特許拒絶査定不服審判
2024-012493
α型サイアロン蛍光体、発光部材、および発光装置
- 審判番号
- 2024-012493
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-520671
- 請求日
- 2024年07月31日
- 審決日
- 2026年02月27日
- 公報発行日
- 2026年05月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】デンカ株式会社
- 【請求人代理人】速水 進治
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 吉野 三寛
- 審判官 野村 伸雄
- 分類
- P18 .121-Z (C09K) / P18 .537-Z (C09K) / P18 .575-Z (C09K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条、特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-520671「α型サイアロン蛍光体、発光部材、および発光装置」拒絶査定不服審判事件〔令和2年11月26日国際公開、WO2020/235297〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)4月24日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 令和元年5月23日(以下「優先日」という。))、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和6年 2月28日付け:拒絶理由通知書
同年 4月10日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 6月19日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月25日 :原査定の謄本の送達)
同年 7月31日 :審判請求書及び手続補正書の提出
第2 令和6年7月31日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年7月31日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和6年7月31日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであって、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和6年4月10日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前
「α型サイアロン粒子を含むα型サイアロン蛍光体であって、
レーザー回折散乱法で測定される当該α型サイアロン蛍光体の体積頻度粒度分布において、累積値が5%となる粒子径をD5、50%となる粒子径をD50、98%となる粒子径をD98としたとき、
((D98-D5)/D50)が、1.00以上8.00以下であり、
D50が1.0μm以上9.0μm以下であり、及び、
下記の手順に従って測定される波長が455nmの励起光に対する内部量子効率が75%以上であり、
前記α型サイアロン粒子が、下記の一般式(1)で表されるEu元素を含有するα型サイアロンで構成される、
α型サイアロン蛍光体。
(M)m(1-x)/p(Eu)mx/2(Si)12-(m+n)(Al)m+n(O)n(N)16-n ・・一般式(1)
(上記一般式(1)中、MはLi、Mg、Ca、Y及びランタニド元素(LaとCeを除く)からなる群から選ばれる1種以上の元素を表し、pはM元素の価数、0<x<0.5、1.5≦m≦4.0、0≦n≦2.0を表す。)
(手順)
(1)当該α型サイアロン蛍光体を試料として用い、その試料を凹型セルに表面が平滑になるように充填する。その凹型セルを積分球の開口部に取り付けた後、積分球内に、発光光源から所定波長の単色光を、励起光として導入する。
25℃において、凹型セル内の試料に励起光を照射し、試料からのスペクトルを分光光度計で測定する。得られたスペクトルデータから、励起反射光フォトン数(Qref)及び蛍光フォトン数(Qem)を算出する。
(2)凹型セルの代わりに、反射率が99%の標準反射板を使用した以外は、上記(1)と同様にして、標準反射板を積分球の開口部に取り付け、励起光を標準反射板に照射し、波長455nmの励起光のスペクトルを測定し、得られたスペクトルデータから、励起光フォトン数(Qex)を算出する。
下記式に基づいて、上記の内部量子効率を求める。
内部量子効率(%)=(Qem/(Qex-Qref))×100」
(2) 本件補正後
「α型サイアロン粒子を含むα型サイアロン蛍光体であって、
レーザー回折散乱法で測定される当該α型サイアロン蛍光体の体積頻度粒度分布において、累積値が5%となる粒子径をD5、50%となる粒子径をD50、98%となる粒子径をD98としたとき、
((D98-D5)/D50)が、4.00以上7.30以下であり、
D50が3.0μm以上9.0μm以下であり、及び、
下記の手順に従って測定される波長が455nmの励起光に対する内部量子効率が75%以上であり、
前記α型サイアロン粒子が、下記の一般式(1)で表されるEu元素を含有するα型サイアロンで構成される、
α型サイアロン蛍光体。
(M)m(1-x)/p(Eu)mx/2(Si)12-(m+n)(Al)m+n(O)n(N)16-n ・・一般式(1)
(上記一般式(1)中、MはCa元素を表し、pはM元素の価数、0<x<0.5、1.5≦m≦4.0、0≦n≦2.0を表す。)
(手順)
(1)当該α型サイアロン蛍光体を試料として用い、その試料を凹型セルに表面が平滑になるように充填する。その凹型セルを積分球の開口部に取り付けた後、積分球内に、発光光源から所定波長の単色光を、励起光として導入する。
25℃において、凹型セル内の試料に励起光を照射し、試料からのスペクトルを分光光度計で測定する。得られたスペクトルデータから、励起反射光フォトン数(Qref)及び蛍光フォトン数(Qem)を算出する。
(2)凹型セルの代わりに、反射率が99%の標準反射板を使用した以外は、上記(1)と同様にして、標準反射板を積分球の開口部に取り付け、励起光を標準反射板に照射し、波長455nmの励起光のスペクトルを測定し、得られたスペクトルデータから、励起光フォトン数(Qex)を算出する。
下記式に基づいて、上記の内部量子効率を求める。
内部量子効率(%)=(Qem/(Qex-Qref))×100」
2 補正の目的
(1) 請求項1についてする補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項について、次のア~ウの限定をするものである。
ア 「(D98-D5)/D50」の数値範囲について、本件補正前の「1.00以上8.00以下」を「4.00以上7.30以下」に限定すること。
イ 「D50」の数値範囲について、本件補正前の「1.0μm以上9.0μm以下」を「3.0μm以上9.0μm以下」に限定すること。
ウ 「M」について、本件補正前の「Li、Mg、Ca、Y及びランタニド元素(LaとCeを除く)からなる群から選ばれる1種以上の元素」を「Ca元素」に限定すること。
(2) そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
(3) したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
3 本件補正発明の認定と本願明細書の記載
本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合すること、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであることが必要であるところ、本章の(1)において本件補正発明を認定し、(2)において明細書の開示を確認する。そして、次章4において特許法36条6項1号の要件の充足について検討し、章を改め5において同法29条2項の要件の充足について検討する。
(1) 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を、次のとおり構成Xと構成A~Cまでに分説する。
<本件補正発明の分説>
(構成X) α型サイアロン粒子を含むα型サイアロン蛍光体であって、
(構成A1) レーザー回折散乱法で測定される当該α型サイアロン蛍光体の体積頻度粒度分布において、累積値が5%となる粒子径をD5、50%となる粒子径をD50、98%となる粒子径をD98としたとき、
((D98-D5)/D50)が、4.00以上7.30以下であり、
(構成A2) D50が3.0μm以上9.0μm以下であり、
(構成B) 下記の手順に従って測定される波長が455nmの励起光に対する内部量子効率が75%以上であり、
(手順)
(1)当該α型サイアロン蛍光体を試料として用い、その試料を凹型セルに表面が平滑になるように充填する。その凹型セルを積分球の開口部に取り付けた後、積分球内に、発光光源から所定波長の単色光を、励起光として導入する。
25℃において、凹型セル内の試料に励起光を照射し、試料からのスペクトルを分光光度計で測定する。得られたスペクトルデータから、励起反射光フォトン数(Qref)及び蛍光フォトン数(Qem)を算出する。
(2)凹型セルの代わりに、反射率が99%の標準反射板を使用した以外は、上記(1)と同様にして、標準反射板を積分球の開口部に取り付け、励起光を標準反射板に照射し、波長455nmの励起光のスペクトルを測定し、得られたスペクトルデータから、励起光フォトン数(Qex)を算出する。
下記式に基づいて、上記の内部量子効率を求める。
内部量子効率(%)=(Qem/(Qex-Qref))×100
(構成C) 前記α型サイアロン粒子が、下記の一般式(1)で表されるEu元素を含有するα型サイアロンで構成される、
(M)m(1-x)/p(Eu)mx/2(Si)12-(m+n)(Al)m+n(O)n(N)16-n ・・一般式(1)
(上記一般式(1)中、MはCa元素を表し、pはM元素の価数、0<x<0.5、1.5≦m≦4.0、0≦n≦2.0を表す。)
(構成X) α型サイアロン蛍光体。
(2) 本願明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。下線は当合議体による。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、α型サイアロン蛍光体、発光部材、および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでα型サイアロン蛍光体において様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、α型サイアロン蛍光体の組成成分を調整する技術が記載されている(特許文献1の請求項1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-124527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載のα型サイアロン蛍光体において、外部量子効率の点で改善の余地があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
近年、α型サイアロン蛍光体を用いた発光装置について小型化の開発が進められている。それに伴い、α型サイアロン粒子の小粒径化が要求されている。
しかしながら、α型サイアロン粒子の粒子径における検討は、いまだ十分なものとは言えない。
【0006】
本発明者は粒子径に着眼して検討したところ、適度に小粒子径化したα型サイアロン粒子に含まれる微粉を適切に除去することで、そのようなα型サイアロン粒子を含むα型サイアロン蛍光体の外部量子効率を向上できることを見出した。また、波長が455nmの励起光に対する内部量子効率が75%以上のα型サイアロン蛍光体を用いることでさらに外部量子効率を向上できる。
【0007】
このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、レーザー回折散乱法で測定されるα型サイアロン蛍光体の体積頻度粒度分布において、累積値が5%となる粒子径をD5、50%となる粒子径をD50、98%となる粒子径をD98としたときの、((D98-D5)/D50)を指標とすることで、微粉が除去されたα型サイアロン粒子の性状について安定的に評価することができ、かかる指標の((D98-D5)/D50)を適切な数値範囲内とするとともに、内部量子効率が所定値以上のものを用いることにより、α型サイアロン粒子を含むα型サイアロン蛍光体の外部量子効率を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
…(中略)…
【0010】
また本発明によれば、上記の発光部材を備える、発光装置が提供される。」
「【発明を実施するための形態】
…(中略)…
【0017】
本発明者の知見によれば、適度に小粒子径化したα型サイアロン粒子に含まれる微粉を適切に除去することで、そのようなα型サイアロン粒子を含むα型サイアロン蛍光体の外部量子効率を向上できることが見出された。そして、((D98-D5)/D50)を指標とすることで、微粉が除去されたα型サイアロン粒子の性状について安定的に評価することができ、かかる指標の((D98-D5)/D50)を適切な数値範囲内とすることにより、α型サイアロン粒子を含むα型サイアロン蛍光体の外部量子効率を向上できることが判明した。
【0018】
詳細なメカニズムは定かではないが、粒子の微細化処理などで生じた微粉は、比表面積が比較的大きく、反射が多くなる、また結晶欠損を比較的多く含むため、このような微粉を除去することによって、455nmの内部量子効率および反射率を向上できるため、455nmの外部量子効率を高められる、と考えられる。
【0019】
((D98-D5)/D50)の上限は、8.00以下、好ましくは7.70以下、より好ましくは7.30以下である。これにより、適切に微粉が除去されたα型サイアロン粒子を含むα型サイアロン蛍光体において、外部量子効率を向上させることが可能である。
【0020】
一方、((D98-D5)/D50)の下限は、例えば、1.00以上、好ましくは3.00以上、より好ましくは4.00以上である。これにより、適度に小粒子化したα型サイアロン粒子を含むα型サイアロン蛍光体において、700nmにおける吸収率を低減することが可能となる。
【0021】
また、((D98-D5)/D50)を上記数値範囲内とすることで、455nmの蛍光強度や光吸収率を向上させることができる。
【0022】
D50は、例えば、1.0μm~10.0μm、好ましくは2.5μm~9.0μm、より好ましくは3.0μm~9.0μmである。D50を上記上限値以下とすることにより、適度に小粒子化したα型サイアロン粒子を含むα型サイアロン蛍光体を実現できる。D50を上記下限値以上とすることにより、455nmの蛍光強度を向上させることができる。
…(中略)…
【0028】
本実施形態によれば、((D98-D5)/D50)が所定範囲内となり、455nmの内部量子効率が所定値以上となるα型サイアロン蛍光体を用いることで、外部量子効率を向上できるため、輝度に優れた発光装置を実現できる。また、小型化した発光装置に適当に用いられるα型サイアロン蛍光体を提供できる。」
「【実施例】
…(中略)…
【0060】
[表1]
[図:0001434719000001.jpg]
…(中略)…
【0068】
実施例1~3のα型サイアロン蛍光体は、比較例1,2と比べて外部量子効率に優れており、さらには蛍光強度、455nmの光吸収率に優れることが分かった。したがって、実施例1~3のα型サイアロン蛍光体を用いることで、輝度に優れた発光装置を実現できる。」
4 独立特許要件の判断その1(特許法36条6項1号)
(1) 本件課題について
本件補正発明が解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)は、前記3(2)に摘記した本願明細書の発明の詳細な説明の記載(特に【0004】及び【0007】参照)によれば、「α型サイアロン蛍光体における外部量子効率を向上すること」と認められる。
(2) 本件補正発明における本件課題を解決する手段について
本件補正発明は、本件課題を解決するための手段として、本件補正発明の構成を特定しているところ、本願明細書の発明の詳細な説明の記載(特に【0007】、【0017】~【0020】及び【0028】等参照)を参酌すると、構成A1の、「(D98-D5)/D50」が「4.00以上7.30以下であ[る]」ことを、その主たる解決手段としている。
(3) 検討
本件補正発明が、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か検討する。
ア 作用(メカニズム)について
本願明細書の【0006】の「本発明者は粒子径に着眼して検討したところ、適度に小粒子径化したα型サイアロン粒子に含まれる微粉を適切に除去することで、そのようなα型サイアロン粒子を含むα型サイアロン蛍光体の外部量子効率を向上できることを見出した。」との記載や【0017】~【0020】等の記載を参酌すると、【0060】の表1に記載の実施例が比較例に対して外部量子効率が向上したのは、微粉が適切に除去されたことに起因するであろうことが理解できる。
[図:0001434719000002.jpg]
イ 「(D98-D5)/D50」で特定することの妥当性
微粉除去とは微粉(微少粒子径の粒子)が除かれることであるから、指標を用いて微粉除去を技術的に特定しようとするのであれば、微粉とされる粒子径の小さい粒子が体積頻度粒度分布において占める割合が小さいこと、すなわち、粒子の体積頻度粒度分布において、例えば、D5(累積値が5%となる粒子径)やD1、D10等が所定値以上であることを微粉除去の指標として用いることが最も自然な発想であり、技術常識であるともいえる。
また、別法として、D50を特定の値に特定した上で、「D5/D50」等を指標として用いることが考えられる。
しかるに、本件補正発明は微粉除去の指標として「(D98-D5)/D50」を用いているところ、この値は、D5が小さくても、その分D98が小さければ同じ値となるから、「(D98-D5)/D50」の値が同じであっても微粉除去の程度が同じであることとはならず、「(D98-D5)/D50」は微粉除去の指標として適切でないことは明らかである。
したがって、出願時の技術常識に照らし、本件補正発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができないから、本件補正発明は、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。
(4) 独立特許要件の判断その1(特許法36条6項1号)のまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法36条6項1号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
5 独立特許要件の判断その2(特許法29条2項)
(1) 各引用文献に記載された事項及び引用発明等の認定
ア 引用文献2に記載された事項及び引用発明の認定
(ア) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、優先日前に発行された文献である国際公開第2010/087348号(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(ウ)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
a 請求の範囲
「[請求項1] 一般式:(M)x(Eu)y(Si,Al)12(O,N)16但し、MはLi、Mg、Ca、Y及びランタニド元素(LaとCeを除く。)からなる群から選ばれ、少なくともCaを含む1種以上の元素)で示されるα型サイアロンであり、酸素含有量が1.2mass%以下であり、α型サイアロンを構成する一次粒子が柱状化している、α型サイアロン蛍光体。
…(中略)…。
[請求項5] 請求項1又は2記載のα型サイアロン蛍光体を解砕又は粉砕することにより得られる粉末状のα型サイアロン蛍光体であって、レーザー回折散乱法によって測定した粒子径分布50体積%径(D50)が5μm以上20μmである、α型サイアロン蛍光体。
…(後略)」
b 背景技術、発明の概要等
「発明の名称:α型サイアロン蛍光体、その製造法及び発光装置
技術分野
[0001] 本発明は、紫外線乃至青色光で励起され、橙色乃至赤色光を発するα型サイアロン蛍光体、その製造法及びα型サイアロン蛍光体を利用した発光装置に関する。
背景技術
[0002] 窒化物、酸窒化物蛍光体として、α型サイアロン蛍光体は、蛍光発光効率だけでなく、温度特性に優れることが知られている。特にユーロピウムを付活したα型サイアロン蛍光体は、紫外乃至青色の幅広い波長域で励起され、黄~橙色の発光を生ずることから、YAG:Ceに代わる黄色蛍光体或いは色温度の低い電球色LED(Light Emitting Diode)用蛍光体としての適用が検討されている(特許文献1,2、非特許文献1)。
[0003] α型サイアロンは、α型窒化ケイ素結晶のSi-N結合が部分的にAl-N結合とAl-O結合で置換され、電気的中性を保つために、結晶格子間に特定の元素(Ca、並びにLi、Mg、Y、又はLaとCeを除くランタニド元素)が侵入固溶した構造を有している。侵入固溶する元素の一部が発光中心の元素となることにより蛍光特性が発現する。
α型サイアロンは、例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム及び発光中心を含む侵入固溶元素の酸化物からなる混合粉末を窒素雰囲気中で加熱処理して合成することができる。なお、侵入固溶元素の酸化物としては、加熱処理により酸化物となる化合物も含まれる。この合成方法では、酸化物原料を使用しているために、必然的に、ある程度の酸素が固溶したα型サイアロンが合成されることなる。Ca及び発光中心としてEuが固溶した蛍光特性の優れるα型サイアロン蛍光体の場合、酸素がある程度固溶したα型サイアロンの発光色は、黄~橙色(蛍光ピーク波長が580nm前後)となる。
[0004] これに対して、カルシウム原料として、窒化カルシウムを使用して合成した酸素含有率の低いα型サイアロンは、前記したような公知のα型サイアロンよりも、高濃度のカルシウムの固溶が可能となる。特にCa固溶濃度が高い場合、酸化物原料を使用した従来組成よりも高波長側(595nm以上)に蛍光ピーク波長を有する蛍光体が得られることが知られている(特許文献3)。また、α型サイアロンではないが、酸素含有量の低い窒化物蛍光体が報告されている(特許文献4)。
先行技術文献
特許文献
[0005] 特許文献1:特許第3668770号公報
特許文献2:特開2003-124527号公報
特許文献3:特開2005-307012号公報
特許文献4:特開2006-28295号公報
非特許文献
[0006] 非特許文献1:Ken Sakuma et al. “Warm-white light-emitting diode with yellowish orange SiAlON ceramic phosphor”, OPTICS LETTERS, 29(17), 2001-2003(2004)
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0007] 本発明の第一の目的は、595nm以上の波長に蛍光ピークを有する酸素含有率の低いα型サイアロン蛍光体であって、従来よりも発光効率に優れた蛍光体を提供することにある。本発明の第二の目的は、蛍光特性に優れ、一次粒子が大きく結晶性の良いα型サイアロン蛍光体を製造する方法を提供することである。第三には、このα型サイアロン蛍光体を利用した発光特性の良好な発光装置を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0008] 本発明者らは、Eu2+を付活した酸素含有率の低いCa-α-サイアロン蛍光体粉末の製造に関し、窒化カルシウム原料粉末に着目し検討を行った。その結果、窒化カルシウム粉末に含まれる不純物である酸素がα型サイアロンの粒成長挙動に大きな影響を及ぼすことを見出した。この知見に基づき、さらに研究を進めたところ、カルシウムに由来する酸素量を適正な範囲とすることにより、高アスペクト比で粒子径が大きく、表面が平滑な粒子から構成される蛍光体を得ることが可能となった。そして、ほぼ単一の結晶からなる一次粒子を発達させた、高アスペクト比で粒子径が大きく、表面が平滑な粒子からなるα型サイアロン蛍光体は優れた蛍光特性を有することを見出し、本発明に至ったものである。
[0009] 即ち、本発明は、一般式:(M)x(Eu)y(Si,Al)12(O,N)16(但し、MはLi、Mg、Ca、Y及びLaとCeを除くランタニド元素からなる群から選ばれる少なくともCaを含む1種以上の元素)で示されるα型サイアロンであって、酸素含有量が1.2mass%以下であり、α型サイアロンを構成する一次粒子が柱状化していることを特徴とするα型サイアロン蛍光体である。好ましくは、一次粒子の平均アスペクト比が2以上50以下であるα型サイアロン蛍光体である。
[0010] また、前記蛍光体を構成するα型サイアロンの格子定数aは、0.785~0.800nm、格子定数cが0.570~0.580nmの範囲にあり、Eu含有量が0.2~1.7mass%であることを特徴とするα型サイアロン蛍光体である。好ましくは、250~500nmの波長を持つ紫外線又は可視光を励起源として照射することにより、595~630nmの範囲の波長域にピークを持つ蛍光特性を示すことを特徴とするα型サイアロン蛍光体である。
[0011] 本発明のα型サイアロン蛍光体は、前記α型サイアロンを解砕又は粉砕することにより得られる粉末状のα型サイアロン蛍光体であって、レーザー回折散乱法によって測定した粒子径分布50体積%径(D50)が5μm以上20μm以下である。好ましくは、レーザー回折散乱法によって測定した粒子径分布10%体積径(D10)が2μm以上15μm以下、かつ粒子径分布90%体積径(D90)が6μm以上50μm以下である。
[0012] 本発明のα型サイアロン蛍光体の製造方法は、一般式:(M)x(Eu)y(Si,Al)12(O,N)16(但し、MはLi、Mg、Ca、Y及びランタニド元素(LaとCeを除く。)で表されるα型サイアロンの製造法において、CaO/Ca3N2(mol比)を0.04~0.3の範囲に調整したCa原料を加熱処理して焼成することを特徴とする。
[0013] また、本発明は光源と、光源からの光の照射を受けることによって可視光を発する1種以上の蛍光体とを備えた発光装置において、少なくとも前記の蛍光体を用いることを特徴とする発光装置である。
発明の効果
[0014] 本発明の酸素含有率の低いα型サイアロン蛍光体は、一次粒子が大きく、結晶性が良いことから、蛍光特性に優れるとともに、高アスペクト比であるため粒子間の焼結力が弱く、解砕・粉砕処理により、二次粒子を容易に解離することが可能である。したがって、粒度調整工程での粉砕による結晶欠陥生成を抑制することができるため、本発明のα型サイアロン蛍光体によれば、粉末状としても初期の優れた蛍光特性を維持することができる。
本発明の製造法により、蛍光特性に優れ、一次粒子が大きく、結晶性が良く、そして優れた蛍光特性を有するα型サイアロン蛍光体を得ることができる。
また、本発明の発光装置は、本発明の優れた蛍光特性を有するα型サイアロン蛍光体を用いているので、良好な発光特性が得られる。」
c 発明を実施するための形態
「[0023] 本発明者らは、発光特性と粒子性状との関係を検討し、α型サイアロンを柱状粒子化することにより、発光特性が向上するという知見を得て、本発明に至ったものである。
[0024] 即ち、本発明の蛍光体は、一次粒子が柱状化していることを特徴とする。柱状化した粒子は、単結晶に近い状態であり、かつ結晶性に優れるため、欠陥等の光吸収を抑制できる。また、柱状化した粒子は、接触面積が少なくなるため、粒子同士の焼結を抑制する効果を有する。白色LED等では、蛍光体は樹脂に分散して使用されるため、適度な粒度にする必要がある。等軸状粒子から構成された二次粒子からなるα型サイアロンは、蛍光体として要求される粒度よりも大きいために、粉砕・分級処理が必要となる。
二次粒子は非常に強固であり、強力な粉砕を必要とするだけでなく、粉砕過程で発光特性に悪影響を及ぼす欠陥が生じてしてしまう。本発明の蛍光体は、一次粒子間の結合が弱いために、弱い粉砕力で欠陥生成を極力抑えて、一次粒子をバラバラにすることができ、粒度調整における発光特性の低減を抑制することができる。
…(中略)…
[0037] 蛍光体の粒度分布としては、レーザー回折散乱法によって測定したD50が5~20μm、D10が2~15μm、かつD90が6~50μmの範囲とすることにより、良好な蛍光特性が得られ、LED用蛍光体として好適に適用することができる。」
d 実施例
「実施例1
[0040] 以下、実施例、比較例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。
[0041]<実施例1、比較例1>
高純度化学研究所社製の窒化カルシウム粉末を窒素雰囲気下のグローブボックス内で開封し、酸素/窒素分析用のスズカプセルに窒化カルシウム粉末を充填し、秤量した後、スズカプセルを密閉容器に入れ、グローブボックスから取り出した。窒化カルシウム粉末を充填したスズカプセルを速やかにLECO社製の酸素窒素同時分析装置(TC-436)にセットし、酸素含有量の分析を行った。製造ロットの異なる窒化カルシウム粉末の酸素含有量を測定し、酸素含有量が1.1mass%の窒化カルシウム粉末(1)と酸素含有量が0.3mass%の窒化カルシウム粉末(2)を得た。
[0042] 宇部興産社製の窒化ケイ素粉末(E10グレード)71.6質量%、トクヤマ社製の窒化アルミニウム粉末(Eグレード)質量25.8%、及び信越化学工業社製の酸化ユーロピウム粉末2.6質量%を配合した原料粉末をエタノール溶媒中において、窒化ケイ素質ポットとボールによる湿式混合を1時間行った。得られたスラリーを吸引濾過し、溶媒を除去して乾燥し、予混合粉末を得た。
[0043] 次に、この予混合粉末を窒素雰囲気下のグローブボックス内に入れ、前記窒化カルシウム粉末(1)とを乳鉢で混合し、これを実施例1の原料混合粉末とした。また、前記予混合粉末と前記窒化カルシウム粉末(2)とを乳鉢で混合し、これを比較例1の原料混合粉末とした。混合比は、実施例1及び比較例1の何れも予混合粉末:窒化カルシウム粉末=87.1:12.9質量比とした。CaO/Ca3N2比は実施例1が0.096、比較例1が0.028であった。
[0044] 前記原料混合粉末を、同じくグローブボックス内で、目開き250μmの篩を通過させた後、窒化ホウ素質の坩堝に充填し、カーボンヒーターの電気炉で大気圧窒素雰囲気中、1750℃で16時間の加熱処理を行った。原料混合粉末に含まれる窒化カルシウムは、空気中で容易に加水分解しやすいので、原料混合粉末を充填した坩堝はグローブボックスから取り出した後、速やかに電気炉にセットして、直ちに真空排気し、窒化カルシウムの反応を防止した。実施例1の方が焼成過程での重量減少量が多かった。
[0045] 実施例1及び比較例1で加熱処理して得られた合成物をそれぞれ乳鉢で軽く解砕し、目開き150μmの篩を全通させ、蛍光体粉末を得た。CuKα線を用いた粉末X線回折測定により、結晶相を調べたところ、実施例1及び比較例1の蛍光体ともに、存在する結晶相はα型サイアロン単相であった。
[0046] XRD回折による格子定数の測定方法は特に限定されるものではない。例えば、サンプルを内部標準物質とともに混合粉砕し、X線回折装置を用いて測定する方法がある。内部標準物質としては酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、シリコン等が一般的であるが、サンプルのピークと重ならないものが好ましい。X線回折測定後、格子定数解析ソフトを用いて格子定数の精密化を行う。解析ソフトとしては、リガク社製のJADE等が挙げられる。本発明の格子定数の測定については、JIS K0131に準拠した。その結果、実施例1のα型サイアロンの格子定数aは0.7929nm、格子定数cは0.5754nmであり、比較例1の格子定数aは0.7919nm、格子定数cは0.5746nmであった。
[0047] 前記蛍光体粉末について、走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行った。実施例1及び比較例1のSEM像をそれぞれ図1、図2に示す。実施例1の蛍光体は一次粒子径(短軸径)が3~5μm程度の柱状粒子からなっており、その分布は比較的狭い。SEM像では、個々の一次粒子の長軸径及び短軸径が容易に求められ、算出されたアスペクト比(長軸径/短軸径)は平均4.2であった。一方、比較例1の蛍光体は、アスペクト比の比較的小さな複数の粒子が強固に焼結した二次粒子から構成されている。SEM像では二次粒子を構成する表面の粒子情報しか得られないが、それより求めた平均アスペクト比は1.4であった。CaO/Ca3N2比が0.04より小さい比較例1では、平均アスペクト比が2以下となっている。すなわち、CaO/Ca3N2比が小さくなると、平均アスペクト比が小さくなる傾向があることが分かる。
[0048] O/N分析装置及びICP発光分光分析法により測定した酸素及びEu含有量は、実施例1が0.78及び1.2質量%で、比較例1が0.98及び1.7質量%であった。
[0049] 次に、日立ハイテクノロジーズ社製分光蛍光光度計(F4500)を用いて、励起スペクトルの測定を行った。図3に実施例1の蛍光体の励起スペクトルを示す。本発明の蛍光体は、紫外~可視の幅広い波長域で励起される。特に波長400~470nmで効率良く励起されることから、近紫外及び青色LEDを励起源とする発光装置に適している。また、上述の分光蛍光光度計により、青色光励起(波長455nm)における蛍光スペクトルのピーク強度とピーク波長及び半値幅を求めた。ピーク強度は測定装置や条件により変化するため、実施例1のピーク強度を100とした場合の相対値で表す。実施例1のピーク強度、ピーク波長及び半値幅は、それぞれ100、601nm、84nmであり、比較例1はそれぞれ88、605nm、85nmであった。一次粒子が柱状化し、平均アスペクト比が2以下だと蛍光強度が低いことがわかる。
実施例2
[0050] 宇部興産社製の窒化ケイ素粉末(E10グレード)71.1質量%、トクヤマ社製の窒化アルミニウム粉末(Eグレード)25.7質量%、炭酸カルシウム粉末(和光純薬社、特級試薬)0.7質量%、及び信越化学工業社製の酸化ユーロピウム粉末2.5質量%を配合した原料粉末をエタノール溶媒中において、窒化ケイ素質ポットとボールによる湿式混合を1時間行った。得られたスラリーを吸引濾過し、溶媒を除去して乾燥し、予混合粉末を得た。次に、この予混合粉末を窒素雰囲気下のグローブボックス内に入れ、前記窒化カルシウム粉末(2)と乳鉢混合し、原料混合粉末を得た。混合比は予混合粉末:窒化カルシウム粉末=87.6:12.4質量比とした。この配合比は、窒化カルシウム不純物酸素を酸化カルシウムと仮定した場合に実施例1と同じになるものである。CaO/Ca3N2比は、0.102であった。なお、CaO/Ca3N2比を求めるに当たり、炭酸カルシウム(CaCO3)は酸化カルシウム(CaO)に分解すると仮定して計算した。
[0051] この原料混合粉末を実施例1と同様の処理を行い、蛍光体粉末を得た。粉末X線回折測定の結果から、存在する結晶相はα型サイアロン単相であり、その格子定数aは0.7927nm、格子定数cは0.5752nmであった。酸素及びEu含有量は、0.89及び1.3質量%であった。
[0052] 実施例2で得た蛍光体粉末のSEM像を図4に示す。蛍光体は粒子径(短軸径)がおおよそ3~5μmの柱状粒子からなっており、粒子径の分布は比較的狭い。SEM像から求めた蛍光体を構成する一次粒子の平均アスペクト比は3.9であった。波長455nm励起における蛍光スペクトルのピーク強度、ピーク波長及び半値幅はそれぞれ98、601nm、84nmであった。
[0053]<比較例2>
原料粉末の配合組成として、宇部興産社製の窒化ケイ素粉末(E10グレード)58.4質量%、トクヤマ社製の窒化アルミニウム粉末(Eグレード)15.1質量%、炭酸カルシウム粉末(和光純薬社、特級試薬)24.4質量%、及び信越化学工業社製の酸化ユーロピウム粉末2.1質量%を配合した原料粉末をエタノール溶媒中において、窒化ケイ素質ポットとボールによる湿式混合を1時間行ってスラリーを得た。得られたスラリーを吸引濾過し、溶媒を除去し、乾燥して原料混合粉末を得た。この配合比は実施例1の窒化カルシウムを炭酸カルシウムで置き換えたものである。この原料混合粉末を実施例1と同様の処理を行った。焼成後の蛍光体は焼結による著しく収縮した。目開き150μmの篩を全通するまで、乳鉢による粉砕処理を行った。得られた蛍光体粉末は、粉末X線回折測定の結果、結晶相として、α型サイアロン以外にAlN及び同定不能な結晶相が存在していた。α型サイアロンの格子定数aは0.7848nm、格子定数cは0.5689nmであった。比較例2の蛍光体粉末のSEM観察を行ったところ、蛍光体は等軸状で微細な一次粒子が強固に焼結した二次粒子により構成されていた。CaO/Ca3N2比が大きな比較例2では、一次粒子が焼結しているため、平均アスペクト比を求めることは困難であった。
[0054] 波長455nm励起による蛍光スペクトルのピーク強度、ピーク波長及び半値幅はそれぞれ、57、589nm、91nmであった。実施例2と比較例2の結果から、一次粒子が柱状化していると蛍光強度が高いことがわかる。なお、比較例2の酸素含有量は 3.8mass%、Eu含有量は1.8mass%であった。
実施例3
[0055]<実施例3、比較例3>
実施例1の蛍光体粉末を超音速ジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製、PJM-80SP)により解砕して、実施例3及び比較例3の蛍光体粉末をそれぞれ得た。この粉砕機は、粉砕室への試料供給速度と粉砕エア圧力により粉砕粉末の粒径を制御することができる。粉砕条件及びレーザー回折散乱法により測定した粉砕粉末の粒度分布を表1に示す。
[0056][表1]
[図:0001434719000003.jpg]
[0057] 波長455nm励起における蛍光スペクトルのピーク強度、ピーク波長及び半値幅はそれぞれ実施例3が92、600nm、84nm、比較例3が26、599nm、84nmであった。比較例3では、過粉砕により、大幅に発光特性が低下した。
実施例4
[0058] 実施例3の蛍光体粉末に対して、湿式沈降分級法による微粉除去処理を行った。分散剤として、ヘキサメタ燐酸ナトリウムを添加した蒸留水500ml中に蛍光体粉末10gを十分に分散した後、内寸80mm、高さ140mmの容器に移し、50分間静置し、水面から90mmの上澄み液を除去した。再び、ヘキサメタ燐酸ナトリウム水溶液を追加し、分散し、所定時間静置した後、上澄み液が透明になるまで上澄み液の除去操作を繰り返した。その後、沈殿物を濾過し、分散剤を除去するために十分に水洗し、乾燥を行い、微粉を除去して蛍光体粉末を得た。蛍光体粉末の粒度分布は、D10が4.8μm、D50が9.1μm、D90が18.9μmであった。波長455nm励起における蛍光スペクトルのピーク強度、ピーク波長及び半値幅はそれぞれ103、600nm、84nmであった。合成段階で一旦、柱状粒子を生成させると、粉砕等で粒子形状が変化しても、微粉を除去し、最終的な粒度を適正な範囲内とすることにより、合成段階と同レベルの発光特性が維持される。」
(イ) 引用文献2の記載から把握できる事項の認定
a 前記(ア)に摘記のとおり、引用文献2の[0058]には、実施例3の蛍光体粉末に対して、湿式沈降分級法による微粉除去処理を行った実施例4が記載されている。
b 実施例3の蛍光体粉末における測定結果([0056]の[表1]及び[0057])及び実施例4の蛍光体粉末における測定結果([0058])を参照すると、実施例3及び実施例4それぞれの、D10、D50及びD90並びに波長455nmw励起における発光スペクトルのピーク強度は、それぞれ次のとおりである。なお、スパン((D90-D10)/D50)も算出して示した。
<実施例3> <実施例4>
D10 2.7μm 4.8μm
D50 6.5μm 9.1μm
D90 16.1μm 18.9μm
発光ピーク強度 92 103
スパン 2.1 1.5
※注 「スパン(D90-D10)/D50」は、粒径分布の幅を示す粒径分布を記述する指標として粒子の集合体を扱う技術分野において基本的な技術常識であり、また、後記イ(イ)において「技術常識1」として認定するとおり、蛍光体材料の技術分野においても技術常識である。
c 実施例3と実施例4の測定結果を対比すると、解砕又は粉砕した蛍光体粉末に対して微粉除去処理を行うことにより、スパンは2.1から1.5へと減少して蛍光体粉末の粒度分布は狭くなり、微粉を除去した蛍光体粉末の発光特性は、微粉を除去しない蛍光体粉末の発光特性に対して向上することを把握できる。
d 以上より、引用文献2の記載から、次の技術事項(以下「認定事項A」という。)を把握できる。
<認定事項A>
「解砕又は粉砕した蛍光体粉末に対して微粉除去処理を行うことにより、蛍光体粉末の粒度分布は狭くなり(例として、スパン((D90-D10)/D50)は2.1から1.5へと減少した。)、最終的な粒度を適切な範囲内とすることにより、合成段階と同レベルの発光特性が維持され、微粉を除去した蛍光体粉末の発光特性は、微粉を除去しない蛍光体粉末の発光特性に対して向上したこと。」
(ウ) 引用発明の認定
前記(イ)において認定した事項及び前記(ア)に摘記した引用文献2の記載事項を総合すると、引用文献2には、請求項1の記載を引用する請求項5に係るα型サイアロン蛍光体について、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所等を括弧内に示した。
<引用発明>
「α型サイアロン蛍光体であって、
一般式:(M)x(Eu)y(Si,Al)12(O,N)16(但し、MはLi、Mg、Ca、Y及びランタニド元素(LaとCeを除く。)からなる群から選ばれ、少なくともCaを含む1種以上の元素)で示されるα型サイアロンであり、酸素含有量が1.2mass%以下であり、α型サイアロンを構成する一次粒子が柱状化しており、(請求項1)
α型サイアロン蛍光体は、解砕又は粉砕することにより得られる粉末状のα型サイアロン蛍光体であり、
レーザー回折散乱法によって測定した粒子径分布50体積%径(D50)が5μm以上20μmであり、(請求項5)
レーザー回折散乱法によって測定した粒子径分布10%体積径(D10)が2μm以上15μm以下、かつ粒子径分布90%体積径(D90)が6μm以上50μm以下であり、([0011])
柱状化した粒子は、単結晶に近い状態であり、かつ結晶性に優れるため、欠陥等の光吸収を抑制でき、([0024])
解砕又は粉砕した蛍光体粉末に対して微粉除去処理を行うことにより、蛍光体粉末の粒度分布は狭くなり(例として、スパン((D90-D10)/D50)は2.1から1.5へと減少した。)、最終的な粒度を適切な範囲内とすることにより、合成段階と同レベルの発光特性が維持され、微粉を除去した蛍光体粉末の発光特性は、微粉を除去しない蛍光体粉末の発光特性に対して向上した、(認定事項A)
α型サイアロン蛍光体」
イ 引用文献7に記載された事項及び技術常識1の認定
(ア) 引用文献7に記載された事項
本審決において新たに引用する、優先日前に発行された文献である国際公開第2017/122800号(以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある(下線は合議体による。)。
「技術分野
[0001] 本発明は、LED(Light Emitting Diode)及び蛍光体を用いた発光装置に関する。
…(中略)…
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0005] 上述した従来技術に係るLEDを作成し、高温高湿で通電し、点灯させた状態で信頼性(耐久性)試験を行うと、実際には信頼性は不十分である。特に白色LED用途において、高温高湿環境への抵抗性および通電信頼性を改善する手法が求められている。
課題を解決するための手段
[0006] 本発明により、酸窒化物蛍光体の一次粒子径と二次粒子径を制御することで、白色LED用途において高温高湿環境への抵抗性および通電信頼性を改善する手法が提供される。
[0007] 本発明の実施形態では、発光素子と、発光素子の光の波長変換をする蛍光体を有し、体積中央粒径D50[μm]と空気透過法で測定した表面積から算出した平均粒度R[μm]が、下記の式(1)
D50/R<1.4 式(1)
を満たす、β型サイアロンである酸窒化物蛍光体(a)が提供される。
[0008] また、本発明の好ましい実施形態で提供される蛍光体においては、全粒子の体積を100%とした場合、小粒径側から体積を積算して体積積算%で10%となる粒径をD10[μm]、小粒径側から体積を積算して体積積算%で90%となる粒径をD90[μm]が、下記の式(2)
1.6>(D90-D10)/D50 式(2)
を満たす。
発明の効果
[0009] 本発明の蛍光体を使用することで、高輝度、高い長期信頼性を有した白色発光装置を提供することができる。
…(中略)…
[0016] (D90-D10)/D50の値は粒度分布の幅を示す。(D90-D10)/D50の値が小さいと粒度分布はシャープとなる。また、D50が同等であるサンプル同士を比較する場合、(D90-D10)/D50が小さいサンプルは微粉が少ない。このように微粉が少ない蛍光体材料では、比表面積も低下するため、発光装置に用いた際の信頼性が向上すると考えられる。好ましい実施形態においては、(D90-D10)/D50の値は0.1以上1.6未満の範囲とすることができ、より好ましくは0.5以上1.6未満の範囲とすることができる。」
(イ) 技術常識1の認定
前記(ア)に摘記した引用文献7の摘記事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識(以下「技術常識1」という。)であったと認められる。
<技術常識1>
「((D90-D10)/D50)は粒度分布の幅を示す、粒度分布を記述する指標であること。」
ウ 日本工業規格(JIS)R1697記載事項
本審決において新たに引用する、優先日前に発行された文献である日本工業規格(JIS)のR1697:2015「白色発光ダイオード用蛍光体の積分球を用いた内部量子効率絶対測定方法」には、次の記載がある(以下「日本工業規格(JIS)R1697記載事項」という。)。
「7 測定手順
7.1 測定環境測定装置は室温を保てる環境に設置し,直射日光が当たらないようにするなどして急激な温度変化を避ける。試料の取扱い及び測定は,室温10℃~30℃,相対湿度30%~70%で変化の少ない環境で行う。吸湿性のある試料又は耐久性の乏しい試料は,性状に応じて測定環境を整えるとともに,短時間で測定を終えるようにする。測定装置は,測定の30分以上前に電源を入れておく。
7.2 励起光スペクトルの測定
積分球のセル用開口部に,白色拡散板又はレファレンスセルを置く。白色拡散板を用いる場合は,その上に試料に用いるのと同じカバーガラスを置く。セルとしてシャーレを用いる場合は,空のシャーレに蓋をして,積分球のセル置き場に設置する。レファレンスセルを用いる場合,蛍光体試料用と同種のセルを用い,6.2に準じた方法で白色粉体を充填する。
積分球の励起光導入用開口部から白色拡散板,レファレンスセル又は空のシャーレに向けて,選択した波長の励起光を照射し,測光用開口部から出射する光の強度を測定する。波長ごとに光強度を測定し励起光スペクトルを求める。
励起光強度は,検出器の信号が飽和せず,7.3において試料の劣化が起きない強度とする。
7.3 蛍光体試料のスペクトル測定
積分球のセル用開口部に試料を充填したセルを押し当てるか又は積分球内のセル置き場にセルを設置する。7.2と同様にして,励起光を試料に照射し,検出器で光強度を測定し,励起光の散乱光と蛍光からなるスペクトルを求める。
8 計算
8.1フォトン数基準への変換
7.2及び7.3で測定したスペクトルがエネルギー基準の場合,フォトン数基準に換算しておく。
8.2 蛍光スペクトル7.3で測定したスペクトルから,7.2で測定した励起光スペクトルを用いて励起光スペクトル成分を除去し,蛍光だけのスペクトルを求める。励起光成分の除去は,例えば,次の方法で行う。方法17.2で測定した励起光スペクトルに適切な係数を乗じて得たスペクトルを7.3で測定したスペクトルから差し引き,励起光付近が滑らかなスペクトルになるようにする。励起波長付近に凹凸が生じる場合は,その前後を直線で結ぶなどして凹凸をなくす。方法2励起光付近のベースラインを直線近似する。
8.3 内部量子効率
8.3.1 吸収フォトン数相対値の計算7.3で測定したスペクトルから8.2で抽出した蛍光スペクトル成分を差し引くことによって,測定スペクトルにおける励起光スペクトル成分を抽出する。
次に,この励起光スペクトル成分を,7.2で測定した励起光スペクトルを白色拡散板又はレファレンスセルの励起波長領域における拡散反射率で除したものから差し引いたスペクトルを求める。このスペクトルを積分することによって,蛍光体試料が吸収したフォトン数相対値を求める。
8.3.2 蛍光フォトン数相対値の計算8.2で求めた蛍光スペクトルを積分することによって,試料が発した蛍光のフォトン数相対値を求める。8.3.3内部量子効率の計算次の式によって内部量子効率を計算する。
η=AF×100
ここに,η:内部量子効率(%)
F:蛍光フォトン数(相対値)
A:吸収フォトン数(相対値)
なお,当事者間の取決めによって二次吸収補正,自己吸収補正などの補正を行ってもよい。
注記 二次吸収補正方法については,堀込らの文献又は大久保らの文献が,自己吸収補正方法については,Ahnらの文献が参考になる。」(5及び6頁)
(2) 本件補正発明と引用発明の対比
ア 対比分析
本件補正発明の分説(前記3(1)参照)に従い、本件補正発明と引用発明を、以下に対比する。
(ア) 構成Xの観点(α型サイアロン蛍光体)
a 構成Xは、「α型サイアロン粒子を含むα型サイアロン蛍光体」の発明であることを特定するものである。
b 引用発明は、「α型サイアロン蛍光体」の発明であるところ、当該「α型サイアロン蛍光体」は、「解砕又は粉砕することにより得られる粉末状のα型サイアロン蛍光体」である。
c したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。
「α型サイアロン粒子を含むα型サイアロン蛍光体」の発明である点。
(イ) 構成A1の観点(「D98-D5)/D50」)
a 構成A1は、「レーザー回折散乱法で測定される当該α型サイアロン蛍光体の体積頻度粒度分布において、累積値が5%となる粒子径をD5、50%となる粒子径をD50、98%となる粒子径をD98としたとき、
((D98-D5)/D50)が、4.00以上7.30以下であ[る]」ことである。
b 引用発明における「α型サイアロン蛍光体」の「粒子径分布50体積%径(D50)」は、「レーザー回折散乱法によって測定した」値であるから、本件補正発明にいうところの「レーザー回折散乱法で測定される当該α型サイアロン蛍光体の体積頻度粒度分布において、」「累積値」が「50%となる粒子径」に相当するといえる。
c 引用発明においては、「粒子径分布50体積%径(D50)が5μm以上20μmであり」、「粒子径分布10%体積径(D10)が2μm以上15μm以下、かつ粒子径分布90%体積径(D90)が6μm以上50μm以下であ[る]」。
これらの数値範囲を用いると、D90-D10は、0~48となり、スパン((D90-D10)/D50)は、0~9.8の数値の範囲に入るから、引用発明は、構成A1を有する本件補正発明と、D50に対して、「D98-D5」又は「D90-D10」が所定の範囲であって、粒径分布の幅が所定の範囲内に収まる点において共通する。
その一方、引用発明においては、D5及びD98の値は不明であるから、(D98-D5)/D50)の値は不明である。
d したがって、本件補正発明と引用発明は、構成A1の観点において、次の(a)の点において共通し、後記(b)の点において相違する。
(a) 構成A1の観点での共通点
「レーザー回折散乱法で測定される当該α型サイアロン蛍光体の体積頻度粒度分布において、累積値が5%となる粒子径をD5、10%となる粒子径をD10、50%となる粒子径をD50、90%となる粒子径をD90、98%となる粒子径をD98、としたとき、
D50に対して、「D98-D5」又は「D90-D10」が所定の範囲であって、粒径分布の幅が所定の範囲内に収まる」点。
(b) 構成A1の観点での相違点
本件補正発明においては、
「((D98-D5)/D50)が、4.00以上7.30以下であ[る]」のに対して、
引用発明においては、「粒子径分布50体積%径(D50)が5μm以上20μmであり」、「粒子径分布10%体積径(D10)が2μm以上15μm以下、かつ粒子径分布90%体積径(D90)が6μm以上50μm以下であり」、スパン((D90-D10)/D50)は、0~9.8の数値の範囲に入るものの、((D98-D5)/D50)の数値は不明である点。
(ウ) 構成A2の観点(D50)
a 構成A2は、「D50が3.0μm以上9.0μm以下であ[る]」ことである。
b 引用発明における「D50」は、「5μm以上20μm」であるから、構成A2とは、D50が3.0μm以上20.0μm以下であるとの条件を満たし、「D50が5.0μm以上9.0μm以下」を許容する点において共通する。
c したがって、本件補正発明と引用発明の構成A2の観点における一致点及び相違点は、次のとおりである。
(a) 構成A2の観点における一致点
D50が3.0μm以上20.0μm以下であるとの条件を満たし、「D50が5.0μm以上9.0μm以下」を許容する点。
(b) 構成A2の観点における相違点
本件補正発明においては、「D50が3.0μm以上9.0μm以下」であるのに対して、
引用発明においては、「D50は5μm以上20μm」である点。
(エ) 構成Bの観点(内部量子効率について)
a 構成Bは、「波長が455nmの励起光に対する内部量子効率が75%以上であり」、当該「内部量子効率」は、「下記の手順に従って測定される」ことである。
「(手順)
(1)当該α型サイアロン蛍光体を試料として用い、その試料を凹型セルに表面が平滑になるように充填する。その凹型セルを積分球の開口部に取り付けた後、積分球内に、発光光源から所定波長の単色光を、励起光として導入する。
25℃において、凹型セル内の試料に励起光を照射し、試料からのスペクトルを分光光度計で測定する。得られたスペクトルデータから、励起反射光フォトン数(Qref)及び蛍光フォトン数(Qem)を算出する。
(2)凹型セルの代わりに、反射率が99%の標準反射板を使用した以外は、上記(1)と同様にして、標準反射板を積分球の開口部に取り付け、励起光を標準反射板に照射し、波長455nmの励起光のスペクトルを測定し、得られたスペクトルデータから、励起光フォトン数(Qex)を算出する。
下記式に基づいて、上記の内部量子効率を求める。
内部量子効率(%)=(Qem/(Qex-Qref))×100」
b 引用発明における「α型サイアロン蛍光体」の内部量子効率は、不明であるから、本件補正発明においては構成Bの特定があるのに対して、引用発明においては内部量子効率は不明である点において、両者は相違する。
(オ) 構成Cの観点(α型サイアロン粒子について)
a 構成Cは、「前記α型サイアロン粒子が、下記の一般式(1)で表されるEu元素を含有するα型サイアロンで構成される、
(M)m(1-x)/p(Eu)mx/2(Si)12-(m+n)(Al)m+n(O)n(N)16-n ・・一般式(1)
(上記一般式(1)中、MはCa元素を表し、pはM元素の価数、0<x<0.5、1.5≦m≦4.0、0≦n≦2.0を表す。)」ことである。
b 引用発明における「α型サイアロン蛍光体」は、「一般式:(M)x(Eu)y(Si,Al)12(O,N)16(但し、MはLi、Mg、Ca、Y及びランタニド元素(LaとCeを除く。)からなる群から選ばれ、少なくともCaを含む1種以上の元素)で示されるα型サイアロン」である。
c そうすると、本件補正発明と引用発明は、構成Cの観点について、次の(a)に示す点において一致し、(b)に示す点において相違する。
(a) 構成Cの観点における一致点
前記α型サイアロン粒子が、下記の一般式(1)で表されるEu元素を含有するα型サイアロンで構成される、
(M)m(1-x)/p(Eu)mx/2(Si)12-(m+n)(Al)m+n(O)n(N)16-n ・・一般式(1)
(上記一般式(1)中、MはLi、Mg、Ca、Y及びランタニド元素(LaとCeを除く。)からなる群から選ばれ、少なくともCaを含む1種以上の元素を表し、pはM元素の価数を表す。)」点。
(b) 構成Cの観点における相違点
本件補正発明においては、「上記一般式(1)中、MはCa元素を表し、pはM元素の価数、0<x<0.5、1.5≦m≦4.0、0≦n≦2.0を表す。)」のに対して、
引用発明においては、「MはLi、Mg、Ca、Y及びランタニド元素(LaとCeを除く。)からなる群から選ばれ、少なくともCaを含む1種以上の元素)」である点。
イ 一致点及び相違点
前記アの対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違すると認められる。
(ア) 一致点
「α型サイアロン粒子を含むα型サイアロン蛍光体であって、
レーザー回折散乱法で測定される当該α型サイアロン蛍光体の体積頻度粒度分布において、累積値が5%となる粒子径をD5、10%となる粒子径をD10、50%となる粒子径をD50、90%となる粒子径をD90、98%となる粒子径をD98としたとき、
D50に対して、「D98-D5」又は「D90-D10」が所定の範囲であって、粒径分布の幅が所定の範囲内に収まり、
D50が3.0μm以上20.0μm以下であるとの条件を満たし、「D50が5.0μm以上9.0μm以下」を許容するものであり、
前記α型サイアロン粒子が、下記の一般式(1)で表されるEu元素を含有するα型サイアロンで構成される、
α型サイアロン蛍光体。
(M)m(1-x)/p(Eu)mx/2(Si)12-(m+n)(Al)m+n(O)n(N)16-n ・・一般式(1)
(上記一般式(1)中、MはLi、Mg、Ca、Y及びランタニド元素(LaとCeを除く。)からなる群から選ばれ、少なくともCaを含む1種以上の元素を表し、pはM元素の価数を表す。)」の発明である点。
(イ) 相違点
a 相違点1(構成Cに関する相違点)
本件補正発明においては、「上記一般式(1)中、MはCa元素を表し、pはM元素の価数、0<x<0.5、1.5≦m≦4.0、0≦n≦2.0を表す。)」のに対して、
引用発明においては、「MはLi、Mg、Ca、Y及びランタニド元素(LaとCeを除く。)からなる群から選ばれ、少なくともCaを含む1種以上の元素)」である点。
b 相違点2(構成A1とA2に関する相違点)
本件補正発明においては、「D50が3.0μm以上9.0μm以下であ[る]」のに対して、
引用発明においては「D50は5μm以上20μm」であり、
本件補正発明においては、
「((D98-D5)/D50)が、4.00以上7.30以下であ[る]」のに対して、
引用発明においては、
「粒子径分布50体積%径(D50)が5μm以上20μmであり」、「粒子径分布10%体積径(D10)が2μm以上15μm以下、かつ粒子径分布90%体積径(D90)が6μm以上50μm以下であり」、スパン((D90ーD10)/D50)は、0~9.8の数値の範囲に入るものの、((D98-D5)/D50)の数値は不明である点。
c 相違点3(構成Bに関する相違点)
本件補正発明においては、「下記の手順に従って測定される波長が455nmの励起光に対する内部量子効率が75%以上であり」、その手順は、次のとおりである
「(手順)
(1)当該α型サイアロン蛍光体を試料として用い、その試料を凹型セルに表面が平滑になるように充填する。その凹型セルを積分球の開口部に取り付けた後、積分球内に、発光光源から所定波長の単色光を、励起光として導入する。
25℃において、凹型セル内の試料に励起光を照射し、試料からのスペクトルを分光光度計で測定する。得られたスペクトルデータから、励起反射光フォトン数(Qref)及び蛍光フォトン数(Qem)を算出する。
(2)凹型セルの代わりに、反射率が99%の標準反射板を使用した以外は、上記(1)と同様にして、標準反射板を積分球の開口部に取り付け、励起光を標準反射板に照射し、波長455nmの励起光のスペクトルを測定し、得られたスペクトルデータから、励起光フォトン数(Qex)を算出する。
下記式に基づいて、上記の内部量子効率を求める。
内部量子効率(%)=(Qem/(Qex-Qref))×100」のに対して、
引用発明においては、内部量子効率は不明である点。
(3) 判断
ア 相違点1(構成Cに関する相違点)について
引用発明における「α型サイアロン蛍光体」は、「一般式:(M)x(Eu)y(Si,Al)12(O,N)16(但し、MはLi、Mg、Ca、Y及びランタニド元素(LaとCeを除く。)からなる群から選ばれ、少なくともCaを含む1種以上の元素)で示されるα型サイアロン」であるところ、各元素の組成比は、所望の蛍光スペクトル(青緑色~緑色)に応じて適宜設計し得るものであるし、実際引用文献2において実施例として開示されたものにおいてはMがCaのみであるものが示されていることから、引用発明における「α型サイアロン蛍光体」においてMの選択肢としてCaのみを選択し、「上記一般式(1)中、MはCa元素を表し、pはM元素の価数、0<x<0.5、1.5≦m≦4.0、0≦n≦2.0を表す。)」という相違点1に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者にとっては自明の設計事項にすぎず、相違点1は当業者が容易に想到し得たことである。
イ 相違点2(構成A1と構成A2に関する相違点)について
(ア) D50の限定(構成A2)について
a 引用発明における「D50」は、「5μm以上20μm」であるところ、当該数値範囲は構成A2の下限である「D50が3.0μm以上」を満たしている。
そして、構成A2の上限をも満たす「5μm以上9.0μm以下」の数値範囲は、引用発明における「D50」の数値範囲である「5μm以上20μm」に包摂されるから、そもそも自明の選択肢である。
b 構成A2の数値範囲の技術上の意義(特に数値範囲の上限の技術上の意義)について検討すると、本願明細書の【0022】には、次のとおり記載されている(下線は合議体による。)。
「D50は、例えば、1.0μm~10.0μm、好ましくは2.5μm~9.0μm、より好ましくは3.0μm~9.0μmである。D50を上記上限値以下とすることにより、適度に小粒子化したα型サイアロン粒子を含むα型サイアロン蛍光体を実現できる。D50を上記下限値以上とすることにより、455nmの蛍光強度を向上させることができる。」
c 上記本願明細書の【0022】の記載を参酌すると、構成A2の上限値である「9.0μm」については、「適度に小粒子化したα型サイアロン粒子を含むα型サイアロン蛍光体を実現できる」との観点から選択されたものであり、技術効果上の格別顕著な意味を有するものではない。
d 以上のとおりであるから、引用発明における「D50」を、5μm以上9.0μm以下の範囲にすることは、当業者が適宜選択し得た設計事項であって、当業者が容易に想到し得たものであり、かかる限定を根拠として選択発明として進歩性を認めることはできない。
(イ) ((D98-D5)/D50)(構成A1)について
a 数値限定の技術上の意義の観点からの選択発明としての成立性の検討
(a) ((D98-D5)/D50)の数値限定に関する技術上の意義について検討すると、本願明細書には次の記載がある。
「【0017】
本発明者の知見によれば、適度に小粒子径化したα型サイアロン粒子に含まれる微粉を適切に除去することで、そのようなα型サイアロン粒子を含むα型サイアロン蛍光体の外部量子効率を向上できることが見出された。そして、((D98-D5)/D50)を指標とすることで、微粉が除去されたα型サイアロン粒子の性状について安定的に評価することができ、かかる指標の((D98-D5)/D50)を適切な数値範囲内とすることにより、α型サイアロン粒子を含むα型サイアロン蛍光体の外部量子効率を向上できることが判明した。
【0018】
詳細なメカニズムは定かではないが、粒子の微細化処理などで生じた微粉は、比表面積が比較的大きく、反射が多くなる、また結晶欠損を比較的多く含むため、このような微粉を除去することによって、455nmの内部量子効率および反射率を向上できるため、455nmの外部量子効率を高められる、と考えられる。
【0019】
((D98-D5)/D50)の上限は、8.00以下、好ましくは7.70以下、より好ましくは7.30以下である。これにより、適切に微粉が除去されたα型サイアロン粒子を含むα型サイアロン蛍光体において、外部量子効率を向上させることが可能である。
【0020】
一方、((D98-D5)/D50)の下限は、例えば、1.00以上、好ましくは3.00以上、より好ましくは4.00以上である。これにより、適度に小粒子化したα型サイアロン粒子を含むα型サイアロン蛍光体において、700nmにおける吸収率を低減することが可能となる。
【0021】
また、((D98-D5)/D50)を上記数値範囲内とすることで、455nmの蛍光強度や光吸収率を向上させることができる。」
(b)i 前記4(3)において検討したとおり、((D98-D5)/D50)は、D5が小さくても、その分D98が小さくなれば同じ値となるから、((D98-D5)/D50)の値が同じであっても微粉除去の程度が同じであることとはならず、((D98-D5)/D50)は微粉除去の指標として適切でないことは明らかである。
ii そうすると、((D98-D5)/D50)を特定することにより、微粉除去に伴う外部量子効率向上の効果や700nmにおける吸収率を低減することの効果を認めることはできないから、((D98-D5)/D50)を特定することにより選択発明としての進歩性を認めることはできない。
b 粒子分布の均一性(単分散性)を特定することの観点からの検討
(a) 「(D98-D5)/D50」の値は、累積粒度分布の幅を中央値で正規化した値であるから、スパン((D98-D5)/D50)と同様に、粒子径のばらつき(分布の広がり)を意味し、粒子径の均一性を示す値と理解することができる。
本願の明細書には、「((D98-D5)/D50)を指標とすることで、微粉が除去されたα型サイアロン粒子の性状について安定的に評価することができ」(【0007】)との記載されており、微粉が除去されるということは、粒子径のばらつきが小さくなるのであるから、前記の理解は、本願の明細書の記載に沿うものともいえる。
(b) 他方、引用発明は、「解砕又は粉砕した蛍光体粉末に対して微粉除去処理を行うこと」により得られた「α型サイアロン蛍光体」であり、微粉除去処理の結果として、「蛍光体粉末の粒度分布は狭くなり(例として、スパン((D90-D10)/D50)は2.1から1.5へと減少した。)、最終的な粒度を適切な範囲内とすることにより、合成段階と同レベルの発光特性が維持され、微粉を除去した蛍光体粉末の発光特性は、微粉を除去しない蛍光体粉末の発光特性に対して向上した」ものである。
(c)i そうすると、引用発明である、微粉除去処理を行うことにより蛍光体粉末の粒度分布を狭くする「α型サイアロン蛍光体」において、その粒径をどの程度の均一性とするかは、当業者が適宜設計し得ることである。
ii そして、スパン((D90-D10)/D50)は粒度分布の幅を示す、粒度分布を記述する指標として技術常識であるところ(前記(2)イの技術常識1)、スパンに代えて((D98-D5)/D50)を用いて評価することは、D10やD90に比較して、D50からより大きく外れたもの(D5及びD98)で粒子分布の均一性を評価することに相当するところ、D50からどれだけ外れた部分を評価の対象とするかは、当業者が適宜選択できる設計事項にほかならない。
iii したがって、引用発明における「微粉除去処理」の結果についての粒子分布の均一性の評価として、D10やD90を用いることに代えて、((D98-D5)/D50)を用いて、それが所定の値以下に制限することは、当業者にとっては設計事項にすぎない。
iv そして、前記a(b)に検討したのと同様に、((D98-D5)/D50)の下限を特定することによる技術上の意義は不明である。
(d) 以上のとおりであるから、((D98-D5)/D50)が、4.00以上7.30以下を満たす程度の粒子径のばらつき範囲とすることは、当業者が適宜なし得た設計事項を超えるものとしては評価できない。
c ((D98-D5)/D50)(構成A1)についての判断のまとめ
前記a又はbに検討したとおりであるから、「((D98-D5)/D50)が、4.00以上7.30以下であ[る]」点をもって進歩性を認めることはできず、かかる点は当業者が適宜選択すべき設計上の事項としてしか評価できない。
ウ 相違点3について
(ア) 内部量子効率の測定手順について
α型サイアロン蛍光体の内部量子効率を測定する、相違点3に係る「手順」は、前記(2)ウに摘記した日本工業規格(JIS)R1697記載事項のとおり、蛍光体の内部量子効率を測定する一般的な手順である。
(イ) 内部量子効率について
引用発明における「α型サイアロン蛍光体」は、「α型サイアロンを構成する一次粒子が柱状化して」おり(請求項1)、「柱状化した粒子は、単結晶に近い状態であり、かつ結晶性に優れるため、欠陥等の光吸収を抑制でき[る]」([0024])ものである。そして、「微粉除去処理を行うこと」により、「合成段階と同レベルの発光特性が維持され」ていること(認定事項A)に鑑みれば、引用発明は、単結晶に近い状態の内部量子効率を有する粒子を選別することで、引用発明である「α型サイアロン蛍光体」の内部量子効率を高めるものと理解でき、一般に、蛍光体の内部量子効率を高めることは、当然に求められることである。
したがって、引用発明における「α型サイアロン蛍光体」の内部量子効率を75%以上とすることは、当業者が容易に想到し得たことといえる。
なお、引用発明においては、「微粉除去処理」を行っていることから、内部量子効率が75%以上であることを、すでに満たしているとも推認される。
エ 総合評価
前記ア~ウにおいて検討したとおり、引用発明において、相違点1~3に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明、技術常識1及び日本工業規格(JIS)R1697記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1~3を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明、技術常識1及び日本工業規格(JIS)R1697記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 請求人の主張について
請求人は、引用文献2における実施例3及び4は、本件補正発明と粉砕方法が異なるから粒径のばらつき等も異なり、微粉除去工程を含むとしても、「((D98-D5)/D50)が、4.00以上7.30以下」であることを満たす蓋然性は低い旨を主張している。
請求人の主張は、相違点2を根拠として進歩性を有することを主張するものであるところ、相違点2をもって進歩性を認めることができないことは、前記イに説示のとおりであるであるから、請求人の主張は、前記エの結論を左右するものではない。
(4) 独立特許要件の判断その2(特許法29条2項)のまとめ
以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明、技術常識1及び日本工業規格(JIS)R1697記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。
6 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記4(4)及び5(4)のとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明について
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の本願発明に対する拒絶の理由のうち、理由2(進歩性の欠如)及び理由3(サポート要件違反)の概要は、次の(1)及び(2)に示すとおりである。
(1) 理由2(進歩性の欠如)
本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献2.国際公開第2010/087348号
(2) 理由3(サポート要件違反)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
記
本願明細書の発明の詳細な説明を参酌すると、本願発明が解決しようとする課題は、外部量子効率に優れるユウロピウム賦活α型サイアロン蛍光体を得ることである。
本願発明に包含される全てのものに及ぶまで、上記課題を解決できる程度の前記効果を発現しうるものであるとは認められず、発明の詳細な説明に記載された事項を本願発明の範囲に及ぶまで、拡張ないし一般化できる根拠は見いだせない。
3 前記2(1)の理由2(進歩性の欠如)について
(1) 各引用文献に記載された事項及び引用発明の認定等
引用文献2に記載された事項並びに引用発明、技術常識1及び日本工業規格(JIS)R1697記載事項の認定は、前記第2の5(1)のア(ア)及び(ウ)、イ(イ)並びにウにおいて示したとおりである。
(2) 対比・判断
本願発明は、本件補正発明から、前記第2の2(1)のア~ウに示した限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の5(3)において説示したとおり、引用発明、技術常識1及び日本工業規格(JIS)R1697記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明、技術常識1及び日本工業規格(JIS)R1697記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 前記2(2)の理由3(サポート要件違反)について
本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の4において説示したとおり、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえないのであるから、本願発明も、同様の理由により、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。
第4 むすび
以上検討のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-012493