特許訂正審判
2024-390143
多孔質カーボン、触媒担体、及び多孔質カーボンの製造方法
- 審判番号
- 2024-390143
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2020-173872
- 登録番号
- 7484650
- 請求日
- 2024年11月29日
- 審決日
- 2025年04月15日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】トヨタ自動車 株式会社
- 【請求人代理人】青木 篤
- 【請求人代理人】三橋 真二
- 【請求人代理人】鶴田 準一
- 【請求人代理人】伊藤 公一
- 【請求人代理人】関根 宣夫
- 【請求人代理人】河野 努
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 尚之
- 審判官 深草 祐一
- 審判官 塩谷 領大
- 分類
- P141 .852-Y (C01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項、特許法第126条第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7484650号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第7484650号の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~8]について訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許7484650号(以下「本件特許」という。)は、令和 2年10月15日を出願日とする出願であって、令和 6年 5月 8日にその特許権の設定登録がなされ、令和 6年11月29日に本件訂正審判の請求がなされたものである。
第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の明細書、特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを認める、との審決を求めるものである。
第3 訂正の内容
本件訂正審判の請求(以下、この請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許法第126条第3項及び第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1~8を訂正の単位として訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。
1 訂正事項1
特許請求の範囲の【請求項1】に「全細孔容積VPTが、1.0~10.0m3/gであり、」と記載されているのを、「全細孔容積VPTが、1.0~10.0cm3/gであり、」に訂正する。(以下、「本件訂正事項1」という。)
2 訂正事項2
明細書の【0015】に「全細孔容積VPTが、1.0~10.0m3/gであり、」と記載されているのを、「全細孔容積VPTが、1.0~10.0cm3/gであり、」に訂正する。(以下、「本件訂正事項2」という。)
3 訂正事項3
明細書の【0035】に「本発明の多孔質カーボンは、BJH(Barrett,Joyner,Hallender)法で求めた全細孔容積VPTが、1.0~10.0m3/gである。」と記載されているのを、「本発明の多孔質カーボンは、BJH(Barrett,Joyner,Hallender)法で求めた全細孔容積VPTが、1.0~10.0cm3/gである。」に訂正する。(以下、「本件訂正事項3」という。)
4 訂正事項4
明細書の【0036】に「全細孔容積VPTが、1.0~10.0m3/gであれば、」と記載されているのを、「全細孔容積VPTが、1.0~10.0cm3/gであれば、」に訂正する。(以下、「本件訂正事項4」という。)
5 訂正事項5
明細書の【0037】に「全細孔容積VPTが、1.0m3/g未満の場合には、」と記載されているのを「全細孔容積VPTが、1.0cm3/g未満の場合には、」に訂正し、「一方で、全細孔容積VPTが、10.0m3/gを超える場合には、」と記載されているのを、「一方で、全細孔容積VPTが、10.0cm3/gを超える場合には、」に訂正する。(以下、「本件訂正事項5」という。)
6 訂正事項6
明細書の【0039】に「全細孔容積VPTは、1.3m3/g以上、2.0m3/g以上、3.0m3/g以上、4.0m3/g以上、5.0m3/g以上、6.0m3/g以上、7.0m3/g以上、8.0m3/g以上、又は9.0m3/g以上であってもよい。」と記載されているのを、「全細孔容積VPTは、1.3cm3/g以上、2.0cm3/g以上、3.0cm3/g以上、4.0cm3/g以上、5.0cm3/g以上、6.0cm3/g以上、7.0cm3/g以上、8.0cm3/g以上、又は9.0cm3/g以上であってもよい。」に訂正する。(以下、「本件訂正事項6」という。)
7 訂正事項7
明細書の【0040】に「全細孔容積VPTは、9.0m3/g以下、8.0m3/g以下、7.0m3/g以下、6.0m3/g以下、5.0m3/g以下、4.0m3/g以下、3.0m3/g以下、2.0m3/g以下、又は1.3m3/g以下であってもよい。」と記載されているのを、「全細孔容積VPTは、9.0cm3/g以下、8.0cm3/g以下、7.0cm3/g以下、6.0cm3/g以下、5.0cm3/g以下、4.0cm3/g以下、3.0cm3/g以下、2.0cm3/g以下、又は1.3cm3/g以下であってもよい。」に訂正する。(以下、「本件訂正事項7」という。)
8 訂正事項8
明細書の【0100】【表1】 の1列目の「全細孔容積VPT」(6行目)、「細孔容積VP3~6nm」(7行目)、「細孔容積VP6~20nm」(9行目)に関して、それぞれの2列目に「(m3/g)」と記載されているのを、「(cm3/g)」に訂正する。(以下、「本件訂正事項8」という。)
9 訂正事項9
明細書の【0100】【表1】の1列目の10行目において、「全細孔容積VPTに対する細孔容積VP3~6nmの割合」と記載されているのを、「全細孔容積VPTに対する細孔容積VP6~20nmの割合」に訂正する。(以下、「本件訂正事項9」という。)
第4 当審の判断
1 本件訂正事項1~8について
(1)訂正の目的について
ア 本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の【0015】、【0035】、【0036】、【0037】、【0039】、【0040】、【0100】、及び特許請求の範囲の【請求項1】には、「全細孔容積VPT」について、「1.0~10.0m3/g」(本件訂正事項1~4)、「1.0m3/g」、「10.0m3/g」(本件訂正事項5)「1.3m3/g以上、2.0m3/g以上、3.0m3/g以上、4.0m3/g以上、5.0m3/g以上、6.0m3/g以上、7.0m3/g以上、8.0m3/g以上、又は9.0m3/g以上であってもよい。」(本件訂正事項6)、「9.0m3/g以下、8.0m3/g以下、7.0m3/g以下、6.0m3/g以下、5.0m3/g以下、4.0m3/g以下、3.0m3/g以下、2.0m3/g以下、又は1.3m3/g以下であってもよい。」(本件訂正事項7)、「m3/g」(本件訂正事項8)と記載されている。
イ まず、「全細孔容積VPT」について、「1.0~10.0m3/g」との値は、密度で表すと、1μg/cm3~0.1μg/cm3である。
一般的に、標準状態の空気の密度が約1.2mg/cm3であることから、「全細孔容積VPT」が「1.0~10.0m3/g」の多孔質カーボンは、空気の密度よりも小さいこととなり、当該密度を持つ多孔質カーボンは技術的に存在し得ないことは明らかである。
したがって、本件特許明細書の【0015】、【0035】、【0036】、【0037】、【0039】、【0040】、【0100】、及び特許請求の範囲の【請求項1】の記載は誤記を含むことは明らかである。
ウ(ア)本件特許明細書には、以下の記載がある。
「【0006】
そして、固体高分子形燃料電池において、触媒層は、一般に、触媒担体の表面に白金等の触媒金属微粒子を担持させた電極触媒と、アイオノマとの混合物からなる。触媒担体としては、多孔質の炭素材料が用いられ、その細孔径、比表面積等が、燃料電池の特性に影響を与えることが知られている。
【0007】
このような触媒担体となる多孔質の炭素としては、細孔径、比表面積等を制御した、メソポーラスカーボンが検討されている。
【0008】
特許文献1には、球状メソポーラスシリカの鋳型に炭素源を導入し、続いて炭素源を炭化させ、その後に球状メソポーラスシリカを除去することで、球状メソポーラスシリカの構造が転写された球状カーボン多孔体を得る方法が提案されている。
【0009】
特許文献1で得られる多孔質カーボンは、メソポーラスシリカの構造が転写されるため、鋳型となるシリカの構造に応じて様々な形状実現することができる。しかしながら、転写しながらカーボンの構造制御を実施することは困難であるため、鋳型そのままの形状の多孔質カーボンしか得られない状況であった。
【0010】
また、特許文献2には、鋳型となる球状メソポーラスシリカを作製する際に、その細孔サイズを制御することを目的として、TMB(1,3,5-トリメチルベンゼン)等の有機分子を、造孔剤として用いる技術が開示されている。
【0011】
しかしながら、特許文献2においても、鋳型となるメソポーラスシリカの構造は制御できるものの、鋳型を転写しながらカーボンの構造を制御することは実現できていない。また、鋳型となる球状メソポーラスシリカの構造についても、TMB添加量によってはメソ孔が残りにくい等、細孔制御が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010-265125号公報
【特許文献2】特表2004-525846号公報
【0013】
本発明は、上記の背景に鑑みてなされたものであり、鋳型となる球状シリカの構造を転写しながら、カーボンの構造を制御して得られた、所望の構造及び物性を有する多孔質カーボン、触媒担体、及び多孔質カーボンの製造方法を提供することを目的とする。」
(イ)上記(ア)の記載を踏まえると、本件特許明細書は、先行技術文献である特許文献1と特許文献2に対して、細孔を含めたカーボンの構造を制御することを課題としているものと認められる。
(ウ)上記特許文献1(甲1-1号証)には、実施例として評価されたメソポーラスカーボンについて「細孔容量:1.403mL/g」(【0076】)、「細孔容量:1.024mL/g」(【0077】)、「細孔容量:0.965mL/g」(【0078】)、「細孔容量:1.007mL/g」(【0082】)、「細孔容量:1.221mL/g」(【0083】)と記載されている。また、細孔容量は、細孔容積と同義であり、細孔容積の単位として、mL/gは、cm3/gと同義である。
(エ)上記特許文献2(甲1-2号証)には、実施例として評価されたメソ細孔無機粒子について「細孔容積(2-10nm)(cm3/g)」、「細孔容積(2-300nm)(cm3/g)」が最小値で0.11cm3/g、最大値で1.70cm3/g(【0041】、【0042】)と記載されている。
(オ)上記(ウ)(エ)の記載を踏まえると、本件特許明細書は、0.11~1.70cm3/g程度の細孔容積を備えた多孔質粒子を前提としているものと認められる。そして、多孔質粒子の細孔容積の単位及び大きさとして、1.0cm3/g程度の値が技術常識であることも認められる。
エ 上記イ及びウでの検討を合わせ考えれば、本件特許明細書の【0015】、【0035】、【0036】、【0037】、【0039】、【0040】、【0100】、及び特許請求の範囲の【請求項1】の記載において、「全細孔容積VPT」における「m3/g」との記載が「cm3/g」の誤記であることは明白である。
したがって、本件訂正事項1~8は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる、誤記の訂正を目的とする訂正に該当する。
(2)新規事項について
本件訂正事項1~8は、単に、明白な誤記である「m3/g」を、本来の意味である「cm3/g」に正すものであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。
(3)特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の存否について
本件訂正事項1~8は、単なる誤記の訂正に過ぎないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、本件訂正事項1~8は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。
(4)独立特許要件の充足について
訂正前の特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明は拒絶理由を発見しないとして特許されたものであり、また、上記(1)で指摘したとおり、本件訂正事項1~8は、本件特許明細書における明白な誤記を訂正するものであり、審査の経緯を踏まえて改めて拒絶理由を検討しても、審査の結果に影響を与えるものではなく、新たな拒絶理由が生じるものではないから、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明も、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるといえる。
したがって、本件訂正事項1~8は、特許法第126条第7項に規定する要件を満たすものである。
2 本件訂正事項9について
(1)訂正の目的について
ア 本件特許明細書の【0100】【表1】の1列目の10行目において、「全細孔容積VPTに対する細孔容積VP3~6nmの割合」と記載されている。
イ 本件特許明細書の【0100】【表1】には、実施例1~3、比較例1、2について記載されており、それぞれ6行目に「全細孔容積VPT」、7行目に「細孔容積VP3~6nm」の値が記載されている。
上記「全細孔容積VPTに対する細孔容積VP3~6nmの割合」の値は、「細孔容積VP3~6nm」を「全細孔容積VPT」で割った値となるが、実施例1~3,比較例1、2において、当該値はそれぞれ21.19%、32.61%、44.62%、50.40%、32.58%となり、【表1】の10行目に「全細孔容積VPTに対する細孔容積VP3~6nmの割合」の値と一致しない。
また、【表1】の8行目には「全細孔容積VPTに対する細孔容積VP3~6nmの割合」の記載があり、その行の値は、上記「細孔容積VP3~6nm」を「全細孔容積VPT」で割った値と一致している。
したがって、本件特許明細書の【0100】【表1】の10行目の「全細孔容積VPTに対する細孔容積VP3~6nmの割合」の記載は誤記を含むことは明らかである。
ウ 次に、本件特許明細書の【0100】【表1】には、それぞれ6行目に「全細孔容積VPT」、9行目に「細孔容積VP6~20nm」の値が記載されている。
上記イの検討と同様に、「細孔容積VP6~20nm」を「全細孔容積VPT」で割った値を検討すると、実施例1~3,比較例1、2において、当該値はそれぞれ40.24%、25.65%、16.15%、14.40%、12.36%となり、【表1】の10行目に記載された「全細孔容積VPTに対する細孔容積VP3~6nmの割合」の値と一致する。
エ 上記イ及びウでの検討を合わせ考えれば、本件特許明細書の【0100】【表1】の記載において、「全細孔容積VPTに対する細孔容積VP3~6nmの割合」が「全細孔容積VPTに対する細孔容積VP6~20nmの割合」の誤記であることは明白である。
したがって、本件訂正事項9は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる、誤記の訂正を目的とする訂正に該当する。
(2)新規事項について
本件訂正事項9は、単に、明白な誤記である「全細孔容積VPTに対する細孔容積VP3~6nmの割合」を、本来の意味である「全細孔容積VPTに対する細孔容積VP6~20nmの割合」に正すものであるから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。
(3)特許請求の範囲の実質的拡張又は変更の存否について
本件訂正事項9は、単なる誤記の訂正に過ぎないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではない。
したがって、本件訂正事項9は、特許法第126条第6項に規定する要件を満たすものである。
(4)独立特許要件の充足について
訂正前の特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明は拒絶理由を発見しないとして特許されたものであり、また、上記(1)で指摘したとおり、本件訂正事項は、本件特許明細書における明白な誤記を訂正するものであり、新たな拒絶理由が生じるものではないから、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~8に係る発明も、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるといえる。
したがって、本件訂正事項9は、特許法第126条第7項に規定する要件を満たすものである。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし、かつ同法同条第5項から第7項までの規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-390143