特許異議申立
2024-700021
未臨界炉心反応度バイアスを予想する方法
- 審判番号
- 2024-700021
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-532038
- 登録番号
- 7308009
- 請求日
- 2024年01月12日
- 審決日
- 2025年03月27日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
- 【権利者代理人】市川 英彦
- 【異議申立人】福井 義治
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 波多江 進
- 審判官 中塚 直樹
- 分類
- P1651.536-YAA(G21C) / P1651.537-YAA(G21C) / P1651.55 -YAA(G21C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第17条の2第3項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7308009号発明「未臨界炉心反応度バイアスを予想する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7308009号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
特許第7308009号の請求項1~2、4~10に係る特許を維持する。
特許第7308009号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
手続の経緯
1 本件特許についての手続きの経緯
特許第7308009号(請求項の数10。以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、外国語特許出願であって、その国際出願日、優先権主張の日、特許権の設定登録日及び特許掲載公報の発行日は、次のとおりである。
国際出願日 平成30年12月12日
優先権主張 平成29年12月12日
特許権の設定登録日 令和 5年 7月 5日
特許掲載公報の発行日 同月13日
2 本件特許異議の申立てについての手続きの経緯
令和6年 1月12日 :特許異議の申立て
(特許異議申立人:福井 義治 全請求項1~10に対して)
同年 3月29日付け:取消理由通知書
同年 7月 2日 :意見書の提出(特許権者)
同年 8月23日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年11月26日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年12月 6日付け:通知書(訂正請求があった旨の通知)
令和6年12月6日付けの通知書において、特許異議申立人に対して期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人は応答しなかった。
第2 本件訂正について
1 請求の趣旨
令和6年11月26日に提出された訂正請求書による訂正の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求めるものである。
以下、令和6年11月26日に提出された訂正請求書を、「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。
2 本件訂正前の特許請求の範囲の記載
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~10の記載(登録時における特許請求の範囲の記載)は、次のとおりである。
「【請求項1】
原子炉炉心の大域的炉心反応度バイアスを割り出し、当該原子炉炉心を臨界状態にする方法であって、
当該原子炉炉心に臨界状態をもたらすと予想されるパラメータの組み合わせを予測するステップと、
当該原子炉を第1の未臨界状態で運転するステップと、
当該原子炉の第1の未臨界状態での運転時に、中性子源領域検出器を用いて、中性子束の第1の測定値を求めるステップと、
当該原子炉の少なくとも1本の制御棒の位置を変えることによって、当該原子炉が第2の未臨界状態で運転されるように調整するステップと、
当該原子炉の第2の未臨界状態での運転時に、中性子源領域検出器を用いて、中性子束の第2の測定値を求めるステップと、
当該第1の未臨界状態での空間補正された中性子束の予測値と、当該第2の未臨界状態での空間補正された中性子束の予測値とを求めるステップと、
当該中性子束の各測定値を当該空間補正された中性子束の対応する予測値と比較することによって、大域的炉心反応度バイアスを割り出すステップと
を含み、
当該中性子束の各測定値には空間補正係数が適用されておらず、
当該方法はさらに、
当該予測されたパラメータの組み合わせを更新することを、当該大域的炉心反応度バイアスに従って当該パラメータの少なくとも1つを調整することによって行うステップと、
当該更新されたパラメータの組み合わせを用いて、当該原子炉炉心を臨界状態にするステップと
を含む方法。
【請求項2】
回帰解析を行って、前記未臨界中性子束の測定値と、前記空間補正された未臨界中性子束の対応する予測値との間の関係を割り出すことにより、前記大域的炉心反応度バイアスを割り出すステップをさらに含み、
前記割り出された大域的炉心反応度バイアスは、前記原子炉を臨界状態で運転することなしに前記原子炉炉心に関連する異常を検知するために使用される
請求項1の方法。
【請求項3】
前記中性子束データの測定値を前記空間補正された予測値と調和させるために必要な一様な解析的反応度調整量、すなわち系統的な大域的反応度バイアスを割り出すことによって、予測される炉心と実際の炉心との間の反応度バイアスを求めるステップをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項4】
前記第1の未臨界状態および前記第2の未臨界状態は、定常状態である、請求項1の方法。
【請求項5】
請求項1の方法を実施するようにプログラムされた処理装置。
【請求項6】
請求項1の方法を実施するための命令を含む機械可読媒体。
【請求項7】
前記予測されたパラメータの組み合わせを更新することは、前記原子炉を臨界状態で運転することなしに行われる、請求項1の方法。
【請求項8】
前記原子炉を前記第1の未臨界状態で運転することは、前記原子炉の竣工後に行われる、請求項1の方法。
【請求項9】
前記原子炉を前記第1の未臨界状態で運転することは、前記原子炉の燃料交換後に行われる、請求項1の方法。
【請求項10】
前記原子炉炉心に関連する異常は、原子炉炉心の異常な挙動である、請求項2の方法。」
3 本件訂正後の特許請求の範囲の記載
本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~10の記載は、次のとおりである。下線は訂正箇所である。
「【請求項1】
原子炉炉心の大域的炉心反応度バイアスを割り出し、当該原子炉炉心を臨界状態にする方法であって、
当該原子炉炉心に臨界状態をもたらすと予想されるパラメータの組み合わせを予測するステップと、
当該原子炉を第1の未臨界状態で運転するステップと、
当該原子炉の第1の未臨界状態での運転時に、中性子源領域検出器を用いて、中性子束の第1の測定値を求めるステップと、
当該原子炉の少なくとも1本の制御棒の位置を変えることによって、当該原子炉が第2の未臨界状態で運転されるように調整するステップと、
当該原子炉の第2の未臨界状態での運転時に、中性子源領域検出器を用いて、中性子束の第2の測定値を求めるステップと、
当該第1の未臨界状態での空間補正された中性子束の予測値と、当該第2の未臨界状態での空間補正された中性子束の予測値とを求めるステップと、
当該中性子束の各測定値を当該空間補正された中性子束の対応する予測値と比較することによって、当該中性子束の各測定値と当該空間補正された中性子束の対応する予測値との関係式
[図:0001424561000001.jpg]
で定義される直線当てはめにおいて切片をゼロにするために必要な反応度の調整量である、大域的炉心反応度バイアスを割り出すステップ(ここで、
[図:0001424561000002.jpg]
は状態点iにおける中性子束の測定値であり、
[図:0001424561000003.jpg]
は状態点iにおける中性子束の対応する予測値であり、bは切片であり、mは係数である)と
を含み、
当該中性子束の各測定値には空間補正係数が適用されておらず、
当該方法はさらに、
当該予測されたパラメータの組み合わせを更新することを、当該大域的炉心反応度バイアスに従って当該パラメータの少なくとも1つを調整することによって行うステップと、
当該更新されたパラメータの組み合わせを用いて、当該原子炉炉心を臨界状態にするステップと
を含む方法。
【請求項2】
回帰解析を行って、前記未臨界中性子束の測定値と、前記空間補正された未臨界中性子束の対応する予測値との間の関係を割り出すことにより、前記大域的炉心反応度バイアスを割り出すステップをさらに含み、
前記割り出された大域的炉心反応度バイアスは、前記原子炉を臨界状態で運転することなしに前記原子炉炉心に関連する異常を検知するために使用される
請求項1の方法。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記第1の未臨界状態および前記第2の未臨界状態は、定常状態である、請求項1の方法。
【請求項5】
請求項1の方法を実施するようにプログラムされた処理装置。
【請求項6】
請求項1の方法を実施するための命令を含む機械可読媒体。
【請求項7】
前記予測されたパラメータの組み合わせを更新することは、前記原子炉を臨界状態で運転することなしに行われる、請求項1の方法。
【請求項8】
前記原子炉を前記第1の未臨界状態で運転することは、前記原子炉の竣工後に行われる、請求項1の方法。
【請求項9】
前記原子炉を前記第1の未臨界状態で運転することは、前記原子炉の燃料交換後に行われる、請求項1の方法。
【請求項10】
前記原子炉炉心に関連する異常は、原子炉炉心の異常な挙動である、請求項2の方法。」
4 本件訂正の内容
本件訂正は、一群の請求項〔1~10〕について訂正するものであるところ、以下の(1)及び(2)に示す訂正事項1及び訂正事項2からなる。
(1) 訂正事項1(請求項1の記載に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項1における、
「当該中性子束の各測定値を当該空間補正された中性子束の対応する予測値と比較することによって、大域的炉心反応度バイアスを割り出すステップ」
の記載を、
「当該中性子束の各測定値を当該空間補正された中性子束の対応する予測値と比較することによって、当該中性子束の各測定値と当該空間補正された中性子束の対応する予測値との関係式
[図:0001424561000004.jpg]
で定義される直線当てはめにおいて切片をゼロにするために必要な反応度の調整量である、大域的炉心反応度バイアスを割り出すステップ(ここで、
[図:0001424561000005.jpg]
は状態点iにおける中性子束の測定値であり、
[図:0001424561000006.jpg]
は状態点iにおける中性子束の対応する予測値であり、bは切片であり、mは係数である)」
に訂正する。
(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、4~10も同様に訂正する。)
(2) 訂正事項2(請求項3の記載に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
5 本件訂正の適否についての当合議体の判断
(1) 訂正の目的
ア 訂正事項1
(ア) 訂正事項1の訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「当該中性子束の各測定値を当該空間補正された中性子束の対応する予測値と比較することによって、大域的炉心反応度バイアスを割り出すステップ」について、「大域的炉心反応度バイアス」を次のものに限定するものである。
「当該中性子束の各測定値と当該空間補正された中性子束の対応する予測値との関係式
[図:0001424561000007.jpg]
で定義される直線当てはめにおいて切片をゼロにするために必要な反応度の調整量」であって、「
[図:0001424561000008.jpg]
は状態点iにおける中性子束の測定値であり、
[図:0001424561000009.jpg]
は状態点iにおける中性子束の対応する予測値であり、bは切片であり、mは係数である」
(イ) したがって、訂正事項1の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
イ 訂正事項2
訂正事項2の訂正は、請求項3を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
(2) 新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更
ア 訂正事項1
訂正事項1の訂正は、明細書の段落【0026】~【0027】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてされたものである。
したがって、訂正事項1の訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、訂正事項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
イ 訂正事項2
訂正事項2の訂正は、請求項3を削除するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、訂正事項2の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。
(3) 独立特許要件
請求項1~2、4~10は、本件特許異議の申立てがされている請求項であるから、これらの請求項には、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。
(4) 本件訂正の適否についての当合議体の判断のまとめ
前記(1)~(3)において検討したとおり、訂正事項1~2の訂正は、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものに該当し同項の規定に適合するものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するから、本件訂正は適法なものである。
よって、前記結論のとおり、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
第3 取消理由の概要
本件特許について、令和6年8月23日付けで特許権者に通知した取消理由通知書(決定の予告)の取消理由(取消理由1(明確性要件違反)及び取消理由2(サポート要件違反))の要旨は、次のとおりである。
取消理由1(明確性要件違反)
請求項1~3には「大域的炉心反応度バイアス」という語句が記載されているところ、「炉心反応度バイアス」を定義する「炉心反応度状態」の定義が不明であり、その結果、前記請求項における「炉心反応度バイアス」という用語の意味は不明瞭であるから、請求項1~3及び請求項1又は2の記載を引用する請求項4~10に係る発明は、明確でない。
したがって、請求項1~10に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
取消理由2(サポート要件違反)
請求項1~10においては、明細書の発明の詳細な説明において課題解決のための手段として開示された「式(8)で定義される直線当てはめにおいてy切片(b)をゼロにするために必要な反応度の調整量を求めることにより、測定値と予測値の間の大域的反応度バイアスを推定する」という技術事項が特定されていないから、請求項1~10に係る発明は、課題を解決できるものとして発明の詳細な説明に記載された発明であるとは認められない。
したがって、請求項1~10に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第4 取消理由についての当合議体の判断
1 取消理由1について
ア 前記第2の4(1)のとおり、本件訂正により、請求項1の記載において、「大域的炉心反応度バイアス」が次のものであることが特定された。
「当該中性子束の各測定値と当該空間補正された中性子束の対応する予測値との関係式
[図:0001424561000010.jpg]
で定義される直線当てはめにおいて切片をゼロにするために必要な反応度の調整量」であって、「(ここで、
[図:0001424561000011.jpg]
は状態点iにおける中性子束の測定値であり、
[図:0001424561000012.jpg]
は状態点iにおける中性子束の対応する予測値であり、bは切片であり、mは係数である)」
イ したがって、訂正後の請求項1においては、「大域的炉心反応度バイアス」の意味は明確となった。
ウ よって、請求項1及び請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、4~10の記載は、特許法第36条6項2号の規定する要件を満たしている。
2 取消理由2について
ア 前記第2の4(1)のとおり、本件訂正により、請求項1の記載において、「大域的炉心反応度バイアス」が次のものであることが特定された。
「当該中性子束の各測定値と当該空間補正された中性子束の対応する予測値との関係式
[図:0001424561000013.jpg]
で定義される直線当てはめにおいて切片をゼロにするために必要な反応度の調整量」であって、「(ここで、
[図:0001424561000014.jpg]
は状態点iにおける中性子束の測定値であり、
[図:0001424561000015.jpg]
は状態点iにおける中性子束の対応する予測値であり、bは切片であり、mは係数である)」
イ このため、本件訂正後の請求項1においては、「大域的炉心反応度バイアスを割り出す」方法として、明細書の発明の詳細な説明において課題解決のための手段として開示された「式(8)で定義される直線当てはめにおいてy切片(b)をゼロにするために必要な反応度の調整量を求めることにより、測定値と予測値の間の大域的反応度バイアスを推定する」という技術事項(段落【0026】~【0027】参照)が特定されている。
ウ したがって、請求項1及び請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、4~10に係る発明は、課題を解決できるものとして発明の詳細な説明に記載された発明であるから、特許法第36条6項1号の規定する要件を満たしている。
第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由の概要
特許異議申立人は、次の(1)~(4)に示す申立理由1~申立理由4を主張している。
(1) 申立理由1(新規事項違反)
ア 申立理由1-1
「パラメータ」について、本件特許の外国語特許出願に係る翻訳文(以下、単に「外国語特許出願に係る翻訳文」という。)の段落【0021】、【0022】に、従来文献の説明として「測定パラメータ」の語句があるが、それ以外に「パラメータ」や「予想されるパラメータ」、「予測されたパラメータ」の記載は全く無いから、請求項1の記載における次の(ア)~(ウ)の技術事項は、外国語特許出願に係る翻訳文に記載されていないものであり、本件特許は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
(ア) 「当該原子炉炉心に臨界状態をもたらすと予想されるパラメータの組み合わせを予測するステップ」
(イ) 「当該予測されたパラメータの組み合わせを更新することを、当該大域的炉心反応度バイアスに従って当該パラメータの少なくとも1つを調整することによって行うステップ」
(ウ) 「当該更新されたパラメータの組み合わせを用いて、当該原子炉炉心を臨界状態にするステップ」
イ 申立理由1-2
請求項1の記載における次の技術事項は、外国語特許出願に係る翻訳文に対応する記載が無いから、本件特許は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
「当該原子炉を第1の未臨界状態で運転するステップと、
当該原子炉の第1の未臨界状態での運転時に、中性子源領域検出器を用いて、中性子束の第1の測定値を求めるステップと、
当該原子炉の少なくとも1本の制御棒の位置を変えることによって、当該原子炉が第2の未臨界状態で運転されるように調整するステップと、
当該原子炉の第2の未臨界状態での運転時に、中性子源領域検出器を用いて、中性子束の第2の測定値を求めるステップと、
当該第1の末臨界状態での空間補正された中性子束の予測値と、当該第2の末臨界状態での空間補正された中性子束の予測値とを求めるステップと、
当該中性子束の各測定値を当該空間補正された中性子束の対応する予測値と比較することによって、大域的炉心反応度バイアスを割り出すステップ」
ウ 申立理由1-3
請求項1の記載における次の技術事項は、外国語特許出願に係る翻訳文に対応する記載が無いから、本件特許は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
「当該中性子束の各測定値には空間補正係数が適用されておらず」
エ 申立理由1-4
請求項2の記載における次の技術事項は、外国語特許出願に係る翻訳文に対応する記載が無いから、本件特許は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
(ア) 「回帰解析を行って、前記未臨界中性子束の測定値と、前記空間補正された未臨界中性子束の対応する予測値との間の関係を割り出すことにより、前記大域的炉心反応度バイアスを割り出すステップをさらに含み、」
(イ) 「前記割り出された大域的炉心反応度バイアスは、前記原子炉を臨界状態で運転することなしに前記原子炉炉心に関連する異常を検知するために使用される」
オ 申立理由1-5
請求項4の記載における次の技術事項は、外国語特許出願に係る翻訳文に対応する記載が無いから、本件特許は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
「前記第1の未臨界状態および前記前記第2の未臨界状態は、定常状態である」
カ 申立理由1-6
請求項7の記載における次の技術事項は、外国語特許出願に係る翻訳文に対応する記載が無いから、本件特許は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
「前記予測されたパラメータの組み合わせを更新することは、前記原子炉を臨界状態で運転することなしに行われる」
(2) 申立理由2(明確性要件違反)
ア 申立理由2-1
請求項1には、「当該予測されたパラメータの組み合わせを更新することを、当該大域的炉心反応度バイアスに従って当該パラメータの少なくとも1つを調整することによって行うステップ」と記載されているが、「大域的炉心反応度バイアスに従って当該パラメータの少なくとも1つを調整する」とは、大域的炉心反応度バイアス(すなわち「予測された炉心反応度状態と、測定された実際の炉心反応度状態との差」)にどのように従って調整するのか当業者には不明である。
したがって、請求項1及び請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2-10は、特許を受けようとする発明が明確に記載されていないから、請求項1-10に係る特許は、特許法36条6項2号の要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
イ 申立理由2-2
請求項2には、「回帰解析を行って、前記末臨界中性子束の測定値と、前記空間補正された未臨界中性子束の対応する予測値上との間の関係を割り出すことにより、前記大域的炉心反応度バイアスを割り出すステップをさらに含み、」と記載されているが、測定値と予測値との間の関係を割り出すと何故に大域的炉心反応度バイアス(「予測された炉心反応度状態と、測定された実際の炉心反応度状態との差」)が割り出されるのか不明である。
したがって、請求項2及び請求項2の記載を引用する請求項10は、特許を受けようとする発明が明確に記載されていないから、請求項2及び10に係る特許は、特許法36条6項2号の要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3) 申立理由3(実施可能要件違反)
ア 申立理由3-1
明細書の段落【0009】には、「当該方法はさらに、中性子検出器応答の測定値と予測値との差を求め、この差を大域的炉心反応度バイアスとして記録する。」と記載されているが、明細書のどこにも測定値と予測値の差は具体的に記載されていない。
したがって、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、本件特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(当審注 特許異議申立人は請求項を特定していない。)
イ 申立理由3-2
明細書の段落【0018】には、「大域的炉心反応度バイアスは、予測された炉心反応度状態と、測定された実際の炉心反応度状態との差として定義される。」と記載されているが、明細書のどこにも、予測された炉心反応度状態と、測定された実際の炉心反応度状態との差が具体的に記載されていない。
したがって、明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、本件特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(当審注 特許異議申立人は請求項を特定していない。)
ウ 申立理由3-3
明細書の段落【0029】には、「本発明はまた、測定された中性子束データを予測値と調和させるために必要な一様な解析的反応度調整量(系統的な大域的反応度バイアス)を割り出すことによって、予測される炉心と実際の炉心との間の反応度バイアスを決定する方法を使用する。」と記載されているが、「調和させる」とはどのような操作を指すのか不明である。また、「一様な解析的反応度調整量」の意味が不明である。さらに、「系統的な大域的反応度バイアス」の意味が不明である。したがって、この段落に記載されている内容が不明である。
したがって、明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、本件特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(当審注 特許異議申立人は請求項を特定していない。)
(4) 申立理由4(サポート要件違反)
本件特許は、特許法36条6項1号の規定に違反している特許出願に対してされたものであるとだけ申し立てている。ただし、特許異議申立人は、具体的な理由・根拠を示していない。
2 申立理由の検討
(1) 申立理由1(新規事項違反)について
ア 申立理由1-1
(ア) 前記1(1)アの(ア)の事項について
a 外国語特許出願に係る翻訳文の段落【0017】には、次の記載がある。
「推定臨界状態(ECC)は、一般的に、原子炉起動のあらゆる展開の一部として必要とされる。ECCは、原子炉に臨界状態をもたらすと予想される制御棒および一次系の状態(例えば可溶性ホウ素濃度、冷却材温度)の組み合わせである。」
b 上記記載を参酌すると、請求項1における「当該原子炉炉心に臨界状態をもたらすと予想されるパラメータの組み合わせを予測するステップ」とは、上記記載における「推定臨界状態(ECC)(制御棒および一次系の状態(例えば可溶性ホウ素濃度、冷却材温度)の組み合わせ)」を予測するステップを指すものであることは明らかであり、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえる。
c したがって、前記1(1)アの(ア)の事項に係る補正は、外国語特許出願に係る翻訳文の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(イ) 前記1(1)アの(イ)及び(ウ)の事項について
a 外国語特許出願に係る翻訳文の段落【0019】には、次の技術事項が記載されている。
「原子炉の起動(すなわち原子炉を臨界状態にする)が意図される場合は、炉心に正の反応度を与える(例えば制御棒の引き抜きや一次系の可溶性ホウ素の希釈)。」
b 上記記載のように、原子炉制御において「制御棒および一次系の状態」を調整して原子炉を臨界状態にすることは技術常識である。
c そうすると、(i)「大域的炉心反応度バイアスの存在を特定」(外国語特許出願に係る翻訳文の【0018】参照)し、「その後、原子炉が臨界に達する前に、このバイアスを組み込んでECC予想を更新」すること、及び、(ii)当該更新された「ECC予想」を用いて「原子炉の起動(すなわち原子炉を臨界状態にすること)」を行うことが、それぞれ本件請求項1における(i)「当該予測されたパラメータの組み合わせを更新することを、当該大域的炉心反応度バイアスに従って当該パラメータの少なくとも1つを調整することによって行うステップ」、及び、(ii)「当該更新されたパラメータの組み合わせを用いて、当該原子炉炉心を臨界状態にするステップ」に対応することは明らかであり、外国語特許出願に係る翻訳文に記載されたものであるといえる。
d したがって、前記1(1)アの(イ)及び(ウ)の事項に係る補正は、外国語特許出願に係る翻訳文の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(ウ) 申立理由1-1についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立理由1-1によって請求項1~2、4~10に係る特許を取り消すことはできない。
イ 申立理由1-2
(ア) 外国語特許出願に係る翻訳文の段落【0009】には、次のとおり記載されている。なお、下線は、合議体が付したものである。
「本発明は、Keffが1未満の原子炉炉心の大域的炉心反応度バイアスを割り出す方法を提供する。当該方法は、炉心の1つ以上の状態について未臨界中性子束(すなわち中性子検出器の応答)を測定するステップを含む。当該方法はまた、炉心の1つ以上の状態における空間補正された未臨界中性子束予測値(すなわち中性子検出器応答予測値)を計算するステップを含む。当該方法はさらに、中性子検出器応答の測定値と予測値との差を求め、この差を大域的炉心反応度バイアスとして記録する。当該方法の一実施態様において、当該測定ステップは当該中性子源領域検出器からの出力を利用し、当該測定ステップ、当該計算ステップおよび当該差算出ステップは定常状態である複数の未臨界状態(すなわち状態点)の下で行うのが好ましい。定常状態である当該複数の未臨界状態は、それ以外の炉心状態を定常状態に保ちながら制御棒の位置を変化させることによって得るのが望ましい。」
(イ) 前記(ア)の記載を踏まえると、前記段落【0009】には、「大域的炉心反応度バイアスを割り出す方法」として、「制御棒の位置を変化させることによって得る」ものである「複数の未臨界状態」における「1つ以上の状態について」、「中性子検出器の応答」を測定するとともに、「空間補正された未臨界中性子束予測値」を計算し、測定値と予測値の差を求め、この差を大域的炉心反応度バイアスとして記録することが記載されている。
(ウ) そして、次の対応関係があることは明らかである。
a 請求項1における「第1の未臨界状態」及び「第2の未臨界状態」が前記段落【0009】「複数の未臨界状態」に対応すること。
b 請求項1における「中性子束の第1の測定値」及び「中性子束の第2の測定値」が前記段落【0009】における「1つ以上の状態について」の「中性子検出器の応答」の測定値に対応すること。
c 請求項1における「当該第1の末臨界状態での空間補正された中性子束の予測値」及び「当該第2の末臨界状態での空間補正された中性子束の予測値」が前記段落【0009】における「1つ以上の状態について」の「空間補正された未臨界中性子束予測値」に対応すること。
d 請求項1における「大域的炉心反応度バイアス」が前記段落【0009】における「大域的炉心反応度バイアス」に対応すること。
(エ) そうすると、前記段落【0009】には、本件請求項1における次の技術事項が記載されているといえ、当該事項に係る補正は、外国語特許出願に係る翻訳文の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
「当該原子炉を第1の未臨界状態で運転するステップと、
当該原子炉の第1の未臨界状態での運転時に、中性子源領域検出器を用いて、中性子束の第1の測定値を求めるステップと、
当該原子炉の少なくとも1本の制御棒の位置を変えることによって、当該原子炉が第2の未臨界状態で運転されるように調整するステップと、
当該原子炉の第2の未臨界状態での運転時に、中性子源領域検出器を用いて、中性子束の第2の測定値を求めるステップと、
当該第1の末臨界状態での空間補正された中性子束の予測値と、当該第2の末臨界状態での空間補正された中性子束の予測直とを求めるステップと、
当該中性子束の各測定値を当該空間補正された中性子束の対応する予測値と比較することによって、大域的炉心反応度バイアスを割り出すステップ」
(オ) したがって、申立理由1-2によって本件請求項1~2、4~10に係る特許を取り消すことはできない。
ウ 申立理由1-3
(ア) 外国語特許出願に係る翻訳文の段落【0021】~【0022】、【0027】には、次のとおり記載されている。
「【0021】
米国特許第6,801,593号に記載の方法は、測定パラメータとして、中性子検出器の測定値(MR/Mi)の関数である空間補正ICRR(ICRRSC)に依拠するが、この方法は、空間補正係数(SCF)という形で核設計に依存する。米国特許第6,801,593号は、SCFを静的空間因子の関数として定義し、固定的な中性子源がある場合とない場合につき静的な未臨界計算によって固有値を予測している。
【0022】
ICRRSCは設計予測にも一部依存するので、ICRRSCを主要な測定パラメータとして使用すると、本質的にマスキング効果を受け易く、設計予測の誤差や偏りが測定値にも影響を及ぼす可能性がある。したがって、原子炉物理測定の観点から、測定結果から予測成分を除去して潜在的なマスキング効果を排除することが望ましい。したがって、本発明はまず、ICRR測定値(予測成分のない「純粋な」測定値MR/Mi)とICRR予測値(測定成分のない「純粋な」予測値であるが、測定値MRとMiの間の、プラント構成または炉心状態の変化により生じたかもしれないあらゆる空間効果を勘案している)との間の線形関係を定義する。」
「【0027】
したがって本発明は、各状態点の状態において、未処理の未臨界中性子束測定値を対応する予測値と直接比較する。これは、結果を評価する前に測定データの補正を必要とする従来の発電炉物理試験の方法論とは異なる。本方法には、測定値と予測値を完全に分離することでマスキング効果を防止する(すなわち測定値と予測値の相互依存性を排除する)利点がある。」
(イ) 前記(ア)に摘記した記載から、次のa及びbに示すことを理解できる。
a 「測定パラメータとして、」「空間補正ICRR(ICRRSC)に依拠する」場合には、「空間補正係数(SCF)という形で核設計に依存する。」こと、及び「ICRRSCを主要な測定パラメータとして使用すると、本質的にマスキング効果を受け易く、設計予測の誤差や偏りが測定値にも影響を及ぼす可能性がある」ことが課題として示されること。
b 前記aの課題を解決するために、「ICRR測定値(予測成分のない「純粋な」測定値MR/Mi)」を用いること。
(ウ) したがって、外国語特許出願に係る翻訳文には、「当該中性子束の各測定値には空間補正係数が適用されておらず」との技術的事項が開示されており、当該事項に係る補正は、外国語特許出願に係る翻訳文の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(エ) よって、申立理由1-3によって本件請求項1~2、4~10に係る特許を取り消すことはできない。
エ 申立理由1-4
(ア) 外国語特許出願に係る翻訳文の段落【0026】~【0028】には、次のとおり記載されている。
「【0026】
(前略)
大域的バイアスを定量化するために、一揃いの中性子検出器測定値をそれに対応する予測値に当てはめる。それによって推定される真の回帰式は、式(8)で定義される。
【数8】
[図:0001424561000016.jpg]
理想的な状況では、中性子検出器応答の測定値と予測値の関係式のy切片はゼロである。回帰推定式が線形で、データ点が厳密に当てはめられると仮定すると、式(8)で定義される直線当てはめにおいてy切片(b)をゼロにするために必要な反応度の調整量を求めることにより、測定値と予測値の間の大域的反応度バイアスを推定することができる。y切片(b)がゼロの直線当てはめをもたらす、すべての状態点にわたる一様な反応度調整量(Pi値の変化によって与えられる)が、炉心反応度バイアスの推定値である。
【数9】
[図:0001424561000017.jpg]
【0027】
したがって本発明は、各状態点の状態において、未処理の未臨界中性子束測定値を対応する予測値と直接比較する。これは、結果を評価する前に測定データの補正を必要とする従来の発電炉物理試験の方法論とは異なる。本方法には、測定値と予測値を完全に分離することでマスキング効果を防止する(すなわち測定値と予測値の相互依存性を排除する)利点がある。
【0028】
本発明はさらに、プラントが未臨界状態のときおよびプラントが臨界に達する前に様々な炉心の異常を検知するために、中性子検出器の未処理の測定値と対応する予測値の回帰統計、およびそのような測定値対予測値の定量的判定基準を用いる。高温待機試験時に異常な炉心状態を検知でき、臨界へ最終的に接近する時にも異常な炉心状態を予想できることから、この方法は追加の安全対策を提供する利点がある。」
(イ)a 前記(ア)に摘記した記載中の「回帰推定式」を用いて「大域的反応度バイアスを推定する」処理は、請求項2の記載における「回帰解析を行って、前記未臨界中性子束の測定値と、前記空間補正された未臨界中性子束の対応する予測値との間の関係を割り出すことにより、前記大域的炉心反応度バイアスを割り出すステップ」に対応する。
b したがって、当該事項に係る補正は、外国語特許出願に係る翻訳文の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(ウ)a 前記(ア)に摘記した記載中の「プラントが未臨界状態のときおよびプラントが臨界に達する前に様々な炉心の異常を検知するために、中性子検出器の未処理の測定値と対応する予測値の回帰統計(中略)を用いる。」ことは、請求項2の記載における「前記割り出された大域的炉心反応度バイアスは、前記原子炉を臨界状態で運転することなしに前記原子炉炉心に関連する異常を検知するために使用される」に対応する。
b したがって、当該事項に係る補正は、外国語特許出願に係る翻訳文の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(エ) 以上のとおりであるから、申立理由1-4によって請求項2、10に係る特許を取り消すことはできない。
オ 申立理由1-5
(ア) 前記イで説示したように、「第1の未臨界状態」及び「第2の未臨界状態」は、外国語特許出願に係る翻訳文の段落【0009】に記載されている「複数の未臨界状態」に対応する。
(イ) また、外国語特許出願に係る翻訳文の段落【0009】には、「定常状態である当該複数の未臨界状態は、それ以外の炉心状態を定常状態に保ちながら制御棒の位置を変化させることによって得るのが望ましい。」と記載されている。
(ウ) したがって、「前記第1の未臨界状態および前記前記第2の未臨界状態は、定常状態である」ことは、外国語特許出願に係る翻訳文の記載から認識できる事項であって、当該事項に係る補正は、外国語特許出願に係る翻訳文の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
(エ) よって、申立理由1-5によって本件請求項4に係る特許を取り消すことはできない。
カ 申立理由1-6
前記アで説示したのと同様の理由により、「前記予測されたパラメータの組み合わせを更新することは、前記原子炉を臨界状態で運転することなしに行われる」ことは、外国語特許出願に係る翻訳文の記載から認識できることである。
したがって、申立理由1-6によって本件請求項7に係る特許を取り消すことはできない。
(2) 申立理由2(明確性要件違反)について
ア 申立理由2-1
技術常識を踏まえれば、「予測された炉心反応度状態と、測定された実際の炉心反応度状態との差」である「大域的炉心反応度バイアス」に従って「当該パラメータの少なくとも1つを調整する」とは、「大域的炉心反応度バイアス」が減少するように(予測値と測定値が近づくように)パラメータを調整することを指すものであると理解できる。
より具体的には、例えば前記(1)ア(イ)において説示したように、「大域的炉心反応度バイアスの存在を特定」し、「その後、原子炉が臨界に達する前に、このバイアスを組み込んでECC予想を更新」するために、予測値と測定値が近づくように「一次系の状態(例えば可溶性ホウ素濃度、冷却材温度)の組み合わせ」を変更することを指すものであり、請求項1の記載は明確である。
したがって、申立理由2-1によって請求項1~2、4~10に係る特許を取り消すことはできない。
イ 申立理由2-2
前記(1)エ(イ)において説示したように、請求項2の「回帰解析を行って、前記未臨界中性子束の測定値と、前記空間補正された未臨界中性子束の対応する予測値との間の関係を割り出すことにより、前記大域的炉心反応度バイアスを割り出すステップ」は、明細書の段落【0026】に記載されている「回帰推定式」を用いて「大域的反応度バイアスを推定する」処理に対応するものであって、その意味は明確である。
したがって、申立理由2-2によって請求項2及び10に係る特許を取り消すことはできない。
(3) 申立理由3(実施可能要件違反)について
ア 申立理由3-1
申立理由3-1は、「中性子検出器応答の測定値と予測値との差」が明細書の発明の詳細な説明中に具体的に記載されていないことを理由として、発明の詳細な説明は当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないと主張するものである。
しかしながら、当該事項は、前記(1)エ(ア)に摘記した【0026】のうちの次の記載に開示されているといえる。
「理想的な状況では、中性子検出器応答の測定値と予測値の関係式のy切片はゼロである。回帰推定式が線形で、データ点が厳密に当てはめられると仮定すると、式(8)で定義される直線当てはめにおいてy切片(b)をゼロにするために必要な反応度の調整量を求めることにより、測定値と予測値の間の大域的反応度バイアスを推定することができる。」
したがって、申立理由3-1によって請求項1~2、4~10に係る特許を取り消すことはできない。
イ 申立理由3-2
申立理由3-2は、「予測された炉心反応度状態と、測定された実際の炉心反応度状態との差」が明細書中に具体的に記載されていないことを理由として、発明の詳細な説明は当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないと主張するものである。
しかしながら、当該事項は、申立理由3-1で説示したのと同様の理由により、明細書の段落【0026】に開示されているといえる。
したがって、申立理由3-2によって請求項1~2、4~10に係る特許を取り消すことはできない。
ウ 申立理由3-3
申立理由3-3は、「本発明はまた、測定された中性子束データを予測値と調和させるために必要な一様な解析的反応度調整量(系統的な大域的反応度バイアス)を割り出すことによって、予測される炉心と実際の炉心との間の反応度バイアスを決定する方法を使用する。」の記載について、「調和させる」、「一様な解析的反応度調整量」及び「系統的な大域的反応度バイアス」の意味が不明であることを理由として、発明の詳細な説明は当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないと主張するものである。
しかしながら、「測定された中性子束データを予測値と調和させるために必要な一様な解析的反応度調整量(系統的な大域的反応度バイアス)を割り出す」とは、明細書の段落【0026】の「y切片(b)がゼロの直線当てはめをもたらす、すべての状態点にわたる一様な反応度調整量(Pi値の変化によって与えられる)」である「測定値と予測値の間の大域的反応度バイアスを推定する」ことを意味することは明らかであり、明細書の段落【0026】に開示されているといえる。
したがって、申立理由3-3によって請求項1~2、4~10に係る特許を取り消すことはできない。
(4) 申立理由4(サポート要件違反)について
前記1(4)に示したとおり、特許異議申立人は、本件特許は、特許法36条6項1号の規定に違反している特許出願に対してされたものであるとだけ申し立てているのであって、具体的な理由・根拠を示していない。
したがって、申立理由4によって請求項1~2、4~10に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
前記第4において検討したとおり、請求項1~2、4~10に係る特許は、取消理由通知書(決定の予告)において通知した取消理由により取り消すことはできない。
また、前記第5において検討したとおり、請求項1~2、4~10に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっても、取り消すことができない。
そして、他に請求項1~2、4~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項3に係る特許についての特許異議の申立てについては、請求項3は本件訂正により削除され、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700021