特許拒絶査定不服審判
2024-008031
液晶媒体および液晶ディスプレイ
- 審判番号
- 2024-008031
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-154387
- 請求日
- 2024年05月15日
- 審決日
- 2025年09月26日
- 公報発行日
- 2026年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
- 【請求人代理人】伊藤 克博
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 吉野 三寛
- 審判官 野村 伸雄
- 分類
- P18 .121-Z (C09K) / P18 .575-Z (C09K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-154387「液晶媒体および液晶ディスプレイ」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月23日出願公開、特開2020- 63418〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年8月27日の外国語書面出願であって(パリ条約による優先権主張、2018年8月28日、欧州特許庁)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和元年12月27日 :翻訳文の提出
令和4年 8月24日 :手続補正書の提出
令和5年 7月 3日付け:拒絶理由通知書
同年10月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 1月 5日 :拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月16日 :原査定の謄本の送達)
同年 5月15日 :審判請求書、手続補正書の提出
以下、2018年(平成30年)8月28日を「優先日」という。
第2 令和6年5月15日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年5月15日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和6年5月15日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであり、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和5年10月20日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「【請求項1】
以下を含むことを特徴とする、正の誘電異方性を有する液晶媒体。
a)1種以上の式S1の化合物および1種以上の式S2の化合物
【化1】
[図:0001432558000001.jpg]
(式中、個々の基は、互いに独立して、また、それぞれの出現ごとに、同一または異なり、以下の意味を有する:
【化2】
[図:0001432558000002.jpg]
Ra~Rdは、1~10個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキルを示し、
Xは、Hを示し、
Aは、任意に置換された1~20個のC原子を有する、直鎖状、分岐状または環状のアルキレンを示し、そして
nは、1~6の整数を示す。)
ならびに、
b)式IIおよびIIIの化合物群から選択される1種以上の化合物
【化3】
[図:0001432558000003.jpg]
(式中、
R2およびR3は、互いに独立して、1~7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ、2~7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニルを示し、
【化4】
[図:0001432558000004.jpg]
L21、L22、L31およびL32は、互いに独立して、HまたはFを示し、
X2およびX3は、互いに独立して、ハロゲン、1~3個のC原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ、または2もしくは3個のC原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシを示し、
Z3は、-CH2CH2-、-CF2CF2-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH2O-または単結合を示し、そして
mおよびnは、互いに独立して、0、1、2、または3を示す。)
ならびに、
c)式CY、PY、PYPおよびLYの群から選択される1種以上の化合物
【化5】
[図:0001432558000005.jpg]
(式中、個々の基は、互いに独立して、また、それぞれの出現ごとに、同一または異なり、以下の意味を有し、
【化6】
[図:0001432558000006.jpg]
少なくとも1つの環Fが、
【化7】
[図:0001432558000007.jpg]
であり、
R1およびR2は、1~12個のC原子を有するアルキルであり、ここでは、さらに、1または2個の隣接しないCH2基がO原子が互いに直接結合しない形で-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-、または-COO-により置換されていてもよく、
ZXおよびZyは、-CH2CH2-、-CH=CH-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-CO-O-、-O-CO-、-C2F4-、-CF=CF-、-CH=CH-CH2O-または単結合であり、
L1-4は、Fであり、
aは、1または2であり、
bは、0または1であり、そして
fは、1または2である。)
ならびに、
d)1種以上の式IVの化合物
【化8】
[図:0001432558000008.jpg]
(式中、
R41およびR42は、互いに独立して、式IIの下にR2について上に示される意味を有し、
【化9】
[図:0001432558000009.jpg]
Z41とZ42は、互いに独立して、そして、もしZ41が2回出現する場合は、これらも互いに独立して、-CH2CH2-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH2O-、-CF2O-、-C≡C-、または単結合を示し、そして
pは、0、1または2を示す。)」
(2) 本件補正後
「【請求項1】
以下を含むことを特徴とする、正の誘電異方性を有する液晶媒体。
a)200ppm~10000ppmの範囲内の濃度で式S1aの化合物および200ppm~10000ppmの範囲内の合計濃度で1種以上の式S2の化合物
【化1】
[図:0001432558000010.jpg]
(式中、個々の基は、互いに独立して、また、それぞれの出現ごとに、同一または異なり、以下の意味を有する:
【化2】
[図:0001432558000011.jpg]
nは、1~6の整数を示す。)
ならびに、
b)式IIおよびIIIの化合物群から選択される1種以上の化合物
【化3】
[図:0001432558000012.jpg]
(式中、
R2およびR3は、互いに独立して、1~7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ、2~7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニルを示し、
【化4】
[図:0001432558000013.jpg]
L21、L22、L31およびL32は、互いに独立して、HまたはFを示し、
X2およびX3は、互いに独立して、ハロゲン、1~3個のC原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ、または2もしくは3個のC原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシを示し、
Z3は、-CH2CH2-、-CF2CF2-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH2O-または単結合を示し、そして
mおよびnは、互いに独立して、0、1、2、または3を示す。)
ならびに、
c)式CY、PY、PYPおよびLYの群から選択される1種以上の化合物
【化5】
[図:0001432558000014.jpg]
(式中、個々の基は、互いに独立して、また、それぞれの出現ごとに、同一または異なり、以下の意味を有し、
【化6】
[図:0001432558000015.jpg]
少なくとも1つの環Fが、
【化7】
[図:0001432558000016.jpg]
であり、
R1およびR2は、1~12個のC原子を有するアルキルであり、ここでは、さらに、1または2個の隣接しないCH2基がO原子が互いに直接結合しない形で-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-、または-COO-により置換されていてもよく、
ZXおよびZyは、-CH2CH2-、-CH=CH-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-CO-O-、-O-CO-、-C2F4-、-CF=CF-、-CH=CH-CH2O-または単結合であり、
L1-4は、Fであり、
aは、1または2であり、
bは、0または1であり、そして
fは、1または2である。)
ならびに、
d)1種以上の式IVの化合物
【化8】
[図:0001432558000017.jpg]
(式中、
R41およびR42は、互いに独立して、式IIの下にR2について上に示される意味を有し、
【化9】
[図:0001432558000018.jpg]
Z41とZ42は、互いに独立して、そして、もしZ41が2回出現する場合は、これらも互いに独立して、-CH2CH2-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH2O-、-CF2O-、-C≡C-、または単結合を示し、そして
pは、0、1または2を示す。)
ただし液晶媒体は、式CCP-V-m、CCP-Vn-m、APUQU-n-F、PGUQU-n-F、CCQU-n-FおよびPYP-n-mの化合物から成る群より選択される少なくとも1種類の化合物を含む。
【化10】
[図:0001432558000019.jpg]
(式中、mは1~7の整数を表す。)
【化11】
[図:0001432558000020.jpg]
(式中、mおよびnは互いに独立に1~7の整数を表す。)
【化12】
[図:0001432558000021.jpg]
(式中、nは1~7の整数を表す。)
【化13】
[図:0001432558000022.jpg]
(式中、nは1~7の整数を表す。)
【化14】
[図:0001432558000023.jpg]
(式中、nは1~7の整数を表す。)
【化15】
[図:0001432558000024.jpg]
(式中、mおよびnは互いに独立に1~7の整数を表す。)」
2 補正の目的
(1) 本件補正のうち請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項について、次のアからウの限定をするものである。
ア 「式S1の化合物」「
[図:0001432558000025.jpg]
(式中、個々の基は、互いに独立して、また、それぞれの出現ごとに、同一または異なり、以下の意味を有する:
Ra~Rdは、1~10個のC原子を有する直鎖状または分岐状のアルキルを示し、
Xは、Hを示し、
Aは、任意に置換された1~20個のC原子を有する、直鎖状、分岐状または環状のアルキレンを示[す]」について、
「200ppm~10000ppmの範囲内の濃度で式S1aの化合物」「
[図:0001432558000026.jpg]
」に限定すること。
イ 「式S2の化合物」について、「200ppm~10000ppmの範囲内の合計濃度」に限定すること。
ウ 「液晶媒体」について、「ただし液晶媒体は、式CCP-V-m、CCP-Vn-m、APUQU-n-F、PGUQU-n-F、CCQU-n-FおよびPYP-n-mの化合物から成る群より選択される少なくとも1種類の化合物を含む。
【化10】
[図:0001432558000027.jpg]
(式中、mは1~7の整数を表す。)
【化11】
[図:0001432558000028.jpg]
(式中、mおよびnは互いに独立に1~7の整数を表す。)
【化12】
[図:0001432558000029.jpg]
(式中、nは1~7の整数を表す。)
【化13】
[図:0001432558000030.jpg]
(式中、nは1~7の整数を表す。)
【化14】
[図:0001432558000031.jpg]
(式中、nは1~7の整数を表す。)
【化15】
[図:0001432558000032.jpg]
(式中、mおよびnは互いに独立に1~7の整数を表す。)」と限定すること。
(2) そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
(3) したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 独立特許要件の判断
本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成Aから構成Eまでに分説する。
<本件補正発明の分説>
以下を含むことを特徴とする、
<構成X> 正の誘電異方性を有する液晶媒体。
<構成A> a)200ppm~10000ppmの範囲内の濃度(以下「構成A_S1aα」という。)で式S1aの化合物(以下「構成A_S1a」という。)および
200ppm~10000ppmの範囲内の合計濃度(以下「構成A_S2α」という。)で1種以上の式S2の化合物(以下「構成A_S2」という。)
【化1】
[図:0001432558000033.jpg]
(式中、個々の基は、互いに独立して、また、それぞれの出現ごとに、同一または異なり、以下の意味を有する:
【化2】
[図:0001432558000034.jpg]
nは、1~6の整数を示す。)
ならびに、
<構成B> b)式IIおよびIIIの化合物群から選択される1種以上の化合物
【化3】
[図:0001432558000035.jpg]
(式中、
R2およびR3は、互いに独立して、1~7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ、2~7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニルを示し、
【化4】
[図:0001432558000036.jpg]
L21、L22、L31およびL32は、互いに独立して、HまたはFを示し、
X2およびX3は、互いに独立して、ハロゲン、1~3個のC原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ、または2もしくは3個のC原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシを示し、
Z3は、-CH2CH2-、-CF2CF2-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH2O-または単結合を示し、そして
mおよびnは、互いに独立して、0、1、2、または3を示す。)
ならびに、
<構成C> c)式CY、PY、PYPおよびLYの群から選択される1種以上の化合物
【化5】
[図:0001432558000037.jpg]
(式中、個々の基は、互いに独立して、また、それぞれの出現ごとに、同一または異なり、以下の意味を有し、
【化6】
[図:0001432558000038.jpg]
少なくとも1つの環Fが、
【化7】
[図:0001432558000039.jpg]
であり、
R1およびR2は、1~12個のC原子を有するアルキルであり、ここでは、さらに、1または2個の隣接しないCH2基がO原子が互いに直接結合しない形で-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-、または-COO-により置換されていてもよく、
ZXおよびZyは、-CH2CH2-、-CH=CH-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-CO-O-、-O-CO-、-C2F4-、-CF=CF-、-CH=CH-CH2O-または単結合であり、
L1-4は、Fであり、
aは、1または2であり、
bは、0または1であり、そして
fは、1または2である。)
ならびに、
<構成D> d)1種以上の式IVの化合物
【化8】
[図:0001432558000040.jpg]
(式中、
R41およびR42は、互いに独立して、式IIの下にR2について上に示される意味を有し、
【化9】
[図:0001432558000041.jpg]
Z41とZ42は、互いに独立して、そして、もしZ41が2回出現する場合は、これらも互いに独立して、-CH2CH2-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH2O-、-CF2O-、-C≡C-、または単結合を示し、そして pは、0、1または2を示す。)
<構成E> ただし液晶媒体は、式CCP-V-m、CCP-Vn-m、APUQU-n-F、PGUQU-n-F、CCQU-n-FおよびPYP-n-mの化合物から成る群より選択される少なくとも1種類の化合物を含む。
【化10】
[図:0001432558000042.jpg]
(式中、mは1~7の整数を表す。)
【化11】
[図:0001432558000043.jpg]
(式中、mおよびnは互いに独立に1~7の整数を表す。)
【化12】
[図:0001432558000044.jpg]
(式中、nは1~7の整数を表す。)
【化13】
[図:0001432558000045.jpg]
(式中、nは1~7の整数を表す。)
【化14】
[図:0001432558000046.jpg]
(式中、nは1~7の整数を表す。)
【化15】
[図:0001432558000047.jpg]
(式中、mおよびnは互いに独立に1~7の整数を表す。)」
イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。下線は当合議体による。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶媒体、およびこれらの媒体を含む液晶ディスプレイ、特にアクティブマトリクスによってアドレス指定されるディスプレイ、特にツイステッドネマチック(twisted nematic;TN)、面内スイッチング(in-plane switching;IPS)またはフリンジフィールドスイッチング(fringe-field switching;FFS)タイプのディスプレイに関する。
【背景技術】
…(中略)…例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード(例えば、DE4000451およびEP0588568に開示)や、強い「フリンジ電界」、すなわち、電極の端に近い強い電界と、セル全体に、強い垂直成分と強い水平成分の両方を持つ電界が存在するフリンジフィールドスイッチング(FFS)モードなどといった、基板または液晶層に実質的に平行な電界を利用する電気光学モードもある。特に後者の2つの電気光学モードは、最新のデスクトップモニターのLCDに使用され、テレビやマルチメディアアプリケーションのためのディスプレイにおける使用が意図されている。本発明による液晶は、好ましくはこのタイプのディスプレイに使用される。一般に、FFSディスプレイでは、誘電異方性の値がかなり低い誘電的に正の液晶媒体が使用されるが、IPSディスプレイでは、誘電異方性が約3またはそれ未満の液晶媒体も使用される場合がある。
【0003】
これらのディスプレイには、特性が改善された新たな液晶媒体が必要とされる。特に、多くの種類のアプリケーションで、アドレス時間を改善する必要がある。したがって、粘度が低い液晶媒体(η)、特に低い回転粘度(γ1)が要求される。モニター用途では特に、回転粘度は80mPa・s以下、好ましくは60mPa・s以下、特に55mPa・s以下とすべきである。このパラメーターに加えて、媒体は、適切な幅と位置のネマチック位相範囲と適切な複屈折(Δn)を有していなければならない。さらに、誘電率異方性(Δε)は、かなり低い動作電圧を可能にするために十分に高くすべきである。Δεは、好ましくは2より大きく、より好ましくは3より大きくすべきであるが、少なくともかなり高い抵抗率を妨げるであろうことから、好ましくは20より大きくなく、特に17を超えないようにすべきである。
…(中略)…
【0007】
LCD、そして特にIPSディスプレイに適した液晶組成物は、例えば、JP07-181439(A)、EP0667555、EP0673986、DE19509410、DE19528106、DE19528107、WO96/23851およびWO96/28521から既知である。しかしながら、これらの組成物は重大な欠点を有している。欠陥の中でもとりわけ、それらのほとんどは、不利なほど長いアドレス時間をもたらし、抵抗率の値が不十分であり、かつ/または過度に高い動作電圧を必要とする。さらに、LCDの低温動作を改善する必要がある。動作特性の改善と有効期間の改善、特に可視光および紫外線に対する安定性、さらには熱、特に、熱と光および/または紫外線の組み合わせに対する安定性の改善の両方が、ここで必要とされる。
【0008】
これは、ディスプレイの通常のライフサイクルだけでなく、ディスプレイの製造における個々の工程(通常の動作と比較して極端な負荷がかかる場合がある)にも関係する。よって、例えば、フレームの結合の製造においては、既に液晶を含むディスプレイの非常に高い熱負荷を引き起こすプロセスが頻繁に使用される。液晶が損傷されることなく、この強い熱負荷に可能な限り耐えるために、1種以上の熱安定剤を液晶配合物に加えることがそれ相応に有利である。次いで、その後のディスプレイの日常の動作では、バックライトの光による負荷と周囲光、典型的には昼光による負荷、および環境からの温度負荷が、重要な負荷要因として生じうる。これは特に、様々な負荷量の組み合わせが、実際面では特に重要となりうることを意味する。
【0009】
このような様々な負荷の組み合わせは、連続した時間系列で発生する場合と、時間的に並行して発生する場合のどちらもありうる。したがって、例えば、電子広告パネルとして使用されるディスプレイは、設置場所に応じて、動作中および休止状態において、強い熱と日射を同時に受ける場合がある。
…(中略)…
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
多くの液晶媒体、特に大きな極性または高い誘電異方性を有するものは、実際のアプリケーションに必要な高い安定性の要件を満たさない。
【0016】
したがって、広いネマチック相範囲、使用されるディスプレイの種類に対応する適切な光学異方性Δn、高いΔεおよび、特に短い応答時間のための特に低い粘度など、実際のアプリケーションに適した特性を有する液晶媒体に対する少なからぬ需要がある。
【0017】
驚くべきことに、今回、先行技術からの材料の欠点を持たないか、または少なくとも有意に低減された程度にしか欠点を持たず、適度に高いΔε、適切な位相範囲と適切なΔnを有する、液晶媒体を達成することが可能であることが見出された。
【0018】
驚くべきことに、以下に示す式S1およびS2の化合物は、液晶混合物のかなりの、ほとんどの場合において十分な、安定化をもたらすことが、ここで見出された。
【0019】
本発明は、ネマチック相と正の誘電異方性とを有する液晶媒体に関し、以下を含む:
【0020】
a)好ましくはそれぞれ1ppm~5、000ppmの範囲の濃度、より好ましくはそれぞれ100ppm~2、000ppmの範囲の濃度である、式S1の1種以上の化合物および式S2の1種以上の化合物。
【0021】
【化3】
[図:0001432558000048.jpg]
【0022】
(式中、個々の基は、互いに独立して、また、それぞれの出現ごとに、同一または異なり、以下の意味を有する:
【0023】
【化4】
[図:0001432558000049.jpg]
【0024】
Ra-dは、1~10個のC原子、好ましくは1~6個のC原子、非常に好ましくは1~4個のC原子、最も好ましくはメチルを有する、直鎖状または分岐状のアルキルを示し、
Xは、H、CH3、OHまたはO・、好ましくはHを示し、
Aは、任意に置換された1~20個のC原子を有する、直鎖状、分岐状または環状のアルキレン、好ましくは-(CH2)8-を示し、そして
nは、1~6の整数、好ましくは3を示す。)
ならびに、
【0025】
b)式IIおよびIIIの化合物の群から選択される1種以上の化合物。
【0026】
【化5】
[図:0001432558000050.jpg]
【0027】
(式中、
R2およびR3は、互いに独立して、1~7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ、2~7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニルを示し、好ましくはR2およびR3は、アルキルまたはアルケニルを示し、
【0028】
【化6】
[図:0001432558000051.jpg]
【0029】
L21、L22、L31およびL32は、互いに独立して、HまたはFを示し、好ましくはL21および/またはL31は、Fを示し、
X2およびX3は、互いに独立して、ハロゲン、1~3個のC原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ、または2もしくは3個のC原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシ、好ましくはF、Cl、-OCF3または-O-CH=CF2、-CF3、特にF、-OCF3または-O-CH=CF2を示し、
Z3は、-CH2CH2-、-CF2CF2-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH2O-または単結合、好ましくは-CH2CH2-、
-COO-、トランス-CH=CH-または単結合、非常に好ましくは-COO-、トランス-CH=CH-または単結合を示し、そして
mおよびnは、互いに独立して、0、1、2、または3を示し、
mは、好ましくは1、2、または3を示し、そして
nは、好ましくは0、1または2、特に好ましくは1または2を示す。)
ならびに/または、
【0030】
c)1種以上の式IVの化合物。
[図:0001432558000052.jpg]
【0031】
(式中、
R41およびR42は、互いに独立して、式IIの下にR2について上に示される意味を有し、好ましくはR41はアルキルを示し、R42はアルキルもしくはアルコキシを示し、またはR41はアルケニルを示し、R42はアルキルを示し、
【0032】
【化7】
[図:0001432558000053.jpg]
【0033】
Z41およびZ42は、互いに独立して、そして、もしZ41が2回出現する場合は、これらも互いに独立して、-CH2CH2-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH2O-、-CF2O-、-C≡C-、または単結合を示し、好ましくは、それらの1つまたは複数が単結合を示し、そして
pは、0、1または2、好ましくは0または1を示す。)
ならびに/または、
【0034】
d)1種以上の式VIIIの化合物。
【0035】
【化8】
[図:0001432558000054.jpg]
【0036】
(式中、
R81およびR82は、互いに独立して、式IIの下にR2について上に示される意味を有し、そして
【0037】
【化9】
[図:0001432558000055.jpg]
【0038】
Z81およびZ82は、互いに独立して、-CH2CH2-、-C≡C-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH2O-、-CF2O-または単結合、好ましくは、それらの1つまたは複数が単結合を示し、非常に好ましくは、両方が単結合を示し、
L81およびL82は、互いに独立して、C-FまたはNを示し、好ましくはL81およびL82のうちの1つまたは両方がC-Fを示し、非常に好ましくは、両方がC-Fを示し、そして
sは、0または1を示し、そして
L81およびL82は、互いに独立して、C-FまたはNを示し、好ましくはL81およびL82のうちの1つまたは両方がC-Fを示し、非常に好ましくは両方が、C-Fを示し、そして
【0039】
【化10】
[図:0001432558000056.jpg]
…(中略)…
【0043】
本願による液晶媒体は、好ましくは、合計で1ppm~25,000ppm、好ましくは50ppm~20,000ppm、さらにより好ましくは100~15,000ppm、好ましくは最大10,000ppm、そして、非常に特に好ましくは200ppm~10,000ppmの式S1およびS2の化合物を含む。さらに好ましい実施形態では、本願による液晶媒体は、合計で1ppm~2,000ppm、好ましくは10ppm~1,000ppm、さらにより好ましくは20~600ppm、好ましくは最大500ppm、そして、非常に特に好ましくは、50ppm~400ppmの式S1およびS2の化合物を含む。
【0044】
式S1およびS2の化合物は、液晶混合物の安定剤として突出して適している。特にそれらは、そのような混合物の非常に効率的な熱安定化を提供する。これらの化合物とは対照的に、これまでに良好な熱安定性を提供することが知られている化合物は、多かれ少なかれ、UV暴露により「電圧保持率(voltage holding ratio)」(略してVHRまたは単にHR)のかなりの低下をもたらす。比較すると、式S1およびS2の化合物は、有意な改善を示す。UV暴露後における混合物のHRはしばしば、依然として低下するものの、UV暴露によるHRのこの低下は、これまでに知られている材料の場合に生じるものに比べて有意に減少している。
…(中略)…
【0053】
式IIおよびIIIの化合物は、好ましくは、誘電的に正の化合物であり、好ましくは3より大きい誘電異方性を有する。
【0054】
式IVの化合物は、好ましくは、誘電的に中性の化合物であり、好ましくは-1.5~3の範囲の誘電異方性を有する。
【0055】
式S1およびS2の化合物は、液晶混合物の安定剤として突出して適している。特にそれらは、混合物の非常に効率的な熱安定化を提供する。良好な熱安定性を提供するこれまでの材料は、多かれ少なかれ、UV暴露時にHRのかなりの低下をもたらす。比較すると、式S1およびS2の化合物は改善、すなわち、UV曝露時におけるHRの低下の減少を示す。
【0056】
式IIおよび/またはIIIの個々の化合物は、1~20%、好ましくは1~15%の濃度で使用される。特に、それぞれの場合において2つ以上の同族化合物、すなわち、同じ式の化合物が使用される場合、これらの制限が適用される。式の化合物の単一の物質のみ、すなわち1種のホモログのみが使用される場合、その濃度は、よって、2~20%、好ましくは3~14%の範囲とされ得る。
【0057】
式S1およびS2またはそれらの好ましい下位式の化合物に加えて、本発明による媒体は、好ましくは、式IIおよびIIIの群から選択される、3より大きい誘電異方性を有する1種以上の誘電的に正の化合物を含む。」
「【0246】
以下の表に示される組成および特性を有する液晶混合物が調製され、調査される。
【0247】
実施例1
正の誘電異方性を有するLC混合物(M-1.0)を以下のようにして調合する。
【0248】
【表7】
[図:0001432558000057.jpg]
【0249】
上記の混合物(M1-0)を4つの部分に分ける。第1の部分はそのまま調査する。さらなる3つの部分のそれぞれに、300ppm、500ppmまたは1,000ppmの安定剤S1aおよび500ppmの安定剤S2a1のいずれかを添加する(混合物M-11~M-1-3)。
【0250】
【化56】
[図:0001432558000058.jpg]
【0251】
使用例
実施例1におけるようにして配合したLC媒体M1-1からM-1-3を、上述のようにしてVHR試験セルに充填する。
【0252】
試験セルに熱応力(100℃)をかける。VHRを様々な時間間隔(theat)後に上記のようにして測定する。比較目的のために、実施例1におけるようにして調合した基準LC媒体M1-0を用いて測定を繰り返す。VHRの値を以下の表1に示す。
【0253】
【表8】
[図:0001432558000059.jpg]
【0254】
別セットの試験セルをLCDのバックライトユニットに暴露させる。VHRを様々な時間間隔(tlight)後に上記のようにして測定する。VHRの値を以下の表2に示す。
【0255】
【表9】
[図:0001432558000060.jpg]
【0256】
安定剤S1aとS2a1の両方を含むLC媒体M1-1からM-1-3は、長時間の熱暴露後のVHRの減少が、式S1およびS2の化合物を含まないLC媒体M-1と比較して、有意に少ないことがわかる。
【0257】
添加剤が存在しないと、加熱後およびバックライト試験後の混合物のHRに有意な低下が生じる。」
(2) 引用文献1の記載事項及び引用発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開2017-214552号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記イの引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
(ア) 特許請求の範囲(請求項1~3、7~9)
「【請求項1】
式Y、CY、PYおよびLYから選択される1種以上の化合物と、更に式S1およびS2から選択される2種の化合物とを含み、
【化1】
[図:0001432558000061.jpg]
前記式中、個々の基は、互いに独立して、それぞれの場合に、同一または異なって、以下の意味を有する:
【化2】
[図:0001432558000062.jpg]
は、
【化3】
[図:0001432558000063.jpg]
であり、
【化4】
[図:0001432558000064.jpg]
は、
【化5】
[図:0001432558000065.jpg]
であり、
【化6】
[図:0001432558000066.jpg]
は、
【化7】
[図:0001432558000067.jpg]
であり、ここで、少なくとも1つの環Fは、シクロヘキセニレンであり、
R1、R2は、1個~12個の炭素原子を有するアルキルであって、更に隣接していない1または2つのCH2基は、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-または-COO-によって、O原子が互いに直接結合されないように置き換えられていてよいアルキル、好ましくは1個~6個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシであり、
Zx、Zyは、-CH2CH2-、-CH=CH-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-CO-O-、-O-CO-、-C2F4-、-CF=CF-、-CH=CH-CH2O-または単結合、好ましくは単結合であり、
L1~4は、F、Cl、OCF3、CF3、CH3、CH2F、CHF2であり、
Ra~dは、1個~10個の炭素原子を有する、好ましくは1個~6個の炭素原子を有する、非常に好ましくは1個~4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル、最も好ましくはメチルであり、
Xは、H、CH3、OHまたはO・であり、
Aは、1個~20個の炭素原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキレンであり、該アルキレンは、任意に置換されており、
aは、1または2であり、
bは、0または1であり、
fは、1または2であり、
nは、1から6までの整数であり、好ましくは3である、液晶(LC)媒体。
【請求項2】
式S1の化合物は、以下の下位式
【化8】
[図:0001432558000068.jpg]
[式中、n1は、2から12までの整数であり、かつ基(CH2)n1中の1つ以上のH原子は、任意にメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシル基によって置き換えられている]から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のLC媒体。
【請求項3】
式S1の化合物は、以下の下位式
【化9】
[図:0001432558000069.jpg]
【化10】
[図:0001432558000070.jpg]
から選択されることを特徴とする、請求項2に記載のLC媒体。
…(中略)…
【請求項7】
正の誘電異方性を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載のLC媒体。
【請求項8】
式AAおよびBB:
【化19】
[図:0001432558000071.jpg]
[式中、個々の基は、以下の意味を有する:
【化20】
[図:0001432558000072.jpg]
は、それぞれ互いに独立して、それぞれの場合に、同一または異なって、
【化21】
[図:0001432558000073.jpg]
であり、
R21、R31は、それぞれ互いに独立して、1個~9個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキルもしくはアルコキシアルキル、または2個~9個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルケニルオキシを示し、それら全ては任意にフッ素化されており、
X0は、F、Cl、1個~6個の炭素原子を有するハロゲン化されたアルキルもしくはアルコキシ、または2個~6個の炭素原子を有するハロゲン化されたアルケニルもしくはアルケニルオキシであり、
L21、L22、L31、L32は、HまたはFであり、
gは、0、1、2または3である]から選択される1種以上の化合物を更に含むことを特徴とする、請求項7に記載のLC媒体。
【請求項9】
式CC:
【化22】
[図:0001432558000074.jpg]
[式中、個々の基は、以下の意味を有する:
【化23】
[図:0001432558000075.jpg]
は、それぞれ互いに独立して、それぞれの場合に、同一または異なって、
【化24】
[図:0001432558000076.jpg]
であり、
R41、R42は、それぞれ互いに独立して、1個~9個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキルもしくはアルコキシアルキル、または2個~9個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルケニルオキシであり、それら全ては任意にフッ素化されており、
Z41、Z42は、-CH2CH2-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH2O-、-CF2O-、-C≡C-または単結合、好ましくは単結合であり、
hは、0、1、2または3である]から選択される1種以上の化合物を更に含むことを特徴とする、請求項7または8に記載のLC媒体。」
(イ) 【0046】~【0049】
「【0046】
好ましくは、LC媒体中における式S1またはその下位式の化合物の割合は、10ppmから1000ppmまでであり、非常に好ましくは50ppmから1000ppmまでである。
【0047】
好ましくは、LC媒体中における式S2またはその下位式の化合物の割合は、10ppmから1000ppmまでであり、非常に好ましくは50ppmから1000ppmまでである。
【0048】
好ましくは、LC媒体は、式S1およびS2またはそれらの下位式から選択される2種から5種の、非常に好ましくは2種または3種の、最も好ましくは2種の化合物を含有する。
【0049】
本発明の好ましい一実施形態においては、LC媒体は、式S1の1種以上の化合物および式S2の1種以上の化合物を含有する。式S1の化合物は、紫外線ストレスに対してディスプレイ中のLC媒体を保護するための光安定化剤として特に適している。式S2の化合物は、高温ストレスに対してディスプレイ中のLC媒体を保護するための熱安定化剤として特に適している。この好ましい実施形態によるLC媒体は、2つの安定化剤を組み合わせており、こうして1種の安定化剤しか含まないLC媒体と比較して、より高いVHRおよびより高い信頼性が得られる。非常に好ましくは、この好ましい実施形態によるLC媒体は、式S1-1またはS1-2の化合物および式S2-1の化合物を含み、最も好ましくは式S1-1aまたはS1-2aの化合物および式S2-1aの化合物を含む。」
(ウ) 【0161】~【0163】
【0161】
正の誘電異方性を有する好ましいLC媒体は、以下の好ましい実施形態から選択され、それらの任意の組合せを含む。
【0162】
aa)式AAおよびBB
【化90】
[図:0001432558000077.jpg]
[式中、個々の基は、以下の意味を有する:
【化91】
[図:0001432558000078.jpg]
は、それぞれ互いに独立して、それぞれの場合に、同一または異なって
【化92】
[図:0001432558000079.jpg]
であり、
R21、R31は、それぞれ互いに独立して、1個~9個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキルまたはアルコキシアルキル、または2個~9個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルケニルオキシであり、それら全ては任意にフッ素化されており、
X0は、F、Cl、1個~6個の炭素原子を有するハロゲン化されたアルキルもしくはアルコキシ、または2個~6個の炭素原子を有するハロゲン化されたアルケニルもしくはアルケニルオキシであり、
Z31は、-CH2CH2-、-CF2CF2-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH2O-または単結合、好ましくは-CH2CH2-、-COO-、トランス-CH=CH-または単結合、特に好ましくは-COO-、トランス-CH=CH-または単結合であり、
L21、L22、L31、L32は、HまたはFであり、
gは、0、1、2または3である]の化合物からなる群から選択される1種以上の化合物を更に含むLC媒体。
【0163】
X0は、好ましくは、F、Cl、CF3、CHF2、OCF3、OCHF2、OCFHCF3、OCFHCHF2、OCFHCHF2、OCF2CH3、OCF2CHF2、OCF2CHF2、OCF2CF2CHF2、OCF2CF2CHF2、OCFHCF2CF3、OCFHCF2CHF2、OCF2CF2CF3、OCF2CF2CClF2、OCClFCF2CF3またはCH=CF2、非常に好ましくはFまたはOCF3である。」
(エ) 【0250】~【0283】
「【0250】
本特許出願を通じてかつ実施例において、液晶化合物の構造は、頭字語によって示される。特に記載がない限り、化学式への変換は、表I~表IIIに従って行われる。全ての基CnH2n+1、CmH2m+1、CnH2n、CmH2mおよびCkH2kは、それぞれ、n個、m個またはk個の炭素原子を有する、直鎖状のアルキル基またはアルケニル基であり、nおよびmは、それぞれ互いに独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12、好ましくは1、2、3、4、5または6を示し、かつkは、0、1、2、3、4、5または6である。表Iにおいて、それぞれの化合物の環構成要素が記号化され、表IIにおいて、橋かけ員が列挙され、そして表IIIにおいて、化合物の左手の側鎖と右手の側鎖についての記号の意味が示されている。
【0251】
表I:環構成要素
[図:0001432558000080.jpg]
【0252】
【化138】
[図:0001432558000081.jpg]
【0253】
表II:橋かけ員
【化139】
[図:0001432558000082.jpg]
【0254】
表III:側鎖
【化140】
[図:0001432558000083.jpg]
【0255】
好ましい混合物の成分を、以下の表A1およびA2に示す。表A1に示される化合物は、正の誘電異方性を有するLC混合物で使用するために特に適している。表A2に示される化合物は、負の誘電異方性を有するLC混合物で使用するために特に適している。
【0256】
表A1
表A1においては、R1*は、表IIIに列挙される左手側の側鎖から選択される基を示し、かつR2*は、表IIIに列挙される右手側の側鎖から選択される基を示し、、L1*およびL2*は、互いに独立して、HまたはFであり、mおよびnは、互いに独立して、1から12までの整数、好ましくは1、2、3、4、5または6であり、kは、0、1、2、3、4、5または6であり、かつ(O)CmH2m+1は、CmH2m+1またはOCmH2m+1を意味する。
…(中略)…
【0259】
[図:0001432558000084.jpg]
【0260】
【化144】
[図:0001432558000085.jpg]
…(中略)…
【0262】
【化146】
[図:0001432558000086.jpg]
…(中略)…
【0264】
【化148】
[図:0001432558000087.jpg]
【0265】
【化149】
[図:0001432558000088.jpg]
…(中略)…
【0267】
表A2
以下の式においては、mおよびnは、互いに独立して、1から12までの整数、好ましくは1、2、3、4、5または6であり、kは、0、1、2、3、4、5または6であり、かつ(O)CmH2m+1は、CmH2m+1またはOCmH2m+1を意味する。
…(中略)…
【0283】
【化166】
[図:0001432558000089.jpg]
」
(オ) 【0357】~【0375】
「【0357】
実施例10
正の誘電異方性を有するLC混合物は、以下の通りに配合される。
【0358】
【表10】
[図:0001432558000090.jpg]
【0359】
前記混合物に、100ppmの安定化剤S1-2aおよび300ppmの安定化剤S2aを添加する。
【0360】
実施例11
正の誘電異方性を有するLC混合物は、以下の通りに配合される。
【0361】
【表11】
[図:0001432558000091.jpg]
【0362】
前記混合物に、150ppmの安定化剤S1-2aおよび300ppmの安定化剤S2aを添加する。
【0363】
実施例12
正の誘電異方性を有するLC混合物は、以下の通りに配合される。
【0364】
【表12】
[図:0001432558000092.jpg]
【0365】
前記混合物に、100ppmの安定化剤S1-1aおよび400ppmの安定化剤S2aを添加する。
【0366】
【化198】
[図:0001432558000093.jpg]
【0367】
実施例13
正の誘電異方性を有するLC混合物は、以下の通りに配合される。
【0368】
【表13】
[図:0001432558000094.jpg]
【0369】
前記混合物に、100ppmの安定化剤S1-2aおよび400ppmの安定化剤S2aを添加する。
【0370】
実施例14
正の誘電異方性を有するLC混合物は、以下の通りに配合される。
【0371】
【表14】
[図:0001432558000095.jpg]
【0372】
前記混合物に、100ppmの安定化剤S1-2aおよび400ppmの安定化剤S2aを添加する。
【0373】
実施例15
正の誘電異方性を有するLC混合物は、以下の通りに配合される。
【0374】
【表15】
[図:0001432558000096.jpg]
【0375】
前記混合物に、100ppmの安定化剤S1-1aおよび400ppmの安定化剤S2aを添加する。」
イ 引用発明の認定
前記アに摘記した引用文献1の記載事項から、引用文献1には、請求項1~3及び請求項7及び8を引用する請求項9に係る液晶(LC)媒体の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「正の誘電異方性を有する液晶(LC)媒体(請求項7、請求項1)であって、
式Y、CY、PYおよびLYから選択される1種以上の化合物と、更に式S1およびS2から選択される2種の化合物とを含み、
【化1】
[図:0001432558000097.jpg]
前記式中、個々の基は、互いに独立して、それぞれの場合に、同一または異なって、以下の意味を有する:
【化2】
[図:0001432558000098.jpg]
は、
【化3】
[図:0001432558000099.jpg]
であり、
【化4】
[図:0001432558000100.jpg]
は、
【化5】
[図:0001432558000101.jpg]
であり、
【化6】
[図:0001432558000102.jpg]
は、
【化7】
[図:0001432558000103.jpg]
であり、ここで、少なくとも1つの環Fは、シクロヘキセニレンであり、
R1、R2は、1個~12個の炭素原子を有するアルキルであって、更に隣接していない1または2つのCH2基は、-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-または-COO-によって、O原子が互いに直接結合されないように置き換えられていてよいアルキル、好ましくは1個~6個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシであり、
Zx、Zyは、-CH2CH2-、-CH=CH-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-CO-O-、-O-CO-、-C2F4-、-CF=CF-、-CH=CH-CH2O-または単結合、好ましくは単結合であり、
L1~4は、F、Cl、OCF3、CF3、CH3、CH2F、CHF2であり、
Ra~dは、1個~10個の炭素原子を有する、好ましくは1個~6個の炭素原子を有する、非常に好ましくは1個~4個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状のアルキル、最も好ましくはメチルであり、
Xは、H、CH3、OHまたはO・であり、
Aは、1個~20個の炭素原子を有する直鎖状、分枝鎖状または環状のアルキレンであり、該アルキレンは、任意に置換されており、
aは、1または2であり、
bは、0または1であり、
fは、1または2であり、
nは、1から6までの整数であり、好ましくは3であり、(請求項1)
式S1の化合物は、以下の下位式
【化8】
[図:0001432558000104.jpg]
[式中、n1は、2から12までの整数であり、かつ基(CH2)n1中の1つ以上のH原子は、任意にメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたはヘキシル基によって置き換えられている]から選択され、(請求項2)
式S1の化合物は、以下の下位式
【化9】
[図:0001432558000105.jpg]
【化10】
[図:0001432558000106.jpg]
から選択され、(請求項3)
LC媒体中における式S1またはその下位式の化合物の割合は、非常に好ましくは50ppmから1000ppmまでであり、(【0046】)
LC媒体中における式S2またはその下位式の化合物の割合は、非常に好ましくは50ppmから1000ppmまでであり、(【0047】)
式AAおよびBB:
【化19】
[図:0001432558000107.jpg]
[式中、個々の基は、以下の意味を有する:
【化20】
[図:0001432558000108.jpg]
は、それぞれ互いに独立して、それぞれの場合に、同一または異なって、
【化21】
[図:0001432558000109.jpg]
であり、
R21、R31は、それぞれ互いに独立して、1個~9個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキルもしくはアルコキシアルキル、または2個~9個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルケニルオキシを示し、それら全ては任意にフッ素化されており、
X0は、F、Cl、1個~6個の炭素原子を有するハロゲン化されたアルキルもしくはアルコキシ、または2個~6個の炭素原子を有するハロゲン化されたアルケニルもしくはアルケニルオキシであり、
L21、L22、L31、L32は、HまたはFであり、
gは、0、1、2または3である]から選択される1種以上の化合物を更に含み、(請求項8)
Z31は、-CH2CH2-、-CF2CF2-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH2O-または単結合であり、(【0162】)
式CC:
【化22】
[図:0001432558000110.jpg]
[式中、個々の基は、以下の意味を有する:
【化23】
[図:0001432558000111.jpg]
は、それぞれ互いに独立して、それぞれの場合に、同一または異なって、
【化24】
[図:0001432558000112.jpg]
であり、
R41、R42は、それぞれ互いに独立して、1個~9個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキルもしくはアルコキシアルキル、または2個~9個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルケニルオキシであり、それら全ては任意にフッ素化されており、
Z41、Z42は、-CH2CH2-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH2O-、-CF2O-、-C≡C-または単結合、好ましくは単結合であり、
hは、0、1、2または3である]から選択される1種以上の化合物を更に含む、(請求項9)
液晶(LC)媒体。」
(3) 本件補正発明と引用発明の対比
ア 対比分析
本件補正発明と引用発明を対比する。
(ア) 構成Xの観点(正の誘電異方性を有する液晶媒体)
構成Xは、「正の誘電異方性を有する液晶媒体」の発明であることを特定するものである。
そして、「正の誘電異方性を有する液晶媒体」の発明である本件補正発明と「正の誘電異方性を有する液晶(LC)媒体」の発明である引用発明は、「正の誘電異方性を有する液晶媒体」の発明である点において一致する。
(イ) 構成Aの観点(式S1a、S2関連の観点)
a 構成A_S1aと構成A_S1aαの観点
(a) 本件補正発明における「A_S1a」は、引用発明における「S1-1a」と同一であり、これは引用発明における「式S1の化合物」に包摂される。
(b) そうすると、構成A_S1aと構成A_S1aαの観点における、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のi及びiiに示すとおりである。
第1 i 構成A_S1aと構成A_S1aαの観点における一致点
50ppmから1000ppmの範囲内の濃度で、引用発明における式S1の下位式であるS1-1a、S1-1b、S1-2a、S1-2b、S1-2c、S1-3a又はS1-4aの化合物を含む点。
第2 ii 構成A_S1aと構成A_S1aαの観点における相違点
引用発明における「式S1の化合物」が、
本件補正発明においては、「S1aの化合物」に限定されているのに対して、
引用発明においては、式S1-1a、S1-1b、S1-2a、S1-2b、S1-2c、S1-3a又はS1-4aの化合物であり、
濃度が、
本件補正発明においては、「200ppm~10000ppmの範囲内」に限定されているのに対して、
引用発明においては、50ppmから1000ppmの範囲内の濃度である点。
b 構成A_S2と構成A_S2αの観点
(a) 引用発明における「式S2の化合物」は、本件補正発明における「式2の化合物」と同一である。
(b) そうすると、構成A_S2と構成A_S2αの観点における、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のi及びiiに示すとおりである。
第3 i 構成A_S2と構成A_S2αの観点における一致点
50ppm~10000ppmの範囲内の合計濃度で1種以上の式S2の化合物を含む点。
第4 ii 構成A_S1aと構成A_S1aαの観点における相違点
1種以上の式S2の化合物の合計濃度が、
本件補正発明においては、200ppm~10000ppmの範囲内に限定されているのに対して、
引用発明においては、50ppmから1000ppmの範囲内の濃度である点。
(ウ) 構成Bの観点(式II及び式IIIの観点)
a 引用発明の式AA及びBBは、それぞれ、本件補正発明の式II及び式IIIに対応する。
b そうすると、構成Bの観点における、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) 構成Bの観点における一致点
本件補正発明の式II及び式IIIにおける「R2」及び「R3」(それぞれ引用発明の式AA及び式BBにおける「R21」及び「R31」が対応する。)を「それぞれ互いに独立して、1個~9個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキルもしくはアルコキシアルキル、または2個~9個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルケニルオキシを示し、それら全ては任意にフッ素化されている」と読み替え、本件補正発明の式II及び式IIIにおける「X2」及び「X3」(それぞれ引用発明の式AA及び式BBにおける「X0」が対応する。)を「X2およびX3は、互いに独立して、ハロゲン、1~6個のC原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ、または2~6個のC原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシを示す」と読み替えた「式IIおよびIIIの化合物群から選択される1種以上の化合物」を含む点。
(b) 構成Bの観点における相違点
本件補正発明の式II及び式IIIにおける「R2およびR3」について、
本件補正発明においては、「R2およびR3は、互いに独立して、1~7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ、2~7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニルを示[す]」及び「X2およびX3は、互いに独立して、ハロゲン、1~3個のC原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ、または2もしくは3個のC原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシを示[す]」と限定されているのに対して、
引用発明においては、限定されていない点。
(エ) 構成Cの観点(式CY、PY、PYP及びLYの観点)
a 引用発明における式CY、PY及びLYは、それぞれ、本件補正発明における式CY、PY及びLYに対応する。
b そうすると、構成Cの観点における、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次の(a)及び(b)に示すとおりである。
(a) 構成Cの観点の一致点
「式CY、PY、PYP、LY及びYの群から選択される1種以上の化合物」(ただし、L1~4は、F、Cl、OCF3、CF3、CH3、CH2F、CHF2である)を含む点。
(b) 構成Cの観点の相違点
「式CY、PY、PYP、LY及びYの群から選択される1種以上の化合物」が、
本件補正発明は、「L1-4は、Fであ[る]」「式CY、PY、PYPおよびLYの群から選択される1種以上の化合物」を含むのに対して、
引用発明は、「L1~4は、F、Cl、OCF3、CF3、CH3、CH2F、CHF2であ[る]」「式Y、CY、PYおよびLYから選択される1種以上の化合物」を含む点。
(オ) 構成Dの観点(式IVの観点)
引用発明における式CCと本件補正発明における式IVとを対比すると、構成Dの観点における、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のa及びcに示すとおりである。
a 構成Dの観点における一致点
式IVにおける
「
[図:0001432558000113.jpg]
」
と「R41およびR42」とついて、次のとおり読み替えた1種以上の式IVの化合物を含む点。
「
[図:0001432558000114.jpg]
若しくは、
[図:0001432558000115.jpg]
を示し」
及び
「R41およびR42は、それぞれ互いに独立して、1個~9個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキルもしくはアルコキシアルキル、または2個~9個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルケニルオキシを示し、それら全ては任意にフッ素化されているという意味を有し」
b 構成Dの観点における相違点
(a) 構成Dの観点における相違点その1
[図:0001432558000116.jpg]
が、
本件補正発明においては、「
[図:0001432558000117.jpg]
[す]」のに対して、
引用発明においては、
「それぞれ互いに独立して、それぞれの場合に、同一または異なって、
【化21】
[図:0001432558000118.jpg]
であ[る]」点。
(b) 構成Dの観点における相違点その2
本件補正発明の式IVにおける「R41およびR42」について、
本件補正発明においては、「R41およびR42は、互いに独立して、1~7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ、2~7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニルを示[す]」と限定されているのに対して、
引用発明においては、限定されていない点。
(カ) 構成Eの観点
引用発明においては、本件補正発明の構成Eに対応する特定が無い。したがって、本件補正発明と引用発明は、構成Eの点である次の点において相違する。
本件補正発明は、「ただし液晶媒体は、式CCP-V-m、CCP-Vn-m、APUQU-n-F、PGUQU-n-F、CCQU-n-FおよびPYP-n-mの化合物から成る群より選択される少なくとも1種類の化合物を含む。」のに対して、
引用発明においては、このような限定が無い点。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違すると認められる。
(ア) 一致点
「以下のa1、a2、b、c及びdを含むことを特徴とする、正の誘電異方性を有する液晶媒体。
a1)50ppmから1000ppmの範囲内の濃度で、引用発明における式S1の下位式であるS1a、S1-1b、S1-2a、S1-2b、S1-2c、S1-3a又はS1-4aの化合物
[図:0001432558000119.jpg]
[図:0001432558000120.jpg]
a2)50ppm~10000ppmの範囲内の合計濃度で1種以上の式S2の化合物
[図:0001432558000121.jpg]
(式中、個々の基は、互いに独立して、また、それぞれの出現ごとに、同一または異なり、以下の意味を有する:
【化2】
[図:0001432558000122.jpg]
)
b)式IIおよびIIIの化合物群から選択される1種以上の化合物
[図:0001432558000123.jpg]
式中、
R2及びR3は、それぞれ互いに独立して、1個~9個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキルもしくはアルコキシアルキル、または2個~9個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルケニルオキシを示し、それら全ては任意にフッ素化されているものであり、
[図:0001432558000124.jpg]
L21、L22、L31およびL32は、互いに独立して、HまたはFを示し、
X2およびX3は、互いに独立して、ハロゲン、1~6個のC原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ、または2~6個のC原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシを示し、
Z3は、-CH2CH2-、-CF2CF2-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH2O-または単結合を示し、そして
mおよびnは、互いに独立して、0、1、2、または3を示す。)
並びに、
c)「式CY、PY、PYP、LY及びYの群から選択される1種以上の化合物
[図:0001432558000125.jpg]
[図:0001432558000126.jpg]
(式中、個々の基は、互いに独立して、また、それぞれの出現ごとに、同一または異なり、以下の意味を有し、
【化6】
[図:0001432558000127.jpg]
少なくとも1つの環Fが、
【化7】
[図:0001432558000128.jpg]
であり、
R1およびR2は、1~12個のC原子を有するアルキルであり、ここでは、さらに、1または2個の隣接しないCH2基がO原子が互いに直接結合しない形で-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-、または-COO-により置換されていてもよく、
ZXおよびZyは、-CH2CH2-、-CH=CH-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-CO-O-、-O-CO-、-C2F4-、-CF=CF-、-CH=CH-CH2O-または単結合であり、
L1-4は、F、Cl、OCF3、CF3、CH3、CH2F、CHF2であり、
aは、1または2であり、
bは、0または1であり、そして
fは、1または2である。)
d)1種以上の式IVの化合物
【化8】
[図:0001432558000129.jpg]
(式中、
R41およびR42は、それぞれ互いに独立して、1個~9個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキルもしくはアルコキシアルキル、または2個~9個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルケニルオキシを示し、それら全ては任意にフッ素化されているという意味を有し、
【化9】
[図:0001432558000130.jpg]
若しくは、
[図:0001432558000131.jpg]
を示し、
Z41とZ42は、互いに独立して、そして、もしZ41が2回出現する場合は、これらも互いに独立して、-CH2CH2-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH2O-、-CF2O-、-C≡C-、または単結合を示し、そして
pは、0、1または2を示す。)」の発明である点。
(イ) 相違点
a 相違点1(構成Aに係る相違点)
(a) 部分相違点1_1(構成A_S1a等に係る相違点)
引用発明における「式S1の化合物」が、
本件補正発明においては、「S1aの化合物」に限定されているのに対して、
引用発明においては、式S1-1a、S1-1b、S1-2a、S1-2b、S1-2c、S1-3a又はS1-4aの化合物であり、
濃度が、
本件補正発明においては、「200ppm~10000ppmの範囲内」に限定されているのに対して、
引用発明においては、50ppmから1000ppmの範囲内の濃度である点。
[図:0001432558000132.jpg]
[図:0001432558000133.jpg]
(b) 部分相違点1_2(構成A_S2αに係る相違点)
1種以上の式S2の化合物の合計濃度が、
本件補正発明においては、200ppm~10000ppmの範囲内に限定されているのに対して、
引用発明においては、50ppmから1000ppmの範囲内の濃度である点。
c 相違点2(構成B~構成Eに係る相違点)
(a) 部分相違点2_1(構成Bに係る相違点)
本件補正発明は、「b)式IIおよびIIIの化合物群から選択される1種以上の化合物
【化3】
[図:0001432558000134.jpg]
(式中、
R2及びR3は、それぞれ互いに独立して、1個~9個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキルもしくはアルコキシアルキル、または2個~9個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルケニルオキシを示し、それら全ては任意にフッ素化されているものであり、
【化4】
[図:0001432558000135.jpg]
L21、L22、L31およびL32は、互いに独立して、HまたはFを示し、
X2およびX3は、互いに独立して、ハロゲン、1~3個のC原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ、または2もしくは3個のC原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシを示し、
Z3は、-CH2CH2-、-CF2CF2-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH2O-または単結合を示し、そして
mおよびnは、互いに独立して、0、1、2、または3を示す。)
」における、「R2およびR3」について、
本件補正発明においては、「R2およびR3は、互いに独立して、1~7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ、2~7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニルを示[す]」及び「X2およびX3は、互いに独立して、ハロゲン、1~3個のC原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ、または2もしくは3個のC原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシを示[す]」と限定されているのに対して、
引用発明においては、限定されていない点。
(b) 部分相違点2_2(構成Cに係る相違点)
「式CY、PY、PYP、LY及びYの群から選択される1種以上の化合物
【化5】
[図:0001432558000136.jpg]
[図:0001432558000137.jpg]
(式中、個々の基は、互いに独立して、また、それぞれの出現ごとに、同一または異なり、以下の意味を有し、
【化6】
[図:0001432558000138.jpg]
少なくとも1つの環Fが、
【化7】
[図:0001432558000139.jpg]
であり、
R1およびR2は、1~12個のC原子を有するアルキルであり、ここでは、さらに、1または2個の隣接しないCH2基がO原子が互いに直接結合しない形で-O-、-CH=CH-、-CO-、-OCO-、または-COO-により置換されていてもよく、
ZXおよびZyは、-CH2CH2-、-CH=CH-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-CO-O-、-O-CO-、-C2F4-、-CF=CF-、-CH=CH-CH2O-または単結合であり、
L1-4は、F、Cl、OCF3、CF3、CH3、CH2F、CHF2であり、
aは、1または2であり、
bは、0または1であり、そして
fは、1または2である。)
」について、
本件補正発明は、「L1-4は、Fであ[る]」「式CY、PY、PYPおよびLYの群から選択される1種以上の化合物」であるのに対して、
引用発明は、「L1~4は、F、Cl、OCF3、CF3、CH3、CH2F、CHF2であ[る]」「式Y、CY、PYおよびLYから選択される1種以上の化合物」である点。
(c) 部分相違点2_3(構成Dに係る相違点)
第5 i 部分相違点2_3a
[図:0001432558000140.jpg]
が、
本件補正発明においては、「
[図:0001432558000141.jpg]
」すのに対して、
引用発明においては、
「それぞれ互いに独立して、それぞれの場合に、同一または異なって、
[図:0001432558000142.jpg]
であ[る]」点。
第6 ii 部分相違点2_3b
式IVにおける「R41およびR42」について、
本件補正発明においては、「R41およびR42は、互いに独立して、1~7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ、2~7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニルを示[す]」と限定されているのに対して、
引用発明においては、限定されていない点。
(d) 部分相違点2_4(構成Eに係る相違点)
本件補正発明においては、次の限定があるのに対して、
引用発明においては、このような限定が無い点。
「ただし液晶媒体は、式CCP-V-m、CCP-Vn-m、APUQU-n-F、PGUQU-n-F、CCQU-n-FおよびPYP-n-mの化合物から成る群より選択される少なくとも1種類の化合物を含む。
【化10】
[図:0001432558000143.jpg]
(式中、mは1~7の整数を表す。)
【化11】
[図:0001432558000144.jpg]
(式中、mおよびnは互いに独立に1~7の整数を表す。)
【化12】
[図:0001432558000145.jpg]
(式中、nは1~7の整数を表す。)
【化13】
[図:0001432558000146.jpg]
(式中、nは1~7の整数を表す。)
【化14】
[図:0001432558000147.jpg]
(式中、nは1~7の整数を表す。)
【化15】
[図:0001432558000148.jpg]
(式中、mおよびnは互いに独立に1~7の整数を表す。)」
(4) 判断
ア 相違点1(構成Aに係る相違点)について
(ア) 部分相違点1_1について
a 構成A_S1aについて
構成A_S1aの観点で見ると、本件補正発明は、引用発明におけるS1の下位式であるS1-1a、S1-1b、S1-2a、S1-2b、S1-2c、S1-3a又はS1-4aの7個の選択肢から、S1-1aを選択したものに相当する。
ここで、引用文献1においては、段落【0049】において「最も好ましくは式S1-1aまたはS1-2aの化合物および式S2-1aの化合物をを含む」と記載されているものであり、前記7個の選択肢のうち、S1-1aは優先的に選択される二つの選択肢の一つである。
しかも、かかる選択に起因する作用効果上の顕著な差違(「S1-1a」と残りの6個の選択肢との間での効果上の顕著な差違)があるとは認められない。
したがって、構成A_S1aを選択したことをもって選択発明としての進歩性は認められない。
b 構成A_S1aαについて
「S1aの化合物」の濃度の範囲について、引用発明の「50ppmから1000ppm」に比較して、本件補正発明は「200ppm~10000ppm」であって、広範囲で重複している。
しかも、「200ppm」という下限値の設定に作用効果上の臨界的意義があるとは認められない。
したがって、構成A_S1aαを選択したことをもって選択発明としての進歩性を認めることはできない。
(イ) 部分相違点1_2について(構成A_S2α)
引用発明における「S2の化合物」の濃度の範囲について、引用発明の「50ppmから1000ppm」に比較して、本件補正発明は「200ppm~10000ppm」であって、広範囲で重複している。
しかも、「200ppm」という下限値の設定に作用効果上の臨界的意義があるとは認められない。
したがって、構成A_S2αを選択したことをもって選択発明としての進歩性を認めることはできない。
イ 相違点2(構成B~構成Eに係る相違点)について
(ア) 相違点2_1(構成Bに係る相違点)について
a(a) 式II及びIIIにおける「R2」と「R3」について、引用発明においては、「それぞれ互いに独立して、1個~9個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキルもしくはアルコキシアルキル、または2個~9個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルケニルオキシを示し、それら全ては任意にフッ素化されており」であるのに対して、本件補正発明においては、「互いに独立して、1~7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ、2~7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニルを示[す]」と限定されてはいるものの、大部分は重複している。
(b)i そして、引用文献1の「正の誘電異方性を有するLC混合物」の最初の実施例である実施例10(【0357】~【0359】)には、「式AAおよびBB」「から選択される1種以上の化合物」の具体的例として、APUQU-2-F、DPGU-4-F、PPGU-3-F及びPUQU-3Fが、また、実施例11には、DGUQU-4-F、PGUQU-3-F及びPGUQU-3-Fが記載されており、これらは炭素数は2~4個である。
ii ここで、APUQU-2-F、DPGU-4-F、PPGU-3-F及びPUQU-3F並びにDGUQU-4-F、PGUQU-3-F及びPGUQU-3-Fの具体的な化学構造式及び掲載箇所は、次のとおり(こここで、nは、それぞれ、2、4、3、3並びに4、3、3である。)。
(【0259】参照)
[図:0001432558000149.jpg]
、
(【0264】参照)
[図:0001432558000150.jpg]
(【0265】参照)
[図:0001432558000151.jpg]
(【0265】参照)
[図:0001432558000152.jpg]
(【0262】参照)
[図:0001432558000153.jpg]
(【0265】参照)
[図:0001432558000154.jpg]
」
iii このことからも分かるとおり、式AAおよびBBにおいて「R21、R31」の炭素数は、9個までの範囲のうちでも、7個以下の条件を満たす小さい数のものが具体的に想定されているといえる。
(c) したがって、引用発明において、本件補正発明の構成Bの式II及びIIIにおける「R2」と「R3」と重複する部分を選択したことに起因する作用効果上の顕著な差違の有無を検討するまでもなく、構成Bの式II及びIIIにおける「R2」と「R3」を選択したことをもって選択発明としての進歩性は認められない。
b(a) 式II及びIIIにおける「X2」と「X3」について、引用発明においては、「X0は、F、Cl、1個~6個の炭素原子を有するハロゲン化されたアルキルもしくはアルコキシ、または2個~6個の炭素原子を有するハロゲン化されたアルケニルもしくはアルケニルオキシであり」であるのに対して、本件補正発明においては、「X2およびX3は、互いに独立して、ハロゲン、1~3個のC原子を有するハロゲン化アルキルまたはアルコキシ、または2もしくは3個のC原子を有するハロゲン化アルケニルまたはアルケニルオキシを示し」と限定されてはいるものの、大部分は重複している。
(b)i そして、引用文献1の「正の誘電異方性を有するLC混合物」の最初の実施例である前記実施例10には、APUQU-2-F、DPGU-4-F、PPGU-3-F及びPUQU-3Fが、また、前記実施例11には、DGUQU-4-F、PGUQU-3-F及びPGUQU-3-Fが記載されており、これらの、式AAおよびBBのX0に対応する部分はFである。
ii このことからも分かるとおり、式AAおよびBBにおいて「X0」は、Fが具体的に想定されているといえる。
(c) したがって、引用発明において、本件補正発明の構成Bの式II及びIIIにおける「X2」と「X3」と重複する部分を選択したことに起因する作用効果上の顕著な差違の有無を検討するまでもなく、構成Bの式II及びIIIにおける「X2」と「X3」を選択したことをもって選択発明としての進歩性は認められない。
(イ) 相違点2_2(構成Cに係る相違点)について
a 引用発明は、「L1~4は、F、Cl、OCF3、CF3、CH3、CH2F、CHF2であ[る]」「式Y、CY、PYおよびLYから選択される1種以上の化合物」を含むところ、「L1~4」の点はひとまず置いて検討すると、「式Y、CY、PYおよびLY」の4個の選択肢のうち、式「CY」、「PY」及びLY」の3個は、本件補正発明の要件を満たす。
b(a) 次に、「L1~4」の点について検討する。引用文献1の「正の誘電異方性を有するLC混合物」の最初の実施例である実施例10(【0357】~【0359】)及び実施例13(【0367】~【0369】)においては、それぞれCCY-3-O2、PY-3-O2をLC混合物に配合しているところ、これらは、次の(b)に示す化学構造式を有し、式CY及び式LYにおいて、「L1~2」が「F」のものであり、本件補正発明の構成Bを満たす。
(b) CCY-3-O2及びPY-3-O2の化学構造式及び掲載箇所
nはいずれも3であり、mは2である。
(【0270】参照)
[図:0001432558000155.jpg]
(【0284】参照)
[図:0001432558000156.jpg]
c このことからも理解されるとおり、引用発明においては、「L1~4は、F、Cl、OCF3、CF3、CH3、CH2F、CHF2であ[る]」ところ、「F」は「L1~4」の選択肢として筆頭に挙げられているばかりでなく、引用文献1の実施例10や13にも開示されているものであり、「F」は、「L1~4」の選択肢として最も念頭に置かれている選択肢であるといえる。
d そして、引用発明において、本件補正発明の構成Cと重複する部分を選択したことに起因する作用効果上の顕著な差違があるとは認められない。
e したがって、構成Cを選択したことをもって選択発明としての進歩性は認められない。
(ウ) 相違点2_3(構成Dに係る相違点)について
a 引用発明における式CCの9個の選択肢のうち6個、すなわち、半分以上は、本件補正発明の式IVの要件を満たす。
[図:0001432558000157.jpg]
b 式IVの「R41、R42」について、引用発明においては、「それぞれ互いに独立して、1個~9個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、オキサアルキルもしくはアルコキシアルキル、または2個~9個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルケニルオキシを示し、それら全ては任意にフッ素化されており」であるのに対して、本件補正発明においては、「R2およびR3は、互いに独立して、1~7個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、フッ素化アルキルまたはフッ素化アルコキシ、2~7個のC原子を有するアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシアルキルまたはフッ素化アルケニルを示[す]」と限定されてはいるものの、大部分は重複している。
c(a) そして、引用発明の「式CC」「から選択される1種以上の化合物」として、引用文献1の実施例10~15においては、CCP-V-1又はCCP-V2-1をLC混合物に配合しており、これは、次の(b)に示す化学構造式を有しており、本件補正発明の構成Dを満たすものである。
(b) CCP-V-1及びCCP-V2-1の化学構造式及び掲載箇所
nはそれぞれ0、2(炭素数はそれぞれ2、4)であり、mは1である。
(【0260】参照)
[図:0001432558000158.jpg]
(c) このことからも分かるとおり、分子に酸素が含まれず、式IVにおいて「R41、R42」の炭素数が9個までの範囲のうちでも炭素数が7以下の条件を満たす小さい数のものが具体的に想定されているといえる。
d したがって、引用発明において、本件補正発明の構成Dと重複する部分を選択したことに起因する作用効果上の顕著な差違の有無を検討するまでもなく、構成Dを選択したことをもって選択発明としての進歩性は認められない。
(エ) 相違点2_4(構成Eに係る相違点)について
前記(ア)において検討したとおり、引用文献1の「正の誘電異方性を有するLC混合物」の最初の実施例である実施例10(【0357】~【0359】)には、「式AAおよびBB」「から選択される1種以上の化合物」の具体的例として、APUQU-2-Fが、また、実施例11には、PGUQU-3-F記載されており、これらは構成Eの要件を満たす。
また、前記(ウ)において検討したとおり、引用文献1の実施例10~15においては、CCP-V-1又はCCP-V2-1をLC混合物に配合しており、これらは構成Eの要件を満たす。
これらの材料を包含することは、当業者にとっては適宜選択し得る設計上の事項にすぎず、構成Eを選択したことに起因する予測困難かつ格別顕著な効果を認めることはできないから、相違点2_4をもって進歩性を認めることはできない。
ウ 総合評価
前記ア及びイにおいて検討したとおり、引用発明において、前記相違点1及び相違点2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、前記相違点1及び相違点2を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難でありかつ格別顕著である効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 請求人の主張について
(ア)a 請求人は、引用文献1の実施例12及び15においては光安定剤S1-1aが採用されているが、その濃度は100ppmと本願に比して有意に低いものである旨主張する。
b しかしながら、前記ア(ア)で説示したように、引用発明において、「式S1-1aの化合物」の濃度として「200ppmから1000ppmの範囲」を選択したことに進歩性が認められないことは、前記ア(ア)において検討したとおりであるから、請求人の主張は、前記ウの結論を左右するものではない。
(イ)a また、請求人は、当業者が引用文献1に接したとしても、本願式S2と組み合わせて高濃度の本願式S1aの採用を想到し本願発明に至ることは困難である旨主張する。
b しかしながら、引用発明はそもそも安定化剤S2a(本件補正発明の式S2の化合物に相当)を添加しているものであるから、請求人の主張は、前記ウの結論を左右するものではない。
(ウ)a さらに、請求人は、本願実施例においては本願式S2の特定のフェノール系酸化防止剤と組み合わせて高濃度の本願式S1aを採用することで格段の安定化効果が奏されることが十分に確認され、そして、この格段の効果は当業者が引用文献1から予見できる範囲を遥かに超えるものである旨主張する。
b しかしながら、引用文献1の【0049】には「式S1の化合物は、紫外線ストレスに対してディスプレイ中のLC媒体を保護するための光安定化剤として特に適している。式S2の化合物は、高温ストレスに対してディスプレイ中のLC媒体を保護するための熱安定化剤として特に適している。」と記載されていることから、引用発明において、高い範囲の安定化剤S1-1a及び安定化剤S2aを採用すれば、紫外線ストレス及び高温ストレスに対してディスプレイ中のLC媒体を保護する効果を有するといえるので、前記ウで説示したように、本件補正発明が奏する効果としては、当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、請求人の主張は、前記ウの結論を左右するものではない。
(エ)a さらにまた、請求人は、本件補正発明は、構成Eを必須の構成要件としたところ、引用文献1には、構成Eの特定の化合物を特に採用することは記載も示唆もされていない旨主張する。
b しかし、構成Eの特定をもっても進歩性が認められないことは、前記(エ)のとおりであるから、請求人の主張は前記ウの結論を左右するものではない。
(オ)a 請求人は、本願実施例においては、構成Eの特定の化合物を採用することで格段の安定化効果が奏されることが十分に確認されており、この格段の効果は当業者が引用文献1から予見できる範囲を遥かに超えるものである旨主張している。
b しかしながら、構成Eの限定の有無により作用効果上の格別顕著な差違があることは、明細書の発明の詳細な説明の開示からは認識することができないから、請求人の主張は採用できない。
オ 独立特許要件の判断のまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
4 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記3(4)オのとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に対する拒絶の理由のうち理由2(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。
理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2017-214552号公報
3 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
引用文献1に記載された事項及び引用発明は、前記第2の3(2)において示したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明から、前記第2の2(1)のアからウに示した限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(4)において説示したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-008031