特許拒絶査定不服審判
2024-015149
献立支援システム、献立支援具、献立支援プログラム、献立指導方法、食品提供方法、及び、食品製造方法
- 審判番号
- 2024-015149
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-019483
- 請求日
- 2024年09月24日
- 審決日
- 2025年06月09日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】カゴメ株式会社
- 【請求人】国立大学法人東北大学
- 審判長/審判官
- 審判長 相崎 裕恒
- 審判官 小池 堂夫
- 審判官 古川 哲也
- 分類
- P18 .1 -Z (G16H) / P18 .575-Z (G16H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第2条第1項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023- 19483「献立支援システム、献立支援具、献立支援プログラム、献立指導方法、食品提供方法、及び、食品製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 4月12日出願公開、特開2023- 53168〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年8月2日に出願した特願2019-142689号の一部を令和5年2月10日に新たな特許出願としたものであって、令和6年1月11日付けで拒絶理由通知がされ、同年5月13日に手続補正がされ、同年6月21日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年9月24日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正(以下、「審判請求時補正」という。)がされたものである。
第2 令和6年9月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年9月24日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「食品分布図を備える献立支援システムを用いた献立指導方法であって、
前記食品分布図が有するのは、ナトリウム含量軸及びカリウム含量軸であり、
そこに配置されるのは、食品、及び、Na‐K比識別子であり、かつ、
前記Na‐K比識別子で示されるのは、配置された各食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級であり、
前記献立指導方法を構成するのは、少なくとも、以下の工程である:
第1の食品提示:
ここで献立支援システムによって被指導者に提示されるのは、前記食品分布図に配置された第1選択群の食品及び当該食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級であり、
当該提示された第1選択群の食品から被指導者に選択されるのは、少なくとも1以上の食品(以下、「第1選択食品」という。)であり、
第2の食品提示:
ここで献立支援システムによって被指導者に提示されるのは、前記食品分布図に配置された第2選択群の食品及び当該食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級であり、
当該提示された第2選択群の食品から被指導者に選択されるのは、少なくとも1以上の食品(以下、「第2選択食品」という。)であり、及び、
指導:
ここで、被指導者が献立支援システムによって指導されるのは、前記第1選択食品及び前記第2選択食品の組合せ方であり、その際に参照されるのは、前記第1選択食品のNa‐ K比又はNa‐K比の等級、及び前記第2選択食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級である。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和6年5月13日にされた手続補正による特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「食品分布図を用いた献立指導方法であって、
前記食品分布図が有するのは、ナトリウム含量軸及びカリウム含量軸であり、
そこに配置されるのは、食品、及び、Na‐K比識別子であり、かつ、
前記Na‐K比識別子で示されるのは、配置された各食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級であり、
前記献立指導方法を構成するのは、少なくとも、以下の工程である:
第1の食品提示:
ここで指導者から被指導者に提示されるのは、前記食品分布図に配置された第1選択群の食品及び当該食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級であり、
当該提示された第1選択群の食品から被指導者に選択されるのは、少なくとも1以上の食品(以下、「第1選択食品」という。)であり、
第2の食品提示:
ここで指導者から被指導者に提示されるのは、前記食品分布図に配置された第2選択群の食品及び当該食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級であり、
当該提示された第2選択群の食品から被指導者に選択されるのは、少なくとも1以上の食品(以下、「第2選択食品」という。)であり、及び、
指導:
ここで、被指導者が指導者から指導されるのは、前記第1選択食品及び前記第2選択食品の組合せ方であり、その際に参照されるのは、前記第1選択食品のNa‐ K比又はNa
‐K比の等級、及び前記第2選択食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級である。」
2 補正の目的について
本件補正は、補正前の「食品分布図を用いた献立指導方法」という記載を、「食品分布図を備える献立支援システムを用いた献立指導方法」と補正するとともに、「第1の食品提示」と「第2の食品提示」のそれぞれにおける補正前の「指導者から被指導者に提示されるのは」という記載を、「献立支援システムによって被指導者に提示されるのは」と補正し、さらに「指導」における補正前の「被指導者が指導者から指導されるのは」という記載を、「被指導者が献立支援システムによって指導されるのは」と補正するものである。
これらの補正は、請求項1に記載された「献立指導方法」並びに当該「献立指導方法」を構成する「第1の食品提示」、「第2の食品提示」、「指導」の各工程において、「(食品分布図を備える)献立支援システム」を用いる旨の限定が付されたものであって、本件補正により、本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1の発明特定事項について実質的に減縮したものであるといえ、さらに、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
3 独立特許要件(発明該当性)について
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載した請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。なお、A~Fは、当審で付与したものであり、A~Fで特定される事項を、それぞれ以下「構成要件A」などという。また、「/」は改行を示す。
「A 食品分布図を備える献立支援システムを用いた献立指導方法であって、
B 前記食品分布図が有するのは、ナトリウム含量軸及びカリウム含量軸であり、/そこに配置されるのは、食品、及び、Na‐K比識別子であり、かつ、/前記Na‐K比識別子で示されるのは、配置された各食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級であり、
C 前記献立指導方法を構成するのは、少なくとも、以下の工程である:
D 第1の食品提示:/ここで献立支援システムによって被指導者に提示されるのは、前記食品分布図に配置された第1選択群の食品及び当該食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級であり、/当該提示された第1選択群の食品から被指導者に選択されるのは、少なくとも1以上の食品(以下、「第1選択食品」という。)であり、
E 第2の食品提示:/ここで献立支援システムによって被指導者に提示されるのは、前記食品分布図に配置された第2選択群の食品及び当該食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級であり、/当該提示された第2選択群の食品から被指導者に選択されるのは、少なくとも1以上の食品(以下、「第2選択食品」という。)であり、及び、
F 指導:/ここで、被指導者が献立支援システムによって指導されるのは、前記第1選択食品及び前記第2選択食品の組合せ方であり、その際に参照されるのは、前記第1選択食品のNa‐ K比又はNa‐K比の等級、及び前記第2選択食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級である。」
(2)特許法第29条第1項柱書(発明該当性)について
特許法第2条第1項には、「発明」について、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なもの」をいうと規定され、同法第29条第1項柱書には、「産業上利用することができる発明をしたものは、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。」と規定されている。したがって、特許法第2条第1項に規定する「発明」といえないものは、同法第29条第1項柱書に規定する要件を満たさないから、特許を受けることができない。
ここで、請求項に記載された特許を受けようとする発明が、特許法第2条第1項に規定された「発明」といえるか否かは、前提とする技術的課題、その課題を解決するための技術的手段の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らし、全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するか否かによって判断すべきものである。
そして、請求項に記載された特許を受けようとする発明に何らかの技術的手段が提示されているとしても、その技術的意義に照らして全体として考察した結果、その課題解決に当たって、専ら、人間の精神活動、意思決定、抽象的な概念や人為的な取決めそれ自体に向けられ、「自然法則を利用した技術的思想の創作」といえない場合には、同法第2条第1項に規定された「発明」に該当するとはいえない。
以上を前提として、本件補正発明が全体として自然法則を利用した技術的思想の創作であるか否かについて以下検討する。
(3)本願明細書の記載事項(なお、下線は当審で付した。)
ア 技術分野
「 【0001】
本発明に関係するのは、献立支援システム、献立支援具、献立支援プログラム、献立指導方法、食品提供方法、及び、食品製造方法である。」
イ 背景技術
「 【0002】
高血圧の予防及び改善の重要性は、広く認識されている。なぜなら、高血圧者の有病率は、高いからである。例示すると、高血圧は、脳卒中及び循環器疾患の危険因子の一つである。
【0003】
高血圧の予防及び改善で採用する代表的な方法は、食塩摂取量の制限(以下、「減塩」ということもある。)である。減塩を具現化する方法は、様々であり、例示すると、減塩食品や減塩指導などである。
【0004】
ところが、食塩の推奨摂取量及び日本人の食塩摂取量を比較すると、両者は未だに大きく乖離している。日本高血圧学会で推奨する1日当たり食塩摂取量は、6.0g未満である。これに対して、過去10年間で、日本人の1日当たりの食塩摂取量は、減少しているものの、9.2g(女性)から11.0g(男性)である。減塩が進まない要因は、様々であるが、例えば、味が薄くて、美味しさが感じられないため、満足感が得られない等の不満が生じるなどである。
【0005】
そこで、高血圧の予防及び改善で着目するのは、食塩(ナトリウム)摂取量に加えて、カリウム摂取量である。なぜなら、カリウムを摂取すると、ナトリウムを排出するからである。非特許文献1及び2で報告されているのは、尿中におけるカリウムに対するナトリウムの比(以下、「Na‐K比」という。)と収縮期血圧とが有意に相関する点である。ここで、尿中のNa‐K比に反映されるのは、食事のNa‐K比である。
【0006】
高血圧の予防に必要なのは、尿中のNa‐K比を改善(K優位)することである。前述のとおり、カリウムを摂取すると、ナトリウムが排出される。カリウムを多く含んでいるのは、主に野菜及び果物である。非特許文献3で示唆するのは、野菜又は果物の摂取量を減塩下で増やすと、尿中のNa‐K比が改善する点である。
【0007】
Na‐K比計測器の使用を考慮に入れて、本願発明者らが開発しているのは、より効果的な行動変容手法である。非特許文献4に開示されているのは、食事指導の一例である。この食事指導で用いるのは、Na‐K比計測器及びナックカウント表である。具体的には、被指導者に対して食事指導する際に、食事指導前における被指導者の尿中のNa‐K比を測定する。次に、ナックカウント表を参照して、Na‐K比の低い食品を選択すること、或いは、食品の組合せを意識することを指導する。そのような指導の下で食生活を続けた後、被指導者の尿中のNa‐K比を再度測定する。つまり、測定、食事指導及び再測定を通じて、食事指導の効果を実感させるものである。
【0008】
非特許文献4に示されるのは、ナックカウント表の一例である。この表の縦軸に示すのは、Na‐K比である。他方、横軸に示すのは、カリウム含有量である。ナックカウント表に配置されるのは、一又は複数の食品である。このナックカウント表で示されるのは、各食品のNa‐K比及びカリウム含有量である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Park J et al., The Effect of the Sodium to Potassium Ratio on Hypertension Prevalence: A Propensity Score Matching Approach. Nutrients. 2016 8(8): 482.
【非特許文献2】Tabara Y et al., Descriptive epidemiology of spot urine sodium-to-potassium ratio clarified close relationship with blood pressure level: the Nagahama study. J Hypertens. 2015 33(12):2407-13.
【非特許文献3】森桂子ら著「ナトカリ計を用いた食習慣改善の取り組み」(心身科学第10巻第1号,35-43頁,2019年)
【非特許文献4】桑原和代ら著「職域におけるナトカリ計を用いた効果的な保健指導手法の開発」(立石科学技術振興財団女性研究成果集第26号,1-5頁,2017年)」
ウ 発明が解決しようとする課題
「 【0010】
本発明が解決しようとする課題は、食事指導し易くし、或いは、献立(食品を組み合わせること)をし易くすることである。前述のナックカウント表の欠点は、食事指導し難い点である。具体的には、次のとおりである。
【0011】
第1に、当該ナックカウント表の一方の軸で示されるのは、Na‐K比である。このNa‐K比は、慣用されていない。慣用されている指標は、食塩量であり、具体的には、ナトリウム含量である。それ故、当該ナックカウント表での問題点は、各食品のナトリウム含量の高低が把握し難いこと、各食品間のナトリウム含量の差が把握し難いこと、及び、各自の好みにより追加する調味料(例えば、醤油や食塩など)使用時における各食品のナトリウム含量の高低の変化が把握し難いこと等である(以下、これらを「第1の観点」という。)。
【0012】
第2に、当該ナックカウント表では、異なる分類の食品が混載されている。それ故、当該ナックカウント表での問題点は、同じ分類の食品(例えば、主食や主菜など)のNa‐K比を比較し難いこと、特定の分類の食品(例えば、主食や主菜など)のNa‐K比の悪さを気付き難いこと、及び、複数の食品を組合せ(献立)ることによってNa‐K比をうまく整えることができたのかが判り難いこと等である(以下、これらを「第2の観点」という。)。」
エ 課題を解決するための手段
「 【0013】
<第1の観点> 第1の観点から、本願発明者が鋭意検討して見出したのは、ナトリウム含量軸及びカリウム含量軸を採用することで、各食品のナトリウム含量及びカリウム含量又は/並びにNa‐K比を視覚的に把握し易くすることである。この観点から、本発明を定義すると、以下のとおりである。」
「 【0020】
<第2の観点> 第2の観点から、本願発明者が鋭意検討して見出したのは、食品群(例えば、主食及び主菜並びに副菜等)を分けて、献立に含まれる各食品一食当たりのカリウム含量に対するナトリウム含量(以下、「Na‐K比」という。)を把握し易くすることである。この観点から、本発明を定義すると、以下のとおりである。」
「 【0024】
<献立指導方法> 献立指導方法を構成する工程は、少なくとも、第1の食品提示、第2の食品提示、及び、指導である。当該第1の食品提示において、人に提示されるのは、第1選択群の食品及び当該食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級である。それによって、人が選択するのは、少なくとも1以上の食品(当該方法において、以下、「第1選択食品」という。)である。当該第2の食品提示において、人に提示されるのは、第2選択群の食品及び当該食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級である。それによって、人が選択するのは、少なくとも1以上の食品(当該方法において、以下、「第2選択食品」という。)である。当該指導において、人が指導されるのは、当該第1選択食品及び前記第2選択食品の組合せ方である。その際に、人が参照するのは、当該第1選択食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級、及び当該第2の選択食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級である。この場合において、前述の等級判定法又はNa‐K比判定法が採用されてもよい。」
オ 発明の効果
「 【0027】
本発明で可能にするのは、食事指導し易くし、或いは、献立し易くすることである。」
カ 発明を実施するための形態
「 【0029】
献立支援システムを構成するのは、少なくとも、献立支援具、及び、献立提示具である。当該献立支援具を構成するのは、少なくとも、食品分布図である。この食品分布図が有するのは、ナトリウム含量軸及びカリウム含量軸である。当該食品分布図に配置されるのは、二以上の食品、及び、Na‐K比識別子である。」
「 【0053】
<献立支援具> 図2で示されるのは、献立支援具100の構成である。本実施の形態において、献立支援具100を構成するのは、食品分布図110である。献立支援具100を追加的に構成するのは、組合せ判定表120又は組合せ計算表130である。献立支援具100を具現化する方法は、不問であり、例えば、紙、フィルム、電磁的装置(コンピュータ、ディスプレイやスピーカ等)等である。献立支援具100の各構成要素を詳説すると、次のとおりである。
【0054】
<食品分布図> 図3で示されるのは、食品分布図の構成である。食品分布図110に含まれているのは、ナトリウム含量軸110a、カリウム含量軸110b、食品110c、Na‐K比識別子110d、Na‐K比の等級110e、及び、セル110fである。
【0055】
<ナトリウム含量軸及びカリウム含量軸> 食品分布図110が有するのは、ナトリウム含量軸110a及びカリウム含量軸110bである。本実施の形態では、ナトリウム含量軸110aが縦軸であり、カリウム含量軸110bが横軸であるが、その逆でもよい。
【0056】
ナトリウム含量軸110a及びカリウム含量軸110bを採用することで、各食品の位置付けが視覚的に把握し易くなる。具体的には、各食品のナトリウム含量の高低及びカリウム含量の高低が把握し易いこと、各食品間のナトリウム含量の差及びカリウム含量の差が把握し易いこと、調味料(例えば、醤油や食塩など)使用時における各食品のナトリウム含量の高低の変化が把握し易いこと等である。
【0057】
ナトリウム含量軸110aが示すのは、食品の所定単位当たりのナトリウム含量である。ここで、「所定単位当たり」を例示すると、食品一食当たり、食品の任意の重さあたり(例えば、100g)等である。本実施の形態では、食品一食当たりのナトリウム含量を採用することで、献立の際、食品のナトリウム含量を大まかに理解することができる。
【0058】
本実施の形態では、カリウム含量軸110bが示すのは、食品の所定単位当たりのカリウム含量である。その他の説明は、ナトリウム含量軸110aの説明に同旨である。」
「 【0065】
<Na‐K比識別子> 食品分布図110に配置されているのは、Na‐K比識別子110dである。Na‐K比識別子110dで示されるのは、食品110cそれぞれのNa‐K比の等級110eである。Na‐K比識別子110dで示されるのは、Na‐K比の等級110eに限らず、例えば、Na‐K比自体でもよい。
【0066】
<食品それぞれのNa‐K比の等級> 前述のとおり、Na‐K比の等級とは、Na‐K比の区分けをいう。図3において、食品110cそれぞれのNa‐K比の等級110eで採用するのは、4つの等級である。4つの等級を構成するのは、「低い」、「中くらい」、「高い」、及び、「かなり高い」である。「低い」が示すのは、「一食当たりのカリウム含量>ナトリウム含量」である。「中くらい」が示すのは、「一食当たりのカリウム含量≒ナトリウム含量」である。「高い」が示すのは、「一食当たりのカリウム含量<ナトリウム含量」である。「かなり高い」が示すのは、「一食当たりのカリウム含量<<ナトリウム含量」である。
【0067】
<Na‐K比識別子の表示態様> 本実施の形態において、Na‐K比識別子110dの表示態様は、色である。Na‐K比識別子110dを表現するのは、4色であり、具体的には、緑色、黄色、橙色、及び赤色である。図3の表示態様は、その制約上、グレースケールであるが、「緑色」を表しているのが2番目の濃さ部分である。「黄色」を表しているのが4番目の濃さ(最も薄い)部分である。「橙色」を表しているのが3番目の濃さ部分である。「赤色」を表しているのが1番目の濃さ(最も濃い)部分である。緑色が示すのは、Na‐K比の等級「低い」である。黄色が示すのは、Na‐K比の等級「中くらい」である。橙色が示すのは、Na‐K比の等級「高い」である。赤色が示すのは、Na‐K比の等級「かなり高い」である。これらの色は、段階的に変化している。すなわち、Na‐K比が最も高ければ、赤色を呈する。他方、Na‐K比が最も低ければ、緑色を呈する。Na‐K比が両者の中間であれば、赤色と緑色との中間色である黄色を呈する。例えば、Na‐K比が1を超えると、赤味が強くなる。Na‐K比が1付近であれば、黄色を呈する。Na‐K比が1を下回ると、緑味が強くなる。また、黒及び白の二値を採用する場合、Na‐K比が最も高ければ、グレーの中でも黒色に近い色を呈する。他方、Na‐K比が最も低ければ、白色を呈する。Na‐K比が両者の中間であれば、黒色と白色との中間色(灰色)を呈する。例えば、Na‐K比が高いほど、黒味が強くなる。他方、Na‐K比が低いほど、白味が強くなる。」
「 【0078】
<献立支援システムにおける食品分布図の使用方法> 図4で示されるのは、食品分布図110の使用例である。この例において、ユーザが検討するのは、ご飯A、餃子B、及び味噌汁Cの組合せ(当初の献立)である。
【0079】
先ず、食品分布図110から把握されるのは、次のとおりである。ご飯Aは、カリウム優位(Na‐K比<1)の食品である。なぜなら、ご飯Aのセルの色は、薄い黄緑色だからである。餃子Bは、ナトリウム優位(Na‐K比>1)の食品である。なぜなら、餃子Bのセルの色は、橙色だからである。味噌汁Cは、ナトリウム優位(Na‐K比>1)の食品である。味噌汁Cのセルの色は、橙色だからである。このように、食品のセルの色を見れば、当該食品のNa‐K比が直観的に把握できる。
【0080】
次いで、当初の献立のNa‐K比の良否を把握する。当初の献立について、そのセルの色の内訳は、前述によれば、薄い黄緑色が1つ、橙色が2つである。そのような色の組合せから把握されるのは、当初の献立がナトリウム優位であることである。言い換えれば、当初の献立のNa‐K比は、不良である。
【0081】
次いで、当初の献立を見直す。その目的は、Na‐K比の改善である。Na‐K比が改善されることで、高血圧が防げる。当初の献立を見直す際の視点は、(1)ナトリウム含量及びカリウム含量が略同等であること、又は、(2)カリウムが優位であることである。例えば、カリウム優位(Na‐K比<1)を示すのは、緑色のセルである。緑色のセルを見渡すと、野菜ジュースDが配置されている。仮に、当初の献立に追加するものを野菜ジュースDとすると(見直し後の献立)、セルの色の内訳は、緑色が1つ、薄い黄緑色が1つ、橙色が2つである。この色の内訳が示すのは、見直し後の献立がカリウム優位であることである。言い換えれば、見直し後の献立のNa‐K比は、適正である。このように、セルの色を参考にすることで、献立の見直しが容易になる。
【0082】
セルの色が数値化されると、献立におけるNa‐K比の良否の判断がより簡単になる。例えば、前述の使用例において、黄色(Na‐K比≒1)が0点、薄い黄緑色が-1点、橙色が+2点、緑色が-4点とすれば、見直し後の献立における数値の内訳は、ご飯(-1点)、餃子(+2点)、味噌汁(+2点)、野菜ジュース(-4点)である。これらの数値の和は、-1点(=-1点+2点+2点-4点)である。この和は、0点より小さい。つまり、見直し後の献立のNa‐K比は、カリウム優位である。
【0083】
献立におけるNa‐K比の良否を判断する主体は、不問であり、例えば、人でもコンピュータでもよい。また、献立の良好、不良の判断は献立中の各食品のNa-K比に基づいて行ってもよい。」
「 【0087】
<食品分布図の変形例> 食品分布図110は、分割されてもよい。なぜなら、食品分布図110が一葉の場合、その視認性が芳しくないからである。本変形例では、食品分布図110を構成するのは、第1食品分布図111及び第2食品分布図112である。これらの詳細は、以下のとおりである。
・・・
【0090】
<第1選択群の食品> 第1食品分布図111に配置されるのは、第1選択群の食品111cである。第1選択群の食品111cとは、食品であって、後述する第2選択群の食品とは異なるものをいう。選択群の区分に影響する要素は、様々であるが、例示すると、食文化、カロリー、食品そのものの印象、被支援者の年代等である。本実施の形態において、第1選択群の食品111cは、メイン食品である。メイン食品に主に含まれるのは、主食及び主菜である。ここで、主食とは、食品であって、その主たる栄養素が炭水化物であるものをいう。主食を例示すると、ごはん、パン、麺類、これらの加工品(丼物、サンドウィッチ等)等である。また、主菜とは、食品であって、その主たる栄養素がタンパク質であるものをいう。主菜を例示すると、肉、魚、卵、これらの加工品(ハンバーグ、ウインナーやソーセージなど)である。もっとも、これらの分類は、原則にすぎない。例えば、本実施の形態では、豆類由来の食品(例えば、豆腐や納豆等)は、メイン食品ではない。豆腐由来の食品の扱いは、後述するサブ食品である。もちろん、豆類由来の食品は、メイン食品でもよい。また、被支援者の年代が異なれば、被支援者の食の好みも異なる。それ故、第1食品分布図111のうち被支援者の年代に対応するものを使用することで、献立支援がより細やかになる。
・・・
【0097】
<第2選択群の食品> 第2食品分布図112に配置されるのは、第2選択群の食品112cである。第2選択群の食品112cとは、食品であって、前述した第1選択群の食品とは異なるものをいう。本実施の形態において、第2選択群の食品112cは、サブ食品である。サブ食品に主に含まれるのは、主食及び主菜以外のものである。「主食及び主菜以外のもの」を例示すると、副菜、牛乳・乳製品、果物、汁物、ジュースなどである。ここで、副菜とは、食品であって、その主たる栄養素がビタミン、無機質又は食物繊維であるものをいう。副菜を例示すると、野菜、きのこ、いも類、これらの加工品(おひたし、サラダ等)等である。本実施の形態では、豆類由来の食品(例えば、豆腐や納豆等)は、サブ食品である。その他の説明は、前述の第1選択群の食品111cの説明に同旨である。」
「 【0111】
<献立提示具> 献立提示具200で示されるのは、第1選択群の食品及び第2選択群の食品の組合せである。具体的には、第1選択群の食品及び第2選択群の食品からそれぞれ1食品以上を選択すると、その組合せの良否を表示する。この良否の判定に用いられるのは、組み合わせ判定表120又は組み合わせ計算表130である。この組合せを決めるのに参照するのは、第1選択群の食品のNa‐K比又はその等級及び第2選択群の食品のNa‐K比又はその等級である。例えば、組合せるにあたり、第1選択群の食品のNa‐K比又はその等級が相対的に高ければ、第2選択群の食品のNa‐K比又はその等級は相対的に低くすればよい。これと異なる観点として、組合せるにあたり、Na‐K比又はその等級が相対的に低い食品の数は、Na‐K比又はその等級が相対的に高い食品の数と同じ又はそれよりも多いようにする。
【0112】
以上において、献立提示具200を具現化する方法は、不問であり、例えば、紙、フィルム、電磁的装置(コンピュータ、ディスプレイやスピーカ等)等である。食品の組合せ方を示す態様は、不問であり、例えば、点字、音、画像、振動等である。」
「 【0124】
<献立指導方法> 図10で示されるのは、献立指導方法の流れである。献立指導方法を構成するのは、食品提示(S11)、及び、指導(S13)である。当該方法において、指導者が使用しうるのは、献立支援具100である。その説明は、前述のとおりである。これらの工程(S11乃至S12)を詳説すると、次のとおりである。
【0125】
<食品提示(S11)>被指導者に提示されるのは、少なくとも2以上の食品のNa‐K比又はその等級である。それによって、被指導者が選択するのは、少なくとも2以上の食品である。選択される食品の詳細は、前述のとおりである。当該ステップにおいて、指導者が使用しうるのは、食品分布図110である。食品分布図110の説明は、前述のとおりである。
【0126】
<指導(S12)> 被指導者が指導されるのは、当該選択された食品の組合せ方である。被指導者が指導される際に参照されるのは、選択された食品のNa‐K比又はその等級である。・・・
・・・
【0129】
<食品提示の変形例> 食品提示(S11)は、細分化されてもよい。すなわち、第1の食品提示が実行されてから、第2の食品提示が実行される。これらの工程の具体的な説明は、以下のとおりである。
【0130】
当該第1の食品提示において、被指導者に提示されるのは、第1選択群の食品のNa‐K比又はその等級である。それによって、被指導者が選択するのは、少なくとも1以上の食品(以下、「第1選択食品」という。)である。第1選択群の食品の詳細は、前述のとおりである。当該ステップにおいて、指導者が使用しうるのは、第1食品分布図111である。第1食品分布図111の説明は、前述のとおりである。
【0131】
当該第2の食品提示において、被指導者に提示されるのは、第2選択群の食品のNa‐K比又はその等級である。それによって、被指導者が選択するのは、少なくとも1以上の食品(以下、「第2選択食品」という。)である。当該第2選択群の食品の詳細は、前述のとおりである。当該ステップにおいて、指導者が使用しうるのは、第2食品分布図112である。第2食品分布図112の説明は、前述のとおりである。
【0132】
これらの変形例を踏まえて、前述の指導(S12)において、被指導者が指導されるのは、当該第1選択食品及び当該第2選択食品の組合せ方である。被指導者が指導される際に参照されるのは、当該第1選択食品のNa‐K比又はその等級、及び当該第2の選択食品のNa‐K比又はその等級である。例えば、第1食品分布図111及び第2食品分布図112が使用される場合、第1選択群の食品が選択され、その識別子が「赤色」であれば、指導内容は、例えば第2選択群の食品のうち、その識別子が「緑色」のものを選択することである。これと異なる観点として、組合せ方において、Na‐K比又はその等級が相対的に低い食品の数とNa‐K比又はその等級が相対的に高い食品の数とを比較して、前者が後者と同じ又はそれよりも多ければ、指導内容は、例えば、組合せが「良好」或いは「大変よくできました。」である旨である。他方、前者が後者よりも少なければ、指導内容は、例えば、組合せが「不良」、「ナトリウムが多い、或いは、カリウムが少ない。」、或いは、「頑張りましょう。」である旨であり、より具体的な指導内容は、Na‐K比又はその等級が相対的に低い食品の数を増やす旨である。更には、どのような食品や料理にナトリウムおよびカリウムが多いのか、少ないのかについての理解を求めることである。例えば、第1食品分布図111及び第2食品分布図112が使用される場合、組合せにおいて、「緑色」の食品の数と「赤色」又は「橙色」食品の数とを比較して、前者が後者よりも少なければ、指導内容は、組合せが「不良」、「ナトリウムが多い、或いは、カリウムが少ない。」、或いは、「頑張りましょう。」である旨であり、より具体的な指導内容は、「緑色」の食品の数を増やす旨である。」
「 【0157】
<本実施の形態の効果> そのような構成で奏される効果は、以下のとおりである。第1に、同一食品群の食品を一つの表とすることで、主食及び主菜間のNa‐K比又はその等級を比較し、副菜やデザートなどの間のNa‐K比又はその等級を比較するのが容易である。例えば、白米のNa‐K比及びハンバーグのNa‐K比を比較するのが容易である。それ故、上述した各種システムや方法において食品の組み合わせ(献立)を容易に選択できるようになる。第2に、第1選択群の食品、第2選択群の食品を別の表とすることで、異なる食品群の食品間のNa‐K比の傾向を把握するのが容易である。例えば、主菜のNa‐K比及び副菜のNa‐K比を比較すると、後者のNa‐K比が優れているものが多いことが容易に把握される。第3に、食品の良好な組合せ方の指導が容易である。例えば、主菜のNa‐K比が芳しくなくても、Na‐K比が良好な副菜の摂取を促せる。それ故、上述した各種システムや方法において食品の組み合わせ(献立)を容易に選択できるようになる。」
「【図3】
[図:0001425576000001.jpg]
」
「【図4】
[図:0001425576000002.jpg]
」
「【図10】
[図:0001425576000003.jpg]
」
(4)本件補正発明の技術分野、背景技術、課題、効果について
ア 技術分野
本件補正発明は、献立支援システム、献立支援具、献立支援プログラム、献立指導方法、食品提供方法、及び、食品製造方法に関する。(【0001】)
イ 背景技術
高血圧の予防及び改善のための食塩摂取量の制限(減塩)においては、食塩(ナトリウム)摂取量及びカリウム摂取量に着目し、尿中におけるカリウムに対するナトリウムの比(Na‐K比)を改善(K優位)することが必要である。
このような背景から、従来技術として、Na‐K比計測器及びナックカウント表を用い、被指導者の尿中のNa‐K比の測定と、ナックカウント表を参照して、Na‐K比の低い食品の選択、或いは、食品の組合せを意識することを指導する食事指導を通じて、食事指導の効果を実感させる技術が提案されている。(【0002】~【0009】)
ウ 解決しようとする課題
本件補正発明が解決しようとする課題は、従来技術のナックカウント表を用いた食事指導の問題点を解決し、食事指導し易くし、或いは、献立(食品を組み合わせること)をし易くすることであり、具体的には、以下の2つの観点で従来技術の問題点を指摘している。(【0010】~【0012】)
(ア)第1の観点
従来技術において使用されていたナックカウント表は、一方の軸でNa‐K比を示すものであるが、慣用されている指標は、ナトリウム含量であって、Na‐K比が示されたナックカウント表は、各食品のナトリウム含量の高低が把握し難く、各食品間のナトリウム含量の差が把握し難いこと、及び、各自の好みにより追加する調味料(例えば、醤油や食塩など)使用時における各食品のナトリウム含量の高低の変化が把握し難いこと等の問題点があった。
(イ)第2の観点
ナックカウント表では、異なる分類の食品が混載されているため、同じ分類の食品(例えば、主食や主菜など)のNa‐K比を比較し難く、特定の分類の食品(例えば、主食や主菜など)のNa‐K比の悪さを気付き難いこと、及び、複数の食品を組合せ(献立)ることによってNa‐K比をうまく整えることができたのかが判り難いこと等の問題点があった。
エ 課題を解決するための手段
本件補正発明の「献立指導方法」は、少なくとも、「第1の食品提示」、「第2の食品提示」、「指導」の工程から構成されるものであって、上記ウ(ア)の第1の観点から、「食品分布図」に「ナトリウム含量軸及びカリウム含量軸を採用することで、各食品のナトリウム含量及びカリウム含量又は/並びにNa‐K比を視覚的に把握し易くする」ことに加え、上記ウ(イ)の第2の観点から、「食品群(例えば、主食及び主菜並びに副菜等)を分けて、献立に含まれる各食品一食当たりのカリウム含量に対するナトリウム含量(Na‐K比)を把握し易くする」ものである。
オ 効果
本件補正発明によれば、「食事指導し易くし、或いは、献立し易くする」ことができる。(【0027】)
(5)本件補正発明の各構成要件について
ア 構成要件Aについて
構成要件Aは、本件補正発明について、構成要件Bの「食品分布図」を備える「献立支援システム」を用いた「献立指導方法」であり、(ア)献立指導に関する方法の発明であること、(イ)献立指導において「食品分布図」を備える「献立支援システム」を用いること、を特定している。
このうち、(イ)の「献立支援システム」は、本願明細書の段落【0029】の記載によれば、「少なくとも、献立支援具、及び、献立提示具」によって構成され、「献立支援具」が「食品分布図」によって構成されるところ、段落【0053】の記載によれば、「献立支援具」を具現化する方法は不問であって、「例えば、紙、フィルム、電磁的装置(コンピュータ、ディスプレイやスピーカ等)等」と記載されているように、「食品分布図」が紙やフィルムに示されたものを含むものである。
なお、段落【0111】、【0112】の記載によれば、「献立提示具」は「第1選択群の食品及び第2選択群の食品の組合せ」を示し、「1選択群の食品及び第2選択群の食品からそれぞれ1食品以上を選択すると、その組合せの良否を表示する」ものであるところ、「献立提示具」を具現化する方法も不問であって、「例えば、紙、フィルム、電磁的装置(コンピュータ、ディスプレイやスピーカ等)等」と記載されているように、「組合せの良否」が紙やフィルムに示されたものを含むものである。
イ 構成要件Bについて
構成要件Bは、「食品分布図」が「ナトリウム含量軸及びカリウム含量軸」を有し、そこに「食品」と、「各食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級」を示す「Na‐K比識別子」が「配置される」ものである旨を特定している。
ここで、「ナトリウム含量軸及びカリウム含量軸」を有する「食品分布図」は、上記(4)ウ(ア)の「第1の観点」による問題点に対応するものといえる。具体的には、従来技術において使用されていたナックカウント表が有する、「各食品のナトリウム含量の高低が把握し難く、各食品間のナトリウム含量の差が把握し難い」、及び、「各自の好みにより追加する調味料(例えば、醤油や食塩など)使用時における各食品のナトリウム含量の高低の変化が把握し難い」という課題の解決手段として、「ナトリウム含量軸及びカリウム含量軸」を有する「食品分布図」を用い、そこに「食品」と、「各食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級」を示す「Na‐K比識別子」が「配置される」旨を特定するものである。
ウ 構成要件Cについて
構成要件Cは、「献立指導方法」が、構成要件Dの「第1の食品提示」、構成要件Eの「第2の食品提示」、構成要件Fの「指導」の各工程を含むことを特定している。
エ 構成要件D、構成要件Eについて
(ア)構成要件Dは、「第1の食品提示」の工程として、「前記食品分布図に配置された第1選択群の食品及び当該食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級」を「献立支援システムによって被指導者に提示」し、「当該提示された第1選択群の食品」から、「少なくとも1以上の食品」が「第1選択食品」として「被指導者に選択される」ことを特定している。
同様に、構成要件Eは、「第2の食品提示」の工程として、「前記食品分布図に配置された第2選択群の食品及び当該食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級」を「献立支援システムによって被指導者に提示」し、「当該提示された第2選択群の食品」から、「少なくとも1以上の食品」が「第2選択食品」として「被指導者に選択される」ことを特定している。
ここで、食品提示の工程を細分化して、「第1の食品提示」と「第2の食品提示」に分けて実行することは、上記(4)ウ(イ)の「第2の観点」による問題点に対応するものといえる。具体的には、従来技術において使用されていたナックカウント表が有する、「異なる分類の食品が混載されているため、同じ分類の食品(例えば、主食や主菜など)のNa‐K比を比較し難く、特定の分類の食品(例えば、主食や主菜など)のNa‐K比の悪さを気付き難い」、及び、「複数の食品を組合せ(献立)ることによってNa‐K比をうまく整えることができたのかが判り難い」という課題の解決手段として、構成要件D、Eとして特定されるように、(a)「第1選択群の食品」と「第2選択群の食品」を分けて提示する旨、及び、(b)それぞれから「少なくとも1以上の食品」が選択される旨、を特定事項とするものである。
(イ)上記(ア)で示した解決手段の特定事項(a)に関し、本願明細書の段落【0087】、【0090】、【0097】には、「食品分布図110が一葉の場合、その視認性が芳しくない」ことから、「食品分布図110」を「第1食品分布図111」及び「第2食品分布図112」に分割し、「第1食品分布図111」には「主食及び主菜」である「メイン食品」を「第1選択群の食品111c」として配置し、「第2食品分布図112」には「副菜、牛乳・乳製品、果物、汁物、ジュースなど」である「サブ食品」を「第2選択群の食品112c」として配置することが記載されている。また、ここでいう「主食」とは、「ごはん、パン、麺類、これらの加工品(丼物、サンドウィッチ等)等」で例示される「主たる栄養素が炭水化物である」食品であり、「主菜」とは、「肉、魚、卵、これらの加工品(ハンバーグ、ウインナーやソーセージなど)」で例示される「主たる栄養素がタンパク質である」食品であり、「副菜」とは、「野菜、きのこ、いも類、これらの加工品(おひたし、サラダ等)等」で例示される「主たる栄養素がビタミン、無機質又は食物繊維である」食品である。
ここで、上記(4)ウ(イ)の「第2の観点」は、異なる分類の食品が混載された食品分布図の場合、同じ分類の食品(例えば、主食や主菜など)のNa‐K比を比較し難く、特定の分類の食品(例えば、主食や主菜など)のNa‐K比の悪さを気付き難いことを課題認識とするものであるところ、各食品を「主食」、「主菜」、「副菜」等のいずれかに分類することは人為的な取決めであるから、食品提示において、そのような人為的取決めに従って分類された各食品を「第1選択群の食品」と「第2選択群の食品」に分けて提示することは、人間の精神活動に基づくことである。
(ウ)上記(ア)で示した解決手段の特定事項(b)に関し、本願明細書の段落【0130】、【0131】の記載によれば、「第1の食品提示」、「第2の食品提示」のいずれの工程においても、被指導者に「食品分布図」に配置された「食品及び当該食品のNa‐K比又はその等級」を提示することにより、被指導者が「少なくとも1以上の食品」を選択するものであり、被指導者が「少なくとも1以上の食品」を「第1選択食品」又は「第2選択食品」として選択することは、人間の精神活動にすぎないことである。
(エ)以上を踏まえると、構成要件D、Eは、「異なる分類の食品が混載されている」場合に、「同じ分類の食品(例えば、主食や主菜など)のNa‐K比を比較し難く、特定の分類の食品(例えば、主食や主菜など)のNa‐K比の悪さを気付き難い」、及び、「複数の食品を組合せ(献立)ることによってNa‐K比をうまく整えることができたのかが判り難い」という課題の解決手段として、上記(ア)の特定事項(a)、(b)を特定したものであるところ、特定事項(a)、(b)は、いずれも人間の精神活動にすぎないから、構成要件D、Eのそれら自体は、自然法則を利用したものとはいえない。
オ 構成要件Fについて
(ア)構成要件Fは、「指導」の工程として、「献立支援システムによって」被指導者に「前記第1選択食品及び前記第2選択食品の組合せ方」を指導すること、また、その際に「前記第1選択食品のNa‐ K比又はNa‐K比の等級、及び前記第2選択食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級」を参照することを特定している。
ここで、「指導」の工程として、「前記第1選択食品のNa‐ K比又はNa‐K比の等級、及び前記第2選択食品のNa‐K比又はNa‐K比の等級」を参照して、「献立支援システムによって」被指導者に「前記第1選択食品及び前記第2選択食品の組合せ方」を指導することは、上記(4)ウの「食事指導し易くし、或いは、献立(食品を組み合わせること)をし易くする」という問題点に対応するものであるといえる。
(イ)本願明細書の段落【0132】には、「指導(S12)」の工程に関し、被指導者が「当該第1選択食品及び当該第2選択食品の組合せ方」を指導されること、被指導者が指導される際に、「当該第1選択食品のNa‐K比又はその等級、及び当該第2の選択食品のNa‐K比又はその等級」が参照されることが記載されており、具体例として、「第1選択群の食品が選択され、その識別子が「赤色」であれば」、「第2選択群の食品のうち、その識別子が「緑色」のものを選択する」よう指導することや、「Na‐K比又はその等級が相対的に低い食品の数とNa‐K比又はその等級が相対的に高い食品の数とを比較して、前者が後者と同じ又はそれよりも多ければ」、「組合せが「良好」或いは「大変よくできました。」である旨」を指導し、「他方、前者が後者よりも少なければ」、「組合せが「不良」、「ナトリウムが多い、或いは、カリウムが少ない。」、或いは、「頑張りましょう。」」であり、「Na‐K比又はその等級が相対的に低い食品の数を増やす旨」を指導することが記載されている。
また、本願明細書の段落【0078】~【0082】には、献立支援システムにおける食品分布図の使用方法の具体例として、ユーザが「ご飯A、餃子B、及び味噌汁Cの組合せ(当初の献立)」を検討する場合、先ず、食品分布図から「ご飯A」、「餃子B」、「味噌汁C」のそれぞれの「セルの色」を見ることにより、「当該食品のNa‐K比」を直感的に把握した後、「当初の献立のNa‐K比の良否」を「セルの色の内訳」から把握し、「次いで、当初の献立を見直」し、「見直し後の献立のNa‐K比」が適正(カリウム優位)となるように、例えば「カリウム優位(Na‐K比<1)」を示す「緑色のセル」に配置された「野菜ジュースD」を「当初の献立に追加する」例が記載されている。そして、段落【0083】には、「献立におけるNa‐K比の良否を判断する主体は、不問であり、例えば、人でもコンピュータでもよい」ことが記載されている。
(ウ)上記(イ)によれば、構成要件Fによって特定される「指導」の工程は、(a)構成要件D及び構成要件Eで選択された食品の組合せからなる「当初の献立」に関し、「献立支援システムにおける食品分布図」から選択された食品に対応する(「セルの色」等によって示される)「Na‐ K比又はNa‐K比の等級」を「確認」し、(b)「セルの色の内訳」等から「当初の献立のNa‐K比の良否」を「判断」し、(c)判断の結果を踏まえて、「献立のNa‐K比」が適正(カリウム優位)となるように、カリウム優位の食品を「当初の献立に追加する」等の「指導」を行う、という手順を含むものであるといえる。
ここで、上記(a)の選択された食品に対応する「Na‐ K比又はNa‐K比の等級」の「確認」は、指導者や被指導者であるユーザが、「食品分布図」において当該食品に対応する「セルの色」等を視覚的に確認することにより行われることであって、人間の精神活動にすぎない。
また、上記(b)の「当初の献立のNa‐K比の良否」の「判断」に関しても、当該判断の主体は不問であって、「人でもコンピュータでもよい」のであるから、人間の精神活動にすぎない。
さらに、上記(c)の「献立のNa‐K比」の「指導」に関しても、「献立支援システムにおける食品分布図」を用いて「当初の献立のNa‐K比の良否」を「判断」した結果を踏まえ、「献立のNa‐K比」が適正(カリウム優位)となるように、指導者が被指導者に指導するのであるから、人間の精神活動にすぎない。
(エ)以上を踏まえると、構成要件Fの「指導」の工程は、「食事指導し易くし、或いは、献立(食品を組み合わせること)をし易くする」という課題の解決手段として特定されたものであって、具体的には、上記(ウ)に示した(a)~(c)の手順を含むものであるところ、これら(a)~(c)の手順は、いずれも人間の精神活動にすぎないから、構成要件Fそれ自体は、自然法則を利用したものとはいえない。
(6)本件補正発明の技術的意義
以上によれば、本件補正発明は、「食事指導し易くし、或いは、献立(食品を組み合わせること)をし易くする」ことを課題及び効果として、構成要件A~Fにより特定される「食品分布図を備える献立支援システム」を用いた「献立指導方法」の方法発明であるところ、「献立指導方法」を構成する構成要件Dの「第1の食品提示」及び構成要件Eの「第2の食品提示」並びに構成要件Fの「指導」の各工程は、いずれも人間の精神活動であって、「第1の食品提示」、「第2の食品提示」、「指導」の各工程を含む「献立指導方法」であること自体によって、自然法則の利用性を肯定することはできない。
よって、本件補正発明が解決しようとする課題、本件補正発明の構成及びその構成から導かれる効果等の技術的意義に照らして全体として考察した結果、本件補正発明は、その課題解決に当たって、専ら、人間の精神活動それ自体に向けられたものであるといわざるを得ず、「自然法則を利用した技術的思想の創作」ということはできない。
(7)審判請求人の審判請求書における主張について
審判請求人は、審判請求書において、本件補正発明の発明該当性に関し、「請求項1の「献立指導方法」が、「食品分布図を備える献立支援システム」を、「第1の食品提示」「第2の食品提示」「指導」に用いることで、「食事指導し易くし、或いは、献立(食品を組み合わせること)をし易くすること」という本願発明の課題を解決するための技術的手段とするものであることが特定され」たものであり、これにより、「請求項1の「第1の食品提示」「第2の食品提示」「指導」が人間の行為によるものではなく、自然法則を利用したものであることが明らか」となった旨主張している。
しかしながら、上記(5)エ、オ、及び上記(6)に示したとおり、請求項1に記載の「献立指導方法」を構成する構成要件Dの「第1の食品提示」及び構成要件Eの「第2の食品提示」並びに構成要件Fの「指導」の各工程は、いずれも人間の精神活動にすぎず、これらの各工程において「食品分布図を備える献立支援システム」を用いることが特定されているとしても、全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」ということはできない。
したがって、審判請求人の上記主張は採用することができない。
(8)小括
よって、本件補正発明は、全体として自然法則を利用した技術的思想の創作であるとはいえず、特許法第2条第1項に規定された「発明」に該当するとはいえないから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 補正の却下の決定についてのむすび
以上のとおり、本件補正発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和6年9月24日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~6に係る発明は、令和6年5月13日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定(令和6年6月21日付け拒絶査定)の拒絶の理由は、この出願の請求項1~6に記載されたものは、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない、というものである。
3 当審の判断
本願発明は、前記第2の[理由]3で検討した本件補正発明の「献立指導方法」並びに当該「献立指導方法」を構成する「第1の食品提示」、「第2の食品提示」、「指導」の各工程において、「(食品分布図を備える)献立支援システム」を用いる旨の限定を削除し、「第1の食品提示」、「第2の食品提示」、「指導」の各工程が「指導者から」されるものであるとしたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を減縮したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]3に記載したとおり、全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」ということはできないから、本願発明も、全体として「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるとはいえず、特許法第2条第1項に規定された「発明」に該当するとはいえないものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-015149