特許異議申立
2024-700628
改善された耐高温性を有する石膏建築材料
- 審判番号
- 2024-700628
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-535967
- 登録番号
- 7408663
- 請求日
- 2024年07月05日
- 審決日
- 2024年11月06日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】クナウフ ギプス カーゲー
- 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
- 【異議申立人】若山 裕郎
- 審判長/審判官
- 審判長 河本 充雄
- 審判官 三崎 仁
- 審判官 小野 久子
- 分類
- P1651.121-Y (C04B) / P1651.537-Y (C04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7408663号発明「改善された耐高温性を有する石膏建築材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7408663号の請求項1~18に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7408663号の請求項1~18に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)12月20日を国際出願日として出願され、令和5年12月22日にその特許権の設定登録がされ、令和6年1月5日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1~18に係る特許に対し、同年7月5日に特許異議申立人若山裕郎(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。
第2 本件発明
特許第7408663号の請求項1~18の特許に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明18」といい、それらをまとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~18に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
石膏建築材料において、少なくとも石膏と、1~2.5重量%のH-シロキサンと、1~5重量%の非晶質二酸化ケイ素と、を含み、前記H-シロキサンが、前記石膏建築材料中に均一に分布することを特徴とし、
少なくとも80℃の温度の影響下にある前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料よりも長い膨張段階を有し、前記非晶質二酸化ケイ素はマイクロシリカを含むことを特徴とする、石膏建築材料。
【請求項2】
前記石膏建築材料が、さらなる添加剤を含む、請求項1に記載の石膏建築材料。
【請求項3】
前記石膏建築材料の前記膨張段階が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも1.2倍であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の石膏建築材料。
【請求項4】
前記石膏建築材料の前記膨張段階が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも2倍であることを特徴とする、請求項3に記載の石膏建築材料。
【請求項5】
前記石膏建築材料の前記膨張段階が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも2.5倍であることを特徴とする、請求項4に記載の石膏建築材料。
【請求項6】
最初の60分間、DIN EN1363-1:2012-10による温度/時間曲線に従った温度の影響下にあり、次の60分間、950℃の一定の温度適用下にある前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料よりも小さい収縮率を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の石膏建築材料。
【請求項7】
前記石膏建築材料の前記収縮率が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の前記収縮率よりも少なくとも10%低いことを特徴とする、請求項6に記載の石膏建築材料。
【請求項8】
前記石膏建築材料の前記収縮率が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の前記収縮率よりも少なくとも50%低いことを特徴とする、請求項7に記載の石膏建築材料。
【請求項9】
前記石膏建築材料の前記収縮率が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の前記収縮率よりも少なくとも75%低いことを特徴とする、請求項8に記載の石膏建築材料。
【請求項10】
前記石膏建築材料が、石膏建築ボードであることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の石膏建築材料。
【請求項11】
前記石膏建築ボードの少なくとも1つの表面が、H-シロキサンで処理されていることを特徴とする、請求項10に記載の石膏建築材料。
【請求項12】
前記石膏建築ボードの少なくとも2つの表面が、H-シロキサンで処理されていることを特徴とする、請求項11に記載の石膏建築材料。
【請求項13】
前記石膏建築ボードの少なくとも上面および下面が、H-シロキサンで処理されていることを特徴とする、請求項12に記載の石膏建築材料。
【請求項14】
前記石膏建築ボードが、少なくとも1つの第1のエッジ層およびコア層を有し、少なくとも前記第1のエッジ層が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含有することを特徴とする、請求項10に記載の石膏建築材料。
【請求項15】
石膏建築ボードを製造するための方法において、
少なくとも1つのスラリーが、少なくともスタッコと水とが互いに混合されることで製造され、前記スラリーが、石膏建築ボードの切れ目のないストランドへと形成されて、次いでこれが複数の石膏建築ボードに分離され、前記複数の石膏建築ボードが乾燥され、
前記スラリーを製造するために、少なくとも80℃の温度の影響下にある前記石膏建築ボードがH-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築ボードよりも長い膨張段階を有するよう、また、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素が前記石膏建築ボード中に均一に分布するように、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を互いに混合すること、前記石膏建築ボードが1~2.5重量%のH-シロキサンと1~5重量%の非晶質二酸化ケイ素とを含むこと、前記非晶質二酸化ケイ素はマイクロシリカを含むことを特徴とする、石膏建築ボードを製造するための方法。
【請求項16】
H-シロキサンが、前記石膏建築ボードの切れ目のないストランドまたは分離された前記複数の石膏建築ボードの少なくとも1つの表面に塗布される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの第1のスラリーおよび1つの第2のスラリーが、製造され、前記第1のスラリーが、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含有し、前記第1のスラリーが、前記石膏建築ボードの少なくとも1つのエッジ層を形成するために使用されることを特徴とする、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
温度の影響下で石膏建築材料の膨張段階を延長するためのH-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素の使用であって、前記石膏建築材料が、DIN EN1363-1:2012-10による温度/時間曲線に従って、0分から60分まで、950℃まで加熱され、60分から120分まで、常に950℃の一定温度に保ちながら処理され、前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成の石膏建築材料と比較して、より長い膨張段階を有し、前記石膏建築材料は1~2.5重量%のH-シロキサンと1~5重量%の非晶質二酸化ケイ素とを含み、前記非晶質二酸化ケイ素はマイクロシリカを含む、使用。」
第3 申立理由の概要
1 申立理由1(進歩性)
(1)申立人は、以下の(2)証拠方法に記載する甲第1号証~甲第11号証(以下「甲1」~「甲11」という。)を提示し、以下の理由を主張している。
本件発明1~18は、甲1に記載された発明又は甲3に記載された発明、及び甲2に記載された事項に基いて、さらには、甲4~11に記載された事項を参照して、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
なお、甲4~11については、本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)の48頁22~最下行において、「本件特許発明1は、高い防火性(耐火性)が求められている製品である「石膏建築ボード」に関する甲第1号証又は甲第3号証の発明において、当業者が、防火性(耐火性)に直接影響する「高温度収縮抵抗性材料」として有用な甲第2号証に記載のヒュームシリカ( マイクロシリカ)を甲第2号証に記載の量用いる構成にすることは、甲第4号証や甲第10号証や、その他の周知技術を勘案するまでもなく極めて容易なことである。」(当審注:下線は当審が付与した。以下同様である。)と記載されるのみであり、甲1又は甲3記載の発明にどのように組み合わせるために提示したものか明らかにされていない。
(2)証拠方法
甲1:特表2018-522808号公報
甲2:特表2010-505674号公報
甲3:特許第3284756号公報
甲4:特表2014-510854号公報
甲5:特表2017-535508号公報
甲6:特開平10-245256号公報
甲7:特表2017-536318号公報
甲8:特表2016-508110号公報
甲9:特表2016-539891号公報
甲10:落合満、「フュームドシリカ」、エアロゾル研究、Vol.5、No.1、1990年、pp.32-43
甲11:特開2004-35377号公報
2 申立理由2(明確性)
本件特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件発明1~18に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
3 申立理由3(サポート要件)
本件特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、本件発明1~18に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
第4 甲号証の記載及び甲号証に記載された発明
1 甲1について
(1)甲1には、以下の事項が記載されている。
(甲1ア)「【請求項1】
半水石膏、シリコーンオイル、及び炭酸塩岩鉱物を触媒として含む水系石膏スラリーの硬化物を含む防水ボード。」
(甲1イ)「【0001】
本発明は、防水用シリコーンエマルジョン、優れたクラック抵抗性を示す防水ボード及びその製造方法に関し、より詳しくは、シリコーンオイル及び乳化剤を含む防水用シリコーンエマルジョンと、半水石膏、シリコーンオイル及び特定の触媒を含む水系石膏スラリーの硬化物を含み、優れたクラック抵抗性及び低い全吸収率を示す防水ボード及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不燃性で、かつ遮音性に優れた軽量素材である石膏ボードは、低廉な価格によって建物の内装材として多く用いられている。一般的な建築用石膏ボードの原材料は、天然の二水石膏あるいは脱硫二水石膏を焼成して結晶水を一部取り除いた半水石膏である。半水石膏は、水と反応する時に発熱して結晶構造を有する二水石膏に変換される。」
(甲1ウ)「【0026】
本発明の好ましい一具体例によれば、前記シリコーンオイルとしてメチルヒドロゲンポリシロキサン(methylhydrogenpolysiloxane、MHP)を含むシリコーンオイルを用いる。
【0027】
本発明に係る防水ボードにおいて、前記石膏スラリー内のシリコーンオイルの含量は、半水石膏の100重量部を基準に、例えば、0.04から4重量部であってよく、より具体的には0.1から1.5重量部であってよい。石膏スラリー内のシリコーンオイルの含量が前記範囲より少なすぎると、目標とする防水性が発現しないという問題点があり、逆に多すぎると、シリコーンオイルの特有の消泡性によって石膏の使用量が多くなり、スラリーの粘性が増大してミキサーの内部で固まるという問題点があり得る。
【0028】
本発明において、前記シリコーンオイルはそのものをボードの製造工程に投入することができ、他には、界面活性剤及び/または高せん断回転反応器や高圧均質化器を用いて水にエマルジョン化させたエマルジョンまたは水分散液でボードの製造工程に投入することもできる。
【0029】
石膏ボードに防水剤として適用されるシリコーンオイルは、通常、アルカリ金属またはアルカリ土類金属のオキシドまたはヒドロキシド形態の塩基性触媒(水溶液下で塩基性を表す触媒)下で加水分解反応が起こり、線形ポリシロキサンが分枝形ポリシロキサンに変わることによって防水性能を与えることになる。
【0030】
しかし、塩基性触媒の使用時にpHが上昇して半水石膏の水和過程を遅らせることがあり、シリコーンオイルは、低い表面張力と、加水分解反応の際に副産物として発生する水素ガスとによって石膏ボードのスラリー中に生成された気泡を破壊し、石膏ボードの軽量化に困難さがあるか、石膏ボードのコアに割れ(クラック)を引き起こし得る。」
(甲1エ)「【0074】
シリコーンオイルの場合は、パラフィンワックスに比べて少ない量でも優れた防水性能を表すが、一方、消泡剤として働いて石膏スラリー内の気泡等を破裂させて石膏の密度を高める。このようなシリコーンによる気泡の減少を補うために発泡剤を過剰量で投入する場合、気泡の大きさが小さくなってスラリーの粘度が上昇するため、石膏ボードの成形に困難さを経験することになる。さらに、塩基性触媒の使用時に反応速度が速すぎるため、反応副産物である水素分子の急激な発生によって石膏製品に割れ目(クラッキング)が発生し得る。」
(2)甲1発明
上記(甲1ア)に記載されている「防水ボード」は、上記(甲1イ)によれば、「優れたクラック抵抗性を示す防水ボード」であり、そして、「建築用」として用い得るものである。また、上記(甲1ア)に記載されている「シリコーンオイル」は、上記(甲1ウ)によれば、「メチルヒドロゲンポリシロキサンを含む」「シリコーンオイル」であり、その含量は「半水石膏の100重量部を基準に」「0.04から4重量部」である。
そうすると、上記(甲1イ)及び(甲1ウ)を踏まえ、上記(甲1ア)に基づいて甲1に記載されている発明(以下「甲1発明」という。)を認定すると、以下のとおりである。
「半水石膏、シリコーンオイル、及び炭酸塩岩鉱物を触媒として含む水系石膏スラリーの硬化物を含む建築用防水ボードであって、
シリコーンオイルが、メチルヒドロゲンポリシロキサンを含むものであり、シリコーンオイルの含量は、半水石膏の100重量部を基準に0.04から4重量部である、
優れたクラック抵抗性を示す防水ボード。」
2 甲3について
(1)甲3には、以下の事項が記載されている。
(甲3ア)「【請求項1】 メチルハイドロジェンポリシロキサンと、珪酸カルシウム水和物、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種と石膏とを含む石膏組成物及びボード原紙からなることを特徴とする撥水性石膏ボード。
【請求項2】 石膏組成物が、石膏100重量部に対して、メチルハイドロジェンポリシロキサン0.2~5重量部、珪酸カルシウム水和物、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種0.1~10重量部を含むことを特徴とする請求項1に記載の撥水性石膏ボード。」
(甲3イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は従来にない優れた性能を有する撥水性石膏ボードに関する。更に詳しくは、耐水性及び防火性の改善された撥水性石膏ボードに関する。
【0002】
【従来の技術】石膏を用いる石膏ボード製品は、石膏の有する特性により、防火性、防音性、強度、廉価等の著しい特徴にもかかわらず耐水性に問題があり使用範囲が限定されているのが現状である。このような石膏の欠点を補うために石膏にジメチルポリシロキサンを添加して撥水性を向上させる方法(米国特許第3455719号)や石膏にアルカリ金属のアルキルシリコネートと消石灰または生石灰とを配合する方法(特開昭56-54263号公報)等が提案されているが、これらの方法では、十分な撥水性が得られなかったり、撥水性を満足させると含有有機物が増加するため防火性が損なわれる欠点があった。また、撥水性が良くてもボード原紙と石膏の接着が悪く石膏ボードに製造できないという欠点もあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は石膏の持つ防火性を損なわず、かつ十分な撥水性を有する石膏ボードを提供することを目的とするものである。」
(2)甲3発明
上記(甲3ア)に記載されている「石膏ボード」は、上記(甲3イ)の【0003】によれば、「石膏の持つ防火性を損なわず、かつ十分な撥水性を有する石膏ボード」である。
そうすると、上記(甲3イ)を踏まえ、上記(甲3ア)に基づいて甲3に記載されている発明(以下「甲3発明」という。)を認定すると、以下のとおりである。
「メチルハイドロジェンポリシロキサンと、珪酸カルシウム水和物、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種と石膏とを含む石膏組成物及びボード原紙からなる撥水性石膏ボードであって、
石膏組成物が、石膏100重量部に対して、メチルハイドロジェンポリシロキサン0.2~5重量部、珪酸カルシウム水和物、酸化マグネシウム及び水酸化マグネシウムから選ばれる少なくとも1種0.1~10重量部を含む、
石膏の持つ防火性を損なわず、かつ十分な撥水性を有する石膏ボード。」
3 甲2について
甲2には、以下の事項が記載されている。
(甲2ア)「【請求項1】
石膏および高温度収縮抵抗性材料を含み、少なくとも2つの相対する面と2つの相対する端を有するパネルへ形成される芯;
該面の1つ以上、該端の1つ以上およびこれらの組み合わせからなる群の少なくとも一部を覆い、該芯より高い密度を有する石膏マトリックスおよび第1の膨張する材料を含む膨張する層;および
該膨張可能な層の少なくとも一部を覆う表面仕上げ材料からなることを特徴とする多層石膏パネル。
【請求項2】
該高温度収縮抵抗性材料が、ガラスファイバー、フュームシリカ、珪藻土および粘土からなる群の少なくとも1つである請求項1のパネル。」
(甲2イ)「【0026】
芯12および膨張する層14の両者の他の必須の成分は、高温度収縮抵抗性材料である。他の成分と一緒に使用できそして収縮しない任意の材料が、収縮抵抗性材料として有用である。最も収縮抵抗性のある材料は、石膏複合物の融点を上げて高温度における収縮を低下または防ぐ充填剤である。化粧しっくいを少量のこれらの充填剤により置き換えることにより、硬化芯12は、これらの充填剤のない硬化芯に比べて遙かに収縮しない。収縮抵抗性材料の例は、ガラスファイバー、ガラスまたは合成の繊維、フュームシリカ、珪藻土および粘土例えばカオリン粘土を含む。多くのシリカの多いミネラルは、石膏の収縮を低下させるように働く。好ましくは、芯は、コストの懸念から膨張する材料を含まない。収縮抵抗性材料は、乾燥成分に基づいて0.1-約3重量%の量で使用される。好ましい収縮抵抗性材料はカオリン粘土である。すべてのガラスファイバーが収縮抵抗性でないことに注意すべきである。収縮抵抗性材料のみがこの成分で有用である。」
4 甲4~甲11について
甲4~甲11については、特許異議申立書の37頁26行~48頁20行で摘記されているとおりであるところ、上記第3の1(1)で述べたように、主たる甲第1号証又は甲第3号証記載の発明にどのように組み合わせるか明らかにされていないこともあり、それらの摘記を略する。
第5 本件明細書等の記載
1 本件明細書には、以下の事項が記載されている。
(本ア)「【0007】
本発明の目的は、向上した耐火性を有し、特に、火が乾式壁建造物の裏側を突き破るのにかかる時間を少なくとも大幅に遅延させる石膏建築材料を提供することにある。」
(本イ)「【0012】
「H-シロキサン」という用語は、好ましくは、直鎖の水素修飾(オルガノ)シロキサンを含む。あまり好ましくはないが、環状水素修飾シロキサンは除外されない。そのようなシロキサンは、高度に架橋されたシリコーン樹脂を形成する。」
(本ウ)「【0018】
しかしながら、温度適用下での試料本体の実際の収縮が始まる前に、試料本体は最初に膨張する。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、この膨張は、石膏からの結晶水の排出および水蒸気へのその転化に関連していると仮定される。石膏建築材料の膨張の時間周期は、本発明の範囲内では「膨張段階」と呼ばれる。膨張段階は、試料本体の加熱で始まり、試料本体が加熱開始前よりも短い長さを有する時点で終了する。」
「【0021】
本発明による石膏建築材料の膨張段階は、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含まない同一組成の石膏建築材料の膨張段階よりも、好ましくは少なくとも1.2倍長い、好ましくは少なくとも2倍長い、特に好ましくは少なくとも2.5倍長い。膨張段階中、石膏建築材料は安定したままである。結晶水の排出は、エネルギーを消費する吸熱プロセスであり、したがって、石膏建築材料のさらなる加熱を一時的に阻止するか、または少なくとも低減する。膨張段階の延長により、例えば建築物の避難に利用可能である時間を延長することができる。」
(本エ)「【0028】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、石膏建築材料は石膏建築ボードである。石膏建築ボードの少なくとも1つの大きい表面がH-シロキサンでコーティング、塗装、スプレー塗布、またはその他の方法で処理される場合、石膏建築ボードの耐火性は、効果的に向上する。特に、石膏建築ボードの上面または可視面は、典型的には、潜在的な火災に直接さらされる面であるため、H-シロキサンで処理する必要がある。石膏建築ボードの両方の大きい表面、具体的には上面および下面の両方の処理は、さらにより効果的である。
【0029】
石膏建築ボードを製造するための本発明による方法は、少なくとも(スタッコ)と水とを互いに混合することによる少なくとも1つのスラリーの製造を含む。次いで、このスラリーは、石膏建築ボードの切れ目のないストランドに成形され、石膏が十分に凝結すると、個々の石膏建築ボードに分離される。」
「【0030】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも1つの第1のおよび1つの第2のスラリーを製造することができ、少なくとも第1のスラリーが、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含有し、第1のスラリーが、石膏建築ボードの少なくとも1つのエッジ層を形成するために使用される。エッジ層、すなわちライナーと直接接触している層は、軽量の石膏建築ボードの場合に特に有利である。それは、典型的には、さらに内側に配置されたコア層よりも高密度である。」
(本オ)「【0034】
調査した角柱(試験片)は、以下のように製造した:スタッコおよび促進剤を事前に混合して、ドライミックスを形成した。長さの変化を図1~5に示す試料は、70重量%のFGD(排煙脱硫)石膏および30重量%の天然石膏から得られたスタッコを使用して製造した。長さの変化を図6に示す角柱は、実質的に7重量%のFGD石膏を含む天然石膏から得られたスタッコから製造した。ドライミックスを水の中にばらまき、この量は、0.6の水-石膏値に対応し、泡立て器を使用して短い浸漬時間後に混合した。このように製造したスラリーを使用して、16×4×2cm3の大きさの角柱を打設し、これを混合の25分後に離型した。このように製造された角柱は、40℃の乾燥キャビネット内で一定重量まで乾燥した。次いで、角柱をサイズ(10×4×2cm3)に切断した。
【0035】
角柱がH-シロキサン(Bluestar Silicones(現在はElkem)からのBlueSil WR68)またはマイクロシリカ(Elkem940U)を含有している場合、これらの物質をスラリーに添加するか、またはシロキサンコーティングの場合は、ブラシを使用して角柱に塗布した。」
(本カ)「【0045】
図3~5は、H-シロキサンとマイクロシリカの様々な量の組み合わせを含有する角柱の経時的な収縮を示す。図3の角柱は、H-シロキサンもマイクロシリカも含有しない参照試料を除いて、全てが0.2重量%のH-シロキサンを含有する。0.2重量%のH-シロキサンのみを含有する角柱と比較して、1重量%のマイクロシリカを添加することにより、角柱の膨張段階が約5分だけ延長され、収縮率をわずかに低下させる。しかしながら、4重量%のマイクロシリカを添加する場合、膨張段階が10分だけ延長され、収縮率は半分になる。少量のH-シロキサンと大量のマイクロシリカとの効果の組み合わせは、一方では0.2重量%のH-シロキサン(図3)を含む角柱、および他方では4重量%のマイクロシリカ(図2)を含む角柱の効果の追加から得られる効果と比較して、収縮率を過大に低下させるように見える。
【0046】
1重量%のH-シロキサンと2重量%のマイクロシリカとの組み合わせで、ほぼ同じ収縮率の低下を達成することができる(図4を参照)。しかしながら、H-シロキサンのより高い含有量は、一般に、膨張段階の延長につながる。
【0047】
図5は、2.5重量%のH-シロキサンを1重量%のマイクロシリカと組み合わせた場合、温度適用下での石膏角柱の収縮がほぼ完全に排除することができる(<1.5%)ことを示す。4重量%のマイクロシリカを添加した場合、収縮率は約0.5%にすぎない。」
2 【図4】及び【図5】として、以下の図面が記載されている。
【図4】
[図:0001416513000001.jpg]
【図5】
[図:0001416513000002.jpg]
第6 当審の判断
1 申立理由1(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 甲1を主引用例とした場合
(ア)対比
a 甲1発明の「半水石膏」と本件発明1の「石膏」とは、「石膏」である点で共通するものであり、甲1発明の「水系石膏スラリーの硬化物を含む建築用防水ボード」は、建築用の材料といえるから、本件発明1の「石膏建築材料」に相当する。
b 本件発明1の「H-シロキサン」は、上記第5の(本イ)で摘記した本件明細書【0012】の記載によれば、「「H-シロキサン」という用語は、好ましくは、直鎖の水素修飾(オルガノ)シロキサンを含む」ものであるところ、甲1発明の「メチルヒドロゲンポリシロキサン」が直鎖の水素修飾(オルガノ)シロキサンであることは技術常識であるから、本件発明1の「H-シロキサン」に相当する。
そして、上記(甲1ウ)に「本発明において、前記シリコーンオイルは」「高圧均質化器を用いて水にエマルジョン化させたエマルジョンまたは水分散液でボードの製造工程に投入する」と記載されていることから、甲1発明の「メチルヒドロゲンポリシロキサンを含む」「シリコーンオイル」は、ボード中に均一に分布しているといえるから、本件発明1と甲1発明とは、「前記H-シロキサンが、前記石膏建築材料中に均一に分布」している点で共通する。
なお、甲1発明の「シリコーンオイルの含量は、半水石膏の100重量部を基準に0.04から4重量部」であることと、本件発明1の「石膏建築材料において」「1~2.5重量%のH-シロキサン」であることとは、前者が、(半水)石膏に対する重量部であるのに対し、後者は、石膏に対するものではなく、石膏の他に添加成分を含む建築材料に対する割合であり、両者を単に数値として比較できないことから、前者が後者を満たすことは不明である。
c 上記a及びbを踏まえると、本件発明1と甲1発明とは、
(一致点)
「石膏建築材料において、少なくとも石膏と、H-シロキサンと、を含み、前記H-シロキサンが、前記石膏建築材料中に均一に分布する、石膏建築材料。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
石膏建築材料が、本件発明1では、「1~2.5重量%」のH-シロキサンと、「マイクロシリカを含」む「1~5重量%の非晶質二酸化ケイ素」と、を含み、「少なくとも80℃の温度の影響下にある前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料よりも長い膨張段階を有」するのに対し、甲1発明では、防水ボードにおける「メチルヒドロゲンポリシロキサン」の含量が不明であり、「非晶質二酸化ケイ素」は含まれておらず、そして、上記「長い膨張段階」を有するかどうか不明である点。
(イ)相違点の判断
a 本件発明1の「膨張段階」とは、上記第5の(本ウ)で摘記した本件明細書の【0018】に「温度適用下での試料本体の実際の収縮が始まる前に、試料本体は最初に膨張する。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、この膨張は、石膏からの結晶水の排出および水蒸気へのその転化に関連していると仮定される。石膏建築材料の膨張の時間周期は、本発明の範囲内では「膨張段階」と呼ばれる。膨張段階は、試料本体の加熱で始まり、試料本体が加熱開始前よりも短い長さを有する時点で終了する。」と記載されるものであり、本件発明1の「1~2.5重量%のH-シロキサンと、1~5重量%の非晶質二酸化ケイ素と、を含」むものを示す、上記第5の2で摘記した【図4】及び【図5】を参照するに、時間[分]が0から長さの変化率[%]が正となり、それが負に変わる(長さの変化率0%と交わる)までの時間と理解されるものである。
b 一方、甲1発明には、「優れたクラック抵抗性を示す」と特定されているものの、当該「クラック」とは、上記(甲1エ)によれば「塩基性触媒の使用時に反応速度が速すぎるため、反応副産物である水素分子の急激な発生によって石膏製品に割れ目(クラッキング)が発生し得る」ことを原因とするものであるから、「優れたクラック抵抗性を示す」ことが「膨張段階」を長くすることにはならない。
したがって、甲1発明は、本件発明1で特定される「膨張段階」を長くするという技術思想はない。
また、上記第4の2で摘記した甲2には、「高温度収縮抵抗性材料」との記載はあるものの、それは「収縮」に対する「抵抗性」の材料であるから、「高温度収縮」は、上記第5の2で摘記した【図4】及び【図5】にあてはめるならば、膨張段階の次の長さの変化率[%]が負になる「収縮段階」についてのことであり、上記甲2にも「膨張段階」を長くするという技術思想はない。
その他、申立書で摘記されている甲4~11の記載を参照しても、石膏建築材料において膨張段階を長くするという技術思想を示したものはない。
ましてや、石膏建築材料において、「1~2.5重量%のH-シロキサンと、1~5重量%の非晶質二酸化ケイ素と、を含」ませることにより「H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料よりも長い膨張段階を有」するようにするということが、いかなる甲号証の記載を参照しても導き出せるものではない。
c よって、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。
(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて、さらには、甲4~11に記載された事項を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 甲3を主引用例とした場合
(ア)対比
a 甲3発明の「石膏組成物及びボード原紙からなる」「石膏の持つ防火性を損なわず、かつ十分な撥水性を有する石膏ボード」は、上記(甲3イ)に記載されているように「石膏を用いる石膏ボード製品は、石膏の有する特性により、防火性、防音性、強度、廉価等」の特徴を有するものであり、建築用としても用いられるものといえるから、本件発明1の「石膏建築材料」に相当する。
b 上記ア(ア)bで述べたのと同様に、甲3発明の「メチルハイドロジェンポリシロキサン」は、本件発明1の「H-シロキサン」に相当する。
なお、甲3発明の「石膏100重量部に対して、メチルハイドロジェンポリシロキサン0.2~5重量部」であることは、甲3発明が「石膏組成物及びボード原紙からなる」「石膏ボード」であることを踏まえると、本件発明1の「石膏建築材料において」「1~2.5重量%のH-シロキサン」を満たすかどうかは不明である。
c 上記a及びbを踏まえると、本件発明1と甲3発明とは、
(一致点)
「石膏建築材料において、少なくとも石膏と、H-シロキサンと、を含む、石膏建築材料。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点2)
石膏建築材料が、本件発明1では、「1~2.5重量%」のH-シロキサンと、「マイクロシリカを含」む「1~5重量%の非晶質二酸化ケイ素」と、を含み、「少なくとも80℃の温度の影響下にある前記石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料よりも長い膨張段階を有」するのに対し、甲3発明では、石膏ボードにおける「メチルハイドロジェンポリシロキサン」の含量が不明であり、「非晶質二酸化ケイ素」は含まれておらず、そして、上記「長い膨張段階」を有するかどうか不明である点。
(相違点3)
H-シロキサンが、本件発明1では、「石膏建築材料中に均一に分布」しているのに対し、甲3発明では、「石膏ボード」が「石膏組成物及びボード原紙からなる」ものであり、「石膏ボード」中に均一に分布しているかどうか不明である点。
(イ)相違点の判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
本件発明1の「膨張段階」については、上記ア(イ)aで述べたとおりのものであるところ、甲3発明には「石膏の持つ防火性を損なわ」ないとの事項が記載されているが、ここで「防火性」とは、(甲3イ)に「含有有機物が増加するため防火性が損なわれる」との記載を踏まえると、有機物が燃えることによる「火」を「防ぐ」特性といえることから、本件発明1の「長い膨張段階」とは技術的な特性が異なるものである。そうすると、甲3発明には「石膏の持つ防火性を損なわ」ないようにすることが、本件発明1の「膨張段階」を長くすることにはならない。
したがって、甲3発明には、本件発明1で特定される「膨張段階」を長くするという技術思想はない。
また、上記ア(イ)bで述べたとおり、上記甲2にも「膨張段階」を長くするという技術思想はない。
その他、上記甲4~11を参照しても、石膏建築材料において膨張段階を長くするという技術思想を示したものはなく、ましてや、石膏建築材料において、「1~2.5重量%のH-シロキサンと、1~5重量%の非晶質二酸化ケイ素と、を含」ませることにより「長い膨張段階を有」するようにするということが、いかなる甲号証の記載を参照しても導き出せるものではないことは、上記ア(イ)bで述べたとおりである。
よって、甲3発明において、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものではない。
(ウ)小括
したがって、本件発明1は、相違点3について検討するまでもなく、甲3発明及び甲2に記載された事項に基いて、さらには、甲4~11に記載された事項を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は、申立書の48頁22行~49頁6行において本件発明1の進歩性について、以下のとおり主張している。
「本件特許発明1は、高い防火性(耐火性)が求められている製品である「石膏建築ボード」に関する甲第1号証又は甲第3号証の発明において、当業者が、防火性(耐火性)に直接影響する「高温度収縮抵抗性材料」として有用な甲第2号証に記載のヒュームシリカ( マイクロシリカ)を甲第2号証に記載の量用いる構成にすることは、甲第4号証や甲第10号証や、その他の周知技術を勘案するまでもなく極めて容易なことである。
また、本件特許発明1で規定する「長い膨張段階」は、従来技術の、甲第1号証では「クラック抵抗性」と呼び、甲第2号証では「高湿度収縮抵抗性」と呼び、甲第3号証では「防火性」と呼び、甲第4号証では「高い耐火性(および高温収縮抵抗性)」或いは「比較的高温条件または火炎条件の影響に提供する能力」と呼んでいる現象であることは明白であり、新たに見出した特許要件とはならない。」
(イ)主張に対する判断
申立人は、本件発明1の「長い膨張段階」と、甲1記載の「クラック抵抗性」、甲2記載の「高湿度収縮抵抗性」、甲3記載の「防火性」、及び甲4記載の「高い耐火性(および高温収縮抵抗性)」又は「比較的高温条件または火炎条件の影響に提供する能力」との特性を、技術的に同一視しているが、上記(イ)a及びbで述べたように、本件発明1の「長い膨張段階」と、甲1記載の「クラック抵抗性」及び甲2記載の「高湿度収縮抵抗性」とは、技術的な特性が異なり、同一視できるものではない。
また、甲3記載の「防火性」は、以下のイ(イ)で述べたように、有機物が燃えることによる「火」を「防ぐ」特性のことであるから、本件発明1の「長い膨張段階」とは異なるものであり、甲4記載の「高い耐火性(および高温収縮抵抗性)」又は「比較的高温条件または火炎条件の影響に提供する能力」についても、前者は耐「火」及び「収縮抵抗」であり、後者は上記第4の4(1)に記載されているとおり「熱レベルの透過」を遅らせるものであるから、いずれも本件発明1の「長い膨張段階」とは技術的な特性が異なり、同一視できるものではない。
そうすると、申立人の「本件特許発明1で規定する「長い膨張段階」は、・・・新たに見出した特許要件とはならない。」との主張は、失当であり、採用できない。
(2)本件発明2~14について
本件発明2~14は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明又は甲3発明、及び甲2に記載された事項に基いて、さらには、甲4~11に記載された事項を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明15について
ア 対比・判断
本件発明15は、上記第2に記載したとおり、「石膏建築ボードを製造するための方法」の発明であるところ、本件発明1と同様に、「前記石膏建築ボードがH-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築ボードよりも長い膨張段階を有する」「前記石膏建築ボードが1~2.5重量%のH-シロキサンと1~5重量%の非晶質二酸化ケイ素とを含むこと、前記非晶質二酸化ケイ素はマイクロシリカを含むこと」を発明特定事項として含む発明である。
そうすると、甲1発明である「防水ボード」の発明のカテゴリーを変えて防水ボードの「製造方法」の発明(以下「甲1発明’」という。)として、甲3発明である「石膏ボード」の発明のカテゴリーを変えて石膏ボードの「製造方法」の発明(以下「甲3発明’」)として、本件発明15と対比すると、本件発明15は、甲1発明’とは少なくとも相違点1の点で、甲3発明’とは少なくとも相違点2の点で相違することになり、これらの相違点に対する判断は、上記(1)ア(イ)及びイ(イ)で述べたとおりである。
したがって、本件発明15は、甲1発明’又は甲3発明’、及び甲2に記載された事項に基いて、さらには、甲4~11に記載された事項を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 申立人の主張について
申立人は、申立書で、本件発明15の進歩性について、「規定に明確でない点はあるものの、基本的には従来の石膏建築ボードの製造方法と変わるところはなく、スラリーの構成を本件特許発明1と同様にしたものである。したがって、本件特許発明15も、本件特許発明1と同様の理由で進歩性を有さない。」(49頁16~20行)と主張するのみである。
しかし、上記アで述べたとおり、本件発明15は、甲1発明’又は甲3発明’、及び甲2に記載された事項に基いて、さらには、甲4~11に記載された事項を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立人の上記主張は採用できない。
(4)本件発明16、17について
本件発明16及び17は、本件発明15の全ての構成を有するものであるから、本件発明15と同様に、甲1発明’又は甲3発明’、及び甲2に記載された事項に基いて、さらには、甲4~11に記載された事項を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明18について
ア 対比・判断
本件発明18は、上記第2に記載したとおり、「H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素の使用」の発明であるところ、「石膏建築材料が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成の石膏建築材料と比較して、より長い膨張段階を有し、前記石膏建築材料は1~2.5重量%のH-シロキサンと1~5重量%の非晶質二酸化ケイ素とを含み、前記非晶質二酸化ケイ素はマイクロシリカを含む」ことを発明特定事項として含む発明である。
そうすると、甲1発明である「防水ボード」の発明を、防水ボードに含まれる「メチルヒドロゲンポリシロキサンの使用」の発明(以下「甲1発明”」という。)に、甲3発明である「石膏ボード」の発明を、石膏ボードに含まれる「メチルハイドロジェンポリシロキサンの使用」の発明(以下「甲3発明”」)に各々カテゴリーを変えたうえで、本件発明18と対比すると、本件発明18は、甲1発明”とは少なくとも相違点1の点で、甲3発明”とは少なくとも相違点2の点で相違することになり、これらの相違点に対する判断は、上記(1)ア(イ)及びイ(イ)で述べたとおりである。
したがって、本件発明18は、甲1発明”又は甲3発明”、及び甲2に記載された事項に基いて、さらには、甲4~11に記載された事項を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 申立人の主張について
申立人は、申立書で、本件発明18の進歩性について、「規定に明確でない点はあるものの、基本的には請求項6と同様に、「標準的な火災暴露条件下におけるさまざまな建築要素の耐火性を決定するための一般原則を定めた欧州規格」で定めた温度/ 時間曲線を用いて耐火性評価を行ったこと、評価対象を本件特許発明1の要件を満たすものにすることを規定したに過ぎない発明である。したがって、本件特許発明18も、本件特許発明1と同様の理由で進歩性を有さず、進歩性を有さない発明が特許されたものである。」(50頁1~7行)と主張するのみである。
しかし、上記アで述べたとおり、本件発明18は、甲1発明”又は甲3発明”、及び甲2に記載された事項に基いて、さらには、甲4~11に記載された事項を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立人の上記主張は採用できない。
(6)まとめ
よって、本件発明1~18は、甲1に記載された発明又は甲3に記載された発明、及び甲2に記載された事項に基いて、さらには、甲4~11に記載された事項を参照しても、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明1~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、申立理由1によって、本件発明1~18に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2(明確性)について
申立理由2についての当審の判断は、申立人の主張を以下の(1)~(7)の項目に分けて摘記したうえで、それに対する当審の判断を述べることとする。
(1)本件発明1、15及び18について
ア 「本件特許発明1の特許要件Bで規定している「1~2.5重量%のH-シロキサン」、特許要件Cで規定している「1~5重量% の非晶質二酸化ケイ素」は、石膏建築材料又は石膏建築ボードに対しての量として規定されている。一方、本件特許明細書で開示していることは、「石膏」に対する「H-シロキサン」、「マイクロシリカ」の作用効果であり、発明を不明確にしている。」(50頁10~14行)
イ 当審の判断
(ア)本件発明1は「石膏建築材料において、少なくとも石膏と、1~2.5重量%のH-シロキサンと、1~5重量%の非晶質二酸化ケイ素と、を含」む「石膏建築材料」と特定され、本件発明15は「石膏建築ボードが1~2.5重量%のH-シロキサンと1~5重量%の非晶質二酸化ケイ素とを含む」と特定され、本件発明18は「石膏建築材料は1~2.5重量%のH-シロキサンと1~5重量%の非晶質二酸化ケイ素とを含み」と特定され、「1~2.5重量%のH-シロキサン」及び「1~5重量%の非晶質二酸化ケイ素」は、申立人の主張するとおり「石膏建築材料」又は「石膏建築ボード」に対しての量として規定されており、これらの記載は明確である。
(イ)なお、念のため、本件明細書の記載を参照すると、上記第5の(本オ)で摘記した本件明細書の【0034】及び【0035】の記載によれば、調査した角柱(試験片)は、FGD(排煙脱硫)石膏、天然石膏から得られたスタッコ、促進剤及び水を混合して製造したスラリーに、場合によって、H-シロキサン、マイクロシリカを添加し、このスラリーを使用して製造したものであり、上記第5の(本カ)で摘記した本件明細書の【0045】の「図3~5は、H-シロキサンとマイクロシリカの様々な量の組み合わせを含有する角柱の経時的な収縮を示す図3の角柱は、H-シロキサンもマイクロシリカも含有しない参照試料を除いて、全てが0.2重量%のH-シロキサンを含有する。」、上記第5の(本カ)で摘記した本件明細書の【0046】の「1重量%のH-シロキサンと2重量%のマイクロシリカとの組み合わせで、ほぼ同じ収縮率の低下を達成することができる(図4を参照)。しかしながら、H-シロキサンのより高い含有量は、一般に、膨張段階の延長につながる。」、及び、上記第5の(本カ)で摘記した本件明細書の【0047】の「図5は、2.5重量%のH-シロキサンを1重量%のマイクロシリカと組み合わせた場合温度適用下での石膏角柱の収縮がほぼ完全に排除することができる(<1.5%)ことを示す。4重量%のマイクロシリカを添加した場合、収縮率は約0.5%にすぎない。」との記載から、H-シロキサン及びマイクロシリカの含有量は、石膏に対しての量ではなく、角柱に対しての量であるといえるから、「石膏建築材料」又は「石膏建築ボード」に対しての量と解するのが相当である。
よって、本件明細書を参照しても、本件発明1、15及び18の特定と何ら矛盾を生じるものではない。
(2)本件発明1及び15について
ア 「本件特許発明1の特許要件Eで規定している「少なくとも80℃の温度の影響下にある」について本件特許明細書に何らの説明もなく、何を意味するか不明であり、発明を不明確にしている。請求項15においても同様の規定がある。」(50頁15~18行)
イ 当審の判断
(ア)本件発明1の「少なくとも80℃の温度の影響下にある前記石膏建築材料」及び本件発明15の「少なくとも80℃の温度の影響下にある前記石膏建築ボード」は、石膏建築材料又は石膏建築ボードが少なくとも80℃の温度にさらされているということであり、明確である。
(イ)なお、念のため、本件明細書の記載を参照すると、上記第5の(本ウ)で摘記した本件明細書の【0018】には「この膨張は、石膏からの結晶水の排出および水蒸気へのその転化に関連していると仮定される。石膏建築材料の膨張の時間周期は、本発明の範囲内では「膨張段階」と呼ばれる。膨張段階は、試料本体の加熱で始まり、試料本体が加熱開始前よりも短い長さを有する時点で終了する」と記載されている。ここで、石膏から排出又は蒸発するのが「水」であり、加熱の始まる温度を室温(25℃)とすると、水は室温状態ではほとんど蒸発せず、室温から沸点(大気圧では100℃)に近づくにしたがってより多く蒸発するのが技術常識であるから、本件発明1では、水の蒸発量が増えてくる、すなわち、膨張の度合いが大きくなる温度として、本件発明1では「少なくとも80℃の温度」と特定したものと理解することができる。
(3)本件発明3~5及び7~9について
ア 「請求項3~5に規定している1.2倍、2倍、2.5倍、請求項7~9に規定している10%、50%、75%は、それぞれ如何なる構成によって達成できるのか明確ではない。」(50頁19~22行)
イ 当審の判断
(ア)「前記石膏建築材料の前記膨張段階が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の膨張段階の時間の少なくとも」「1.2倍、2倍、2.5倍」(以下「膨張段階の比」という。)、及び「前記石膏建築材料の前記収縮率が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料の前記収縮率よりも少なくとも」「10%、50%、75%」「よりも低い」(以下「収縮率の比」という。)は、「膨張段階の比」及び「収縮率の比」の特定として明確である。
(イ)なお、念のため、上記第5の2で摘記した【図4】及び【図5】の記載を参照すると、「膨張段階の比」及び「収縮率の比」は、H-シロキサンとマイクロシリカ(非晶質二酸化ケイ素)の含有量によって変えらることが理解できる。してみれば、請求項3~5で規定している「膨張段階の比」及び請求項7~9で規定している「収縮率の比」の各々の数値は、H-シロキサンとマイクロシリカ(非晶質二酸化ケイ素)の含有量を変えることにより達成できるものであるから、明細書及び図面の記載からも明確である。
(4)本件発明11~13及び16について
ア 「請求項11~13の「H-シロキサンで処理」、請求項16の「H-シロキサンが…塗布」について、H-シロキサンを用いてどのように処理或いは塗布するのか本件特許明細書をみても具体的な構成が不明であり、発明を不明確にしている。」(50頁23行~51頁2行)
イ 当審の判断
(ア)請求項11~13の「前記石膏建築ボードの少なくとも1つの表面が、H-シロキサンで処理されていること」、請求項16の「H-シロキサンが、・・・石膏建築ボードの少なくとも1つの表面に塗布される」は、表面を処理する技術として、明確である。
(イ)なお、念のため、本件明細書の記載を参照すると、上記第5の(本エ)で摘記した本件明細書の【0028】には「石膏建築ボードの少なくとも1つの大きい表面がH-シロキサンでコーティング、塗装、スプレー塗布、またはその他の方法で処理される」と、上記第5の(本オ)で摘記した本件明細書の【0035】には「シロキサンコーティングの場合は、ブラシを使用して角柱に塗布した。」と記載され、処理又は塗布の具体的な方法は、請求項11~13及び請求項16の記載から理解されるとおりの方法であることから、明細書の記載からも明確である。
(5)本件発明15及び16について
ア 「請求項15は独立項であり、「石膏建築ボードの切れ目のないストランド」を規定し、請求項15の従属項である請求項16でも「石膏建築ボードの切れ目のないストランド」を規定する。しかし、本件特許明細書をみても「石膏建築ボードの切れ目のないストランド」について何らの説明もされておらず、発明を不明確にしている。」(51頁3~8行)
イ 当審の判断
上記第5の(本エ)で摘記した本件明細書の【0029】には「石膏建築ボードを製造するための本発明による方法は、少なくとも(スタッコ)と水とを互いに混合することによる少なくとも1つのスラリーの製造を含む。次いで、このスラリーは、石膏建築ボードの切れ目のないストランドに成形され、石膏が十分に凝結すると、個々の石膏建築ボードに分離される。」と記載されている。また、石膏ボードは、連続生産方式においては細長い連続板を切断して個々のボードを製造するのが一般的であることを踏まえると、「石膏建築ボードの切れ目のないストランド」とは、分離(切断)して石膏建築ボードとするための切れ目のない石膏の連続板のことであるといえるから、「石膏建築ボードの切れ目のないストランド」との記載は、明確である。
(6)本件発明14について
ア 「請求項14は請求項10の従属項であり、請求項10は請求項1の従属項である。石膏建築ボードは、従属する請求項1で「H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素」を含んでなることが規定されている。請求項14における「少なくとも1つの第1のエッジ層及びコア層を有し、少なくとも前記第1のエッジ層が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含有する」とした規定は、「コア層はH-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含有しない」との解釈を可能にしており、本件特許発明1を不明確にしている。」(51頁9~16行)
イ 当審の判断
請求項1を引用する請求項10をさらに引用する請求項14において「前記石膏建築ボードが少なくとも1つの第1のエッジ層及びコア層を有し、少なくとも前記第1のエッジ層が、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含有する」と記載されていても、請求項1には「前記H-シロキサンが、前記石膏建築材料中に均ーに分布する」と記載されていることから、請求項1の記載を引用する請求項14において、エッジ層及びコア層を有する石膏ボードである石膏建築材料には、H-シロキサンが均ーに分散するものであるといえる。
そうすると、請求項14における「コア層」にもH-シロキサンは均ーに分布しているから、請求項1において、「コア層はH-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含有しない」と解釈することはできないし、請求項14において「コア層」が非晶質二酸化ケイ素を含有していなくても、請求項1の記載と矛盾はないから、請求項14の記載は、本件発明1を不明確にするものではない。
(7)本件発明17について
ア 「請求項17は、独立項である請求項15の従属項である。請求項15では「少なくとも1つのスラリー」と規定されているだけであり、請求項17で規定する「少なくとも1つの第1のスラリーおよび1つの第2のスラリー」が何を規定したものか不明である。さらに、「第1のスラリーが、前記石膏建築ボードの少なくとも1つのエッジ層を形成するために使用」と規定されているが、従属先の請求項15にも、請求項16にも「石膏建築ボードの少なくとも1つのエッジ層」については規定されていない。本件特許明細書をみても「石膏建築ボード」の構成が不明である。」(51頁17~25行)
イ 当審の判断
まず、請求項15では、「少なくとも1つのスラリー」と記載され、それを引用する請求項17では「少なくとも1つの第1のスラリーおよび1つの第2のスラリー」と記載されている。請求項15の上記記載は、1つ以上のスラリーを意味し、請求項17の上記記載は2以上のスラリーを意味するものであるから、請求項17の上記記載は、請求項15における1以上のスラリーが、2以上であることを規定しているといえる。また、請求項17に記載の「前記第1のスラリーが、前記石膏建築ボードの少なくとも1つのエッジ層を形成するために使用される」について、当該「エッジ層」は従属先の請求項15又は16に記載がないから、上記「前記石膏建築ボードの少なくとも1つのエッジ層」の「前記」は、「石膏建築ボードの少なくとも1つのエッジ層」に係るものではなく、「石膏建築ボード」に係るものであると解するのが相当であり、従属先の請求項15又は16に「石膏建築ボードの少なくとも1つのエッジ層」との記載がなくても、請求項17の記載は明確である。
さらに、上記第5の(本エ)で摘記した本件明細書の【0030】には「本発明の別の実施形態によれば、少なくとも1つの第1のおよび1つの第2のスラリーを製造することができ、少なくとも第1のスラリーが、H-シロキサンおよび/または非晶質二酸化ケイ素を含有し、第1のスラリーが、石膏建築ボードの少なくとも1つのエッジ層を形成するために使用される。エッジ層、すなわちライナーと直接接触している層は、軽量の石膏建築ボードの場合に特に有利である。それは、典型的には、さらに内側に配置されたコア層よりも高密度である。」と記載されていることから、例えば、第1のスラリーがエッジ層を形成するもので、第2のスラリーがその他のエッジ層又はコア層を形成するものと理解できることから、明細書の記載からも「石膏建築ボード」の構成は明確である。
(8)まとめ
上記(1)~(7)で述べたように、申立理由2(明確性)における申立人の主張はいずれも当を得たものではなく、本件発明1~18は明確である。
よって、本件発明1~18に係る特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定にする要件を満たしているから、申立理由2によって、本件発明1~18に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由3(サポート要件)について
申立理由3についての当審の判断は、申立人の主張を以下の(1)及び(2)の項目に分けて摘記したうえで、それに対する当審の判断を述べることとする。
(1)本件発明1、15及び18について
ア 「本件特許発明1の特許要件Cでは、「1~5重量% の非晶質二酸化ケイ素と、含み」と規定し、本件特許発明1の特許要件Fでは「非晶質二酸化ケイ素はマイクロシリカを含む」と規定している。このことは、本件特許発明1の必須成分である非晶質二酸化ケイ素中に占めるマイクロシリカの量については何ら規定されていないことを示している。このことは、請求項15及び請求項18に係る発明についても同様である。しかしながら、本件明細書の発明の詳細な説明には、マイクロシリカに加えてマイクロシリカ以外の非晶質二酸化ケイ素を含む構成の石膏建築材料を記載した例はなく、この点について何らの説明もされていない。これに対して上記に挙げた請求項に係る発明は、例えば、マイクロシリカを極微量含み、その他の非晶質二酸化ケイ素との合計量を1~5重量% にした構成の実施形態を含み得るものである。したがって、上記した請求項1、請求項15及び請求項18の発明、これらに従属する各請求項の発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでない実施形態を含んでおり、開示の範囲を超えて特許されたものであることは明白である。」(52頁6~20行)
イ 当審の判断
本件発明が解決しようとする課題は、上記第5の(本ア)で摘記した本件明細書の【0007】によれば、「向上した耐火性を有し、特に、火が乾式壁建造物の裏側を突き破るのにかかる時間を少なくとも大幅に遅延させる石膏建築材料を提供すること」である。
ここで、申立人が主張するとおり、本件発明1、15及び18には、非晶質二酸化ケイ素中に占めるマイクロシリカの量については何ら規定されておらず、また、本件明細書の発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」という。)には、マイクロシリカに加えてマイクロシリカ以外の非晶質酸化ケイ素を含む構成の石膏建築材料を記載した例はない。
しかしながら、発明の詳細な説明の上記第5の(本ウ)で摘記した本件明細書の【0021】には、「膨張段階中、石膏建築材料は安定したままである。結晶水の排出は、エネルギーを消費する吸熱プロセスであり、したがって、石膏建築材料のさらなる加熱を一時的に阻止するか、または少なくとも低減する。膨張段階の延長により、例えば建築物の避難に利用可能である時間を延長することができる。」と記載されていることから、石膏建築材料又は石膏建築ボードが、H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料又は石膏建築ボードよりも長い膨張段階を有するものであれば、耐火性が向上し、火が乾式壁建造物の裏側を突き破るのにかかる時間を遅延させることができる、すなわち、上記課題を解決できるといえる。
そして、本件発明1、15及び18には、「H-シロキサンおよび非晶質二酸化ケイ素を含まずそれ以外は同一組成である石膏建築材料又は石膏建築ボードよりも長い膨張段階を有する」ことが特定されているから、非晶質二酸化ケイ素中に占めるマイクロシリカの量によらず、本件発明1、15及び18は、上記課題を解決できると認識できるものである。
したがって、本件発明1、15及び18は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(2)本件発明1、15及び18について
ア 「本件特許発明1の特許要件Bの「1~2.5重量% のH-シロキサン」とする規定、本件特許発明1の特許要件Cの「1~5重量%の非晶質二酸化ケイ素」とする規定は、石膏建築材料又は石膏建築ボードに対しての量として規定されている。これに対して本件明細書の段落[0014] には、添加剤として、促進剤、遅延剤、液化剤、増粘剤、殺生物剤、殺菌剤などの添加剤を含み得ることが記載されている。このことは、特許要件B及びCの規定は、明らかに「H-シロキサン」、「非晶質二酸化ケイ素」及び「マイクロシリカ」の量は石膏に対してのものでないことを示している。しかしながら、本件特許明細書で開示していることは、石膏に対して含む「H-シロキサン」及び「マイクロシリカ」の量に関することであり、添加剤を含んだ状態の石膏建築材料に対することについては全く記載されていない。」(52頁21行~53頁4行)
イ 当審の判断
上記2(1)イ(イ)で述べたように、H-シロキサン及びマイクロシリカ(非晶質二酸化ケイ素)の含有量は、「石膏」に対するものではなく、「石膏建築材料」又は「石膏建築ボード」に対しての量と解するのが相当であるから、本件発明1、15及び18は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(3)まとめ
上記(1)及び(2)で述べたように、申立理由3(サポート要件)における申立人の主張はいずれも当を得たものではなく、本件発明1~18は、発明の詳細な説明に記載したものである。
よって、本件発明1~18に係る特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定にする要件を満たしているから、申立理由3によって、本件発明1~18に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1~18に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700628