特許拒絶査定不服審判
2024-000682
ロボット
- 審判番号
- 2024-000682
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-153677外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2024年01月16日
- 審決日
- 2025年02月27日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】川崎重工業株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人有古特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (B25J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第5項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-153677「ロボット」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 3月 1日出願公開、特開2021- 30376〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年8月26日を出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年 6月12日付け:拒絶理由通知書
令和5年 8月 8日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年10月24日付け:拒絶査定
令和6年 1月16日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和6年1月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年1月16日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は補正箇所であり、当審が付した。)。
「【請求項1】
ワークに対して作業を行うためのロボットであって、
複数の関節軸を有するロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に設けられるエンドエフェクタと、
前記関節軸を回転駆動するためのモータと、
前記モータの回転位置を示す回転位置データを取得するためのエンコーダと、
前記ロボット又は前記ワークの状態を示す状態データを取得するための複数のセンサと、
前記エンコーダと前記複数のセンサがマルチドロップ接続されたマルチドロップラインを有する通信装置と、
前記通信装置を介して前記回転位置データ及び前記状態データを取得可能であり、前記ロボットの動作を制御するためのロボット制御装置と、を備え、
前記ロボットアームは、前記関節軸がリンクを介して直列的に接続されたリンク構造を有し、
前記通信装置は、前記マルチドロップラインにより全ての前記エンコーダをマルチドロップ接続し、
前記複数のセンサが、前記ロボットの一部に取り付けられ、前記ロボットの一部の加速度を示す加速度データを前記状態データとして取得可能である加速度センサと、前記ロボットの一部に取り付けられ、前記ロボットの一部での音を示す音データを前記状態データとして取得可能であるマイクロホンと、を有し、
前記ロボット制御装置は、前記エンドエフェクタよりも基端側で直列的に接続された全ての前記関節軸のモータの回転位置データに基づき、前記エンドエフェクタの位置を示す位置データを導出可能であり、前記位置データ、前記加速度データ、及び前記音データに基づき、前記ロボットの動作を制御可能であることを特徴とする、ロボット。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和5年8月8日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び請求項3の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
ワークに対して作業を行うためのロボットであって、
複数の関節軸を有するロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に設けられるエンドエフェクタと、
前記関節軸を回転駆動するためのモータと、
前記モータの回転位置を示す回転位置データを取得するためのエンコーダと、
前記ロボット又は前記ワークの状態を示す状態データを取得するための複数のセンサと、
前記エンコーダと前記複数のセンサがマルチドロップ接続されたマルチドロップラインを有する通信装置と、
前記通信装置を介して前記回転位置データ及び前記状態データを取得可能であり、前記ロボットの動作を制御するためのロボット制御装置と、を備え、
前記ロボットアームは、前記関節軸がリンクを介して直列的に接続されたリンク構造を有し、
前記通信装置は、前記マルチドロップラインにより全ての前記エンコーダをマルチドロップ接続し、
前記複数のセンサのうちの少なくとも一つが、前記ロボットの一部に取り付けられ、前記ロボットの一部の加速度を示す加速度データを前記状態データとして取得可能である加速度センサとして構成され、
前記ロボット制御装置は、前記エンドエフェクタよりも基端側で直列的に接続された全ての前記関節軸のモータの回転位置データに基づき、前記エンドエフェクタの位置を示す位置データを導出可能であり、前記加速度データ及び前記位置データに基づき、前記ロボットの動作を制御可能であることを特徴とする、ロボット。」
「【請求項3】
前記複数のセンサのうちの少なくとも一つが、前記ロボットの一部に取り付けられ、前記ロボットの一部での音を示す音データを前記状態データとして取得可能であるマイクロホンとして構成され、
前記ロボット制御装置は、前記音データ及び前記位置データに基づき、前記ロボットの動作を制御可能である、請求項1又は2に記載のロボット。」
2 補正の適否
本件補正の請求項1に関する補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「複数のセンサ」について、その「少なくとも一つ」を特定するのではなく、本件補正前の請求項3に記載された「前記ロボットの一部に取り付けられ、前記ロボットの一部での音を示す音データを前記状態データとして取得可能であるマイクロホン」を有するとの事項を付加することで複数のセンサの全てを限定するとともに、「ロボットの動作を制御可能」とするためのパラメータについて、位置データ及び加速度データに加えて、本件補正前の請求項3に記載された「前記音データ」に基づくとの事項を付加して限定するものである。
すなわち、実質的に本件補正前の請求項1に記載された発明を本件補正前の請求項3に記載された事項により限定したものであり、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
なお、本件補正の請求項1に関する補正は、複数のセンサについて「少なくとも一つ」を特定するものではなく、その全てを特定するものであることに照らせば、本件補正前の請求項1を削除し、請求項1を引用する請求項3を新たに請求項1とするものではないから、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものには該当しない。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項等
ア 引用文献2
(ア)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由(下記第3の2を参照。)で主引用発明が記載された文献として引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、引用文献2(特開2005-260176号公報)には、図面とともに、次の記載がある(なお、下線部は当審で付した。以下同様。)。
「【0001】
本発明は、搬送装置によって予め定められる搬送位置の位置情報を取得する搬送位置の位置情報取得方法に関する。」
「【0003】
基板搬送装置は、各処理部における所要の受渡し部に対して、基板を正確な位置に搬送することが必要とされる。基板を正確な位置に搬送できないと、基板に処理ムラを生じさせたり、受渡し部からの基板の脱落が生じたり、不要なパーティクルが付着したりするおそれがある。」
「【0005】
従来の第2の位置教示方法として、搬送すべき搬送位置に被検出部を設け、基板搬送装置に保持させた治具を用いて、治具が被検出部を検出したときのエンコーダ値に基づいて、搬送位置の情報を取得する方法がある(たとえば特許文献1)。
【0006】
図23は、従来技術における治具を用いて搬送位置情報を取得する手順を示すフローチャートである。まずステップf0で、基板搬送装置および基板処理装置を設置して、搬送位置の取得動作が可能な状態となると、ステップf1に進み、搬送位置の取得動作を開始する。ステップf1では、作業者は、基板を搬送すべき搬送位置に被検出部を設置し、ステップf2に進む。ステップf2では、作業者が基板搬送装置のハンドに被検出体を検出するための治具を搭載し、ステップf3に進む。」
「【0044】
図1は、本発明の実施の一形態である搬送装置20の搬送位置情報の取得手順を示すフローチャートであり、図2は、搬送装置20を示す斜視図である。搬送装置20は、たとえば半導体ウェハまたは液晶用ガラスなどの基板を搬送する基板搬送装置である。本実施の形態では搬送装置20は、半導体ウェハを搬送する。搬送装置20は、ハンド22に半導体ウェハを保持し、ハンド22とともに半導体ウェハを任意の位置に移動させる。たとえば半導体ウェハは、厚さが0.7mmであり、直径が200mmまたは300mmの円板状に形成される。なお、搬送装置20は、複数のハンド22を有してもよい。
【0045】
搬送装置20は、床などの予め定める位置に固定される基台と、半導体ウェハを着脱可能に保持する保持部となるハンド22と、ハンド22が連結される連結部25を有するアーム23と、アーム23を支持する支持体24とを有する。基台には、旋回軸線J1が予め設定される。本実施の形態では、旋回軸線J1は鉛直に延びる。
【0046】
支持体24は、基台に対して旋回軸線J1まわりに角変位可能に設けられる。また支持体24は、旋回軸線J1に垂直に延びる半径軸線J2が予め設定される。基台に対して支持体24が旋回軸線J1まわりに角変位すると、半径軸線J2は支持体24とともに、旋回軸線J1まわりに角変位する。
【0047】
アーム23は、支持体24に対して旋回軸線J1に沿う方向、すなわち鉛直方向に連結部25を移動可能に構成される。またアーム23は、支持体24に対して、半径軸線J2に沿う半径方向rに連結部25を移動可能に構成される。
【0048】
これによってアーム23の連結部25に連結されるハンド22は、旋回軸線J1を基準とする円筒座標系に関する任意の位置に移動することができる。搬送装置20は、上述のようなアーム23および支持体24の構成に限らず、ハンド22を任意の位置に移動可能な構成であればよい。なお、本発明では、旋回軸線J1に沿う方向を上下方向Zとする。また旋回軸線J1を中心とする周方向を周方向Wとし、半径軸線J2に沿う方向を半径方向rとする。
【0049】
ハンド22は、略U字状に形成される。ハンド22は、基部26と、一対の延在部分27,28とを有する。基部26は、アーム23の連結部25に連結される。一対の延在部分27,28は、水平に延びる乗載面が形成される。乗載面は、半導体ウェハ22を乗載する。一対の延在部分27,28は、基部26から半径軸線J2に沿って延び、旋回軸線J1から遠ざかるにつれて、互いに周方向Wに離反する。」
「【0051】
搬送装置20は、搬送体ウェハの処理設備内に設置される。処理設備の内部空間は、粉塵を低減したクリーンな雰囲気に保たれ、半導体ウェハを処理する処理装置が設けられる。搬送装置20は、収容容器から処理設備内の配置位置に半導体ウェハを移載する。また所定の処理が完了した半導体ウェハを、処理設備内の配置位置から収容容器に移載する。また搬送装置20は、予め定める手順に従って処理装置に設けられる複数の処理位置間で、半導体ウェハを順次移載する。処理装置は、レジスト塗布処理、露光処理、現像処理および熱処理などを行う。上述した配置位置および処理位置が、搬送位置となる。
【0052】
図3は、搬送装置20の電気的構成を示すブロック図である。搬送装置20は、ハンド22を基台に対して変位駆動する駆動手段を有する。具体的には、搬送装置20は、基台に対して周方向Wに支持体24を変位駆動する旋回駆動手段30と、基台に対して上下方向Zにアーム23を変位駆動する上下駆動手段31と、支持体25に対して半径方向rにアーム23の連結部25を変位駆動する半径方向駆動手段32とを有する。各駆動手段30~32は、サーボモータまたは空気圧シリンダなどのアクチュエータによって実現される。
【0053】
旋回駆動手段30は、搬送位置から離反した旋回軸線J1まわりにハンド22を角変位駆動する第1駆動手段となる。また上下駆動手段31は、旋回軸線J1に沿ってハンド22を変位駆動する第2駆動手段となる。また半径方向駆動手段32は、旋回軸線J1に対して垂直な半径方向rにハンド22を変位駆動する第3駆動手段となる。
【0054】
搬送装置20は、基台に対するハンド22の位置情報を検出する位置情報検出手段を有する。位置情報検出手段は、上述した第1~第3駆動手段30~32がサーボモータであると、各サーボモータに設けられるエンコーダによって実現される。
【0055】
この場合、搬送装置20は、旋回方向エンコーダ33と、上下方向エンコーダ34と、半径方向エンコーダ35とを含む。旋回方向エンコーダ33は、ハンド22の周方向Wに関する位置情報を検出する。また上下方向エンコーダ34は、ハンド22の上下方向Zに関する位置情報を検出する。また半径方向エンコーダ35は、ハンド22の半径方向rに関する位置情報を検出する。
【0056】
搬送装置20は、搬送位置の位置情報を取得するためターゲット治具21を検出する第1非接触センサ40と第2非接触センサ41とを有する。第1非接触センサ40は、アーム23に設けられ、半径軸線J2に平行または同軸に進むレーザ光を用いてターゲット治具21を検出する。第2非接触センサ41は、ハンド22に設けられ、半径軸線J2と旋回軸線J1とを含む平面に垂直な方向に進むセンサ光を用いてターゲット治具21を検出する。センサ光は、半導体レーザまたは発光ダイオードなどを発光源とする光である。」
「【0058】
搬送装置20は、制御手段52を有する。制御手段52は、各エンコーダ33~35から与えられる位置情報に基づいて、各駆動手段30~32を制御する。また制御手段52は、入力手段50から与えられる作業者の指令に応じて各駆動手段30~32と、各非接触センサ40,41とを制御する。また制御手段52は、動作状態を示す情報を表示手段51に表示させる。
【0059】
制御手段52は、入力部53と、出力部54と、演算部55と、記憶部56とを含む。入力部53は、各エンコーダ33~35および各非接触センサ40,41から、ターゲット治具21に関する位置情報の検出結果が与えられる。出力部54は、演算部55によって算出された演算指令を各駆動手段30~32および各非接触センサ40,41に与える。たとえば出力部54は、演算された駆動量を各駆動手段30~32にそれぞれ与えるとともに、表示手段51に動作状態を表示させる。」
「【0061】
このような制御手段52は、コンピュータ、たとえばロボットコントローラによって実現される。たとえば入力部53および出力部54は、インターフェースボードなどで実現される。また演算部55は、マイクロコンピュータなどによって実現される演算回路、たとえばCPU(Central Processing Unit)によって実現され、記憶部56は、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only memory)などの記憶回路によって実現される。」
「【0067】
図6は、第2非接触センサ41の取付位置を示す斜視図である。第2非接触センサ41は、第2投光部60と、第2受光部61と、アンプユニット62とを含む。第2非接触センサ41は、予め定める並列方向、本実施の形態では上下方向Zに並ぶ半導体ウェハの配置状態を検出するために用いられる。すなわち第2非接触センサ41は、半導体ウェハのマッピングに用いられる。」
「【0132】
以上のような本実施の形態の搬送装置20およびその搬送位置情報の取得動作は、発明の例示に過ぎず、発明の範囲内で構成を変更することができる。本実施の形態では、搬送装置20は、半導体ウェハなどの基板を搬送するとしたが、基板以外を搬送する装置であってもよい。たとえば手先に加工具を搭載し、加工具を搬送する加工装置であってもよい。また本実施の形態では、旋回軸線J1、半導体ウェハの軸線J3およびターゲット治具70の軸線J4が上下方向Zに延びるとしたが、上下方向以外に延びてもよい。また搬送装置の構成についても、ハンドを3次元的に搬送可能であればよい。」
「【図2】
[図:0001422088000001.jpg]
」
「【図3】
[図:0001422088000002.jpg]
」
(イ)引用文献2の記載事項の整理
A 段落【0045】~【0048】、【0052】~【0055】、【0061】、図2等から、搬送装置20は半導体ウェハに対して搬送などの作業を行うものであって、ロボットコントローラによって実現される制御手段52を有し、さらに、搬送装置20は、基台に対して旋回軸線J1まわりに角変位可能に設けられる支持体24、支持台24に対して旋回軸線J1に沿う鉛直方向に連結部25を移動可能に構成されるアーム23、半径軸線J2に沿う半径方向に移動可能に連結部25が直列的に接続されたリンク構造を有する複数の関節軸を有するロボットアームを備えたものであるといえる。そして、このロボットアームは、連結部25の先端にハンド22が連結されるとともに、旋回駆動手段30、上下駆動手段31、半径方向駆動手段32のサーボモータを備えているものであって、旋回駆動手段30で旋回軸線J1まわりに回転駆動され、さらに鉛直方向に上下駆動手段31、半径軸線J2に沿う半径方向に半径方向駆動手段32で駆動されることで、ハンド22を任意の位置に移動可能としている。さらに、段落【0132】に「搬送装置の構成についても、ハンドを3次元的に搬送可能であればよい。」と記載されていることから、搬送装置20を、基板を搬送する一般的な多関節ロボットとすることが示唆されているともいえる。
B エンコーダはモータの回転位置を示す回転位置データを取得するためのものであるから、段落【0054】、【0055】における、旋回方向エンコーダ33、上下方向エンコーダ34、半径方向エンコーダ35は、サーボモータ(旋回駆動手段30、上下駆動手段31、半径方向駆動手段32)の回転位置を示す回転位置データを取得するためのものであることは明らかである。
C 図3から、旋回方向エンコーダ33、上下方向エンコーダ34、半径方向エンコーダ35と第1非接触センサ40、第2非接触センサ41がラインを有する通信装置で接続され、当該通信装置は、ラインにより全てのエンコーダを接続するものであることが看取できる。
D 段落【0054】、【0058】等から、制御手段52は、旋回方向エンコーダ33、上下方向エンコーダ34、半径方向エンコーダ35で検出される、ハンド22よりも基端側で直列的に接続された全ての関節軸の旋回駆動手段30、上下駆動手段31、半径方向駆動手段32の回転位置データに基づき、ハンド22の位置を示す位置データを導出可能であり、当該位置データに基づき、搬送装置20の動作を制御可能であることが理解できる。
(ウ)引用文献2発明
上記(ア)、(イ)から、引用文献2には、次の発明(以下「引用文献2発明」という。)が記載されていると認められる。
「半導体ウェハに対して作業を行うための搬送装置20であって、
複数の関節軸を有するロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に設けられるハンド22と、
前記関節軸を回転駆動するための旋回駆動手段30、上下駆動手段31、半径方向駆動手段32と、
前記旋回駆動手段30、上下駆動手段31、半径方向駆動手段32の回転位置を示す回転位置データを取得するための旋回方向エンコーダ33、上下方向エンコーダ34、半径方向エンコーダ35と、
前記搬送装置20の位置を示す搬送位置を取得するための第1非接触センサ40、第2非接触センサ41と、
前記旋回方向エンコーダ33、上下方向エンコーダ34、半径方向エンコーダ35と前記第1非接触センサ40、第2非接触センサ41が接続されたラインを有する通信装置と、
前記通信装置を介して前記回転位置データ及び前記搬送位置を取得可能であり、前記搬送装置20の動作を制御するための制御手段52と、を備え、
前記ロボットアームは、前記関節軸がリンクを介して直列的に接続されたリンク構造を有し、
前記通信装置は、前記ラインにより全ての前記エンコーダを接続し、
前記制御手段52は、前記ハンド22よりも基端側で直列的に接続された全ての前記関節軸の旋回駆動手段30、上下駆動手段31、半径方向駆動手段32の回転位置データに基づき、前記ハンド22の位置を示す位置データを導出可能であり、前記位置データに基づき、前記搬送装置20の動作を制御可能である、搬送装置20。」
イ 引用文献1
(ア)引用文献1の記載事項
同じく原査定に引用され(下記第3の2を参照。)、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(特開2013-84111号公報)には、次の記載がある。
「【0019】
<<実施形態1>>
(システム構成)
図1は本実施形態に係るロボットシステムの概要図である。本ロボットシステムは、コントローラ1、視覚モジュール2、関節モジュール3及び4、エンドエフェクタ5及び6により構成される。コントローラ1は、ロボットシステム全体の動作制御を実施する。また、不図示の上位の管理システムへ、作業進捗やエラー情報等を随時送信する。視覚モジュール2は、加工対象物8のようなロボットシステムが影響を及ぼす外部環境の取得(撮影)を実施する。関節モジュール3及び関節モジュール4は、ロボットアームの関節の角度制御を実施する。エンドエフェクタ5は、図示するようロボットアーム先端に取り付けられ、加工対象物8に対して所定の加工を実行する。エンドエフェクタ6は、エンドエフェクタ5とは異なる所定の加工を実行することができるエンドエフェクタである。エンドエフェクタ5とエンドエフェクタ6は、作業内容に応じて人手を介さず自律的に交換される。なお、コントローラ1と視覚モジュール2や関節モジュール3等を含むロボット本体とは、配線7により接続される。配線7を介してコントローラ1と各モジュールとの間の信号の伝送が行われる。
【0020】
図2は本実施形態のロボットシステムの接続形態例を表す構成図である。本ロボットシステムは、親局10と子局A20~子局E60を有する通信システムである。親局10はコントローラ1に含まれるものとする。また、子局A20は視覚モジュール2に、子局B30は関節モジュール3に、子局C40は関節モジュール4に、子局D50はエンドエフェクタ5に、そして子局E60はエンドエフェクタ6に、それぞれ含まれるものとする。」
「【0088】
<<実施形態3>>
実施形態1、実施形態2では、親局及び各子局がデイジーチェーン接続され、各子局にてデータ中継を行うロボットシステムについて説明した。しかし本発明はこれに限らず、1つの伝送ケーブル上に複数の端局を接続したマルチドロップ接続や、無線接続された場合でも適用可能である。本実施形態では、親局及び各子局がマルチドロップ接続されたロボットシステム、及びその伝送手順について説明する。本実施形態のロボットシステムの概要は、実施形態1と同様であるため、詳細については省略する。なお伝送方式にはTDMA(時分割多元接続)方式を用いるものとして説明する。
【0089】
本実施形態では、図17に示すように、1本または複数本のバスに親局と子局が接続する接続形態を用いる場合について説明する。なお、図17における親局10のコネクタ15及び各子局のコネクタ25~65は、バス接続により信号の送受信を行うためのコネクタである。これ以外の構成として、回線の親局方向への信号送信を上り、及び親局方向からの信号送信を下りと定義することにより、上り用のコネクタと下り用のコネクタを用いて信号の送受信を実行することも可能である。」
「【図17】
[図:0001422088000003.jpg]
」
(イ)引用文献1記載の技術的事項
上記記載等から、引用文献1には、次の技術的事項(以下「引用文献1記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「ロボットシステムにおいて、子局Aである視覚モジュール2、子局Bである関節モジュール3、子局Cである関節モジュール4、子局Dであるエンドエフェクタ5には、それぞれモータ及びセンサが接続されており、これらのモータ及びセンサを接続するラインが、マルチドロップ接続されたマルチドロップラインであり、全てのセンサがマルチドロップラインによりマルチドロップ接続していること。」
ウ 引用文献3
(ア)引用文献3の記載事項
同じく原査定に引用され(下記第3の2を参照。)、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献3(特開2009-233789号公報)には、次の記載がある。
「【0016】
搬送用ハンド3の基部31にはセンサ6が備えられており、このセンサ6によって搬送用ハンド3の動作の変化量を検出している。
本実施例のセンサには、加速度センサが用いられており、例えばジャイロセンサを使用して角速度の変化量を検出することで搬送用ハンドの動作の変化量を検出している。勿論、ジャイロセンサ以外の加速度センサを使用して、又は加速度センサ以外のセンサを使用して搬送用ハンドの動作の変化量を測定しても同様の効果を得ることができる。」
「【0024】
次に、図3を用いて、本発明の搬送用ロボットとコントローラとの信号の入出力関係を説明する。
本発明のコントローラ7は、搬送用ロボット1に信号を送信して搬送用ロボット1が所定の動作を行うように駆動制御する。コントローラ7によって駆動制御される搬送用ロボット1は、搬送用ハンド3を水平方向に回動又は延伸させることができる。この搬送用ロボット1において、基板を所望の位置に搬送するために、搬送用ハンド3を例えばX軸方向に延伸させた場合、図2に示すように、搬送用ハンド3の先端が撓むこととなる。このとき搬送用ハンド3上に備えたセンサによって、搬送用ハンド3の加速度を検出する。通常、搬送用ロボット1を工場内等に設置した時に、予めこの初期状態のときの搬送用ハンド3の加速度をコントローラ7に記憶しておく。コントローラ7は、この記憶した加速度の値とロボットが実際に駆動した時の搬送用ハンド3を延伸したときの加速度とを比較して、その差分から搬送用ハンド3の撓み量を推測して搬送用ハンド3の位置を補正するように搬送用ロボット1に信号を送信する。
【0025】
通常、搬送用ロボット1を駆動制御する際には、予め位置設定をして駆動制御するティーチングプレイバックによって、搬送用ハンド3を所望の搬送位置に駆動させている。このとき、前述した加速度の所定値をティーチングポイント毎にコントローラ7に記憶させておき、実際に搬送用ハンド3を駆動制御させるときに、リアルタイムで加速度の差分を演算して搬送用ハンド3の位置を調整することができる。」
「【0027】
このように、所定の位置に搬送用ハンド3を延伸するときに、予め記憶させる加速度の所定値と実際に搬送用ハンド3を駆動させたときの加速度の値とを比較してその差分から搬送用ハンド3の撓み量を求め、搬送用ハンド3の位置を補正することで搬送用ハンド3が基板を収納するカセット等の他の周辺機器に衝突したり、搬送用ハンド自身が破損することを未然に防止することができる。」
「【図1】
[図:0001422088000004.jpg]
」
(イ)引用文献3記載の技術的事項
上記記載等から、引用文献3には、次の技術的事項(以下「引用文献3記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「搬送用ロボット1において、前記搬送用ロボット1の一部に取り付けられ、前記搬送用ロボット1の一部の加速度を示す加速度データを取得可能であるセンサ6を有し、センサ6に基づいて搬送用ハンド3の撓み量を推測して、搬送用ハンド3の位置を補正して搬送用ロボット1の動作を制御可能であること。」
エ 引用文献4
(ア)引用文献4の記載事項
同じく原査定に引用され(下記第3の2を参照。)、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献4(特開2001-223254号公報)には、次の記載がある。
「【0014】ウエハ10を搬送するウエハ搬送装置11は振動センサ13を持ったツィーザ12を垂直方向および水平方向に移動させるためのロボット15を備えている。すなわち、ロボット15の最終段に設置された取付ブロック14にはツィーザ12が基端部を固定されて水平に支持されている。本実施の形態においては、ツィーザ12は五本が垂直方向に互いに等間隔に配置されており、五つのブロックが組み合わされた取付ブロック14にそれぞれ水平に支持されている。なお、五本のツィーザを区別して説明する必要がある場合には、最上段側のツィーザから順に第一段ツィーザ12a、第二段ツィーザ12b、第三段ツィーザ12c、第四段ツィーザ12d、第五段ツィーザ12eという。」
「【0016】第一段ツィーザ12a~第五段ツィーザ12eの基端部上面には各ツィーザの振動を検出する振動センサ13a~13eがそれぞれ設置されている。振動センサ13は圧電素子や小型のマイクロフォンが用いられて構成されており、ツィーザ12の振動を検出して電気信号に変換しコントローラ(図示せず)に送信するようになっている。コントローラは各振動センサ13a~13eの検出出力を記録するメモリと、各振動センサ13a~13eの検出出力に対して予め設定された設定値と各振動センサ13a~13eの現在の検出出力とを比較して各振動センサ13a~13eの検出出力に対して異常の有無を判定する判定手段と、判定手段の判定結果を作業者に告知する出力手段とを備えている。」
「【0030】以上のようにして第三段ツィーザ12cに付帯された振動センサ13cからの検出出力により図5(e)に示されている擦り信号22が抽出された場合には、コントローラは「第三段ツィーザ12cの先端側が相対向するウエハ10に接触して擦すった」と判定し、その旨を表示手段によって表示し、作業者に通報する。この場合、第三段ツィーザ12cは上側または下側に撓むことがあるため、第三段ツィーザ12cの先端側が相対向する上下のウエハ10のうちいずれかに傷がついたと通報することになる。」
「【0050】第三ステップS3において、コントローラは表示手段をして異常が発生している旨を通報させ、ウエハ搬送装置11による搬送制御フローを終了する。」
「【0058】第四ステップS4において、コントローラは表示手段をして異常が発生している旨を通報させ、ウエハ搬送装置11による搬送制御フローを終了する。」
(イ)引用文献4記載の技術的事項
上記(ア)について、振動センサ13は、マイクロフォンで構成され(段落【0016】)、擦り信号22を検出する(段落【0030】等)ものである。
また、引用文献4の段落【0050】、【0058】に記載された、異常が発生している旨を通報させ、ウエハ搬送装置11による搬送制御フローを終了することは、ウエハ搬送装置11の動作を制御する(例えば、停止する)ことを含むものと認められる。
したがって、引用文献4には、次の技術的事項(以下「引用文献4記載の技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「ウエハ搬送装置11において、前記ウエハ搬送装置11の一部に取り付けられ、前記ウエハ搬送装置11の一部での振動に伴う擦り信号22を取得可能なマイクロフォンである振動センサ13を有し、前記擦り信号22に基づき、ロボットの動作を制御可能であること。」
(3)本件補正発明と引用文献2発明との対比
ア 本件補正発明と引用文献2発明とを対比する。
(ア)引用文献2発明の「半導体ウェハ」は本件補正発明の「ワーク」に相当し、以下同様に、「搬送装置20」は「ロボット」に、「ハンド22」は「エンドエフェクタ」に、「旋回駆動手段30、上下駆動手段31、半径方向駆動手段32」はいずれもサーボモータであるから「モータ」に、「旋回方向エンコーダ33、上下方向エンコーダ34、半径方向エンコーダ35」は「エンコーダ」に、「第1非接触センサ40、第2非接触センサ41」は「複数のセンサ」に、「制御手段52」は「ロボット制御装置」に、それぞれ相当する。また、引用文献2発明の「前記搬送装置20の位置を示す搬送位置」は、「状態データ」の「状態」が「物事のありさま。ようす。」[広辞苑 第七版]を意味し広義に解されるから、本件補正発明の「前記ロボット又は前記ワークの状態を示す状態データ」に包含されると認められる。
(イ)通信装置について、引用文献2発明の「前記旋回方向エンコーダ33、上下方向エンコーダ34、半径方向エンコーダ35と前記第1非接触センサ40、第2非接触センサ41が接続されたラインを有する」ことと、本件補正発明の「前記エンコーダと前記複数のセンサがマルチドロップ接続されたマルチドロップラインを有する」こととは、「前記エンコーダと前記複数のセンサが接続されたラインを有する」ことでは共通し、同様に「前記ラインにより全ての前記エンコーダを接続」することと「前記マルチドロップラインにより全ての前記エンコーダをマルチドロップ接続」することとは「前記ラインにより全ての前記エンコーダを接続」することでは共通する。
(ウ)引用文献2発明の「前記位置データに基づき、前記搬送装置20の動作を制御可能である」ことと、本件補正発明の「前記位置データ、前記加速度データ、及び前記音データに基づき、前記ロボットの動作を制御可能である」こととは、「前記位置データに基づき、前記ロボットの動作を制御可能である」ことでは共通する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用文献2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「ワークに対して作業を行うためのロボットであって、
複数の関節軸を有するロボットアームと、
前記ロボットアームの先端に設けられるエンドエフェクタと、
前記関節軸を回転駆動するためのモータと、
前記モータの回転位置を示す回転位置データを取得するためのエンコーダと、
前記ロボット又は前記ワークの状態を示す状態データを取得するための複数のセンサと、
前記エンコーダと前記複数のセンサが接続されたラインを有する通信装置と、
前記通信装置を介して前記回転位置データ及び前記状態データを取得可能であり、前記ロボットの動作を制御するためのロボット制御装置と、を備え、
前記ロボットアームは、前記関節軸がリンクを介して直列的に接続されたリンク構造を有し、
前記通信装置は、前記ラインにより全ての前記エンコーダを接続し、
前記ロボット制御装置は、前記エンドエフェクタよりも基端側で直列的に接続された全ての前記関節軸のモータの回転位置データに基づき、前記エンドエフェクタの位置を示す位置データを導出可能であり、前記位置データに基づき、前記ロボットの動作を制御可能である、ロボット。」
<相違点1>
エンコーダと複数のセンサを接続する通信装置のラインが、本件補正発明では「マルチドロップ接続されたマルチドロップライン」であり、全てのエンコーダが「マルチドロップライン」により「マルチドロップ接続し」ているのに対し、引用文献2発明では、旋回方向エンコーダ33、上下方向エンコーダ34、半径方向エンコーダ35と第1非接触センサ40、第2非接触センサ41とを接続するラインがマルチドロップラインであるか不明な点。
<相違点2>
本件補正発明は、「前記ロボットの一部に取り付けられ、前記ロボットの一部の加速度を示す加速度データを前記状態データとして取得可能である加速度センサと、前記ロボットの一部に取り付けられ、前記ロボットの一部での音を示す音データを前記状態データとして取得可能であるマイクロホン」を有し、「前記位置データ、前記加速度データ、及び前記音データ」に基づき、ロボットの動作を制御可能であるのに対し、引用文献2発明は、加速度センサ及びマイクロホンを備えておらず、位置データに基づいてはいるものの、位置データ、加速度データ、及び音データに基づいて、ロボットの動作を制御可能とするものではない点。
(4)判断
以下、各相違点について検討する。
ア 相違点1について
上記(2)イ(イ)に示したとおり、引用文献1には、「ロボットシステムにおいて、子局Aである視覚モジュール2、子局Bである関節モジュール3、子局Cである関節モジュール4、子局Dであるエンドエフェクタ5には、それぞれモータ及びセンサが接続されており、これらのモータ及びセンサを接続するラインが、マルチドロップ接続されたマルチドロップラインであり、全てのセンサがマルチドロップラインによりマルチドロップ接続していること。」との技術的事項が記載されているところ、引用文献2発明と引用文献1記載の技術的事項とは、センサの検出情報を用いてモータで関節を駆動してエンドエフェクタの位置を制御する点で共通するから、引用文献2発明に引用文献1記載の技術的事項を適用して、エンコーダやセンサを接続する通信装置のラインをマルチドロップラインとし、エンコーダやセンサをマルチドロップラインで接続する構成として、相違点1に係る本件補正発明とすることは、当業者が容易になし得るものである。
イ 相違点2について
ロボットの技術分野において、ロボットが多様なセンサを備え、多様なセンサの検出情報を用いてロボットの動作を制御可能とすることは良く知られている技術思想であるところ、上記(2)ウ(イ)及びエ(イ)に示したとおり、引用文献3及び引用文献4には、「搬送用ロボット1において、前記搬送用ロボット1の一部に取り付けられ、前記搬送用ロボット1の一部の加速度を示す加速度データを取得可能であるセンサ6を有し、センサ6に基づいて搬送用ハンド3の撓み量を推測して、搬送用ハンド3の位置を補正して搬送用ロボット1の動作を制御可能であること。」及び「ウエハ搬送装置11において、前記ウエハ搬送装置11の一部に取り付けられ、前記ウエハ搬送装置11の一部での振動に伴う擦り信号を取得可能なマイクロフォンである振動センサ13を有し、前記擦り信号に基づき、ロボットの動作を制御可能であること。」との技術的事項が記載されている。
ここで、上記引用文献4記載の技術的事項における“マイクロフォン(マイクロホン)”の用語は、JIS Z 8106:2000 音響用語における3.6マイクロホンのIEV番号801-26-01(18ページ)によれば、「音響振動から電気信号を得る電気音響変換器。」であり、“音響振動”の用語は、同3.1一般のIEV番号801-21-02(2ページ)によれば、「a)聴覚を引き起こさせる音響振動」、あるいは「b)音響振動によって引き起こされる聴覚。」であるから、当該技術的事項のマイクロフォンが取得する擦り信号は聴覚を引き起こさせる音響振動であって、音データであるといえる。
そうすると、引用文献2発明に、多様なセンサの検出情報を用いてロボットの動作を制御可能とすることについての引用文献3、4記載の技術的事項を適用して、相違点2に係る本件補正発明とすることは、当業者が容易になし得るものである。
また、引用文献2~4の記載等を参酌しても、引用文献2発明に引用文献3、4記載の技術的事項を適用することを妨げるような特段の事情は見当たらない。
ウ 作用効果について
請求人は、審判請求書の5~6ページにおいて、本願の【0039】に記載された、「具体的には、例えば、ロボット制御装置50は、加速度データによって認識可能なエンドエフェクタ26の振動、及び、音声データによって認識可能なエンドエフェクタ26での音声が、それぞれ、予め定められた許容範囲内にあるとき、存在データ及び位置データに基づきロボットの動作を制御してもよい。これにより、ロボット制御装置50は、精度良くロボット10の動作を制御することが可能となる。」との作用効果は格別であって、引用文献1~4から容易ではない旨を主張しているから、本件補正発明による作用効果についても検討する。
本件補正発明では「前記加速度データ及び前記位置データに基づき、前記ロボットの動作を制御可能である」ことが特定されている程度であり、エンドエフェクタ26の振動及びエンドエフェクタ26での音(音声)がそれぞれ予め定められた許容範囲内にあるとき、存在データ及び位置データに基づきロボットの動作を制御することは特定されていないから、上記段落【0039】の記載のように制御することにより精度良くロボット10の動作を制御することが可能となる旨の格別の作用効果についての主張は本件補正発明に基づくものと認めることはできない。
さらに、仮に上記段落【0039】に記載された作用効果が、本件補正発明により奏されるものであるとしても、引用文献2発明に引用文献1、3、4記載の技術的事項を適用したものにおいても同様の作用効果が奏されるものであり、当該作用効果が予測し得ないような格別顕著な作用効果とはいえない。
エ したがって、本件補正発明は、引用文献2発明及び引用文献1、3、4記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下しなければならないものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明1
令和6年1月16日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~5に係る発明は、令和5年8月8日にされた手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、前記第2の1(2)の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
本願発明1についての原査定の拒絶の理由は、本願発明1は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用文献2に記載された発明及び引用文献1、3記載の技術的事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2013-84111号公報
引用文献2:特開2005-260176号公報
引用文献3:特開2009-233789号公報
引用文献4:特開2001-223254号公報
(なお、引用文献4は、本件補正前の請求項3~5について引用した文献であり、本願発明1については引用しない。)
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1~3の記載事項等は、前記第2の2(2)に記載したとおりである。
4 対比及び判断
本願発明1は、前記第2の2で検討した本件補正発明から、「複数のセンサ」についての、「前記ロボットの一部に取り付けられ、前記ロボットの一部での音を示す音データを前記状態データとして取得可能であるマイクロホン」を有するとの限定事項を削除するとともに、「ロボットの動作を制御可能」とするためのパラメータについて、「前記音データ」に基づくとの限定事項を削除したものであり、さらに、ロボットの一部に取り付けられる「複数のセンサ」につき、それらの全てを特定していたものを、それらのうち「少なくとも一つ」としたものである。
そうすると、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の2(3)、(4)で検討したとおり、引用文献2発明及び引用文献1、3、4記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、引用文献2発明及び引用文献1、3記載の技術的事項(引用文献4記載の技術的事項は上記限定事項についてのものであるから、本願発明1については引用しない。)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-000682