特許拒絶査定不服審判
2024-001740
遠隔診療システムの被診療者側情報処理端末
- 審判番号
- 2024-001740
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-192823
- 請求日
- 2024年01月15日
- 審決日
- 2024年11月07日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】桑井 太郎
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 智康
- 審判官 安井 雅史
- 審判官 古川 哲也
- 分類
- P18 .121-Z (G16H) / P18 .55 -Z (G16H) / P18 .575-Z (G16H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-192823「遠隔診療システムの被診療者側情報処理端末」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 5月18日出願公開、特開2022- 75420〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年11月3日に出願したものであって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。
令和 5年 7月 6日付け:拒絶理由通知書
同年 8月15日 :意見書、手続補正書の提出
同年11月24日付け:拒絶査定
令和 6年 1月15日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年1月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年1月15日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1についての補正を含むものであり、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。(以下、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を「本件補正発明」という。なお、下線部は、本件補正により補正された箇所を示す。また、「前期箱体」は「前記箱体」の誤記であることが明らかなので、本審決の下記「2 補正の適否」以降においては正しい表記である「前記箱体」との文言を用いる。)
「 医療従事者が操作する医療者側情報処理端末に情報通信経路を介して接続可能であり、内部空間を画成し、該内部空間に被診療者を収容する箱体と、
前記情報通信経路に接続され、少なくとも前記医療従事者の声を表す医療従事者音声データと前記医療従事者の外観を表す医療従事者画像データを前記医療者側情報処理端末から受信して前記医療従事者の声と前記医療従事者の外観を前記内部空間で再生するとともに、前記箱体内の前記被診療者の声を表す被診療者音声データと前記被診療者の外観を表す被診療者画像データを前記医療者側情報処理端末に送信する情報処理機器とを備え、
前期箱体に関連して設置され、正常な聴力を有する人が前記箱体外部に伝播された前記声の音圧レベルで前記再生された前記医療従事者の声の意味と前記被診療者の声の意味を理解不能にならしめ、前記箱体を不特定多数の人が侵入可能な外部空間に設置させた音声防護手段と、
前記箱体に設けられ、前記内部空間内の前記被診療者を前記外部空間で特定させない視覚防護手段とを有した被診療者側情報理端末において、
前記箱体に設けられ、前記被診療者の生体情報を取得して該被診療者の操作なしに前記生体情報を前記情報処理機器に供給し、前記情報処理機器に前記生体情報を表す生体データを前記医療者側情報処理端末に診療中に送らしめて前記生体情報を前記医療従事者に知らしめて前記診療に資する生体検査機器を更に備えたことを特徴とする被診療者側情報処理端末。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明
本件補正前の令和5年8月15日の手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は次のとおりである。(なお、「前期箱体」は「前記箱体」の誤記であることが明らかなので、本審決の下記「2 補正の適否」以降においては正しい表記である「前記箱体」との文言を用いる。)
「 医療従事者が操作する医療者側情報処理端末に情報通信経路を介して接続可能であり、
内部空間を画成し、該内部空間に被診療者を収容する箱体と、
前記情報通信経路に接続され、少なくとも前記医療従事者の声を表す医療従事者音声データと前記医療従事者の外観を表す医療従事者画像データを前記医療者側情報処理端末から受信して前記医療従事者の声と前記医療従事者の外観を前記内部空間で再生するとともに、前記箱体内の前記被診療者の声を表す被診療者音声データと前記被診療者の外観を表す被診療者画像データを前記医療者側情報処理端末に送信する情報処理機器とを備え、
前期箱体に関連して設置され、正常な聴力を有する人が前記箱体外部に伝播された前記声の音圧レベルで前記再生された前記医療従事者の声の意味と前記被診療者の声の意味を理解不能にならしめ、前記箱体を不特定多数の人が侵入可能な外部空間に設置させた音声防護手段と、
前記箱体に設けられ、前記内部空間内の前記被診療者を前記外部空間で特定させない視覚防護手段とを有した被診療者側情報理端末において、
前記箱体に設けられ、前記被診療者の生体情報を取得して該生体情報を表す生体データを前記情報処理機器に供給し、前記情報処理機器に前記生体データを前記医療者側情報処理端末に送らしめて前記生体情報を前記医療従事者に知らしめて診療に資する生体検査機器を更に備えたことを特徴とする被診療者側情報処理端末。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「生体検査機器」に対して下線で示す事項を付加することにより、その内容を「前記箱体に設けられ、前記被診療者の生体情報を取得して該被診療者の操作なしに前記生体情報を前記情報処理機器に供給し、前記情報処理機器に前記生体情報を表す生体データを前記医療者側情報処理端末に診療中に送らしめて前記生体情報を前記医療従事者に知らしめて前記診療に資する生体検査機器」に限定するものである。
そして、当該付加した事項は、出願当初明細書の【0024】に記載された事項であって、新規事項を追加するものではなく、発明の特別な技術的特徴を変更するものではなく、さらに、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正発明が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載、引用発明等
ア 引用文献1
(ア)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された文献であって、本願の出願前である平成27年12月3日に出願公開された特開2015-215769号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は当審において加筆した。以下同じ。)。
「【請求項1】
患者がかかっている病気に対しリアルタイムの遠隔医療診断および治療を提供するシステムで、前記システムは、
リアルタイムの遠隔医療診断および治療を提供し、中央コンピュータおよび記憶保存装置を保有する中央オフィスを持ち、かかる中央コンピュータは遠隔医療診断および治療を施すために実行可能な命令セットをホストしている、医療サービス会社、
病気の診断と治療提供のために医療専門家がアクセスできるネットワーク端末、
前記医療専門家の前記ネットワーク端末から遠隔的に設置された医療キオスクであり、かかる医療キオスクにはさらに、
表示装置、入力装置およびプロセッサを持つキオスク端末、
前記医療キオスクを使って患者の健康を生体測定するための少なくとも1つの生体装置、
投薬可能な薬を補完する保管庫、および
薬剤ディスペンサーを含み、
前記医療専門家がアクセスできる前記ネットワーク端末および前記キオスク端末と電子的に通信する電子ネットワーク、を含む。」
「【請求項8】
遠隔的にリアルタイムで病気の診断および治療を提供する医療キオスクであり、前記医療キオスクは、
患者をその中に受け入れ前記患者に遠隔的に配置された医療専門家との対話を可能にするチェンバーと定義されるブース、
表示装置、入力装置およびプロセッサを持つキオスク端末、
前記医療キオスクを使って患者の健康を生体測定するための少なくとも1つの生体装置、
投薬可能な薬を補完する保管庫、および
薬剤ディスペンサーを含む。」
「【0007】
医療キオスクは、有人化と無人化のいずれも可能である。有人の医療キオスクは無人より多くの検査を実施できる。また、実際の医療専門家を提供して患者をサポートすることも可能である。有人の医療キオスクの欠点は、正看護師が常駐しなければならないことだ。一方、無人の医療キオスクは月1回の定期点検のみで済む。なお、基本的な医療検査(血圧、肺活量、心拍数と心電図、血糖値、身長/体重/肥満度指数)は、有人、無人いずれの医療キオスクでも実施可能である。
【0008】
上記の医療キオスクは市場の一定のニーズに対応しているが、医療分野では人々の治療のためにさらなる幅広い自動化が必要とされている。特に、医療診断、治療、処方箋の提供や、ライブビデオのフィードリンクを活用して医療専門家との遠隔対話により投薬を行ったりできる一方で、患者の医療データへの完全アクセスにより患者自身によるセルフサービスの生体検査を促す、無人医療キオスクへのニーズがある。
【発明の概要】
【0009】
本開示は概して、医療専門家とのリアルタイムの遠隔対話のための設備を提供するというニーズを満たす、リアルタイムの遠隔医療診断および病気治療提供システムを対象とする。本システムは、リアルタイムの遠隔医療診断および治療を提供するための医療サービス会社を含む。本会社は中央コンピュータと記憶保存装置を備えた中央オフィスを持つ。中央コンピュータは、遠隔医療診断および治療を実施するための実行可能な命令セットをホストする。ネットワーク端末には、病気の診断と治療を提供する医療専門家がアクセスすることができ、医療キオスクは医療専門家のネットワーク端末から遠隔に設置される。さらに医療キオスクには、表示装置、入力装置およびプロセッサを持つキオスク端末がある。また、医療キオスクを活用して患者の健康を生体測定するための少なくとも1つの生体認証装置、分配可能な薬品を保管するための保管庫および薬剤ディスペンサーもある。電子ネットワークとは、医療専門家がアクセスできるネットワーク端末、およびキオスク端末との電子通信である。」
「【0039】
最初に図5に関して、遠隔リアルタイム医療補助システム500は中央オフィス510に図示されているが、そこから遠隔医療アシスタントホスト会社が中央コンピュータ512および記憶装置514通信を含む運営を行い、医療および患者データを保存する。中央コンピュータ512は、遠隔リアルタイム医療補助を管理するための実行可能な命令セットをホストし、さらに電子通信リンク516を介したインターネットの電子ネットワーク550と通信を行う。電子ネットワーク550は、暗号、パスワード、制限されたWi-Fi範囲の他同様の既知の安全対策を使用することができる。中央オフィス510には、遠隔医療相談および補助を提供するために、ネットワーク端末518にアクセス可能な1人かそれ以上の看護師、医師助手および医師などの医療専門家がいる。ネットワーク端末518は通常、システム500を通じた電子通信のために、中央コンピュータ512および中央オフィス510の外部にいる実体と電子的に連結している。
【0040】
1つかそれ以上の診療所560、570、580が、中央オフィス510を介して相談に必要な医療専門家を提供するために参加する。遠隔リアルタイム医療補助システム500には、少なくとも1つ以上の、一般的に複数の、遠隔的に設置され分配された医療キオスク520、530、540が含まれる。キオスク520、530、540はそれぞれ、ネットワーク端末522、532、542を持ち、電子通信リンク524、534、544を介してインターネット550に各々電子的にリンクしている。あるいはまた、遠隔医療補助は、ダウンロード可能なソフトウエアを実行する中央処理装置機能を持つ「スマートフォン」のような個人電子機器592を使用して取得することもできる。個人電子機器592は、通信リンク594を使って中央オフィス510と通信することで通信ネットワーク596とつながり、同様に、通信リンク598を介してインターネット550と通信する。
【0041】
本発明の代表的実施形態として、医療キオスク520、530、540は、さまざまな部分を図示する図1-4に示す通り、医療キオスク200として設定することができる。医療キオスク200にはチェンバー210と規定されているブース202があり、患者300はそこに入り遠隔医療補助を受けることができる。開閉可能なドア204がチェンバー210の進入位置となる。ブース202およびドア204は、ブース202がブース202内の患者のプライバシーを最大限保護できるよう騒音減衰を設置するように建設できる。かかる医療補助には、病院の緊急救命室にあるような専門施設および医療専門家を必要とする、生死にかかわる病気や外傷のための治療は含まれない。キオスク200は、患者300に医療専門家330への週7日毎日24時間の簡易なアクセスを提供する。ある実施形態においては、キオスク200はショッピングモールや商業施設といった公共のショッピングセンターに設置することができる。その一方、別の実施形態では、本キオスクは医療施設内部に設置することができ、医療専門家と直接接する前の事前検査を提供することもできる。
【0042】
当該分野に精通した者は、本発明の教示に照らして、キオスク200で提示された医療相談や症状に関し患者300がプライバシー保護を望むことを認めるはずである。キオスク200のチェンバー210は、音波エネルギーを反射または吸収する騒音バリアを使って患者300にプライバシー保護を提供し、防音壁のような減衰構造を使ったり、または騒音防止サウンドジェネレータをアクティブにするなどして、チェンバー210の防音を効果的に生成してプライバシー保護機能をもたらす。キオスク200のリアルタイム医療補助の相談の大半は、防音チェンバー210で行われる。
【0043】
医療キオスク200内には表示装置220があり、患者300と医療専門家330との間に、ネットワーク550(図5)を介したビデオフィードリンク225を提供する。これにより患者300と医療専門家330との間の安全なリアルタイムの双方向コミュニケーションが可能となる。医療専門家330とは、看護師、医師助手、または医師などである。1つの実施形態では、デジタル表示装置220は等身大の画面で、医療専門家をリアルタイムに対面式で表示し、患者300により現実性を感じさせる。医療キオスク200は、看護師のような医療専門家330を常駐させ有人化することもできる。このデジタル表示装置220には、図1には示されていないが、医療専門家330と患者300が相互に対話できる音声機能を含めることも可能である。デジタル表示装置220は、個人情報データサンプル350を入力したり、指示にアクセスしたり、記入式検査を受けたりなどするためのタッチグクリーンにすることができる。一方、別の実施形態では、キーボード、マウスまたは音声認識ソフトのような1つかそれ以上の入力装置245を図3のデジタル表示装置220に内蔵することができる。この表示装置220および入力装置245は、ネットワーク550との通信のためにプロセッサ240により相互制御を行う。表示装置220、入力装置245、およびプロセッサ240は集合的にキオスク端末と総称される。
【0044】
いくつかの実施形態では、本医療キオスク200は、医療専門家330が患者300自身や患者300が示す目に見える病気症状310を観察することを可能にするカメラ230を含む。このカメラ230は、患者300がカメラ230の前で立ったり、話したり、患部を見せたりすることで、ビデオフィードリンク225を介して医療専門家330とコミュニケーションを取ることを可能にする。このカメラ230はデジタル表示装置220の近くに設置され、患者300が網膜、皮膚、喉など患部を近づけて提示することを可能にする。1つの好ましい実施形態では、カメラ230は、リアルタイムビデオを取込むことで患者300が遠隔の診療所560、570、580(図5)にいる医療専門家330とコミュニケーションを取ることを可能にする。また、カメラ230は患者300の身元確認にも使用でき、キオスク200にセキュリティ保護をもたらす。カメラ230は、動画、静止画の記録やズームが可能な多目的カメラである。
【0045】
患者300の病状評価を補助するため、医療キオスク200は、体重計、血圧計、肥満度指数計、視力計、体温計、心理評価など、1つかそれ以上の生体測定装置235(図1)を含む。生体測定装置235の構成により、医療データサンプル355作成のために患者300は少なくとも1つのセルフサービス式生体検査237(図4)が可能である。一方、別の実施形態においては、医療キオスク200は看護師や医療技術者など医療専門家が常駐し、医療キオスク200内での患者300自身によるセルフサービスの生体検査237をサポートすることも可能である。」
【0046】
図4では、医療キオスク200はさらに、個人情報データサンプル350の保存、医療データサンプル355の保存および外部保存装置255から得た患者300の事前医療データサンプル360の受領のためのプロセッサ240を含む。1つの好ましい実施形態においては、医療専門家330は事前医療データサンプル360を見るために外部保存装置255にアクセスすることができる。当該技術に精通した者は、この事前医療データサンプル360により医療専門家330は病気症状310を診断する前に患者300の医療履歴から履歴的観点を得られることを認めるはずである。
【0047】
図4のキオスク200はさらに、個人情報データサンプル350をプロセッサ240に入力するための入力装置245を含む。この方法では、さらに進んだ医療評価および治療のために、患者300の病状は文書に記録される。当該技術に精通したものは、本入力装置245は技術の発展とともに進化すると認識するはずである。適切な入力装置245は、キーボード、マウス、音声認識ソフトを含む。処方箋365を印刷するためのプリンタ260は、安全なネットワーク550(図5)を介した医療専門家330からの通信に応答して、プロセッサ240と通信する。この方法では、安全なネットワーク550は患者300と医療専門家330はとの間の、個人情報データサンプル350、医療データサンプル355、および事前医療データサンプル360の伝送を可能にする。」
「【図1】
[図:0001419071000001.jpg]
」
「【図5】
[図:0001419071000002.jpg]
」
(イ)引用文献1に記載されているといえる事項
a 【請求項1】、段落【0039】~【0041】、【図1】、【図5】の記載から、引用文献1には、「リアルタイムの遠隔医療診断および治療を提供し、中央コンピュータ(512)および記憶保存装置(514)を保有する中央オフィス(510)を持つ医療サービス会社、病気の診断と治療提供のために医療専門家がアクセスできるネットワーク端末(560、570、580)、前記医療専門家の前記ネットワーク端末から遠隔的に設置された医療キオスク(520、530、540、又は、200)、前記医療専門家がアクセスできる前記ネットワーク端末および前記キオスク端末と電子的に通信する電子ネットワーク(550)、を含むリアルタイムの遠隔医療診断および治療を提供するシステム(500)における、医療キオスク(200)」に関する発明が記載されている。
b 【請求項8】、段落【0041】、段落【0043】~【0045】の記載から、引用文献1には、「医療キオスク(200)は、ショッピングモールや商業施設といった公共のショッピングセンターに設置することができるものであって、患者をその中に受け入れ前記患者に遠隔的に配置された医療専門家との対話を可能にするチェンバー(210)、表示装置(220)、入力装置(245)、カメラ(230)およびプロセッサ(240)を持つキオスク端末、前記医療キオスクを使って患者の健康を生体測定するための少なくとも1つの生体測定装置(235)、を含む」との事項が記載されている。
c 段落【0043】の記載から、引用文献1には、「表示装置(220)は、患者と医療専門家との間に、電子ネットワーク(550)を介したビデオフィードリンクを提供することにより、前記患者と前記医療専門家との間の安全なリアルタイムの双方向コミュニケーションを可能とし、等身大の画面で、前記医療専門家をリアルタイムに対面式で表示することや前記医療専門家と前記患者が相互に対話できる音声機能を含めることも可能とする」との事項が記載されている。
d 段落【0044】の記載から、引用文献1には、「カメラ(230)は、医療専門家が患者自身や患者が示す目に見える病気症状310を観察することを可能にし、患者がカメラ(230)の前で立ったり、話したり、患部を見せたりすることで、ビデオフィードリンクを介して医療専門家とコミュニケーションを取ることを可能にする」との事項が記載されている。
e 段落【0041】、段落【0042】、【図1】の記載を参酌すると、引用文献1の「チェンバー210」とは「ブース202およびドア204により内部空間が形成された箱形の部屋」と解される。
してみると、段落【0041】、段落【0042】、【図1】の記載から、引用文献1には、「チェンバー(210)は、ブース(202)およびドア(204)により内部空間が形成された箱形の部屋であって、患者がその内部で遠隔医療補助を受けることができるとともに、音波エネルギーを反射または吸収する騒音バリアや防音壁のような減衰構造を使って防音を効果的に生成して、患者のプライバシー保護機能をもたらすもの」との事項が記載されている。
f 段落【0045】の記載から、引用文献1には「生体測定装置(235)は、体重計、血圧計、肥満度指数計、視力計、体温計、心理評価などを含み、医療データサンプル355作成のために患者は少なくとも1つのセルフサービス式生体検査237が可能である」との事項が記載されている。
g 段落【0047】の記載から、引用文献1には、「電子ネットワーク(550)は、患者と医療専門家との間の、個人情報データサンプル(350)、医療データサンプル(355)、および事前医療データサンプル(360)の伝送を可能にする」との事項が記載されている。
(ウ)引用発明
上記(イ)a~gによれば、引用文献1には、以下の発明(「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「リアルタイムの遠隔医療診断および治療を提供し、中央コンピュータ(512)および記憶保存装置(514)を保有する中央オフィス(510)を持つ医療サービス会社、病気の診断と治療提供のために医療専門家がアクセスできるネットワーク端末(560、570、580)、前記医療専門家の前記ネットワーク端末から遠隔的に設置された医療キオスク(520、530、540、又は、200)、前記医療専門家がアクセスできる前記ネットワーク端末および前記キオスク端末と電子的に通信する電子ネットワーク(550)、を含むリアルタイムの遠隔医療診断および治療を提供するシステム(500)における、医療キオスク(200)であって、
前記医療キオスク(200)は、
ショッピングモールや商業施設といった公共のショッピングセンターに設置することができるものであって、
患者をその中に受け入れ前記患者に遠隔的に配置された医療専門家との対話を可能にするチェンバー(210)、
表示装置(220)、入力装置(245)、カメラ(230)およびプロセッサ(240)を持つキオスク端末、
前記医療キオスクを使って患者の健康を生体測定するための少なくとも1つの生体測定装置(235)、を含み
前記表示装置(220)は、
患者と医療専門家との間に、電子ネットワーク(550)を介したビデオフィードリンクを提供することにより、患者と医療専門家との間の安全なリアルタイムの双方向コミュニケーションを可能とし、等身大の画面で、医療専門家をリアルタイムに対面式で表示することや医療専門家と患者が相互に対話できる音声機能を含めることも可能とするものであり、
前記カメラ(230)は、
医療専門家が患者自身や患者が示す目に見える病気症状310を観察することを可能にし、患者がカメラ(230)の前で立ったり、話したり、患部を見せたりすることで、ビデオフィードリンクを介して医療専門家とコミュニケーションを取ることを可能にするものであり、
前記チェンバー(210)は、
ブース(202)およびドア(204)により内部空間が形成された箱形の部屋であって、患者がその内部で遠隔医療補助を受けることができるとともに、音波エネルギーを反射または吸収する騒音バリアや防音壁のような減衰構造を使って防音を効果的に生成して、患者のプライバシー保護機能をもたらすものであり、
前記生体測定装置(235)は、
体重計、血圧計、肥満度指数計、視力計、体温計、心理評価などを含み、医療データサンプル(355)作成のために患者は少なくとも1つのセルフサービス式生体検査(237)が可能であり、
前記電子ネットワーク(550)は、
患者と医療専門家との間の、個人情報データサンプル(350)、医療データサンプル(355)、および事前医療データサンプル(360)の伝送を可能にする、
医療キオスク(200)。」
イ 引用文献3
(ア)引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由に引用された文献であって、本願の出願前である平成14年3月22日に出願公開された特開2002-83055号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0035】
【実施の形態】図1は本発明に係る在宅での日常健康管理システムの全体構成を示した図である。ユーザが、起床時、入浴前、入浴後、就床前の少なくとも一日4回定期的に使用する洗面化粧室1に備えられた洗面化粧台2には、自動血圧計3a等のユーザの健康状態を反映する身体各部位の特性を計測する健康測定機器3がビルトインされるとともに、健康測定機器3の計測データがローカルエリヤネットネットワーク(以下、LANという。)、インタフェース4を介して伝送されるサーバとしてのコンピュータ5が内臓され、コンピュータ5の表示装置6は鏡7と並んでユーザが見やすい位置に取付けられている。コンピュータ5に接続されたスピーカ8、プリンタ9は洗面化粧台2下部に収納されている。洗面化粧台2にビルトイン或いは取外し可能に備えられる健康測定機器3としては、自動血圧計3aの他に体重計、サーモビュアを使用した顔表皮温度計、体脂肪計、体温計などがある。」
「【0043】コンピュータ5はインタフェース36を介しインターネット等の遠隔通信手段20を使用して病院・クリニック等の医療専門機関35のコンピュータ35c、栄養士、スポーツジム・クラブ、介護福祉事業所等の健康管理専門機関21のコンピュータ21c、カラーコーディネータ、色彩判定士、服装デザイナ、メークアップアーティスト、ヘアースタイリスト等の身支度専門機関22のコンピュータ22cに接続されている。コンピュータ5は、健康測定機器3の計測データ、多機能型カメラ12a,接写用多機能ハンディカメラ12bの画像データを遠隔通信手段20を介して医療専門機関35、健康管理専門機関21のコンピュータ35c,21cに送信する。医療専門機関35、健康管理専門機関21はこれら計測データ、画像データを分析し、専門家によるユーザ毎の健康管理情報をコンピュータ35c,21cを介してコンピュータ5に送信する。多機能型カメラ12a,接写用多機能ハンディカメラ12bの画像データは、身支度専門機関22のコンピュータ22cに送信される。身支度専門機関22は画像データを分析し、専門家によるユーザ毎のおしゃれ、身支度に関する身支度情報をコンピュータ22cを介してコンピュータ5に送信する。」
「【0046】ユーザは、起床時洗面化粧室1に入り、洗面化粧台2の前に立ち、顔を洗い、歯を磨いた後、健康状態を反映する身体部位の特性を計測する。コンピュータ5の表示装置6に表示された個人識別画面上で自分の名前が記載されたタッチスイッチを押す。これによりコンピュータ5はユーザが誰であるか識別する。(ステップ30)。次に健康測定機器3により健康状態を反映する身体部位の特性を計測する。例えば、自動血圧計3aに腕を挿入し、測定開始ボタンを押すと、自動血圧計3aはユーザの血圧を計測し、計測値をホールドする(ステップ31)。自動血圧計3aの測定を終了するとインタフェース4の自動血圧計3aの測定終了のフラッグが立てられる。一定周期で健康測定機器3の状態を監視しているコンピュータ5は、自動血圧計3aのフラッグがオンであるので、自動血圧計3aの計測値を取り込み、記憶装置14の該当するユーザの血圧の欄に計測日時分とともに記憶する(ステップ32)。記憶が終了するとコンピュータ5は、インタフェース4の自動血圧計3aのフラッグをオフにし、次回の計測に備える。他の健康測定機器3についても同様に計測し、計測データを記憶装置14に記憶する。」
「【図1】
[図:0001419071000003.jpg]
」
(イ)引用文献3に記載された技術事項
引用文献3には、「自動血圧計3a等のユーザの健康状態を反映する身体各部位の特性を計測する健康測定機器3の計測データがローカルエリヤネットネットワーク、インタフェース4を介してサーバとしてのコンピュータ5に伝送され、コンピュータ5はインタフェース36を介しインターネット等の遠隔通信手段20を使用して病院・クリニック等の医療専門機関35のコンピュータ35cに健康測定機器3の計測データを送信するものであるところ、ユーザが、コンピュータ5の表示装置6に表示された個人識別画面上で自分の名前が記載されたタッチスイッチを押し、自動血圧計3aに腕を挿入し、測定開始ボタンを押すと、自動血圧計3aはユーザの血圧を計測し、計測値をホールドし、自動血圧計3aの測定を終了するとインタフェース4の自動血圧計3aの測定終了のフラッグが立てられ、一定周期で健康測定機器3の状態を監視しているコンピュータ5は、自動血圧計3aのフラッグがオンであるので、自動血圧計3aの計測値を取り込み、記憶装置14の該当するユーザの血圧の欄に計測日時分とともに記憶する」という技術事項(以下、「引用文献3に記載された技術事項」という。)が記載されている。
(3)本件補正発明の解釈について
本件補正発明の「医療従事者が操作する医療者側情報処理端末に情報通信経路を介して接続可能であり、内部空間を画成し、該内部空間に被診療者を収容する箱体と、」との事項が意図する内容について検討する。
発明の詳細な説明には、「被診療者側情報処理端末1は情報通信経路として機能するインターネット2に接続されている」(段落【0011】)、「被診療者側情報処理端末1と医療従事者側情報処理端末3は情報処理機器1A,3Aを有しており、情報処理機器1A,3AのハードウエアはいずれもCPU1a,3aと、該CPU1a,3aにバス1b、3bを介してデータを送受信するプログラムメモリ1c、3cおよびワーキングメモリ1d、3dと、インターネット2に接続可能なデータ入出力回路1e、3eと、周辺プロセッサー1f、3fと、D/Aコンバーターを含む周辺回路1g、3gとを有している。」(段落【0012】)、「一実施形態に係る被診療者側情報処理端末1は・・・情報処理機器1Aに加えて、箱体として機能するブース7を有する。」(段落【0015】)、「ブース7は内部空間7aを画成しており、・・・」(段落【0016】)、「ブース7は化粧ボード7bで内部空間7aを画成しており、本実施形態では化粧ボード7bは不透明である。したがって、不特定多数の人8は外部空間から患者の容貌を見て、個人を特定できない。」(段落【0017】)、「この防音層10はブース7の側壁、天井、床を覆っており、防音層10は内部空間7aで再生される医師6の声の音圧レベルや患者5の声の音圧レベル、更に介助者の声の音圧レベルを外部空間9と接する面において、正常な聴力を有する人8が声の意味を理解できない程度に音圧レベルを低下させるに足る透過率損失を実現する。」(段落【0019】)と記載されるように、「医療従事者が操作する医療者側情報処理端末に情報通信経路を介して接続可能」であるのは、「被診療者側情報処理端末(が有する「情報処理機器」)」であり、「被診療者側情報処理端末」が有する「箱体」は、不特定多数の人が外部空間から患者の容貌を見て個人を特定させないように内部空間を画成したものであって、「箱体」そのものが情報通信機能を有するとは技術常識として考えがたい。
そうすると、本件補正発明の「医療従事者が操作する医療者側情報処理端末に情報通信経路を介して接続可能であり、内部空間を画成し、該内部空間に被診療者を収容する箱体と、」との事項は、「医療従事者が操作する医療者側情報処理端末に情報通信経路を介して接続可能な被診療者側情報処理端末であって、内部空間を画成し、該内部空間に被診療者を収容する箱体と、」との内容を意図していると解するのが合理的な解釈といえる。
(4)対比
上記「(3)本件補正発明の解釈について」で言及した事項を踏まえて、本件補正発明と、引用発明とを対比する。
ア 「医療従事者が操作する医療者側情報処理端末に情報通信経路を介して接続可能であり、」について
上記「(3)本件補正発明の解釈について」で言及したように、本件補正発明の「医療従事者が操作する医療者側情報処理端末に情報通信経路を介して接続可能であり、」は、「医療従事者が操作する医療者側情報処理端末に情報通信経路を介して接続可能な被診療者側情報処理端末であって、」との内容を特定している。
引用発明の「病気の診断と治療提供のために医療専門家がアクセスできるネットワーク端末(560、570、580)」及び「電子ネットワーク(550)」は、それぞれ本件補正発明の「医療従事者が操作する医療者側情報処理端末」及び「情報通信経路」に相当することは明らかである。
本件補正発明の「被診療者側情報処理端末」について、本願明細書の発明の詳細な説明には、「一実施形態に係る被診療者側情報処理端末1はパーソナルコンピュータ等とプログラムメモリ1c、3c内のアプリケーションプログラムで上記機能を実現する情報処理機器1Aに加えて、箱体として機能するブース7を有する。このブース7は不特定多数の人8が入退出する公共空間9に設置されている。」(段落【0015】)と記載されており、当該記載を踏まえると、引用発明の「医療キオスク(200)」の「キオスク端末」及び「チェンバー(210)」は、それぞれ上記「被診療者側情報処理端末」の「情報処理機器1A」及び「箱体として機能するブース7」に相当するものである。そして、引用発明の「医療キオスク(200)」は、「(キオスク端末によって)電子ネットワーク(550)を介して病気の診断と治療提供のために医療専門家がアクセスできるネットワーク端末(560、570、580)と電子的に通信する」ものであるから、本件補正発明の「被診療者側情報処理端末」と称し得るものである。
してみると、引用発明の「医療キオスク(200)」は、本件補正発明の「医療従事者が操作する医療者側情報処理端末に情報通信経路を介して接続可能な被診療者側情報処理端末」に相当するものである。
以上のとおりであるから、引用発明は本件補正発明の「医療従事者が操作する医療者側情報処理端末に情報通信経路を介して接続可能であり、」との構成を備えているといえる。
イ 「内部空間を画成し、該内部空間に被診療者を収容する箱体と、」について
引用発明の「チェンバー(210)」は、「ブース(202)およびドア(204)により内部空間が形成された箱形の部屋であって、患者がその内部で遠隔医療補助を受けることができる」ものであるから、本件補正発明の「内部空間を画成し、該内部空間に被診療者を収容する箱体」に相当する。
ウ 「前記情報通信経路に接続され、少なくとも前記医療従事者の声を表す医療従事者音声データと前記医療従事者の外観を表す医療従事者画像データを前記医療者側情報処理端末から受信して前記医療従事者の声と前記医療従事者の外観を前記内部空間で再生するとともに、前記箱体内の前記被診療者の声を表す被診療者音声データと前記被診療者の外観を表す被診療者画像データを前記医療者側情報処理端末に送信する情報処理機器とを備え、」について
(ア)引用発明の「キオスク端末」が備える「表示装置(220)」は、「患者と医療専門家との間に、電子ネットワーク(550)を介したビデオフィードリンクを提供することにより、患者と医療専門家との間の安全なリアルタイムの双方向コミュニケーションを可能とし、等身大の画面で、医療専門家をリアルタイムに対面式で表示することや医療専門家と患者が相互に対話できる音声機能を含めることも可能とするもの」であり、当該表示装置(220)によって可能となる上記事項は、本件補正発明の「少なくとも前記医療従事者の声を表す医療従事者音声データと前記医療従事者の外観を表す医療従事者画像データを前記医療者側情報処理端末から受信して前記医療従事者の声と前記医療従事者の外観を前記内部空間で再生する」ことに相当する。
(イ)引用発明の「キオスク端末」が備える「カメラ(230)」は、「医療専門家が患者自身や患者が示す目に見える病気症状310を観察することを可能にし、患者がカメラ(230)の前で立ったり、話したり、患部を見せたりすることで、ビデオフィードリンクを介して医療専門家とコミュニケーションを取ることを可能にするもの」であり、当該カメラ(230)によって可能となる上記事項は、本件補正発明の「前記箱体内の前記被診療者の声を表す被診療者音声データと前記被診療者の外観を表す被診療者画像データを前記医療者側情報処理端末に送信する」ことに相当する。
(ウ)引用発明の「キオスク端末」は、「表示装置(220)、入力装置(245)、カメラ(230)およびプロセッサ(240)を持ち、電子ネットワーク(550)と接続されている」ものである。
そうすると、上記(ア)及び(イ)で言及した事項を可能とする「表示装置(220)」と「カメラ(230)」を備え、「電子ネットワーク(550)と接続」されている引用発明の「キオスク端末」は、本件補正発明の「前記情報通信経路に接続され、少なくとも前記医療従事者の声を表す医療従事者音声データと前記医療従事者の外観を表す医療従事者画像データを前記医療者側情報処理端末から受信して前記医療従事者の声と前記医療従事者の外観を前記内部空間で再生するとともに、前記箱体内の前記被診療者の声を表す被診療者音声データと前記被診療者の外観を表す被診療者画像データを前記医療者側情報処理端末に送信する情報処理機器」に相当する。
エ 「前記箱体に関連して設置され、正常な聴力を有する人が前記箱体外部に伝播された前記声の音圧レベルで前記再生された前記医療従事者の声の意味と前記被診療者の声の意味を理解不能にならしめ、前記箱体を不特定多数の人が侵入可能な外部空間に設置させた音声防護手段と、」について
引用発明の「チェンバー(210)」は、「ブース(202)およびドア(204)により内部空間が形成された箱形の部屋であって、患者がその内部で遠隔医療補助を受けることができるとともに、音波エネルギーを反射または吸収する騒音バリアや防音壁のような減衰構造を使って防音を効果的に生成して、患者のプライバシー保護機能をもたらすもの」であるから、前記「音波エネルギーを反射または吸収する騒音バリアや防音壁のような減衰構造」は、本件補正発明の「正常な聴力を有する人が前記箱体外部に伝播された前記声の音圧レベルで前記再生された前記医療従事者の声の意味と前記被診療者の声の意味を理解不能にならしめ」る機能を有している「音声防護手段」に相当し、「チェンバー(210)」に設置されているものである。
そして、上記「イ」で言及したように、引用発明の「チェンバー(210)」は、本件補正発明の「内部空間を画成し、該内部空間に被診療者を収容する箱体」に相当するものであり、上記「音波エネルギーを反射または吸収する騒音バリアや防音壁のような減衰構造」が設置されることにより、患者のプライバシー保護機能がもたらされるのであるから、医療キオスク(200)の一部として、ショッピングモールや商業施設といった公共のショッピングセンターに設置することが可能となることは自明である。また、前記「ショッピングモールや商業施設といった公共のショッピングセンター」が、本件補正発明の「不特定多数の人が侵入可能な外部空間」に相当することも明らかである。
してみると、引用発明の「チェンバー(210)」には、本件補正発明の「前記箱体に関連して設置され、正常な聴力を有する人が前記箱体外部に伝播された前記声の音圧レベルで前記再生された前記医療従事者の声の意味と前記被診療者の声の意味を理解不能にならしめ、前記箱体を不特定多数の人が侵入可能な外部空間に設置させた音声防護手段」に相当する構成が備わっているといえる。
オ 「前記箱体に設けられ、前記内部空間内の前記被診療者を前記外部空間で特定させない視覚防護手段と」について
引用発明の「チェンバー(210)」には、本件補正発明の「前記箱体に設けられ、前記内部空間内の前記被診療者を前記外部空間で特定させない視覚防護手段」を備える旨特定されておらず、その点で引用発明と本件補正発明は相違している。
カ 「前記箱体に設けられ、前記被診療者の生体情報を取得して該被診療者の操作なしに前記生体情報を前記情報処理機器に供給し、前記情報処理機器に前記生体情報を表す生体データを前記医療者側情報処理端末に診療中に送らしめて前記生体情報を前記医療従事者に知らしめて前記診療に資する生体検査機器」について
(ア)引用発明の「生体測定装置(235)」は、医療キオスク(200)に備わっているものであって、「チェンバー(210)」に設けられていることは明らかである。
(イ)引用発明において、「生体測定装置(235)」は「体重計、血圧計、肥満度指数計、視力計、体温計、心理評価などを含み、医療データサンプル(355)作成のために患者は少なくとも1つのセルフサービス式生体検査(237)が可能」なものであり、そして、当該「医療データサンプル(355)」は「電子ネットワーク(550)によって患者と医療専門家との間で伝送可能」なものである。
ここで、医療データサンプル(355)作成のために患者によるセルフサービス式生体検査(237)で取得される「体重、血圧、肥満度指数、視力、体温」は、本件補正発明の「被診療者の生体情報」に相当する。そして、前記「医療データサンプル(355)」は、患者と医療専門家との間で伝送可能なものであるから、本件補正発明の「生体情報を表す生体データ」に相当する。
また、「生体測定装置(235)」が「生体検査機器」と称し得るものである。
(ウ)引用発明において、患者と医療専門家との間で「医療データサンプル(355)」を伝送するには「キオスク端末」と「電子ネットワーク(550)」が用いられることは自明である。
(エ)そうすると、引用発明においては、「セルフサービス式生体検査(237)で取得される体重、血圧、肥満度指数、視力、体温は、キオスク端末に供給され、医療データサンプル(355)として、医療専門家がアクセスできるネットワーク端末(560、570、580)に伝送され、診療に利用されている」といえる。
(オ)上記(ア)から(エ)で言及したことを踏まえると、引用発明と本件補正発明は、「前記箱体に設けられ、前記被診療者の生体情報を取得して前記生体情報を前記情報処理機器に供給し、前記情報処理機器に前記生体情報を表す生体データを前記医療者側情報処理端末に送らしめて前記生体情報を前記医療従事者に知らしめて前記診療に資する生体検査機器」を備えるという点で共通している一方、引用発明においては、生体測定装置(235)が取得した体重、血圧、肥満度指数、視力、体温等をキオスク端末に患者の操作なしに供給しているか明らかでない点、及び、医療データサンプル(355)が診療中に医療専門家がアクセスできるネットワーク端末(560、570、580)に伝送されているのか明らかでない点で本件補正発明と相違している。
以上ア~カによれば、本件補正発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
[一致点]
医療従事者が操作する医療者側情報処理端末に情報通信経路を介して接続可能であり、内部空間を画成し、該内部空間に被診療者を収容する箱体と、
前記情報通信経路に接続され、少なくとも前記医療従事者の声を表す医療従事者音声データと前記医療従事者の外観を表す医療従事者画像データを前記医療者側情報処理端末から受信して前記医療従事者の声と前記医療従事者の外観を前記内部空間で再生するとともに、前記箱体内の前記被診療者の声を表す被診療者音声データと前記被診療者の外観を表す被診療者画像データを前記医療者側情報処理端末に送信する情報処理機器とを備え、
前記箱体に関連して設置され、正常な聴力を有する人が前記箱体外部に伝播された前記声の音圧レベルで前記再生された前記医療従事者の声の意味と前記被診療者の声の意味を理解不能にならしめ、前記箱体を不特定多数の人が侵入可能な外部空間に設置させた音声防護手段と、を有した被診療者側情報理端末において、
前記箱体に設けられ、前記被診療者の生体情報を取得して前記生体情報を前記情報処理機器に供給し、前記情報処理機器に前記生体情報を表す生体データを前記医療者側情報処理端末に送らしめて前記生体情報を前記医療従事者に知らしめて前記診療に資する生体検査機器を更に備えたことを特徴とする被診療者側情報処理端末。
[相違点]
[相違点1]
本件補正発明においては、「前記箱体に設けられ、前記内部空間内の前記被診療者を前記外部空間で特定させない視覚防護手段」を有するのに対し、引用発明においては、かかる手段を備える旨特定されていない点。
[相違点2]
「生体検査機器」について、本件補正発明においては、「前記被診療者の生体情報を取得して該被診療者の操作なしに前記生体情報を前記情報処理機器に供給」すると特定されているのに対し、引用発明においては、生体測定装置(235)が取得した体重、血圧、肥満度指数、視力、体温等をキオスク端末に患者の操作なしに供給しているか明らかでない点。
[相違点3]
「生体検査機器」について、本件補正発明においては、「前記生体情報を表す生体データを前記医療者側情報処理端末に診療中に送らしめて前記生体情報を前記医療従事者に知らしめて」と特定されているのに対し、引用発明においては、医療データサンプル(355)が診療中に医療専門家がアクセスできるネットワーク端末(560、570、580)に伝送されているのか明らかでない点。
(5)判断
上記[相違点1]~[相違点3]についてそれぞれ検討する。
ア [相違点1]について
引用発明の「医療キオスク」は、ショッピングモールや商業施設といった公共のショッピングセンターに設置することが可能なものであること、また、引用発明の「医療キオスク」が含む「チェンバー(210)」は、ブース(202)およびドア(204)により内部空間が形成された箱形の部屋であり、当該チェンバー(210)の内部において、患者が患部を見せたりするものであることを鑑みれば、当該チェンバー(210)が、患者のプライバシー保護機能として、内部を外から見えないようにする視覚防護機能を備える必要があることは自明であるから、引用発明の「チェンバー(210)」に「(チェンバー(210)の)内部空間内の被診療者を外部空間で特定させない視覚防護手段」を付加して、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
イ [相違点2]について
(ア)引用文献1の「医療キオスクは、有人化と無人化のいずれも可能である。有人の医療キオスクは無人より多くの検査を実施できる。また、実際の医療専門家を提供して患者をサポートすることも可能である。有人の医療キオスクの欠点は、正看護師が常駐しなければならないことだ。一方、無人の医療キオスクは月1回の定期点検のみで済む。なお、基本的な医療検査(血圧、肺活量、心拍数と心電図、血糖値、身長/体重/肥満度指数)は、有人、無人いずれの医療キオスクでも実施可能である。」(段落【0007】)との記載や「上記の医療キオスクは市場の一定のニーズに対応しているが、医療分野では人々の治療のためにさらなる幅広い自動化が必要とされている。特に、医療診断、治療、処方箋の提供や、ライブビデオのフィードリンクを活用して医療専門家との遠隔対話により投薬を行ったりできる一方で、患者の医療データへの完全アクセスにより患者自身によるセルフサービスの生体検査を促す、無人医療キオスクへのニーズがある。」(段落【0008】)との記載を踏まえると、本願の出願前において、無人医療キオスクを利用した医療分野では人々の治療のためにさらなる幅広い自動化が必要とされている旨の課題は当該技術分野においては普通に知られているものであることが把握できる。
(イ)引用文献3に記載された技術的事項は、「自動血圧計3a」が「ユーザの血圧を計測」すると、「自動血圧計3aの測定終了のフラッグが立てられ」、「一定周期で健康測定機器3の状態を監視しているコンピュータ5」が「自動血圧計3aのフラッグがオンであるので、自動血圧計3aの計測値を取り込み」、「記憶」するものであり、自動血圧計3aによる血圧の「計測」から、コンピュータ5による計測値の「記憶」までの間に、ユーザの操作は介在しないから、自動血圧計3aの計測値を、ユーザの操作なしにコンピュータ5に供給する技術事項が記載されているといえる。そして、引用文献3の「自動血圧計3a」は、引用発明の生体測定装置(235)に対応するものである。
そうすると、上記(ア)で言及した課題に対応するため、引用発明において、引用文献3に記載された技術事項を適用して、生体測定装置(235)である自動血圧計3aが測定(取得)した計測値(生体情報)を、患者の操作なしにキオスク端末に供給させることは、当業者であれば容易になし得たことである。
(ウ)したがって、引用発明及び引用文献3に記載された技術事項に基づき、上記相違点2に係る構成に想到することは、当業者が容易になし得たことである。
ウ [相違点3]について
引用発明の医療データサンプル(355)は、電子ネットワーク(550)で伝送されるものであるところ、当該電子ネットワーク(550)は、医療専門家がアクセスできるネットワーク端末およびキオスク端末と電子的に通信し、リアルタイムの遠隔医療診断および治療を提供するためのものである。
そして、医療データサンプル(355)がリアルタイムの遠隔医療診断および治療に役立つ情報であることは明らかであることを踏まえると、引用発明において、医療データサンプル(355)を、リアルタイムの遠隔診療診断および治療を提供している最中に(すなわち、診断中に)、ネットワーク端末に送信可能とすることは、当業者が容易になし得たことである。
エ 本件補正発明の奏する効果について
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献3に記載の技術事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(6)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、以下の4点を主張する。
(主張1)文献1に開示される遠隔医療診断に使用するキオスクの使用空間は、ショッピングモールや商業施設といった公共のショッピングセンター、医療施設内部である一方、文献3の技術はユーザが日常生活で使用する住宅の空間に限定されているから、文献3の技術を公共のショッピングセンターなどに代表される公共空間や医療施設で使用を予定している文献1に寄せ集めることは文献3の開示を超えており、寄せ集め技術は後知恵である点。
(主張2)文献1の生体測定装置で得られる生体情報は、生体測定装置235を使用して患者等が操作するセルフ式で測定される体重等生体情報をディジタル表示装置220に患者及び補助者がデータ入力することで個人情報データサンプル(生体データ)として得られ、生体データはネットワーク端末518,522等に患者自身の操作で送られて医療専門家に伝えられる一方、現請求項1では「(生体情報は)被診療者の操作なしに・・・前記情報処理機器に供給」されるので、生体情報入力時に人為的過誤が発生せず、医療従事者に正確に生体情報を届けることができる点。
(主張3)文献3の計測データ(すなわち生体情報)はユーザが自己識別画面上の操作を経てサーバー5により生体データとして記憶装置14に蓄積され、この段階で生体データは医療専門機関35に送られず、ユーザが不調時など専門家のコメントを欲したとき、生体データはユーザの操作を経て医療専門機関に送られるので、文献3でも現請求項1で規定するようにリアルタイムで診療中に「被診療者の操作なしに・・・前記生体データを前記医療従事者に知らしめて前記診療に資する」ことはできない点。
(主張4)文献1の血圧計等生体測定装置を文献3のどの構成と入れ替えるのかははっきりしないところ、文献1の生体測定装置のみを文献3の健康測定機器に置き換えるなら、生体データは自動血圧計等で得られる生体情報をタッチスクリーン付きディジタル表示装置220で個人情報データサンプル(すなわち、生体データ)として作成されるので、患者の関与が依然必要であり、「操作なしに」は実現されず、また、文献1の生体測定装置だけでなく文献1のディジタル表示装置等220も、文献3の自己識別システム、コンピュータ5等に置換しても、依然として患者の操作を必要としており、人為的過誤、作為的改変を排し得ず、更に、「診療中」にも生体データが患者から医師等に配信されるわけでもない点。
ア 主張1について
上記「(5)判断 イ(イ)」で言及した引用文献3に記載された「自動血圧計3aの計測値を、ユーザの操作なしにコンピュータ5に供給する」との技術事項は、ある空間内に存在する複数の装置であるところの自動血圧計3aからコンピュータ5へ測定値(情報)を供給する際にユーザの操作を要しないことを示す技術事項であるから、たとえ、引用文献3に記載された技術事項が、住宅の空間で使用されることを想定していたとしても、そのような想定は、引用発明に対して引用文献3に記載された技術事項を適用することの阻害事由になるとまではいえない。
イ 主張2について
上記「(4)対比 カ(イ)」で示したとおり、引用発明において、本件補正発明の「生体データ」に相当するのは、生体測定装置(235)で取得された生体情報に基づいて作成される「医療データサンプル(355)」であるから、「生体データ」が引用文献1の「個人情報データサンプル(350)」であるという前提に基づく請求人の主張2は採用できない。
ウ 主張3について
引用文献3に記載された技術事項が、自動血圧計3aの計測値を、ユーザの操作なしにコンピュータ5に供給するものであることは、上記「(5)判断 イ(イ)」で言及したとおりである。
また、本件補正発明が、「被診療者の操作なしに・・・前記生体データを前記医療従事者に知らしめて前記診療に資する」ものであるとの請求人の主張について検討するに、本件補正発明の「該被診療者の操作なしに」との記載は、「前記生体情報を前記情報処理機器に供給し」との記載を修飾することは明らかである。
一方、本件補正発明の「該被診療者の操作なしに」との記載が、「前記情報処理機器に前記生体情報を表す生体データを前記医療者側情報処理端末に診療中に送らしめ」るとの記載をも修飾することは、本願明細書の発明の詳細な説明には記載されておらず、また、その旨を示唆する記載もない。
したがって、請求人の主張3は、本願明細書の記載に基づいた主張とは認められないから採用できない。
エ 主張4について
引用発明に対する、引用文献3に記載された技術事項の適用については、上記「(5)判断 イ(イ)」に示したとおり、引用発明において、引用文献3に記載された技術事項(自動血圧計3aの計測値を、ユーザの操作なしにコンピュータ5に供給する技術)を適用するものであって、請求人が主張するような、「文献1の生体測定装置のみを文献3の健康測定機器に置き換える」ことや、「文献1の生体測定装置だけでなく文献1のディジタル表示装置等220も、文献3の自己識別システム、コンピュータ5等に置換」することではない。
したがって、請求人の主張4は、採用できない。
(7)小括
以上によれば、本件補正発明は、引用発明及び引用文献3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本件補正前の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]の「1(2)」に記載したとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
本願発明についての原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1、3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2015-215769号公報
3.特開2002-083055号公報
3 引用文献の記載、引用発明等
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び引用発明、引用文献3及び引用文献3に記載された技術事項は、それぞれ上記第2の[理由]の「2(2)」のとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]において検討した本件補正発明から、上記第2の[理由]の「2」に示した、「生体検査機器」に対して下線で示した限定事項を削除することにより、その内容を「前記箱体に設けられ、前記被診療者の生体情報を取得して該生体情報を表す生体データを前記情報処理機器に供給し、前記情報処理機器に前記生体データを前記医療者側情報処理端末に送らしめて前記生体情報を前記医療従事者に知らしめて診療に資する生体検査機器」としたものである。
そうすると、本願発明と引用発明は、上記第2の[理由]の「2(4)」で言及した[相違点1]に係る事項を除いて一致している。
そして、当該「[相違点1]に係る事項については、上記第2の[理由]の「2(5)ア」で検討したとおりである。
したがって、本願発明は、引用文献3を用いるまでもなく、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-001740