特許拒絶査定不服審判
2023-017033
ロボットシステム、及び美容処置を行う方法
- 審判番号
- 2023-017033
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-518791
- 請求日
- 2023年10月06日
- 審決日
- 2025年10月29日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ウィンク・ロボティクス
- 【請求人代理人】山本 修
- 【請求人代理人】宮前 徹
- 【請求人代理人】松尾 淳一
- 【請求人代理人】小野 達己
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 田々井 正吾
- 審判官 山田 康孝
- 分類
- P18 .121-WZ (B25J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-518791「ロボットシステム、及び美容処置を行う方法」拒絶査定不服審判事件〔2020年(令和2年)4月30日国際公開、WO2020/086193、令和4年1月13日国内公表、特表2022-504368〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)9月17日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2018年10月25日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする国際特許出願であって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。
1 令和3年 4月 5日
国内書面の提出
2 令和3年 6月 7日
国際出願翻訳文及び特許協力条約第19条補正の翻訳文の提出
3 令和4年 8月23日
手続補正書の提出
4 令和4年12月15日付け
拒絶の理由の通知
5 令和5年 4月21日
意見書及び手続補正書の提出
6 令和5年 5月 30日付け
拒絶をすべき旨の査定(以下「原査定」という。)
7 令和5年10月 6日
拒絶査定不服審判の請求書及び手続補正書の提出
8 令和6年 9月10日付け
当審より拒絶の理由の通知
9 令和7年 3月10日
意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~15に係る発明(このうち請求項1に係る発明を、以下「本願発明1」という。)は、令和6年9月10日付けで当審より通知した拒絶の理由(以下、この拒絶の理由の通知を「当審拒絶理由通知」という。)に対して、令和7年3月10日に提出した手続補正書により補正をした(以下、この補正を「最新補正」という。)特許請求の範囲の請求項1~15に記載した事項により特定されるとおりのものであって、このうち、本願発明1を特定する請求項1に記載した事項は以下のとおりである。(下線は、最新補正により付加された箇所に付したものである。)
「 【請求項1】
人間対象者の一領域に対して睫毛エクステンションをつける作業を行うように構成された本質的に安全なロボットシステムであって、
ロボットと、
前記人間対象者と前記ロボットとの間の安全障壁であって、前記人間対象者と前記ロボットとの間の相互作用を妨げるように構成された、安全障壁と、
前記領域に関する安全荷重に対応して決定された許容荷重または許容圧力と、
前記睫毛エクステンションをつけるために前記ロボットに取り付けられた少なくとも1つのエンドエフェクタであって、前記安全障壁を貫通して延在して前記許容荷重または前記許容圧力を超える荷重が加えられたときに構造的に脱離するように構成され、前記安全障壁により前記領域に制限される、少なくとも1つのエンドエフェクタと
を備え、
前記エンドエフェクタは、前記許容荷重または前記許容圧力を超える荷重が加えられたときに前記ロボットから脱離するように構成された解放機構を含み、それにより前記睫毛エクステンションをつけるときに少なくとも1つの前記エンドエフェクタが前記人間対象者に危害を加えるのを防ぐ、本質的に安全なロボットシステム。」
第3 当審拒絶理由通知
1 理由の概要
当審拒絶理由通知において、最新補正前の本願発明1に対して通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性)本願発明1は、次の2の引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基いて、本願出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
なお、本願は、第1のとおりパリ条約による優先権主張を伴うところ、上記引用文献1及び引用文献2は、いずれも優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である。
2 引用文献
(1)国際公開第2018/093971号[日本語翻訳文として、この国際公開に係る外国語でされた国際特許出願について国内公表を行った特表2019-535929号公報を参照する。]
(2)特開平7-194610号公報
第4 引用文献
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項(下線は当審で付与したもの。以下同じ。)
以下、上記第3の2のとおり、引用文献1の翻訳文として特表2019-535929号公報を参照するため、引用文献1の記載事項の摘記については、引用文献1の原文の抜粋を下記アでは段落番号、同イでは請求項番号と合わせて記載すると共に、上記特表2019-535929号公報の対応する部分の翻訳文を、下記アでは同公報の段落番号、同イでは請求項番号と共に記載した。
ア 発明の詳細な説明
(ア)段落0008
(原文抜粋)[0008] The installation … … are presented.
(翻訳文)【0008】
[0008] まつ毛エクステンションの取り付けは、人間による手動による適用を必要とせずにエクステンションを配置するロボット機構を用いて自動化することができる。しかしながら、非常に高価で複雑なフェイルセーフロボット機構が使用されない限り、ロボットの故障の場合にエクステンションプロセスの安全性を確実にするために安全システムが提供されるべきである。本発明の目的は、本質的に安全なエンドエフェクタとロボット機構に取り付けられた安全障壁とを組み合わせて使用することである。エンドエフェクタが人間に接触した場合に人間に危害を加える危険性なしにまつ毛エクステンションを掴み、人間の顔の近くで動作することができる特定のエンドエフェクタも開示されている。本発明はまた、美容の他の分野にも適用され、とりわけレーザー皮膚処置、入れ墨、エアブラシにおける本質的に安全な動作に関する実施形態が提示されている。
(イ)段落0061
(原文抜粋)[0061] End effctor … … and barriers.
(翻訳文)【0019】
[0061] 図4に、使用中のエンドエフェクタ506が示されている。ここで、ロボット530には、エンドエフェクタ506をロボット530に接続するチューブマウント532が組み込まれている。エンドエフェクタ506は、ギャップ517で物理的障壁515を通って突き出ているが、チューブマウント532もロボット530もギャップ517を通り抜けることはできない。したがって、対象者310がエンドエフェクタ506を除くロボット530の全ての部分から保護されていることを理解するのは簡単である。物理的障壁515は安全障壁の第1の例であり、ロボット530の最大衝撃に耐えるのに十分強い任意の材料から作ることができ、金属やポリカーボネートのような耐衝撃プラスチックが非常に適している。いくつかの実施形態では、ギャップ517が十分に大きくない場合、それは単にロボット530上またはチューブマウント532上により大きなフィーチャーを作成し、ギャップ517を対応する量だけ拡大させるだけのことである。いくつかの実施形態では、対象者301が物理的障壁515に近づきすぎないようにするために、人間リミッタ516が設けられている。たとえロボット530が間隙517に完全に嵌ることができなくても、ロボット530の角が間隙517を通って到達することが可能であり得るので、間隙517が拡大される場合、これは望ましい可能性がある。したがって、ロボット530は、それ自体は人間の使用に対して本質的に安全ではないが、ロボット530、エンドエフェクタ506、物理的障壁515、および人間リミッタ516は本質的に安全なロボットシステムを構成する。将来の実施形態では、これらの構成要素のいくつかを具体的な実施形態において省略することができるが、一般に、適切なエンドエフェクタおよび障壁を用いて本質的に安全になるようにロボットを組み込むことが可能である。
(ウ)段落0062
(原文抜粋)[0062] Figure 5 shows … … software controls.(翻訳文)【0020】
[0062] 図5は、ロボット530が誤って接触点520でエンドエフェクタ506と対象者301とを接触させた状況における結果を示す。ロボット設計における良い習慣はそのような発生を制限するべきであるが、例えば、ロボット手術装置において、取られる極端な予防策がない場合には、エンドエフェクタ506がある時点で対象者301に接触するかもしれないことは当業者にはよく理解されている。しかしながら、エンドエフェクタ506は軽くて可撓性のあるプラスチックから作られているので、エンドエフェクタ506は単に曲がって、対象301にささいな傷害しか与えない。さらに、ロボット530は物理的障壁515と接触しているので、それ以上の動きは妨げられる。したがって、図5の実施形態は、冗長的で厳密なソフトウェア制御よりもむしろ機械的手段によって提供される、対象者に隣接して使用するための本質的に安全なロボットシステムを示す。
イ 特許請求の範囲
(ア)請求項1
(原文抜粋)1. An intrinsivally … … human subject.
(翻訳文)【請求項1】
対象者に対してタスクを実行するように構成された本質的に安全なロボットシステムにおいて、
ロボットと、
前記対象者とロボットとの間の安全障壁であって、前記対象者と前記ロボットとの間の相互作用を妨げて、前記ロボットが前記対象者に危害を加えることを防止するように構成された、安全障壁と、
前記ロボットに取り付けられた少なくとも1つのエンドエフェクタであって、前記安全障壁を通って延びて前記対象者に接触すると容易に変形するように構成され、これにより前記少なくとも1つのエンドエフェクタが前記対象者に危害を加えることを防止する、ロボットシステム。
(イ)請求項24
(原文抜粋)24. An intrinsivally … … safety barrier.
(翻訳文)【請求項24】
対象者象のある領域に対してタスクを実行するように構成された本質的に安全なロボットシステムにおいて、
ロボットと、
前記対象者と前記ロボットとの間の安全障壁であって、前記対象者と前記ロボットとの間の相互作用を防止するように構成された、安全障壁と、
前記領域についての安全な荷重に対応して決定された許容荷重または許容圧力と、
前記ロボットに取り付けられた少なくとも1つのエンドエフェクタであって、前記安全障壁を通って延びて前記許容荷重または前記許容圧力以下で荷重が加えられたときに壊れ、前記安全障壁による前記領域に制限されるように構成された、ロボットシステム。
ウ 図面
(ア)【図4】
[図:0001433416000001.jpg]
(イ)【図5】
[図:0001433416000002.jpg]
(2)引用文献1の記載の整理
ア 翻訳文の【請求項1】、段落【0008】、【0020】の記載からみて、引用文献1には、人間の対象者301のある領域に対して睫毛エクステンションをつける作業を行うように構成された本質的に安全なロボットシステムについて記載されている。
イ 翻訳文の【請求項1】、段落【0008】、【0019】の記載からみて、上記アのロボットシステムは、ロボット530を備える。
ウ 翻訳文の【請求項1】、段落【0019】~【0020】、図4~5の記載からみて、上記アのロボットシステムは、人間の対象者301とロボット530との間の物理的障壁515及び人間リミッタ516であって、前記人間の対象者301と前記ロボット530との間の相互作用を妨げるように構成された、物理的障壁515及び人間リミッタ516を備える。
エ 翻訳文の【請求項1】、【請求項24】、段落【0019】~【0020】、図4~5の記載からみて、上記アのロボットシステムは、睫毛エクステンションをつけるためにロボット530に取り付けられた少なくとも1つのエンドエフェクタ506であって、前記物理的障壁515及び人間リミッタ516を貫通して延在するように構成され、前記物理的障壁515及び人間リミッタ516により前記領域に制限される、少なくとも1つのエンドエフェクタ506を備える。
オ 翻訳文の【請求項1】、段落【0020】、図5の記載からみて、上記エのエンドエフェクタ506は、物理的障壁515及び人間リミッタ516を通って延びて人間の対象者301に接触すると容易に変形するように構成され、それにより睫毛エクステンションをつけるときに少なくとも1つの前記エンドエフェクタ506が前記人間の対象者301に危害を加えるのを防ぐものである。
(3)引用文献1記載の発明
上記(1)~(2)より、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が、記載されている。
「人間の対象者301のある領域に対して睫毛エクステンションをつける作業を行うように構成された本質的に安全なロボットシステムであって、
ロボット530と、
前記人間の対象者301と前記ロボット530との間の物理的障壁515及び人間リミッタ516であって、前記人間の対象者301と前記ロボット530との間の相互作用を妨げるように構成された、物理的障壁515及び人間リミッタ516と、
前記睫毛エクステンションをつけるために前記ロボット530に取り付けられた少なくとも1つのエンドエフェクタ506であって、前記物理的障壁515及び人間リミッタ516を貫通して延在するように構成され、前記物理的障壁515及び人間リミッタ516により前記領域に制限される、少なくとも1つのエンドエフェクタ506と
を備え、
前記エンドエフェクタ506は、前記物理的障壁515及び人間リミッタ516を通って延びて前記人間の対象者301に接触すると容易に変形するように構成され、それにより前記睫毛エクステンションをつけるときに少なくとも1つの前記エンドエフェクタ506が前記人間の対象者301に危害を加えるのを防ぐ、本質的に安全なロボットシステム。」
2 引用文献2
(1)引用文献2の記載事項
ア 発明の詳細な説明
「【0055】また、図14および図15は安全機構付き処置ロボット131を示すものである。この処置ロボット131には多関節型マニピュレータ132が設けられている。このマニピュレータ132には複数のアーム部133がそれぞれ関節部134を介して回動可能に連結されている。
【0056】この場合、アーム部133の関節部134の内部には関節回転用モータ135が配置されている。さらに、各アーム部133のモータ135はケーブル136を介してコントローラ137に接続されている。
【0057】また、最先端のアーム部133の先端部には処置具支持部材138が配設されている。この処置具支持部材138はアーム部133の先端部に固定された電磁石139によって離脱可能に吸着されている。この電磁石139はケーブル140を介してコントローラ137に接続されている。
【0058】さらに、処置具支持部材138にはねじ部材によって処置具141が着脱可能に取付けられている。この処置具141の駆動装置142はケーブル143を介してコントローラ137に接続されている。
【0059】また、処置具141はトラカール144を通じて体内へ挿入されている。このトラカール144の基端部には図15に示すように略箱型の処置具受け部材145が固定されている。この処置具受け部材145の軸心部にはトラカール144に連通する処置具141の挿通孔が形成されている。
【0060】さらに、この処置具受け部材145の内部には内箱146が図15中で上下方向に摺動可能に装着されている。この場合、処置具受け部材145の内底部には内箱146を図15中で上方向に押圧する状態に付勢するばね部材147が配設されている。なお、内箱146の軸心部には処置具141の挿通孔が形成されている。
【0061】次に、上記構成の作用について説明する。まず、マニピュレータ132の各アーム部133の動作時にはこのアーム部133の動きに連動して処置具支持部材138および処置具141が動作する。このとき、あらかじめコントローラ137に設定しておいた値の電流が電磁石139に通電され、処置具支持部材138は所定の吸着力でアーム部133の電磁石139に吸着されている。
【0062】そして、処置具141が体内へ深く挿入されてゆく場合には、処置具141の挿入動作にともない処置具受け部材145の内部の内箱146がばね部材147のばね力に抗して処置具受け部材145の内底部側に押し込み操作される。
【0063】ここで、処置具141が生体組織Hに接触した際に、処置具141が組織Hから受ける反力がしきい値を超え、処置具支持部材138のアーム部133に対するすべり力が上記電磁石139の電磁力を上回る場合には処置具支持部材138とアーム部133との間が分離する。このとき、処置具141を体内に挿入したことにより縮んでいたばね部材147の復元力により、処置具受け部材145の内部の内箱146が上方へ押出される。そのため、処置具141も上へ押出されるので、生体組織Hに過大な力がかかることが防止される。」
イ 図面
「【図14】
[図:0001433416000003.jpg]
【図15】
[図:0001433416000004.jpg]
」
(2)引用文献2記載の技術的事項
上記(1)の記載事項からみて、引用文献2には、処置具141を取り付けられた処置具支持部材138が、多関節マニピュレータ132に連結されたアーム部133の先端部に固定された電磁石139の電磁力によって離脱可能に吸着されている安全機構付き処置ロボット131が記載されている。
そして、上記の処置具141が生体組織Hに接触した際には、処置具141が組織Hから受ける反力がしきい値を超え、処置具支持部材138のアーム部133に対するすべり力が上記電磁石139の電磁力を上回る場合には処置具支持部材138とアーム部133との間が分離し、ばね部材147の復元力により、処置具141が上へ押出されて、生体組織Hに過大な力がかかることが防止されることから、安全機構付き処置ロボット131を操作する術者が誤って、処置具141から生体組織Hに強い力を与えるおそれがなく、処置の安全性を高めることができることが理解される。
したがって、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されている。
「安全機構付き処置ロボット131の処置具141が生体組織Hに接触して、生体組織Hから受ける反力がしきい値を超えた場合には、処置具支持部材138とアーム部133との間が分離するような電磁石139を備え、処置具141が上へ押出されて、生体組織Hに過大な力がかかることが防止され、処置の安全性を高めることができること。」
第5 当審の判断
1 本願発明1と引用発明1の対比
(1)引用発明1の「人間の対象者301」は本願発明1の「人間対象者」に相当し、同様に「ある領域」は「一領域」に相当する。
(2)引用発明1の「ロボット530」は本願発明1の「ロボット」に相当する。
(3)引用発明1の「物理的障壁515及び人間リミッタ516」は本願発明1の「安全障壁」に相当する。
(4)引用発明1の「エンドエフェクタ506」は、「前記許容荷重または前記許容圧力を超える荷重が加えられたときに構造的に脱離するように構成」される点及び「前記許容荷重または前記許容圧力を超える荷重が加えられたときに前記ロボットから脱離するように構成された解放機構を含」む点を除けば、本願発明1の「エンドエフェクタ」に相当する。
2 本願発明1と引用発明1の一致点及び相違点
上記1より、本願発明1と引用発明1は、次の(1)の点で一致し、(2)の点で相違する。
(1)一致点
人間対象者の一領域に対して睫毛エクステンションをつける作業を行うように構成された本質的に安全なロボットシステムであって、
ロボットと、
前記人間対象者と前記ロボットとの間の安全障壁であって、前記人間対象者と前記ロボットとの間の相互作用を妨げるように構成された、安全障壁と、
前記睫毛エクステンションをつけるために前記ロボットに取り付けられた少なくとも1つのエンドエフェクタであって、前記安全障壁を貫通して延在するように構成され、前記安全障壁により前記領域に制限される、少なくとも1つのエンドエフェクタと
を備え、
前記エンドエフェクタは、前記睫毛エクステンションをつけるときに少なくとも1つの前記エンドエフェクタが前記人間対象者に危害を加えるのを防ぐ、本質的に安全なロボットシステム。
(2)相違点
エンドエフェクタが人間の対象者301に危害を加えるのを防ぐために、本願発明1のエンドエフェクタが、領域に関する安全荷重に対応して決定された許容荷重または許容圧力を超える荷重が加えられたときにロボットから脱離するように構成された解放機構を含むのに対して、引用発明1のエンドエフェクタは、対象者に接触すると容易に変形するように構成されている点。
3 相違点の検討
引用文献2記載の技術的事項における「安全機構付き処置ロボット131」が、相違点に係る本願発明1の「ロボット」に相当することは明らかであり、以下同様に、「処置具141」が「エンドエフェクタ」に、「生体組織Hに過大な力がかかる」ことが「人間の対象者301に危害を加える」ことに、「生体組織Hから受ける反力」が「領域に関する安全荷重に対応して決定された許容荷重」に、「しきい値を超えた場合」が「超える荷重が加えられたとき」に、「処置具支持部材138とアーム部133との間が分離するような電磁石139を備」えることが「ロボットから脱離するように構成された解放機構を含」むことに相当するといえる。
そうすると、引用文献2記載の技術的事項は、相違点に係る本願発明1の「エンドエフェクタが人間の対象者301に危害を加えるのを防ぐために、エンドエフェクタが、領域に関する安全荷重に対応して決定された許容荷重または許容圧力を超える荷重が加えられたときにロボットから脱離するように構成された解放機構」に相当するといえる。
引用発明1と引用文献2記載の技術的事項は、いずれも人間の対象者に作業を行うように構成された安全なロボットシステムのエンドエフェクタ(引用発明1ではエンドエフェクタ506、引用文献2記載の技術的事項では処置具141)に関するものであって、エンドエフェクタに許容荷重または許容圧力を超える荷重が加えられた場合(引用発明1ではエンドエフェクタ506に変形が生じる程度に接触した場合、引用文献2記載の技術的事項では生体組織Hから受ける反力がしきい値を超えた場合)に、人間の対象者に危害を加えるのを防ぐことで共通するから、引用発明1の人間の対象者に危害を加えるのを防ぐ本質的に安全なロボットシステムのエンドエフェクタについて、引用文献2記載の技術的事項の処置具141の分離機構(電磁石139)を適用し、相異点に係る許容荷重または許容圧力を超える荷重が加えられたときにロボットから脱離するように構成された解放機構を想到することは、当業者が容易になし得たことである。
4 請求人の意見書における主張
請求人は、令和7年3月10日提出の意見書(以下、単に「意見書」という。)において、概ね、次の主張をするので、以下検討する。
(1)請求人の意見書の主張の内容
本願発明1は、「人間対象者の一領域に対して睫毛エクステンションをつける作業を行う」という構成、「前記睫毛エクステンションをつけるために前記ロボットに取り付けられた少なくとも1つのエンドエフェクタ」という構成、「前記睫毛エクステンションをつけるときに少なくとも1つの前記エンドエフェクタが前記人間対象者に危害を加えるのを防ぐ」という構成、またはこれらに対応する構成を備えており、本願発明は、安全なロボットシステムを提供することができる(例えば、本願明細書段落【0006】参照)。
これに対して、引用文献1及び引用文献2は、本願発明1に係る上記構成を開示も示唆もしていない。
(2)上記(1)の主張の検討
請求人の(1)の主張について検討すると、上記第4の1「引用文献1」で検討したとおり、引用文献1には、睫毛エクステンションをつける作業を行うエンドエフェクタについて記載されているといえるし、人間対象者に危害を加えるのを防ぐための具体的な構成である解放機構については、上記3のとおり、引用文献2記載の技術的事項に示されているから、当該主張は採用することができない。
5 小括
したがって、当審拒絶理由通知で通知した理由(進歩性)のとおり、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて、本願出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-017033