特許異議申立
2023-701142
揚げ物改良用組成物およびこれを用いる揚げ物の製造方法
- 審判番号
- 2023-701142
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-214352
- 登録番号
- 7266389
- 請求日
- 2023年10月27日
- 審決日
- 2024年11月29日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】物産フードサイエンス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人佐川国際特許商標事務所
- 【権利者代理人】佐川 慎悟
- 【権利者代理人】太田 清子
- 【権利者代理人】川野 陽輔
- 【権利者代理人】江部 陽子
- 【権利者代理人】大窪 智行
- 【異議申立人】太田 有紀
- 審判長/審判官
- 審判長 植前 充司
- 審判官 磯貝 香苗
- 審判官 天野 宏樹
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項2号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第4号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7266389号発明「揚げ物改良用組成物およびこれを用いる揚げ物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7266389号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕、8、9、10、11について訂正することを認める。
特許第7266389号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7266389号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、
平成30年11月15日の出願であって、
令和 5年 4月20日にその特許権の設定登録(請求項の数 7)がされ、
令和 5年 4月28日に特許掲載公報が発行され、
その後、当該特許に対し、
令和 5年10月27日に 太田 有紀 (以下、「特許異議申立人」という。)により全ての請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、
令和 6年 1月19日付けで取消理由が通知され、
令和 6年 3月22日に特許権者 物産フードサイエンス株式会社から訂正請求がされると共に意見書が提出され、
令和 6年 4月 5日付けで手続補正指令(方式)が通知され、
令和 6年 5月 1日に特許権者 物産フードサイエンス株式会社から、訂正請求書を補正する手続補正書(方式)が提出され、
令和 6年 5月17日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、
令和 6年 6月20日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和 6年 3月22日に提出され、令和 6年 5月 1日に提出された手続補正書により補正された訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)における訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「五糖以上を50質量%以上含む糖組成である還元水飴」と記載されているのを、
「五糖以上を50質量%以上含み、かつ、四糖以上を92質量%以下含む糖組成である還元水飴」に訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項5ないし7についても同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、
「デキストロース当量が40未満の水飴を還元してなる還元水飴からなる」と記載されているのを、
「デキストロース当量が40未満の水飴を還元してなる還元水飴であって、四糖以上を92質量%以下含む糖組成である前記還元水飴からなる」に訂正する。
請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項5ないし7も同様に訂正する。
(3)訂正事項3-1
特許請求の範囲の請求項4に、
「さらに、揚げ物の体積を増大させるために用いられる、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。」と記載されているのを、
「さらに、揚げ物の体積を増大させるために用いられる、請求項3に記載の組成物。」に訂正する。
請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5ないし7も同様に訂正する。
(4)訂正事項3-2
特許請求の範囲の請求項4に、
「さらに、揚げ物の体積を増大させるために用いられる、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改めて、新たに請求項8とし、
「五糖以上を50質量%以上含む糖組成物である還元水飴からなる、揚げ物における油の吸収量を低減させるとともに、揚げ物の体積を増大させるための組成物であって、前記還元水飴を、揚げ物の食材、衣または皮に混合して用いることを特徴とする、前記組成物。」と訂正する。
(5)訂正事項3-3
特許請求の範囲の請求項4に、
「さらに、揚げ物の体積を増大させるために用いられる、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改めて、新たに請求項9とし、
「デキストロース当量が40未満の水飴を還元してなる還元水飴からなる、揚げ物における油の吸収量を低減させるとともに、揚げ物の体積を増大させるための組成物(デキストリン還元物水溶液を用いて油ちょう前に揚げ物のブランチング処理を行って用いられるものを除く)。」と訂正する。
(6)訂正事項4-1
特許請求の範囲の請求項6に、
「前記還元水飴の糖組成が、単糖が1~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%および四糖以上が55~92質量%である、請求項1から5のいずれかに記載の組成物。」と記載されているのを、
「前記還元水飴の糖組成が、単糖が1~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%および四糖以上が55~92質量%である、請求項3から5のいずれかに記載の組成物。」に訂正する。
請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する。
(7)訂正事項4-2
特許請求の範囲の請求項6に、
「前記還元水飴の糖組成が、単糖が1~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%および四糖以上が55~92質量%である、請求項1から5のいずれかに記載の組成物。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改めて、新たに請求項10とし、
「単糖が1~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%および四糖以上が55~92質量%である糖組成の還元水飴からなる、揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物であって、前記還元水飴を、揚げ物の食材、衣または皮に混合して用いることを特徴とする、前記組成物。」に訂正する。
(8)訂正事項4-3
特許請求の範囲の請求項6に、
「前記還元水飴の糖組成が、単糖が1~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%および四糖以上が55~92質量%である、請求項1から5のいずれかに記載の組成物。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、独立形式に改めて、新たに請求項11とし、
「単糖が1~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%および四糖以上が55~92質量%である糖組成の還元水飴からなる、揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物(デキストリン還元物水溶液を用いて油ちょう前に揚げ物のブランチング処理を行って用いられるものを除く)。」に訂正する。
(9)一群の請求項について
訂正前の請求項1及び4ないし7について、請求項4ないし7は請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1により記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
訂正前の請求項2及び4ないし7について、請求項4ないし7は、請求項2を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項2により記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。
訂正前の請求項3及び4ないし7について、請求項4ないし7は、請求項3を直接又は間接的に引用するものである。
また、訂正後の請求項8及び9は、訂正前の請求項4に対応するものであり、訂正後の請求項10及び11は、訂正前の請求項6に対応するものである。
よって、訂正前の請求項1ないし7に対応する訂正後の請求項1ないし11は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
そして、訂正後の請求項8、9、10、11については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とする求めがある。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1に係る請求項1及び5ないし7の訂正について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、請求項1における還元水飴の糖組成について、「かつ、四糖以上を92質量%以下含む」と特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、本件特許明細書【0023】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項5ないし7についても同様である。
(2)訂正事項2に係る請求項2及び5ないし7の訂正について
訂正事項2に係る請求項2の訂正は、請求項2における還元水飴の糖組成について、「四糖以上を92質量%以下含む」と特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2に係る請求項2の訂正は、本件特許明細書【0023】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
そして、訂正事項2に係る請求項2の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項2を直接又は間接的に引用する請求項5ないし7についても同様である。
(3)訂正事項3-1に係る請求項4及び5ないし7の訂正について
訂正事項3-1に係る請求項4の訂正は、引用する請求項の削除に係るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3-1に係る請求項4の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項4を直接又は間接的に引用する請求項5ないし7についても同様である。
(4)訂正事項3-2に係る請求項8の訂正について
訂正事項3-2に係る請求項8の訂正は、訂正前の請求項4が請求項1ないし3を引用する記載であるところ、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改める訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定される他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
そして、訂正事項3-2に係る請求項8の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(5)訂正事項3-3に係る請求項9の訂正について
訂正事項3-3に係る請求項9の訂正は、訂正前の請求項4が請求項1ないし3を引用する記載であるところ、請求項2を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改める訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定される他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
そして、訂正事項3-3に係る請求項9の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(6)訂正事項4-1に係る請求項6及び7の訂正について
訂正事項4-1に係る請求項6の訂正は、引用する請求項の削除に係るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項4-1に係る請求項6の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
請求項6を引用する請求項7についても同様である。
(7)訂正事項4-2に係る請求項10の訂正について
訂正事項4-2に係る請求項10の訂正は、訂正前の請求項6が請求項1ないし5を引用する記載であるところ、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改める訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定される他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
そして、訂正事項4-2に係る請求項10の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(8)訂正事項4-3に係る請求項11の訂正について
訂正事項4-3に係る請求項11の訂正は、訂正前の請求項6が請求項1ないし5を引用する記載であるところ、請求項2を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改める訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定される他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正である。
そして、訂正事項4-3に係る請求項11の訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(9)独立特許要件について
本件特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし7に対してされているから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正請求による特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号を目的とし、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項、第6項の規定に適合するものである。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕、8、9、10、11について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明11」といい、これらをまとめて「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
五糖以上を50質量%以上含み、かつ、四糖以上を92質量%以下含む糖組成である還元水飴からなる、揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物であって、前記還元水飴を、揚げ物の食材、衣または皮に混合して用いることを特徴とする、前記組成物。
【請求項2】
デキストロース当量が40未満の水飴を還元してなる還元水飴であって、四糖以上を92質量%以下含む糖組成である前記還元水飴からなる、揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物(デキストリン還元物水溶液を用いて油ちょう前に揚げ物のブランチング処理を行って用いられるものを除く)。
【請求項3】
デキストロース当量が35以上40未満の水飴を還元してなる還元水飴からなる、揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物。
【請求項4】
さらに、揚げ物の体積を増大させるために用いられる、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
さらに、揚げ物のサクサクした食感を増強させるために用いられる、請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記還元水飴の糖組成が、単糖が1~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%および四糖以上が55~92質量%である、請求項3から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の組成物を含む材料を油調する工程を有する、揚げ物の製造方法。
【請求項8】
五糖以上を50質量%以上含む糖組成である還元水飴からなる、揚げ物における油の吸収量を低減させるとともに、揚げ物の体積を増大させるための組成物であって、前記還元水飴を、揚げ物の食材、衣または皮に混合して用いることを特徴とする、前記組成物。
【請求項9】
デキストロース当量が40未満の水飴を還元してなる還元水飴からなる、揚げ物における油の吸収量を低減させるとともに、揚げ物の体積を増大させるための組成物(デキストリン還元物水溶液を用いて油ちょう前に揚げ物のブランチング処理を行って用いられるものを除く)。
【請求項10】
単糖が1~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%および四糖以上が55~92質量%である糖組成の還元水飴からなる、揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物であって、前記還元水飴を、揚げ物の食材、衣または皮に混合して用いることを特徴とする、前記組成物。
【請求項11】
単糖が1~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%および四糖以上が55~92質量%である糖組成の還元水飴からなる、揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物(デキストリン還元物水溶液を用いて油ちょう前に揚げ物のブランチング処理を行って用いられるものを除く)。」
第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由について
令和 5年10月27日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、2、5及び7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1及び3ないし7は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第4号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1及び7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1及び3ないし7は、甲第4号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び3ないし7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(明確性要件)
本件特許の請求項6に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・本件特許の請求項6には「前記還元水飴の糖組成が、単糖が1~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%および四糖以上が55~92質量%である」との記載があるが、単糖が1質量%、二糖が6質量%、三糖が7質量%の場合、四糖以上は86質量%であり、四糖以上が86質量%超92質量%以下となることはないので、当該糖組成の記載は不明瞭である。
4 証拠方法
甲第1号証:「PO-10を使用したフライ食品」、東和化成工業株式会社食材開発研究センター、2007年8月以前に配付された販売促進資料
甲第2号証:三菱商事ライフサイエンス株式会社の沿革
甲第3号証:特開2001-128635号公報
甲第4号証:国際公開第03/065824号
証拠の表記は特許異議申立書の記載におおむね従った。
以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由の概要
令和 6年 1月19日付けで通知された取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要はおおむね次のとおりである。
1 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、2、5及び7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲1に記載された発明に基づいてその出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、5及び7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 取消理由2(甲4に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、5及び7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲4に記載された発明に基づいてその出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、5及び7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 取消理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、2、5及び7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲3に記載された発明に基づいてその出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、5及び7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第6 当審の判断
当審は、以下に述べるように取消理由1ないし3及び申立理由1ないし3は理由がない、と判断する。
1 取消理由1及び申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1)主な証拠等の記載事項
ア 甲2の記載事項
甲2には、東和化成工業株式会社の合併と商号変更について次の事項が記載されている。
「2007年(平成19年)8月
東和化成工業株式会社、MCフードテック株式会社、中央フーズマテリアル株式会社が合併し、三菱商事フードテック株式会社に商号変更。」
イ 甲1の記載事項
甲1は、東和化成工業株式会社食材開発研究センター作成の資料であって、PO-10を使用したフライ食品について次の事項が記載されている。
[図:0001420302000001.jpg]
[図:0001420302000002.jpg]
ウ 甲1に記載された発明
甲1は、東和化成工業株式会社 食材開発研究センター作成の資料であり、上記アより、東和化成工業株式会社は2007年8月に商号変更されているから、甲1は2007年8月以前に頒布されたものであると認められる。
そして、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「パン粉に添加されるPO-10であって、PO-10無添加のパン粉と比較してPO-10を添加したパン粉のみを油ちょう(175℃、2分)したときの相対吸油量が75.0%となり、サクサクとした食感となり、吸油量が少なくなる、PO-10。」
<甲1製造方法発明>
「甲1発明のPO-10をパン粉に5%添加し、ハムに小麦粉、溶き卵、パン粉を順にまぶし、175℃の油で2分間油ちょうするハムフライの製造方法であって、サクサクとした食感となり、パン粉の吸油量が少なくなる、ハムフライの製造方法。」
エ 甲3の記載事項
甲3には、還元澱粉糖化物「PO-10(商品名、東和化成工業株式会社製)」について次の事項が記載されている。
「【0011】・・・(中略)・・・なお、実施例中で用いる還元澱粉糖化物として、デキストロース当量が8.0の分岐構造を有したデキストリンを還元した「PO-10(商品名、東和化成工業株式会社製)」を使用した。「PO-10」の詳細な糖組成は以下の通りである。
【0012】
【表1】
[図:0001420302000003.jpg]
」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「吸油量が少なくなる」「PO-10」は、本件特許発明1における「揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物」に相当する。
また、甲1発明における「パン粉に添加されるPO-10」は、本件特許発明1における「揚げ物の食材、衣または皮に混合して用いる」「組成物」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物であって、揚げ物の食材、衣または皮に混合して用いる組成物。」
<相違点1-1>
本件特許発明1は、組成物は「五糖以上を50質量%以上含み、かつ、四糖以上を92質量%以下含む糖組成である還元水飴からなる」との特定を有するのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
相違点1-1について検討する。
上記(1)エの甲3より、甲1発明の「PO-10(東和化成工業株式会社製)」は、四糖以上を93.8%含有する還元澱粉糖化物である。したがって、相違点1-1は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は甲1発明ではない。
そして、甲1及び他の全ての証拠をみても、甲1発明において、「四糖以上を92質量%以下」とする動機となる記載はない。
特許異議申立人は令和 6年 6月20日提出の意見書において、「よって、本件特許発明の請求項1および2は、」「甲第1号証ないし甲第4号証に記載の発明により進歩性を有さず、取り消されるべきものである。」として、「本件特許明細書においては、「四糖以上を92質量%以下含む」という構成を備えるものと、この構成を備えないものとの吸油量に関する比較結果等については何らの記載も無いから、上記数値範囲に臨界的意義があるということはできない。」、「本件特許明細書において、吸油量の低減が示されているのは、四糖以上を55~78質量%含むスイートNTだけであり、上限値を「92質量%」に設定した点について、臨界的意義及び技術的意義が何ら説明されていないのであるから、当該数値範囲には臨界的意義及び技術的意義は存在しないといえる。」と主張している。
しかしながら、甲1発明の「PO-10(東和化成工業株式会社製)」は、それ自体、既に上市されている既成の製品であるところ、甲1及び他の全ての証拠をみても、甲1発明において、「四糖以上を92質量%以下」とする動機となる記載はない。
また、甲1及び他の全ての証拠をみても、「四糖以上」の割合を調整することについて何ら記載がなく、「四糖以上」が「92質量%以下」のものが記載されているということでもない。
そうすると、92質量%以下という数値範囲における臨界的意義あるいは技術的意義が、本件特許明細書の本件特許の発明の詳細な説明において、実験等により明らかにされていないからといって、甲1発明における四糖以上を、93.8%から、92質量%以下とすることは、当業者が適宜なし得たものであるとはいえない。
よって、本件特許発明1は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
また、甲1発明の「パン粉に添加されるPO-10」は、本件特許発明2における「組成物(デキストリン還元物水溶液を用いて油ちょう前に揚げ物のブランチング処理を行って用いられるものを除く)。」に相当する。
そうすると、本件特許発明2と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物(デキストリン還元物水溶液を用いて油ちょう前に揚げ物のブランチング処理を行って用いられるものを除く)。」
<相違点1-2>
本件特許発明2は、「デキストロース当量が40未満の水飴を還元してなる還元水飴」であるとの特定を有するのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
<相違点1-3>
本件特許発明2は、組成物は「四糖以上を92質量%以下含む糖組成である」還元水飴からなるとの特定を有するのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点1-3について検討する。
相違点1-3は上記アの相違点1-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3と甲1発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明3と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物。」
<相違点1-4>
本件特許発明3は、「デキストロース当量が35以上40未満の水飴を還元してなる還元水飴からなる」との特定を有するのに対し、甲1発明はそのような特定がない点。
相違点1-4について検討する。
上記(1)エの甲3より、甲1発明の「PO-10(東和化成工業株式会社製)」は、デキストロース当量が8.0の還元澱粉糖化物である。したがって、相違点1-4は実質的な相違点である。
そして、甲1及び他の全ての証拠をみても、甲1発明において、「デキストロース当量を35以上40未満」とする動機となる記載はない。
よって、本件特許発明3は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明4について
本件特許発明4は、請求項3を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明3の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明3と同様に判断される。
よって、本件特許発明4は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明5について
本件特許発明5は、請求項1ないし4のいずれかを直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1ないし4のいずれかの発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1ないし4と同様に判断される。
よって、本件特許発明5は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 本件特許発明6について
本件特許発明6は、請求項3ないし5のいずれかを直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明3ないし5のいずれかの発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明3ないし5と同様に判断される。
よって、本件特許発明6は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲1製造方法発明とを対比すると、甲1製造方法発明における「175℃の油で2分間油ちょうするハムフライの製造方法」は、本件特許発明7における「油調する工程を有する、揚げ物の製造方法。」に相当する。
また、本件特許発明7は、請求項1ないし6のいずれかを直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1ないし6のいずれかの発明特定事項を全て備えるものであるから、上記アないしウと同様の対応関係を有し、本件特許発明1ないし6と同様に判断される。
よって、本件特許発明7は、甲1製造方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ク 本件特許発明8について
本件特許発明8と甲1発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明8と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「還元水飴からなる、揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物であって、前記還元水飴を、揚げ物の食材、衣または皮に混合して用いる、前記組成物。」
<相違点1-5>
本件特許発明8は、「五糖以上を50質量%以上含む」との特定を有するのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
<相違点1-6>
本件特許発明8は、「揚げ物の体積を増大させるための」組成物との特定を有するのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点1-6について検討する。
甲1には、揚げ物の体積を増大させるため、とすることについて記載はない。そうすると、相違点1-6は実質的な相違点である。
そして、甲1及び他の全ての証拠をみても、甲1発明を、「揚げ物の体積を増大させるため」とする動機となる記載はない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明8は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ケ 本件特許発明9について
本件特許発明9と甲1発明とを対比すると、上記ア、イと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明9と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「デキストロース当量が40未満の水飴を還元してなる還元水飴からなる、揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物(デキストリン還元水溶液を用いて油ちょう前に揚げ物のブランチング処理を行って用いられるものを除く)。」
<相違点1-7>
本件特許発明9は、「揚げ物の体積を増大させるための」組成物であるとの特定を有するのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
相違点1-7は、上記クの相違点1-6と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明9は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
コ 本件特許発明10について
本件特許発明10と甲1発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明10と甲1発明との一致点、相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物であって、揚げ物の食材、衣または皮に混合して用いる、組成物。」
<相違点1-8>
本件特許発明10は、「単糖が1~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%および四糖以上が55~92質量%である糖組成の還元水飴からなる」との特定を有するのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
相違点1-8について検討する。
上記(1)エの甲3より、甲1製法発明の「PO-10」は、単糖が1.0質量%、二糖が2.5質量%、三糖が2.7質量%、四糖以上が93.8質量%である。そうすると、相違点1-8は実質的な相違点である。
そして、甲1及び他の全ての証拠をみても、甲1発明の組成物を「単糖が1~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%および四糖以上が55~92質量%」の糖組成とする動機となる記載はない。
よって、本件特許発明10は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
サ 本件特許発明11について
本件特許発明11と甲1発明とを対比すると、上記ア、イと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明11と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物(デキストリン還元物水溶液を用いて油ちょう前に揚げ物のブランチング処理を行って用いられるものを除く)。」
<相違点1-9>
本件特許発明10は、「単糖が1~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%および四糖以上が55~92質量%である糖組成の還元水飴からなる」との特定を有するのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
相違点1-9について検討する。
相違点1-9は、上記コの相違点1-8と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明11は、甲1発明ではなく、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)取消理由1及び申立理由1についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1、2、5、7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1ないし11は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、取消理由1及び申立理由1の理由によって本件特許を取り消すことはできない。
2 取消理由2及び申立理由2(甲4に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲4の記載事項等
ア 甲4の記載事項
甲4には、食感及び油の含有量の改善されたフライドポテトの製造方法について、次の事項が記載されている。
「4.発明の効果
本発明に従ってフライドポテトを製造する事により、通常のブランチング処理を行って製造されるフライドポテトよりも、油ちょう後に含まれるフライドポテトの油の含有量を低減させ、好ましい食感を有するフライドポテトを製造することが可能となった。」(第7頁第13~17行)
「[実施例1]
フライドポテトの原料として男爵芋を用い、皮を剥き、芽を除去した後、縦×横×長さが、おおよそ1cm×1cm×5~8cmの大きさにカットしたものを300g用意した。
デキストリン還元物として、DEが約8のデキストリンの還元物(商品名:PO-10、東和化成工業株式会社製)を用い、固形分含有量が10.0重量%のデキストリン還元物水溶液を調製した。用意したデキストリン還元物の固形分当り、糖重合度20以上の糖類の水素化物の含有量は75.0重量%であった。
カットした男爵芋を、沸騰したデキストリン還元物水溶液中に添加し、3分間ボイルブランチングした。
ブランチング処理後、男爵芋を取出して水切りを行い、室温になるまで放冷した後、一次油ちょうとして160~170℃で2分間油ちょうを行った。油ちょう後、室温で10分間放冷し、そのまま-30℃の冷蔵庫にて3日間冷凍保存した。
冷凍保存された一次油ちょう済みの男爵芋を冷凍庫から取出して直ちに、180~190℃の2分間の二次油ちょうを行い、男爵芋のフライドポテトを製造した。」(第7頁第23行~第8頁第13行)
「[比較例1]
ブランチングに用いる水溶液として、何も添加していない水を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、男爵芋のフライドポテトを製造した。」(第10頁第9~11行)
「[比較試験1]
(1)フライドポテト中の油の含有量の測定
ソックスレー法によって、発明品と比較品のフライドポテトの油分抽出を行い、フライドポテト中の油の含有量を求めた。
各実施例及び比較例にて製造した発明品と比較品のフライドポテトは、それぞれの油ちょう終了後、金網の上に5分間静置して油きりを行い、次いでキッチンペーパーの上で室温になるまで放冷し、フライドポテトからしみ出す余分な油分を除去したものを、乳鉢で均一になるまで磨り潰し、これを測定用サンプルとした。
測定用サンプル中から無作為に約8g程度を採取したものを1検体とし、10検体分を無作為に採取した。採取したサンプルは、円筒形の乾燥濾紙内にこぼれないように入れた。この時の乾燥濾紙のみの重量をAとし、乾燥濾紙とサンプルの合計重量をBとした。
乾燥濾紙内にサンプルを入れた状態で、60℃で12時間、減圧乾燥を行い、乾燥処理後の濾紙とサンプルの合計重量を計量し、この値をCとした。
減圧乾燥したサンプルは、ジエチルエーテルを用いて、ソックスレー管の中で油分抽出を10時間行った。
抽出を終えたサンプルは、90℃で5時間の減圧乾燥を行い、サンプル重量を計測し、この値をDとした。
フライドポテト中の油の含有量は、以下の計算式に従い、フライドポテト全重量当りの重量%で求めた。
フライドポテト中の油の含有量(wt%)=(C-D)/(B-A)×100
[比較試験2]
(2)フライドポテトの食感
本発明に係るフライドポテトについて、フライドポテト表面のサクサク感と、フライドポテト内部のホクホク感を、水でブランチングして製造されたフライドポテトを基準品として、訓練されたパネリスト10名の官能検査による相対評価を行った。
男爵芋を用いた実施例1及び比較例1~比較例6に係るフライドポテトについては、比較例1で製造したフライドポテトを基準品とした。」(第13頁第1行~第14頁第1行)
「 フライドポテト表面のサクサク感については、基準品と比べて非常に良い:◎、基準品よりも良い:○、基準品と同等:△、基準品よりも劣る:×、で評価し、最も得票の多い評価を官能検査の結果とした。
フライドポテト内部のホクホク感については、基準品と比べて非常に良い:◎、基準品よりも良い:○、基準品と同等:△、基準品よりも劣る:×、で評価し、最も得票の多い評価を官能検査の結果とした。」(第14頁第6~11行)
「
[図:0001420302000004.jpg]
」(第15頁)
「請求の範囲
1. 油ちょう前に、デキストリン還元物を含有する水溶液を用いて馬鈴薯のブランチング処理を行う工程を含む、フライドポテトの製造方法。
・・・(中略)・・・
4. デキストリン還元物が、DE20未満のデキストリンの水素化物である、請求項1から3の何れか一つに記載のフライドポテトの製造方法。
5. デキストリン還元物が、固形物当り糖重合度20以上の糖類の水素化物を50.0重量%以上含有するものである、請求項4に記載のフライドポテトの製造方法。」(第17頁第1行~末行)
イ 甲4に記載された発明
甲4には次の発明(以下、「甲4発明」、「甲4製造方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲4発明>
「フライドポテト中の油の含有量を低減させ、フライドポテトのサクサク感とホクホク感を良くするために、油ちょう前の馬鈴薯のブランチング処理に使用される、デキストリン還元物を含有する水溶液に使用されるデキストリン還元物であって、DEが約8、糖重合度20以上の糖類の水素化物の含有量は75.0重量%のデキストリンの還元物(商品名:PO-10、東和化成工業株式会社製)。」
<甲4製造方法発明>
「甲4発明のデキストリンの還元物((商品名:PO-10、東和化成工業株式会社製)を、を含有する、沸騰したデキストリン還元物水溶液中に、カットした馬鈴薯を添加し、3分間ボイルブランチングし、ブランチング処理後、馬鈴薯を取出して水切りを行い、室温になるまで放冷した後、一次油ちょうとして160~170℃で2分間油ちょうを行い、油ちょう後、室温で10分間放冷し、そのまま-30℃の冷蔵庫にて3日間冷凍保存し、冷凍保存された一次油ちょう済みの馬鈴薯を冷凍庫から取出して直ちに、180~190℃の2分間の二次油ちょうを行う、フライドポテトの製造方法。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明における「フライドポテト中の油の含有量を低減させ」「るために、油ちょう前の馬鈴薯のブランチング処理に使用される」「デキストリンの還元物」は、本件特許発明1における「揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物」に相当する。
甲4発明における「糖重合度20以上の糖類の水素化物の含有量は75.0重量%のデキストリンの還元物(商品名:PO-10、東和化成工業株式会社製)」は、本件特許発明1における「五糖以上を50質量%以上含」む「糖組成である還元水飴」に相当する。
甲4発明における「フライドポテト」は、本件特許明細書【0032】「揚げ物が「衣が無い状態で食材を油で揚げるもの」である場合」である。
そして、甲4発明における「フライドポテト」の「油ちょう前の馬鈴薯のブランチング処理に使用される」態様は、本件特許明細書【0032】「揚げ物が「衣が無い状態で食材を油で揚げるもの」である場合は、油調前に、当該食材に低糖化還元水飴を混合すればよい。・・・(中略)・・・また、低糖化還元水飴を水や調味液に溶解して低糖化還元水飴とし、これを油調前に当該食材の表面に塗布してもよい。塗布する方法は、低糖化還元水飴溶液に当該食材を浸漬する、・・・・(中略)・・・当該食材や調味液の種類・形態に応じて種々の方法を用いることができる。」と記載されているから、本件特許発明1における「揚げ物の食材」「に混合して用いる」態様に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲4発明の一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「五糖以上を50質量%以上含む糖組成である還元水飴からなる、揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物であって、揚げ物の食材、衣または皮に混合して用いる組成物。」
<相違点4-1>
本件特許発明1は、「四糖以上を92質量%以下含む糖組成である還元水飴からなる」との特定を有するのに対し、甲4発明は、そのような特定がない点。
相違点4-1について検討する。
上記1(1)エの甲3より、「糖重合度20以上の糖類の水素化物の含有量は75.0重量%のデキストリンの還元物(商品名:PO-10、東和化成工業株式会社製)」は、四糖以上を93.8%含有する還元澱粉糖化物である。したがって、相違点4-1は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は甲4発明ではない。
そして、甲4及び他の全ての証拠をみても、甲4発明において、「四糖以上を92質量%以下」とする動機となる記載はない。
よって、本件特許発明1は甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
また、甲4発明における「DEが約8」の「デキストリンの還元物(商品名:PO-10、東和化成工業株式会社製)」は、本件特許発明2における「デキストロース当量が40未満の水飴を還元してなる還元水飴」に相当する。
そうすると、本件特許発明2と甲4発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「デキストロース当量が40未満の水飴を還元してなる還元水飴からなる、揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物であって、前記還元水飴を、揚げ物の食材、衣または皮に混合して用いる組成物。」
<相違点4-2>
本件特許発明2は、「(デキストリン還元物水溶液を用いて油ちょう前に揚げ物のブランチング処理を行って用いられるものを除く)。」との特定を有するのに対し、甲4発明は、そのような特定がない点。
<相違点4-3>
本件特許発明2は、「四糖以上を92質量%以下含む糖組成である」との特定を有するのに対し、甲4発明は、そのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点4-3について検討する。
相違点4-3は、上記アの相違点4-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明2は甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3と甲4発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明3と甲4発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物。」
<相違点4-4>
本件特許発明3は、「デキストロース当量が35以上40未満の水飴を還元してなる還元水飴からなる」との特定を有するのに対し、甲4発明は、そのような特定がない点。
相違点4-4について検討する。
甲4発明における「PO-10」は、デキストロース当量である「DEが約8」である。そうすると、相違点4-4は実質的な相違点である。
そして、甲4及び他の全ての証拠をみても、甲4発明において、「デキストロース当量を35以上40未満」とする動機となる記載はない。
よって、本件特許発明3は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件特許発明4について
本件特許発明4は、請求項3を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明3の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明3と同様に判断される。
よって、本件特許発明4は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件特許発明5について
本件特許発明5は、請求項1ないし4のいずれかを直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1ないし4のいずれかの発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1ないし4と同様に判断される。
よって、本件特許発明5は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
カ 本件特許発明6について
本件特許発明6は、請求項3ないし5のいずれかを直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明3ないし5のいずれかの発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明3ないし5と同様に判断される。
よって、本件特許発明6は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
キ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲4製造方法発明とを対比すると、甲4製造方法発明における「一次油ちょうとして160~170℃で2分間油ちょうを行い、油ちょう後、室温で10分間放冷し、そのまま-30℃の冷蔵庫にて3日間冷凍保存し、冷凍保存された一次油ちょう済みの馬鈴薯を冷凍庫から取出して直ちに、180~190℃の2分間の二次油ちょうを行う、フライドポテトの製造方法」は、本件特許発明7における「油調する工程を有する、揚げ物の製造方法」に相当する。
また、本件特許発明7は、請求項1ないし6のいずれかを直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1ないし6のいずれかの発明特定事項を全て備えるものであるから、上記ア、イと同様の対応関係を有し、本件特許発明1ないし6と同様に判断される。
よって、本件特許発明7は、甲4製造方法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ク 本件特許発明8について
本件特許発明8と甲4発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明8と甲4発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「五糖以上を50質量%以上含む糖組成である還元水飴からなる、揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物であって、揚げ物の食材、衣または皮に混合して用いる組成物。」
<相違点4-5>
本件特許発明8は、「揚げ物の体積を増大させるための」組成物との特定を有するのに対し、甲4発明は、そのような特定がない点。
相違点4-5について検討する。
甲4及び他の全ての証拠をみても、甲4発明を、「揚げ物の体積を増大させるため」とする動機となる記載はない。
よって、本件特許発明8は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ケ 本件特許発明9について
本件特許発明9と甲4発明とを対比すると、上記ア及びクと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明9と甲4発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「デキストロース当量が40未満の水飴を還元してなる還元水飴からなる、揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物。」
<相違点4-6>
本件特許発明9は、「揚げ物の体積を増大させるための」組成物であるとの特定を有するのに対し、甲4発明は、そのような特定がない点。
<相違点4-7>
本件特許発明9は、「(デキストリン還元物水溶液を用いて油ちょう前に揚げ物のブランチング処理を行って用いられるものを除く)。」との特定を有するのに対し、甲4発明は、そのような特定がない点。
相違点4-6について検討する。
相違点4-6は、上記クの相違点4-5と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明9は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
コ 本件特許発明10について
本件特許発明10と甲4発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明10と甲4発明との一致点、相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物であって、揚げ物の食材、衣または皮に混合して用いる、組成物。」
<相違点4-8>
本件特許発明10は、「単糖が1~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%および四糖以上が55~92質量%である糖組成の還元水飴からなる」との特定を有するのに対し、甲4発明は、そのような特定がない点。
相違点4-8について検討する。
上記1(1)エの甲3より、甲4発明における「PO-10」は、単糖が1.0質量%、二糖が2.5質量%、三糖が2.7質量%、四糖以上が93.8質量%である。そうすると、相違点4-8は実質的な相違点である。
そして、甲4及び他の全ての証拠をみても、甲4発明の組成物を「単糖が1~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%および四糖以上が55~92質量%」の糖組成とする動機となる記載はない。
よって、本件特許発明10は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
サ 本件特許発明11について
本件特許発明11と甲4発明とを対比すると、上記アと同様の対応関係を有する。
そうすると、本件特許発明11と甲4発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物。」
<相違点4-9>
本件特許発明11は、「単糖が1~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%および四糖以上が55~92質量%である糖組成の還元水飴からなる」との特定を有するのに対し、甲4発明は、そのような特定がない点。
<相違点4-10>
本件特許発明11は、「(デキストリン還元物水溶液を用いて油ちょう前に揚げ物のブランチング処理を行って用いられるものを除く)。」との特定を有するのに対し、甲4発明は、そのような特定がない点。
相違点4-9について検討する。
相違点4-9は、上記コの相違点4-8と同旨であり、同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明11は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)取消理由2及び申立理由2のまとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1、7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1ないし11は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、取消理由2及び申立理由2の理由によって本件特許を取り消すことはできない。
3 取消理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)
(1)甲3の記載事項等
ア 甲3の記載事項
甲3には、揚げ物用組成物について次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 デキストロース当量(DE)が20以下、好ましくは12以下のデキストリンの還元物である還元澱粉糖化物を含有した、食感の改良された揚げ物用組成物。
【請求項2】 デキストリンの還元物が、糖重合度(DP)20以上の水素化ポリオールを30重量%以上、好ましくは50重量%以上含有した還元澱粉糖化物である、請求項1に記載の揚げ物用組成物。
【請求項3】 デキストリンの還元物が、糖重合度(DP)20以上の水素化ポリオールを30重量%以上、好ましくは50重量%以上含有し、ソルビトール2.0重量%以下、マルチトール5.0重量%以下、マルトトリイトール5.0重量%以下、残部が重合度4~19の水素化ポリオールで構成された還元澱粉糖化物である、請求項1に記載の揚げ物用組成物。
【請求項4】 デキストリンの還元物の添加量が、揚げ物用組成物の全重量の0.1~20.0重量%である、請求項1~3の何れか一つに記載の揚げ物用組成物。」
「【0005】
【課題を解決するための手段】
【0006】本願発明者らは、鋭意研究の結果、デキストロース当量がある一定の値以下の澱粉糖化物を水素化した還元澱粉糖化物を、各種揚げ物の衣に使用される原料中に添加させることにより、油ちょうした衣部分のクリスピー感の向上や、具材と衣の付着性の改善、クリスピー感の保持性の改善など、各種食感の改善を見い出した。また、本発明で用いる添加剤は、甘味を知覚させる効果が非常に少ないため、より強いクリスピー性を得るために、揚げ物の衣部分への添加量を増加しても、揚げ物が甘味を帯びる恐れがないことを見い出した。さらに、熱に対して安定な性質を有しているため、油で調理しても、急激な着色が起らない、などの特徴を併せ持っていることも見い出し、本発明を完成するに至った。」
「【0010】
【実施例】
【0011】以下に実施例をあげて本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例中で用いる還元澱粉糖化物として、デキストロース当量が8.0の分枝構造を有したデキストリンを還元した「PO-10(商品名、東和化成工業株式会社製)」を使用した。「PO-10」の詳細な糖組成は以下の通りである。
【0012】
【表1】
[図:0001420302000005.jpg]
【0013】
【実施例1】(パン粉の製造1)
【0014】固形分濃度を10%に調整した「PO-10」の水溶液を50g用意した。市販のパン粉100g(含水率10%)に対して、「PO-10」の水溶液50g分を10gずつ5回に分けて噴霧し、その都度、十分に攪拌を行ない、パン粉と還元澱粉糖化物の水溶液が均等に混ざるようにした。攪拌終了後、パン粉を40℃で3時間乾燥させ、パン粉を製造した。」
「【0020】
【実施例4】(から揚粉の製造)
【0021】市販の片栗粉100g(含水率18%)に対して、乾燥した粉末状の「PO-10」を10g添加して混合することで、から揚げ粉を製造した。
【0022】
【参考例1】(ハムフライの製造)
【0023】ハムに小麦粉と溶き卵をまぶした後、実施例1で製造したパン粉を十分にまぶした。次いで、175℃に加熱した油で2分間油ちょうし、ハムフライを作った。」
「【0028】
【参考例4】(から揚の製造)
【0029】実施例4で製造したから揚げ粉を、予め調味液で下味を付けた鶏もも肉に十分にまぶした。から揚げ粉を十分にまぶした鶏もも肉を、175℃に加熱した油で5分間油ちょうし、から揚げを製造した。」
「【0042】
【試験例1】(パン粉を付与したフライ食品の評価)
【0043】参考例1~3及び比較例1~3で得られたハムフライについて、衣部分のサクサクとしたクリスピー感、及び、具材と衣の付着性について評価した。
【0044】
【表5】
[図:0001420302000006.jpg]
【0045】結果を、表6に示す。
【0046】
【表6】
[図:0001420302000007.jpg]
【0047】ここで、食感の評価は、次の基準で行った。
◎:通常のフライ衣と比較して、明らかにサクサクとした食感を有しており、改善効果が高い。
○:通常のフライ衣と比較して、サクサクとしており、食感が改善されたフライ衣である。
×:通常のフライ衣と比較して、食感の改善が感じられない。
【0048】また、具材と衣の付着性の評価は、次の基準で行った。
○:通常のフライと比較して、付着性が改善されており、具材と衣がしっかりと付着している。
×:通常のフライ衣と比較して、付着性は同等であり、衣が剥がれ易い。
【0049】
【試験例2】(から揚げ粉を付与したから揚げの評価)
【0050】参考例4と比較例4とで製造したから揚げについて、調理直後のもの及び調理後室温にて5時間放置したものを試食して、衣部分のサクサクとしたクリスピー感を評価した。
【0051】
【表7】
[図:0001420302000008.jpg]
【0052】結果を、表8に示す。
【0053】
【表8】
[図:0001420302000009.jpg]
【0054】ここで、食感の評価は、次の基準で行った。
○:非常にクリスピーであり、パリパリとした食感を有したから揚げである。
△:クリスピー性は普通であり、ややパリパリとした食感を有している。
×:クリスピー性は全く無く、グニャグニャとした食感で好ましくない。
【0055】以上の試験例の結果を考察すると、本発明の揚げ物用組成物は、揚げ物のクリスピー感を高めると同時に、具材と衣の付着性を改善できた。また、本発明に係る揚げ物用組成物をまぶした後で冷凍保存したものも、その後通常どおりの油ちょうを行なうことにより、クリスピー感の高い衣を有した揚げ物となった。さらに、本発明に係る揚げ物用組成物を使用した揚げ物は、油ちょう後のクリスピー性が長期間損なわれないという特徴を有していた。」
イ 甲3に記載された発明
甲3の参考例1、参考例4を中心にまとめると、甲3には次の発明(以下、「甲3発明」、「甲3製造方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲3発明>
「パン粉に噴霧されるか、片栗粉に添加して混合されたPO-10(商品名、東和化成工業株式会社製)であって、デキストロース当量が8.0、糖重合度(DP)20以上の含有量が75.6重量%の還元澱粉糖化物であり、ハムフライのフライ衣をサクサクとさせ、から揚げの衣部分をクリスピーでぱりぱりとした食感にする、PO-10。」
<甲3製造方法発明>
「PO-10(商品名、東和化成工業株式会社製)であって、デキストロース当量が8.0、糖重合度(DP)20以上の含有量が75.6重量%の還元澱粉糖化物をパン粉に噴霧し、ハムに小麦粉と溶き卵をまぶした後、パン粉を十分にまぶし、175℃に加熱した油で2分間油ちょうする、フライ衣がサクサクしたハムフライの製造方法、あるいは、PO-10(商品名、東和化成工業株式会社製)であって、デキストロース当量が8.0、糖重合度(DP)20以上の含有量が75.6重量%の還元澱粉糖化物を片栗粉に添加して混合してから揚げ粉を製造し、予め調味液で下味を付けた鶏もも肉にから揚げ粉を十分にまぶし、175℃に加熱した油で5分間油ちょうする、衣部分がクリスピーでぱりぱりとした食感のから揚げの製造方法。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明における「糖重合度(DP)20以上の含有量が75.6重量%の還元澱粉糖化物」である「PO-10」は、本件特許発明1における「五糖以上を50質量%以上含む糖組成である還元水飴からなる」「組成物」に相当する。
また、甲3発明における「ハムフライ」の「パン粉に噴霧される」か、「から揚げ」の「片栗粉に添加して混合され」る態様は、本件特許発明1における「揚げ物の」「衣」「に混合して用いる」との態様に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲3発明の一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「五糖以上を50質量%以上含む糖組成である還元水飴からなる、組成物であって、前記還元水飴を、揚げ物の食材、衣または皮に混合して用いる、前記組成物。」
<相違点3-1>
本件特許発明1は、還元水飴が「四糖以上を92質量%以下含む糖組成」であるとの特定を有するのに対し、甲3発明は、そのような特定がない点。
<相違点3-2>
本件特許発明1は、「揚げ物における油の吸収量を低減させるための」組成物との特定を有するのに対し、甲3発明は、そのような特定がない点。
相違点3-1について検討する。
甲3(【0012】【表1】)より、甲3発明における 「糖重合度(DP)20以上の含有量が75.6重量%の還元澱粉糖化物」である「PO-10」は、四糖以上を93.8%含有する還元澱粉糖化物である。したがって、相違点3-1は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は甲3発明ではない。
そして、甲3及び他の全ての証拠をみても、甲3発明において、「四糖以上を92質量%以下」とする動機となる記載はない。
特許異議申立人は、令和 6年 6月 20日提出の意見書において、「訂正により新たに生じた相違点「四糖以上を92質量%以下含む」については、甲第3号証の請求項3において、「デキストリンの還元物が、糖重合度(DP)20以上の水素化ポリオールを30重量%以上、好ましくは50質量%以上含有し、ソルビトール2.0重量%以下、マルチトール5.0重量%以下、マルトトリイトール5.0重量%以下、残部が重合度4~19の水素化ポリオールで構成された還元澱粉糖化物である、請求項1に記載の揚げ物用組成物。」と記載されており、ソルビトール2.0重量%以下、マルチトール5.0重量%以下、マルトトリイトール5.0重量%の場合には、残部である88.0重量%が重合度4以上の水素化オリオールとなり、四糖以上を92質量%以下含むこととなる。よって、本件特許発明の請求項1および2は、依然として、甲第3号証に記載の発明により新規性を有さず、さらには甲第1号証ないし甲第4号証に記載の発明により進歩性を有さず、取り消されるべきものである。」と主張している。
特許異議申立人の主張について検討したが、甲3(請求項3)に記載の糖組成の、ソルビトール、マルチトール、マルトトリイトールの全ての糖について、その数値範囲の上限値を選び、これを甲3発明のPO-10に適用して調製する動機は、甲3になく、他の全ての証拠にもない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲3発明とを対比する。
甲3発明における「デキストロース当量が8.0」の「還元澱粉糖化物」である「PO-10」は、本件特許発明2における「デキストロース当量が40未満の水飴を還元してなる還元水飴からなる」「組成物」に相当する。
そして、甲3発明における「ハムフライ」の「パン粉に噴霧される」か、「から揚げ」の「片栗粉に添加して混合され」る態様は、デキストリン還元水溶液を用いて油ちょう前に揚げ物のブランチング処理を行って用いられるものではないから、本件特許発明2の「(デキストリン還元水溶液を用いて油ちょう前に揚げ物のブランチング処理を行って用いられるものを除く。)」との特定事項を満たす。
そうすると、本件特許発明2と甲3発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「デキストロース当量が40未満の水飴を還元してなる還元水飴からなる、組成物(デキストリン還元物水溶液を用いて油ちょう前に揚げ物のブランチング処理を行って用いられるものを除く)。」
<相違点3-3>
本件特許発明2は、還元水飴が「四糖以上を92質量%以下含む糖組成である」との特定を有するのに対し、甲3発明は、そのような特定がない点。
<相違点3-4>
本件特許発明2は、「揚げ物における油の吸収量を低減させるための組成物」との特定を有するのに対し、甲3発明は、そのような特定がない点。
相違点3-3について検討する。
相違点3-3は上記アの相違点3-1と同旨であり、同様に判断される。
よって、本件特許発明2は甲3発明でなく、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件特許発明5及び7について
本件特許発明5及び7は、請求項1又は2を直接又は間接的に引用するものであって、本件特許発明1又は2の発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1又は2と同様に判断される。
よって、本件特許発明5及び7は、甲3発明でなく、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)取消理由3についてのまとめ
以上のとおり、本件特許発明1、2、5及び7は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、2、5及び7に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しない。
よって、取消理由3の理由によって本件特許を取り消すことはできない。
4 申立理由3(明確性)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)特許請求の範囲の記載
特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
(3)明確性要件の判断
本件特許の請求項6、10及び11の記載は、それ自体に不明瞭な記載はなく、願書に添付した明細書及び図面の記載とも整合する。
したがって、本件特許発明6、10及び11に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書及び図面の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 3の主張について検討する。
請求項6、10及び11の「単糖が1~10質量%、二糖が6~21質量%、三糖が7~23質量%および四糖以上が55~92質量%」は、それぞれの最大値を採ると全量で100質量%を超えるが、単糖、二糖、三糖、四糖以上のそれぞれがこの数値範囲内であり、かつ全量で100質量%となる数値範囲を意味していることが、当業者において明確に把握されるものである。
よって、特許異議申立人の主張は採用し得ない。
(4)申立理由3についてのまとめ
以上のとおり、本件特許の請求項6、10及び11に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、特許法第113条第4号に該当しない。
よって、申立理由3の理由によって本件特許の請求項6、10及び11に係る特許を取り消すことはできない。
第7 結語
以上のとおり、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-701142