特許拒絶査定不服審判
2024-008920
看護支援装置及びプログラム
- 審判番号
- 2024-008920
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-070480
- 請求日
- 2024年05月29日
- 審決日
- 2025年02月20日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】学校法人北里研究所
- 【請求人代理人】棚井 澄雄
- 【請求人代理人】飯田 雅人
- 審判長/審判官
- 審判長 相崎 裕恒
- 審判官 月野 洋一郎
- 審判官 間野 裕一
- 分類
- P18 .121-Z (G16H) / P18 .575-Z (G16H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020- 70480「看護支援装置及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年10月21日出願公開、特開2021-168014〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年4月9日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年 8月 9日付け:拒絶理由通知書
同年10月 3日 :意見書、手続補正書
同年11月15日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年12月22日 :意見書、手続補正書
令和6年 3月12日付け:補正の却下の決定、拒絶査定
同年 5月29日 :審判請求書、手続補正書
同年 8月 6日付け:前置報告書
第2 令和6年5月29日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年5月29日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の請求項1に記載された発明
本件補正は、特許請求の範囲についてされたものであり、本件補正後の請求項1の記載は、次のとおりである(以下、本件補正後の請求項1に記載された発明を「本願補正発明」という。また、下線部は、本件補正により補正された箇所を示す。)。
「 患者の病室又は患者の身体に取り付けられたセンサを通じてセンサ情報を取得する取得部と、
前記センサ情報に基づいて患者の状態又は行動を推定する推定部と、
前記推定された状態又は行動に基づいて当該患者に対するアドバイス又は問診を提供する提供部と、
を備え、
前記取得部は、スピーカから発せられた質問に対する患者の回答した音として、自然言語の中から読み取れる情報に加えて患者の呼吸情報を取得し、
前記取得部が、スピーカから発せられた質問に対する患者の自然言語による回答を音として取得した場合、前記推定部が当該音に含まれる身体の部位、痛みおよびその程度を表す特定の用語を情報として抽出し、
前記取得部が、スピーカから発せられた質問とは関係のない音を取得した場合、当該音が窒息、無呼吸状態および喘息の少なくともいずれか一つに該当するか否かを判定し、当該音が窒息、無呼吸状態および喘息の少なくともいずれか一つを示す場合に、その旨を医療従事者に送信する、
看護支援装置。」
(2)本件補正前の請求項1に記載された発明
本件補正前の請求項1(令和5年10月3日の手続補正による補正後の請求項1)の記載は、次のとおりである。
「 患者の病室又は患者の身体に取り付けられたセンサを通じてセンサ情報を取得する取得部と、
前記センサ情報に基づいて患者の状態又は行動を推定する推定部と、
前記推定された状態又は行動に基づいて当該患者に対するアドバイス又は問診を提供する提供部と、
を備え、
前記取得部は、スピーカから発せられた質問に対する患者の回答した音として、自然言語の中から読み取れる情報に加えて患者の呼吸情報を取得し、当該呼吸情報が窒息、無呼吸状態および喘息の少なくともいずれか一つを示す場合に、その旨を医療従事者に送信する、
看護支援装置。」
2 補正の適否について
(1)補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「推定部」について、「取得部が、スピーカから発せられた質問に対する患者の自然言語による回答を音として取得した場合」に「当該音に含まれる身体の部位、痛みおよびその程度を表す特定の用語を情報として抽出」するものであるとの事項(以下「補正事項1」という。)を付加するとともに、「取得部」について、補正前の「当該呼吸情報」が「窒息、無呼吸状態および喘息の少なくともいずれか一つを示す場合」に「その旨」を「医療従事者に送信する」旨の記載を、補正後に「スピーカから発せられた質問とは関係のない音」を取得した場合における「当該音」が「窒息、無呼吸状態および喘息の少なくともいずれか一つに該当するか否か」を「判定」し、当該音が「窒息、無呼吸状態および喘息の少なくともいずれか一つを示す場合」に「その旨」を「医療従事者に送信する」旨の記載へと変更する(以下「補正事項2」という。)ものである。
そして、補正事項1及び補正事項2は、本願の願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)の段落【0030】、【0031】等の記載からみて、当初明細書に記載した事項の範囲内のものである。また、補正事項1は、発明特定事項を限定しようとするものであり、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明(本願補正発明)の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であり、補正事項2は、「窒息、無呼吸状態および喘息の少なくともいずれか一つに該当するか否か」を示す「患者の自然言語による回答」以外の「音」として取得される「患者の呼吸情報」を「スピーカから発せられた質問とは関係ない音」であると言い換えることで、その内容を明確にしたものであるといえ、補正前後で実質的な記載の意味が変わらないものといえるから、補正事項1と補正事項2を含む本件補正による請求項1の補正を全体としてみると、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(本件補正が同条6項において準用する同法126条7項に規定される要件に適合するか)について、以下検討する。
(2)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(3)引用文献の記載、引用発明等
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された文献であって、本願の出願日前に公開された特開2019-216820号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は当審において付与した。以下同じ。)。
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
使用者の要求及び容体に対応して使用者を支援できる支援システムを提供する。」
「【0009】
1.第1実施形態
第1実施形態に係る支援システムについて説明する。以下では、例えば病院において、支援システム1が用いられ、支援システム1の端末機30が、入院患者一人につき1台与えられている場合について説明する。なお、支援システム1の端末機30は、複数人、例えば同じ病室に入院している複数の患者に対して1台与えられていてもよい。
【0010】
1.1 支援システムの全体構成
まず、支援システム1の全体構成について、図1を用いて説明する。」
「【0014】
端末機30は、使用者から取得した生体情報、または使用者との会話により得られた会話情報等に基づいて、使用者の容体及び使用者の要求等を確認し、使用者の支援を行う。
【0015】
1.2 端末機の構成
次に、端末機30の構成について、図2を用いて説明する。
【0016】
図2に示すように、端末機30は、無線通信回路31、会話スイッチ32、マイクロフォン33、スピーカー34、入力回路35、出力回路36、制御回路37、及びメモリ38を含む。なお、端末機30は、例えば、対話機能を有するロボット等に搭載されていてもよい。
【0017】
無線通信回路31は、入力回路35及び出力回路36に接続され、ホストサーバ10、中継器20、または外部機器との無線通信に用いられる。より具体的には、例えば、無線通信回路31は、ナースコール(以下、単に「NC」とも表記する)の管理システム、患者の生体情報のモニタリング装置、病室またはベッド脇まで物品(飲料水、車椅子、カート、IVポール等)を搬送する自動搬送装置、周辺機器(病室内に設置された照明、カーテン、及びテレビ等)、外部データベース、クラウドコンピュータ、医療用情報端末機、医療設備、または他の端末機30(例えば、病室内に他の患者がいる場合、他の患者が利用している端末機30)等と、ホストサーバ10及び中継器20を介して、または上記機器と直接信号の送受信を行う。また、無線通信回路31は、例えば在宅患者等が端末機30を使用する場合に、電話回線またはネットワーク回線等を介して端末機30とホストサーバ10とが通信する際に用いられる。生体情報のモニタリング装置の1つとして、例えば、ベッドに在床している患者の睡眠及び覚醒、患者の起き上がり(体動)、呼吸、及び心拍等をモニタリングする「眠りSCANTM」がある。以下、本実施形態では、無線通信回路31が、眠りSCANTMから覚醒信号、起き上がり信号、呼吸信号、及び心拍信号を受信する場合について説明する。なお、無線通信回路31は、眠りSCANTMに限定されず、例えば患者に装着されたウェアラブル端末機等の他のセンシングデバイスから生体情報に関する信号を受信してもよい。」
「【0019】
マイクロフォン33は、入力回路35に接続され、使用者と会話をする際に用いられる。
【0020】
スピーカー34は、出力回路36に接続され、使用者と会話する際、あるいは、必要な情報を使用者に音声で知らせる場合に用いられる。」
「【0033】
1.3 支援動作の流れの一例
次に、支援システム1による使用者への支援動作の流れの一例について、図2及び図3を用いて説明する。
【0034】
図2に示すように、まず、制御回路37は、端末機30に信号が入力される(ステップS10)と支援動作を開始する。より具体的には、制御回路37は、例えば、ナースコールの管理システムから患者がナースコールを発報させた旨を知らせる信号(以下、「NC信号」と表記する)を受信した場合、眠りSCANTMから患者の覚醒信号及びベッドからの起き上がり信号を受信した場合、眠りSCANTMから受信している呼吸信号または心拍信号の変化を検知した場合、または会話スイッチ32の信号を受信した場合等に、支援動作を開始する。
【0035】
制御回路37は、覚醒信号を受信した場合、すなわち患者が覚醒している場合(ステップS11_Yes)、呼吸信号に基づいて患者の呼吸が正常か確認する。他方で、制御回路37は、患者が覚醒していない場合(ステップS11_No)、すなわち睡眠中の場合、支援動作を終了させる。
【0036】
制御回路37は、患者の呼吸が正常である場合(ステップS12_Yes)、心拍信号に基づいて患者の心拍が正常か確認する。
【0037】
制御回路37は、患者の呼吸が正常ではない場合(ステップS12_No)または、患者の心拍が正常ではない場合(ステップS13_No)、NC信号の受信の有無を確認し、ナースコールが発報されているか確認する。
【0038】
制御回路37は、ナースコールが発報されていない場合(ステップS14_No)、管理システムにナースコールの発報を指示する信号を送信する(ステップS15)。」
「【0043】
制御回路37は、患者と会話をする場合(ステップS18_Yes)、入力情報等に基づいてメモリ38に記憶されている複数の会話文に優先順位をつけて(ステップS19)、患者との会話の内容を決定する。より具体的には、患者が覚醒した時間、過去の会話や支援の内容、及び患者の状態(覚醒信号、起き上がり信号、呼吸信号、及び心拍信号等)等から優先順位が高い会話文を決定する。例えば、過去の会話の実績から覚醒後に飲料水を要求される可能性が高い場合、飲料水が必要か確認する会話文の優先順位を高くする。また、例えば、患者が起き上がってベッドの端に移動している場合、時間帯あるいは排泄センサー等の結果から排泄しようとしている可能性が高い場合、看護師の補助、車椅子またはIVポールの手配等が必要か確認する会話文の優先順位を高くする。なお、制御回路37は、時間帯や同じ病室の他の患者の状態等に基づいて、会話文または音量を決定してもよい。より具体的には、例えば、他の端末機30とアクセスして他の患者が就寝中であることが確認できた場合、制御回路37は、病室外への移動を促す会話文を選択してもよく、会話の音量を小さく設定してもよい。
【0044】
図3に示すように、端末機30は、優先順位付けした会話文に基づいて患者と会話をする(ステップS20)。
【0045】
制御回路37は、会話の内容を確認する(ステップS21)。
【0046】
制御回路37は、会話の内容が不明確な場合(ステップS22_Yes)、すなわち、会話が聞き取れなかった場合、ステップS20に戻り、再度患者と会話して、会話の内容を再確認する。
【0047】
制御回路37は、会話の内容が明確な場合(ステップS22_No)、すなわち、会話が聞き取れた場合、会話の内容から患者に支援を行うか否かを決定する。」
「【0070】
2.2 第2例
次に、第2例について説明する。第2例は、端末機30が就寝中の患者に対して排泄を促す場合について説明する。
【0071】
端末機30は、例えば、患者に取り付けられた排泄センサーからの入力信号、または時間等に応じて、就寝中の患者に声掛けを行い、トイレに行くように促す。」
「【図1】
[図:0001422219000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001422219000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001422219000003.jpg]
」
「【図4】
[図:0001422219000004.jpg]
」
(イ)引用発明
上記(ア)によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 使用者の要求及び容体に対応して使用者を支援できる支援システムであって(【0004】)、
病院において支援システム1が用いられ、支援システム1の端末機30が、入院患者に与えられており(【0009】)、
端末機30は、使用者から取得した生体情報、または使用者との会話により得られた会話情報等に基づいて、使用者の容体及び使用者の要求等を確認し、使用者の支援を行うものであって(【0014】)、
端末機30は、マイクロフォン33、スピーカー34、制御回路37、及びメモリ38を含み(【0016】)、
生体情報のモニタリング装置として、ベッドに在床している患者の睡眠及び覚醒、患者の起き上がり(体動)、呼吸、及び心拍等をモニタリングする「眠りSCANTM」があり(【0017】)、
マイクロフォン33は、使用者と会話をする際に用いられ(【0019】)、
スピーカー34は、使用者と会話する際に用いられ(【0020】)、
制御回路37は、覚醒信号を受信した場合、すなわち患者が覚醒している場合、呼吸信号に基づいて患者の呼吸が正常か確認し(【0035】)、
制御回路37は、患者の呼吸が正常ではない場合、ナースコールが発報されているか確認し(【0037】)、
制御回路37は、ナースコールが発報されていない場合、管理システムにナースコールの発報を指示する信号を送信し(【0038】)、
制御回路37は、患者と会話をする場合、メモリ38に記憶されている複数の会話文に優先順位をつけて、患者との会話の内容を決定するものであって、患者が覚醒した時間、過去の会話や支援の内容、及び患者の状態(覚醒信号、起き上がり信号、呼吸信号、及び心拍信号等)等から優先順位が高い会話文を決定し、過去の会話の実績から覚醒後に飲料水を要求される可能性が高い場合、飲料水が必要か確認する会話文の優先順位を高くし、患者が起き上がってベッドの端に移動している場合、時間帯あるいは排泄センサー等の結果から排泄しようとしている可能性が高い場合、看護師の補助、車椅子またはIVポールの手配等が必要か確認する会話文の優先順位を高くし(【0043】)、
端末機30は、優先順位付けした会話文に基づいて患者と会話をし(【0044】)、
制御回路37は、会話の内容を確認し(【0045】)、
制御回路37は、会話が聞き取れた場合、会話の内容から患者に支援を行うか否かを決定し(【0047】)、
端末機30は、患者に取り付けられた排泄センサーからの入力信号に応じて、就寝中の患者に声掛けを行い、トイレに行くように促す(【0071】)、
支援システム。」
イ 引用文献2
(ア)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用された文献であって、本願の出願日前に公開された特開2012-24391号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、生体に装着する音センサの装着位置の適否を判定する判定装置および判定方法に関する。」
「【0032】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1~図4に基づいて説明すれば、以下のとおりである。本実施形態では、無呼吸状態を検出する計測装置(測定位置判定装置)30について説明するが、本発明は無呼吸状態を検出する計測装置に限定されず、被験者(生体)に装着され、生体音を検出する音センサを備える計測装置であればよく、無呼吸症以外の症状を検出する計測装置にも適用できる。」
「【0034】
計測装置30は、音センサ(生体音センサ)20の装着位置の好ましさを判定音などによって被験者に知らせることで、適切な位置に音センサ20を装着させるよう被験者を誘導するものである。図1は、計測装置30の構成を示す概略図である。同図に示すように、計測装置30は、解析装置1および音センサ20を備えている。
【0035】
<音センサ20>
音センサ20は、被験者の胸などに装着され、当該被験者が発する呼吸音を検出する密着型のマイクロフォンである。音センサ20として、例えば特開2009-233103号公報に記載の密着マイクロフォンを利用できる。図2は、音センサ20の構成を示す断面図である。同図に示すように、音センサ20は、いわゆるコンデンサマイクロフォン方式の集音ユニットであり、円柱形状で一端面が開口した筐体部21と、筐体部21の開口面を閉塞するように筐体部21に密着したダイアフラム23とを備えている。また、音センサ20は、第1変換部25および第2変換部27を搭載した基板28と、第1変換部25および第2変換部27に電源を供給するバッテリ部29とを備えている。」
「【0041】
<解析装置1>
解析装置1は、音センサ20から送信された生体音データを用いて被験者の無呼吸状態を検出する。図1に示すように、解析装置1は、主制御部2、記憶部7、操作部8、表示部9およびスピーカ(報知部)10を備えており、主制御部2は、生体音抽出部(音データ取得手段)3、位置判定部(判定手段)4、症状検出部5およびデータ解析部6を備えている。」
「【0055】
<症状検出部5>
症状検出部5は、生体音抽出部3が抽出した測定対象音の振幅、発生パターンなどを解析することにより、特定の症状を検出する。本実施形態では、症状検出部5は無呼吸状態を検出する。例えば、症状検出部5は、所定の振幅以上の振幅を有する呼吸音が10秒間以上検出されなかった場合に、無呼吸状態であると判定する。症状の検出結果は、当該症状を検出した日時の情報とともに検出記録データとして記憶部7に格納される。」
「【0057】
計測装置30を無呼吸症候群以外の症状を検出する装置として実現する場合には、症状検出部5は、測定対象音から検出対象の症状を検出すればよい。例えば、心音から心臓弁膜症、先天性心疾患、心不全などの症状を検出してもよいし、呼吸音の異常音から気胸、気管支喘息、閉塞性肺疾患などの症状を検出してもよい。また、腹部音(腸雑音)から無腸雑音(腸閉塞症)、低腸雑音(機能衰退)、高腸雑音(機能亢進性腸雑音)などの症状を検出してもよい。高腸雑音の症状が見られた後、腸音が消えると非常に重症であり、腸組織の壊死につながる可能性がある。また、高腸雑音は病気に対する腸の反応として始まる。」
(イ)引用文献2に記載の技術事項
上記(ア)によれば、引用文献2には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「 生体音を検出する音センサを備える計測装置であって(【0032】)、
計測装置30は、解析装置1および音センサ20を備えており(【0034】)
音センサ20は、被験者が発する呼吸音を検出する密着型のマイクロフォンであり(【0035】)、
解析装置1は、音センサ20から送信された生体音データを用いて被験者の無呼吸状態を検出するものであって、解析装置1は主制御部2を備えており、主制御部2は症状検出部5を備えており(【0041】)、
症状検出部5は無呼吸状態を検出し(【0055】)、
症状検出部5は呼吸音から喘息を検出する(【0057】)、
計測装置。」
ウ 引用文献3
(ア)引用文献3の記載
前置報告書において、本件補正(審判請求時の補正)によって追加された構成に対して新たに引用された文献であって、本願の出願日前に公開された米国特許出願公開第2010/0286490号明細書(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
「[0001] This invention relates to emergency monitors.」
「(当審訳)【0001】 本発明は、緊急度モニタ装置に関する。」
「[0020] A digitized sound in response to the second question can be received from the subject. Speech recognition can be performed on the digitized sound in response to the second question and the digitized sound in response to the second question can be compared with the digitized sound that is stored in memory. The digitized sound or text generated from the digitized sound can be transmitted to a control center after determining in a computer to request emergency services. Speech recognition can be performed on the digitized sound to create a digitized response, the method can further comprise performing speech recognition on the digitized sound, determining from the digitized response that the subject is experiencing an event and assigning a value to the event, such as pain, where the value can be one of none, little, moderate or severe. The method can comprise after submitting to the subject a first question from a script, re-submitting to the subject the first question from the script and providing the subject with a list of acceptable replies to the first question.」
「(当審訳)【0020】 第2の質問に応答するデジタル化された音を被験者から受信することができる。第2の質問に応答するデジタル化された音に対して音声認識を実行し、第2の質問に応答するデジタル化された音を、メモリに記憶されているデジタル化された音と比較することができる。デジタル化された音またはデジタル化された音から生成されたテキストは、緊急サービスを要請するようコンピューターで決定した後、コントロールセンターに送信することができる。デジタル化された音に対して音声認識を実行して、デジタル化された応答を作成することができ、本方法は、さらにデジタル化された音に対して音声認識を実行することと、デジタル化された応答から、被験者が事象を経験していることを判定し、当該事象に値を割り当てることができ、痛みの場合、値は、なし、少し、中程度、または重度のうちの1つとすることができる。本方法は、スクリプトから第1の質問を被験者に送信した後、スクリプトから第1の質問を被験者に再送信し、第1の質問に対する許容可能な返答のリストを被験者に提供することを含むことができる。」
「[0092] Referring to FIG. 4, a conversation-based verbal interaction used by the system to either probe the client for information or that is part of a routine check is described. In some conversations, such as the routine check, the system initiates a conversation with the client, such as by saying, “Good morning John”. The system then asks the client a question from a script (step 202). The question can be a question, such as “Have you taken your blood pressure today?” or “Do you have pain?” The client then responds. The system receives the client's response (step 206). The system performs speech recognition on the response to translate the speech to text (step 210). The text is then categorized (step 215). The system decides what to say to the client next, based on the category of the response. For example, if the client response “Yes” to the question, “Do you have pain?”, the system can ask, “Where does it hurt?”. However, if the client responds “No” to the same question, the system may respond, “That's good. I'll check in with you tomorrow.” The system's response is selected from the next appropriate question, such as by selecting the next question in a script, or according to the response received from the client (step 218).」
「(当審訳)【0092】 図4を参照すると、システムがクライアントに情報を求めるため、または定期的なチェックの一部として使用する、会話に基づく口頭による対話が説明されている。ルーチンチェックのようないくつかの会話では、システムは、「おはようジョン」と言うなどして、クライアントとの会話を開始する。次に、システムはクライアントにスクリプトから質問をする(ステップ202)。質問は、「今日は血圧を測りましたか」や「痛みはありますか」などの質問である。システムはクライアントの応答を受信する(ステップ206)。システムは応答に対して音声認識を行い、音声をテキストに変換する(ステップ210)。次にテキストが分類される(ステップ215)。システムは、応答のカテゴリーに基づいて、次にクライアントに何を言うべきかを決定する。例えば、「痛みはありますか」という質問に対してクライアントが「はい」と答えた場合、システムは「どこが痛いですか」と尋ねることができる。しかし、同じ質問に対してクライアントが「いいえ」と答えた場合、システムは「それはよかった。システムの応答は、スクリプトで次の質問を選択するなどして、次の適切な質問から選択されるか、クライアントから受信した応答に従って選択される(ステップ218)。」
「[0234](抜粋)
[図:0001422219000005.jpg]
」
「(当審訳)【0234】
表6
IMPコード IMP記述 有効値/入力
NUL {クライアントがいったしびれの位置} 腕;足;顔;他
WEL {クライアントがいった脱力の位置} 腕;足;顔;他」
「[0329] Referring to FIGS. 11A and 11B, the system can use ISs and various scripts to determine the client's status using the following method. The system initiates verbal interaction with the client (step 705). The system then makes a first statement, such as a question or a command (step 711) and waits for a response (step 713). Either the client does not respond, responds or does not respond with a predetermined time, such as 30 seconds or a minute. The system receives the response or lack thereof and determines whether the response is received within the predetermined time or not (step 720). If the response is not received within the predetermined time, the response is considered to be a delayed response. Receiving no response can also be categorized as a delayed response. If the response is received within the predetermined time, the system determines the quality of the response (step 730). The quality of the response can be one of valid, non-valid, not understood or not in the system's vocabulary. If the response is valid and has an IMP value, the IMP value, along with an optional timestamp, can be saved in memory (step 732). The system determines whether there are more statements to be made to the client (step 735). If there are no more statements, the IS ends. If there are more statements, the system makes the next statement (step 741) and returns to waiting for a response (step 713).」
「(当審訳)【0329】図11A及び図11Bを参照すると、システムは、以下の方法を使用して、クライアントの状態を決定するためにISと、様々なスクリプトを使用することができる。このシステムは、クライアント(705)との口頭の対話を開始する。システムは、第1のステートメント、質問、又はコマンド(ステップ711)等を行い、応答を待つ(ステップ713)。クライアントのいずれかで応答しない、または所定の時間に応答しないと、30秒、1分等である。システムは、その応答を受信し、応答が所定の時間内に受信したか否かを判定する(ステップ720)。応答が所定の時間内に受信されない場合、応答が遅延応答であると考えられる。また、遅延した応答として分類されても受信側で応答できる。応答が所定の時間内に受信された場合、システムは、応答(ステップ730)の品質を決定する。応答の質は、有効、無効、理解されないか、またはシステムの語彙内の1つとすることができる。応答が有効であり、IMPの値を有している場合には、IMPの値、オプションのタイムスタンプと共に、メモリ内に保存することができる(ステップ732)。システムは、クライアントに複数のステートメントであるかチェックする(ステップ735)。以上のステートメントである場合、ISは終了しない。以上のステートメントであるとすれば、システムは次に(ステップ741)、応答待ちとなる(ステップ713)に戻る。」
(イ)引用文献3に記載の技術事項
上記(ア)によれば、引用文献3には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「 緊急度モニタ装置であって(【0001】)、
質問に応答するデジタル化された音を被験者から受信することができ、質問に応答するデジタル化された音に対して音声認識を実行し、被験者が事象を経験していることを判定し、当該事象に値を割り当てることができ、痛みの場合、値は、なし、少し、中程度、または重度のうちの1つとすることができ(【0020】)、
「痛みはありますか」という質問に対してクライアントが「はい」と答えた場合、システムは「どこが痛いですか」と尋ねることができ(【0092】)、
IMPコードがNUL及びWELでありIMP記述がクライアントがいったしびれや脱力の位置であるものに対応する有効値/入力が腕、足、顔を含み(【0234】)、
所定の時間内の応答が有効であり、IMPの値を有している場合には、IMPの値等をメモリに保存することができる(【0329】)、
緊急度モニタ装置。」
(4)対比
本願補正発明と、引用発明とを対比する。
ア 「患者の病室又は患者の身体に取り付けられたセンサを通じてセンサ情報を取得する取得部」について
引用発明は、「使用者の要求及び容体に対応して使用者を支援できる支援システムであって、病院において支援システム1が用いられ、支援システム1の端末機30が、入院患者に与えられ」るものである。してみると、引用発明の「支援システム」は、使用者の「容体に対応して使用者を支援」するものであって、「病院」における「入院患者」に対して使用されるものであるから、引用発明における前記「使用者」、「患者」は本願補正発明の「患者」に相当する。
そして、引用発明は、「端末機30は、使用者から取得した生体情報、または使用者との会話により得られた会話情報等に基づいて、使用者の容体及び使用者の要求等を確認し、使用者の支援を行うものであって、端末機30は、マイクロフォン33、スピーカー34、制御回路37、及びメモリ38を含み、生体情報のモニタリング装置として、ベッドに在床している患者の睡眠及び覚醒、患者の起き上がり(体動)、呼吸、及び心拍等をモニタリングする「眠りSCANTM」があり、マイクロフォン33は、使用者と会話をする際に用いられ」るものである。
ここで、引用発明における、「使用者と会話をする際に用いられ」る「マイクロフォン33」、及び「ベッドに在床している患者の睡眠及び覚醒、患者の起き上がり(体動)、呼吸、及び心拍等をモニタリングする「眠りSCANTM」」は、いずれも使用者である患者から情報を取得するためのセンサであるといえ、患者の病室又は患者の身体に取り付けられていることは明らかであり、引用発明は、これらのセンサからセンサ情報を取得する取得部を実質的に備えているといえる。
よって、本願補正発明と引用発明とは、「患者の病室又は患者の身体に取り付けられたセンサを通じてセンサ情報を取得する取得部」を備える点で一致する。
イ 「前記センサ情報に基づいて患者の状態又は行動を推定する推定部」について
引用発明は、「制御回路37は、患者と会話をする場合、メモリ38に記憶されている複数の会話文に優先順位をつけて、患者との会話の内容を決定するものであって、患者が覚醒した時間、過去の会話や支援の内容、及び患者の状態(覚醒信号、起き上がり信号、呼吸信号、及び心拍信号等)等から優先順位が高い会話文を決定し、過去の会話の実績から覚醒後に飲料水を要求される可能性が高い場合、飲料水が必要か確認する会話文の優先順位を高くし、患者が起き上がってベッドの端に移動している場合、時間帯あるいは排泄センサー等の結果から排泄しようとしている可能性が高い場合、看護師の補助、車椅子またはIVポールの手配等が必要か確認する会話文の優先順位を高く」するものである。
ここで、「患者」について「飲料水を要求される可能性が高い場合」や「排泄しようとしている可能性が高い場合」とは、患者が飲料水を要求している、患者が排泄しようとしているという患者の状態や行動を可能性として推測しているといえるから、引用発明は、これらの患者の状態や行動を「患者の状態(覚醒信号、起き上がり信号、呼吸信号、及び心拍信号等)」や「排泄センサー」等から推測するものであるといえる。
そして、上記アで検討したとおり、「患者の睡眠及び覚醒、患者の起き上がり(体動)、呼吸、及び心拍等をモニタリングする「眠りSCANTM」」はセンサであり、「排泄センサー」もセンサであるから、引用発明は、これらのセンサからのセンサ情報に基づいて、前述した患者の状態又は行動を推定しているといえ、実質的に、患者の状態又は行動を推定する推定部を備えているといえる。
よって、本願補正発明と引用発明とは、「前記センサ情報に基づいて患者の状態又は行動を推定する推定部」を備える点で一致する。
ウ 「前記推定された状態又は行動に基づいて当該患者に対するアドバイス又は問診を提供する提供部」について
引用発明は、「端末機30は、・・・、スピーカー34、・・・を含み」、「端末機30は、患者に取り付けられた排泄センサーからの入力信号に応じて、就寝中の患者に声掛けを行い、トイレに行くように促す」ものである。
ここで、「患者に取り付けられた排泄センサーからの入力信号に応じて」とは、上記イの検討も踏まえると、「排泄センサー」からのセンサ情報に基づいて、患者が排泄しようとしているという患者の状態又は行動を推測しているといえ、また、「患者に声掛けを行い、トイレに行くように促す」ことは、「スピーカー34」からの音声によって患者に対してトイレに行くようにアドバイスを提供しているといえるから、引用発明は、患者に対するアドバイスを提供する提供部を実質的に備えているといえる。
よって、本願補正発明と引用発明とは、下記相違点1を除いて、「前記推定された状態又は行動に基づいて当該患者に対するアドバイスを提供する提供部」を備える点で一致する。
エ 「前記取得部は、スピーカから発せられた質問に対する患者の回答した音として、自然言語の中から読み取れる情報に加えて患者の呼吸情報を取得し」について
引用発明は、「端末機30は、マイクロフォン33、スピーカー34、・・・を含み」、「マイクロフォン33は、使用者と会話をする際に用いられ、スピーカー34は、使用者と会話する際に用いられ」、「端末機30は、優先順位付けした会話文に基づいて患者と会話をし、制御回路37は、会話の内容を確認し、制御回路37は、会話が聞き取れた場合、会話の内容から患者に支援を行うか否かを決定」するものである。
してみると、引用発明は、「スピーカー34」から「優先順位付けした会話文」を出力し、「マイクロフォン33」によって「会話文」に対する「患者」の回答を取得して「会話の内容を確認」するものであるから、前記「患者」の回答を、その内容を確認できる自然言語として取得していることは明らかである。
よって、引用発明における「マイクロフォン33」は、スピーカから発せられた質問に対する患者の回答した音として、自然言語の中から読み取れる情報を取得しているといえる。
また、引用発明は、「眠りSCANTM」によって「ベッドに在床している患者の睡眠及び覚醒、患者の起き上がり(体動)、呼吸、及び心拍等をモニタリングする」ものであって、「制御回路37は、・・・、呼吸信号に基づいて患者の呼吸が正常か確認」するものであるから、引用発明は、「患者」の「呼吸信号」を呼吸情報として取得しているといえる。そして、上記アで検討したとおり、引用発明が「眠りSCANTM」を備えていることは、実質的に、センサ情報を取得する取得部を備えているといえるから、引用発明は、取得部によって、患者の呼吸情報を取得しているといえる。
一方、本願補正発明は、「前記取得部は、スピーカから発せられた質問に対する患者の回答した音として、自然言語の中から読み取れる情報に加えて患者の呼吸情報を取得」するものであるところ、前記「取得部」は、「スピーカから発せられた質問に対する患者の回答した音として取得する」か否かは別として、少なくとも患者の呼吸情報を取得しているといえる。
以上を踏まえると、本願補正発明と引用発明とは、下記相違点2を除いて、「前記取得部は、スピーカから発せられた質問に対する患者の回答した音として、自然言語の中から読み取れる情報を取得し、患者の呼吸情報を取得する」点で一致する。
オ 「前記取得部が、スピーカから発せられた質問に対する患者の自然言語による回答を音として取得した場合、前記推定部が当該音に含まれる身体の部位、痛みおよびその程度を表す特定の用語を情報として抽出し」について
上記エで検討したとおり、引用発明における「マイクロフォン33」は、スピーカから発せられた質問に対する患者の回答した音として、自然言語の中から読み取れる情報を取得しているといえるのであって、引用発明において「会話の内容を確認」することは、かかる「マイクロフォン33」が音として取得した自然言語による回答の内容を確認していることに他ならない。
一方、本願補正発明は、「前記取得部が、スピーカから発せられた質問に対する患者の自然言語による回答を音として取得した場合、前記推定部が当該音に含まれる身体の部位、痛みおよびその程度を表す特定の用語を情報として抽出」するものであるが、これは「前記取得部が、スピーカから発せられた質問に対する患者の自然言語による回答を音として取得した場合」、「前記推定部が当該音に含まれる身体の部位、痛みおよびその程度を表す特定の用語を情報として抽出」するか否かは別として、少なくとも、前記「回答」の内容を確認しているといえる。
よって、上記アの検討も踏まえると、本願補正発明と引用発明とは、下記相違点3を除いて、「前記取得部が、スピーカから発せられた質問に対する患者の自然言語による回答を音として取得した場合、前記回答の内容を確認する」点で一致する。
カ 「前記取得部が、スピーカから発せられた質問とは関係のない音を取得した場合、当該音が窒息、無呼吸状態および喘息の少なくともいずれか一つに該当するか否かを判定し、当該音が窒息、無呼吸状態および喘息の少なくともいずれか一つを示す場合に、その旨を医療従事者に送信する」について
引用発明は、「制御回路37は、覚醒信号を受信した場合、すなわち患者が覚醒している場合、呼吸信号に基づいて患者の呼吸が正常か確認し、制御回路37は、患者の呼吸が正常ではない場合、ナースコールが発報されているか確認し、制御回路37は、ナースコールが発報されていない場合、管理システムにナースコールの発報を指示する信号を送信」するものである。
ここで、「患者の呼吸が正常ではない場合」に「管理システムにナースコールの発報を指示する信号を送信」することは、患者の呼吸情報が正常でない場合に、その旨を医療従事者に送信することに他ならない。
一方、本願補正発明は、「前記取得部が、スピーカから発せられた質問とは関係のない音を取得した場合、当該音が窒息、無呼吸状態および喘息の少なくともいずれか一つに該当するか否かを判定し、当該音が窒息、無呼吸状態および喘息の少なくともいずれか一つを示す場合に、その旨を医療従事者に送信する」ものであるが、これは、「スピーカから発せられた質問とは関係のない音を取得した場合、当該音が窒息、無呼吸状態および喘息の少なくともいずれか一つに該当するか否かを判定し、当該音が窒息、無呼吸状態および喘息の少なくともいずれか一つを示す場合」であるかは別として、少なくとも、「前記取得部が」取得した患者の呼吸情報が正常でない場合に「その旨を医療従事者に送信する」ものであるといえる。
よって、上記アの検討も踏まえると、本願補正発明と引用発明とは、下記相違点4を除いて、「前記取得部が、取得した患者の呼吸情報が正常で無い場合に、その旨を医療従事者に送信する」点で一致する。
キ 「看護支援装置」について
引用発明の「支援システム」は、使用者である患者を支援するものであるから看護支援装置であるといえ、さらに、上記ア~ウで検討したとおり、「取得部」、「推定部」、及び「提供部」を実質的に備えるものである。
よって、本願補正発明と引用発明とは、下記相違点1~4を除いて、「取得部」、「推定部」、及び「提供部」とを「備える」「看護支援装置」である点で一致する。
ク 一致点及び相違点
上記ア~キの検討を踏まえると、本願補正発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
[一致点]
「 患者の病室又は患者の身体に取り付けられたセンサを通じてセンサ情報を取得する取得部と、
前記センサ情報に基づいて患者の状態又は行動を推定する推定部と、
前記推定された状態又は行動に基づいて当該患者に対するアドバイスを提供する提供部と、
を備え、
前記取得部は、スピーカから発せられた質問に対する患者の回答した音として自然言語の中から読み取れる情報を取得し、患者の呼吸情報を取得し、
前記取得部が、スピーカから発せられた質問に対する患者の自然言語による回答を音として取得した場合、前記回答の内容を確認し、
前記取得部が、取得した患者の呼吸情報が正常で無い場合に、その旨を医療従事者に送信する、
看護支援装置。」
[相違点]
[相違点1]
本願補正発明は、提供部が患者に対するアドバイス又は「問診」を提供するものであるのに対して、引用発明は、アドバイスを提供するものであるが「問診」を提供するものではない点。
[相違点2]
本願補正発明は、患者の呼吸情報を「スピーカから発せられた質問に対する患者の回答した音として」自然言語の中から読み取れる情報「に加えて」取得するものであるのに対して、引用発明は、患者の呼吸情報を「眠りSCANTM」によって取得しており、「スピーカから発せられた質問に対する患者の回答した音として」自然言語の中から読み取れる情報「に加えて」取得するものではない点。
[相違点3]
本願補正発明は、「前記推定部が当該音に含まれる身体の部位、痛みおよびその程度を表す特定の用語を情報として抽出」するのに対して、引用発明は、そのような情報を抽出するとはしていない点。
[相違点4]
本願補正発明は、「スピーカから発せられた質問とは関係のない音を取得した場合、当該音が窒息、無呼吸状態および喘息の少なくともいずれか一つに該当するか否か」を「判定」してその旨を医療従事者に送信するものであるのに対して、引用発明は、取得した患者の呼吸情報が正常で無い場合に管理システムにナースコールの発報を指示する信号を送信するものの、「スピーカから発せられた質問とは関係のない音を取得した場合、当該音が窒息、無呼吸状態および喘息の少なくともいずれか一つに該当するか否か」を「判定」してその旨を医療従事者に送信するものでない点。
(5)判断
上記相違点について判断する。
ア 「相違点1」について
本願補正発明は、提供部が患者に対する「アドバイス又は問診」を提供するところ、これは、「アドバイス又は問診」のうち、どちらか一方を提供することを包含するものである。そして、引用発明は、前記「アドバイス又は問診」のうち「アドバイス」を提供するものであるから、相違点1は実質的な相違点ではない。
仮に、相違点であるとしても、引用発明は、「使用者の容体及び使用者の要求等を確認し、使用者の支援を行う」ものであって、会話を通じて患者に対して「飲料水が必要か確認」したり、「看護師の補助」等が必要か確認するものであるから、かかる「使用者の容体及び使用者の要求等を確認」するに際し、併せて、患者の容体や気分を確認して何らかの「問診」を行うことは、当業者であれば必要に応じて適宜なし得る事項にすぎない。
イ 「相違点2」、「相違点4」について
相違点2、相違点4についてまとめて検討する。
上記(3)イ(イ)に示したとおり、引用文献2には、「生体音を検出する音センサを備える計測装置であって、計測装置30は、解析装置1および音センサ20を備えており、音センサ20は、被験者が発する呼吸音を検出する密着型のマイクロフォンであり、解析装置1は、音センサ20から送信された生体音データを用いて被験者の無呼吸状態を検出するものであって、解析装置1は主制御部2を備えており、主制御部2は症状検出部5を備えており、症状検出部5は無呼吸状態を検出し、症状検出部5は呼吸音から喘息を検出する、計測装置。」が記載されている。
してみると、引用文献2には、音センサ20を用いて被験者(患者)の呼吸音を検出し、呼吸音から、被験者(患者)の無呼吸状態や喘息を検出するという技術事項が開示されているといえる。
引用発明と引用文献2に記載の上記技術事項とは、患者の呼吸情報を検出して患者の呼吸が正常であるか否かを確認する機能を備える点で共通するものであるから、引用発明において、かかる患者の呼吸が正常であるか否かを確認する機能として、引用文献2に記載の音センサ20からなる計測装置を採用することは、当業者であれば容易に想到し得たものである。
そして、引用発明に引用文献2に記載の音センサ20からなる計測装置を採用した場合、音センサ20は、患者の回答があった場合にも患者の呼吸音を音として検出することになるから、患者の回答があった場合、音センサ20は、患者の呼吸音を「スピーカから発せられた質問に対する患者の回答した音として」、自然言語の中から読み取れる情報「に加えて」取得することになり、計測装置は、患者の呼吸が正常でない場合として「スピーカから発せられた質問とは関係のない音を取得した場合、当該音が無呼吸状態および喘息の少なくともいずれか一つに該当するか否かを判定し、当該音が無呼吸状態および喘息の少なくともいずれか一つを示す場合」を検出することになる。また、患者の呼吸が正常でない場合として、無呼吸状態および喘息に加えて、窒息を検出することも任意である。
よって、相違点2、4に係る構成は、引用発明に引用文献2に記載の上記技術事項を採用することによって、当業者であれば容易に想到し得たものである。
ウ 「相違点3」について
上記(3)ウ(イ)に示したとおり、引用文献3には、「緊急度モニタ装置であって、質問に応答するデジタル化された音を被験者から受信することができ、質問に応答するデジタル化された音に対して音声認識を実行し、被験者が事象を経験していることを判定し、当該事象に値を割り当てることができ、痛みの場合、値は、なし、少し、中程度、または重度のうちの1つとすることができ、「痛みはありますか」という質問に対してクライアントが「はい」と答えた場合、システムは「どこが痛いですか」と尋ねることができ、IMPコードがNUL及びWELでありIMP記述がクライアントがいったしびれや脱力の位置であるものに対応する有効値/入力が腕、足、顔を含み、所定の時間内の応答が有効であり、IMPの値を有している場合には、IMPの値等をメモリに保存することができる、緊急度モニタ装置。」が記載されている。
してみると、引用文献3には、緊急度モニタ装置において、質問に応答する音を被験者(患者)から取得して音声認識することにより、被験者(患者)が痛みなどの事象を感じているか、痛みはどの程度(少し、中程度、重度)か、さらに、どこが痛いかを確認するという技術事項が記載されているのであって、実質的に、「音に含まれる身体の部位、痛みおよびその程度を表す特定の用語を情報として抽出」することが記載されているといえる。
引用発明と引用文献3に記載の上記技術事項は、ともに、患者との会話を通じて患者の容体を確認する機能を有する点で共通するものであるから、かかる患者の容体を確認する機能として、引用発明に引用文献3に記載の上記技術事項を適用し、「前記推定部が当該音に含まれる身体の部位、痛みおよびその程度を表す特定の用語を情報として抽出」するようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たものである。
エ 作用効果について
そして、上記相違点1~4を勘案しても、本願補正発明の奏する作用効果は、本願補正発明の構成が奏する作用効果として予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
オ 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、本願補正発明の特徴である「取得部が、スピーカから発せられた質問に対する患者の自然言語による回答を音として取得した場合、推定部が当該音に含まれる身体の部位、痛みおよびその程度を表す特定の用語を情報として抽出し、取得部が、スピーカから発せられた質問とは関係のない音を取得した場合、当該音が窒息、無呼吸状態および喘息の少なくともいずれか一つに該当するか否かを判定する、こと」はいずれの引用文献にも記載されておらず、本願補正発明はこのような特徴を備えることによって、「自然言語として解釈できる音が含まれる場合には、その用語に備わる意味から患者の状態を推定でき、また、自然言語として解釈できる音が含まれない場合には、質問に回答できない状況にあることを想定しつつ、取得した音から患者の状態(窒息、無呼吸、喘息)を精度よく推定することができるという格別の効果」を奏し得る旨主張している。
しかしながら、上記相違点2~4で検討したとおり、審判請求人が主張する本願補正発明の上記特徴は、引用発明に、引用文献2、3に記載の技術事項を適用することによって、当業者であれば容易に想到し得たものであり、本願補正発明の作用効果についても、上記エで示したとおり、本願補正発明の構成が奏する作用効果として予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
よって、審判請求人の上記主張は採用できない。
(6)小括
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2、3に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(2)に記載したとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
本願発明についての原査定の拒絶の理由は、概略、本願発明は、引用文献1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3 引用文献1、2の記載、引用発明等
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2の記載及び引用発明は、上記第2[理由]2(3)ア及びイのとおりである。
4 対比・判断
(1)対比
本願発明は、上記第2の2において検討した本願補正発明から、「推定部」について、補正事項1による限定を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明と引用発明とは、上記第2[理由]2(4)クで示した相違点1、2で相違し、さらに下記の相違点4’において相違する。
[相違点4’]
本願発明は、取得部が、取得した患者の呼吸情報が正常で無い場合、「音」である「患者の呼吸情報」を「取得」して「当該呼吸情報が窒息、無呼吸状態および喘息の少なくともいずれか一つを示す場合」に「その旨」を医療従事者に送信するものであるのに対して、引用発明は、取得した患者の呼吸情報が正常で無い場合に管理システムにナースコールの発報を指示する信号を送信するものの、「音」である「患者の呼吸情報」を「取得」して「当該呼吸情報が窒息、無呼吸状態および喘息の少なくともいずれか一つを示す場合」の「その旨」を医療従事者に送信するものでない点。
(2)判断
上記第2[理由]2(5)アで示したとおり、相違点1は実質的な相違点でないか、あるいは引用発明に基づいて当業者であれば適宜なし得る事項にすぎない。
また、上記第2[理由]2(5)イで示したとおり、相違点2及び相違点4は、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、相違点4と相違点4’は、補正事項2による言い換えの前後で表現ぶりは異なるものの、実質的には同じ内容であるから、相違点2及び相違点4’も、同様に、引用発明に引用文献2に記載の技術事項に基づいて、当業者であれば容易に想到し得たものである。
してみると、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。してみると、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-008920