2024-005664
基材、包装材料用積層体および包装材料
- 審判番号
- 2024-005664
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-062477外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年04月04日
- 審決日
- 2025年11月18日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (B32B) / P18 .575-Z (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成31年3月28日の出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
(令和6年 1月 5日 :原査定の謄本の送達)
第2 令和6年4月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年4月4日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所である。)。
「基材と、ヒートシール層とを備えた包装材料用積層体であって、前記基材が、積層フィルムから構成され、前記積層フィルムは、ガスバリア性樹脂層と、ポリエチレン樹脂層との共押延伸樹脂フィルムであり、前記ポリエチレン樹脂層は、少なくとも1層が、中密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンを含む層を備え、前記ヒートシール層は、ポリエチレン樹脂により構成され、前記包装材料用積層体全体における前記ポリエチレン樹脂の含有量が、80質量%以上であることを特徴とする、包装材料用積層体。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和5年4月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「基材と、ヒートシール層とを備えた包装材料用積層体であって、前記基材が、積層フィルムから構成され、前記積層フィルムは、ガスバリア性樹脂層と、ポリオレフィン樹脂層との共押延伸樹脂フィルムであり、前記包装材料用積層体全体における前記ポリオレフィンの含有量が、80質量%以上であることを特徴とする、包装材料用積層体。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ポリオレフィン樹脂層」を「ポリエチレン樹脂層」に限定するとともに、当該「ポリエチレン樹脂層」を「少なくとも1層が、中密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンを含む層を備え」るものと限定し、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ヒートシール層」について「ポリエチレン樹脂により構成され」るものと限定し、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「包装材料用積層体全体における前記ポリオレフィンの含有量」を「包装材料用積層体全体における前記ポリエチレン樹脂の含有量」に限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。
(1)補正発明
補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載等
ア 引用文献Aの記載
令和5年12月27日付け補正の却下の決定で引用された本願の出願前に公開された引用文献である国際公開第2018/202479号(平成30年11月8日国際公開。以下「引用文献A」という。)には、次の記載がある(なお、括弧内に翻訳文を示すとともに、下線は当審が付した。「・・・」は省略した部分を表す。以下同様。)。
(ア)明細書1ページ3~5行
「[図:0001430590000001.jpg]」
(本発明は、第一のラミネート層と第二のラミネート層を備えた包装用積層材であって、前記第一のラミネート層がバリア層を含む包装用積層材、並びにこのような包装用積層材を製造する方法に関する。)
(イ)明細書2ページ18~24行
「[図:0001430590000002.jpg]」
(他方、WO2015/175871A1は、例えばPA、ビニル含有またはアクリレート含有ポリマーでできたバリア層と接合されたHDPE層でできた包装用積層材を記載している。上記バリア層上には、更に、シーリング層、例えばLLDPEからできたシーリング層も配置することができる。その目的は、バリア層が包装用積層材の総重量の最大5%を占めることによってリサイクル適合性の積層材を製造することである。WO2015/175871A1の包装用積層材は配向されていない。)
(ウ)明細書3ページ10行~4ページ15行
「[図:0001430590000003.jpg][図:0001430590000004.jpg][図:0001430590000005.jpg][図:0001430590000006.jpg][図:0001430590000007.jpg]」
(簡単に製造することができかつ両方向に簡単に引き裂くことができる、リサイクル適合性の包装用積層材を提供することが本発明の課題の一つである。更に、このような包装用積層材の製造法を提供することも課題の一つである。
上記課題は、少なくとも60体積%のHDPE含有率を有する基材層、接合層、及びバリアポリマー、好ましくはポリアミドもしくはエチレン-ビニルアルコールコポリマーでできたバリア層からなる第一のラミネート層であって、前記バリア層が、第一のラミネート層の全厚の最大20%の厚さを有しかつ前記接合層が、前記基材層と前記バリア層との間に配置される第一のラミネート層を共押出し、その後、この共押出された第一のラミネート層を機械方向に延伸し、そしてその後、このように延伸された第一のラミネート層を、少なくとも80体積%のポリエチレン含有率を有する第二のラミネート層と接合し、ここで前記第二のラミネート層は、前記第一のラミネート層のバリア層と接合されることによって解消される。本発明による包装用積層材は、第一のラミネート層及び第二のラミネート層を含み、ここで前記第一のラミネート層は、少なくとも60体積%のHDPE含有率を有する基材層と、接合層と、バリアポリマー、好ましくはポリアミドまたはエチレン-ビニルアルコールコポリマーでできたバリア層であって、第一のラミネート層の全厚の最大20%の厚さを有するバリア層とからなる、共押出及び機械方向に延伸された複合材であり、及び前記接合層は、前記基材層と前記バリア層との間に配置されており、及び前記第一のラミネート層は、そのバリア層で前記第二のラミネート層と接合している。
第二のラミネート層との積層前の第一のラミネート層の一方向延伸によって、第一のラミネート層のバリア作用が著しく増大される。加えて、驚くべきことに、前記一方向延伸によって、規定の構造を有する第一のラミネート層を両方向に等しく容易に引き裂くことができることが見出された。これらの引き裂き特性は、該包装用積層材自体でさえ両方向に容易に引き裂くことができるように、該包装用積層材に与えられる。加えて、製造は、従来の対称的な二方向構造と比較して、単純で非対称的な構造と、第一のラミネート層の一方向のみの延伸とによってかなり単純化され、これはまた、製造コストを著しく低減する。
特にHDPE含有率が80%以上である場合、高HDPE含有率を有する機械方向に延伸された(MDO)層は、長手方向に裂ける傾向がある。それ故、PE包装用積層材では、高いHDPE含有率を有するこのようなMDO層は、これまでは常に、例えばLLDPEでできた更なる層によって、より強靭なLLDPEまたはmLLDPEと組み合わされており、この場合は、包装用積層材中の高いLLDPE含有率が目的とされた。更に驚くべきことに、このような高いHDPE含有率(ほぼ100% HDPEも可)を有する第一のラミネート層は、このような強靭なLLDPE層がなくても十分に強靭であり、裂ける傾向がないことが今や見出された。その理由は、該ラミネート層に必要な強靱性を与える接合層にある。それ故、該第一のラミネート層は、バリアフィルムとしても有利に使用できる。)
(エ)明細書5ページ25行~6ページ12行
「[図:0001430590000008.jpg][図:0001430590000009.jpg]」
(基材層4は、少なくとも60体積%、好ましくは少なくとも70体積%、非常に特に好ましくは少なくとも80体積%の高密度(HDPE)のポリエチレン(PE)の含有率を有する。この際、このHDPE含有率は100体積%に近づくことができ、ここで、100体積%は、一般的に、通常の添加剤(例えば、潤滑剤、ブロッキング防止添加剤、充填剤など)に基づいては達成されない。HDPEとは、0.94と0.97g/cm3との間の密度を有するPEのことと理解される。残部は、特に強靱性を高めるためには、適合性のポリオレフィン材料、好ましくは線状低密度ポリエチレン(LLDPE)(0.87~0.94g/cm3の密度)、低密度ポリエチレン(LDPE)(0.915~0.935g/cm3の密度)または線状低密度メタロセンポリエチレン(mLLDPE)である。適合性のポリオレフィン材料としては、基本的に如何なるタイプのポリエチレンも考慮され、特にエチレンコポリマー、例えばエチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、メタクリル酸エチルエステル(EMA)、エチレン/アクリル酸コポリマー(EAA)またはエチレン-アクリル酸ブチルコポリマー(EBA)も考慮される。同様に、ポリプロピレン(PP)またはシクロオレフィンコポリマー(COC)も適合性ポリオレフィン材料として最大20体積%の程度で使用できる。PPの場合は、少なくとも限定されたリサイクル性を達成するためには、好ましくは、線状PEタイプ、例えばmLLDPE、LLDPEもしくはHDPEと十分に適合性の、コノモマー(通常、5~15%)としてエチレンを有するポリプロピレンランダムコポリマー、エチレン含有ポリプロピレンコポリマーまたはポリプロピレンホモポリマーが使用される。
この際、HDPE及び適合性ポリオレフィン材料は、基材層4中に混合物として存在することができる。しかし、基材層4は、一つ(または複数でもよい)HDPE層及びポリオレフィン材料からなる一つ(または複数でもよい)層を備えて、(押出または共押出されて)多層状に構成されていることもできる。基材層4の厚さは、好ましくは5~35μmである。)
(オ)明細書6ページ13~19行
「[図:0001430590000010.jpg]」
(該バリア層6は、バリアポリマー、すなわち(特に酸素、水素及び/または芳香物質に対して)十分なバリア特性を持つポリマーからなる。該バリアポリマーは、好ましくはポリアミド(PA)またはエチレン-ビニルアルコールコポリマー(EVOH)である。バリアポリマーとしては、EVOHが好ましい。バリア層6は、第一のラミネート層2の全厚の最大20%、好ましくは5~10%の厚さ、すなわち最大2~8μmの厚さを有する。該バリア層6の薄い厚さのために、リサイクル適合性はそれによって損なわれない。)
(カ)明細書6ページ20~28行
「[図:0001430590000011.jpg]」
(前記接合層5は、バリア層6と基材層4との接合のために使用される。この場合、特に第一のシーリング層2の望ましくない層間剥離を確実に防ぐために、十分な接着が達成されるべきである。適当な接合層5は、好ましくは、高められた極性を持つポリマー、例えば無水マレイン酸で変性されたポリオレフィン(例えばPEまたはPP)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エチレン/アクリル酸コポリマー(EAA)、エチレン-アクリル酸ブチルコポリマー(EBA)または類似のポリオレフィンコポリマーをベースとするポリマーからなる。接合層5の厚さは、第一のラミネート層2の全厚の最大10%、典型的には1~5μmである。)
(キ)明細書6ページ29行~7ページ3行
「[図:0001430590000012.jpg][図:0001430590000013.jpg]」
(第二のラミネート層3は、主にPEからなり、この際、第二のラミネート層3の全ポリマー量中のPE含有率は、場合により加えられる鉱物性もしくは他の充填材は含めずに少なくとも80体積%であるのがよい。ここで、様々なPEタイプ、すなわちLDPE、LLDPE、MDPE、HDPEを、単独でまたは混合物としても、あるいはコポリマーの形でまたは多層状で、使用することができる。第二のラミネート層3の厚さは、包装用積層材1の用途に応じて、典型的には20μmと200μmとの間である。
第二のラミネート層3においても、目的とするリサイクル適合性のために、残部は、当然ながら、先に記載したように適合性ポリオレフィン材料から構成される。)
(ク)明細書7ページ4~7行
「[図:0001430590000014.jpg]」
(包装用積層材1中に主にPEと適合性の材料とを使用することによって、格別リサイクル適合性の積層材を製造することができ、これは、慣用の方法を用いて機械的なリサイクルで簡単にかつ費用効果高く再利用することができる。)
(ケ)明細書8ページ32行~10ページ23行
「[図:0001430590000015.jpg][図:0001430590000016.jpg]・・・[図:0001430590000017.jpg][図:0001430590000018.jpg][図:0001430590000019.jpg]」
(上述したように基材層4、バリア層6及び接合層5を備えた機械方向に延伸された第一のラミネート層2は、図らずしも確認されたように、60体積%の高HDPE含有率にもかかわらず、特に80体積%超~100体積%の非常に高いHDPE含有率の場合でさえ、長手方向の裂け目を生じる傾向はない。この際、この作用は、第一のラミネート層2の非対称的な構造でも、また第一のラミネート層2の対称的な構造においても生じる。この確認された効果は、バリアフィルムとしての第一のラミネート層2について表1中の以下の例に基づいて証明される。
[図:0001430590000020.jpg]
表1
・・・
表1中のフィルムAは、10体積%のmLLDPEを含むMDO HDPEモノフィルムである。フィルムAは、同じ厚さ(構成1/1/1/1/1)の5つの層全てに10体積%のmLLDPEを使用して5層型共押出フィルムとして構成される。機械方向での延伸比は6:1である。このようなフィルム1は長手方向に裂ける傾向があり、これは、特に、横方向での非常に低い引張強度及び破断伸びとして確認可能である。長手方向での引裂伝播抵抗も、表1中の他の比較フィルムと比べてかなり小さく、これも同様に、長手方向での引裂伝播傾向の示唆となる。
フィルムBも、95%HDPE+5%LLDPE/100%HDPE/60%HDPE+40%LLDPE/100%HDPE/100%HDPEのフィルム構造を持つ5層型共押出物である。機械方向での延伸比は6:1である。その結果、フィルムBでは、引き裂き傾向を低下させるために、これまで通常のように少なくとも一つの層中に強靱性成分(LLDPE)が高割合(40%)で混入された。これは、フィルムAと比較してより高い横方向での引張強度値、横方向(TD)での破断時伸び及び長手方向での引裂伝播抵抗によって確認可能である。
しかし、バリアフィルムCを用いてより良好な効果が達成される。バリアフィルムCは、95%HDPE+5%LLDPE/100%HDPE/60%HDPE+40%LLDPE/接合層5/EVOHバリア層6のフィルム構造を持つ5層型共押出物である。機械方向での共押出バリアフィルム3の延伸比は5:1である。そこで、基材層4は、基材層4中に約78%のHDPE含有率を有する三層型の層である(層厚4μm/4μm/8μm)。接合層5は、バリアフィルムCにおいて2μmであり、すなわち全厚の10%であり、そしてバリア層5も同様に2μm、すなわち全厚の10%である。それにより、バリアフィルムCの2/2/4/1/1の構造が生じる。長手方向での引き裂き傾向を大きく低減するために、バリアフィルムCは、接合層5によって十分な靱性を獲得する。これは、横方向(TD)での破断時伸び及び長手方向での引裂伝播抵抗の明らかにより高い値によって確認可能である。横方向での引張強度は、フィルムBと同等である。
特に驚くべきことは、バリアフィルムDによって示されるように基材層4中のHDPE含有率が更に増加される場合、この効果には殆ど差はないことである。バリアフィルムDも、95%HDPE+5%LLDPE/100%HDPE/100%HDPE/接合層5/EVOHバリア層6のフィルム構造を持つ5層型共押出物である。最外側層中の低いLLDPE含有率は、加工特性を向上するためにバリアフィルムDの表面特性を変性するのに主に使用される。機械方向での延伸比はこの場合も5:1である。そこで、基材層4は、基材層4中に約97体積%のHDPE含有率を有する三層型の層である(層厚4μm/4μm/8μm)。接合層5は、バリアフィルムDにおいて2μmであり、すなわち全厚の10%であり、そしてバリア層5も同様に2μmであり、すなわち全厚の10%である。それにより、バリアフィルムDの2/2/4/1/1の構造が生じる。バリアフィルムDでは、長手方向及び横方向での引裂伝播挙動はそれどころか特に均一である。)
(コ)明細書11ページ26~29行
「[図:0001430590000021.jpg]」
(この際、第二のラミネート層3は、好ましくはシーリング層7を形成し、これは、該包装用積層材1からなる包装材では、通常は包装された製品の方を向いている。この際、この包装材は、該包装用積層材1の切断、折り畳み及び熱シールによって作られる。可能な包装材は、バッグ、紙袋、サックなどである。)
(サ)請求の範囲
「[図:0001430590000022.jpg]・・・[図:0001430590000023.jpg]」
(1.次のステップを含む包装用積層材(1)の製造方法
- 少なくとも60体積%、好ましくは少なくとも70体積%、非常に特に好ましくは少なくとも80体積%のHDPE含有率を有する基材層(4)と、接合層(5)と、バリアポリマーから、好ましくはポリアミドまたはエチレン-ビニルアルコールコポリマーからなり、第一のラミネート層(2)の全厚の最大20%の厚さを有するバリア層(6)とを共押出し、この際、前記接合層(5)は、前記基材層(4)と前記バリア層(6)との間に配置されるステップ、
- 上記共押出された第一のラミネート層(2)を機械方向に延伸するステップ、
- このように延伸された第一のラミネート層(2)を、ポリエチレン含有率が少なくとも80体積%の第二のラミネート層(3)と接合し、ここで、前記第二のラミネート層(3)は、前記第一のラミネート層(2)のバリア層(6)と接合されるステップ。
・・・
8.第一のラミネート層(2)と第二のラミネート層(3)とを有する包装用積層材であって、前記第一のラミネート層(2)は、少なくとも60体積%のHDPE含有率を有する基材層(4)と、接合層(5)と、バリアポリマーから、好ましくはポリアミドまたはエチレン-ビニルアルコールコポリマーからなり、前記第一のラミネート層の全厚の最大20%の厚さを有するバリア層(6)とからなる、共押出されかつ機械方向に延伸された複合体であり、ここで、前記接合層(5)は、前記基材層(4)と前記バリア層(6)との間に配置され、そして前記第一のラミネート層(2)は、それのバリア層(6)で前記第二のラミネート層(3)と接合されていることを特徴とする、前記包装用積層材。)
(シ)図1
「[図:0001430590000024.jpg]」
イ 引用文献Aに記載された発明
上記アから、引用文献Aには、特に請求の範囲(上記ア(サ))及び上記ア(コ)の記載に着目し、請求の範囲の8の記載に沿って整理すると、次の発明(以下「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。
「第一のラミネート層(2)と第二のラミネート層(3)とを有する包装用積層材(1)であって、前記第一のラミネート層(2)は、少なくとも60体積%のHDPE含有率を有する基材層(4)と、接合層(5)と、バリアポリマーからなり、前記第一のラミネート層の全厚の最大20%の厚さを有するバリア層(6)とからなる、共押出されかつ機械方向に延伸された複合体であり、ここで、前記接合層(5)は、前記基材層(4)と前記バリア層(6)との間に配置され、そして前記第一のラミネート層(2)は、それのバリア層(6)でポリエチレン含有率が少なくとも80体積%の前記第二のラミネート層(3)と接合されており、前記第二のラミネート層(3)は、シーリング層(7)を形成する、包装用積層材(1)。」
(3)対比
補正発明と引用発明Aとを対比する。
引用発明Aの「第一のラミネート層(2)」は補正発明の「基材」に相当する。
引用発明Aの「第二のラミネート層(3)」は、「シーリング層(7)を形成する」から、補正発明の「ヒートシール層」に相当する。
引用発明Aの「第一のラミネート層(2)」における「基材層(4)」は、「少なくとも60体積%のHDPE含有率を有する」から、補正発明の「ポリエチレン樹脂層」に相当する。
引用発明Aの「第一のラミネート層(2)」における「バリア層(6)」は、「バリアポリマーからな」るから、技術常識に鑑みれば、補正発明の「ガスバリア性樹脂層」に相当する。
引用発明Aの「包装用積層材(1)」は補正発明の「包装材料用積層体」に相当する。
引用発明Aにおいて「包装用積層材(1)」が「第一のラミネート層(2)と第二のラミネート層(3)とを有する」ことは、補正発明において「包装材料用積層体」が「基材と、ヒートシール層とを備えた」ことに相当する。
引用発明Aにおいて「前記第一のラミネート層(2)は、少なくとも60体積%のHDPE含有率を有する基材層(4)と、接合層(5)と、バリアポリマーからなり、前記第一のラミネート層の全厚の最大20%の厚さを有するバリア層(6)とからなる、共押出されかつ機械方向に延伸された複合体であ」ることは、補正発明において「前記基材が、積層フィルムから構成され、前記積層フィルムは、ガスバリア性樹脂層と、ポリエチレン樹脂層との共押延伸樹脂フィルムであ」ることに相当する。
引用発明Aにおいて、「第二のラミネート層(3)」は「ポリエチレン含有率が少なくとも80体積%」であるから、これは、補正発明の「前記ヒートシール層は、ポリエチレン樹脂により構成され」ることに相当する。
以上のことから、補正発明と引用発明Aとの一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点A]
「基材と、ヒートシール層とを備えた包装材料用積層体であって、前記基材が、積層フィルムから構成され、前記積層フィルムは、ガスバリア性樹脂層と、ポリエチレン樹脂層との共押延伸樹脂フィルムであり、前記ヒートシール層は、ポリエチレン樹脂により構成される、包装材料用積層体。」
[相違点A1]
補正発明は、「前記ポリエチレン樹脂層は、少なくとも1層が、中密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンを含む層を備え」るのに対して、引用発明Aの「基材層(4)」は、「少なくとも60体積%のHDPE含有率を有する」ものであって、中密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンを含むか不明である点。
[相違点A2]
補正発明は、「前記包装材料用積層体全体における前記ポリエチレン樹脂の含有量が、80質量%以上である」のに対して、引用発明Aは、「第二のラミネート層(3)」において「ポリエチレン含有率が少なくとも80体積%」とされているものの、「包装用積層材(1)」全体におけるポリエチレン樹脂の含有量が不明である点。
(4)判断
ア 相違点A1について
(ア)基材層(4)の「HDPE」の残部及び層構成について
引用発明Aの「基材層(4)」は、上記のとおり「少なくとも60体積%のHDPE含有率を有する」とされているところ、引用文献Aの上記(2)ア(エ)には、「基材層4」の「HDPE」の残部に関して、「残部は、特に強靱性を高めるためには、適合性のポリオレフィン材料、好ましくは線状低密度ポリエチレン(LLDPE)(0.87~0.94g/cm3の密度)、低密度ポリエチレン(LDPE)(0.915~0.935g/cm3の密度)または線状低密度メタロセンポリエチレン(mLLDPE)である。」と記載されており、直鎖状低密度ポリエチレンを含有させることが記載されている。また、「基材層4」の層構成に関して、「基材層4は、一つ(または複数でもよい)HDPE層及びポリオレフィン材料からなる一つ(または複数でもよい)層を備えて、(押出または共押出されて)多層状に構成されていることもできる。」と記載されており、複数層とすることも記載されている。
さらに、引用文献Aの上記(2)ア(ケ)に記載された「基材層4」の実施例であるフィルムA、フィルムB、バリアフィルムC、バリアフィルムDは、いずれも、少なくとも1層が、直鎖状低密度ポリエチレンを含む層を備えるものである。
そうすると、引用発明Aにおいて、引用文献Aの上記記載を参考にして、少なくとも1層が、直鎖状低密度ポリエチレンを含む層を備えるものとすることは、当業者が適宜なし得たことである。
(イ)基材層(4)の「HDPE」について
上記(ア)のほか、本願明細書の【0031】の記載によると、補正発明の「中密度ポリエチレン(MDPE)」は「密度が0.925~0.945g/cm3」のポリエチレンである。
ここで、引用文献Aには、「HDPEとは、0.94と0.97g/cm3との間の密度を有するPEのこと」((2)ア(エ))と記載されているところ、引用発明Aの「基材層(4)」のHDPEの密度をどの程度とするかは当業者が適宜決め得ることであり、下限である0.94g/cm3に近いものを採用して、本願明細書で定義された「中密度ポリエチレン(MDPE)」の範囲のものとして、少なくとも1層が、中密度ポリエチレンを含む層を備えるものとすることも、当業者が適宜なし得たことである。
(ウ)相違点A1についてのまとめ
上記(ア)、(イ)のいずれの観点からみても、引用発明Aにおいて、相違点A1に係る補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。
イ 相違点A2について
引用文献Aには、PA、ビニル含有またはアクリレート含有ポリマーでできたバリア層とHDPE層を接合し、さらにLLDPEからできたシーリング層を配置した包装用積層材において、バリア層が包装用積層材の総重量の最大5%とすることで、リサイクル適合性の積層材とした先行文献を挙げた上で(上記(2)ア(イ))、「本発明の課題」に関して「リサイクル適合性の包装用積層材を提供すること」が記載されている(上記(2)ア(ウ))。
また、「リサイクル適合性」に関して引用文献Aの上記(2)ア(ク)には、包装用積層材1中に主にPEと適合性の材料とを使用することによって、リサイクル適合性のものとなることが記載されている。
これら記載を総合すると、引用文献Aには、包装用積層材1の総重量におけるポリエチレンの含有量を可能な限り大きくすることで、リサイクル適合性を向上させることが記載ないし示唆されている。
ここで、引用文献Aにおける、「バリア層(6)」に関する「バリア層6は、第一のラミネート層2の全厚の最大20%、好ましくは5~10%の厚さ、すなわち最大2~8μmの厚さを有する。該バリア層6の薄い厚さのために、リサイクル適合性はそれによって損なわれない。」(上記(2)ア(オ))との記載、「接合層(5)」に関する「接合層5の厚さは、第一のラミネート層2の全厚の最大10%、典型的には1~5μmである。」(上記(2)ア(カ))との記載を参照しつつ、リサイクル適合性、バリア性、基材層(4)とバリア層(6)の接合性等を勘案して、引用発明Aにおけるポリエチレン樹脂の含有量をどの程度とするかは、当業者が適宜決め得ることであって、当該含有量を80質量%以上とすることに格別の困難性はない。
ウ 作用効果について
補正発明の奏する作用効果は、引用発明A及び引用文献Aに記載された事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(5)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、引用文献Aに記載の包装用積層材は、基材層(4)を構成する5層共押フィルムA~Dのいずれの層においても、「HDPE」を含むことを必須の構成としており、引用文献Aに接した当業者は、上記5層共押フィルムにおいて、必須の構成である「HDPEを含む層」に代えて、少なくとも1層を、「中密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンを含む層」を採用する動機付けはない旨主張する。
しかしながら、補正発明の「ポリエチレン樹脂層」は、「少なくとも1層が、中密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンを含む層を備え」ることを特定しているものの、「高密度ポリエチレン(HDPE)」を含まないことを特定するものではないため、審判請求人の上記主張は失当である。
なお、引用発明Aの「HDPE」は、本願明細書で定義された中密度ポリエチレンを含むものであり、仮に補正発明における「ポリエチレン樹脂層」から高密度ポリエチレンを除いたとしても、上記(4)ア(イ)の判断は左右されない。
(6)補正発明についてのまとめ
したがって、補正発明は、引用発明A及び引用文献Aに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和6年4月4日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和5年4月24日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、[拒絶理由1]として、この出願の請求項1~4、6に係る発明は、本願の出願前に公開された引用文献Bに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないというものであり、また、[拒絶理由2]として、この出願の請求項1~6に係る発明は、本願の出願前に公開された引用文献Bに記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献B 特開2001-277352号公報(平成13年10月9日出願公開)
3 引用文献の記載等
(1)引用文献Bの記載
引用文献Bには、次の記載がある。
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、EVOHと略記する)を中間層に用いた積層体及びその製造方法に関し、更に詳しくは、ガスバリア性、防湿性、保香性等に優れ、かつシール性や外観性にも優れた包装袋を得ることができる、製袋適性に優れた積層体及びその製造方法に関する。」
「【0006】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の方法では、バリア層であるEVOH層に水を吸収させているため、折角のEVOH層のバリア性能が低下する結果となり、EVOH層のバリア性能を十分に生かすことが困難であると同時に、水分吸収工程が加わることにより積層フィルムの生産性が低下してしまうという問題点がある。【0007】そこで、ガスバリア性、防湿性、保香性等に優れ、更にはシール性や外観性に優れた包装袋を得ることができる、製袋適性にも優れた積層体が望まれるところである。」
「【0026】全体の厚みが10μm未満では該シートの腰がなくなり取り扱いに支障をきたすことがあり、60μmを越えると該シートの柔軟性が不足気味となる。PP層の厚みが8μm未満では防湿性が不足する傾向にある。接着性樹脂層の厚みが0.2μm未満ではEVOH層との層間接着性に劣り、5μmを越えると該シートの透明性が低下することがある。EVOH層の厚みが1μm未満ではガスバリア性が不足し、20μmを越えると該シートの耐屈曲性が悪化する傾向にある。」
「【0028】ヒートシール層に使用される樹脂としては、ヒートシールが可能であれば特に制限されないが、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、あるいはこれらの共重合体、エチレンを主成分として炭素数3~10のα-オレフィン類、炭素数4~15のジエン類、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の内から選ばれた1種または2種以上のコモノマーとの共重合体等のオレフィン系重合体や、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。この中で好適には、無延伸ポリプロピレン系樹脂(CPP)層、エチレン-ブテン-ポリプロピレン共重合体系樹脂層又は直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(LLDPE)層が用いられ、更にはメタロセン触媒中で重合されたLLDPEも好適に用いられる。また、ヒートシール層の厚みは特に限定されないが、積層体および包装袋の変形を防止するためには5μm以上(更には10~80μm)が好ましい。」
「【0040】【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。尚、実施例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準を示す。【0041】実施例1多層Tダイ共押出製膜装置に、ポリプロピレン[融点160℃、密度0.90g/cm3、MI3g/10分(230℃、荷重2160g)、アミン系帯電防止剤1%配合]、EVOH[エチレン含有量34モル%、ケン化度99.5モル%、MI8g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH60部とエチレン含有量38モル%、ケン化度99.5モル%、MI8g/10分(同上)のEVOH15部とエチレン含有量44モル%、ケン化度96.2モル%、MI6.5g/10分(同上)のEVOH25部の溶融混合物]及び接着性樹脂[密度0.89g/cm3、MI4g/10分(230℃、荷重2160g)、無水マレイン酸濃度0.05%、エチレン含有量3モル%の変性エチレン-プロピレン共重合体]を供給して、PP/接着性樹脂/EVOH(厚み構成は600μm/32μm/160μm)の積層シートを得た後、加熱ロール上で縦方向(MD方向)に5倍延伸した。次いで、得られた延伸積層シートのEVOH層表面に、単層Tダイ押出ラミネート装置を用いて、接着性樹脂[上記と同じ]を80m/分の速度で積層(厚みは6.4μm)した後、速度9m/分、温度170℃で8倍に延伸して、PP層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層(厚み構成は15μm/0.8μm/4μm/0.8μm、EVOH層の偏光赤外二色法による配向係数は-0.03)の延伸多層シートを得た。【0042】得られた延伸多層シートの接着性樹脂層の表面にドライラミネート用接着剤[ポリエステル系2液溶剤型]を、固形分として2g/m2塗布し、乾燥して溶剤を蒸発させた後、その塗布面にドライラミネート法にて厚み20μmのエチレン-ブテン-ポリプロピレン共重合体[エチレン含有量3%、ブテン含有量2%]の無延伸フィルムを積層して目的とする積層体を得た。得られた積層体について、酸素透過度(20℃、50%RH下で測定)及び水蒸気透過度(40℃、90%RH下で測定)を測定した。【0043】また、自動充填製袋機(フジキカイ社製の横形ピロー包装機「FW3400」)を用いて、シール温度160℃、ショット数50個/分の条件で、得られた積層体のエチレン-ブテン-ポリプロピレン共重合体層をシール層として、縦20cm×横10cmの包装袋(口貼り及び背貼りからなる3方シール、充填物なし)を作製した。」
「【0046】実施例2多層Tダイ共押出製膜装置に、PP[実施例1と同じ]、EVOH[エチレン含有量36モル%、ケン化度99.5モル%、MI4g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH70部とエチレン含有量47モル%、ケン化度96.5モル%、MI4.5g/10分(同上)のEVOH30部の溶融混合物]及び接着性樹脂[実施例1と同じ]を供給して、PP層/接着性樹脂層/EVOH層(厚み構成は600μm/32μm/160μm)の積層シートを得た後、加熱ロール上で縦方向(MD方向)に4倍延伸した。次いで、得られた延伸積層シートのEVOH層表面に、単層Tダイ押出ラミネート装置を用いて、接着性樹脂(実施例1と同じ)を80m/分の速度で積層(厚みは6.4μm)して多層シートを得た後、横方向(TD方向)に速度12m/分、温度170℃で10倍に延伸して、PP層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層(厚み構成は15μm/0.8μm/4μm/0.8μm、EVOH層の偏光赤外二色法による配向係数は-0.07)の延伸多層シートを得た。【0047】得られた延伸多層シートの接着性樹脂層の表面に、実施例1と同様にして、ドライラミネート用接着剤を塗布し、乾燥して溶剤を蒸発させた後、その塗布面にドライラミネート法にて厚み20μmのエチレン-ブテン-ポリプロピレン共重合体の無延伸フィルムを積層して目的とする積層体を得た。得られた積層体について、実施例1と同様に酸素透過度及び水蒸気透過度を測定した。また、実施例1と同様にして、自動充填製袋機を用いて包装袋を作製して、その背貼りシール強度を測定した。更に包装袋の外観性および保香性能について同様に評価した。【0048】実施例3続きを表示(全13行)多層Tダイ共押出製膜装置に、PP[実施例1と同じ]、EVOH[エチレン含有量34モル%、ケン化度99.5モル%、MI8g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH80部とエチレン含有量44モル%、ケン化度96.2モル%、MI6.5g/10分(同上)のEVOH20部の溶融混合物]及び接着性樹脂[実施例1と同じ]を供給して、PP層/接着性樹脂層/EVOH層(厚み構成は600μm/42μm/126μm)の積層シートを得た後、加熱ロール上で縦方向(MD方向)に6倍延伸した。次いで、得られた延伸積層シートのEVOH層表面に、単層Tダイ押出ラミネート装置を用いて、接着性樹脂[上記と同じ]を80m/分の速度で積層(厚みは7μm)して多層シートを得た後、横方向(TD方向)に速度8m/分、温度168℃で7倍に延伸して、PP層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層(厚み構成は14μm/1μm/3μm/1μm、EVOH層の偏光赤外二色法による配向係数は-0.02)の延伸多層シートを得た。【0049】得られた延伸多層シートの接着性樹脂層の表面にドライラミネート用接着剤[ポリエステル系2液溶剤型]を、固形分として1.5g/m2塗布し、乾燥して溶剤を蒸発させた後、その塗布面にドライラミネート法にて厚み40μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の無延伸フィルムを積層して目的とする積層体を得た。得られた積層体について、実施例1と同様に酸素透過度及び水蒸気透過度を測定した。また、実施例1と同様にして、得られた積層体のLLDPE層をシール層として、縦25cm×横5cmの包装袋(口貼り及び背貼りからなる3方シール、充填物なし)を作製して、その背貼りシール強度を測定した。更に包装袋の外観性及び保香性能について同様に評価した。ただし、保香性能の評価については、パラジクロルベンゼン3gの替わりにショウノウ3gを密封して行った。【0050】実施例4多層Tダイ共押出製膜装置に、PP[実施例1と同じ]、EVOH[エチレン含有量29モル%、ケン化度99.7モル%、MI12g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH60部とエチレン含有量36モル%、ケン化度99.5モル%、MI8g/10分(210℃、荷重2160g)のEVOH20部とエチレン含有量42モル%、ケン化度97.5モル%、MI13g/10分(同上)のEVOH20部の溶融混合物]及び接着性樹脂[実施例1と同じ]を供給して、PP層/接着性樹脂層/EVOH層(厚み構成は800μm/50μm/300μm)の積層シートを得た後、加熱ロール上で縦方向(MD方向)に5倍延伸した。次いで、得られた延伸積層シートのEVOH層表面に、単層Tダイ押出ラミネート装置を用いて、接着性樹脂[上記と同じ]を80m/分の速度で積層(厚みは10μm)して多層シートを得た後、横方向(TD方向)に速度15m/分、温度172℃で12倍に延伸して、PP層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層(厚み構成は13μm/0.8μm/5μm/0.8μm、EVOH層の偏光赤外二色法による配向係数は-0.08)の延伸多層シートを得た。【0051】得られた延伸多層シートの接着性樹脂層の表面にドライラミネート用接着剤[ポリエステル系2液溶剤型]を、固形分として2g/m2塗布し、乾燥して溶剤を蒸発させた後、その塗布面にドライラミネート法にて厚み25μmのポリプロピレンの無延伸フィルム(CPP)を積層して目的とする積層体を得た。得られた積層体について、実施例1と同様に酸素透過度及び水蒸気透過度を測定した。また、実施例1と同様にして、得られた積層体のCPP層をシール層として、縦25cm×横5cmの包装袋(口貼り及び背貼りからなる3方シール、充填物なし)を作製して、その背貼りシール強度を測定した。更に包装袋の外観性および保香性能について同様に評価した。ただし、保香性能の評価については、パラジクロルベンゼン3gの替わりに緑茶10gを密封して行った。【0052】実施例5実施例2において、多層Tダイ共押出製膜装置に、PP[実施例1と同じ]、エチレン-プロピレンブロック共重合体(PE-PP)[融点158℃、密度0.91g/cm3、MI6.5g/10分(230℃、荷重2160g)、エチレン含有量25%]、EVOH[実施例2と同じ]及び接着性樹脂[実施例1と同じ]を供給して、PE-PP層/PP層/接着性樹脂層/EVOH層(厚み構成は80/520μm/32μm/160μm)の積層シートを得た以外は同様にして、PE-PP層/PP層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層(厚み構成は2μm/13μm/0.8μm/4μm/0.8μm、EVOH層の偏光赤外二色法による配向係数は-0.06)の延伸多層シートを得た。更に実施例1と同様にして、厚み20μmのエチレン-ブテン-ポリプロピレン共重合体の無延伸フィルムを積層して目的とする積層体を得た。尚、得られた積層体のヘイズ値は50%であった。得られた積層体について、実施例1と同様に酸素透過度及び水蒸気透過度を測定した。また、実施例1と同様にして、自動充填製袋機を用いて包装袋を作製したところ、該包装袋は優れた遮光性と高級感のある外観性を示した。更に包装袋の背貼りシール強度、外観性および保香性能について同様に評価した。【0053】実施例6実施例3において、多層Tダイ共押出製膜装置に、PP[実施例1と同じ]、エチレン-プロピレンブロック共重合体(PE-PP)[融点158℃、密度0.91g/cm3、MI6.5g/10分(230℃、荷重2160g)、エチレン含有量25%]85%と低密度ポリエチレン(LDPE)[融点113℃、密度0.925g/cm3]15%の溶融混合物、EVOH[実施例3と同じ]及び接着性樹脂[実施例1と同じ]を供給して、(PE-PP+LDPE)層/PP層/接着性樹脂層/EVOH層(厚み構成は90/510μm/42μm/126μm)の積層シートを得た以外は同様にして、(PE-PP+LDPE)層/PP層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層(厚み構成は2μm/12μm/1μm/3μm/1μm、EVOH層の偏光赤外二色法による配向係数は-0.02)の延伸多層シートを得た。更に実施例3と同様にして、厚み40μmのLLDPEの無延伸フィルムを積層して目的とする積層体を得た。尚、得られた積層体のヘイズ値は60%であった。得られた積層体について、実施例1と同様に酸素透過度及び水蒸気透過度を測定した。また、実施例3と同様にして、自動充填製袋機を用いて包装袋を作製したところ、該包装袋は優れた遮光性と高級感のある外観性を示した。更に包装袋の背貼りシール強度、外観性および保香性能について同様に評価した。」
(2)引用文献Bに記載された発明
上記(1)から、引用文献Bには、特に実施例1(【0041】~【0043】)の積層体に着目すると、次の発明(以下「引用発明B」という。)が記載されていると認められる。
「多層Tダイ共押出製膜装置に、ポリプロピレン(密度0.90g/cm3)、EVOH及び接着性樹脂(変性エチレン-プロピレン共重合体、密度0.89g/cm3)を供給して、PP(ポリプロピレン)/接着性樹脂(変性エチレン-プロピレン共重合体)/EVOHの積層シートを得て、積層シートを延伸して、延伸積層シートを得て、(【0041】)延伸積層シートのEVOH層表面に、接着性樹脂(変性エチレン-プロピレン共重合体、密度0.89g/cm3)を積層し、延伸して、PP層/接着性樹脂層/EVOH層/接着性樹脂層(厚み構成は15μm/0.8μm/4μm/0.8μm)の延伸多層シートを得て、(【0041】)延伸多層シートの接着性樹脂層の表面にドライラミネート用接着剤(ポリエステル系2液溶剤型)を、固形分として2g/m2塗布し、乾燥させた後、その塗布面に、厚み20μmのエチレン-ブテン-ポリプロピレン共重合体の無延伸フィルムを積層して得た積層体であって、(【0042】)EVOH層はガスバリア層であり、(【0006】)エチレン-ブテン-ポリプロピレン共重合体層をシール層とした、包装袋を作製する、積層体。(【0043】)」
4 対比
引用文献Bの「PP層」は本願発明の「ポリオレフィン樹脂層」に相当する。
引用発明Bの「EVOH層」は、「ガスバリア層」であるから、本願発明の「ガスバリア性樹脂層」に相当する。
引用発明Bの「延伸多層シート」は本願発明の「基材」に相当するとともに、その構造からみて「積層フィルムから構成され」ることを充足する。
引用発明Bの「エチレン-ブテン-ポリプロピレン共重合体層」は、「シール層」であるから、本願発明の「ヒートシール層」に相当する。
引用発明Bの「積層体」は、「包装袋を作製する」ものであるから、本願発明の「包装材料用積層体」に相当する。
引用発明Bにおける「積層体」を「延伸多層シートの接着性樹脂層の表面にドライラミネート用接着剤を、固形分として2g/m2塗布し、乾燥させた後、その塗布面に、厚み20μmのエチレン-ブテン-ポリプロピレン共重合体の無延伸フィルムを積層して得た」ことは、本願発明における「包装材料用積層体」が「基材と、ヒートシール層とを備えた」ことに相当する。
引用発明Bの「延伸多層シート」は、「多層Tダイ共押出製膜装置に、ポリプロピレン(密度0.90g/cm3)、EVOH及び接着性樹脂(変性エチレン-プロピレン共重合体、密度0.89g/cm3)を供給して、PP(ポリプロピレン)/接着性樹脂(変性エチレン-プロピレン共重合体)/EVOHの積層シートを得て、積層シートを延伸して」得たものであるから、「前記積層フィルムは、ガスバリア性樹脂層と、ポリオレフィン樹脂層との共押延伸樹脂フィルムであ」ることを充足する。
以上のことから、本願発明と引用発明Bとの一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点B]
「基材と、ヒートシール層とを備えた包装材料用積層体であって、前記基材が、積層フィルムから構成され、前記積層フィルムは、ガスバリア性樹脂層と、ポリオレフィン樹脂層との共押延伸樹脂フィルムである、包装材料用積層体。」
[相違点B1]
本願発明は、「前記包装材料用積層体全体における前記ポリオレフィンの含有量が、80質量%以上である」のに対して、引用発明Bの「積層体」は、そのようなものであるか不明である点。
5 判断
ア 相違点B1について
引用発明Bの「積層体」において、「PP層」(密度0.90g/cm3、15μm)、「接着性樹脂層」(密度0.89g/cm3、0.8μm)、「接着性樹脂層」(変性エチレン-プロピレン共重合体、密度0.89g/cm3、0.8μm)、「エチレン-ブテン-ポリプロピレン共重合体層」(20μm)はポリオレフィンであり、一方、「EVOH層」(4μm)、「ドライラミネート用接着剤(ポリエステル系2液溶剤型)」を乾燥した層(2g/m2)はポリオレフィンではない。
引用発明Bにおける「EVOH層」、「エチレン-ブテン-ポリプロピレン共重合体層」の密度は明らかではないが、EVOHの密度は1.19g/cm3程度であり、「エチレン-ブテン-ポリプロピレン共重合体層」の密度はポリプロピレンと同程度(密度0.90g/cm3程度)と考えられる。
そうすると、引用発明Bにおける「積層体」全体におけるポリオレフィンの含有量は、約83質量%(=(0.90×15+0.89×0.8+0.89×0.8+0.90×20)÷(0.90×15+0.89×0.8+1.19×4+0.89×0.8+2.0+0.90×20)×100)と計算でき、80質量%以上であるから、相違点B1は実質的な相違点ではない。
次に、仮に相違点B1が実質的な相違点であるとして検討する。
引用文献Bには、各層の厚みに関して、「PP層の厚みが8μm未満では防湿性が不足する傾向にある。接着性樹脂層の厚みが0.2μm未満ではEVOH層との層間接着性に劣り、5μmを越えると該シートの透明性が低下することがある。EVOH層の厚みが1μm未満ではガスバリア性が不足し、20μmを越えると該シートの耐屈曲性が悪化する傾向にある。」(【0026】)、「ヒートシール層の厚みは特に限定されないが、積層体および包装袋の変形を防止するためには5μm以上(更には10~80μm)が好ましい。」(【0028】)と記載されている。
そして、積層体における各層の厚さをどの程度とするかは、積層体に求められる機能やコスト等を勘案して当業者が適宜設計し得るものであるところ、引用文献Bに記載された各実施例において、いずれも「積層体」全体におけるポリオレフィンの含有量は、80質量%以上と計算でき(実施例1:約83質量%、実施例2:約83質量%、実施例3:約91質量%、実施例4:約82質量%、実施例5:約83質量%、実施例6:約91質量%。ただし、「LLDPE」の密度は0.91g/cm3として計算した。)、この程度の数値は、当業者が適宜採用する値である。
そうすると、引用発明Bのような積層体において、ポリオレフィンの含有量を80質量%以上とすることは、当業者が設計的になし得たものであり、格別の困難性はない。
イ 作用効果について
本願発明の奏する作用効果は、引用発明B及び引用文献Bに記載された事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
6 本願発明についてのまとめ
よって、本願発明は、引用発明Bであり、また、引用発明B及び引用文献Bに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項、第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-005664