特許異議申立
2022-701251
血液透析装置
- 審判番号
- 2022-701251
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-172667
- 登録番号
- 7085721
- 請求日
- 2022年12月16日
- 審決日
- 2023年07月19日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ニプロ株式会社
- 【権利者代理人】神崎 真
- 【権利者代理人】小倉 洋樹
- 【権利者代理人】松浦 孝
- 【権利者】澁谷工業株式会社
- 【権利者代理人】神崎 真
- 【権利者代理人】小倉 洋樹
- 【権利者代理人】松浦 孝
- 【異議申立人】笠原 ケイ子
- 審判長/審判官
- 審判長 内藤 真徳
- 審判官 後藤 泰輔
- 審判官 栗山 卓也
- 分類
- P1651.113-Z (A61M) / P1651.121-Z (A61M) / P1651.537-Z (A61M) / P1651.55 -Z (A61M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7085721号発明「血液透析装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7085721号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7085721号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~2に係る特許についての出願は、令和 4年 6月 9日付けでその特許権の設定登録がされ、令和 4年 6月17日に特許掲載公報が発行されたところ、令和 4年12月16日に特許異議申立人笠原ケイ子により請求項1~2に係る特許について特許異議の申立てがされた。
当審は、令和 5年 3月14日付けで請求項1~2に係る特許について取消理由を通知し(以下、「取消理由通知」という。)、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者から何らの応答もなかった。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~2に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明2」といい、それらをまとめて「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1~2に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
血液透析を行う透析器と、透析器に接続されるとともに血液を流通させる血液回路と、上記透析器に接続されて透析液を流通させる透析液回路と、上記透析液回路の透析液供給通路と血液回路との間に設けられた補液通路と、当該補液通路に設けられるとともに透析液供給通路の透析液を血液回路に供給する補液ポンプと、治療終了までの治療時間、治療終了までに補充すべき目標補液量および所定時間当たりの補液量である補液速度を透析治療のための設定項目として、その設定値が設定される制御手段とを備えた血液透析装置において、
上記目標補液量または補液速度のうちいずれか一方の設定項目を選択可能な状態でタッチパネル上に表示し、選択された設定項目を優先設定項目として記憶する優先設定項目選択手段と、変更された設定項目の設定値に基づいて関連する他の設定項目の設定値を更新する設定値更新手段とを備え、
上記優先設定項目選択手段において目標補液量を選択し、さらに、治療中に上記治療時間を変更した場合、上記設定値更新手段は上記目標補液量を維持したまま、変更された治療時間に基づいて上記補液速度を更新し、
優先設定項目選択手段において補液速度を選択し、さらに、治療中に上記治療時間を変更した場合、上記設定値更新手段は上記補液速度を維持したまま、変更された治療時間に基づいて上記目標補液量を更新することを特徴とする血液透析装置。
【請求項2】
上記設定値更新手段には、上記治療時間を変更した場合に更新される設定項目の上限値および下限値が設定されていることを特徴とする請求項1に記載の血液透析装置。」
第3 取消理由通知に記載した取消理由
本件特許に対し、令和5年3月14日付けで通知した取消理由は、概略次の取消理由を含むものである。
1 本件特許発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2 本件特許発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
刊行物一覧:
引用文献1:“透析用監視装置 NCV-2 取扱説明書 操作マニュアル”、ニプロ株式会社及び澁谷工業株式会社
(特許異議申立人:笠原ケイ子が提出した甲第1号証)
引用文献2:“GOOD DESIGN AWARD”、[online]、公益財団法人日本デザイン振興会、[令和 5年 2月28日検索]、インターネット
<URL:https://www.g-mark.org/award/describe/38001>
引用文献3:安藤勝信、外1名、“全自動透析装置とモニタリング”、日腎会誌、2013年、第55巻、第4号、p.502-514
引用文献4:鈴木寿文、外4名、“ヒートピュアカプラ(ncv-2)の消毒効果の検討”、[online]、2012年、日本透析医学会 学術集会・総会 抄録アーカイブ、[令和 5年 2月28日検索]、インターネット
<URL:https://www.micenavi-archives.jp/jsdt/search/detail_program/id:5428>
引用文献5:“透析装置の生産終了に関するご案内”、[online]、2016年10月、ニプロ株式会社、インターネット
<URL:https://med.nipro.co.jp/servlet/servlet.FileDownload?file=00P5F00000gZhkTUAS>
(特許異議申立人:笠原ケイ子が提出した甲第4号証)
第4 当審の判断
1 引用文献1の公知性について
引用文献2における「受賞対象名 透析用監視装置[透析用監視装置 NCV-2]」(1ページ4行)、「受賞概要 2011年度グッドデザイン賞受賞概要」(1ページ9行)、「発売 2010年8月1日」(2ページ上から6欄目)との記載、引用文献3における「11. 株)ニプロ.NCV-2取り扱い説明書.」(514ページ右欄16行)との記載、引用文献4における「ニプロ社製透析監視装置NCV-2を導入し」(1ページ10行)との記載、及び引用文献5における「本年10月末を期限として最終受注を承りまして当該装置の生産終了とさせて頂きます。」(1ページ9行)、「■対象製品およびご注文受付期限」の表(1ページ14行)における「多用途透析装置 | NCV-2シリーズ | 2016年10月31日」との記載から、NCV-2の取扱説明書である引用文献1は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物であった、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能であったと認められる。
2 引用文献1の記載事項、認定事項、引用発明、及び技術的事項
ア 記載事項
引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(ア)表紙
[図:0001401677000001.jpg]
(イ)1-5ページ
[図:0001401677000002.jpg]
(ウ)1-7ページ
[図:0001401677000003.jpg]
(エ)6-34ページ
[図:0001401677000004.jpg]
(オ)6-35ページ
[図:0001401677000005.jpg]
(カ)10-14ページ
[図:0001401677000006.jpg]
(キ)11-5ページ
[図:0001401677000007.jpg]
(ク)11-71ページ
[図:0001401677000008.jpg]
(ケ)A-2ページ
[図:0001401677000009.jpg]
(コ)A-3ページ
[図:0001401677000010.jpg]
(サ)A-4ページ
[図:0001401677000011.jpg]
(シ)A-6ページ
[図:0001401677000012.jpg]
イ 認定事項
(ア)A-3~A~4ページ(摘示ア(コ)~(サ))における各記号及びその名称を参酌すると、A-2ページ(摘示ア(ケ))の下部には、「動脈」から「ダイアライザー」に向かい、「ダイアライザー」に接続され、「ダイアライザー」から「静脈」に向かう血液回路が記載されている。
(イ)A-3~A~4ページ(摘示ア(コ)~(サ))における各記号及びその名称を参酌すると、A-2ページ(摘示ア(ケ))の上部には、「給液」から「ダイアライザー」に向かい、「ダイアライザー」に接続され、「ダイアライザー」から「排液」に向かう透析液回路が記載されている。
(ウ)上記(ア)~(イ)を踏まえると、A-2ページ(摘示ア(ケ))の「ダイアライザー」は血液透析を行うものである。
(エ)上記(ア)~(イ)、及びA-3~A~4ページ(摘示ア(コ)~(サ))における各記号及びその名称を踏まえると、A-2ページ(摘示ア(ケ))には、V30及びV31の間において透析液回路の透析液供給通路の途中から分岐して、SFP、すなわち補液ポンプを経て血液回路に接続される補液通路が記載されている。
(オ)6-34ページ(摘示ア(エ))における
「6.17.1補液の設定
次の手順で、基本画面から手動で目標補液量や補液時間等を設定します。」、
「1.目標補液量、補液速度、いずれかのスイッチを押します。
>補液設定画面が表示されます。
・補液設定画面内の「優先」スイッチにより、目標補液量、補液速度、補液時間のどの項目を優先するか変更できます。
・補液設定時に優先される初期設定は、「付加治療-補液」で変更できます。
2.目標補液量の数値を押して選択し、▲▼スイッチ、またはテンキーで目標補液量を設定します。
・目標補液量の背景が水色になります。
・「補液時間」が優先(初期値)になり補液速度が自動で設定されます。
3.補液時間の数値を押して選択し、▲▼スイッチ、またはテンキーで補液時間を設定します。
・補液時間の背景が水色になります。
・「目標補液量」が優先(初期値)になり、補液速度が自動で設定されます。」
との記載、6-35ページ(摘示ア(オ))における
「4.必要に応じ、補液速度の数値を押して選択し、▲▼スイッチ、またはテンキーで補液速度を設定します。
・補液速度の背景が水色になります。
・補液時間と目標補液量により、自動で設定された補液速度を変更する場合に行います。
・補液速度を設定すると、補液時間が自動で変更されます。(目標量優先)
5.目標補液量、補液時間、補液速度の設定を確認し、確定スイッチを押します。
>設定が有効になります。」
との記載、及び表示画面の図示内容、11-71ページ(摘示ア(ク))における
「OHDF実行時
補液量、目標補液量、補液速度を表示します。」、
「スイッチ名称 | 内容」
「2|補液設定|補液量、目標補液量、補液速度を表示します。
押すと補液設定画面を表示します。」
「●補液設定画面(スイッチ2を押した時)」
「スイッチ名称 | 内容」
「1 | 目標補液量[L] | 目標補液量の設定」
「2 | 補液速度[mL/min] | 補液速度の設定」
「4 | 補液時間 | 補液時間を設定」
との記載、及び表示画面の図示内容、A-6ページ(摘示ア(シ))「A.3 装置設定一覧表」「A.3.1付加治療」「●設定」の「モード | 内容 | 初期値 | STEP | 範囲下限 | 範囲上限 | 特殊設定」の表における
「補液 | 目標補液量[L] | 12.00 | 0.01 | 0.00 | 199.90 | -」
「補液 | 補液時間[時間:分] | 4:00 | 1 | 0:00 | 7:00 | -」
「補液 | 補液速度設定上限値[mL/分] | 300 | 1 | 30 | 500 | -」
との記載、並びに10-14ページ(摘示ア(カ))における「CPU」に係る記載を踏まえると、
OHDF終了までの治療時間、 OHDF終了までに補充すべき目標補液量、及び、 所定時間当たりの補液量である補液速度を、OHDFの設定項目として、その設定値が設定される制御手段が記載されている。
(カ)表紙(摘示ア(ア))における
「透析用監視装置
NCV-2
取扱説明書
操作マニュアル」
との記載、及び、上記(ア)~(オ)を踏まえると、NCV-2は、上記ダイアライザー、上記血液回路、上記透析液回路、上記補液通路、上記補液ポンプ、及び、上記制御手段を備えている血液透析装置である。
(キ)1-5ページ(摘示ア(イ))及び1-7ページ(摘示ア(ウ))における「タッチパネル」に係る記載、6-34ページ(摘示ア(エ))における
「・補液設定画面内の「優先」スイッチにより、目標補液量、補液速度、補液時間のどの項目を優先するか変更できます。
・補液設定時に優先される初期設定は、「付加治療-補液」で変更できます。」
「3.補液時間の数値を押して選択し、▲▼スイッチ、またはテンキーで補液時間を設定します。
・補液時間の背景が水色になります。
・「目標補液量」が優先(初期値)になり、補液速度が自動で設定されます。」
との記載、及び表示画面の図示内容、11-5ページ(摘示ア(キ))「●補液(オプション)」における
「運転後:補液時間・終了時間変更時の優先項目|運転後に補液時間を変更したときに設定を固定して計算する項目を設定します。」
との記載、A-6ページ(摘示ア(シ))「A.3 装置設定一覧表」「A.3.1付加治療」「●設定」の「モード | 内容 | 初期値 | STEP | 範囲下限 | 範囲上限 | 特殊設定」の表における「補液 | 運転後:補液時間・終了時刻変更時の優先項目 | 目標補液量 | - | - | - | 目標補液量、補液速度」との記載を踏まえると、
「優先」スイッチにより、目標補液量または補液速度のうちいずれか一方の項目が、優先項目として選択可能な状態でタッチパネル上に表示されるところ、目標補液量または補液速度のうち優先項目に選択された項目については設定値が固定され、目標補液量または補液速度のうち優先項目に設定しなかった他方の項目については、変更された補液時間の数値に基づいて、当該他方の項目の設定値が自動で設定されることが記載されている。
(ク)6-34ページ(摘示ア(エ))における
「・補液設定画面内の「優先」スイッチにより、目標補液量、補液速度、補液時間のどの項目を優先するか変更できます。
・補液設定時に優先される初期設定は、「付加治療-補液」で変更できます。」、
「3.補液時間の数値を押して選択し、▲▼スイッチ、またはテンキーで補液時間を設定します。
・補液時間の背景が水色になります。
・「目標補液量」が優先(初期値)になり、補液速度が自動で設定されます。」
との記載、及び表示画面の図示内容、11-5ページ(摘示ア(キ))「●補液(オプション)」における
「運転後:補液時間・終了時間変更時の優先項目|運転後に補液時間を変更したときに設定を固定して計算する項目を設定します。」
との記載、A-6ページ(摘示ア(シ))「A.3 装置設定一覧表」「A.3.1付加治療」「●設定」の「モード | 内容 | 初期値 | STEP | 範囲下限 | 範囲上限 | 特殊設定」の表における「補液 | 運転後:補液時間・終了時刻変更時の優先項目 | 目標補液量 | - | - | - | 目標補液量、補液速度」との記載を踏まえると、
「優先」スイッチにより優先項目として目標補液量を選択し、さらに、運転後、治療時間を変更した場合には、目標補液量は固定され、変更された治療時間に基づいて補液速度は自動で設定され、一方、「優先」スイッチにより優先項目として補液速度を選択し、さらに、運転後、治療時間を変更した場合には、補液速度は固定され、変更された治療時間に基づいて目標補液量は自動で設定されることが記載されている。
(ケ)A-6ページ(摘示ア(シ))「A.3 装置設定一覧表」「A.3.1付加治療」「●設定」の「モード | 内容 | 初期値 | STEP | 範囲下限 | 範囲上限 | 特殊設定」の表における
「補液 | 目標補液量[L] | 12.00 | 0.01 | 0.00 | 199.90 | -」
「補液 | 補液時間[時間:分] | 4:00 | 1 | 0:00 | 7:00 | -」
「補液 | 補液速度設定上限値[mL/分] | 300 | 1 | 30 | 500 | -」
との記載を踏まえると、目標補液量及び補液速度設定上限値には、範囲下限及び範囲上限がそれぞれ設定されている。
ウ 引用発明
上記アの記載事項、及び、上記イの認定事項から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「血液透析を行うダイアライザーと、ダイアライザーに接続される血液回路と、ダイアライザーに接続される透析液回路と、透析液回路の透析液供給通路の途中から分岐して補液ポンプを経て血液回路に接続される補液通路と、前記補液ポンプと、OHDF終了までの治療時間、OHDF終了までに補充すべき目標補液量及び、所定時間当たりの補液量である補液速度を、OHDFの設定項目として、その設定値が設定される制御手段とを備えた血液透析装置であるNCV-2において、
目標補液量または補液速度のうちいずれか一方の項目が、優先項目として選択可能な状態でタッチパネル上に表示されるところ、目標補液量または補液速度のうち優先項目に選択された項目については設定値が固定され、目標補液量または補液速度のうち優先項目に設定しなかった他方の項目については、変更された補液時間の数値に基づいて、当該他方の項目の設定値が自動で設定され、
「優先」スイッチにより優先項目として目標補液量を選択し、さらに、運転後、治療時間を変更した場合には、目標補液量は固定され、変更された治療時間に基づいて補液速度は自動で設定され、一方、「優先」スイッチにより優先項目として補液速度を選択し、さらに、運転後、治療時間を変更した場合には、補液速度は固定され、変更された治療時間に基づいて目標補液量は自動で設定されるようになっている、NCV-2であって、
目標補液量及び補液速度設定上限値には、範囲下限及び範囲上限がそれぞれ設定されている、NCV-2。」
3 本件特許発明1について
ア 対比・判断
本件特許発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「血液透析を行うダイアライザー」は、本件特許発明1の「血液透析を行う透析器」に相当する。
(イ)引用発明の「ダイアライザーに接続される血液回路」は、本件特許発明1の「透析器に接続されるとともに血液を流通させる血液回路」に相当する。
(ウ)引用発明の「ダイアライザーに接続される透析液回路」は、本件特許発明1の「透析器に接続されて透析液を流通させる透析液回路」に相当する。
(エ)引用発明の「透析液回路の透析液供給通路の途中から分岐して補液ポンプを経て血液回路に接続される補液通路」は、本件特許発明1の「透析液回路の透析液供給通路と血液回路との間に設けられた補液通路」に相当する。
(オ)引用発明の「補液ポンプ」は、「透析液回路の透析液供給通路の途中から分岐」して「血液回路に接続される補液通路」に設けられるものであるから、本件特許発明1の「補液通路に設けられるとともに透析液供給通路の透析液を血液回路に供給する補液ポンプ」に相当する。
(カ)引用発明の「OHDF終了までの治療時間、OHDF終了までに補充すべき目標補液量及び、所定時間当たりの補液量である補液速度を、OHDFの設定項目として、その設定値が設定される制御手段」は、本件特許発明1の「治療終了までの治療時間、治療終了までに補充すべき目標補液量および所定時間当たりの補液量である補液速度を透析治療のための設定項目として、その設定値が設定される制御手段」に相当する。
(キ)引用発明の「血液透析装置であるNCV-2」は、本件特許発明1の「血液透析装置」に相当する。
(ク)引用発明の「目標補液量または補液速度のうちいずれか一方の項目が、優先項目として選択可能な状態でタッチパネル上に表示されるところ、目標補液量または補液速度のうち優先項目に選択された項目については設定値が固定され、目標補液量または補液速度のうち優先項目に設定しなかった他方の項目については、変更された補液時間の数値に基づいて、当該他方の項目の設定値が自動で設定され」ることは、本件特許発明1の「目標補液量または補液速度のうちいずれか一方の設定項目を選択可能な状態でタッチパネル上に表示し、選択された設定項目を優先設定項目として記憶する優先設定項目選択手段と、変更された設定項目の設定値に基づいて関連する他の設定項目の設定値を更新する設定値更新手段とを備え」ることに相当する。
(ケ)引用発明の「「優先」スイッチにより優先項目として目標補液量を選択し、さらに、運転後、治療時間を変更した場合には、目標補液量は固定され、変更された治療時間に基づいて補液速度は自動で設定され」ることは、本件特許発明1の「優先設定項目選択手段において目標補液量を選択し、さらに、治療中に上記治療時間を変更した場合、上記設定値更新手段は上記目標補液量を維持したまま、変更された治療時間に基づいて上記補液速度を更新」することに相当する。
(コ)引用発明の「「優先」スイッチにより優先項目として補液速度を選択し、さらに、運転後、治療時間を変更した場合には、補液速度は固定され、変更された治療時間に基づいて目標補液量は自動で設定される」ことは、本件特許発明1の「優先設定項目選択手段において補液速度を選択し、さらに、治療中に上記治療時間を変更した場合、上記設定値更新手段は上記補液速度を維持したまま、変更された治療時間に基づいて上記目標補液量を更新する」ことに相当する。
してみると、本件特許発明1と引用発明との間に、相違点はないから、本件特許発明1は引用発明である。
イ 小括
以上のとおり、本件特許発明1は引用発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
また、仮に、本件特許発明1と引用発明との間に相違点を見出すことができるとしても、本件特許発明1は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
4 本件特許発明2について
ア 対比・判断
本件特許発明2と引用発明とを対比する。
引用発明において「目標補液量または補液速度のうちいずれか一方の項目が、優先項目として選択可能な状態でタッチパネル上に表示されるところ、目標補液量または補液速度のうち優先項目に選択された項目については設定値が固定され、目標補液量または補液速度のうち優先項目に設定しなかった他方の項目については、変更された補液時間の数値に基づいて、当該他方の項目の設定値が自動で設定され、「優先」スイッチにより優先項目として目標補液量を選択し、さらに、運転後、治療時間を変更した場合には、目標補液量は固定され、変更された治療時間に基づいて補液速度は自動で設定され、一方、「優先」スイッチにより優先項目として補液速度を選択し、さらに、運転後、治療時間を変更した場合には、補液速度は固定され、変更された治療時間に基づいて目標補液量は自動で設定されるようになっている」ことを踏まえれば、引用発明の「目標補液量及び補液速度設定上限値には、範囲下限及び範囲上限がそれぞれ設定されている」ことは、本件特許発明2の「設定値更新手段には、上記治療時間を変更した場合に更新される設定項目の上限値および下限値が設定されていること」に相当する。
してみると、本件特許発明2と引用発明との間に、相違点はないから、本件特許発明2は引用発明である。
イ 小括
以上のとおり、本件特許発明2は引用発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
また、仮に、本件特許発明2と引用発明との間に相違点を見出すことができるとしても、本件特許発明2は、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
第5 むすび
以上のとおり、本件特許発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないか、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件請求項1~2に係る特許は、特許法第29条第1項第3号または特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701251