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特許異議申立

2024-700743

非加熱食品の変色を抑制するための組成物及び変色が抑制された食品の製造方法

審判番号
2024-700743
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-107492
登録番号
7433781
請求日
2024年08月07日
審決日
2025年11月12日
公報発行日
2026年02月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】Bフードサイエンス株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人佐川国際特許商標事務所
  • 【異議申立人】太田 有紀
審判長/審判官
  • 審判長 松田 成正
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 壷内 信吾
分類
P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7433781号発明「非加熱食品の変色を抑制するための組成物及び変色が抑制された食品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7433781号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1及び3〕並びに〔2及び4〕について訂正することを認める。 特許第7433781号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7433781号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、令和1年6月7日を出願日とする出願であって、令和6年2月9日にその特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、同年同月20日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年8月7日に特許異議申立人 太田 有紀(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし3)がされ、同年9月30日付けで取消理由が通知され、同年11月28日に特許権者 Bフードサイエンス株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年12月19日付けで手続補正指令(方式)が通知され、令和7年1月21日に特許権者から手続補正書(方式)が提出され、同年2月6日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年3月10日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年4月3日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年6月6日に特許権者から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年8月13日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年9月10日に特許権者から意見書及び手続補正書が提出されたものである。 なお、令和6年11月28日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 また、すでに特許異議申立人に意見書の提出の機会が与えられており、下記第2 1のとおり、令和7年9月10日提出の手続補正書により補正された同年6月6日の訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、下記第6及び7のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断し、特許法第120条の5第5項ただし書に規定された特別の事情があるときといえるから、特許異議申立人に再度の意見書の提出の機会を与えていない。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 令和7年8月13日付けで通知された訂正拒絶理由は、同年6月6日提出の訂正請求書の訂正事項4による請求項5及び6についての訂正が特許法第120条の5第2項ただし書第1ないし4号のいずれを目的とするものでもないので、訂正事項4による請求項5及び6についての訂正は認められず、請求項5及び6についての訂正と一体的に判断される請求項1ないし4についての訂正も認められないというものであるが、同年9月10日提出の手続補正書により上記訂正請求書の訂正事項4は削除されたので、上記訂正拒絶理由は解消した。 そうすると、令和7年9月10日提出の手続補正書により補正された同年6月6日提出の訂正請求書(以下、「訂正請求書」という。)でされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「下記の糖組成の還元水飴;単糖が1~50質量%、二糖が6~75質量%、三糖が7~25質量%、四糖が1~13質量%、五糖以上が1~81質量%、又はマルチトールからなる、前記組成物」と記載されているのを、「下記の糖組成の還元水飴;単糖が1~50質量%、二糖が6~75質量%、三糖が7~25質量%、四糖が1~13質量%、五糖以上が1~81質量%(ただし、単糖が10質量%、二糖が13質量%、三糖が13質量%、四糖が7質量%、五糖以上が57質量%の糖組成の還元水飴を除く)からなる、前記組成物」に訂正する。併せて請求項1の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記還元水飴は、下記の糖組成の高糖化還元水飴;単糖が40~50質量%、二糖が40~50質量%、三糖が8~13質量%、四糖が1~5質量%、五糖以上が1~5質量%である、ことを特徴とする請求項1に記載の組成物」と記載されているのを、「果物、野菜及び食肉からなる群から選択される非加熱食品の変色を抑制するための組成物であって、下記の糖組成の高糖化還元水飴;単糖が40~50質量%、二糖が40~50質量%、三糖が8~13質量%、四糖が1~5質量%、五糖以上が1~5質量%からなる、前記組成物」に訂正する。併せて請求項2の記載を引用する新たに追加された請求項4も同様に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に記載の組成物を」と記載されているのを、「請求項1に記載の組成物を」に訂正するとともに、新たに、請求項4として「請求項2に記載の組成物を、果物、野菜及び食肉からなる群から選択される非加熱食品に接触させる工程を含む、変色が抑制された食品の製造方法。」を追加する。 2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)請求項1についての訂正について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、「単糖が10質量%、二糖が13質量%、三糖が13質量%、四糖が7質量%、五糖以上が57質量%の糖組成の還元水飴」「からなる」「組成物」を除くとともに、「マルチトールからなる」「組成物」を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)請求項2についての訂正について 訂正事項2による請求項2についての訂正は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用していたのを、請求項1の記載を引用しない独立形式に書き下すとともに、「マルチトールからなる」「組成物」を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、訂正事項2による請求項2についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)請求項3についての訂正について 訂正事項1による請求項3についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項3による請求項3についての訂正は、訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用していたのを請求項1のみを引用するようにして訂正後の請求項3とするものであるから、「多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減」又は「n項引用している1の請求項をn―1以下の請求項に変更」するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1及び3による請求項3についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)請求項4についての訂正について 訂正事項2による請求項4についての訂正は、請求項2についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 訂正事項3による請求項4についての訂正は、訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用していたのを請求項2のみを引用するようにして訂正後の請求項4とするものであるから、「多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減」又は「n項引用している1の請求項をn―1以下の請求項に変更」するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2及び3による請求項4についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 むすび 以上のとおり、訂正事項1ないし3による請求項1ないし4についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1又は4号に掲げる事項を目的とするものである。 また、訂正事項1ないし3による請求項1ないし4についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 なお、訂正前の請求項1ないし3は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項1ないし3による請求項1ないし4についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし3に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 さらに、特許権者から、訂正後の請求項2及び4について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがされている。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1及び3〕並びに〔2及び4〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 果物、野菜及び食肉からなる群から選択される非加熱食品の変色を抑制するための組成物であって、下記の糖組成の還元水飴; 単糖が1~50質量%、 二糖が6~75質量%、 三糖が7~25質量%、 四糖が1~13質量%、 五糖以上が1~81質量% (ただし、単糖が10質量%、二糖が13質量%、三糖が13質量%、四糖が7質量%、五糖以上が57質量%の糖組成の還元水飴を除く)からなる、前記組成物。 【請求項2】 果物、野菜及び食肉からなる群から選択される非加熱食品の変色を抑制するための組成物であって、下記の糖組成の高糖化還元水飴; 単糖が40~50質量%、 二糖が40~50質量%、 三糖が8~13質量%、 四糖が1~5質量%、 五糖以上が1~5質量% からなる、前記組成物。 【請求項3】 請求項1に記載の組成物を、果物、野菜及び食肉からなる群から選択される非加熱食品に接触させる工程を含む、変色が抑制された食品の製造方法。 【請求項4】 請求項2に記載の組成物を、果物、野菜及び食肉からなる群から選択される非加熱食品に接触させる工程を含む、変色が抑制された食品の製造方法。」 第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要等 令和6年8月7日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1及び3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし3は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(甲第4号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1及び3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし3は、甲第4号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 証拠方法 甲第1号証:特開平7-289163号公報 甲第2号証:特開2004-89119号公報 甲第3号証:特開平7-123994号公報 甲第4号証:マービーのご紹介、H+Bライフサイエンス、2017年1月28日に開催されたセミナーで配布された資料、2017年1月28日(配付日)、H+Bライフサイエンス 甲第5号証:日本食品工業学会誌 第36巻第1号、1989年1月、第89~90頁、1989年1月、日本食品工業学会 証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 第5 取消理由(決定の予告)の概要 令和7年4月3日付けで通知された取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要は次のとおりである。 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1及び3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び3に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 なお、該取消理由1は申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)のうちの請求項1及び3についての理由とおおむね同旨である。 第6 取消理由(決定の予告)についての当審の判断 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)と申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)とは、対象請求項が完全には一致しないだけで、同じ証拠(甲1)に基づく理由であるから、併せて検討する。 1 甲1及び2に記載された事項等 (1)甲1に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項 甲1には、「果物及び野菜の変色防止剤及び変色防止方法」に関しておおむね次の事項が記載されている。下線は当審で付したものと予め付されたものである。他の文献について同様。 ・「【特許請求の範囲】 【請求項1】 ポリフェノールオキシダーゼ活性阻害剤、及び可食性フィルムコーティング剤を含有することを特徴とする果物及び野菜の変色防止剤。」 ・「【0005】果物等を可食性フィルムコーティング剤で被覆処理することは一般に行われており、特許出願も少なからず存在する(特開昭48-26943号公報、特開昭50-64446号公報、特開昭56-131375 号公報、特開平3-272639号公報、特開平5-168401号公報など)。しかしながら、いずれの被覆処理も果物の乾燥防止や菌による二次汚染防止などを図るために行われるものであり、果物等の変色防止を図るために行われるものではない。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、賞味期間とされる数日間、果物や野菜中に存在するポリフェノールがポリフェノールオキシダーゼと酸素とにより最終的にメラニンになることに基づく果物や野菜の変色を防止する簡便実用的な製剤を提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明は、ポリフェノールオキシダーゼ活性阻害剤、及び可食性フィルムコーティング剤を含有することを特徴とする果物及び野菜の変色防止剤である。本発明者らは、ポリフェノールオキシダーゼ活性阻害剤と可食性フィルムコーティング剤とを組み合わせることにより、本発明の目的を達成することを見出した。」 ・「【0010】本発明に係る可食性フィルムコーティング剤としては、ポリデキストロース、澱粉分解物(デキストリンなど)、食物繊維(ダイエタリーファイバーなど)、糖アルコール(ラクチトール、D-ソルビトール、マルチトール、エリスリトールなど)、海藻抽出物や微生物が産生する多糖類、ゼラチンなど食品に使用しうる可食性フィルムコーティング剤であれば特に制限はないが、本発明の目的からして酸素遮断性の高いものほど好ましい。二種以上の可食性フィルムコーティング剤を併用することもできる。市販されているライテス(商品名、台糖ファイザー社製)、グリスターP(商品名、松谷化学工業社製)、NSD510(商品名、日本資糧工業社製)、エスイー30(商品名、日研化学社製)、アマルティーMR-100(商品名、東和化成工業社製)、プルランPF20(商品名、林原研究所製)、ゼラチンCP597(商品名、宮城化学工業社製)なども用いることができる。」 ・「【0014】上記含有成分は、水(水道水、精製水、蒸留水、リン酸緩衝液や酢酸緩衝液等の緩衝液など)やエタノール等の有機溶媒に溶解させて製造することができる。」 ・「【0015】本発明に係る変色防止剤は、皮付き又は剥皮若しくはカットされたバナナ、林檎、桃、梨、洋梨、アボカド等の果物やごぼう、ふき、なす、山芋、ジャガイモ、ビート、キャベツ等の野菜に使用することができる。本発明に係る変色防止剤は、剥皮又はカットされた上記果物や野菜においても充分に変色を防止することができる。 【0016】本発明に係る変色防止剤は、一般に皮付き又は剥皮若しくはカットされた上記果物や野菜を浸漬することにより、又は噴霧することにより用いることができる。」 ・「【0019】実施例 表1に掲げる種々の本発明変色防止剤(実1~実24)、及び表2に掲げる種々の比較製剤(比1~比19)を調製した。表中の数字はすべて重量%を表す。」 ・「【0021】 【表2】 [図:0001432034000001.jpg] 【0022】試験例1 剥皮バナナ バナナ(エナーノ種)の皮を剥き、それを本発明変色防止剤又は比較製剤に10秒間又は2分間浸漬し、その後風乾し、そしてシャーレに入れてテープにより密閉し、室温に保存し、当該バナナの変色進行度合いを肉眼で観察した。その結果を表3に示す。 【0023】 【表3】 [図:0001432034000002.jpg] 【0024】表中の符号は、-が変色せず、±が僅かに変色、+~+++ がコントロールを+++ とした時の変色進行度合いを意味する。」 ・「【0026】試験例2 剥皮山芋 山芋(長芋)の皮を剥きスライスしたものを、本発明変色防止剤又は比較製剤に10秒間又は2分間浸漬し、その後風乾し、そしてシャーレに入れてテープにより密閉し、室温に保存し、当該山芋の変色進行度合いを肉眼で観察した。その結果を表4に示す。 【0027】 【表4】 [図:0001432034000003.jpg] 【0028】表中の符号は、試験例1と同じである。」 ・「【0029】試験例3 剥皮ジャガイモ じゃがいもの皮を剥きスライスしたものを、本発明変色防止剤又は比較製剤に10秒間又は2分間浸漬し、その後風乾し、そしてシャーレに入れてテープにより密閉し、室温に保存し、当該ジャガイモの変色進行度合いを肉眼で観察した。その結果を表5に示す。 【0030】 【表5】 [図:0001432034000004.jpg] 【0031】表中の符号は、試験例1と同じである。」 ・「【0032】試験例4 剥皮林檎 林檎の皮を剥きスライスしたものを、本発明変色防止剤又は比較製剤に10秒間又は2分間浸漬し、その後風乾し、そしてシャーレに入れてテープにより密閉し、室温に保存し、当該林檎の変色進行度合いを肉眼で観察した。その結果を表6に示す。 【0033】 【表6】 [図:0001432034000005.jpg] 【0034】表中の符号は、試験例1と同じである。」 イ 甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を、特に【請求項1】、【0010】、【0015】、【0016】、【0021】の【表2】(比較製剤(比16))及び【0023】の【表3】(比較製剤(比16))に記載された事項に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1物発明」及び「甲1製法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1物発明> 「可食性フィルムコーティング剤に含有されるエスイー30(商品名、日研化学社製)である皮付き又は剥皮若しくはカットされたバナナ、林檎、桃、梨、洋梨、アボカド等の果物やごぼう、ふき、なす、山芋、ジャガイモ、ビート、キャベツ等の野菜の変色防止剤。」 <甲1製法発明> 「甲1物発明を、皮付き又は剥皮若しくはカットされたバナナ、林檎、桃、梨、洋梨、アボカド等の果物やごぼう、ふき、なす、山芋、ジャガイモ、ビート、キャベツ等の野菜に、浸漬又は噴霧により用いる食品の製造方法。」 (2)甲2に記載された事項 甲2には、「酢カドを低減した飲食物およびその製造方法」に関しておおむね次の事項が記載されている。 ・「【0020】 【実施例】 以下に本発明の一般的な方法について詳述する。以下の実施例、比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの試験例及び実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において糖質Aは糖組成が単糖類が4重量%、2糖類が15重量%、3糖類が17重量%、4糖類が10重量%、5糖類以上が54重量%で構成され還元処理されたもの(日研化成(株)製スイートNT)、糖質Bは糖組成が単糖類が5重量%、2糖類が49重量%、3糖類が19重量%、4糖類が3重量%、5糖類以上が24重量%で構成され還元処理されたもの(日研化成(株)製エスイー57)、糖質Cは単糖類が5重量%、2糖類が62重量%、3糖類が16重量%、4糖類が1重量%、5糖類以上が16重量%で構成され還元処理されたもの(日研化成(株)製エスイー20)、糖質Dは糖組成が単糖類が4重量%、2糖類が15重量%、3糖類が17重量%、4糖類が10重量%、5糖類以上が54重量%で構成され還元処理されていないもの、糖質Eは糖組成が単糖類が10重量%、2糖類が13重量%、3糖類が13重量%、4糖類が7重量%、5糖類以上が57重量%で構成され還元処理されたもの(日研化成(株)製エスイー30)、糖質Fは糖組成が単糖類が4重量%、2糖類が8重量%、3糖類が9重量%、4糖類が7重量%、5糖類以上が72重量%で構成され還元処理されたもの(日研化成(株)製エスイー100)、糖質Gは糖組成が単糖類が42重量%、2糖類が43重量%、3糖類が10重量%、4糖類が1重量%、5糖類以上が4重量%で構成され還元処理されたもの(日研化成(株)製エスイー600)を指す。また、糖質AからGは濃度が70重量%の糖液である。」 2 本件特許発明1について (1)対比 本件特許発明1と甲1物発明を対比する。 甲1物発明における「エスイー30(商品名、日研化学社製)」は、甲2に記載された事項によると、「糖組成が単糖類が10重量%、2糖類が13重量%、3糖類が13重量%、4糖類が7重量%、5糖類以上が57重量%で構成され還元処理されたもの」であるから、本件特許発明1における「下記の糖組成の還元水飴; 単糖が1~50質量%、 二糖が6~75質量%、 三糖が7~25質量%、 四糖が1~13質量%、 五糖以上が1~81質量% (ただし、単糖が10質量%、二糖が13質量%、三糖が13質量%、四糖が7質量%、五糖以上が57質量%の糖組成の還元水飴を除く)」と、「還元水飴」という限りにおいて一致する。 甲1物発明における「皮付き又は剥皮若しくはカットされたバナナ、林檎、桃、梨、洋梨、アボカド等の果物やごぼう、ふき、なす、山芋、ジャガイモ、ビート、キャベツ等の野菜」は本件特許発明1における「果物、野菜及び食肉からなる群から選択される非加熱食品」に相当する。 甲1物発明における「変色防止剤」は本件特許発明1における「変色を抑制するための組成物」に相当する。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「果物、野菜及び食肉からなる群から選択される非加熱食品の変色を抑制するための組成物であって、還元水飴からなる組成物。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点1-1> 「還元水飴」に関して、本件特許発明1においては「下記の糖組成の還元水飴; 単糖が1~50質量%、 二糖が6~75質量%、 三糖が7~25質量%、 四糖が1~13質量%、 五糖以上が1~81質量% (ただし、単糖が10質量%、二糖が13質量%、三糖が13質量%、四糖が7質量%、五糖以上が57質量%の糖組成の還元水飴を除く)」と特定されているのに対し、甲1物発明においては「可食性フィルムコーティング剤に含有されるエスイー30(商品名、日研化学社製)」と特定されている点。 (2)判断 相違点1-1について検討する。 甲1物発明における「可食性フィルムコーティング剤に含有されるエスイー30(商品名、日研化学社製)」は、甲2に記載された事項によると、「単糖類が10重量%、2糖類が13重量%、3糖類が13重量%、4糖類が7重量%、5糖類以上が57重量%で構成され還元処理されたもの」であるから、本件特許発明1において、ただし書きで除かれた「単糖が10質量%、二糖が13質量%、三糖が13質量%、四糖が7質量%、五糖以上が57質量%の糖組成の還元水飴」に相当する。 そうすると、相違点1-1は実質的な相違点である。 また、甲1には、甲1物発明における「可食性フィルムコーティング剤に含有されるエスイー30(商品名、日研化学社製)」を「単糖が10質量%、二糖が13質量%、三糖が13質量%、四糖が7質量%、五糖以上が57質量%の糖組成の還元水飴」以外の「単糖が1~50質量%、二糖が6~75質量%、三糖が7~25質量%、四糖が1~13質量%、五糖以上が1~81質量%」の「糖組成の還元水飴」とする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲1物発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「非加熱食品の食感及び食味を維持しつつ優れた変色抑制効果を発揮する組成物」「を提供することができる。」(本件特許の発明の詳細な説明の【0013】)という本件特許発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 (3)特許異議申立人の主張について ア 特許異議申立人の主張の概要 特許異議申立人は、令和7年3月10日に提出された意見書において、おおむね次のとおり主張する。 「特許権者は、令和6年11月28日付け意見書の「5 意見の内容」の「(4)理由1について」の「4-2.甲1発明の説明」の最終段落において、「従って、甲1の変色防止剤は、エスイー30又はアマルティーMR-100からなるものではなく、「エスイー30およびエチルアルコール」又は「アマルティーMR-100およびエチルアルコール」からなるものである。」と主張している。 ・・・(略)・・・そのため、甲1には実質的にエスイー30からなる変色防止剤が記載されているか、または、甲1の当該記載から当業者が「エスイー30およびエチルアルコール」を「エスイー30および水」とする動機づけがあり、エスイー30からなる変色防止剤に容易に想到することができる。 さらに、エスイー30を用いた比較製剤(比16)と、コントロールとほぼ同等の効果を有するゼラチンCP597を用いた比較製剤(比19)との変色進行度合いの結果(甲1の表3)から、エスイー30が変色防止効果を有するのは明らかである。 ・・・(略)・・・ しかしながら、甲1の表3は、エスイー30からなる可食性フィルムコーティング剤のみの変色防止剤(本件特許発明1に相当)がコントロールより優れた変色防止効果を有すること、および、本件特許発明1が甲1発明(甲第1号証に記載の発明)の構成要件の一部を削除して甲1発明と同質の効果を低下させたものに過ぎないことを示している。 よって、本件特許発明1は、依然として、甲第1号証に記載の発明により新規性を有さず、さらには甲第1号証に記載の発明により進歩性を有さず、取り消されるべきものである。」(上記意見書第1及び2ページ) イ 判断 そこで、上記主張について検討する。 上記主張は、本件特許発明1が「エスイー30」に相当する「還元水飴」を含有することを前提とする主張であるところ、上記(2)のとおり、本件訂正により、本件特許発明1から「エスイー30」に相当する「還元水飴」は除かれた。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (4)まとめ したがって、本件特許発明1は甲1物発明であるとはいえないし、甲1物発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 3 本件特許発明2について (1)対比 本件特許発明2と甲1物発明を対比する。 甲1物発明における「エスイー30(商品名、日研化学社製)」は、甲2に記載された事項によると、「糖組成が単糖類が10重量%、2糖類が13重量%、3糖類が13重量%、4糖類が7重量%、5糖類以上が57重量%で構成され還元処理されたもの」であるから、本件特許発明2における「下記の糖組成の高糖化還元水飴; 単糖が40~50質量%、 二糖が40~50質量%、 三糖が8~13質量%、 四糖が1~5質量%、 五糖以上が1~5質量%」と、「還元水飴」という限りにおいて一致する。 甲1物発明における「皮付き又は剥皮若しくはカットされたバナナ、林檎、桃、梨、洋梨、アボカド等の果物やごぼう、ふき、なす、山芋、ジャガイモ、ビート、キャベツ等の野菜」は本件特許発明2における「果物、野菜及び食肉からなる群から選択される非加熱食品」に相当する。 甲1物発明における「変色防止剤」は本件特許発明2における「変色を抑制するための組成物」に相当する。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「果物、野菜及び食肉からなる群から選択される非加熱食品の変色を抑制するための組成物であって、還元水飴からなる組成物。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1-2> 「還元水飴」に関して、本件特許発明2においては「下記の糖組成の高糖化還元水飴; 単糖が40~50質量%、 二糖が40~50質量%、 三糖が8~13質量%、 四糖が1~5質量%、 五糖以上が1~5質量%」と特定されているのに対し、甲1物発明においては「可食性フィルムコーティング剤に含有されるエスイー30(商品名、日研化学社製)」と特定されている点。 (2)判断 相違点1-2について検討する。 甲1には、甲1物発明における「可食性フィルムコーティング剤に含有されるエスイー30(商品名、日研化学社製)」を「単糖が40~50質量%、二糖が40~50質量%、三糖が8~13質量%、四糖が1~5質量%、五糖以上が1~5質量%」の「糖組成の高糖化還元水飴」とする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲1物発明において、相違点1-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明2は「非加熱食品の食感及び食味を維持しつつ優れた変色抑制効果を発揮する組成物」「を提供することができる。」という本件特許発明2の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 (3)特許異議申立人の主張について ア 特許異議申立人の主張の概要 特許異議申立人は、令和7年3月10日に提出された意見書において、おおむね次のとおり主張する。 「本件特許発明2がマルチトールを包含しないものとなっても、特許異議申立書の「ウ本件特許発明と証拠に記載された発明との対比」の「(イ)本件特許発明2と甲1発明とを対比する。」で記載したように、還元水飴を、単糖が40~50質星%、二糖が40~50質量%、三糖が8~13質量%、四糖が1~5質量%、五糖以上が1~5質量%である高糖化還元水飴とすることは、甲第1号証には記載されていないが、有効成分として還元水飴を利用する際に糖組成を模索することは当業者が必ず行うことであるから、当業者がなし得る最適材料の選択である。 また、本件特許明細書の表3によると、高糖化還元水飴を用いた10%の浸漬液(10%SE600)と中糖化還元水飴を用いた10%の浸漬液(10%SE57)では、変色抑制効果に全く差がない。さらに、中糖化還元水飴を用いた5%の浸漬液(5%SE57)と低糖化還元水飴を用いた5%の浸漬液(5%SE100)では、変色抑制効果に全く差がない。そのため、高糖化還元水飴の濃度を規定しない、すなわち高糖化還元水飴に含まれる単糖や二糖、三糖、四糖、五糖以上の組成比のみ特定されていて、非加熱食品に対する有効成分の量は特定されていないにもかかわらず、本件特許発明2はこれらの組成比の異なる中糖化還元水飴や低糖化還元水飴でも同様の効果となっているのであるから、本件特許発明2において、還元水飴の糖組成を高糖化還元水飴に限定することに顕著な効果はなく、本件特許発明2の糖組成に技術的意義はない。 よって、本件特許発明2は、甲第1号証に記載の発明から当業者であれば容易に想到し得たことであり、進歩性を有さず、取り消されるべきものである。」(上記意見書第2ページ) イ 判断 そこで、上記主張について検討する。 甲1の【0005】ないし【0007】によると、甲1において「可食性フィルムコーティング剤」は果物の乾燥防止や菌による二次汚染防止などを図るために用いられるものであり、果物等の変色防止のために用いるものではないところ、同【0023】の【表2】において本件特許発明1で特定される糖組成の条件を満たす「エスイー30」を使用している比較製剤(比16)がコントロール(蒸留水)と比べれば多少は変色防止の効果を有していることを確認していることから、「エスイー30」を使用している比較製剤(比16)を根拠に甲1物発明を認定したものである。 そうすると、甲1物発明において、「エスイー30」を使用しないものにする動機付けはない。 また、甲1には、本件特許発明2で特定される糖組成の条件を満たす「高糖化還元水飴」が使用できることは記載も示唆もされていない。 したがって、仮に「有効成分として還元水飴を利用する際に糖組成を模索することは当業者が必ず行うことである」としても、甲1物発明において、「エスイー30」に代えて本件特許発明2で特定される糖組成の条件を満たす「高糖化還元水飴」を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (4)まとめ したがって、本件特許発明2は甲1物発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 4 本件特許発明3について 本件特許発明3と甲1製法発明を対比する。 両者の間には、少なくとも相違点1-1と同様の相違点があり、該相違点については相違点1-1と同様に判断される。 また、本件特許発明3は「非加熱食品の食感及び食味を維持しつつ」「変色が抑制された食品の製造方法」「を提供することができる。」(本件特許の発明の詳細な説明の【0013】)という本件特許発明3の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明3は甲1製法発明であるとはいえないし、甲1製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 5 本件特許発明4について 本件特許発明4と甲1製法発明を対比する。 両者の間には、少なくとも相違点1-2と同様の相違点があり、該相違点については相違点1-2と同様に判断される。 また、本件特許発明4は「非加熱食品の食感及び食味を維持しつつ」「変色が抑制された食品の製造方法」「を提供することができる。」という本件特許発明4の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明4は甲1製法発明であるとはいえないし、甲1製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 6 むすび したがって、本件特許発明1、3及び4は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし4は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。 よって、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、取消理由1及び申立理由1によっては取り消すことはできない。 第7 取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由について 取消理由(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由は、申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)のうちの請求項2に対する進歩性及び申立理由2(甲4に基づく新規性・進歩性)である。 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)のうちの請求項2に対する進歩性については上記第6で判断したとおりである。 以下、申立理由2(甲4に基づく新規性・進歩性)について検討する。 1 甲4に記載された事項等 (1)甲4に記載された事項 甲4は、「マービーのご紹介」というタイトルの資料であり、おおむね次の事項が記載されている。 ・「 [図:0001432034000006.jpg] 」(第4ページ) ・「 [図:0001432034000007.jpg] 」(第19ページ) (2)甲4に記載された発明 甲4に記載された事項を整理すると、甲4には次の発明(以下、順に「甲4物発明」及び「甲4製法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲4物発明> 「浸漬によって、カットリンゴの表面を糖でコーティングし、空気への接触を減らすことで変色を防止する機能を有する甘味料であるマービーに使用された還元麦芽糖水飴(マルチトール)。」 <甲4製法発明> 「甲4物発明を使用した甘味料であるマービーに、カットリンゴを浸漬させて、変色を防止するカットリンゴの製法。」 2 本件特許発明1について (1)対比 本件特許発明1と甲4物発明を対比する。 甲4物発明における「カットリンゴ」は本件特許発明1における「果物、野菜及び食肉からなる群から選択される非加熱食品」に相当する。 甲4物発明における「変色を防止する機能を有する甘味料であるマービーに使用された還元麦芽糖水飴(マルチトール)」は本件特許発明1における「変色を抑制するための組成物であって、下記の糖組成の還元水飴; 単糖が1~50質量%、 二糖が6~75質量%、 三糖が7~25質量%、 四糖が1~13質量%、 五糖以上が1~81質量% (ただし、単糖が10質量%、二糖が13質量%、三糖が13質量%、四糖が7質量%、五糖以上が57質量%の糖組成の還元水飴を除く)」と、「変色を抑制するための組成物」という限りにおいて一致する。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「果物、野菜及び食肉からなる群から選択される非加熱食品の変色を抑制するための組成物。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点4-1> 「変色を抑制するための組成物」に関して、本件特許発明1においては、「変色を抑制するための組成物であって、下記の糖組成の還元水飴; 単糖が1~50質量%、 二糖が6~75質量%、 三糖が7~25質量%、 四糖が1~13質量%、 五糖以上が1~81質量% (ただし、単糖が10質量%、二糖が13質量%、三糖が13質量%、四糖が7質量%、五糖以上が57質量%の糖組成の還元水飴を除く)」と特定されているのに対し、甲4物発明においては「変色を防止する機能を有する甘味料であるマービーに使用された還元麦芽糖水飴(マルチトール)」と特定されている点。 (2)判断 相違点4-1について検討する。 甲4物発明における「還元麦芽糖水飴(マルチトール)」は「下記の糖組成の還元水飴;単糖が1~50質量%、二糖が6~75質量%、三糖が7~25質量%、四糖が1~13質量%、五糖以上が1~81質量%(ただし、単糖が10質量%、二糖が13質量%、三糖が13質量%、四糖が7質量%、五糖以上が57質量%の糖組成の還元水飴を除く)」ではないことは当業者に明らかであるから、相違点4-1は実質的な相違点である。 また、甲4には、甲4物発明における「還元麦芽糖水飴(マルチトール)」を「下記の糖組成の還元水飴;単糖が1~50質量%、二糖が6~75質量%、三糖が7~25質量%、四糖が1~13質量%、五糖以上が1~81質量%(ただし、単糖が10質量%、二糖が13質量%、三糖が13質量%、四糖が7質量%、五糖以上が57質量%の糖組成の還元水飴を除く)」とする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲4及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲4物発明において、相違点4-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「非加熱食品の食感及び食味を維持しつつ優れた変色抑制効果を発揮する組成物」「を提供することができる。」という本件特許発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 (3)まとめ したがって、本件特許発明1は甲4物発明であるとはいえないし、甲4物発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 3 本件特許発明2について (1)対比 本件特許発明2と甲4物発明を対比する。 甲4物発明における「カットリンゴ」は本件特許発明2における「果物、野菜及び食肉からなる群から選択される非加熱食品」に相当する。 甲4物発明における「変色を防止する機能を有する甘味料であるマービーに使用された還元麦芽糖水飴(マルチトール)」は本件特許発明2における「変色を抑制するための組成物であって、下記の糖組成の高糖化還元水飴; 単糖が40~50質量%、 二糖が40~50質量%、 三糖が8~13質量%、 四糖が1~5質量%、 五糖以上が1~5質量%」と、「変色を抑制するための組成物」という限りにおいて一致する。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「果物、野菜及び食肉からなる群から選択される非加熱食品の変色を抑制するための組成物。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点4-2> 「変色を抑制するための組成物」に関して、本件特許発明2においては、「変色を抑制するための組成物であって、下記の糖組成の高糖化還元水飴; 単糖が40~50質量%、 二糖が40~50質量%、 三糖が8~13質量%、 四糖が1~5質量%、 五糖以上が1~5質量%」と特定されているのに対し、甲4物発明においては「変色を防止する機能を有する甘味料であるマービーに使用された還元麦芽糖水飴(マルチトール)」と特定されている点。 (2)判断 相違点4-2について検討する。 甲4物発明における「還元麦芽糖水飴(マルチトール)」は「下記の糖組成の高糖化還元水飴;単糖が40~50質量%、二糖が40~50質量%、三糖が8~13質量%、四糖が1~5質量%、五糖以上が1~5質量%」ではないことは当業者に明らかであるから、相違点4-2は実質的な相違点である。 また、甲4には、甲4物発明における「還元麦芽糖水飴(マルチトール)」を「下記の糖組成の高糖化還元水飴;単糖が40~50質量%、二糖が40~50質量%、三糖が8~13質量%、四糖が1~5質量%、五糖以上が1~5質量%」とする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲4及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲4物発明において、相違点4-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明2は「非加熱食品の食感及び食味を維持しつつ優れた変色抑制効果を発揮する組成物」「を提供することができる。」という本件特許発明2の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 (3)まとめ したがって、本件特許発明2は甲4物発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 4 本件特許発明3について 本件特許発明3と甲4製法発明を対比する。 両者の間には、少なくとも相違点4-1と同様の相違点があり、該相違点については相違点4-1と同様に判断される。 また、本件特許発明3は「非加熱食品の食感及び食味を維持しつつ」「変色が抑制された食品の製造方法」「を提供することができる。」という本件特許発明3の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明3は甲4製法発明であるとはいえないし、甲4製法発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 5 本件特許発明4について 本件特許発明4と甲4製法発明を対比する。 両者の間には、少なくとも相違点4-2と同様の相違点があり、該相違点については相違点4-2と同様に判断される。 また、本件特許発明4は「非加熱食品の食感及び食味を維持しつつ」「変色が抑制された食品の製造方法」「を提供することができる。」という本件特許発明4の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 したがって、本件特許発明4は甲4製法発明であるとはいえないし、甲4製法発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 6 むすび したがって、本件特許発明1、3及び4は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし4は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえない。 よって、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、申立理由2によっては取り消すことはできない。 第8 結語 上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700743

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