特許拒絶査定不服審判
2024-005435
画素内補償及び酸化物駆動トランジスタを有する電子ディスプレイ
- 審判番号
- 2024-005435
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-533435
- 請求日
- 2024年04月02日
- 審決日
- 2025年07月30日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アップル インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】▲吉▼田 和彦
- 【請求人代理人】大塚 文昭
- 【請求人代理人】那須 威夫
- 【請求人代理人】岩崎 吉信
- 審判長/審判官
- 審判長 岡田 吉美
- 審判官 道祖土 新吾
- 審判官 柳 重幸
- 分類
- P18 .572-Z (G09G) / P18 .57 -Z (G09G) / P18 .121-Z (G09G) / P18 .575-Z (G09G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第4項、特許法第37条、特許法第17条の2第5項、特許法第44条、特許法第29条、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-533435「画素内補償及び酸化物駆動トランジスタを有する電子ディスプレイ」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 7月 1日国際公開、WO2021/133461、令和 5年 2月 6日国内公表、特表2023-504696〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)10月27日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2019年12月23日、2020年10月20日 いずれも米国(US)。2019年12月23日を以下「優先日」という。」)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年 6月 3日 :翻訳文の提出
同日 :手続補正書(以下「1次補正」という。)
の提出
令和5年 4月27日付け:拒絶理由通知書
(以下「最初の拒絶理由通知書」という。)
同年 8月 7日 :手続補正書(以下「2次補正」という。)
及び意見書の提出
同月14日付け:拒絶理由通知書(最後)
同年11月24日 :意見書、手続補正書の提出
同年11月30日付け:補正の却下の決定
同日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年12月 4日 :原査定の謄本の送達)
令和6年 4月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 5月17日 :手続補正書(方式)の提出
令和6年5月17日に提出された手続補正書(方式)は、審判請求書の【請求の理由】の欄を補正して、その内容を補充するものである。令和6年5月17日に提出された手続補正書(方式)により補正された審判請求書を以下、単に「審判請求書」という。
第2 令和6年4月2日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年4月2日にされた手続補正を却下する。
[補正の却下の決定の理由]
1 補正の内容
令和6年4月2日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正をするものであって、本件補正により、次の(1)に示す本件補正前(2次補正後のものをいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1の記載は、後記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正された。下線は補正箇所を示す。
(1) 本件補正前の請求項1
「 【請求項1】
アノード端子及びカソード端子を有する有機発光ダイオードと、
前記有機発光ダイオードと直列に結合された酸化物半導体駆動トランジスタであって、ゲート端子、ドレイン端子、及びソース端子を含む、酸化物半導体駆動トランジスタと、
前記酸化物半導体駆動トランジスタの前記ゲート端子に結合された第1の端子、及び前記有機発光ダイオードの前記アノード端子に結合された第2の端子を有する、蓄積コンデンサと、
前記有機発光ダイオードと直列に結合され、発光信号を受け取るように構成された第1の発光トランジスタと、
前記有機発光ダイオードと直列に結合され、別の画素行から追加の発光信号を受け取るように構成された第2の発光トランジスタと、
前記アノード端子と初期化ラインとの間に結合され、前記発光信号を受け取るように構成された初期化トランジスタと、
を備える表示画素。」
(2) 本件補正後の請求項1
「 【請求項1】
アノード端子及びカソード端子を有する有機発光ダイオードと、
前記有機発光ダイオードと直列に結合された酸化物半導体駆動トランジスタであって、ゲート端子、ドレイン端子、及びソース端子を含む、酸化物半導体駆動トランジスタと、
前記酸化物半導体駆動トランジスタの前記ドレイン端子と前記ゲート端子にわたって結合された酸化物半導体ゲート電圧設定トランジスタと、
前記酸化物半導体駆動トランジスタの前記ゲート端子に結合された第1の端子、及び前記有機発光ダイオードの前記アノード端子に結合された第2の端子を有する、蓄積コンデンサと、
初期化電圧が提供される初期化ラインと、
前記初期化ラインと前記有機発光ダイオードの前記アノード端子との間に結合された酸化物半導体初期化トランジスタと、
前記酸化物半導体駆動トランジスタと前記有機発光ダイオードの前記アノード端子との間に直列に結合されたp型シリコン発光トランジスタと、を備え、
前記p型シリコン発光トランジスタ及び前記酸化物半導体初期化トランジスタは、発光制御回路によって生成された発光制御信号を受け取るように構成されている、表示画素。」
2 補正の目的
(1) 本件補正後の請求項1についての補正の内容
ア 本件補正前の請求項1には、次の構成を備えることの特定があった。
「前記有機発光ダイオードと直列に結合され、発光信号を受け取るように構成された第1の発光トランジスタと、
前記有機発光ダイオードと直列に結合され、別の画素行から追加の発光信号を受け取るように構成された第2の発光トランジスタと」
イ したがって、本件補正前の請求項1は、「前記有機発光ダイオードと直列に結合され、発光信号を受け取るように構成された第1の発光トランジスタ」に加えて、「前記有機発光ダイオードと直列に結合され、別の画素行から追加の発光信号を受け取るように構成された第2の発光トランジスタ」を備えるものであった。
ウ しかるに、本件補正後の請求項1においては、「発光トランジスタ」については、次の特定があるのみで、発光トランジスタとして前記の二つのものを含むことは特定されておらず、発光トランジスタは一つでもよいものとなっている。
「前記酸化物半導体駆動トランジスタと前記有機発光ダイオードの前記アノード端子との間に直列に結合されたp型シリコン発光トランジスタと、を備え、
前記p型シリコン発光トランジスタ及び前記酸化物半導体初期化トランジスタは、発光制御回路によって生成された発光制御信号を受け取るように構成されている」
(2) 補正の目的要件の充足性についての当審の判断
請求人は審判請求書において、前記(1)の補正事項は、請求項の削除、誤記の訂正、又は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであると主張する。
しかし、発光トランジスタとして二つのものを含む本件補正前の請求項1に記載された発明から、発光トランジスタは一つでもよいものである本件補正後の請求項1に記載される発明に補正することが、特許法17条の2第5項各号に掲げる「請求項の削除」、「特許請求の範囲の減縮」、「誤記の訂正」及び「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」のいずれを目的とするものでないことは明らかである。
(3) 目的要件についての検討のまとめ
前記(2)に検討のとおり、本件補正後の請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同項の規定に適合しない。
したがって、本件補正は、同法17条の2第5項の規定に適合しないから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
3 本件補正の却下の決定の理由のむすび
前記2(3)のとおり、本件補正後の請求項1についてする補正は、特許法17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同項の規定に適合しないから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
よって、前記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
4 本件補正後の請求項1に係る発明について
本件補正は、前記1~3に検討したとおり、特許法17条の2第5項の規定に適合しないものであり、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されるべきものである。
このため、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)について審理することは本来必要ないものである。しかしながら、本件補正は、発明の特別な技術的特徴を変更する補正であるという特許法17条の2第4項の拒絶の理由を解消することを目的とするためのものでもあることも斟酌し、請求人の納得性の向上の観点から、同法29条2項の規定に適合しないものであることを示す。すなわち、本件補正発明について特許要件の審理をしたとしても、本審決の結論に変わりない。
なお、特許法17条の2第5項の規定に違反する拒絶理由に対しては、請求人は特許法44条に規定する分割出願を利用すべきであったことを付言する。
(1) 本件補正発明
ア 本件補正発明の認定と分説
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
ここで、検討の便宜上、本件補正発明の構成を次のとおり構成Xと構成Aから構成Hまでに分説する。また、参考図として、本願の【図3A】を元に作成したものを示す。
<本件補正発明の分説>
A アノード端子及びカソード端子を有する有機発光ダイオードと、
B 前記有機発光ダイオードと直列に結合された酸化物半導体駆動トランジスタであって、ゲート端子、ドレイン端子、及びソース端子を含む、酸化物半導体駆動トランジスタと、
C 前記酸化物半導体駆動トランジスタの前記ドレイン端子と前記ゲート端子にわたって結合された酸化物半導体ゲート電圧設定トランジスタと、
D 前記酸化物半導体駆動トランジスタの前記ゲート端子に結合された第1の端子、及び前記有機発光ダイオードの前記アノード端子に結合された第2の端子を有する、蓄積コンデンサと、
E 初期化電圧が提供される初期化ラインと、
F 前記初期化ラインと前記有機発光ダイオードの前記アノード端子との間に結合された酸化物半導体初期化トランジスタと、
G 前記酸化物半導体駆動トランジスタと前記有機発光ダイオードの前記アノード端子との間に直列に結合されたp型シリコン発光トランジスタと、を備え、
H 前記p型シリコン発光トランジスタ及び前記酸化物半導体初期化トランジスタは、発光制御回路によって生成された発光制御信号を受け取るように構成されている、
X 表示画素。
<参考図>(図3Aを元に作成)
[図:0001430582000001.jpg]
イ 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
これは全般的に、ディスプレイを伴う電子デバイスに関し、より詳細には、有機発光ダイオードディスプレイなどのディスプレイに対するディスプレイドライバ回路に関する。
…(中略)…
【背景技術】
【0002】
電子デバイスは、多くの場合、ディスプレイを含む。例えば、セルラー電話機及びポータブルコンピュータは、ユーザに情報を提示するためのディスプレイを含む。
【0003】
有機発光ダイオードディスプレイなどのディスプレイは、発光ダイオードによる表示画素のアレイを有する。このタイプのディスプレイでは、各表示画素は、発光ダイオードと、発光ダイオードを発光させるための信号の印加を制御する薄膜トランジスタとを含む。
【0004】
有機発光ダイオード表示画素は、アクセス薄膜トランジスタを介してデータラインに接続された駆動薄膜トランジスタを含む。アクセストランジスタは、対応する走査ラインを介して走査信号を受信するゲート端子を有し得る。走査信号をアサートしてアクセストランジスタをオンにすることによって、データライン上の画像データを表示画素内にロードすることができる。表示画素は、有機発光ダイオードに電流を供給して発光させる電流源トランジスタを更に含む。
【0005】
有機発光ダイオード表示画素内のトランジスタは、プロセス、電圧、及び温度(PVT)の変動の影響を受けることがある。このような変動に起因して、異なる表示画素間でトランジスタ閾値電圧に変動することがある。トランジスタ閾値電圧の変動の結果、表示画素が生成する光の量が、所望の画像にマッチしない可能性がある。本明細書に記載される実施形態はこうした背景から生まれたものである。
【発明の概要】
【0006】
電子デバイスが、表示画素のアレイを有するディスプレイを含んでもよい。表示画素は、有機発光ダイオード表示画素であってもよい。各表示画素は、発光する有機発光ダイオード(OLED)と、OLEDと直列に結合された駆動トランジスタと、駆動トランジスタ及びOLEDと直列に結合された第1及び第2の発光トランジスタと、駆動トランジスタのゲート端子とドレイン端子との間に結合されたゲート電圧設定トランジスタと、駆動トランジスタのゲート端子及びOLEDのアノード端子にわたって結合された単一の蓄積コンデンサと、駆動トランジスタのソース端子とデータラインとの間に結合されたデータローディングトランジスタと、OLEDのアノード端子に結合された初期化トランジスタと、を備えてもよい。
【0007】
駆動トランジスタ、ゲート電圧設定トランジスタ、及び初期化トランジスタは、酸化物半導体トランジスタとして実装されてもよく、対して、発光トランジスタ及びデータローディングトランジスタは、p型シリコントランジスタ(例えば、PMOS LTPS薄膜トランジスタ)として実装されてもよい。駆動トランジスタを酸化物半導体トランジスタとして実装することにより、駆動トランジスタ閾値電圧ヒステリシスが軽減されて、高リフレッシュレートでの最初のフレーム応答が改善され、低リフレッシュレートでの望ましくない輝度ジャンプが減少し、画像固着が減少する。ゲート電圧設定トランジスタを酸化物半導体トランジスタとして実装することにより、駆動トランジスタのゲート端子でのリークが減少する。初期化トランジスタを酸化物半導体トランジスタとして実装することにより、初期化トランジスタと、発光トランジスタのうち少なくとも1つとを共有発光信号によって制御して、ルーティングの複雑さを減少させることができる。更に、2つのタイプの薄膜トランジスタのみ(例えば、酸化物半導体トランジスタ及びp型シリコントランジスタのみ)を有することにより、リソグラフィマスクの総数が減少し、よって製造コストを最小限に抑えるのに役立つ。」
「 【0021】
実際には、表示画素22内のトランジスタは、プロセス、電圧、及び温度(PVT)の変動の影響を受けることがある。そのような変動に起因して、異なる表示画素22間でトランジスタ閾値電圧の変動することがあり、その結果、画素22は、所望の画像とマッチしない量の光を生成する可能性がある。図3は、「画素内」閾値電圧補償をサポートするように動作可能な、ディスプレイ14内の例示的な有機発光ダイオード表示画素22の回路図である(例えば、外部の電流感知動作を使用せずに、一切の閾値電圧依存性を内部的に相殺するように構成された画素)。図3に示すように、表示画素22は、OLED304などの有機発光ダイオード、コンデンサCst1などの蓄積コンデンサ、トランジスタTdriveなどの駆動トランジスタ、駆動トランジスタのゲート(G)端子とドレイン(D)端子とにわたって結合されたトランジスタTgdなどのゲート電圧設定トランジスタ、トランジスタTem1などの第1の発光トランジスタ、トランジスタTem2など第2の発光トランジスタ、トランジスタTdataなどのデータローディングトランジスタ、及びトランジスタTiniなどの初期化トランジスタを含んでもよい。
…(中略)…
【0028】
図3Aの例では、ゲート設定トランジスタTgd、駆動トランジスタTdrive、及び初期化トランジスタTiniは、酸化物半導体トランジスタ(例えば、インジウムガリウム亜鉛酸化物すなわちIGZO又はインジム錫亜鉛酸化物すなわちITZOなどの酸化物半導体から形成されたn型チャネルを有するトランジスタ)を使用して実装されてもよく、対して、残りのトランジスタTem1、Tem2、及びTdataは、シリコンなどの半導体(例えば、LTPS又は低温ポリシリコンと称されることのある、低温プロセスを使用して堆積されたポリシリコンチャネル)から形成された薄膜トランジスタ(TFT)であってもよい。画素22内の酸化物半導体トランジスタは、それらのトランジスタを取り囲むサークルで示されている。酸化物半導体トランジスタは、シリコントランジスタよりも比較的低いリークを呈し、トランジスタTgdを酸化物半導体トランジスタとして実装することは、トランジスタTdriveのゲート端子での電流リークを防止するために役立ち得、フリッカを減少させるために役立つ。
【0029】
一実施形態によれば、駆動トランジスタTdriveを酸化物半導体トランジスタとして実装することは、高リフレッシュレート動作(例えば、少なくとも60Hz、少なくとも120Hz、少なくとも240Hzなどのリフレッシュレートで動作するディスプレイなど)で最初のフレーム応答を改善するために役立ち得、低リフレッシュレート動作(例えば、1Hz、2Hz、1~10Hz未満、30Hz未満、60Hz未満、又は他の低レートのリフレッシュレートで動作するディスプレイなど)で望ましくない輝度ジャンプを減少させ、画像固着(すなわち、現在の画像が新しい画像への変化に抗う現象)を減少させるために役立ち得る。
【0030】
上述したように、各表示画素を流れる発光電流の量は、駆動トランジスタ閾値電圧に依存する。駆動トランジスタ閾値電圧はまた、駆動トランジスタのゲートソース間電圧Vgsの現在値に応じて変動し得る。例えば、駆動トランジスタ閾値電圧は、Vgsがローからハイに上昇しているときには第1の平均レベルを呈し得るが、Vgsがハイからローに低下しているときには第1の平均レベルとは異なる第2の平均レベルを呈し得るので、異なった電流電圧(I-V)特性曲線が生じる。この、実際のVgs値への閾値電圧の依存は、トランジスタ「ヒステリシス」と称されることがあり、考慮が払われない場合には、このヒステリシスは表示画素の性能に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0031】
トランジスタTdriveの閾値電圧はヒステリシスに影響されることがあるため、駆動トランジスタをトップゲート酸化物半導体トランジスタとして形成することは、ヒステリシスを減少させるのに役立ち得る(例えば、トップゲートIGZOトランジスタに影響する閾値電圧ヒステリシスは、シリコントランジスタよりも低い)。そのようなシナリオでは、製造ステップを簡素化するために役立つように、酸化物半導体トランジスタTdrive、Tgd、及びTiniの全てをトップゲート酸化物トランジスタとして形成することが望ましいことがある。酸化物半導体トランジスタは、温度変化に対してシリコントランジスタと比較して高い電流感度を呈するので、酸化物半導体駆動トランジスタを有する図3Aに示すタイプの画素22は、ディスプレイ全体にわたって十分に制御されているか管理可能な温度プロファイルと共に電子デバイスに使用すべきである。
【0032】
更に、トランジスタTiniを酸化物半導体トランジスタとして実装することにより、トランジスタTem2及びTiniを同じ信号EM(n)によって制御することが可能になる。その理由は、EM(n)をローに駆動するとTem2をオンにする一方でTiniをオフにすることになり、逆も同様だからである。信号EM(n)を共有すると、形成すべき行制御ラインが少なくなり、それによってルーティングの複雑さが減少する。n型酸化物半導体トランジスタのみ、及びp型シリコントランジスタのみを使用して画素22を形成することによって、相補のn型シリコントランジスタを形成する必要がなくなり、これは、画素22を製造するために必要なマスクの数を劇的に減少し、コストを削減させるために役立ち得る。」
(2) 引用文献2の記載事項及び引用発明2の認定
ア 引用文献2に記載された事項
最初の拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である特開2012-47894号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、当合議体により、後記イの引用発明2の認定に直接用いる記載に下線を付した。
(ア) 特許請求の範囲
「【請求項1】
それぞれ発光素子を有するとともに、マトリクス状に配列された複数の画素と、
階調値に応じた映像信号電圧を前記各画素に供給する信号線と、
前記各発光素子に発光電力を供給する電源線と、
前記各画素に所定の電圧を供給する所定電圧供給線と、を有する表示装置であって、
前記各画素は、更に、
前記発光素子の駆動電流を制御するための電界効果トランジスタと、
前記電界効果トランジスタのソースと前記発光素子のアノード端子との間に設けられた第1のスイッチと、
前記電界効果トランジスタのソースと前記信号線との間に設けられた第2のスイッチと、
前記電界効果トランジスタのドレインと前記電源線との間に設けられた第3のスイッチと、
前記電界効果トランジスタのドレインとゲートとの間に設けられた第4のスイッチと、
前記電界効果トランジスタのゲートと前記発光素子のアノード端子との間に設けられた容量と、
前記発光素子のアノード端子と前記所定電圧供給線との間に設けられた第5のスイッチと、
を有することを特徴とする表示装置。」
(イ) 段落【0001】~【0018】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特には、自発光素子を有する表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode)に代表される有機EL(Organic Electro-luminescent)素子と呼ばれる自発光体を用いた画像表示装置(以下、「有機EL表示装置」という。)が実用化段階にある。この有機EL表示装置は、従来の液晶表示装置と比較して、自発光体を用いているため、視認性、応答速度の点で優れているだけでなく、バックライトのような補助照明装置を要しないため、更なる薄型化が可能となっている。
【0003】
下記特許文献1及び2には、このような有機EL素子を用いた表示装置が開示されている。図15は、下記特許文献1に開示されている有機EL表示装置の各画素の構成を説明するための図である。図15に示すように、各画素600は、有機EL素子601、駆動TFT(Thin Film-Transistor)603、スイッチ602、605等を有する。
【0004】
有機EL素子601のアノードは、スイッチ602と、駆動TFT603を介して電源Voledに接続される。また、駆動TFTのゲート・ソース間にはスイッチ605が接続される。駆動TFT603のゲートは、書込み容量607とスイッチ608を介して、信号線609に接続されるとともに、信号保持容量606を介して、電源Voledに接続される。ここで、信号線609には、各画素600の階調値に応じた信号が入力される。
【0005】
次に、当該各画素600の動作について簡単に説明する。まず、スイッチ602、スイッチ605をオンすることにより、信号保持容量606に高電圧を印加する。その後、スイッチ608をオンして、信号線609から所定の電圧を書込み容量607に入力すると同時に、スイッチ602をオフすることにより、信号保持容量606に駆動TFT603のしきい値電圧が書込まれる。
【0006】
次に、信号線609に信号電圧を印加することにより、信号電圧は、書込み容量607と信号保持容量606に分圧されて、信号保持容量606に追加書込みされる。これにより、信号保持容量606は、駆動TFT603のしきい値電圧と分圧された信号電圧の和を記憶する。そして、駆動TFT603を当該しきい値電圧と分圧された信号電圧の和により駆動することにより、駆動TFT603は、しきい値電圧のばらつきに影響されることなく、有機EL素子601を発光させることができる。
【0007】
上記特許文献1に記載の表示装置によれば、駆動TFT603のしきい値電圧のばらつきに影響されることのない、有機EL(Electro Luminescence)素子を用いた表示装置を実現することができる(特許文献1参照)。
【0008】
図16は、特許文献2に開示されている表示装置の各画素の構成を説明するための図である。図16に示すように、当該表示装置の各画素620は、駆動TFT610にnMOSを採用するとともに、駆動TFT610のソースを有機EL素子601のアノードに接続する。
【0009】
具体的には、各画素620に含まれる有機EL素子601のアノードは、駆動TFT610を介して、電源Voledに接続される。また、駆動TFT610のゲート・ソース間には、容量612が接続される。駆動TFT610のゲートには、TFTスイッチ613を介して、信号が入力され、駆動TFT610のソースには、TFTスイッチ611を介して、所定の電圧が入力される。
【0010】
次に、画素620の動作について簡単に説明する。まず、TFTスイッチ613、611がオンすることによって、容量612の両端には信号電圧と上記所定の電圧との電位差が記憶される。その後、TFTスイッチ613、611がオフし、容量612の両端に記憶された上記電位差が駆動TFT610のゲート-ソース間に保持される。そして、駆動TFT610は、上記信号電圧に対応した駆動電流で有機EL素子601を発光させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4251377号公報
【特許文献2】特許第4052865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
一般に、TFTは、ホールを伝導キャリアとするpMOSよりも、電子を伝導キャリアとするnMOSの方が、電流駆動力が大きい。特に、画素数の多い大型のパネルでは有機EL素子を発光させる駆動TFTは電流駆動能力が大きいことが望ましいため、駆動TFTとしては、nMOSを用いる方が望ましい。また、一般にヒステリシスのようなTFTの特性の動的な歪みも、pMOSよりもnMOSの方が少ないため、この意味でも高画質化のためには駆動TFTはnMOSの方が望ましい。
【0013】
また、一般に有機EL素子のプロセスは、基板側からの積層構造を取るため、基板からみて上側に設ける共通電極にITOのようなアノード電極を設けることは、プロセスダメージによる性能劣化をもたらす。従って、有機EL素子の共通電極にはカソード電極を採用し、駆動TFTは、アノード電極と接続されるのが一般的である。
【0014】
しかしながら、駆動TFTにnMOSを採用しようとすると、駆動TFTのソースは、有機EL素子のアノード電極と接続する必要がある。したがって、この場合、上記特許文献1による画素の構成を用いることができなくなるという課題がある。
【0015】
これに対して、特許文献2に開示の画素の構成においては、駆動TFTにnMOSを採用し、駆動TFTのソースを有機EL素子のアノード電極と接続する。よって、駆動TFTにnMOSを用いることができる。
【0016】
しかしながら、特許文献2に記載の画素は、特許文献1に記載の画素とは異なり、駆動TFTのしきい値電圧のばらつきをキャンセルすることができないため、駆動TFTのしきい値電圧のばらつきに起因する固定ノイズにより、大幅に画質が劣化するという課題がある。
【0017】
上記のような課題を鑑みて、本発明は、駆動TFTにnMOSを用い、かつ、駆動TFTのソースを有機EL素子のアノード電極に接続するとともに、駆動TFTのしきい値電圧のばらつきに影響されない画素構成を有する表示装置を提供することを目的とする。これは、特に、近い将来に、高画質でかつ画素数の多い大型のパネルを実現するためには、極めて重要である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の表示装置は、それぞれ発光素子を有するとともに、マトリクス状に配列された複数の画素と、階調値に応じた映像信号電圧を前記各画素に供給する信号線と、前記各発光素子に発光電力を供給する電源線と、前記各画素に所定の電圧を供給する所定電圧供給線と、を有する。また、前記各画素は、更に、前記発光素子の駆動電流を制御するための電界効果トランジスタと、前記電界効果トランジスタのソースと前記発光素子のアノード端子との間に設けられた第1のスイッチと、前記電界効果トランジスタのソースと前記信号線との間に設けられた第2のスイッチと、前記電界効果トランジスタのドレインと前記電源線との間に設けられた第3のスイッチと、前記電界効果トランジスタのドレインとゲートとの間に設けられた第4のスイッチと、前記電界効果トランジスタのゲートと前記発光素子のアノード端子との間に設けられた容量と、前記発光素子のアノード端子と前記所定電圧供給線との間に設けられた第5のスイッチとを有する。
…(中略)…
【発明の効果】
【0034】
表示装置の駆動TFTに駆動能力が大きいnMOSを用いることができるとともに、駆動TFTのしきい値電圧のばらつきをキャンセルすることができる。よって、表示画面の高画質化を図ることができる。」
(ウ) 【0051】~【0054】、【図3】
「【0051】
図3に示すように、各画素220は、有機EL素子301を有し、当該有機EL素子301のカソードは、共通電極215に接地され、アノードは、pMOSスイッチ302を介して、駆動TFT303のソースに接続される。また、有機EL素子301のアノードは、nMOSスイッチ307を介して、所定の電圧が印加された電位線213に接続される。なお、駆動TFT303は、電界効果トランジスタであって、例えば、多結晶Si半導体デバイス、微結晶Si半導体デバイス、アモルファス半導体デバイス、または、酸化物半導体デバイスにより形成される。
【0052】
駆動TFT303のソースは、nMOSスイッチ308を介して、信号線609に接続される。一方、駆動TFT303のドレインは、pMOSスイッチ304を介して、電源線210に接続されるとともに、nMOSスイッチ305を介して、駆動TFT303のゲートに接続される。駆動TFT303のゲートは、保持容量306を介して、有機EL素子301のアノードに接続される。
【0053】
nMOSスイッチ308とpMOSスイッチ304は、画素走査線211に接続され、nMOSスイッチ305は、リセット線214に接続される。また、pMOSスイッチ302とnMOSスイッチ307は、発光制御線212に接続される。
【0054】
なお、上記各スイッチ及び駆動TFT303は、例えば、そのサイズ以外は同一の基本構造を有する多結晶Si-TFTで構成され、各画素220はガラス基板上に設けられる。」
「【図3】
[図:0001430582000002.jpg]
」
(エ) 【0060】~【0070】、【図5】
「【0060】
図5は、各動作期間における、各画素の各スイッチの動作を示したタイミングチャートである。なお、図5においては、「on」はスイッチのオン、「off」はスイッチのオフを意味し、矩形の動作波形は、各スイッチにおけるゲート電圧の高/低を意味する。また、nMOSは、ゲート電圧が高電圧の時にオンし、pMOSは、ゲート電圧が低電圧の時にオンすることはいうまでもない。」
「【図5】
[図:0001430582000003.jpg]
」
「【0061】
まず、プリチャージ(Pre-charge)動作期間においては、pMOSスイッチ304がオン、nMOSスイッチ308がオフ、nMOSスイッチ305がオン、nMOSスイッチ307がオン、pMOSスイッチ302がオフである。
【0062】
これにより、電源線210の電圧は、pMOSスイッチ304とnMOSスイッチ305を介して、保持容量306の一端に入力され、また、同時に電位線213に入力されている所定の電圧(例えば0V)が、保持容量306の他端に入力される。
【0063】
従って、保持容量306の両端の電圧は、電源線210の電圧と、電位線213に入力されている所定の電圧(例えば0V)にプリチャージされる。
【0064】
ここで、電位線213に入力されている所定の電圧は、有機EL素子301の発光開始電圧以下の電圧とする。これにより、上記特許文献1に記載の表示装置と異なり、プリチャージ動作期間時の有機EL素子301の誤発光を回避し、結果として、表示画面のコントラスト比を向上させることができる。なお、本実施の形態は上記に限られず、電位線213に入力されている所定の電圧は、電源線210の電圧以下の任意の電圧を選択してもよい。
【0065】
次の書込み(Write)動作期間においては、pMOSスイッチ304がオフ、nMOSスイッチ308がオン、nMOSスイッチ305がオン、nMOSスイッチ307がオン、pMOSスイッチ302がオフとなる。
【0066】
これにより、信号線209に書込まれている信号電圧は、nMOSスイッチ308を介して、駆動TFT303のソースに入力される。
【0067】
ここで、上述のように、駆動TFT303のドレインとゲートは共に、電源線210の電圧がプリチャージされた保持容量306の一端に、nMOSスイッチ305を介して、接続されている。よって、保持容量306の両端の電圧が、(信号電圧+Vth(駆動TFT303のしきい値電圧)-(電位線213に入力されている所定の電圧))に低下したところで駆動TFT303がオフして、保持される。
【0068】
次の発光(Light-on)動作期間においては、pMOSスイッチ304がオン、nMOSスイッチ308がオフ、nMOSスイッチ305がオフ、nMOSスイッチ307がオフ、pMOSスイッチ302がオンとなる。
【0069】
これにより、駆動TFT303のドレインには、電源線210の電源電圧が入力される。また、駆動TFT303のゲートとソースの間には、保持容量306の両端に保持されている、(信号電圧+Vth(駆動TFT303のしきい値電圧)-(電位線213に入力されている所定の電圧))の電圧が入力される。また、駆動TFT303のソースは、有機EL素子301に接続される。
【0070】
したがって、有機EL素子301は、保持容量306に書込まれていた信号電圧に応じた電流に対応する階調輝度で発光する。このとき、駆動TFT303のVth(しきい値電圧)のばらつきの影響を受けることはない。上述のように、書き込み動作期間において、保持容量には(信号電圧+Vth(駆動TFT303のしきい値電圧)-(電位線213に入力されている所定の電圧))が保持され、当該保持容量に保持された電位差により、駆動TFT303が駆動されるからである。」
(オ) 【0077】~【0078】
「【0077】
上記のように、本実施の形態によれば、駆動TFTに駆動能力が大きいnMOSを用いることができる。これにより、特に画素数の多い大型のパネルを実現することができる。また、nMOSにはヒステリシスのようなTFTの特性の動的な歪みが少ないことから、高画質化を図ることができる。更に、有機EL素子には、性能、信頼性に勝るカソード電極構造を採用することができる。
【0078】
また、同時に、駆動TFTのしきい値電圧のばらつきをキャンセルすることができる。よって、駆動TFTのしきい値電圧のばらつきに起因する固定ノイズによる大幅な画質の劣化を回避することもできる。更に、これらの効果は、画素回路の複雑化を回避しつつ、実現することができる。」
イ 引用発明2の認定
前記アに摘記した引用文献2の記載事項を総合すると、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明2>
「 画素220であって、
有機EL素子301を有し、当該有機EL素子301のカソードは、共通電極215に接地され、アノードは、pMOSスイッチ302を介して、駆動TFT303のソースに接続されるものであり、(【0051】)
有機EL素子301のアノードは、nMOSスイッチ307を介して、所定の電圧が印加された電位線213に接続され、(【0051】)
駆動TFT303は、電界効果トランジスタであって、例えば、多結晶Si半導体デバイス、微結晶Si半導体デバイス、アモルファス半導体デバイス、または、酸化物半導体デバイスにより形成され、(【0051】)
駆動TFT303のソースは、nMOSスイッチ308を介して、信号線609に接続され、(【0052】)
駆動TFT303のドレインは、pMOSスイッチ304を介して、電源線210に接続されるとともに、nMOSスイッチ305を介して、駆動TFT303のゲートに接続されるものであり、(【0052】)
駆動TFT303のゲートは、保持容量306を介して、有機EL素子301のアノードに接続され、(【0052】)
nMOSスイッチ308とpMOSスイッチ304は、画素走査線211に接続され、nMOSスイッチ305は、リセット線214に接続され、(【0053】)
pMOSスイッチ302とnMOSスイッチ307は、発光制御線212に接続され、(【0053】)
有機EL素子301は、保持容量306に書込まれていた信号電圧に応じた電流に対応する階調輝度で発光する、(【0070】)
画素220。」
<引用発明2の参考図>
[図:0001430582000004.jpg]
(3) 引用文献1の記載事項及び引用文献1技術事項の認定
ア 引用文献1に記載された事項
最初の拒絶理由通知書の拒絶の理由において引用された、本願の優先日前に発行された文献である米国特許出願公開第2019/0057646号明細書(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。括弧内は当合議体が作成した日本語訳である。なお、当合議体により、後記第5の1(2)イの引用発明1の認定に直接用いる記載等に下線を付した。
「[0004] Displays such as organic light-emitting diode displays have an array of display pixels based on light-emitting diodes. In this type of display, each display pixel includes a light-emitting diode and thin-film transistors for controlling application of a signal to the light-emitting diode to produce light.」
(有機発光ダイオードディスプレイなどのディスプレイは、発光ダイオードに基づくディスプレイピクセルのアレイを有する。このタイプのディスプレイでは、各表示画素は、発光ダイオードと、発光ダイオードへの信号の印加を制御して光を生成する薄膜トランジスタとを含む。)
「[0005] Threshold voltage variations in the thin-film transistors can cause undesired visible display artifacts. For example, threshold voltage hysteresis can cause white pixels to be displayed differently depending on context. The white pixels in a frame may, as an example, be displayed accurately if they were preceded by a frame of white pixels, but may be displayed inaccurately (i.e., they may have a gray appearance) if they were preceded by a frame of black pixels. This type of history-dependent behavior of the light output of the display pixels in a display causes the display to exhibit a low response time. To address the issues associated with threshold voltage variations, displays such as organic light-emitting diode displays are provided with threshold voltage compensation circuitry. Such circuitry may not, however, adequately address all threshold voltage variations, may not satisfactorily improve response times, and may have a design that is difficult to implement.」
(薄膜トランジスタのしきい値電圧変動は、望ましくない表示アーティファクト(表示の乱れ)を引き起こす可能性がある。例えば、しきい値電圧ヒステリシスは、白画素が状況によって異なって表示されることを引き起こし得る。一例として、フレーム内の白色ピクセルは、それらが白色ピクセルのフレームによって先行される場合、正確に表示され得るが、それらが黒色ピクセルのフレームによって先行される場合、不正確に表示され得る(すなわち、それらは灰色の外観を有し得る。)。ディスプレイにおける表示画素の光出力のこのタイプの履歴依存挙動は、ディスプレイが低い応答時間を示す原因となる。しきい値電圧変動に関連する問題に対処するために、有機発光ダイオードディスプレイなどのディスプレイには、しきい値電圧補償回路が設けられる。しかしながら、そのような回路は、全てのしきい値電圧変動に適切に対処することができず、応答時間を十分に改善することができず、実装するのが難しい設計を有することがある。)
「[0006] An electronic device may include a display having an array of display pixels. The display pixels may be organic light-emitting diode display pixels. Each display pixel may include a light-emitting diode, a power supply line, a data line, an initialization line, a first transistor with a drain terminal coupled to the data line and a source terminal, a second transistor with a source terminal coupled to the source terminal of the first transistor, a drain terminal, and a gate terminal, a third transistor coupled between the drain and gate terminals of the second transistor, a fourth transistor coupled between the power supply line and the second transistor, a fifth transistor coupled between the second transistor and light-emitting diode, a sixth transistor coupled between the initialization line and the light-emitting diode, and a storage capacitor coupled in series between the third transistor and the sixth transistor.」
(電子デバイスは、表示画素のアレイを有するディスプレイを含み得る。表示画素は、有機発光ダイオード表示画素であり得る。各表示画素は、発光ダイオードと、電源線と、データ線と、初期化線と、データ線に結合されたドレイン端子とソース端子とを有する第1のトランジスタと、第1のトランジスタのソース端子に結合されたソース端子とドレイン端子とゲート端子とを有する第2のトランジスタと、第2のトランジスタのドレイン端子とゲート端子との間に結合された第3のトランジスタと、電源線と第2のトランジスタとの間に結合された第4のトランジスタと、第2のトランジスタと発光ダイオードとの間に結合された第6のトランジスタと、第3のトランジスタと第6のトランジスタとの間に直列に結合された蓄積コンデンサとを含み得る。)
「[0007] The third transistor has a gate terminal that receives a first scan signal. The sixth transistor has a gate terminal that receives the first scan signal. The first transistor has a gate terminal that receives a second scan signal that is different than the first scan signal. The fifth transistor has a gate terminal that receives a first emission signal. The fourth transistor has a gate terminal that receives a second emission signal that is different than the first emission signal.」
(第3のトランジスタは、第1の走査信号を受信するゲート端子を有する。第6のトランジスタは、第1の走査信号を受信するゲート端子を有する。第1のトランジスタは、第1の走査信号とは異なる第2の走査信号を受信するゲート端子を有する。第5のトランジスタは、第1の発光信号を受信するゲート端子を有する。第4のトランジスタは、第1の発光信号とは異なる第2の発光信号を受信するゲート端子を有する。)
「[0008] The display pixel may be refreshed using a four-phase refresh scheme, which includes an initialization phase during which only the first scan signal and the second emission signal are asserted, an on-bias stress phase during which only the second scan signal is asserted, a threshold voltage sampling and data writing phase during which only the first and second scan signals are asserted, and an emission phase during which only the first and second emission signals are asserted. Performing the on-bias stress phase before the threshold voltage sampling and data writing phase can help mitigate threshold voltage hysteresis of the second transistor, which prevents first frame dimming (e.g., prevents noticeable luminance dimming when the pixel is transitioning from displaying a black level to a white level).
(表示画素は、4段階リフレッシュ方式を用いて更新され得る。この方式には以下の段階が含まれる。:第1の走査信号及び第2の放出信号のみがアサートされる初期化段階と、第2の走査信号のみがアサートされるオンバイアスストレス段階と、第1及び第2の走査信号のみがアサートされるしきい値電圧サンプリング及びデータ書込み段階と、第1及び第2の放出信号のみがアサートされる放出段階。しきい値電圧サンプリング及びデータ書込み段階の前にオンバイアスストレス段階を実行することは、第2のトランジスタのしきい値電圧ヒステリシスを緩和するのに役立ち、それは、第1のフレームの輝度低下を防止する(例えば、画素が黒レベルを表示することから白レベルに遷移しているときに目立つ輝度の低下を防止する。)。)
「[0035] A schematic diagram of an illustrative organic light-emitting diode display pixel 22 in display 14 that can be used to support low refresh rate operation is shown in FIG.4. As shown in FIG.4, display pixel 22 may include a storage capacitor Cst and transistors such as n-type (i.e., n-channel) transistors T1, T2, T2, T3, T4, T5, and T6. The transistors of pixel 22 may be thin-film transistors formed from a semiconductor such as silicon (e.g., polysilicon deposited using a low temperature process, sometimes referred to as LTPS or low-temperature polysilicon), semiconducting oxide (e.g., indium gallium zinc oxide(IGZO)), etc.」
(低リフレッシュレート動作をサポートするために使用され得るディスプレイ14内の例示的な有機発光ダイオード表示画素22の概略図が、図4に示される。図4に示されるように、表示画素22は、蓄積コンデンサCstと、n型(すなわち、nチャネル)トランジスタT1、T2、T2、T3、T4、T5及びT6などのトランジスタとを含み得る。画素22のトランジスタは、シリコン(例えば、LTPS又は低温ポリシリコンと呼ばれることもある、低温プロセスを用いて堆積されたポリシリコン)、半導体酸化物(例えば、酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO))などの半導体から形成された薄膜トランジスタであり得る。)
「Fig.4(図4)
[図:0001430582000005.jpg]
」
「[0036] In one suitable arrangement, transistor T3 may be implemented as a semiconducting-oxide transistor while remaining transistors T1, T2, and T4-T6 are silicon transistors. Semiconducting-oxide transistors exhibit relatively lower leakage than silicon transistors, so implementing transistor T3 as a semiconducting-oxide transistor will help reduce flicker at low refresh rates (e.g., by preventing current from leakage through T3).」
(一つの適切な構成では、トランジスタT3は半導体酸化物トランジスタとして実装されてもよく、残りのトランジスタT1、T2及びT4~T6はシリコントランジスタである。半導体酸化物トランジスタは、シリコントランジスタよりも比較的低い漏れを示し、したがって、トランジスタT3を半導体酸化物トランジスタとして実装することは、(例えば、T3を通じた電流の漏れを防止することによって)低リフレッシュレートにおいてフリッカを低減するのに役立つ。)
「[0037] In another suitable arrangement, transistors T3 and T6 may be implemented as semiconducting-oxide transistors while remaining transistors T1, T2, T4, and T5 are silicon transistors. Since both transistors T3 and T6 are controlled by signal Scan1, forming them as the same transistor type can help simplify fabrication.」
(別の好適な構成では、トランジスタT3及びT6は半導体酸化物トランジスタとして実装されてもよく、残りのトランジスタT1、T2、T4及びT5はシリコントランジスタである。トランジスタT3及びT6の両方が信号Scan1によって制御されるので、それらを同じトランジスタタイプとして形成することは、製造を単純化するのに役立つことができる。)
「[0038] In yet another suitable arrangement, transistors T3, T6, and also T2 may be implemented as semiconducting-oxide transistors while remaining transistors T1, T4, and T5 are silicon transistors.Transistor T2 serves as the drive transistor and has a threshold voltage that is critical to the emission current of pixel 22. As described below in connection with at least FIG. 7, the threshold voltage of the drive transistor may experience hysteresis. Thus, forming the drive transistor as a top-gate semiconducting-oxide transistor can help reduce the hysteresis (e.g., a top-gate IGZO transistor experiences less Vth hysteresis than a silicon transistor). If desired, all of transistors T1-T6 may be semiconducting-oxide transistors. Moreover, any one or more of transistors T1-T6 may be p-type (i.e., p-channel) thin-film transistors.」
(更に別の適切な構成では、トランジスタT3、T6とT2も、半導体酸化物トランジスタとして実装され得るものであり、残りのトランジスタT1、T4及びT5は、シリコントランジスタである。トランジスタT2は、駆動トランジスタとして機能し、画素22の発光電流を左右する極めて重要なしきい値電圧を有する。少なくとも図7に関連して以下で説明するように、駆動トランジスタのしきい値電圧はヒステリシス特性を有する。したがって、駆動トランジスタをトップゲート半導体酸化物トランジスタとして形成することは、ヒステリシスを低減するのに役立ち得る(例えば、トップゲートIGZOトランジスタは、シリコントランジスタに比較してより小さいVthヒステリシスを示す。)。必要に応じて、トランジスタT1~T6の全てを半導体酸化物トランジスタとし得る。さらに、トランジスタT1~T6のうちの任意の一つ又は複数は、p型(すなわち、pチャネル)薄膜トランジスタであり得る。)
「[0039] Display pixel 22 may include light-emitting diode 304. A positive power supply voltage VDDEL may be supplied to positive power supply terminal 300 and a ground power supply voltage VSSEL (e.g., 0 volts or other suitable voltage) may be supplied to ground power supply terminal 302. The state of drive transistor T2 controls the amount of current flowing from terminal 300 to terminal 302 through diode 304, and therefore the amount of emitted light 306 from display pixel 22. Diode 304 may have an associated parasitic capacitance COLED (not shown).」
(表示画素22は、発光ダイオード304を含み得る。正電源電圧VDDELは正電源端子300に供給され、接地電源電圧VSSEL(例えば、0ボルト又は他の適切な電圧)は接地電源端子302に供給され得る。駆動トランジスタT2の状態は、ダイオード304を介して端子300から端子302に流れる電流量を制御し、したがって、表示画素22から放射される光306の量を制御する。ダイオード304は、関連する寄生容量COLED(不図示)を有し得る。)
「[0040] Terminal 308 is used to supply an initialization voltage Vini (e.g., a negative voltage such as -1V or -2V or other suitable voltage) to assist in turning off diode 304 when diode 304 is not in use. Control signals from display driver circuitry such as row driver circuitry 18 of FIG.1 are supplied to control terminals such as terminals 312, 313, 314, and 315. Terminals 312 and 313 may serve respectively as first and second scan control terminals, whereas terminals 314 and 315 may serve respectively as first and second emission control terminals. Scan control signals Scan1 and Scan2 may be applied to scan terminals 312 and 313, respectively. Emission control signals EM1 and EM2 may be supplied to terminals 314 and 315, respectively. A data input terminal such as data signal terminal 310 is coupled to a respective data line 26 of FIG.1 for receiving image data for display pixel 22.」
(端子308は、ダイオード304が使用されていないときにダイオード304をオフにするのを助けるための初期化電圧Vini(例えば、-1V又は-2Vなどの負電圧、又はその他の適切な電圧)を供給するために使用される。図1の行駆動回路18などのディスプレイ駆動回路からの制御信号は、端子312、313、314及び315などの制御端子に供給される。端子312及び313はそれぞれ第1及び第2の走査制御端子として機能し、端子314及び315はそれぞれ第1及び第2の発光制御端子として機能する。走査制御信号Scan1及びScan2は、それぞれ走査端子312及び313に印加される。発光制御信号EM1及びEM2は、それぞれ端子314及び315に供給される。データ信号端子310などのデータ入力端子は、表示画素22のイメージデータを受け取るために図1のそれぞれのデータライン26に接続される。)
「Fig.1(図1)
[図:0001430582000006.jpg]
」
「[0041] In the example of FIG.4, transistors T4, T2, T5, and diode 304 may be coupled in series between power supply terminals 300 and 302. In particular, transistor T4 may have a drain terminal that is coupled to positive power supply terminal 300, a gate terminal that receives emission control signal EM2, and a source terminal (labeled as Node1). The terms “source” and “drain” terminals of a transistor can sometimes be used interchangeably and may therefore be referred to herein as “source-drain” terminals. Drive transistor T2 may have a drain terminal that is coupled to Node1, a gate terminal (labeled as Node2), and a source terminal (labeled as Node3). Transistor T5 may have a drain terminal that is coupled to Node3, a gate terminal that receives emission control signal EM1, and a source terminal (labeled as Node4) that is coupled to ground power supply terminal 302 via diode 304.」
(図4の例では、トランジスタT4、T2、T5及びダイオード304は、電源端子300と302の間に直列に接続されている。特に、トランジスタT4は、正電源端子300に接続されたドレイン端子、発光制御信号EM2を受信するゲート端子、及び、ソース端子(ノード1と表記)を有している。トランジスタの「ソース」端子と「ドレイン」端子という用語は、互換的に使用される場合があり、したがって、本明細書では「ソース・ドレイン」端子と呼ぶことがある。駆動トランジスタT2は、ノード1に接続されたドレイン端子、ゲート端子(ノード2と表記)、及び、ソース端子(ノード3と表記)を有している。トランジスタT5は、ノード3に接続されたドレイン端子、発光制御信号EM1を受信するゲート端子、及び、ダイオード304を介して接地電源端子302に接続されたソース端子(ノード4と表記)を有している。)
「(再掲)Fig.4(図4)
[図:0001430582000007.jpg]
」
「[0042] Transistor T3, capacitor Cst, and transistor T6 may be coupled in series between Node1 and power supply terminal 308. Transistor T3 may have a drain terminal that is coupled to Node1, a gate terminal that receives scan control signal Scan1, and a source terminal that is coupled Node2. Storage capacitor Cst may have a first terminal that is coupled to Node2 and a second terminal that is coupled to Node4. Transistor T6 may have a drain terminal that is coupled to Node4, a gate terminal that receives scan control signal Scan1, and a source terminal that receives voltage Vini via terminal 308. Transistor T1 may have a drain terminal that receives data line signal DL via terminal 310, a gate terminal that receives scan control signal Scan2, and a source terminal that is coupled to Node3. Connected in this way, signal EM2 may be asserted to enable transistor T4; signal EM1 may be asserted to activate transistor T5; signal Scan2 may be asserted to turn on transistor T1; and signal Scan1 may be asserted to switch into use transistors T3 and T6.」
(トランジスタT3、コンデンサCst及びトランジスタT6は、ノード1と電源端子308の間に直列に接続され得る。トランジスタT3は、ノード1に接続されたドレイン端子、スキャン制御信号Scan1を受信するゲート端子、及び、ノード2に接続されたソース端子を有し得る。蓄積コンデンサCstは、ノード2に接続された第1端子及びノード4に接続された第2端子を有し得る。トランジスタT6は、ノード4に接続されたドレイン端子、スキャン制御信号Scan1を受信するゲート端子、及び、端子308を介して電圧Viniを受信するソース端子を有する。トランジスタT1は、端子310を介してデータ線信号DLを受信するドレイン端子、スキャン制御信号Scan2を受信するゲート端子、及び、ノード3に接続されたソース端子を有する。このように接続することにより、信号EM2がアサートされてトランジスタT4を有効化し、信号EM1がアサートあれてトランジスタT5をアクティブ化し、信号Scan2がアサートされてトランジスタT1をオンにし、信号Scan1がアサートされ、トランジスタT3とT6が使用されるように切り替えられ得る。)
イ 引用文献1技術事項1~4の認定
(ア) 引用文献1技術事項1
前記アで摘記した引用文献1の記載事項(特に段落[0038]を参照)から、引用文献1には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献1技術事項1」という。)。
<引用文献1技術事項1>
「画素の発光電流を左右する極めて重要なしきい値電圧を有する駆動トランジスタとして機能するトランジスタT2について、しきい値電圧のヒステリシスを低減するために半導体酸化物トランジスタを利用すること。」
(イ) 引用文献1技術事項2
前記アで摘記した引用文献1の記載事項(特に段落[0036]、[0041]、[0042]及びFig.4を参照)から、引用文献1には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献1技術事項2」という。)。
<引用文献1技術事項2>
「ノード1及びノード2を介して駆動トランジスタT2のドレイン端子とゲート端子にわたって結合されたトランジスタT3について、漏れ電流を防止し低リフレッシュレートにおけるフリッカを低減するために半導体酸化物トランジスタを利用すること。」
(ウ) 引用文献1技術事項3
前記アで摘記した引用文献1の記載事項(特に段落[0038]参照)から、引用文献1には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献1技術事項3」という。)。
<引用文献1技術事項3>
「ノード4に接続されたドレイン端子、スキャン制御信号Scan1を受信するゲート端子、及び、端子308を介して電圧Viniを受信するソース端子を有するトランジスタT6を半導体酸化物トランジスタとできること。」
(エ) 引用文献1技術事項4
a 段落[0038]には、次のとおり記載されている。
「トランジスタT3、T6とT2も、半導体酸化物トランジスタとして実装され得るものであり、残りのトランジスタT1、T4及びT5は、シリコントランジスタである。」
b 上記段落[0038]には、次の記載もある。
「必要に応じて、トランジスタT1~T6の全てを半導体酸化物トランジスタとし得る。さらに、トランジスタT1~T6のうちの任意の一つ又は複数は、p型(すなわち、pチャネル)薄膜トランジスタであり得る。」
c 前記bの記載及びp型シリコントランジスタは当業者に周知のものであることを考慮すると、引用文献1には次の技術事項が記載されていると認められる(以下「引用文献1技術事項4」という。)。
<引用文献1技術事項4>
「トランジスタT1、T4及びT5は、p型シリコントランジスタとできること」及び
「ノード3に接続されたドレイン端子、発光制御信号EM1を受信するゲート端子、及び、ダイオード304を介して接地電源端子302に接続されたソース端子(ノード4)を有するトランジスタT5をp型シリコントランジスタとできること。」
(4) 本件補正発明と引用発明2の対比
ア 対比分析
次の引用発明2の欄に記載した引用発明2の各構成は、それぞれ、対応する本件補正発明の欄に記載した次の本件補正発明の構成に対応する。
<引用発明2> <本件補正発明>
有機EL素子301 有機発光ダイオード
駆動TFT303 酸化物半導体駆動トランジスタ
nMOSスイッチ305 酸化物半導体ゲート電圧設定トランジスタ
保持容量306 蓄積コンデンサ
電位線213 初期化ライン
nMOSスイッチ307 酸化物半導体初期化トランジスタ
pMOSスイッチ302 p型シリコン発光トランジスタ
<引用発明2の参考図> <本件補正発明の参考図>
[図:0001430582000008.jpg]
イ 一致点及び相違点
前記アに示した対応関係を踏まえると、本件補正発明と引用発明2は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点及び一応の相違点において、相違又は一応相違すると認められる。
(ア) 一致点
「 アノード端子及びカソード端子を有する有機発光ダイオードと、
前記有機発光ダイオードと直列に結合された駆動トランジスタであって、ゲート端子、ドレイン端子、及びソース端子を含む、駆動トランジスタと、
前記駆動トランジスタの前記ドレイン端子と前記ゲート端子にわたって結合されたゲート電圧設定トランジスタと、
前記駆動トランジスタの前記ゲート端子に結合された第1の端子、及び前記有機発光ダイオードの前記アノード端子に結合された第2の端子を有する、蓄積コンデンサと、
初期化電圧が提供される初期化ラインと、
前記初期化ラインと前記有機発光ダイオードの前記アノード端子との間に結合された初期化トランジスタと、
前記駆動トランジスタと前記有機発光ダイオードの前記アノード端子との間に直列に結合された発光トランジスタと、を備え、
前記発光トランジスタ及び前記初期化トランジスタは、発光制御回路によって生成された発光制御信号を受け取るように構成されている、
表示画素。」
である点。
(イ) 相違点及び一応の相違点
a 一応の相違点1(駆動トランジスタ)
「駆動トランジスタ」について、
本件補正発明は「酸化物半導体」からなるトランジスタを用いているのに対し、
引用発明2は「多結晶Si半導体デバイス、微結晶Si半導体デバイス、アモルファス半導体デバイス、または、酸化物半導体デバイスにより形成され[る]」点。
b 相違点2(ゲート電圧設定トランジスタ)
「ゲート電圧設定トランジスタ」について、
本件補正発明は「酸化物半導体」からなるトランジスタを用いているのに対し、
引用発明2は「nMOS」からなるトランジスタを用いている点。
c 相違点3(初期化トランジスタ)
「初期化トランジスタ」について、
本件補正発明は「酸化物半導体」からなるトランジスタを用いているのに対し、
引用発明2は「nMOS」からなるトランジスタを用いている点。
d 相違点4(発光トランジスタ)
「発光トランジスタ」について、
本件補正発明は「p型シリコン」からなるトランジスタを用いているのに対し、
引用発明2は「pMOS」からなるトランジスタを用いている点。
(5) 判断
ア 一応の相違点1(駆動トランジスタ)について
引用発明2は、「駆動TFT」として「酸化物半導体デバイス」により形成されることが選択肢の一つとして特定されているから、一応の相違点1は、実質的にみて相違点ではない。
仮にこの点が相違点であるとしても、引用文献1には「画素の発光電流を左右する極めて重要なしきい値電圧を有する駆動トランジスタとして機能するトランジスタT2について、しきい値電圧のヒステリシスを低減するために前記駆動トランジスタとして半導体酸化物トランジスタを利用すること」(「引用文献1技術事項1」を参照)が記載されており、引用発明2においても駆動TFTのしきい値電圧のヒステリシスを低減するために引用文献1技術事項1を適用して駆動TFTとして「酸化物半導体トランジスタ」を用いることとして、一応の相違点1に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得る設計上の事項にすぎない。
イ 相違点2(ゲート電圧設定トランジスタ)について
引用文献1には「ノード1及びノード2を介して駆動トランジスタT2のドレイン端子とゲート端子にわたって結合されたトランジスタT3について、漏れ電流を防止し低リフレッシュレートにおけるフリッカを低減するために半導体酸化物トランジスタを利用すること」(「引用文献1技術事項2」を参照)が記載されている。引用発明2においても、トランジスタの漏れ電流を防止し低リフレッシュレートにおけるフリッカを低減するために、引用文献1技術事項2を適用して「nMOSスイッチ305」に代えて「半導体酸化物トランジスタ」を用いることとして、相違点2に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者にとっては自明の設計変更にすぎない。
ウ 相違点3(初期化トランジスタ)について
引用発明2の「有機EL素子301」は「保持容量306に書込まれていた信号電圧に応じた電流に対応する階調輝度で発光する」ものであって、すなわち「保持容量306」の電圧は発光輝度を決定づけるものであるから、「保持容量306」に接続された「nMOSスイッチ307」の漏れ電流が少ない方が望ましいことは、当業者に明らかであるといえる。
さらに、引用文献1においても、「nMOSスイッチ307」に相当するトランジスタであるトランジスタT6を「半導体酸化物トランジスタ」しても良いことが記載されている(「引用文献1技術事項3」を参照)。
してみれば、引用発明2の「nMOSスイッチ307」に代えて、漏れ電流をすくなくするために「半導体酸化物トランジスタ」を用いることとして、相違点3に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者にとっては自明の設計変更にすぎない。
エ 相違点4(発光トランジスタ)について
pMOSスイッチ302に相当する部分としてどのようなトランジスタを用いるかは、引用文献1において「pMOSスイッチ302」に相当する部分に「p型シリコントランジスタ」を用いている(「引用文献1技術事項4」を参照)ことからも明らかなように、当業者が適宜選択し得る設計上の事項にすぎず、引用発明2のpMOSスイッチ302に代えてp型シリコントランジスタを用いることとして、相違点4に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、当業者にとっては自明の設計変更にすぎない。
オ 総合評価
前記ア~エにおいて検討したとおり、引用発明2において、前記相違点1~4に係る本件補正発明の構成を備えるようにすることは、引用発明2及び引用文献1技術事項1~4に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、相違点1~4を総合的に勘案しても、本件補正発明が奏する効果としては、当該構成が奏するものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本件補正発明は、引用発明2及び引用文献1技術事項1~4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
カ 補足(進歩性要件の充足に関する請求人の主張が無いこと)
請求人は審判請求書において、本件補正後の請求項1の記載は1次補正後の請求項1、2、4、5の記載を根拠とすること、及び、本件補正後の請求項1~4に係る発明は特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていることを主張している。
請求人の主張するように、本件補正後の請求項1に係る発明は、1次補正後の特許請求の範囲の請求項1、2、4の記載の全てを引用する請求項5に係る発明(以下「1次審査時発明5」という。)と同じであると認められる。
最初の拒絶理由通知書において、1次審査時発明5については引用発明2及び引用文献1に記載された事項からみて進歩性を有しないとの拒絶理由が通知されているところ、請求人は、本件補正により、本件補正発明を1次審査時発明5と同じものとなるようにしたにもかかわらず、最初の拒絶理由通知書において通知された進歩性を有しないとの拒絶理由について何ら意見を述べておらず、本件補正発明が進歩性を有することについて何ら主張もしていない。
(6) まとめ
前記(1)~(5)で検討したとおり、本件補正発明は特許法29条2項の規定に適合しない。
第3 2次補正発明と原査定の拒絶の理由
1 2次補正発明
本件補正は、前記第2のとおり却下したので、本願の請求項1に係る発明は、2次補正後の特許請求の範囲の請求項1~11に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものであり、以下、それぞれ請求項に従って「2次補正発明1」などという。
「 【請求項1】
アノード端子及びカソード端子を有する有機発光ダイオードと、
前記有機発光ダイオードと直列に結合された酸化物半導体駆動トランジスタであって、ゲート端子、ドレイン端子、及びソース端子を含む、酸化物半導体駆動トランジスタと、
前記酸化物半導体駆動トランジスタの前記ゲート端子に結合された第1の端子、及び前記有機発光ダイオードの前記アノード端子に結合された第2の端子を有する、蓄積コンデンサと、
前記有機発光ダイオードと直列に結合され、発光信号を受け取るように構成された第1の発光トランジスタと、
前記有機発光ダイオードと直列に結合され、別の画素行から追加の発光信号を受け取るように構成された第2の発光トランジスタと、
前記アノード端子と初期化ラインとの間に結合され、前記発光信号を受け取るように構成された初期化トランジスタと、
を備える表示画素。
【請求項2】
前記酸化物半導体駆動トランジスタの前記ドレイン端子と前記ゲート端子にわたって結合された酸化物半導体ゲート電圧設定トランジスタを更に備える、
請求項1に記載の表示画素。
【請求項3】
前記初期化トランジスタは、酸化物半導体初期化トランジスタを含む、請求項1に記載の表示画素。
【請求項4】
前記第1及び第2の発光トランジスタは、p型シリコン発光トランジスタを含む、請求項2に記載の表示画素。
【請求項5】
正の電源ラインと、
データラインと、
前記データラインと前記酸化物半導体駆動トランジスタの前記ソース端子との間に結合されたp型シリコンデータローディングトランジスタと、
前記酸化物半導体ゲート電圧設定トランジスタに第1の走査信号を提供するように構成された第1の走査ラインと、
前記p型シリコンデータローディングトランジスタに第2の走査信号を提供するように構成された第2の走査ラインと、
を更に備える、請求項4に記載の表示画素。
【請求項6】
前記蓄積コンデンサが、前記酸化物半導体駆動トランジスタの上方に積層されており、前記酸化物半導体駆動トランジスタのシールドを提供する、請求項1に記載の表示画素。
【請求項7】
前記酸化物半導体駆動トランジスタが、
活性酸化物半導体材料と、
前記活性酸化物半導体材料の上方に形成されたトップゲート導体と、
前記活性酸化物半導体材料の下方に形成され、前記酸化物半導体駆動トランジスタの前記ゲート端子又は前記ソース端子のうち選択された1つに結合されたボトムゲート導体と、
を含む、請求項1に記載の表示画素。
【請求項8】
発光ダイオード、駆動トランジスタ、ゲート設定トランジスタ、初期化トランジスタ、及びデータローディングトランジスタを含む画素を動作させる方法であって、
第1のスキャン信号をアサートして前記ゲート設定トランジスタをアクティブ化することにより、及び発光信号をデサートして前記初期化トランジスタをアクティブ化することにより、初期化動作を実施することと、
前記第1のスキャン信号がアサートされている間に、第2のスキャン信号をアサートして前記データローディングトランジスタをアクティブ化することにより、閾値電圧サンプリング及びデータプログラミング動作を実施することと、
発光動作の前に前記発光信号をアサートすることと、含む方法。
【請求項9】
前記画素は、ある画素行の一部であり、前記方法は、
前記初期化動作及び前記発光動作の間に、前記ある画素行とは異なる別の画素行からの追加の発光信号をアサートして前記画素内の発光トランジスタをアクティブ化することと、
前記閾値電圧サンプリング及びデータプログラミング動作の間に、前記追加の発光信号をデサートすることと、をさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記閾値電圧サンプリング及びデータプログラミング動作の前に、前記第1のスキャン信号がデサートされている間に、及び前記発光信号及び前記追加の発光信号がデサートされている間に、前記第2のスキャン信号をアサートして前記データローディングトランジスタをアクティブ化することにより、オンバイアスストレス動作を実施すること、をさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のスキャン信号内に第1のパルスを生成して前記オンバイアスストレス動作を開始することと、
前記第2のスキャン信号内に第2のパルスを生成して前記閾値電圧サンプリング及びデータプログラミング動作を開始することと、をさらに含む請求項10に記載の方法。」
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由、すなわち令和5年8月14日付け拒絶理由通知書に記載された拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
(発明の特別な技術的特徴を変更する補正)令和5年8月7日に提出した手続補正書による補正である2次補正は、2次補正発明1~11が下記の点で、2次補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と、特許法37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものではないから、同法17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。
記
(1) 特別な技術的特徴に基づく審査対象の決定
2次補正前の令和5年4月27日付け拒絶理由通知書においては、1次補正後の(請求項1~2、4を引用する)請求項5に係る発明に、「請求項1~2、4で特定される表示画素において「前記p型シリコン発光トランジスタ及び前記酸化物半導体初期化トランジスタが、発光制御回路によって生成された発光制御信号を受信する」という特別な技術的特徴が発見されたこと」が記載されている。
そして、2次補正発明1~11は、前記特別な技術的特徴と同一の又は対応する特別な技術的特徴を有する発明ではない。
(2) 審査の効率性に基づく審査対象の決定
2次補正発明1~7は、1次補正後の請求項1に係る発明の発明特定事項を全て含む同一カテゴリーの発明である。しかしながら、1次補正後の請求項1に係る発明に対して追加された2次補正発明1~7の技術的特徴は「前記有機発光ダイオードと直列に結合され、発光信号を受け取るように構成された第1の発光トランジスタと、前記有機発光ダイオードと直列に結合され、別の画素行から追加の発光信号を受け取るように構成された第2の発光トランジスタと、前記アノード端子と初期化ラインとの間に結合され、前記発光信号を受け取るように構成された初期化トランジスタ」であるのに対し、1次補正後の請求項1に係る発明の技術的特徴は発光トランジスタ、初期化トランジスタを有していないため、両者の技術的関連性は低い。
2次補正発明8~11は、1次補正後の請求項1に係る発明の発明特定事項を全て含む同一カテゴリーの発明ではない。
そして、2次補正発明1~11は、審査対象とされた発明を審査した結果、実質的に追加的な先行技術調査や判断を必要とすることなく審査を行うことが可能である発明ではなく、当該発明とまとめて審査を行うことが効率的であるといえる他の事情も無い。
したがって、2次補正発明1~11は、特許法17条の2第4項以外の要件についての審査対象としない。
(3) 令和5年8月7日に提出の意見書における出願人の主張
出願人は令和5年8月7日に提出の意見書において、1次補正後の請求項1~6に係る発明と2次補正発明1~11との特別な技術的特徴が共通するものであるので、特許法17条の2第3項及び4項の要件を充足するものと主張しているが、「発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴」であるところの「特別な技術的特徴」として、前記拒絶理由通知書において提示した引用例1に記載された発明に対する貢献を明示する技術的特徴は、1次補正後の請求項1~6と2次補正発明1~11とでは共通していないことから、前記主張は採用できない。
第4 1次補正後の特許請求の範囲の各請求項に係る発明
1次補正後の特許請求の範囲の請求項1~20の記載は、次のとおりである。以下、1次補正後の特許請求の範囲の各請求項に係る発明を、各請求項の番号に従って「1次補正発明1」などという。
「 【請求項1】
アノード端子及びカソード端子を有する有機発光ダイオードと、
前記有機発光ダイオードと直列に結合された酸化物半導体駆動トランジスタであって、ゲート端子、ドレイン端子、及びソース端子を含む、酸化物半導体駆動トランジスタと、
前記酸化物半導体駆動トランジスタの前記ゲート端子に結合された第1の端子、及び前記有機発光ダイオードの前記アノード端子に結合された第2の端子を有する、蓄積コンデンサと、
を備える表示画素。
【請求項2】
前記酸化物半導体駆動トランジスタの前記ドレイン端子と前記ゲート端子にわたって結合された酸化物半導体ゲート電圧設定トランジスタを更に備える、
請求項1に記載の表示画素。
【請求項3】
初期化電圧が提供される初期化ラインと、
前記初期化ラインと前記有機発光ダイオードの前記アノード端子との間に結合された酸化物半導体初期化トランジスタと、
を更に備える、請求項1に記載の表示画素。
【請求項4】
初期化電圧が提供される初期化ラインと、
前記初期化ラインと前記有機発光ダイオードの前記アノード端子との間に結合された酸化物半導体初期化トランジスタと、
前記酸化物半導体駆動トランジスタと前記有機発光ダイオードの前記アノード端子との間に直列に結合されたp型シリコン発光トランジスタと、
を更に備える、請求項2に記載の表示画素。
【請求項5】
前記p型シリコン発光トランジスタ及び前記酸化物半導体初期化トランジスタが、発光制御回路によって生成された発光制御信号を受信するように構成されている、請求項4に記載の表示画素。
【請求項6】
正の電源ラインと、
前記正電源ラインと前記酸化物半導体駆動トランジスタとの間に直列に結合された追加のp型シリコン発光トランジスタと、
データラインと、
前記データラインと前記酸化物半導体駆動トランジスタの前記ソース端子との間に結合されたp型シリコンデータローディングトランジスタと、
前記酸化物半導体ゲート電圧設定トランジスタに第1の走査信号を提供するように構成された第1の走査ラインと、
前記p型シリコンデータローディングトランジスタに第2の走査信号を提供するように構成された第2の走査ラインと、
を更に備える、請求項4に記載の表示画素。
【請求項7】
前記蓄積コンデンサが、前記酸化物半導体駆動トランジスタの上方に積層されており、前記酸化物半導体駆動トランジスタのシールドを提供する、請求項1に記載の表示画素。
【請求項8】
前記酸化物半導体駆動トランジスタが、
活性酸化物半導体材料と、
前記活性酸化物半導体材料の上方に形成されたトップゲート導体と、
前記活性酸化物半導体材料の下方に形成され、前記酸化物半導体駆動トランジスタの前記ゲート端子又は前記ソース端子のうち選択された1つに結合されたボトムゲート導体と、
を含む、請求項1に記載の表示画素。
【請求項9】
シリコントランジスタと、
前記シリコントランジスタの上方に形成された酸化物半導体トランジスタと、
前記酸化物半導体トランジスタの上方に積層された蓄積コンデンサであって、前記酸化物半導体トランジスタを少なくとも部分的にシールドすることによって、画素クロストークを減少させ、水素が前記酸化物半導体トランジスタのチャネル内に浸透するのを防止するように構成されている、蓄積コンデンサと、
を備える、ディスプレイ。
【請求項10】
前記蓄積コンデンサが、前記酸化物半導体トランジスタのゲート端子に直接接続された第1の端子及び、前記シリコントランジスタのドレイン端子に直接接続された第2の端子を有する、請求項9に記載のディスプレイ。
【請求項11】
前記酸化物半導体トランジスタがボトムゲート導体を有し、前記シリコントランジスタがトップゲート導体を有し、前記酸化物半導体トランジスタの前記ボトムゲート導体及び前記シリコントランジスタの前記トップゲート導体が同じ導電層から形成されている、請求項9に記載のディスプレイ。
【請求項12】
前記酸化物半導体トランジスタが、
第1のゲート導体と、
前記酸化物半導体トランジスタのゲート端子又はソース端子のうち選択された1つに結合された第2のゲート導体と、
を含む、請求項9に記載のディスプレイ。
【請求項13】
前記酸化物半導体トランジスタが、前記蓄積コンデンサのボトムプレートとして構成されたゲート導体を有する、請求項9に記載のディスプレイ。
【請求項14】
前記蓄積コンデンサが前記酸化物半導体トランジスタの前記ゲート導体を覆っているトッププレートを有し、前記蓄積コンデンサの前記トッププレートが、前記酸化物半導体トランジスタに電気的シールド及び光学的シールドを提供する、請求項9に記載のディスプレイ。
【請求項15】
アノード端子及びカソード端子を有する発光ダイオードと、
第1の層に形成された酸化物半導体材料を有し、第1のゲート導体を有する第1の酸化物半導体トランジスタであって、前記発光ダイオードの前記アノード端子に結合された駆動トランジスタを含む、第1の酸化物半導体トランジスタと、
前記第1の層とは異なる第2の層に形成された半導体材料を有し、第2のゲート導体を有する第2の酸化物半導体トランジスタと、
を備える、ディスプレイ。
【請求項16】
前記第1のゲート導体及び前記第2のゲート導体が同じゲート層に形成されている、請求項15に記載のディスプレイ。
【請求項17】
前記第1の酸化物半導体トランジスタの前記半導体材料の下方に形成された第1のゲート金属と、
前記第2の酸化物半導体トランジスタの前記半導体材料の下方に形成された第2のゲート金属であって、前記第1のゲート金属及び前記第2のゲート金属が同じゲート金属層に形成されている、第2のゲート金属と、
を更に備える、請求項15に記載のディスプレイ。
【請求項18】
前記アノード端子と前記第1のゲート導体との間に形成された、ただ1つの平坦化層を更に備える、請求項15に記載のディスプレイ。
【請求項19】
前記第1の層が前記第2の層の上方又は下方にある、請求項15に記載のディスプレイ。
【請求項20】
前記第1のゲート導体と同じゲート層に形成された第1の端子を有する蓄積コンデンサを更に備え、
前記蓄積コンデンサが、前記第1の端子の上方の金属層に形成された第2の端子を有する、請求項15に記載のディスプレイ。」
第5 引用発明1と1次補正発明4の新規性の欠如について
2次補正が特許法17条の2第4項に規定する要件を満たしているか否かの判断に際して、1次補正発明1及び1次補正発明2の発明特定事項の全てを含む1次補正発明4が、引用文献1に記載された発明に照らして特別な技術的特徴を有しているか否かの判断が必要となることから、以下、この点について検討する。
1 引用文献1に記載された事項
引用文献1に記載された事項は、前記第2の4(3)アのとおりである。
2 引用文献1に記載された発明の認定
(1) 認定事項A
段落[0035]に示されるように、図4に示される表示画素22は「有機発光ダイオード表示画素」であるから、引用文献1における「発光ダイオード304」及び「ダイオード304」は「有機発光ダイオード」であると認められる(認定事項A)。
(2) 引用発明1の認定
前記(1)で認定した認定事項A、前記第2の4(3)イ(エ)で認定した引用文献1技術事項4及び第2の4(3)アに摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明1>
「 表示画素22であって、([0035])
蓄積コンデンサCstと、n型トランジスタT1、T2、T2、T3、T4、T5及びT6などのトランジスタとを含み、前記トランジスタは、シリコン、半導体酸化物などの半導体から形成された薄膜トランジスタであって、([0035])
半導体酸化物トランジスタは、シリコントランジスタよりも比較的低い漏れを示し、したがって、トランジスタT3を半導体酸化物トランジスタとして実装することにより、T3を通じた電流の漏れを防止することによって、低リフレッシュレートにおいてフリッカを低減するのに役立つものであり、([0036])
トランジスタT3、T6及びT2は、半導体酸化物トランジスタとして実装され得るものであり、残りのトランジスタT1、T4及びT5は、p型シリコントランジスタであり、([0038]、引用文献1技術事項4)
トランジスタT2は、駆動トランジスタとして機能し、画素22の発光電流を左右する極めて重要なしきい値電圧を有し、([0038])
駆動トランジスタをトップゲート半導体酸化物トランジスタとして形成することにより、ヒステリシスを低減するのに役立ち得るものであり、([0038])
端子308は、ダイオード304が使用されていないときにダイオード304をオフにするのを助けるための初期化電圧Viniを供給するために使用されるものであり、([0040])
トランジスタT4、T2、T5及びダイオード304は、電源端子300と302の間に直列に接続されており、([0041])
駆動トランジスタT2は、ノード1に接続されたドレイン端子、ゲート端子(ノード2)、及び、ソース端子(ノード3)を有しており、([0041])
トランジスタT5は、ノード3に接続されたドレイン端子、発光制御信号EM1を受信するゲート端子、及び、有機発光ダイオード304を介して接地電源端子302に接続されたソース端子(ノード4)を有しており、([0041]、認定事項A)
トランジスタT3は、ノード1に接続されたドレイン端子、スキャン制御信号Scan1を受信するゲート端子、及び、ノード2に接続されたソース端子を有し、([0042])
蓄積コンデンサCstは、ノード2に接続された第1端子及びノード4に接続された第2端子を有し、([0042])
トランジスタT6は、ノード4に接続されたドレイン端子、スキャン制御信号Scan1を受信するゲート端子、及び、端子308を介して電圧Viniを受信するソース端子を有する、([0042])
表示画素22。」
3 引用発明1と対比した1次補正発明4の新規性
(1) 次の引用発明1の欄に記載した引用発明1の各構成は、それぞれ、対応する1次補正発明4の欄に記載した次の1次補正発明4の構成に相当する。
<引用発明1> <1次補正発明4>
有機発光ダイオード 有機発光ダイオード
酸化物半導体駆動トランジスタ 半導体酸化物トランジスタT2
酸化物半導体ゲート電圧設定 半導体酸化物トランジスタT3
蓄積コンデンサ 蓄積コンデンサ
初期化ライン 端子308
半導体初期化トランジスタ トランジスタT6
p型シリコン発光トランジスタ p型シリコントランジスタT5
(2) 前記(1)で示したトランジスタ等の相当関係を踏まえると、1次補正発明4は引用発明1と相違する点が認められない。
第6 特許法17条の2第4項に規定する要件の充足性
1 「特許・実用新案審査基準」による具体的判断手法
(1) 特許法17条の2第4項の審査基準
ア 特許法17条の2第4項の規定
特許法17条の2第4項は次のとおり規定されている。
「前項に規定するもののほか,第1項各号に掲げる場合において特許請求の範囲について補正をするときは,その補正前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と,その補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される発明とが,第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものとなるようにしなければならない。」(なお、条文及び項の番号については算用数字に改めた。)
イ 特許法17条の2第4項の要件の判断手法の審査基準
特許法17条の2第4項が規定する要件の具体的判断手法について、「特許・実用新案審査基準」(以下、単に「審査基準」という。)の「第IV部」の「第3章 発明の特別な技術的特徴を変更する補正(特許法17条の2第4項)」は、次のように定めている。以下、(1)から(3)の手順を、それぞれ「補正判断手順1」などといい、まとめて「補正判断手順」という。
<特許法17条の2第4項が規定する要件の具体的判断手法>
「 審査官は、以下の(1)から(3)までの手順により、補正が発明の特別な技術的特徴を変更する補正であるか否かを判断する。
(1)補正後の特許請求の範囲に記載される事項により特定される全ての発明が、拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された全ての発明の後に続けて記載されていたと仮定する。
(2)そのように仮定した場合において、補正後の発明が、「第II部第3章 発明の単一性」の2.に照らして、第37条の要件以外の要件についての審査対象となるか否かを判断する。
(3)(2)の判断の結果、審査対象とならない発明があった場合は、当該補正は、発明の特別な技術的特徴を変更する補正であると判断する。」
(2) 特許法37条の要件と審査基準
ア 特許法37条及び省令の規定
(ア) 特許法37条の規定
特許法17条の2第4項が参照する特許法37条は、次のとおり規定する。
「二以上の発明については,経済産業省令で定める技術的関係を有することにより発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するときは,一の願書で特許出願をすることができる。」
(イ) 特許法施行規則第25条の8の規定
そして、特許法37条における「経済産業省令で定める技術的関係」について、特許法施行規則第25条の8は、次のとおり規定する。
「特許法第三十七条の経済産業省令で定める技術的関係とは,二以上の発明が同一の又は対応する特別な技術的特徴を有していることにより,これらの発明が単一の一般的発明概念を形成するように連関している技術的関係をいう。
2 前項に規定する特別な技術的特徴とは,発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴をいう。
3 第一項に規定する技術的関係については,二以上の発明が別個の請求項に記載されているか単一の請求項に択一的な形式によって記載されているかどうかにかかわらず,その有無を判断するものとする。」
イ 特許法37条の要件の判断手法の審査基準
特許法37条の要件についての具体的判断手法について、「審査基準」は、次のように定めている(注などの記載は省いている。)。以下、「4.1 特別な技術的特徴に基づく審査対象の決定」の手順を「手順4.1」といい、「4.2審査の効率性に基づく審査対象の決定」の手順を「手順4.2」という。)
<審査基準における、審査対象請求項の決定の具体的判断手順>
「4.1 特別な技術的特徴に基づく審査対象の決定
審査官は、以下の(1)から(4)までの手順により、「特別な技術的特徴」に基づいて審査対象とする発明を決定する。なお、請求項の発明特定事項が選択肢で表現されている場合(多数項引用形式の場合を含む。)は、審査官は、選択肢ごとに把握される発明が、その選択肢の順序でそれぞれ別の請求項として記載されているものとして以下の手順を行う。
(1)特許請求の範囲の最初に記載された発明について、特別な技術的特徴の有無を判断する。
(2)特許請求の範囲の最初に記載された発明が特別な技術的特徴を有しない場合は、特許請求の範囲の最初に記載された発明の発明特定事項を全て含む同一カテゴリーの請求項に係る発明があるか否かを判断する。そのような発明がある場合は、そのうち、請求項に付した番号が最も小さい請求項に係る発明について、特別な技術的特徴の有無を判断する。
(3)既に特別な技術的特徴の有無を判断した請求項に係る発明が特別な技術的特徴を有しない場合は、直前に特別な技術的特徴の有無を判断した請求項に係る発明の発明特定事項を全て含む同一カテゴリーの請求項に係る発明があるか否かを判断する。そのような発明がある場合は、そのうち、請求項に付した番号の最も小さい請求項に係る発明を選択して、特別な技術的特徴の有無を判断する。この手順を、特別な技術的特徴が発見されるか、又は直前に特別な技術的特徴の有無を判断した請求項に係る発明の発明特定事項を全て含む同一カテゴリーの請求項に係る発明が存在しなくなるまで繰り返す。
(4)手順(1)から(3)までにおいて、特別な技術的特徴が発見された場合は、以下の(i)及び(ii)を審査対象とする。手順(1)から(3)までにおいて、特別な技術的特徴が発見されなかった場合は、以下の(i)を審査対象とする。
(i)それまでに特別な技術的特徴の有無を判断した発明
(ii)発見された特別な技術的特徴と同一の又は対応する特別な技術的特徴を有する発明
4.2 審査の効率性に基づく審査対象の決定
審査官は、審査対象とした発明とまとめて審査をすることが効率的である発明については、審査対象に加える。審査官は、まとめて審査をすることが効率的であるか否かを、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載、出願時の技術常識、先行技術調査の観点等を総合的に考慮して判断する。
審査官は、例えば、以下の(1)又は(2)に該当する発明は、審査対象とした発明とまとめて審査をすることが効率的である発明として、審査対象に加える。
(1)特許請求の範囲の最初に記載された発明の発明特定事項を全て含む同一カテゴリーの請求項に係る発明
ただし、以下の(i)又は(ii)に該当する発明は除外してもよい。
(i)特許請求の範囲の最初に記載された発明が解決しようとする課題と、その発明に対して追加された技術的特徴から把握される、発明が解決しようとする具体的な課題との関連性が低い発明
(ii)特許請求の範囲の最初に記載された発明の技術的特徴と、その発明に対して追加された技術的特徴との技術的関連性が低い発明
なお、(i)の関連性及び(ii)の技術的関連性については、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載並びに出願時の技術常識に加え、先行技術調査の観点を考慮して判断する。
(2)上記4.1 及び4.2(1)に基づいて審査対象とした発明について審査をした結果、実質的に追加的な先行技術調査及び判断を必要とすることなく審査をすることが可能である発明
例えば、以下の(i)から(v)までのいずれかに該当する発明は、通常、実質的に追加的な先行技術調査及び判断を必要とすることなく審査をすることが可能である発明である。
(i)上記4.1 及び4.2(1)に基づいて審査対象とした発明と表現上の差異があるだけの他の発明
(ii)上記4.1及び4.2(1)に基づいて審査対象とした発明に対し、周知技術、慣用技術の付加、削除、転換等をした他の発明であって、新たな効果を奏するものではないもの
(iii)上記4.1及び4.2(1)に基づいて審査対象とした発明との差異が「技術の具体的適用に伴う設計変更」又は「数値範囲の最適化又は好適化」である他の発明であって、その差異が引用発明と比較した有利な効果を奏するものでもないことを容易に判断できるもの
(iv)上記4.1及び4.2(1)に基づいて審査対象とした発明を審査した結果、その発明が新規性又は進歩性を有しないことが判明した場合において、その発明を包含する広い概念の他の発明
(v)上記4.1及び4.2(1)に基づいて審査対象とした発明を審査した結果、ある発明特定事項を有する点で、その発明が新規性及び進歩性を有していることが判明した場合において、その発明特定事項を含む他の発明」
2 特許法17条の2第4項の適合性についての当審の判断
(1) 手順4.1に基づく2次補正前の審査対象請求項の決定
ア 前記第5で検討したとおり、1次補正発明4は、引用発明1からみて新規性が欠如しており、発明の先行技術に対する貢献を明示する技術的特徴を有するとはいえないから、これらの発明は特別な技術的特徴を有しない。
イ そうすると、令和5年4月27日付け拒絶理由通知書の理由1において示された特別な技術的特徴についての次の認定判断(以下「拒絶理由通知書における特別な技術的特徴についての認定判断」という。)は、妥当であるといえる。
<拒絶理由通知書における特別な技術的特徴についての認定判断>
1次補正発明5に、請求項1~2、4で特定される表示画素において「前記p型シリコン発光トランジスタ及び前記酸化物半導体初期化トランジスタが、発光制御回路によって生成された発光制御信号を受信する」という特別な技術的特徴が発見された。
ウ そして、1次補正発明6~20には前記特別な技術的特徴と同一の又は対応する特別な技術的特徴を有する請求項に係る発明が存在せず、手順4.1に基づく2次補正前の審査対象請求項は、それまでに特別な技術的特徴の有無を判断した請求項1、2、4、5に係る発明であるから、原査定において、特別な技術的特徴に基づく審査対象の決定の結果として、1次補正発明1、2、4、5を審査対象としたことは、前記手順4.1に従ったものであるということができ、この点において審査官の判断に誤りはない。
(2) 手順4.2に基づく2次補正前の審査対象請求項の決定
2次補正前の特許請求の範囲には、請求項1~20が記載されていたところ、審査対象に請求項3、6も加えて請求項1~6を審査対象としたことは、前記手順4.2に従ったものである。
(3) 2次補正の特許法17条の2第4項適合性の当審の判断
審査基準の前記補正判断手順に従って、本件補正2により特許請求の範囲についてした補正が特許法17条の2第4項に規定する要件を満たすか否か検討する。
ア 補正判断手順1
2次補正後の請求項1~11が、2次補正前、すなわち1次補正後の請求項1~6の後に続けて記載されていたと仮定する。
イ 補正判断手順2
次に、前記アのように仮定した場合において、2次補正発明1~11が、「第II部第3章 発明の単一性」の「2.」に照らして、第37条の要件以外の要件についての審査対象となるか否かを判断する。
(ア) 手順4.1に基づく判断
1次補正発明5は、「前記p型シリコン発光トランジスタ及び前記酸化物半導体初期化トランジスタが、発光制御回路によって生成された発光制御信号を受信する」という特別な技術的特徴を含んでいるところ、2次補正発明1~11は、当該特別な技術的特徴を含んでいない。
したがって、2次補正発明1~11は、直前に特別な技術的特徴の有無を判断した請求項に係る発明である、1次補正発明1、2、4の発明特定事項を全て含む1次補正発明5の発明特定事項を全て含む同一カテゴリーの請求項に係る発明ではない。
したがって、手順4.1に従っては、2次補正発明1~11は審査対象とならない。
(イ) 手順4.2に基づく判断
2次補正発明1~7は、1次補正発明1の発明特定事項を全て含む同一カテゴリーの発明である。
しかしながら、1次補正発明1に対して追加された2次補正発明1~7の技術的特徴は、「前記有機発光ダイオードと直列に結合され、発光信号を受け取るように構成された第1の発光トランジスタと、前記有機発光ダイオードと直列に結合され、別の画素行から追加の発光信号を受け取るように構成された第2の発光トランジスタと、前記アノード端子と初期化ラインとの間に結合され、前記発光信号を受け取るように構成された初期化トランジスタ」であるのに対し、1次補正発明1の技術的特徴は発光トランジスタ、初期化トランジスタを有していないため、両者の技術的関連性は低い。
2次補正発明8~11は、方法の発明であって、1次補正発明1の発明特定事項の全てを含んでいない上に、発明のカテゴリーも異なっており、「第1のスキャン信号をアサートして前記ゲート設定トランジスタをアクティブ化することにより、及び発光信号をデサートして前記初期化トランジスタをアクティブ化することにより、初期化動作を実施することと、前記第1のスキャン信号がアサートされている間に、第2のスキャン信号をアサートして前記データローディングトランジスタをアクティブ化することにより、閾値電圧サンプリング及びデータプログラミング動作を実施することと、発光動作の前に前記発光信号をアサートすること」といった、物の発明である1次補正発明1との技術的関連性が低い技術的特徴を含んでいる。
そして、2次補正発明1~11に係る発明は、審査対象とされた発明を審査した結果、実質的に追加的な先行技術調査や判断を必要とすることなく審査を行うことが可能である発明ではなく、当該発明とまとめて審査を行うことが効率的であるといえる他の事情もみあたらない。
したがって、手順4.2に従っても、2次補正発明1~11を審査対象としなかったことには適切な理由があると、当審は判断する。
ウ 補正判断手順3
前記イにおいて、2次補正発明1~11は審査対象とならないものであるから、令和5年8月7日に提出した手続補正により特許請求の範囲についてした補正は、発明の特別な技術的特徴を変更する補正であると判断し、特許法17条の2第4項に規定する要件を満たしていないと判断した原査定の判断に、誤りはない。
3 請求人の主張
なお、請求人は、令和5年8月14日付け拒絶理由通知書における、発明の特別な技術的特徴を変更する補正に関する拒絶理由に対して、補正で対応しようとしたこともあり、その後に提出された意見書及び審判請求書において何ら意見を述べていない。
第7 むすび
以上のとおり、2次補正、すなわち令和5年8月7日に提出された手続補正により特許請求の範囲についてした補正は、特許法第17条の2第4項の規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-005435