特許拒絶査定不服審判
2024-006717
薬剤注入ペンの作動方法
- 審判番号
- 2024-006717
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-146067外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年04月19日
- 審決日
- 2025年08月01日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
- 【請求人代理人】弁理士法人谷・阿部特許事務所
- 分類
- P18 .14 -Z (A61M) / P18 .56 -Z (A61M) / P18 .575-Z (A61M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-146067「薬剤注入ペンの作動方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年11月 4日出願公開、特開2022-168268〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年) 3月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年 3月16日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2013-558193号の一部を、平成29年 8月24日に新たな特許出願とした特願2017-161106号の一部を、令和 元年 7月 4日に新たな特許出願とした特願2019-125417号の一部を、令和 4年 9月14日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和 5年 6月30日付け:拒絶理由通知
同年10月 4日提出:意見書及び手続補正書
同年12月 6日付け:拒絶査定
令和 6年 4月19日提出:審判請求書及び手続補正書
第2 令和 6年 4月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和 6年 4月19日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を次のとおり補正することを含むものである(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
投与量設定および投与量修正を選択的に行うために、薬剤注入ペンの投与量設定摘みが前記薬剤注入ペンのハウジングに対して選択的に回転することと、
前記薬剤注入ペンのドライバーが前記投与量設定摘みと選択的に係合することであって、前記ドライバーが、前記投与量設定中および前記投与量修正中に前記ハウジングに対して回転可能に固定されることと、
前記投与量設定中および前記投与量修正中に前記ドライバーが前記投与量設定摘みとともに軸方向に移動することと、
前記薬剤の吐出中に前記ドライバーが前記投与量設定摘みとともに回転するように、前記薬剤注入ペンに備えられた押釦が押下げられて、前記投与量設定摘みが前記ドライバーに係合するようにすることと、
を含む、薬剤注入ペンの作動方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和 5年10月 4日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
投与量設定および投与量修正を選択的に行うために、薬剤注入ペンの投与量設定摘みを前記薬剤注入ペンのハウジングに対して選択的に回転させることと、
ドライバーを前記投与量設定摘みと選択的に係合することであって、前記ドライバーは、前記投与量設定中および前記投与量修正中に前記ハウジングに対して回転可能に固定されることと、
前記投与量設定中および前記投与量修正中に前記ドライバーを前記投与量設定摘みとともに軸方向に移動させることと、
前記薬剤の吐出中に前記ドライバーを前記投与量設定摘みとともに回転させることと
を含む、薬剤注入ペンの作動方法。」
2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「薬剤の吐出中に前記ドライバーを前記投与量設定摘みとともに回転」させることについて、「前記薬剤注入ペンに備えられた押釦が押下げられて、前記投与量設定摘みが前記ドライバーに係合するようにする」ことで回転することを限定する補正を含むものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)産業上の利用可能性について
本件補正発明である「薬剤注入ペンの作動方法」は、「投与量設定および投与量修正を選択的に行うために、薬剤注入ペンの投与量設定摘みが前記薬剤注入ペンのハウジングに対して選択的に回転すること」(以下「作動A」という。)、及び「前記薬剤の吐出中に前記ドライバーが前記投与量設定摘みとともに回転するように、前記薬剤注入ペンに備えられた押釦が押下げられて、前記投与量設定摘みが前記ドライバーに係合するようにすること」(以下「作動B」という。)を含むものである。
ア 作動Aについて
本願明細書の段落【0016】の「注入ペン51を用いて投与量を設定するために、使用者は、ペン上部本体1に対して投与量設定摘み2の摘み部分を回転させる。」との記載、及び段落【0017】の「あまりに大きく設定しすぎた設定投与量を修正するためには、使用者は、投与量設定摘み2を単に反対方向に回転させて戻すだけでよい。」との記載を参酌すると、作動Aの「投与量設定摘みが」「回転すること」は、医師等の使用者が投与量設定摘みを回転させることによる作動であり、医師が行う工程を含むものである。
イ 作動Bについて
本願明細書の段落【0018】の「使用者が押し釦3を押し続けると、・・・投与量設定摘み2の回転は、このとき、それらのロック係合またはかみ合い係合によりセットバック部材9に伝達される。使用者が釦3を押す力は、セットバック部材9のラチェット・アーム96と制動タワー5の歯またはキー溝52との間の摩擦に打ち勝つのに十分である。結果として、セットバック部材9は、この方向に回転することが可能となる。」との記載を参酌すると、作動Bの「押釦が押下げられて、前記投与量設定摘みが前記ドライバーに係合するようにすること」は、医師等の使用者が押釦を押し続けることによる作動であり、医師が行う工程を含むものである。
また、作動Bは、「薬剤の吐出中」の作動であり、本願明細書の段落【0018】の上記記載に加え、段落【0019】の「注入中に許容されるように、セットバック部材9の回転は、・・・セットバック部材9に回転可能に固定されている送りねじ4に伝達される。」との記載、及び段落【0022】の「ピストン・ロッド6は、上述したように、セットバック部材9との回転連結に起因して、送りねじ4が注入中に回転するとき、本体1に対して回転不能であるので、ピストン・ロッド6は、送りねじ4とのねじ係合を通して、末端方向に移動し、薬剤カートリッジ15内に設けられているストッパ16に押し付けられ、したがって、カートリッジ15から液体薬剤を吐出させる。」との記載を参酌すれば、「ドライバー」であるセットバック部材9が、「投与量設定摘み2とともに回転する」ことで薬剤が吐出されるものである。そして、薬剤注入ペンから薬剤が吐出されることは、薬剤注入ペンによって患者の体内に薬剤を投与することであるので、作動Bは、薬剤注入ペンによる人体に対する薬剤投与工程を意味する。
以上のとおりであるので、方法の発明である本件補正発明は、医師が行う工程、及び機器による人体に対する作用工程を含む。
したがって、本件補正発明は、人間を手術、治療又は診断する方法の発明であり、特許法第29条第1項柱書でいう産業上利用できる発明に該当しない。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定する要件に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和 6年 4月19日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、令和 5年10月 4日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に記載されたとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略、次の理由を含むものである。
本願発明は、各ステップにおける動作の主体が特定されておらず、例えば「投与量設定および投与量修正を選択的に行うために、薬剤注入ペンの投与量設定摘みを前記薬剤注入ペンのハウジングに対して選択的に回転させる」というステップは、動作の主体が使用者であることが明らかであり、使用者には医師が含まれるものであるから、各ステップを医師が行う場合を含み得る本願発明は、医療機器の作動方法には該当しない。
また、本願発明の「前記薬剤の吐出中に前記ドライバーを前記投与量設定摘みとともに回転させる」というステップの実施中は、明細書の記載に基づけば、人体内に注入ペンの一部を挿入し薬剤を吐出している状態で、医師を含む使用者が当該注入ペンを操作するステップであることが明らかであるから、本願発明は、人体内で装置を使用する方法に該当し、患者に投薬を施す方法にも該当するため、人間を手術又は治療する方法に該当する。
したがって、本願発明は、産業上の利用可能性の要件を満たしておらず、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
3 当審の判断
本願発明である「薬剤注入ペンの作動方法」は、「投与量設定および投与量修正を選択的に行うために、薬剤注入ペンの投与量設定摘みを前記薬剤注入ペンのハウジングに対して選択的に回転させること」(以下「作動a」という。)、及び「前記薬剤の吐出中に前記ドライバーを前記投与量設定摘みとともに回転させること」(以下「作動b」という。)を含むものである。
作動aについて、上記第2の2(2)アで検討したように、本願明細書の段落【0016】及び【0017】の記載を参酌すれば、作動aの「投与量設定摘みを」「回転させること」は、医師等の使用者が投与量設定摘みを回転させることによる作動であるので、医師が行う工程を含むものである。
作動bについて、上記第2の2(2)イで摘記した本願明細書の段落【0018】の記載を参酌すれば、作動bの「ドライバーを前記投与量設定摘みとともに回転させること」は、医師等の使用者が押釦を押し続けることによる作動であり、医師が行う工程を含むものである。
また、作動bは「薬剤の吐出中」の作動であり、上記第2の2(2)イで説示したように、本願明細書の段落【0018】、【0019】及び【0022】の記載を参酌すれば、作動bは、薬剤注入ペンによる人体に対する薬剤投与工程を意味する。
以上のとおり、方法の発明である本願発明は、医師が行う工程、及び機器による人体に対する作用工程を含む発明であるので、人間を手術、治療又は診断する方法の発明であり、特許法第29条第1項柱書でいう産業上利用できる発明に該当しない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項柱書に規定される要件を満たしておらず、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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