特許異議申立
2024-700807
搬送ロボットおよび搬送システム
- 審判番号
- 2024-700807
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-094537
- 登録番号
- 7441728
- 請求日
- 2024年08月26日
- 審決日
- 2025年03月24日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社安川電機
- 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 【異議申立人】小沼 正毅
- 審判長/審判官
- 審判長 小宮 慎司
- 審判官 緑川 隆
- 審判官 河本 充雄
- 分類
- P1651.113-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7441728号発明「搬送ロボットおよび搬送システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7441728号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。
特許第7441728号の請求項1~11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7441728号の請求項1~11に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和2年5月29日の出願であって、令和6年2月21日にその特許権の設定登録がされ、同年3月1日に特許掲載公報が発行された。
その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 8月26日 :特許異議申立人 小沼正毅(以下、「申立人」という。)による請求項1~11に係る特許に対する特許異議の申立て
同年11月13日付け:取消理由通知
令和7年 1月 9日 :特許権者による意見書、訂正請求書の提出
同年 2月19日 :申立人による意見書の提出
第2 本件訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
令和7年1月9日にされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)による訂正の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示すため当審が付与した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記第1フランジに脱着可能であって前記取付対象に固定可能な第2フランジと」と記載されているのを、
「前記第1フランジに脱着可能であって前記取付対象の違いに適合するように形状が選択され当該取付対象に固定可能な第2フランジと」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~11も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記搬送室の室内で前記基板を搬送すること
を特徴とする請求項1に記載の搬送ロボット」と記載されているのを、
「前記搬送室の室内で前記基板を搬送し、
前記切り欠きは、
断面の側面視において高さ方向の長さが横方向の長さよりも小さいこと
を特徴とする請求項1に記載の搬送ロボット」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3~11も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「前記第2フランジは、
前記貫通孔よりも大きいこと」と記載されているのを、
「前記第2フランジは、
前記貫通孔よりも大きく、上面が前記第1フランジの上面と面一となるように前記切り欠きに固定されること」に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4~11も同様に訂正する。)。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、「取付対象に固定可能な第2フランジ」について、「前記取付対象の違いに適合するように形状が選択され」ることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の【0017】、【0018】の記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1による訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、「第1フランジ」の「外周側の上面」に「設けられて」いる「切り欠き」について、「断面の側面視において高さ方向の長さが横方向の長さよりも小さいこと」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2による訂正は、本件明細書等の【図4A】、【図5A】~【図7A】の記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項2による訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、「第2フランジ」について、「上面が前記第1フランジの上面と面一となるように前記切り欠きに固定されること」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の【0019】、【図1】の記載に基づくものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項3による訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 まとめ
本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正を認める。
第3 本件発明
本件訂正の請求により訂正された請求項1~11の特許に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明11」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
基板を搬送するアーム部と、
前記アーム部を支持する本体部と、
前記本体部を取付対象に固定するフランジ部と
を備え、
前記フランジ部は、
前記本体部に固定される第1フランジと、
前記第1フランジに脱着可能であって前記取付対象の違いに適合するように形状が選択され当該取付対象に固定可能な第2フランジと
を備え、
前記第1フランジは、
外周側の上面に切り欠きが設けられており、
前記第2フランジは、
高さ方向の少なくとも一部が前記切り欠きに固定されること
を特徴とする搬送ロボット。
【請求項2】
前記取付対象は、
減圧雰囲気の搬送室における外壁であり、
前記フランジ部は、
前記第1フランジと前記第2フランジとの間に設けられる環状の第1シール部材と、
前記第2フランジと前記外壁との間に設けられる環状の第2シール部材と
を備え、
前記本体部は、
前記外壁の貫通孔から前記搬送室の室外へ突出し、
前記アーム部は、
前記搬送室の室内で前記基板を搬送し、
前記切り欠きは、
断面の側面視において高さ方向の長さが横方向の長さよりも小さいこと
を特徴とする請求項1に記載の搬送ロボット。
【請求項3】
前記第1フランジおよび前記本体部は、
前記貫通孔よりも小さく、
前記第2フランジは、
前記貫通孔よりも大きく、上面が前記第1フランジの上面と面一となるように前記切り欠きに固定されること
を特徴とする請求項2に記載の搬送ロボット。
【請求項4】
前記第1シール部材の環状内側にあって、前記第2フランジ側から前記第2フランジを前記第1フランジへ締結する第1締結具
を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の搬送ロボット。
【請求項5】
前記第1シール部材の環状外側にあって、前記第1フランジ側から前記第2フランジを前記第1フランジへ締結する第1締結具
を備えることを特徴とする請求項2または3に記載の搬送ロボット。
【請求項6】
前記第2シール部材の環状内側にあって、前記外壁側から前記第2フランジを前記外壁へ締結する第2締結具
を備えることを特徴とする請求項2~5のいずれか一つに記載の搬送ロボット。
【請求項7】
前記第2シール部材の環状外側にあって、前記第2フランジ側から前記第2フランジを前記外壁へ締結する第2締結具
を備えることを特徴とする請求項2~5のいずれか一つに記載の搬送ロボット。
【請求項8】
前記第1シール部材および前記第2シール部材は、
前記第1フランジおよび前記第2フランジの少なくとも一方に設けられる溝部に固定されること
を特徴とする請求項2~7のいずれか一つに記載の搬送ロボット。
【請求項9】
前記取付対象は、
前記外壁の1つである床壁であり、
前記第1フランジは、
上面に前記第1シール部材を固定する前記溝部を有し、
前記第2フランジは、
上面に前記第2シール部材を固定する前記溝部を有すること
を特徴とする請求項8に記載の搬送ロボット。
【請求項10】
前記第1シール部材および前記第2シール部材の少なくとも一方は、
Oリング形状のフッ素ゴムであること
を特徴とする請求項2~9のいずれか一つに記載の搬送ロボット。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一つに記載の搬送ロボットと、
減圧雰囲気の搬送室と
を備えることを特徴とする搬送システム。」
第4 申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証~甲第5号証(以下、「甲1」~「甲5」という。)を提出し、以下の理由により、請求項1~11に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
1 申立理由1(新規性)
請求項1~3、11に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3、11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2 申立理由2(進歩性)
請求項1~3、11に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、請求項4~10に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
[証拠方法]
甲1:特開2004-106068号公報
甲2:特開2002-28469号公報
甲3:国際公開第2019/189883号
甲4:特開平11-354603号公報
甲5:特開2013-98276号公報
第5 取消理由の概要
当審において、令和6年11月13日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。なお、取消理由は、上記第4における申立理由を全て採用した。
1 取消理由1(新規性)
請求項1~3、11に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3、11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2 取消理由2(進歩性)
請求項1~3、11に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、請求項4~10に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第6 甲号証の記載及び甲号証に記載された発明
1 甲1(特開2004-106068号)
(1)甲1には以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空チャンバーに取付けられ、基板搬送用ロボットなどの駆動装置等として用いられる真空用モータに関するものである。」
「【0005】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、本発明は、真空チャンバーに設けたモータ取付穴の周縁に取付けられて使用される真空用モータにおいて、モータ本体の負荷側端部に、前記モータ取付穴にOリングを挟むようにして固定される取付フランジを有する減速機本体を取り付け、前記取付フランジに、樹脂で構成され、減速機の出力軸に接触して、減速機本体およびモータ本体の内部空間と、真空チャンバーの内部空間とを仕切る真空シールを固定するようにしたものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図に基づいて説明する。
図1は本発明の実施例を示す真空用モータの側断面図で、真空チャンバーに取り付けた状態を示している。
図において、1は真空チャンバー、2は前記真空チャンバーの床部、3は前記床部2に設けたモータ取付穴、4は真空用モータで、検出器5を有するモータ本体6と、前記モータ本体6の先端部に取り付けた減速機本体7とからなっている。
前記減速機7本体は、負荷側に取付フランジ8を有している。前記取付フランジ8は、軸方向の両端部付近にそれぞれ真空シール9a,9bを固定し、かつ中央部に前記真空シール9a,9b間の空気を真空引きする中間引きポート10を設けたシール保持部8aと、前記シール保持部8aに取付けられ、あるいは一体に形成されて、前記真空チャンバー1のモータ取付穴3の周縁3aに取付けられるリング状のチャンバー取付部8bとを有している。
前記真空シール9a,9bは、樹脂で構成され内周面が減速機本体7の出力軸7aに接触しており、モータ本体6と減速機本体7の内部空間と真空チャンバー1の内部空間とを仕切っている。11は前記シール保持部8aに取付けたシールカバーである。
前記取付フランジ8のチャンバー取付部8bは、前記真空チャンバー1のモータ取付穴3の周縁3aに、図示しないボルト等によって締付け固定される。前記チャンバー取付部8bをモータ取付穴3の周縁3aに締付けるときは、前記周縁3aに設けたリング状の溝3bにOリング12を挿入して、周縁3aとチャンバー取付部8b間に隙間が生じないようにしている。
・・・」
「【図1】
[図:0001423519000001.jpg]
」
(2)甲1に記載された発明
ア 上記(1)の【0001】には、「真空チャンバーに取付けられ、基板搬送用ロボットなどの駆動装置等として用いられる真空用モータ」と記載されているから、甲1には、真空チャンバーに取付けられ、駆動装置等として用いられる真空モータとを有する基板搬送用ロボット、及び、上記基板搬送用ロボットと、真空チャンバーとを備えるシステムが記載されているといえる。
イ 上記(1)の【0006】には、「4は真空用モータで、検出器5を有するモータ本体6と、前記モータ本体6の先端部に取り付けた減速機本体7とからなっている」と記載されているから、真空用モータ4は、検出器5を有するモータ本体6と、前記モータ本体6の先端部に取り付けた減速機本体7とからなるものといえる。
また、同【0006】には、「2は前記真空チャンバーの床部、3は前記床部2に設けたモータ取付穴」、及び、「減速機7本体は、負荷側に取付フランジ8を有し」、「取付フランジ8は、軸方向の両端部付近にそれぞれ真空シール9a,9bを固定し、かつ中央部に前記真空シール9a,9b間の空気を真空引きする中間引きポート10を設けたシール保持部8aと、前記シール保持部8aに取付けられ、あるいは一体に形成されて、前記真空チャンバー1のモータ取付穴3の周縁3aに取付けられるリング状のチャンバー取付部8bとを有し」(当審注:上記「減速機7本体」は「減速機本体7」の誤記である。)と記載されているから、減速機本体7は、負荷側に取付フランジ8を有し、取付フランジ8は、軸方向の両端部付近にそれぞれ真空シール9a,9bを固定し、かつ中央部に前記真空シール9a,9b間の空気を真空引きする中間引きポート10を設けたシール保持部8aと、前記シール保持部8aに取付けられ、前記真空チャンバー1の床部2に設けたモータ取付穴3の周縁3aに取付けられるリング状のチャンバー取付部8bとを有しているといえる。
さらに、同【0006】には、「前記取付フランジ8のチャンバー取付部8bは、前記真空チャンバー1のモータ取付穴3の周縁3aに、図示しないボルト等によって締付け固定される。前記チャンバー取付部8bをモータ取付穴3の周縁3aに締付けるときは、前記周縁3aに設けたリング状の溝3bにOリング12を挿入して、周縁3aとチャンバー取付部8b間に隙間が生じないようにしている」と記載されている。
ウ 上記(1)の【図1】から、周縁3aは、上面に溝3bを有していること、シール保持部8aは、外周側の上面に切り欠きが設けられており、チャンバー取付部8bは、高さ方向の少なくとも一部が切り欠きに固定されていること、シール保持部8a及び真空用モータ4は、モータ取付穴3よりも小さく、チャンバー取付部8bは、モータ取付穴3よりも大きいこと、及び、真空用モータ4は、床部2のモータ取付穴3から真空チャンバー1の外へ突出していることが見て取れる。
エ 上記ア~ウによれば、甲1には、以下の二つの発明が記載されている。
「真空チャンバーに取付けられ駆動装置等として用いられる真空モータとを有する基板搬送用ロボットであって、
真空用モータ4は、検出器5を有するモータ本体6と、前記モータ本体6の先端部に取り付けた減速機本体7とからなり、
減速機本体7は、負荷側に取付フランジ8を有し、取付フランジ8は、軸方向の両端部付近にそれぞれ真空シール9a,9bを固定し、かつ中央部に前記真空シール9a,9b間の空気を真空引きする中間引きポート10を設けたシール保持部8aと、前記シール保持部8aに取付けられ、前記真空チャンバー1の床部2に設けたモータ取付穴3の周縁3aに取付けられるリング状のチャンバー取付部8bとを有し、
取付フランジ8のチャンバー取付部8bは、真空チャンバー1のモータ取付穴3の周縁3aに、ボルト等によって締付け固定され、チャンバー取付部8bをモータ取付穴3の周縁3aに締付けるときは、前記周縁3aの上面に設けたリング状の溝3bにOリング12を挿入して、周縁3aとチャンバー取付部8b間に隙間が生じないようにしており、
シール保持部8aは、外周側の上面に切り欠きが設けられており、チャンバー取付部8bは、高さ方向の少なくとも一部が切り欠きに固定され、
シール保持部8a及び真空用モータ4は、モータ取付穴3よりも小さく、チャンバー取付部8bは、モータ取付穴3よりも大きく、
真空用モータ4は、床部2のモータ取付穴3から真空チャンバー1の外へ突出している、
基板搬送用ロボット。」(以下、「甲1発明A」という。)
「甲1発明Aの基板搬送ロボットと真空チャンバーとを備えるシステム。」(以下、「甲1発明B」という。)
2 甲2(特開2002-28469号)
甲2には以下の記載がある。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、真空槽に取り付けるべき装置構成部として特に搬送ロボットを着脱可能に構成した真空装置に関する。」
(2)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような従来の真空装置においては、搬送ロボットをメインテナンスのため定期的に真空槽から取り外す必要があるが、その際に真空槽の設置状況によっては、真空槽の上側又は下側に搬送ロボットを移動させるための空間を確保できないことがある。
【0005】そのため、上側から固定した搬送ロボットを引き上げる空間の大きさが十分にない場合、真空槽自体を広い空間のある場所に移動しなければならず、そのような取り外し作業に手間がかかるという問題があった。また、下側から固定した搬送ロボットを取り外す場合においても真空槽の下側に設置された種々の障害物を除去しなければならず、上記同様取り外し作業に手間がかかるという問題があった。
【0006】本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、真空槽自体の設置状況によらず搬送ロボットの取り外し作業を容易に行うことが可能な真空装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するためになされた請求項1記載の発明は、開閉可能な蓋体と、所定の大きさの取付孔とを有する真空槽と、真空槽に部分的に取り付けるために構成された装置であって、真空槽内に配置されるべき第1の構成部と、第1の構成部に連結され、真空槽外に配置されるべき第2の構成部と、第1の構成部と第2の構成部との連結部に真空槽の取付孔より小さい大きさで設けられた取付部とを有する装置構成部と、真空槽の取付孔の近傍の所定の部位に真空槽の一方の側から係合可能な第1の係合部と、装置構成部の取付部を真空槽の他方の側から支持しかつ当該取付部と係合可能な第2の係合部とを有する取付アダプタとを備えたことを特徴とする真空装置である。
【0008】請求項1記載の発明の場合、装置構成部の取付部を第2の係合部で真空槽の他方の側(例えば下側)から支持した取付アダプタを、第1の係合部で真空槽にその上側から係合するようにしたことから、取付アダプタを取り付けたままの装置構成部を真空槽の上側から抜くことができるとともに、装置構成部のみを真空槽の下側から抜くことができる。
【0009】その結果、装置構成部を真空槽の上側又は下側のいずれからでも取り外せることができるため、真空槽自体の設置状況によらず装置構成部の取り外し作業を容易に行うことができる。」
(3)「【0023】一方、真空槽2の底部には、搬送ロボット10の連結フランジ部16の外形に対応してそれより所定量だけ大きい取付孔21が形成されている。この取付孔21の内周部分には、図2に示すように、上段部分22と下段部分23とからなる段差状の受部24が形成されている。さらに、この受部24の下段部分23は、上段部分22より取付孔21側に張り出して、取付孔21内に配置される搬送ロボット10の連結フランジ部16に対して所定の間隔をおくように形成されている。そして、図1に示すように、本実施の形態の場合、以下に説明する取付アダプタ30によって搬送ロボット10が真空槽2に取り付けられるようになっている。」
3 甲3(国際公開第2019/189883号)
甲3には以下の記載がある。
(1)「技術分野
[0001] 本発明は、搬送ロボットが設置される内部空間を備えるチャンバ構造に関し、特に、半導体基板などの基板製造におけるイオン注入やエッチング等のプロセス装置に接続されるチャンバ構造に関する。」
(2)「[0004] 搬送ロボットを搬送チャンバ内に新規設置する場合やメンテナンス等のために搬送チャンバ内の搬送ロボットを取り外す場合を考える。例えば、搬送チャンバ内の搬送ロボットを取り外す場合であれば、まず、搬送チャンバ内において搬送ロボットがベースユニットとベースユニットの上部に設けられるアームユニットとに上下に分割される。その後、分割された上側部分であるアームユニットが搬送チャンバの上側から取り出され、分割された下側部分であるベースユニットが搬送チャンバの下側から取り外される。
また、搬送チャンバ内に搬送ロボットを設置する場合は、上述した作業を逆の手順で行う必要がある。
[0005] ところが、真空状態で使用される搬送チャンバ内は、所望の真空度に達するまでの時間をできる限り短くするために、搬送ロボットがギリギリに収まる程度の必要最小限の空間しかないことが一般的である。したがって、搬送ロボットが設置される搬送チャンバ内における搬送ロボット着脱時の作業は、作業者が無理のない姿勢で容易に行えるものではない。言い換えると、着脱時の作業、特に搬送ロボットの分割作業は、作業者の手がなかなか回り込まないような狭いスペースで行われるため、作業者に窮屈な姿勢を強いるものである。
[0006] また、従来の装置では、分割された搬送ロボットの上側のアームユニットをクレーンなどを用いて搬送チャンバの上方に確保した作業空間に取り出しており、このような作業を行う作業空間が搬送チャンバの上方に必要である(引用文献1の図2参照)。
ところが、搬送チャンバの上方空間は、製品の高品質化などの目的で各種の機器や装置を設置する空間として使用される傾向にあり、十分な上方空間を確保することが困難な状況にあり、作業性の更なる悪化を招いている。
このように、搬送ロボットを搬送チャンバに設置したり、取り外したりする作業性や、搬送ロボットのメンテナンスの作業性が徐々に悪化しているという問題があった。
[0007] 本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、搬送ロボットが設置される搬送チャンバについて、搬送ロボットの設置や取り外しなどのメンテナンス作業性に優れたチャンバ構造を提供することを課題とする。
[0008] 本発明は、搬送チャンバの内部空間である搬送室の底部に設けた開口部に、環状のロボットベース部材およびロボットフランジ部材を介して搬送ロボットを取り付けるチャンバ構造であって、前記搬送チャンバにおける前記開口部の下側に前記ロボットベース部材が設けられ、前記搬送ロボットは、ベースユニットと、該ベースユニットの上部に設けられるアームユニットとを有し、前記ベースユニットの上側に、前記ロボットベース部材の開口孔と同形状の前記ロボットフランジ部材が設けられ、前記アームユニットは、前記開口孔に挿通自在であるとともに、前記ロボットフランジ部材は前記開口孔の周縁部に対して着脱自在に接続される、ことを特徴とするチャンバ構造である。」
(3)「[0015] 本発明に係るチャンバ構造は、搬送チャンバ内に搬送ロボットを設置したり搬送チャンバ内から搬送ロボットを取り外したりする際、搬送ロボットを上下に分割させることなくそのままの状態で、かつ、搬送チャンバの下側からのみのアクセスで、設置や取り外しを行うことができる。」
(4)「[0021] 図4に示されるように、搬送チャンバ1は、その底部13に開口部13aを備えている。
そして、底部13にはロボットベース部材20が取り付けられている。より具体的には、ロボットベース部材20は、搬送チャンバ1の底部13の開口部13aの下側に、開口部13aを取り囲むように配置されており、底部13の下面13bに固定される。・・・」
4 甲4(特開平11-354603号)
甲4には以下の記載がある。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は物体の搬送装置およびそれを用いた半導体製造装置に係わり、特に異種類の雰囲気条件の処理室を複数連結するための搬送室を備えた半導体製造装置に用いて好適な搬送装置に関する。」
(2)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】クレーン,リフトなどを用いて搬送装置を上部に引き抜いた後、半導体製造装置の外部まで搬送するメンテナンス方法では、クレーンの摺動部および搬送装置の駆動源の動力ケーブルなどが擦れ合い、重金属を含む塵埃が搬送室内を汚染する。また半導体製造装置は一般に個別毎に筐体で囲まれることから、半導体製造装置毎にクレーンなどが必要となり、さらに搬送装置の移動空間を確保する必要があることから、装置の大型化,複雑化,高額化の要因となっている。
【0006】また半導体ウエハは直径が12インチとなり、それに伴い搬送装置も従来と比較して大型化,大重量化が進んでいる。このような重量物を上部に引き抜く作業は複数の作業者を要するとともに落下,衝突等の危険性をも伴う。さらに再組み付け後は原点位置とアームの位置関係を拘束するものがないことから、再テイーチングを行う必要があった。この場合搬送室ばかりでなく処理室も大気にさらす必要があるなど、搬送装置のメンテナンス作業には多大な時間を必要としていた。
【0007】本発明は、キャリアを含むアーム部と駆動軸を原点の姿勢を保持、および再現可能な分離手段を有する搬送装置およびそれを搭載した半導体製造装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】搬送装置は円板と重力方向上から必要に応じて気密シールを介して締結する。円板には、搬送装置の原点時の位相と同一または任意の原点位置から既知の位相に原点拘束ピンが挿入可能な穴を設ける。搬送室の円板取り付け面には、半導体製造装置としてスループットの面から最適な原点位置となる位相に円板に設けた穴と合致する穴を設ける。円板と搬送室は、この穴に原点拘束ピンを挿入した状態で、搬送室の円板取り付け面である搬送装置の外下面に重力方向下から必要に応じて気密シールを介して締結する。」
(3)「【0039】図4は本発明の別の実施例を示している。図4は、アーム型搬送装置において、アーム部12を駆動軸8a,8bから取り外した状態の搬送装置の縦断面図を示している。アーム部12の構成は上述してきた第1の実施例,第2の実施例と同様の構成を採っている。本実施例ではアーム型搬送装置を使用した実施例を示している。
・・・
【0041】円板23には搬送装置の原点の位相と同一位相に原点割り出しピン25挿入用の止まり穴3が開いている。搬送室1にも半導体製造装置の搬送原点位置に、円板23に設けた止まり穴3と合致する位置にピン挿入用の穴3を開ける。円板23に設けた止まり穴3に原点割り出しピン25を挿入し、円板23を搬送室1下部から搬送室1に設けたピン挿入用の穴3に原点割り出しピン25を挿入し、原点割り出しピン25を案内として駆動部22および搬送室1の相対位相を拘束しながらネジ10で締結することで、搬送装置と半導体製造装置の搬送原点位置を合致させることが可能である。」
(4)「【0048】
【発明の効果】原点位置を失うことなく、アーム部12と駆動部22を一括して分離可能な搬送装置を組み込んだ半導体製造装置は、リフト装置などの付加設備が不要となり、また従来要していた搬送装置の移動空間を必要としないため、効率的に空間を使用できることから、半導体製造装置の小型化,安価が実現できる。さらに大重量物の吊架作業がないことから、作業の安全性およびメンテナンス性が向上するとともに、作業時の搬送室1の塵埃などによる汚染が少なくなる。」
「【図4】
[図:0001423519000002.jpg]
」
5 甲5(特開2013-98276号)
甲5には以下の記載がある。
(1)「【0001】
本発明は、静電吸着装置を備える基板ホルダー及びこのような基板ホルダーを備えた真空処理装置に関する。」
(2)「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献4に開示された構造では、高温域の加熱処理を行うと熱が導電軸に伝わるため導電軸の熱膨張が避けられない。導電軸の熱膨張は導体配線との接合部分に強い負荷をかけることがある。熱膨張量が設計の許容量を超える場合には導体配線との接合部分にダメージを受けたり、導体配線が誘電体板から剥離したりするおそれがある。そのため、加熱温度の上限を定めるなどして使用温度域を制限していたが、使用できる温度域の拡大が望まれている。
【0010】
本発明の目的は、上述した問題点に鑑み、静電吸着装置を備える基板ホルダーから基板を脱離する操作において他の要素による物理的接触を伴わずに静電吸着板表面と基板の電荷を同時に除電が可能でありながら、使用できる温度帯を広げることができる基板ホルダー、及び半導体製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る基板ホルダーは、一端部が基板支持面に導通する接地部材と、接地部材の他端部に接続され、接地部材を接地電位に切替え可能な切替え部と、接地部材の一端部側を基板支持面に当接する方向に付勢する付勢手段と、接地部材の他端部が内側に配置されるとともに、付勢手段の付勢方向に伸縮する弾性隔壁部と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る基板ホルダーは、基板支持面に支持される基板を吸着するための電圧が印加される静電吸着板及び基板支持面に支持される基板と導通する導体配線を少なくとも備えるホルダー本体部と、ホルダー本体部を支持するホルダー支持部と、導体配線を接地状態に切替えることができる除電部と、を有する基板ホルダーであって、除電部は、
一端部が導体配線と当接する接地部材と、接地部材の他端部に接続され、接地部材を介して導体配線を接地状態とフローティング状態とに切替える切替え部と、接地部材を導体配線に当接する方向に付勢する付勢手段と、接地部材の他端部が内側に配置されるとともに、ホルダー側と接地部材側とを気密に接続し、付勢手段の付勢方向に伸縮する弾性隔壁部と、を備えることを特徴とする
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、静電吸着装置を備える基板ホルダーから基板を脱離する操作においてリフターピンなどによる物理的接触を伴わずに静電吸着板表面と基板の電荷を同時に除電が可能でありながら、広域温度帯における基板の脱離操作の信頼性を向上した基板ホルダー、及び、高い良品率と装置稼働率を実現する真空処理装置を提供することができる。」
第7 取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明Aとを対比する。
ア 甲1発明Aにおいて、「真空用モータ4は、検出器5を有するモータ本体6と、前記モータ本体6の先端部に取り付けた減速機本体7」とからなり、「減速機本体7は、負荷側に取付フランジ8を有し、取付フランジ8は、シール保持部8aと、前記シール保持部8aに取付けられ、前記真空チャンバー1の床部2に設けたモータ取付穴3の周縁3aに取付けられるリング状のチャンバー取付部8b」とを有しているから、「真空用モータ4」は、「真空チャンバー1の床部2」に「取付けフランジ8」によって取り付けられているといえる。
そうすると、甲1発明Aの「真空用モータ4」、「真空チャンバー1の床部2」、「取付フランジ8」は、それぞれ、本件発明1の「本体部」、「取付対象」、「フランジ部」に相当し、本件発明1と甲1発明Aとは、「前記本体部を取付対象に固定するフランジ部とを備え」ている点で共通する。
イ 甲1発明Aにおいて、「真空用モータ4」の「減速機本体7は、負荷側に取付フランジ8を有し、取付フランジ8は」、「シール保持部8a」と、「前記シール保持部8aに取付けられ、前記真空チャンバー1の床部2に設けたモータ取付穴3の周縁3aに取付けられるリング状のチャンバー取付部8b」とを有しているから、「取付フランジ8」は、「シール保持部8a」と、「リング状のチャンバー取付部8b」とを備え、「シール保持部8a」は、「真空用モータ4」に固定されているといえる。
また、引用発明において、「リング状のチャンバー取付部8b」は、「前記真空チャンバー1の床部2に設けたモータ取付穴3の周縁3aに取付けられ」、かつ、「真空チャンバー1のモータ取付穴3の周縁3aに、ボルト等によって締付け固定され」ているから、「リング状のチャンバー取付部8b」は、「真空チャンバー1の床部2」に固定可能であるといえる。
そうすると、甲1発明Aの「シール保持部8a」、「リング状のチャンバー取付部8b」は、それぞれ、本件発明1の「第1フランジ」、「第2フランジ」に相当し、本件発明1と甲1発明Aとは、「前記フランジ部は、前記本体部に固定される第1フランジと、前記第1フランジに脱着可能であって前記取付対象」「に固定可能な第2フランジとを備え」ている点で共通する。
ウ 本件発明1の「第1フランジ」と、甲1発明Aの「シール保持部8a」とは、「外周側の上面に切り欠きが設けられて」いる点で共通する。
また、本件発明1の「第2フランジ」と甲1発明Aの「リング状のチャンバー取付部8b」とは、「高さ方向の少なくとも一部が前記切り欠きに固定される」点で共通する。
エ 甲1発明Aの「基板搬送用ロボット」は、本件発明1の「搬送ロボット」に相当する。
オ 以上によれば、本件発明1と甲1発明Aとの一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「本体部と、
前記本体部を取付対象に固定するフランジ部と
を備え、
前記フランジ部は、
前記本体部に固定される第1フランジと、
前記第1フランジに脱着可能であって前記取付対象に固定可能な第2フランジとを備え、
前記第1フランジは、
外周側の上面に切り欠きが設けられており、
前記第2フランジは、
高さ方向の少なくとも一部が前記切り欠きに固定される
搬送ロボット。」
<相違点>
相違点1:本件発明1は、「本体部」が「基板を搬送するアーム部」を「支持する」のに対し、甲1発明Aは、「真空用モータ4」がそのような構成を備えているかどうか不明である点。
相違点2:「第2フランジ」について、本件発明1は、「前記取付対象の違いに適合するように形状が選択され」ているのに対し、甲1発明Aは、そのような構成を備えているかどうか不明である点。
(2)相違点についての判断
ア 新規性について
事案に鑑み、相違点2から検討する。
甲1には、「リング状のチャンバー取付部8b」について、「真空チャンバー1の床部2」の違いに適合するように形状が選択されることは、記載も示唆もされていないし、このことが、本件特許の出願日前において技術常識であったともいえない。
したがって、甲1発明Aは、相違点2に係る本件発明1の構成を備えているとはいえないから、相違点2は実質的な相違点である。
よって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明Aではない。
イ 進歩性について
(ア)甲2の【0001】、【0004】~【0009】(上記第6 2(1)、(2))には、真空槽に取り付けるべき装置構成部として特に搬送ロボットを着脱可能に構成した真空装置に関し(【0001】)、真空槽自体の設置状況によらず搬送ロボットの取り外し作業を容易に行うことが可能な真空装置を提供する(【0006】)との課題を解決するために、装置構成部の取付部を第2の係合部で真空槽の他方の側(例えば下側)から支持した取付アダプタを、第1の係合部で真空槽にその上側から係合するものであり、そのようにしたことから、取付アダプタを取り付けたままの装置構成部を真空槽の上側から抜くことができるとともに、装置構成部のみを真空槽の下側から抜くことができ(【0008】)、その結果、装置構成部を真空槽の上側又は下側のいずれからでも取り外せることができるため、真空槽自体の設置状況によらず装置構成部の取り外し作業を容易に行うことができる(【0009】)ことが記載されている。
しかし、甲2には、真空槽と取付アダプタについて、【0023】(上記第6 2(3))に「真空槽2の底部には、搬送ロボット10の連結フランジ部16の外形に対応してそれより所定量だけ大きい取付孔21が形成されている・・・取付アダプタ30によって搬送ロボット10が真空槽2に取り付けられるようになっている」としか記載されておらず、取付アダプタ30は、真空槽2の底部の違いに適合するように選択されるものではない。
したがって、甲2には、取付アダプタ30が、真空槽2の底部の違いに適合するように形状が選択されること、すなわち、相違点2に係る本件発明1の構成は、記載も示唆もされていない。
(イ)甲3の[0001]、[0004]~[0008]、[0015](上記第6 3(1)~(3))には、搬送ロボットが設置される内部空間を備えるチャンバ構造に関し、特に、半導体基板などの基板製造におけるイオン注入やエッチング等のプロセス装置に接続されるチャンバ構造に関し([0001])、搬送ロボットが設置される搬送チャンバについて、搬送ロボットの設置や取り外しなどのメンテナンス作業性に優れたチャンバ構造を提供することを課題とし([0007])、搬送チャンバの内部空間である搬送室の底部に設けた開口部に、環状のロボットベース部材およびロボットフランジ部材を介して搬送ロボットを取り付けるチャンバ構造において、前記搬送チャンバにおける前記開口部の下側に前記ロボットベース部材が設けられ、前記搬送ロボットは、ベースユニットと、該ベースユニットの上部に設けられるアームユニットとを有し、前記ベースユニットの上側に、前記ロボットベース部材の開口孔と同形状の前記ロボットフランジ部材が設けられ、前記アームユニットは、前記開口孔に挿通自在であるとともに、前記ロボットフランジ部材は前記開口孔の周縁部に対して着脱自在に接続される([0008])ようにすることで、搬送チャンバ内に搬送ロボットを設置したり搬送チャンバ内から搬送ロボットを取り外したりする際、搬送ロボットを上下に分割させることなくそのままの状態で、かつ、搬送チャンバの下側からのみのアクセスで、設置や取り外しを行うことができる([0015])ことが記載されている。
しかし、甲3には、搬送チャンバとロボットベース部材について、[0021](上記第6 3(4))に「搬送チャンバ1は、その底部13に開口部13aを備えている。
そして、底部13にはロボットベース部材20が取り付けられている。より具体的には、ロボットベース部材20は、搬送チャンバ1の底部13の開口部13aの下側に、開口部13aを取り囲むように配置されており、底部13の下面13bに固定される。」としか記載されておらず、ロボットベース部材が、搬送チャンバの底部13の違いに適合するように形状が選択されること、すなわち、相違点2に係る本件発明1の構成は、記載も示唆もされていない。
(ウ)甲4の【0001】、【0005】~【0008】、【0048】(上記第6 4(1)、(2)、(4))には、物体の搬送装置およびそれを用いた半導体製造装置に係わり、特に異種類の雰囲気条件の処理室を複数連結するための搬送室を備えた半導体製造装置に用いて好適な搬送装置に関し(【0001】)、キャリアを含むアーム部と駆動軸を原点の姿勢を保持、および再現可能な分離手段を有する搬送装置およびそれを搭載した半導体製造装置を提供する(【0007】)との課題を解決するために、搬送装置は円板と重力方向上から必要に応じて気密シールを介して締結し、円板には、搬送装置の原点時の位相と同一または任意の原点位置から既知の位相に原点拘束ピンが挿入可能な穴を設け、搬送室の円板取り付け面には、半導体製造装置としてスループットの面から最適な原点位置となる位相に円板に設けた穴と合致する穴を設け、円板と搬送室は、この穴に原点拘束ピンを挿入した状態で、搬送室の円板取り付け面である搬送装置の外下面に重力方向下から必要に応じて気密シールを介して締結する(【0008】)ことにより、原点位置を失うことなく、アーム部と駆動部を一括して分離可能な搬送装置を組み込んだ半導体製造装置は、リフト装置などの付加設備が不要となり、また従来要していた搬送装置の移動空間を必要としないため、効率的に空間を使用できることから、半導体製造装置の小型化,安価が実現でき、さらに大重量物の吊架作業がないことから、作業の安全性およびメンテナンス性が向上するとともに、作業時の搬送室の塵埃などによる汚染が少なくなる(【0048】)ことが記載されている。
しかし、甲4には、搬送室と円板について、【0041】(上記第6 4(3))に「円板23には搬送装置の原点の位相と同一位相に原点割り出しピン25挿入用の止まり穴3が開いている。搬送室1にも半導体製造装置の搬送原点位置に、円板23に設けた止まり穴3と合致する位置にピン挿入用の穴3を開ける。円板23に設けた止まり穴3に原点割り出しピン25を挿入し、円板23を搬送室1下部から搬送室1に設けたピン挿入用の穴3に原点割り出しピン25を挿入し、原点割り出しピン25を案内として駆動部22および搬送室1の相対位相を拘束しながらネジ10で締結することで、搬送装置と半導体製造装置の搬送原点位置を合致させることが可能である。」と記載されているものの、円板23が、搬送室1の床部の違いに適合するように形状が選択されること、すなわち、相違点2に係る本件発明1の構成は、記載も示唆もされていない。
(エ)甲5の【0001】、【0009】~【0012】(上記第6 5(1)、(2))には、静電吸着装置を備える基板ホルダー及びこのような基板ホルダーを備えた真空処理装置に関し(【0001】)、静電吸着装置を備える基板ホルダーから基板を脱離する操作において他の要素による物理的接触を伴わずに静電吸着板表面と基板の電荷を同時に除電が可能でありながら、使用できる温度帯を広げることができる基板ホルダー、及び半導体製造装置を提供する(【0010】)との課題を解決するために、基板ホルダーは、一端部が基板支持面に導通する接地部材と、接地部材の他端部に接続され、接地部材を接地電位に切替え可能な切替え部と、接地部材の一端部側を基板支持面に当接する方向に付勢する付勢手段と、接地部材の他端部が内側に配置されるとともに、付勢手段の付勢方向に伸縮する弾性隔壁部と、を備える(【0011】)ようにすることで、静電吸着装置を備える基板ホルダーから基板を脱離する操作においてリフターピンなどによる物理的接触を伴わずに静電吸着板表面と基板の電荷を同時に除電が可能でありながら、広域温度帯における基板の脱離操作の信頼性を向上した基板ホルダーを提供することができる(【0012】)ことが記載されている。
しかし、甲5には、相違点2に係る本件発明1の構成である「第2フランジ」が、「前記取付対象の違いに適合するように形状が選択され」ることは、記載も示唆もされていない。
(オ)以上によれば、甲2~甲5のいずれにも、相違点2に本件発明1の構成である「第2フランジ」が、「前記取付対象の違いに適合するように形状が選択され」ることは、記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明Aにおいて、甲2~甲5の記載を参酌して、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明A及び甲2~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、令和7年2月19日提出の意見書の3ページ4~10行において、「本件発明1で採用されている「分割式フランジ」に関して、搬送ロボットは第2フランジを介して取付対象に「固定」される以上、取付対象の形状(特に取付部周辺の形状)の違いに合わせて第2フランジの形状を適宜選択し、様々な形状の取付対象に「固定可能」とすることは自明であって、これは、フランジによる部材間の接合を行う技術分野一般において広く活用されている周知・慣用技術である「分割式フランジ」(甲1発明~甲4発明の「分割式フランジ」参照)に当然に含まれる構成に過ぎない。」と主張している。
しかし、上記イ(オ)で検討したとおり、甲2~甲5のいずれにも、相違点2に本件発明1の構成である「第2フランジ」が、「前記取付対象の違いに適合するように形状が選択され」ることは、記載も示唆もされていない。
また、「取付対象の形状(特に取付部周辺の形状)」に「違い」があることは、甲2~甲5のいずれにも記載されていないから、「取付対象の形状(特に取付部周辺の形状)の違いに合わせて第2フランジの形状を適宜選択し、様々な形状の取付対象に「固定可能」とすることは自明」であるはいえない。
したがって、「取付対象の形状(特に取付部周辺の形状)の違いに合わせて第2フランジの形状を適宜選択し、様々な形状の取付対象に「固定可能」とすること」が、「フランジによる部材間の接合を行う技術分野一般において広く活用されている周知・慣用技術である「分割式フランジ」(甲1発明~甲4発明の「分割式フランジ」参照)に当然に含まれる構成に過ぎない。」とはいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
エ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明Aではないし、甲1発明A及び甲2~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2~10について
本件発明2~10は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~10は、甲1発明ではないし、本件発明2~10に係る発明は、甲1発明A及び甲2~甲5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
3 本件発明11について
本件発明11は、本件発明1の全ての構成を有するものであり、また、甲1発明Bは、甲1発明Aの全ての構成を有するものであるから、本件発明1と甲1発明Bとは、「第2フランジ」について、本件発明11は、「前記取付対象の違いに適合するように形状が選択され」ているのに対し、甲1発明Bは、そのような構成を備えているかどうか不明である点(以下、「相違点3」という。)で、少なくとも相違する。
そして、相違点2に係る本件発明1の構成と、相違点3に係る本件発明11の構成とは、同じ構成であるから、上記1(1)ア、イで検討したのと同様の理由により、相違点3は実質的な相違点であり、本件発明11は、甲1発明Bではなく、また、甲1発明B及び甲2~甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 まとめ
上記1~3で検討したとおりであるから、請求項1~11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
また、請求項1~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
したがって、取消理由1及び取消理由2は、いずれも理由がない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700807