特許拒絶査定不服審判
2024-007650
缶胴の外面凹部の成形方法及びその装置
- 審判番号
- 2024-007650
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-199890外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年05月08日
- 審決日
- 2025年08月05日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】北海製罐株式会社
- 【請求人代理人】デロイトトーマツ弁理士法人
- 分類
- P18 .121-Z (B21D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第1項、特許法第53条第3項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第1項第4号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-199890「缶胴の外面凹部の成形方法及びその装置」拒絶査定不服審判事件〔令和3年5月6日出願公開、特開2021-70056〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年11月1日の出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。
1 令和5年 6月 1日付け
拒絶の理由(以下「拒絶理由」という)の通知
2 令和5年 7月 3日
意見書及び手続補正書の提出
3 令和5年10月10日付け
拒絶理由の通知(以下、この通知を「最後の拒絶理由通知」という)
4 令和5年11月 7日~16日
補正案の提出に伴う電話による応対(同月16日付け応対記録を参照)
5 令和5年12月 4日
意見書及び手続補正書の提出
6 令和6年 3月 7日付け
補正の却下の決定
7 令和6年 3月 7日付け
拒絶をすべき旨の査定(以下「原査定」という。)
8 令和6年 5月 8日
拒絶査定不服審判の請求書及び手続補正書の提出
第2 令和6年5月8日の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年5月8日提出の手続補正書によりされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容について
本出願は、上記第1の3の最後の拒絶理由通知に応答した同5の手続補正書による補正が、同6の補正の却下の決定をもって却下され、同2の手続補正書に記載された事項に基づいて、同7の原査定がされたものである。
これに対して、請求人は、本件拒絶査定不服審判の請求書(同8)における請求の趣旨を「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものであるとの審決を求める」とした上で、当該拒絶査定不服審判の請求と同時(特許法第17条の2第1項ただし書第4号)にした本件補正により、特許請求の範囲の全文、並びに、明細書の段落0010及び0018について、却下された同5の補正と同様の補正の内容にて補正をし、請求書(同8)の請求の理由において、同6の決定における独立特許要件(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項)の判断に誤りがある旨を主張して(請求書7~13ページ、(3-3)本願発明の特許性に関する考察)、請求の趣旨のとおりの審決を求めている(請求書13ページ、(4)結語)。
他方、請求書(同8)では、請求の趣旨からみて、明示的に前審の補正の却下の決定(同6)について不服を申し立てる(特許法第53条第3項ただし書)ことはしておらず、また、却下された同5の補正と同様の補正の内容にて本件補正を既に行っていることから、本件審判では、本件補正後の明細書、特許請求の範囲及び図面を審理の対象とする(審判便覧61-05.1)。
本件補正は、特許請求の範囲の全文、並びに、明細書の段落0010及び0018を補正の対象とするところ、そのうち、特許請求の範囲の請求項4に対する補正は、上記第1の2の手続補正書により補正をした次の(1)の記載を、(2)の記載に補正をするものである。((2)の本件補正による補正箇所に下線を付した。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項4の記載
「【請求項4】
金属缶の円筒状の缶胴の外面に多数の凹部を形成する成形装置において、
ロール状に形成されて缶胴の内面に当接する内型と、内型の当接位置に対応する缶胴の外面に当接する外型とを備え、
前記内型は、その外面全周にわたって複数の凹部が周方向と高さ方向とにドットマトリクス状に規則的に配列されており、
前記外型は、前記缶胴を介して前記内型の各凹部のうち、所望の表示に対応する凹部のみに選択的に押入する複数の凸部を備えることを特徴とする缶胴の外面凹部の成形装置。」
(2)本件補正後における特許請求の範囲の請求項4の記載
「【請求項4】
金属缶の円筒状の缶胴の外面に多数の凹部を形成する成形装置において、
ロール状に形成されて缶胴の内面に当接する内型と、内型の当接位置に対応する缶胴の外面に当接する外型とを備え、
前記内型は、その外面全周にわたって複数の凹部が周方向と高さ方向とにドットマトリクス状に規則的に配列されており、
前記外型は、前記缶胴を介して前記内型の各凹部のうち、所望の表示に対応する凹部のみに選択的に押入する複数の凸部をそれぞれ異なる位置に備える交換自在の複数の外型から選択される1つの外型であり、前記缶胴の外面に圧接させ、該凸部を前記内型の凹部に押入させて、前記缶胴の外面に形成される複数の凹部により、ドットマトリクス状に配列してなる文字列を形成することを特徴とする缶胴の外面凹部の成形装置。」
2 請求項4に対する本件補正の目的について
本件補正は、補正前の請求項4の「前記外型は、前記缶胴を介して前記内型の各凹部のうち、所望の表示に対応する凹部のみに選択的に押入する複数の凸部を備えること」に関し、複数の凸部を“それぞれ異なる位置に備え”るものであることを限定した上で、さらに、外型について“交換自在の複数の外型から選択される1つの外型であり、前記缶胴の外面に圧接させ、該凸部を前記内型の凹部に押入させて、前記缶胴の外面に形成される複数の凹部により、ドットマトリクス状に配列してなる文字列を形成すること”を限定するものである。
そして、本件補正において、補正前の請求項4に記載された発明とその補正後の請求項4に記載されている発明は、産業上の利用分野は、共に缶胴の外面に凹部を形成する技術(本願明細書の段落0001)であり、解決しようとする課題は「缶胴に形成する凹部による缶体の装飾効果の変化を、製造コストの増加を抑えて極めて容易に得ることができると共に、多彩な表現を有する凹部の形成を可能とする缶胴の外面凹部の成形方法を提供すること」(同段落0009)というもので、いずれも同一である。したがって、本件補正の請求項4についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮(限定的減縮)を目的とする。
このため、本件補正後における請求項4に記載される事項により特定される発明(以下「本願補正発明4」という。)は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定により、特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないため(独立特許要件)、本願補正発明4に関し、同法第29条第2項(進歩性)に規定する要件について、以下検討する。
3 引用文献
(1)引用文献1:特開2016-50041号公報
(2)引用文献4:特開2005-212857号公報
なお、引用文献1、4は、原査定(上記第1の7の原査定にて示される同3の最後の拒絶理由通知)の引用文献と共通である。
4 引用文献1(下線は、当審で付与。以下第2において同じ。)
(1)引用文献1の記載事項
ア 明細書
「【技術分野】
【0001】
本発明は、胴部に強度の高い多面体壁を有する金属缶及びその成形方法に関する。
・・・
【0014】
(実施例1)
以下に、実施例1について説明する。
図1は、本実施例に係る金属缶1を示す概略図であり、(a)は側面図、(b)は(a)のA-A断面図を示している。図10は、比較例の金属缶100を示す図である。
本実施例の金属缶1について説明するために、まず、比較例の金属缶100について説明する。なお、説明の便宜上、比較例の金属缶100と本実施例の金属缶1において、同様の構成部分を示す符号は同一の符号を付している。また、以下の説明において、缶軸方向とは、金属缶の高さ方向をいうもので、図1,10においてHで示す。
【0015】
金属缶100は、有底筒形状の胴部2と、胴部2の上端開口部に巻締固定される缶蓋3とから構成され、金属缶100は、胴部2の少なくとも缶軸方向の一部に周状の多面体壁400を有している。
この多面体壁400は、凸状の境界稜線51で区分された多数の単位パネル5で構成されるもので、より詳細には、缶軸方向(高さ方向)に並んだ所定数の単位パネル5のパネル列50が全周的に密に配列された構成となっている。また、単位パネル5の境界稜線51で囲まれた領域は、水平の対角線に沿って谷線52が設けられ、谷線52を境界として上方三角形部分53と下方三角形部分54が折れ曲がるように、缶軸方向の対角線方向(胴部内方)に窪む凹部形状となっている。また、複数の境界稜線51の交差する位置は、交差部55となっている。
【0016】
また、単位パネル5は菱形形状で、隣り合うパネル列50の各単位パネル5の缶軸方向の位相が単位パネル5の缶軸方向長さの半分だけずらされ、隣り合うパネル列50の一方のパネル列50を構成する各単位パネル5の間に他方のパネル列50の各単位パネル5が密に入り込んだ構成となっている。
【0017】
次に、本実施例の金属缶1について、図1を用いて詳細に説明する。
本実施例の金属缶1はツーピース缶で、有底筒形状の胴部2と、胴部2の上端開口部に巻締固定される缶蓋3とから構成され、胴部2の少なくとも一部に周状の多面体壁4が形成されている。
多面体壁4は、凸状の境界稜線51で区分され、境界稜線で囲まれた領域が、谷線52を中心に胴部内方に向けて窪んでいる複数の単位パネル5(形状、配置等については前述と同様のため、省略する。)と、未加工領域6とで構成されている。
【0018】
未加工領域6は、多面体壁4の形成の際に、単位パネル5を形成するための加工が施されることなく、金属缶1の胴部2の周面が残存した領域であって、上述の多面体壁400(比較例)の形成の際に、単位パネル5が配置されていた領域内のいずれかに設けられる。本実施例では、多面体壁4の略真中部分(缶軸方向の中途部)において、未加工領域6が4個の単位パネル5の配置領域に相当する領域に配置されるとともに、図1の領域A内に示すように、周方向で前記未加工領域6に隣接する単位パネル5の境界稜線51で、該単位パネル5と区分されている。
【0019】
上記のような構成とすることにより、光の反射を変えて、単調な形状にアクセントを持たせることができ、装飾性を向上させることができる。また、未加工領域を一部に設けることで、未加工領域を設けない場合に比べて、缶の強度の低下の度合いは小さい。
また、多面体壁の一部に未加工領域を設けることで、全周にわたって単位パネルを設けた場合に比べて、胴部の加工量を少なくすることができ、加工により胴部(特に、内面側の胴部)に与えるダメージを抑えることができる。
【0020】
なお、未加工領域6は、多面体壁4において1つの単位パネル5の配置領域に相当する領域に配置されてもよい。また、本発明に係る多面体壁4においては、単位パネル5と未加工領域6の配置は、上記実施例に限るものではなく、単位パネル5と未加工領域6は適宜、組み合わせて配置することができる。
【0021】
続いて説明する本発明に係る別の実施例では、単位パネル5と未加工領域6の組み合わせが実施例1とは異なる形態について示している。なお、以下の説明において、実施例1と同様の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
・・・
【0024】
(実施例3)
図4は、実施例3の金属缶1を示す概略図である。
本実施例では、未加工領域6の配置によって、周状の多面体壁4に、文字、記号、模様等の情報を表示する形態を示す。
すなわち、図4に示すように、胴部2に缶軸方向に複数列形成される周状の多面体壁4内に、未加工領域6の配置を用いてギリシア文字の一つである「α」を模した文字又は記号を表示した例を示している。すなわち、未加工領域6は、前記「α」の文字又は記号に沿って、計15個の単位パネル5の配置領域に相当する領域に配置されている。また、未加工領域6は、凸状の境界稜線51で区分されており、本実施例の場合、「α」という文字又は記号で囲まれている箇所には、単位パネル5が4個分から菱形状に構成される部分多面体壁9が形成されている。
このように未加工領域の配置及び個数を調整することにより、多面体壁内に多様な表示を行うことが可能となり、装飾性を向上させることができる。
・・・
【0039】
(単位パネル)
ここで、上記した実施例1~7では、金属缶1は、ツーピース缶として説明したが、これに限定されるものではなく、スリーピース缶等、他の構成の金属缶であってもよい。また、単位パネル5、及び、単位パネル5とは凹部形状が異なる単位パネル5A乃至5Dの形状(外形形状)を菱形形状としているが、これに限るものではなく、六角形状などの他の形状でも適用可能である。さらに、単位パネルの大小、周方向に形成される個数については、任意の大きさ及び個数を設定することができる。本実施例において、周方向に形成される単位パネルの個数は11個であるが、12個以上であってもよく、設置個数を増やすことで各々の単位パネルのサイズは小さくなるとともに、単位パネルのサイズに相当する未加工領域のサイズも小さくなり、これにより、さらに細かな装飾効果を付与することが可能となる。
また、本実施例では、単位パネル5内の谷線52が、単位パネル5を缶軸方向に対して直交方向(水平方向)に凹状に窪ませる形状としているが、この形状に加えて、缶軸方向にも単位パネル5を凹状に窪ませ、場合によっては缶軸方向に沿った谷線を有する形状としてもよい。
【0040】
(多面体壁の成形方法)
次に、本実施例に係る缶体1の多面体壁4の成形方法について、図11、12を用いて説明する。
図11は、多面体壁4を成形する成形機10を示し、内型11に装着された金属缶1の胴部2の一部がくり抜かれて内型11が露出された状態を示す概略斜視図である。多面体壁4の成形は、内型11と外型12とを有する成形機10によって行われ、缶蓋3を巻締める前の胴部2に対して施される。
【0041】
内型11はその外表面に、単位パネル5を構成する境界稜線51を形成するための稜線用突条11aが設けられ、外型12はその外表面に、単位パネル5を構成するための凹部用突条12aが設けられている。また、本実施例の外型12は、谷線52を形成するための谷線形成用の稜線が、凹部用突条12aの水平方向(外型12の高さ方向と直交する方向)の対角線上に形成されている。
また、内型11には、外型12の凹部用突条12aに対向する窪み部11bが設けられており、外型12には、内型11の稜線用突条11aに対向する窪み部12bが設けられている。そして、図11及び図12に示すように、外型12の外表面には、未加工領域6を設けるために、凹部用突条12aを有しない平坦部12cが、外型12の中途部に設けられている。なお、本実施例においては、単位パネル1個分の未加工領域6を形成するように平坦部12cが設けられているが、所望の未加工領域6を形成するよう平坦部12cの個数及び配置を変更可能である。
【0042】
図12は、多面体壁4を形成するために内型11と外型12が型押しを行っている状態を説明するための缶軸方向の断面模式図であり、(a)は単位パネルの連続形成箇所、(b)は未加工領域の残存箇所をそれぞれ示している。
ここで、図12において(a)と(b)では、平坦部12cが外型12の中途部に設けられて凹部用突条12aのパターンが異なっている。なお、内型11は同様の型である。
【0043】
まず、胴部2の内周面が内型11に接触し、胴部2の外周面が外型12に接触するように、胴部2が内型11と外型12の間に挟まれた状態で、缶蓋3を巻締める前の金属缶1が成形機10にセットされる。そして、内型11と外型12が胴部2を挟んだ状態で回転することにより、胴部2が周方向に回転して、内型11と外型12とにより型押し(曲げ加工)が行われる。その際、内型11の稜線用突条11aと外型12の凹部用突条12aが、胴部2の内外周面を挟み込むことで、境界稜線51と谷線52が形成され、胴部2の周面に単位パネル5を有する多面体壁4が加工される。換言すると、内型11の稜線用突条11aによって胴部2に対して複数の単位パネル5の境界稜線51を胴部外方に山折りし内型11と外型12の間に挟まれた状態で、前記内型11の稜線用突条11a、外型12の凹部用突条12aによって、稜線用突条11aで囲まれる領域を胴部内方に窪ませて単位パネル5を形成する。
この際、図12(b)で示すように、平坦部12cが設けられている箇所においては、内型11と外型12とにより型押し(曲げ加工)が行われないため、図12(a)のように窪んだ単位パネル面5が形成されず、未加工の胴部周面である未加工領域6が残存することとなる。
このように単位パネル5と未加工領域6が形成されることで、本実施例の多面体壁4が形成される。
【0044】
ここで、多面体壁4の成形方法としては、上記の成形機10を用いる方法に限るものではなく、外型や内型は回転体でなくてもよい。しかしながら、上記のような内型11及び外型12を適用することで、比較例の金属缶100を加工する場合も前述と同様に、内型11は共通した型を用いることができる。また、この例では、外型12の未加工領域6に対応する部分を平坦部12cとしているが、平坦部12cは、胴部2が内型11と外型12の間に挟まれた際に、胴部2と干渉しない形状であればよく、胴部周面の形状が残存するものであれば胴部2に触れてもよい。
・・・」
イ 図面
「【図1】
[図:0001427568000001.jpg]
・・・
【図4】
[図:0001427568000002.jpg]
・・・
【図11】
[図:0001427568000003.jpg]
【図12】
[図:0001427568000004.jpg]
」
(2)引用文献1の記載事項の整理
ア 段落0015、0017、図1、4、10の記載からみて、引用文献1に記載の成形機10は、金属缶1の有底筒形状の胴部2の周面に境界稜線51で囲まれた領域が凹部形状となっている多数の単位パネル5を形成する。
イ 段落0043、図11~12の記載からみて、引用文献1に記載の成形機10は、胴部2の内周面に接触して回転する内型11と、内型11と挟まれた状態の胴部2の外周面が接触する外型12とを備える。
ウ 段落0041、0043、図11の記載からみて、引用文献1に記載の成形機10は、内型11が、全周的に稜線用突条11aで囲まれる領域である複数の窪み部11bが周方向と高さ方向とに千鳥状に規則的に配列されている。なお、この内型11の稜線用突条11aで囲まれる領域である窪み部11の配列に関する「千鳥状」の用語について、この窪み部11bが型押しにより転写されて形成される単位パネル5の配列の、段落0016に記載された「隣り合うパネル列50の各単位パネル5の缶軸方向の位相が単位パネル5の缶軸方向長さの半分だけずらされ、隣り合うパネル列50の一方のパネル列50を構成する各単位パネル5の間に他方のパネル列50の各単位パネル5が密に入り込んだ構成」(図10参照)、すなわち複数列の要素の配列であって、各列の要素が、隣列の要素と互い違いに配置される配列は、慣用的に「千鳥状」の用語で表現され、窪み部11bも同様の配列になることから、当該用語を用いて表現するものである。
エ 段落0041~0043、図11~12の記載からみて、引用文献1に記載の成形機10は、胴部2が内型11と外型12の間に挟まれた(段落0043)状態で、内型11の稜線用突条11aで囲まれる領域である各窪み部11bに対して、外型の凹部用突条12aは型押しを行い、凹部用突条12aを有しない平坦部12cは型押しを行なわない(段落0042~0043)ものである。
そして、段落0024の「すなわち、未加工領域6は、前記「α」の文字又は記号に沿って、計15個の単位パネル5の配置領域に相当する領域に配置されている。また、未加工領域6は、凸状の境界稜線51で区分されており、本実施例の場合、「α」という文字又は記号で囲まれている箇所には、単位パネル5が4個分から菱形状に構成される部分多面体壁9が形成されている。」の記載、及び図4の図示内容も参酌すれば、この記載における「α」の文字は、単位パネル5、及び単位パネル5と相補的に組み合わせて配置される領域である未加工領域6の個数及び配置を調整することにより、すなわち、窪み部11bと型押しを行う凹部用突条12aの個数及び配置、及び窪み部11bと型押しを行わない平坦部12cの個数及び配置を調整することにより、表示されるといえる。
そうすると、引用文献1に記載の成形機10の外型12は、胴部2が内型11と外型12の間に挟まれた状態で、内型11の稜線用突条11aで囲まれる領域である各窪み部11bに対して、文字が表示されるように、窪み部11bと型押しを行う凹部用突条12aの個数及び配置、及び窪み部11bと型押しを行わない平坦部12cの個数及び配置を調整可能なものである。
オ 段落0015,0041~0043、図11~12の記載からみて、引用文献1に記載の成形機10の外型12は、胴部2の周面に接触させ、該凹部用突条12aと内型11の窪み部11bによって型押しが行われるもの(段落0041~0043、図11~12)である。
また、上記エの引用文献1の段落0024、図4の記載における「α」の文字は、単位パネル5、及び単位パネル5と相補的な領域である未加工領域6の個数及び配置を調整することで表示されるものであり、複数の単位パネル5により表示される文字といえるから、引用文献1には、胴部2の周面に形成される境界稜線51で囲まれた領域が凹部形状となっている複数の単位パネル5(段落0015)により、文字を表示する胴部2(段落0024)の多面体壁4を成形するための成形機10(段落0043)について記載される。
(3)引用文献1記載の発明
上記(1)~(2)より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
「金属缶1の有底筒形状の胴部2の周面に境界稜線51で囲まれた領域が凹部形状となっている多数の単位パネル5を形成する成形機10において、
胴部2の内周面に接触して回転する内型11と、内型11と挟まれた状態の胴部2の外周面が接触する外型12とを備え、
前記内型11は、全周的に稜線用突条11aで囲まれる領域である複数の窪み部11bが周方向と高さ方向とに千鳥状に規則的に配列されており、
前記外型12は、前記胴部2が内型11と外型12の間に挟まれた状態で、前記内型11の稜線用突条11aで囲まれる領域である各窪み部11bに対して、文字が表示されるように、窪み部11bと型押しを行う凹部用突条12aの個数及び配置、及び窪み部11bと型押しを行わない平坦部12cの個数及び配置を調整可能な外型12であり、前記胴部2の周面に接触させ、該凹部用突条12aと窪み部11によって型押しが行われて、前記胴部2の周面に形成される境界稜線51で囲まれた領域が凹部形状となっている複数の単位パネル5により、文字を表示する胴部2の多面体壁4の成形機10。」
5 引用文献4
(1)引用文献4の記載事項
ア 明細書
「【0009】
本発明は、
[1] 缶胴周方向及び軸方向の少なくとも一部に単位構成面(セル)からなる表面が鏡面の多面体部が形成されており、各単位構成面は、1つ又は2つ以上の所定の曲率半径を有する凹状又は凸状の曲面体に成形されており、且つ各単位構成面の横方向および/または縦方向の境界線が連続状に接続されていることを特徴とする装飾効果に優れた金属缶、
・・・
【0012】
[5] 有底状容器内に挿入される内型と容器の外部に配設される外型とからなり、該内型又は/及び外型の周面には各単位構成面の形状に対応する凹状又は凸状が刻設されており、内型と外型とで容器胴部を挟み付けて缶胴の外面に凹状又は凸状の曲面体を備えた単位構成面からなる表面が鏡面の多面体部を形成することを特徴とする上記[1]ないし[3]のいずれかに記載の装飾効果に優れた金属缶の製造方法、・・・
・・・
【0017】
即ち、各単位構成面は縦方向および横方向に連続して形成され、隣接する各単位構成面の境界線は缶胴横方向および縦方向ともに1本の連続状に接続されているので金属缶が空き缶となったときに缶の軸方向および横方向のどちらの方向に対しても潰しやすくなっている。なお、横方向に配置されている単位構成面のみを半ピッチずらすことにより各単位構成面の横方向の境界線のみ缶胴横方向に連続状に接続されている場合には、金属缶は缶の軸方向に対して潰しやすくなる。又、縦方向に配置されている単位構成面のみを半ピッチずらすことにより各単位構成面の縦方向の境界線のみ缶軸方向に連続状に接続されている場合には、金属缶は缶の横方向に対して潰しやすくなる。境界線は、空き缶を潰したときに折れ曲がり易くするためのものであり、そのため1本の連続状に接続していることが必要であり、缶胴全周を一周してもかまわないが、部分的であってもかまわない。
これらの境界線は、平面的には直線的に設けられておればよく、立体的には必ずしも水平である必要はない。金型の製造の容易な形状であればよい。
・・・」
【0023】
(2ピース缶の製造方法)
この2ピース缶の製造方法は、金属板を絞り成形およびしごき成形して得られた外面が鏡面仕上げされている有底状容器内に挿入される内型と、容器の外部に配設される外型とを使用して容器胴部に単位構成面からなる多面体部を形成する。この場合において、内型および外型の両方に凹または凸状が刻設されている金型を使用して、両金型にて容器胴部を挟み付けてエンボス加工する方法と内型または外型のいずれか一方に凹状又は凸条が刻設されている金型を使用し、他方の金型として弾性を有するゴムロールで成形したものを使用して、ゴムロールでもって容器胴部を他方の金型に押しつけて成形する方法がある。」
イ 図面
「【図1】
[図:0001427568000005.jpg]
・・・
【図3】
[図:0001427568000006.jpg]
」
(2)引用文献4に記載された技術的事項
上記(1)より、引用文献4には、「缶胴の少なくとも一部に単位構成面からなる多面体部が形成されており、各単位構成面は縦方向および横方向に連続して形成され、隣接する各単位構成面の境界線は缶胴横方向および縦方向ともに1本の連続状に接続され、凹状の曲面体に成形されている金属缶に関し、有底状容器内に挿入される内型と容器の外部に配設される外型とからなり、該内型の周面には各単位構成面の形状に対応する凹状が刻設されており、内型と外型とで容器胴部を挟み付けて、缶胴の外面に凹状の曲面体を備えた単位構成面からなる表面に、鏡面の多面体部を形成すること。」(以下「引用文献4記載の技術的事項」という。)が、記載されている。
6 本願補正発明4と引用発明1との対比
本願補正発明4は、上記1(2)に記載した事項により特定されるとおりのものであって、引用発明1と対比すると、以下のことがいえる。
(1)引用発明1の「金属缶1」は本願補正発明1の「金属缶」に相当し、以下同様に、「有底筒形状」は「円筒状」に、「胴部2」は「缶胴」に、「周面」は「外面」に、「境界稜線51で囲まれた領域が」「凹部形状となっている単位パネル5」は「凹部」に、「成形機10」は「成形装置」に、それぞれ相当し、そして、引用発明1の「境界稜線51で囲まれた領域が凹部形状となっている多数の単位パネル5」は本願補正発明4の「多数の凹部」に相当する。
(2)引用発明1の「内型11」は本願補正発明4の「内型」に、同様に「外型12」は「外型」にそれぞれ相当する。そして、図11の図示内容も参酌すれば、引用発明1の「胴部2の内周面に接触して回転する内型11」は、本願補正発明4の「ロール状に形成されて缶胴の内面に当接する内型」に、同様に「内型11と挟まれた状態の胴部2の外周面が接触する外型12」は「内型の当接位置に対応する缶胴の外面に当接する外型」に、それぞれ相当する。
(3)引用発明1の「全周的に」は本願補正発明4の「その外面全周にわたって」に相当し、同様に「稜線用突条11aで囲まれる領域である」「窪み部11b」は「凹部」に相当し、そして、引用発明1の「稜線用突条11aで囲まれる領域である複数の窪み部11b」は本願補正発明4の「複数の凹部」に相当する。
また、引用発明1の「千鳥状」と本願補正発明4の「ドットマトリクス状」とは、「所定形状」という点に限り一致する。
(4)引用発明1の「前記胴部2が内型11と外型12の間に挟まれた状態で、」は本願補正発明4の「缶胴を介して」に相当する。
そして、引用発明1の「前記内型11の稜線用突条11aで囲まれる領域である各窪み部11bに対して、文字が表示されるように、窪み部11bと型押しを行う凹部用突条12aの個数及び配置、及び窪み部11bと型押しを行わない平坦部12cの個数及び配置を調整可能な外型12」について、窪み部11bと凹部用突条12aが型押しを行い、窪み部11bと平坦部12cが型押しを行わないことで、所望の文字を表示するものであるから、引用発明1の凹部用突条12aは、本願補正発明4の「前記内型の各凹部のうち、所望の表示に対応する凹部のみに選択的に押入する複数の凸部」であるといえる。
したがって、引用発明1の「文字が表示されるように、窪み部11bと型押しを行わない平坦部12cの個数及び配置、及び窪み部11bと型押しを行う凹部用突条12aの個数及び配置を変更可能な外型12」は、本願補正発明4の「所望の表示に対応する凹部のみに選択的に押入する複数の凸部を備える外型」に相当する。
(5)引用発明1の「胴部2の周面」は本願補正発明4の「缶胴の外面」に相当し、以下同様に「該凹部用突条12a」は「該凸部」に、「前記窪み部11」は「前記内型の凹部」に、「型押しが行われて」は「押入させて」に、「複数の境界稜線51で囲まれた領域が凹部形状となっている単位パネル5の配置により」は「複数の凹部により」、「多面体壁4」は「外面凹部」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明1の「胴部2の周面に形成される境界稜線51で囲まれた領域が凹部形状となっている複数の単位パネル5により、文字を表示する」と本願補正発明4の「缶胴の外面に形成される複数の凹部により、ドットマトリクス状に配列してなる文字列を形成する」とを対比すると、両者は「缶胴の外面に形成される複数の凹部により、文字を形成する」という点に限り一致する。
7 本願補正発明4と引用発明1の一致点及び相違点
上記6より、本願補正発明4と引用発明1は、次の(1)の点で一致し、そして(2)ア~ウの点で相違する。
(1)一致点
金属缶の円筒状の缶胴の外面に多数の凹部を形成する成形装置において、
ロール状に形成されて缶胴の内面に当接する内型と、内型の当接位置に対応する缶胴の外面に当接する外型とを備え、
前記内型は、その外面全周にわたって複数の凹部が周方向と高さ方向とに所定形状に規則的に配列されており、
前記外型は、前記缶胴を介して前記内型の各凹部のうち、所望の表示に対応する凹部のみに選択的に押入する複数の凸部をそれぞれ異なる位置に備える外型であり、前記缶胴の外面に圧接させ、該凸部を前記内型の凹部に押入させて、前記缶胴の外面に形成される複数の凹部により、文字を形成する缶胴の外面凹部の成形装置。
(2)相違点
ア 相違点1
内型の外面全周にわたって周方向と高さ方向とに規則的に配列されている複数の凹部の配列形態について、本願補正発明4のものが「ドットマトリクス状」であるのに対して、引用発明1のものが「千鳥状」である点。
イ 相違点2
所望の表示に対応する凹部のみに選択的に押入する複数の凸部を備える外型について、本願補正発明4の外型が、複数の凸部を「それぞれ異なる位置に備える交換自在の複数の外型から選択される1つの」ものであるのに対して、引用発明1の外型は、複数の凸部をそれぞれ異なる位置に備える交換自在の複数の外型から選択される1つのものであるか否かが不明である点。
ウ 相違点3
缶胴の外面に形成される複数の凹部により、文字を形成することについて、本願補正発明4が、ドットマトリクス状に配列してなる文字列を形成するのに対して、引用発明1は、文字列ではなく文字を形成しており、この文字もドットマトリクス状に配列したものではない点。
8 相違点の検討
(1)相違点1
ア 引用文献4記載の技術的事項の各単位構成面の配列について
上記5(2)の引用文献4記載の技術的事項の金属缶の缶胴に形成されている多面体部の凹状の曲面体に成形されている単位構成面は、縦方向および横方向に連続して形成され、隣接する各単位構成面の境界線は缶胴横方向および縦方向ともに1本の連続状に接続されており、各単位構成面は、いわゆるドットマトリクス状(正方格子状)に配列されている。
イ 引用文献4記載の技術的事項の内型における各凹状の配列について
上記アの各単位構成面は、缶胴の内周面を内型に当接させて型押しの加工を行うことで形成されるものであるから、内型に刻設された各凹状は、各単位構成面の配列に対応して、同じドットマトリクス状(正方格子状)に配列されているといえる。なお、この点は、請求人も審判請求書において、「内型が、外面全周にわたって周方向と高さ方向とにドットマトリクス状に規則的に配列されている複数の凹部を備える」(請求の理由(3-3-3)の相違点1)ことが引用文献4に記載されていると認識している。
ウ 引用発明1への引用文献4記載の技術的事項の適用について
引用発明1と上記5(2)の引用文献4記載の技術的事項は、装飾性の向上を目的の一つとして、いずれも缶胴の表面に多数の凹面を形成するために、缶胴の外周面を外型に、内周面を内型に当接させて加工を行うものであるから、引用文献4記載の技術的事項の各単位構成面が縦方向および横方向に連続して形成され、隣接する各単位構成面の境界線は缶胴横方向および縦方向ともに1本の連続状に接続された、いわゆるドットマトリクス状(正方格子状)に配置された各単位構成面に対応してドットマトリクス状に凹状が刻設された内型を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用文献4の段落0017(上記5(1))には、各単位構成面を、ドットマトリクス状(正方格子状)の配置、あるいは半ピッチずらした千鳥状の配置を選択することが記載されているといえるから、この単位構成面の配置に対応して、引用発明1の内型11の窪み部11bの千鳥状の配置を、引用文献4記載の技術的事項のドットマトリクス状(正方格子状)とすることも、当業者が適宜なし得たことである。
したがって、相違点1は、引用発明1に引用文献4記載の技術的事項を適用することで、当業者が容易になし得たことであるともいえる。
(2)相違点2
金属の加工型は、加工する形状に応じて選択するものであることが技術常識であるから、引用発明1の外形12の凹部用突条12aや平坦部12cの個数及び配置を変更するには、凹部用突条12aや平坦部12cの個数及び配置の異なる交換自在な複数の外型から1つの外型を選択することは、当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。
(3)相違点3
引用発明1は、缶で胴の外面に形成される複数の凹部により、「文字」(例えば引用文献1の「α」)を形成するが、引用文献1の段落0024の「未加工領域6の配置によって、周状の多面体壁4に、文字、記号、模様等の情報を表示する」及び「未加工領域の配置及び個数を調整することにより、多面体壁内に多様な表示を行うことが可能となり、装飾性を向上させることができる」との記載からみて、文字だけでなく、複数の文字からなる文字列を形成することも、単に外型の外形12の凹部用突条12a及び平坦部12cの個数及び配置を変更することで実現するものであり、格別の困難性が存在しないことが明らかである。
そして、引用発明1における文字は、上記(1)の相違点1で検討した千鳥状の配置である内型11の複数の凹部に対応して、千鳥状に配列してなる文字列といえるが、上記(1)アと同様の理由で、ドットマトリックス状(正方格子状)の配置と千鳥状の配置のいずれの配置を採用するかは、当業者が適宜選択し得た事項であり、本願補正発明4の凹部のドットマトリックス状(正方格子状)の配置が、引用発明1の千鳥状の配置と比較して格別のものとはいえない。
(4)相違点1及び相違点3に関する予備的な検討
また、仮に、相違点1に関し、「内型の各凹部のうち、所望の表示に対応する凹部」の凹部と所望の表示の関係に、あるいは、相違点3に関し、「缶胴の外面に形成される複数の凹部により、ドットマトリクス状に配列してなる文字列」の凹部と文字列の関係に、例えば実施例レベルで、本願補正発明4と引用発明1との間に何らかの差異があるとしても、本願補正発明4と引用発明1は、缶胴の外面に形成される複数の凹部の配置と、複数の凹部を設けない部分の配置の組合せで文字を形成する点において共通している。そして、引用発明1の外型12に設ける平坦部12cと凹部用突条12aにより缶胴の外面に形成される複数の凹部の配置と複数の凹部を設けない部分の配置をどのように利用して文字列を形成するか(例えば、凹部を文字の輪郭に沿って配置し凹部を設けない部分を文字の輪郭を囲むように配置して文字列を形成するか、あるいは凹部を文字の輪郭を囲むように配置し凹部を設けない部分を文字の輪郭に沿って配置して文字列を形成するか)は、外型12の選択により、当業者が自由に構成できる設計的事項であって、成形機10においてどのような外型12を用いるかといった使い方の問題であるから、したがって、当業者が、引用発明1の成形機10の使用にあたって、必要に応じて選択する事項に過ぎない。
9 請求人の主張について
審判請求書の請求の理由(以下、単に「請求の理由」という。)における主張について検討する。
(1)請求の理由における請求人の主張
請求の理由における主張は概略、次のとおりである。
ア 金属缶の円筒状の缶胴の外面に形成される「複数の凹部により、ドットマトリクス状に配列してなる文字列を形成すること」(請求の理由(3-3-3)の相違点2)について、引用文献1~4のいずれにも記載されていない。
イ 「複数の凸部をそれぞれ異なる位置に備え、交換自在の複数の外型から選択される1つの外型」(請求の理由(3-3-3)の相違点3)について、引用文献1~4のいずれにも記載されていない。
ウ 引用文献1の段落0024、及び図4記載の「α」は「ギリシア文字の一つである「α」を模した文字又は記号を表示した」ものであって、文字そのものを表示するものではない。
エ 上記アにより、引用文献1の内型に代えて、引用文献4記載の、外面全周にわたって周方向と高さ方向とにドットマトリクス状に規則的に配列されている複数の凹部を備える内型を用いたとしても、「前記ドットマトリクス状に配列してなる文字列による缶体の装飾効果を変化させることができる」ことができないことは明らかである。
したがって、「缶胴を介して前記内型の各凹部のうち、所望の表示に対応する凹部のみに選択的に押入するように形成された複数の凸部をそれぞれ異なる位置に備え、交換自在の複数の外型から選択される1つの外型」、及びこの金型を「缶胴の外面に圧接させ、該凸部を前記内型の凹部に押入させて、前記缶胴の外面に形成される複数の凹部により、ドットマトリクス状に配列してなる文字列を形成する工程とを備える」ことについて、各引用例には記載もなく、示唆するものもない。
オ 「缶胴の外面に形成される複数の凹部により、ドットマトリクス状に配列してなる文字列を形成することができ、内型を変更することなく、複数の凸部をそれぞれ異なる位置に備え、交換自在の複数の外型から選択される1つの外型を他の1つの外型に変更(交換)するだけで、前記ドットマトリクス状に配列してなる文字列による缶体の装飾効果を変化させることができる」という効果について、各引用例には記載もなく示唆するものもない。
(2)上記(1)の主張の検討
ア 上記(1)ア~イ、エの主張について
既に、上記(1)アの主張については上記8(3)で相違点3について検討したとおり、上記(1)イの主張については上記8(2)で相違点2について検討したとおり、本願補正発明4の進歩性を根拠付けるものではなく、いずれも採用することはできない。
また、上記(1)エの主張についても、上記(1)アの主張を根拠とするものであり、また、引用発明1に引用文献4記載の技術的事項を適用することが容易であることも上記8(1)で検討したとおりであるから、採用することができない。
イ 上記(1)ウの主張について
請求人が引用する引用文献1の段落0024記載の「ギリシア文字の一つである「α」を模した文字」も、図4の図示内容からみれば、文字として認識することが不可能とまではいえないから、上記(1)ウの請求人の主張は採用することができない。
ウ 上記(1)オの主張について
引用文献1の段落0044に、「しかしながら、上記のような内型11及び外型12を適用することで、比較例の金属缶100を加工する場合も前述と同様に、内型11は共通した型を用いることができる。」と記載されていることからみて、引用発明1の成形機10も、外型については、形成する表示に応じて異なるものを用いる一方で、内型については、比較例(引用文献2の段落0014~0016)の全周的に単位パネル5のパネル列が配置された金属缶100と各実施例(実施例1~7)の未加工領域6が残存する金属缶1とで、共通のものを用いることで変更する必要が無いことは、本願補正発明4と同様(本願明細書の段落0014)であり、缶胴に形成する凹部による缶体の装飾効果の変化を、製造コストの増加を抑えて極めて容易に得ることができると共に、多彩な表現を有する凹部の形成を可能とする缶胴の外面凹部の成形方法、及びその装置を提供するという課題(本願明細書の段落0009)を解決し得るものである。
したがって、本願補正発明4の成形装置が、引用発明1に比べて格別の効果を奏することの事情も見いだすことはできず、上記(1)オの請求人の主張は採用することができない。
10 特許法第29条第2項(進歩性)を理由とする独立特許要件の適否についてのまとめ
本願補正発明4は、上記8(1)~(4)で検討したとおりいずれの相違点によっても進歩性を具備するとはいえないため、引用発明1及び引用文献4記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、上記9のとおり請求の理由における請求人の主張も採用することはできないから特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願補正発明4は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、同法第17条の2第6項において前項第2号の場合に準用する同法第126条第7項の規定に違反しているものと認められる。
11 小括
以上のとおり、拒絶査定不服審判の請求と同時にされた本件補正(特許法第17条の2第1項第4号)は、同条第5項第2号に掲げる事項を目的とするものであるものの、同法第17条の2第6項にて準用する同法第126条第7項に規定される要件を満たさず、同法第17条の2第6項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において、読み替えて拒絶査定不服審判に準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明4
本件補正は、第2のとおり却下されたので、本願の請求項1~9に係る発明は、令和5年7月3日提出の手続補正書により補正をした特許請求の範囲の請求項1~9に記載した事項により特定されるとおりのものであって、そのうち、請求項4に係る発明(以下「本願発明4」という。)は、上記第2の[理由]1(1)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
なお、本件拒絶査定不服審判において、請求人は、前審の令和6年3月7日付け補正の却下の決定(以下「前審却下決定」という)に対する不服の申立てはしていないが、前審却下決定で却下された上記第1の5の手続補正書による補正に係る特許請求の範囲は、本件補正に係る特許請求の範囲と同一の内容であるから、その請求項4に係る発明は、上記第2と同じ理由により独立して特許を受けることができないものである。
そして、前審却下決定においては、主引用例である引用文献1記載の発明について、引用文献1の段落0015~0044、図1~12の記載に基づいて特に瑕疵なく認定しており、そのうち、「未加工領域6(文字)」については、上記第1の4の応対記録に記載されているように、第2で検討した「α」の文字である旨を、審査官が出願人(請求人)に対して説明しており、また、請求人も審判請求書にてその認定を前提とした反論を主張していたように、十分に反論の機会があったといえ、さらに、他に結論に影響を与えるような点もないから、上記前審却下決定自体も適切に行われたものと認められる。
2 原査定の拒絶理由
原査定の拒絶理由は、上記第1の3の最後の拒絶理由通知で通知したものであって、そのうち、本願発明4に対する理由は、概略、次の(1)のとおりであり、当該拒絶理由において引用した文献は、次の(2)のとおりである。
(1)理由
(進歩性)本願発明4は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記(2)の刊行物(引用文献1及び引用文献4)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)引用文献
ア 引用文献1:特開2016-50041号公報
イ 引用文献2:米国特許第6311533号明細書
ウ 引用文献3:特開2012-71895号公報
エ 引用文献4:特開2005-212857号公報
そして、上記(1)の理由で引用された引用文献1は、上記第2で引用した引用文献1と同じであり、その内容は第2の[理由]4(1)~(2)のとおりであり、引用文献1に記載された引用発明1も同(3)と共通である。
また、引用文献4は、上記第2で引用した引用文献4と同じであり、その内容は第2の[理由]5(1)と同じであり、引用文献4記載の技術的事項も同(2)と共通である。
3 理由の検討
本願発明4は、上記第2で進歩性に係る独立特許要件を検討した本願補正発明4から本件補正で限定した事項を省いたものである。
そうすると、本願発明4の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明4が、前記第2で検討したとおり、引用発明1及び引用文献4記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明4も、引用発明1及び引用文献4記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-007650