特許異議申立
2024-700468
再剥離用粘着剤組成物及び粘着シート
- 審判番号
- 2024-700468
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-113888
- 登録番号
- 7387216
- 請求日
- 2024年05月16日
- 審決日
- 2025年03月26日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】サイデン化学株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人大塚国際特許事務所
- 【異議申立人】前田 洋志
- 審判長/審判官
- 審判長 村守 宏文
- 審判官 長谷川 真一
- 審判官 光本 美奈子
- 分類
- P1651.113-YAA(C09J) / P1651.121-YAA(C09J) / P1651.537-YAA(C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7387216号発明「再剥離用粘着剤組成物及び粘着シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7387216号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
特許第7387216号の請求項1~9に係る発明についての特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7387216号(以下「本件特許」という。)の出願(特願2023-113888号)は、令和5年7月11日の出願であって、令和5年11月17日に特許権の設定登録がされ(請求項の数9)、同年同月28日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和6年5月16日に、特許異議申立人である前田洋志(以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~9に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、その後の手続の経緯は、次のとおりである。
令和6年 9月27日付け:取消理由通知
同年11月22日 :意見書及び訂正請求書(特許権者)
同年12月 4日付け:通知書(申立人宛て)
本通知書に対して、申立人からの応答はなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
以下、下線は訂正箇所を表す。
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1に「少なくとも(メタ)アクリル系単量体と、官能基を有する単量体とを構成単位として含むアクリル系共重合体と、硬化剤と、を含む再剥離用粘着剤組成物であって、前記(メタ)アクリル系単量体は、少なくともラウリルアクリレートを含み、前記アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部に対して、1~5質量部の前記官能基を有する単量体を含み、前記再剥離用粘着剤組成物は、前記アクリル系共重合体100質量部に対して、0.4~4質量部の前記硬化剤と0~7質量部の粘着付与樹脂とを含み、前記(メタ)アクリル系単量体は、ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びブチルアクリレートの少なくともいずれかを更に含み、前記アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部中に、5~100質量部の前記ラウリルアクリレートを含み、前記再剥離用粘着剤組成物のゲル分率が40~80%である、再剥離用粘着剤組成物。」と記載されているのを、「少なくとも(メタ)アクリル系単量体と、官能基を有する単量体とを構成単位として含むアクリル系共重合体と、硬化剤と、を含む再剥離用粘着剤組成物であって、前記(メタ)アクリル系単量体は、少なくともラウリルアクリレートを含み、前記アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部に対して、1~5質量部の前記官能基を有する単量体を含み、前記再剥離用粘着剤組成物は、前記アクリル系共重合体100質量部に対して、0.4~4質量部の前記硬化剤と0~7質量部の粘着付与樹脂とを含み、前記(メタ)アクリル系単量体は、ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びブチルアクリレートの少なくともいずれかを更に含み、前記アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部中に、5~80質量部の前記ラウリルアクリレートを含み、前記再剥離用粘着剤組成物のゲル分率が40~80%であり、前記官能基を有する単量体は、カルボキシ基を有する単量体を含む、再剥離用粘着剤組成物。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~9も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記官能基を有する単量体は、ヒドロキシ基を有する単量体と、カルボキシ基を有する単量体と、アミド基を有する単量体の少なくともいずれかを含む、請求項1に記載の再剥離用粘着剤組成物。」と記載されているのを、「前記官能基を有する単量体は、ヒドロキシ基を有する単量体と、アミド基を有する単量体の少なくともいずれかを含む、請求項1に記載の再剥離用粘着剤組成物。」と訂正する(請求項2の記載を引用する請求項5も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「前記アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部に対して、0~4.0質量部の前記ヒドロキシ基を有する単量体と、0~4.6質量部の前記カルボキシ基を有する単量体とを含む、請求項2に記載の再剥離用粘着剤組成物。」と記載されているのを、「前記アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部に対して、0.1~4.0質量部の前記ヒドロキシ基を有する単量体と、1.0~4.6質量部の前記カルボキシ基を有する単量体とを含む、請求項2に記載の再剥離用粘着剤組成物。」と訂正する。
(4)一群の請求項について
訂正前の請求項1~9は、請求項2~9が、訂正の請求の対象である請求項1を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項1~9について請求されている。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「アクリル系共重合体」について、その含有量を特定し、カルボキシ基を有する単量体を含むことを特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(請求項1の引用形式等で記載される請求項2~9についても同様である。)
訂正事項1は、「アクリル系共重合体」をより具体的に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
明細書の段落【0062】の【表2】には、(メタ)アクリル系単量体100質量部中のラウリルアクリレートが80質量部である実施例13及び14が記載されており、訂正前の請求項2には「前記官能基を有する単量体は、・・・カルボキシ基を有する単量体と、・・・の少なくともいずれかを含む」と記載されていることから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
請求項2は請求項1の引用形式で記載されるものである。
訂正事項2は、訂正前の請求項2の「官能基を有する単量体」の成分から、前記訂正事項1により請求項1において特定された「カルボキシ基を有する単量体」「を含む」ことを削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(請求項2の引用形式で記載される請求項5についても同様である。)
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項5の「ヒドロキシ基を有する単量体」と「カルボキシ基を有する単量体」の含有量を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、「ヒドロキシ基を有する単量体」と「カルボキシ基を有する単量体」の含有量という発明特定事項をより具体的に特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
明細書の段落【0062】の【表2】には、HEAを「0.1」質量部配合する実施例9及び10、並びに、AACを「1.0」質量部配合する実施例13及び15が記載されているから、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(4)特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件においては、訂正前の請求項1~9について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項1~9に係る訂正事項1~3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。
以下、下線は合議体による。
第3 本件特許に係る発明について
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」などといい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
【請求項1】
少なくとも(メタ)アクリル系単量体と、官能基を有する単量体とを構成単位として含むアクリル系共重合体と、
硬化剤と、を含む再剥離用粘着剤組成物であって、
前記(メタ)アクリル系単量体は、少なくともラウリルアクリレートを含み、
前記アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部に対して、1~5質量部の前記官能基を有する単量体を含み、
前記再剥離用粘着剤組成物は、前記アクリル系共重合体100質量部に対して、0.4~4質量部の前記硬化剤と0~7質量部の粘着付与樹脂とを含み、
前記(メタ)アクリル系単量体は、ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びブチルアクリレートの少なくともいずれかを更に含み、
前記アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部中に、5~80質量部の前記ラウリルアクリレートを含み、
前記再剥離用粘着剤組成物のゲル分率が40~80%であり、前記官能基を有する単量体は、カルボキシ基を有する単量体を含む、
再剥離用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記官能基を有する単量体は、ヒドロキシ基を有する単量体と、アミド基を有する単量体の少なくともいずれかを含む、
請求項1に記載の再剥離用粘着剤組成物。
【請求項3】
前記粘着付与樹脂は、ロジン系樹脂及びテルペン系樹脂の少なくともいずれかを含む、
請求項1に記載の再剥離用粘着剤組成物。
【請求項4】
前記硬化剤は、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、金属キレート系硬化剤、及びアジリジン系硬化剤の少なくともいずれかを含む、
請求項1に記載の再剥離用粘着剤組成物。
【請求項5】
前記アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部に対して、0.1~4.0質量部の前記ヒドロキシ基を有する単量体と、1.0~4.6質量部の前記カルボキシ基を有する単量体とを含む、
請求項2に記載の再剥離用粘着剤組成物。
【請求項6】
前記官能基を有する単量体は、2-ヒドロキシエチルアクリレートと、4-ヒドロキシブチルアクリレートと、アクリル酸の少なくともいずれかを含む、
請求項1に記載の再剥離用粘着剤組成物。
【請求項7】
前記アクリル系共重合体は、ビニル系単量体を構成単位として更に含む、
請求項1に記載の再剥離用粘着剤組成物。
【請求項8】
前記アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部に対して、0~15質量部の前記ビニル系単量体を更に含む、
請求項7に記載の再剥離用粘着剤組成物。
【請求項9】
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に設けられた請求項1に記載の再剥離用粘着剤組成物からなる粘着剤層と、を備える、
粘着シート。
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
1 特許異議申立ての理由の概要
申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は、次のとおりである。
申立理由1-1(新規性)本件特許の請求項1~9に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
申立理由1-2(進歩性)本件特許の請求項1~9に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
申立理由2-1(新規性)本件特許の請求項1~9に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
申立理由2-2(進歩性)本件特許の請求項1~9に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
申立理由3(サポート要件)本件特許の請求項1~9に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
請求項1~9に係る発明の課題は、粘着力とタック力と再剥離性に関連するものであるところ、請求項1~9ではラウリルメタクリレート等の含有量が特定されておらず、長鎖アルキル基を有する単量体がアクリル系共重合体に多量に含まれる場合、長鎖アルキル基のパッキング性が生じ、粘着力、タック性が過度に低下し、課題が解決されないことは明らかである。
したがって、請求項1~9に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できない。
申立理由4(明確性要件)本件特許の請求項1~9に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
請求項1に係る発明は、「前記アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部中に、5~100質量部の前記ラウリルアクリレートを含」むこと、並びに、「ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びブチルアクリレートの少なくともいずれか」をさらに含むことを発明特定事項とするものである。
しかしながら、ラウリルアクリレートが100質量部である場合、「ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びブチルアクリレートの少なくともいずれか」を含み得ないことは明らかである。
したがって、請求項1に係る発明は、明確でない。
請求項1の引用形式等で記載される請求項2~9に係る発明も、同様の理由から明確でない。
2 証拠方法
甲第1号証:特開2013-1761号公報
甲第2号証:国際公開第2015/076066号
(以下、「甲第1号証」及び「甲第2号証」をそれぞれ、「甲1」及び「甲2」という。)
第5 当審において通知した取消理由の概要
取消理由1(新規性)本件特許の請求項1~9に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1または甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである(申立理由1-1及び2-1に相当)。
取消理由2(進歩性)本件特許の請求項1~9に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1または甲2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである(申立理由1-2及び2-2に相当)。
取消理由3(明確性要件)本件特許の請求項1~9に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである(申立理由4に相当)。
請求項1に係る発明は、「前記アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部中に、5~100質量部の前記ラウリルアクリレートを含」むこと、及び、「ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びブチルアクリレートの少なくともいずれか」をさらに含むことを発明特定事項とするものである。
しかしながら、ラウリルアクリレートが100質量部である場合、「ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びブチルアクリレートの少なくともいずれか」を含み得ないことは明らかである。
したがって、本件特許発明1は、明確でない。
本件特許発明1の引用形式等で記載される本件特許発明2~9も、同様の理由から明確でない。
第6 甲号証の記載事項
1 甲1の記載
「【0002】
本発明の粘着剤層または粘着シートは、光学用途に好適である。例えば、本発明の粘着剤層または粘着シートは、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどの画像表示装置の製造用途や、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などのタッチパネルなどの入力装置の製造用途に好適に用いることができる。特に、静電容量方式のタッチパネルに好適に用いられる。
【0003】
また、本発明の粘着シートは、支持体に光学部材を用いた粘着型光学部材として有用である。例えば、光学部材として透明導電性フィルムを用いる場合には、粘着型光学部材は、粘着剤層付き透明導電性フィルムとして用いられる。当該粘着剤層付き透明導電性フィルムは、適宜加工処理がなされた後に、前記画像表示装置やタッチパネルなどにおける透明電極に用いられる。特に、粘着剤層付き透明導電性フィルムは、透明導電性薄膜をパターニングして、静電容量方式のタッチパネルの入力装置の電極基板に好適に用いられる。その他、粘着剤層付き透明導電性フィルムは、透明物品の帯電防止や電磁波遮断、液晶調光ガラス、透明ヒーターに用いられる。」
「【0085】
また本発明の粘着剤層のゲル分率は20~98重量%であるのが好ましい。粘着剤層のゲル分率は、より好ましくは25~95重量%であり、さらに好ましくは30~95重量%である。前記粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合には、架橋剤全体の添加量を調整することとともに、架橋処理温度や架橋処理時間の影響を十分考慮して、ゲル分率が制御することができる。ゲル分率が小さい場合には凝集力に劣り、大きすぎると接着力に劣る場合がある。かかるゲル分率を有する粘着剤層は、被着体に貼付後の接着力の上昇が非常に小さく、長時間貼り付けた後でも糊残りすることなく、容易に再剥離できるという特徴が発揮される。」
「【0121】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。・・・
【0123】
実施例1
<メタクリル系ポリマーの調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ラウリルメタクリレート(LMA)100重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)1重量部、重合開始剤として2,2´-アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチル200重量部と共に仕込み、穏やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して1時間窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃付近に保って15時間重合反応を行い、重量平均分子量90万のメタクリル系ポリマー溶液を調製した。
【0124】
次いで、上記で得られたメタクリル系ポリマー溶液に、ポリマーの固形分100重量部に対して、架橋剤として、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学社製,商品名D110N)を0.5重量部配合して粘着剤組成物溶液を調製した。
【0125】
次いで、得られた粘着剤組成物溶液を、シリコーン処理を施した38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製,DIAFOILMRF38)のシリコーン処理面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが25μmになるように塗布し、130℃で3分間乾燥を行い、粘着剤層を形成し、粘着シートを作成した。
【0126】
実施例2~6、比較例1~4
実施例1において、メタクリル系ポリマーの調製に用いたモノマーの種類とその組成比、架橋剤の種類とその配合量を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着シートを作成した。得られた粘着シートの組成、構成ポリマーの分子量およびガラス転移温度、誘電率、接着力、ゲル分率、全光線透過率、およびヘイズを表1に示す。
・・・
【0132】
【表1】
[図:0001423496000001.jpg]
」
2 甲2の記載
「[0001] 本発明は、光学フィルム用粘着剤組成物、粘着型光学フィルムおよび積層体に関する。
[0002] 画像表示装置は、近年、薄型化が進められている。これに伴い、画像表示装置を構成する部材も薄型化されている。このため、薄型化された部材と他の部材との粘着剤層を介した貼り合わせが良好に行われなかった場合に、これらの部材を破損させずに、容易に剥がすことができる性能(リワーク性)を有する粘着剤層の開発が求められている。」
「発明が解決しようとする課題
[0006] 本発明は、リワーク性および耐久性に優れた粘着剤層を得ることができる光学フィルム用粘着剤組成物、およびそれを用いた粘着型光学フィルムおよび積層体を提供することを目的としている。
課題を解決するための手段
[0007] 本発明者らは、このような課題を解決すべく、所定の成分を用いて得られるアクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物が、リワーク性(中でも、加熱後のリワーク性)および耐久性に優れた粘着剤層を得ることができることを見出した。」
「[0019] 本発明において、「リワーク性」とは、被着体に粘着剤層を一旦貼り付け、該粘着剤層を該被着体から容易に剥がすことができる粘着剤層の性質をいう。
[0020] また、上記粘着型光学フィルムは、上記光学フィルム用粘着剤組成物を用いて得られた粘着剤層を、光学フィルムの片面または両面に設えているため、リワーク性(中でも、加熱後のリワーク性)および耐久性に優れている。
[0021] さらに、上記積層体は、前記ガラス基板と前記偏光板との間に設けられた、上記光学フィルム用粘着剤組成物を膜状に成形し、加熱して得られる粘着剤層を含むことにより、耐久性に優れている。」
「[0035] 1.1.4.ゲル分率
本実施形態に係る光学用粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤層の被着体との粘着力を高めることができる観点から、本実施形態に係る光学用粘着剤組成物のゲル分率が40%以上93%以下であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましく、一方、85%以下であることがより好ましく、80%以下であることがさらに好ましい。」
「[0045] 1.1.6.単量体混合物
1.1.6-1.(a1)成分
(a1)成分は、耐久性および加熱後のリワーク性の向上に寄与する。耐久性および加熱後のリワーク性をより高めることができる点で、(a1)成分は1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましく、一方、28質量%以下であることが好ましく、26質量%以下であることがより好ましく、24質量%以下であることがさらに好ましい。(a1)成分が30質量%を超えると、重合率が低下し、共重合体中に未反応の残留単量体が多く含まれることになり、被着体汚染性が不良となるため好ましくない。
[0046] (a1)成分に含まれる炭素数12以上18以下の直鎖状アルキル基としては、例えば、ラウリル基(ドデシル基)、トリデシル基、ミリスチル基(テトラデシル基)、ペンタデシル基、パルミチル基(ヘキサデシル基)、ヘプタデシル基、ステアリル基(オクタデシル基)が挙げられる。
[0047] (a1)成分としては、例えば、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ミリスチルアクリレート、ペンタデシルアクリレート、パルミチルアクリレート、ヘプタデシルアクリレート、ステアリルアクリレートが挙げられ、このうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、ラウリルアクリレートが好ましい。
[0048] (a1)成分は、炭素数12以上18以下の直鎖状アルキル基を有し、ホモポリマーを形成した場合のTgが-20℃以上50℃以下であることにより(好ましくは-15℃以上、より好ましくは-10℃以上)、滑らかで、被着体に対する濡れ性の変動が少なく、かつ、適度な硬さを有する。
[0049] (a1)成分の該被着体に対する濡れ性の低さは、炭素数12以上18以下の直鎖状アルキル基の極性の低さに起因すると推測される。また、(a1)成分の適度な硬さは、炭素数12以上18以下の直鎖状アルキル基が有する良好な結晶配向性に起因すると推測される。
[0050] したがって、本実施形態に係る粘着剤組成物が、(a1)成分を1質量%以上30質量%以下含む単量体混合物の共重合体である(A)成分を含むことにより、該組成物を用いて、(a1)成分に起因して、リワーク性および耐久性に優れた粘着剤層を得ることができる。」
「[0051] 1.1.6-2.(a2)成分
(a2)成分は、(B)成分との架橋に寄与することができる。より具体的には、(a2)成分に含まれる水酸基(ヒドロキシル基)が(B)成分中のイソシアナート基と反応することにより、架橋構造を形成することができる。
[0052] さらに、本実施形態に係る粘着剤組成物が(a2)成分を含むことにより、(A)成分を調製する際に、(a1)成分のような極性の低い成分を使用した場合であっても、ヒドロキシル基に起因して(a2)成分の極性が高いため、極性が比較的高い表面を有する被着体(例えば、トリアセチルセルロース、または後述する材料)への密着性を上昇させる効果を有する。
[0053] ここで、極性が比較的高い表面を有する被着体としては、例えば、表面に水酸基(ヒドロキシル基)、カルボキシル基、アミノ基等の水素結合性官能基を有する被着体が挙げられ、このような被着体としては、偏光板に使用されるTAC(トリアセチルセルロース)、ポリカーボネート、アクリル樹脂が挙げられる。
[0054] 架橋性をより高めることができる点で、(a2)成分は0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。一方、8質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましい。
[0055] (a2)成分としては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-クロロプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-クロロプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルメタクリレートなどの水酸基(ヒドロキシル基)含有(メタ)アクリル酸エステル単量体が挙げられ、このうち、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。」
「[0073] (a5)成分としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン等のスチレン系モノマー、酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル、ビニル(メタ)アクリロイル基含有マクロモノマーなどが挙げられ、このうち1種または2種以上を組み合わせて使用することもできる。リワーク性を損なわない点で、単量体混合物中の(a5)成分の含有量は0質量%以上5質量%以下であることが好ましい。」
「[0086] 1.2.(B)架橋剤
(B)成分である架橋剤としては、例えば、(B)成分である架橋剤は、常温又は加熱下で(A)成分と架橋し得る架橋剤であれば特に限定されないが、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレ―ト架橋剤が挙げられ、このうち、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
[0087] イソシアネート系架橋剤としては、具体的には、キシリレンジイソシアネート、・・・等が例示される。また、エポキシ系架橋剤としては、具体的には、N,N’-[1,3-フェニレンビス(メチレン)]ビス[ビス(オキシラン-2-イルメチル)アミン]が挙げられる。
[0088]・・・また、(A)成分がカルボキシル基を有する場合には、イソシアネート系架橋剤とエポキシ架橋剤とを併用して用いることもできる。
[0089] 本実施形態に係る粘着剤組成物における(B)成分の含有量は、適度な粘着力を付与し、かつ耐久性を高めることができる点で、本実施形態に係る粘着剤組成物100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.02質量部以上0.5質量部以下であることがより好ましい。」
「[0132] 4.実施例
以下、本発明を下記実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されない。
[0133] 4.1.(メタ)アクリル系ポリマーの調製
攪拌機、還流冷却器、温度計および窒素導入管を備えた反応装置に、下記表2に示す配合比率を有する単量体混合物を仕込み、次に、酢酸エチルをモノマー濃度が50質量%になる配合量にて仕込んだ。次に、アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を加え、反応容器内の空気を窒素ガスで置換しながら撹拌を行い60℃に昇温した後、4時間反応させた。反応終了後、酢酸エチルで希釈して、表2に示す(メタ)アクリル系ポリマーA~Pを得た。
[0134] 4.2.評価用粘着加工偏光板の作製
上記4.1.で得られた(A)成分を用いて、下記表3および表4の配合(固形分配合)にて各成分を添加して、実施例1ないし20および比較例1ないし8の粘着剤組成物の溶液を得た。この粘着剤組成物の溶液を剥離処理したポリエステルフィルムの表面に塗布して乾燥させることにより、厚さ25μmの粘着剤層を有する粘着シートを得た。この粘着シートを偏光フィルムの片面に貼り付けた後、23℃/50%RHの条件で暗所にて7日間熟成させて、評価用粘着加工偏光板を得た。
[0135] 各評価用粘着加工偏光板について、下記表3および表4に示す粘着力、加熱後粘着力、剥離後の被着体汚染、耐熱性、および耐湿熱性について、以下の方法にて評価した。また、実施例1ないし20および比較例1ないし8の粘着剤組成物の溶液について、上述の実施形態に記載された方法にてゲル分率を測定した。
[0136] 4.3.評価方法
4.3.1.粘着力(リワーク性)
上記4.2で作製された評価用粘着加工偏光板を、幅25mm×長さ70mmにカットし、アルカリ処理ガラス上に貼り合わせて試験片とする。2kgローラーにて圧着後、23℃/50%RH雰囲気下で2時間静置する。次に、前記試験片を、引っ張り試験機(島津製作所製)にセットする。剥離角度90°、剥離速度300mm/分にて、粘着加工偏光板をアルカリ処理ガラスより剥離する。このときの数値を粘着力とする。
[0137] 4.3.2.加熱後粘着力(加熱後のリワーク性)
・・・
[0140] 4.3.5.耐湿熱性
・・・
[0141]
[表2]
[図:0001423496000002.jpg]
[0142]
[表3]
[図:0001423496000003.jpg]
・・・
[0144] なお、表2、表3および表4における略語は以下の意味である。
AA:アクリル酸
BA:n-ブチルアクリレート
BzA:ベンジルアクリレート
2-EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
2-HEA:2-ヒドロキシエチルアクリレート
LA:ラウリルアクリレート
4-HBA:4-ヒドロキシブチルアクリレート
INA:イソノニルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)
ISA:イソステアリルアクリレート
SA:ステアリルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)
E-AX:N,N’-[1,3-フェニレンビス(メチレン)]ビス[ビス(オキシラン-2-イルメチル)アミン](エポキシ系架橋剤、綜研化学株式会社製)
KBM-403:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤、信越化学工業株式会社製)
LiTFSI:リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(イオン性化合物、3M社製)
AS-1:1-オクチル-4-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(イオン性化合物)
AS-2:トリデシルメチルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(イオン性化合物)
AS-3:テトラデシルアンモニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(イオン性化合物)
AS-4:トリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(イオン性化合物)
TD-75:XDI系イソシアネート化合物(イソシアネート系架橋剤、三井武田薬品株式会社製)
[0145] 表2、表3および表4の結果から、上記実施例1ないし20の組成物は、上記(a1)成分、上記(a2)成分および上記(a3)成分を含む単量体混合物の共重合体である前記(A)(メタ)アクリル系ポリマーを含むことにより、リワーク性(中でも、加熱後のリワーク性)および耐久性(耐熱性および耐湿熱性)に優れた粘着剤層を得られたことが理解できる。
[0146] これに対して、上記比較例1ないし4の組成物は、上記(a1)成分が配合されていない単量体混合物の共重合体を使用したため、該組成物を用いて得られた粘着剤層はリワーク性(中でも、加熱後のリワーク性)に劣ることが理解できる。」
「[0150] また、上記比較例8の組成物は、単量体混合物におけるカルボキシル基含有単量体の量が1質量%を超えていたため、加熱によって、(A)成分に含まれるカルボキシル基と(B)成分との反応が進行する結果、粘着力が上昇したため、加熱後粘着力が高くなったうえに、剥離後の被着体汚染が生じたことが理解できる。」
第7 取消理由通知についての検討
1 甲1を主引用例とする取消理由1及び2について
(1)甲1に記載された発明
前記第6 1の【0123】~【0126】、【0132】の特に比較例4には、以下の発明が記載されている。
「LAを45重量部、2EHAを55重量部及びHBAを1重量部から得られたメタクリル系ポリマーの固形分100重量部に対して、架橋剤として、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学社製,商品名D110N)を0.5重量部配合して得られた、ゲル分率が77.6%である粘着剤組成物溶液」(以下「甲1発明1」という。)
また、甲1には、「甲1発明1の粘着剤組成物溶液を、フィルムの一面に塗布し、130℃で3分間乾燥を行い、粘着剤層を形成した粘着シート」(以下「甲1発明2」という。)が記載されている。
(2)本件発明1について
ア 対比
甲1発明1の「LA」、「2EHA」、「メタクリル系ポリマー」及び「架橋剤として、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学社製,商品名D110N)」は、それぞれ、本件発明1の「(メタ)アクリル系単量体」である「ラウリルアクリレート」、「2-エチルヘキシルアクリレート」、「アクリル系共重合体」及び「硬化剤」に相当する。
また、甲1発明1の「HBA」は、甲1の【0123】より、4-ヒドロキシブチルアクリレートであり、ヒドロキシル基を有しているから、本件発明1の「官能基を有する単量体」に相当する。
甲1発明の「LAを45重量部、2EHAを55重量部及びHBAを1重量部から得られたメタクリル系ポリマーの固形分100重量部に対して、架橋剤として、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学社製,商品名D110N)を0.5重量部配合」は、本件発明1の「前記アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部に対して、1~5質量部の前記官能基を有する単量体を含み、」「前記再剥離用粘着剤組成物は、前記アクリル系共重合体100質量部に対して、0.4~4質量部の前記硬化剤と0~7質量部の粘着付与樹脂とを含み、」「前記(メタ)アクリル系単量体は、ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びブチルアクリレートの少なくともいずれかを更に含み、」「前記アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部中に、5~80質量部の前記ラウリルアクリレートを含み」を充足する。
すると、両者は、
「少なくとも(メタ)アクリル系単量体と、官能基を有する単量体とを構成単位として含むアクリル系共重合体と、
硬化剤と、を含む粘着剤組成物であって、
前記(メタ)アクリル系単量体は、少なくともラウリルアクリレートを含み、
前記アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部に対して、1~5質量部の前記官能基を有する単量体を含み、
前記再剥離用粘着剤組成物は、前記アクリル系共重合体100質量部に対して、0.4~4質量部の前記硬化剤と0~7質量部の粘着付与樹脂とを含み、
前記(メタ)アクリル系単量体は、ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びブチルアクリレートの少なくともいずれかを更に含み、
前記アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部中に、5~80質量部の前記ラウリルアクリレートを含み、
前記粘着剤組成物のゲル分率が40~80%である、粘着剤組成物」の点で一致し、
本件発明1は、粘着剤組成物が「再剥離用」と特定されているのに対し、
甲1発明1ではその点が特定されていない点(以下「相違点1」という。)、及び、
官能基を有する単量体が、本件発明1は、カルボキシ基を有するものであるのに対し、甲1発明はHBA(4-ヒドロキシブチルアクリレート)である点(以下「相違点2」という)において相違するものである。
イ 検討
(ア)新規性について
相違点2は実質的な相違点であるから、本件発明1と甲1発明1が同一とはいえない。
したがって、本件発明1が甲1に記載された発明であるとはいえない。
(イ)進歩性について
事案に鑑み、はじめに「相違点2」について検討する。
甲1は、接着性能を満足し、かつ低誘導率の粘着剤層を実現できる粘着剤組成物を提供することを解決しようとする課題とするものであり(【0010】)、当該課題を解決するために、粘着剤組成物が、側鎖にC10~C18のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを含むモノマー成分を重合して得られる、ガラス転移温度が0℃以下のメタクリル系ポリマーを含むことを特徴とする(【0013】)ものである。甲1には、(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分に、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマーおよび環状エーテルを含有するモノマーから選ばれるいずれか少なくとも1つの官能基含有モノマーを含むことができる」(【0034】)と記載され、カルボキシル基含有モノマーの例として、(メタ)アクリル酸等が挙げられている(【0035】)。
しかしながら、甲1発明1は、甲1の比較例4に基づいて認定されたものであり、甲1の記載に接した当業者が、比較例である甲1発明1において、上記甲1の記載に基づき、HBAにかえてアクリル酸等を用いることを積極的に動機づけられたとはいえない。
また、甲1には、実施例1~5として、官能基含有モノマーとして、HBAまたはアクリル酸を用いる例が記載されているものの、いずれも、「ラウリルアクリレート」と「ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びブチルアクリレートの少なくともいずれか」を含むものではなく、甲1には、官能基含有モノマーに加えてこれらを含有させ、ゲル分率を40~80%とすることを示唆する記載もなされていない。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(3)本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1の引用形式等で記載され、さらに特定事項が付加されたものであるから、前記(2)イと同様の理由から、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものでもない。
(4)本件発明9について
本件発明9と甲1発明2を対比すると、両者は前記相違点1及び2において異なるものである。
前記相違点2が実質的な相違点であり、当業者が容易に想到し得るとはいえないことは、前記(2)イで検討したとおりである。
したがって、本件発明9も、前記(2)イと同様の理由から、甲1に記載された発明であるとも、甲1に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものであるともいえない。
2 甲2を主引用例とする取消理由1及び2について
(1)甲2に記載された発明
甲2には、上記第6 2の表2のA~D、F~G及びRを用いて、表3のとおり粘着剤組成物を製造したことが記載されているところ、表2のDを用いた実施例4として、「LAを20質量部、4-HBAを1質量部、BAを78質量部の混合物から得られた(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に、TD-75である架橋剤を0.07質量部、KBM-403であるシランカップリング剤0.2質量部及びLiTHSIであるイオン性化合物0.7質量部を添加して得られた、ゲル分率が59.5%である粘着剤組成物」(以下「甲2発明1」という。)が記載されている。
また、甲2には、「甲2発明の粘着剤組成物をフィルムの表面に塗布して乾燥させることにより得られた粘着剤層を有する粘着シート」(以下「甲2発明2」という。)が記載されている。
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明1を対比する。
甲2発明1の「LA」、「BA」、「(メタ)アクリル系ポリマー」及び「TD-75である架橋剤」はそれぞれ、本件発明1の「(メタ)アクリル系単量体」である「ラウリルアクリレート」、「ブチルアクリレート」、「アクリル系共重合体」及び「硬化剤」に相当する。
また、甲2発明1の「4-HBA」は、4-ヒドロキシブチルアクリレートであり、ヒドロキシル基を有しているから、本件発明1の「官能基を有する単量体」に相当する。
甲2発明1の「LAを20質量部、4-HBAを1質量部、BAを78質量部の混合物から得られた(メタ)アクリル系ポリマー100質量部」は、本件発明1の「前記(メタ)アクリル系単量体は、少なくともラウリルアクリレートを含み、
前記アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部に対して、1~5質量部の前記官能基を有する単量体を含み、
前記再剥離用粘着剤組成物は、前記アクリル系共重合体100質量部に対して、0~7質量部の粘着付与樹脂とを含み、
前記(メタ)アクリル系単量体は、ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びブチルアクリレートの少なくともいずれかを更に含み、
前記アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部中に、5~80質量部の前記ラウリルアクリレートを含み」を充足する。
すると、両者は、
「少なくとも(メタ)アクリル系単量体と、官能基を有する単量体とを構成単位として含むアクリル系共重合体と、
硬化剤と、を含む粘着剤組成物であって、
前記(メタ)アクリル系単量体は、少なくともラウリルアクリレートを含み、
前記アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部に対して、1~5質量部の前記官能基を有する単量体を含み、
前記再剥離用粘着剤組成物は、前記アクリル系共重合体100質量部に対して、0~7質量部の粘着付与樹脂とを含み、
前記(メタ)アクリル系単量体は、ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びブチルアクリレートの少なくともいずれかを更に含み、
前記アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部中に、5~100質量部の前記ラウリルアクリレートを含み、
前記粘着剤組成物のゲル分率が40~80%である、粘着剤組成物」の点で一致し、
本件発明1は、粘着剤組成物が「再剥離用」と特定されているのに対し、甲2発明1ではその点が特定されていない点(以下「相違点1’」という。)、
本件発明1は、「アクリル系共重合体100質量部に対して、0.4~4質量部の前記硬化剤」を含むのに対し、甲2発明1は「(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に」対し、「TD-75である架橋剤を0.07質量部」含む点(以下「相違点2’」という。)、及び、
官能基を有する単量体が、本件発明1は「カルボキシル基を有する単量体」であるのに対し、甲2発明1は「4-HBA」(4-ヒドロキシブチルアクリレート)である点(以下「相違点3’」という。)で相違するものである。
イ 検討
(ア)新規性について
相違点3’は実質的な相違点であるから、本件発明1と甲2発明が同一とはいえない。
したがって、本件発明1が甲2に記載された発明であるとはいえない。
(イ)進歩性について
a 事案に鑑み、はじめに相違点3’について検討する。
前記第6 2の【0051】のとおり、甲2には、水酸基(ヒドロキシル基)がイソシアナート基と反応することにより架橋構造を形成することが記載されているから、甲2発明1において、水酸基を有する4-HBAを、カルボキシ基を有する化合物にかえることが動機づけられたとはいえない。
b 甲2には、甲2発明1を認定した実施例4の他にも種々の実施例及び比較例の記載がなされており、カルボキシ基を有する化合物であるAA(アクリル酸)を含有する実施例として、「LAが10質量部、2-HEAが0.2質量部、BAが88.9質量部及びAA(アクリル酸)が0.9質量部の混合物から得られた(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に、E-AXである架橋剤を0.4質量部、KBM-403であるシランカップリング剤0.2質量部、及び、LiTHSIであるイオン性化合物0.7質量部を添加して得られた、ゲル分率が92.1%である粘着剤組成物」(Q、実施例12)が記載されている。
実施例12の組成物に係る発明は、ゲル分率が92.1%であるという点で、ゲル分率が40~80%である本件発明1と異なるものであり、本件発明1の硬化剤に相当する「E-AXである架橋剤」を、本件発明1の下限値である0.4重量部含むものである。
そうすると、実施例12の組成物のゲル分率を本件発明1の上限まで低下させようとすると、自ずと硬化剤に相当する架橋剤の配合量が本件発明1の範囲外となることは明らかであるから、本件発明1は、当業者が実施例12の組成物の発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
c また、甲2には、「LAが10質量部、BAが88質量部、及び、AA(アクリル酸)が2質量部の混合物から得られた(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に、E-AXである架橋剤を0.04質量部、KBM-403であるシランカップリング剤0.2質量部及びLiTHSIであるイオン性化合物0.7質量部を添加して得られた、ゲル分率が62.1%である粘着剤組成物」(P、比較例8)も記載されている。
比較例8の組成物に係る発明は、本件発明1の「硬化剤」に相当する「E-AXである架橋剤を0.04質量部」含むという点で、「硬化剤が0.4~4質量部」である本件発明1と少なくとも相違するものである。
前記第6 2の【0150】には、「比較例8の組成物は、単量体混合物におけるカルボキシル基含有単量体の量が1質量%を超えていたため、加熱によって、(A)成分に含まれるカルボキシル基と(B)成分との反応が進行する結果、粘着力が上昇したため、加熱後粘着力が高くなったうえに、剥離後の被着体汚染が生じたことが理解できる。」と記載されており、甲2の記載に接した当業者が、比較例8の組成物に、さらに架橋剤を添加すること等の改良を加えることを想起したとはいえない。
d 以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明、甲2に記載の事項及び周知技術から、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
(3)本件発明2~8について
本件発明2~8は、本件発明1の引用形式等で記載され、さらに特定事項が付加されたものであるから、前記(2)と同様の理由から、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものでもない。
(4)本件発明9について
本件発明9と甲2発明2を対比すると、両者は前記相違点1’~3’において異なるものである。
前記相違点3’が実質的な相違点であり、当業者が容易に想到し得るとはいえないことは、前記(2)イで検討したとおりである。
したがって、本件発明9も、前記(2)イと同様の理由から、甲2に記載された発明であるとも、甲2に記載された発明から当業者が容易に想到し得たものであるともいえない。
(5)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1~9は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明、並びに、甲2に記載の事項及び周知技術から当業者が容易に想到し得たものでもない。
3 取消理由3について
本件発明1は、「アクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル系単量体100質量部中に、5~80質量部の前記ラウリルアクリレートを含」むものであるから、「ラウリルアクリレート」の他に「ラウリルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びブチルアクリレートの少なくともいずれか」を含み得ることは明らかである。
したがって、本件発明1は明確である。
本件発明1の引用形式等で記載される本件発明2~9も、同様の理由から明確である。
4 申立人の主張について
申立人は、いずれも訂正前の請求項1~9に係る発明について、甲1または甲2に記載された発明に基づく新規性及び進歩性欠如、及び、明確性要件違反を主張するものである。
しかしながら、訂正後の本件発明1~9は、甲1または甲2に記載された発明ではなく、また、甲1または甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものではないことは、前記1及び2で検討したとおりである。
また、訂正後の本件発明1~9が不明確といえないことも、前記3で検討したとおりである。
したがって、いずれの申立人の主張も採用できない。
第8 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立理由3(サポート要件)について
本件発明は、粘着力とタック性と再剥離性のバランスに優れた再剥離用粘着剤組成物を提供することを、解決しようとする課題とするものと認められる(【0008】)。
本願明細書の段落【0003】には、「ゲル分率を下げると、粘着力とタック性は上昇するが、再剥離性が悪くなってしまう問題があった。ここで、ゲル分率は、一般的に高分子ポリマーの硬化の度合い、すなわち架橋度を表す。」と記載されるように、粘着力やタック性は、共重合体中の単量体のラウリルメタクリレートのような長鎖アルキル基の量のみならず、硬化剤の量や架橋の度合い等により調整されることは明らかである。
したがって、本件発明にラウリルメタクリレート等の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体の含有量の特定がないことをもって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでなく、上記課題を解決できるように発明の詳細な説明に記載されていないということはできない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
第9 むすび
前記第7及び第8のとおり、本件特許の請求項1~9に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。さらに、他に本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700468