特許異議申立
2024-700494
粘着シート
- 審判番号
- 2024-700494
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-108023
- 登録番号
- 7387824
- 請求日
- 2024年05月27日
- 審決日
- 2025年03月25日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日東電工株式会社
- 【権利者代理人】大井 道子
- 【権利者代理人】谷 征史
- 【権利者代理人】梅原 めぐみ
- 【異議申立人】堀 恵子
- 審判長/審判官
- 審判長 村守 宏文
- 審判官 天野 宏樹
- 審判官 弘實 由美子
- 分類
- P1651.16 -YAA(C09J) / P1651.113-YAA(C09J) / P1651.121-YAA(C09J) / P1651.536-YAA(C09J) / P1651.537-YAA(C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7387824号発明「粘着シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7387824号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。
特許第7387824号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7387824号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和4年7月4日に出願され、令和5年11月17日にその特許権の設定登録がされ、令和5年11月28日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和6年5月27日に特許異議申立人堀 恵子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において、令和6年8月23日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和6年10月22日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その内容を「本件訂正」という。)を行い、当審において、特許権者から訂正請求があったこと及び意見書が提出されたことを、同年10月31日付けで申立人に通知し、申立人は、その指定期間内である令和6年12月5日に意見書を提出した。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。
(1) 訂正事項1
請求項1における「前記粘着付与樹脂は、軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂であるか、あるいは、水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含むものであり、」を「前記粘着付与樹脂は、軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂であるか、あるいは、水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含むものであり、前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含む場合、前記粘着剤層に含まれる前記粘着付与樹脂全体に占める前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂の割合は40重量%以上であり、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~8も同様に訂正する。)。
2 一群の請求項について
訂正事項1は、訂正前に引用関係を有する請求項1~8に対して、請求されたものであるから、本件訂正は、一群の請求項ごとに請求されている。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1による請求項1についての訂正は「前記粘着付与樹脂は、軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂であるか、あるいは、水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含むものであり、」を「前記粘着付与樹脂は、軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂であるか、あるいは、水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含むものであり、前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含む場合、前記粘着剤層に含まれる前記粘着付与樹脂全体に占める前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂の割合は40重量%以上であり、」に変更することによって、水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含む場合の含有割合を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、「前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含む場合、前記粘着剤層に含まれる前記粘着付与樹脂全体に占める前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂の割合は40重量%以上」とすることは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められ、また、本件特許明細書の段落【0075】及び【0071】に記載されていることから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
請求項1を直接又は間接的に引用して特定される請求項2~8についての訂正も同様である。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~8に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明8」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
アクリル系ポリマーを含む粘着剤層を有する粘着シートであって、該粘着剤層からなる基材レスの両面粘着シートであるか、あるいは発泡体基材以外の基材を備える基材付きの粘着シートであって、
前記アクリル系ポリマーは、ヘプチルアクリレートを含むモノマー成分の重合物であり、
前記モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーを2重量%以上15重量%以下の割合で含み、
前記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は70万以上であり、
前記粘着剤層は粘着付与樹脂をさらに含み、
前記粘着付与樹脂は、軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂であるか、あるいは、水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含むものであり、前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含む場合、前記粘着剤層に含まれる前記粘着付与樹脂全体に占める前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂の割合は40重量%以上であり、
前記粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物は架橋剤を含み、
前記粘着剤層は、65℃での貯蔵弾性率G’が20,000Pa以上であり、かつ、-20℃でのtanδが0.3以上である、ここで該tanδとは、該粘着剤層の貯蔵弾性率G’に対する損失弾性率G”の比(G”/G’)をいう、粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層のガラス転移温度は-15℃~15℃の範囲内である、ここで該粘着剤層のガラス転移温度とは、動的粘弾性測定におけるtanδのピーク温度から求められるガラス転移温度をいう、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着付与樹脂は、ロジン系粘着付与樹脂およびテルペン系粘着付与樹脂から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤層中の前記粘着付与樹脂の含有量は、前記アクリル系ポリマー100重量部に対して70重量部以下である、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤層はアクリル系オリゴマーをさらに含み、
前記アクリル系オリゴマーのガラス転移温度は0℃以上300℃以下である、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記架橋剤は、イソシアネート系架橋剤およびエポキシ系架橋剤から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項7】
ステンレス鋼板に対する180度剥離強度が20N/25mm以上である、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項8】
携帯電子機器において部材の固定に用いられる、請求項1または2に記載の粘着シート。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1~8に係る特許に対して、当審において令和6年8月23日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。以下、申立人の提示した甲第1号証~甲第13号証を甲1~甲13といい、まとめて甲号証という。
取消理由1(拡大先願):本件の請求項1~8に係る発明は、その出願日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた日本語特許出願の国際出願日における国際出願(甲2および甲3)の明細書、請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13)ものであるから、本件特許の請求項1~8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 甲号証について
(1) 取消理由で採用した甲号証
甲2:PCT/JP2022/013035(国際公開第2022/202774号)
甲3:PCT/JP2022/013048(国際公開第2022/202778号)
甲4:特開2014-101430号公報
甲5:特開2018-100322号公報
甲6:特開2021-70744号公報
甲7:国際公開第2022/065392号
甲10:特開2009-256607号公報
(2) 申立人が意見書と共に提出した甲号証
甲13:国際公開第2020/013168号
3 甲号証の記載
(1) 甲2
甲2には、以下の事項が記載されている。
「[0005] 本発明は、易剥離性でありながら、高温で高い粘着力を保持できる粘着テープを提供することを目的とする。また、本発明は、該粘着テープを用いた電子機器部品又は車載機器部品の固定方法、及び、電子機器又は車載機器の製造方法を提供することを目的とする。
[0006] 本発明は、アクリル共重合体と、上記アクリル共重合体100重量部に対して0.01重量部以上、10重量部以下の下記式(A)又は(B)で表される構造を有する化合物とを含有する粘着剤層を有する粘着テープである。
以下、本発明を詳述する。
[0007][化1]
[図:0001424580000001.jpg]
[0008] 本発明者らは、アクリル共重合体を含有する粘着剤層に対して、特定の化合物を特定範囲の含有量で加えることにより、易剥離性でありながら、高温で高い粘着力を保持できる粘着テープが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。」
「[0013] 上記アクリル共重合体は特に限定されないが、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有することが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位のなかでも、n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有することが更に好ましい。
なお、本明細書中において(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルとは、アクリル又はメタクリルを意味する。アクリル共重合体は、メタクリル共重合体であってもよい。
[0014] 上記アクリル共重合体が上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有することで、粘着テープの粘着力、特に高温での粘着力がより高くなる。
この理由は定かではないが、n-ヘプチル(メタ)アクリレートのn-ヘプチル基が直鎖状であることから、上記アクリル共重合体が上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有することで、上記粘着剤層の凝集力が上がり、剥離抵抗が大きくなることが挙げられる。また、上記アクリル共重合体が上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有することで、上記アクリル共重合体のガラス転移温度(Tg)が低下するとともに上記粘着剤層の常温での貯蔵弾性率が低下し、上記粘着剤層の凹凸に対する追従性が向上することも挙げられる。また、炭素数が奇数の炭化水素は、炭素数が偶数の炭化水素より分子同士のパッキングがしにくく融点が低くなる傾向がある。炭素数が奇数の直鎖状のn-ヘプチル基もこれと同様にパッキングしにくいため、上記アクリル共重合体が上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有することで、側鎖がパッキングしにくく、柔軟性を発揮しやすくなり、上記粘着剤層の凹凸に対する追従性が向上することも挙げられる。
[0015] 本発明の粘着テープは、上記粘着剤層が上記式(A)又は(B)で表される構造を有する化合物を上記範囲の含有量で含有し、かつ、上記アクリル共重合体が上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有する場合、より一層、易剥離性を有しつつ高温で高い粘着力を保持することができる。これは、上記式(A)又は(B)で表される構造を有する化合物と、上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を有するアクリル共重合体とが相溶性に優れることで、高温下であっても、上記式(A)又は(B)で表される構造を有する化合物が上記粘着剤層と被着体との界面にブリードアウトしにくいためであると考えられる。」
「[0019] 上記アクリル共重合体における上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は30重量%である。上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量が30重量%以上であれば、粘着テープの粘着力、特に高温での粘着力がより高くなる。上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量のより好ましい下限は48重量%である。上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量は、50重量%を超えることが更に好ましく、更により好ましい下限は60重量%、一層好ましい下限は70重量%、より一層好ましい下限は80重量%である。
上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量の上限は特に限定されず、好ましい上限は99重量%、より好ましい上限は97重量%である。即ち、上記アクリル共重合体における上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の好ましい含有量は、48重量%以上、99重量%以下である。」
「[0021] 上記アクリル共重合体は、更に、架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を有することが好ましい。
上記アクリル共重合体が上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を有することで、上記粘着剤層の凝集力が上がり、粘着テープの粘着力、特に高温での粘着力がより高くなる。
[0022] 上記架橋性官能基を有するモノマーは特に限定されず、例えば、水酸基を有するモノマー、カルボキシル基を有するモノマー、グリシジル基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、ニトリル基を有するモノマー等が挙げられる。なかでも、上記粘着剤層のゲル分率の調節が容易であることから、水酸基を有するモノマー及びカルボキシル基を有するモノマーが好ましく、水酸基を有するモノマーがより好ましい。
上記水酸基を有するモノマーとして、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するアクリル系モノマーが挙げられる。上記カルボキシル基を有するモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有するアクリル系モノマーが挙げられる。・・・
これらの架橋性官能基を有するモノマーは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[0023] 上記アクリル共重合体における上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は20重量%である。上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が上記範囲内であれば、粘着テープの粘着力、特に高温での粘着力がより高くなる。上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量のより好ましい下限は0.1重量%、より好ましい上限は10重量%であり、更に好ましい下限は0.5重量%、更に好ましい上限は5重量%である。」
「[0039] 上記アクリル共重合体の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限は20万、好ましい上限は200万である。上記アクリル共重合体の重量平均分子量が上記範囲内であれば、粘着テープの粘着力、特に高温での粘着力がより高くなる。上記アクリル共重合体の重量平均分子量のより好ましい下限は40万、より好ましい上限は180万であり、更に好ましい下限は50万、更に好ましい上限は150万である。上記アクリル共重合体の重量平均分子量が50万以上であれば、粘着テープの粘着力、特に高温でせん断方向に荷重がかかったときの保持力がより高くなる。・・・」
「[0045] 上記粘着剤層は、ゲル分率を適度に調節できる観点から、更に、架橋剤を含有することが好ましい。
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、上記粘着剤層が被着体への密着性に優れることから、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
上記架橋剤の分子量は特に限定されないが、製造上の観点から、分子量は2000未満が好ましく、100以上が好ましい。
[0046] 上記架橋剤の含有量は特に限定されないが、上記アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限は0.05重量部、好ましい上限は7重量部である。上記架橋剤の含有量が上記範囲内であれば、上記粘着剤層のゲル分率が適度に調節され、粘着テープの易剥離性がより高くなるとともに粘着力、特に高温での粘着力がより高くなる。上記架橋剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
なお、上記架橋剤の含有量は、上記架橋剤の固形分の量を示す。
[0047] 上記粘着剤層は、更に、粘着付与樹脂を含有することが好ましい。上記粘着剤層が上記粘着付与樹脂を含有することにより、粘着テープの粘着力、特に高温での粘着力がより高くなる。
上記粘着付与樹脂は特に限定されず、例えば、ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、クマロンインデン系粘着付与樹脂、脂環族飽和炭化水素系粘着付与樹脂、C5系石油粘着付与樹脂、C9系石油粘着付与樹脂、C5-C9共重合系石油粘着付与樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ロジンエステル系粘着付与樹脂及びテルペン系粘着付与樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
[0048] 上記ロジンエステル系粘着付与樹脂としては、例えば、重合ロジンエステル系樹脂、水添ロジンエステル系樹脂等が挙げられる。上記テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂等が挙げられる。
上記ロジンエステル系粘着付与樹脂及び上記テルペン系粘着付与樹脂は、生物由来であることが好ましい。生物由来のロジンエステル系粘着付与樹脂として、例えば、松脂等の天然樹脂に由来するロジンエステル系粘着付与樹脂が挙げられる。生物由来のテルペン系粘着付与樹脂として、例えば、植物の精油等に由来するテルペン系粘着付与樹脂等が挙げられる。
[0049] 上記粘着付与樹脂の含有量は特に限定されないが、上記アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限は10重量部、好ましい上限は60重量部である。上記粘着付与樹脂の含有量が上記範囲内であれば、粘着テープの粘着力、特に高温での粘着力がより高くなる。上記粘着付与樹脂の含有量のより好ましい下限は15重量部、より好ましい上限は50重量部であり、更に好ましい上限は35重量部である。
[0050] 上記粘着剤層は、必要に応じて、シランカップリング剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料等の添加剤等を含有していてもよい。」
「[0054] 本発明の粘着テープは、基材を有しないノンサポートテープであってもよく、基材の一方の面に上記粘着剤層を有する片面粘着テープであってもよく、基材の両面に上記粘着剤層を有する両面粘着テープであってもよい。
上記基材としては特に限定されず、従来公知の基材を用いることができるが、粘着テープ全体としての生物由来材料の含有率を高くするためには、生物由来の基材を用いることが好ましい。・・・」
「[0061] 本発明の粘着テープは、易剥離性でありながら、高温で高い粘着力を保持できる粘着テープである。本発明の粘着テープのJIS Z 0237:2009に準拠して測定したSUS板に対する180°剥離力の好ましい下限は4N/25mm、好ましい上限は20N/25mmであり、より好ましい下限は8N/25mm、より好ましい上限は16N/25mmである。上記180°剥離力が20N/25mm以下であれば、電子機器等の解体又はリサイクル工程時の剥離をより容易に行うことができる。また、剥離する際に粘着テープと被着体との界面での剥離をより生じやすくすることができる。
上記JIS Z 0237:2009に準拠して測定したSUS板に対する180°剥離力は、次のようにして測定される。まず、幅25mm×長さ75mmに粘着テープを裁断し、試験片を作製する。この試験片をSUS板(例えば、SUS304-2B等)にその粘着剤層がSUS板に対向した状態となるように載せた後、試験片上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラを一往復させることにより貼り合わせる。その後、23℃、50%湿度で20分養生し、試験サンプルを作製する。JIS Z 0237:2009に準じて、23℃、50%湿度の条件下、この試験サンプルを引張速度300mm/minの条件で180°方向に剥離し、剥離力(N/25mm)を測定する。
なお、粘着テープが、基材を有しないノンサポートテープ又は基材の両面に粘着剤層を有する両面粘着テープの場合、他方(測定しない側)の粘着剤層表面に、厚み23μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(例えばフタムラ化学社製、FE2002又はその同等品)を裏打ちした後にSUS板への貼り合わせを行う。」
「[0064] また、同様の要領で作製した粘着剤の溶液を離型フィルムの離型処理面に塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去して粘着剤層を形成した後、この粘着剤層を離型フィルムの離型処理面に重ねることによって、基材を有しないノンサポートテープを得てもよい。」
「[0066] 本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、易剥離性でありながら、高温で高い粘着力を保持できることから、電子機器部品又は車載機器部品の固定に用いられることが好ましい。具体的には、大型の携帯電子機器における電子機器部品の接着固定、車載機器部品(例えば、車載用パネル)の接着固定等に、本発明の粘着テープを好適に用いることができる。」
「[0071] (実施例1)
(1)アクリル共重合体の製造
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチルを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入した。続いて、n-ブチルアクリレート(BA、三菱ケミカル社製)50重量部、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA、三菱ケミカル社製)44.9重量部、アクリル酸(AAc、日本触媒社製)5重量部及び2-ヒドロキシルエチルアクリレート(2-HEA、大阪有機化学工業社製)0.1重量部を2時間かけて滴下添加した。滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、アクリル共重合体含有溶液を得た。
[0072] 得られたアクリル共重合体をテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過し、測定サンプルを調製した。この測定サンプルをゲルパーミッションクロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)に供給して、サンプル流量1mL/min、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、アクリル共重合体のポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量を求めた。
[0073] (2)式(A)又は(B)で表される構造を有する化合物の製造n-ヘプチルアクリレート、n-ヘプチルアルコール及び硫酸をそれぞれ2モル、1モル及び0.2モルの比率で混合し、110℃にて反応させた(付加反応)。反応後の生成物を蒸留することにより、上述した式(A)又は(B)で表される構造を有する化合物を得た。
[0074] (3)粘着テープの製造
得られたアクリル共重合体含有溶液に、アクリル共重合体100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、コロネートL-45)の固形分が0.5重量部となるよう加え、更に、上記で得られた式(A)又は(B)で表される構造を有する化合物を0.5重量部加え、粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を厚み75μmの離型処理したPETフィルムの離型処理面に、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように塗工した後、110℃で5分間乾燥させた。この粘着剤層を、厚み75μmの離型処理したPETフィルムの離型処理面に重ねて、40℃で48時間養生し、粘着テープ(ノンサポートタイプ)を得た。」
「[0076] (実施例2~14、比較例1~4)
アクリル共重合体を構成するアクリル系モノマーの種類及び配合量、アクリル共重合体の重量平均分子量、式(A)又は(B)で表される構造を有する化合物の配合量、粘着付与樹脂及び架橋剤の種類及び配合量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、粘着テープを得た。
[0077] なお、実施例3~14、比較例2~4では、n-ヘプチルアルコール(東京化成工業社製)とアクリル酸(AAc、日本触媒社製)とをエステル化することにより調製したn-ヘプチルアクリレート(C7)を用いた。
また、実施例2、4~7、9、比較例1~4では、粘着付与樹脂として、テルペンフェノール樹脂Aを10重量部、重合ロジンエステル樹脂Bを10重量部及び水添ロジンエステル樹脂Cを10重量部用いた。粘着付与樹脂としては、以下の生物由来の粘着付与樹脂を用いた。
・テルペンフェノール樹脂A(ヤスハラケミカル社製、G150、軟化点:150℃、生物由来炭素含有率67重量%)
・重合ロジンエステル樹脂B(水酸基価:46、軟化点:152℃、生物由来炭素含有率95重量%)
・水添ロジンエステル樹脂C(荒川化学工業社製、KE359、水酸基価:40、軟化点:100℃、生物由来炭素含有率95重量%)」
「[0080] (1)易剥離性(SUS板に対する剥離力)
JIS Z 0237:2009に準拠して、SUS板に対する粘着テープの180°剥離力を測定した。
具体的には、まず、粘着テープの一方の面(測定しない側)を厚み23μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(フタムラ化学社製、FE2002)で裏打ちした後に、幅25mm×長さ75mmに裁断し、試験片を作製した。この試験片をSUS板(SUS304-2B)にその粘着剤層(測定する側)がSUS板に対向した状態となるように載せた後、試験片上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラを一往復させることにより貼り合わせた。その後、23℃、50%湿度で20分養生し、試験サンプルを作製した。JIS Z 0237:2009に準じて、23℃、50%湿度の条件下、この試験サンプルを引張速度300mm/minの条件で180°方向に剥離し、剥離力(N/25mm)を測定した。
SUS板に対する剥離力が4N/25mm以上かつ20N/25mm以下であった場合を〇、4N/25mm未満又は20N/25mmを超えた場合を×とした。」
「[0083][表1]
[図:0001424580000002.jpg]
」
(2) 甲3
甲3には、以下の事項が記載されている。
「[0004] 粘着テープには、アクリル共重合体を含有するアクリル系粘着剤が広く用いられている。アクリル共重合体を構成するアクリル系モノマーとしては、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられる。しかしながら、これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分として含むアクリル共重合体を含有する粘着剤は、平滑面に対する粘着力には優れていても、粗面に対する粘着力に劣ることがある。
[0005] 本発明は、粗面に対して優れた粘着力を発揮できる粘着テープを提供することを目的とする。また、本発明は、該粘着テープを用いた電子機器部品又は車載機器部品の固定方法、及び、電子機器又は車載機器の製造方法を提供することを目的とする。」
「[0008] 本発明の粘着テープは、アクリル共重合体を含有する粘着剤層を有する。
上記アクリル共重合体は、n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を30重量%以上含み、1-メチルへプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を0.01重量%以上、30重量%以下含む。これにより、本発明の粘着テープは、粗面に対して優れた粘着力を発揮できる粘着テープとなる。
[0009] この理由は定かではないが、以下のように考えることができる。まず、n-ヘプチル(メタ)アクリレートのn-ヘプチル基は炭素数が奇数であるため、炭素数が偶数のn-炭化水素基よりも分子同士のパッキングが生じにくく、アクリル共重合体とした際にガラス転移温度が低下し、柔軟性を発揮しやすいと考えられる。しかし、n-ヘプチル基は直鎖状であるため、分枝鎖状の炭化水素基に比べて、アクリル共重合体とした際に絡み合い点が多くなりやすく、凹凸に対する追従性には限界がある。
一方、1-メチルヘプチル(メタ)アクリレートは、n-ヘプチル(メタ)アクリレートに非常に近い構造だが、その1-メチルヘプチル基が主鎖近傍で分枝鎖構造をとる。したがって、1-メチルヘプチル(メタ)アクリレートは、直鎖状のモノマーに比べると分子の剛直性が高く、アクリル共重合体とした際のガラス転移温度はより高いものの、分枝鎖構造が分子同士のパッキングを阻害するので、凹凸に対する追従性を発揮しやすいと考えられる。
このように、上記アクリル共重合体が上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位に加えて、上記1-メチルへプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を少量含むことで、驚くべきことではあるが、上記粘着剤層の凝集力と凹凸に対する追従性とがバランスよく発揮されると考えられる。これにより、粘着テープの粗面に対する粘着力がより高くなるのではないかと考えられる。」
「[0012] 上記アクリル共重合体における上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量は、下限が30重量%である。上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量が30重量%以上であれば、粘着テープの粗面に対する粘着力がより高くなる。上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量の好ましい下限は48重量%である。上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量は、50重量%を超えることがより好ましく、更に好ましい下限は60重量%、更により好ましい下限は70重量%、一層好ましい下限は80重量%である。
上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量の上限は特に限定されず、好ましい上限は99重量%、より好ましい上限は97重量%である。」
「[0019] 上記アクリル共重合体は、更に、架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を有することが好ましい。
上記アクリル共重合体が架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を有することで、上記粘着剤層の凝集力が上がり、粘着テープの粗面に対する粘着力がより高くなる。
[0020] 上記架橋性官能基を有するモノマーは特に限定されず、例えば、水酸基を有するモノマー、カルボキシル基を有するモノマー、グリシジル基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、ニトリル基を有するモノマー等が挙げられる。なかでも、上記粘着剤層のゲル分率の調節が容易であることから、水酸基を有するモノマー及びカルボキシル基を有するモノマーが好ましく、水酸基を有するモノマーがより好ましい。
上記水酸基を有するモノマーとして、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するアクリル系モノマーが挙げられる。上記カルボキシル基を有するモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有するアクリル系モノマーが挙げられる。・・・
これらの架橋性官能基を有するモノマーは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
[0021] 上記アクリル共重合体における上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は20重量%である。上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が上記範囲内であれば、粘着テープの粗面に対する粘着力がより高くなる。上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量のより好ましい下限は0.1重量%、より好ましい上限は10重量%であり、更に好ましい下限は0.5重量%、更に好ましい上限は5重量%である。」
「[0038] 上記アクリル共重合体の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましい下限は20万、好ましい上限は200万である。上記アクリル共重合体の重量平均分子量が上記範囲内であれば、粘着テープの粗面に対する粘着力がより高くなる。上記アクリル共重合体の重量平均分子量のより好ましい下限は40万、より好ましい上限は180万であり、更に好ましい下限は50万、更に好ましい上限は150万である。上記アクリル共重合体の重量平均分子量が50万以上であれば、粘着テープの粘着力、特に高温でせん断方向に荷重がかかったときの保持力がより高くなる。・・・」
「[0044] 上記粘着剤層は、ゲル分率を適度に調節できる観点から、更に、架橋剤を含有することが好ましい。
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、上記粘着剤層が被着体への密着性に優れることから、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
上記架橋剤の分子量は特に限定されないが、製造上の観点から、分子量は2000未満が好ましく、100以上が好ましい。
[0045] 上記架橋剤の含有量は特に限定されないが、上記アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限は0.05重量部、好ましい上限は7重量部である。上記架橋剤の含有量が上記範囲内であれば、上記粘着剤層のゲル分率が適度に調節され、粘着テープの粗面に対する粘着力がより高くなる。上記架橋剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
なお、上記架橋剤の含有量は、上記架橋剤の固形分の量を示す。
[0046] 上記粘着剤層は、更に、粘着付与樹脂を含有することが好ましい。上記粘着剤層が上記粘着付与樹脂を含有することにより、粘着テープの粗面に対する粘着力がより高くなる。
上記粘着付与樹脂は特に限定されず、例えば、ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、クマロンインデン系粘着付与樹脂、脂環族飽和炭化水素系粘着付与樹脂、C5系石油粘着付与樹脂、C9系石油粘着付与樹脂、C5-C9共重合系石油粘着付与樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ロジンエステル系粘着付与樹脂及びテルペン系粘着付与樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
[0047] 上記ロジンエステル系粘着付与樹脂としては、例えば、重合ロジンエステル系樹脂、水添ロジンエステル系樹脂等が挙げられる。上記テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂等が挙げられる。
上記ロジンエステル系粘着付与樹脂及び上記テルペン系粘着付与樹脂は、生物由来であることが好ましい。生物由来のロジンエステル系粘着付与樹脂として、例えば、松脂等の天然樹脂に由来するロジンエステル系粘着付与樹脂が挙げられる。生物由来のテルペン系粘着付与樹脂として、例えば、植物の精油等に由来するテルペン系粘着付与樹脂等が挙げられる。
[0048] 上記粘着付与樹脂の含有量は特に限定されないが、上記アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限は10重量部、好ましい上限は60重量部である。上記粘着付与樹脂の含有量が上記範囲内であれば、粘着テープの粗面に対する粘着力がより高くなる。上記粘着付与樹脂の含有量のより好ましい下限は15重量部、より好ましい上限は50重量部であり、更に好ましい上限は35重量部である。
[0049] 上記粘着剤層は、必要に応じて、シランカップリング剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、顔料、染料等の添加剤等を含有していてもよい。」
「[0053] 本発明の粘着テープは、基材を有しないノンサポートテープであってもよく、基材の一方の面に上記粘着剤層を有する片面粘着テープであってもよく、基材の両面に上記粘着剤層を有する両面粘着テープであってもよい。
上記基材としては特に限定されず、従来公知の基材を用いることができるが、粘着テープ全体としての生物由来材料の含有率を高くするためには、生物由来の基材を用いることが好ましい。・・・」
「[0060] 本発明の粘着テープは、JIS Z 0237:2009に準拠して測定したSUS304-BA板に対する180°剥離力の好ましい下限が5N/25mm、より好ましい下限が7N/25mmである。上記180°剥離力の上限は特に限定されず、高いほど好ましいが、実質的には25N/25mm程度である。
上記JIS Z 0237:2009に準拠して測定したSUS304-BA板に対する180°剥離力は、次のようにして測定される。まず、幅25mm×長さ75mmに粘着テープを裁断し、試験片を作製する。この試験片をSUS304-BA板にその粘着剤層がSUS304-BA板に対向した状態となるように載せた後、試験片上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラを一往復させることにより貼り合わせる。その後、23℃、50%湿度で20分養生し、試験サンプルを作製する。JIS Z 0237:2009に準じて、23℃、50%湿度の条件下、この試験サンプルを引張速度300mm/minの条件で180°方向に剥離し、剥離力(N/25mm)を測定する。
なお、粘着テープが、基材を有しないノンサポートテープ又は基材の両面に粘着剤層を有する両面粘着テープの場合、他方(測定しない側)の粘着剤層表面に、厚み23μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(例えばフタムラ化学社製、FE2002又はその同等品)を裏打ちした後にSUS304-BA板への貼り合わせを行う。」
「[0063] また、同様の要領で作製した粘着剤の溶液を離型フィルムの離型処理面に塗布し、溶液中の溶剤を完全に乾燥除去して粘着剤層を形成した後、この粘着剤層を離型フィルムの離型処理面に重ねることによって、基材を有しないノンサポートテープを得てもよい。
[0064] 本発明の粘着テープの用途は特に限定されないが、平滑面に対する粘着力にも粗面に対する粘着力にも優れることから、電子機器部品又は車載機器部品の固定に用いられることが好ましい。具体的には、大型の携帯電子機器における電子機器部品の接着固定、車載機器部品(例えば、車載用パネル)の接着固定等に、本発明の粘着テープを好適に用いることができる。」
「[0068] (実施例1)
(1)アクリル共重合体の製造
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチルを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入した。n-ヘプチルアクリレート(C7)30重量部、1-メチルへプチルアクリレート1重量部、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA、三菱ケミカル社製)63.9重量部、アクリル酸(AAc、日本触媒社製)5重量部及び2-ヒドロキシルエチルアクリレート(2-HEA、大阪有機化学工業社製)0.1重量部を2時間かけて滴下添加した。滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、アクリル共重合体含有溶液を得た。
なお、n-ヘプチルアクリレート(C7)は、n-ヘプチルアルコール(東京化成工業社製)とアクリル酸(AAc、日本触媒社製)とをエステル化することにより調製し、1-メチルへプチルアクリレートは、1-メチルヘプチルアルコール(東京化成工業社製)とアクリル酸(AAc、日本触媒社製)とをエステル化することにより調製した。
[0069] 得られたアクリル共重合体をテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過し、測定サンプルを調製した。この測定サンプルをゲルパーミッションクロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)に供給して、サンプル流量1mL/min、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、アクリル共重合体のポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量を求めた。
[0070] (2)粘着テープの製造
得られたアクリル共重合体含有溶液に、アクリル共重合体100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、コロネートL-45)の固形分が0.5重量部となるよう加え、粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を厚み75μmの離型処理したPETフィルムの離型処理面に、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように塗工した後、110℃で5分間乾燥させた。この粘着剤層を、厚み75μmの離型処理したPETフィルムの離型処理面に重ねて、40℃で48時間養生し、粘着テープ(ノンサポートタイプ)を得た。」
「[0072] (実施例2~11、比較例1~7)
アクリル共重合体を構成するアクリル系モノマーの種類及び配合量、粘着付与樹脂及び架橋剤の種類及び配合量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、粘着テープを得た。
[0073] なお、比較例2では、n-ブチルアクリレート(BA、三菱ケミカル社製)を用いた。また、実施例7では、粘着付与樹脂として、テルペンフェノール樹脂Aを10重量部、重合ロジンエステル樹脂Bを10重量部及び水添ロジンエステル樹脂Cを10重量部用いた。粘着付与樹脂としては、以下の生物由来の粘着付与樹脂を用いた。
・テルペンフェノール樹脂A(ヤスハラケミカル社製、G150、軟化点:150℃、生物由来炭素含有率67重量%)
・重合ロジンエステル樹脂B(水酸基価:46、軟化点:152℃、生物由来炭素含有率95重量%)
・水添ロジンエステル樹脂C(荒川化学工業社製、KE359、水酸基価:40、軟化点:100℃、生物由来炭素含有率95重量%)」
「[表1]
[図:0001424580000003.jpg]
」
(3) 甲4
甲4には、以下の事項が記載されている。
「[0064]
(6)テルペン樹脂
テルペンフェノール樹脂(商品名「YSポリスター K125」、水酸基価200、重量平均分子量600、ヤスハラケミカル社製)
テルペンフェノール樹脂(商品名「YSポリスター G150」、水酸基価140、重量平均分子量700、ヤスハラケミカル社製)
・・・」
(4) 甲5
甲5には、以下の事項が記載されている。
「[0076]
(合成例2)架橋性ケイ素基を有する樹脂B1の合成
500mlのセパラブルフラスコに、YSポリスターG150(商品名)(テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル株式会社製、水酸基価;130mg/KOHg)100gを含有する・・・」
(5) 甲6
甲6には、以下の事項が記載されている。
「[0080]
[実施例1](粘着剤組成物1および粘着シートの製造)
製造例1で得たアクリル系共重合体1のポリマー溶液(固形分濃度20質量%)、テルペン樹脂としてYSレジン PX-1000(軟化点100℃、水酸基価5mgKOH/g未満、ヤスハラケミカル株式会社製)、テルペンフェノール樹脂としてYSポリスター G150(軟化点150℃、水酸基価110~120mgKOH/g、ヤスハラケミカル株式会社製)、・・・」
(6) 甲7
甲7には、以下の事項が記載されている。
「[0074] (2)両面粘着テープの製造
アクリル共重合体Aの固形分100重量部に対して、重合ロジンエステル樹脂(荒川化学工業社製、ペンセルD-135、軟化点135℃、水酸基価45)15重量部及びテルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル社製、YSポリスターG150、軟化点150℃、水酸基価135)15重量部を添加した。」
(7) 甲10
甲10には、以下の事項が記載されている。
「[0038] (粘着付与樹脂)
本発明における粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、キシレン樹脂およびエラストマーやこれらの水添化物及びアクリル系オリゴマー等を挙げる事ができる。」
「[0041] 本発明におけるアクリル系オリゴマーは、ガラス転移温度(Tg)が20℃以上、好ましくは30℃以上、さらに好ましくは40℃以上であることが望ましい。ガラス転移温度(Tg)が20℃未満であるとポリマーの室温以上での凝集力が低下し、保持性能や高温接着性能が低下する場合がある。」
(8) 甲13
甲13には、以下の事項が記載されている。
「[0068] 特に限定するものではないが、ここに開示される技術における粘着付与樹脂として、水酸基価が30mgKOH/g以上の粘着付与樹脂を用いてもよい。以下、水酸基価が30mgKOH/g以上の粘着付与樹脂を「高水酸基価樹脂」ということがある。上記水酸基価は40mgKOH/g以上であることが適当であり、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは60mgKOH/g以上である。高水酸基価樹脂の水酸基価の上限は特に限定されない。アクリル系ポリマーとの相溶性等の観点から、高水酸基価樹脂の水酸基価は、凡そ200mgKOH/g以下が適当であり、好ましくは凡そ180mgKOH/g以下、より好ましくは凡そ160mgKOH/g以下、さらに好ましくは凡そ140mgKOH/g以下である。
[0069] 好ましい一態様では、粘着剤層は、水酸基価が70mgKOH/g以上の粘着付与樹脂を含む。このような高水酸基価樹脂を用いることによって、優れた耐変形性が得られやすい。例えば、イソシアネート系架橋剤を用いる粘着剤において、上記のような高水酸基価を有する粘着付与樹脂を用いることで、粘着付与樹脂使用による粘着力向上に加えて、上記高水酸基価粘着付与樹脂とイソシアネート系架橋剤とが相互作用して、凝集力の高い粘着剤層が実現され得る。高水酸基価樹脂の水酸基価は、凡そ80mgKOH/g以上(例えば凡そ100mgKOH/g以上)であってもよい。高水酸基価樹脂の水酸基価の上限は特に限定されない。ベースポリマーとの相溶性等の観点から、高水酸基価樹脂の水酸基価は、凡そ350mgKOH/g以下が適当であり、好ましくは凡そ300mgKOH/g以下(例えば凡そ250mgKOH/g以下)、より好ましくは凡そ200mgKOH/g以下であり、凡そ150mgKOH/g以下(例えば凡そ120mgKOH/g以下)であってもよい。」
「[0072] 特に限定するものではないが、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂全体に占める高水酸基価樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)の割合は、例えば凡そ25重量%以上とすることができ、凡そ30重量%以上が好ましく、凡そ50重量%以上(例えば凡そ80重量%以上、典型的には凡そ90重量%以上)がより好ましい。粘着付与樹脂の実質的に全部(例えば凡そ95~100重量%、さらには凡そ99~100重量%)が高水酸基価樹脂であってもよい。したがって、ここに開示される粘着剤層は、発明の効果を損なわない範囲で、高水酸基価樹脂に該当しない粘着付与樹脂(具体的には、水酸基価が70mgKOH/g未満の粘着付与樹脂)を含み得る。」
4 甲2に記載された発明
(1) 甲2発明A
甲2の実施例4に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチルを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始し、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入し、n-ヘプチルアクリレート94.9重量部、アクリル酸5重量部及び2-ヒドロキシルエチルアクリレート0.1重量部を2時間かけて滴下添加し、滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、Mw=116万のアクリル共重合体含有溶液を得て、アクリル共重合体100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、コロネートL-45)の固形分を1.5重量部、式(A)又は(B)で表される構造を有する化合物を0.01重量部、粘着付与樹脂としてテルペンフェノール樹脂A(ヤスハラケミカル社製、G150、軟化点:150℃、生物由来炭素含有率67重量%)10重量部、重合ロジンエステル樹脂B(水酸基価:46、軟化点:152℃、生物由来炭素含有率95重量%)10重量部、水添ロジンエステル樹脂C(荒川化学工業社製、KE359、水酸基価:40、軟化点:100℃、生物由来炭素含有率95重量%)10重量部、となるよう加え、粘着剤溶液を調製し、この粘着剤溶液を厚み75μmの離型処理したPETフィルムの離型処理面に、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように塗工した後、110℃で5分間乾燥させ、この粘着剤層を、厚み75μmの離型処理したPETフィルムの離型処理面に重ねて、40℃で48時間養生し、得られた粘着テープであって、SUS板に対する剥離力が18.0N/25mmである粘着テープ。」
(2) 甲2発明B
甲2の比較例2に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチルを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始し、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入し、n-ヘプチルアクリレート94.9重量部、アクリル酸5重量部及び2-ヒドロキシルエチルアクリレート0.1重量部を2時間かけて滴下添加し、滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、Mw=116万のアクリル共重合体含有溶液を得て、アクリル共重合体100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、コロネートL-45)の固形分が1.5重量部、粘着付与樹脂としてテルペンフェノール樹脂A(ヤスハラケミカル社製、G150、軟化点:150℃、生物由来炭素含有率67重量%)10重量部、重合ロジンエステル樹脂B(水酸基価:46、軟化点:152℃、生物由来炭素含有率95重量%)10重量部、水添ロジンエステル樹脂C(荒川化学工業社製、KE359、水酸基価:40、軟化点:100℃、生物由来炭素含有率95重量%)10重量部、となるよう加え、粘着剤溶液を調製し、この粘着剤溶液を厚み75μmの離型処理したPETフィルムの離型処理面に、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように塗工した後、110℃で5分間乾燥させ、この粘着剤層を、厚み75μmの離型処理したPETフィルムの離型処理面に重ねて、40℃で48時間養生し、得られた粘着テープであって、SUS板に対する剥離力が20.3N/25mmである粘着テープ。」
また、以上の甲2発明Aおよび甲2発明Bをまとめて「甲2発明」ともいう。
5 甲3に記載された発明
甲3の実施例7に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチルを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始し、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入し、n-ヘプチルアクリレート93.9重量部、1-メチルヘプチルアクリレート1重量部、アクリル酸5重量部及び2-ヒドロキシルエチルアクリレート0.1重量部を2時間かけて滴下添加し、滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、Mw=112万のアクリル共重合体含有溶液を得て、アクリル共重合体100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、コロネートL-45)の固形分が2重量部、粘着付与樹脂としてテルペンフェノール樹脂A(ヤスハラケミカル社製、G150、軟化点:150℃、生物由来炭素含有率67重量%)10重量部、重合ロジンエステル樹脂B(水酸基価:46、軟化点:152℃、生物由来炭素含有率95重量%)10重量部、水添ロジンエステル樹脂C(荒川化学工業社製、KE359、水酸基価:40、軟化点:100℃、生物由来炭素含有率95重量%)10重量部、となるよう加え、粘着剤溶液を調製し、この粘着剤溶液を厚み75μmの離型処理したPETフィルムの離型処理面に、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように塗工した後、110℃で5分間乾燥させ、この粘着剤層を、厚み75μmの離型処理したPETフィルムの離型処理面に重ねて、40℃で48時間養生し、得られた粘着テープであって、耐水研磨紙の研磨面に対する剥離力が16.2N/25mmである粘着テープ。」
6 取消理由(甲2に基づく拡大先願)についての当審の判断
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「n-ヘプチルアクリレート」、「アクリル酸」、「アクリル共重合体」、「イソシアネート系架橋剤」、「粘着付与樹脂」、「粘着剤溶液」、「粘着剤層」及び「粘着テープ」は、それぞれ本件発明1の「ヘプチルアクリレート」、「カルボキシ基含有モノマー」、「アクリル系ポリマー」、「架橋剤」、「粘着付与樹脂」、「粘着剤組成物」、「粘着剤層」及び「粘着シート」に相当する。
また、甲2発明の「粘着剤溶液を厚み75μmの離型処理したPETフィルムの離型処理面に、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように塗工した後、110℃で5分間乾燥させ、この粘着剤層を、厚み75μmの離型処理したPETフィルムの離型処理面に重ねて、40℃で48時間養生し、得られた粘着テープ」は、粘着剤層の両面がPETフィルムの離型処理面に張り合わされており、甲2の[0064]にて記載される「基材を有しないノンサポートテープ」と同様の層構成であるから、本件発明1の「該粘着剤層からなる基材レスの両面粘着シート」に相当する。
さらに、甲2発明の「アクリル酸」はアクリル共重合体を構成する全モノマー100重量部に対して5重量部の割合で用いられているから、本件発明1の「カルボキシ基含有モノマーを2重量%以上15重量%以下の割合で含み」と一致し、甲2発明の「アクリル共重合体」は「Mw=116万」であるから、本件発明1の「アクリル系ポリマー」の「重量平均分子量は70万以上」と一致する。そうすると、本件発明1と甲2発明の一致点および一応の相違点は下記のとおりである。
<一致点>
「アクリル系ポリマーを含む粘着剤層を有する粘着シートであって、該粘着剤層からなる基材レスの両面粘着シートであるか、あるいは発泡体基材以外の基材を備える基材付きの粘着シートであって、
前記アクリル系ポリマーは、ヘプチルアクリレートを含むモノマー成分の重合物であり、
前記モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーを2重量%以上15重量%以下の割合で含み、
前記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は70万以上であり、
前記粘着剤層は粘着付与樹脂をさらに含み、
前記粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物は架橋剤を含む
粘着シート。」
<相違点1>
本件発明1は「粘着付与樹脂は、軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂であるか、あるいは、水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含むものであり、前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含む場合、前記粘着剤層に含まれる前記粘着付与樹脂全体に占める前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂の割合は40重量%以上」であるのに対して、甲2発明ではそのように特定されていない点。
<相違点2>
本件発明1は「粘着剤層は、65℃での貯蔵弾性率G’が20,000Pa以上」であるのに対して、甲2発明ではそのように特定されていない点。
<相違点3>
本件発明1は「粘着剤層は」「-20℃でのtanδが0.3以上である」のに対して、甲2発明ではそのように特定されていない点。
イ 相違点1について
甲2発明の「テルペンフェノール樹脂A(ヤスハラケミカル社製、G150、軟化点:150℃、生物由来炭素含有率67重量%)」は、甲4~甲7の上記摘記事項にて示されるとおり水酸基価が110~140程度であるから、本件発明1の「あるいは、水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含むもの」という要件を満たすと認められる。
しかしながら、テルペンフェノール樹脂Aの粘着付与樹脂中の配合量は10/30=33%であるから、「粘着付与樹脂全体に占める前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂の割合は40重量%以上」との要件を満たしていない。
また、「粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂全体に占める水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂の割合」を「40重量%以上」とする事項は周知慣用技術であるともいえない。
したがって、当該相違点1は、課題解決のための具体化手段における微差とはいえず、相違点1は、実質的な相違点である。
ウ 効果について
本件明細書には、本件発明1の特定事項を満たし、テルペンフェノールBが用いられた実施例2~6(水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含み、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂全体に占める前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂の割合が40重量%以上である例)の粘着シートが、耐衝撃性とZ軸方向耐反撥性に優れることが示されているから、本件発明1は相違点1に係る特定事項を含む構成により、新たな効果を奏するものと認められる。
エ 申立人の主張について
申立人は意見書において甲2発明は粘着付与樹脂中に水添ロジンエステル樹脂C(軟化点100℃)を含んでいるから、本件発明1の「粘着付与樹脂は、軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂であるか、あるいは、水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含むものであり」という特定事項のうち、「あるいは」の前に記載されている「軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂」を含むので、相違点1は実質的な相違点ではなく、甲2発明と本件発明1とは依然として同一であると主張している。
当該主張について検討すると、本件発明1の上記特定事項において、「あるいは」の前に記載されている選択肢は「軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂であるか、」であって、「軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂」「を含むか」ではないので、申立人の主張は前提において誤りがある。すなわち、水添ロジンエステル樹脂C(軟化点100℃)を軟化点が120℃以上である粘着付与剤(テルペンフェノール樹脂A、軟化点150℃)とともに含む甲2発明の態様は、本件発明1の「あるいは」の前に記載されている「軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂である」態様とは相違するから、相違点1が実質的な相違点ではないとする申立人の主張は採用できない。
また、申立人は意見書において新たに甲13を引用し、本件特許の出願日前において「粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂全体に占める高水酸基価樹脂(例えば50mgKOH以上のテルペンフェノール樹脂)の割合」を「凡そ50重量%以上」とすること([0068]及び[0072])は周知の技術手段であると主張するとともに、特許異議申立書における、「本件発明1の樹脂組成を満たしつつ、かつ、本件発明にかかる実施例5(25%)とほぼ同じ割合で低い軟化点の粘着付与樹脂を含む場合は、65℃貯蔵弾性率G’が20,000Paを超える蓋然性が極めて高い」及び「n-ヘプチルアクリレートに由来する構成単位を有する甲2発明は-20℃tanδが0.3以上となる蓋然性が高い」という主張と合わせ、「甲2発明と、本件発明1とが、上記特定1の点で一応相違しているとしても、当該相違は、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術の付加)であって、新たな効果を奏するものではないから、実質的な相違点とはいえない」と主張している。
当該主張について検討すると、甲2発明が「65℃貯蔵弾性率G’が20,000Paを超える蓋然性が高い」及び「-20℃tanδが0.3以上となる蓋然性が高い」という主張は推測にすぎず、また、粘着剤層の粘弾性特性は、相違点1に係る粘着付与樹脂を含めた粘着剤層全体の成分組成に応じて変化するものであるから、本件発明1は甲2に記載されていない成分組成及び粘弾性特性を有する粘着剤層を備え、それにより新たな効果を発揮するものということができる。相違点1を課題解決のための微差とする申立人の主張は後知恵にすぎないから採用することはできない。
オ 本件発明1についてのまとめ
したがって、相違点2,3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明と同一ないし実質同一ではない。
(2) 本件発明2~8について
本件発明2~8は、請求項1の直接又は間接的な引用形式で記載されるものであり、本件発明1の特定事項にさらに特定事項を付加するものであるから、前記(1)と同様の理由から、甲2発明と同一ないし実質同一ではない。
(3) 小括
よって、本件発明1~8は甲2発明Aおよび甲2発明Bと同一、又は実質的に同一であるとはいえない。
7 取消理由(甲3に基づく拡大先願)についての当審の判断
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「n-ヘプチルアクリレート」は、本件発明1の「ヘプチルアクリレート」に相当する。また、甲3発明の「アクリル酸」及び「2-ヒドロキシエチルアクリレート」は本件発明1の「カルボキシ基含有モノマー」に相当する。
甲3発明の「n-ヘプチルアクリレート」、「アクリル酸」、「アクリル共重合体」、「イソシアネート系架橋剤」、「粘着付与樹脂」、「粘着剤溶液」、「粘着剤層」及び「粘着テープ」は、それぞれ本件発明1の「ヘプチルアクリレート」、「カルボキシ基含有モノマー」、「アクリル系ポリマー」、「架橋剤」、「粘着付与樹脂」、「粘着剤組成物」、「粘着剤層」及び「粘着シート」に相当する。
また、甲3発明の「粘着剤溶液を厚み75μmの離型処理したPETフィルムの離型処理面に、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように塗工した後、110℃で5分間乾燥させ、この粘着剤層を、厚み75μmの離型処理したPETフィルムの離型処理面に重ねて、40℃で48時間養生し、得られた粘着テープ」は、粘着剤層の両面がPETフィルムの離型処理面に張り合わされており、甲3の[0063]にて記載される「基材を有しないノンサポートテープ」と同様の層構成であるから、本件発明1の「該粘着剤層からなる基材レスの両面粘着シート」に相当する。
さらに、甲3発明の「アクリル酸」はアクリル共重合体を構成する全モノマー100重量部に対して5重量部の割合で用いられているから、本件発明1の「カルボキシ基含有モノマーを2重量%以上15重量%以下の割合で含み」と一致し、甲3発明の「アクリル共重合体」は「Mw=112万」であるから、本件発明1の「アクリル系ポリマー」の「重量平均分子量は70万以上」と一致する。
そうすると、本件発明1と甲3発明の一致点および一応の相違点は下記のとおりである。
<一致点>
「アクリル系ポリマーを含む粘着剤層を有する粘着シートであって、該粘着剤層からなる基材レスの両面粘着シートであるか、あるいは発泡体基材以外の基材を備える基材付きの粘着シートであって、
前記アクリル系ポリマーは、ヘプチルアクリレートを含むモノマー成分の重合物であり、
前記モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーを2重量%以上15重量%以下の割合で含み、
前記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は70万以上であり、
前記粘着剤層は粘着付与樹脂をさらに含み、
前記粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物は架橋剤を含む
粘着シート。」
<相違点6>
本件発明1は「粘着付与樹脂は、軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂であるか、あるいは、水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含むものであり、前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含む場合、前記粘着剤層に含まれる前記粘着付与樹脂全体に占める前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂の割合は40重量%以上」であるのに対して、甲3発明ではそのように特定されていない点。
<相違点7>
本件発明1は「粘着剤層は、65℃での貯蔵弾性率G’が20,000Pa以上」であるのに対して、甲3発明ではそのように特定されていない点。
<相違点8>
本件発明1は「粘着剤層は」「-20℃でのtanδが0.3以上である」のに対して、甲3発明ではそのように特定されていない点。
イ 相違点6について
甲3発明の「テルペンフェノール樹脂A(ヤスハラケミカル社製、G150、軟化点:150℃、生物由来炭素含有率67重量%)」は、甲4~甲7の上記摘記事項にて示されるとおり水酸基価が110~140程度であるから、本件発明1の「あるいは、水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含むもの」という要件を満たすと認められる。
しかしながら、テルペンフェノール樹脂Aの粘着付与樹脂中の配合量は10/30=33%であるから、「粘着付与樹脂全体に占める前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂の割合は40重量%以上」との要件を満たしていない。
また、「粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂全体に占める水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂の割合」を「40重量%以上」とする事項は周知慣用技術であるともいえない。
したがって、当該相違点6は、課題解決のための具体化手段における微差とはいえず、相違点6は、実質的な相違点である。
ウ 効果について
本件明細書には、本件発明1の特定事項を満たし、テルペンフェノールBが用いられた実施例2~6(水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含み、粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂全体に占める前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂の割合が40重量%以上である例)の粘着シートが、耐衝撃性とZ軸方向耐反撥性に優れることが示されているから、本件発明1は相違点6に係る特定事項を含む構成により、新たな効果を奏するものと認められる。
エ 申立人の主張について
申立人は意見書において甲3発明は粘着付与樹脂中に水添ロジンエステル樹脂C(軟化点100℃)を含んでいるから、本件発明1の「粘着付与樹脂は、軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂であるか、あるいは、水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含むものであり」という特定事項のうち、「あるいは」の前に記載されている「軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂」を含むので、相違点6は実質的な相違点ではなく、甲3発明と本件発明1とは依然として同一である旨を主張している。
当該主張について検討すると、本件発明1の特定事項において、「あるいは」の前に記載されている選択肢は「軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂であるか、」であって、「軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂」「を含むか」ではないので、申立人の主張は前提において誤りがある。すなわち、水添ロジンエステル樹脂C(軟化点100℃)を軟化点が120℃以上である粘着付与剤(テルペンフェノール樹脂A、軟化点150℃)とともに含む甲3発明の態様は、本件発明1の「あるいは」の前に記載されている「軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂である」態様とは相違するから、相違点6が実質的な相違点ではないとする申立人の主張は採用できない。
また、申立人は意見書において新たに甲13を引用し、本件特許の出願日前において「粘着剤層に含まれる粘着付与樹脂全体に占める高水酸基価樹脂(例えば50mgKOH以上のテルペンフェノール樹脂)の割合」を「凡そ50重量%以上」とすること([0068]及び[0072])は周知の技術手段であると主張するとともに、特許異議申立書における、「本件発明1の樹脂組成を満たしつつ、かつ、本件発明にかかる実施例5(25%)とほぼ同じ割合で低い軟化点の粘着付与樹脂を含む場合は、65℃貯蔵弾性率G’が20,000Paを超える蓋然性が極めて高い」及び「n-ヘプチルアクリレートに由来する構成単位を有する甲3発明は-20℃tanδが0.3以上となる蓋然性が高い」という主張と合わせ、「甲3発明と、本件発明1とが、上記特定1の点で一応相違しているとしても、当該相違は、課題解決のための具体化手段における微差(周知技術の付加)であって、新たな効果を奏するものではないから、実質的な相違点とはいえない」と主張している。
当該主張について検討すると、甲3発明が「65℃貯蔵弾性率G’が20,000Paを超える蓋然性が高い」及び「-20℃tanδが0.3以上となる蓋然性が高い」という主張は推測にすぎず、また、粘着剤層の粘弾性特性は、相違点6に係る粘着付与樹脂を含めた粘着剤層全体の成分組成に応じて変化するものであるから、本件発明1は甲3に記載されていない成分組成及び粘弾性特性を有する粘着剤層を備え、それにより新たな効果を発揮するものということができる。相違点6を課題解決のための微差とする申立人の主張は後知恵にすぎないから採用することはできない。
オ 本件発明1についてのまとめ
したがって、相違点7,8について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明と同一ないし実質同一ではない。
(2) 本件発明2~8について
本件発明2~8は、請求項1の直接又は間接的な引用形式で記載されるものであり、本件発明1の特定事項にさらに特定事項を付加するものであるから、前記(1)と同様の理由から、甲3発明と同一ないし実質同一ではない。
(3) 小括
よって、本件発明1~8は甲3発明と同一、または実質的に同一であるとはいえない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知で採用しなかった特許異議の申立理由の概要
取消理由で採用しなかった特許異議の申立理由は、次のとおりである。
(1) 申立理由1(新規性及び進歩性):請求項1~8に係る発明は、甲1に記載された発明と相違しないか、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて当業者が容易になし得たものである。よって、請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2) 申立理由4(実施可能要件):本件発明1~8は、以下の理由から、発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されている発明ではなく、特許法第36条第4項第1号の規定により特許を受けることができないものであるから、取消されるべきものである。
粘着付与樹脂、架橋剤について何ら特定されていない本件発明1におけるパラメータを満たすよう粘着剤層を形成するには、当業者に期待しうる程度を超える過度な試行錯誤や複雑高度な実験等が必要であるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
(3) 申立理由5(サポート要件):請求項1~8に係る特許は、以下の理由から、特許請求の範囲の記載が同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、取り消されるべきものである。
ア 本件発明の課題は、「耐反撥性と耐衝撃性とを高いレベルで両立し得る粘着シートを提供すること」(段落0008)である。
イ ヘプチルアクリレートをモノマー成分として含むアクリル系ポリマーを使用すること(段落0010)、Mwが70万以上のアクリル系ポリマーを使用すること(段落0011)、粘着剤層のガラス転移温度(Tg)が-15℃~15℃の範囲内であること(段落0012)、カルボキシ基含有モノマーを特定量使用すること(段落0046)、という樹脂組成を満たす一方で65℃貯蔵弾性率G’を満たさない比較例4が課題を解決出来ない具体的な根拠や作用機構が不明であるから、本件発明1~8は、上記課題を解決できない。
ウ アクリル酸の共重合割合が5重量%以下程度の低い場合の課題解決手段が不明であるから、本件発明1~8は、上記課題を解決できない。
(4) 取消理由通知で採用しなかった甲号証
甲1:国際公開第2021/125278号
甲8:国際公開第2022/219969号
甲9:異議2022-701223の乙1号証(追試実験結果報告書)
甲11:色材協会誌40巻(1967)7号,色材協会,p.304-310
甲12:-粘着剤の設計と粘着製品の信頼性を重視した-粘着技術の3A,リアライズ理工センター,平成18年8月31日,p.68-72,80-81
2 甲1を主引用例とした新規性及び進歩性について
(1) 甲1に記載された事項
「[0004]粘着力に優れた粘着剤として、アクリル共重合体を含有するアクリル系粘着剤が広く用いられている。
アクリル共重合体を構成するアクリル系モノマーとしては、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられる。なかでも、主成分としてブチルアクリレートを用いることで、粘着剤に優れた粘着力を発揮させることができる。しかしながら、このような粘着剤は、平滑面に対する粘着力には優れるものの、凹凸に対する追従性が低く、粗面に対する粘着力は不充分である。一方、主成分として2-エチルヘキシルアクリレートを用いることで、粘着剤の凹凸に対する追従性を向上させることができる。しかしながら、このような粘着剤は、そもそも被着体に対する粘着力が不充分であり、平滑面及び粗面のいずれに対しても優れた粘着力を発揮させることは困難である。」
「[0012]上記アクリル共重合体における上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は25重量%である。
上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量が25重量%以上であれば、粘着剤組成物の平滑面及び粗面に対する粘着力がより高くなる。また、上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量が25重量%以上であれば、上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位におけるn-ヘプチル(メタ)アクリレートが生物由来材料を含む場合には、粘着剤組成物全体としての生物由来材料の含有率を高くすることができる。上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量のより好ましい下限は48重量%、更に好ましい下限は60重量%、更により好ましい下限は70重量%、一層好ましい下限は80重量%である。
上記n-ヘプチル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有量の上限は特に限定されず、100重量%であってもよいが、上記アクリル共重合体が架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位等も有することが好ましいことから、好ましい上限は99重量%、より好ましい上限は97重量%である。」
「[0014]上記アクリル共重合体は、更に、架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を有することが好ましい。
上記アクリル共重合体が架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位を有することで、粘着剤組成物を含有する粘着剤層の凝集力が上がり、平滑面及び粗面に対する粘着力がより高くなる。
[0015]上記架橋性官能基を有するモノマーは特に限定されず、例えば、水酸基を有するモノマー、カルボキシル基を有するモノマー、グリシジル基を有するモノマー、アミド基を有するモノマー、ニトリル基を有するモノマー等が挙げられる。なかでも、粘着剤組成物を含有する粘着剤層のゲル分率の調節が容易であることから、水酸基を有するモノマー及びカルボキシル基を有するモノマーが好ましく、水酸基を有するモノマーがより好ましい。
上記水酸基を有するモノマーとして、例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するアクリル系モノマーが挙げられる。上記カルボキシル基を有するモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有するアクリル系モノマーが挙げられる。・・・
[0016]上記アクリル共重合体における上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は20重量%である。上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量が上記範囲内であれば、粘着剤組成物の平滑面及び粗面に対する粘着力がより高くなる。上記架橋性官能基を有するモノマーに由来する構成単位の含有量のより好ましい下限は0.1重量%、より好ましい上限は10重量%であり、更に好ましい下限は0.5重量%、更に好ましい上限は5重量%である。」
「[0022]上記値Xを調整する方法は特に限定されないが、上記水酸基を有するモノマーの種類を選択したり含有量を調整したりする方法、上記アクリル共重合体の重量平均分子量を調整する方法等が挙げられる。
より具体的には、上記値Xを高める方法として、例えば、上記アクリル共重合体の重量平均分子量を増やす方法、上記水酸基を有するモノマーの含有量を増やす方法、上記水酸基を有するモノマーの分子量を小さくする方法、上記水酸基を有するモノマーの水酸基価数を増やす方法等が挙げられる。上記値Xを低くする方法として、例えば、上記アクリル共重合体の重量平均分子量を減らす方法、上記水酸基を有するモノマーの含有量を減らす方法、上記水酸基を有するモノマーの分子量を大きくする方法、上記水酸基を有するモノマーの水酸基価数を減らす方法等が挙げられる。」
「[0038]本発明の粘着剤組成物は、ゲル分率を適度に調節できる観点から、更に、架橋剤を含有することが好ましい。
上記架橋剤は特に限定されず、例えば、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート型架橋剤等が挙げられる。なかでも、粘着剤組成物が被着体への密着性に優れることから、イソシアネート系架橋剤が好ましい。」
「[0040]本発明の粘着剤組成物は、更に、粘着付与樹脂を含有することが好ましい。粘着付与樹脂を含有することにより、粘着剤組成物の平滑面及び粗面に対する粘着力がより高くなる。
上記粘着付与樹脂は特に限定されず、例えば、ロジンエステル系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、クマロンインデン系粘着付与樹脂、脂環族飽和炭化水素系粘着付与樹脂、C5系石油粘着付与樹脂、C9系石油粘着付与樹脂、C5-C9共重合系石油粘着付与樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ロジンエステル系粘着付与樹脂及びテルペン系粘着付与樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
[0041]上記ロジンエステル系粘着付与樹脂としては、例えば、重合ロジンエステル系樹脂、水添ロジンエステル系樹脂等が挙げられる。上記テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂等が挙げられる。
上記ロジンエステル系粘着付与樹脂及び上記テルペン系粘着付与樹脂は、生物由来であることが好ましい。生物由来のロジンエステル系粘着付与樹脂として、例えば、松脂等の天然樹脂に由来するロジンエステル系粘着付与樹脂が挙げられる。生物由来のテルペン系粘着付与樹脂として、例えば、植物の精油等に由来するテルペン系粘着付与樹脂等が挙げられる。
[0042]本発明の粘着剤組成物における上記粘着付与樹脂の含有量は特に限定されないが、上記アクリル共重合体100重量部に対する好ましい下限は10重量部、好ましい上限は60重量部である。上記粘着付与樹脂の含有量が上記範囲内であれば、粘着剤組成物の平滑面及び粗面に対する粘着力がより高くなる。上記粘着付与樹脂の含有量のより好ましい下限は15重量部、より好ましい上限は50重量部であり、更に好ましい上限は35重量部である。」
「[0049]本発明の粘着テープは、基材を有しないノンサポートテープであってもよく、基材の一方の面に粘着剤層を有する片面粘着テープであってもよく、基材の両面に粘着剤層を有する両面粘着テープであってもよい。」
「[0062]以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
[0063]<n-ヘプチルアクリレート>
n-ヘプチルアルコール(東京化成工業社製)と、アクリル酸(日本触媒社製)とをエステル化することにより、n-ヘプチルアクリレートを調製した。
[0064]<1-メチルヘキシルアクリレート>
2-ヘプチルアルコール(東京化成工業社製)と、アクリル酸(日本触媒社製)とをエステル化することにより、1-メチルヘキシルアクリレートを調製した。
[0065]<その他のアクリル系モノマー>
以下の市販のモノマーを準備した。
・ブチルアクリレート(BA)(三菱ケミカル社製)
・2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)(三菱ケミカル社製)
・アクリル酸(AAc)(日本触媒社製)
・2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)(大阪有機化学工業社製)
・テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)
・イソボルニルアクリレート(IBOA)
[0066]<架橋剤>
市販のイソシアネート系架橋剤(東ソー社製、コロネートL-45)を準備した。
[0067]<粘着付与樹脂>
市販の生物由来の粘着付与樹脂を準備した。
(1)テルペンフェノール樹脂A(ヤスハラケミカル社製、G150、軟化点:150℃、生物由来炭素含有率67重量%)
(2)重合ロジンエステル樹脂B(水酸基価:46、軟化点:152℃、生物由来炭素含有率95重量%)
(3)水添ロジンエステル樹脂C(荒川化学工業社製、KE359、水酸基価:40、軟化点:100℃、生物由来炭素含有率95重量%)
[0068](実施例1)
(1)アクリル共重合体Aの製造(溶液重合)
反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチルを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始した。続いて、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入し、n-ヘプチルアクリレート96.6重量部、アクリル酸2.9重量部及び2-ヒドロキシルエチルアクリレート0.5重量部を2時間かけて滴下添加した。滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、アクリル共重合体A含有溶液を得た。
[0069]得られたアクリル共重合体Aをテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過し、測定サンプルを調製した。この測定サンプルをゲルパーミッションクロマトグラフ(Waters社製、2690 Separations Model)に供給して、サンプル流量1mL/min、カラム温度40℃の条件でGPC測定を行い、アクリル共重合体Aのポリスチレン換算分子量を測定して、重量平均分子量を求めた。
[0070](2)粘着テープの製造
得られたアクリル共重合体A含有溶液に、アクリル共重合体A100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、コロネートL-45)の固形分が0.2重量部となるよう加え、粘着剤溶液を調製した。この粘着剤溶液を厚み75μmの離型処理したPETフィルムの離型処理面に、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように塗工した後、110℃で5分間乾燥させた。この粘着剤層を、厚み75μmの離型処理したPETフィルムの離型処理面に重ねて、40℃で48時間養生し、粘着テープ(ノンサポートタイプ)を得た。
[0071]得られた粘着テープの一方の面の離型フィルムを剥がし、厚み23μmのPETフィルム(フタムラ化学社製、FE2002)に貼り合わせ、20mm×40mmの平面長方形状に裁断した。更に粘着テープのもう一方の面の離型フィルムを剥がして、試験片を作製し、重量を測定した。試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させた。乾燥後の試験片の重量を測定し、下記を用いてゲル分率を算出した。
ゲル分率(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0)
(W0:基材(PETフィルム)の重量、W1:浸漬前の試験片の重量、W2:浸漬、乾燥後の試験片の重量)
[0072]得られた粘着テープの粘着剤層について液体クロマトグラフィー質量分析計(島津製作所社製NEXCERA、又は、Thermo Fisher Scientific社製Exactive)を用いて測定することで、界面活性剤の含有量を求めた。
[0073](実施例2~11、13~37、比較例1~6)
アクリル共重合体を構成するアクリル系モノマーの種類及び配合量、アクリル共重合体の重量平均分子量、粘着付与樹脂及び架橋剤の種類及び配合量を表1~4に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、粘着テープを得た。実施例1及び27~37では、上述した式(1)から、得られたアクリル共重合体について値Xを算出した。
粘着付与樹脂としては、実施例10~11ではテルペンフェノール樹脂Aを10重量部、重合ロジンエステル樹脂Bを14重量部及び水添ロジンエステル樹脂Cを10重量部用いた。・・・」
「[0076]<評価>
実施例及び比較例で得た粘着テープについて、以下の方法により評価を行った。結果を表1~4に示した。
[0077](1)平滑面に対する剥離力
JIS Z 0237:2009に準拠して、平滑面としてのガラスに対する粘着テープの180°剥離力を測定した。
具体的には、まず、粘着テープの一方の面(測定しない側)を厚み23μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(フタムラ化学社製、FE2002)で裏打ちした後に、幅25mm×長さ75mmに裁断し、試験片を作製した。この試験片をガラス板(表面粗さRa=0.2μm、Shenzhen Sun Global Glass社製、2mmフロートガラス)にその粘着剤層(測定する側)がガラス板に対向した状態となるように載せた後、試験片上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラを一往復させることにより貼り合わせた。その後、23℃、50%湿度で20分養生し、試験サンプルを作製した。JIS Z 0237:2009に準じて、23℃、50%湿度の条件下、この試験サンプルを引張速度300mm/minの条件で180°方向に剥離し、粘着力(N/25mm)を測定した。
[0078](2)粗面に対する剥離力
JIS Z 0237:2009に準拠して、粗面としての耐水研磨紙(ノリタケコーテッドアブレーシブ社製、C947H、粒度360、表面粗さRa=10.8μm)に対する粘着テープの180°剥離力を測定した。
具体的には、まず、耐水研磨紙の裏面を測定用粘着テープ(積水化学工業社製、#560)を用いてSUS304板に貼り合わせた。次に、粘着テープの一方の面(測定しない側)を厚み23μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(フタムラ化学社製、FE2002)で裏打ちした後に、幅25mm×長さ75mmに裁断し、試験片を作製した。この試験片をSUS304板に貼り合わせた耐水研磨紙の研磨面に、その粘着剤層(測定する側)が研磨面に対向した状態となるように載せた後、試験片上に300mm/分の速度で2kgのゴムローラを一往復させることにより貼り合わせた。その後、23℃、50%湿度で20分養生し、試験サンプルを作製した。JIS Z 0237に準じて、この試験サンプルを引張速度300mm/minの条件で180°方向に剥離し、23℃における粘着力(N/25mm)を測定した。
なお、耐水研磨紙の表面粗さRaは、レーザ顕微鏡(KEYENCE社製、カラー3Dレーザ顕微鏡、VK-8710)を用いて測定した。」
「[0082][表1]
[図:0001424580000004.jpg]
」
(2) 甲1発明
甲1の実施例10に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「反応容器内に、重合溶媒として酢酸エチルを加え、窒素でバブリングした後、窒素を流入しながら反応容器を加熱して還流を開始し、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に投入し、n-ヘプチルアクリレート96.6重量部、アクリル酸2.9重量部及び2-ヒドロキシルエチルアクリレート0.5重量部を2時間かけて滴下添加し、滴下終了後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチルで10倍希釈した重合開始剤溶液を反応容器内に再度投入し、4時間重合反応を行い、Mw=100万のアクリル共重合体含有溶液を得て、アクリル共重合体100重量部に対して、イソシアネート系架橋剤(東ソー社製、コロネートL-45)の固形分が0.5重量部、粘着付与樹脂としてテルペンフェノール樹脂A(ヤスハラケミカル社製、G150、軟化点:150℃、生物由来炭素含有率67重量%)10重量部、重合ロジンエステル樹脂B(水酸基価:46、軟化点:152℃、生物由来炭素含有率95重量%)14重量部、水添ロジンエステル樹脂C(荒川化学工業社製、KE359、水酸基価:40、軟化点:100℃、生物由来炭素含有率95重量%)10重量部、となるよう加え、粘着剤溶液を調製し、この粘着剤溶液を厚み75μmの離型処理したPETフィルムの離型処理面に、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように塗工した後、110℃で5分間乾燥させ、この粘着剤層を、厚み75μmの離型処理したPETフィルムの離型処理面に重ねて、40℃で48時間養生し、得られた粘着テープであって、平滑面としてのガラスに対する剥離力が15.9N/25mm、耐水研磨紙の研磨面に対する剥離力が13.8N/25mmである粘着テープ。」
(3) 甲1発明との対比及び判断
ア 本件発明1について
(ア) 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「n-ヘプチルアクリレート」、「アクリル酸」、「アクリル共重合体」、「イソシアネート系架橋剤」、「粘着付与樹脂」、「粘着剤溶液」、「粘着剤層」及び「粘着テープ」は、それぞれ本件発明1の「ヘプチルアクリレート」、「カルボキシ基含有モノマー」、「アクリル系ポリマー」、「架橋剤」、「粘着付与樹脂」、「粘着剤組成物」、「粘着剤層」及び「粘着シート」に相当する。
また、甲1発明の「粘着剤溶液を厚み75μmの離型処理したPETフィルムの離型処理面に、乾燥後の粘着剤層の厚みが50μmとなるように塗工した後、110℃で5分間乾燥させ、この粘着剤層を、厚み75μmの離型処理したPETフィルムの離型処理面に重ねて、40℃で48時間養生し、得られた粘着テープ」は、粘着剤層の両面がPETフィルムの離型処理面に張り合わされており、甲1の[0049]にて記載される「基材を有しないノンサポートテープ」と同様の層構成であるから、本件発明1の「該粘着剤層からなる基材レスの両面粘着シート」に相当する。
さらに、甲1発明の「アクリル酸」はアクリル共重合体を構成する全モノマー100重量部に対して2.9重量部の割合で用いられているから、本件発明1の「カルボキシ基含有モノマーを2重量%以上15重量%以下の割合で含み」と一致し、甲1発明の「アクリル共重合体」は「Mw=100万」であるから、本件発明1の「アクリル系ポリマー」の「重量平均分子量は70万以上」と一致する。そうすると、本件発明1と甲1発明の一致点および一応の相違点は下記のとおりである。
<一致点>
「アクリル系ポリマーを含む粘着剤層を有する粘着シートであって、該粘着剤層からなる基材レスの両面粘着シートであるか、あるいは発泡体基材以外の基材を備える基材付きの粘着シートであって、
前記アクリル系ポリマーは、ヘプチルアクリレートを含むモノマー成分の重合物であり、
前記モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーを2重量%以上15重量%以下の割合で含み、
前記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は70万以上であり、
前記粘着剤層は粘着付与樹脂をさらに含み、
前記粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物は架橋剤を含む
粘着シート。」
<相違点12>
本件発明1は「粘着付与樹脂は、軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂であるか、あるいは、水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含むものであり、前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含む場合、前記粘着剤層に含まれる前記粘着付与樹脂全体に占める前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂の割合は40重量%以上」であるのに対して、甲1発明ではそのように特定されていない点。
<相違点13>
本件発明1は「粘着剤層は、65℃での貯蔵弾性率G’が20,000Pa以上」であるのに対して、甲1発明ではそのように特定されていない点。
<相違点14>
本件発明1は「粘着剤層は」「-20℃でのtanδが0.3以上である」のに対して、甲1発明ではそのように特定されていない点。
(イ) 相違点について
a 相違点12について
甲1発明の「テルペンフェノール樹脂A(ヤスハラケミカル社製、G150、軟化点:150℃、生物由来炭素含有率67重量%)」は、甲4~甲7の上記摘記事項にて示されるとおり水酸基価が110~140程度であるから、本件発明1の「あるいは、水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含むもの」という要件を満たすと認められる。
しかしながら、テルペンフェノール樹脂Aの粘着付与樹脂中の配合量は10/34=29%であるから、「粘着付与樹脂全体に占める前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂の割合は40重量%以上」との要件を満たしていない。
また、甲1には粘着付与樹脂全体に占める高水酸基価の粘着付与樹脂の割合を多くすることについて動機付けや示唆もないし、粘着剤層に使用する粘着付与樹脂中の高水酸基価の粘着付与樹脂の割合を多くすることと耐衝撃性やZ軸方向の耐反撥性を向上することとの関係は周知であるともいえないから、甲1発明において高水酸基価の粘着付与樹脂の割合を多くすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、相違点12は実質的な相違点であり、甲1に基づいて当業者が容易に想到し得たことでもない。
b 相違点13について
本件明細書には、実施例1~6として65℃での貯蔵弾性率G’が20,000Pa以上の粘着剤層が記載されているところ、65℃での貯蔵弾性率G’が20,000Pa未満となる比較例4では、実施例1~6においてイソシアネート架橋剤を1.5部または3部含有しているのに対して、比較例4ではイソシアネート架橋剤を0.5部含有している。甲1発明の粘着剤層は、本件明細書の実施例1~6の粘着剤層とベースポリマーの組成や含有割合、ベースポリマーの重合方法や重合条件、ベースポリマーの分子量等が共通するものである一方で、本件明細書の比較例4と同様にイソシアネート架橋剤を0.5部含有しているから、ポリマーに関する本願出願日当時の技術常識をふまえれば、甲1発明の粘着剤層について65℃での貯蔵弾性率G’を算出した場合、その値は本件明細書の比較例4と同様に20,000Pa未満となり、20,000Pa以上となる蓋然性が高いとはいえない。
したがって、相違点13は、相違点である。
c 相違点についてのまとめ
したがって、相違点14について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明と同一ではない。
(ウ) 効果について
第4 6(1)ウに記載したとおり、本件明細書には、実施例として、本件発明1の特定事項を満たす粘着シートについて、耐衝撃性とZ軸方向耐反撥性に優れることが示されているから、本件発明1は、有利な効果を奏するものと認められる。
(エ) 申立人の主張について
a 申立人は、甲1発明において、「軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂」、すなわち、水添ロジンエステル樹脂Cと、「あるいは、水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂」、すなわち、テルペンフェノール樹脂Aが含まれることが記載されているから、相違点12は実質的な相違点とはいえないことを主張する(申立書74頁)。
しかしながら、第4 6(1)エ及び第4 7(1)エに記載したように、「あるいは」の前に記載されるのは「軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂であるか、」であって、「軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂」「を含むか」ではないので、水添ロジンエステル樹脂(軟化点100℃)を軟化点が120℃以上である粘着付与剤とともに含む甲1発明の態様は「あるいは」の前に記載される態様と相違するから、当該主張は採用できない。
b 申立人はまた、甲1発明において粘着剤層は本件発明1の樹脂組成を満たすものであり、かつ、本件発明に係る実施例5とほぼ同じ割合で低い軟化点の粘着付与樹脂を含むため、「65℃での貯蔵弾性率G’が20,000Pa以上」である蓋然性が高いことを主張する(申立書76頁)。
しかしながら、前記(イ)bに記載したとおり、甲1発明の粘着剤層は、本件明細書の実施例1~6の粘着剤層とベースポリマーの組成や含有割合、ベースポリマーの重合方法や重合条件、ベースポリマーの分子量等が共通するものである一方で、本件明細書の比較例4と同様にイソシアネート架橋剤を0.5部含有しており、さらに、前記aに記載したとおり粘着付与樹脂の点でも成分組成が異なるから、ポリマーに関する本願出願日当時の技術常識をふまえれば、甲1発明の粘着剤層について65℃での貯蔵弾性率G’を算出した場合、その値は本件明細書の比較例4と同様に20,000Pa未満となり、20,000Pa以上となる蓋然性が高いとはいえない。
したがって、当該主張は採用できない。
c 以上のとおりであるから、請求人の主張をもって、本件発明1は甲1発明、または、甲1発明及び甲1に記載の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(オ) 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1に記載の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。
イ 本件発明2~8について
本件発明2~8は、請求項1の直接又は間接的な引用形式で記載されるものであり、本件発明1の特定事項にさらに特定事項を付加するものであるから、前記アと同様の理由から、甲1に記載された発明及び甲1に記載の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではない。
3 実施可能要件について
(1) 判断基準
本件発明1~8はいずれも物の発明であるところ、物の発明の実施とは、その物の生産及び使用等をする行為であるから、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
そこで、上記判断基準に従って、検討する。
(2) 検討
申立人は第5 1(2)のとおり、粘着付与樹脂、架橋剤について何ら特定されていない本件発明1におけるパラメータを満たすよう粘着剤層を形成するには、当業者に期待しうる程度を超える過度な試行錯誤や複雑高度な実験等が必要であると主張している。
本件発明は、粘着シートに係るものであるところ、本件明細書には、発明を実施するための一般的な記載があるとともに、6の実施例及び4の比較例がある。
本件明細書の段落【0010】には、「65℃貯蔵弾性率G’と-20℃tanδとの両立は、ヘプチルアクリレートをモノマー成分として含むアクリル系ポリマーを使用することにより、好適に実現され得る。」と記載され、同段落【0046】には、「カルボキシ基含有モノマーの使用量を多くすることで、カルボキシ基含有モノマーの作用に基づき粘着剤層の凝集力が向上するので、粘着剤の65℃貯蔵弾性率を向上することができ、耐反撥性に優れた粘着剤が得られやすい。・・・カルボキシ基含有モノマー(例えばAA)の使用量を低減することで、-20℃tanδは高くなる傾向がある。」と記載され、同段落【0060】「アクリル系ポリマーのMwが大きいほど、良好な凝集力を示す粘着剤が得られやすく、耐反撥性が向上する傾向がある。」と記載され、【0062】には「粘着付与樹脂を含む組成で、粘着剤層は、所定の粘弾性特性(具体的には65℃貯蔵弾性率G’および-20℃tanδ)を有するものとなり、優れたZ軸方向耐反撥性を発揮し得る。特に、粘着付与樹脂を使用する効果は、高分子量のアクリル系ポリマーを含む組成において効果的に発揮され得る。」と記載され、【0071】には「高水酸基価樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)は、例えば、ヘプチルアクリレートをモノマー成分として含むアクリル系ポリマーと組み合わせて好ましく用いられて、被着体に対して良好な接着力、Z軸方向の持続的荷重に対する耐反撥性を発揮し得る。」と記載され、【0109】には「架橋剤を適切に選定して使用することにより、粘着剤層は凝集力を得て、耐反撥性を向上させつつ、耐反撥性と耐衝撃性との両立を好ましく実現し得る。」ことが記載されている。
そして、本件明細書の【表1】には、6つの実施例と4つの比較例があり、実施例1~6に着目すると、粘着剤層を形成する粘着剤組成物がいずれもアクリル系ポリマーを含み、モノマー成分に「ヘプチルアクリレート」を含み、「モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマー」である「アクリル酸」を4~6重量%の割合で含み、「アクリル系ポリマーの重量平均分子量」は80万~170万であり、粘着剤組成物は架橋剤を含み、粘着付与樹脂をさらに含んでいる。そして、「軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂である」テルペンフェノールA(軟化点115℃)を粘着付与樹脂30重量部中30重量部含む実施例1、「水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂」であるテルペンフェノール樹脂B(軟化点145℃、水酸基価70~110mgKOH/g)を粘着付与樹脂15重量部中15重量部含む実施例2~4,6,および前記テルペンフェノール樹脂Bを粘着付与樹脂20重量部中15重量部含む実施例5は、「65℃での貯蔵弾性率G’が20,000Pa以上」であり、かつ、「-20℃でのtanδが0.3以上」であることが示されている。
一方、比較例1~4に着目すると、アクリル系ポリマーがモノマー成分に「ヘプチルアクリレート」を含有せず、粘着付与樹脂がロジンエステル(軟化点125℃、水酸基価32mgKOH/g)である比較例1は、「65℃での貯蔵弾性率G’」が「20,000Pa」未満で「-20℃でのtanδが0.3以上」であり、アクリル系ポリマーがモノマー成分に「ヘプチルアクリレート」を含有せず、粘着付与樹脂が実施例2~4,6と同様である比較例2は、「65℃での貯蔵弾性率G’が20,000Pa以上」であるものの「-20℃でのtanδが0.3」未満であり、実施例2,3と組成が同じでアクリル系ポリマーの重量平均分子量が65万である比較例3は、「65℃での貯蔵弾性率G’が20,000Pa」未満で「-20℃でのtanδが0.3以上」であり、
モノマー成分に「ヘプチルアクリレート」を含み、「モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマー」である「アクリル酸」を3重量%の割合で含み、「アクリル系ポリマーの重量平均分子量」は100万であり、粘着剤組成物は架橋剤を含み、「水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂」であるテルペンフェノール樹脂Bを粘着付与樹脂30重量部中10重量部含む比較例4は、「65℃での貯蔵弾性率G’が20,000Pa」未満で「-20℃でのtanδが0.3以上」である。
この実施例・比較例の結果から、アクリル系ポリマーはモノマー成分に「ヘプチルアクリレート」を含み、「モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマー」を含み、「アクリル系ポリマーの重量平均分子量」は65万より大きく、粘着剤組成物が架橋剤を含み、粘着付与樹脂が「軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂である」かあるいは「水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂」を「粘着付与樹脂30重量部中10重量部より多く含む」ことにより、「65℃での貯蔵弾性率G’が20,000Pa以上」であり、かつ、「-20℃でのtanδが0.3以上」であることを満たす粘着シートを製造することができることが理解できる。そして、本件発明1は、本件訂正により、「65℃での貯蔵弾性率G’が20,000Pa以上」であり、かつ、「-20℃でのtanδが0.3以上」である粘着シートを製造することができると理解できる成分組成である「アクリル系ポリマーは、ヘプチルアクリレートを含むモノマー成分の重合物であり、」「モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーを2重量%以上15重量%以下の割合で含み、」「アクリル系ポリマーの重量平均分子量は70万以上であり、」「粘着剤層は粘着付与樹脂をさらに含み、」「粘着付与樹脂は、軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂であるか、あるいは、水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含むものであり、前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含む場合、前記粘着剤層に含まれる前記粘着付与樹脂全体に占める前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂の割合は40重量%以上であり、」「粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物は架橋剤を含み」なることを発明特定事項とするものに特定されている。
そこで、本件発明1の粘着剤組成物の実施例以外の範囲についても、実施例の条件をもとに粘着剤組成物の組成の調整を行った上で、同段落【0010】、【0046】、【0060】、【0062】、【0071】、【0109】等の記載を適宜参照することにより、当業者が過度の試行錯誤を要することなく製造することができるものと認められる。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明には、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2~8を実施することができる程度の記載があるものと認められる。
そうすると、当業者は、本件発明1~8を発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく実施することができるものである。
よって、申立人の主張を採用することができない。
(3) 小括
したがって、請求項1~8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由4によっては、取り消すことはできない。
4 サポート要件について
(1) 前提
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明の記載や示唆がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
(2) 本件発明は、耐反撥性と耐衝撃性とを高いレベルで両立し得る粘着シートを提供することを解決しようとする課題とするものであり(段落【0008】)、本件発明1~8は、「前記アクリル系ポリマーは、ヘプチルアクリレートを含むモノマー成分の重合物であり、前記モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーを2重量%以上15重量%以下の割合で含み、前記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は70万以上であり」、「前記粘着剤層は粘着付与樹脂をさらに含み、前記粘着付与樹脂は、軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂であるか、あるいは、水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含むものであり、前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含む場合、前記粘着付与樹脂全体に占める前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂の割合は40重量%以上であり」、「前記粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物は架橋剤を含み」、「前記粘着剤層は、65℃での貯蔵弾性率G’が20,000Pa以上であり、かつ、-20℃でのtanδが0.3以上である、ここで該tanδとは、該粘着剤層の貯蔵弾性率G’に対する損失弾性率G”の比(G”/G’)をいう」ことを特定事項とするものである。
(3) 樹脂組成を満たす粘着剤層に対する65℃貯蔵弾性率G’に関する申立人の主張について
申立人は、樹脂組成を満たす一方で65℃貯蔵弾性率G’を満たさない場合に課題を解決出来ない具体的な根拠や作用機構が不明であると主張しているところ、本願明細書のすべての実施例において、耐反撥性と耐衝撃性とに優れた結果となっている。
すなわち、これらの結果より、具体的な作用機構が不明であっても、「前記アクリル系ポリマーは、ヘプチルアクリレートを含むモノマー成分の重合物であり、前記モノマー成分は、カルボキシ基含有モノマーを2重量%以上15重量%以下の割合で含み、前記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は70万以上であり、前記粘着剤層は粘着付与樹脂をさらに含み、前記粘着付与樹脂は、軟化点が120℃以上である粘着付与剤が除外された粘着付与樹脂であるか、あるいは、水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含むものであり、前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂を含む場合、前記粘着付与樹脂全体に占める前記水酸基価が50mgKOH/g以上である粘着付与樹脂の割合は40重量%以上であり、前記粘着剤層の形成に用いられる粘着剤組成物は架橋剤を含み、」の樹脂組成であって、「65℃での貯蔵弾性率G’が20,000Pa以上であり、かつ、-20℃でのtanδが0.3以上である、ここで該tanδとは、該粘着剤層の貯蔵弾性率G’に対する損失弾性率G”の比(G”/G’)をいう」とすることにより、耐反撥性と耐衝撃性とに優れるものと当業者は理解するものである。
したがって、本件発明1~8は、発明の詳細な説明の記載により当業者が前記(2)の課題を解決できると認識できるものといえる。
(4) アクリル酸の共重合割合に関する申立人の主張について
アクリル酸の共重合割合について、本件明細書の段落【0046】には、カルボキシ基含有モノマーの使用量を多くすることで65℃貯蔵弾性率を向上でき、使用量を低減することで、-20℃tanδは高くなる傾向があることが記載されており、本件明細書の実施例ではカルボキシ基含有モノマーとしてアクリル酸を4部(実施例4)または6部(実施例1~3,5,6)モノマー全量100部中に使用しているところ、【0115】~【0123】を参照すると、架橋剤の種類や総使用量を調整することによっても耐反撥性と耐衝撃性とを好ましく両立することができると記載されているから、当業者は当該記載及び本願出願時の技術常識に照らし、カルボキシ基含有モノマーの配合量が当該実施例以外の範囲についても、65℃貯蔵弾性率を向上させ、-20℃tanδを高くすることができることを理解することができ、したがって、「カルボキシ基含有モノマーを2重量%以上15重量%以下の割合で含有する」本件発明は、前記(2)の課題を解決できると認識することができる。
以上のとおりであるから、「カルボキシ基含有モノマーを2重量%以上15重量%以下の割合で含有する」本件発明1~8は、発明の詳細な説明の記載により当業者が前記(2)の課題を解決できると認識できるものといえる。
(5) 以上のとおりであるから、本件発明1~8は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、申立理由5によって、本件発明1~8に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
上記第4及び第5のとおり、本件特許の請求項1~8に係る特許は、当審において通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700494