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特許拒絶査定不服審判

2024-014551

蛍光体粒子および発光装置

審判番号
2024-014551
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-566795
請求日
2024年09月11日
審決日
2026年04月16日
公報発行日
2026年06月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】デンカ株式会社
  • 【請求人代理人】速水 進治
審判長/審判官
  • 審判長 岡田 吉美
  • 審判官 吉野 三寛
  • 審判官 野村 伸雄
分類
P18 .121-Z (C09K) / P18 .537-Z (C09K) / P18 .575-Z (C09K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第29条、特許法第36条、特許法第17条の2第6項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022-566795「蛍光体粒子および発光装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 6月 9日国際公開、WO2022/118600〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2021年(令和3年)11月4日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張 令和2年12月4日(以下「優先日」という。))、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和6年 5月29日付け:拒絶理由通知書 同年 6月19日 :意見書、手続補正書の提出 同年 8月22日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月27日 :原査定の謄本の送達) 同年 9月11日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和8年 3月 5日 :電話応対 同年 3月12日 :電話応対 第2 令和6年9月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和6年9月11日にされた手続補正を却下する。 [補正の却下の決定の理由] 1 補正の内容 令和6年9月11日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものである。 本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(令和6年6月19日にされた手続補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項3のうち請求項1の記載を引用するものが、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に補正された。下線は、補正前後の対応箇所を示す。 (1) 本件補正前 「【請求項1】 CASNからなる粉末状蛍光体およびSCASNからなる粉末状蛍光体の中から選ばれる1種または2種から構成される蛍光体粒子であって、 当該蛍光体粒子のレーザー回折散乱法による体積基準の積算分率における累積50%に相当する粒径をDx50とし、当該累積90%に相当する粒径をDx90とし、 当該蛍光体粒子に以下の処理を施した後の累積50%に相当する粒径をDy50とし、当該累積90%に相当する粒径をDy90としたとき、 (a)Dx50が、0.5μm以上35μm以下であり、かつ (b)Dx90/Dy90が、0.7以上15以下である 蛍光体粒子。 処理;濃度0.2%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液100ml中に前記蛍光体粒子30mgが均一に分散された分散液を用意し、当該分散液を底面の内径5.5cmの円柱状容器に入れる。次に当該分散液の上方から、超音波ホモジナイザの振動子(外径20mmの円柱状チップ)部分を挿入し、当該振動子が深さ1.0cm以上まで浸漬した状態で、当該分散液に周波数19.5kHz、出力150Wで超音波を3分間照射する。 【請求項2】 (c)Dx50/Dy50が、0.8以上10以下である、請求項1に記載の蛍光体粒子。 【請求項3】 (d)(Dx90-Dx50)/(Dx50)が0.1以上25以下である、請求項1または2に記載の蛍光体粒子。」 (2) 本件補正後 「【請求項1】 SCASNからなる粉末状蛍光体から構成される蛍光体粒子であって、 当該蛍光体粒子のレーザー回折散乱法による体積基準の積算分率における累積50%に相当する粒径をDx50とし、当該累積90%に相当する粒径をDx90とし、 当該蛍光体粒子に以下の処理を施した後の累積50%に相当する粒径をDy50とし、当該累積90%に相当する粒径をDy90としたとき、 (a)Dx50が、0.5μm以上35μm以下であり、かつ (b)Dx90/Dy90が、0.7以上15以下であり、かつ (d)(Dx90-Dx50)/(Dx50)が0.1以上25以下である、蛍光体粒子。 処理;濃度0.2%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液100ml中に前記蛍光体粒子30mgが均一に分散された分散液を用意し、当該分散液を底面の内径5.5cmの円柱状容器に入れる。次に当該分散液の上方から、超音波ホモジナイザの振動子(外径20mmの円柱状チップ)部分を挿入し、当該振動子が深さ1.0cm以上まで浸漬した状態で、当該分散液に周波数19.5kHz、出力150Wで超音波を3分間照射する。」 2 補正の目的 (1) 本件補正のうち本件補正後の請求項1についてする補正は、ア)本件補正前の請求項1を削除するとともに本件補正前の請求項3のうち請求項1の記載を引用するものを新たな請求項1とし(以下「補正事項1」という。)、さらにイ)本件補正前の請求項3がその記載を引用する請求項1に記載された「CASNからなる粉末状蛍光体およびSCASNからなる粉末状蛍光体の中から選ばれる1種または2種から構成される蛍光体粒子」について、「SCASNからなる粉末状蛍光体から構成される蛍光体粒子」に限定する(以下「補正事項2」という。)ものである。 (2) 補正事項1は、特許法17条の2第5項2号に掲げる請求項の削除を目的とする補正に該当する。 (3)ア 本件補正前の請求項3に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 イ したがって、補正事項2は、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。 3 独立特許要件の判断 本件補正は、前記2のとおり、特許法17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むから、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。 (1) 本件補正発明 ア 本件補正発明の認定と分説 本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成Aから構成Cまでに分説する。 <本件補正発明の分説> (構成X) SCASNからなる粉末状蛍光体から構成される蛍光体粒子であって (構成A) 当該蛍光体粒子のレーザー回折散乱法による体積基準の積算分率における累積50%に相当する粒径をDx50とし、当該累積90%に相当する粒径をDx90とし、 当該蛍光体粒子に以下の処理を施した後の累積50%に相当する粒径をDy50とし、当該累積90%に相当する粒径をDy90としたとき、 (構成Aa) (a)Dx50が、0.5μm以上35μm以下であり、かつ (構成Ab) (b)Dx90/Dy90が、0.7以上15以下であり、かつ (構成Ad) (d)(Dx90-Dx50)/(Dx50)が0.1以上25以下である、 処理;濃度0.2%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液100ml中に前記蛍光体粒子30mgが均一に分散された分散液を用意し、当該分散液を底面の内径5.5cmの円柱状容器に入れる。次に当該分散液の上方から、超音波ホモジナイザの振動子(外径20mmの円柱状チップ)部分を挿入し、当該振動子が深さ1.0cm以上まで浸漬した状態で、当該分散液に周波数19.5kHz、出力150Wで超音波を3分間照射する(以下「処理A」という。)。 (構成X) 蛍光体粒子。 (注) Dx50及びDx90の測定方法の詳細は不明であるため、令和8年3月5日の電話応対で請求人に確認したところ、これらの粒径の測定に際して、溶媒は濃度0.2%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を利用し、フローセルを用いた湿式で粒径を測定しているとのことである。 イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載 本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。下線は、合議体が付したものである。 (ア) 技術分野、背景技術、発明の概要(【0001】~【0013】) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、蛍光体粒子、および発光装置に関する。より具体的には、マイクロLED用またはミニLED用の蛍光体粒子、および発光装置に関する。 【背景技術】 【0002】 従来のLEDに比べて大幅に小型化されたマイクロLEDの研究開発が進んでいる。かかるマイクロLEDを利用した新しいディスプレイとして、マイクロLEDディスプレイが知られている(例えば、特許文献1)。 【0003】 また、マイクロLEDディスプレイは、液晶シャッターや偏光板を用いない自発光型である点で、従来の「LEDバックライトの液晶テレビ」とは根本的に異なる。構造がシンプルで、原理的には光の取り出し効率が高く、視野角の制限もきわめて少ない。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】特開2020-122846号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 近年、マイクロLEDの小型化・高性能化への期待がますます高まっている。 【0006】 しかしながら、蛍光体粒子の粒径を小さくするほど、凝集しやすく、その結果、蛍光体を含む光変換層の励起光の透過率が上昇したり、光変換層の作成時にノズル詰まりなどが生じたりするといった問題が発生する傾向があった。そのため、粒径をより小さくしつつも、蛍光体粒子の性能を保持し、粒子の凝集を抑制する点において、改善の余地があった。 【0007】 本発明はこのような事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的の1つは、蛍光体粒子の性能を保持し、かつ、粒径をより小さくしつつも、粒子の凝集を抑制できる蛍光体粒子を提供することである。 …(中略)… 【発明の効果】 【0011】 本発明によれば、粒径をより小さくしつつも、凝集の発生を抑制し、性能を保持した蛍光体粒子を提供が提供される。」 (イ) 発明を実施するための形態(【0013】~【0064】) 「【発明を実施するための形態】 …(中略)… 【0019】 本実施形態の蛍光体粒子は、条件(a)、(b)を満たすことにより、粒子群の平均粒径をより小さくしつつも、蛍光体粒子における凝集の発生を抑制し、性能を保持した蛍光体粒子を得ることができる。かかる理由の詳細までは明らかではないが、まず、Dx50を0.5μm以上35μm以下の範囲内の蛍光体粒子とすることで、凝集の要因となる超微粒子を低減しつつも、蛍光体粒子の粒径をできるだけ小さくし、また、その発光性能を保持しやすくなると考えられる。さらに、特定の超音波ホモジナイザ処理前後の蛍光体粒子のD90の比(Dx90/Dy90)を制御することで、蛍光体粒子における凝集の程度をより高度に制御できると考えられる。すなわち、通常、凝集が起きている蛍光体粒子に対して超音波ホモジナイザ処理を施すと、凝集状態を解消し分散状態にさせることができる。そこで、本実施形態においては、処理条件を特定するとともに、Dx90/Dy90を0.7以上とすることで蛍光体粒子の粒径をより小さくしつつ、15以下とすることで蛍光体粒子における凝集を効果的に低減できる。なかでも、累積90%に相当する粒径を制御することで、粒径が大きい側の凝集性が抑制されるため、より顕著に凝集抑制効果を得ることができる。 【0020】 上記(a)において、Dx50は、発光特性を向上させる観点からは、好ましくは0.8μm以上であり、より好ましくは1.5μm以上であり、さらに好ましくは2.0μm以上である。一方、Dxは、発光特定を維持しつつ、より小さな粒径を実現する観点からは、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。 【0021】 また、上記(b)において、Dx90/Dy90は、発光特性と微粒子化とのバランスを保持する観点から、好ましくは0.8以上であり、より好ましくは1.0以上である。一方、Dx90/Dy90は、発光特性を向上し、より小さな粒径を実現する観点から、好ましくは12以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは8.5以下である。 …(中略)… 【0023】 本実施形態の蛍光体粒子は、さらに条件(d)を満たすことが好ましい。 (d)(Dx90-Dx50)/(Dx50)が0.1以上25以下である。 すなわち、蛍光体粒子の粒度分布において粒径が大きい側の粒子を低減して凝集を抑制しつつ、粒径をより小さくできる。 上記(Dx90-Dx50)/(Dx50)は、発光特性と微粒子化とのバランスを保持する観点から、好ましくは0.5以上である。一方、(Dx90-Dx50)/(Dx50)は、発光特性を向上し、より小さな粒径を実現する観点から、好ましくは20以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは4.0以下である。 …(中略)… 【0028】 以下、本実施形態の蛍光体粒子について、さらに説明する。 【0029】 [CASN、SCASNの一般式および組成] 本実施形態の蛍光体粒子は、CASNからなる粉末状蛍光体およびSCASNからなる粉末状蛍光体の少なくとも一方から構成される。 一般にCASNとは、主結晶相がCaAlSiN3と同一の結晶構造を有し、一般式がMAlSiN3:Eu(Mは、Sr、Mg、Ca、Baの中から選ばれる、1種以上の元素)で示される蛍光体のことをいう。なかでも、主結晶相がCaAlSiN3と同一の結晶構造を有し、一般式が(Sr,Ca)AlSiN3:Euで表されるSr含有蛍光体のことをSCASNという。CASNまたはSCASNは、主としてCaAlSiN3のCa2+の一部が発光中心として作用するEu2+で置換されていることにより、赤色発光蛍光体として働く。 製造されたCASNまたはSCASNの主結晶相がCaAlSiN3結晶と同一の結晶構造であるか否かは、粉末X線回折により確認できる。 本実施形態の蛍光体粒子は、不可避的な元素や不純物を含むCASNおよびSCASNを除外するものではない。ただし、良好な発光特性やディスプレイの視認性向上の観点からは、不可避的な元素や不純物は少ないに越したことはない。 …(中略)… 【0051】 ・デカンテーション工程 デカンテーション工程においては、まず、粉砕工程を経て微粉化された蛍光体粒子を、適当な分散媒に投入し、蛍光体粒子を分散媒に分散させる。 分散媒としては、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ピロりん酸ナトリウム(Napp)、リン酸三ナトリウム(TSP)、低級アルコール、アセトン、および界面活性剤等を含む水溶液などを用いることができる。この際の蛍光体粒子と分散媒の重量比は、2%以上40%以下が好ましく、3%以上20%以下がより好ましく、4%以上10%以下がさらに好ましい。分散媒への分散処理として、超音波による分散処理を行うことが好適である。これにより、微粒子除去を高精度かつ効率良く行うことができる。その結果、凝集の要因となる微粒子が低減でき、凝集を抑制しやすくなる。 次に、分散処置を行った後、蛍光体粒子を含む分散媒を所定の条件で静置、または所定の条件による遠心分離処理を行い、粒子を沈降させる。 粒子沈降時の各種条件はストークスの式を用いて算出する。 【0052】 [図:0001435698000001.jpg] vs:終端速度;[m/s]もしくは[cm/s] Dp:粒子径;[m]もしくは[cm] ρp:粒子の密度;[kg/m3]もしくは[g/cm3] ρf:流体の密度;[kg/m3]もしくは[g/cm3] g:重力加速度;[m/s2]もしくは[cm/s2] η:流体の粘度;[Pa・s]もしくは[g/(cm・s)] 【0053】 上記の静置とした場合、まず、沈降距離を任意で決めた後、除去したい微粒子の粒子径を決める。この粒子径、1Gの重力加速度および各種値をストークス式に代入し、沈降速度を算出する。求めた沈降速度と任意で決めた沈降距離から静置時間を算出する。 【0054】 上記の遠心分離の場合、まず、沈降距離と沈降時間を任意で決めた後、これらの値から沈降速度を求める。次に、除去したい微粒子の粒子径を決める。この粒子径、沈降速度および各種値(溶媒や粒子固有の値)をストークス式に代入し、重力加速度を算出する。遠心分離装置固有の回転数と重力加速度の関係式を用いて、遠心分離装置の回転数を求める。 【0055】 続けて、粒子を沈降させた後、上澄み液を除去する。これにより、上澄み液に含まれる、光学特性に悪影響を及ぼしうる微粒子(超微粉)を除去することができる。また、超微粉による凝集が低減される。 微粒子(超微粉)の粒径としては、例えば、D50が0.4μm未満のものが挙げられる。 かかるデカンテーションの操作は、繰り返し実施してもよい。本実施形態においては、2回以上10回以下繰り返すことが好ましく、3回以上7回以下繰り返すことがより好ましい。 (【0064】まで後略)」 (ウ) 実施例(【0065】~【0088】) 「【実施例】 …(中略)… 【0066】 (実施例1) 以下の手順で、SCASNからなる粉末状蛍光体から構成される蛍光体粒子を作製した。 【0067】 1)混合工程 水分が1質量ppm以下、酸素分が1質量ppm以下である窒素雰囲気に保持したグローブボックス中で、以下を混合した。 α型窒化ケイ素粉末(Si3N4、SN-E10グレード、宇部興産社製)25.65質量% 窒化カルシウム粉末(Ca3N2、太平洋セメント社製)2.98質量% 窒化アルミニウム粉末(AlN、Eグレード、トクヤマ社製)22.49質量% 窒化ストロンチウム粉末(Sr2N、Materion社製)43.09質量% 酸化ユーロピウム粉末(Eu2O3、日本イットリウム社製)5.79質量% 【0068】 ちなみに、窒素分は上記モル比に合わせて原料を配合した際に定まる。 【0069】 十分な分散・混合を達成するために、混合は小型ミルミキサーを用いて行った。 混合終了後、目開き150μmの篩を全通させて凝集物を取り除き、これを原料混合粉末とした。そして、原料混合粉末を、タングステン製の蓋付き容器に充填した。 【0070】 2)焼成工程 原料混合粉末を充填した容器を、グローブボックスから取出し、カーボンヒーターを備えた電気炉内に速やかにセットして、炉内を0.1Pa以下まで十分に真空排気した。 真空排気を継続したまま加熱を開始し、850℃到達後からは炉内に窒素ガスを導入し、炉内雰囲気圧力を0.8MPaGで一定とした。 窒素ガスの導入開始後も1950℃まで昇温を続けた。この焼成の保持温度(1950℃)で4時間焼成し、その後加熱を終了して冷却した。室温まで冷却後、容器から回収された赤色の塊状物を乳鉢で解砕した。その後、最終的に目開き250μmの篩を通過させた粉末(焼成物)を得た。 【0071】 3)低温焼成工程(アニール工程) 焼成工程で得た焼成物を、円筒型窒化ホウ素製容器中に充填し、さらにカーボンヒーターを備える電気炉内に入れた。そして、大気圧のアルゴンフロー雰囲気下、1350℃で8時間保持することで、低温焼成粉末を得た。 【0072】 4)粉砕工程 低温焼成工程で得た低温焼成粉末を、水とエタノールの混合液中に投入して分散液とした。この分散液について、ボールミル(ジルコニアボール)を用いて、ボールミル粉砕を実施した。ボールミル粉砕の回転数(rpm)および時間(h)は、表1に記載のとおりとした。これにより粉砕粉末を得た。 【0073】 5)デカンテーション工程 まず、粉砕工程を経て微粉化された蛍光体粒子を、分散媒に投入し、蛍光体粒子を分散媒に分散させた。分散には、超音波を用いた(表1)。分散媒は、ヘキサメタリン酸Naを0.05質量%含むイオン交換水の水溶液とし、表1に示す重量比となるように調整して用いた。 続けて、分散媒中で、蛍光体粒子の粉砕粉末が沈降しつつある上澄み液の微粉を除去するデカンテーション工程を実施した。デカンテーションの操作は、ストークスの式より、直径2μm以下の粒子を除去する設定で蛍光体粒子の沈降時間を計算し、沈降開始から所定時間に達したと同時に、所定高さ以上の上澄み液を除去する方法で実施した。除去には、円筒状容器の所定高さに吸入口を設置した管より上方の液を吸い上げて、上澄み液を除去することができるようにした装置を用いた。 デカンテーションの操作は繰り返し実施した(表1)。 【0074】 6)ろ過・乾燥工程 デカンテーション工程で得られた沈殿物をろ過、乾燥し、更に目開き75μmの篩を通過させた。篩を通過しなかった粗大粒子は除去した。 【0075】 7)酸処理工程 焼成時に生成したと考えられる不純物を除去するために、酸処理を実施した。 具体的には、上記で篩を通過した粉末を、粉末濃度が26.7質量%となるよう0.5Mの塩酸中に浸し、さらに加熱しながら1時間攪拌する酸処理を実施した。その後、約25℃の室温で濾過により粉末と塩酸液とを分離し、粉末を純水で洗浄した。さらにその後、純水で洗浄した粉末を、100℃以上120℃以下の乾燥機中で12時間乾燥した。そして、乾燥した粉末を、目開き75μmの篩で分級した。 以上の手順により、実施例1の蛍光体粒子を得た。 【0076】 (実施例2~6、比較例1~3) 表1に示す条件で粉砕工程を行い、デカンテーション工程を行った以外は、実施例1と同様の手順で、蛍光体粒子をそれぞれ得た。 【0077】 得られた各蛍光体粒子を用いて、以下の測定・評価を行った。結果を、表2に示す。 【0078】 <結晶構造の確認> 実施例および比較例の各蛍光体粒子について、X線回折装置(株式会社リガク製UltimaIV)を用い、Cu-Kα線を用いた粉末X線回折パターンにより、その結晶構造を確認した。 実施例および比較例の各蛍光体粒子の粉末X線回折パターンには、CaAlSiN3結晶と同一の回折パターンが認められた。つまり、実施例および比較例において、主結晶相がCaAlSiN3と同一の結晶構造を有するSCASN系蛍光体が得られたことが確認された。 【0079】 <粒子径の測定> 1)レーザー回折・散乱法の粒子径測定装置であるMicrotrac MT3300EXII(マイクロトラック・ベル株式会社)により、以下の処理を施す前の蛍光体粒子の粒径分布を測定した。得られた粒径分布から、体積基準の積算分率における累積10、50、90%に相当する各粒径Dx10、Dx50、Dx90をそれぞれ求めた。 【0080】 2)次に、以下の処理を施した蛍光体粒子について、上記1)と同様にして、粒径分布を測定し、得られた粒径分布から、体積基準の積算分率における累積10、50、90%に相当する各粒径Dy10、Dy50、Dy90をそれぞれ求めた。 なお、超音波ホモジナイザとして、「US-150E」(株式会社日本精機製作所製)を用いた。 (処理)濃度0.2%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液100ml中に各蛍光体粒子30mgを均一に分散された分散液を用意し、当該分散液を底面の内径5.5cmの円柱状容器に入れた。次に当該分散液の上方から、超音波ホモジナイザの振動子(外径20mmの円柱状チップ)部分を挿入し、当該振動子が深さ1.0cm以上まで浸漬した状態で、当該分散液に周波数19.5kHz、出力150Wで超音波を3分間照射した。 【0081】 <比表面積> 得られた各蛍光体粒子約0.25gを、300℃で約5時間減圧脱気後に液体窒素温度(77K)におけるクリプトンガス吸着等温線を測定(測定装置:日本ベル製 BELSORP-max)し、BET法により比表面積を求めた。 【0082】 <発光特性> 実施例および比較例の各蛍光体粒子の、455nm光吸収率、内部量子効率および外部量子効率を、以下の手順で算出した。 【0083】 蛍光体粒子を、凹型セルに表面が平滑になるように充填し、積分球の開口部に取り付けた。この積分球内に、発光光源(Xeランプ)から455nmの波長に分光した単色光を、光ファイバーを用いて蛍光体の励起光として導入した。この単色光を蛍光体試料に照射し、試料の蛍光スペクトルを分光光度計(大塚電子株式会社製MCPD-7000)を用いて測定した。 得られたスペクトルデータから、励起反射光フォトン数(Qref)及び蛍光フォトン数(Qem)を算出した。励起反射光フォトン数は、励起光フォトン数と同じ波長範囲で、蛍光フォトン数は、465~800nmの範囲で算出した。 【0084】 また、同じ装置を用い、積分球の開口部に反射率が99%の標準反射板(Labsphere社製スペクトラロン(登録商標))を取り付けて、波長455nmの励起光のスペクトルを測定した。その際、450~465nmの波長範囲のスペクトルから励起光フォトン数(Qex)を算出した。 実施例、比較例の各蛍光体粒子の455nm光吸収率、内部量子効率、次に示す計算式によって求めた。 455nm光吸収率(%)={(Qex-Qref)/Qex}×100 内部量子効率(%)={Qem/(Qex-Qref)}×100 ちなみに、外部量子効率は、以下に示す計算式により求めた。 外部量子効率(%)=(Qem/Qex)×100 従って、上記式より外部量子効率は以下に示す関係となる。 外部量子効率=455nm光吸収率×内部量子効率 【0085】 実施例および比較例の蛍光体粒子のピーク波長は、積分球の開口部に蛍光体を取り付けて得られたスペクトルデータの、波長465nmから800nmの範囲で最も高い強度を示した波長とした。 【0086】 各実施例および比較例の製造条件(原料組成を含む)と評価結果を、まとめて表1、2に示す。 【0087】 【表1】 [図:0001435698000002.jpg] 【0088】 【表2】 [図:0001435698000003.jpg] 」 (2) 独立特許要件の判断その1(サポート要件違反) ア 本件補正発明が解決しようとする課題 本願明細書の発明の詳細な説明のうち【0005】~【0007】を参酌すると、本件補正発明が解決しようとする課題は、次のとおりであると認められる。 <本件補正発明が解決しようとする課題> 「近年、マイクロLEDの小型化・高性能化への期待がますます高まっていることに対処するため、蛍光体粒子の粒径を小さくすると、蛍光体粒子の粒径を小さくするほど、凝集しやすく、その結果、蛍光体を含む光変換層の励起光の透過率が上昇したり、光変換層の作成時にノズル詰まりなどが生じたりするといった問題が発生する傾向があったところ、蛍光体粒子の性能を保持し、かつ、粒径をより小さくしつつも、粒子の凝集を抑制できる蛍光体粒子を提供すること。」 イ 本件補正発明が課題a及び課題bが解決できると認識できないこと (ア) 本件補正発明が解決しようとする課題のうち、次の課題をそれぞれ「課題a」及び「課題b」という。 (課題a) 蛍光体粒子の粒径を小さくするほど、凝集しやすく、その結果、蛍光体を含む光変換層の励起光の透過率が上昇することがあること。 (課題b) 蛍光体粒子の粒径を小さくするほど、凝集しやすく、その結果、光変換層の作成時にノズル詰まりなどが生じたりすること。 (イ)a 前記課題aは、マイクロLEDなどに用いる光変換層を形成した場合のものと理解されるところ、例えば、樹脂に分散するのか、混ぜるときに溶剤としてどのようなものを用いるのかなどが不明であり、具体的にどのような形態の光変換層なのか不明である。 b 前記課題bについても、例えばノズルの径がどの程度のものであるのかなど、どのようなノズルなのか不明であり、また、蛍光体粒子について粒径が大きいものが多いことが問題なのか、それとも、例えば、凝集しやすい0.2μm以下の超微粒子が凝集してしまうことが問題なのか不明である。 c このように、課題a及び課題bは極めて抽象的に記載されており、具体的に理解できなから、本願明細書の発明の詳細な説明の記載からは、課題を解決するための手段としての技術思想を認識することができない。 d この点を措くとしても、本願明細書の【0065】以降に開示された実験結果では(特に下記の【表2】参照)、蛍光体粒子自体について、「455nm光吸収率」、「内部量子効率」及び「外部量子効率」が測定されているだけで、前記課題a及び課題bを検証する実験は行われていないから、本件補正発明の構成で本件補正発明が解決しようとする課題を解決できることは、本願明細書の発明の詳細な説明の記載からは認識できず、それを支持する技術常識も見当たらない。 【表2】 [図:0001435698000004.jpg] ウ Dx90/Dy90と光学特性の因果関係を認識できないこと (ア) 表2の発光特性の評価は、蛍光体微粒子の評価であるから、「455nm光吸収」、「内部量子効率」、「外部量子効率」は、第一義的には、処理Aを行わずに測定した粒径であるDyに従うと考えるのが、実験結果の素直な解釈である。 (イ) すなわち、表2に示される実験結果については、次のように解釈することが、素直な解釈と思われる。 超音波分散していない比較例は、Dx90が50μm超と非常に大きく、その一方で、Dx10が0.5μm以下となっている。その結果、最適な粒径の蛍光体粒子に比較して、非常に大きな粒径のものが多く(スカスカとなるため)透過率が上昇し、その結果として光吸収率が低下すると理解できる。さらに、粒径がサブミクロンの粒子が多いからこれに起因しても蛍光体粒子の光吸収が低下すると理解できる。また、内部量子効率の低下については、表には現れていないが、粒径が0.2μm未満の超微粒子の割合が大きいことに起因するかもしれないことが推測できる。そして、外部量子効率の低下は、これらを掛け合わせた結果である。 (ウ) これに対して、本件補正発明は、実施例と比較例との結果の相違を、次の条件(a)、(b)及び(d)に帰しているが、実施例と比較例との結果の相違をなぜこれらの条件に帰すべきであるとするのか、その根拠は不明である。 (a) Dx50が、0.5μm以上35μm以下であり、かつ (b) Dx90/Dy90が、0.7以上15以下であり、かつ (d) (Dx90-Dx50)/(Dx50)が0.1以上25以下である。 (エ) 条件(a)は粒径の代表値である「Dx50」を特定し、条件(d)は、粒径の前記代表値から大きくはずれる外れ値の前記代表値に対する比を特定するものであるから、「Dx50」の範囲が適切に狭まれば、「455nm光吸収率」、「内部量子効率」及び「外部量子効率」に対して因果関係を有することとなり、表2の比較例よりも好適な結果を担保するために必要な技術事項として機能するかもしれない。 しかし、「処理A」をした前後でのD90の比である「Dx90/Dy90」が1からずれる、とりわけ大きくなることの物理的な意味は、処理Aにより凝集がほぐれることであるところ(国際公開第2020/218109号の[0013]等参照)、このパラメータがどうして処理Aを施していない蛍光体粒子自体についての「455nm光吸収率」、「内部量子効率」及び「外部量子効率」に対して因果関係を有するのか、本願明細書の発明の詳細な説明については理解することができず、それを支持する技術常識も見当たらない。 エ 請求人の主張について (ア) 請求人の主張その1について a 請求人の主張その1の内容 請求人は、次のとおり主張している。 特定の超音波ホモジナイザ処理前後の蛍光体粒子のD90の比(Dx90/Dy90)を制御することで、蛍光体粒子における凝集の程度をより高度に制御できると考えられる。すなわち、通常、凝集が起きている蛍光体粒子に対して超音波ホモジナイザ処理を施すと、凝集状態を解消し分散状態にさせることができる。そこで、本実施形態においては、処理条件を特定するとともに、Dx90/Dy90を0.7以上とすることで蛍光体粒子の粒径をより小さくしつつ、15以下とすることで蛍光体粒子における凝集を効果的に低減できる。 また、累積90%に相当する粒径を制御することで、粒径が大きい側の凝集性が抑制されるため、より顕著に凝集抑制効果を得ることができる。 b 請求人の主張その1についての検討 請求人は、「特定の超音波ホモジナイザ処理前後の蛍光体粒子のD90の比(Dx90/Dy90)を制御することで、蛍光体粒子における凝集の程度をより高度に制御できると考えられる。すなわち、通常、凝集が起きている蛍光体粒子に対して超音波ホモジナイザ処理を施すと、凝集状態を解消し分散状態にさせることができる。」と説明しているが、本件補正発明において超音波ホモジナイザ処理を施すことの特定があるは、Dy90の測定時のみであって、蛍光体粒子を用いた何らかの製品を製造する際に超音波ホモジナイザ処理が施されていることの特定は無い。 また、「累積90%に相当する粒径を制御することで、粒径が大きい側の凝集性が抑制されるため、より顕著に凝集抑制効果を得ることができる」との主張は、技術的に抽象的な記述であって、その意味を明瞭に把握することはできない。 したがって、請求人の主張その1は、前記イの結論を左右するものではない。 (イ) 請求人の主張その2について a 請求人の主張その2の内容 請求人は、次のとおり主張している。 本願明細書の実施例である「CASNからなる粉末状蛍光体およびSCASNからなる粉末状蛍光体の中から選ばれる1種または2種から構成される蛍光体粒子」であって、「(a)Dx50が、0.5μm以上35μm以下、および、(b)Dx90/Dy90が、0.7以上15以下」を満たす本願実施例1~6は、そうでない本願比較例1~3よりも発光特性が向上していることを確認している。 b 請求人の主張その2についての検討 前記ウにおいて検討したとおり、「処理A」をした前後でのD90の比である「Dx90/Dy90」が1からずれる、とりわけ大きくなることの物理的な意味は、処理Aにより凝集がほぐれることであるところ、このパラメータがどうして処理Aを施していない蛍光体粒子自体についての「455nm光吸収率」、「内部量子効率」及び「外部量子効率」に対して因果関係を有するのか、本願明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいては理解することができず、それを支持する技術常識も見当たらないから、請求人の主張その2は、前記ウの結論を左右するものではない。 オ 独立特許要件の判断その1のまとめ 以上のとおりであるから、当業者は、本願明細書の発明の詳細な説明の記載により、本件補正発明の構成で本件補正発明が解決しようとする課題を解決することができると認識することはできないから、本件補正発明は本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。 したがって、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。 (3) 独立特許要件の判断その2(進歩性の欠如) ア 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定 (ア) 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用された、優先日前に発行された文献である国際公開第2020/054351号(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(イ)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。 a 特許請求の範囲 「[請求項1] 主結晶相がCaAlSiN3と同一の結晶構造を有する、一般式がMAlSiN3:Eu(Mは、Sr、Mg、Ca、Baの中から選ばれる、1種以上の元素)で示される蛍光体であって、 レーザー回折散乱法で測定した粒子径分布における、体積頻度を基準とするd10、d50、d90(単位はそれぞれ[μm])を用いて示されるスパン値(d90-d10)/d50の値が1.70以下、d50が10.0μm以下の条件を満たす蛍光体。 (ただし、前記レーザー回折散乱法で測定した粒子径分布における、体積頻度を基準とするd10、d50、d90は、測定する蛍光体0.5gを、ヘキサメタリン酸ナトリウムを0.05wt%混合したイオン交換水溶液100ml中に投入し、これを発振周波数19.5±1kHz、チップサイズ20φ、振幅が32±2μmの超音波ホモジナイザーを用いて、チップを液の中央部に配置して3分間分散処理した液を用いた測定値である。)」 b 技術分野及び発明の概要等([0001]~[0015]) 「技術分野 [0001] 本発明は、蛍光体、及び前記蛍光体を用いた発光装置に関する。より詳しくは、LED(発光ダイオードともいう)又はLD(レーザーダイオードともいう)向けに好ましく用いることができる、輝度の高い赤色蛍光体、及び前記赤色蛍光体を用いた発光装置に関する。 …(中略)… 発明が解決しようとする課題 [0006] 現在、液晶ディスプレイに用いられるLEDの小型化が進んでいる。小型化LEDであるミニLEDやマイクロLEDに用いられる蛍光体は、粒子のサイズが数百nmから数μm程度となる。粒子径が小さくなることによって、色むらや色ずれを防ぐ事ができるが、粒子径が過度に小さいと、光の散乱が強くなり、励起光の吸収率が低下する。また、粉砕時に多く発生する過度に小さい粒子は、粉砕により発生する欠陥が多く、光を吸収する欠陥を多く含む為、内部量子効率が低下するという問題点がある。 [0007] そこで、本発明は、d50が10μm以下であるように小粒径でありながら、粒子径が比較的均一であり、かつ高内部量子効率及び高光吸収率を維持させることができる蛍光体を提供することを主目的とする。 …(中略)… 発明の効果 [0015] 本発明によれば、小粒径でありながら、粒子径が比較的均一であり、かつ高内部量子効率及び励起光に対する高い光吸収率をも維持する蛍光体を提供することができる。」 c 発明を実施するための形態([0016]~[0028]) 「発明を実施するための形態 …(中略)… [0019] (粒子径分布、スパン値) 本発明の蛍光体は、レーザー回折散乱法で測定した粒子径分布における、体積頻度を基準とし、それぞれ累計10%となる値であるd10、累計50%となる値であるd50、累計90%となる値であるd90(単位はそれぞれ[μm])を用いて示されるスパン値(d90-d10)/d50の値が1.70以下である。前記スパン値は、粒子径分布の広がりの幅を示す指標となる値であり、スパン値が本発明で規定する上限値、具体的には1.70を超えると粒径のばらつきが大きくなり、励起光に対する蛍光体の吸収効率が低下する。また、スパン値が大きいとd50に対するd10が小さくなり、超微粒子の割合が大きくなり、LED化した際に超微粒子によって光が散乱、反射され、LEDの外に光が発するまでにLED内で光が回遊し、リフレクターや樹脂などにより光が減衰(熱などに変化)し、LED全体の輝度が低下しやすくなる。これは蛍光体と樹脂を混合して作成した蛍光体シートでも同様の傾向となる。蛍光体シートに青色の励起光を照射し、反対側から出てくる励起光の透過光と蛍光を測定し、照射した励起光に対して出てくる蛍光の割合を比較するとスパン値が大きい、すなわち超微粒子を多く含んだ蛍光体は励起光に対する蛍光の割合が低下する。なお本明細書において「超微粒子」とは、粒子径が0.2μm以下となる粒子とする。 …(中略)… [0023] なおレーザー回折散乱法で粉体の粒子径を測定する場合には、測定前に粉体同士の凝集を解き、分散媒中に十分に分散させておくことが肝要であるが、分散条件に相違があると測定値に差が生じることもあることから、本発明の蛍光体のレーザー回折散乱法によるd10、d50、d90などの測定値は、測定する蛍光体0.5gを、ヘキサメタリン酸ナトリウムを0.05wt%混合したイオン交換水溶液100ml中に投入し、これを発振周波数19.5±1kHz、チップサイズ20φ、振幅が32±2μmの超音波ホモジナイザーを用いて、チップを液の中央部に配置して3分間分散処理した液を用いた測定値であると定める。ここで19.5±1の表記は、18.5以上20.5以下の範囲であることを示し、32±2は、30以上34以下の範囲であることを示す。 …(後略)」 d 実施例([0029]~[0070]) 「実施例 [0029] 以下、実施例及び比較例を用いて本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明は特定の方法により製造される蛍光体に限定されない。なお実施例1~4及び比較例1~5はEu付活CASN蛍光体であり、実施例5及び比較例6~8はEu付活SCASN蛍光体である。 …(中略)… [0037](実施例5) <混合工程> 水分が1質量ppm以下、酸素分が1質量ppm以下である窒素雰囲気に保持したグローブボックス中で、α型窒化ケイ素粉末(Si3N4、SN-E10グレード、宇部興産社製)25.53質量%、窒化カルシウム粉末(Ca3N2、太平洋セメント社製)2.43質量%、窒化ストロンチウム粉末(Sr2N、Materion社製)43.91質量%、窒化アルミニウム粉末(AlN、Eグレード、トクヤマ社製)22.38質量%、酸化ユーロピウム粉末(Eu2O3、日本イットリウム社製)5.76質量%を混合し、原料混合粉末を得た。この原料混合粉末220gを、タングステン製の蓋付き容器に充填した。 [0038] <焼成工程> 前記原料混合粉末を充填した容器を、グローブボックスから取出し、カーボンヒーターを備えた電気炉内に速やかにセットして、炉内を0.1PaA以下まで十分に真空排気した。真空排気を継続したまま加熱を開始し、850℃到達後からは炉内に窒素ガスを導入し、炉内雰囲気圧力を0.80MPaGで一定とした。窒素ガスは常時導入と排出を行い、原料からの揮発成分の排出を常時行った。窒素ガスの導入1950℃まで昇温を続け、この焼成の保持温度で8時間の焼成を行い、その後加熱を終了して冷却させた。室温まで冷却した後、容器から回収された赤色の塊状物を、直径5mmのアルミナボールを用いてボールミル粉砕を5時間行い、最終的に目開き250μmの篩を通過させた粉末を得た。 [0039] <酸処理工程> 前記篩を通過した粉末中に残る焼成時に生成した不純物を除去するために、酸処理を実施した。即ち前記篩を通過した粉末を、粉末濃度が25質量%となるよう1.0Mの塩酸中に浸し、さらに攪拌しながら1時間煮沸する酸処理を実施した。その後、約25℃の室温でデカンテーションによって塩酸液と超微粒子を取り除いた。なおデカンテーションの分散媒にはヘキサメタリン酸Naを0.05wt%混合したイオン交換水の水溶液を用いた。粒子の沈降時間はストークスの式で計算し、沈降開始から所定時間後、2μm以下の粒子を含む上澄み液を除去排出することにより超微粒子の一部を取り除いた。なおデカンテーションの操作は3回繰り返して実施した。得られた粉末を100℃~120℃の乾燥機中で12時間乾燥し、乾燥後の粉末を目開き75μmの篩で分級し、実施例5の蛍光体を得た。 …(中略)… [0044]<粒子径分布の測定> 各実施例及び比較例の粒子径分布を、粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製マイクロトラックMT3000II)を用い、JIS R1622及びR1629に従って測定し、d10、d50、d90、d100を算出した。なおレーザー回折・散乱法で粉体の粒子径を測定する場合には、測定前に粉体同士の凝集を解き、分散媒中に十分に分散させておくことが肝要であるが、分散条件に相違があると測定値に差が生じることもあることから、本発明のβ型サイアロン蛍光体(当審注「β型サイアロン蛍光体」は「Eu付活SCASN蛍光体」とあるべきところの明らかな誤記である。)のレーザー回折・散乱法によるd10、d50、d90などの測定値は、測定する蛍光体0.5gを、ヘキサメタリン酸ナトリウムを0.05wt%混合したイオン交換水溶液100ml中に投入し、これをAmplitude100%、発振周波数19.5±1kHz、チップサイズ20φ、振幅が32±2μmの超音波ホモジナイザー(US-150E、株式会社日本精機製作所)を用いて、チップを液の中央部に配置して3分間分散処理した液を用いて測定した。ここで19.5±1の表記は、18.5以上20.5以下の範囲であることを示し、32±2は、30以上34以下の範囲であることを示す。 …(中略)… [0061] [表4] [図:0001435698000005.jpg] [0062] なお、CASN、SCASN蛍光体の455nm光吸収率は粒径に依存する。これは粒径が小さいと比表面積が上昇し、反射、散乱の影響が大きくなるため、励起光である455nm波長の光の光吸収率が低下する。そこで、d50の値が近い実施例と比較例を比較対象とした。すなわち、表1~表4のそれぞれにおいては、d50の値が近い実施例および比較例の組み合わせを、互いに比較するために示してある。 …(中略)… [0068] 表4の実施例5と比較例6は、SCASN蛍光体であるが、d50はどちらも10.0μm以下であるが、実施例5の方がスパン値が小さく、d50/d1が小さく、d10の値が大きいことから、実施例5の方が超微粒子が少ない。そのため、実施例5のほうが比較例6よりも超微粒子から受ける影響が小さいため、455nm光吸収率及び内部量子効率が高い。 [0068] 比較例7と比較例8を比較すると、比較例7はデカンテーションによる分級を実施しているが、d50がどちらも10.0μm以上と大きいため、分級を実施していない比較例8における455nm光吸収率及び内部量子効率との差が非常に小さい。また、マイクロLEDは100μm以下のサイズとなり、蛍光体層は50μm以下に設定されることが多い。そこで、50μm厚のシート加工性が良好であることが求められるが、比較例7、比較例8はd50がどちらも10.0μm以上と大きいため、50μm厚のシート加工性が悪い。さらに粒径が大きいためLEDに添加される蛍光体量がばらつき、さらにLED中の分散状態もばらつくため、LEDパッケージの色度Yのバラツキが大きい。」 e 産業上の利用可能性 「産業上の利用可能性 [0070] 本発明の蛍光体、及び製法で作成された蛍光体と発光装置は、白色発光装置及び有色発光装置として用いられる。本発明の白色発光装置としては、液晶ディスプレー、マイクロLEDディスプレー、ミニLEDディスプレー、液晶パネルのバックライト、照明装置、信号装置、画像表示装置に用いられる。また、プロジェクター用途にも使用される。」 (イ) 引用発明の認定 前記(ア)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、実施例5に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。 <引用発明> 「Eu付活SCASN蛍光体であって、([0029]) d50が10μm以下であるように小粒径でありながら、粒子径が比較的均一であり、かつ高内部量子効率及び高光吸収率を維持させることができる蛍光体であり、([0007]) 水分が1質量ppm以下、酸素分が1質量ppm以下である窒素雰囲気に保持したグローブボックス中で、α型窒化ケイ素粉末、窒化カルシウム粉末、窒化ストロンチウム粉末、窒化アルミニウム粉末、酸化ユーロピウム粉末を混合し、原料混合粉末を得、この原料混合粉末を、タングステン製の蓋付き容器に充填し、([0037]) 窒素ガスは常時導入と排出を行い、原料からの揮発成分の排出を常時行い、1950℃まで昇温を続け、この焼成の保持温度で8時間の焼成を行い、その後加熱を終了して冷却させ、室温まで冷却した後、容器から回収された赤色の塊状物を、直径5mmのアルミナボールを用いてボールミル粉砕を5時間行い、最終的に目開き250μmの篩を通過させた粉末を得、([0038]) 前記篩を通過した粉末を、塩酸中に浸し、さらに攪拌しながら1時間煮沸する酸処理を実施し、その後、約25℃の室温で、デカンテーションの分散媒にはヘキサメタリン酸Naを0.05wt%混合したイオン交換水の水溶液を用いたデカンテーションによって塩酸液と超微粒子を取り除き、2μm以下の粒子を含む上澄み液を除去排出することにより超微粒子の一部を取り除く、デカンテーションの操作は3回繰り返して実施し、得られた粉末を100℃~120℃の乾燥機中で12時間乾燥し、乾燥後の粉末を目開き75μmの篩で分級し、蛍光体を得、([0039]) レーザー回折散乱法で測定した粒子径分布における、体積頻度を基準とし、それぞれ累計10%となる値であるd10、累計50%となる値であるd50、累計90%となる値であるd90を用い、([0019]) 粒子径分布を、粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製マイクロトラックMT3000II)を用い、JIS R1622及びR1629に従って測定し、d10、d50、d90、d100を算出し、 レーザー回折・散乱法で粉体の粒子径を測定する場合には、測定前に粉体同士の凝集を解き、分散媒中に十分に分散させておくことが肝要であるが、分散条件に相違があると測定値に差が生じることもあることから、レーザー回折・散乱法によるd10、d50、d90などの測定値は、測定する蛍光体0.5gを、ヘキサメタリン酸ナトリウムを0.05wt%混合したイオン交換水溶液100ml中に投入し、これをAmplitude100%、発振周波数19.5±1kHz、チップサイズ20φ、振幅が32±2μmの超音波ホモジナイザー(US-150E、株式会社日本精機製作所)を用いて、チップを液の中央部に配置して3分間分散処理した液を用いて測定し、([0044]) d50は、4.8μmであり、d90は、10.0μmである([0061])Eu付活SCASN蛍光体。」 イ 技術常識の認定 (ア) 引用文献2の記載事項 当審において新たに引用する、優先日前に発行された文献である国際公開第2020/218109号(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。 「技術分野 [0001] 本発明は、蛍光体粉末および発光装置に関する。 背景技術 [0002] 近年、LEDなどの半導体発光素子と、当該半導体発光素子からの光の一部を吸収し、吸収した光を長波長の波長変換光に変換して発光する蛍光体とを組み合わせた発光装置の開発が進められている。蛍光体としては、結晶構造が比較的安定な窒化物蛍光体や酸窒化物蛍光体が注目されている。特に、Euを賦活したβ型サイアロン蛍光体は耐熱性、耐久性に優れ、温度上昇に伴う輝度変化が小さいという特徴に加え、紫外から青色光の幅広い波長の光で励起され、520~550nmの波長域にピークを有する緑色光を発光することから、白色LEDに有用な蛍光体として実用化が進んでいる(特許文献1参照)。 たとえば、特許文献2には、平均粒度(d1)(空気透過法)が9~16μmであり、粒度分布でのメディアン径(50%D)が12.5~35μmであり、50%D/d1=1.4~2.2なる条件を満たすβ型サイアロン蛍光体が開示されている。 …(中略)… 発明の概要 発明が解決しようとする課題 [0004] 近年、白色LEDの需要の増大とともに、一層の高輝度化が求められるようになり、白色LEDに用いられるβ型サイアロン蛍光体の特性に対する要求水準がますます高くなっている。 [0005] 本発明は上述のような課題を鑑みたものであり、白色LEDの輝度を向上させることができるβ型サイアロン蛍光体に関する技術を提供することを目的とする。 課題を解決するための手段 [0006] 本発明によれば、Euを賦活したβ型サイアロン蛍光体粒子を主成分として含む蛍光体粉末であって、 超音波ホモジナイザ処理が施されていない前記蛍光体粉末において、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いた湿式測定により測定されるメジアン径(D50)をD1とし、 以下の条件で実施される超音波ホモジナイザ処理が施された前記蛍光体粉末において、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いた湿式測定により測定されるメジアン径(D50)をD2としたとき、 D1/D2が1.05以上1.70以下である蛍光体粉末が提供される。 (条件) 前記蛍光体粉末30mgを、濃度0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液100ml中に均一に分散させた分散液を、底面が内径5.5cmの円柱状容器に入れる。次に当該分散液中に、超音波ホモジナイザの外径20mmの円柱状チップを1.0cm以上浸した状態で、周波数19.5kHz、出力150Wで3分間、当該分散液に超音波を照射する。 …(中略)… 発明の効果 [0008] 本発明の蛍光体粉末によれば、白色LEDの輝度を向上させることができる。 [0009] 以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。 [0010] 本発明者らは、Euを賦活したβ型サイアロン蛍光体粒子の凝集状態と当該蛍光体粒子を用いた白色LEDの輝度との関係を調べたところ、蛍光体粒子の超音波ホモジナイザ前後でのメジアン径の比と、当該蛍光体を用いた白色LEDの輝度に密接な関係性があることを見出した。従来のEuを賦活したβ型サイアロン蛍光体粒子では、超音波ホモジナイザ処理前後でのメジアン径の比を調節することは何ら検討されておらず、蛍光体粒子の凝集の程度を制御することで、白色LEDの輝度を向上させる余地があると考え、本発明の完成に至った。 [0011] 実施形態に係る蛍光体粉末は、Euを賦活したβ型サイアロン蛍光体粒子(以下、単に「蛍光体粒子」と呼ぶ場合がある)を主成分として含む。ここで主成分とは、蛍光体粉末の全体に対して、Euを賦活したβ型サイアロン蛍光体粒子を90質量%以上含む場合をいう。この場合、蛍光体粉末は、Euを賦活したβ型サイアロン蛍光体粒子以外の蛍光体粒子を含んでもよい。 なお、本実施形態の蛍光体粉末は、Euを賦活したβ型サイアロン蛍光体粒子からなること、言い換えると、Euを賦活したβ型サイアロン蛍光体粒子の含有率が100質量%であることが好ましい。 本実施形態のEuを賦活したβ型サイアロン蛍光体粒子の成分は、一般式:Si6-zAlzOzN8-z(z=0.005~1)で表されるβ型サイアロンに発光中心として二価のユーロピウム(Eu2+)を固溶した蛍光体である。 [0012] 実施形態に係る蛍光体粉末は、Euを賦活したβ型サイアロン蛍光体粒子を主成分として含む蛍光体粉末であって、超音波ホモジナイザ処理が施されていない前記蛍光体粉末において、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いた湿式測定により測定されるメジアン径(D50)をD1とし、以下の条件で実施される超音波ホモジナイザ処理が施された前記蛍光体粉末において、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いた湿式測定により測定されるメジアン径(D50)をD2としたとき、 D1/D2が1.05以上1.70以下である。 (条件) 前記蛍光体粉末30mgを、濃度0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液100ml中に均一に分散させた分散液を、底面が内径5.5cmの円柱状容器に入れる。次に当該分散液中に、超音波ホモジナイザの外径20mmの円柱状チップを1.0cm以上浸した状態で、周波数19.5kHz、出力150Wで3分間、当該分散液に超音波を照射する。 [0013] 本実施形態の蛍光体粉末は、上記の特定の条件の超音波ホモジナイザ処理を行うことにより、蛍光体粒子の凝集がほぐれて、単分散化されるものである。言い換えると、本実施形態の蛍光体粉末は、蛍光体粒子が適度に凝集したものである。そして、ほとんど凝集していない場合は、単分散の状態に近いため、上記の特定の条件の超音波ホモジナイザ処理によって分散させられても、D1とD2はほぼ同等になり、D1/D2は1に近くなる。また、蛍光体粒子の凝集の程度が大きすぎる場合は、上記の特定の条件の超音波ホモジナイザ処理によって凝集がほぐれ単分散化される蛍光体粒子が多くなるため、D1/D2は大きくなる。 本実施形態の蛍光体粉末は、D1/D2を1.05以上とすることにより、当該蛍光体粉末を用いた白色LEDの輝度の向上を図ることができる。一方、D1/D2を1.70以下とすることにより、粒子の凝集を抑制することで、後述する白色LEDの封止材中での分散性を良好にし、輝度の低下を抑制することができる。 特許文献1、2に記載されたような、通常の技術水準でのβ型サイアロン蛍光体粒子からなる蛍光体粉末は、超音波ホモジナイザ処理をしても、蛍光体粉末の凝集状態はほぼ変動しない。すなわち、ほとんど凝集していないといえる。これに対して、本実施形態の蛍光体粉末では、D1/D2を所定の範囲に特定することによって、蛍光体粉末を適度に凝集させることによって、本実施形態の蛍光体粉末を白色LEDに用いたときの全光束を向上することができるものである。 [0014] なお、上記条件の分散液は、蛍光体粉末30mgと、0.2%に調整したヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液100mlとを200mlのビーカー内に採取した後、室温(25℃)でスパチュラーを用いて沈殿が生じない程度に均一に攪拌することで得られる。 [0015] なお、蛍光体粉末のメジアン径(D50)は、具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いた湿式測定、フローセル式により算出される。このとき、計測装置への粉末供給時には超音波をかけず、試料供給器として付属のSDC(Sample Delivery Controller)を用いて、ポンプ流速75%でサンプルを供給し、測定する。なお、分散媒としては0.2%に調整したヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を使用する。 [0016] D1/D2の下限は1.10以上が好ましく、1.15以上がより好ましく、1.20以上がさらに好ましい。一方、D1/D2は1.65以下が好ましく、1.55以下がより好ましい。D1/D2の下限および上限を上記範囲とすることにより、当該蛍光体粉末を用いた白色LEDの輝度をさらに向上させることができる。 [0017] D1の下限は10μm以上が好ましく13μm以上がより好ましく、16μm以上がさらに好ましい。また、D1の上限は35μm以下が好ましく、32μm以下がより好ましく、29μm以下がさらに好ましい。D1の下限および上限を上記範囲とすることにより、当該蛍光体粉末を用いた白色LEDの輝度をより一層向上させることができる。 [0018] D2の下限は8μm以上が好ましく、11μm以上がより好ましく、14μm以上がさらに好ましい。D2の上限は25μm以下が好ましく、22μm以下がより好ましく、19μm以下がさらに好ましい。D2の下限および上限を上記範囲とすることにより、当該蛍光体粉末を用いた白色LEDの輝度をより一層向上させることができる。 [0019] また、実施形態に係る蛍光体粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置を用いた湿式測定により測定されるメジアン径(D10)は、7.0~25μmが好ましく、9.5~20μmがより好ましい。 また、実施形態に係る蛍光体粉末のレーザー回折式粒度分布測定装置を用いた湿式測定により測定されるメジアン径(D90)は、20~60μmが好ましく、25~55μmがより好ましい。 実施形態に係る蛍光体粉末のメジアン径(D10)、メジアン径(D90)を上記の数値範囲とすることにより、蛍光体粉末のばらつきを抑制し、当該蛍光体粉末を用いた白色LEDの輝度をより一層向上させることができる。」 (イ) 引用文献3の記載事項 当審において新たに引用する、優先日前に発行された文献である西川義人「広帯域粒子径分布測定装置の紹介」TRL OSAKA Technical Sheet No.05012、2005年12月22日発行(https://orist.jp/technicalsheet/5012.PDF)(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。 [図:0001435698000006.jpg] (ウ) 技術常識Aの認定 前記(ア)、(イ)に摘記した引用文献2、3の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識A」という。) <技術常識1> 「超音波の照射の有無及びその程度により、凝集した粒子の凝集がほどける程度が異なること。」 (エ) 技術常識Bの認定 前記(ア)、(イ)に摘記した引用文献2、3の記載事項に例示されるように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識B」という。) <技術常識B> 「レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて湿式測定を行う場合、分散媒として0.2%に調整したヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を使用すること。」 ウ 本件補正発明と引用発明の対比 (ア) 対比分析 本件補正発明と引用発明を対比する。 a 構成Xの観点(蛍光体粒子) (a) 構成Xは、「SCASNからなる粉末状蛍光体から構成される蛍光体粒子」の発明であることを特定するものである。 (b) 引用発明の「Eu付活SCASN蛍光体」は、「d50は、4.8μmであり、d90は、10.0μmであ[る]」ことから、本件補正発明にいうところの「SCASNからなる粉末状蛍光体から構成される蛍光体粒子」であるといえる。 (c) したがって、本件補正発明と引用発明は、次の点において一致する。 「SCASNからなる粉末状蛍光体から構成される蛍光体粒子」の発明である点 b 構成Aの観点(構成Aa、Ab及びAd) (a) 構成Aaの観点(Dx50) i 構成Aaは、「Dx50が、0.5μm以上35μm以下であ[る]」ことを特定するものである。 ここで、「Dx50」は、「当該蛍光体粒子のレーザー回折散乱法による体積基準の積算分率における累積50%に相当する粒径」である(後で検討する「Dx90」も同様に定義される。)。 ii 引用発明においては「d50は、4.8μmであ[る]」。 ここで、引用発明における「d50」は、次の処理(以下「処理1」という。)をした後に「レーザー回折散乱法で測定した」「粒子径分布」における、「体積頻度を基準」とした「累計50%となる値」であり、「d90」及び「d10」等も同様に定義される。 <処理1> 「測定する蛍光体0.5gを、ヘキサメタリン酸ナトリウムを0.05wt%混合したイオン交換水溶液100ml中に投入し、これをAmplitude100%、発振周波数19.5±1kHz、チップサイズ20φ、振幅が32±2μmの超音波ホモジナイザー(US-150E、株式会社日本精機製作所)を用いて、チップを液の中央部に配置して3分間分散処理した液を用いて測定する。」 iii ここで、処理条件を問わず、「レーザー回折散乱法で測定した粒径分布の体積基準の積算分率における累計50%に相当する値」を「D50」ということとする(「D90」も同様に定義する。)。 iv そうすると、本願発明と引用発明の構成Aaの観点における一致点及び相違点は、それぞれ次の(i)及び(ii)に示すとおりである。 (i) 構成Aaの観点における一致点 「D50が、0.5μm以上35μm以下であ[る]」点。 (ii) 構成Aaの観点における相違点 D50が、本願発明においては、その測定に際して処理1を行っていない「Dx50」であるのに対して、引用発明においては処理1を行った「d50」である点。 なお、前記(1)アにおいて注記したとおり、Dx50及びDx90の測定方法の詳細は不明であるため、令和8年3月12日の電話応対で請求人に確認したところ、これらの粒径の測定に際して、溶媒は濃度0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を利用し、フローセルを用いた湿式で粒径を測定しているとのことである。 (b) 構成Adの観点((Dx90-Dx50)/(Dx50)) i 構成Adは、「(Dx90-Dx50)/(Dx50)が0.1以上25以下である」ことを特定するものである。 ii 引用発明においては、「d50は、4.8μmであり、d90は、10.0μmである」から、引用発明においては、「(d90-d50)/(d50)」は、1.08となる。 iii そうすると、本願発明と引用発明の構成Adの観点における一致点及び相違点は、それぞれ次の(i)及び(ii)に示すとおりである。 (i) 構成Adの観点における一致点 「(D90-D50)/(D50)が0.1以上25以下である」点。 (ii) 構成Adの観点における相違点 D50及びD90が、本願発明においては、その測定に際して処理1を行っていない「Dx50」及び「Dx90」であるのに対して、引用発明においては処理1を行った「d50」及び「d90」である点。 (c) 構成Abの観点(Dx90/Dy90) i 構成Abは、「Dx90/Dy90が、0.7以上15以下であ[る]」ことを特定するものである。 ここで、「Dy90」は、「蛍光体粒子に処理Aを施した後の累積90%に相当する粒径」である。 <処理A> 「処理;濃度0.2%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液100ml中に前記蛍光体粒子30mgが均一に分散された分散液を用意し、当該分散液を底面の内径5.5cmの円柱状容器に入れる。次に当該分散液の上方から、超音波ホモジナイザの振動子(外径20mmの円柱状チップ)部分を挿入し、当該振動子が深さ1.0cm以上まで浸漬した状態で、当該分散液に周波数19.5kHz、出力150Wで超音波を3分間照射する。」 ii 本願発明においては、「Dx90/Dy90が、0.7以上15以下であ[る]」のに対して、 引用発明においては、この値が不明である点において相違する。 (イ) 一致点及び相違点 前記(ア)の対比分析の結果をまとめると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のa及びbに示すとおりである。 a 一致点 「SCASNからなる粉末状蛍光体から構成される蛍光体粒子であって、 当該蛍光体粒子のレーザー回折散乱法による体積基準の積算分率における累積50%に相当する粒径をD50とし、当該累積90%に相当する粒径をD90としたとき、 (a’)D50が、0.5μm以上35μm以下であり、かつ (d’)(D90-D50)/(D50)が0.1以上25以下である、蛍光体粒子」の発明である点。 ここで、「D50」及び「D90」は、処理条件を問わず、レーザー回折散乱法で測定した粒径分布の体積基準の積算分率におけるそれぞれ累計50%及び90%に相当する値である。」 b 相違点 (a) 相違点1(構成Aa及びAdに係る相違点) D50及びD90が、 本願発明においては、その測定に際して処理1を行っていない「Dx50」及び「Dx90」であるのに対して、 引用発明においては、次の処理1を行った「d50」及び「d90」である点。 <処理1> 「測定する蛍光体0.5gを、ヘキサメタリン酸ナトリウムを0.05wt%混合したイオン交換水溶液100ml中に投入し、これをAmplitude100%、発振周波数19.5±1kHz、チップサイズ20φ、振幅が32±2μmの超音波ホモジナイザー(US-150E、株式会社日本精機製作所)を用いて、チップを液の中央部に配置して3分間分散処理した液を用いて測定する。」 (b) 相違点2(構成Abに係る相違点) 本願発明においては、「Dx90/Dy90が、0.7以上15以下であ[る]」のに対して、 引用発明においては、この値が不明である点。 ここで、「Dy90」は、「蛍光体粒子に処理Aを施した後の累積90%に相当する粒径」である。 <処理A> 「処理;濃度0.2%のヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液100ml中に前記蛍光体粒子30mgが均一に分散された分散液を用意し、当該分散液を底面の内径5.5cmの円柱状容器に入れる。次に当該分散液の上方から、超音波ホモジナイザの振動子(外径20mmの円柱状チップ)部分を挿入し、当該振動子が深さ1.0cm以上まで浸漬した状態で、当該分散液に周波数19.5kHz、出力150Wで超音波を3分間照射する。」 エ 判断 (ア) 構成Ab(相違点2)の技術上の意義について a 前記イ(ウ)において技術常識Aとして認定したとおり、「超音波の照射の有無及びその程度により、凝集した粒子の凝集がほどける程度が異なること」は技術常識であるから、「処理A」をした前後でのD90の比である「Dx90/Dy90」が1からずれること、とりわけ大きくなることの物理的な意味が処理Aにより蛍光体粒子の凝集がほぐれることであることは、当業者には自明である。 b 本願発明の実施例を参照すると、構成Abを満たす実施例1~6(以下、総称して「実施例」という。)では、次に示す、超音波による分散処理を伴うデカンテーション工程を経ているのに対して、構成Abを満たさない比較例1~3(以下、総称して「比較例」という。)においては、このようなデカンテーション工程を経ていない。 <デカンテーション工程> 「まず、粉砕工程を経て微粉化された蛍光体粒子を、分散媒に投入し、蛍光体粒子を分散媒に分散させた。分散には、超音波を用いた(表1)。分散媒は、ヘキサメタリン酸Naを0.05質量%含むイオン交換水の水溶液とし、表1に示す重量比となるように調整して用いた。 続けて、分散媒中で、蛍光体粒子の粉砕粉末が沈降しつつある上澄み液の微粉を除去するデカンテーション工程を実施した。デカンテーションの操作は、ストークスの式より、直径2μm以下の粒子を除去する設定で蛍光体粒子の沈降時間を計算し、沈降開始から所定時間に達したと同時に、所定高さ以上の上澄み液を除去する方法で実施した。除去には、円筒状容器の所定高さに吸入口を設置した管より上方の液を吸い上げて、上澄み液を除去することができるようにした装置を用いた。」 c 上記のデカンテーション工程は、超音波を用いて蛍光体粒子を分散媒に十分に分散させ、上澄み液を除去することにより、微粉を除去するものである。 d 技術常識Aの知識を有する当業者は、「Dx90/Dy90」が1より大きいものは、微粉が凝集していたものが、蛍光体粒子の分散媒への超音波を用いた分散処理により、凝集がほどけて微粉がバラバラになったところで、微粉が除去され、その結果としてDy90がDx90より小さくなったことを理解できる。 e そうすると、構成Abのうち、「Dx90/Dy90が15以下であること」の限定は、分散媒への蛍光体粒子の十分な分散処理により凝集がほどけるようなものを対象から除外する、という技術上の意義があると認められる。 他方、構成Abのうち、「Dx90/Dy90が0.7以上」であることには、特段の技術上の意義は見いだせない。 (イ) 構成Ab(相違点2)の技術上の意義を踏まえた検討 a Dy90とd90の差 Dy90は「蛍光体粒子に処理Aを施した後の累積90%に相当する粒径」であり、d90は、蛍光体粒子に処理1を施した後のレーザー回折散乱法で測定した粒子径分布における、体積頻度を基準とし、累計50%となる値であるところ、ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液の濃度が、処理Aにおいては0.2%であるのに対して、引用発明の処理1においては0.05wt%である点において、処理Aと処理1は相違する。 しかし、「レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて湿式測定を行う場合、分散媒として0.2%に調整したヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を使用すること」は、技術常識であるから(「技術常識B」)、引用発明において、「d90」等に代えて「Dy90」等を測定するようにすることは、当業者にとっては通常の創作能力の発揮にすぎない。 b ここで、前記イ(ウ)において技術常識Aとして認定したとおり、「超音波の照射の有無及びその程度により、凝集した粒子の凝集がほどける程度が異なること」は技術常識であり、引用発明においては、「レーザー回折・散乱法で粉体の粒子径を測定する場合には、測定前に粉体同士の凝集を解き、分散媒中に十分に分散させておくことが肝要であるが、分散条件に相違があると測定値に差が生じることもあることから」と認識した上で、デカンテーション工程を行った蛍光体粒子について、処理1を行ってから蛍光体粒子の粒径を測定しているのであるから、これで測定したものについては、凝集がほどけて微粒子が除去されるべきものは十分にその目的が達成され、最終的な蛍光体粒子の実態を十分に反映しているべきことは、当業者には自明である(そうでなければ、測定値と実際に使用される蛍光体材料の粒径分布の状態に差があることとなり、測定値に意味を持たせることが難しくなる。)。 c このような状態においては、超音波処理によってほどけるべき凝集はもはや存在しなくなるから、「分散媒として0.2%又は0.05%のいずれに調整したヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液」を使用しようがしまいが、また、「超音波処理」を使用しようがしまいが、粒径分布はほとんど変化せずほぼ同一のものとなるから、次式が成り立つこととなる。 Dy90≒d90≒Dx90 d そうすると、引用発明においても、次式が成立し、構成Abを満たすこととなる。 Dx90/Dy90≒1 e さらに、Dx90≒d90であることから、引用発明においても次の構成Aa及び構成Adを満たすこととなる。 (a)Dx50が、0.5μm以上35μm以下である。 (d)(Dx90-Dx50)/(Dx50)が0.1以上25以下である。 f したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ウ) 進歩性の欠如の判断のまとめ 前記(イ)において検討したとおりであるから、引用発明において、前記相違点に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。 なお、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (エ) 請求人の主張について a 請求人の主張1の内容 請求人は、審判請求書において、次の主張をしている。 引用発明のd50は本件補正発明のDx50に相当しないため、引用発明は構成Aaを満たさない。さらに、引用発明は本願の比較例の製造方法に近いものであるといえ、Dx90の値が大きいものである蓋然性が高く、条件Abを満たさない蓋然性が高い。よって、本件補正発明は引用発明に対して新規性・進歩性を有する。 b 請求人の主張についての検討 しかしながら、前記(イ)において説示したとおり、分散媒としてヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い超音波処理をしてレーザー回折式粒度分布測定装置を用い粒径分布を測定するに際して、分散媒であるヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液の濃度を0.05%から0.2%に変更してD90等を測定する(すなわち「Dy90等」)を測定するようにすることは、当業者には自明の設計変更であるところ、凝集がほどけて微粒子が除去されるべきものは十分にその目的が達成され、最終的な蛍光体粒子の実態を十分に反映しているべきことは当業者には自明であるから、「Dy90≒d90≒Dx90」となるべきことは自明のことであり、その結果構成Aa及び構成Abを満たすこととなるから、請求人の主張は、前記(ウ)の結論を左右するものではない。 したがって、請求人の主張は採用できない。 オ 独立特許要件の判断のまとめ 以上検討のとおり、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正により請求項1についてする補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合しない。 4 本件補正の却下の決定の理由のむすび 前記3(2)オ及び(3)オのとおり、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明について 本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(前記第2の1(1)参照)に記載された事項により特定されるとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の本願発明に対する拒絶の理由である理由2(進歩性の欠如)及び理由3(サポート要件違反)の概要は、次のとおりである。 理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、優先日前に発行された下記の引用文献1に記載された発明に基いて、優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.国際公開第2020/054351号 理由3(サポート要件違反) この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 本願明細書の発明の詳細な説明を参酌すると、本願発明が解決しようとする課題は、マイクロLED等に適用される蛍光体粒子として、粒径をより小さくしても、発光性能及び粒子の凝集抑制を両立することである(段落[0005]-[0007]参照)。 これに対して、本願明細書の発明の詳細な説明に記載される当該蛍光体粒子の具体例には、デカンテーション工程を実施しなかった比較例のものと比べて、所望する比表面積、455nm光吸収率、内部及び外部量子効率を改善したことについて記載されているのみであり(段落[0066]-[0088]実施例等参照)、本願の課題である所望する小さい粒径、発光性能及び粒子の凝集抑制を両立しうるのかどうかも不明といえる。 また、例えば、本願実施例は特定のデカンテーション工程等を適用して急峻な粒径分布を得ることによって、所望する発光特性を得ているものと考えられるが、「(a)Dx50が、0.5μm以上35μm以下、(b)Dx90/Dy90が、0.7以上15以下」を満足したのみで、CASN又はSCASNからなる蛍光体粒子が、直ちに所望するマイクロLED等に適用可能な小さい粒径、発光性能及び粒子の凝集抑制を両立しうるものとはいえない。 3 サポート要件違反について 本願発明は、前記第2の2において検討したとおり、本件補正発明の「SCASNからなる粉末状蛍光体から構成される蛍光体粒子」に限定を、「CASNからなる粉末状蛍光体およびSCASNからなる粉末状蛍光体の中から選ばれる1種または2種から構成される蛍光体粒子」とし、本件補正発明から「蛍光体粒子」の「処理」について、「(d)(Dx90-Dx50)/(Dx50)が0.1以上25以下である」の限定を省いたものであるところ、前記第2の3(2)における説示と同様の理由により、本願発明も本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであるとは認められない。 4 進歩性の欠如について (1) 引用文献に記載された事項及び引用発明の認定 引用文献1に記載された事項及び引用発明は、前記第2の3(3)アにおいて示したとおりである。 (2) 対比・判断 本願発明は、前記第2の2において検討したとおり、本件補正発明の「SCASNからなる粉末状蛍光体から構成される蛍光体粒子」に限定を、「CASNからなる粉末状蛍光体およびSCASNからなる粉末状蛍光体の中から選ばれる1種または2種から構成される蛍光体粒子」とし、本件補正発明から「蛍光体粒子」の「処理」について、「(d)(Dx90-Dx50)/(Dx50)が0.1以上25以下である」の限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、その発明特定事項の一部を限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の3(3)エにおいて説示したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上検討のとおり、本願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。 また、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-014551

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