特許異議申立
2024-700023
熱発生方法および装置
- 審判番号
- 2024-700023
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-020829
- 登録番号
- 7309376
- 請求日
- 2024年01月15日
- 審決日
- 2024年12月10日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】キヤノンアネルバ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人大塚国際特許事務所
- 【権利者】キヤノン株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人大塚国際特許事務所
- 【異議申立人】高橋 恒
- 審判長/審判官
- 審判長 間中 耕治
- 審判官 水野 治彦
- 審判官 槙原 進
- 分類
- P1651.537-YAA(C23C) / P1651.536-YAA(C23C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第150条の5第4項、特許法第36条、特許法第113条第4号、特許法第36条第6項、特許法第2条第3項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7309376号発明「熱発生方法および装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7309376号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし19〕、20について訂正することを認める。
特許第7309376号の請求項1ないし20に係る特許を維持する。
理由
理 由
1.手続の経緯
特許第7309376号の請求項1ないし20の特許に係る出願は、平成29年11月6日を国際出願日とする特願2018-562143号の一部を平成31年2月7日に新たな特許出願としたものであって、令和5年7月7日にその特許権の設定登録がされ、令和5年7月18日に特許掲載公報が発行された。
その後、平成6年1月15日に特許異議申立人高橋恒(以下、「特許異議申立人」という。)による請求項1ないし20に係る特許についての特許異議の申し立てがされ、令和6年2月29日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和6年5月1日に意見書の提出及び訂正の請求があり、これに対し、令和6年8月23日付けで訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である令和6年9月27日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに令和6年10月18日に手続補正書が提出された。
なお、令和6年5月1日の訂正の請求について、特許異議申立人に対して期間を指定して意見書を提出する機会を設けたが、特許異議申立人からの意見書の提出はなかった。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
令和6年10月18日付けの手続補正書により補正された令和6年9月27日付けの手続補正書によって補正された、令和6年5月1日の訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下の訂正事項1ないし訂正事項6のとおりである。
ア 一群の請求項1ないし19について
(ア) 訂正事項1
請求項1に係る「を有し、」を「を有し、前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され、」に訂正する。請求項1を引用する請求項11ないし請求項14及び請求項19も同様に訂正する。
(イ) 訂正事項2
請求項2に係る「を有し、」を「を有し、前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され、」に訂正する。請求項2を引用する請求項3、請求項11ないし請求項14及び請求項19も同様に訂正する。
(ウ) 訂正事項3
請求項4に係る「を有し、」を「を有し、前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され、」に訂正する。請求項4を引用する請求項5、請求項11ないし請求項14及び請求項19も同様に訂正する。
(エ) 訂正事項4
請求項6に係る「を有し、」を「を有し、前記固定部材および前記被覆膜は、融点が1400℃以上の材料で構成され、」に訂正する。請求項6を引用する請求項7ないし請求項14及び請求項19も同様に訂正する。
(オ) 訂正事項5
請求項15に係る「が得られ、」を「が得られ、前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され、」に訂正する。請求項15を引用する請求項16ないし請求項19も同様に訂正する。
イ 請求項20について
(ア) 訂正事項6
請求項20に係る「を有し、」を「を有し、前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され、」に訂正する。
(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項1ないし訂正事項6について、訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否を検討する。
ア 訂正事項1ないし訂正事項5(一群の請求項1ないし19)について
(ア)一群の請求項について
訂正前の請求項1、請求項11ないし請求項14及び請求項19において、請求項11ないし請求項14及び請求項19は、請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、一群の請求項といえる。
訂正前の請求項2、請求項3、請求項11ないし請求項14及び請求項19において、請求項3、請求項11ないし請求項14及び請求項19は、請求項2を引用するものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものであるから、一群の請求項といえる。
訂正前の請求項4、請求項5、請求項11ないし請求項14及び請求項19において、請求項5、請求項11ないし請求項14及び請求項19は、請求項4を引用するものであって、訂正事項3によって記載が訂正される請求項4に連動して訂正されるものであるから、一群の請求項といえる。
訂正前の請求項6ないし請求項14及び請求項19において、請求項7ないし請求項14及び請求項19は、請求項6を引用するものであって、訂正事項4によって記載が訂正される請求項6に連動して訂正されるものであるから、一群の請求項といえる。
訂正前の請求項15ないし請求項19において、請求項16ないし請求項19は、請求項15を引用するものであって、訂正事項5によって記載が訂正される請求項15に連動して訂正されるものであるから、一群の請求項といえる。
そして、訂正前の請求項1、請求項11ないし請求項14及び請求項19からなる一群の請求項、訂正前の請求項2、請求項3、請求項11ないし請求項14及び請求項19からなる一群の請求項、訂正前の請求項4、請求項5、請求項11ないし請求項14及び請求項19からなる一群の請求項、訂正前の請求項6ないし請求項14及び請求項19からなる一群の請求項及び訂正前の請求項15ないし請求項19からなる一群の請求項は、いずれも請求項19を含むものであるから、共通する請求項19を有するこれら一群の請求項が組み合わされることにより、訂正前の請求項1ないし19は一群の請求項になるものといえる。
したがって、訂正前の請求項1ないし19に対応する訂正後の請求項[1ないし19]は、特許法第150条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(イ)訂正事項1について
あ 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「固定部材」との発明特定事項について、「前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され」るという事項を付加することにより、「固定部材」の材料の融点を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とした訂正と認める。
い 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0012】に「固定部材10は、例えば、下地2と、下地2の上に配置された膜4とを含みうる。」と記載され、段落【0014】に「膜4は、高融点材料、例えば、融点が1400℃以上の材料で構成されうる。」と記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合すると認める。
う 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、「固定部材」が「融点が1400℃以上の材料で構成され」ることに限定するものであって、発明のカテゴリー、対象を変更するものに該当しないことから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合すると認める。
(ウ)訂正事項2について
あ 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2の「固定部材」との発明特定事項について、「前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され」るという事項を付加することにより、「固定部材」の材料の融点を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とした訂正と認める。
い 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項2は、願書に添付した明細書の段落【0012】に「固定部材10は、例えば、下地2と、下地2の上に配置された膜4とを含みうる。」と記載され、段落【0014】に「膜4は、高融点材料、例えば、融点が1400℃以上の材料で構成されうる。」と記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合すると認める。
う 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、「固定部材」が「融点が1400℃以上の材料で構成され」ることに限定するものであって、発明のカテゴリー、対象を変更するものに該当しないことから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合すると認める。
(エ)訂正事項3について
あ 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項4の「固定部材」との発明特定事項について、「前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され」るという事項を付加することにより、「固定部材」の材料の融点を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とした訂正と認める。
い 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項3は、願書に添付した明細書の段落【0012】に「固定部材10は、例えば、下地2と、下地2の上に配置された膜4とを含みうる。」と記載され、段落【0014】に「膜4は、高融点材料、例えば、融点が1400℃以上の材料で構成されうる。」と記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合すると認める。
う 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、「固定部材」が「融点が1400℃以上の材料で構成され」ることに限定するものであって、発明のカテゴリー、対象を変更するものに該当しないことから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合すると認める。
(オ)訂正事項4について
あ 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項6の「固定部材」との発明特定事項及び「被覆膜」との発明特定事項について、「前記固定部材および前記被覆膜は、融点が1400℃以上の材料で構成され」るという事項を付加することにより、「固定部材」及び「被覆膜」の材料の融点を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とした訂正と認める。
い 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項4は、願書に添付した明細書の段落【0012】に「固定部材10は、例えば、下地2と、下地2の上に配置された膜4とを含みうる。」と記載され、段落【0014】に「膜4は、高融点材料、例えば、融点が1400℃以上の材料で構成されうる。」と記載され、段落【0015】に「下地2は、例えば、1400℃以上の融点を有する材料で構成されることが好ましい。」と記載され、段落【0037】に「被覆膜8は、例えば、融点が1400℃以上の材料で構成されうる。」と記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合すると認める。
う 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、「固定部材」及び「被覆膜」が「融点が1400℃以上の材料で構成され」ることに限定するものであって、発明のカテゴリー、対象を変更するものに該当しないことから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合すると認める。
(カ)訂正事項5について
あ 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項15の「固定部材」との発明特定事項について、「前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され」るという事項を付加することにより、「固定部材」の材料の融点を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とした訂正と認める。
い 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項5は、願書に添付した明細書の段落【0012】に「固定部材10は、例えば、下地2と、下地2の上に配置された膜4とを含みうる。」と記載され、段落【0014】に「膜4は、高融点材料、例えば、融点が1400℃以上の材料で構成されうる。」と記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合すると認める。
う 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、「固定部材」が「融点が1400℃以上の材料で構成され」ることに限定するものであって、発明のカテゴリー、対象を変更するものに該当しないことから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合すると認める。
イ 訂正事項6(請求項20)について
(ア)訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項20の「固定部材」との発明特定事項について、「前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され」るという事項を付加することにより、「固定部材」の材料の融点を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とした訂正と認める。
(イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項6は、願書に添付した明細書の段落【0012】に「固定部材10は、例えば、下地2と、下地2の上に配置された膜4とを含みうる。」と記載され、段落【0014】に「膜4は、高融点材料、例えば、融点が1400℃以上の材料で構成されうる。」と記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合すると認める。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6は、「固定部材」が「融点が1400℃以上の材料で構成され」ることに限定するものであって、発明のカテゴリー、対象を変更するものに該当しないことから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合すると認める。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項[1ないし19]、20について訂正することを認める。
3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし請求項20に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明20」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし請求項20に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
構造体に水素を吸蔵させ熱を発生させる熱発生方法であって、
前記構造体は、各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置されて構成され、前記固定部材が複数の微結晶を含み、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、前記固定部材が酸化物および窒化物の少なくとも1つを含む、という構造を有し、前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され、
前記複数の粒子の凝集を前記構造によって抑制しながら、前記複数の粒子に水素を吸蔵させることによって前記複数の粒子を発熱させる、
ことを特徴とする熱発生方法。
【請求項2】
構造体に水素を吸蔵させ熱を発生させる熱発生方法であって、
前記構造体は、各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置されて構成され、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、前記固定部材が複数の微結晶を含み、前記複数の微結晶の粒界に不活性ガスが存在する、という構造を有し、前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され、
前記複数の粒子の凝集を前記構造によって抑制しながら、前記複数の粒子に水素を吸蔵させることによって前記複数の粒子を発熱させる、
ことを特徴とする熱発生方法。
【請求項3】
前記固定部材における前記不活性ガスの含有率は、0.5原子%以上である、
ことを特徴とする請求項2に記載の熱発生方法。
【請求項4】
構造体に水素を吸蔵させ熱を発生させる熱発生方法であって、
前記構造体は、各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置されて構成され、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、前記固定部材は、下地と、前記下地の上に配置された膜とを含み、前記膜は、複数の微結晶を含み、前記複数の粒子は、前記下地の表面に接触するように前記表面に沿って2次元状に配置された粒子を含み、前記2次元状に配置された粒子は、前記膜を介して相互に離隔して配置され、かつ、前記膜によって覆われている、という構造を有し、前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され、
前記複数の粒子の凝集を前記構造によって抑制しながら、前記複数の粒子に水素を吸蔵させることによって前記複数の粒子を発熱させる、
ことを特徴とする熱発生方法。
【請求項5】
前記複数の粒子の各々は、前記膜の前記複数の微結晶の少なくとも1つに接している、ことを特徴とする請求項4に記載の熱発生方法。
【請求項6】
構造体に水素を吸蔵させ熱を発生させる熱発生方法であって、
前記構造体は、各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置されて構成され、前記固定部材を覆うように配置された被覆膜を有し、前記固定部材および前記被覆膜のそれぞれが複数の微結晶を含み、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれている、という構造を有し、前記固定部材および前記被覆膜は、融点が1400℃以上の材料で構成され、
前記複数の粒子の凝集を前記構造によって抑制しながら、前記複数の粒子に水素を吸蔵させることによって前記複数の粒子を発熱させる、
ことを特徴とする熱発生方法。
【請求項7】
前記被覆膜および前記固定部材のそれぞれは、不活性ガスを含み、
前記被覆膜の不活性ガスの含有率は、前記固定部材における不活性ガスの含有率よりも高い、
ことを特徴とする請求項6に記載の熱発生方法。
【請求項8】
前記被覆膜の原子量または分子量は、前記固定部材の原子量または分子量よりも大きいことを特徴とする請求項6または7に記載の熱発生方法。
【請求項9】
前記被覆膜の前記複数の微結晶の粒界に不活性ガスが存在する、
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の熱発生方法。
【請求項10】
前記被覆膜における前記不活性ガスの含有率は、0.5原子%以上である、
ことを特徴とする請求項9に記載の熱発生方法。
【請求項11】
前記複数の粒子の各々が1000nm以下の寸法を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の熱発生方法。
【請求項12】
前記複数の粒子の各々が100nm以下の寸法を有する、
ことを特徴とする請求項11に記載の熱発生方法。
【請求項13】
前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の熱発生方法。
【請求項14】
前記複数の粒子において、隣接する粒子の間の距離が、1nm以上かつ10nm以下である、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の熱発生方法。
【請求項15】
各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子を互いに離隔するように形成する第1工程と、
前記複数の粒子を覆うように、複数の微結晶を含む膜を形成する第2工程と、
前記複数の粒子の前記水素吸蔵金属元素に水素を吸蔵させ熱を発生させる第3工程と、を含み、
前記第2工程では、前記複数の粒子が前記膜を含む固定部材によって固定され、かつ、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれるように前記膜が形成された構造が得られ、前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され、
前記第3工程では、前記複数の粒子の凝集を前記構造によって抑制しながら、前記複数の粒子の前記水素吸蔵金属元素に水素を吸蔵させ熱を発生させる、
ことを特徴とする熱発生方法。
【請求項16】
前記第1工程では、スパッタリング法によって前記複数の粒子を形成し、前記第2工程では、スパッタリング法によって前記膜を形成する、
ことを特徴とする請求項15に記載の熱発生方法。
【請求項17】
前記第1工程および前記第2工程を含む処理を繰り返す、
ことを特徴とする請求項16に記載の熱発生方法。
【請求項18】
前記第1工程では、スパッタリング法によって前記複数の粒子を形成し、前記第2工程では、スパッタリング法によって前記膜を形成し、
下地をスパッタリング装置に搬入した後、前記下地を前記スパッタリング装置から搬出することなく、前記下地に対して前記処理を繰り返す、
ことを特徴とする請求項17に記載の熱発生方法。
【請求項19】
前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材に接触しつつ前記固定部材によって取り囲まれている、
ことを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の熱発生方法。
【請求項20】
構造体に水素を吸蔵させ熱を発生させる熱発生装置であって、
前記構造体は、各々が水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子が相互に離隔されるように、複数の微結晶を含む固定部材の中に配置されて構成され、前記複数の粒子の各々の表面の全体が前記固定部材によって取り囲まれ、前記固定部材が酸化物および窒化物の少なくとも1つを含む、という構造を有し、前記固定部材は、融点が1400℃以上の材料で構成され、
前記複数の粒子の凝集を前記構造によって抑制しながら、前記複数の粒子に水素を吸蔵させることによって前記複数の粒子を発熱させる、
ことを特徴とする熱発生装置。」
(2)取消理由通知の概要
訂正前の請求項1ないし請求項20に係る特許に対する取消理由通知の概要は、以下のとおりである。
(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号の規定に違反し、特許法第36条に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、その発明に係る特許は特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきである。
(3)当審の判断
ア 取消理由通知に記載した取消理由について
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。
以下、この規範に沿って検討する。
本件発明1、本件発明2、本件発明4、本件発明6、本件発明15及び本件発明20における「固定部材」は、いずれも「融点が1400℃以上の材料で構成」されるものである。また、本件発明6の「被覆膜」は、「融点が1400℃以上の材料で構成」されるものである。
そして、「融点が1400℃以上の材料」は、発明の詳細な説明の段落【0012】及び【0016】の記載からみて、「粒子3が水素を吸蔵する際に発生する熱によって近傍に位置する2以上の粒子3が凝集することを抑制する「高融点材料」であって、発明の詳細な説明の段落【0005】に記載される課題を解決するものである。
そうすると、「融点が1400℃以上の材料で構成」される「固定部材」を備えた本件発明1、本件発明2、本件発明4、本件発明15及び本件発明20は、いずれも本件特許の発明の詳細な説明において当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。さらに「融点が1400℃以上の材料で構成」される「固定部材」及び「被覆膜」を備えた本件発明6は、本件特許の発明の詳細な説明において当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
さらに、本件発明1、本件発明2、本件発明4、本件発明6、本件発明15のいずれかを直接又は間接的に引用する本件発明3、本件発明5、本件発明7ないし本件発明12、本件発明14及び本件発明16ないし本件発明19についても、本件特許の発明の詳細な説明に記載された事項の範囲内のものである。
したがって、本件発明1ないし本件発明20は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たす。
イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(ア)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項20に関し、特許異議申立書において、概略、次の主張をしている。
あ 本件特許明細書には、「熱発生」や「発熱」に関しては、水素吸蔵金属(合金)が水素を吸蔵するときに発熱する、という水素吸蔵金属(合金)の反応に関する説明が記載されているだけである。水素吸蔵金属(合金)を用いて、積極的に熱を発生する装置については何ら記載されていない。特に、請求項の「水素を吸蔵させ熱を発生させる」という記載は、積極的に熱を発生させることを意味するけれども、このような事項は本件特許明細書には開示されていない。
よって、請求項1-20に特定された事項は、本件特許明細書に実質的に記載されていない。また、本件特許出願時の技術水準に照らしても、本件特許明細書に記載された、水素吸蔵金属が水素を吸蔵するときに発熱するという反応に関する説明を、請求項1-20に係る発明の範囲まで、拡張ないし一般化できるとはいえない(以下、『主張「あ(あ)」』という。)。
また、具体的な熱発生方法及び熱発生装置の構成が不明であるため、請求項1-20に係る発明は、請求項の記載から発明の範囲を明確に把握することができず、不明確である(以下、『主張「あ(い)」』という。)。
い 本件特許明細書には、水素吸蔵金属元素を含む材料で構成された粒子を含む構造体が開示されており、粒子が水素を吸蔵して発熱する旨の記載はあるが、「熱発生方法」や「熱発生装置」の具体的な構成について何ら開示されていないから、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1-20に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない(以下、『主張「い」』という。)。
(イ)当審の判断
あ 本件特許明細書に記載される発明
はじめに、主張「あ(あ)」及び主張「い」の判断の前提となる本件特許明細書に記載される発明を検討する。
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、次のことが理解できる。
(あ) 「水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子の凝集を抑制」することにより、「水素の吸蔵効率が向上するとともに、水素を吸蔵するときの発熱量も増加」することを利用して、「構造体に水素を吸蔵させ熱を発生」させる「熱発生方法」及び「熱発生装置」であって、この「熱発生方法」及び「熱発生装置」は、複数粒子の凝縮が抑制されつつ熱が生成されること。
(い) 上記の構造体において、複数の粒子が配置される固定部材は、複数の微結晶を含み、酸化物及び窒化物の少なくとも1つを含み、そして融点が1400℃以上の材料である高融点材料で構成される膜を含み、複数の粒子は、膜を介して相互に離間して配置され、かつ膜によって覆われていること。
(う) 上記の構造体は、複数の粒子が相互に離隔されるように固定部材の中に配置された構造を有し、複数の粒子間の距離は、1nm以上10nm以下であること。
い 特許法第36条第6項1号の検討
本件発明1ないし本件発明20が、特許法第36条第6項第1号に適合することは、上記アで論じたとおりである。
そして、上記イ(イ)あ(あ)で説示したとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子の凝集を抑制」することにより、「水素の吸蔵効率が向上するとともに、水素を吸蔵するときの発熱量も増加」することを利用して、「構造体に水素を吸蔵させ熱を発生」させる、「熱発生方法」及び「熱発生装置」が記載されていることが理解できるのであって、さらに上記イ(イ)あ(い)で説示したとおり、「熱発生方法」及び「熱発生装置」で「熱を発生させる」構造体について、複数の粒子が配置される固定部材は、複数の微結晶を含み、酸化物及び窒化物の少なくとも1つを含み、そして融点が1400℃以上の材料である高融点材料で構成される膜を含み、複数の粒子は、膜を介して相互に離間して配置され、かつ膜によって覆われていることが理解できるのであるから、特許異議申立人の主張「あ(あ)」を採用することはできない。
う 特許法第36条第4項第1号の検討
本件特許明細書の記載が、特許法第36条第4項第1号の規定を満たすかを検討する。
特許法第36条第4項第1号は、特許による技術の独占が発明の詳細な説明をもって当該技術を公開したことへの代償として付与される仕組みを踏まえ、発明の詳細な説明の記載について実施可能要件を定めるものであって、その趣旨に鑑みると、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、特許を受けようとする発明の実施をすることができる程度の記載があることを要するものと解される。
ここで、方法の発明における発明の実施とは、その方法を使用する行為(特許法第2条第3項第2号)であって、物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為(同項第1号)を意味する
そこで、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が、本件発明1ないし本件発明20を実施できる程度に明確かつ十分であるかを検討する。
上記イ(イ)あ(あ)で説示したとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「水素吸蔵金属元素を含む複数の粒子の凝集を抑制」することにより、「水素の吸蔵効率が向上するとともに、水素を吸蔵するときの発熱量も増加」することを利用して、「構造体に水素を吸蔵させ熱を発生」させる、「熱発生方法」及び「熱発生装置」が記載されていることが理解できる。
さらに、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当該「熱発生方法」及び「熱発生装置」において熱を発生させる「構造体」の具体的な構成として、第1実施形態(段落【0011】ないし【0025】)、第2実施形態(段落【0026】ないし【0032】)及び第3実施形態(段落【0033】ないし【0041】)が記載されている。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明を見た当業者であれば、出願時の技術常識を参酌しつつ過度な試行錯誤を要することなく、「第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態に係る構造体」を備え、「当該構造体に水素を吸蔵させ熱を発生」させる「熱発生方法」を使用すること、「熱発生装置」を生産し又は使用することができるということができる。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許1ないし本件特許20に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものといえる。
特許異議申立人の主張「い」は、『本件特許明細書の発明を実施するための形態には、「熱発生方法」や「熱発生装置」の具体的な構成について何ら開示されていない』というものである。
しかしながら、上述したとおり、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「熱発生方法」及び「熱発生装置」の具体的な構成が記載されているから、特許異議申立人の主張「い」を採用することはできない。
え 特許法第36条第6項第2号の検討
本件発明1ないし本件発明20が、特許法第36条第6項第2号の要件を満たすかを検討する。
特許法第36条第6項第2号は。特許請求の範囲の記載について、特許を受けようとする発明が明確であることを求めるものである。
そして、本件発明1ないし本件発明20について記載する、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項20をみると、当該請求項1ないし請求項20の記載は、いずれも、特許を受けようとする発明が明確に記載されているといえる。
特許異議申立人の主張「あ(い)」は、具体的な熱発生方法及び熱発生装置の構成が不明であるため、請求項1-20に係る発明は、請求項の記載から発明の範囲を明確に把握することができず、不明確である、というものである。
しかしながら、発明の詳細な説明の記載に関わらず、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項20は、明確といえる。
また、特許法第36条第4項第1号の検討で述べたとおり、本件特許明細書には具体的な熱発生方法及び熱発生装置も記載されている。
したがって、特許異議申立人の主張「あ(い)」を採用することはできない。
ウ 小括
以上のとおり、特許異議申立書における特許異議申立人の主張には理由がない。
4.むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、訂正後の請求項1ないし請求項20に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の請求項1ないし請求項20に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700023