特許訂正審判
2022-390167
車載用の電源装置
- 審判番号
- 2022-390167
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2018-038427
- 登録番号
- 7020191
- 請求日
- 2022年10月20日
- 審決日
- 2022年12月28日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】トヨタ自動車 株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人 アイテック国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 寺谷 大亮
- 審判官 角田 慎治
- 分類
- P141 .852-Y (H02J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7020191号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第7020191号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7020191号(以下「本件特許」という。)は、平成30年3月5日にされた出願であって、その請求項1に係る発明について、令和4年2月7日に特許権の設定登録がなされ、令和4年10月20日付けで本件審判請求書が提出され、同年11月21日に審判請求書を対象とする手続補正書(方式)が提出されたものである。
第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおりに訂正すること(以下「本件訂正」という。)を認める、との審決を求めるものである。
第3 訂正の内容
本件訂正は、以下の訂正事項1及び訂正事項2からなる。なお、下線部は訂正箇所を示す。
1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「前記システムメインリレーをオフ制御すると共に前記充電リレーの正極側および負極側をオフ制御して前記電圧センサにより検出された電圧が所定電圧未満か否かにより前記充電リレーの両極が溶着しているか否かを判定する両極溶着判定を実行し、前記検出された電圧が前記所定電圧未満であると判定すると、前記システムメインリレーをオフ制御すると共に前記充電リレーの正極側および負極側のうちの一方のリレーをオン制御し他方のリレーをオフ制御して前記電圧センサにより検出された電圧が所定電圧未満か否かにより前記他方のリレーが溶着しているか否かを判定する片極溶着判定を実行し、」との記載のうち、「システムメインリレーをオフ制御する」(当審注:2箇所)を「システムメインリレーをオン制御する」に訂正する。
2 訂正事項2
(1)訂正事項2-1
明細書の段落【0007】の「前記制御装置は、前記外部電源用コネクタが前記インレットに接続されたことを含む所定の判定実行条件が成立すると、前記システムメインリレーをオフ制御すると共に前記充電リレーの正極側および負極側をオフ制御して前記電圧センサにより検出された電圧が所定電圧未満か否かにより前記充電リレーの両極が溶着しているか否かを判定する両極溶着判定を実行し、前記検出された電圧が前記所定電圧未満であると判定すると、前記システムメインリレーをオフ制御すると共に前記充電リレーの正極側および負極側のうちの一方のリレーをオン制御し他方のリレーをオフ制御して前記電圧センサにより検出された電圧が所定電圧未満か否かにより前記他方のリレーが溶着しているか否かを判定する片極溶着判定を実行し、」との記載のうち、「システムメインリレーをオフ制御する」(当審注:2箇所)を「システムメインリレーをオン制御する」に訂正する(以下「訂正事項2-1」という。)。
(2)訂正事項2-2
明細書の段落【0008】の「両極溶着判定は、システムメインリレーをオフ制御すると共に充電リレーの正極側および負極側をオフ制御して電圧センサにより検出された電圧が所定電圧未満か否かを判定することにより行なう。片極溶着判定は、両極溶着判定において検出された電圧が所定電圧未満のときに、システムメインリレーをオフ制御すると共に充電リレーの正極側および負極側のうちの一方のリレーをオン制御し他方のリレーをオフ制御して電圧センサにより検出された電圧が所定電圧未満か否かを判定することにより行なう。」との記載のうち、「システムメインリレーをオフ制御する」(当審注:2箇所)を「システムメインリレーをオン制御する」に訂正する(以下「訂正事項2-2」という。)。
第4 当審の判断
1 訂正事項1について
(1)訂正の目的
訂正事項1は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1の「前記システムメインリレーをオフ制御すると共に前記充電リレーの正極側および負極側をオフ制御して前記電圧センサにより検出された電圧が所定電圧未満か否かにより前記充電リレーの両極が溶着しているか否かを判定する両極溶着判定を実行し、」における「システムメインリレーをオフ制御する」との記載、及び、「前記システムメインリレーをオフ制御すると共に前記充電リレーの正極側および負極側のうちの一方のリレーをオン制御し他方のリレーをオフ制御して前記電圧センサにより検出された電圧が所定電圧未満か否かにより前記他方のリレーが溶着しているか否かを判定する片極溶着判定を実行し、」における「システムメインリレーをオフ制御する」との記載を、それぞれ「システムメインリレーをオン制御する」に訂正するものである。
訂正事項1にかかる「システムメインリレー」の制御は、「充電リレー」の「両極溶着判定」及び「片極溶着判定」におけるものであるから、「充電リレー」の「両極溶着判定」及び「片極溶着判定」における「システムメインリレー」の制御について、本件特許の明細書及び図面の記載事項、及び本件特許の特許請求の範囲の記載事項を検討する。
ア(ア)本件特許の明細書及び図面には、次の記載がある(下線は当審で付与した。以下、同様。)。
「【0011】
図1は、本発明の一実施例としての車載用の電源装置20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電源装置20は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車などの車両に搭載され、走行用のモータなどの電源として機能する。実施例では、説明の容易のためにハイブリッド自動車の電源として電源装置20が搭載されているものとして説明する。実施例の電源装置20は、図1に示すように、インレット21と、充電リレーDCRB,DCRGと、バッテリ30と、充電用電子制御ユニット(以下、充電ECUと称する。)24と、電池用電子制御ユニット(以下、電池ECUと称する。)34と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、HVECUと称する。)40と、を備える。
【0012】
インレット21には充電ライン22によりバッテリ30に接続されている。電源装置20は、外部電源としての急速充電設備10の接続コネクタ11がインレット21に接続されているときに、急速充電設備10から高圧の直流電圧を直接入力してバッテリ30を急速充電するように構成されている。充電ライン22の正極側および負極側にはそれぞれ充電リレーDCRB,DCRGが取り付けられており、充電リレーDCRB,DCRGは充電ECU24によってオンされることにより、急速充電設備10からの電力をバッテリ30側に供給する。
【0013】
充電ECU24は、図示しないがCPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROM,データを一時的に記憶するRAM,入出力ポート,通信ポートなどを備える。充電ECU24には、インレット21に急速充電設備10の接続コネクタ11が接続されているか否かを判定する接続スイッチ21aからの接続信号や、充電ライン22のインレット21と充電リレーDCRB,DCRGとの間の正負極間に取り付けられた電圧センサ25からの印加電圧Vdcなどが入力ポートを介して入力されている。また、充電ECU24からは、充電リレーDCRB,DCRGをそれぞれオンオフするための駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。充電ECU24は、接続コネクタ11がインレット21に接続されているときに急速充電設備10と通信可能に接続され、急速充電設備10に充電の開始を指示する充電開始指令を送信したり、バッテリ30の状態を送信したり、バッテリ30の異常時に急速充電設備10に充電の停止を指示する充電停止指令を送信したりする。また、充電ECU24は、HVECU40と通信をしており、充電ECU24により得た情報を必要に応じてHVECU40に送信している。
【0014】
バッテリ30は、例えばリチウムイオン二次電池として構成されており、電力ライン32により図示しない走行用のモータを駆動するインバータINVなどの駆動装置に接続されている。電力ライン32の正極側および負極側には、それぞれシステムメインリレーSMRB,SMRGが取り付けられている。充電ライン22は電力ライン32のシステムメインリレー42とインバータINVとの間に接続されており、急速充電設備10からの電力は、充電リレーDCRB,DCRGとシステムメインリレーSMRB,SMRGとを順に介してバッテリ30に供給されるようになっている。バッテリ30は、電池ECU34によって管理されている。」
「【0019】
コネクタ接続時溶着診断処理ルーチンでは、HVECU40は、まず、前回の溶着診断が正常に終了しなかったか否かを判定する(ステップS100)。前回の溶着診断が正常に終了したと判定すると、溶着診断を行なうことなく、本ルーチンを終了する。この場合、バッテリ30が満充電でなく異常も生じていなければ、接続コネクタ11のインレット21への接続により、バッテリ30への充電が開始される。一方、前回の溶着診断が正常に行なわれなかったと判定すると、システムメインリレーSMRB,SMRGおよび充電リレーDCRB,DCRGのオフ制御を行なう(ステップS110)。充電リレーDCRB,DCRGのオフ制御は、充電リレーDCRB,DCRGをオフする制御指令を通信により充電ECU24に出力することにより行なわれる。そして、電圧センサ29からの印加電圧Vdcを充電ECU24から通信により入力すると共に入力した印加電圧Vdcが値0とみなせる所定電圧Vref未満であるか否かを判定する(ステップS120)。印加電圧Vdcが所定電圧Vref未満でなく所定電圧Vref以上と判定すると、充電リレーDCRB,DCRGの両極溶着を診断できない(両極溶着診断不可)と判定し(ステップS130)、両極溶着診断不可の判定結果を図示しない不揮発性メモリに保存して(ステップS270)、本ルーチンを終了する。いま、システムメインリレーSMRB,SMRGをオフとしている状態を考えているから、印加電圧Vdcは、急速充電設備10からインレット21に電圧が印加されていない限り、充電リレーDCRB,DCRGの溶着の有無に拘わらず、値0となる。したがって、システムメインリレーSMRB,SMRGおよび充電リレーDCRB,DCRGをオフ制御したときに印加電圧Vdcが所定電圧Vref以上である場合には、急速充電設備10から充電ライン22に電圧が印加されており、印加電圧Vdcによっては充電リレーDCRB,DCRGの溶着の有無を区別できないと判断し、溶着診断を実行しない。なお、前回の溶着診断が正常に終了しなかった場合には、接続コネクタ11がインレット21に接続されても、充電ECU24は急速充電設備10に対して充電を許可しないため、通常は、急速充電設備10から充電ライン22に電圧が印加されることはない。しかし、何らかの異常により充電ライン22に電圧が印加されたときには、誤診断を回避するため溶着診断を実行しないのである。
【0020】
ステップS120で印加電圧Vdcが所定電圧Vref未満と判定すると、次に、システムメインリレーSMRB,SMRGをオン制御すると共に充電リレーDCRB,DCRGをオフ制御する(ステップS140)。そして、ステップS120と同様に印加電圧Vdcが所定電圧Vref未満であるか否かを判定する(ステップS150)。印加電圧Vdcが所定電圧Vref未満でなく所定電圧Vref以上と判定すると、充電リレーDCRB,DCRGの両極に溶着が生じている(両極溶着)と判定し(ステップS160)、両極溶着の判定結果を不揮発性メモリに保存して(ステップS270)、本ルーチンを終了する。
【0021】
ステップS150で印加電圧Vdcが所定電圧Vref未満と判定すると、次に、充電リレーDCRB,DCRGの片極が溶着していているか否かの片極溶着の判定を行なう。すなわち、システムメインリレーSMRB,SMRGをオン制御したまま正極側の充電リレーDCRBをオン制御すると共に負極側の充電リレーDCRGをオフ制御し(ステップS170)、印加電圧Vdcが所定電圧Vref未満であるか否かを判定する(ステップS180)。また、システムメインリレーSMRB,SMRGをオン制御したまま正極側の充電リレーDCRBをオフ制御すると共に負極側の充電リレーDCRGをオン制御し(ステップS190)、印加電圧Vdcが所定電圧Vref未満であるか否かを判定する(ステップS200)。ステップS180,S200のいずれも印加電圧Vdcが所定電圧Vref未満と判定すると、充電リレーDCRB,DCRGはいずれも溶着しておらず正常であると判定して(ステップS210)、本ルーチンを終了する。」
「【0023】
図3は、溶着診断処理におけるコネクタ接続状態、印加電圧Vdc、システムメインリレーSMRB,SMRGおよび充電リレーDCRB,DCRGの状態の時間変化の様子を示す説明図である。図示するように、接続コネクタ11がインレット21に接続されると(時刻T1)、システムメインリレーSMRB,SMRGおよび充電リレーDCRB,DCRGをオフ制御する。この例では、印加電圧Vdcが略値0(所定電圧Vref未満)のままであるため、溶着診断が可能と判断し、システムメインリレーSMRB,SMRGをオン制御して印加電圧Vdcが略値0か否かにより充電リレーDCRB,DCRGが両極溶着しているか否かの診断を行なう(時刻T2)。この例では、印加電圧Vdcが略値0のままであるため、両極溶着していないと判断し、充電リレーDCRB,DCRGのうち正極側の充電リレーDCRBのみをオン制御して負極側の充電リレーDCRGが溶着しているか否かの診断を行なう(時刻T3)。次に、充電リレーDCRB,DCRGのうち負極側の充電リレーDCRGのみをオン制御して正極側の充電リレーDCRBが溶着しているか否かの診断を行なう(時刻T4)。この例では、時刻T4の片極溶着の診断において印加電圧Vdcが略値0よりも大きい(所定電圧Vref以上)と判定される。そして、その判定結果が、片極溶着によるものか診断中に急速充電設備10からインレット21に電圧が印加されたことによるものかを区別するため、システムメインリレーSMRB,SMRGをオン制御すると共に充電リレーDCRB,DCRGをオフ制御した状態で印加電圧Vdcを調べる(時刻T5)。この例では、充電リレーDCRB,DCRGをオフ制御しても、印加電圧Vdcは略値0よりも大きいため、急速充電設備10から電圧が印加されていると判断し、溶着診断が停止される。」
「【図1】
[図:0001395157000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001395157000002.jpg]
」
(イ)【0020】の記載によれば、「充電リレーDCRB,DCRG」の「両極溶着」の判定は、「システムメインリレーSMRB,SMRG」を「オン制御」すると共に「充電リレーDCRB,DCRG」を「オフ制御」したときの印加電圧Vdcと所定電圧Vrefとの比較により行われるものである。
また、【0021】の記載によれば、「充電リレーDCRB,DCRG」の「片極溶着」の判定は、「システムメインリレーSMRB,SMRG」を「オン制御」したまま、「充電リレーDCRB,DCRG」の一方を「オン制御」し、他方を「オフ制御」したときの印加電圧Vdcと所定電圧Vrefとの比較により行われるものである。
(ウ)【図3】は、「溶着診断処理におけるコネクタ接続状態、印加電圧Vdc、システムメインリレーSMRB,SMRGおよび充電リレーDCRB,DCRGの状態の時間変化の様子を示す説明図」(【0023】)であり、【0023】の記載を踏まえると、「充電リレーDCRB,DCRGが両極溶着しているか否かの診断を行なう」時刻T2、「負極側の充電リレーDCRGが溶着しているか否かの診断を行なう」時刻T3、「正極側の充電リレーDCRBが溶着しているか否かの診断を行なう」時刻T4において、「システムメインリレーSMRB,SMRG」はオン(ON)であることが見て取れる。
(エ)前記(イ)及び(ウ)のとおり、本件特許の明細書及び図面には、「充電リレーDCRB,DCRG」の「両極溶着」及び「片極溶着」の判定において、「システムメインリレーSMRB,SMRG」を「オン制御」することが記載されていると認められる。
(オ)他方、「充電リレーDCRB,DCRG」の「両極溶着」及び「片極溶着」の判定において「システムメインリレーSMRB,SMRG」を「オフ制御」することについて、本件特許の明細書及び図面には、訂正事項2-1及び訂正事項2-2にかかる「システムメインリレーをオフ制御する」との記載が存在するに過ぎず、それ以上の詳細な記載はない。
(カ)加えて、「システムメインリレーSMRB,SMRG」を「オフ制御」した場合、「充電リレーDCRB,DCRG」の「両極溶着」及び「片極溶着」の判定が行えないことは、以下に示すとおり明らかである。
a 【0012】~【0014】及び【図1】の記載によれば、「車載用の電源装置20」は、「充電ライン22」と「電力ライン32」を介して、「インレット21」、「電圧センサ29」、「充電リレーDCRB,DCRG」、「システムメインリレーSMRB,SMRG」及び「バッテリ30」が、この順に接続されるものである。
b 前記(イ)のとおり、「充電リレーDCRB,DCRG」の「両極溶着」及び「片極溶着」の判定は、「印加電圧Vdc」と所定電圧Vrefとを比較することで行われるが、該「印加電圧Vdc」は「電圧センサ25」のものである(【0013】)。
【0019】の記載及び前記aの接続関係を踏まえると、急速充電設備10から「インレット21」に電圧が印加されている状態では、「充電リレーDCRB,DCRG」の溶着の有無、及び「システムメインリレーSMRB,SMRG」のオン、オフにかかわらず、「インレット21」に印加された電圧が「電圧センサ25」の「印加電圧Vdc」に現れてしまう。
そのため、「充電リレーDCRB,DCRG」の「両極溶着」及び「片極溶着」の判定は、急速充電設備10から「インレット21」に電圧が印加されていない状態で、前記「印加電圧Vdc」に「バッテリ30」からの電圧が現われるか否かによって行われるものと解される。
c そして、「充電リレーDCRB,DCRG」の「両極溶着」及び「片極溶着」の判定において、「システムメインリレーSMRB,SMRG」を「オフ制御」すると、「充電リレーDCRB,DCRG」の溶着の有無にかかわらず、「印加電圧Vdc」に「バッテリ30」からの電圧が現れ得ないことは、前記aの接続関係から明らかである。
したがって、「システムメインリレーSMRB,SMRG」を「オフ制御」した場合、「充電リレーDCRB,DCRG」の「両極溶着」及び「片極溶着」の判定を行うことはできない。
(キ)前記(エ)~(カ)によれば、本件特許の明細書及び図面には、「充電リレーDCRB,DCRG」の「両極溶着」及び「片極溶着」の判定において「システムメインリレーSMRB,SMRG」を「オン制御」する態様のみが、実質的に記載されているといえる。
イ(ア)本件特許の特許請求の範囲には、以下の記載がある。なお、A~Cは当審で付したものであり、以下、分説A~Cという。
「【請求項1】
A バッテリと、該バッテリから車両用駆動装置への電力ラインに取り付けられたシステムメインリレーと、外部電源用コネクタが接続されるインレットから前記電力ラインの前記システムメインリレーよりも前記車両用駆動装置側への充電ラインの正極側および負極側にそれぞれ取り付けられた充電リレーと、前記充電ラインの前記インレットと前記充電リレーとの間の正負極間の電圧を検出する電圧センサと、前記システムメインリレーと前記充電リレーとを制御する制御装置と、を備える車載用の電源装置であって、
B 前記制御装置は、前記外部電源用コネクタが前記インレットに接続されたことを含む所定の判定実行条件が成立すると、前記システムメインリレーをオフ制御すると共に前記充電リレーの正極側および負極側をオフ制御して前記電圧センサにより検出された電圧が所定電圧未満か否かにより前記充電リレーの両極が溶着しているか否かを判定する両極溶着判定を実行し、前記検出された電圧が前記所定電圧未満であると判定すると、前記システムメインリレーをオフ制御すると共に前記充電リレーの正極側および負極側のうちの一方のリレーをオン制御し他方のリレーをオフ制御して前記電圧センサにより検出された電圧が所定電圧未満か否かにより前記他方のリレーが溶着しているか否かを判定する片極溶着判定を実行し、前記片極溶着判定を開始してから判定を確定するまでの間に前記システムメインリレーをオン制御すると共に前記充電リレーの正極側および負極側をオフ制御して前記電圧センサにより所定電圧以上の電圧が検出されると、前記片極溶着判定の実行を停止する、
C 車載用の電源装置。」
(イ)分説Aによれば、「車載用の電源装置」は、「充電ライン」及び「電力ライン」を介して、「インレット」、「電圧センサ」、「充電リレー」、「システムメインリレー」、「バッテリ」が、この順に接続されるものであり、この接続関係は、本件特許の明細書及び図面に記載された前記ア(カ)aのものと同じである。
そのため、分説Bの「充電リレー」の「両極溶着判定」及び「片極溶着判定」は、前記ア(カ)bと同様の理由で、「インレット」に電圧が印加されていない状態で、「充電リレー」の溶着により「バッテリ」の電圧が「電圧センサ」で検出されるか否か、具体的には、検出電圧が「所定電圧未満か否か」により行われると解される。
(ウ)分説Bによれば、「車載用の電源装置」は、「充電リレー」の「両極溶着判定」及び「片極溶着判定」において、「システムメインリレー」を「オフ制御」する。
しかしながら、「システムメインリレー」を「オフ制御」した場合、前記ア(カ)cと同様の理由で、「充電リレー」の溶着の有無にかかわらず、「バッテリ」の電圧が「電圧センサ」で検出されることはないから、「充電リレー」の「両極溶着判定」及び「片極溶着判定」を正しく行えないことは明らかである。
他方、「システムメインリレー」をオン制御すると、両極または片極の「充電リレー」が溶着している場合、溶着している「充電リレー」をオフ制御しても、「電圧センサ」で「バッテリ」の電圧が検出されるため、「充電リレー」の溶着を判定することができる。
(エ)したがって、特許請求の範囲の請求項1における「充電リレー」の「両極溶着判定」及び「片極溶着判定」において、「システムメインリレーをオフ制御する」との記載は、「システムメインリレーをオン制御する」の誤記と解するのが相当である。
そして、かかる解釈は、前記アの本件特許の明細書及び図面の記載とも整合する。
ウ 以上のとおりであるから、特許請求の範囲の請求項1における「充電リレー」の「両極溶着判定」及び「片極溶着判定」において、「システムメインリレーをオフ制御する」との記載は、「システムメインリレーをオン制御する」の誤記であることは明らかである。
よって、訂正事項1は、特許法126条1項ただし書き2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。
(2)新規事項の追加の有無
前記(1)のとおり、訂正事項1は、誤記の訂正を目的とするものであり、また、本件特許の明細書及び図面における上記(1)ア(ア)の記載内容と整合するものである。そして、該明細書及び図面の記載は出願当初から補正も訂正もされていないので、訂正事項1に係る訂正は、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法126条5項の規定に適合する。
(3)特許請求の範囲の拡張・変更の有無
前記(1)のとおり、訂正事項1は、誤記の訂正を目的とするものであって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それ自体で、及び、本件特許の明細書及び図面の記載との関係で、誤りであることが明らかであり、かつ、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面の記載全体から、正しい記載が自明な事項として定まり、その誤りを正しい記載にする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第126条6項の規定に適合する。
(4)独立特許要件
前記(1)のとおり、訂正事項1は、誤記の訂正を目的とするものであって、訂正事項1によって訂正された請求項1に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができない理由を発見しないから、特許法126条7項の規定に適合する。
(5)小括
以上によれば、訂正事項1に係る訂正は、特許法126条各項の規定に適合するものであり、適法である。
2 訂正事項2について
訂正事項2(訂正事項2-1及び訂正事項2-2)は、特許請求の範囲の請求項1に対応する明細書の段落【0007】及び【0008】について、訂正事項1と同様の訂正を行うものであるから、訂正事項1と同様に、特許法126条1項ただし書2号に規定する誤記の訂正を目的とし、かつ同条5項~7項の規定に適合する。
よって、訂正事項2に係る訂正は、適法である。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は適法である。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-390167