特許拒絶査定不服審判
2024-008968
部屋
- 審判番号
- 2024-008968
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-000434
- 請求日
- 2024年05月30日
- 審決日
- 2025年09月30日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日東電工株式会社
- 【請求人代理人】籾井 孝文
- 審判長/審判官
- 審判長 濱野 隆
- 審判官 井海田 隆
- 審判官 谷垣 圭二
- 分類
- P18 .121-Z (G03B) / P18 .575-Z (G03B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第50条の2、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-434「部屋」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 4月25日出願公開、特開2023-58484〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(平成31年)4月3日を国際出願日とする日本語特許出願である特願2020-514068号の一部を、令和5年1月5日に新たな特許出願としたものであって(優先権主張2018年4月16日)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 8月30日付け :拒絶理由通知書
(特許法50条の2の通知を伴う拒絶理由通知)
令和6年 2月27日付け :拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 3月 5日 :原査定の謄本の送達)
同年 5月30日 :審判請求書及び手続補正書の提出
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年5月30日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の概要
令和6年5月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正するものであり、次の(1)に示す本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
天井と、床と、互いに対向する一対の壁面および該一対の壁面に交差する方向で互いに対向する別の一対の壁面を有する壁と、によって規定され、
該一対の壁面および該別の一対の壁面のうちの1つが窓を有し、
該窓を有する壁面に対向する壁面に第1のスクリーンが配置され、および/または、極下正中方向の反対側の壁面に第2のスクリーンが配置され、
該窓の内側、ならびに、該第1のスクリーンの投影側表面および/または該第2のスクリーンの投影側表面にそれぞれ偏光板が設けられ、
該窓の偏光板の偏光子の吸収軸方向と該第1のスクリーンの偏光板の偏光子の吸収軸方向および/または該第2のスクリーンの偏光板の偏光子の吸収軸方向とが、実質的に直交または平行である、
部屋。」
(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
天井と、床と、互いに対向する一対の壁面および該一対の壁面に交差する方向で互いに対向する別の一対の壁面を有する壁と、によって規定され、
該一対の壁面および該別の一対の壁面のうちの1つが窓を有し、
該窓を有する壁面に対向する壁面に第1のスクリーンが配置され、および/または、太陽の極下正中方向の反対側の壁面に第2のスクリーンが配置され、
該第1のスクリーンは、該第2のスクリーンが配置される壁面とは異なる壁面に配置され、該第2のスクリーンは、該窓を有する壁面とは異なる壁面に配置され、
該窓の内側、ならびに、該第1のスクリーンの投影側表面および/または該第2のスクリーンの投影側表面にそれぞれ偏光板が設けられ、
該窓の偏光板の偏光子の吸収軸方向と該第1のスクリーンの偏光板の偏光子の吸収軸方向および/または該第2のスクリーンの偏光板の偏光子の吸収軸方向とが、実質的に直交または平行であり、
該窓の偏光板、ならびに、該第1のスクリーンの偏光板および/または該第2のスクリーンの偏光板が、それぞれ、面内位相差Re(550)が100nm~200nmである位相差層をさらに有し、円偏光または楕円偏光機能を有する、
部屋。」
2 本件補正の目的について
(1) 本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項について、次のアとイの補正事項1と補正事項2により限定をするものである。
ア 補正事項1
本件補正前の請求項1に記載された「第1のスクリーン」及び「第2のスクリーン」の配置について、「太陽の極下正中方向の反対側の壁面に第2のスクリーンが配置され、該第1のスクリーンは、該第2のスクリーンが配置される壁面とは異なる壁面に配置され、該第2のスクリーンは、該窓を有する壁面とは異なる壁面に配置され」ると限定すること。
イ 補正事項2
窓の偏光板と第1スクリーンの偏光板および/または該第2のスクリーンの偏光板について、「それぞれ、面内位相差Re(550)が100nm~200nmである位相差層をさらに有し、円偏光または楕円偏光機能を有する」と限定すること。
(2) そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
(3) したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明1の認定と分説
前記1(2)に摘記したとおり、本件補正後の請求項1には、「第1のスクリーン」を特定する事項と「第2のスクリーン」を特定する事項を「および/または」で接続した発明特定事項が四箇所にあるところ、「および」という語句を選択した場合には、「第1のスクリーン」を特定する事項と「第2のスクリーン」を特定する事項はともに構成として存在していることになるものの、「または」という語句を選択した場合には、「第1のスクリーン」を特定する事項と「第2のスクリーン」を特定する事項のいずれか一方が構成として存在していれば足りることになるから、本件補正発明には実質的に複数の発明が含まれていることになる。
そこで、以下では、上記四箇所ある「および/または」という語句の全てについて「または」の方を選択した場合を考え、それぞれの構成が「第1のスクリーン」を特定する事項のみを含むものであるとした発明(以下「本件補正発明1」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか検討する。
本件補正発明1の構成を次に示す。なお、検討の便宜上適宜改行を加えて構成X1、X2、A1からCまでに分説し、本件補正発明1の構成には含まれない「および/または」で接続された後半の発明特定事項は参考情報として括弧内に示す。
<本件補正発明1>
X1 天井と、床と、互いに対向する一対の壁面および該一対の壁面に交差する方向で互いに対向する別の一対の壁面を有する壁と、によって規定され、
A1 該一対の壁面および該別の一対の壁面のうちの1つが窓を有し、
A2 該窓を有する壁面に対向する壁面に第1のスクリーンが配置され、(および/または、太陽の極下正中方向の反対側の壁面に第2のスクリーンが配置され、)
A3 該第1のスクリーンは、該第2のスクリーンが配置される壁面とは異なる壁面に配置され、該第2のスクリーンは、該窓を有する壁面とは異なる壁面に配置され、
B1 該窓の内側、ならびに、該第1のスクリーンの投影側表面(および/または該第2のスクリーンの投影側表面)にそれぞれ偏光板が設けられ、
B2 該窓の偏光板の偏光子の吸収軸方向と該第1のスクリーンの偏光板の偏光子の吸収軸方向(および/または該第2のスクリーンの偏光板の偏光子の吸収軸方向)とが、実質的に直交または平行であり、
C 該窓の偏光板、ならびに、該第1のスクリーンの偏光板(および/または該第2のスクリーンの偏光板)が、それぞれ、面内位相差Re(550)が100nm~200nmである位相差層をさらに有し、円偏光または楕円偏光機能を有する、
X2 部屋。
<参考図> 【図2】
[図:0001429599000001.jpg]
40:窓 61:第1の偏光板
51:第1のスクリーン 62:第2の偏光板
52:第2のスクリーン 63:第3の偏光板
(2) 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開平01-191824(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は、当合議体が付したもので、引用発明の認定に直接用いる記載に付した。
(ア) 第1ページ左下欄11行目~同ページ右下欄12行目
「〈産業上の利用分野〉
開示技術はテレビ、ワープロ、パンコン、オシログラフ、各種ディスプレイ装置等のブラウン管を有する電子表示器が電灯や窓からの外乱光下に於いても反射光によるチラつき等の現象がなく、正確に安定して表示情報内容を視認することが出来る環境の照明室の構造技術分野に属する。
〈要旨の概要〉
而して、この発明は工業用テレビやワープロ、パソコン、オシログラフ等のブラウン管を有する各種の電子表示器が電灯や窓からの外乱光による照明光の下で稼動される照明室に関する発明であり、特に、該ブラウン管に対向してその表示内容を視認する際のブラウン管の表面、或は、視認用メガネのいづれか一方、或は、双方に一方方向の偏光シート等を貼り付ける等して偏光性を付与し、他方の電灯や窓等の外乱光源にはこれと直角方向に交叉する方向の偏光性を付与するようにして外乱光による反射光に邪魔されずに明瞭にブラウン管に表示される情報内容のみを視認することが出来るようにした電子表示器用照明室に係る発明である。」
(イ) 第2ページ右上欄3行目~同ページ左下欄10行目
「〈発明の目的〉
この発明の目的は上述従来技術に基づくブラウン管を有する各種O-A機器の作動中に於ける外乱光の反射による表示情報の確認困難性の問題点を解決すべき技術的課題とし、電灯や窓からの外乱光によるブラウン管の反射による表示情報を阻害することなく、しかも、部屋内の照明は充分に保つことが出来るようにして各種産業における表示情報技術利用分野に益する優れた電子表示器用照明室を提供せんとするものである。
〈問題点を解決するための手段・作用〉
上述目的に沿い先述特許請求の範囲を要旨とするこの発明の構成は前述問題点を解決するために、パソコンやワープロやオシログラフ等の所謂O-A器の配列された室の内部は電灯や窓からの光によって書類チェックや記入、打ち合せ等の事務には何ら障害がないようにし、該電灯や窓から等の外乱光に対しては該窓、電灯等に1方向の偏光性を有する偏光シートを被覆させ、一方、O-A機器のブラウン管の表面には窓や電灯等の偏光膜の偏光性とは異なる方向の偏光性を有する偏光シートを隈なく添着したり、偏光メガネをかけることにより、ブラウン管表面に於ける窓や電灯からの外乱光の反射によるチラつきを全く阻止してブラウン管からの情報光のみを視認してスムース、且つ、確実にブラウン管の表示情報を視認することが出来るようにした技術的手段を講じたものである。」
(ウ) 第2ページ左下欄14行目~同ページ右下欄18行目、第1図
「 第1図に示す実施例において、1は図示しないO-A機器室の事務デスクの上に乗せられた電子表示器としてのパソコンであり、キーボード2にはブラウン管3を有する表示装置本体4がセットされており、該ブラウン管3の表面には、例えば、横方向等の一方方向の偏光性を有する偏光膜の偏光シート5が隈なく添着されている。
一方、当該O-A機器室の窓6と天井に吊設された電灯7の外乱光を発する部分には、例えば、他方向の偏光性を有する偏光膜の偏光シート8、8が全体的に添着されている。
したがって、電子表示器装置4のブラウン管3から発射される情報光と窓6や電灯7からの照明光は互いに90°づつ方向が異ならされた偏光を有するために、窓6や電灯7からの偏光は電子表示器装置4のブラウン管3からの情報光とは相入れず、したがって、窓6、電灯7からの光のブラウン管3の表面から発射(当審注:「反射」の誤記である。)して視野に入る光は視認されないことになる。
したがって、作業者はパソコン1の操作において、電子表示器装置4のブラウン管3からの情報光のみを視認することが出来て、窓6や電灯7からの照明光の反射光を見ることなく、したがって、反射光によるチラつき等なく、パソコン1の操作をすることが出来る。」
「第1図
[図:0001429599000002.jpg]
」
(エ) 第3ページ左上欄15行目~同ページ右上欄13行目、第3図
「 而して、第3図に示す実施例はO-A機器室の態様であり、該O-A機器室の一側よりのデスクにはパンコン1とワープロ1′がセットされており、これらのブラウン管3、3′には上述各実施例同様に1方向の偏光性を有する偏光シート5が隈なく添設されており、又、壁面には偏光スクリーン9が設けられて同じく1方向の偏光シート5′が添設されている。
而して、窓6と照明灯7には他方向の偏光シート8、8が添設されてO-A室内を通常の明るさに保ち、チェックや読み合せ等には何ら支障はなく、パソコン1やワープロ1′のブラウン管3、3′を視認するに際してはその表示情報のみをチラつくことがなく、正確に読み取ることが出来、又、スライドプロジェクタ10や液晶テレビプロジェクタ10′からの偏光スクリーン9に投影された映像も窓6や照明灯7からの照明光によるチラつき等なくして正確に視認することが出来るものである。」
「第3図
[図:0001429599000003.jpg]
」
イ 引用文献1の記載から認定した事項
(ア) 引用文献1の第3図には、O-A機器室が図示されている。この第3図からは、天井と、床と、窓6が設けられた壁面(以下「壁面A」という。)と、偏光シート5が設けられたブラウン管3と、偏光スクリーン9が設けられた壁面(以下「壁面B」という。)と、前記壁面Aに向かって左側かつ前記壁面Bに向かって右側に存在する壁面(以下「壁面C」という。)が見て取れるものの、手前側に壁面があることまでは、図示されていない。
(イ) しかしながら、一般に、洋室で「部屋」という場合、その周囲が壁面によって囲まれるものを認識する。
(ウ) また、引用文献1においては、発明の目的の欄に「電灯や窓からの外乱光によるブラウン管の反射による表示情報を阻害することなく、しかも、部屋内の照明は充分に保つことが出来るようにして(後略)」と記載されているところ、外乱光のうちの「電灯や窓からの外乱光」を論じているからには、手前側は開放空間になっておらず、壁面があることを前提としていると考えるのが相当である。
(エ) したがって、引用文献1の第3図の記載に接した当業者は、「壁面C」に対向する面に壁面(以下「壁面D」という。)が設けられているものを自明に認識するというべきである。
(オ) 前記(ア)~(エ)の検討結果を踏まると、引用文献1の第3ページ左上欄15行目~同ページ右上欄13行目の記載を参照しつつ第3図に接した当業者は、第3図から、次に示す事項(以下「認定事項1」という。)を見て取るものと認められる。
<認定事項1>
「O-A機器室は、
天井と、
床と、
窓6が設けられた壁面Aと、
偏光スクリーン9が設けられた壁面Bと、
前記壁面Aに向かって左側かつ前記壁面Bに向かって右側に存在する壁面Cと、
壁面Dによって規定され、
前記壁面Aと前記壁面Bは、互いに対向する一対の壁面であり、
前記壁面Cと前記壁面Dは、互いに対向する一対の壁面であって、前記一対の壁面に交差する方向の壁面であり、
O-A機器室内には、偏光シート5が設けられたブラウン管3、3′があること。」
ウ 引用発明の認定
前記アにおいて摘記した事項及び前記イにおいて認定した事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明>
「 O-A機器室であって、
前記O-A機器室は、天井と、床と、窓6が設けられた壁面Aと、偏光スクリーン9が設けられた壁面Bと、前記壁面Aに向かって左側かつ前記壁面Bに向かって右側に存在する壁面Cと、壁面Dによって規定され、(認定事項1)
前記壁面Aと前記壁面Bは、互いに対向する一対の壁面であり、(認定事項1)
前記壁面Cと前記壁面Dは、互いに対向する一対の壁面であって、前記一対の壁面に交差する方向の壁面であり、(認定事項1)
O-A機器室内には、偏光シート5が設けられたブラウン管3、3′があり、(認定事項1)
ブラウン管3、3′には1方向の偏光性を有する偏光シート5が隈なく添設され、壁面には偏光スクリーン9が設けられて同じく1方向の偏光シート5′が添設されており、(第3頁左下欄第20行~同頁右上欄第2行)
窓6と照明灯7には上記1方向と直角方向に交叉する方向の偏光シート8、8が添設されており、(第1頁右下欄第7行~第8行、第3頁右上欄第3行~第4行)
スライドプロジェクタ10や液晶テレビプロジェクタ10′からの偏光スクリーン9に投影された映像を窓6や照明灯7からの照明光によるチラつき等なくして正確に視認することができる、(第3頁右上欄第9行~第13行)
O-A機器室。」
(3) 引用文献2~3に記載された事項、技術常識及び周知技術等の認定
ア 引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開2017-015897号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は、当合議体が付したものである。
(ア) 段落【0033】
「【0033】
…(中略)…
また、照明光LLとして円偏光を供給するための複合光源装置に設ける偏光板としては、直線偏光子と1/4波長板とを組み合わせて備える円偏光板を用いうる。ここで、1/4波長板のレターデーションReは、好ましくは80nm以上、より好ましくは100nm以上、特に好ましくは120nm以上であり、好ましくは180nm以下、より好ましくは160nm以下、特に好ましくは150nm以下である。」
(イ) 段落【0041】-【0047】、図3、図4
「【0041】
[2.第二実施形態]
上述した第一実施形態では、自ら第二光としての照明光LLを発生させる照明装置300を第二光供給源として用いた画像投射システム10を示したが、第二光供給源は、当該第二光供給源それ自体が照明光LLを発生させるものでなくてもよい。例えば、第二光供給源として、自然光から偏光としての照明光LLを得られる部材を第二光供給源として用いてもよい。以下、このような画像投射システムの例を、第二実施形態として示す。
【0042】
図3は、本発明の第二実施形態に係る画像投射システム20を模式的に示す概略図である。図3に示すように、本発明の第二実施形態に係る画像投射システム20は、照明装置300の代わりに偏光透過フィルター400を備えること以外は第一実施形態に係る画像投射システム10と同様に設けられていて、投影面部材100と、投射装置200と、第二光供給源としての偏光透過フィルター400とを備える。
【0043】
偏光透過フィルター400は、自然光の内で照明光LLとして用いるための偏光を透過させ、透過させる偏光以外の光を遮りうるフィルターである。偏光透過フィルター400は、通常、画像投射システム20が設置される室の窓に設けられる。この場合、窓を通して室内に進入しようとする自然光の内で、偏光としての照明光LLは偏光透過フィルター400を透過するが、それ以外の光は偏光透過フィルター400によって遮られる。このように、偏光透過フィルター400は、当該偏光透過フィルター400により供給される第二光として照明光LLによって画像投射システム20が使用されている空間を照らすことにより、画像投射システム20の使用される環境を明るくしうるように設けられている。
【0044】
本実施形態において、照明光LLとしては、投射光LPに含まれ選択光反射性層120で反射されうる選択偏光に対する逆偏光を用いる。このような照明光LLの供給を可能にするため、偏光透過フィルター400としては、偏光板を備えるフィルターを用いうる。この際、偏光板としては、直線偏光子を備える直線偏光板、直線偏光子と1/4波長板とを組み合わせて備える円偏光板など、照明光LLとして供給すべき偏光の種類に応じて任意の偏光板を用いうる。中でも、偏光透過フィルター400としては、投影面部材100の選択光反射性層120と同様の層を備える偏光板を備える複合光源装置が好ましい。本実施形態では、選択光反射性層120と同様の層を備える偏光板を備え、選択光反射性層120を透過しうる左円偏光を照明光LLとして供給しうるフィルターを、偏光透過フィルター400として用いた例を示して説明する。
【0045】
本発明の第二実施形態に係る画像投射システム20は、上述した構造を有している。このような画像投射システム20を使用する場合、偏光透過フィルター400を通して取り込まれた照明光LLで照らされる明るい環境において、投射装置200から投影面部材100の投影面100Sへと、非偏光である投射光LPを投射する。
【0046】
図4は、本発明の第二実施形態に係る画像投射システム20を模式的に示す概略図である。図4において、投影面部材100は、当該投影面部材100の投影面100Sに垂直な平面で切った様子を示す。また、選択光反射性層120での光の反射は、選択光反射性層120の表面だけでなく内部でも発生しうるが、模式的な表現として、図4では、選択光反射性層120での光の反射は、当該選択光反射性層120の表面において発生しているものとして図示する。
図4に示すように、投射光LPのうち、選択偏光としての右円偏光は選択光反射性層120によって反射光LRとして反射され、この反射光LRによって画像が表示される。他方、選択光反射性層120に進入した投射光LPのうち、選択光反射性層120によって反射されなかった左円偏光を含む透過光LTは、光吸収層130によって吸収される。
【0047】
また、偏光透過フィルター400により供給される照明光LLは、投影面部材100の光拡散層110及び選択光反射性層120を通って光吸収層130に進入し、光吸収層130によって吸収される。そのため、照明光LLは、使用者からは見え難くなるので、照明光LLによる画像の輝度の上昇を抑制できる。したがって、偏光透過フィルター400により供給される照明光LLによって照らされた明るい環境において、投射装置200が表示する画像のコントラストを高くできる。さらに、本実施形態では、第一実施形態と同様の利点を得ることができる。」
「【図3】
[図:0001429599000004.jpg]
」
「【図4】
[図:0001429599000005.jpg]
」
イ 引用文献2技術事項の認定
前記イの記載事項を総合すると、引用文献2には次の技術事項(以下「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献2技術事項>
「自然光の内で照明光LLとして用いるための偏光を透過させ、透過させる偏光以外の光を遮りうる偏光透過フィルター400を、画像投射システム20が設置される室の窓に設け(【0043】)、
偏光透過フィルター400としては、直線偏光子と1/4波長板とを組み合わせて備える円偏光板など、照明光LLとして供給すべき偏光の種類に応じて任意の偏光板を用い(【0044】)、
1/4波長板のレターデーションReは、好ましくは80nm以上、より好ましくは100nm以上、特に好ましくは120nm以上であり、好ましくは180nm以下、より好ましくは160nm以下、特に好ましくは150nm以下であり(段落【0033】)
偏光透過フィルター400により供給される照明光LLは、投影面部材100の光拡散層110及び選択光反射性層120を通って光吸収層130に進入し、光吸収層130によって吸収されるため、照明光LLによる画像の輝度の上昇を抑制できる(【0047】)こと」
ウ 技術常識Aの認定
前記イの引用文献2技術事項に例示されるように、次の技術事項は当業者にとって技術常識であったと認められる(以下「技術常識A」という)。
<技術常識A>
「自然光を透過させる円偏光板は、直線偏光子と1/4波長板を組み合わせたものであり、1/4波長板のレターデーション値Reは、通常80~180nm程度に設定されること。」
エ 引用文献3の記載事項
当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された文献である特開平5-225806号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア) 【0005】~【0011】、【図5】
「【0005】図5は従来の表示照明装置50の斜視図である。表示照明装置50は、表示装置である液晶プロジェクタ1およびスクリーン2、室内照明手段である蛍光灯3よりなる室内構成である。一般に、スクリーン2は部屋の壁面に設けられ、蛍光灯3は部屋の天井に設けられる。液晶プロジェクタ1は、垂直偏光4の映像光5をスクリーン2上に投写する。スクリーン2には、その前面に垂直方向の偏光軸6を有する直線偏光板7が設けてある。蛍光灯3には、スクリーン2に取り付けた偏光板7の偏光軸6に対して直角の偏光軸8を有する直線偏光板9が設けてある。」
【0006】図5のように複数の蛍光灯3を設けた室内では、スクリーン2に対して斜め方向に配置される蛍光灯3が存在する。この場合、蛍光灯3に取り付ける偏光板の偏光軸8とスクリーン2に取り付ける偏光板7の偏光軸6とを正確に直角に合わせたつもりでも、スクリーン2に対して斜め方向に配置された蛍光灯3からスクリーン2に照射される照明光10の偏光方向11は回転してしまい、この照明光10の偏光方向11とスクリーン2に取り付けた偏光板7の偏光軸6とが直角からずれるため、十分なコントラスト向上効果が得られないという点については配慮されていなかった。」
「【図5】
[図:0001429599000006.jpg]
」
「【0007】そこで本発明の目的は、室内照明手段と表示装置との相対位置によらず、常に室内照明中でコントラストの良好な映像を見ることができる表示照明装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明では、表示装置の前面に偏光軸が垂直方向の直線偏光フィルタを設け、室内照明手段に偏光軸が表示装置の前面と室内照明手段とを結ぶ直線に対して直角方向の直線偏光フィルタを設けることにした。
【0009】また、上記目的を達成するために、本発明では、表示装置の前面に左右いずれかの旋回方向の円偏光フィルタを設け、室内照明手段に上記円偏光フィルタと異なる旋回方向の円偏光フィルタを設けることにした。
【0010】
【作用】室内照明手段に設ける偏光フィルタの偏光軸を、室内照明手段と表示装置との相対位置に対応して予め回転して設けることにより、室内照明手段の照明光の偏光方向と表示装置の偏光板の偏光軸を直角に構成できるので、室内照明中で常に照返りのない表示が可能になり、コントラストの良好な映像を見ることができる。
【0011】また、円偏光フィルタを用いることにより、室内照明手段と表示装置との相対位置がずれても偏光軸がずれることがないため、室内照明中で常に照返りのない表示が可能になり、コントラストの良好な映像を見ることができる。」
(イ) 【0018】~【0020】、【図3】
「【0018】図3は、本発明の表示照明装置52の斜視図である。本実施例では、液晶プロジェクタ1の前面に1/4波長板15を設けた。この1/4波長板15の作用により右回り円偏光16の映像光17をスクリーン2上に投写する。スクリーン2には、その前面に右回り円偏光18を透過する右回り円偏光板19が設けてある。蛍光灯3には、左回り円偏光20を透過する左回り円偏光板21が設けてある。蛍光灯3と同じ室内照明手段である窓22にも、左回り円偏光23を透過する左回り円偏光板24が設けてある。
【0019】本実施例によれば、円偏光板19,21,24を用いることにより、蛍光灯3や窓22とスクリーン2との相対位置がずれても偏光軸がずれることがないため、室内照明中で常に照返りのない表示が可能になり、コントラストの良好な映像を見ることができる。特に、円偏光板を用いる本実施例では、直線偏光板を用いる前記実施例と異なり、複数の表示装置がある場合にも対応できる。
【0020】尚、本実施例では蛍光灯3の全面にわたって左回り円偏光板21を取り付けたが、これに限るものではない。」
「【図3】
[図:0001429599000007.jpg]
」
オ 引用文献3技術事項の認定
前記エの記載事項を総合すると、引用文献3には次の技術事項(以下「引用文献3技術事項」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献3技術事項>
「直線偏光板の場合、蛍光灯3に取り付ける偏光板の偏光軸8とスクリーン2に取り付ける偏光板7の偏光軸6とを正確に直角に合わせたつもりでも、スクリーン2に対して斜め方向に配置された蛍光灯3からスクリーン2に照射される照明光10の偏光方向11は回転してしまい、この照明光10の偏光方向11とスクリーン2に取り付けた偏光板7の偏光軸6とが直角からずれるため、十分なコントラスト向上効果が得られないが(【0005】~【0006】)、
スクリーン2にはその前面に右回り円偏光板19、蛍光灯3と窓22には左回り円偏光板21、24を設けると、室内照明手段と表示装置との相対位置がずれても偏光軸がずれることがないため、室内照明中で常に照返りのない表示が可能になり、コントラストの良好な映像を見ることができ、直線偏光板を用いる実施例と異なり、複数の表示装置がある場合にも対応できること」(【0018】~【0019】)。
カ 周知の課題及び周知技術Aの認定
前記オの引用文献3技術事項を踏まえると、次の(ア)及び(イ)に示す二つの技術事項は当業者にとって周知であったと認められる(以下、それぞれ「周知の課題」及び「周知技術A」という)。
(ア) 周知の課題
「照返りのない表示が可能となるように、偏光方向が直角となるように配置された二つの直線偏光板について、正確に直角に合わせたつもりでも、直線偏光板の相対位置関係次第では、偏光方向が直角からずれてしまうこと。」
(イ) 周知技術A
「直線偏光板の代わりに円偏光板を用いると、二つの円偏光板の相対位置関係を気にすることなく照返りのない表示が可能となること。」
(4) 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
ア 構成X1、構成X2の観点(部屋)
(ア) 構成X1、構成X2は、「天井と、床と、互いに対向する一対の壁面および該一対の壁面に交差する方向で互いに対向する別の一対の壁面を有する壁と、によって規定され[る]」「部屋」の発明であることを特定するものである。
(イ) 次の引用発明の欄に記載した引用発明の各構成は、それぞれ、対応する本件補正発明1の欄に記載した次の本件補正発明1の構成に相当する。
<引用発明> <本件補正発明1>
O-A機器室 部屋
天井 天井
床 床
壁面A及び壁面B 互いに対向する一対の壁面
壁面C及び壁面D 該一対の壁面に交差する方向で
互いに対向する別の一対の壁面
壁面A~壁面Dの壁 壁
(ウ) したがって、本件補正発明1と引用発明は、構成X1、構成X2の観点に関し、次の点において一致する。
「天井と、床と、互いに対向する一対の壁面および該一対の壁面に交差する方向で互いに対向する別の一対の壁面を有する壁と、によって規定される部屋」の発明である点。
イ 構成A1の観点(窓の配置)
(ア) 構成A1は、「該一対の壁面および該別の一対の壁面のうちの1つが窓を有[する]」ことである。
(イ) 引用発明の「壁面A」は、本件補正発明1の「互いに対向する一対の壁面」の一方に相当するところ、引用発明の「壁面A」に設けられた「窓6」は、本件補正発明1の「該一対の壁面および該別の一対の壁面のうちの1つ」が「有する」「窓」に相当する。
(ウ) したがって、本件補正発明1と引用発明は、構成A1の観点に関し、次の点において一致する。
「該一対の壁面および該別の一対の壁面のうちの1つが窓を有すること」
ウ 構成A2の観点(第1のスクリーンの配置)
(ア) 構成A2は、「該窓を有する壁面に対向する壁面に第1のスクリーンが配置され[る]」ことである。
(イ) 引用発明の「壁面B」は、本件補正発明1の「互いに対向する一対の壁面」の他方に相当するところ、引用発明の「壁面A」には「窓6」が設けられていることを踏まえると、引用発明の「壁面B」は、本件補正発明1の「該窓を有する壁面に対向する壁面」に相当する。
(ウ) そうすると、引用発明の「壁面B」に設けられた「偏光スクリーン9」は、本件補正発明1の「該窓を有する壁面に対向する壁面」に「配置」される「第1のスクリーン」に相当する。
(エ) したがって、本件補正発明1と引用発明は、構成A2の観点に関し、次の点において一致する。
「該窓を有する壁面に対向する壁面に第1のスクリーンが配置されること」
エ 構成A3の観点(第1、2のスクリーンの配置)
(ア) 構成A3は、「該第1のスクリーンは、該第2のスクリーンが配置される壁面とは異なる壁面に配置され、該第2のスクリーンは、該窓を有する壁面とは異なる壁面に配置され[る]」ことである。
(イ) 本件補正発明1の構成A3は、「第2のスクリーン」がある壁面に配置されることを前提としているのに対し、引用発明においては、「第2のスクリーン」に相当するものは配置されていない。
(ウ) したがって、本件補正発明1と引用発明は、構成A3の観点に関し、次の点で相違する。
本件補正発明1においては、「第2のスクリーン」がある壁面に配置されることを前提とし、「該第1のスクリーンは、該第2のスクリーンが配置される壁面とは異なる壁面に配置され、該第2のスクリーンは、該窓を有する壁面とは異なる壁面に配置され[る]」のに対し、
引用発明においては、第2のスクリーンに相当するものは配置されていない点。
オ 構成B1~B2の観点(偏光板)
(ア) 構成B1は、「該窓の内側、ならびに、該第1のスクリーンの投影側表面にそれぞれ偏光板が設けられ[る]」ことである。
構成B2は、「該窓の偏光板の偏光子の吸収軸方向と該第1のスクリーンの偏光板の偏光子の吸収軸方向とが、実質的に直交または平行であ[る]」ことである。
(イ) 引用発明の「偏光スクリーン9」には「1方向の偏光シート5′」が添設されているところ、「偏光シート5′」が「偏光スクリーン9」の投影側表面に設けられることは、その用途からして明らかであるから、引用発明の「偏光シート5′」は、本件補正発明1の「該第1のスクリーンの投影側表面」に「設けられる」「偏光板」に相当する。
(ウ) 引用発明の「窓6」には「上記1方向と直角方向に交叉する方向の偏光シート8」が添設されているところ、引用発明の「偏光シート8」は、本件補正発明1の「該窓」に「設けられる」「偏光板」に相当する。
(エ) ここで、引用発明の「偏光シート5′」、「偏光シート8」は、いずれも「1方向の偏光性を有する」ものであるところ、このような直線偏光性を有する偏光シートにおいて、偏光シートの方向というのが、偏光子の吸収軸の方向を示すことは当業者において自明である。
(オ) そうすると、引用発明において、「偏光スクリーン9」に「添設」される「偏光シート5′」の直線偏光性と、「窓6」に「添設」される「偏光シート8」の直線偏光性が「直角方向に交叉する」ことは、本件補正発明1における「該窓の偏光板の偏光子の吸収軸方向と該第1のスクリーンの偏光板の偏光子の吸収軸方向とが、実質的に直交である」ことに相当する。
(カ) したがって、本件補正発明1と引用発明は、構成B1、B2の観点に関し、次の点で一致する。
「該窓、ならびに、該第1のスクリーンの投影側表面にそれぞれ偏光板が設けられ、該窓の偏光板の偏光子の吸収軸方向と該第1のスクリーンの偏光板の偏光子の吸収軸方向とが、実質的に直交である」点。
一方で、両者は次の点で一応相違する。
本件補正発明1では、偏光板が窓の内側に設けられるのに対し、
引用発明では、「偏光シート8」が「窓6」のどちら側の表面に設けられるのか不明であるという点。
カ 構成Cの観点(位相差板)
(ア) 構成Cは、「該窓の偏光板、ならびに、該第1のスクリーンの偏光板が、それぞれ、面内位相差Re(550)が100nm~200nmである位相差層をさらに有し、円偏光または楕円偏光機能を有する」ことである。
(イ) 引用発明の「1方向の偏光シート5′」と「上記1方向と直角方向に交叉する方向の偏光シート8」は、位相差層を有するものではなく、円偏光または楕円偏光機能を有するものではない。
(ウ) したがって、本件補正発明1と引用発明は、構成Cの観点に関し、次の点で相違する。
本件補正発明1の該窓の偏光板、ならびに、該第1のスクリーンの偏光板は、「それぞれ、面内位相差Re(550)が100nm~200nmである位相差層をさらに有し、円偏光または楕円偏光機能を有する」のに対し、
引用発明の「1方向の偏光シート5′」と「これと直角方向に交叉する方向の偏光シート8」は、位相差層を有するものではないという点。
(5) 一致点及び相違点
前記(4)の対比分析の結果をまとめると、本件補正発明1と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及びイに示すとおりである。
ア 一致点
「天井と、床と、互いに対向する一対の壁面および該一対の壁面に交差する方向で互いに対向する別の一対の壁面を有する壁と、によって規定され、
該一対の壁面および該別の一対の壁面のうちの1つが窓を有し、
該窓を有する壁面に対向する壁面に第1のスクリーンが配置され、
該窓、ならびに、該第1のスクリーンの投影側表面にそれぞれ偏光板が設けられ、
該窓の偏光板の偏光子の吸収軸方向と該第1のスクリーンの偏光板の偏光子の吸収軸方向とが、実質的に直交である、
部屋。」
イ 相違点
(ア) 相違点1
本件補正発明1において、「第2のスクリーン」がある壁面に配置されることを前提とし、「該第1のスクリーンは、該第2のスクリーンが配置される壁面とは異なる壁面に配置され、該第2のスクリーンは、該窓を有する壁面とは異なる壁面に配置され[る]」のに対し、
引用発明においては、第2のスクリーンに相当するものは配置されていない点。
(イ) 一応の相違点2
本件補正発明1では、偏光板が「窓の内側」に設けられるのに対し、
引用発明では、「偏光シート8」が「窓6」のどちら側に設けられるのか不明である点。
(ウ) 相違点3
本件補正発明1の該窓の偏光板、ならびに、該第1のスクリーンの偏光板は、「それぞれ、面内位相差Re(550)が100nm~200nmである位相差層をさらに有し、円偏光または楕円偏光機能を有する」のに対し、
引用発明の「1方向の偏光シート5′」と「これと直角方向に交叉する方向の偏光シート8」は、位相差層を有するものではない点。
(6) 当審の判断
ア 相違点1について
一つの部屋内にスクリーンをいくつ配置するかは、その部屋の大きさや用途に応じて部屋の利用者が適宜選択すべき事項である。そして、一つの壁の面積が有限であることを考慮すれば、第2のスクリーンを配置する際に、窓や第1のスクリーンがある壁面とは異なる壁面を配置場所として選択することは当業者にとって通常の選択である。
したがって、引用発明の「O-A機器室」において、上記相違点1に係る本件補正発明1の構成のようにすることは、単なる設計変更にすぎず、当業者が容易に想到し得る事項である。
イ 一応の相違点2について
窓に偏光板を配置する際には、窓の内側と外側のいずれかを選択して配置する必要があることは自明であるところ、耐候性を考慮して、窓の内側に偏光板を配置することは、例示するまでもない技術常識である。
したがって、上記一応の相違点2は、単なる技術常識を述べた程度の事項にすぎず、実質的な相違点ではない。
ウ 相違点3について
(ア) 引用発明の内包する課題について
前記(3)カ(ア)において認定したとおり、「照返りのない表示が可能となるように、偏光方向が直角となるように配置された二つの直線偏光板について、正確に直角に合わせたつもりでも、直線偏光板の相対位置関係次第では、偏光方向が直角からずれてしまうこと」は、当業者にとって周知の課題である。
引用発明において、「偏光スクリーン9」に「添設」される「偏光シート5′」の直線偏光性と、「窓6」に「添設」される「偏光シート8」の直線偏光性は、「直角方向に交叉する」ように設定されているところ、上記周知の課題を踏まえると、引用発明においても、「偏光スクリーン9」と「窓6」の相対位置関係次第では、「偏光シート5′」と「偏光シート8」の直線偏光性が「直角方向に交叉する」ことからずれてしまうという課題を内包していることは明らかである。
(イ) 周知技術Aの適用について
前記(3)カ(イ)において周知技術Aとして認定したとおり、「直線偏光板の代わりに円偏光板を用いると、二つの円偏光板の相対位置関係を気にすることなく照返りのない表示が可能となること」は、当業者にとって周知技術である。
ここで、直線偏光板が配置された引用発明においても、上記(ア)に示した内包する課題を解決するために、「偏光シート5′」及び「偏光シート8」という二つの直線偏光板の代わりに、いずれも「円偏光板」を採用したいという動機は、当業者にはあったものと認められる。
(ウ) 技術常識Aについて
前記(3)ウにおいて技術常識Aとして認定したとおり、「自然光を透過させる円偏光板は、直線偏光子と1/4波長板を組み合わせたものであり、1/4波長板のレターデーション値Reは、通常80~180nm程度に設定されること」は、当業者にとって技術常識である。
(エ) 相違点3に係る構成の導出について
a そうすると、引用発明において、技術常識Aを考慮しつつ周知技術Aを適用して、「1方向の偏光性を有する偏光シート5」と「これと直角方向に交叉する方向の偏光シート8、8」のそれぞれに1/4波長板を組み合わせて、偏光面の回転方向(左回り、右回り)が互いに異なる二つの円偏光板とすることは、当業者であれば容易に想到し得た事項である。
この場合、組み合わせた1/4波長板(位相差層)の面内位相差Re(550)が100nm~200nmであることは、前記技術常識Aからみて当業者にとって適宜なし得た設計事項にすぎない。
b 前記aにおいて説示した理由とは別に、引用発明において、周知技術Aを適用して、「1方向の偏光性を有する偏光シート5」と「これと直角方向に交叉する方向の偏光シート8、8」の代わりに、それぞれを偏光面の回転方向(左回り、右回り)が互いに異なる二つの円偏光板に置き換えることも、当業者であれば容易に想到し得た事項である。
この場合、技術常識Aを考慮すれば、置き換えた後の円偏光板が位相差層を有することは自明であり、位相差層の面内位相差Re(550)が100nm~200nmであることは、当業者にとって適宜なし得た設計事項にすぎない。
なお、直線偏光子と1/4波長板とからなる円偏光板においては、1/4波長板の遅相軸方向と直線偏光子の吸収軸方向との関係が重要であるという当業者の技術常識を考慮すれば、本件補正発明1の構成B2の「該窓の偏光板の偏光子の吸収軸方向と該第1のスクリーンの偏光板の偏光子の吸収軸方向とが、実質的に直交または平行であ[る]」ようにすることに格別の技術上の意義は認められないから、引用発明において、「1方向の偏光性を有する偏光シート5」と「これと直角方向に交叉する方向の偏光シート8、8」の代わりに、それぞれを偏光面の回転方向(左回り、右回り)が互いに異なる二つの円偏光板に置き換えた際に、構成B2の要件を充足するかどうかということは、本質的な問題ではなく、当業者が適宜なし得た設計事項にすぎない。
エ 総合評価
前記ア~ウに検討のとおり、前記相違点1~3は、引用発明、技術常識A及び周知技術Aに基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、前記相違点1~3を総合的に勘案しても、本件補正発明1が奏する効果として、当業者が予測・発見困難な効果も、格別顕著な効果も認めることはできない。
したがって、本件補正発明1は、引用発明、技術常識A及び周知技術Aに基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本件補正発明は本件補正発明1を含むものであるから(前記(1)を参照)、本件補正発明1と同様に、本件補正発明は、引用発明、技術常識A及び周知技術Aに基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
(7) 請求人の主張について
ア 審判請求書における請求人の主張の概要
請求人は、審判請求書において、引用文献1では、窓に設けられる偏光板とスクリーンに設けられる偏光板との吸収軸を直交させているため、スクリーンにおける外光の反射抑制には位相差層が必要なく、外光の反射抑制に必要のない引用文献2に記載の偏光透過フィルターの部分構成を抜き出して、引用文献1に適用する動機付けは一切ないということを主張している。
イ 請求人の主張についての検討
前記アの請求人の主張について検討すると、前記(6)ウで検討したとおり、引用発明は、「偏光スクリーン9」と「窓6」の相対位置関係次第では、「偏光シート5′」と「偏光シート8」の直線偏光性が「直角方向に交叉する」ことからずれてしまうという課題を内包していることは明らかであり、周知技術Aを参酌すれば、直線偏光板を用いる引用発明において、円偏光板を採用したいという動機があったと認められる。
したがって、請求人の主張は、上記(6)エの結論を左右するものではなく、採用することができない。
(8) 独立特許要件についての判断のまとめ
前記(1)~(7)において検討したとおり、本件補正発明は、引用発明、技術常識A及び周知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4 本件補正の適否についてのまとめ
前記3において検討したとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定における本願発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
(進歩性の欠如) 本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開平1-191824号公報
3 引用文献1に記載された発明等
引用文献1の記載事項、認定事項1及び引用発明の認定は、前記第2の3(2)ア~ウにおいて示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明のうち、前記第2の2(1)ア、イに示した補正事項1、2を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(5)、(6)において説示したとおり、引用発明、技術常識A及び周知技術Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-008968