特許異議申立
2024-700467
金属ガスケット
- 審判番号
- 2024-700467
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-070222
- 登録番号
- 7383355
- 請求日
- 2024年05月16日
- 審決日
- 2025年02月14日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】イーグル工業株式会社
- 【権利者代理人】重信 和男
- 【権利者代理人】石川 好文
- 【権利者代理人】秋庭 英樹
- 【権利者代理人】林 道広
- 【権利者代理人】大久保 岳彦
- 【異議申立人】小池 美知
- 審判長/審判官
- 審判長 平城 俊雅
- 審判官 中屋 裕一郎
- 審判官 内田 博之
- 分類
- P1651.113-YAA(F16J) / P1651.121-YAA(F16J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7383355号発明「金属ガスケット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7383355号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
特許第7383355号の請求項1~3に係る特許を維持する。
特許第7383355号の請求項4、5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7383355号(以下「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和2年4月9日に出願され、令和5年11月10日に特許権の設定登録がされ、同年11月20日に特許掲載公報が発行された。
その後、特許異議申立人 小池 美知(以下「申立人」という。)による特許異議の申立てがされた。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 5月16日 申立人による特許異議の申立て
同年 8月26日付け 取消理由通知書
同年10月24日 特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
なお、令和6年11月6日付けで申立人に対して訂正請求があった旨を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人から応答はなかった。
第2 本件訂正による訂正の適否
1. 本件訂正の内容について
令和6年10月24日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下の訂正事項1~5を含むものである(下線部が訂正箇所である。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記連結部は湾曲しており、前記フォーク部の外面から前記リップ部が立ち上がる立ち上がり領域の位置まで厚みが同一に形成されている金属ガスケット。」とあるのを、
「前記連結部は湾曲しており、前記フォーク部の外面から前記リップ部が立ち上がる立ち上がり領域の位置まで厚みが同一に形成されており、
前記リップ部は、前記フォーク部の先端側から延びる先端面と、前記先端面から前記基部側に向けて径方向に延びるシール面と、前記フォーク部の外面から前記シール面に向けて圧縮方向反対側に立ち上がる基端面と、を備え、
前記先端面は、前記フォーク部の先端側から基部側に向けて圧縮方向反対側に傾斜し、
前記基端面は、前記フォーク部の外面から前記基端面が立ち上がる前記立ち上がり領域側に形成される谷状湾曲面と、該谷状湾曲面から圧縮方向反対側に延びる平面と、からなる金属ガスケット。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3も同様に訂正する)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
2.一群の請求項について
訂正前の請求項2~5は、訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用している。したがって、訂正前の請求項1~5に対応する訂正後の請求項1~5は、一群の請求項である。
3.訂正の適否に関する当審の判断
(1)訂正事項1について
ア.訂正の目的の適否
訂正事項1は、「リップ部」に対して、「前記リップ部は、前記フォーク部の先端側から延びる先端面と、前記先端面から前記基部側に向けて径方向に延びるシール面と、前記フォーク部の外面から前記シール面に向けて圧縮方向反対側に立ち上がる基端面と、を備え」るという、発明特発明特定事項(以下「発明特定事項A」という。)を直列的に付加し、その付加された発明特定事項における「先端面」及び「基端面」に対して更に、「前記先端面は、前記フォーク部の先端側から基部側に向けて圧縮方向反対側に傾斜」するという発明特定事項(以下「発明特定事項B」という。)、及び「前記基端面は、前記フォーク部の外面から前記基端面が立ち上がる前記立ち上がり領域側に形成される谷状湾曲面と、該谷状湾曲面から圧縮方向反対側に延びる平面と、からなる」という発明特定事項(以下「発明特定事項C」という。)をそれぞれ直列的に付加するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
イ.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
発明特定事項Aに関し、訂正前の本件特許の特許請求の範囲請求項4には、「前記リップ部は、前記フォーク部の先端側から基部側に向けて圧縮方向反対側に傾斜する先端面と、前記先端面から前記基部側に向けて径方向に延びるシール面と、前記フォーク部の外面から前記シール面に向けて圧縮方向反対側に立ち上がる基端面と、を備え」との記載があり(下線は当審が付したもの。以下同様。)、さらに、先端面については、本件特許明細書の段落【0022】に「端面2dの上端から外径かつ上方に向けて延びる傾斜平面である先端面4a」との記載があり、発明特定事項Aは、本件特許明細書等に記載されていたといえる。
発明特定事項Bに関しては、訂正前の本件特許の特許請求の範囲請求項4に「前記フォーク部の先端側から基部側に向けて圧縮方向反対側に傾斜する先端面」との記載があり、発明特定事項Bは、本件特許明細書等に記載されていたといえる。
発明特定事項Cについては、訂正前の本件特許の特許請求の範囲請求項4には「前記フォーク部の外面から前記基端面が立ち上がる前記立ち上がり領域に直交屈曲面もしくは谷状湾曲面が形成されている」との記載があり、本件特許明細書の段落【0039】に「フォーク部2の外面2aから基端面4cが立ち上がる立ち上がり領域41に谷状湾曲面42が形成されている。」との記載がある。さらに、本件特許明細書の段落【0022】の「基端面4cは、シール面4b側の軸方向に延びる平面4dと、後述する立ち上がり領域41側の曲面4eと、を備えている。」との記載(特に、曲面4eが「立ち上がり領域41側」との表現。)にかんがみれば、発明特定事項Cのうち、基端面の一部を構成する「前記フォーク部の外面から前記基端面が立ち上がる前記立ち上がり領域側に形成される谷状湾曲面」は、訂正前の本件特許明細書等に記載されていたといえる。次に、本件特許明細書の段落【0022】には「また、基端面4cは、シール面4b側の平面4dと立ち上がり領域41側の曲面4eとから形成されていることから、」との記載があり、図2からは、平面4dが谷状湾曲面42から圧縮方向反対側に延びている点が看て取れることから、発明特定事項Cのうち、基端面の一部を構成する「該谷状湾曲面から圧縮方向反対側に延びる平面」も本件特許明細書等に記載されていたといえる。そうすると、発明特定事項Cも本件特許明細書等に記載されているといえる。
したがって、発明特定事項A、B、Cはいずれも訂正前の本件特許明細書等に記載されていたといえるから、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
ウ.特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、上記ア.のとおり、発明特定事項を直列的に付加するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
(2)訂正事項2及び3ついて
訂正事項2及び3は、それぞれ請求項4及び5を削除するものであるから、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
そして、訂正事項2及び3は、それぞれ請求項4及び5を削除するものにすぎないから、いずれも本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合し、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
4.訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」~「本件特許5」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
径方向に直線状に延びる一対のフォーク部と、前記フォーク部の外径側の基部同士を連結する連結部と、前記フォーク部の内径側の先端側から圧縮方向反対側に突出するリップ部と、を備える金属ガスケットであって、
前記フォーク部は前記連結部よりも径方向に長寸に形成されており、
前記連結部は湾曲しており、前記フォーク部の外面から前記リップ部が立ち上がる立ち上がり領域の位置まで厚みが同一に形成されており、
前記リップ部は、前記フォーク部の先端側から延びる先端面と、前記先端面から前記基部側に向けて径方向に延びるシール面と、前記フォーク部の外面から前記シール面に向けて圧縮方向反対側に立ち上がる基端面と、を備え、
前記先端面は、前記フォーク部の先端側から基部側に向けて圧縮方向反対側に傾斜し、
前記基端面は、前記フォーク部の外面から前記基端面が立ち上がる前記立ち上がり領域側に形成される谷状湾曲面と、該谷状湾曲面から圧縮方向反対側に延びる平面と、からなる金属ガスケット。
【請求項2】
前記連結部の外面および内面は、同一の曲率中心による曲面である請求項1に記載の金属ガスケット。
【請求項3】
前記フォーク部と前記連結部との境界の厚みが同一である請求項2に記載の金属ガスケット。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
(削除)
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1.取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~5に係る特許に対して、当審が令和6年8月26日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。なお、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由については、当該取消理由通知書において全て採用している。
理由1.(新規性)本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
理由2.(進歩性)本件特許の請求項1~5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
<刊行物等一覧>
・甲第1号証:特開2017-40280号公報
・甲第2号証:特開2013-148201号公報
・甲第3号証:実願昭60-121114号(実開昭62-28958号)のマイクロフィルム
・甲第4号証:特開平11-131052号公報
・甲第5号証:実公平4-13474号公報
(甲第1~5号証は、申立人が提出した証拠。以下「甲1」~「甲5」という。)
2.甲各号証の記載
(1)甲1について
ア.甲1の記載
甲1には【表1】とともに、次の記載がある(なお、下線は、当審において付したものである。)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦断面の形状がU字状であるガスケット本体を有する金属リングガスケットであって、前記ガスケット本体が一対のフォーク部および当該一対のフォーク部を連結するための連結部を有し、当該フォーク部の先端部が金属リングガスケットの中心方向に延伸し、当該フォーク部の他端が金属リングガスケットの外径方向に延伸して連結部と一体的に連結されてなり、当該フォーク部の先端部に環状のシール面を有するリップ部が形成され、ガスケット本体の連結部の内周面における半径Rとフォーク部の肉厚Dとの比(半径R/肉厚D)の値が0.5~3.0であり、フォーク部の長さLとフォーク部の肉厚Dとの比(長さL/肉厚D)の値が4.0~4.8であることを特徴とする金属リングガスケット。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、金属リングガスケットに関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば、火力発電所、原子力発電所、スチームタービン船の蒸気機関、石油精製ラインや石油化学工業のプロセスライン、熱媒体油ラインなどの配管同士を接続する際に好適に使用することができる金属リングガスケットに関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記金属リングガスケットは、確かに超高真空機器などに使用することができるものである。しかし、前記金属リングガスケットを配管の内圧が高い用途、例えば、火力発電所、原子力発電所、スチームタービン船の蒸気機関、石油精製ラインや石油化学工業のプロセスライン、熱媒体油ラインなどの配管同士を接続する際に使用した場合、当該金属リングガスケットは復元性に劣るため、配管内に高圧の流体を導入したときに金属リングガスケットと配管のフランジ面との接触面から配管内の流体が漏出するおそれがある。
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、配管内の流体が高温および高圧を有する場合であっても復元性に優れる金属リングガスケットを提供することを課題とする。」
「【0014】
本発明の金属リングガスケット1の直径(外径)は、本発明の金属リングガスケット1の用途などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、10~1000mmの範囲内から適宜選択される。
【0015】
本発明の金属リングガスケット1は、図2に示されるように、縦断面の形状がU字状であるガスケット本体2を有する。
【0016】
ガスケット本体2は、一対のフォーク部3a,3bおよび当該一対のフォーク部3a,3bを連結するための連結部4を有する。フォーク部3a,3bの先端部は、金属リングガスケット1の中心方向に延伸している。フォーク部3a,3bの他端は、金属リングガスケット1の外径方向に延伸して連結部4と一体的に連結されている。
【0017】
フォーク部3a,3bの先端部には、環状のシール面を有するリップ部5a,5bが形成されている。リップ部5a,5bは、配管のフランジ(図示せず)と接触することにより、配管内の流体が外部に漏洩することを防止する役割を担う。したがって、リップ部5a,5bのフランジと接触する面は、フランジと面接触および線接触のいずれで接触してもよいが、配管内の流体が外部に漏洩することを十分に防止する観点から、金属リングガスケット1をフランジ間で締付けたときに面接触するように形成されていることが好ましい。リップ部5a,5bのフランジと接触する面は、金属リングガスケット1の軸心を中心とした同心円の環状を有する。リップ部5a,5bのフランジと接触する面の幅は、配管内の流体が外部に漏洩することを十分に防止する観点から、通常、0.1~1mm程度であることが好ましい。また、フォーク部3a,3bの外周面からのリップ部5a,5bの高さhは、特に限定されないが、配管内の流体が外部に漏洩することを十分に防止する観点から、通常、0.3~1mm程度であることが好ましい。」
「【0019】
フォーク部3a,3bは、図2の符号Lで示されるように、連結部の内周面における半径Rの終端部(半径Rの弧端)からフォーク部3a,3bの先端部までの間に形成されている。
【0020】
フォーク部3a,3bの長さLは、復元性を向上させる観点から、好ましくは2.5mm以上、より好ましくは3.0mm以上、さらに好ましくは3.2mm以上であり、配管内の流体の圧力による変形を防止する観点から、好ましくは9.5mm以下、より好ましくは9.0mm以下、さらに好ましくは8.5mm以下である。
【0021】
フォーク部3a,3bの肉厚Dは、配管内の流体の圧力による変形を防止する観点から、好ましくは0.6mm以上、より好ましくは0.8mm以上であり、復元性を向上させる観点から、好ましくは2.2mm以下、より好ましくは2.0mm以下である。
【0022】
また、フォーク部3a,3bの肉厚Dは均一であるが、均一な肉厚Dの部分からフォーク部3a,3bの先端部に向けて肉厚が漸減するように構成されていることが復元性を向上させる観点から好ましい。この場合、フォーク部3a,3bの肉厚Dが均一な部分の長さSは、復元性を向上させるとともに配管内の流体の圧力による変形を防止する観点から、フォーク部3a,3bの長さLの20~80%であることが好ましい。」
「【0024】
なお、連結部4の厚さMは、配管内の流体の圧力による変形を防止する観点から、好ましくは0.6mm以上、より好ましくは0.8mm以上であり、復元性を向上させる観点から、好ましくは2.2mm以下、より好ましくは2.0mm以下である。」
「【実施例】
【0029】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0030】
実施例1~21および比較例1~15
ニッケル-クロム系合金〔JIS G4902に規定のNCF718〕からなる板材(直径:160mm、厚さ:12mm)に切削加工を施すことにより、図2に示される形状を有する金属リングガスケット(外径:150mm、リップ部の高さ:0.65mm、リップ部の幅:0.4mm)を作製した。なお、各実施例および各比較例で得られた金属リングガスケットの具体的な寸法を表1~2に示す。
【0031】
前記で得られた金属リングガスケットのガスケット性能として復元率を以下の方法に基づいて調べた。その結果を表1~2に示す。」
「【0044】
表1~2に示された結果から、各実施例で得られた金属リングガスケットは、いずれも、配管内の流体が高温および高圧を有する場合であっても復元性に優れていることがわかる。」
「【図2】
[図:0001423495000001.jpg]
」
イ.甲1に記載された技術的事項及び甲1発明
(ア)金属リングガスケット1が、“先端部が金属リングガスケット1の中心方向に延伸し、他端が金属リングガスケットの外径方向に延伸する一対のフォーク部3a、3b”を備える(甲1の【請求項1】の記載参照)。そして、図2から、フォーク部3a、3bの先端部は金属リングガスケット1の中心方向に“直線状に”延伸し、他端が金属リングガスケットの外径方向に“直線状”に延伸する点が看て取れる。
(イ)金属リングガスケット1は、“連結部4”を備え、この連結部4は、“フォーク部3a、3bのそれぞれの他端が一体的に連結され”、“U字状”を呈する(甲1の【請求項1】の記載及び図2参照)。
(ウ)金属リングガスケット1は、“フォーク部3a、3bの先端部に設けられたリップ部5a,5b”を備える(甲1の【請求項1】の記載、段落【0017】及び図2参照)。図2から、リップ部5a、5bは“圧縮方向とは反対の方向に向けて突出するように設けられ”ている点が看て取れる。
(エ)甲1の【請求項1】で特定される金属リングガスケット1の実施例は、図2に示される形状を有し(段落【0030】参照)、その実施例の具体的な寸法が【表1】に記載されている。そして、【表1】の実施例13は、“フォーク部の長さLが5.5mm”、“連結部4の内周面の半径Rが1.7mm”、“連結部4の肉厚Mが1.3mm”、“フォーク部の肉厚Dが1.3mm”である。
(オ)連結部4の内面は半径Rの円弧面として形成されている(段落【0019】参照)。この点も踏まえて、図2を看ると、連結部4は“略半円弧状に形成”されているということができる。
(カ)【表1】の実施例13は、フォーク部3a、3bの肉厚Dが均一な部分の長さS(段落【0022】参照)は5.5mmであり、これはフォーク部の長さLに等しい。したがって、実施例13は、フォーク部3a、3bはその全長に亘って肉厚Dが均一、すなわち、“フォーク部3a、3bは、その連結部4に連結された他端からリップ部5a、5bが形成される先端部までの全長に亘って肉厚Dが均一である。
(キ)図2から、リップ部5a、5bが、“フォーク部3a、3bの先端側において圧縮方向に沿って伸びる端面”と、“該端面から外径方向に伸びるシール面”と、“フォーク部3a、3bの外面からシール面に向かって圧縮方向とは反対側に向かって立ち上がる湾曲面”とを備えている点、及びその“湾曲面が凹曲面で構成される”点が看て取れる。
以上を総合すると、甲1には、甲1の【請求項1】で特定される金属リングガスケット1の実施例13に関し、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明]
先端部が金属リングガスケット1の中心方向に直線状に延伸し、他端が金属リングガスケット1の外径方向に直線状に延伸する一対のフォーク部3a、3bと、フォーク部3a、3bのそれぞれの他端が一体的に連結される連結部4と、フォーク部3a、3bの先端部に圧縮方向とは反対の方向に向けて突出するように設けられたリップ部5a、5bと、を備えるU字状の金属リングガスケット1であって、
フォーク部3a、3bの長さLが5.5mm、連結部4の内周面の半径Rが1.7mm、連結部4の肉厚Mが1.3mm、フォーク部3a、3bの肉厚Dが1.3mmであり、
連結部4は略半円弧状に形成されており、フォーク部3a、3bは、その連結部4に連結された他端からリップ部5a、5bが形成される先端部までの全長に亘って肉厚Dが均一であり、
リップ部5a、5bが、フォーク部3a、3bの先端側において圧縮方向に沿って伸びる端面と、該端面から外径方向に伸びるシール面と、フォーク部3a、3bの外面からシール面に向かって圧縮方向とは反対側に向かって立ち上がる湾曲面を備え、
湾曲面が凹曲面として構成される、金属リングガスケット1。
(2)甲2について
甲2には次の記載がある(なお、下線は、当審において付したものである。)
「【0009】
図4と図5は本発明の第1の実施の形態を示す横断面図であって、第1部材11に凹設された矩形状シール溝13内に装着され、第1部材11のこの矩形状シール溝13の(平面状の)溝底面13Aと、平面状の第2部材12との間を密封する金属シール1を例示する。この金属シール1は、いわゆるU型シールであり、横断面において、基部(底壁部)3と、この基部3から平行に突設された一対の片持梁状弾性脚片4,4とを、具備する。
対向する平行な2平面5,6---図4では、1平面5は第1部材11の溝底面13Aが相当し、他平面6は第2部材12が相当する---の各々に接触するシール用圧接小突部7を、上記弾性脚片4が有している。図例では、この圧接小突部7は小丸山型の横断面形状であるが、これを三角山型や四角形状としても良い。」
「【0022】
次に、図6と図7に示した第2の実施の形態について説明すると、この金属シール1はK型シールと呼ばれる横断面形状であり、基部(底壁部)3は略8角形状であり、これから先端開脚状に一対の片持梁状弾性脚片4,4が突設されている。
対向する2平面5,6の各々に、弾性脚片4,4の先端の小角山型のシール用圧接小突部7が付設される。この小突部7は、図示省略の小丸山型や小三角山型としても自由である。」
「【図4】
[図:0001423495000002.jpg]
」
(3)甲3について
甲3には次の記載がある(なお、下線は、当審において付したものである。)
「従来、高圧ガスのシールに用いられてきたメタルシールとしては、第5A図、第5B図及び第5C図に例示するような横断面形状のものが使用されている。
一般にこの種のメタルシールとしては高温、極低温、高圧時のフランジのたわみに対応して、メタルシールのシールリップ部が追随する必要がある。
第5A図のメタルシールaは横断面K形であり、第5B図のメタルシールbは横断面V形であり、第5C図のメタルシールcは横断面U形であり、従来のこれ等いずれのメタルシールを用いても、高圧ガスシール時にしばしば漏洩(リーク)が発生する。特に、(イ)一定以上の高圧が作用した場合、(ロ)圧力変動を繰り返し受けた場合(例えば0kg/cm2と400kg/cm2の圧力に交互に変化を繰り返すとき)、(ハ)極低温の場合、等にしばしば漏洩が発生する。
此の漏洩(リーク)発生原因の一つを、第5C図のメタルシールcを例にとって、第6A図~第6C図に於て説明する。
まず第5C図に於て、このU字形のメタルシールcは、基端ヒール部Hの肉厚寸法Ta,Tb,Tcがいずれも、両先端シールリップ部1の近傍の肉厚寸法Tdよりも大きく設定されている。さらに具体的に言えば両脚片部2,2が基端ヒール部H側から先端シールリップ部1側へしだいに肉薄となるテーパ状に形成されており、主要たわみ部G-即ち脚片部2が第6A図~第6B図又は第6C図のように変形するときに大きく変形する部位-が比較的シールリップ部1に近い位置にあって、シールリップ部1から該主要たわみ部Gまでの距離寸法をlとするとこの寸法lは脚片部2の長さ寸法の半分以下であった。」(第1頁第16行~第3頁第9行)
「〔実施例〕
以下、図示の実施例に基づき本考案を詳説する。
第1図に示す第1の実施例では、メタルシールの横断面形状は略U字形に形成され、両先端シールリップ部1の近傍の肉厚寸法Tdよりも、基端ヒール部Hの一部の肉厚寸法Tcを小さく設定し、もって、主要たわみ部Gを該基端ヒール部H内に配設している。
つまり、
Tc<Td ・・・(1)
とする。
さらに詳しく説明すれば、脚片部2の肉厚寸法が、基端から先端にゆくに従って(従来の第5C図とは逆に)しだいに増加するように、該脚片部2をテーパ状に形成している。
このようにして、両脚片部2,2の肉厚寸法は基端側が最も小さくなり、主要なたわみを生ずる主要たわみ部G-たわみ支点-は、両脚片部2,2の基端部(付け根)に存在する。この主要たわみ部Gからリップ部1までの距離寸法をLとすれば、第5C図に示した従来の同寸法lに比較して、
L>1 ・・・ (2)
なる関係が成立する。」(第6頁第3行~第7頁第6行)
「しかして、第4A図~第4C図に於て、実施例の作用を説明する。第4A図~第4C図は夫々既述の(従来例の)第6A図~第6C図に対応する。そして、本考案に係るメタルシールは、両先端シールリップ部1の近傍の肉厚寸法Tdよりも小さく設定した肉厚寸法の主要たわみ部Gを、基端ヒール部H内に少なくとも1個形成したから、リップ部1から該主要たわみ部Gまでの距離寸法Lが(従来に比較して)十分に増大する。」(第8頁第14行~第9頁第2行)
「第1図
[図:0001423495000003.jpg]
」
「第5C図
[図:0001423495000004.jpg]
」
(4)甲4について
甲4には次の記載がある(なお、下線は、当審において付したものである。)
「【0009】図1~図3に示す実施例においては、金属製ジャケット3はU字形の断面形状を有し、U字形の窪み内にOリング2が収納されている。このシール1を真空装置(図示せず)の所定個所に設置して、未締付け状態から図2に示す矢印の方向に上下から締付けると、図3に示すように金属製ジャケット3のU字形断面における開口部31の開口間隔が小さくなり、同時にU字形窪み内のOリング2も図示する通りにその断面形状が偏平化する。しかしてOリング2と金属製ジャケット3のかかる変形に基づき発生する内部応力、即ち反発力により良好なシール効果が生じる。その際、金属製ジャケット3の内側面32(図1および図3参照)は、真空装置の被シール空間に露出することがあるが、金属製ジャケット3の開口部31あるいは金属製ジャケット3の外側面33は該被シール空間の反対側に、換言すると真空装置の外側に向けて開口しているので、金属製ジャケット3のU字形窪み内のOリング2は金属製ジャケット3により真空装置の被シール空間から遮断されることになる。したがってOリング2が弾性有機高分子製であって、架橋残渣あるいはその他の各種揮発性成分、吸着ガスなどの物質を放出するものであっても、かかるガスや粒子は金属製ジャケット3により真空装置の被シール空間に移行することが防止される。
【0010】図4~図5に示す実施例や図6~図7に示す実施例は、図1~図3に示す実施例とは、金属製ジャケット3の外部表面に設けられたリップ4を有する点において異なる。図4~図5の実施例では、リップ4は断面が三角形であり、金属製ジャケット3の外側面33に接して設けられている。一方、図6~図7の実施例では、リップ4は断面は同じく三角形であるが、金属製ジャケット3の外側面33から少し離れた位置に設けられている。本発明ではかかるリップ4は、必須ではないが、それはシール1を設置する溝内面などの被密封面に圧接されてシール効果を高める作用をなす。図4~図5に示す実施例や図6~図7に示す実施例は、締付けにより図1~図3に示す実施例と基本的に同様に変形し反発力を生じてシール効果を示す。
【0011】つぎに図8により、本発明の好ましい構造や寸法に就いて説明する。図8において、rはOリング2の半径、T1は金属製ジャケット3の先端部の厚み、T2は金属製ジャケット3のU字底部の厚み、LはOリング2の中心点Mを通るY-Y線と金属製ジャケット3の外側面33までの長さ、またt、e、H、W、およびθはそれぞれリップ4の頂点、頂点tの位置をOリング2中の図示する法線a上に投影した点、高さ、底辺の長さ、および頂点tにおける頂角である。」
「【0016】リップ4の断面形状は、上記した三角形以外にも、半円形、半楕円形、あるいはその他の種々の突起形状であってよい。かかる三角形以外のリップの設置位置、高さ、および底辺の長さなどは、上記した三角形の場合を参考にし、必要に応じて若干の試行錯誤を行うことにより、容易に把握することができる。」
「【図8】
[図:0001423495000005.jpg]
」
(5)甲5について
甲5には次の記載がある(なお、下線は、当審において付したものである。)
「第1図に断面形状を示すように軸方向に対称な断面U字形に成形された連結部1の端部に内径方向または外径方向に延びるフォーク部2が一体成形され、該フオーク部2の先端に環状のシール面4を有するリップ部3が連続成形されている。連結部1は全体にわたつてその肉厚Wを均一に設定されている。フオーク部2の基端近傍からリップ部3へかけて流体圧力を受ける受圧面5はテーパ状に成形され、該部の厚さは先端へ向けて漸減するように構成されている。
上記構成のガスケットはその形状にもとづき連結部1からリップ部3へかけてその全体を撓めるように動作し、同図グラフに示すように内部に発生する応力を分散させ局部的な塑性変形を防止する。」(第3欄第11~26行)
「第1図
[図:0001423495000006.jpg]
」
3.当審の判断
(1)本件発明1について
ア.対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明において、「金属リングガスケット1の中心方向」と「金属リングガスケット1の外径方向」とはともに、金属リングガスケット1の径方向に沿う方向である。したがって、甲1発明の「先端部が金属リングガスケット1の中心方向に直線状に延伸し、他端が金属リングガスケットの外径方向に直線状に延伸する」ことは、本件発明1の「径方向に直線状に延びる」ことに相当し、甲1発明の「フォーク部3a、3b」は、本件発明1の「フォーク部」に相当する。
(イ)甲1発明において、「フォーク部3a、3b」の「他端」は、「金属リングガスケット1の外径方向に直線状に延伸」した位置にあり、本件発明1の「フォーク部」の「外径側の基部」に相当する。甲1発明の「連結部4」は、本件発明1の「連結部」に相当する。そして、甲1発明において、「連結部4」に対して「フォーク部3a、3bのそれぞれの他端が」「一体的に連結される」と、「フォーク部3a、3bのそれぞれの他端」は連結部4を介して一体的に連結された状態とになる。したがって、甲1発明において、「連結部4」に「フォーク部3a、3bのそれぞれの他端が一体的に連結される」ことは、本件発明1において、「連結部」が「外径側の基部同士を連結する」ことに相当する。
(ウ)甲1発明において、「フォーク部3a、3b」の「先端部」は「金属リングガスケット1の中心方向に直線状に延伸し」た位置にあり、本件発明1の「フォーク部」の「内径側の先端側」に相当する。甲1発明において、「圧縮方向とは反対の方向に向けて突出する」ことは、本件発明1の「圧縮方向反対側に突出する」ことに相当する。甲1発明の「リップ部5a、5b」は本件発明1の「リップ部」に相当し、甲1発明において、「リップ部5a、5b」が「フォーク部3a,3bの先端部に圧縮方向とは反対の方向に向けて突出するように設けられ」ることは、本件発明1において「リップ部」が「前記フォーク部の内径側の先端側から圧縮方向反対側に突出する」ことに相当する。
(エ)甲1発明の「金属リングガスケット1」は、本件発明1の「金属ガスケット」に相当する。
(オ)甲1発明において、「フォーク部3a、3bの長さLが5.5mm」であるが、この長さは金属リングガスケット1の径方向に沿う方向の長さである。甲1発明において、「連結部4の内周面の半径Rが1.7mm」、「連結部4の肉厚Mが1.3mm」であるところ、「連結部4」の金属ガスケット1の径方向に沿う方向の長さは3.0mm(=1.7mm+1.3mm)である。したがって、金属リングガスケット1の径方向に沿う方向の長さで比較した場合、フォーク部3a、3bは連結部4よりも長いといえる。よって、甲1発明の「フォーク部3a、3bの長さLが5.5mm、連結部4の内周面の半径Rが1.7mm、連結部4の肉厚Mが1.3mm」であるという構成は、甲1発明の「前記フォーク部は前記連結部よりも径方向に長寸に形成され」るという構成に相当する。
(カ)甲1発明の「連結部4は略半円弧状に形成されて」いるという構成は、本件発明1の「前記連結部は湾曲して」いるという構成に相当する。
甲1発明のリップ部が備える「フォーク部3a、3bの外面からシール面に向かって圧縮方向とは反対側に向かって立ち上がる湾曲面」に関し、その“湾曲面がフォーク部3a、3bの外面から立ち上がらんとする場所”が、本件発明1の「前記フォーク部の外面から前記リップ部が立ち上がる立ち上がり領域」に相当する。また、甲1発明において、“湾曲面がフォーク部3a、3bの外面から立ち上がらんとする場所”は、当然にフォーク部3a、3bの連結部4に連結された他端とリップ部5a、5bが形成される先端部との間に位置する。そうすると、甲1発明における「フォーク部3a、3bは、その連結部4に連結された他端からリップ部5a、5bが形成される先端部までの全長に亘って肉厚Dが均一であ」るという構成に関し、当該構成から、甲1発明は“フォーク部3a、3bは、その連結部4に連結された他端から、湾曲面がフォーク部3a、3bの外面から立ち上がらんとする場所まで”についても“肉厚Dが均一である”ということができるから、甲1発明の当該構成は、本件発明1の「前記フォーク部の外面から前記リップ部が立ち上がる立ち上がり領域の位置まで厚みが同一に形成され」るという構成に相当する。
(キ)甲1発明の「外径方向」は、中心から、連結部4に一体的に連結される「フォーク部3a、3b」の「他端」へと向かう方向であるから、甲1発明の「外径方向に伸びる」ことは、本件発明1の「前記基部側に向けて径方向に延びる」ことに相当し、甲1発明の「シール面」は、本件発明1の「シール面」に相当する。
甲1発明の「フォーク部3a、3bの外面からシール面に向かって圧縮方向とは反対側に向かって立ち上がる」ことは、本件発明1の「前記フォーク部の外面から前記シール面に向けて圧縮方向反対側に立ち上がる」ことに相当し、甲1発明の「湾曲面」は、本件発明1の「基端面」に相当する。
(ク)甲1発明は「湾曲面が凹曲面として構成される」ものである。甲1発明の「湾曲面」を“湾曲面がフォーク部3a、3bの外面から立ち上がらんとする場所側(すなわち、フォーク部3a、3bの外面に近い側)”と“シール面に近い側”とで考えた場合、「湾曲面が凹曲面として構成される」のであるから、“湾曲面がフォーク部3a、3bの外面から立ち上がらんとする場所側”も“シール面に近い側”も、双方とも「凹曲面として構成される」。そして、甲1発明の湾曲面の一部である“湾曲面がフォーク部3a、3bの外面から立ち上がらんとする場所側”は、本件発明1の「前記フォーク部の外面から前記基端面が立ち上がる前記立ち上がり領域側」に相当する。
そうすると、甲1発明の「湾曲面が凹曲面として構成される」という構成は、本件発明1の「前記基端面は、前記フォーク部の外面から前記基端面が立ち上がる前記立ち上がり領域側に形成される谷状湾曲面と、該谷状湾曲面から圧縮方向反対側に延びる平面と、からなる」という構成との対比において、少なくとも「前記基端面は、前記フォーク部の外面から前記基端面が立ち上がる前記立ち上がり領域側に形成される谷状湾曲面」「からなる」という限りにおいて一致する。
以上を総合すると、本件発明1と甲1発明は、次の一致点で一致し、次の相違点1及び2で相違する。
[一致点]
径方向に直線状に延びる一対のフォーク部と、前記フォーク部の 外径側の基部同士を連結する連結部と、前記フォーク部の内径側の先端側から圧縮方向反対側に突出するリップ部と、を備える金属ガスケットであって、
前記フォーク部は前記連結部よりも径方向に長寸に形成されており、
前記連結部は湾曲しており、前記フォーク部の外面から前記リップ部が立ち上がる立ち上がり領域の位置まで厚みが同一に形成されており、
前記リップ部は、前記基部側に向けて径方向に延びるシール面と、前記フォーク部の外面から前記シール面に向けて圧縮方向反対側に立ち上がる基端面と、を備え、
前記基端面は、少なくとも前記フォーク部の外面から前記基端面が立ち上がる前記立ち上がり領域側に形成される谷状湾曲面からなる金属ガスケット。
[相違点1]
本件発明1は、リップ部が「前記フォーク部の先端側から延びる先端面」を備え、「前記先端面は、前記フォーク部の先端側から基部側に向けて圧縮方向反対側に傾斜し」、「前記先端面から」シール面が延びているのに対し、甲1発明は、「リップ部5a、5b」がこのような「先端面」を有していない点。
[相違点2]
「少なくともフォーク部の外面から基端面が立ち上がる前記立ち上がり領域側に形成される谷状湾曲面からなる」「基端面」に関して、本件発明1は、谷状湾曲面と「該谷状湾曲面から圧縮方向反対側に延びる平面」とからなるのに対し、甲1発明は、「凹曲面」からなる点。
イ.判断
上記ア.のとおり、本件発明1と甲1発明とは、相違点1及び2で相違するから、本件発明1は甲1発明ではない。
次に、本件発明1が甲1発明及び甲2~5に記載された事項に基いて容易に発明できたものであるか否かについて検討する。
事案にかんがみ、相違点2から検討する。
甲2には、シール用圧接小突部7を小丸山型の横断面形状にしたり、三角山型や四角形状としたりする点が記載されているが、片持梁状弾性脚片4,4の外面から凸状に湾曲した頂部に向かって立ち上がる面を、谷状湾曲面とその谷状湾曲面から圧縮方向反対側に延びる平面とで構成する点は記載も示唆もされていない。
また、甲3の図1からは、リップ部1の両脚片部2,2の外面から立ち上がる面を谷状湾曲面とする点は看て取れるが、甲3にも、リップ部1の立ち上がる面を谷状湾曲面とその谷状湾曲面から圧縮方向反対側に延びる平面とで構成する点は記載も示唆もされてない。
甲4には、「リップ4の断面形状は、上記した三角形以外にも、半円形、半楕円形、あるいはその他の種々の突起形状であってよい。かかる三角形以外のリップの設置位置、高さ、および底辺の長さなどは、上記した三角形の場合を参考にし、必要に応じて若干の試行錯誤を行うことにより、容易に把握することができる。」との記載(段落【0016】)はあるものの、リップ4の立ち上がる面を谷状湾曲面とその谷状湾曲面から圧縮方向反対側に延びる平面とで構成する点までは記載も示唆もされてない。
甲5にも、リップ部3が立ち上がる面を谷状湾曲面とその谷状湾曲面から圧縮方向反対側に延びる平面とで構成する点は記載も示唆もされてない。
すなわち、甲2~5のいずれにも、金属ガスケットのリップ部の立ち上がり面を谷状湾曲面とその谷状湾曲面から圧縮方向反対側に延びる平面とで構成する点は、記載も示唆もされてない。
さらに、金属ガスケットのリップ部の立ち上がり面を谷状湾曲面とその谷状湾曲面から圧縮方向反対側に延びる平面とで構成する点が、当業者にとって周知慣用技術であることを示す証拠もない。
よって、本件発明1の相違点2に係る構成は、甲1発明、及び甲2~5に記載された事項から、当業者が容易に想到し得たものではない。
そして、本件発明1は、リップ部の基端面を谷状湾曲面と「該谷状湾曲面から圧縮方向反対側に延びる平面」とからなるものとすることにより、「リップ部4に力が加わったときに平面4dに比べて曲面4eに応力が集中しやすくなるため、基端面4cにおける平面4dと曲面4eとの組み合わせによって立ち上がり領域41の変形量を制御することができる」(本件特許明細書の段落【0028】)という、甲1発明、及び甲2~5に記載された事項から予測し得ない格別な効果を奏するものである。
以上のことから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、及び甲2~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定した発明であるから、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2及び3は甲1発明ではないし、甲1発明、及び甲2~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件特許の請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許の請求項4及び5は、上記第2に示すとおり、訂正により削除された。これにより、本件特許異議の申立ての請求項4及び5に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700467