特許異議申立
2024-700726
上部にテーパ形状を持つ、深堀構造を有するシリコン基板の製造方法
- 審判番号
- 2024-700726
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-037939
- 登録番号
- 7438529
- 請求日
- 2024年07月31日
- 審決日
- 2025年07月23日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】サムコ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人京都国際特許事務所
- 【異議申立人】川嶋 健太
- 審判長/審判官
- 審判長 小宮 慎司
- 審判官 棚田 一也
- 審判官 打出 義尚
- 分類
- P1651.121-YAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7438529号発明「上部にテーパ形状を持つ、深堀構造を有するシリコン基板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7438529号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕、〔5、6〕について訂正することを認める。
特許第7438529号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7438529号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和 2年 3月 5日に出願され、令和 6年 2月16日にその特許権の設定登録がされ、同年同月27日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 6年 7月31日 :特許異議申立人川嶋健太(以下、「申立人」という。)による特許異議の申立て
令和 6年11月29日付け :取消理由通知書
令和 7年 1月30日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 7年 3月26日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出
令和 7年 5月 8日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
令和7年1月30日に提出され、同年3月26日提出の手続補正書(方式)により補正された訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)による訂正(以下、「本件訂正」という。)について検討する。
1 請求の趣旨
本件訂正の請求の趣旨は、特許第7438529号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲(以下、単に「訂正特許請求の範囲」という。)のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める、というものである。
2 訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正事項1~6よりなるものであって、以下のとおりである。(下線は本件訂正請求書のとおり。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記テーパ形状の下に深堀構造を形成する」及び「上部にテーパ形状を持つ深堀構造を有するシリコン基板の製造方法」と記載されているのを、「前記テーパ形状の下に前記シリコン基板を貫通しない深堀構造を形成する」及び「上部にテーパ形状を持ち、貫通しない深堀構造を有するシリコン基板の製造方法」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「上部にテーパ形状を持つ深堀構造を有するシリコン基板の製造方法」と記載されているのを、「上部にテーパ形状を持ち、貫通しない深堀構造を有するシリコン基板の製造方法」に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項3~4も同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「上部にテーパ形状を持つ深堀構造を有するシリコン基板の製造方法」と記載されているのを、「上部にテーパ形状を持ち、貫通しない深堀構造を有するシリコン基板の製造方法」に訂正する。(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「上部にテーパ形状を持つ深堀構造を有するシリコン基板の製造方法」と記載されているのを、「上部にテーパ形状を持ち、貫通しない深堀構造を有するシリコン基板の製造方法」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「前記テーパ形状の下に深堀構造を形成する第2工程」及び「上部にテーパ形状を持つ深堀構造を有するシリコン基板を製造するためのプラズマ処理装置」と記載されているのを、「前記テーパ形状の下に前記シリコン基板を貫通しない深堀構造を形成する第2工程」及び「上部にテーパ形状を持ち、貫通しない深堀構造を有するシリコン基板を製造するためのプラズマ処理装置」に訂正する。(請求項5の記載を引用する請求項6も同様に訂正する。)
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「上部にテーパ形状を持つ深堀構造を有するシリコン基板を製造するためのプラズマ処理装置」と記載されているのを、「上部にテーパ形状を持ち、貫通しない深堀構造を有するシリコン基板を製造するためのプラズマ処理装置」に訂正する。
(7)一群の請求項について
ア 請求項1~4について
訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4は特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
イ 請求項5、6について
訂正前の請求項5、6について、請求項6は請求項5を引用するものであって、訂正事項5によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項5、6に対応する訂正後の請求項5、6は特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「テーパ形状の下に」形成される「深堀構造」について、「前記シリコン基板を貫通しない」ことを限定すると共に、「上部にテーパ形状を持つ深堀構造」について「貫通しない」ことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の段落0002に記載された「深い溝(トレンチ)や穴(ホール)(以下、これらを総称して深堀構造と言う。)」、及び、段落0028に記載された「深堀構造の断面写真を図4(a)に示す。」を踏まえると、図4(a)から、上部にテーパ形状を持ち、シリコン基板を貫通しない深い溝(トレンチ)又は穴(ホール)、すなわち深堀構造が見て取れる。そうすると、本件明細書等には、テーパ形状の下にシリコン基板を貫通しない深堀構造が記載されているといえるから、訂正事項1は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
よって、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、上記アのとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載された「上部にテーパ形状を持つ深堀構造」について「貫通しない」ことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無
訂正事項2は、上記(1)イにおける検討と同様の理由により、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。
よって、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、上記アのとおり特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3、4及び6について
訂正事項3、4及び6は、上記(2)ア~ウにおける検討と同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項5について
訂正事項5は、上記(1)ア~ウにおける検討と同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項1~6について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1~6に係る訂正事項1~6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~4〕、〔5、6〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2で検討したとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、「本件発明1~6」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「 【請求項1】
シリコン基板を、SF6ガスとCF系ガスの混合ガスを用いて等方性エッチングすることにより表面側が大口径であるテーパ形状を形成する第1工程と、
前記第1工程後にSF6ガスとO2ガスとSiF4ガスの混合ガスを用いて深さ方向に強いエッチングを行う異方性エッチングにより前記テーパ形状の下に前記シリコン基板を貫通しない深堀構造を形成する第2工程
を備えることを特徴とする、上部にテーパ形状を持ち、貫通しない深堀構造を有するシリコン基板の製造方法。
【請求項2】
前記CF系ガスがC4F8ガス又はCF4ガスである請求項1に記載の上部にテーパ形状を持ち、貫通しない深堀構造を有するシリコン基板の製造方法。
【請求項3】
前記上部のテーパ形状の斜面のテーパ角を85°以下とする請求項1又は2に記載の上部にテーパ形状を持ち、貫通しない深堀構造を有するシリコン基板の製造方法。
【請求項4】
前記深堀構造の前記シリコン基板表面からの深さが、前記テーパ形状の表面の開口部の径よりも大きくなるようにする請求項1~3のいずれかに記載の上部にテーパ形状を持ち、貫通しない深堀構造を有するシリコン基板の製造方法。
【請求項5】
被処理シリコン基板を保持する基板保持部を有するプラズマ処理室と、
前記プラズマ処理室にSF6ガス、CF系ガス、O2ガス及びSiF4ガスをそれぞれ制御された流量で導入するためのガス導入部と、
前記プラズマ処理室内のガスをプラズマ化するための高周波電力を投入する電力部と、
前記ガス導入部及び前記電力部を制御することにより、前記基板保持部に保持されたシリコン基板を、SF6ガスとCF系ガスの混合ガスを用いて等方性エッチングすることにより表面側が大口径であるテーパ形状を形成する第1工程と、前記第1工程後にSF6ガスとO2ガスとSiF4ガスの混合ガスを用いて深さ方向に強いエッチングを行う異方性エッチングにより前記テーパ形状の下に前記シリコン基板を貫通しない深堀構造を形成する第2工程を行う制御部と
を備えることを特徴とする、上部にテーパ形状を持ち、貫通しない深堀構造を有するシリコン基板を製造するためのプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記ガス導入部におけるCF系ガスがC4F8ガス又は CF4ガスである請求項5に記載の上部にテーパ形状を持ち、貫通しない深堀構造を有するシリコン基板を製造するためのプラズマ処理装置。」
第4 特許異議の申立ての理由
申立人が主張する特許異議の申立ての理由(以下、「申立理由」という。)は、以下のとおりのものである。なお、申立人が提出した甲第1号証~甲第6号証を、以下、「甲1」~「甲6」という。
1 申立理由1(進歩性)
請求項1~6に係る発明は、甲1に記載された発明と甲2~甲5に記載された周知技術とに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 申立理由2(進歩性)
請求項1~4に係る発明は、甲6に記載された発明と甲2~甲5に記載された周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<申立人が提出した甲号証>
甲1:特開2018-137266号公報
甲2:特許第4722725号
甲3:特開2013-84695号公報
甲4:特許第5774356号
甲5:特開2007-103876号公報
甲6:特開2018-32757号公報
第5 取消理由の概要
当審が訂正前の請求項1~6に係る特許に対して、令和6年11月29日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
・取消理由(進歩性)
請求項1~6に係る発明は、甲1に記載された発明と甲2及び甲4に記載された周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第6 当審の判断
1 甲1を主引用例とした進歩性について(申立理由1及び取消理由)
(1)甲号証について
ア 甲1の記載、甲1に記載された発明
(ア)甲1には、以下の記載がある。(下線は当審で付した。以下同じ。)
「【0012】
本発明は以上の実情に鑑みなされたものであり、プラズマエッチング処理を利用することで、外周縁部が面取りされた形状の基板を切り出すことができ、外周縁部が面取りされた基板の製造コストを抑えることができるプラズマ加工方法及びこの方法を用いて製造された基板の提供を、その目的とする。」
「【0052】
[プラズマ加工装置]
まず、本発明の一実施形態に係るプラズマ加工方法の実施に用いるプラズマ加工装置1について説明する。図1に示すように、本例のプラズマ加工装置1は、内部空間の上方にプラズマ生成空間5が設定され、このプラズマ生成空間5よりも下方に処理空間6が設定される円筒状の処理チャンバ2と、前記プラズマ生成空間5に処理ガスを供給する処理ガス供給機構10と、前記プラズマ生成空間5内に誘導電界を発生させるための環状のコイル15と、このコイル15に高周波電力を供給するコイル電力供給機構20と、前記処理空間6内に配設され、基板Kを載置するための基台25と、この基台25に高周波電力を供給する基台電力供給機構30と、処理チャンバ2内の気体を排気する排気装置35とを備えている。
【0053】
前記処理チャンバ2は、アルミ合金からなる上チャンバ3及び下チャンバ4から構成されている。また、上チャンバ3及び下チャンバ4は、相互に連通した内部空間をそれぞれ有しており、上チャンバ3の内部空間がプラズマ生成空間5であり、下チャンバ4の内部空間が処理空間6である。尚、上チャンバ3は下チャンバ4よりも小さく形成される。
【0054】
前記処理ガス供給機構10は、処理ガスが貯留された処理ガス供給源11と、一方端が処理ガス供給源11に接続し、他方端が前記上チャンバ3の天板に形成された吐出口に接続した供給管12とからなる。この処理ガス供給機構10によれば、処理ガス供給源11から供給管12を介し、前記吐出口から垂直下方に向けて処理ガスが吐出され、上チャンバ3の内部空間に処理ガスが供給される。尚、前記処理ガスは、エッチングされる基板の種類によって異なるものであり、基板がシリコン基板である場合には、SF6ガスやIF5ガス、NF3ガス、F2ガスなどのエッチングガス、C4F8ガスやO2ガス、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンガス(HFO-1234yf)などの保護膜形成ガスを例示することができる。保護膜形成ガスとしては、温室効果ガス排出削減及びエッチングレート向上の観点から、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンガスが好ましい。また、炭化珪素基板である場合には、エッチングガスとしてSF6ガスやSiF4ガス、CF4ガス、CH3Fガス、保護膜形成ガスとしてO2ガスやSiF4ガス、SiCl4ガスなどを例示することができ、前記処理ガス供給源11は、用いられる処理ガスの数に応じて1つ以上設けられる。
【0055】
前記コイル15は、前記上チャンバ3の外周に捲回されており、コイル電力供給機構20によって高周波電力が供給されるようになっている。
【0056】
また、前記コイル電力供給機構20は、前記コイル15に接続されたマッチングユニット21や、このマッチングユニット21に接続された高周波電源22からなり、前記コイル15に高周波電力を供給する機構である。このコイル電力供給機構20によれば、コイル15に高周波電力が供給されることで、プラズマ生成空間5内に誘導電界が発生し、当該プラズマ生成空間5内に供給された処理ガスがプラズマ化され、所謂誘導結合プラズマ(ICP)が生成される。
【0057】
前記基台25は、基板Kが載置される上部材26と、昇降シリンダ28が接続された下部材27とから構成され、前記下チャンバ4の内部空間(処理空間6)に配置されている。
【0058】
前記基台電力供給機構30は、前記基台25に接続されたマッチングユニット31と、このマッチングユニット31に接続された高周波電源32とからなり、前記基台25に高周波電力を供給する機構である。この基台電力供給機構30によれば、基台25に高周波電力が供給されることで、基台25とプラズマとの間にバイアス電位が与えられる。
【0059】
前記排気装置35は、気体を排気する真空ポンプ36と、一端が前記真空ポンプ36に接続し、他端が下チャンバ4の側面に開口する排気口に接続した排気管37とからなる。この排気装置35によれば、真空ポンプ36によって処理チャンバ2内の気体を排気し、処理チャンバ2の内部空間が所定圧力に維持される。
【0060】
[プラズマ加工方法]
次に、以上の構成を備えたプラズマ加工装置1を用いて、基板Kをプラズマエッチングし、当該基板Kからより小さい基板K1を切り出す過程について、図2~図4を参照して説明する。尚、本例において、基板Kは半導体素子が形成される前のシリコン基板である。また、図2は基板Kの平面図であり、図3及び図4は基板K1を切り出す過程を模式的に示した図であり、図2~図4中の各符号は、Kが基板、K1が切り出される(切り出された)基板、Mfが表面側マスク、Sがテープ、Dが加工領域、Tがトレンチ、T1,T2がトレンチTの角部をそれぞれ示している。
【0061】
まず、切り出される基板K1の厚みを所望の厚さにするために、基板Kをプラズマ加工装置1内に搬入して基台25上に載置し、基板Kの表面全体をエッチングする(シンニング(薄化)工程)。具体的には、処理ガス供給機構10によって処理チャンバ2内にSF6ガスを所定の流量で供給し、コイル電力供給機構20及び基台電力供給機構30によってコイル15及び基台25に高周波電力を印加する。尚、処理チャンバ2内の圧力は、前記排気装置35によって所定の圧力まで減圧されている。
【0062】
これにより、処理チャンバ2内に供給したSF6ガスがプラズマ化され、当該プラズマに含まれるエッチング種とシリコン原子との化学反応によって基板Kの表面全面がエッチングされる。
【0063】
次に、基板Kを処理チャンバ2から搬出し、表面側マスク形成工程を実施する。この表面側マスク形成工程では、例えば、蒸着法(化学気相蒸着法(CVD)や物理気相蒸着法(PVD))、フォトレジストの塗布などによって、加工領域Dに対応する部分にのみ開口部Mf1が形成された所定パターンの表面側マスクMfを形成させる(図2参照)。尚、図2では、加工領域Dを網掛けで示した。また、表面側マスクMfとしては、レジストマスクや酸化膜、メタルマスク、積層膜などを例示することができる。
・・・(中略)・・・
【0065】
次に、表面側マスクMfを形成させた基板Kを処理チャンバ2内の基台25上に載置して、当該基板Kに対して表面側エッチング工程を実施する。尚、本例においては、基板Kの裏面に絶縁性を有するテープSを貼付するようにし(図3(a)参照)、切り出した際に基板K1が四散しないようにしている。
【0066】
表面側エッチング工程においては、処理ガス供給機構10によって、処理チャンバ2内にSF6ガス、C4F8ガス及びO2ガスを所定の流量で供給し、コイル電力供給機構20及び基台電力供給機構30によってコイル15及び基台25に高周波電力を印加し、また、処理チャンバ2内の圧力が所定の圧力となるように、排気装置35によって処理チャンバ2内の気体を排気する。
【0067】
これにより、処理チャンバ2内に供給したSF6ガス、C4F8ガス及びO2ガスがプラズマ化され、表面側マスクMfの開口部を通して、基板Kへの保護膜の形成及び除去が並行して行われつつ、SF6ガスのプラズマ化により生成したエッチング種(例えばフッ素ラジカル)がシリコン原子と化学反応することによって基板Kが等方的にエッチングされる。この表面側エッチング工程を所定時間実施することで、図3(b)に示すように、加工領域Dがエッチングされるとともに、表面側マスクMfの直下部もエッチングされ、基板Kにテーパ形状のトレンチTが形成される。尚、表面側エッチング工程でエッチングされたマスク直下部の形状は処理条件によって変化するため、当該表面側エッチング工程の処理条件を調整して表面外周縁部を所望の形状にすることができる。
【0068】
ついで、貫通工程を実施する。具体的に、この貫通工程では、前記表面側エッチング工程で形成されたトレンチTに保護膜を形成する処理(保護膜形成処理)と、前記トレンチTの底部から保護膜を除去するとともに、前記加工領域Dをエッチングする(エッチング処理)とを繰り返すサイクルを複数回行う。
【0069】
まず、保護膜形成処理では、処理チャンバ2内にC4F8ガスを所定の流量で供給し、コイル電力供給機構20によってコイル15に高周波電力を印加し、また、処理チャンバ2内の圧力が所定の圧力となるように、排気装置35によって処理チャンバ2内の気体を排気する。これにより、前記表面側エッチング工程で形成されたトレンチTの内壁に保護膜が形成される。
【0070】
ついで、エッチング処理を行う。このエッチング処理では、処理チャンバ2内にSF6ガスを所定流量で供給し、コイル電力供給機構20及び基台電力供給機構30によってコイル15及び基台25に高周波電力を供給し、また、処理チャンバ2内の圧力が所定の圧力となるように、排気装置35によって処理チャンバ2内の気体を排気する。
【0071】
これにより、処理チャンバ2内に供給したSF6ガスがプラズマ化され、当該SF6ガスのプラズマ化により生成したフッ素イオンが基板Kに入射することで、トレンチT底部の保護膜が除去される。また、生成したフッ素イオンが基板Kに入射する、又はSF6ガスのプラズマ化により生成したエッチング種がシリコン原子と化学反応することによって、基板Kがエッチングされる(図3(c)参照)。
【0072】
以降、加工領域Dがエッチングによって除去され、基板Kに表裏面に貫通するトレンチTが形成されるまで、保護膜形成処理及びエッチング処理を一定回数繰り返し実施する。
・・・(中略)・・・
【0075】
その後、表面側マスクMfを除去し、仕上げ工程を行う(図4(b)参照)。この仕上げ工程では、処理チャンバ2内にSF6ガス、C4F8ガス及びO2ガスを所定流量で供給し、コイル電力供給機構20及び基台電力供給機構30によってコイル15及び基台25に高周波電力を供給し、また、処理チャンバ2内の圧力が所定の圧力となるように、排気装置35によって処理チャンバ2内の気体を排気する。
【0076】
これにより、表面側エッチング工程でエッチングされた部分と、貫通工程でエッチングされた部分との間の角部T1や、基板K表面と表面側エッチング工程でエッチングされた部分との間の角部T2が等方的なエッチングによって丸められ、切り出された基板K1の表面外周縁部が丸面取りされた状態となる。尚、この仕上げ工程の処理条件を適宜調整することによって、基板K1の表面粗さを低減することもできる。
【0077】
斯くして、図4(c)に示すように、基板Kから、表裏面の外周縁部が丸面取りされた基板K1が切り出される。そして、このプラズマ加工方法においては、貫通工程において、保護膜形成処理及びエッチング処理を交互に行ってトレンチTを形成するようにしているため、切り出された基板K1の外周面(トレンチTの側壁に相当)は、図5に示すように、所謂スキャロップ形状を有したものとなる。」
「【0082】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の採り得る態様は何らこれに限定されるものではない。
・・・(中略)・・・
【0086】
また、上例の貫通工程においては、保護膜形成処理とエッチング処理と繰り返すことによって、基板Kを異方的にエッチングするようにしているが、貫通工程において異方的なエッチングを行う他の態様としては、保護膜の形成と基板Kのエッチングとを同時に行うようにし、基台25に印加する電圧を徐々に大きくする方法などを例示することができ、貫通工程における基板を異方的にエッチングする手法や処理条件は、基板の材質等に合わせて適宜選択し得る。
・・・(中略)・・・
【0096】
また、上例のプラズマ加工方法においては、表面側エッチング工程と貫通工程とを実施することで、基板K1を切り出すようにしているが、これに限られるものではなく、表面側エッチング工程を実施した後、深掘り工程、裏面側エッチング工程及び貫通工程を行うようにしても良い。これについて、図10及び図11を参照して以下説明する。
【0097】
上例における表面側エッチング工程を実施した後、表面側マスクMfの開口部Mf1を通して基板Kを異方的にエッチングする深掘り工程を実施し、図10(a)に示すように、基板KにトレンチTを形成する。尚、この深掘り工程において、基板Kを異方的にエッチングする手法としては、前記貫通工程と同様に、保護膜形成処理及びエッチング処理を繰り返す手法などを例示することができ、当該深掘り工程において、基板Kを異方的にエッチングする手法及びその処理条件は、適宜選択することができる。
【0098】
ついで、基板Kの表面からマスクMfを除去した後、基板Kの表面にテープSを貼付して、基板Kを表裏反転させて裏面側マスク形成工程を実施する(図10(b)参照)。この裏面側マスク形成工程では、表面側マスク形成工程と同様、所定の方法によって加工領域Dに対応する部分に開口部Mb1が形成された裏面側マスクMbを形成させる(図10(c)参照)。この裏面側マスクMbは、上記と同様、レジストマスクや酸化膜、メタルマスク、積層膜などである。
【0099】
次に、裏面側マスクMbを形成させた基板Kを基台25上に載置し、この基板Kを等方的にエッチングする裏面側エッチング工程を実施して、裏面側マスクMbの開口部Mb1を通して基板Kの裏面側マスクMb直下部をエッチングする。これにより、図11(a)に示すように、基板Kの裏面側にテーパ形状のトレンチTが形成される。尚、この裏面側エッチング工程においても、基板Kを等方的にエッチングする手法及びその処理条件は、適宜選択すれば良い。
【0100】
その後、貫通工程を実施する。この貫通工程では、前記深掘り工程で形成されたトレンチTの底部に貫通するまで、裏面側マスクMbの開口部Mb1を通して基板Kを異方的にエッチングする。これにより、基板Kには、表裏面に貫通し、上部及び下部がテーパ形状となったトレンチTが形成され、表裏面外周縁部が面取りされた基板K1が切り出される(図11(b)参照)。」
「【図3】
[図:0001427952000001.jpg]
【図4】
[図:0001427952000002.jpg]
」
「【図10】
[図:0001427952000003.jpg]
【図11】
[図:0001427952000004.jpg]
」
(イ)上記(ア)から、以下のことがいえる。
a 段落0060には、「基板Kは半導体素子が形成される前のシリコン基板である。」と記載されている。
よって、基板Kはシリコン基板である。
b 段落0052には、「本例のプラズマ加工処理装置は」「処理チャンバ2」「を備えている。」と記載され、段落0061には、「切り出される基板K1の厚みを所望の厚さにするために、基板Kをプラズマ加工装置1内に搬入して基台25上に載置し、基板Kの表面全体をエッチングする(シンニング(薄化)工程)。」と記載され、段落0063には、「次に、基板Kを処理チャンバ2から搬出し、表面側マスク形成工程を実施する。この表面側マスク形成工程では」、「加工領域Dに対応する部分にのみ開口部Mf1が形成された所定パターンの表面側マスクMfを形成させる(図2参照)。」と記載されている。
よって、上記aを踏まえると、甲1には、切り出されるシリコン基板の厚みを所望の厚さにするために、シリコン基板をプラズマ加工装置1内に搬入して基台25上に載置し、シリコン基板の表面全体をエッチングする薄化工程を実施し、次に、シリコン基板をプラズマ加工処理装置の処理チャンバ2から搬出し、加工領域Dに対応する部分にのみ開口部Mf1が形成された所定パターンの表面側マスクMfを形成させる、表面側マスク形成工程を実施することが記載されている。
c 段落0065には、「次に、表面側マスクMfを形成させた基板Kを処理チャンバ2内の基台25上に載置して、当該基板Kに対して表面側エッチング工程を実施する。」と記載され、段落0066には、「表面側エッチング工程においては、処理ガス供給機構10によって、処理チャンバ2内にSF6ガス、C4F8ガス及びO2ガスを所定の流量で供給し、コイル電力供給機構20及び基台電力供給機構30によってコイル15及び基台25に高周波電力を印加し、また、処理チャンバ2内の圧力が所定の圧力となるように、排気装置35によって処理チャンバ2内の気体を排気する。」と記載され、段落0067には、「これにより、処理チャンバ2内に供給したSF6ガス、C4F8ガス及びO2ガスがプラズマ化され、表面側マスクMfの開口部を通して、基板Kへの保護膜の形成及び除去が並行して行われつつ、SF6ガスのプラズマ化により生成したエッチング種(例えばフッ素ラジカル)がシリコン原子と化学反応することによって基板Kが等方的にエッチングされる。この表面側エッチング工程を所定時間実施することで、図3(b)に示すように」「基板Kにテーパ形状のトレンチTが形成される。」と記載され、図3(b)から、基板Kに表面側が大口径であるテーパ形状のトレンチが形成されることが見て取れる。
よって、上記a及びbを踏まえると、甲1には、表面側マスク形成工程の次に、表面側マスクMfを形成させたシリコン基板を処理チャンバ2内の基台25上に載置して、シリコン基板に対して表面側エッチング工程を実施し、表面側エッチング工程においては、処理ガス供給機構10によって、処理チャンバ2内にSF6ガス、C4F8ガス及びO2ガスを所定の流量で供給し、コイル電力供給機構20及び基台電力供給機構30によってコイル15及び基台25に高周波電力を印加し、また、処理チャンバ2内の圧力が所定の圧力となるように、排気装置35によって処理チャンバ2内の気体を排気し、これにより、処理チャンバ2内に供給したSF6ガス、C4F8ガス及びO2ガスがプラズマ化され、表面側マスクMfの開口部Mf1を通して、シリコン基板への保護膜の形成及び除去が並行して行われつつ、SF6ガスのプラズマ化により生成したエッチング種(例えばフッ素ラジカル)がシリコン原子と化学反応することによってシリコン基板が等方的にエッチングされ、シリコン基板に表面側が大口径であるテーパ形状のトレンチが形成されることが記載されている。
d (a)段落0086には、「上例の貫通工程においては、保護膜形成処理とエッチング処理と繰り返すことによって、基板Kを異方的にエッチングするようにしているが、貫通工程において異方的なエッチングを行う他の態様としては、保護膜の形成と基板Kのエッチングとを同時に行うようにし、基台25に印加する電圧を徐々に大きくする方法などを例示することができ、貫通工程における基板を異方的にエッチングする手法や処理条件は、基板の材質等に合わせて適宜選択し得る。」と記載され、「貫通工程における基板を異方的にエッチングする手法」として、「保護膜形成処理とエッチング処理と繰り返すことによって、基板Kを異方的にエッチングする」手法、又は、「保護膜の形成と基板Kのエッチングとを同時に行うようにし、基台25に印加する電圧を徐々に大きくする」手法から適宜選択し得ることが記載されている。
(b)段落0097には、「上例における表面側エッチング工程を実施した後、表面側マスクMfの開口部Mf1を通して基板Kを異方的にエッチングする深掘り工程を実施し、図10(a)に示すように、基板KにトレンチTを形成する。尚、この深掘り工程において、基板Kを異方的にエッチングする手法としては、前記貫通工程と同様に、保護膜形成処理及びエッチング処理を繰り返す手法などを例示することができ、当該深掘り工程において、基板Kを異方的にエッチングする手法及びその処理条件は、適宜選択することができる。」と記載され、上記(a)を踏まえると、表面側エッチング工程を実施した後、保護膜形成処理及びエッチング処理を繰り返す手法、又は、保護膜の形成と基板Kのエッチングとを同時に行うようにし、基台25に印加する電圧を徐々に大きくする手法のいずれかを用いて、表面側マスクMfの開口部Mf1を通して基板Kを異方的にエッチングする深掘り工程を実施し、基板Kに、トレンチを形成することが記載されている。
(c)さらに、図10(a)から、基板Kのテーパ形状のトレンチの下に、テーパ形状のトレンチよりも深いトレンチが形成されることが見て取れる。
(d)上記aと、上記(b)及び(c)によれば、甲1には、表面側エッチング工程を実施した後、保護膜の形成とシリコン基板のエッチングとを同時に行うようにし、基台25に印加する電圧を徐々に大きくする手法を用いて、表面側マスクMfの開口部Mf1を通してシリコン基板を異方的にエッチングする深掘り工程を実施し、シリコン基板のテーパ形状のトレンチの下に、テーパ形状のトレンチよりも深いトレンチを形成することが記載されている。
e 上記(ア)並びに上記a~dによれば、甲1には、以下の発明(以下、「甲1製法発明」及び「甲1装置発明」という。)が記載されている。
<甲1製法発明>
「 切り出されるシリコン基板の厚みを所望の厚さにするために、シリコン基板をプラズマ加工装置1内に搬入して基台25上に載置し、シリコン基板の表面全体をエッチングする薄化工程を実施し、(上記b)
次に、シリコン基板をプラズマ加工処理装置1の処理チャンバ2から搬出し、加工領域Dに対応する部分にのみ開口部Mf1が形成された所定パターンの表面側マスクMfを形成させる、表面側マスク形成工程を実施し、(上記b)
次に、表面側マスクMfを形成させたシリコン基板を処理チャンバ2内の基台25上に載置して、シリコン基板に対して表面側エッチング工程を実施し、表面側エッチング工程においては、処理ガス供給機構10によって、処理チャンバ2内にSF6ガス、C4F8ガス及びO2ガスを所定の流量で供給し、コイル電力供給機構20及び基台電力供給機構30によってコイル15及び基台25に高周波電力を印加し、また、処理チャンバ2内の圧力が所定の圧力となるように、排気装置35によって処理チャンバ2内の気体を排気し、これにより、処理チャンバ2内に供給したSF6ガス、C4F8ガス及びO2ガスがプラズマ化され、表面側マスクMfの開口部Mf1を通して、シリコン基板への保護膜の形成及び除去が並行して行われつつ、SF6ガスのプラズマ化により生成したエッチング種(例えばフッ素ラジカル)がシリコン原子と化学反応することによってシリコン基板が等方的にエッチングされ、シリコン基板に表面側が大口径であるテーパ形状のトレンチが形成され、(上記c)
表面側エッチング工程を実施した後、保護膜の形成とシリコン基板のエッチングとを同時に行うようにし、基台25に印加する電圧を徐々に大きくする手法を用いて、表面側マスクMfの開口部Mf1を通してシリコン基板を異方的にエッチングする深掘り工程を実施し、シリコン基板のテーパ形状のトレンチの下に、テーパ形状のトレンチよりも深いトレンチを形成し、(上記d)
シリコン基板の表面からマスクMfを除去した後、シリコン基板の表面にテープSを貼付して、シリコン基板を表裏反転させて裏面側マスク形成工程を実施し、(段落0098)
このシリコン基板を等方的にエッチングする裏面側エッチング工程を実施して、裏面側マスクMbの開口部Mb1を通してシリコン基板の裏面側マスクMb直下部をエッチングし、(段落0099)
前記深掘り工程で形成されたトレンチの底部に貫通するまで、裏面側マスクMbの開口部Mb1を通してシリコン基板を異方的にエッチングし、
これにより、シリコン基板には、表裏面に貫通し、上部及び下部がテーパ形状となったトレンチが形成され、表裏面外周縁部が面取りされたシリコン基板が切り出される、(段落0100)
プラズマ加工方法。(段落0060)」
<甲1装置発明>
「 内部空間の上方にプラズマ生成空間5が設定され、このプラズマ生成空間5よりも下方に処理空間6が設定される円筒状の処理チャンバ2と、前記プラズマ生成空間5に処理ガスを供給する処理ガス供給機構10と、前記プラズマ生成空間5内に誘導電界を発生させるための環状のコイル15と、このコイル15に高周波電力を供給するコイル電力供給機構20と、前記処理空間6内に配設され、シリコン基板を載置するための基台25と、この基台25に高周波電力を供給する基台電力供給機構30と、処理チャンバ2内の気体を排気する排気装置35とを備えているプラズマ加工装置1であって、(段落0052)
コイル電力供給機構20によれば、コイル15に高周波電力が供給されることで、プラズマ生成空間5内に誘導電界が発生し、当該プラズマ生成空間5内に供給された処理ガスがプラズマ化され、誘導結合プラズマ(ICP)が生成され、(段落0056)
プラズマ加工装置1を用いて、表面側マスクMfを形成させたシリコン基板を処理チャンバ2内の基台25上に載置して、シリコン基板に対して表面側エッチング工程を実施し、表面側エッチング工程においては、処理ガス供給機構10によって、処理チャンバ2内にSF6ガス、C4F8ガス及びO2ガスを所定の流量で供給し、コイル電力供給機構20及び基台電力供給機構30によってコイル15及び基台25に高周波電力を印加し、また、処理チャンバ2内の圧力が所定の圧力となるように、排気装置35によって処理チャンバ2内の気体を排気し、これにより、処理チャンバ2内に供給したSF6ガス、C4F8ガス及びO2ガスがプラズマ化され、表面側マスクMfの開口部Mf1を通して、シリコン基板への保護膜の形成及び除去が並行して行われつつ、SF6ガスのプラズマ化により生成したエッチング種(例えばフッ素ラジカル)がシリコン原子と化学反応することによってシリコン基板が等方的にエッチングされ、シリコン基板に表面側が大口径であるテーパ形状のトレンチが形成され、(上記c)
表面側エッチング工程を実施した後、保護膜の形成とシリコン基板のエッチングとを同時に行うようにし、基台25に印加する電圧を徐々に大きくする手法を用いて、表面側マスクMfの開口部Mf1を通してシリコン基板を異方的にエッチングする深掘り工程を実施し、シリコン基板のテーパ形状のトレンチの下に、テーパ形状のトレンチよりも深いトレンチを形成し、(上記d)
シリコン基板の表面からマスクMfを除去した後、シリコン基板の表面にテープSを貼付して、シリコン基板を表裏反転させて裏面側マスク形成工程を実施し、(段落0098)
このシリコン基板を等方的にエッチングする裏面側エッチング工程を実施して、裏面側マスクMbの開口部Mb1を通してシリコン基板の裏面側マスクMb直下部をエッチングし、(段落0099)
前記深掘り工程で形成されたトレンチの底部に貫通するまで、裏面側マスクMbの開口部Mb1を通してシリコン基板を異方的にエッチングし、
これにより、シリコン基板には、表裏面に貫通し、上部及び下部がテーパ形状となったトレンチが形成され、表裏面外周縁部が面取りされたシリコン基板が切り出される、(段落0100)
プラズマ加工装置1。(段落0052)」
イ 甲2の記載
甲2には、以下の記載がある。
「【0048】
エッチングガスとしては、SF6とO2とSiF4を含むガスを用いることが好ましい。SF6ガスは、プラズマ中で生成されるF原子の密度が他のフッ素系ガスよりも数倍大きいことや、SF6に含まれるS原子がSi表面の酸化を防止してSiエッチングを促進する働きがあることから、シリコンエッチングに好適に用いることができる。また、O2ガスは、シリコン基板101中のシリコンと反応して側壁にシリコン酸化膜(SiOx)を形成し、垂直方向への異方性エッチングを促進する働きがある。さらに、SiF4は、プラズマ中で解離して気相状態のSiを生成させるので、このSiがO2分子や酸素ラジカルと反応することにより、マスク(SiO2層102)上にシリコン酸化膜(SiOx)を堆積するとともに側壁保護膜(SiOx)を増強させ、マスク選択比を改善し、サイドエッチングの進行を抑制する作用がある。」
ウ 甲3の記載
甲3には、以下の記載がある。
「【0051】
プロセスコントローラ61は、処理ガス供給源15およびガス調整部15bを制御して、SF6、O2、SiF4およびHBrのガスを、例えば図3の「Non-DYP」に示す流量で処理チャンバー1に所定時間供給し、シリコン層をエッチングする(ステップS81。以下「S81」のように称する。)。なお、ステップ81は、Non-DYP工程に相当する。具体的には、排気装置73により処理チャンバー1内を排気した状態で、処理ガス供給源15およびガス調整部15bにより処理ガス(混合ガス)を所定の流量で処理空間1bに導入し、処理チャンバー1内の圧力を設定値にする。また、直流電源12によりウエハWを載置台2に静電引力により固定することによって支持した状態で、第1の高周波電源10aにより第1の高周波電力を載置台2に供給する。すると、シャワーヘッド16より吐出されたエッチングガスはマグネトロン放電によりプラズマ化され、プラズマ化したプラズマはウエハWに照射される。
・・・(中略)・・・
【0055】
図12Bに示すように、保護膜155は、マスク膜154の上面、マスク膜154の開口部154aの側壁、第2のハードマスク膜153の開口部153aの側壁、第1のハードマスク膜152の開口部152aの側壁、及びシリコン層151の穴部151aの側壁151b(図12C参照。)に堆積する。一方、シリコン層151の穴部151aの底面151cは、ウエハW表面から最も遠いため、マスク膜154の上面からシリコン層151の穴部151aの側壁151bにかけての部分と比較して、保護膜155の堆積速度が小さい。従って、穴部151aを深さ方向にエッチングするエッチング速度が穴部151aを横方向にエッチングするエッチング速度に対して大きくなる異方性エッチングを行うことができ、穴部151aの側壁151bをウエハW表面に対して垂直にすることができる。」
エ 甲4の記載
甲4には、以下の記載がある。
「【0018】
次に、本実施例1における溝からなる深いシリコントレンチエッチング方法の具体的な例を説明する。ここでは、前述のプラズマエッチング装置を使用し、SF6,O2,SiF4の混合ガスプラズマを主体としたプロセスにおける一例を示す。
・・・(中略)・・・
【0021】
上記のエッチング過程において、エッチング処理室101に導入されたSF6とO2、SiF4ガスが、それぞれSi、S、F、Oのイオン及びラジカルに解離し、被処理基板202の表面との反応とともにSiFやSiOを生成する。
【0022】
一方、トレンチ開口部203内のエッチングの進行と同時に、適度なSiOが側壁保護膜として形成され、Fラジカルによる等方的エッチングを抑制し、異方性・高速エッチングが可能となっている。また、上述の説明では混合ガスとしてSiF4の含有を必須としたが、側壁保護膜として適度なSiOが形成されればSF6とO2ガスでも本発明は達成される。」
オ 甲5の記載
甲5には、以下の記載がある。
「【0007】
また、上記特許文献2の従来技術では、アスペクト比率が高い低開口(3μm未満)および深穴(20μm以上)に対するエッチング方法については記載されておらず、アスペクト比が高い構造のトレンチに対してのエッチング方法が確立されていない為、深さ方向のエッチングが進行する過程において、エッチングが完了した上層部のトレンチ側壁面での側壁保護が不十分となり、エッチング終了過程において側壁荒れが生じるという課題が挙げられる。
・・・(中略)・・・
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、シリコン基板、または、シリコン酸化物誘電体層を含むシリコン基板に対して、SF6とO2からなる混合ガス、または、SF6、O2とSiF4からなる混合ガスに、その混合された総ガス流量の5%~16%の範囲で水素を含有するガスを添加した混合ガスプラズマでシリコントレンチを形成して溝または穴を形成するプラズマエッチングを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高速エッチングレートを維持したまま、すなわち、スループットを維持したままで、トレンチ形状、特に側面荒れの無い形状を提供する事ができる。また、トレンチ側壁面の保護には微量のH(水素)を含むガスを添加することにより達成される為、チャンバー内壁などに付着する反応副生成物の急激な増加は無視する事ができるため、チャンバー内はクリーンな状態を維持することができる。」
「【0017】
次に、本発明のSiエッチング方法の具体的な実施例を以下、説明する。
ここでは、前述のプラズマエッチング装置を使用し、SF6,O2,SiF4の混合ガスプラズマを主体としたプロセスにおける一例を示す。被処理基板102の詳細構造とエッチング後の状態を図2に示す。
【0018】
図2(a)に示す通り、被処理基板202は、SiO2などからなるマスク材201でパターニングされたSi基板において、図2(b)に示すようにトレンチ開口部203のエッチングが進行する。このエッチングはエッチング処理室101に導入されたSF6とO2ガスが、それぞれSi、S、F、Oのイオン及びラジカルに解離し、被処理基板202表面との反応とともにSiFやSiOを生成する。この反応過程で発生したSiF、およびSiF4ガスの解離で発生したSiFが、トレンチ開口部203内のエッチングを牽引する。
【0019】
一方、トレンチ開口部203内のエッチングの進行と同時に、適度なSiOが側壁保護膜として形成され、Fラジカルによる等方的エッチングを抑制し、異方性・高速エッチングが可能となっている。また、SF6とO2ガスの混合ガスプラズマで基板のシリコンとの反応によって生成したSiOが、比較的薄くチャンバー内壁に形成される為、付着物の剥離による異物発生が少なく、ウエット周期を長くできる利点もある。
また、上述の説明では混合ガスとしてSiF4の含有を必須としたが、側壁保護膜として適度なSiOが形成されればSF6とO2ガスでも本発明は達成される。」
「【0025】
図4は、前述のエッチング形状を示す一例である。アスペクト比が比較的小さい構造(被処理基板202に形成されるトレンチ開口部203の径に対する深さの比であるアスペクト比が5程度)では、図4(a)に示す通り、トレンチ側壁に面荒れの無いエッチング形状を得る事が出来た。また、図4(b)に示す通り、アスペクト比が大きい構造(被処理基板202に形成されるトレンチ開口部203の径に対する深さの比であるアスペクト比が7程度)においても、エッチングストップなどの弊害が発生せず、トレンチ側壁に面荒れが無いエッチング形状を得る事が出来た。」
「【図4】
[図:0001427952000005.jpg]
」
(2) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と、甲1製法発明とを対比する。
(ア)甲1製法発明において、「C4F8ガス」がCF系ガスであることを踏まえると、甲1製法発明の「SF6ガス、C4F8ガス及びO2ガス」は、SF6ガス及びCF系ガスを含む混合ガスであるから、本件発明1の「SF6ガスとCF系ガスの混合ガス」に相当する。
そして、甲1製法発明の「表面側エッチング工程を実施し、表面側エッチング工程においては」「処理チャンバ2内に供給したSF6ガス、C4F8ガス及びO2ガスがプラズマ化され」、「SF6ガスのプラズマ化により生成したエッチング種(例えばフッ素ラジカル)がシリコン原子と化学反応することによってシリコン基板が等方的にエッチングされ、シリコン基板に表面側が大口径であるテーパ形状のトレンチが形成され」ることは、本件発明1の「シリコン基板を、SF6ガスとCF系ガスの混合ガスを用いて等方性エッチングすることにより表面側が大口径であるテーパ形状を形成する第1工程」に相当する。
(イ)a 甲1製法発明において、「シリコン基板を異方的にエッチングする深掘り工程」は、エッチングにより「深いトレンチを形成する」ものであるから、深さ方向に強いエッチングを行う異方性エッチングによりトレンチを形成するものである。
b 本件明細書の段落0002には、「深い溝(トレンチ)や穴(ホール)(以下、これらを総称して深堀構造と言う。)」と記載されており、深い溝(トレンチ)は「深堀構造」であるといえる。また、トレンチが底部を有することは明らかであるから、甲1製法発明の「トレンチ」は「シリコン基板」を貫通しないものであるといえる。よって、甲1製法発明の「深いトレンチ」は、本件発明1の「シリコン基板を貫通しない深堀構造」に相当する。
c 上記a及びbによれば、甲1製法発明において、「表面側エッチング工程を実施した後」、「シリコン基板を異方的にエッチングする深掘り工程を実施し、シリコン基板のテーパ形状のトレンチの下に、テーパ形状のトレンチよりも深いトレンチを形成すること」は、「前記第1工程後に」「深さ方向に強いエッチングを行う異方性エッチングにより前記テーパ形状の下に前記シリコン基板を貫通しない深堀構造を形成する」点で、本件発明1の「第2工程」と共通する。
(ウ) 甲1製法発明の「表裏面外周縁部が面取りされたシリコン基板が切り出される、プラズマ加工方法」は、「表裏面外周縁部が面取りされたシリコン基板」の製造方法であるといえる。よって、上記(ア)及び(イ)を踏まえると、本件発明1と甲1製法発明とは、「第1工程」及び「第2工程」を備える「製造方法」である点で、一致する。
(エ)上記(ア)~(ウ)によれば、本件発明1と甲1製法発明とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「 シリコン基板を、SF6ガスとCF系ガスの混合ガスを用いて等方性エッチングすることにより表面側が大口径であるテーパ形状を形成する第1工程と、
前記第1工程後に深さ方向に強いエッチングを行う異方性エッチングにより前記テーパ形状の下に前記シリコン基板を貫通しない深堀構造を形成する第2工程
を備える、
製造方法。」
<相違点1>
本件発明1は、「第2工程」の「異方性エッチング」において「SF6ガスとO2ガスとSiF4ガスの混合ガスを用い」るのに対し、甲1製法発明は、「異方的にエッチングする深掘り工程」において「保護膜の形成とシリコン基板のエッチングとを同時に行うように」するものであるが、その際に用いるガスが特定されていない点。
<相違点2>
本件発明1は、「上部にテーパ形状を持ち、貫通しない深堀構造を有するシリコン基板の製造方法」であるのに対し、甲1製法発明は、「シリコン基板には、表裏面に貫通し、上部及び下部がテーパ形状となったトレンチが形成され、表裏面外周縁部が面取りされたシリコン基板が切り出される、プラズマ加工方法」である点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2から検討する。
(ア)甲1の段落0012には、「外周縁部が面取りされた形状の基板を切り出すことができ、外周縁部が面取りされた基板の製造コストを抑えることができるプラズマ加工方法」「の提供を、その目的とする。」と記載されている。したがって、甲1製法発明は、外周縁部が面取りされた形状の基板を切り出すことを目的とするものであるといえる。
(イ)そうすると、甲1製法発明において、「深掘り工程」を実施した後、「トレンチの底部に貫通するまで」「エッチング」することなく、貫通しない深堀構造を有するシリコン基板の製造方法とした場合、甲1製法発明の目的を達成することはできない。
よって、甲1製法発明において、相違点2に係る本件発明1の構成とすることには阻害要因がある。
(ウ)そして、甲2~甲5の記載は、上記(イ)の判断を変えるものではない。したがって、甲2~甲5の記載を参照しても、甲1製法発明を、相違点2に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易になし得たことではない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は、令和7年5月8日提出の意見書の第1頁下から15行~6行、第2頁第7行~第11行、及び、第4頁第16行~第18行において、甲1の段落0096~段落0098及び図10には、基板K1に対して表面側エッチングを実施して、上部にテーパ形状を形成し、その後、異方性エッチングを実施して、貫通しない深堀り構造を形成する記載があり、テーパ形状と深堀構造とが形成及び維持されたシリコン基板は明確に開示されているから、本件発明1の「上部にテーパ形状を持ち、貫通しない深堀構造を有するシリコン基板の製造方法」は、甲1に記載されている旨主張している。
(イ)a 上記主張について検討する。一般に、「製造」は、「原料に人工を加えて製品とすること。」(広辞苑第四版)を意味するから、本件発明1の「貫通しない深堀構造を有するシリコン基板の製造方法」は、原料を加工して製品としての「貫通しない深堀構造を有するシリコン基板」にする方法であるといえる。
b 一方、申立人が主張する、甲1の段落0096~段落0098及び図10に示された「テーパ形状と深堀構造とが形成されたシリコン基板」は、甲1の段落0099、段落0100及び図11によれば、「次に」「基板Kを等方的にエッチングする裏面側エッチング工程を実施し」、「その後」「貫通工程を実施」し、「これにより、基板Kには、表裏面に貫通し、上部及び下部がテーパ形状となったトレンチTが形成され、表裏面外周縁部が面取りされた基板K1が切り出される」ものであり、「表裏面外周縁部が面取りされた基板K1」を切り出す製造過程の途中の状態であるから、甲1において製造される製品ではない。
c したがって、甲1に、「上部にテーパ形状を持ち、貫通しない深堀構造を有するシリコン基板の製造方法」が記載されているとはいえず、上記申立人の主張を採用することはできない。
エ 小括
以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2~甲5の記載を参照しても、甲1製法発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2~4について
請求項2~4の記載は、直接又は間接的に請求項1の記載を引用するものであるところ、本件発明2~4は、本件発明1の構成を全て備えるものであるから、相違点2に係る本件発明1の構成も備えるものである。
そうすると、上記(2)イにおける検討と同様の理由により、本件発明2~4は、甲2~甲5の記載を参照しても、甲1製法発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明5について
ア 対比
本件発明5と甲1装置発明とを対比する。
(ア)甲1装置発明の「シリコン基板を載置するための基台25」は、本件発明5の「被処理シリコン基板を保持する基板保持部」に相当する。そして、甲1装置発明の「処理チャンバ2」は、「処理空間6が設定され」、「前記処理空間6内に」「基台25」が配設されるものであるから、本件発明5の「被処理シリコン基板を保持する基板保持部を有するプラズマ処理室」に相当する。
(イ)甲1装置発明の「処理ガス供給機構10」は、「プラズマ生成空間5に処理ガスを供給する」ものであり、また、「SF6ガス、C4F8ガス及びO2ガスを所定の流量で供給」するから、「前記プラズマ処理室にSF6ガス、CF系ガス、O2ガス」「をそれぞれ制御された流量で導入する」点で、本件発明5の「ガス導入部」と共通する。
(ウ)甲1装置発明において、「コイル電力供給機構20によれば」「当該プラズマ生成空間5内に供給された処理ガスがプラズマ化され」るから、甲1装置発明の「コイル電力供給機構20」は、本件発明5の「前記プラズマ処理室内のガスをプラズマ化するための高周波電力を投入する電力部」に相当する。
(エ)甲1装置発明の「プラズマ加工装置」は、「処理チャンバ2」、「処理ガス供給機構10」及び「コイル電力供給機構20」を有するから、「プラズマ処理室」、「ガス導入部」及び「電力部」を備える点で、本願発明5の「プラズマ処理装置」と一致する。
(オ)甲1装置発明において、「処理ガス供給機構10によって」「ガスを所定の流量で供給し」、「コイル電力供給機構20」「によってコイル15」「に高周波電力を印加し」、「ガスがプラズマ化され」るために、「処理ガス供給機構10」及び「コイル電力供給機構20」が制御されることは明らかである。
(カ)上記(2)ア(ア)及び上記(オ)を踏まえると、甲1装置発明の「表面側エッチング工程」は、「表面側マスクMfを形成させたシリコン基板を処理チャンバ2内の基台25上に載置して、シリコン基板に対して」実施され、「処理チャンバ2内に供給したSF6ガス、C4F8ガス及びO2ガスがプラズマ化され、表面側マスクMfの開口部Mf1を通して、シリコン基板への保護膜の形成及び除去が並行して行われつつ、SF6ガスのプラズマ化により生成したエッチング種(例えばフッ素ラジカル)がシリコン原子と化学反応することによってシリコン基板が等方的にエッチングされ、シリコン基板に表面側が大口径であるテーパ形状のトレンチが形成され」るものであるから、本件発明5の「前記ガス導入部及び前記電力部を制御することにより、基板保持部に保持されたシリコン基板を、SF6ガスとCF系ガスの混合ガスを用いて等方性エッチングすることにより表面側が大口径であるテーパ形状を形成する第1工程」に相当する。
(キ)上記(2)ア(イ)a及びb並びに上記(カ)を踏まえると、甲1装置発明の「表面側エッチング工程を実施した後、保護膜の形成とシリコン基板のエッチングとを同時に行うようにし、基台25に印加する電圧を徐々に大きくする手法を用いて、表面側マスクMfの開口部Mf1を通してシリコン基板を異方的にエッチングする深掘り工程を実施し、シリコン基板のテーパ形状のトレンチの下に、テーパ形状のトレンチよりも深いトレンチを形成する」ことは、本件発明1の「第2工程」と、「前記第1工程後に」「深さ方向に強いエッチングを行う異方性エッチングにより前記テーパ形状の下にシリコン基板を貫通しない深堀構造を形成する第2工程を行う」点で共通する。
(ク)上記(ア)~(キ)によれば、本件発明5と甲1装置発明とは、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「 被処理シリコン基板を保持する基板保持部を有するプラズマ処理室と、
前記プラズマ処理室にSF6ガス、CF系ガス、O2ガスをそれぞれ制御された流量で導入するためのガス導入部と、
前記プラズマ処理室内のガスをプラズマ化するための高周波電力を投入する電力部と、
を備え、
前記ガス導入部及び前記電力部を制御することにより、基板保持部に保持されたシリコン基板を、SF6ガスとCF系ガスの混合ガスを用いて等方性エッチングすることにより表面側が大口径であるテーパ形状を形成する第1工程と、前記第1工程後に深さ方向に強いエッチングを行う異方性エッチングにより前記テーパ形状の下にシリコン基板を貫通しない深堀構造を形成する第2工程を行う、
プラズマ処理装置。」
<相違点3>
本件発明5は、「ガス導入部」が「SF6ガス、CF系ガス、O2ガス及びSiF4ガスを」「導入する」ものであるのに対し、甲1装置発明は、「処理ガス供給機構10」が「SF6ガス、C4F8ガス及びO2ガスを」導入するものの「SiF4ガス」を導入するものではない点。
<相違点4>
本件発明5は、「前記テーパ形状の下に深堀構造を形成する第2工程」において、「SF6ガスとO2ガスとSiF4ガスの混合ガスを用い」るのに対し、甲1装置発明は、「シリコン基板を異方的にエッチングする深掘り工程」において「保護膜の形成とシリコン基板のエッチングとを同時に行うように」するものであるが、その際に用いるガスが特定されていない点。
<相違点5>
本件発明5は、「第1工程」と「第2工程」を行う「制御部」を備えるのに対し、甲1装置発明は、そのような構成を備えない点。
<相違点6>
本件発明5の「プラズマ処理装置」は、「上部にテーパ形状を持ち、貫通しない深堀構造を有するシリコン基板を製造するための」ものであるのに対し、甲1装置発明の「プラズマ加工装置1」は、「シリコン基板には、表裏面に貫通し、上部及び下部がテーパ形状となったトレンチが形成され、表裏面外周縁部が面取りされたシリコン基板が切り出される」ものである点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点6から検討する。
(ア)上記(2)イにおける検討と同様の理由により、甲1装置発明において、「深掘り工程」を実施した後、「トレンチの底部に貫通するまで」「エッチング」することなく、貫通しない深堀構造を有するシリコン基板の製造装置とした場合、甲1装置発明の目的を達成することはできない。
よって、甲1装置発明において、相違点6に係る本件発明5の構成とすることには阻害要因がある。
(イ)そして、甲2~甲5の記載は、上記(ア)の判断を変えるものではない。したがって、甲2~甲5の記載を参照しても、甲1装置発明を、相違点6に係る本件発明5の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易になし得たことではない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、相違点3~相違点5について検討するまでもなく、本件発明5は、甲2~甲5の記載を参照しても、甲1装置発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明6について
請求項6の記載は、請求項5の記載を引用するものであるところ、本件発明6は、本件発明5の構成を全て備えるものであるから、相違点6に係る本件発明5の構成も備えるものである。
そうすると、上記(4)イにおける検討と同様の理由により、本件発明6は、甲2~甲5の記載を参照しても、甲1装置発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 甲6を主引用例とした進歩性について(申立理由2)
(1)甲号証について
ア 甲6の記載、甲6に記載された発明
(ア)甲6には、以下の記載がある。
「【0016】
半導体基板10は、例えばシリコン基板である。半導体素子12は、半導体装置の所定の機能を実現するための素子であり、MOSトランジスタ等を含む。」
「【0035】
次いで、マスク膜58をマスクとして半導体基板10及び層間絶縁層20をうら面側からエッチングすることにより、開口部56から連通し、パッド電極30に達する開口部60を形成する。これにより、開口部56,60からなり、うら面側から半導体基板10及び層間絶縁層20を貫きパッド電極30に達するビアホール64を形成する(図4(b))。
【0036】
開口部60は、半導体基板10の深部に向かう方向(法線方向)に沿って開口幅がほぼ一定な垂直形状になるように、異方性エッチングにより形成する。膜厚が100μmを越えるような厚い半導体基板10は、例えば、いわゆるボッシュプロセスを用いてエッチングすることができる。層間絶縁層20は、例えば、CF4/C4F8/O2/Ar混合ガスをエッチングガスに用いた容量結合型RIEによりエッチングすることができる。
【0037】
ボッシュプロセスとは、(1)等方的なエッチングステップ、(2)保護膜成膜ステップ、(3)ビア底面の保護膜除去ステップ、の3ステップを1サイクルとして、各ステップを短時間ずつ高速に切り替え、このサイクルを繰り返す手法である。等方的なエッチングステップでは、SF6等のガスを用い、主にラジカルを反応種としてエッチングを進行する。このステップを長時間行うとサイドエッチングが大きくなってしまうため、短時間(数秒程度)で保護膜成膜ステップに切り替える。保護膜成膜ステップでは、プラズマ中でC4F8等のガスを分解することでCF重合膜を堆積する。このステップも数秒程度の短時間で次のステップに切り替える。ビア底面の保護膜除去ステップでは、SF6等のガスを用い、半導体基板10が設置されているステージ側に比較的高いバイアスパワーを印加することで、異方性をもったイオンを半導体基板10に入射し、底面の保護膜を除去する。このとき、側面部にはイオンがほとんど入射しないため、側面の保護膜は除去されない。次のサイクルの等方的なエッチングステップにおいて、側面部は保護膜によってエッチングから保護され、開口部60の底面のみエッチングが進行する。このサイクルを繰り返すことで、半導体基板10の深さ方向に少しずつ垂直にエッチングを進めることができる。」
「【0047】
次いで、ビアホール64内に銅やアルミニウム等の金属材料を埋め込み、貫通電極70を形成する(図5(b))。・・・(中略)・・・
【0049】
次いで、半導体基板10のうら面側にソルダーレジスト72を塗布し、パターニングにより貫通電極70を露出する開口部を形成後、露出した貫通電極70上にはんだボール74を設置する(図5(c))。この後、ダイシング等の工程を経て、本実施形態による半導体装置が完成する。」
「【0061】
本実施形態では、図1に示す第1実施形態による半導体装置の他の製造方法を示す。
まず、図2(a)乃至図3(a)に示す第1実施形態による半導体装置の製造方法と同様にして、半導体素子12、パッド電極30等を形成した半導体基板10をバックグラインド処理し、半導体基板を例えば200μm厚まで薄化する。
【0062】
次いで、半導体基板10のうら面側に、フォトリソグラフィにより、開口部68を有するマスク膜66を形成する。・・・(中略)・・・
【0063】
次いで、マスク膜66をマスクとして、開口部68内の半導体基板10をエッチングし、半導体基板10に開口部56を形成する(図6(a))。開口部56は、開口幅が底面に向けて狭くなるテーパー形状になるように形成する。例えば、SF6/C4F8/O2混合ガスをエッチングガスに用いた誘導結合型RIEにより、テーパー形状の開口部56を形成することができる。・・・(中略)・・・
【0064】
本実施形態では、第1実施形態とは異なり、水平方向にもエッチングが進行する等方的なエッチング条件を用いて半導体基板10をエッチングすることにより、側面がテーパー形状である開口部56を形成する。・・・(中略)・・・
【0065】
次いで、例えばアッシングにより、マスク膜66を除去する。・・・(中略)・・・
【0066】
次いで、図3(c)に示す第1実施形態による半導体装置の製造方法と同様にして、開口部56の側面及び底面を含む半導体基板10のうら面側に、酸化シリコン膜よりなるマスク膜58を形成する(図6(b))。なお、マスク膜58は、第2実施形態に示したように、半導体基板10及び層間絶縁層20とはエッチング特性の異なる絶縁材料により形成してもよい。
【0067】
次いで、図4(a)に示す第1実施形態による半導体装置の製造方法と同様にして、マスク膜58をエッチバックし、開口部56の底面のマスク膜58を選択的に除去する(図6(c))。
【0068】
次いで、図4(b)に示す第1実施形態による半導体装置の製造方法と同様にして、マスク膜58をマスクとして半導体基板10及び層間絶縁層20をエッチングし、パッド電極30に達する開口部60を形成する(図7(a))。
【0069】
次いで、図4(c)乃至図5(a)に示す第1実施形態による半導体装置の製造方法と同様にして、このようにして形成したビアホール64の側面をマスク膜58及び絶縁膜62により被覆する(図7(b))。
【0070】
次いで、図5(b)乃至図5(c)に示す第1実施形態による半導体装置の製造方法と同様にして、貫通電極70、ソルダーレジスト72、はんだボール74等を形成する(図7(c))。
【0071】
このように、本実施形態によれば、貫通電極と半導体基板との間の絶縁性能の低下を抑制することができ、歩留まり及び長期的な信頼性の高い半導体装置を実現することができる。」
「【図6】
[図:0001427952000006.jpg]
【図7】
[図:0001427952000007.jpg]
(イ)上記(ア)によれば、以下のことがいえる。
a 段落0016には「半導体基板10は、例えばシリコン基板である。」と記載されている。
よって、「半導体基板」は「シリコン基板」のことである。
b 図7(a)から、開口部60は、半導体基板10を貫通してパッド電極30に達し、ビアホール64は、開口部56及び開口部60からなることが見て取れる。
c 上記ア並びに上記a及びbによれば、甲6には、以下の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されている。
<甲6発明>
「半導体素子12、パッド電極30等を形成したシリコン基板をバックグラインド処理し、半導体基板を例えば200μm厚まで薄化し、(段落0016、段落0061)
シリコン基板のうら面側に、フォトリソグラフィにより、開口部68を有するマスク膜66を形成し、(段落0062)
マスク膜66をマスクとして、SF6/C4F8/O2混合ガスをエッチングガスに用いた誘導結合型RIEにより、開口部68内のシリコン基板をエッチングして、開口部56を形成し、開口部56は、開口幅が底面に向けて狭くなるテーパー形状になるように形成し、(段落0063)
開口部56は、水平方向にもエッチングが進行する等方的なエッチング条件を用いて半導体基板10をエッチングすることにより形成され、(段落0064)
アッシングにより、マスク膜66を除去し、(段落0065)
開口部56の側面及び底面を含むシリコン基板のうら面側に、酸化シリコン膜よりなるマスク膜58を形成し、(段落0066)
マスク膜58をエッチバックし、開口部56の底面のマスク膜58を選択的に除去し、(段落0067)
マスク膜58をマスクとしてシリコン基板及び層間絶縁層20をエッチングし、シリコン基板を貫通してパッド電極30に達する開口部60を形成し、開口部60は、シリコン基板の深部に向かう方向に沿って開口幅がほぼ一定な垂直形状になるように、異方性エッチングにより形成され、(上記a、段落0036、段落0068)
異方性エッチングは、SF6等のガスを用いる等方的なエッチングステップ、C4F8等のガスを分解することでCF重合膜を堆積する保護膜成膜ステップ、SF6等のガスを用いるビア底面の保護膜除去ステップ、の3ステップを1サイクルとして、各ステップを短時間ずつ高速に切り替え、このサイクルを繰り返すボッシュプロセスであり、(段落0037)
開口部56及び開口部60からなるビアホール64の側面をマスク膜58及び絶縁膜62により被覆し、(上記a、段落0069)
ビアホール64内に金属材料を埋め込み、貫通電極70を形成し、半導体基板10のうら面側にソルダーレジスト72を塗布し、パターニングにより貫通電極70を露出する開口部を形成後、露出した貫通電極70上にはんだボール74を設置する(段落0047、段落0049、段落0070)
半導体装置の製造方法。(段落0061)」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と、甲6発明とを対比する。
(ア)甲6発明において、「C4F8ガス」がCF系ガスであることを踏まえると、甲6発明の「SF6/C4F8/O2混合ガス」は、SF6ガス及びCF系ガスを含む混合ガスであるから、本件発明1の「SF6ガスとCF系ガスの混合ガス」に相当する。
また、甲6発明の「開口幅が底面に向けて狭くなるテーパー形状」は、表面側が大口径であるテーパ形状であるといえる。
そうすると、甲6発明の「SF6/C4F8/O2混合ガスをエッチングガスに用いた誘導結合型RIEにより」、「シリコン基板を等方的なエッチング条件を用いてエッチングして、開口部56を形成し、開口部56は、開口幅が底面に向けて狭くなるテーパー形状になるように形成」することは、本件発明1の「シリコン基板を、SF6ガスとCF系ガスの混合ガスを用いて等方性エッチングすることにより表面側が大口径であるテーパ形状を形成する第1工程」に相当する。
(イ)a 甲6発明は、「マスク膜66をマスクとして」「開口部56を形成し」た後、「マスク膜66を除去し」、「マスク膜58を形成し」、「マスク膜58を選択的に除去し」、「マスク膜58をマスクとして」「開口部60を形成」するものであるから、「開口部60」を形成する工程は、「開口部56」を形成する工程の後に実施されるものである。
b 甲6発明において、「開口部56は、開口幅が底面に向けて狭くなるテーパー形状」であることを踏まえると、「開口部56の底面のマスク膜58を選択的に除去し」「マスク膜58をマスクとして」「開口部60を形成」することは、テーパー形状の「開口部56」の下に「開口部60」を形成することである。
c 上記bを踏まえると、甲6発明の「開口部60」は、「開口部56」の下に形成される「シリコン基板の深部に向かう方向に沿って開口幅がほぼ一定な垂直形状」であるから、深く堀られた構造である点で、本件発明1の「深堀構造」と共通する。
d a~cを踏まえると、甲6発明の「マスク膜58をマスクとしてシリコン基板」「をエッチングし」て、「開口部60を形成し、開口部60は」「異方性エッチングにより形成され」ることは、「前記第1工程後に」「深さ方向に強いエッチングを行う異方性エッチングにより前記テーパ形状の下に」深く掘られた構造を形成する点で、本件発明1の「第2工程」と共通する。
(ウ) 上記(イ)b及びcを踏まえると、甲6発明は、「シリコン基板をエッチングして、開口部56を形成し」、「シリコン基板」「をエッチングし」て「開口部60を形成」するものであるから、テーパ形状の「開口部56」の下に深く掘られた「開口部60」を有するシリコン基板を製造するものであるといえ、「上部にテーパ形状を持ち」、深く掘られた構造を有する「シリコン基板の製造方法」である点で、本件発明1と共通する。
(エ)上記(ア)~(ウ)によれば、本件発明1と甲6発明は、以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「 シリコン基板を、SF6ガスとCF系ガスの混合ガスを用いて等方性エッチングすることにより表面側が大口径であるテーパ形状を形成する第1工程と、
前記第1工程後に深さ方向に強いエッチングを行う異方性エッチングにより前記テーパ形状の下に深く掘られた構造を形成する第2工程
を備える、
上部にテーパ形状を持ち、深く掘られた構造を有するシリコン基板の製造方法。」
<相違点7>
本件発明1は、「第2工程」の「異方性エッチング」において「SF6ガスとO2ガスとSiF4ガスの混合ガスを用い」るのに対し、甲6発明は、「開口部60は」「異方性エッチングにより形成され」る際に、「SF6等のガス」及び「C4F8等のガス」を用いる点。
<相違点8>
本件発明1は、「第2工程」において、「シリコン基板を貫通しない深堀構造を形成する」のに対し、甲6発明は、「シリコン基板を貫通」する「開口部60を形成」する点。
<相違点9>
本件発明1は、「上部にテーパ形状を持ち、貫通しない深堀構造を有するシリコン基板の製造方法」であるのに対し、甲6発明は、「シリコン基板を貫通」する「開口部60」が形成される「半導体装置の製造方法」である点。
イ 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点8及び9から検討する。
また、相違点8及び9は関連するものであるから、まとめて検討する。
(ア)甲6の段落0071には、「本実施形態によれば、貫通電極と半導体基板との間の絶縁性能の低下を抑制することができ、歩留まり及び長期的な信頼性の高い半導体装置を実現することができる。」と記載されており、甲6発明は、貫通電極と半導体基板との間の絶縁性能の低下を抑制することを課題とする発明であるといえる。
(イ)そうすると、甲6発明は、「開口部56及び開口部60からなる」「ビアホール64内に金属材料を埋め込み、貫通電極70を形成」するものであるから、「開口部60」を「シリコン基板を貫通」しないものとした場合、貫通電極を形成することができず、上記課題を解決できないことは明らかである。したがって、甲6発明において、「開口部60」を「シリコン基板を貫通」しないものとすることには阻害要因がある。
(ウ)そして、甲2~甲5の記載は、上記(イ)の判断を変えるものではない。よって、甲2~甲5の記載を参照しても、甲6発明を、相違点8及び9に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易になし得たことではない。
ウ 小括
上記イのとおりであるから、相違点7について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2~甲5の記載を参照しても、甲6発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2~4について
請求項2~4の記載は、直接又は間接的に請求項1の記載を引用するものであるところ、本件発明2~4は、本件発明1の構成を全て備えるものであるから、相違点8及び9に係る本件発明1の構成も備えるものである。
そうすると、上記(2)イにおける検討と同様の理由により、本件発明2~4は、甲2~甲5の記載を参照しても、甲6発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700726