特許拒絶査定不服審判
2023-007314
配置及び流量検出を備える薬物送達デバイス
- 審判番号
- 2023-007314
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-517353
- 請求日
- 2023年05月08日
- 審決日
- 2025年04月09日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アムジエン・インコーポレーテツド
- 【請求人代理人】弁理士法人川口國際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 佐々木 正章
- 審判官 村上 哲
- 審判官 栗山 卓也
- 分類
- P18 .14 -WZ (A61M) / P18 .121-WZ (A61M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-517353「配置及び流量検出を備える薬物送達デバイス」拒絶査定不服審判事件〔令和 元年 5月 9日国際公開、WO2019/089178、令和 3年 1月21日国内公表、特表2021-501616〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)10月 4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年11月 6日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和 4年 8月25日付け:拒絶理由通知書
令和 4年11月28日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 4年12月23日付け:拒絶査定
令和 5年 5月 8日 :審判請求書及び同時に手続補正書の提出
令和 6年 1月24日付け:拒絶理由通知書
令和 6年 7月24日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~20に係る発明は、令和 6年 7月24日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~20に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1、11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明11」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
薬物送達デバイスであって、
内部空洞と、当該薬物送達デバイスの投与動作中に患者に接触するための先端側表面と、を画定するハウジングと、
前記ハウジングの前記内部空洞内に配置され、薬物を収容するように適合された一次容器と、
導電性部分を有するカニューレであって、前記カニューレの末端部が前記ハウジング内部にある保管状態と、前記カニューレの前記末端部が前記ハウジングの前記先端側表面の開口部を通って延出する送達状態と、を有する、カニューレと、
前記一次容器及び前記カニューレを含む、前記薬物用の流体流路と、
前記ハウジング内に配置されている、前記薬物を前記一次容器から前記流体流路を通して選択的に押し出し、前記カニューレが前記送達状態にあるときに前記カニューレを通して患者に送達するための送達機構と、
前記流体流路内を押し出される前記薬物の流れの特性を測定するように構成された流量測定デバイスと、
前記ハウジングの前記先端側表面上に配置された電極と、
前記ハウジングによって支持され、前記流量測定デバイス、前記カニューレ、及び前記電極に電気的に接続されたコントローラであって、前記コントローラは、前記送達機構の動作を制御し、
前記ハウジングの前記先端側表面上の前記電極を患者の皮膚上に適用し、前記患者に前記カニューレを挿入すると、前記カニューレ及び前記電極を含む電気回路が閉じたと決定すること、及び
前記流量測定デバイスの測定値を基に、及び前記閉じた電気回路の認識と併せて、(1)前記薬物の全用量が前記流体流路内を押し出され、前記患者に送達されたかどうか、および(2)前記薬物の全用量が前記流体流路内を押し出される前に前記電極および前記カニューレが前記患者との接触を失うと前記電気回路が開いたかどうかを決定すること、
により、前記薬物が前記患者に無事に送達されたかどうかを決定するように構成されており、
前記薬物の全用量が送達される前に前記電気回路が開いたと決定することに応答して、前記薬物の送達を一時停止するようにさらに構成されている、コントローラと
を含む、薬物送達デバイス。」
「【請求項11】
内部空洞を画定するハウジング内部空洞を画定するハウジングと、
前記ハウジングの前記内部空洞内に配置され、薬物を収容する一次容器と、
導電性部分を有するカニューレであって、末端部が前記ハウジング内部にある保管状態と、前記末端部が前記ハウジングの前記先端側表面の開口部を通って延出する送達状態と、を有する、カニューレと、
前記一次容器及び前記カニューレを含む、前記薬物用の流体流路と、
前記ハウジング内に配置されている、前記薬物を前記一次容器から前記流体流路を通して選択的に押し出し、前記カニューレが前記送達状態にあるときに前記カニューレを通して送達するための送達機構と、
前記流体流路内を押し出される前記薬物の流れの特性を測定するように構成された流量測定デバイスと、
前記ハウジングの前記先端側表面上に配置された電極と、
前記ハウジングによって支持され、前記流量測定デバイス、前記カニューレ、及び前記電極に電気的に接続されたコントローラと、
を含む薬物送達デバイスを動作させる方法であって、
前記薬物送達デバイスの前記先端側表面及び前記電極が患者の皮膚に接触されているとき、
前記カニューレ及び前記電極を含む閉じた電気回路を前記コントローラにより認識することと、
前記送達機構を前記コントローラにより動作させるにあたって、前記流体流路内を押し出される前記薬物の前記流れの特性を前記流量測定デバイスにより測定することと、
測定の結果に基づいて、送達される薬物の量を前記コントローラにより決定することと、
前記薬物の全用量が送達される前に前記電気回路が開いたとの決定に応答して、前記薬物の送達を一時停止すること
を含む、方法。」
第3 拒絶の理由
当審が令和 6年 1月24日付けで通知した拒絶理由は、次の理由1、2を含むものである。
1 理由1
本願発明11は、「前記カニューレ及び前記電極を含む閉じた電気回路を前記コントローラにより認識する」が成立すると、患者にカニューレが挿入されている状態である。
そして、患者にカニューレが挿入されている状態において、「前記送達機構を前記コントローラにより動作させる」と、患者に薬物が投与されることになる。
そうすると、本願発明11は、患者に薬物を投与(送達)するものであるから、当該方法(ステップ)の動作主体が人であるか否かに関わらず、人間を手術、治療又は診断する方法に該当する。
したがって、当該発明は、特許法第29条第1項柱書でいう産業上利用できる発明に該当しない。
2 理由2
本願発明1は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:特表2012-508081号公報
引用文献2:特表2017-526489号公報
引用文献3:特表2017-510426号公報
第4 理由1(産業上の利用可能性)についての当審の判断
本願発明11の「前記薬物送達デバイスの前記先端側表面及び前記電極が患者の皮膚に接触されているとき、前記カニューレ及び前記電極を含む閉じた電気回路を前記コントローラにより認識すること」との事項について、本願明細書の段落【0024】の「薬物送達カニューレが患者の皮膚を貫通し、同時に第2電極が患者に接触すると、電気回路は閉じられる。」との記載及び同【0047】の「コントローラ60は、薬物送達前及び薬物送達中に、患者101への薬物送達デバイス50の適切な配置を決定するように構成されている。コントローラ60は、カニューレ54が患者101に挿入されると同時に電極103が患者の皮膚に接触すると起こる、カニューレ54及び電極103を含む電気回路105が完成するときを決定することにより、このアクションを実施するようにプログラムされてもよい。」との記載を参照すると、電気回路が閉じるのは、電極が患者の皮膚に接触することに加えて、患者へカニューレが挿入された場合であるから、本願発明11の上記事項の「閉じた電気回路を前記コントローラにより認識すること」は、患者にカニューレが挿入されていることを意味する。
加えて、本願発明11の「前記送達機構を前記コントローラにより動作させるにあたって、前記流体流路内を押し出される前記薬物の前記流れの特性を前記流量測定デバイスにより測定することと、測定の結果に基づいて、送達される薬物の量を前記コントローラにより決定することと、前記薬物の全用量が送達される前に前記電気回路が開いたとの決定に応答して、前記薬物の送達を一時停止すること」との事項について、本願明細書の段落【0039】の「コントローラ60が針挿入機構56を動作させ、同時に、送達機構150を動作させた後、コントローラ60は、薬物153の流体流路63と関連付けられた流量測定デバイス61からの信号を基に薬物153の流れを監視する。流量測定デバイス61は薬物153の流れの特性を測定し、コントローラ60が、患者に送達される薬物の量を決定することを可能にする。量測定は、完成した電気回路150の監視との併用で、デバイス50が患者に正しく配置されている間に薬物153の全用量が送達されたかどうかをコントローラ60が決定することを可能にする。」との記載及び同【0017】の「更なる実施形態では、当該方法は、薬物の全用量が投与される前に電気回路が開いたとの決定に応答して、薬物の送達を一時停止することを含むことができる。」との記載を参照すると、コントローラが、送達機構を動作させ、流体経路内を押し出される際の流れを測定して監視し、その送達される量を決定する薬物は、上記のとおり「患者に送達される」ものであって、このことは、上記の「薬物の全用量が投与される前に電気回路が開いたとの決定に応答して、薬物の送達を一時停止する」との表現からも明らかである。
そうすると、方法の発明である本願発明11は、患者にカニューレを挿入し、患者に薬物が送達されることを含むものであって、機器による人体に対する作用工程を含む発明である。
したがって、本願発明11は、人間を手術、治療又は診断する方法の発明であり、特許法第29条第1項柱書でいう産業上利用できる発明に該当しない。
第5 理由2(進歩性)についての当審の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1の記載
上記引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
ア「【0023】
[1094] 図1および2はそれぞれ、実施形態に従った自動注射器1002の斜視図および部分切取正面図である。自動注射器1002は、「薬剤送達のための装置、システムおよび方法」(出願日:2006年11月21日)と題する米国特許出願番号11/562,061に記載された自動注射器に類似しており、同出願はその全てを参照により本明細書に組み込む。従って、自動注射器1002の機械機器および関連する操作の概要のみを下記に含む。」
イ「【0025】
[1096] 自動注射器1002は、筐体1110内部に非同軸に配置された薬剤注射器1210およびシステム・アクチュエータ1510を含む。薬剤注射器1210は、複数の薬剤バイアル1262、各薬剤バイアル1262に可動式に配置されたプランジャー1284、各プランジャー1284および針1212に係合した可動部材1312を含む。基部1520および筐体1110の部分内に位置する引込バネ1350は、注射後に筐体1110内で針1212を押し戻すことができる。システム・アクチュエータ1510は、圧縮バネ1560、圧縮ガスシリンダー1412、および圧縮ガスシリンダー1412の内容物を発射するための穿刺メカニズム1612を含む。
【0026】
[1097] 使用にあたって、自動注射器1002が作動されると、穿刺メカニズム1612は圧縮ガスシリンダー1412を穿刺して、加圧ガスがガス室1120に流入できるようになる。可動部材1312上の加圧ガスによって発生した力に対応して、可動部材1312は筐体1110内部で遠位方向に移動する。その結果、針1212は筐体1110を通って延びる。可動部材1312の移動によって、プランジャー1284もバイアル1262内で移動させられ、これによってバイアル1262から薬剤が発射される。」
ウ「【0038】
[1109] 使用者が身体に基部1520を配置すると、近接センサ1974がプロセッサに入力を提供し、これによって第三の指示を使用者に提供する電子出力を出力するようプロセッサを誘発する。第三の指示は、例えば、「装置の上部を押し下げて注射器を起動してください」と使用者に指示する可聴音声出力であってもよい。」
エ「【0049】
…図6~14に関して表示・記載した自動注射器4002は、バッテリー絶縁タブ4860(例えば図21を参照)を含まない針ガードアセンブリ4810’、アクチュエータ4732(例えば図22を参照)を含まない安全ロック4710’、およびアクチュエータ4538(例えば図23を参照)を含まない基部4520’を含む。」、
「【0055】
…さらに、薬剤注射器4210と圧縮ガス容器4412の間の非同軸関係によって、筐体4110の遠位端部分4114に位置する基部4520’を操作することで、自動注射器4002を作動することができるようになる。」及び
「【0061】
[1132] 基部4520’はまた、針開口部4532、凹部4526および二つの引込バネポケット4531を画定する。針開口部4532は、針ガードがその第一の位置にあるとき、針ガード4810’の一部を受ける。さらに、自動注射器4002が作動するとき、針4212は針開口部4532を通って伸びる。」
オ「【0225】
[1297] 薬剤送達装置は、アクチュエータの作動に対応して電子信号を出力するものとして前記で表示・記載されているが、別の実施形態において、薬剤送達装置は用量の投与実施に関連するフィードバックを提供するための適した手段を含みうる。さらに、図1~3に関して前記で表示・記載した電子回路システム1920は、注射の実施の有効性に関連するフィードバックを提供するための近接センサ1974を含むが、別の実施形態において、薬剤送達装置は薬剤送達の実施の有効性に関連するフィードバックを提供するための適したフィードバックメカニズムを含みうる。例えば、図75および76はそれぞれ、第一の構成および第二の構成での、実施形態に従った医療注射器15002の略図である。
カ「【0226】
[1298] 例えば、本明細書で表示・記載する種類の単回使用の使い捨て自動注射器であってもよい医療注射器15002は、筐体15110、薬剤容器15262、針15212、および電子回路システム15920を含む。筐体15110は、近位端部分15112と遠位端部分15114を備える。薬剤容器15262は筐体15110内に配置される。薬剤容器15262は筐体15110内で可動式に配置されるものとして表示されているが、別の実施形態において、薬剤容器15262は筐体15110内に固定式に配置されてもよい。
【0227】
[1299] 針15212は近位端15216と遠位端15214を備え、薬剤容器15262と流体的に連通するよう構成される。このようにして、薬剤容器15262内の薬剤は、針15212から注射が行われる間に体内に送達されることができる。針15212は、第一の位置(図75)と第二の位置(図76)の間で筐体15110内で可動式に配置される。針15212が第一の位置にあるとき、針の遠位端15214は筐体15110内に配置される。針15212が第二の位置にあるとき、針の遠位端15214は筐体15110内に配置される。従って、医療注射器15002が作動すると、針15212は第一の位置と第二の位置で移動されて患者の皮膚S(図76を参照)を貫通し、および/または患者の身体B内に薬剤を送達するための経路を提供してもよい。
【0228】
[1300] 電子回路システム15920は、少なくとも第一の電極15030および第二の電極15031を含む。第一の電極15030は、針15212の遠位端15214で配置される。第二の電極15031は、筐体15110の遠位端部分15114で配置される。電子回路システム15920は、第一の電極15030と第二の電極15031の間のインピーダンスに関連付けられる電子信号S8を出力するよう構成される。電子信号S8は、本明細書で表示・記載する種類のコンプライアンスおよび/またはアドヒアランス監視装置(図75および76では非表示)によって受信されるよう構成された、本明細書で記載する種類の適した通信信号であってもよい。このようにして、より詳しく後述するように、電子回路システム15920は、第一の電極15030と第二の電極15031の間のインピーダンスに基づく注射の有効性および/または投与に関連付けられた電子的および/または自動的フィードバックを提供してもよい。
【0229】
[1301] 薬剤1回分を送達するために、患者はまた身体Bの皮膚Sに対して筐体の遠位端部分15114を配置する。一部の実施形態において、第二の電極15031は、図1~3に関して前記で表示・記載した近接センサ1974に類似した近接センサを含みうる。従って、前記実施形態において、電子回路システム15920は医療注射器15002が適切に位置付けられ作動の準備が整ったことを示す、一つ以上の電子出力を生成してもよい。次に患者は医療注射器15002を作動させ、これによって図76の矢印VVに示すように針を第一の位置から第二の位置に移動させる。従って、針は患者の皮膚Sを貫通して、患者の身体B内に薬剤を送達するための経路を提供する。
【0230】
[1302] 前述の注射が行われる間、電子回路システム15920は第一の電極15030と第二の電極15031の間のインピーダンスZ1を測定するよう構成される。次に、電子回路システム15920は電子信号S8を生成および/または出力でき、これはインピーダンスZ1に関連付けられる。一部の実施形態において、電子信号S8は、注射の実施の有効性を特徴付けるために電子回路システム15920またはコンプライアンスおよび/またはアドヒアランス監視装置(図75および76では非表示)のいずれかによって処理されてもよい。例えば、インピーダンスZ1、針15212の貫通の既知の深さ(つまり筐体15110の遠位端15114と針15212の遠位端15214の間の距離)、および/またはさまざまな種類の体組織の特性インピーダンスに基づき、コンプライアンスおよび/またはアドヒアランス監視装置は注射の実施中に針15212が体組織T内に配置されたかどうかを判断できる。換言すれば、体組織Tにはその他の物質(例:枕、ドライウォール、衣服材料または同類のもの)の特性インピーダンスとは異なる特性インピーダンスがあるため、コンプライアンスおよび/またはアドヒアランス監視装置はインピーダンスZ1および/または針15212の貫通の既知の深さに基づき注射の実施の有効性を評価できる。さらに、さまざまな種類の体組織の特性インピーダンス値は異なりうるため、一部の実施形態において、コンプライアンスおよび/またはアドヒアランス監視装置は注射が脂肪組織、筋肉組織骨組織、または同類のものの内部で生じるかどうかを評価できる。例えば、多くのワクチンは患者の筋肉組織内に送達されることが意図されている。患者が不注意でワクチンを筋肉組織以外の組織(例:脂肪組織)内に送達した場合、電子回路システム15920は医療専門家に連絡するよう使用者に通知する電子信号を出力できる。」
キ 「
[図:0001426198000001.jpg]
」
ク 「
[図:0001426198000002.jpg]
」
ケ 「
[図:0001426198000003.jpg]
」
コ 「
[図:0001426198000004.jpg]
」
サ 「
[図:0001426198000005.jpg]
」
シ 引用文献1の図6~14に記載される自動注射器4002についての段落【0049】、【0055】及び【0061】の記載(上記エ参照)にもあるように、自動注射器の筐体の遠位端部分に位置する基部に、自動注射器が作動するときに針が通って延びる針開口部を設けることは技術常識であることを踏まえれば、上記カの針15212の「第二の位置(図76)」は、針15212の遠位端15214が筐体15110の遠位端部分15114の開口部を通って延出する位置と表現できる。
ス 上記オの「図1から3に関して前記で表示・記載した電子回路システム1920は、…を含むが、別の実施形態において、…例えば、図75および76はそれぞれ、第一の構成および第二の構成での、実施形態に従った医療注射器15002の略図である。」との記載から、図75、76の実施例は、図1から3の実施例の変形例であって、具体的に、前者の実施例で開示される筐体15110内部に配置されたシステム・アクチュエータ1510及びプランジャー1284と、システム・アクチュエータ1510は、穿刺メカニズム1612を含む点と(いずれも上記イ参照)は、後者の実施例においても実質的に開示されている。
(2)引用発明
上記図75、76の実施例に着目すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「筐体15110、薬剤容器15262、針15212、筐体15110内部に配置されたシステム・アクチュエータ1510および電子回路システム15920を含む医療注射器15002であって、
筐体15110は、近位端部分15112と遠位端部分15114を備え、
薬剤容器15262は、筐体15110内に配置され、プランジャー1284を含み、
システム・アクチュエータ1510は、穿刺メカニズム1612を含み、
電子回路システム15920は、針15212の遠位端15214に配置される第一の電極15030、および筐体15110の遠位端部分15114に配置される第二の電極15031を含み、
針15212は、薬剤容器15262と流体的に連通し、薬剤容器15262内の薬剤は、針15212から注射が行われる間に体内に送達されるものであり、
薬剤1回分を送達するために、患者は身体Bの皮膚Sに対して筐体15110の遠位端部分15114を配置し、患者が装置の上部を押し下げて医療注射器15002を作動させると、針15212は、針15212の遠位端15214が筐体15110内に配置される第一の位置から、針15212の遠位端15214が筐体15110の遠位端部分15114の開口部を通って延出する第二の位置に移動されて患者の皮膚Sを貫通し、患者の身体B内に薬剤を送達するための経路を提供し、
穿刺メカニズム1612はプランジャー1284を移動させ、これによって薬剤が送達され、
注射が行われる間、電子回路システム15920は、第一の電極15030と第二の電極15031の間のインピーダンスZ1を測定し、インピーダンスZ1に基づき、注射の実施中に針15212が体組織T内に配置されたかどうかを判断し、第一の電極15030と第二の電極15031の間のインピーダンスZ1に基づく注射の実施の有効性に関連付けられたフィードバックを提供する、
医療注射器15002。」
(3)引用文献2の記載
上記引用文献2には、次の事項が記載されている。
ア「【0042】
流体薬剤を患者に送達するためのウェアラブル流体送達デバイスを以下に述べる。このデバイスは、ある量の薬剤を収納するためのリザーバと、薬剤を患者に送達するための投薬インターフェースとを含む。デバイスは、注射によって投薬インターフェースから薬剤を送達し、注射に関する温度ベースのフィードバックを患者に与えるように構成される。例えば、患者は、温度ベースのフィードバックによって、デバイスを取り外すべき時、または別の理由でデバイスに関与すべき時の情報を受けることができる。デバイスが患者の皮膚に装着されている間、注射およびフィードバックが提供される。」
イ「【0048】
以下により詳細に説明するように、デバイス1は、電子制御装置16を含んでいてよく、電子制御装置16は、アクチュエータ11および/またはデバイス1の他の要素の動作を制御するように構成される。電子制御装置16は、プロセッサとメモリとを含み、例えば、システムバス(図示せず)を使用してアクチュエータ11および/またはデバイス1の他の要素に通信可能に結合された電子マイクロコントローラを含む。スイッチ13、モータ14、バッテリ15、および制御装置16は、図2でのデバイス1のブロック図には示されているが、図1には示されていない。」
ウ「【0053】
図3を参照すると、ハウジング2の接触領域21が、デバイス1の使用中に患者の皮膚に装着されるように構成される。接触領域21は、例えば、ハウジング2の底面に位置する。接触領域21は、患者の皮膚に装着されるときに快適になるように選択される幾何学的および触覚的特性を有する。ハウジング2のこの接触領域21を通って、カニューレ6または他の注射要素が、薬剤の送達中に患者の身体組織内に突出する。接触領域21は例えばアパーチャ22を有し、アパーチャ22を通って、カニューレ6が、デバイス1の使用中に突出する。アパーチャ22は、前述した延出および後退動作中を含め、カニューレ6および/または上で言及した別個の針を収容するのに十分に大きい。」
エ「【0059】
フィードバック装置25をトリガして、患者が知覚可能な、患者の皮膚組織の温度の変化を生じさせることができるイベントの一例は、薬剤注射プロセスの完了である。特に、デバイス1は、薬剤の用量がカニューレ6または他の注射要素を通して患者に完全に注射された時を検出するように構成される。フィードバック装置25は、これを検出し、前に言及した電子制御装置16に標示信号をフィードバックするための1つまたはそれ以上の適切なセンサを含む。」
オ「【0061】
追加としてまたは代替として、フィードバック装置25は、センサ28を含むことがあり、センサ28は、所定の体積の薬剤がカプセル5から出て前に言及した開口部9を通過したことを検出するように構成される。センサ28は、例えば、開口部9、または開口部9が連結された管路10に位置する。適切なセンサ28は、薬剤流量センサである。センサ28は、管路10を通るカニューレ6への薬剤の流れが止まったことを検出することによって動作することがあり、それにより、予め設定された用量の薬剤がピストン18によってカプセル5から排出されたことを示す。薬剤の用量が管路10を通過したことを検知したとき、流量センサ28は、薬剤の用量がカプセル5からカニューレ6に排出されたことを示す信号を発生するように構成される。
【0062】
センサ27、28からの信号が、送達デバイス1のステータス、特に患者の身体組織への薬剤の注射の進行を示すことを理解されたい。」
カ 「
[図:0001426198000006.jpg]
」
キ 「
[図:0001426198000007.jpg]
」
(4)引用文献3の記載
上記引用文献3には、次の事項が記載されている。
ア「【0013】
通常の良好な血管アクセスにおいては、人体に流体を投与する針は、アクセス部の真下の皮膚表面上で、平坦となるようにテープで固定される。通常、皮膚とすぐに平坦接触とならない針や付随するチューブは抜ける危険がある。抜けた針は体内にはないため、流体は意図する場所に到達できない可能性がある。この流体が血液であるならば、これは非常に危険な状態であり、流体のフローを止めて、針を入れ直すか取り換えることによって即刻処置すべきである。
【0014】
本開示のシステムは、血管アクセス針が皮膚と接触しなくなったことを検出するための皮膚接触センサを用いるものである。実施形態の中には、接触センサの作動が、流体のフローを自動的に制限/減少するために針本体における流路内のチューブの軟部上に直接圧縮レバーを移動させるという二次的な動作も引き起こすものがある。本開示の検知機構を用いて、本装置または付随装置はアクセス針の抜けによる誤った流体のフローを検出するとともに即刻停止することができる。
【0015】
図1Aから図4は、本開示において、スプリングアームとピンチング機構を備えている検知機構/システム10の一形態を示す。標準的な針セットは、血液または生理食塩液/薬剤の投与のための血液アクセスを行うために、検知機構10を包含していてもよく、針20およびチューブ16のセット内に皮膚接触検知機構10をも包含する既存の針セットとほぼおなじような見た目や感覚であるように製造することができる。本検知機構10は、接触部材または突き出したスプリングアーム18の形状の、またはハウジング12の底面に向けて位置づけられている、作動機構25を備える。スプリングアーム18のサイズは、針が抜けているときに皮膚の表面50から持ち上がった針本体20に対する正確な高さを高精度で判定できる装置を作成するために、製造前に調整することができる。本開示の目的において、「抜け」という用語は、針先端が皮膚から抜けた状態、またはハウジングが皮膚からある一定の距離持ち上がった状態であることを意味している。
【0016】
スプリングアーム18は、ばね負荷をかけられ(例えば、図3Aおよび図4に示したねじりばね28を用いる)、針20を固定するために用いられるテープ52が皮膚50に対し針20が平らに寝かされるように留められているならば、針本体20の底部とほぼ同じように設けられているに過ぎない(図1A参照)。ハウジング12はカバー32h、針ガイド44、チューブポート42、およびフラップ14も含んでいてもよい。
【0017】
図1Bに示される抜け/開放姿勢を参照すると、ほとんど針が抜けた間に起こることとして、針20が人体50から持ち上がると、スプリングアーム18が開放するように揺動する。
【0018】
図2Aおよび図2Bの断面図からわかる通り、スプリングアーム18はハウジング12の内部においてフロー停止機構に機械的に連結されている。フロー停止機構は圧縮レバー24を備え、圧縮レバー24は流路の機械的な遮断を介して流体フローを停止するまたは有意に制限するように、チューブ40とともにピンチバルブを形成しており、例えば、針20および流路内のチューブの軟部40を圧縮又はつまみ留める。ねじりばね28はスプリングアーム18の動きをハウジング12内に設けられているヒンジ46およびピン26を介して圧縮レバー18の動きに変換する(図4参照)。」
イ 「
[図:0001426198000008.jpg]
[図:0001426198000009.jpg]
」
2 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「医療注射器15002」は、その機能及び構造からみて、本願発明1の「薬物送達デバイス」に相当し、以下同様に、「薬剤」は「薬物」に、「筐体15110」は「ハウジング」に、「薬剤容器15262」は「薬物を収容するように適合された一次容器」に、「遠位端15214」を有する「針15212」は「末端部」を有する「カニューレ」に、それぞれ相当する。
引用発明の「薬剤1回分を送達するために、患者は身体Bの皮膚Sに対して」「配置」する「筐体15110の遠位端部分15114」は、上記1(1)サを参照すると、医療注射器15002の使用中に患者の皮膚Sに接触するから、本願発明1の「ハウジング」が「画定する」「当該薬物送達デバイスの投与動作中に患者に接触するための先端側表面」に相当する。
また、引用発明の「筐体15110」は、上記1(1)コを参照すれば、その中に薬剤容器15262等を配置するための空洞を有することは明らかであるから、本願発明1の「内部空洞」「を画定するハウジング」に相当する。そして、引用発明の「筐体15110内に配置され」る「薬剤容器15262」は、本願発明1の「前記ハウジングの前記内部空洞内に配置され、薬物を収容するように適合された一次容器」に相当する。
(2)引用発明の、その「遠位端15214に配置される第一の電極15030」を有する「針15212」は、本願発明1の「導電性部分を有するカニューレ」に相当する。
そして、引用発明の「針15212の遠位端15214が筐体15110内に配置される第一の位置から、針15212の遠位端15214が筐体15110の遠位端部分15114の開口部を通って延出する第二の位置に移動されて患者の皮膚Sを貫通し、患者の身体B内に薬剤を送達するための経路を提供」する「針15212」は、本願発明1の「前記カニューレの末端部が前記ハウジング内部にある保管状態と、前記カニューレの前記末端部が前記ハウジングの前記先端側表面の開口部を通って延出する送達状態と、を有する、カニューレ」に相当する。
(3)引用発明の「針15212」は、「薬剤容器15262と流体的に連通し、薬剤容器15262内の薬剤は、針15212から注射が行われる間に体内に送達される」から、針15212と薬剤容器15262とを含む薬剤の流路が構成されていることは明らかであり、引用発明の当該流路は、本願発明1の「前記一次容器及び前記カニューレを含む、前記薬物用の流体流路」に相当する。
(4)引用発明の「プランジャー1284を移動させ、これによって薬剤が送達され」る「穿刺メカニズム1612」を含む「筐体15110内部に配置されたシステム・アクチュエータ1510」及び筐体15110内の「薬剤容器15262」が含む「プランジャー1284」は、本願発明1の「前記ハウジング内に配置されている、前記薬物を前記一次容器から前記流体流路を通して選択的に押し出し、前記カニューレが前記送達状態にあるときに前記カニューレを通して患者に送達するための送達機構」に相当する。
(5)引用発明の「筐体15110の遠位端部分15114に配置される第二の電極15031」は、本願発明1の「前記ハウジングの前記先端側表面上に配置された電極」に相当する。
(6)引用発明の「第一の電極15030と第二の電極15031の間のインピーダンスZ1に基づく注射の実施の有効性に関連付けられたフィードバックを提供する」「電子回路システム15920」は、上記1(1)コから、筐体15110内に配置されているから、本願発明1の「前記ハウジングによって支持され、」「前記カニューレ、及び前記電極に電気的に接続されたコントローラ」に相当する。
(7)引用発明において、「薬剤1回分を送達するために、患者は身体Bの皮膚Sに対して筐体15110の遠位端部分15114を配置し」、「針15212は」「患者の皮膚Sを貫通し」、電子回路システム15920が、「注射が行われる間、」「第一の電極15030と第二の電極15031の間のインピーダンスZ1を測定」することは、本願発明1において、「前記ハウジングの前記先端側表面上の前記電極を患者の皮膚上に適用し、前記患者に前記カニューレを挿入すると、」コントローラが、「前記カニューレ及び前記電極を含む電気回路が閉じたと決定」し、「前記閉じた電気回路の認識」をすることに相当する。
(8)引用発明の「注射が行われる間、電子回路システム15920は、第一の電極15030と第二の電極15031の間のインピーダンスZ1を測定し、インピーダンスZ1に基づき、注射の実施中に針15212が体組織T内に配置されたかどうかを判断し、第一の電極15030と第二の電極15031の間のインピーダンスZ1に基づく注射の実施の有効性に関連付けられたフィードバックを提供する」ことと、本願発明1の「前記流量測定デバイスの測定値を基に、及び前記閉じた電気回路の認識と併せて、(1)前記薬物の全用量が前記流体流路内を押し出され、前記患者に送達されたかどうか、および(2)前記薬物の全用量が前記流体流路内を押し出される前に前記電極および前記カニューレが前記患者との接触を失うと前記電気回路が開いたかどうかを決定すること、により、前記薬物が前記患者に無事に送達されたかどうかを決定するように構成されて」いることとは、注射の実施の有効性とは、薬剤の全用量が患者に送達された場合が有効であり、薬剤の全用量が患者に送達されない場合、すなわち針15212が患者との接触を失った場合が有効でないのであるから、「前記閉じた電気回路の認識を基に、(1)前記薬物の全用量が前記流体流路内を押し出され、前記患者に送達されたかどうか、および(2)前記薬物の全用量が前記流体流路内を押し出される前に前記電極および前記カニューレが前記患者との接触を失うと前記電気回路が開いたかどうかを決定すること、により、前記薬物が前記患者に無事に送達されたかどうかを決定するように構成されて」いることの限りで一致する。
そうすると、両者は、
「薬物送達デバイスであって、
内部空洞と、当該薬物送達デバイスの投与動作中に患者に接触するための先端側表面と、を画定するハウジングと、
前記ハウジングの前記内部空洞内に配置され、薬物を収容するように適合された一次容器と、
導電性部分を有するカニューレであって、前記カニューレの末端部が前記ハウジング内部にある保管状態と、前記カニューレの前記末端部が前記ハウジングの前記先端側表面の開口部を通って延出する送達状態と、を有する、カニューレと、
前記一次容器及び前記カニューレを含む、前記薬物用の流体流路と、
前記ハウジング内に配置されている、前記薬物を前記一次容器から前記流体流路を通して選択的に押し出し、前記カニューレが前記送達状態にあるときに前記カニューレを通して患者に送達するための送達機構と、
前記ハウジングの前記先端側表面上に配置された電極と、
前記ハウジングによって支持され、前記カニューレ、及び前記電極に電気的に接続されたコントローラであって、
前記ハウジングの前記先端側表面上の前記電極を患者の皮膚上に適用し、前記患者に前記カニューレを挿入すると、前記カニューレ及び前記電極を含む電気回路が閉じたと決定すること、及び
前記閉じた電気回路の認識を基に、(1)前記薬物の全用量が前記流体流路内を押し出され、前記患者に送達されたかどうか、および(2)前記薬物の全用量が前記流体流路内を押し出される前に前記電極および前記カニューレが前記患者との接触を失うと前記電気回路が開いたかどうかを決定すること、
により、前記薬物が前記患者に無事に送達されたかどうかを決定するように構成されている、コントローラと
を含む、薬物送達デバイス。」
である点で一致し、次の各点で相違する。
[相違点1]
本願発明1は、「前記コントローラは、前記送達機構の動作を制御」するのに対し、引用発明は、患者が装置の上部を押し下げて医療注射器15002を作動させ、患者の身体B内に薬剤を送達する点。
[相違点2]
本願発明1は、薬物送達デバイスが「前記流体流路内を押し出される前記薬物の流れの特性を測定するように構成された流量測定デバイス」を含み、コントローラが「前記流量測定デバイス」「に電気的に接続され」、「前記流量測定デバイスの測定値を基に、及び前記閉じた電気回路の認識と併せて、」前記薬物の全用量の投与を決定しているのに対し、引用発明は、そのような流量測定デバイスを有せず、薬剤の全用量の投与を、測定したインピーダンスZ1のみに基づいて決定しており、上記流量測定デバイスの測定値を併せての決定を行うものではない点。
[相違点3]
本願発明1は、「前記薬物の全用量が送達される前に前記電気回路が開いたと決定することに応答して、前記薬物の送達を一時停止するようにさらに構成されている」のに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
3 判断
上記相違点1~3について検討する。
(1)相違点2について
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
上記1(3)ア~キのとおり、引用文献2には、管路10に位置し、患者の身体組織への薬剤の注射の進行を示す信号を電子制御装置16にフィードバックする、薬剤流量センサ28を有するフィードバック装置25を備えた、使用中に患者の皮膚に装着される流体送達デバイス1が記載されている。
引用発明は、薬剤の全用量の投与を把握するものである(上記1(1)オ参照)から、引用発明に引用文献2記載の上記薬剤流量センサ28を適用して流路を流れる薬剤の流れの特性、すなわち流量を測定することで、上記相違点2に係る本願発明1の事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
(2)相違点1、3について
引用発明は、薬剤の送達のために患者が装置の上部を押し下げて医療注射器15002を作動させるものであるところ、上記のような手動による作動に代えて送達機構の動作を制御する構成とすることは従来周知の技術的事項であるから、引用発明に当該事項を適用して、電子回路システム15920に薬剤の送達機構を制御する機能を搭載する程度のことは、当業者であれば適宜なし得たことである。
そして、上記1(4)ア~イのとおり、引用文献3には、人体に流体を投与する針を備えた装置であって、針先端が皮膚から抜けた状態を検出して流体のフローを停止する検知機構を備えることが記載されている。
引用発明の医療注射器15002は、「注射が行われる間、電子回路システム15920は、第一の電極15030と第二の電極15031の間のインピーダンスZ1を測定し、インピーダンスZ1に基づき、注射の実施中に針15212が体組織T内に配置されたかどうかを判断」するものであるところ、針15212が配置される体組織Tの種類によって、測定されるインピーダンスZ1の値が異なりうることを前提としている(上記1(1)カ参照)から、針15212がどの体組織Tにも配置されなくなったこと、すなわち針15212が患者の身体Bから抜けてしまったことも同様に、インピーダンスZ1の値から検知し得るものである。
そうすると、引用発明において、抜けた針15212からの薬剤の漏出を未然に防ぐことは当業者が当然に考慮することであるから、上述のとおり引用発明の電子回路システム15920に薬剤の送達機構を制御する機能を搭載するとともに、引用発明に引用文献3記載の上記検知機構を適用して、上記相違点1、3に係る本願発明1の事項とする程度のことは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
(3)効果の検討
そして、上記相違点1~3を総合的に勘案しても、本願発明1の奏する効果は、引用発明及び引用文献2、3の記載事項から当業者が予測し得る範囲内のものであり、格別顕著なものではない。
(4)小活
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2、3の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明11は、特許法第29条第1項柱書でいう産業上利用できる発明に該当せず、特許を受けることができない。
また、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-007314