特許異議申立
2024-700564
ポリフェニレンスルフィドモノフィラメントとその製造方法及びそのパッケージ
- 審判番号
- 2024-700564
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-180067
- 登録番号
- 7402648
- 請求日
- 2024年06月12日
- 審決日
- 2024年10月15日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】KBセーレン株式会社
- 【権利者代理人】北野 修平
- 【権利者代理人】田中 勝也
- 【権利者代理人】南部 史
- 【権利者代理人】青木 覚史
- 【権利者代理人】宇田 新一
- 【権利者代理人】新田 研太
- 【権利者代理人】木村 豊
- 【異議申立人】東レ 株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 岩谷 一臣
- 審判官 金丸 治之
- 審判官 稲葉 大紀
- 分類
- P1652.113-Y (D01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7402648号発明「ポリフェニレンスルフィドモノフィラメントとその製造方法及びそのパッケージ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7402648号の請求項1~2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7402648号の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和元年9月30日の出願であって、令和5年12月13日にその特許権の設定登録がされ、同年12月21日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和6年6月12日に特許異議申立人東レ株式会社(以下「申立人」という。)により、その請求項1~2に係る特許に対して本件特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
請求項1~2に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件の特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】主たる構成単位がp-フェニレンスルフィド単位であり、(1)~(5)を満たすことを特徴とするポリフェニレンスルフィドモノフィラメント。(1)繊度が、6~35dtex(2)破断強度が、3.4cN/dtex以上(3)破断伸度が、30~40%(4)5%モジュラスが、1.0~1.6cN/dtex(5)10%モジュラスが、1.4~2.3cN/dtex
【請求項2】請求項1記載のポリフェニレンスルフィドモノフィラメントからなるパーン状繊維パッケージ。」
第3 申立理由の概要
申立人が提出した特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
また、申立人は、以下の2に示した甲第1号証~甲第2号証(それぞれ甲1等という。)を証拠として申立書に添付している。
1 申立理由
請求項1~2に係る発明は、以下の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである
2 証拠方法
甲1:国際公開第2014/157543号
甲2:実験成績証明書、船津義嗣、東レ株式会社 フィラメント技術部 部長、令和6年6月5日
第4 甲号証の記載について
1 甲1について
ア 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。
「[0015] 本発明において、ポリフェニレンスルフィドとは主たる繰り返し単位としてフェニレンスルフィド単位を有する高分子(ポリマー)を意味する。フェニレンスルフィド単位としては、p-フェニレンスルフィド単位やm-フェニレンスルフィド単位などが挙げられる。ポリフェニレンスルフィドは、p-フェニレンスルフィド単位やm-フェニレンスルフィド単位等からなるホモポリマーであってもよいし、これらを有する共重合体であってもよいが、耐熱性、加工性、経済的観点から言ってもp-フェニレンスルフィドの繰り返し単位が最も好ましい。
[0016] ポリフェニレンスルフィドのポリマータイプには、架橋タイプ、半架橋タイプ、線状(リニアー型)があるが、紡糸、延伸性においてリニアー型が最も優れているためリニアー型を用いるのが好ましい。」
「[0046] (1)繊度
JIS L1013(2010)8.3.1 A法に記載の方法に準じて、測定した。
[0047] (2)強度、伸度
JIS L1013(2010)8.5.1に記載の方法に準じて、試料長200mm、引張速度200mm/分の条件で、島津製作所(株)製、AGS 1KNGオートグラフ引張試験機を用い延伸糸の1パッケージあたり10回の測定を行い、引張強さ、伸び率を求め、それぞれ、強度(cN/dtex)、伸度(%)とした。」
「[0050] (5)沸騰水収縮率 JIS L1013(2010)8.18.1 B法に記載の方法に準じて、処理温度100℃の沸騰水で、処理時間15分で測定した。
[0051] 実施例1
ポリフェニレンスルフィドのペレットを準備し、紡糸温度328℃で溶融紡糸した。溶融したポリフェニレンスルフィドを、孔を2個有する紡糸用口金を用い、延伸後の繊度が33dtexとなる吐出量で吐出した。
[0052] 吐出したポリフェニレンスルフィドは、ユニフロー型冷却装置にて冷却し、油剤A(エマルション濃度は5質量%)を、付着している油分量0.5質量%となるように付与し、引取り速度1000m/分にて引取り、ボビンワインダーを用いて未延伸糸を巻き取った。
[0053] 一旦巻き取った未延伸糸をゴムローラーが付属するフィードローラーにて引取り、第1ローラーとの間で未延伸糸に緊張を与えた後、92℃に加熱した第1ローラーと加熱していない第2ローラーにそれぞれ5周回させて加熱延伸を施した。さらに第3ローラーを用いて、第2ローラーと第3ローラー間に140℃に加熱した熱板を設置し、第2ローラーと第3ローラー間で4%の弛緩処理と熱セットを施した。トータル延伸倍率は3.27倍であり、第3ローラーでの繊維は800m/分でパーンワインダーにより巻き取った。
[0054] 得られた繊維の物性、物性バラつき評価を表1に示す。」
「[0057] 実施例6
表1に示したように、吐出量を変更した以外は、実施例1と同様にして紡糸、延伸を行った。糸物性、物性バラつき評価をあわせて表1に示す。」
「[0065]
[図:0001416505000001.jpg]
」
イ 引用発明
上記アを参照し、特に[0057]及び[0065]に記載の実施例6に着目すると、甲1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「(1)~(3)を満たすポリフェニレンスルフィドモノフィラメント。
(1)繊度が、13dtex
(2)強度が、3.7cN/dtex
(3)伸度が、32.3%」
2 甲2について
甲2には、以下の記載がある。
ア「
[図:0001416505000002.jpg]
」
(第1頁第15行~第21行)
イ「
[図:0001416505000003.jpg]
[図:0001416505000004.jpg]
[図:0001416505000005.jpg]
[図:0001416505000006.jpg]
[図:0001416505000007.jpg]
」
(第1頁第22行~第3頁)
ウ「
[図:0001416505000008.jpg]
[図:0001416505000009.jpg]
」
(第3頁本文第1行~第4頁第3行)
エ「
[図:0001416505000010.jpg]
[図:0001416505000011.jpg]
・・・
[図:0001416505000012.jpg]
」
(第4頁第4行~第5頁)
第5 当審の判断
1 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明を対比する。
引用発明の「(1)~(3)を満たすポリフェニレンスルフィドモノフィラメント」は、本件発明1の「主たる構成単位がp-フェニレンスルフィド単位であり、(1)~(5)を満たすことを特徴とするポリフェニレンスルフィドモノフィラメント」と「(1)~(3)を満たすポリフェニレンスルフィドモノフィラメント」の限りにおいて一致する。
引用発明の「繊度が、13dtex」は、13dtexが、本件発明1の数値範囲である6~35dtexの範囲内であるので、本件発明1の「繊度が、6~35dtex」に相当する。
引用発明の「強度が、3.7cN/dtex」は、3.7cN/dtexが、本件発明1の数値範囲である3.4cN/dtexの範囲内であるので、本件発明1の「破断強度が、3.4cN/dtex以上」に相当する。
引用発明の「伸度が、32.3%」は、32.3%が、本件発明1の数値範囲である30~40%の範囲内であるので、本件発明1の「破断伸度が、30~40%」に相当する。
また、引用発明の「強度」及び「伸度」は、本件発明1の「破断強度」及び「破断伸度」に相当する。
そうすると、両者は以下の点で一致し、また相違する。
<一致点>
(1)~(3)を満たすポリフェニレンスルフィドモノフィラメント。
(1)繊度が、6~35dtex
(2)破断強度が、3.4cN/dtex以上
(3)破断伸度が、30~40%
<相違点1>
「ポリフェニレンスルフィドモノフィラメント」について、本件発明1では、「「主たる構成単位がp-フェニレンスルフィド単位であ」るのに対して、引用発明では、当該特定はなされていない点。
<相違点2について>
「ポリフェニレンスルフィドモノフィラメント」について、本件発明1が「(4)5%モジュラスが、1.0~1.6cN/dtex」であり、「(5)10%モジュラスが、1.4~2.3cN/dtex」であるのに対し、引用発明では、「5%モジュラス」及び「10%モジュラス」について不明である点。
イ 判断
事案にかんがみ、相違点2から検討する。
上記第4の2で示した甲2は、甲1の実施例6に記載の製造方法により得られたポリフェニレンスルフィドモノフィラメントの5%モジュラス及び10%モジュラスが、本件発明の5%モジュラス及び10%モジュラスの数値範囲である1.0~1.6cN/dtex及び1.4~2.3cN/dtexの範囲内のものであることを示そうとするものである。
しかしながら、甲2で示す甲1の実施例6に記載の製法により得られたとされるポリフェニレンスルフィドモノフィラメント(以下「甲2PPS」という。)は、甲1の実施例6に記載のポリフェニレンスルフィドモノフィラメント(以下「甲1PPS」)と、以下のア及びイの点で製造方法に差異があるとともに、以下のウ、エ及びオの点で「物」としても差異があり、両者は同一のものとは認められない。
(ア) 甲1PPSは、第2ローラと第3ローラの間の熱板により加熱しているのに対し、甲2PPSは、熱板は有さず第3ローラで加熱している点(甲1[0053]及び甲2上記第4の2イ)。
(イ) 甲1PPSは、800m/分でパーンワインダーにより巻き取っているのに対し、甲2PPSでは、800m/分で第4ローラにより巻き取っている点(甲1[0053]及び甲2上記第4の2イ)。
(ウ) 強度について、甲1PPSは3.7cN/dtexであるのに対し、甲2PPSは4.0cN/dtexである点(甲1[0065][表1]及び甲2上記第4の2エ)。
(エ) 伸度について、甲1PPSは32.3%であるのに対し、甲2PPSは31.6%である点(甲1[0065][表1]及び甲2上記第4の2エ)。
(オ) 沸水収縮率について、甲1PPSは3.8%であるのに対し、甲2PPSは4.5%である点(甲1[0065][表1]及び甲2上記第4の2エ)。
以上より、「甲2PPS」の5%モジュラス及び10%モジュラスが、それぞれ1.3%及び2.0%で、本件発明の数値範囲である5%モジュラス及び10%モジュラスの範囲内であったとしても、「甲1PPS」と「甲2PPS」とは同一とは認められず、「甲1PPS」の5%モジュラス及び10%モジュラスが、本件発明の5%モジュラス及び10%モジュラスの数値範囲である蓋然性が高いとはいえない。
また、甲2では実験例が1つしかないところ、甲1PPSと甲2PPSの数値の差が誤差であるとすべき根拠もない。
よって、<相違点2>は実質的な相違点であり、本件発明1は引用発明であるとはいえない。
なお、上述の(ウ)、(エ)に関し、申立人は、その数値の違いはばらつきの範囲内としている(異議申立書7ページ(イ))。しかし、同(ア)、(イ)のとおり、甲1PPSと甲2PPSはその製造方法が同一とは言えない上、甲1における各実施例の数値とも明らかに差異が生じていることにかんがみれば、単なるばらつきであるという主張を受け入れることはできない。
ウ まとめ
以上から、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく引用発明ではない。
2 本件発明2について
本件発明2は、直接的に本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記に示したことと同様に、本件発明2は、引用発明ではない。
第6 むすび
したがって、申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては、請求項1~2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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