明の課題を解決し得る程度に熱伝導率が高くなることは示されていない。
したがって、本件の発明の詳細な説明には、鋳造用石膏が含む骨材に関し、平均体積粒径及びタップ密度の観点からは、平均体積粒径が30~50μmであってタップ密度が0.95~1.30g/cm3である酸化アルミニウム粉体(アルミナ)のみが、課題を解決し得る発明として具体的に記載されていると認められる。
イ 骨材を構成する耐火物の割合について
本件の発明の詳細な説明において、段落【0034】、【0037】、図4及び8の記載からみて、鋳造用石膏が含む骨材に関し、酸化アルミニウム粉体の平均体積粒径が30~50μmであってタップ密度が0.95~1.30g/cm3であることのみならず、骨材を構成する耐火物の割合の観点から、さらに、酸化アルミニウム粉体の割合が25~75wt%であることが、鋳造された金属製品内での鬆(ス)の発生が抑制される程度に熱伝導率が高くなる必要条件であることが認められる。
ウ 本件特許発明1と発明の詳細な説明の関係について
上記ア及びイより、発明の詳細な説明においては、「耐火物から構成される骨材を含む鋳造用石膏であって、前記骨材は、平均体積粒径が30~50μmであり且つタップ密度が0.95~1.30g/cm3である」ことに加え、「前記骨材は、酸化アルミニウム粉体であって、25~75wt%の割合で含まれる」鋳造用石膏の発明が、課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲であるのに対して、本件特許発明1は、この範囲を超えているものである。
よって、本件特許発明1と、発明の詳細な説明に発明として記載されたものとが、実質的に対応しているとはいえず、特許請求の範囲の請求項1の記載はサポート要件を満たしていない。
また、本件特許の請求項1、及び請求項1を引用する請求項3~4に係る発明も、発明の詳細な説明に記載したものでない。
3 通知した取消理由に対する当審の判断
第2の本件訂正により、請求項2の内容が請求項1に付加され、請求項3は請求項1を引用し、請求項4は請求項3を引用することとなった。
そうすると、本件特許発明1は、上記取消理由のない訂正前の請求項2に係る発明に対応し、「耐火物から構成される骨材を含む鋳造用石膏であって、前記骨材は、平均体積粒径が30~50μmであり且つタップ密度が0.95~1.30g/cm3である」ことに加え、「前記骨材は、酸化アルミニウム粉体であって、25~75wt%の割合で含まれる」鋳造用石膏の発明であるから、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に、課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内のものである。そして、本件特許発明1を引用する本件特許発明3~4も同様であるから、本件特許発明1、3~4は、発明の詳細な説明に課題を解決し得る発明として具体的に記載されたものと認められる。
したがって、本件特許の請求項1、3~4の記載に、通知した取消理由で説示した不備はない。
4 小括
よって、取消理由通知書で通知した理由A(サポート要件)によっては、本件特許の請求項1、3~4に係る特許を取り消すことができない。
第5 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立書の申立ての理由
1 申立ての理由の概要
上記第4の理由以外で、特許異議申立書において申立てられた理由の要旨は以下のとおりである。
B.(新規性)本件特許発明1~4は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
C.(進歩性)本件特許発明1~4は、甲第1号証に記載された発明、又は甲第1号証に記載された発明及び甲第2~3号証に例示される周知技術に基いて、本件特許に係る出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
D.(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 申立人が提出した証拠方法
(1)甲第1号証:特公昭45-6001号公報
(2)甲第2号証:特開2008-6502号公報
(3)甲第3号証:特開2009-220143号公報
以下、甲第○号証を「甲○」という。
3 甲1について
(1)甲1の記載事項
ア 「発明の詳細な説明
本発明は精密鋳造用鋳型として用いられることのできる耐熱性石膏材料に関するものである。」(第1欄第13~15行)
イ 「本発明は種々の基礎研究および応用実験の結果、無亀裂石膏鋳型を製作するには、鋳型材料に2つの特性を与える必要のあることを発見した。その1つは石膏の一部を熱膨張の小さい耐熱物質に置き換えることである。従来からこの目的のために使用されているけい砂のような熱膨張率の大きい耐熱物質では、加熱・冷却の際にその膨張力によって無水石膏粒子間の結合力を弱めて鋳型を脆化させることになる。
ところが、熱膨張率の小さいアルミニユームオキサイド(あるいは焼成の過程において、これと同一質物となる水酸化アルミニユーム)の粒子の任意量を石膏に加えると、加熱・冷却時における収縮現象に当たり石膏粒子間を破壊することなく、ために鋳型の亀裂の発生防止にいちじるしい効果のあることが判明した。」(第1欄第35行~第2欄第12行)
ウ 「混水量を増し、しかもこの余剰水が分離することなく、鋳型材料として適度の粘性を保つ目的で、石膏の一部を耐熱物質の粒状軽石で置き換えると約70%以上の混水量が可能となる。この際タルクを少量入れると軽石の効果はより良好のようである。このうち粒状軽石は、天然産のもので〔火山岩の流紋岩に属し、SiO2およびAl2O3を主成分とし、見掛け比重は0,8~1.0である。〕多孔質であり、かつ、熱膨張率も小さいため温度による変化が少なく、鋳型の精度保持と亀裂破壊が少ないという特性を持つことを知つた。」(第2欄第23~33行)
エ 「実施例 3
α半水石膏58%に粒度150メツシユ以下のアルミニユームオキサイド(Al2O3)30%、粒度100メツシユ以下の軽石10%、粒度100メツシユ以下のけい砂2%を混合し、このもの100部に対し70%の水を混和よく混練して任意の型に成型する。
成型後大気中に5時間以上放置乾燥した後、200℃で10時間乾燥し炉中で放冷する。このものの抗圧力は43.8kg/cm2であつた。
なお、300℃で6時間加熱したものは、抗圧力27.9kg/cm2、500℃で5時間加熱したものは抗圧力16.9kg/cm2、また800℃で同じく5時間加熱したものは10kg/cm2の抗圧力を保持した。
ついで本耐熱石膏材料を使用して重量約15kgのアルミニユーム合金の金型を製作した。この石膏鋳型を250℃で20時間乾燥した後鋳込温度630℃、圧力0.60kg/cm2で加圧鋳造したところ、鋳造品は精密鋳造の目的を充分に満足する結果を得た。
本実施例は通常常識的によく使用されているタルクおよび石綿などを省略し、本発明独特の特徴である、水酸化アルミニユーム(アルミニユームオキサイド)と軽石とを混合することによつて鋳造用石膏としての効果を充分に発揮した事例である。」(第4欄第37行~第5欄第18行)
オ 特許請求の範囲
「1 半水石膏を主材とし、これにアルミニユームオキサイドまたは水酸化アルミニユームと、天然産軽石の粒状としたものとを混入することを特徴とする鋳型用石膏材料。」(第6欄第25~29行)
(2)甲1の記載事項の整理
ア 上記(1)ア~オの記載からみて、甲1の鋳型用石膏材は、熱膨張の小さい耐熱物質から構成される混合物を含む。
イ 上記(1)エの記載からみて、上記アの耐熱物質は、粒度がアルミニユームオキサイド(Al2O3)は150メツシユ以下、軽石は100メツシユ以下、けい砂は100メツシユ以下である。
ウ 上記(1)エの記載からみて、上記アの耐熱物質は、30%のアルミニュームオキサイド(Al2O3)、10%の軽石、及び2%のけい砂が混入され、主材である58%のα半水石膏と混練されて、甲1発明の鋳型用石膏材料が製作される。
(3)甲1に記載された発明
上記(1)~(2)より、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「 熱膨張の小さい耐熱物質から構成される混合物を含む鋳型用石膏材料であって、
前記混合物は、粒度がアルミニユームオキサイド(Al2O3)は150メツシユ以下、軽石は100メツシユ以下、けい砂は100メツシユ以下であり、
前記混合物は、30%のアルミニユームオキサイド(Al2O3)、10%の軽石、及び2%のけい砂が混入され、主材である58%のα半水石膏と混練される鋳型用石膏材料。」
4 甲2について
(1)甲2の記載事項
ア 特許請求の範囲
「【請求項5】
鋳型の形成方法において、
ダイ(2,4)を形成することと、
セラミック組成物と共に、スリップ鋳造、ゲル鋳造、砂型鋳造、石膏型鋳造、ダイカスト、射出成形、スラリ注入、粉体成形(圧密)、反応成形、コロイド成形、冷間等静圧圧縮成形、熱間等静圧圧縮成形、及びこれらの少なくとも1つを含む組み合わせからなる群から選択される鋳造工程を用いて前記ダイ(2,4)内に鋳型(8,10)を鋳造することと、
前記鋳型(8,10)を加熱することと、
装置のノズル(28)を通して吐出される混合物(26)を前記鋳型(8,10)の凹面(24)上に吐出して、該凹面に表面構造を形成することと、
前記混合物(26)を熱処理することと
を含む方法。」
イ 明細書
「【0012】
セラミック製の鋳型上に表面構造を形成する本方法は、鋳型の作成から始まる。この鋳型は、セラミック形成法、例えば、インベストメント鋳造、スリップ鋳造、ゲル鋳造、砂型鋳造、石膏型鋳造、ダイカスト、射出成形、スラリ注入、粉体成形(圧密)、反応成形、コロイド成形、等静圧圧縮成形(例えば、冷間等静圧圧縮成形又は熱間等静圧圧縮成形)、並びにこれらの少なくとも1つを含む組み合わせを用いて形成される。鋳型については、鋳型の内面に接近することが可能であって、後工程において表面構造を内面に形成できるように作られる。従って、鋳型は複数の部分(例えば、2つのモールドハーフ)から形成され、これらを互いに組み立てることで、鋳型の完成品を形成すると共に、鋳造物を取り出すために分解することができる。
【0013】
鋳型の使用材料は、金属部品等の所望の鋳造物の鋳造中における持続温度に耐えられる材料、特に耐熱性超合金からなる。代表的な材料はアルミナ、シリカ等からなる。
・・・
【0015】
ダイの形成工程が完了すると、図3及び図4に示すように、ダイはセラミック組成物6で充填される。任意選択として、セラミック組成物6は、例えば機械的な圧縮(例えばパンチ)、等静圧圧縮技術等を用いてダイ内で圧縮することができる。一例では、一組のダイ(例えば、第1のダイハーフ2及び第2のダイハーフ4)がセラミック組成物で充填され、次に等静圧圧縮成形工程を受け、その場合に、セラミック組成物6は加圧エアチャンバ内で、1平方インチ当たり約15,000ポンド(psi)の圧力に曝される。
【0016】
セラミック組成物6には、アルミナ、シリカ、ジルコニア、ケイ酸ジルコニウム(ジルコン)、ケイ酸アルミニウム(ムライト)、イットリア、ケイ酸イットリウム、アルミン酸イットリウム(ガーネット)、アルミン酸イットリウム(ペロブスカイト)、希土類酸化物、希土類ケイ酸塩、希土類アルミン酸塩等、並びにこれらの少なくとも1つを含む組み合わせ等のセラミック粉末を使用できる。選択される具体的なセラミック粉末は、熱伝導率及び耐摩耗性等の所望の鋳型特性に基づく。更に、使用する粉末の平均粒径は、表面粗度等、所望の具体的な特性による。平均粒径は、一般に、約100マイクロメートル(μm)以下であり、より具体的には、約70μm以下であり、更に具体的には約30μm以下である。粒径は、複製される具体的な表面構造の大きさ、及び結果として生じる鋳型の表面仕上げに影響する。例えば、特殊な実施形態で使用する粉末は、約0.001μmから約10μmの平均粒径をもつ場合がある。
【0017】
種々の粉末に加えて、セラミック組成物6は更に、スラリを形成するために液状媒体(アルコール類、水、及び/又は油類等)を含んでもよい。スラリは、複雑な鋳型の幾何学的形状(例えば、アンダーカットや溝等)に流し込むことができる場合に有利である。」
(2)甲2に記載された技術的事項
上記(1)の記載事項から見て、甲2には、次の技術的事項(以下「甲2記載の技術的事項」という。)が記載されている。
「鋳型に用いるセラミックについて平均粒径を100μm程度以下とすること。」
5 甲3について
(1)甲3の記載事項
ア 特許請求の範囲
「【請求項1】
鋳型造型に際して用いられる鋳物砂の一部に代えて充填せしめられるセラミック骨材にして、焼成によって骨材材質の一部を構成し、結晶構造中に微細な気孔を生成せしめる軽量化資材を用い、この軽量化資材の粉末を所定のセラミック資材の粉末に混合して造粒した造粒物を焼成することにより得られる球状の多孔質骨材から構成され、且つ前記鋳物砂の嵩密度よりも小さな比重を有していると共に、50kg/cm2上の圧縮強度を有していることを特徴とする鋳型用セラミック骨材。
・・・
【請求項5】
前記軽量化資材粉末が、嵩密度:0.1~1.0g/cm3の多孔質体又は中空体である請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の鋳型用セラミック骨材。
【請求項6】
前記セラミック資材粉末が、SiO2源原料、Al2O3源原料及びMgO源原料のうちの少なくとも1種である請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の鋳型用セラミック骨材。」
イ 明細書
「【0001】
本発明は、鋳型用セラミック骨材に係り、特に、鋳型造型に用いられる鋳物砂の一部に代えて充填せしめられ、鋳物砂の使用量の低減を有利に実現し得るセラミック骨材に関するものである。
・・・
【0041】
このようにして得られた鋳型用セラミック骨材にあっては、多数の微細な気孔を有する多孔質体であり、しかも、フェライト等の比重の大きな磁性材料を必須成分として含有するものではないところから、軽量化が有利に実現され、その比重が、鋳物砂の嵩密度(重装嵩密度)よりも小さくされているのであり、これにより、鋳物砂との置換容積比率を高めることが可能となって、鋳物砂の使用量の低減、更には、鋳物砂に混練される粘結剤の使用量の低減を、より一層有利に実現することが可能となる。なお、本発明において、「嵩密度(重装嵩密度)」は、JIS R 9301-2-3の「アルミナ粉末-第2部:物性測定方法-3:軽装かさ密度及び重装かさ密度」に準拠して測定され得る。
【0042】
なお、かかる鋳型造型に用いられる鋳物砂の嵩密度は、鋳物砂の種類によって異なり、例えば、鋳物砂として広く用いられている珪砂は、1.5~1.6g/cm3程度、また、人工砂であるムライトサンドは、1.7~1.8g/cm3程度、更に、特殊鋼用に使用されるクロマイトサンドは、2.9~3.0g/cm3程度である。本発明においては、鋳型用セラミック骨材の比重が、置換対象となる鋳物砂の嵩密度より小さい値であれば、特に制限されるものではないものの、好ましくは、珪砂の嵩比重よりも小さな値(1.5g/cm3未満)、より好ましくは0.6g/cm3以上、1.5g/cm3未満の範囲とされることが望ましい。これは、鋳型用セラミック骨材の比重が、0.6g/cm3未満では、機械的強度が低下する傾向があるからであり、また、1.5g/cm3以上であると、鋳物砂として珪砂を用いた場合に、鋳型重量の原因となって、鋳物砂との置換容積比率を効果的に高めることが不可能となるからである。」
(2)甲3に記載された技術的事項
上記(1)の記載事項から見て、甲3には、次の技術的事項(以下「甲3記載の技術的事項」という。)が記載されている。
「鋳型に用いる酸化アルミニウム等の鋳型用セラミック骨材について、嵩密度を0.6g/cm3~1.5g/cm3とすること。」
2 理由B(新規性)及び理由C(進歩性)について
(1)本件特許発明1と引用発明1の対比
ア 甲1発明の「熱膨張の小さい耐熱物質」は本件特許発明1の「耐火物」に相当し、以下同様に「混合物」は「骨材」に、「鋳造用石膏材料」は「鋳造用石膏」にそれぞれ相当する。
(2)甲1発明の「前記混合物は、粒度がアルミニユームオキサイド(Al2O3)は150メツシユ以下、軽石は100メツシユ以下、けい砂は100メツシユ以下であり」と本件特許発明1の「前記骨材は、平均体積粒径が30~50μmであり」とを対比すると、申立書の第13ページ第11~16行(「・構成要件(B)について」)で説明されているように、メッシュは、1インチ(25.4mm)の間にある線の数であり、粒度150メッシュ以下とは、粒径が109μm以下であることを意味し、粒度100メッシュ以下とは、その1.5倍程度の粒径であることが認識され、両発明は、いずれも粒径が数十μmから数百μm程度の範囲の粉体といえるから、「前記骨材は、粉体であり」という点に限り一致する。
(3)甲1発明の「前記混合物は、30%のアルミニユームオキサイド(Al2O3)、10%の軽石、及び2%のけい砂が混合され、主材である58%のα半水石膏と混練される」は、本件特許発明1の「前記骨材は、酸化アルミニウム粉体であって、25~75wt%の割合で含まれる」に相当する。
(4)本件特許発明1と甲1発明の一致点及び相違点
ア 一致点
耐火物から構成される骨材を含む鋳造用石膏であって、
前記骨材は、粉体であり、
前記骨材は、酸化アルミニウム粉体であって、25~75wt%の割合で含まれる
鋳造用石膏。
イ 相違点
(ア)相違点1
骨材の粒径について、本件特許発明1は、「平均体積粒径が30~50μm」であるのに対して、甲1発明は、「粒度がアルミニユームオキサイド(Al2O3)は150メツシユ以下、軽石は100メツシユ以下、けい砂は100メツシユ以下」である点。
(イ)相違点2
タップ密度について、本件特許発明1の鋳造用石膏は、「0.95~1.30g/cm3」であるのに対して、甲1発明の鋳造用石膏材は、不明である点。
(5)理由B(新規性)についての判断
上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲1発明との間に相違点が存在するから、本件特許発明1は甲1発明と同一ではない。
したがって、本件特許発明1は甲1に記載された発明ではなく、本件特許発明1の発明特定事項を引用する本件特許発明3~4と共に、特許法第29条第1項第3号に該当しないから、請求項1、及び請求項3~4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでなく、理由B(新規性)により、取り消すことはできない。
(6)理由C(進歩性)についての判断
ア 事案に鑑み、相違点2から検討する。
申立書において本件特許発明1と甲1発明の相違点に関して、周知慣用技術を例示する文献として引用されている甲2及び甲3についてみると、甲2記載の技術的事項は、上記4(2)のとおり、「鋳型に用いるセラミックについて平均粒径を100μm程度以下とすること。」であって、タップ密度に関するものではないことが明らかである。
イ 次に、甲3の技術的事項は、上記5(2)のとおり、「鋳型に用いる酸化アルミニウム等の鋳型用セラミック骨材について、嵩密度を0.6g/cm3~1.5g/cm3とすること。」である。
そして、甲3の段落【0041】の記載によれば、ここでの嵩密度(重装嵩密度)は、JIS R 9301-2-3:1999「アルミナ粉末-第2部:物性測定方法-3:軽装かさ密度及び重装かさ密度」に準拠して測定され得るもので、申立書の第16ページでも説明されているように、軽装かさ密度を測定した後,試料の入ったシリンダーを約30mmの高さから100回落下させて試料を圧縮し,圧縮後の試料の容積から重装かさ密度を算出するものである。
ウ これに対して、本件特許発明1におけるタップ密度は、当業者の技術常識に基づけば、JIS Z 2512:2012「金属粉-タップ密度測定方法」に準拠して測定するものと解されるところ、その「4.3 タッピング装置」に、「固い台の上で,測定容器をタップすることができ,粉末の表面層を水平な状態に保ったままタップすることができるもの。タップストロークを3mm,タップ回数を1分間に100~300回それぞれ設定できなければならない。」と規定されている。そして、本件の発明の詳細な説明の段落【0029】には、タップ回数50で測定することが記載されているから、本件特許発明1のタップ密度は、3mmのタップストロークで、50回のタップを行うものであるといえるが、上記イの「試料の入ったシリンダーを約30mmの高さから100回落下させて試料を圧縮」する甲3の技術的事項における嵩密度(重装嵩密度)は、本件特許発明1のタップ密度と一致するものではなく、甲3の重装嵩密度の数値を、本件特許発明1のタップ密度の数値に換算する方法は不明である。
エ また、仮に、甲3の重装嵩密度の数値を本件特許発明1のタップ密度の数値に換算できるとしても、甲1発明の混合物のタップ密度の数値として、相違点2に係る「0.95~1.30g/cm3」を採用する動機があるとはいえない。
オ したがって、甲2及び甲3のいずれにも、相違点2に係るタップ密度を「0.95~1.30g/cm2」とすることについて記載されているとはいえないし、甲1~甲3のいずれにも、鋳造用石膏のタップ密度を測定すること自体が記載も示唆もされておらず、相違点2に係る本件特許発明1の構成を採用する動機があるとはいえないから、甲1発明に、甲2~3記載の技術的事項、あるいは周知慣用技術を適用して、相違点2に係る本件特許発明1とすることが容易であるとはいえない。
カ したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1、及び本件特許発明1を引用する本件特許発明3~4が、甲1発明に基づいて、又は甲1発明及び甲2~甲3記載の技術的事項もしくは周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
キ 以上のとおりであるから、請求項1、及び請求項3~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでなく、理由C(進歩性)により、取り消すことはできない。
3 理由D(明確性)について
(1)取消理由の説明
理由D(明確性)の概略は、次のとおりである。
ア 本件特許発明1の「タップ密度が0.95~1.30g/cm3である」の発明特定事項について、本件の明細書の段落【0029】には、タップ密度の測定方法に関し、「耐火物のタップ密度は、(株)セイシン企業製タップデンサーKYT-4000を用い、タップ回数50で測定した。」と記載されているものの、タップする際のストローク距離が明らかにされていない。
イ そして、タップ密度は、JIS R 9301-2-3:1999「アルミナ粉末-第2部:物性測定方法-3:軽装かさ密度及び重装かさ密度」の「軽装かさ密度を測定した後、試料の入ったシリンダーを約30mmの高さから100回落下させて試料を圧縮し、 圧縮後の試料の容積から重装かさ密度を測定する」の記載からみて、タップする際のストローク距離により変化することは技術常識である。
ウ そうすると、タップ密度を測定する際のストローク距離が規定されていない本件特許発明1のタップ密度は、どのような条件で測定して得られる数値を意味しているのかが明らかではなく、不明確である。
(2)上記(1)の理由D(明確性)の理由の検討
これに対して、既に上記2の(6)イ及びウで説示したとおり、上記(1)で引用するJIS R 9301-2-3:1999「アルミナ粉末-第2部:物性測定方法-3:軽装かさ密度及び重装かさ密度」は、タップ密度とは異なり、タップ密度の測定に関する規格は、JIS Z 2512:2012「金属粉-タップ密度測定方法」であって、タッピング装置の測定容器のタップストロークを3mmに設定することが定められているから、たとえ、明細書にタップストロークの値が具体的に記載されていなくても、本件特許発明1の骨材のタップ密度の測定は、JIS Z 2512:2012の規格に従ってタップストローク3mmでおこなうことが、当業者には当然のこととして理解される。
したがって、本件特許発明1、3~4について、特許請求の範囲に上記(1)の不備はなく明確であり、請求項1、3~4に係る特許を、理由D(明確性)により取り消すことはできない。
4 小括
よって、請求項1、3~4に係る特許は、申立ての理由に示された理由B(新規性)、理由C(進歩性)、理由D(明確性)により、取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1、3~4に係る特許は、取消理由通知に示した取消理由(上記第4)、及び、申立書に記載された申立ての理由(上記第5)によっては、取り消すことはできない。また、本件特許の請求項1、3~4に係る特許を取り消すべき他の理由も発見しない。
そして、本件特許の請求項2は、上記第2のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による請求項2に係る特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700865