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特許異議申立

2024-700846

ピストンリング

審判番号
2024-700846
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-555669
登録番号
7445828
請求日
2024年09月05日
審決日
2026年04月28日
公報発行日
2026年07月31日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】株式会社リケン
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】黒木 義樹
  • 【権利者代理人】鈴木 洋平
  • 【異議申立人】山崎 浩一郎
審判長/審判官
  • 審判長 八木 誠
  • 審判官 河端 賢
  • 審判官 西山 智宏
分類
P1651.113-ZC (F16J) / P1651.121-ZC (F16J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7445828号発明「ピストンリング」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7445828号の請求項1、3、4に係る特許を取り消す。 同請求項2、5~8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7445828号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、2023年(令和5年)8月29日を国際出願日とする出願であり、令和6年2月28日にその特許権の設定登録がされ、令和6年3月7日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和6年 9月 5日 :特許異議申立人 山崎 浩一郎(以下、 「申立人」という。)による請求項1ないし8 に係る特許に対する特許異議の申立て 令和7年 8月26日付け:取消理由通知書(発送日:同年8月28日) なお、令和7年8月26日付けの取消理由通知に対し、その指定期間内に特許権者から意見書の提出はされなかった。 第2 本件発明 請求項1ないし8に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などといい、本件発明1ないし8をまとめて「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 合口部を有するピストンリング基材と、 前記ピストンリング基材の少なくとも外周面を被覆する皮膜と、 を備え、 前記皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである、ピストンリング。 【請求項2】 前記皮膜がAl又はSiを含む、請求項1に記載のピストンリング。 【請求項3】 前記ピストンリング基材の表面上に形成された中間層を更に備え、前記中間層の表面上に前記皮膜が形成されている、請求項1に記載のピストンリング。 【請求項4】 前記中間層がAl又はSiを含む、請求項3に記載のピストンリング。 【請求項5】 前記皮膜はSiが含有された窒化クロムで構成され且つ前記中間層はSiが含有されたクロムで構成されている、請求項3又は4に記載のピストンリング。 【請求項6】 前記皮膜はAlが含有された窒化クロムで構成され且つ前記中間層はAlが含有されたクロムで構成されている、請求項3又は4に記載のピストンリング。 【請求項7】 前記皮膜は、Siが含有され且つ結晶粒で構成された窒化クロム又はアモルファス相が形成された窒化クロムを含む、請求項1,3及び4のいずれか一項に記載のピストンリング。 【請求項8】 前記皮膜はAlが含有された窒化クロムで構成される、請求項1,3及び4のいずれか一項に記載のピストンリング(ただし、前記皮膜がTiを含有するピストンリングを除く。)。」 第3 当審が令和7年8月26日付けで特許権者に通知した取消理由の概要 訂正前の請求項1、3、4に係る特許に対して、当審が令和7年8月26日付けの取消理由通知書において特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 1 (進歩性)請求項1及び3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第2号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項及び例を挙げるまでもなく周知の技術に基いて、請求項4に係る発明は、同甲第2号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、例を挙げるまでもなく周知の技術及び甲第5号証又は甲第6号証に記載された技術的事項に基いて、請求項1に係る発明は、同甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項及び例を挙げるまでもなく周知の技術に基いて、請求項3及び4に係る発明は、同甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、例を挙げるまでもなく周知の技術及び甲第5号証又は甲第6号証に記載された技術的事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。 よって、請求項1、3及び4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 <引用する文献> 甲第2号証:特開2001-335878号公報 甲第3号証:特開平6-248425号公報 甲第4号証:特開2013-29190号公報 甲第5号証:特開平5-223172号公報 甲第6号証:特開2017-57897号公報 第4 当審の判断 1 本件発明1ないし8について 本件発明1ないし8は、上記第2において示したとおりのものである。 2 甲号証に記載された発明について (1) 甲第1号証に記載された発明 本件特許出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第1号証(特開2022-87131号公報)には、段落【0001】、【0009】、【0020】、【0021】、【0023】、【0024】、【0025】、【0037】、【0038】、【0042】、【0043】の記載からみて、実施形態として、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「 合口部を有してもよい基材と、 前記基材の外周面に設けられた皮膜5と、を備え、 被膜5がAl又はSiを含む、 ピストンリング10。」 (2) 甲第2号証に記載された発明 本件特許出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第2号証には、段落【0001】、【0005】、【0016】ないし【0018】、【0021】ないし【0025】、【0031】、【0035】、【0037】の記載並びに【図1】の図示内容からみて、別の実施形態として、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「ピストンリング1の外周面を被覆する硬質皮膜3、 を備え、 硬質皮膜3は厚さが50μmのCrN型の窒化クロムからなるものであり、 ピストンリング1の全周面に形成された窒化層2と硬質皮膜3との間にCr、Cr2N及びCrNの中の少なくとも1つからなる下地皮膜4を形成した、 ヒストンリング1。」 (3) 甲第3号証に記載された発明 本件特許出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第3号証には、段落【0001】、【0005】、【0006】、【0009】、【0012】ないし【0014】の記載並びに【図1】及び【図2】の図示内容からみて、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 「ピストンリング本体1の少なくとも外周摺動面を被覆する皮膜2A、 を備え、 皮膜2Aは厚さが40μmのCrN組成よりなる ピストンリング。」 (4) 甲第4号証に記載された技術的事項 本件特許出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第4号証には、段落【0001】、【0002】及び【0030】の記載並びに【図3】の図示内容からみて、以下の技術的事項(以下、「甲4技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「CrN皮膜の熱伝導率が約5W/m・Kであること。」 (5) 甲第5号証に記載された技術的事項 本件特許出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第5号証には、段落【0001】及び【0017】の記載並びに【図1】及び【図2】の図示内容からみて、以下の技術的事項(以下、「甲5技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「ピストンリング母材にクロムと珪素からなる下地層が生成され、 下地層の表面に窒化クロムと窒化珪素からなる複合皮膜が形成されている、ピストンリング。」 (6) 甲第6号証に記載された技術的事項 本件特許出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第6号証には、段落【0001】、【0021】及び【0033】の記載並びに【図1】の図示内容からみて、以下の技術的/事項(以下、「甲6技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「ピストンリング基材と、金属元素としてCr、AlおよびTiを含み、非金属元素としてNを含むNaCl型の結晶構造を有している硬質皮膜との間にCr-Alを主成分とするアンダーコート層を設けた、ピストンリング。」 (7) 甲第7号証に記載された技術的事項 本件特許出願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲第7号証(特許第7093899号公報)には、段落【0001】、【0017】、【0039】及び【0043】の記載からみて、以下の技術的事項(以下、「甲7技術的事項」という。)が記載されていると認められる。 「摺動部材が硬質被膜を有し、硬質被膜はCr、Al、N及びCを少なくとも含むこと。」 3 理由1(甲第2号証を主引用文献とした場合の進歩性欠如)について (1) 本件発明1について ア 対比・判断 (ア) 対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 甲2発明における「ピストンリング1」は本件発明1における「合口部を有するピストンリング基材」と「ピストンリング基材」の限りにおいて一致し、甲2発明における「外周面」は本件発明1における「少なくとも外周面」に包含され、甲2発明における「被覆する」ことは本件発明1における「被覆する」ことに相当する。 そうすると、甲2発明における「ピストンリング1の外周面を被覆する硬質皮膜3」は本件発明1における「前記ピストンリング基材の少なくとも外周面を被覆する皮膜」と「ピストンリング基材の少なくとも外周面を被覆する皮膜」の限りで一致する。 そして、甲2発明における「ピストンリング1」は本件発明1における「ピストンリング」と上記の限りにおいて一致する「ピストンリング」に相当する。 以上より、本件発明1は甲2発明と以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点1A> 「ピストンリング基材」について、本件発明1は「合口部を有する」ものであるのに対し、甲2発明はその点について明らかでない点。 <相違点2A> 「皮膜」について、本件発明1は皮膜の「熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/W」であるのに対し、甲2発明は硬質皮膜3の熱抵抗値について明らかでない点。 (イ) 判断 (イ)-1 相違点1Aについて 相違点1Aについて検討する。 ピストンリング基材が合口部を有することは、例を挙げるまでもなく周知の技術であり、甲2発明においてかかる周知の技術を採用することにより相違点1Aに係る本件発明1の発明特定事項に想到することは当業者が容易になし得るものである。 (イ)-2 相違点2Aについて 相違点2Aについて検討する。 a 本件発明1における「皮膜の熱抵抗値」について 本件明細書の段落【0005】には、皮膜の熱抵抗値について、 「熱抵抗値=膜厚/熱伝導率 (式2)」 と記載されている。 b 甲第4号証に記載された技術的事項 甲第4号証には、上記2(4)のとおり、 「CrN皮膜の熱伝導率が約5W/m・Kであること。」 なる甲4技術的事項が記載されている。 c 組み合わせ容易 甲2発明は、ピストンリング1の外周面を被覆する硬質皮膜3が厚さが50μmのCrN型の窒化クロムからなるものであり、甲4技術的事項よりCrN皮膜の熱伝導率が約5W/m・Kであることから、上記aの本件発明1における熱伝導率に対応する値を上記(式2)に基づいて求めると、 熱抵抗値=膜厚/熱伝導率 =50[μm]/5[W/m・K] (合議体注:本式では単位に[]を付して示す。) =10×10-6m2・K/W となる。 そうすると、甲2発明における硬質皮膜3の熱伝導率は相違点2Aに係る本件発明1の発明特定事項における皮膜の熱抵抗値の数値範囲に包含されるものであるといえることから、相違点2Aに係る本件発明1の発明特定事項は甲2発明において当業者が上記甲4技術的事項を参酌することにより容易に想到し得るものである。 イ 小括 したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件発明3について ア 対比・判断 (ア)対比 本件発明3と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「窒化層2」及び「下地皮膜4」は本件発明3における「中間層」に相当することから、甲2発明における「ピストンリング1の全周面に形成された窒化層2と硬質皮膜3との間に下地皮膜4を形成した」ことは本件発明3における「ピストンリング基材の表面上に形成された中間層を更に備え、中間層の表面上に皮膜が形成されている」ことに相当する。 そうすると、本件発明3は甲2発明と相違点1A及び相違点2Aで相違し、その余の点で一致している。 (イ)判断 相違点1A及び相違点2Aについての判断は上記のとおりである。 イ 小括 したがって、本件発明3は、甲第2号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3) 本件発明4について ア 対比・判断 (ア) 対比 本件発明4と甲2発明とを対比すると、相違点1A及び相違点2Aに加えて、さらに以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点4A> 「中間層」について、本件発明4は「Al又はSiを含む」ものであるのに対し、甲2発明は窒化層2及びCr2N及びCrNの中の少なくとも1つからなる下地皮膜4である点。 (イ)判断 (イ)-1 相違点1A、相違点2Aについて 相違点1A及び相違点2Aについての判断は上記のとおりである。 (イ)-2 相違点4Aについて 相違点4Aについて検討する。 a 甲第5号証に記載された技術的事項 甲第5号証には、上記2(5)のとおり、 「ピストンリング母材にクロムと珪素からなる下地層が生成され、 下地層の表面に窒化クロムと窒化珪素からなる複合皮膜が形成されている、ピストンリング。」 なる甲5技術的事項が記載されている。 b 甲第6号証に記載された技術的事項 甲第6号証には、上記2(6)のとおり、 「ピストンリング基材と、金属元素としてCr、AlおよびTiを含み、非金属元素としてNを含むNaCl型の結晶構造を有している硬質皮膜との間にCr-Alを主成分とするアンダーコート層を設けた、ピストンリング。」 なる甲6技術的事項が記載されている。 c 組み合わせ容易 甲5技術的事項及び甲6技術的事項はピストンリングという甲2発明と関連する技術分野に属し、また、甲5技術的事項における「下地層」は密着性に富むものであり(段落【0017】)甲6技術的事項における「アンダーコート層」は密着性を向上させるためのものであり(段落【0033】)甲2発明における密着性が良好な(段落【0021】)「下地皮膜4」(中間層)(段落【0021】)と共通の機能を有するものであることから、甲2発明における「下地皮膜4」(中間層)として、甲5技術的事項又は甲6技術的事項を採用し、相違点4Aに係る本件発明4の発明特定事項に想到することは当業者が容易になし得るものである。 イ 小括 したがって、本件発明4は、甲第2号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、周知の技術及び甲第5号証又は甲第6号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 理由1(甲第3号証を主引用文献とした場合の進歩性欠如)について (1) 本件発明1について ア 対比・判断 (ア) 対比 本件発明1と甲3発明とを対比する。 甲3発明における「ピストンリング本体1」は本件発明1における「合口部を有するピストンリング基材」と「ピストンリング基材」の限りにおいて一致し、甲3発明における「外周摺動面」は本件発明1における「少なくとも外周面」に包含され、甲3発明における「被覆する」ことは本件発明1における「被覆する」ことに相当する。 そうすると、甲3発明における「ピストンリング本体1の少なくとも外周摺動面を被覆する皮膜2A」は本件発明1における「前記ピストンリング基材の少なくとも外周面を被覆する皮膜」と「ピストンリング基材の少なくとも外周面を被覆する皮膜」の限りで一致する。 そして、甲3発明における「ピストンリング」は本件発明1における「ピストンリング」と上記の限りにおいて一致する「ピストンリング1」に相当する。 以上より、本件発明1は甲3発明と以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点1B> 「ピストンリング基材」について、本件発明1は「合口部を有する」ものであるのに対し、甲3発明はその点について明らかでない点。 <相違点2B> 「皮膜」について、本件発明1は皮膜の「熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/W」であるのに対し、甲3発明は皮膜2Aの熱抵抗値について明らかでない点。 (イ) 判断 (イ)-1 相違点1Bについて 相違点1Bについて検討する。 ピストンリング基材が合口部を有することは、例を挙げるまでもなく周知の技術であり、甲3発明においてかかる周知の技術を採用することにより相違点1Bに係る本件発明1の発明特定事項に想到することは当業者が容易になし得るものである。 (イ)-2 相違点2Bについて 相違点2Bについて検討する。 a 本件発明1における「皮膜の熱抵抗値」について 本件明細書の段落【0005】には、皮膜の熱抵抗値について、 「熱抵抗値=膜厚/熱伝導率 (式2)」 と記載されている。 b 甲第4号に記載された技術的事項 甲第4号証には、上記2(4)のとおり、 「CrN皮膜の熱伝導率が約5W/m・Kであること。」 なる甲4技術的事項が記載されている。 c 組み合わせ容易 甲3発明は、ピストンリング本体1の少なくとも外周摺動面を被覆する皮膜2Aが厚さが40μmのCrN組成よりなるものであり、甲4技術的事項よりCrN皮膜の熱伝導率が約5W/m・Kであることから、上記aの本件発明1における熱伝導率に対応する値を上記(式2)に基づいて求めると、 熱抵抗値=膜厚/熱伝導率 =40[μm]/5[W/m・K] (合議体注:本式では単位に[]を付して示す。) =8×10-6m2・K/W となる。 そうすると、甲3発明における皮膜2Aの熱伝導率は相違点2Bに係る本件発明1の発明特定事項における皮膜の熱抵抗値の数値範囲に包含されるものであるといえることから、相違点2Bに係る本件発明1の発明特定事項は甲3発明において当業者が上記甲4技術的事項を参酌することにより容易に想到し得るものである。 イ 小括 したがって、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 本件発明3及び4について ア 対比・判断 (ア) 対比 本件発明3及び4と甲3発明とを対比すると、相違点1B及び相違点2Bに加えて、さらに以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点4B> 本件発明3は「ピストンリング基材の表面上に形成された中間層を更に備え、中間層の表面上に皮膜が形成されている」ものであり、本件発明4は「中間層がAl又はSiを含む」であるのに対し、甲3発明はそのようなものを備えているものではない点。 (イ) 判断 (イ)-1 相違点1B、相違点2Bについて 相違点1B及び相違点2Bについての判断は上記のとおりである。 (イ)-2 相違点4Bについて 相違点4Bについて検討する。 a 甲第5号に記載された技術的事項 甲第5号証には、上記2(5)のとおり、 「ピストンリング母材にクロムと珪素からなる下地層が生成され、 下地層の表面に窒化クロムと窒化珪素からなる複合皮膜が形成されている、ピストンリング。」 なる甲5技術的事項が記載されている。 b 甲第6号に記載された技術的事項 甲第6号証には、上記2(6)のとおり、 「ピストンリング基材と、金属元素としてCr、AlおよびTiを含み、非金属元素としてNを含むNaCl型の結晶構造を有している硬質皮膜との間にCr-Alを主成分とするアンダーコート層を設けた、ピストンリング。」 なる甲6技術的事項が記載されている。 c 組み合わせ容易 甲5技術的事項及び甲6技術的事項はピストンリングという甲3発明と関連する技術分野に属するものであることから、甲3発明において、甲5技術的事項又は甲6技術的事項を採用し、相違点4Bに係る本件発明3及び4の発明特定事項に想到することは当業者が容易になし得るものである。 イ 小括 したがって、本件発明3及び4は、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、周知の技術及び甲第5号証又は甲第6号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1) 特許異議申立理由の内容 申立人は、特許異議申立書において、本件発明2、5ないし8について、以下のアないしエを主張する。 ア 申立理由1-1(新規性) 本件発明2、7は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するので、請求項2、7に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。 イ 申立理由1-2(進歩性) 本件発明2、5ないし8は、甲1に記載された発明及び甲2ないし7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項2、5ないし8に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。 ウ 申立理由2(進歩性) 本件発明2、5ないし8は、甲2に記載された発明及び甲1、3ないし7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項2、5ないし8に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。 エ 申立理由3(進歩性) 本件発明2、5ないし8は、甲3に記載された発明及び甲1、2、4ないし7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項2、5ないし8に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである。 (2) 特許異議申立理由の検討 以下、申立理由1-1ないし3について検討する。 ア 申立理由1-1(新規性)について (ア) 本件発明2について a 対比・判断 (a) 対比 本件発明2と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「合口部を有してもよい基材」は本件発明2における「合口部を有するピストンリング基材」に相当するものを包含し、甲1発明における「外周面」は本件発明2における「少なくとも外周面」に包含され、甲1発明における「設けられた」ことは本件発明2における「被覆する」ことに相当する。 そうすると、甲1発明における「基材の外周面に設けられた皮膜5」は本件発明2における「前記ピストンリング基材の少なくとも外周面を被覆する皮膜」に相当する。 また、甲1発明における「被膜5がAl又はSiを含む」ことは本件発明2における「前記皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」こと及び「前記皮膜がAl又はSiを含む」ことと「皮膜がAl又はSiを含む」ことの限りにおいて一致する。 そして、甲1発明における「ピストンリング10」は本件発明2における「ピストンリング」と上記の限りにおいて一致する「ピストンリング」に相当する。 以上より、本件発明2は甲1発明と以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点1C> 「Al又はSiを含む」「皮膜」について、本件発明2は皮膜の「熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/W」であるのに対し、甲1発明は皮膜5の熱抵抗値について明らかでない点。 (b) 判断 そうすると、本件発明2は、甲1発明ではない。 b 小括 したがって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明ではない。 (イ) 本件発明7について a 対比・判断 (a) 対比 本件発明7と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「被膜5がAl又はSiを含む」ことは本件発明7における「前記皮膜は、Siが含有され且つ結晶粒で構成された窒化クロム又はアモルファス相が形成された窒化クロムを含む」ことと「皮膜がSiが含有され」たことの限りにおいて一致する。 以上より、本件発明7は甲1発明と以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点2C> 「Siが含有され」た「皮膜」について、本件発明7は皮膜の「熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/W」であるのに対し、甲1発明は皮膜5の熱抵抗値について明らかでない点。 (b) 判断 そうすると、本件発明7は、甲1発明ではない。 イ 申立理由1-2(進歩性)について (ア) 本件発明2について a 対比・判断 (a) 対比 本件発明2と甲1発明とを対比すると、相違点1Cで相違し、その余の点で一致している。 (b) 判断 (b)-1 相違点1Cについて 相違点1Cについて検討する。 (b)-1a 甲第6号証に記載された技術的事項 甲第6号証には、上記2(6)のとおり、 「ピストンリング基材と、金属元素としてCr、AlおよびTiを含み、非金属元素としてNを含むNaCl型の結晶構造を有している硬質皮膜との間にCr-Alを主成分とするアンダーコート層を設けた、ピストンリング。」 なる甲6技術的事項が記載されている。 (b)-1b 甲第7号証に記載された技術的事項 甲第7号証には、上記2(7)のとおり、 「摺動部材が硬質被膜を有し、硬質被膜はCr、Al、N及びCを少なくとも含むこと。」 なる甲7技術的事項が記載されている。 (b)-1c 組み合わせ容易 上記(b)-1aのとおり、甲6技術的事項は、硬質皮膜及びアンダーコート層がAlを含むものであり、また、上記(b)-1bのとおり、甲7技術的事項は、硬質被膜がAlを含むものではあるが、本件発明2において特定された「Al又はSiを含む」皮膜について、本件発明2が引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについては、甲第6号証及び甲第7号証のいずれにおいても開示も示唆もされていない。 また、上記ア(ア)b-2の相違点2Aについての皮膜の「熱抵抗値」に係る判断は、甲2発明のCrN型の窒化クロムからなる硬質皮膜3の厚さと甲4技術的事項のCrN皮膜の熱伝導率に基づく判断であり、本件発明2において特定されたような「Al又はSiを含む」皮膜についての判断ではなく、また、本件発明2において特定されたような「Al又はSiを含む」皮膜においても「熱抵抗値」が同様な数値範囲となることを何ら裏付けるものとはいえない。 そして、他の甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証においても同様に、本件発明2において特定された「Al又はSiを含む」皮膜について、本件発明2が引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについて開示も示唆もされていない。 そうすると、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、相違点1Cに係る本件発明2の発明特定事項に当業者が容易に想到し得るものではない。 b 小括 したがって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ) 本件発明5について a 対比・判断 (a) 対比 本件発明5と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「被膜5がAl又はSiを含む」ことは本件発明5の「前記皮膜はSiが含有された窒化クロムで構成され且つ前記中間層はSiが含有されたクロムで構成されている」ことと「皮膜はSiが含有された」ことの限りにおいて一致する。 以上より、本件発明5は甲1発明と以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点3C> 「Siが含有された」「皮膜」について、本件発明5は「前記皮膜はSiが含有された窒化クロムで構成され」たものであり、皮膜の「熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/W」であるのに対し、甲1発明は皮膜5の構成が本件発明5とは異なり、皮膜5の熱抵抗値について明らかでない点。 <相違点4C> 本件発明5は「前記中間層はSiが含有されたクロムで構成されている」ものであるのに対し、甲1発明は中間層を備えるものではない点。 (b) 判断 (b)-1 相違点3Cについて 相違点3Cについて検討する。 (b)-1a 甲第6、7号証に記載された発明 上記(ア)a(b)-1a及び(b)-1bと同様に、甲第6号証及び甲第7号証には、それぞれ甲6技術的事項及び甲7技術的事項が記載されている。 (b)-1b 組み合わせ容易 上記(b)-1aのとおり、甲6技術的事項は、硬質皮膜及びアンダーコート層がAlを含むものであり、甲7技術的事項は、硬質被膜がAlを含むものではあるが、本件発明5において特定された「Siが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜について、本件発明5が間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについては、甲第6号証及び甲第7号証のいずれにおいても開示も示唆もされていない。 また、上記3(1)ア(イ)-2の相違点2Aについての皮膜の「熱抵抗値」に係る判断は、甲2発明のCrN型の窒化クロムからなる硬質皮膜3の厚さと甲4技術的事項のCrN皮膜の熱伝導率に基づく判断であり、本件発明5において特定されたような「Siが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜についての判断ではなく、また、本件発明5において特定されたような「Siが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜においても「熱抵抗値」が同様な数値範囲となることを何ら裏付けるものとはいえない。 そして、他の甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証においても同様に、本件発明5において特定された「Siが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜について、本件発明5が間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについて開示も示唆もされていない。 そうすると、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、相違点3Cに係る本件発明5の発明特定事項に当業者が容易に想到し得るものではない。 b 小括 したがって、相違点4Cについて検討するまでもなく、本件発明5は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ) 本件発明6について a 対比・判断 (a) 対比 本件発明6と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「被膜5がAl又はSiを含む」ことは本件発明6の「前記皮膜はAlが含有された窒化クロムで構成され且つ前記中間層はAlが含有されたクロムで構成されている」ことと「皮膜はAlが含有された」ことの限りにおいて一致する。 以上より、本件発明6は甲1発明と以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点5C> 「Alが含有された」「皮膜」について、本件発明6は「前記皮膜はAlが含有された窒化クロムで構成され」たものであり、皮膜の「熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/W」であるのに対し、甲1発明は皮膜5の構成が本件発明5とは異なり、皮膜5の熱抵抗値について明らかでない点。 <相違点6C> 本件発明6は「前記中間層はAlが含有されたクロムで構成されている」ものであるのに対し、甲1発明は中間層を備えるものではない点。 (b) 判断 (b)-1 相違点5Cについて 相違点5Cについて検討する。 (b)-1a 甲第6、7号証に記載された発明 上記(ア)a(b)-1a及び(b)-1bと同様に、甲第6号証及び甲第7号証には、それぞれ甲6技術的事項及び甲7技術的事項が記載されている。 (b)-1b 組み合わせ容易 上記(b)-1aのとおり、甲6技術的事項は、硬質皮膜及びアンダーコート層がAlを含むものであり、甲7技術的事項は、硬質被膜がAlを含むものではあるが、本件発明6において特定された「Alが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜について、本件発明6が間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについては、甲第6号証及び甲第7号証のいずれにおいても開示も示唆もされていない。 また、上記3(1)ア(イ)-2の相違点2Aについての皮膜の「熱抵抗値」に係る判断は、甲2発明のCrN型の窒化クロムからなる硬質皮膜3の厚さと甲4技術的事項のCrN皮膜の熱伝導率に基づく判断であり、本件発明6において特定されたような「Alが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜についての判断ではなく、また、本件発明6において特定されたような「Alが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜においても「熱抵抗値」が同様な数値範囲となることを何ら裏付けるものとはいえない。 そして、他の甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証においても同様に、本件発明6において特定された「Alが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜について、本件発明6が間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについて開示も示唆もされていない。 そうすると、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、相違点5Cに係る本件発明6の発明特定事項に当業者が容易に想到し得るものではない。 b 小括 したがって、相違点6Cについて検討するまでもなく、本件発明6は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (エ) 本件発明7について a 対比・判断 (a) 対比 本件発明7と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「被膜5がAl又はSiを含む」ことは本件発明7の「前記皮膜は、Siが含有され且つ結晶粒で構成された窒化クロム又はアモルファス相が形成された窒化クロムを含む」ことと「皮膜は、Siが含有され」たことの限りにおいて一致する。 以上より、本件発明7は甲1発明と以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点7C> 「Siが含有され」た「皮膜」について、本件発明7は「前記皮膜は、Siが含有され且つ結晶粒で構成された窒化クロム又はアモルファス相が形成された窒化クロムを含む」ものであり、皮膜の「熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/W」であるのに対し、甲1発明は皮膜5の構成が本件発明7とは異なり、皮膜5の熱抵抗値について明らかでない点。 (b) 判断 (b)-1 相違点7Cについて 相違点7Cについて検討する。 (b)-1a 甲第6、7号証に記載された発明 上記(ア)a(b)-1a及び(b)-1bと同様に、甲第6号証及び甲第7号証には、それぞれ甲6技術的事項及び甲7技術的事項が記載されている。 (b)-1b 組み合わせ容易 上記(b)-1aのとおり、甲6技術的事項は、硬質皮膜及びアンダーコート層がAlを含むものであり、甲7技術的事項は、硬質被膜がAlを含むものではあるが、本件発明7において特定された「Siが含有され且つ結晶粒で構成された窒化クロム又はアモルファス相が形成された窒化クロムを含む」皮膜について、本件発明7が間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについては、甲第6号証及び甲第7号証のいずれにおいても開示も示唆もされていない。 また、上記3(1)ア(イ)-2の相違点2Aについての皮膜の「熱抵抗値」に係る判断は、甲2発明のCrN型の窒化クロムからなる硬質皮膜3の厚さと甲4技術的事項のCrN皮膜の熱伝導率に基づく判断であり、本件発明7において特定されたような「Siが含有され且つ結晶粒で構成された窒化クロム又はアモルファス相が形成された窒化クロムを含む」皮膜についての判断ではなく、また、本件発明7において特定されたような「Siが含有され且つ結晶粒で構成された窒化クロム又はアモルファス相が形成された窒化クロムを含む」皮膜においても「熱抵抗値」が同様な数値範囲となることを何ら裏付けるものとはいえない。 そして、他の甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証においても同様に、本件発明7において特定された「Siが含有され且つ結晶粒で構成された窒化クロム又はアモルファス相が形成された窒化クロムを含む」皮膜について、本件発明7が間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについて開示も示唆もされていない。 そうすると、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、相違点7Cに係る本件発明7の発明特定事項に当業者が容易に想到し得るものではない。 b 小括 したがって、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (オ) 本件発明8について a 対比・判断 (a) 対比 本件発明8と甲1発明とを対比する。 甲1発明における「被膜5がAl又はSiを含む」ことは本件発明8の「皮膜はAlが含有された窒化クロムで構成される」「(ただし、前記皮膜がTiを含有するピストンリングを除く。)」ことと「皮膜はAlが含有された」ことの限りにおいて一致する。 以上より、本件発明8は甲1発明と以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点8C> 「Alが含有された」「皮膜」について、本件発明8は「皮膜はAlが含有された窒化クロムで構成される」「(ただし、前記皮膜がTiを含有するピストンリングを除く。)」ものであり、皮膜の「熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/W」であるのに対し、甲1発明は皮膜5の構成が本件発明8とは異なり、皮膜5の熱抵抗値について明らかでない点。 (b) 判断 (b)-1 相違点8Cについて 相違点8Cについて検討する。 (b)-1a 甲第6、7号証に記載された発明 上記(ア)a(b)-1a及び(b)-1bと同様に、甲第6号証及び甲第7号証には、それぞれ甲6技術的事項及び甲7技術的事項が記載されている。 (b)-1b 組み合わせ容易 上記(b)-1aのとおり、甲6技術的事項は、硬質皮膜及びアンダーコート層がAlを含むものであり、甲7技術的事項は、硬質被膜がAlを含むものではあるが、本件発明8において特定された「皮膜はAlが含有された窒化クロムで構成される」「(ただし、前記皮膜がTiを含有するピストンリングを除く。)」皮膜について、本件発明8が間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについては、甲第6号証及び甲第7号証のいずれにおいても開示も示唆もされていない。 また、上記3(1)ア(イ)-2の相違点2Aについての皮膜の「熱抵抗値」に係る判断は、甲2発明のCrN型の窒化クロムからなる硬質皮膜3の厚さと甲4技術的事項のCrN皮膜の熱伝導率に基づく判断であり、本件発明8において特定されたような「皮膜はAlが含有された窒化クロムで構成される」「(ただし、前記皮膜がTiを含有するピストンリングを除く。)」皮膜についての判断ではなく、また、本件発明8において特定されたような「皮膜はAlが含有された窒化クロムで構成される」「(ただし、前記皮膜がTiを含有するピストンリングを除く。)」皮膜においても「熱抵抗値」が同様な数値範囲となることを何ら裏付けるものとはいえない。 そして、他の甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証においても同様に、本件発明8において特定された「皮膜はAlが含有された窒化クロムで構成される」「(ただし、前記皮膜がTiを含有するピストンリングを除く。)」皮膜について、本件発明8が間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについて開示も示唆もされていない。 そうすると、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、相違点8Cに係る本件発明8の発明特定事項に当業者が容易に想到し得るものではない。 b 小括 したがって、本件発明8は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 申立理由2(進歩性)について (ア) 本件発明2について a 対比・判断 (a) 対比 本件発明2と甲2発明とを対比すると、相違点1A及び相違点2Aに加えて、さらに以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点3A> 「皮膜」について、本件発明2は「Al又はSiを含む」ものであるのに対し、甲2発明はその点について明らかでない点。 (b) 判断 (b)-1 相違点1A、相違点2Aについて 相違点1A及び相違点2Aについての判断は上記のとおりである。 (b)-2 相違点3Aについて 相違点3Aについて検討する。 (b)-2a 甲第1号証に記載された発明 甲第1号証には、上記2(1)のとおり、 「 合口部を有してもよい基材と、 前記基材の外周面に設けられた皮膜5と、を備え、 被膜5がAl又はSiを含む、 ピストンリング10。」 なる甲1発明が記載されている。 (b)-2b 甲第6号証に記載された技術的事項 甲第6号証には、上記2(6)のとおり、 「ピストンリング基材と、金属元素としてCr、AlおよびTiを含み、非金属元素としてNを含むNaCl型の結晶構造を有している硬質皮膜との間にCr-Alを主成分とするアンダーコート層を設けた、ピストンリング。」 なる甲6技術的事項が記載されている。 (b)-2c 甲第7号証に記載された技術的事項 甲第7号証には、上記2(7)のとおり、 「摺動部材が硬質被膜を有し、硬質被膜はCr、Al、N及びCを少なくとも含むこと。」 なる甲7技術的事項が記載されている。 (b)-2d 組み合わせ容易 上記(b)-2aのとおり、甲1発明は、被膜5がAl又はSiを含むものであり、また、上記(b)-2bのとおり、甲6技術的事項は、硬質皮膜及びアンダーコート層がAlを含むものであり、さらに、上記(b)-2cのとおり、甲7技術的事項は、硬質被膜がAlを含むものではあるが、本件発明2において特定された「Al又はSiを含む」皮膜について、本件発明2が引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについては、甲第1号証、甲第6号証及び甲第7号証のいずれにおいても開示も示唆もされていない。 また、上記ア(ア)b-2の相違点2Aについての皮膜の「熱抵抗値」に係る判断は、甲2発明のCrN型の窒化クロムからなる硬質皮膜3の厚さと甲4技術的事項のCrN皮膜の熱伝導率に基づく判断であり、本件発明2において特定されたような「Al又はSiを含む」皮膜についての判断ではなく、また、本件発明2において特定されたような「Al又はSiを含む」皮膜においても「熱抵抗値」が同様な数値範囲となることを何ら裏付けるものとはいえない。 そして、他の甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証においても同様に、本件発明2において特定された「Al又はSiを含む」皮膜について、本件発明2が引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについて開示も示唆もされていない。 そうすると、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、相違点3Aに係る本件発明2の発明特定事項に当業者が容易に想到し得るものではない。 b 小括 したがって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ) 本件発明5について a 対比・判断 (a) 対比 本件発明5と甲2発明とを対比すると、相違点1A、相違点2A及び相違点4Aに加えて、さらに以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点5A> 「皮膜」について、本件発明5は「Siが含有された窒化クロムで構成され」ているものであるのに対し、甲2発明はその点について明らかでない点。 <相違点6A> 「中間層」について、本件発明5は「Siが含有されたクロムで構成されている」ものであるのに対し、甲2発明は窒化層2及びCr2N及びCrNの中の少なくとも1つからなる下地皮膜4である点。 (b) 判断 (b)-1 相違点1A、相違点2A、相違点4Aについて 相違点1A、相違点2A及び相違点4Aについての判断は上記のとおりである。 (b)-2 相違点5Aについて 相違点5Aについて検討する。 (b)-2a 甲第1、6、7号証に記載された発明 上記(ア)a(b)-2aないし(b)-2cと同様に、甲第1号証、甲第6号証及び甲第7号証には、それぞれ甲1発明、甲6技術的事項及び甲7技術的事項が記載されている。 (b)-2b 組み合わせ容易 上記(b)-2aのとおり、甲1発明は、被膜5がAl又はSiを含むものであり、甲6技術的事項は、硬質皮膜及びアンダーコート層がAlを含むものであり、甲7技術的事項は、硬質被膜がAlを含むものではあるが、本件発明5において特定された「Siが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜について、本件発明5が間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについては、甲第1号証、甲第6号証及び甲第7号証のいずれにおいても開示も示唆もされていない。 また、上記3(1)ア(イ)-2の相違点2Aについての皮膜の「熱抵抗値」に係る判断は、甲2発明のCrN型の窒化クロムからなる硬質皮膜3の厚さと甲4技術的事項のCrN皮膜の熱伝導率に基づく判断であり、本件発明5において特定されたような「Siが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜についての判断ではなく、また、本件発明5において特定されたような「Siが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜においても「熱抵抗値」が同様な数値範囲となることを何ら裏付けるものとはいえない。 そして、他の甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証においても同様に、本件発明5において特定された「Siが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜について、本件発明5が間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについて開示も示唆もされていない。 そうすると、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、相違点5Aに係る本件発明5の発明特定事項に当業者が容易に想到し得るものではない。 b 小括 したがって、相違点6Aについて検討するまでもなく、本件発明5は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ) 本件発明6について a 対比・判断 (a) 対比 本件発明6と甲2発明とを対比すると、相違点1A、相違点2A及び相違点4Aに加えて、さらに以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点7A> 「皮膜」について、本件発明6は「Alが含有された窒化クロムで構成され」ているものであるのに対し、甲2発明はその点について明らかでない点。 <相違点8A> 「中間層」について、本件発明6は「Alが含有されたクロムで構成されている」ものであるのに対し、甲2発明は窒化層2及びCr2N及びCrNの中の少なくとも1つからなる下地皮膜4である点。 (b) 判断 (b)-1 相違点1A、相違点2A、相違点4Aについて 相違点1A、相違点2A及び相違点4Aについての判断は上記のとおりである。 (b)-2 相違点7Aについて 相違点7Aについて検討する。 (b)-2a 甲第1、6、7号証に記載された発明 上記(ア)a(b)-2aないし(b)-2cと同様に、甲第1号証、甲第6号証及び甲第7号証には、それぞれ甲1発明、甲6技術的事項及び甲7技術的事項が記載されている。 (b)-2b 組み合わせ容易 上記(b)-2aのとおり、甲1発明は、被膜5がAl又はSiを含むものであり、甲6技術的事項は、硬質皮膜及びアンダーコート層がAlを含むものであり、甲7技術的事項は、硬質被膜がAlを含むものではあるが、本件発明6において特定された「Alが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜について、本件発明6が間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについては、甲第1号証、甲第6号証及び甲第7号証のいずれにおいても開示も示唆もされていない。 また、上記3(1)ア(イ)-2の相違点2Aについての皮膜の「熱抵抗値」に係る判断は、甲2発明のCrN型の窒化クロムからなる硬質皮膜3の厚さと甲4技術的事項のCrN皮膜の熱伝導率に基づく判断であり、本件発明6において特定されたような「Alが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜についての判断ではなく、また、本件発明6において特定されたような「Alが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜においても「熱抵抗値」が同様な数値範囲となることを何ら裏付けるものとはいえない。 そして、他の甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証においても同様に、本件発明6において特定された「Alが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜について、本件発明6が間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについて開示も示唆もされていない。 そうすると、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、相違点7Aに係る本件発明6の発明特定事項に当業者が容易に想到し得るものではない。 b 小括 したがって、相違点8Aについて検討するまでもなく、本件発明6は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (エ) 本件発明7について a 対比・判断 (a) 対比 本件発明7と甲2発明とを対比すると、相違点1A、相違点2A及び相違点4Aに加えて、さらに以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点9A> 「皮膜」について、本件発明7は「Siが含有され且つ結晶粒で構成された窒化クロム又はアモルファス相が形成された窒化クロムを含む」ものであるのに対し、甲2発明はその点について明らかでない点。 (b) 判断 (b)-1 相違点1A、相違点2A、相違点4Aについて 相違点1A、相違点2A及び相違点4Aについての判断は上記のとおりである。 (b)-2 相違点9Aについて 相違点9Aについて検討する。 (b)-2a 甲第1、6、7号証に記載された発明 上記(ア)a(b)-2aないし(b)-2cと同様に、甲第1号証、甲第6号証及び甲第7号証には、それぞれ甲1発明、甲6技術的事項及び甲7技術的事項が記載されている。 (b)-2b 組み合わせ容易 上記(b)-2aのとおり、甲1発明は、被膜5がAl又はSiを含むものであり、甲6技術的事項は、硬質皮膜及びアンダーコート層がAlを含むものであり、甲7技術的事項は、硬質被膜がAlを含むものではあるが、本件発明7において特定された「Siが含有され且つ結晶粒で構成された窒化クロム又はアモルファス相が形成された窒化クロムを含む」皮膜について、本件発明7が直接的又は間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについては、甲第1号証、甲第6号証及び甲第7号証のいずれにおいても開示も示唆もされていない。 また、上記3(1)ア(イ)-2の相違点2Aについての皮膜の「熱抵抗値」に係る判断は、甲2発明のCrN型の窒化クロムからなる硬質皮膜3の厚さと甲4技術的事項のCrN皮膜の熱伝導率に基づく判断であり、本件発明7において特定されたような「Siが含有され且つ結晶粒で構成された窒化クロム又はアモルファス相が形成された窒化クロムを含む」皮膜についての判断ではなく、また、本件発明7において特定されたような「Siが含有され且つ結晶粒で構成された窒化クロム又はアモルファス相が形成された窒化クロムを含む」た皮膜においても「熱抵抗値」が同様な数値範囲となることを何ら裏付けるものとはいえない。 そして、他の甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証においても同様に、本件発明7において特定された「Siが含有され且つ結晶粒で構成された窒化クロム又はアモルファス相が形成された窒化クロムを含む」皮膜について、本件発明7が直接的又は間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについて開示も示唆もされていない。 そうすると、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、相違点9Aに係る本件発明7の発明特定事項に当業者が容易に想到し得るものではない。 b 小括 したがって、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (オ) 本件発明8について a 対比・判断 (a) 対比 本件発明8と甲2発明とを対比すると、相違点1A、相違点2A及び相違点4Aに加えて、さらに以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点10A> 「皮膜」について、本件発明8は「Alが含有された窒化クロムで構成される」「(ただし、前記皮膜がTiを含有するピストンリングを除く。)」ものであるのに対し、甲2発明はその点について明らかでない点。 (b) 判断 (b)-1 相違点1A、相違点2A、相違点4Aについて 相違点1A、相違点2A及び相違点4Aについての判断は上記のとおりである。 (b)-2 相違点10Aについて 相違点10Aについて検討する。 (b)-2a 甲第1、6、7号証に記載された発明 上記(ア)a(b)-2aないし(b)-2cと同様に、甲第1号証、甲第6号証及び甲第7号証には、それぞれ甲1発明、甲6技術的事項及び甲7技術的事項が記載されている。 (b)-2b 組み合わせ容易 上記(b)-2aのとおり、甲1発明は、被膜5がAl又はSiを含むものであり、甲6技術的事項は、硬質皮膜及びアンダーコート層がAlを含むものであり、甲7技術的事項は、硬質被膜がAlを含むものではあるが、本件発明8において特定された「Alが含有された窒化クロムで構成される」「(ただし、前記皮膜がTiを含有するピストンリングを除く。)」皮膜について、本件発明8が直接的又は間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについては、甲第1号証、甲第6号証及び甲第7号証のいずれにおいても開示も示唆もされていない。 また、上記3(1)ア(イ)-2の相違点2Aについての皮膜の「熱抵抗値」に係る判断は、甲2発明のCrN型の窒化クロムからなる硬質皮膜3の厚さと甲4技術的事項のCrN皮膜の熱伝導率に基づく判断であり、本件発明8において特定されたような「Alが含有された窒化クロムで構成される」「(ただし、前記皮膜がTiを含有するピストンリングを除く。)」皮膜についての判断ではなく、また、本件発明8において特定されたような「Alが含有された窒化クロムで構成される」「(ただし、前記皮膜がTiを含有するピストンリングを除く。)」皮膜においても「熱抵抗値」が同様な数値範囲となることを何ら裏付けるものとはいえない。 そして、他の甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証においても同様に、本件発明8において特定された「Alが含有された窒化クロムで構成される」「(ただし、前記皮膜がTiを含有するピストンリングを除く。)」皮膜について、本件発明8が直接的又は間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについて開示も示唆もされていない。 そうすると、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、相違点10Aに係る本件発明8の発明特定事項に当業者が容易に想到し得るものではない。 b 小括 したがって、本件発明8は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 申立理由3(進歩性)について (ア) 本件発明2について a 対比・判断 (a) 対比 本件発明2と甲3発明とを対比すると、相違点1B及び相違点2Bに加えて、さらに以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点3B> 「皮膜」について、本件発明2は「Al又はSiを含む」ものであるのに対し、甲3発明はその点について明らかでない点。 (b) 判断 (b)-1 相違点1B、相違点2Bについて 相違点1B及び相違点2Bについての判断は上記のとおりである。 (b)-2 相違点3Bについて 相違点3Bについて検討する。 (b)-2a 甲第1号証に記載された発明 甲第1号証には、上記2(1)のとおり、 「 合口部を有してもよい基材と、 前記基材の外周面に設けられた皮膜5と、を備え、 被膜5がAl又はSiを含む、 ピストンリング10。」 なる甲1発明が記載されている。 (b)-2b 甲第6号証に記載された技術的事項 甲第6号証には、上記2(6)のとおり、 「ピストンリング基材と、金属元素としてCr、AlおよびTiを含み、非金属元素としてNを含むNaCl型の結晶構造を有している硬質皮膜との間にCr-Alを主成分とするアンダーコート層を設けた、ピストンリング。」 なる甲6技術的事項が記載されている。 (b)-2c 甲第7号証に記載された技術的事項 甲第7号証には、上記2(7)のとおり、 「摺動部材が硬質被膜を有し、硬質被膜はCr、Al、N及びCを少なくとも含むこと。」 なる甲7技術的事項が記載されている。 (b)-2d 組み合わせ容易 上記(b)-2aのとおり、甲1発明は、被膜5がAl又はSiを含むものであり、また、上記(b)-2bのとおり、甲6技術的事項は、硬質皮膜及びアンダーコート層がAlを含むものであり、さらに、上記(b)-2cのとおり、甲7技術的事項は、硬質被膜がAlを含むものではあるが、本件発明2において特定された「Al又はSiを含む」皮膜について、本件発明2が引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについては、甲第1号証、甲第6号証及び甲第7号証のいずれにおいても開示も示唆もされていない。 また、上記4(1)ア(イ)-2の相違点2Bについての皮膜の「熱抵抗値」に係る判断は、甲3発明のCrN組成よりなる皮膜2Aの厚さと甲4技術的事項のCrN皮膜の熱伝導率に基づく判断であり、本件発明2において特定されたような「Al又はSiを含む」皮膜についての判断ではなく、また、本件発明2において特定されたような「Al又はSiを含む」皮膜においても「熱抵抗値」が同様な数値範囲となることを何ら裏付けるものとはいえない。 そして、他の甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証においても同様に、本件発明2において特定された「Al又はSiを含む」皮膜について、本件発明2が引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについて開示も示唆もされていない。 そうすると、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、相違点3Bに係る本件発明2の発明特定事項に当業者が容易に想到し得るものではない。 b 小括 したがって、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ) 本件発明5について a 対比・判断 (a) 対比 本件発明5と甲3発明とを対比すると、相違点1B、相違点2B及び相違点4Bに加えて、さらに以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点5B> 「皮膜」について、本件発明5は「Siが含有された窒化クロムで構成され」ているものであるのに対し、甲3発明はその点について明らかでない点。 <相違点6B> 「中間層」について、本件発明5は「Siが含有されたクロムで構成されている」ものであるのに対し、甲3発明は中間層を備えたものではない点。 (b) 判断 3 (b)-1 相違点1B、相違点2B、相違点4Bについて 相違点1B、相違点2B及び相違点4Bについての判断は上記のとおりである。 (b)-2 相違点5Bについて 相違点5Bについて検討する。 (b)-2a 甲第1、6、7号証に記載された発明 上記(ア)a(b)-2aないし(b)-2cと同様に、甲第1号証、甲第6号証及び甲第7号証には、それぞれ甲1発明、甲6技術的事項及び甲7技術的事項が記載されている。 (b)-2b 組み合わせ容易 上記(b)-2aのとおり、甲1発明は、被膜5がAl又はSiを含むものであり、甲6技術的事項は、硬質皮膜及びアンダーコート層がAlを含むものであり、甲7技術的事項は、硬質被膜がAlを含むものではあるが、本件発明5において特定された「Siが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜について、本件発明5が間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについては、甲第1号証、甲第6号証及び甲第7号証のいずれにおいても開示も示唆もされていない。 また、上記4(1)ア(イ)-2の相違点2Bについての皮膜の「熱抵抗値」に係る判断は、甲3発明のCrN組成よりなる皮膜2Aの厚さと甲4技術的事項のCrN皮膜の熱伝導率に基づく判断であり、本件発明5において特定されたような「Siが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜についての判断ではなく、また、本件発明5において特定されたような「Siが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜においても「熱抵抗値」が同様な数値範囲となることを何ら裏付Bけるものとはいえない。 そして、他の甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証においても同様に、本件発明5において特定された「Siが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜について、本件発明5が間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについて開示も示唆もされていない。 そうすると、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、相違点5Bに係る本件発明5の発明特定事項に当業者が容易に想到し得るものではない。 b 小括 したがって、相違点6Bについて検討するまでもなく、本件発明5は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ) 本件発明6について a 対比・判断 (a) 対比 本件発明6と甲3発明とを対比すると、相違点1B、相違点2B及び相違点4Bに加えて、さらに以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点7B> 「皮膜」について、本件発明6は「Alが含有された窒化クロムで構成され」ているものであるのに対し、甲3発明はその点について明らかでない点。 <相違点8B> 「中間層」について、本件発明6は「Alが含有されたクロムで構成されている」ものであるのに対し、甲3発明は中間層を備えたものではない点。 (b) 判断 (b)-1 相違点1B、相違点2B、相違点4Bについて 相違点1B、相違点2B及び相違点4Bについての判断は上記のとおりである。 (b)-2 相違点7Bについて 相違点7Bについて検討する。 (b)-2a 甲第1、6、7号証に記載された発明 上記(ア)a(b)-2aないし(b)-2cと同様に、甲第1号証、甲第6号証及び甲第7号証には、それぞれ甲1発明、甲6技術的事項及び甲7技術的事項が記載されている。 (b)-2b 組み合わせ容易 上記(b)-2aのとおり、甲1発明は、被膜5がAl又はSiを含むものであり、甲6技術的事項は、硬質皮膜及びアンダーコート層がAlを含むものであり、甲7技術的事項は、硬質被膜がAlを含むものではあるが、本件発明6において特定された「Alが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜について、本件発明6が間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについては、甲第1号証、甲第6号証及び甲第7号証のいずれにおいても開示も示唆もされていない。 また、上記4(1)ア(イ)-2の相違点2Bについての皮膜の「熱抵抗値」に係る判断は、甲3発明のCrN組成よりなる皮膜2Aの厚さと甲4技術的事項のCrN皮膜の熱伝導率に基づく判断であり、本件発明6において特定されたような「Alが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜についての判断ではなく、また、本件発明6において特定されたような「Alが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜においても「熱抵抗値」が同様な数値範囲となることを何ら裏付けるものとはいえない。 そして、他の甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証においても同様に、本件発明6において特定された「Alが含有された窒化クロムで構成され」た皮膜について、本件発明6が間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについて開示も示唆もされていない。 そうすると、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、相違点7Bに係る本件発明6の発明特定事項に当業者が容易に想到し得るものではない。 b 小括 したがって、相違点8Bについて検討するまでもなく、本件発明6は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (エ) 本件発明7について a 対比・判断 (a) 対比 本件発明7と甲3発明とを対比すると、相違点1B、相違点2B及び相違点4Bに加えて、さらに以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点9B> 「皮膜」について、本件発明7は「Siが含有され且つ結晶粒で構成された窒化クロム又はアモルファス相が形成された窒化クロムを含む」ものであるのに対し、甲3発明はその点について明らかでない点。 (b) 判断 (b)-1 相違点1B、相違点2B、相違点4Bについて 相違点1B、相違点2B及び相違点4Bについての判断は上記のとおりである。 (b)-2 相違点9Bについて 相違点9Bについて検討する。 (b)-2a 甲第1、6、7号証に記載された発明 上記(ア)a(b)-2aないし(b)-2cと同様に、甲第1号証、甲第6号証及び甲第7号証には、それぞれ甲1発明、甲6技術的事項及び甲7技術的事項が記載されている。 (b)-2b 組み合わせ容易 上記(b)-2aのとおり、甲1発明は、被膜5がAl又はSiを含むものであり、甲6技術的事項は、硬質皮膜及びアンダーコート層がAlを含むものであり、甲7技術的事項は、硬質被膜がAlを含むものではあるが、本件発明7において特定された「Siが含有され且つ結晶粒で構成された窒化クロム又はアモルファス相が形成された窒化クロムを含む」皮膜について、本件発明7が直接的又は間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについては、甲第1号証、甲第6号証及び甲第7号証のいずれにおいても開示も示唆もされていない。 また、上記4(1)ア(イ)-2の相違点2Bについての皮膜の「熱抵抗値」に係る判断は、甲3発明のCrN組成よりなる皮膜2Aの厚さと甲4技術的事項のCrN皮膜の熱伝導率に基づく判断であり、本件発明7において特定されたような「Siが含有され且つ結晶粒で構成された窒化クロム又はアモルファス相が形成された窒化クロムを含む」皮膜についての判断ではなく、また、本件発明7において特定されたような「Siが含有され且つ結晶粒で構成された窒化クロム又はアモルファス相が形成された窒化クロムを含む」た皮膜においても「熱抵抗値」が同様な数値範囲となることを何ら裏付けるものとはいえない。 そして、他の甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証においても同様に、本件発明7において特定された「Siが含有され且つ結晶粒で構成された窒化クロム又はアモルファス相が形成された窒化クロムを含む」皮膜について、本件発明7が直接的又は間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについて開示も示唆もされていない。 そうすると、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、相違点9Bに係る本件発明7の発明特定事項に当業者が容易に想到し得るものではない。 b 小括 したがって、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (オ) 本件発明8について a 対比・判断 (a) 対比 本件発明8と甲3発明とを対比すると、相違点1B、相違点2B及び相違点4Bに加えて、さらに以下の点で相違し、その余の点で一致している。 <相違点10B> 「皮膜」について、本件発明8は「Alが含有された窒化クロムで構成される」「(ただし、前記皮膜がTiを含有するピストンリングを除く。)」ものであるのに対し、甲3発明はその点について明らかでない点。 (b) 判断 (b)-1 相違点1B、相違点2B、相違点4Bについて 相違点1B、相違点2B及び相違点4Bについての判断は上記のとおりである。 (b)-2 相違点10Bについて 相違点10Bについて検討する。 (b)-2a 甲第1、6、7号証に記載された発明 上記(ア)a(b)-2aないし(b)-2cと同様に、甲第1号証、甲第6号証及び甲第7号証には、それぞれ甲1発明、甲6技術的事項及び甲7技術的事項が記載されている。 (b)-2b 組み合わせ容易 上記(b)-2aのとおり、甲1発明は、被膜5がAl又はSiを含むものであり、甲6技術的事項は、硬質皮膜及びアンダーコート層がAlを含むものであり、甲7技術的事項は、硬質被膜がAlを含むものではあるが、本件発明8において特定された「Alが含有された窒化クロムで構成される」「(ただし、前記皮膜がTiを含有するピストンリングを除く。)」皮膜について、本件発明8が直接的又は間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについては、甲第1号証、甲第6号証及び甲第7号証のいずれにおいても開示も示唆もされていない。 また、上記4(1)ア(イ)-2の相違点2Bについての皮膜の「熱抵抗値」に係る判断は、甲2発明のCrN組成よりなる皮膜2Aの厚さと甲4技術的事項のCrN皮膜の熱伝導率に基づく判断であり、本件発明8において特定されたような「Alが含有された窒化クロムで構成される」「(ただし、前記皮膜がTiを含有するピストンリングを除く。)」皮膜についての判断ではなく、また、本件発明8において特定されたような「Alが含有された窒化クロムで構成される」「(ただし、前記皮膜がTiを含有するピストンリングを除く。)」皮膜においても「熱抵抗値」が同様な数値範囲となることを何ら裏付けるものとはいえない。 そして、他の甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証においても同様に、本件発明8において特定された「Alが含有された窒化クロムで構成される」「(ただし、前記皮膜がTiを含有するピストンリングを除く。)」皮膜について、本件発明8が直接的又は間接的に引用する請求項1に係る本件発明1の発明特定事項のように「皮膜の熱抵抗値が4.0×10-6~12.0×10-6m2・K/Wである」ことについて開示も示唆もされていない。 そうすると、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、相違点10Bに係る本件発明8の発明特定事項に当業者が容易に想到し得るものではない。 b 小括 したがって、本件発明8は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項、甲第5号証に記載された技術的事項、甲第6号証に記載された技術的事項及び甲第7号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 小括 したがって、特許異議申立人の主張する特許異議申立て理由によっては、請求項2、5ないし8に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおり、請求項1、3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第4号証に記載された発明、周知の技術及び甲第5号証又は甲第6号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術的事項及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項3、4に係る発明は、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された発明、周知の技術及び甲第5号証又は甲第6号証に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、請求項1、3、4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。 さらに、請求項2、5ないし8に係る発明については、取消理由通知に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項2、5ないし8に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項2、5ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700846

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