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特許異議申立

2024-700552

樹脂組成物およびレジンコーテッドサンド

審判番号
2024-700552
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-548639
登録番号
7396549
請求日
2024年06月11日
審決日
2025年04月30日
公報発行日
2025年09月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】住友ベークライト株式会社
  • 【権利者代理人】速水 進治
  • 【異議申立人】佐藤 彰芳
審判長/審判官
  • 審判長 刈間 宏信
  • 審判官 鈴木 貴雄
  • 審判官 山田 康孝
分類
P1651.121-YAA(B22C) / P1651.536-YAA(B22C) / P1651.537-YAA(B22C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第36条第4項第1号、特許法第126条第6項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第184条の6第2項、特許法第17条の5第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7396549号発明「樹脂組成物およびレジンコーテッドサンド」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7396549号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。 特許第7396549号の請求項1~3、5~7に係る特許を維持する。 特許第7396549号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 1 特許掲載公報の発行までの経緯 特許第7396549号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、2023年(令和5年)5月15日(優先権主張 令和4年5月16日(以下「優先日」という。))を国際出願日とする国際特許出願であって、令和5年12月4日にその特許権の設定登録がされ、同月12日に特許掲載公報が発行された。 2 特許異議の申立て以降の経緯 本件特許についての特許異議の申立て以降の主な経緯は、次のとおりである。 (1)令和6年6月11日 特許異議申立人 佐藤 彰芳(以下「申立人」という。)による、本件特許の請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立て(当該申立てのために提出された特許異議申立書を以下単に「申立書」という。) (2)令和6年7月9日 申立人による、申立書を補正の対象とする手続補正書(方式)の提出 (3)令和6年9月12日付け(発送日:同月18日) 取消理由の通知(以下「取消理由通知A」という。) (4)令和6年11月18日 特許権者 住友ベークライト株式会社(以下「特許権者」という。)による、訂正の請求(請求された訂正を以下「本件訂正」といい、本件訂正のために提出された訂正請求書を以下「訂正請求書」という。)、及び意見書(以下「権者意見書」という。)の提出 (5)令和6年11月27日付け(発送日:同年12月3日) 訂正請求があった旨の通知 (6)令和7年2月19日(同月20日の応対記録参照) 特許権者との電話での応対(訂正請求書に添付した訂正明細書における誤記の確認) (7)令和7年2月20日付け(発送日:同月27日) 取消理由の通知(以下「取消理由通知B」という。) (8)令和7年4月2日 特許権者による、訂正請求書に添付した訂正明細書を補正の対象とする手続補正書の提出 3 手続の経緯に関する特記事項 (1)上記2(5)の訂正請求があった旨の通知について 当該通知については、書留郵送により申立人あてに発送がされたものの、「あて所に尋ねあたりません」として特許庁に返送された。また、申立人から、住所を変更した旨の届け出はされていない(特許法施行規則第9条第1項)。そこで、申立書に記載の申立人名・住所に基づいて職権で調査した結果、申立人は、弁理士 佐藤彰芳氏と推認され、弁理士法第27条に規定される弁理士登録公告(令和6年9月11日分)によれば、弁理士 佐藤彰芳氏は、令和6年8月7日に死亡抹消を事由として登録抹消された。 特許異議申立制度では、特許異議申立人が死亡したときは、申立てについての地位を承継することはできないと解される(審判便覧67-02の2.)ので、受継のための手続は不要であり、取消理由を通知した後であれば、そのまま審理し、決定をすることができるといえる(審判便覧22-01の9.(5))。 したがって、本件についても、そのまま審理し、本決定をする。 (2)上記2(8)の訂正明細書の補正について ア 当該補正の内容 本件訂正は、訂正請求書の訂正事項6に記載の「訂正前の明細書の段落【0085】【表1】にリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂1のリグニン変性率が「19」と記載されているのを「17」に訂正する。」(後述の第2の1(6)を参照。)との事項を含むものである。しかし、訂正請求書に添付した令和6年11月18日提出の訂正明細書では、段落【0085】の表1において、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂1を組成物として含む「実施例1」におけるリグニン変性率は「17」に訂正されるものの、同樹脂1を含む「比較例5」についてはリグニン変性率が「19」のままであった。 そして、当該補正は、「実施例1」及び「比較例5」のリグニン変性率をいずれも「17」に訂正するよう訂正明細書の補正をするものである。 イ 訂正の請求の要旨を変更する補正であるかの検討 訂正請求書の請求の趣旨には、 「特許第7396549号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める。」 と記載され、当該補正は、本訂正請求書に添付した令和6年11月18日提出の訂正明細書そのものを実質的に差し替える補正をするものであるため、訂正の請求の要旨を変更するものに該当するか否かについて、以下検討する。 訂正請求書に添付された訂正明細書等の補正(特許法第17条の5第1項)について、訂正拒絶理由通知に対しては、訂正事項の削除、軽微な瑕疵の補正等、訂正請求書の要旨を変更しないものであれば補正をすることができると解され(審判便覧67-05.3 の4.(3)イ)、取消理由通知に対しても同様に、軽微な瑕疵の補正であれば、訂正請求書の要旨を変更しないものとして補正をすることができると理解される(審判便覧67-05.3の4.(4)ア及びイ)。 そして、当該補正は、上記アのとおり、「比較例5」のリグニン変性率についても「17」に補正をするものであって、実質的に軽微な瑕疵の補正であるから、本件訂正の要旨を変更しないものと認める。 (上記結論及び以下において、当該補正がされた訂正明細書を「訂正請求書に添付した訂正明細書」又は単に「訂正明細書」という。) 第2 本件訂正の適否 1 本件訂正の内容について 特許権者は、本件訂正により、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求めるところ、本件訂正の内容は、以下のとおりである(訂正箇所に下線を付して示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂中の遊離フェノール類の含有量は、2質量%以下であり、」 と記載されているのを、 「前記リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂中の遊離フェノール類の含有量は、2質量%以下であり、 前記リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂の軟化点は、70℃以上95℃以下であり、」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~3、5~7も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「前記リグニン変性ノボラック型フノール樹脂」 と記載されているのを、 「前記リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂」 に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項5~7も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に、 「請求項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物」 と記載されているのを、 「請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物」 に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6~7も同様に訂正する。)。 (5)訂正事項5 明細書の段落【0077】に、 「上記調製例で得られたフェノール樹脂の数平均分子量、リグニン変性率、遊離フェノールの含有量、および軟化点を、」 と記載されているのを、 「上記調製例で得られたフェノール樹脂の数平均分子量、遊離フェノールの含有量、および軟化点を、」 に訂正する。 (6)訂正事項6 明細書の段落【0085】【表1】に、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂1のリグニン変性率が、 「19」 と記載されているのを、 「17」 に訂正する。 (7)訂正事項7 明細書の段落【0085】【表1】に、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂4のリグニン変性率が、 「17」 と記載されているのを、 「16」 に訂正する。 (8)訂正事項8 明細書の段落【0085】【表1】に、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂7のリグニン変性率が、 「31」 と記載されているのを、 「32」 に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正前の請求項1~7について、訂正前の請求項2~7は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1~7にそれぞれ対応する訂正後の請求項1~7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3 明細書の訂正と関係する請求項について 訂正事項5~8は、以下の5(5)~(6)に示すとおり、訂正前の明細書における誤記の訂正を目的とするものであり、これは一群の請求項1~7に関係する訂正である。 4 独立特許要件について 本件特許異議の申立ては、全ての請求項を対象としているので、訂正事項1~8に関して、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。 5 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について (1)訂正事項1 ア 訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1のリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂に関して「軟化点は、70℃以上95℃以下」であるものに限定し、訂正前の請求項1のリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂の軟化点を特定して限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 願書に添付した明細書の段落【0015】には、 「本実施形態の樹脂組成物に用いられるリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂は、好ましくは、70℃以上105℃以下、より好ましくは、75℃以上95℃以下の軟化点を有する。」 と記載されている。 したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(特許法第184条の6第2項、以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、訂正前の請求項1のリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂における軟化点を特定して限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的 訂正事項2は、訂正前の請求項2の「リグニン変性ノボラック型フノール樹脂」との記載を、「リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂」と正しく記載するものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 願書に最初に添付した明細書(特許法第184条の6第2項、国際公開第2023/223996号を参照)の段落[0013]及び[0048]において、 「リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂」の「数平均分子量」 について記載されている。 したがって、訂正事項2は、願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下「本件当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2は、誤記を訂正するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的 訂正事項3は、請求項4を削除するものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項3は、請求項4を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的 訂正事項4は、訂正事項3により請求項4が削除されることに伴い、請求項5において記載を引用する請求項から、請求項4を除くものである。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項4は、請求項5において記載を引用する請求項から、請求項4を除くものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的 訂正事項5は、訂正前の明細書の段落【0077】の「フェノール樹脂の数平均分子量、リグニン変性率、遊離フェノールの含有量、および軟化点を、GPC法または環球式軟化点試験機により測定した。」の記載において、リグニン変性率は、GPC法または環球式軟化点試験機により測定されるものではなく、技術的に意味を成しておらず、誤記であることは明らかであるから、「リグニン変性率」の記載を削除するものである(なお、リグニン変性率は、後述の第6の1(2)アにて説示するとおり、甲第2号証(第4の2(2))の段落【0029】(第7の1(3)ア)にリグニン含有率として記載の、(リグニン類の仕込量(固形分)/リグニン変性ノボラック型フェノール系樹脂収量)×100(%)の式により定義され、算出されるものである。)。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項5は、リグニン変性率が、GPC法または環球式軟化点試験機により測定されるものではなく、誤記を正すために「リグニン変性率」の記載を削除するものである。 したがって、訂正事項5は、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項5は、誤記を訂正するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (6)訂正事項6~8 ア 訂正の目的 訂正事項6~8は、訂正前の明細書の段落【0085】【表1】の、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂1、4及び7に係る、実施例1及び比較例5、比較例1、並びに、比較例4のリグニン変性率が、それぞれ「19」、「17」及び「31」と記載されていたところ、それぞれ「17」、「16」及び「32」が正しい数値であり、錯誤による誤記があったため、その数値を訂正するものである(なお、リグニン変性率は、上記(5)アに示した定義式により算出されるものであり、段落【0085】【表1】の、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂2及び3に係る実施例2及び3のそれぞれの数値「35(%)」及び「15(%)」は、当該定義式と整合する。すなわち、段落【0069】の「リグニン誘導体41.7重量部(固形分)」「120.3重量部のリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂2を得た。」との記載から、41.7/120.3=35%となり、段落【0071】の「リグニン誘導体13.9重量部(固形分)」「94.1重量部のリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂3を得た。」の記載に基づいて、13.9/94.1=15%となる。)。 したがって、訂正事項6~8は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項6に関して、本件当初明細書等の段落[0067]には、「リグニン誘導体15.8重量部(固形分)」「94.5重量部のリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂1を得た。」と記載され(15.8/94.5=17%)、 訂正事項7に関して、本件当初明細書等の段落[0073]には、「リグニン誘導体15.8重量部(固形分)」「98.2重量部のリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂4を得た。」と記載され(15.8/98.2=16%)、 訂正事項8に関して、本件当初明細書等の段落[0076]には、「リグニン誘導体40.5重量部(固形分)」「125.2重量部のリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂7を得た。」と記載されており(40.5/125.2=32%)、それぞれ上記(5)アに示した定義式により算出される数値は、「17(%)」、「16(%)」及び「32(%)」である。 したがって、訂正事項6~8は、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項6~8は、錯誤による誤記を訂正するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項6~8は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 6 小括 上記5(1)~(6)のとおり、訂正事項1~8に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められることから、本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明7」という。ただし、請求項4は削除されている。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された、以下の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 レジンコーテッドサンド用の樹脂組成物であって、 当該樹脂組成物は、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂、アミド化合物およびアミノシランカップリング剤を含み、 前記リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂のリグニン変性率は、10%以上50%以下であり、 前記リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂中の遊離フェノール類の含有量は、2質量%以下であり、 前記リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂の軟化点は、70℃以上95℃以下であり、 前記リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂は、リグニン類と、フェノール類と、アルデヒド類とを、酸触媒の存在下で反応させて得られるノボラック型フェノール樹脂であり、 前記アミド化合物は、前記リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して、0.3質量部以上5質量部以下の量であり、 前記アミノシランカップリング剤は、前記リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上5質量部以下の量である、樹脂組成物。 【請求項2】 前記リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂の数平均分子量は、200以上1,500以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。 【請求項3】 前記リグニン類の重量平均分子量は、2,000以上100,000以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。 【請求項4】(削除) 【請求項5】 骨材と、 滑剤と、 請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物と、を含む、 レジンコーテッドサンド。 【請求項6】 シランカップリング剤をさらに含む、請求項5に記載のレジンコーテッドサンド。 【請求項7】 前記骨材が、前記樹脂組成物からなる樹脂層で被覆されている、請求項5に記載のレジンコーテッドサンド。」 第4 申立人が主張する申立ての理由の概要 1 申立書における申立ての理由について 申立人による申立ての理由は、概略、以下のとおりである。 (1)進歩性欠如(特許法第29条第2項、同法第113条第2号) 請求項1~4について、甲第1号証に記載された主引用発明に、甲第2号証~甲第4号証記載の技術的事項を組み合わせることの容易想到性(申立書第2~6、9~18、21ページ) 請求項5~7について、甲第1号証に記載された主引用発明に、甲第2号証~甲第5号証記載の技術的事項を組み合わせることの容易想到性(申立書第5~6、18、21ページ) (2)実施可能要件(特許法第36条第4項第1号、同法第113条第4号) 請求項1~7における「リグニン変性率」について(申立書第19~21ページ) (3)明確性要件(特許法第36条第6項第2号、同法第113条第4号) 請求項1~7における「リグニン変性率」について(申立書第20~21ページ) 2 証拠方法 申立人による証拠方法は、書証として申立書に添付して提出された甲第1号証~甲第9号証である。 (1)甲第1号証:特開2016-47548号公報 (2)甲第2号証:特開2008-156601号公報 (3)甲第3号証:特開2005-288447号公報 (4)甲第4号証:特開2018-118298号公報 (5)甲第5号証:特開2011-67867号公報 (6)甲第6号証:財団法人 国際科学振興財団 編、「科学大辞典」、第2版、丸善株式会社、平成17年2月28日、p.430(「ゲルパーミエーションクロマトグラフィー」の項目) (7)甲第7号証:牧廣 ほか3名 編、「図解 プラスチック用語辞典」、第2版第3刷、日刊工業新聞社、2000年4月28日、p.248~249(「ゲルパーミエーションクロマトグラフィ」の項目) (8)甲第8号証:特開2003-164944号公報 (9)甲第9号証:特許第2610363号公報 (以下、「甲第1号証」~「甲第9号証」を、それぞれ「甲1」~「甲9」という。) 第5 当審より通知した取消理由の概要 1 取消理由通知Aの概要 取消理由通知Aによる、本件訂正前の請求項1~7に係る特許に対する取消理由の要旨は、以下のとおりである。なお、取消理由通知Aで通知した取消理由は、上記第4の1(1)~(3)に示した申立ての理由を全て含むものである。 (1)取消理由1(明確性) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記第6の1(1)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)取消理由2(実施可能要件) 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記第6の2(1)の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (3)取消理由3(進歩性) 本件訂正前の請求項1~7に係る発明は、本件特許の優先日の前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(上記第4の2の甲1、甲2、及び甲5に記載された発明)に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1~7に係る本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 取消理由通知Bの概要 取消理由通知Bによる、令和6年11月18日提出の訂正明細書及び訂正特許請求の範囲に基づく、請求項1~3、5~7に係る特許に対する取消理由の要旨は、以下のとおりである。 ・取消理由4(実施可能要件) 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記第6の3(1)の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 第6 取消理由1、2、4についての当審の判断 本件発明1~3、5~7に係る本件明細書等の記載要件に関して、取消理由通知Aに示した取消理由1(上記第5の1(1))及び取消理由2(上記第5の1(2))、並びに、取消理由通知Bに示した取消理由4(上記第5の2)について、以下判断する。 1 取消理由1(明確性) (1)取消理由通知Aで通知した理由 ア 「リグニン変性率」について 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1において、「前記リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂のリグニン変性率は、10%以上50%以下であり、」と記載されるところ、「リグニン変性率」との用語が本件特許の優先日の前において当業者にとって一般的であるとはいえず、発明の詳細な説明を参酌してもその定義が不明確であるため、結果として、本件特許の請求項1(及び、請求項1を引用する請求項2~7)に係る発明の技術的範囲が明確でない。 イ 「リグニン変性ノボラック型フノール樹脂」(請求項2)について 本件訂正前の請求項2には「前記リグニン変性ノボラック型フノール樹脂」と記載されるが、当該「フノール樹脂」は前記されておらず、本件特許の請求項2(及び、請求項2を引用する請求項5~7)に係る発明は、明確でない。 (2)当審の判断 ア 「リグニン変性率」について (ア)取消理由通知Aの第2の1(3)に示したように、甲2には、「リグニン変性率」は、フェノール又はフェノール誘導体の一部がリグニンにより置換された割合であって、フェノール又はフェノール誘導体に対するリグニンの配合量を適宜変更することにより、調整することができることが記載され、また、甲2の段落【0029】~【0030】の記載から、「リグニン変性率」は、「リグニン含有率」を算出する次式で定義されることが理解される。 リグニン含有率=(リグニン仕込量/リグニン変性ノボラック型フェノール系樹脂収量)×100(%) (イ)そして、甲2は、本件特許異議の申立てに際し、申立人が証拠方法として申立書に添付した文献であることからみても、本件特許に技術的に関連する文献として当業者に認識されていたものであったことがわかる。 (ウ)また、特許権者も、権者意見書において、甲2に記載された定義と同様に定義されるものであることを説明する(権者意見書第4~7ページ)。 (エ)してみると、請求項1において、「リグニン変性率」との用語が使用されることに関し、当業者の優先日当時における技術常識を基礎として判断すれば、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であったとまでいうことはできない。 イ 「リグニン変性ノボラック型フノール樹脂」(請求項2)について 訂正特許請求の範囲の請求項2においては、「リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂」と記載されるから、本件発明2は明確である。 (3)取消理由1(明確性)についての小括 したがって、本件発明1、及び、本件発明2、並びに、請求項1又は2の記載を引用する本件発明3、5~7は、明確であり、本件特許の請求項1~3、5~7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできない。 2 取消理由2(実施可能要件) (1)取消理由通知Aで通知した理由 ア 「リグニン変性率」について 上記1(1)のとおり、本件訂正前の請求項1には「前記リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂のリグニン変性率は、10%以上50%以下であり、」と記載されるところ、「リグニン変性率」の定義が発明の詳細な説明に明確に記載されているとはいえず、また、当該用語が一般的であるともいうことができない。 さらに、「リグニン変性率」の数値範囲が「10%以上50%以下」となるように製造するための手法や、その数値範囲に属するかを確認するための手法が、発明の詳細な説明を参酌しても不明確である。特に、特許掲載公報の段落【0077】には、 「上記調製例で得られたフェノール樹脂の数平均分子量、リグニン変性率、遊離フェノールの含有量、および軟化点を、GPC法または環球式軟化点試験機により測定した。」 と記載されるものの、リグニン変性率を、数平均分子量・重量平均分子量を算出するGPC法、又は、軟化点を測定する環球式軟化点試験機により測定する手法が明らかでない。 イ 「遊離フェノール類の含有量」について 本件訂正前の明細書の段落【0011】には、 「遊離フェノール類とは、このリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂を製造するための原料成分として使用されたフェノール類であって、未反応の状態で残留したフェノール類を指す。」 ことが記載され、段落【0047】には、 「また上記条件を用いることにより、得られるリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂に含まれる未反応の遊離フェノール類を、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂に対して、2質量%以下の量に低減することができる。」 と記載されるものの、「上記条件」が何を指すのか不明である。 (2)当審の判断 ア 「リグニン変性率」について 上記1(2)のとおり、「リグニン変性率」の定義は明らかであり、リグニン変性率の調整も、その定義のとおり、原料となるリグニン類の仕込量と、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂の収量により調整される。さらに、訂正明細書の段落【0077】によれば、リグニン変性率が、GPC法又は環球式軟化点試験機により測定されるものではないことも明らかになった。 イ 「遊離フェノール類の含有量」について 権者意見書によれば、以下の(ア)~(エ)を理解できる。 (ア)「未反応の遊離フェノール類を、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂に対し、2質量%以下の量に低減する」ために用いられる「上記条件」とは、段落【0016】に示されるリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂の製造に用いる「材料」及び「製造条件」を意図していること。 (イ)上記(ア)の「製造条件」としては、「フェノール類に対するアルデヒド類のモル比(F/P)」(段落【0044】)や「リグニン類と、フェノール類と、アルデヒド類とを、酸触媒の存在下で反応させる各工程」(段落【0045】)等を意図していること。 (ウ)段落【0067】の樹脂1と、段落【0072】の樹脂4とは、リグニン誘導体と、ホルムアルデヒド水溶液の重量部の数値が異なることで、樹脂1と樹脂4は、遊離フェノール量が0.3質量%と2.9質量%と異なるように、遊離フェノール量の調整方法の一つとして、フェノール類とリグニン類とアルデヒド類の反応比率を調整することが、本件特許の発明の詳細な説明の記載から理解されること。 (エ)遊離フェノール量の調整方法は、本件明細書等に接した当業者が技術常識を参酌し、フェノール類とリグニン類とアルデヒド類を反応させてリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂を得た後、常圧または減圧脱水することによって未反応の状態で残留したフェノール類を除去でき、その結果、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂に含まれる遊離フェノール量を低減すること。 そして、これらの(ア)~(エ)を総合すると、当業者が、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂に含まれる未反応の遊離フェノール類を、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂に対して、2質量%以下の量に低減することを実施することができるといえる。 (3)取消理由2(実施可能要件)についての小括 したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~3、5~7を当該記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく実施することができる程度に記載されたものであるといえるから、本件特許の請求項1~3、5~7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできない。 3 取消理由4(実施可能要件) (1)取消理由通知Bで通知した理由 <段落【0085】の【表1】における「リグニン変性率」について> 令和6年11月18日提出の訂正明細書の段落【0085】の【表1】によれば、実施例1と比較例5とは、同じ「リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂1」を用いているものの、リグニン変性率が「17」と「19」とで異なる。 実施例1~実施例3、比較例1~比較例4については、上記1(2)に示される定義式にて算出される「リグニン変性率」と合致するものの、比較例5については当該定義式と異なるのか、明確に理解することができない。 (2)当審の判断 訂正明細書の段落【0085】の【表1】によれば、「リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂1」を用いる実施例1及び比較例5の「リグニン変性率」がいずれも「17」で整合している。 (3)取消理由4(実施可能要件)についての小括 したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~3、5~7を実施することができる程度に記載されたものであるといえるから、本件特許の請求項1~3、5~7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできない。 第7 取消理由3についての当審の判断 本件発明1~3、5~7に関して、取消理由通知Aにて示した取消理由3(進歩性、上記第5の1(3))について、以下判断する。 1 本件発明1について (1)本件発明1の認定 本件発明1は、上記第3の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。 (2)甲1に記載された発明の認定 ア 甲1には、次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、被覆砂とその製造方法、該被覆砂を用いた成形品と化石燃料掘削補助用分散液、および被覆砂用バインダ組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 レジンコーテッドサンド(以下、「RCS」ともいう。)等の被覆砂は、例えば加熱した耐火性粒状材料等の砂と、フェノール樹脂等のバインダ(粘結剤)と、必要に応じてヘキサメチレンテトラミン等の硬化剤とを混練して製造される。RCSは加熱成形され、所望の形状の成形品となる。」 「【0091】 「試験7」 <ノボラック型フェノール樹脂の製造> 温度計、攪拌装置およびコンデンサを備えた反応容器に、フェノール940質量部、47質量%のホルマリン428質量部、およびシュウ酸2.8質量部を投入した。なお、フェノールとホルマリンの配合モル比(ホルムアルデヒド/フェノール)は、0.67であった。次いで、反応容器を徐々に昇温して、還流温度に到達せしめた後、90分間還流反応させ、さらに反応液温度が170℃になるまで加熱および減圧濃縮することにより、ノボラック型フェノール樹脂を得た。」 「【0093】 <例54> バインダ組成物の材料として、以下の成分を用いた。 ・バインダ:上述のノボラック型フェノール樹脂の製造により得られたノボラック型フェノール樹脂。 ・シランカップリング剤:3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、「KBE-903」)。 ・硬化剤:ヘキサメチレンテトラミン。 ・滑剤:ビスステアリルアマイド。 ・滑剤:ステアリン酸カルシウム。 【0094】 予め0.6質量部のビスステアリルアマイド、および0.3質量部の3-アミノプロピルトリエトキシシランを溶融混合したノボラック型フェノール樹脂30.0質量部をポリカップに計量した。 別途、ヘキサメチレンテトラミン4.5質量部を30.0質量部のイオン交換水に溶解させ、ヘキサメチレンテトラミン溶液を調製した。 別途、滑剤としてステアリン酸カルシウム1.5質量部をポリカップに計量した。 【0095】 予め160~170℃に加熱したフラタリーけい砂1500質量部を品川式ミキサーに仕込み、充分に攪拌した。砂温を145℃に維持した状態で、フラタリーけい砂を撹拌しながらポリカップに計量したノボラック型フェノール樹脂を添加し、50秒間攪拌した。次いでヘキサメチレンテトラミン溶液を添加し、砂粒が崩壊するまで混練した。そして、送風冷却を行なった後、ポリカップに計量したステアリン酸カルシウムを添加して、被覆砂を得た。 得られた被覆砂について、曲げ強度およびアンモニアガスの発生量を測定した。結果を表8に示す。」 イ 甲1発明 上記アから、甲1に記載された事項を本件特許の請求項1の記載に合わせて整理すると、甲1には、試験7の例54に関する次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている、といえる(括弧内に、甲1に記載された事項に対応する本件発明1の発明特定事項、又は、甲1の参照箇所を示す。以下同様。)。 「被覆砂(レジンコーテッドサンド)用のバインダ組成物(樹脂組成物)であって(段落【0001】~【0002】、【0095】)、 当該バインダ組成物(樹脂組成物)は、ノボラック型フェノール樹脂(段落【0091】)、滑剤としてのビスステアリルアマイド(アミド化合物、段落【0093】)およびシランカップリング剤としての3-アミノプロピルトリエトキシシラン(アミノシランカップリング剤、段落【0093】)を含み(段落【0093】)、 前記ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール(フェノール類)と、ホルマリン(アルデヒド類)とを、シュウ酸(酸触媒)の存在下で反応させて得られるノボラック型フェノール樹脂であり(段落【0091】)、 前記ビスステアリルアマイド(アミド化合物)は、前記ノボラック型フェノール樹脂30.0質量部に対して、0.6質量部、換算すれば、100質量部に対して2質量部(100質量部に対して、0.3質量部以上5質量部以下、段落【0094】)の量であり、 前記3-アミノプロピルトリエトキシシラン(アミノシランカップリング剤)は、前記ノボラック型フェノール樹脂30.0質量部に対して、0.3質量部、換算すれば、100質量部に対して1質量部(100質量部に対して、0.05質量部以上5質量部以下、段落【0094】)の量である、バインダ組成物(樹脂組成物)。」 (3)甲2記載の技術的事項 ア 甲2には、次の事項が記載されている。 「【背景技術】 【0002】 フェノール樹脂は、熱硬化性樹脂のなかでも耐熱性、機械的特性、成形性、コスト等種々の点において優れており、成形材料、積層板等様々な用途に使用されている。 ところで、フェノール樹脂は、石油を原料として製造される。このため、フェノール樹脂の製造は、CO2の排出による地球温暖化を招くおそれがある。また、石油は、枯渇しつつある資源であり、フェノール樹脂の今後の安定的供給という点で大きな問題となっている。 【0003】 かかる環境問題、安定供給の問題を解決するため、フェノール樹脂等のフェノール系樹脂の一部を植物由来の樹脂、すなわちリグニンで置換したリグニン変性フェノール系樹脂が研究されている。」 「【0006】 また、フェノール系樹脂に単にリグニンを添加しただけでは、リグニンの熱流動性と反応性が低いため、リグニンによる変性が十分進行しない。その結果、得られた樹脂は射出成形が困難で、射出成形したとしても硬化しなかったり、強度や成形性が悪く、精密な成形が困難であるという問題があった。」 「【0008】 本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、フェノール又はフェノール誘導体と、アルデヒド類と、リグニンと、を有機酸の存在下で反応させれば、フェノール又はフェノール誘導体の一部がリグニンにより置換された変性率の高いリグニン変性ノボラック型フェノール系樹脂が得られ、しかも低分子量であり、上記グラフト化したリグノフェノールとは異なり、精密な射出成形が可能で、従来のフェノール系樹脂と同等の優れた特性を有し、かつ環境問題、安定供給問題に対応可能であることを見出し、本発明を完成した。」 「【0010】 本発明のリグニン変性ノボラック型フェノール系樹脂は、高いリグニン変性率を有するにもかかわらず、フェノール系樹脂の有する強度、成形性、耐熱性、電気絶縁性等の優れた特性を損なうことなく、環境問題、安定供給問題等に対応可能な樹脂である。」 「【0014】 本発明のリグニン変性ノボラック型フェノール系樹脂は、リグニンとフェノール又はフェノール誘導体とアルデヒド類を、有機酸の存在下で反応させることによって製造することができる。本発明の製造方法は、リグニン変性フェノール系樹脂としては従来困難であったリグニン変性率20%以上を可能としたものであり、このためには、リグニンの配合割合が、フェノール又はフェノール誘導体100質量部に対して、5~100質量部が好ましく、20~90質量部がより好ましく、30~80質量部が特に好ましい。 フェノール又はフェノール誘導体とアルデヒド類との配合割合は、通常のノボラック型フェノール樹脂を製造する場合と同様であり、例えばフェノール又はフェノール誘導体100質量部に対して、アルデヒド類1~50質量部であることが好ましく、2~30質量部であることがより好ましく、3~20質量部であることが特に好ましい。アルデヒド類の濃度は特に限定されないが、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドを用いる場合、通常20~50%ホルマリン溶液又は固形のパラホルムアルデヒドの形で配合する。また、両者を併用して用いてもよい。 有機酸は、かかる反応の触媒として用いるものであり、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等が挙げられ、このうちシュウ酸が好ましい。有機酸の配合割合は、フェノール又はフェノール誘導体100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましく、0.3~8質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが特に好ましい。」 「【0020】 また、かかる方法により得られるリグニン変性ノボラック型フェノール系樹脂は、リグニン変性率を20%以上とすることができ、従来のノボラック型フェノール系樹脂が有する優れた特性を維持しながら、これを用いて精密な射出成形を行うことができる。リグニン変性率は、20~90%がより好ましく、30~80%が特に好ましく、30~60%がさらに特に好ましい。リグニン変性率は、フェノール又はフェノール誘導体に対するリグニンの配合量を適宜変更することにより、調整することができる。」 「【0025】 (樹脂合成例2) (リグニン変性率30%のリグニン変性ノボラック型フェノール系樹脂、F/P=0.4vsフェノール) 撹拌機及び温度計を備えた三口フラスコにフェノール1200質量部、リグニン350質量部を仕込み、シュウ酸12質量部を添加後、100℃になるまで加熱して、37%ホルマリン224質量部を30分間かけて逐添した。その後1時間反応させた後、反応混合物の温度が180℃になるまで常圧蒸留で脱水し、さらに、5kPaまで徐々に減圧しながら、反応混合物の温度が180℃になるまで減圧蒸留で脱水した。リグニン変性ノボラック型フェノール系樹脂1108質量部を得た。」 「【0026】 (樹脂合成例3) (リグニン変性率70%のリグニン変性ノボラック型フェノール系樹脂、F/P=0.15vsフェノール) 撹拌機及び温度計を備えた三口フラスコにフェノール500質量部を仕込み、150℃に昇温し、リグニン350質量部を添加し、150℃にて1時間溶解混合した。その後100℃まで内容物を冷却し、シュウ酸12質量部を添加後、100℃に保持しながら37%ホルマリン65質量部を30分間かけて逐添した。これを100℃で1時間反応させた後、反応混合物の温度が180℃になるまで常圧蒸留で脱水し、さらに、5kPaまで徐々に減圧しながら、反応混合物の温度が180℃になるまで減圧蒸留で脱水した。リグニン変性ノボラック型フェノール系樹脂510質量部を得た。」 「【0029】 各合成例で得られたリグニン変性ノボラック型フェノール系樹脂及び未変性のノボラック型フェノール樹脂(住友ベークライト株式会社製「A-1082」)の数平均分子量、重量平均分子量、軟化点、流れ、ゲル化時間、遊離フェノール含有量、リグニン変性率を表1に示す。なお、各測定値は、以下の方法で測定した。数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算で求めた。流れは、JIS-K-6910 4.7に従って測定した(ヘキサミンは15phr添加)。ゲル化時間は、JIS-K-6910 4.8に従って測定した。遊離フェノール含有量測定法は以下の通りである。まず、フェノールを0.1g、0.2g、0.3gを各々秤量し、アセトン20mlを加え2分攪拌し、更にn-ドデカンを0.1ml加え、1分混合したものを検量線用のサンプルとした。次に、試料3g秤量し、アセトンを20ml加え2分攪拌した。更に内標準物質としてn-ドデカンを0.1ml加えて1分混合し、測定用サンプルとした。ガスクロマトグラフィーの測定条件は、キャリアーガスを窒素ガス(1.0kg/cm2)、カラム温度を130℃、注入口温度を240℃、注入量を0.5μLである。カラムはセライト545AW (MAX TEMP.280℃、MESH 60/80)を用いた。リグニン含有率は、リグニンの揮発分はないものとして、(リグニン仕込量/リグニン変性ノボラック型フェノール系樹脂収量)×100(%)で算出した。」 「【0030】 【表1】 [図:0001426814000001.jpg] 」 イ 甲2記載の技術的事項 上記アから、甲2には、次の技術的事項(以下「甲2記載の技術的事項」という。)が記載されている、といえる。 「リグニン(リグニン類)と、フェノール(フェノール類)と、ホルマリン(アルデヒド類)とを、シュウ酸(酸触媒)の存在下で反応させて得られるリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂(段落【0026】)であって、 前記リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂のリグニン変性率は、20%以上(10%以上50%以下、段落【0014】、なお、段落【0026】の合成例3では70%、段落【0025】の合成例2では30%、段落【0030】の表1の合成例3では32%である。)であり、 前記リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂中の遊離フェノール類の含有量は、0.5質量%(2質量%以下、段落【0030】の表1の合成例3)であり、 前記リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂の軟化点は、102℃(段落【0030】の表1の合成例3)以上であること。」 (4)本件発明1と甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、以下の点で一致及び相違する。 <一致点> 「レジンコーテッドサンド用の樹脂組成物であって、 当該樹脂組成物は、ノボラック型フェノール樹脂、アミド化合物及びアミノシランカップリング剤を含み、 前記ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類と、アルデヒド類とを、酸触媒の存在下で反応させて得られるノボラック型フェノール樹脂であり、 前記アミド化合物は、前記ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して、0.3質量部以上5質量部以下の量であり、 前記アミノシランカップリング剤は、前記ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して、0.05質量部以上5質量部以下の量である、 樹脂組成物。」 <相違点> 本件発明1における「樹脂組成物」が、「リグニン類と、フェノール類と、アルデヒド類とを、酸触媒の存在下で反応させて得られるノボラック型フェノール樹脂」である「リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂」を含むものであって、「リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂のリグニン変性率」は、「10%以上50%以下」であり、「リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂中の遊離フェノール類の含有量」は、「2質量%以下」であり、「リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂の軟化点」は、「70℃以上95℃以下」であり、さらに、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂100質量部に対して、アミド化合物が0.3質量部以上5質量部以下の量、アミノシランカップリング剤が0.05質量部以上5質量部以下の量であるのに対し、 甲1発明における「バインダ組成物(樹脂組成物)」が、「フェノール(フェノール類)と、ホルマリン(アルデヒド類)とを、シュウ酸(酸触媒)の存在下で反応させて得られるノボラック型フェノール樹脂」を含むものであって、リグニン類を含めて反応させた「リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂」ではないため、 「リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂のリグニン変性率」、 「リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂中の遊離フェノール類の含有量」、 及び、 「リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂の軟化点」について特定されるものでなく、 さらに、ビスステアリルアマイド(アミド化合物)の2質量部の量、及び、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(アミノシランカップリング剤)の1質量部の量が、それぞれ、ノボラック型フェノール樹脂の100質量部に対するものである点。 (5)相違点に対する判断 ア 甲2には、上記(3)イに示した甲2記載の技術的事項が記載されている。 イ 甲1発明と甲2記載の技術的事項とは、いずれも、ノボラック型フェノール樹脂を工業用に用いる点で、技術分野が関連し、また、甲1の段落【0033】には、フェノール類の例として、植物原料由来系フェノール類であるリグニンが例示されていること、さらに、甲2の段落【0003】には、環境問題、安定供給の問題を解決するために、フェノール系樹脂の一部を植物由来の樹脂、すなわちリグニンで置換したリグニン変性フェノール系樹脂を採用しようとの課題が記載されるところ、甲1発明においても、当該課題が内在していることは当業者において自明であるといえることから、甲1発明に甲2記載の技術的事項を適用しようとする動機は存在するといえる。 ウ しかしながら、甲2記載の技術的事項においては、「リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂の軟化点」は、最も低い温度でも「102℃」の技術が記載されるのみであって、軟化点による作用・効果についての記載もない。そのため、甲1発明に甲2記載の技術的事項を適用したとしても、本件発明1のように「リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂の軟化点」を「70℃以上95℃以下」とすることについては、当業者が容易に想到し得たものであるということができない。 エ 権者意見書によれば、一般にフェノール樹脂は、その軟化点を低くすることで、これを用いたレジンコーテッドサンドによって得られる鋳型の機械的強度を高くする作用を有する。しかし、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂のリグニン原料はオリゴマーであるため、モノマーのフェノールよりも分子量が高いことから、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂よりも、軟化点が高くなり固結しにくくする作用を有するが、軟化点が高くなることで鋳型の強度が下がる。また、ノボラック型フェノール樹脂をリグニン変性する際に生じる遊離フェノールは、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂の軟化点を高くすることで固結を抑制することができるが、鋳型の強度を低下させる。 くわえて、遊離フェノールは、ヤニ・ススの発生源となりえる。一方で、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂よりも、ヤニ・ススの発生を低減しやすくなる。 本件発明1では、以上のような作用機序に着目し、リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂のリグニン変性率、軟化点、及び遊離フェノール量を同時に制御することで、固結しにくく(さらさらした状態)、鋳型にした際の高い機械的強度が得られ、及びヤニ・ススの低減といったレジンコーテッドサンド用の樹脂組成物としての特性バランスをより高水準で実現することができるものであることがわかる。 オ また、甲3~甲9の記載を参酌しても、「軟化点」が「70℃以上95℃以下」であることを含む「リグニン変性ノボラック型フェノール樹脂」については、開示も示唆もない。 (6)本件発明1の進歩性についての小括 したがって、本件発明1は、甲1発明、甲2記載の技術的事項、及び、甲3~甲9の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。 2 本件発明2~3、5~7について 本件発明2~3、5~7は、請求項1の記載を引用するものであるところ、本件発明1が上記1のとおり、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明2~3、5~7についても同様に、甲1発明、及び、甲2記載の技術的事項、及び甲3~甲9に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 したがって、本件特許の請求項2~3、5~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。 第8 むすび 以上のとおり、本件特許の請求項1~3、5~7に係る特許は、取消理由通知A及びBに示した取消理由1~4(上記第5~第7)によっては、取り消すことはできない。また、本件特許の請求項1~3、5~7に係る特許を取り消すべき他の理由も発見しない。 また、本件特許の請求項4は、上記第2及び第3のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による本件特許の請求項4に係る特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700552

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