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特許異議申立

2021-700848

シールリング

審判番号
2021-700848
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-174027
登録番号
6839148
請求日
2021年09月01日
審決日
2022年06月15日
公報発行日
2022年09月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社リケン
  • 【権利者代理人】特許業務法人南青山国際特許事務所
  • 【権利者代理人】大森 純一
  • 【権利者代理人】中村 哲平
  • 【権利者代理人】折居 章
  • 【権利者代理人】関根 正好
  • 【権利者代理人】金子 彩子
  • 【権利者代理人】金山 慎太郎
  • 【異議申立人】坂本 恵理
審判長/審判官
  • 審判長 平瀬 知明
  • 審判官 間中 耕治
  • 審判官 岡本 健太郎
分類
P1652.113-YAA(F16J) / P1652.121-YAA(F16J) / P1652.537-YAA(F16J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6839148号発明「シールリング」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6839148号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~7]について訂正することを認める。 特許第6839148号の請求項1、6に係る特許を維持する。 特許第6839148号の請求項5、7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6839148号の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成30年9月18日の出願であって、令和3年2月16日にその特許権の設定登録がされ、同年3月3日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和3年9月1日 :特許異議申立人坂本恵理(以下、「申立人」という。)による請求項1、5~7に係る特許に対する特許異議の申立て 令和3年11月26日付け:取消理由通知 令和4年1月27日 :特許権者による意見書の提出及び訂正請求(以下、この訂正請求を「本件訂正請求」といい、この訂正請求による訂正を「本件訂正」という。) なお、申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を設けたが、申立人からの応答はなかった。 第2 本件訂正の適否 1.本件訂正の内容 本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「径方向の外側を向き、厚さ方向の中央部に位置する平坦部と、前記平坦部から前記厚さ方向の外側に向けて前記径方向の内側に傾斜する傾斜部と、を含む外周面と、 前記径方向の内側を向いた内周面と、 前記厚さ方向の外側を向いた側面と、 前記側面に間隔をあけて設けられ、前記外周面側が閉塞され、前記内周面側が開放された複数のポケットと、 を具備するシールリング。」 と記載されているのを、 「径方向の外側を向き、厚さ方向の中央部に位置する平坦部と、前記平坦部から前記厚さ方向の外側に向けて前記径方向の内側に傾斜する傾斜部と、を含む外周面と、 前記径方向の内側を向いた内周面と、 前記厚さ方向の外側を向いた側面と、 前記側面に間隔をあけて設けられ、前記外周面側が閉塞され、前記内周面側が開放された複数のポケットと、 を具備し、 前記平坦部を前記厚さ方向に延長した円筒面と前記傾斜部との間の角度は25°以下であり、 前記傾斜部の前記径方向の寸法は、前記平坦部と前記内周面との間隔の16%以下である シールリング。」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4、6も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1から5」とあるのを「請求項1から4」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 2.一群の請求項について 訂正事項1~4に係る訂正前の請求項1~7について、請求項2~7は、それぞれ直接的又は間接的に請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正請求は一群の請求項ごとに請求されたものであり、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項[1~7]は、一群の請求項である。 3.訂正の適否についての判断 3-1 訂正事項1について (1) 訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1における「平坦部」について「前記平坦部を前記厚さ方向に延長した円筒面と前記傾斜部との間の角度は25°以下であ」ることを特定するとともに、「傾斜部」について「前記傾斜部の前記径方向の寸法は、前記平坦部と前記内周面との間隔の16%以下である」ことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2) 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項5及び請求項7に記載した事項であるから、願書に添付した特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項を追加するものではない。 (3) 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項1は、訂正前の請求項1に対して、請求項5及び請求項7の発明特定事項を直列的に付加するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4) 特許出願の際独立して特許を受けることができること 本件については、訂正前の請求項1、5~7に対して特許異議の申立てがされているから、訂正後の請求項1、6に係る発明については、独立特許要件は課されない。 一方、訂正後の請求項2~4に係る発明については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。 そして、「第3 本件訂正後の発明」から「第5 当審の判断」に示すように、訂正後の請求項1に係る特許は、取消理由がないから、訂正後の請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2~4に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 3-2 訂正事項2について 訂正事項2は、請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2は、請求項5を削除するものであるから、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことが明らかである。 3-3 訂正事項3について 訂正事項3は、請求項5が削除されたことに伴って、請求項6が択一的に引用する請求項を「請求項1から4」とするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項3は、請求項6が択一的に引用する請求項の数を減らすものであるから、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことが明らかである。 3-4 訂正事項4について 訂正事項4は、請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項4は、請求項7を削除するものであるから、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことが明らかである。 4.本件訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、訂正事項1~4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げられた事項を目的とするものであり、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項~第7項の規定に適合するものである。 したがって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~7]について訂正することを認める。 第3 本件訂正後の発明 本件訂正請求により訂正された請求項1~請求項7に係る発明(以下、各々「本件発明1」~「本件発明7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~請求項7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 【請求項1】 径方向の外側を向き、厚さ方向の中央部に位置する平坦部と、前記平坦部から前記厚さ方向の外側に向けて前記径方向の内側に傾斜する傾斜部と、を含む外周面と、 前記径方向の内側を向いた内周面と、 前記厚さ方向の外側を向いた側面と、 前記側面に間隔をあけて設けられ、前記外周面側が閉塞され、前記内周面側が開放された複数のポケットと、 を具備し、 前記平坦部を前記厚さ方向に延長した円筒面と前記傾斜部との間の角度は25°以下であり、 前記傾斜部の前記径方向の寸法は、前記平坦部と前記内周面との間隔の16%以下である シールリング。 【請求項2】 請求項1に記載のシールリングであって、 合口部と、前記合口部の間を環状に延びる本体部と、を更に具備し、 前記傾斜部は、前記合口部に形成されていない シールリング。 【請求項3】 請求項2に記載のシールリングであって、 前記傾斜部は、前記本体部の全周にわたって一連に形成されている シールリング。 【請求項4】 請求項1又は2に記載のシールリングであって、 前記傾斜部は、相互に間隔をあけて形成された複数の傾斜部を含む シールリング。 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 請求項1から4のいずれか1項に記載のシールリングであって、 前記平坦部の前記厚さ方向の寸法は、前記外周面の前記厚さ方向の寸法の3%以上80%以下である シールリング。 【請求項7】 (削除) 第4 取消理由の概要 当審が令和3年11月26日付けで特許権者に通知した取消理由通知の概要は、次のとおりである。 ○理由1(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の請求項1,請求項5、請求項1~4のいずれかを引用する請求項6、請求項1~4のいずれかを引用する請求項7の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ○理由2(新規性) 本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 ○理由3(進歩性) 本件特許の請求項1、5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたのである。 引用文献等一覧 引用文献1:国際公開第2018/138574号(申立人の提出した甲第1号証。翻訳については、申立人が提出した甲第2号証を参照。) 引用文献2:特開2002-195417号公報(申立人の提出した甲第3号証。) 引用文献3:特開2017-75647号公報(申立人の提出した甲第5号証。) 第5 当審の判断 1.理由1(サポート要件)について 本件特許の願書に添付した明細書には、本件特許が解決しようとする課題について、以下のように記載されている。 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 実際には、側面摺動型のシールリングの外周面は、シャフトとハウジングとが相対的に回転する際に、ハウジングに張り付いているわけではなく、僅かながらハウジングに対しても摺動している。このため、側面摺動型のシールリングでは、外周面とハウジングとの間にも僅かなフリクションロスが発生している。 【0010】 上記のように、側面摺動型のシールリングでは、側面とシャフトとの間のフリクションロスを低減する技術が成熟してきている。この状況において、側面摺動型のシールリングでは、全体としてのフリクションロスの更なる低減のために、外周面とハウジングとの間のフリクションロスの低減が有効となる可能性がある。 【0011】 以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、フリクションロスをより効果的に低減可能なシールリングを提供することにある。」 そして、願書に添付した明細書及び図面の段落【0045】~【0047】、【0055】~【0059】、【0065】~【0074】、【図9】~【図11】の記載事項から、願書に添付した明細書及び図面には、側面摺動型のシールリングの外周面における傾斜部の角度が25°以下、傾斜部の径方向寸法比率が16%以下の範囲において上記課題を解決するできることを当業者が理解できる程度に記載されているということができる。 なお、願書に添付した明細書の段落【0071】の記載は、「寸法Tに対する平坦部21の寸法T1が5%以上50%以下のサンプルでは、いずれも、引き摺りトルクが1より小さく、傾斜部22の効果が認められた。」とするのみであって、平坦部の厚さ方向の寸法比率が50%を超える場合に引き摺りトルクが大きくなることを開示するものではない。 そして、本件訂正によって、本件発明1は「前記平坦部を前記厚さ方向に延長した円筒面と前記傾斜部との間の角度は25°以下であり」、「前記傾斜部の前記径方向の寸法は、前記平坦部と前記内周面との間隔の16%以下である」ことが特定されたから、本件発明1は、明細書において上記課題を解決することができると当業者が認識できる程度に記載された範囲内で特許請求するものである。 よって、本件発明1は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する。 本件発明6についても同様である。 2.理由2(新規性)、理由3(進歩性)について 2-1 引用文献に記載された事項及び引用発明 (1)引用文献1に記載された事項及び引用発明1 引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審が付したものである(以下同様である。)。 ア「1 . Field of the Disclosure [0002] The present disclosure relates generally to components useful in rotating systems such as automobile transmissions, torque converters and automatic clutches. The present disclosure relates more particularly to seal rings useful in rotating systems such as oil- lubricated systems and pneumatic systems, and methods for making such seal rings. 2. Technical Background [0003] Seal rings are commonly used in assemblies like transmissions and clutches to limit fluid leakage and pressure loss, especially in parts of the assemblies under high pressure. These are typically used in rotating connections in conjunction with a liquid such as an oil or other lubricant.」 (当審訳) 「1.開示の背景 [0002]本開示は、一般に、自動車の変速機、トルクコンバータおよび自動クラッチなどの回転システムに有用な構成要素に関する。本開示は、より具体的には、オイル潤滑システムおよび空気圧システムなどの回転システムに有用なシールリング、およびそのようなシールリングを製造する方法に関する。 2.背景技術 [0003]シールリングは、特に高圧下でのアセンブリの部分において、流体漏洩および圧力損失を制限するために変速機およびクラッチのようなアセンブリにおいて一般的に使用されている。これらは、典型的には、オイルまたは他の潤滑剤などの液体とともに回転接続部に使用される。」 イ「[0042] As the person of ordinary skill in the art will appreciate, the seal rings described herein can be formed with a variety of cross-sectional shapes. For example, certain embodiments of the seal rings as otherwise described herein have a rectangular cross-sectional shape (i.e., at a position along the circumference of the seal ring that does not include the features described herein with respect to the first end and the second end). FIG. 18 is a schematic cross-sectional view of a seal ring 1800 having a substantially rectangular cross-section, with the first lateral face 1820 being substantially parallel to the second lateral face 1822. In other embodiments of the seal rings as otherwise described herein, the seal ring has a substantially trapezoidal cross-section. FIG. 19 is a schematic cross-sectional view of a seal ring 1900 having a substantially trapezoidal cross-section, with the first lateral face 1920 and second lateral face 1922 being canted from the normal to the outer circumferential face 1912 by substantially the same angle. In other embodiments of the seal rings as otherwise described herein, the seal ring has a cross-sectional shape having a first rectangular section at the outer end thereof and a second, narrower rectangular section at the inner end thereof. FIG. 20 is a schematic cross-sectional view of a seal ring 2000 having such a cross-section. Here, the first lateral face 2020 and the second lateral face 2022 are sealing faces disposed at either end of the first rectangular section 2050, with second rectangular section 2052 being disposed immediately adjacent first regular section 2050 and extending to the inner circumferential face 2010. Of course, the person of ordinary skill in the art will appreciate that other cross-sectional shapes may be used, depending, for example, on the particular geometry of a groove in which the seal ring is to be disposed. And the person of ordinary skill in the art will appreciate that the shapes described herein can include chamfers or rounded corners without substantially deviating from the described shapes. For example, the cross-sectional shape of FIG. 18 includes chamfered corners at the edges of the outer circumferential face 1812, but is nonetheless considered to be rectangular. [0043] A variety of additional features can be included in the seal rings described herein. For example, in certain embodiments of the seal rings as otherwise described herein, the first lateral face, the second lateral face, or both can include one or more grooves formed therein. Grooves can be configured, for example, to pull oil or other lubricant up along the lateral face, and thus help maintain sufficient oil between the lateral face and a groove sidewall, in order to maintain a sufficient seal between the groove sidewall and the lateral face. An example of such a seal ring is shown in partial schematic lateral side view in FIG. 21. In certain embodiments, none of the grooves formed in the lateral face extends from an outer end of the lateral face to an inner end of the lateral face. For example, in the embodiment of FIG. 21, the grooves 2160 extend to the inner end 2124 of the lateral end face 2120, but not to the outer end 2125 thereof.」 (当審訳) 「[0042]当業者には理解されるように、本明細書に記載のシールリングは、様々な断面形状で形成され得る。例えば、本明細書で別途説明されるシールリングの特定の実施形態は、矩形の断面形状(すなわち、第1の端部および第2の端部に関して本明細書で説明される特徴を含まないシールリングの円周に沿った位置)を有する。図18は、第1の側面1820が第2の側面1822と略平行である、略矩形断面を有するシールリング1800の概略断面図である。本明細書で別途説明されるシールリングの他の実施形態では、シールリングは、略台形断面を有する。図19は、第1の側面1920および第2の側面1922が法線から外周面1912まで実質的に同じ角度で傾斜している、略台形断面を有するシールリング1900の概略断面図である。本明細書で別途説明されるシールリングの他の実施形態では、シールリングは、その外端に第1の矩形断面を有し、その内端に第2のより狭い矩形断面を有する断面形状を有する。図20は、そのような断面を有するシールリング2000の概略断面図である。ここで、第1の側面2020および第2の側面2022は、第1の矩形部2050の両端に配置されたシール面であり、第2の矩形部2052は、第1の規制部2050に直接隣接して配置され、内周面2010まで延在している。もちろん、当業者は、例えばシールリングが配置されるべき溝の特定の幾何学形状に応じて、他の断面形状が使用されてもよいことを理解するであろう。そして、当業者は、本明細書に記載された形状が、記載された形状から実質的に逸脱することなく面取りまたは丸みを帯びた角を含むことができることを理解するであろう。例えば、図18の断面形状は、外周面1812の端縁において面取りされた角を含むが、それでもなお矩形であると見なされる。 [0043]様々な追加の特徴が本明細書に記載のシールリングに含めることができる。例えば、本明細書に別途記載されるシールリングの特定の実施形態では、第1の側面、第2の側面、または両方は、その中に形成された1つ以上の溝を含むことができる。溝は、例えば側面に沿ってオイルまたは他の潤滑剤を引き上げるように構成することができ、したがって、溝の側壁と側面との間に十分なシールを維持するために、側面と溝の側壁との間に十分なオイルを維持するのを助ける。そのようなシールリングの一例が図21の部分概略側面図に示されている。特定の実施形態では、側面に形成された溝は、いずれも側面の外端から側面の内端まで延在していない。例えば、図21の実施形態では、溝2160は、側端面2120の内端2124まで延在しているが、その外端2125までは延在していない。」 ウ「[FIG.18] [図:0001388379000001.jpg] 」 エ「[FIG.21] [図:0001388379000002.jpg] 」 オ [FIG.18]から、引用文献1のシールリングは、外周面の中央部に位置する平坦面及び平坦面から厚さ方向の外側に向けて径方向内側に傾斜する面取部を有する外周面及び第1及び第2の側面1820、1822を備えることが看取できる。 また、第1及び第2の側面1820、1822の間であって、外周面と対向する側に、径方向内側を向いた内周面を備えることが看取できる。 カ [FIG.21]から、第1及び第2の側面1820、1822の側端面2120に、間隔を空けて設けられ、外端2125が閉塞され、内端2124が開放された複数の溝2160を備えることが看取できる。 以上の摘記事項ア~エ、認定事項オ~カから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明1) 「径方向の外側を向き、厚さ方向の中央部に位置する平坦面と、平坦面から厚さ方向の外側に向けて径方向内側に傾斜する面取部を有する外周面と、 径方向内側を向いた内周面と、 第1及び第2の側面1820、1822と、 第1及び第2の側面1820、1822の側端面2120に間隔を空けて設けられ、外端2125が閉塞され、内端2124が開放された複数の溝2160を備える シールリング。」 (2)引用文献2に記載された事項及び引用発明2 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 ア「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば自動車の自動変速機や各種油圧装置等に用いられる樹脂製のシールリングに関する。」 イ「【0016】このシールリングは、樹脂製のシールリング本体1を軸2外周に形成されたリング溝3に装着し、密封対象の潤滑油6の圧力作用時に、シールリング本体1の外周面4を前記軸2の外周に相対回転自在に嵌合されるハウジング5の内周面7に圧接させ、シールリング本体1の一方のリング側面8をリング溝3の一方の溝側面9に圧接させるようになっている。シールリング本体1は、図1(B)に示すように円環状部材で、一箇所でカットされている。このカット部10は、カットされた各リング端部に、円周方向に沿って摺動可能に接合される接合片10a,10bを有し、接合片10a,10bの接合面が油圧によって、軸方向あるいは径方向に圧接して接合面間が密封される。」 ウ「【0022】この実施の形態1では、シールリング本体1の外周面4は、中央の外周接触部11と、この外周接触部11からから軸方向両端に向かってハウジング内周面7から離れる方向に傾斜する斜面4A,4B(ハウジング内周面7に対する傾斜角度θH)とを備えた構成となっている。 【0023】また、リング側面8は、側面接触部12と、この側面接触部12の内周側を段付き状に窪ませた段部81と、を有する形状となっている。 【0024】本実施の形態によれば、シールリングの外周接触部11は、リング外周面4の中央部分(幅H-2×H1)に限定される。したがって、油圧がシールリング本体1のどちらの端面から作用しても、受圧長さは最低でH1の長さが確保できる。」 エ「【0027】特に、角度θHは、油圧によるシールリング本体1のねじれや変形を考慮して、1°以上45°以下、好ましくは5°以上25°以下である。」 オ「【図1】 [図:0001388379000003.jpg] 」 カ 【図1】(A)の記載から、「シールリング本体1の外周面4」と対向する部位には、径方向内側を向いた内周面があるものと認められる。 キ 【図1】(A)及び摘記事項ウから、ハウジング内周面7に対する傾斜角度θHは、外周接触部11を厚さ方向に延長した円筒面と斜面4A、4Bとの間の傾斜角度θHと認められる。 以上の摘記事項ア~オ、認定事項カ~キから、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明2) 「径方向の外側を向き、厚さ方向の中央部に位置する外周接触部11と、外周接触部11から厚さ方向の外側に向けて径方向の内側に傾斜する斜面4A、4Bと、を含む外周面4と、 径方向内側を向いた内周面と、 リング側面8と、 リング側面8に設けられ、外周側が閉塞され、内周側が開放された段部81を備え、 外周接触部11を厚さ方向に延長した円筒面と斜面4A、4Bとの間の傾斜角度θHが5°以上25°以下である シールリング本体1。」 (3)引用文献3に記載された事項 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 ア「【技術分野】 【0001】 本発明は、油圧機器などに利用可能なシールリングに関する。」 イ「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 上記の技術では、シールリングのポケットに入り込んだオイルが、シールリングとシャフトとの間に流入して、シールリングとシャフトとの間に油膜を形成する。この油膜の形成により、シールリングの潤滑性が向上してフリクションロスが低減される。この反面、この油膜が厚くなりすぎるとオイルがシールリングより外側に漏れやすくなる。このように、フリクションロスとオイル漏れとはトレードオフの関係になりやすい。 【0008】 以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、フリクションロスの低減とオイル漏れの抑制とを両立可能なシールリングを提供することにある。」 ウ「【0022】 [シールリング1] 図1は、本発明の一実施形態に係るシールリング1の平面図である。シールリング1は、外周面1a、内周面1b、及び側面1cを有し、中心軸Cを中心とする環状に形成されている。外周面1a及び内周面1bは中心軸Cを中心とする円筒面であり、側面1cは外周面1a及び内周面1bに直交する平面である。 【0023】 シールリング1は、2つの側面1cにそれぞれ相互に間隔をあけて配置された複数のポケット10を有する。各ポケット10は、側面1cから窪む凹状に形成されている。また、シールリング1には、必要に応じ、シャフトへの装着を容易にするための合口部30が設けられる。なお、本発明において、合口部30を有する場合のシールリング1の形状は、合口部30を閉じた状態として定義されるものとする。」 エ「【0030】 [ポケット10の構成] 図2は、シールリング1の概略構成を示す部分斜視図であり、ポケット10を拡大して示している。図3は、シールリング1のポケット10を内周面1b側から示す図である。図3では、シールリング1の内周面1bに沿った形状を示している。図3に示す寸法d0,d1,d2は、シールリング1の内周面1bの周方向に沿った寸法を示している。 【0031】 ポケット10は、シールリング1の側面1cの内周面1b側に設けられている。ポケット10は、シールリング1の外周面1aとの間に隔壁部17を具備し、外周面1a側が隔壁部17によって閉塞されている。したがって、シールリング1では、ポケット10内のオイルがシールリング1の外周面1a側に漏れ出すことを抑制することができる。 【0032】 この一方で、ポケット10は、内周面1bとの間に隔壁部を有しておらず、シールリング1の内周面1b側に開放されている。これにより、ポケット10内の油圧が過度に高くなることを防止することができるため、ポケット10内のオイルがシールリング1の外周面1a側に漏れ出すことを効果的に抑制することができる。 【0033】 ポケット10の隔壁部17は、シールリング1の側面1cに直交する平面として構成されている。しかし、隔壁部17は、ポケット10内の空間と外周面1a側の空間とを隔てることができれば、特定の構成に限定されない。 【0034】 各ポケット10は、側面1cに設けられた柱部20によってシールリング1の周方向に隔てられている。つまり、シールリング1の内周面1bには、ポケット10と柱部20とが交互に配置されている。」 オ「【図1】 [図:0001388379000004.jpg] 」 カ「【図2】 [図:0001388379000005.jpg] 」 2-2 引用発明1を主引用発明とした場合 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「平坦面」、「面取部」、「外周面」、「内周面」、「第1及び第2の側面1820、1822」、「溝2160」及び「シールリング」が本件発明1の「平坦部」、「傾斜部」、「外周面」、「内周面」、「厚さ方向の外側を向いた側面」、「ポケット」、「シールリング」に相当する。 してみると、引用発明1の「径方向の外側を向き、厚さ方向の中央部に位置する平坦面と、平坦面から厚さ方向の外側に向けて径方向内側に傾斜する面取部を有する外周面」及び「径方向の内側を向いた内周面」は、本件発明1の「径方向の外側を向き、厚さ方向の中央部に位置する平坦部と、前記平坦部から前記厚さ方向の外側に向けて前記径方向の内側に傾斜する傾斜部と、を含む外周面」及び「前記径方向の内側を向いた内周面」に相当する。 引用発明1の「溝2160」は、「側端面2120に間隔を空けて設けられ」るとともに「内端2124が開放され」、「外端2125が閉塞され」ているのであって、当該側端面2120は、第1及び第2の側面1820、1822を言い換えたものであるから、本件発明1の「前記側面に間隔をあけて設けられ、前記外周面側が閉塞され、前記内周面側が開放された複数のポケット」に相当する。 以上のことから、本件発明1と引用発明1とは、次の一致点1で一致し、相違点1で相違する。 (一致点1) 「径方向の外側を向き、厚さ方向の中央部に位置する平坦部と、前記平坦部から前記厚さ方向の外側に向けて前記径方向の内側に傾斜する傾斜部と、を含む外周面と、 前記径方向の内側を向いた内周面と、 前記厚さ方向の外側を向いた側面と、 前記側面に間隔をあけて設けられ、前記外周面側が閉塞され、前記内周面側が開放された複数のポケットと、 を具備する シールリング。」 (相違点1) 本件発明1が、「前記平坦部を前記厚さ方向に延長した円筒面と前記傾斜部との間の角度は25°以下であり、前記傾斜部の前記径方向の寸法は、前記平坦部と前記内周面との間隔の16%以下である」のに対して、引用発明1では、そのような構成がない点。 イ 判断 上記相違点1について検討すると、上記2-1(2)エに摘記したとおり、引用文献2の段落【0027】には、傾面4A、4Bの角度を5°以上25°以下とすることが記載されている。 しかしながら、引用文献2及び引用文献3には、「傾斜部」の「径方向の寸法」が、平坦部と内周面との間隔の16%以下である旨の記載はなく、それを示唆する記載もない。 なお、引用文献2に関して、申立人は、異議申立書の第8ページ第11行~第15行において、「図1(A)のシールリング断面図から各寸法を測定すると、H(厚さ方向寸法)11.5mm、11(外周接触部長さ)2.0mm、T(径方向寸法)10.0mm、斜面4A、4Bの径方向長さ1.8mmであった。」と主張する。 しかしながら、そもそも引用文献2に記載された図面は、引用文献2に記載された発明の技術内容を説明する便宜のために描かれるものであって、設計図面に要求されるような正確性をもって描かれているとは限らないから、申立人の主張を採用することはできない。 よって、引用発明1を、上記相違点1に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえないから、引用発明1及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。 (2)本件発明6について 本件発明6も、本件発明1の「前記傾斜部の前記径方向の寸法は、前記平坦部と前記内周面との間隔の16%以下である」と同一の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。 2-3 引用発明2を主引用発明とした場合 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「外周接触部11」、「斜面4A、4B」、「外周面4」、「内周面」、「リング側面8」、「段部81」及び「シールリング本体1」が本件発明1の「平坦部」、「傾斜部」、「外周面」、「内周面」、「厚さ方向の外側を向いた側面」、「ポケット」、「シールリング」に相当する。 してみると、引用発明2の「径方向の外側を向き、厚さ方向の中央部に位置する外周接触部11と、外周接触部11から厚さ方向の外側に向けて径方向の内側に傾斜する斜面4A、4Bと、を含む外周面4と、径方向内側を向いた内周面と、リング側面8と」は、本件発明1の「径方向の外側を向き、厚さ方向の中央部に位置する平坦部と、前記平坦部から前記厚さ方向の外側に向けて前記径方向の内側に傾斜する傾斜部と、を含む外周面と、前記径方向の内側を向いた内周面と、前記厚さ方向の外側を向いた側面と」に相当する。 引用発明2の「リング側面8に設けられ、外周側が閉塞され、内周側が開放された段部81」は、「前記側面に設けられ、前記外周面側が閉塞され、前記内周面側が開放されたポケット」の限りにおいて、本件発明1の「前記側面に間隔をあけて設けられ、前記外周面側が閉塞され、前記内周面側が開放された複数のポケット」と一致する。 引用発明2の「外周接触部11を厚さ方向に延長した円筒面と斜面4A、4Bとの間の傾斜角度θHが5°以上25°以下である」ことは、本件発明1の「前記平坦部を前記厚さ方向に延長した円筒面と前記傾斜部との間の角度は25°以下であり」に相当する。 してみると、本件発明1と引用発明2とは、次の一致点2で一致し、相違点2、3で相違する。 (一致点2) 「径方向の外側を向き、厚さ方向の中央部に位置する平坦部と、前記平坦部から前記厚さ方向の外側に向けて前記径方向の内側に傾斜する傾斜部と、を含む外周面と、 前記径方向の内側を向いた内周面と、 前記厚さ方向の外側を向いた側面と、 前記側面に設けられ、前記外周面側が閉塞され、前記内周面側が開放されポケットと、 を具備し、 前記平坦部を前記厚さ方向に延長した円筒面と前記傾斜部との間の角度は25°以下である シールリング。」 (相違点2) 「ポケット」に関して、本件発明1では「前記側面に間隔をあけて設けられ、前記外周面側が閉塞され、前記内周面側が開放された複数のポケット」であるのに対して、引用発明2では、段部81が一つであり、間隔をあけて複数設けられたものではない点。 (相違点3) 本件発明1では、「前記傾斜部の前記径方向の寸法は、前記平坦部と前記内周面との間隔の16%以下である」のに対して、引用発明2では、そのような構成がない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点3について検討すると、引用文献1及び引用文献3のいずれにも、「傾斜部」の「径方向の寸法」が、平坦部と内周面との間隔の16%以下である旨の記載はなく、それを示唆する記載もない。 してみると、相違点2について検討するまでもなく、引用発明2を、上記相違点3に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえないから、引用発明2及び引用文献1、3に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。 (2)本件発明6について 本件発明6も、本件発明1の「前記傾斜部の前記径方向の寸法は、前記平坦部と前記内周面との間隔の16%以下である」と同一の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明2及び引用文献1、3に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。 2-3 小括 よって、本件発明1、6は、引用発明1及び引用文献2、3に記載された技術的事項、又は引用発明2及び引用文献1、3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明とはいえない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、当審が通知した取消理由並びに特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項5、7に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項5、7に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなった。よって、請求項5、7に係る特許異議の申立ては不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700848

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