特許拒絶査定不服審判
2024-011954
カメラアクチュエータ
- 審判番号
- 2024-011954
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-531254
- 請求日
- 2024年07月19日
- 審決日
- 2025年12月18日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】北京小米移動軟件有限公司
- 【請求人代理人】弁理士法人藤本パートナーズ
- 審判長/審判官
- 審判長 波多江 進
- 審判官 藤田 年彦
- 審判官 東松 修太郎
- 分類
- P18 .121-Z (G03B) / P18 .575-Z (G03B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-531254「カメラアクチュエータ」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年10月20日国際公開、WO2022/217512、令和 5年 6月 9日国内公表、特表2023-524183〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年(令和3年)4月14日を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和3年 6月18日 :翻訳文の提出
令和5年 6月19日付け:拒絶理由通知書
同年 9月20日 :意見書、手続補正書の提出
同月28日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和6年 1月 9日 :意見書、手続補正書の提出
同年 3月26日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月29日 :原査定の謄本の送達)
同年 7月19日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年7月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年7月19日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和6年7月19日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和6年1月9日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1)本件補正前
「【請求項1】
固定枠と、
前記固定枠に内側で支持され、前記固定枠に対して第1の方向に移動可能な第1移動枠と、
前記第1移動枠に内側で支持され、前記第1移動枠に対して前記第1の方向に直交する第2の方向に移動可能な第2移動枠と、
前記第2移動枠に内側で支持され、前記第2移動枠に対して、前記第1の方向及び前記第2の方向にそれぞれ直交する第3の方向に移動可能なレンズユニットと、
前記固定枠と前記第1移動枠とに亘って設けられ、通電により伸長する圧電素子を有し、前記第1移動枠を前記第1の方向に移動させる第1駆動部と、
前記第1移動枠と前記第2移動枠とに亘って設けられ、通電により伸長する圧電素子を有し、前記第2移動枠を前記第2の方向に移動させる第2駆動部と、
前記第2移動枠に固定され、前記レンズユニットを前記第3の方向に移動させる第3駆動部と、を備え、
前記第3駆動部は、通電により伸長する第1圧電素子及び第2圧電素子が、前記伸長の方向に直交する方向に貼り合わされて構成された駆動源部と、前記レンズユニットに当接し、前記駆動源部の変形に応じて楕円軌道を描くように移動する当接部と、前記当接部とは前記駆動源部の反対側の位置に設けられたバックアップスプリングと、を備え、
前記当接部は、前記バックアップスプリングにより、前記レンズユニットの一部である被押圧部に押し付けられるように付勢され、
前記第1駆動部、前記第2駆動部の各々は、通電により伸長及び圧縮する前記圧電素子を有する駆動力発生部と、前記圧電素子の伸長方向及び短縮方向の一方に隣接し、前記伸長方向及び短縮方向に沿って延びる棒状部と、前記駆動力発生部の前記伸長方向及び短縮方向の他方に隣接するウェイト部と、を有する、カメラアクチュエータ。」
(2)本件補正後
「【請求項1】
固定枠と、
前記固定枠に内側で支持され、前記固定枠に対して第1の方向に移動可能な第1移動枠と、
前記第1移動枠に内側で支持され、前記第1移動枠に対して前記第1の方向に直交する第2の方向に移動可能な第2移動枠と、
前記第2移動枠に内側で支持され、前記第2移動枠に対して、前記第1の方向及び前記第2の方向にそれぞれ直交する第3の方向に移動可能なレンズユニットと、
前記固定枠と前記第1移動枠とに亘って設けられ、通電により伸長する圧電素子を有し、前記第1移動枠を前記第1の方向に移動させる第1駆動部と、
前記第1移動枠と前記第2移動枠とに亘って設けられ、通電により伸長する圧電素子を有し、前記第2移動枠を前記第2の方向に移動させる第2駆動部と、
前記第2移動枠に固定され、前記レンズユニットを前記第3の方向に移動させる第3駆動部と、を備え、
前記第3駆動部は、通電により伸長する第1圧電素子及び第2圧電素子が、前記伸長の方向に直交する方向に貼り合わされて構成された駆動源部と、前記レンズユニットに当接し、前記駆動源部の変形に応じて楕円軌道を描くように移動する当接部と、前記当接部とは前記駆動源部の反対側の位置に設けられたバックアップスプリングと、を備え、
前記当接部は、前記バックアップスプリングにより、前記レンズユニットの一部である被押圧部に押し付けられるように付勢され、
前記第1駆動部、前記第2駆動部の各々は、通電により伸長及び圧縮する前記圧電素子を有する駆動力発生部と、前記圧電素子の伸長方向及び短縮方向の一方に隣接し、前記伸長方向及び短縮方向に沿って延びる棒状部と、前記駆動力発生部の前記伸長方向及び短縮方向の他方に隣接するウェイト部と、を有し、
前記棒状部の外周面は、前記第1移動枠に設けられた駆動力伝達部と当接しており、
前記駆動力伝達部は、V字状の溝を有する受け部と、ばねによって付勢された板状の押さえ部とを備える、
カメラアクチュエータ。」
2 本件補正の目的
本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された「棒状部」について、「前記棒状部の外周面は、前記第1移動枠に設けられた駆動力伝達部と当接して」いるものに限定するとともに、「駆動力伝達部」について、「前記駆動力伝達部は、V字状の溝を有する受け部と、ばねによって付勢された板状の押さえ部とを備える」ものに限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1)本件補正発明
ア 本件補正発明の認定
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Aから構成Mまでに分説する。また、参考図として、本願の【図1】~【図3】を掲載し、対応する図内の番号を、本件補正発明の構成に括弧書きで付した。
<本件補正発明の分説>
A 固定枠(2)と、
B 前記固定枠(2)に内側で支持され、前記固定枠(2)に対して第1の方向(X方向)に移動可能な第1移動枠(3)と、
C 前記第1移動枠(3)に内側で支持され、前記第1移動枠(3)に対して前記第1の方向(X方向)に直交する第2の方向(Y方向)に移動可能な第2移動枠(4)と、
D 前記第2移動枠(4)に内側で支持され、前記第2移動枠(4)に対して、前記第1の方向(X方向)及び前記第2の方向(Y方向)にそれぞれ直交する第3の方向(Z方向)に移動可能なレンズユニット(5)と、
E 前記固定枠(2)と前記第1移動枠(3)とに亘って設けられ、通電により伸長する圧電素子(61)を有し、前記第1移動枠(3)を前記第1の方向(X方向)に移動させる第1駆動部(6)と、
F 前記第1移動枠(3)と前記第2移動枠(4)とに亘って設けられ、通電により伸長する圧電素子(71)を有し、前記第2移動枠(4)を前記第2の方向(Y方向)に移動させる第2駆動部(7)と、
G 前記第2移動枠(4)に固定され、前記レンズユニット(5)を前記第3の方向(Z方向)に移動させる第3駆動部(8)と、を備え、
H 前記第3駆動部(8)は、通電により伸長する第1圧電素子(811)及び第2圧電素子(812)が、前記伸長の方向に直交する方向に貼り合わされて構成された駆動源部(81)と、前記レンズユニット(5)に当接し、前記駆動源部(81)の変形に応じて楕円軌道(V1,V2)を描くように移動する当接部(82)と、前記当接部(82)とは前記駆動源部(81)の反対側の位置に設けられたバックアップスプリング(84)と、を備え、
I 前記当接部は、前記バックアップスプリング(84)により、前記レンズユニット(5)の一部である被押圧部(52)に押し付けられるように付勢され、
J 前記第1駆動部(6)、前記第2駆動部(7)の各々は、通電により伸長及び圧縮する前記圧電素子を有する駆動力発生部(61,71)と、前記圧電素子の伸長方向及び短縮方向の一方に隣接し、前記伸長方向及び短縮方向に沿って延びる棒状部(62)と、前記駆動力発生部(61,71)の前記伸長方向及び短縮方向の他方に隣接するウェイト部(63)と、を有し、
K 前記棒状部(62)の外周面は、前記第1移動枠(3)に設けられた駆動力伝達部(32)と当接しており、
L 前記駆動力伝達部(32)は、V字状の溝を有する受け部(321)と、ばね(323)によって付勢された板状の押さえ部(322)とを備える、
M カメラアクチュエータ(1)。
[図:0001435643000001.jpg]
[図:0001435643000002.jpg]
[図:0001435643000003.jpg]
イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスマートフォン等の電子機器(情報機器)に搭載されたカメラモジュールに適用され、オートフォーカス機能を有するとともに、カメラレンズを移動させて手ブレを補正するためのカメラアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば、日本国特開2012-58762号公報に記載のレンズホルダ駆動装置が挙げられる。このレンズホルダ駆動装置はオートフォーカス領域と、このオートフォーカス領域を包含するように位置する手ブレ補正領域を有する。オートフォーカス領域には、コイル付きレンズホルダ、4個の磁石、2枚の板ばねが設けられている。手ブレ補正領域には、ベース基板、4本のワイヤ、4枚のコイル付き基板が設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この従来技術におけるオートフォーカス領域は、2枚の板ばねによって保持された構造のため共振が起こりやすい。また、オートフォーカス領域と手ブレ補正領域との間は4本のワイヤで保持されている。このため、手ブレ補正領域も容易に共振してしまう。また、この従来技術では、オートフォーカス領域の磁石に隣接して手ブレ補正用のコイルを設ける必要があることから、レンズホルダ駆動装置が必然的に大型化してしまう。
【0004】
このことに鑑み、本発明は、オートフォーカス機能及び手ブレ補正機能を有する小型のカメラアクチュエータを提供することを課題とする。」
「【発明の効果】
【0015】
本発明のカメラアクチュエータは、構成部品がかさばらず、構成部品の配置効率が良いため、全体として小型の(薄い)カメラアクチュエータとできる。従って、オートフォーカス機能及び手ブレ補正機能を有する小型のカメラアクチュエータを提供できる。」
「【0039】
前記説明のように、本実施形態は、固定枠2と、前記固定枠2に内側で支持され、前記固定枠2に対して第1の方向に移動可能な第1移動枠3と、前記第1移動枠3に内側で支持され、前記第1移動枠3に対して前記第1の方向に直交する第2の方向に移動可能な第2移動枠4と、前記第2移動枠4に内側で支持され、前記第2移動枠4に対して、前記第1の方向及び前記第2の方向にそれぞれ直交する第3の方向に移動可能なレンズユニット5と、前記固定枠2と前記第1移動枠3とに亘って設けられ、通電により伸長する圧電素子を有し、前記第1移動枠3を前記第1の方向に移動させる第1駆動部6と、前記第1移動枠3と前記第2移動枠4とに亘って設けられ、通電により伸長する圧電素子を有し、前記第2移動枠4を前記第2の方向に移動させる第2駆動部7と、前記第2移動枠4に固定され、前記レンズユニット5を前記第3の方向に移動させる第3駆動部8と、を備え、前記第3駆動部8は、通電により伸長する第1圧電素子811及び第2圧電素子812が、前記伸長の方向に直交する方向に貼り合わされて構成された駆動源部81と、前記レンズユニット5に当接し、前記駆動源部81の変形に応じて楕円軌道V1,V2を描くように移動する当接部82と、を備えるカメラアクチュエータ1である。
【0040】
この構成によると、第1駆動部6及び第2駆動部7が、通電により伸長する圧電素子を駆動力の発生源とすることから、カメラアクチュエータ1の構成部品をかさばらないようにできる。」
「【0054】
以上、本実施形態のカメラアクチュエータ1は、構成部品がかさばらず、構成部品の配置効率が良いため、全体として小型の(薄い)カメラアクチュエータ1とできる。また、このカメラアクチュエータ1は磁力を駆動のために使用しないので、磁気漏れの問題が生じない。」
(2)各引用文献の記載事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
(ア)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2009-42551号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(ウ)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
「【0024】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る撮像ユニット1を機器本体に備えた電子機器として例示する携帯電話機100を示す斜視図であり、(a)は正面側、(b)は背面側を示している。
図1(a),図1(b)に示すように、携帯電話機100は、機器本体であるフレーム101の内部に撮像ユニット1を備えており、さらに撮像ユニット1により撮像した画像を表示する表示部102、各種操作を行う操作部103などを備えている。」
[図:0001435643000004.jpg]
「【0025】
図2は、第1実施形態に係る撮像ユニット1の全体構成を示す分解斜視図であり、図3は図2に示す撮像ユニット1の要部構成を示す正面図である。
図2,図3に示すように、撮像ユニット1は、撮影窓111を有するケース体110の内部に配設されており、当該撮像ユニット1全体が、光軸Xと直交する方向(上下方向及び左右方向)に対して移動可能に支持されている。 具体的に、撮像ユニット1は、画像撮影時におけるユーザの手振れに起因する当該撮像ユニット1の上下方向及び左右方向に対する振れをキャンセルするように補正する手振れ補正機能(手振れ補正手段)を備えており、光軸Xに対して直交し、且つ、互いが直交するように配設された二つの超小型リニアアクチュエータにより上下左右方向に移動できるようになっている。」
[図:0001435643000005.jpg]
「【0026】
本実施形態では、上記手振れ補正手段を構成するリニアアクチュエータとして、SIDM(Smooth Impact Drive Mechanism:スムーズインパクト駆動機構)120,130が採用されている。SIDM120,130は、例えば、図2,図3に示すように、それぞれ固定部121,131、圧電素子122,132及び駆動軸123,133の3部品を接合してなる本体部124,134と、駆動軸123,133に摩擦係合された移動体125,135とを備えて構成されており、圧電素子122,132の急峻な体積変化と移動体125,135の慣性と摩擦力とを利用した公知の直進型アクチュエータである。」
[図:0001435643000006.jpg]
「【0027】
かかるSIDM120の固定部121はケース体110に固定され、SIDM120の駆動軸123には移動体125が摩擦係合している。さらに、移動体125にはSIDM130の固定部131が固定されていて、上記駆動軸123と軸線方向が直交するSIDM130の駆動軸133には、レンズ2を保持する移動体135が摩擦係合している。そして、図示しない制御部に連結された圧電素子122,132が、該制御部からの駆動信号に基づき伸縮して駆動軸123,133を前進させたり後退させたりすることで、光軸X方向と直交する方向に対する手振れを打ち消すようにしてレンズ2が上下左右に移動される。これにより、各SIDM120,130は、撮像ユニット1に設けられた本発明の手振れ補正手段として機能する。なお、本実施形態では、移動体135のうち光軸X方向視にて略矩形をなす中央の枠体部が、レンズ2を収容する筐体10(後述)となっている。
【0028】
かかる撮像ユニット1は、例えば、図2,図3に示すように、レンズ2を収容する筐体10と、レンズ2を光軸X方向に駆動するレンズ駆動装置20と、を備えている。
【0029】
筐体10の内部には、光軸X方向(被写体側)から見て略矩形をなす所定の内部空間が形成されており、この内部空間内に、光軸X方向から見て略円形のレンズ2を保持した移動部材25(後述)が収納されている。また、筐体10の内部には、光軸X方向におけるレンズ2の位置を検出する位置検知センサ60が設けられている。なお、本実施形態では、位置検知センサ60としてホール素子が採用されており、光軸X方向に対する移動部材25の移動に基づく磁場の変化により、光軸X方向におけるレンズ2の位置が検出される。
【0030】
レンズ駆動装置20は、レンズ2を光軸X方向に移動可能に保持する移動部材25と、光軸X方向に沿って設けられ当該移動部材25と摩擦係合する駆動軸23、この駆動軸23を軸線方向に駆動することで移動部材25を光軸X方向に駆動する電気機械変換素子としての圧電素子22、この圧電素子22の一端を固定する固定部材21、の3部材を当該記載順に接合してなる本体部24と、を備えている。このレンズ駆動装置20は、圧電素子22の急峻な体積変化と移動部材25の慣性と摩擦力とを利用した超小型のリニアアクチュエータすなわちSIDMであり、撮像ユニット1においてレンズ2を光軸X方向に駆動するズーム機能(AF機能)の駆動源として機能する。」
[図:0001435643000007.jpg]
「【0031】
具体的に、レンズ駆動装置20は、その本体部24が、図3に示す筐体10内の左上部に配設され、駆動軸23の軸線方向がレンズ2の光軸Xと平行に設けられている。
移動部材25には、一端部32が駆動軸23に当接されるレバー30と、前記一端部32が駆動軸23側に押圧されるようにレバー30の他端部33を付勢するコイルばね40と、が搭載されている。」
(イ)図面から読み取れる事項の認定
引用文献1の【0025】~【0028】の記載を踏まえつつ【図3】を参照すると、次の事項(以下「認定事項1」という。)が読み取れる。
<認定事項1>
「ケース体110は移動体125を囲む枠状部を有し、移動体125は筐体10を囲む枠状であること。」
(ウ)引用発明の認定
前記(イ)において認定した事項及び前記(ア)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、第1実施形態(【図2】~【図5】)に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所等を括弧内に示した。a等は説明のために付した。
<引用発明>
「a 撮像ユニット1は、撮影窓111を有するケース体110の内部に配設されており、撮像ユニット1全体が、光軸Xと直交する方向(上下方向及び左右方向)に対して移動可能に支持され、具体的に、撮像ユニット1は、画像撮影時におけるユーザの手振れに起因する撮像ユニット1の上下方向及び左右方向に対する振れをキャンセルするように補正する手振れ補正手段を備えており、光軸Xに対して直交し、且つ、互いが直交するように配設された二つの超小型リニアアクチュエータにより上下左右方向に移動できるようになっており(【0025】)、
b 手振れ補正手段を構成するリニアアクチュエータとして、SIDM120,130が採用され、SIDM120,130は、それぞれ固定部121,131、圧電素子122,132及び駆動軸123,133の3部品を接合してなる本体部124,134と、駆動軸123,133に摩擦係合された移動体125,135とを備えて構成され、圧電素子122,132の急峻な体積変化と移動体125,135の慣性と摩擦力とを利用した直進型アクチュエータであり(【0026】)、
c SIDM120の固定部121はケース体110に固定され、SIDM120の駆動軸123には移動体125が摩擦係合し、【0027】)、 d 移動体125にはSIDM130の固定部131が固定され、駆動軸123と軸線方向が直交するSIDM130の駆動軸133には、レンズ2を保持する移動体135が摩擦係合し(【0027】)、
e 制御部に連結された圧電素子122,132が、制御部からの駆動信号に基づき伸縮して駆動軸123,133を前進させたり後退させたりすることで、光軸X方向と直交する方向に対する手振れを打ち消すようにしてレンズ2が上下左右に移動され、これにより、各SIDM120,130は、撮像ユニット1に設けられた手振れ補正手段として機能し(【0027】)、
f 移動体135のうち光軸X方向視にて略矩形をなす中央の枠体部が、レンズ2を収容する筐体10となっており(【0027】)、
g 撮像ユニット1は、レンズ2を収容する筐体10と、レンズ2を光軸X方向に駆動するレンズ駆動装置20と、を備えており(【0028】)、
h ケース体110は移動体125を囲む枠状部を有し、移動体125は筐体10を囲む枠状であり(認定事項1)、
i 筐体10の内部には、光軸X方向(被写体側)から見て略矩形をなす所定の内部空間が形成されており、この内部空間内に、光軸X方向から見て略円形のレンズ2を保持した移動部材25が収納され(【0029】)、
j レンズ駆動装置20は、レンズ2を光軸X方向に移動可能に保持する移動部材25と、光軸X方向に沿って設けられ当該移動部材25と摩擦係合する駆動軸23、この駆動軸23を軸線方向に駆動することで移動部材25を光軸X方向に駆動する電気機械変換素子としての圧電素子22、この圧電素子22の一端を固定する固定部材21、の3部材を当該記載順に接合してなる本体部24と、を備え(【0030】、)
k レンズ駆動装置20は、圧電素子22の急峻な体積変化と移動部材25の慣性と摩擦力とを利用した超小型のリニアアクチュエータすなわちSIDMであり、撮像ユニット1においてレンズ2を光軸X方向に駆動するズーム機能(AF機能)の駆動源として機能し(【0030】)、
l レンズ駆動装置20は、その本体部24が、筐体10内の左上部に配設され、駆動軸23の軸線方向がレンズ2の光軸Xと平行に設けられている(【0031】)
m 携帯電話機100の機器本体であるフレーム101の内部に備えられた撮像ユニット1(【0024】)とケース体110(【0025】)。」
イ 引用文献2及び3に記載された事項及び周知技術1の認定
(ア)引用文献2に記載された事項
原査定の理由に引用され、本願の出願前に発行された文献である特開2004-312814号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
「【0021】
被駆動体5は、略円筒形状を有し、内部に光学系21を配置される。この光学系21は、この稼働装置1ではレンズまたはレンズ群である・・・
【0022】
・・・振動体6は、接触部66の先端部を、被接触部51(被駆動体5)の半径方向からその周面に当接する。このとき、振動体6は、接触部66を、腕部68の弾性により、被接触部51の側面に対して弾性的に付勢する。これにより、接触部66と被接触部51との間に十分な摩擦力が形成され、振動体6の振動が被接触部51に対して確実に伝達される。また、振動体6は、外部の通電回路(図示省略)に接続されて、その駆動を制御される。そして、振動体6および通電回路は、この稼働装置1を駆動する超音波モータとして機能する。なお、この振動体6の詳細な構成および機能については、後述する。」
[図:0001435643000008.jpg]
「【0023】
図4は、この第1実施形態にかかる稼働装置の作用を示す説明図である。この稼働装置1において、振動体6は、外部の通電回路から高周波数の交流電流を印加されて高速で伸縮運動し、その接触部66を被接触部51の周面に高速かつ反復的に衝突させる。すると、振動体6側がベース4に固定されているので、接触部66と被接触部51との摩擦接触により、被接触部51が所定方向に回転する。すると、被駆動体5全体が回転してベース4のネジ溝43により送られ、その回転にかかる軸方向、すなわち、ベース4の平面に対して垂直成分を有する方向に変位する。これにより、光学系21と撮像素子22との距離が変化して、撮像ユニットのフォーカスが調整される。・・・」
[図:0001435643000009.jpg]
「【0025】
この稼働装置1によれば、ベース4の平面方向にかかる振動体6の振動により、被駆動体5をベース4の平面に対して垂直成分を有する方向に変位させ得る利点がある。また、被駆動体5の駆動部として薄板構造の振動体6を用いるので、装置全体を薄型化および小型化できる利点がある。また、振動体6が薄板構造を有するので、被駆動体5の駆動部(振動体6)を薄型かつ平面的に構成できる。これにより、稼働装置1全体を小型(薄型)に構成できる利点がある。また、この稼働装置1では、被駆動体5および振動体6がベース4上に配置されるので、その組み立てが容易である。
【0026】
なお、この第1実施形態において、稼働装置1は、撮像ユニット(光学系21および撮像素子22)を有する撮像装置であり、例えば、デジタルカメラ、携帯電話用カメラ、監視カメラ、テレビ電話、カメラ付パーソナルコンピュータその他の電気機器に適用される。特に、この稼働装置1は、振動体6の駆動制御により撮像ユニットのフォーカスを微調整できるので、かかる微調整が要求される電気機器に好適である。
【0027】
図5は、図1に記載した振動体を示す斜視図である。図6および図7は、図5に記載した振動体の動作を示す説明図である。この振動体6は、単一の補強板63を中心に配置し、この補強板63を一対の圧電素子62、64で挟み込み、これらを積層して構成される。また、振動体6は、電極61a~61dと、電極65a~65d(図示省略。各符号のみを括弧内に示す。)とを、その表裏の所定の位置に配置される。」
[図:0001435643000010.jpg]
「【0035】
図6および図7は、図5に記載した振動体の動作を示す説明図である。図6は、被接触部が図中の反時計回りに回転する場合を示し、図7は、被接触部が図6に示す方向とは逆方向に回転する場合を示している。
図6に示す状態では、まず、振動体6が、外部の通電回路(図示省略)から交流電圧を印加される。すると、振動体6の対角線上に位置する電極61a、61c、65aおよび65cが通電され、これらの電極と補強板63との間に交流電圧が印加される。圧電素子62、64は、この交流電圧により、電極が設置された部分にて、高速かつ反復的に部分的に伸縮する。ここで、圧電素子62、64は、電極61a、61c、65aおよび65cの設置部分にて、図中の矢印aの方向に伸縮する。これにより、振動体6は、全体として略S字状に屈曲した微少振動を行う。この振動により、振動体6の接触部66は、図中の矢印bで示す方向に往復運動するか、もしくは、図中の矢印cで示す方向に楕円運動する。被接触部51は、この運動により接触部66から押圧力を受ける。具体的には、被接触部51は、接触部66の振動変位Sの径方向成分S1(被接触部51の径方向の変位)により、接触部66と外周面511との間に摩擦力を受け、また、振動変位Sの周方向成分S2(被接触部51の円周方向の変位)により、図中の反時計回りの回転力を受ける。そして、被接触部51は、この押圧力を高速かつ反復的に接触部66から受けて、図中の反時計回りに回転する。
【0036】
一方、図7に示す状態では、振動体6の電極61b、61d、65bおよび65dが通電される。すなわち、図6に示す状態とは対称に、電極が通電される。すると、図6に示す状態と対称に振動体6が振動し、被接触部51が接触部66により押圧力を受けて、図中の時計回りに回転する。したがって、通電パターンの選択により、被接触部51を時計回りおよび反時計回りの双方向に駆動できる利点がある。なお、図7に示す状態では、通電されない他の電極61a、61c、65aおよび65cが、振動体6の振動を検出する振動検出手段を構成する。」
[図:0001435643000011.jpg]
【図7】
[図:0001435643000012.jpg]
(イ)引用文献3に記載された事項
本審決で新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特許第4969455号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、例えば各種検査装置、計測装置、搬送装置などに利用され、対象物をXY平面内で自在に移動させ、位置決めするためのXYテーブルアクチュエータに係り、詳細には、厚さ10mm程度にまで小型化することが可能なXYテーブルアクチュエータに関する。」
「【0016】
図1及び図2は本発明を適用したXYテーブルアクチュエータの第一の実施形態を示すものであり、図1は外観を示す斜視図、図2は内部構造を示した分解斜視図である。このXYテーブルアクチュエータ1は、機械装置の筐体やベッド等の固定部に固定される固定プレート2と、多数のボール3を介して前記固定プレート2に組付けられた中間プレート4と、多数のボール3を介して前記中間プレート4に組付けられた移動プレート5と、前記中間プレート4を固定プレート2に対して進退させるX駆動手段6と、前記移動プレート5を中間プレート4に対して進退させるY駆動手段7とから構成されている。」
[図:0001435643000013.jpg]
[図:0001435643000014.jpg]
「【0028】
図5は、前記X駆動手段6及びY駆動手段7として利用されるピエゾモータユニット8を示す斜視図である。このピエゾモータユニット8は、圧電セラミクスを貼り合わせて形成したピエゾモータ80と、このピエゾモータ80を保持すると共に前記中間プレート4にねじ止めされるホルダ81とから構成されている。前記ピエゾモータ80は十字状に形成された絶縁シート82を介して4個の圧電セラミクス83を貼り合わせ、それによってバイモルフを構成したものである。このピエゾモータ80の長手方向の一端には先端が円錐形状をなしたセラミクス製の駆動駒84が装着されている。このピエゾモータ80では4個の圧電セラミクス83に対する電圧の印加タイミングを調整することにより、これら圧電セラミクス83を貼り合わせたバイモルフが伸縮及び屈曲を繰り返し、前記駆動駒84の先端が楕円軌道を描くように運動する。」
[図:0001435643000015.jpg]
「【0029】
前記ホルダ81にはピエゾモータ80が遊嵌するスリット85が形成されており、前記ピエゾモータ80はスプリングコイル86によってスリット85内で一方向へ付勢され、かかるスリット85内で一定の位置に保持されている。これは、前述したピエゾモータ80の伸縮及び屈曲を阻害しないためである。また、前記ピエゾモータ80は板ばね87によって背後から付勢され、先端に装着した前記駆動駒84が移動プレート5又は固定プレート2に設けた走行路88に押し付けられるようになっている。」
「【0033】
前述のように、各ピエゾモータ80は板ばね87によって背後から付勢されているので、各ピエゾモータ80の先端に装着された駆動駒84は固定プレート2の走行路88、または移動プレート5の走行路88に圧接することになる。これにより、前記ピエゾモータ80に対して電圧を印加すると、駆動駒84が楕円軌道を描きながら走行路と接触及び離間を繰り返し、X駆動手段6によれば、中間プレート4を固定プレート2に対してX方向へ推進することが可能となる。また、Y駆動手段7によれば、移動プレート5を中間プレート4に対してY方向へ推進することが可能となる。」
(ウ)周知技術1の認定
前記(ア)及び(イ)に示した引用文献2及び3の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる(以下「周知技術1」という。)。
<周知技術1>
「圧電素子により駆動対象を駆動する駆動機構において、通電により伸長する圧電素子を、伸長の方向に直交する方向に貼り合わせて駆動源部(引用文献2の補強板63を挟み込んで積層された一対の圧電素子62、64、引用文献3の張り合わされた4個の圧電セラミクス83)とし、駆動対象に当接し、駆動源部の変形に応じて楕円軌道を描くように移動する当接部(引用文献2の接触部66、引用文献3の駆動駒84)と、当接部を駆動対象に押し付ける付勢部(引用文献2の腕部68の弾性、引用文献3の板ばね87)を備えること。」
ウ 引用文献4及び5に記載された事項及び周知技術2及び3の認定
(ア)引用文献4に記載された事項
原査定の理由に引用され、本願の出願前に発行された文献である特開2006-81348号公報(以下「引用文献4」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等の手振れを補正する振れ補正機構等として好適に適用できる駆動機構乃至は振れ補正ユニット、及びこれら機構乃至はユニットが組み込まれたカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
手振れ等による撮影光軸のずれを補正するべく、光学系の一部又は全部を揺動させるアクティブ型の振れ補正機構として、例えば特許文献1に開示されているような、撮像素子を揺動させるタイプの振れ補正機構が知られている。この撮像素子揺動タイプの振れ補正機構によれば、振れ補正専用のレンズが不要であり、小型で高画質対応の振れ補正が実現できる等の利点がある。かかる振れ補正機構では、一般に撮像素子の側辺部位に配置された圧電アクチュエータにより、撮像素子に対して光軸と垂直な方向に揺動させる揺動力が与えられるようになっている。前記アクチュエータは、一般に圧電素子と、該圧電素子の一端側に固定された駆動軸と、前記圧電素子の他端側に固定された錘部材とを備えて構成されている。そして、前記駆動軸には被駆動部材(スライダ)の軸受け部が摩擦結合され、駆動軸が比較的緩やかに変位するときは摩擦結合力によりスライダは同期追随して移動するが、駆動軸が比較的急峻に変位するときは摩擦結合部に滑りが生じてスライダは移動しないという原理に基づいて、スライダが駆動されるものである。」
「【0008】
図1は、上記駆動機構の構成を概念的に示す模式図である。図1において、この駆動機構は、駆動部3と、該駆動部3により駆動される被駆動部材4Aとからなる。前記駆動部3は、圧電素子31と、該圧電素子31の一端側に固定された駆動軸32と、前記圧電素子31の他端側に固定された錘部材33とを備える。前記圧電素子31に駆動パルスが与えられると、圧電素子31が伸縮動作を行い、これに連動して駆動軸32がその長手方向に変位する。なお、図示は省略しているが、錘部材33は固定状態とされ、圧電素子31の伸縮変位が駆動軸32の方向に与えられるようになっている。一方前記被駆動部材4Aは、樹脂製の本体部41と、前記駆動軸32との摩擦結合部において駆動軸32と当接する部位に配置された金属製の軸受け部材411とを具備している。なお、軸受け部材411の対向面には、軸受け部材411と駆動軸32との間に適宜な摩擦結合力を与えるための押さえ板45が取り付けられる。」
[図:0001435643000016.jpg]
「【0015】
図2は、上記振れ補正ユニットの構成を概念的に示す模式図である。図2において、この振れ補正ユニットは、先に図1で示したものと同様な構成の第1駆動部3-1及び第2駆動部3-2と、第1~第3基板K1~K3とからなる。第1の基板K1には、前記第1駆動部3-1が取り付けられている。第2基板K2(図1における被駆動部材4A(スライダ)が相当する)は、前記第1駆動部3-1の駆動軸32と摩擦結合されることで前記第1基板K1と連結され、前記第1駆動部3-1により前記第1基板K1に対して第1の方向N1へ相対移動される。第3の基板K3は、被写体光を撮像する撮像素子20が搭載されると共に前記第2駆動部3-2が取り付けられ、第2駆動部3-2の駆動軸32と摩擦結合されることで前記第2基板K2と連結される。この第3の基板K3は、第2駆動部3-2により前記第2基板K2に対して前記第1の方向N1と異なる第2の方向N2に相対移動される。」
[図:0001435643000017.jpg]
「【0099】
第1摩擦結合部40aにおけるV字型金属部材411のV字型折曲部4110には、駆動軸32aの片半面側の外周が当接するよう添設されている。一方、駆動軸32aの他方の半面側には、押さえ板45が当接されている。この押さえ板45は、駆動軸32aと当接される湾曲部451と、スライダ4に備えられている押さえ板受け部414のキャビティ414Cに嵌入される嵌入端部452と、押圧力調整スプリング46の掛け止める係止部453とを備えている。」
[図:0001435643000018.jpg]
「【0100】
この押さえ板45は、所定の押圧力をもって駆動軸32aへ当接され、これにより駆動軸32aとV字型金属部材411との間の所定の摩擦結合力が設定される。つまり、押さえ板45の嵌入端部452は、前記キャビティ414Cに嵌入されることで、押さえ板受け部414の下面で固定的に押圧される。一方前記掛け止め部453は、所定のバネ力を備えた押圧力調整スプリング46により弾性的に押圧されている。」
[図:0001435643000019.jpg]
「【0101】
すなわち、押圧力調整スプリング46はコイルバネからなり、スプリング保持部42a(42b)にそのコイルバネ本体部が挿入される形で保持されている。そして図20に示すように、押圧力調整スプリング46の両端部46Eは、押さえ板45の係止部453にて係止されている。このような押圧力調整スプリング46を用いることで、スライダ4に突設されているスプリング保持部42aを支点として、バネ性を有する押圧力調整スプリング46の両端部46Eにて押さえ板45がスライダ4(V字型金属部材411)に向けて付勢されるようになる。而して、押さえ板45の湾曲部451にて駆動軸32aが、押圧力調整スプリング46が有する所定のバネ力により押圧され、これにより駆動軸32aとV字型金属部材411とが摩擦結合するものである。」
(イ)引用文献5に記載された事項
令和5年6月19日付け及び同年9月28日付の拒絶理由通知書に先行技術文献として提示され、本願の出願前に発行された文献である特開2011-158551号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。
「【0001】
本発明は携帯機器にコンパクトに組み込まれるカメラモジュールに関し、詳しくは手振れなどの振動が加わっても画像のブレを光学的に抑える機能を備えたカメラモジュールと、このカメラモジュールを備えた携帯電話機とに関するものである。」
「【0017】
一対の第一ガイド軸18a,18bの支持により、ベースフレーム16に対して第一フレーム20が水平方向に移動自在に組み付けられる。第一フレーム20はベースフレーム16よりも一回り小さく、水平方向の移動範囲はベースフレーム16の左右の側壁内面に接しない範囲にしてある。第一フレーム20を水平方向に移動させるために、第一アクチュエータ22がベースフレーム16に一体成形された枠部16aに組み込まれる。
【0018】
第一アクチュエータ22は、後端に慣性が大きい錘22aが固定されたピエゾ素子22bと、ピエゾ素子22bに接着され水平に延びた断面円形の駆動軸22cとからなる。ピエゾ素子22bにはフレキシブルプリント板が接続され、ピエゾ素子22bは駆動パルスの入力により軸方向に細かく伸縮し、その伸縮運動が駆動軸22cに伝達される。ピエゾ素子22bの伸縮運動の速度は入力される駆動パルスの波形に応じて伸長時と収縮時とで異なり、その遅い方の運動が駆動軸22cを介して第一フレーム20を移動させる推進力として伝達される。したがって、ピエゾ素子22bに入力される駆動パルスの波形を切替え制御することによって、駆動軸22cからは水平方向の左右いずれか一方への推進力が得られるようになる。」
[図:0001435643000020.jpg]
「【0019】
駆動軸22cの先端側は第一フレーム20の受け部20aに挿通される。そして、図4及び図5に示すように、駆動軸22cの軸方向への機械的な往復運動が第一フレーム20に的確に伝達されるように、駆動軸22cの前側の外周面に平板状の押圧板24が押し付けられる。受け部20aの内部には、押圧板24に対向する位置に水平な折り線でバネ板をV字形に屈曲させた受け板23が組み込まれている。そして、ブラケット25を圧縮バネ26とともに受け部20aに前面側から組み付けると、駆動軸22cは受け板23と押圧板24との間に弾性的に挟持される。受け板23は水平方向に移動しないように第一フレーム20に組み込まれているから、駆動軸22cから伝達される推進力は第一フレーム20を水平な第一方向に移動させるように作用する。」
[図:0001435643000021.jpg]
[図:0001435643000022.jpg]
(ウ)周知技術2及び3の認定
前記(ア)及び(イ)に示した引用文献4及び5の摘記事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知技術であったと認められる。(以下「周知技術2」及び「周知技術3」という。)
<周知技術2>
「圧電素子(引用文献4の圧電素子31、引用文献5のピエゾ素子22b)の伸縮運動を駆動軸(引用文献4の駆動軸32、引用文献5の駆動軸22c)に伝達する駆動手段(引用文献4の駆動部3、引用文献5の第一アクチュエータ22)により光学系を駆動するカメラの手振れを補正する振れ補正機構において、棒状部(引用文献4の駆動軸32a、引用文献5の駆動軸22c)の外周面が、移動体(引用文献4の被駆動部材4A、引用文献5の第一フレーム20)に設けられた駆動力伝達部と当接し、駆動力伝達部が、V字状の溝を有する受け部(引用文献4のV字型金属部材411、引用文献5のV字形の受け板23)と、ばね(引用文献4の押圧力調整スプリング46、引用文献5の圧縮バネ26)によって付勢された板状の押さえ部(引用文献4の押さえ板45、引用文献5の押圧板24)とを備えること。」
<周知技術3>
「圧電素子(引用文献4の圧電素子31、引用文献5のピエゾ素子22b)の伸縮運動を駆動軸(引用文献4の駆動軸32、引用文献5の駆動軸22c)に伝達する駆動手段(引用文献4の駆動部3、引用文献5の第一アクチュエータ22)により光学系を駆動するカメラの手振れを補正する振れ補正機構おいて、圧電素子の駆動軸側と反対側に錘部材(引用文献4の錘部材33、引用文献5の錘22a)を備えること。」
(3) 本件補正発明と引用発明の対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア)構成Aについて
構成Aは「A 固定枠」を備えることである。
引用発明において、「m 携帯電話機100の機器本体であるフレーム101の内部に備えられた」「a 撮像ユニット1は、撮影窓111を有するケース体110の内部に配設されて」いることから、ケース体110が、携帯電話機100の機器本体であるフレーム101に又はその内部に固定されるものであることは明らかである。
また、引用発明において、「ケース体110」は、「移動体125を囲む枠状部を有」(h参照)しており、枠状部に着目すれば枠といえるから、引用発明の「ケース体110」は、本件補正発明の「A 固定枠」に相当する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の構成Aに相当する構成を備える。
(イ)構成Bについて
構成Bは、「B 前記固定枠に内側で支持され、前記固定枠に対して第1の方向に移動可能な第1移動枠」を備えることである。
引用発明の「移動体125」は、「筐体10を囲む枠状であ」(h参照)り、枠といえるから、本件補正発明の「第1移動枠」に相当する。
また、引用発明において、「h ケース体110は移動体125を囲む枠状部を有し」、「c SIDM120の固定部121はケース体110に固定され、SIDM120の駆動軸123には移動体125が摩擦係合」することからすれば、引用発明の「移動体125」は、ケース体110の内側で、ケース体110に固定されたSIDM120の駆動軸123との摩擦係合によって、ケース体110に支持されるものといえ、本件補正発明でいう「前記固定枠に内側で支持され」ものといえる。
さらに、引用発明において、「SIDM120」は「圧電素子122」「の急峻な体積変化と移動体125」「の慣性と摩擦力とを利用した直進型アクチュエータであり」(b参照)、「c SIDM120の固定部121はケース体110に固定され、SIDM120の駆動軸123には移動体125が摩擦係合し」、「e 制御部に連結された圧電素子122」「が、制御部からの駆動信号に基づき伸縮して駆動軸123」「を前進させたり後退させたりする」ことからすれば、引用発明の「移動体125」は、ケース体110に対してSIDM120の駆動軸123の軸方向に移動可能といえ、本件補正発明でいう「前記固定枠に対して第1の方向に移動可能な」ものといえる。
したがって、引用発明は、本件補正発明の構成Bに相当する構成を備える。
(ウ)構成Cについて
構成Cは、「C 前記第1移動枠に内側で支持され、前記第1移動枠に対して前記第1の方向に直交する第2の方向に移動可能な第2移動枠」を備えることである。
引用発明において「f 移動体135のうち光軸X方向視にて略矩形をなす中央の枠体部が、レンズ2を収容する筐体10となって」いることからすれば、引用発明の「移動体135」は、光軸X方向視にて略矩形をなす中央の枠体部である筐体10に着目すれば、レンズ2を収容する枠といえ、本件補正発明の「第2移動枠」に相当する。
また、引用発明において「移動体125は筐体10を囲む枠状であり」(h参照)、「d 移動体125にはSIDM130の固定部131が固定され、駆動軸123と軸線方向が直交するSIDM130の駆動軸133には」「移動体135が摩擦係合」することからすれば、引用発明の「移動体135」は、移動体125の内側で、移動体125に固定されたSIDM130の駆動軸133との摩擦係合によって、移動体125に支持されるものといえ、本件補正発明でいう「前記第1移動枠に内側で支持され」るものといえる。
さらに、引用発明において、「SIDM」「130は」「圧電素子」「132の急峻な体積変化と移動体」「135の慣性と摩擦力とを利用した直進型アクチュエータであり」(b参照)、「d 移動体125にはSIDM130の固定部131が固定され、駆動軸123と軸線方向が直交するSIDM130の駆動軸133には、レンズ2を保持する移動体135が摩擦係合し」、「e 制御部に連結された圧電素子」「132が、制御部からの駆動信号に基づき伸縮して駆動軸」「133を前進させたり後退させたりする」ものであり、「SIDM130の駆動軸133」は、「駆動軸123と軸線方向が直交する」(d参照)ことからすれば、引用発明の「移動体135」は、移動体125に対して、SIDM120の駆動軸123の軸方向に直交する、SIDM130の駆動軸133の軸方向に移動可能といえ、本件補正発明でいう「前記第1移動枠に対して前記第1の方向に直交する第2の方向に移動可能な」ものといえる。
したがって、引用発明は、本件補正発明の構成Cに相当する構成を備える。
(エ)構成Dについて
構成Dは、「D 前記第2移動枠に内側で支持され、前記第2移動枠に対して、前記第1の方向及び前記第2の方向にそれぞれ直交する第3の方向に移動可能なレンズユニット」を備えることである。
引用発明の「略円形のレンズ2を保持した移動部材25」(i参照)は、本件補正発明の「レンズユニット」に相当する。
また、引用発明において「i 筐体10の内部には、光軸X方向(被写体側)から見て略矩形をなす所定の内部空間が形成されており、この内部空間内に、光軸X方向から見て略円形のレンズ2を保持した移動部材25が収納され」、「l レンズ駆動装置20は、その本体部24が、筐体10内の左上部に配設され」、「j レンズ駆動装置20は、レンズ2を光軸X方向に移動可能に保持する移動部材25と、光軸X方向に沿って設けられ当該移動部材25と摩擦係合する駆動軸23」を備えることからすれば、引用発明の「レンズ2を保持した移動部材25」は、移動体135のうち光軸X方向視にて略矩形をなす中央の枠体部である筐体10の内側で、筐体10に設けられたSIDMであるレンズ駆動装置20の駆動軸23との摩擦係合によって、移動体135に支持されているものといえ、本件補正発明でいう「前記第2移動枠に内側で支持され」るものといえる。
さらに、引用発明において、「k レンズ駆動装置20は、圧電素子22の急峻な体積変化と移動部材25の慣性と摩擦力とを利用した超小型のリニアアクチュエータすなわちSIDMであり、撮像ユニット1においてレンズ2を光軸X方向に駆動するズーム機能(AF機能)の駆動源として機能」するものであり、「l レンズ駆動装置20は、その本体部24が、筐体10内の左上部に配設され」、「j レンズ駆動装置20は、レンズ2を光軸X方向に移動可能に保持する移動部材25と、光軸X方向に沿って設けられ当該移動部材25と摩擦係合する駆動軸23」を備えることからすれば、引用発明の「レンズ2を保持した移動部材25」は、移動部材135に対して、「光軸Xに対して直交し、且つ、互いが直交するように配設された二つの超小型リニアアクチュエータ」(a参照)である「SIDM120,130」の「駆動軸123,133」(b参照)の軸方向にそれぞれ直交する光軸X方向に移動可能といえ、本件補正発明でいう「前記第2移動枠に対して、前記第1の方向及び前記第2の方向にそれぞれ直交する第3の方向に移動可能な」ものといえる。
したがって、引用発明は、本件補正発明の構成Dに相当する構成を備える。
(オ)構成Eについて
構成Eは、「E 前記固定枠と前記第1移動枠とに亘って設けられ、通電により伸長する圧電素子を有し、前記第1移動枠を前記第1の方向に移動させる第1駆動部」を備えることである。
引用発明の「SDIM120」の「本体部124」は、本件補正発明の「第1駆動部」に相当する。
また、引用発明において、「b 手振れ補正手段を構成するリニアアクチュエータとして、SIDM120」「が採用され、SIDM120」「は、」「固定部121」「、圧電素子122」「及び駆動軸123」「の3部品を接合してなる本体部124」「と、駆動軸123」「に摩擦係合された移動体125」「とを備えて構成され、圧電素子122」「の急峻な体積変化と移動体125」「の慣性と摩擦力とを利用した直進型アクチュエータであり」、「c SIDM120の固定部121はケース体110に固定され、SIDM120の駆動軸123には移動体125が摩擦係合し」、「e 制御部に連結された圧電素子122」「が、制御部からの駆動信号に基づき伸縮して駆動軸123」「を前進させたり後退させたりすることで、光軸X方向と直交する方向に対する手振れを打ち消すようにしてレンズ2が上下」「に移動され、これにより、」「SIDM120」「は、撮像ユニット1に設けられた手振れ補正手段として機能」するから、SIDM120の本体部124は、ケース体110と移動体125とに亘って設けられ、駆動信号により伸縮する圧電素子122を有し、移動体125を駆動軸123の軸方向に移動させるものといえ、本件発明でいう「E 前記固定枠と前記第1移動枠とに亘って設けられ、通電により伸長する圧電素子を有し、前記第1移動枠を前記第1の方向に移動させる」ものといえる。
したがって、引用発明は、本件補正発明の構成Eに相当する構成を備える。
(カ)構成Fについて
構成Fは、「F 前記第1移動枠と前記第2移動枠とに亘って設けられ、通電により伸長する圧電素子を有し、前記第2移動枠を前記第2の方向に移動させる第2駆動部」を備えることである。
引用発明の「SDIM130」の「本体部」「134」は、本件補正発明の「第2駆動部」に相当する。
また、引用発明において、「b 手振れ補正手段を構成するリニアアクチュエータとして、SIDM」「130が採用され、SIDM」「130は、」「固定部」「131、圧電素子」「132及び駆動軸」「133の3部品を接合してなる本体部」「134と、駆動軸」「133に摩擦係合された移動体」「135とを備えて構成され、圧電素子」「132の急峻な体積変化と移動体」「135の慣性と摩擦力とを利用した直進型アクチュエータであり」、「d 移動体125にはSIDM130の固定部131が固定され、駆動軸123と軸線方向が直交するSIDM130の駆動軸133には、レンズ2を保持する移動体135が摩擦係合し」、「e 制御部に連結された圧電素子」「132が、制御部からの駆動信号に基づき伸縮して駆動軸」「133を前進させたり後退させたりすることで、光軸X方向と直交する方向に対する手振れを打ち消すようにしてレンズ2が」「左右に移動され、これにより、」「SIDM」「130は、撮像ユニット1に設けられた手振れ補正手段として機能」するから、SDIM130の本体部134は、移動体125と移動体135に亘って設けられ、駆動信号により伸縮する圧電素子132を有し、移動体135を駆動軸133の軸方向に移動させるものといえ、本件補正発明でいう「F 前記第1移動枠と前記第2移動枠とに亘って設けられ、通電により伸長する圧電素子を有し、前記第2移動枠を前記第2の方向に移動させる」ものといえる。
したがって、引用発明は、本件補正発明の構成Fに相当する構成を備える。
(キ)構成Gについて
構成Gは、「G 前記第2移動枠に固定され、前記レンズユニットを前記第3の方向に移動させる第3駆動部」を備えることである。
引用発明の「レンズ駆動装置20」の「本体部24」は、本件補正発明の「第3駆動部」に相当する。
また、引用発明において、「j レンズ駆動装置20は、レンズ2を光軸X方向に移動可能に保持する移動部材25と、光軸X方向に沿って設けられ当該移動部材25と摩擦係合する駆動軸23、この駆動軸23を軸線方向に駆動することで移動部材25を光軸X方向に駆動する電気機械変換素子としての圧電素子22、この圧電素子22の一端を固定する固定部材21、の3部材を当該記載順に接合してなる本体部24と、を備え」、「k レンズ駆動装置20は、圧電素子22の急峻な体積変化と移動部材25の慣性と摩擦力とを利用した超小型のリニアアクチュエータすなわちSIDMであり、撮像ユニット1においてレンズ2を光軸X方向に駆動するズーム機能(AF機能)の駆動源として機能し」、「l レンズ駆動装置20は、その本体部24が、筐体10内の左上部に配設され、駆動軸23の軸線方向がレンズ2の光軸Xと平行に設けられている」ことからすれば、レンズ駆動装置20の本体部24は、本体部24の固定部材21が、筐体10内の左上部に固定され、移動部材25を光軸X方向に移動させるものであることは明らかであるから、本件補正発明でいう「G 前記第2移動枠に固定され、前記レンズユニットを前記第3の方向に移動させる」ものといえる。
したがって、引用発明は、本件補正発明の構成Gに相当する構成を備える。
(ク)構成H及びIについて
構成Hは、「H 前記第3駆動部は、通電により伸長する第1圧電素子及び第2圧電素子が、前記伸長の方向に直交する方向に貼り合わされて構成された駆動源部と、前記レンズユニットに当接し、前記駆動源部の変形に応じて楕円軌道を描くように移動する当接部と、前記当接部とは前記駆動源部の反対側の位置に設けられたバックアップスプリング」を備えることであり、構成Iは、「I 前記当接部は、前記バックアップスプリングにより、前記レンズユニットの一部である被押圧部に押し付けられるように付勢され」ることである。
本件補正発明では「H 前記第3駆動部は、通電により伸長する第1圧電素子及び第2圧電素子が、前記伸長の方向に直交する方向に貼り合わされて構成された駆動源部と、前記レンズユニットに当接し、前記駆動源部の変形に応じて楕円軌道を描くように移動する当接部と、前記当接部とは前記駆動源部の反対側の位置に設けられたバックアップスプリングと、を備え」、「I 前記当接部は、前記バックアップスプリングにより、前記レンズユニットの一部である被押圧部に押し付けられるように付勢され」るのに対し、引用発明では「j レンズ駆動装置20は、レンズ2を光軸X方向に移動可能に保持する移動部材25と、光軸X方向に沿って設けられ当該移動部材25と摩擦係合する駆動軸23、この駆動軸23を軸線方向に駆動することで移動部材25を光軸X方向に駆動する電気機械変換素子としての圧電素子22、この圧電素子22の一端を固定する固定部材21、の3部材を当該記載順に接合してなる本体部24と、を備え」、「k レンズ駆動装置20は、圧電素子22の急峻な体積変化と移動部材25の慣性と摩擦力とを利用した超小型のリニアアクチュエータすなわちSIDMであ」る点で、両者は相違する。
(ケ)構成Jについて
構成Jは、「J 前記第1駆動部、前記第2駆動部の各々は、通電により伸長及び圧縮する前記圧電素子を有する駆動力発生部と、前記圧電素子の伸長方向及び短縮方向の一方に隣接し、前記伸長方向及び短縮方向に沿って延びる棒状部と、前記駆動力発生部の前記伸長方向及び短縮方向の他方に隣接するウェイト部と、を有」することである。
引用発明の「SIDM120,130」の「本体部124,134」が「備え」る「圧電素子122,132」(b参照)は、本件補正発明の「前記第1駆動部、前記第2駆動部の各々」が「有」する「前記圧電素子を有する駆動力発生部」に相当し、「制御部からの駆動信号に基づき伸縮」(e参照)するものであるから、本件補正発明でいう「通電により伸長及び圧縮する」ものといえる。
引用発明の「SIDM120,130」の「本体部124,134」が「備え」る「駆動軸123,133」(b参照)は、本件補正発明の「前記第1駆動部、前記第2駆動部の各々」が「有」する「棒状部」に相当し、「圧電素子122,132」に「接合」(b参照)され、「圧電素子122,132が」「伸縮して」「前進させ」られ「たり後退させ」られ「たりする」(e参照)ものであることからすれば、圧電素子122,132の伸縮方向に接合し、伸縮方向に沿って延びることは明らかであるから、本件補正発明でいう「前記圧電素子の伸長方向及び短縮方向の一方に隣接し、前記伸長方向及び短縮方向に沿って延びる」ものといえる。
引用発明の「SIDM120,130」の「本体部124,134」が「備え」る「固定部121,131」は、「本体部123,124」の1「部品」(b参照)として重量、すなわち、ウェイトを有することは明らかであるから、本件補正発明の「前記第1駆動部、前記第2駆動部の各々」が「有」する「ウェイト部」に相当し、「SIDM120,130」の「本体部124,134」が「それぞれ固定部121,131、圧電素子122,132及び駆動軸123,133の3部品を接合してなることからすれば、固定部121,131は、圧電素子122,132の駆動軸123,133が接合される側とは反対側に接合されることは技術的にみて明らかであるから、本件補正発明でいう「前記駆動力発生部の前記伸長方向及び短縮方向の他方に隣接する」ものといえる。
したがって、引用発明は、本件補正発明の構成Jに相当する構成を備える。
(コ)構成K及びLについて
構成Kは、「K 前記棒状部の外周面は、前記第1移動枠に設けられた駆動力伝達部と当接して」いることであり、構成Lは、「L 前記駆動力伝達部は、V字状の溝を有する受け部と、ばねによって付勢された板状の押さえ部とを備える」ことである。
本件補正発明では「K 前記棒状部の外周面は、前記第1移動枠に設けられた駆動力伝達部と当接しており」、「L 前記駆動力伝達部は、V字状の溝を有する受け部と、ばねによって付勢された板状の押さえ部とを備える」のに対し、引用発明では「駆動軸123には移動体125が摩擦係合」するものの、摩擦係合の具体的構成が不明である点で、両者は相違する。
(サ)構成Mについて
構成Mは、「カメラアクチュエータ」の発明であることである。
引用発明は、「撮像ユニット1とケース体」(m参照)の発明であって、「b 手振れ補正手段を構成するリニアアクチュエータとして、SIDM120,130が採用され」、「撮像ユニット1においてレンズ2を光軸X方向に駆動するズーム機能(AF機能)の駆動源として機能」する「超小型のリニアアクチュエータすなわちSIDMで」ある「レンズ駆動装置20」(k参照)を有するから、「カメラアクチュエータ」の発明である本件補正発明と、「m 携帯電話機100の機器本体であるフレーム101の内部に備えられた撮像ユニット1とケース体110」の発明である引用発明は、「カメラアクチュエータ」の発明である点において一致する。
したがって、引用発明は、本件補正発明の構成Mに相当する構成を備える。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次の(ア)及び(イ)に示すとおりである。
(ア) 一致点
「A 固定枠と、
B 前記固定枠に内側で支持され、前記固定枠に対して第1の方向に移動可能な第1移動枠と、
C 前記第1移動枠に内側で支持され、前記第1移動枠に対して前記第1の方向に直交する第2の方向に移動可能な第2移動枠と、
D 前記第2移動枠に内側で支持され、前記第2移動枠に対して、前記第1の方向及び前記第2の方向にそれぞれ直交する第3の方向に移動可能なレンズユニットと、
E 前記固定枠と前記第1移動枠とに亘って設けられ、通電により伸長する圧電素子を有し、前記第1移動枠を前記第1の方向に移動させる第1駆動部と、
F 前記第1移動枠と前記第2移動枠とに亘って設けられ、通電により伸長する圧電素子を有し、前記第2移動枠を前記第2の方向に移動させる第2駆動部と、
G 前記第2移動枠に固定され、前記レンズユニットを前記第3の方向に移動させる第3駆動部と、を備え、
J 前記第1駆動部、前記第2駆動部の各々は、通電により伸長及び圧縮する前記圧電素子を有する駆動力発生部と、前記圧電素子の伸長方向及び短縮方向の一方に隣接し、前記伸長方向及び短縮方向に沿って延びる棒状部と、前記駆動力発生部の前記伸長方向及び短縮方向の他方に隣接するウェイト部と、を有する、
M カメラアクチュエータ」である点。
(イ) 相違点
<相違点1>(構成H及びI)
本件補正発明では「H 前記第3駆動部は、通電により伸長する第1圧電素子及び第2圧電素子が、前記伸長の方向に直交する方向に貼り合わされて構成された駆動源部と、前記レンズユニットに当接し、前記駆動源部の変形に応じて楕円軌道を描くように移動する当接部と、前記当接部とは前記駆動源部の反対側の位置に設けられたバックアップスプリングと、を備え」、「I 前記当接部は、前記バックアップスプリングにより、前記レンズユニットの一部である被押圧部に押し付けられるように付勢され」るのに対し、引用発明では「j レンズ駆動装置20は、レンズ2を光軸X方向に移動可能に保持する移動部材25と、光軸X方向に沿って設けられ当該移動部材25と摩擦係合する駆動軸23、この駆動軸23を軸線方向に駆動することで移動部材25を光軸X方向に駆動する電気機械変換素子としての圧電素子22、この圧電素子22の一端を固定する固定部材21、の3部材を当該記載順に接合してなる本体部24と、を備え」、「k レンズ駆動装置20は、圧電素子22の急峻な体積変化と移動部材25の慣性と摩擦力とを利用した超小型のリニアアクチュエータすなわちSIDMであ」る点。
<相違点2>(構成K及びL)
本件補正発明では「K 前記棒状部の外周面は、前記第1移動枠に設けられた駆動力伝達部と当接しており」、「L 前記駆動力伝達部は、V字状の溝を有する受け部と、ばねによって付勢された板状の押さえ部とを備える」のに対し、引用発明では「駆動軸123には移動体125が摩擦係合」するものの、摩擦係合の具体的構成が不明である点。
仮に、前記ア(ケ)で、引用発明の「SIDM120,130」が「備え」る「固定部121,131」が、本件補正発明の「前記第1駆動部、前記第2駆動部の各々」が「有」する「ウェイト部」に相当するとはいえない場合について、念のため検討すると、この場合、本件補正発明と引用発明は、次の点でも相違する。
<相違点3>(構成J)
「前記第1駆動部、前記第2駆動部の各々」が「有」する「前記駆動力発生部の前記伸長方向及び短縮方向の他方に隣接する」部分について、本件補正発明は「ウェイト部」であるのに対し、引用発明は「固定部121,131」であるものの、ウェイト部かどうか不明な点。
(4)判断
ア 相違点1について
前記(2)イ(ウ)で周知技術1として認定したとおり、「圧電素子により駆動対象を駆動する駆動機構において、通電により伸長する圧電素子を、伸長の方向に直交する方向に貼り合わせて駆動源部とし、駆動対象に当接し、駆動源部の変形に応じて楕円軌道を描くように移動する当接部と、当接部を駆動対象に押し付ける付勢部を備えること」は周知技術である。そして、引用発明において、移動部材25を駆動する駆動機構として、駆動軸23、圧電素子22及び固定部材21の3部材を当該記載順に接合してなる本体部24とするか、周知技術1のような駆動機構とするかは、当業者が適宜選択できる設計事項にすぎない。また、当接部を駆動対象に押し付ける付勢部の具体的構成も、当業者が適宜選択し得るものであり、これを当接部とは駆動源部の反対側の位置に設けられたバックアップスプリングによるものとすることも、例えば引用文献3の板バネ87(【0029】、【0033】参照)にも見られるように、設計事項にすぎない。
したがって、引用発明に周知技術1を適用して、本件補正発明の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
イ 相違点2について
前記(2)ウ(ウ)で周知技術2として認定したとおり、「圧電素子の伸縮運動を駆動軸に伝達する駆動手段により光学系を駆動するカメラの手振れを補正する振れ補正機構において、棒状部の外周面が、移動体に設けられた駆動力伝達部と当接し、駆動力伝達部が、V字状の溝を有する受け部と、ばねによって付勢された板状の押さえ部とを備えること」は周知技術であり、引用発明の「駆動軸123には移動体125が摩擦係合」する際の具体化手段として、周知技術2を適用して、本件補正発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ 相違点3について
仮に、前記ア(ケ)で、引用発明の「SIDM120,130」が「備え」る「固定部121,131」が、本件補正発明の「前記第1駆動部、前記第2駆動部の各々」が「有」する「ウェイト部」に相当するとはいえない場合について、予備的に検討する。
前記(2)ウ(ウ)で周知技術3として認定したとおり、「圧電素子の伸縮運動を駆動軸に伝達する駆動手段により光学系を駆動するカメラの手振れを補正する振れ補正機構において、圧電素子の駆動軸側と反対側に錘部材を備えること」は周知技術であり、引用発明に周知技術3を適用して、「固定部121,131」を錘部材(ウェイト部)として、本件補正発明の相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
エ 総合評価
前記ア及びイにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点1及び2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
また、仮に、加えて相違点3があるとしても、引用発明において、前記相違点1~3係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1及び2又は相違点1~3を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 請求人の主張について
請求人は、引用文献1には、駆動軸133には、レンズ2を保持する移動体135が摩擦係合していることのみが開示されるのに対し、本件補正発明の棒状部62の外周面は、第1移動枠3に設けられた駆動力伝達部32と当接しており、駆動力伝達部32は、V字状の溝を有する受け部321と、ばね323によって付勢された板状の押さえ部322とを備えており、本件補正発明は、「カメラアクチュエータは、構成部品がかさばらず、構成部品の配置効率が良いため、全体として小型の(薄い)カメラアクチュエータとできる。従って、オートフォーカス機能及び手ブレ補正機能を有する小型のカメラアクチュエータを提供できる」([0054])という、各引用文献に記載の発明と比較した有利な効果を有する旨主張する。
しかしながら、前記イで検討したとおり、引用発明の「駆動軸123には移動体125が摩擦係合」する際の具体化手段として周知技術2を適用することは当業者が容易になし得たことであり、請求人が主張する本件補正発明の効果も、引用発明及び周知技術2から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著な効果を認めることはできない。
(5)独立特許要件の判断のまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
4 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記3(5)のとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
(進歩性の欠如) 本願発明は、その出願前に発行された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2等に例示される周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2009-42551号公報(主たる引用文献)
引用文献2.特開2004-312814号公報(周知技術を示す文献)
(その他の引用文献は省略)
3 各引用文献に記載された事項及び引用発明の認定等
引用文献1~5に記載された事項並びに引用発明及び周知技術は、前記第2の3(2)ア~ウにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の2に記載したとおり、本件補正発明から「前記棒状部の外周面は、前記第1移動枠に設けられた駆動力伝達部と当接して」いることと、「前記駆動力伝達部は、V字状の溝を有する受け部と、ばねによって付勢された板状の押さえ部とを備える」ことの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、その構成の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(4)において説示したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-011954