特許拒絶査定不服審判
2025-002164
高度なスキャニング技法を用いるロボットビンピッキングのためのシステム及び方法
- 審判番号
- 2025-002164
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-576977
- 請求日
- 2025年02月12日
- 審決日
- 2026年02月25日
- 公報発行日
- 2026年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】テラダイン、 インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】三好 秀和
- 【請求人代理人】原 裕子
- 【請求人代理人】大渕 一志
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 貴雄
- 審判官 塩澤 如正
- 審判官 青木 良憲
- 分類
- P18 .121-Z (B25J) / P18 .56 -Z (B25J) / P18 .575-Z (B25J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項第4号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-576977「高度なスキャニング技法を用いるロボットビンピッキングのためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔2021年(令和 3年) 1月28日国際公開、WO2021/015967、令和 4年 9月22日国内公表、特表2022-541120〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)7月10日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2019年7月23日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年12月24日 :国内書面の提出
令和6年 3月 5日付け:拒絶理由通知書
令和6年 9月12日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年12月18日付け:拒絶査定
令和7年 2月12日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和7年2月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和7年2月12日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正がされた。(下線部は、補正箇所である。)
「ワークのピック及び設置をプログラムする方法であって、
コンピューティングデバイスが、スキャナ及びロボットを有するロボットシステムを、前記スキャナによってスキャンされる第1のワークが前記ロボットによって前記スキャナから見えるように構成することと、
前記コンピューティングデバイスが、前記スキャナ及び前記ロボットの、互いに対する第1の姿勢を判定することと、
前記ロボットが、前記第1のワークを、前記ロボットに取り付けられたエンドエフェクタを使用してピックすることと、
前記エンドエフェクタに取り付けられた前記第1のワークが、前記スキャナによってスキャンされる所定位置に存在するように、前記コンピューティングデバイスが前記ロボットを動かすことと、
前記第1のワークが前記エンドエフェクタに取り付けられている間に、前記スキャナが前記第1のワークをスキャンすることと、
前記第1のワークの、前記スキャナに対する第2の姿勢を前記コンピューティングデバイスが判定することと、
前記第1の姿勢及び前記第2の姿勢に少なくとも部分的に基づいて、前記第1のワークの、前記ロボットに対する第3の姿勢を、前記コンピューティングデバイスが判定することと、
前記コンピューティングデバイスが、前記コンピューティングデバイスに関連付けられたメモリに前記第3の姿勢を記憶させることと、
前記第1のワークに対して確立された前記ロボットの前記第3の姿勢に少なくとも部分的に基づいて第2のワークのピック及び設置を、前記ロボットが行うことと
を含む、方法。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和6年9月12日にされた手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「ワークのピック及び設置をプログラムする方法であって、
スキャナ及びロボットを有するロボットシステムを、前記スキャナによってスキャンされる第1のワークが前記ロボットによって前記スキャナから見えるように構成することと、
前記スキャナ及び前記ロボットの、互いに対する第1の姿勢を判定することと、
前記第1のワークを、前記ロボットに取り付けられたエンドエフェクタに取り付けることと、
前記エンドエフェクタに取り付けられた前記第1のワークが、前記スキャナによってスキャンされる所定位置に存在するように前記ロボットを動かすことと、
前記第1のワークが前記エンドエフェクタに取り付けられている間に前記第1のワークをスキャンすることと、
前記第1のワークの、前記スキャナに対する第2の姿勢をコンピューティングデバイスによって判定することと、
前記第1の姿勢及び前記第2の姿勢に少なくとも部分的に基づいて、前記第1のワークの、前記ロボットに対する第3の姿勢を判定することと、
前記コンピューティングデバイスに関連付けられたメモリに前記第3の姿勢を記憶させることと、
前記第3の姿勢に少なくとも部分的に基づいて第2のワークのピック及び設置を、前記ロボットを介して行うことであって、前記第2のワークは前記第1のワークと同様であることと
を含む、方法。」
2 補正の適否
本件補正のうち、本件補正前の請求項1に記載された「スキャナ及びロボットを有するロボットシステムを、前記スキャナによってスキャンされる第1のワークが前記ロボットによって前記スキャナから見えるように構成すること」を本件補正後の請求項1に記載された「コンピューティングデバイスが、スキャナ及びロボットを有するロボットシステムを、前記スキャナによってスキャンされる第1のワークが前記ロボットによって前記スキャナから見えるように構成すること」にする補正、以下同様に「前記スキャナ及び前記ロボットの、互いに対する第1の姿勢を判定すること」を「前記コンピューティングデバイスが、前記スキャナ及び前記ロボットの、互いに対する第1の姿勢を判定すること」にする補正、「前記ロボットを動かすこと」を「前記コンピューティングデバイスが前記ロボットを動かすこと」にする補正、「前記第1のワークをスキャンすること」を「前記スキャナが前記第1のワークをスキャンすること」にする補正、「前記第1のワークの、前記スキャナに対する第2の姿勢をコンピューティングデバイスによって判定すること」を「前記第1のワークの、前記スキャナに対する第2の姿勢を前記コンピューティングデバイスが判定すること」にする補正、「前記第1のワークの、前記ロボットに対する第3の姿勢を判定すること」を「前記第1のワークの、前記ロボットに対する第3の姿勢を、前記コンピューティングデバイスが判定すること」にする補正、「前記コンピューティングデバイスに関連付けられたメモリに前記第3の姿勢を記憶させること」を「前記コンピューティングデバイスが、前記コンピューティングデバイスに関連付けられたメモリに前記第3の姿勢を記憶させること」にする補正、「第2のワークのピック及び設置を、前記ロボットを介して行うこと」を「第2のワークのピック及び設置を、前記ロボットが行うこと」にする補正は、それぞれ、各項目を実行する主体が不明確だったものを明確にするための補正であることから、特許法第17条の2第5項第4号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
本件補正のうち、本件補正前の請求項1に記載された「前記第1のワークを、前記ロボットに取り付けられたエンドエフェクタに取り付けること」を本件補正後の請求項1に記載された「前記ロボットが、前記第1のワークを、前記ロボットに取り付けられたエンドエフェクタを使用してピックすること」にする補正は、動作の主体が不明確だったものから「ロボット」が主体であることを明確化した補正であることから、特許法第17条の2第5項第4号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当するとともに、第1のワークのエンドエフェクタへの取り付けが、エンドエフェクタを使用してピックすることに限定されたものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であることから、同法同条同項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものにも該当する。
本件補正のうち、本件補正前の請求項1に記載された「前記第3の姿勢に少なくとも部分的に基づいて」を本件補正後の請求項1に記載された「前記第1のワークに対して確立された前記ロボットの前記第3の姿勢に少なくとも部分的に基づいて」にする補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、「第3の姿勢」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、本件補正のうち、本件補正前の請求項1に記載された「前記第2のワークは前記第1のワークと同様であること」を削除する補正は、不明確な記載を削除して明確化したものであることから、特許法第17条の2第5項第4号の明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものを含むことから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が同法同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2015-199155号公報(平成27年11月12日出願公開。以下「引用文献」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付与。以下同じ。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物体をロボットハンドで把持するための把持位置姿勢を取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工場などの生産ラインにおいて、山積みされたワーク(対象物体)の三次元位置姿勢を認識し、ロボットに取り付けたロボットハンドにより把持を行う、山積みピッキング技術が近年開発されている。山積みされたワークは任意の位置姿勢をとるため、ロボットハンドが把持を行うために動作する位置姿勢もワークの位置姿勢に応じて変化させる必要がある。」
「【0012】
図8は、本実施形態における情報装置1のハードウェア構成図である。同図において、CPU1010は、バス1000を介して接続する各デバイスを統括的に制御する。CPU1010は、読み出し専用メモリ(ROM)1020に記憶された処理ステップやプログラムを読み出して実行する。オペレーティングシステム(OS)をはじめ、本実施形態に係る各処理プログラム、デバイスドライバ等はROM1020に記憶されており、ランダムアクセスメモリ(RAM)1030に一時記憶され、CPU1010によって適宜実行される。また、入力I/F1040は、外部の装置(撮像装置や操作装置など)から情報処理装置1で処理可能な形式で入力信号として入力する。また、出力I/F1050は、外部の装置(表示装置)へ表示装置が処理可能な形式で出力信号として出力する。」
「【0013】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、ロボットアーム先端に取り付けたロボットハンドでまずワークを安定的に把持した状態を作った後で、ワークを計測して位置姿勢を認識し、そのときのロボットハンド・ワーク間の相対位置姿勢を求める。この方法では、ワークを把持した状態からワークおよびロボットハンドの位置姿勢の取得を行うため、双方の位置姿勢の取得時点でのワークの位置姿勢の変化の発生を抑制することができる。また、安定して把持した状態を確認してからワークの認識を行うため確実に把持可能な位置姿勢を教示できる。そのため、安定的かつ効率的に把持位置姿勢の教示を行うことが可能である。
【0014】
図1は、本実施形態における情報処理装置1の構成を示している。同図に示すように、情報処理装置1は、ロボットハンド10、ロボットアーム11、制御部12、計測部14に接続されており、ロボットハンド位置姿勢取得部13、ワーク位置姿勢取得部15、相対位置姿勢導出部16から構成されている。以下、各部について説明する。なお、本実施形態では、ロボットハンド10、ロボットアーム11、制御部12、計測部14を外部装置として説明するが、これらの構成のいずれか、またはすべてを情報処理装置1の構成に含めて、一体として構成してもかまわない。
【0015】
情報処理装置1の各機能部は、CPU1010が、ROM1020に格納されたプログラムをRAM1030に展開し、後述する各フローチャートに従った処理を実行することで実現されている。また例えば、CPU1010を用いたソフトウェア処理の代替としてハードウェアを構成する場合には、ここで説明する各機能部の処理に対応させた演算部や回路を構成すればよい。
【0016】
ロボットハンド10は、ロボットアーム先端のフランジに取り付けられ、ワークの把持動作を行うエンドエフェクタである。たとえば、ワークの平面部に押しつけることで把持を行う磁石式あるいは吸着式ロボットハンドでもよいし、二指、三指といった多数の指の開閉により物体を内側あるいは外側から挟み込むことで把持を行うグリッパー式ロボットハンドでもよい。すなわち、ロボットハンド10は、ワークを保持する保持手段として機能する。その他、ロボットアームに取り付け可能で把持機構を有するエンドエフェクタであればいかなるものであってもよい。以後、ロボットハンドと表現する際には、把持を行う上記エンドエフェクタを指すものとし、ロボットハンドの持つ基準座標系をロボットハンド座標系と呼ぶこととする。また、これ以後、単にロボットと表現する際には、ロボットアームを指すものとする。また、これ以後、単にハンドと表現する際には、ロボットハンドを指すものとする。
【0017】
ロボットアーム11は、先端にフランジを設け、後述するように制御部12によって動作を制御される。上記のようにアーム先端部のフランジにはロボットハンド10が取り付けられている。また、本実施形態ではロボットアーム11の基準位置を原点とした座標系をロボット座標系とする。
【0018】
制御部12は、ロボットアーム11の動作制御を行う。制御部12は、ロボットアーム先端のフランジ中心に設定された位置姿勢を表すパラメータを保持する。つまり、制御部12がロボットアームの動作制御を行うことにより、ロボットアーム先端のフランジに取り付けられたロボットハンド10を制御することになる。ここで、例えば、特開昭61-133409号公報に記載されている方法により、フランジ中心に設定された座標系と、ハンド10の中心に設定されたハンド座標系との相対位置姿勢を求める作業を事前に行っておく。そして、ロボットハンド座標系の位置姿勢を表すパラメータ(すなわち、ロボットハンド10の位置姿勢パラメータ)を後述のロボットハンド位置姿勢取得部13に出力する。また、ユーザはティーチングペンダントやマウス、キーボード等を操作することにより、制御部12へアクセスすることが可能である。これにより、ユーザの所望の任意の位置姿勢にロボットアームを動作制御することができる。また、制御部12はロボットアーム11の動作制御だけでなく、ロボットハンド10によるワークの把持または解放動作も制御する。また、制御部12は、ロボットハンド10の動作をロボットアームと独立して制御してもよい。
【0019】
ロボットハンド位置姿勢取得部13は、制御部12からロボット座標系におけるロボットハンド10の位置姿勢を表すパラメータを取得する。
【0020】
計測部14は、ワークの位置姿勢を認識するために必要な計測情報を取得(計測情報取得)する。たとえば、二次元画像を撮影するカメラでもよいし、各画素が奥行きの情報を持つ、距離画像を撮影する距離センサでもよい。距離センサとしては、対象に照射したレーザ光やスリット光の反射光をカメラで撮影し、三角測量により距離を計測するもの、光の飛行時間を利用するTime-of-flight方式、ステレオカメラで撮影する画像から三角測量により距離を計算する方式などが利用できる。その他、ワークの三次元位置姿勢を認識するのに必要な情報を取得できればいかなるセンサであっても本発明の本質を損なうものではない。計測部14が取得した計測情報はワーク位置姿勢取得部15に入力される。計測部14に設定された座標系を以後、センサ座標系(計測座標系)と呼ぶ。なお、本実施形態において、センサとロボットとの幾何関係は固定であるものとし、ロボット・計測手段間相対位置姿勢は事前にロボット・ビジョンキャリブレーションを実施して求めておくことにより既知であるものとする。
【0021】
ワーク位置姿勢取得部15は、計測部14により入力された情報を手がかりに、ロボットアームの作業空間内に存在するワークを検出する。そして、検出したワークについて、センサ座標系におけるワークの位置姿勢(対象物体位置姿勢取得)を認識する。ここではセンサで距離画像および濃淡画像を取得する。本実施形態ではまず、予めワークの多数の姿勢を保持しておき、該多数の姿勢と観測した画像内に含まれるワークとのパターンマッチングを行ってワークの位置姿勢を導出する。また、パターンマッチングの結果求められた位置姿勢を初期位置姿勢として、ワークの三次元形状モデルを使ってモデルフィッティングしてもよい。また、パターンマッチングやモデルフィッティングの対象として、距離画像のみ、あるいは濃淡画像のみ、あるいは、距離画像と濃淡画像の両方を用いて行ってもよい。その他、山積みワークの中から把持対象となる個体を発見し、その三次元位置姿勢を算出できる方法であれば、ここで述べた以外のいかなる方法であってもかまわない。
【0022】
相対位置姿勢導出部16は、ロボット座標系におけるロボットハンド10の位置姿勢と、センサ座標系におけるワークの位置姿勢とに基づいて、ロボットハンド10がアプローチする位置姿勢を導出する。すなわち、相対位置姿勢導出部16は、ロボットハンドとワークとの相対位置姿勢を把持位置姿勢として導出する。この把持地位置姿勢(当審注:「把持位置姿勢」の誤記と認める。)と、ビジョンシステムにより認識したワークの位置姿勢とに基づいて、認識したワークを把持するためのロボットハンドの位置姿勢を計算することができる。」
「【0023】
図2は、第1の実施形態において、ワークの把持位置姿勢を教示する処理手順を示すフローチャートである。
【0024】
(ステップS301)
ステップS301において、ロボットハンド10は、ワークを把持する。具体的には、ユーザは制御部12を介して、ロボットハンド10の動作を制御し、ワークを把持する。ロボットアームの制御範囲内に設置されたワークを把持できる位置姿勢へロボットアーム11を動かす。そして、ロボットハンド部10は、制御部12に対するユーザ操作により、ロボットハンド10の把持機構を利用してワークの把持を行う。その後、制御部12に対するユーザ操作により、把持したワークがセンサ(計測部)により観測しやすい位置姿勢へロボットアームを移動する。図3は、センサ、ロボットアーム、ロボットハンド、ワークの各座標系と、上記作業を実施した際のそれぞれの幾何関係を示している。このとき、センサで計測する際にロボットハンドにより、対象ワークが遮蔽されないよう留意してロボットハンドの位置姿勢をとる必要がある。
【0025】
なお、本実施形態では、本ステップの処理に先立って、ロボット・センサ間のキャリブレーションは行われているものとする。すなわち、センサ座標系におけるロボットの位置姿勢を表す6つのパラメータは事前に算出して記録されているものとする。ここで、センサ座標系からロボット座標系への変換を行う3×3の回転行列、3列の並進ベクトルをそれぞれ、RRS、tRSとする。このとき、センサ座標系XS=[XS,YS,ZS]T
からロボット座標系XR=[XR,YR,ZR]Tへの変換は、4×4行列TRSを用いて以下のように表すことができる。
XR’=TRSXS’ (式1)
ここで、
XR’=[XR,YR,ZR,1]T
XS’=[XS,YS,ZS,1]T
【0026】
【数1】
[図:0001437953000001.jpg]
【0027】
である。ロボットハンド部10によりワークが把持されたら、処理はステップS302へと進む。
【0028】
(ステップS302)
ステップS302において、ロボットハンド位置姿勢取得手段12(当審注:「ロボットハンド位置姿勢取得部13」の誤記と認める。)は、ロボット座標系におけるロボットハンドの位置姿勢を表す6つのパラメータを、制御部12から取得する。上述したように、制御部12はロボットアーム先端のフランジ中心に設定された位置姿勢を表すパラメータを保持するため、制御部12に入力されたフランジ中心の位置姿勢からロボットハンド10の位置姿勢を求めることができる。そして、ロボットハンド位置姿勢取得手段13(当審注:「ロボットハンド位置姿勢取得部13」の誤記と認める。)は、制御部12からロボットハンド10の位置姿勢を取得する。
【0029】
なお、ここではロボットアーム・ロボットハンド間のキャリブレーションを事前に行っておく。それにより、ロボット座標系におけるロボットハンドの三次元位置を表す3パラメータ、姿勢を表す3パラメータの合計6つのパラメータを制御部12から取得できるようになっているものとする。ここで、姿勢を表す3パラメータは、3パラメータで表現されるベクトルの向きが回転軸を、ベクトルのノルムが回転角度を表す回転軸回転角表現のものとする。ただし、同様の姿勢を表現可能なパラメータであれば、他の表現でも構わない。たとえばオイラー角表現の3パラメータであってもよいし、四元数表現の4パラメータを代わりに用いてもよい。ここで、姿勢を表す3パラメータにより表現される、ロボット座標系からロボットハンド座標系への姿勢変換を行う3×3の回転行列をRHR、位置を表す3パラメータにより表現される3列の並進ベクトルをtHRとする。このとき、ロボット座標系XR=[XR,YR,ZR]Tからロボットハンド座標系XH=[XH,YH,ZH]Tへの変換は、4×4行列THRを用いて以下のように表すことができる。
XH’=THRXR’ (式2)
ここで、
XH’=[XH,YH,ZH,1]T
XR’=[XR,YR,ZR,1]T
【0030】
【数2】
[図:0001437953000002.jpg]
【0031】
ロボットハンド位置姿勢取得部13は、取得したロボットハンドの位置姿勢を相対位置姿勢導出部16へ送出する。
【0032】
(ステップS303)
ステップS303において、計測部14は、ワークの位置姿勢を認識するための計測情報の取得を行う。本実施形態では、計測情報として、計測部14が備える撮像装置により距離画像および濃淡画像を取得する。本実施形態では計測部14は、撮像装置を備えるが、ワークの位置姿勢を認識するための計測情報を取得できればその他のセンサを用いてもよい。計測部14は、取得した計測情報をワーク位置姿勢取得部15に送出する。
【0033】
(ステップS304)
ステップS304において、ワーク位置姿勢取得部15は、計測部14から取得した計測情報に基づいてワークの位置姿勢認識を行う。具体的には、ワーク位置姿勢取得部15は、センサ座標系におけるワークの位置姿勢を表す6つのパラメータを算出する。本実施形態では、濃淡画像または距離画像に、保持するワークの三次元形状モデルをパターンマッチングすることにより、ワークの位置姿勢パラメータを算出する。この処理は、例えば、特開平9-212643号公報に記載された公知の方法が用いられる。
【0034】
そして算出されたパラメータをセンサ座標系からワーク座標系へと座標変換する。ここで、姿勢を表す3つのパラメータで表現される3×3の回転行列をRWS、位置を表す3つのパラメータで表現される3列の並進ベクトルをそれぞれtWSとする。このとき、センサ座標系XS=[XS,YS,ZS]Tからワーク座標系XW=[XW,YW,ZW]Tへの変換は、4×4行列TWSを用いて以下のように表すことができる。
XW’=TwsXS’ (式3)(当審注:「Tws」は「TWS」(「ws」は下付文字)の誤記と認める。)
ここで、
XW’=[XW,YW,ZW,1]T
XS’=[XS,YS,ZS,1]T
【0035】
【数3】
[図:0001437953000003.jpg]
【0036】
である。
【0037】
ワーク位置姿勢取得部15は、取得したセンサ座標系におけるワークの位置姿勢パラメータを相対位置姿勢導出部16に送出する。
【0038】
(ステップS305)
ステップS305において、相対位置姿勢導出部16は、把持位置姿勢ワークの把持位置姿勢を表現する6つのパラメータを導出する。ロボットハンド10の把持位置姿勢を教示するためには、ロボットハンド10がワークを把持している状態で、ロボットハンド座標系におけるワーク座標系の位置姿勢を表す6つのパラメータを算出すればよい。この未知の6つのパラメータにより表現される、センサ座標系(当審注:「ロボットハンド座標系」の誤記と認める。)からワーク座標系への変換を行う3×3の回転行列、3列の並進ベクトルをそれぞれ、RHW、tHWとする。このとき、ワーク座標系XW=[XW,YW,ZW]Tからロボットハンド座標系XH=[XH,YH,ZH]Tへの変換を、4×4行列THWを用いて以下のように表すことができる。
XH’=THWXW’ (式4)
なお、
XH’=[XH,YH,ZH,1]T
XW’=[XW,YW,ZW,1]T
【0039】
【数4】
[図:0001437953000004.jpg]
【0040】
である。ここで、座標変換の等価性より以下の関係が成り立つ。
THWTWS=THRTRS (式5)
式5において、THR、TRS、TWSは上記のステップS301、S302、S303で記録しておいた6つのパラメータより算出可能である。したがって、THWは以下により求めることができる。
THW=THRTRS(TWS)-1 (式6)
さらに算出したTHWより、ワーク座標系とロボットハンド座標系との相対位置姿勢を表す6つのパラメータを求める。具体的には、THWを構成する3×3の回転行列RHRより、三次元ベクトルの向きが回転軸を、ベクトルのノルムが回転角度を表すような回転軸回転角表現の3パラメータを、姿勢を表すパラメータとして算出する。さらに、tHWを表す三次元ベクトルの3パラメータを位置を表すパラメータとして算出する。ここで算出した6つのパラメータを把持位置姿勢として記録する。
【0041】
これにより、ビジョンシステムにより認識した任意の三次元位置姿勢のワークに対して、そのワークを把持できるロボットハンドの位置姿勢を計算することができる。具体的には、ビジョンシステムで認識したワークの位置姿勢をTWS’とすると、そのワークを把持できるロボットハンドの位置姿勢THR’は、把持位置姿勢の6パラメータにより表現されるTHWを用いて以下で算出できる。
THR’=THWTWS’(TRS)-1 (式7)
以上述べたように、第1の実施形態では、ロボットアーム先端に取り付けたロボットハンドでまずワークを安定的に把持した状態を作った後で、ワークを計測して位置姿勢を認識し、そのときのロボットハンド・ワーク間の相対位置姿勢を求める。この方法では、ワークを把持した状態からワークおよびロボットハンドの位置姿勢の取得を行うため、双方の位置姿勢の取得時点でのワークの位置姿勢の変化の発生を抑制することができる。また、安定して把持した状態を確認してからワークの認識を行うため確実に把持可能な位置姿勢を教示できる。そのため、安定的かつ効率的に把持位置姿勢の教示を行うことが可能である。」
「【図1】
[図:0001437953000005.jpg]
【図2】
[図:0001437953000006.jpg]
【図3】
[図:0001437953000007.jpg]
」
イ 上記アの記載から、引用文献には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(ア)【0013】~【0014】の記載及び図1の図示内容より、引用文献には、「ロボットハンド位置姿勢取得部13、ワーク位置姿勢取得部15、及び相対位置姿勢導出部16から構成される情報処理装置1、並びに、情報処理装置1に接続されるロボットハンド10、ロボットアーム11、制御部12、及び計測部14を有するシステム」によって、ロボットアーム11先端に取り付けたロボットハンド12でまずワークを安定的に把持した状態を作った後で、ワークを計測して位置姿勢を認識し、そのときのロボットハンド・ワーク間の相対位置姿勢を求めるものであって、段落【0023】以降の図2のフローチャートに関する記載も踏まえれば、引用文献には、ワークの把持位置姿勢を教示する方法についての発明が記載されていると認められる。
(イ)【0018】に「制御部12は、ロボットアーム11の動作制御を行う。制御部12は、ロボットアーム先端のフランジ中心に設定された位置姿勢を表すパラメータを保持する。つまり、制御部12がロボットアームの動作制御を行うことにより、ロボットアーム先端のフランジに取り付けられたロボットハンド10を制御することになる。」と記載され、【0024】に「制御部12に対するユーザ操作により、把持したワークがセンサ(計測部)により観測しやすい位置姿勢へロボットアームを移動する。」と記載されていることから、情報処理装置1及び制御部12は、計測部14及びロボットアーム11を、前記計測部14によって観測される(位置姿勢が認識される)ワークが前記ロボットアーム11によって前記計測部14から見えるように構成されているとともに、把持された前記ワークが、前記計測部14によって位置姿勢が認識される所定位置に存在するように、前記ロボットアーム11を動かしていると認められる。そして、当該ワークは、情報処理装置1のワーク位置姿勢取得部15により、計測部14から取得した計測情報に基づいて位置姿勢認識を行うためのワーク(【0033】)であることから、「位置姿勢認識のためのワーク」ということができる。
(ウ)【0016】に「また、これ以後、単にロボットと表現する際には、ロボットアームを指すものとする。」と記載され、【0025】に「本実施形態では、本ステップの処理に先立って、ロボット・センサ間のキャリブレーションは行われているものとする。すなわち、センサ座標系におけるロボットの位置姿勢を表す6つのパラメータは事前に算出して記録されているものとする。・・・センサ座標系XS=[XS,YS,ZS]T
からロボット座標系XR=[XR,YR,ZR]Tへの変換は、4×4行列TRSを用いて以下のように表すことができる。
XR’=TRSXS’ (式1)」と記載されていることから、計測部14及びロボットアーム11の、互いに対する位置姿勢(TRS)は算出されていると認められる。
(エ)【0016】に「ロボットハンド10は、ロボットアーム先端のフランジに取り付けられ、ワークの把持動作を行うエンドエフェクタである。」と記載され、【0024】に「ステップS301において、ロボットハンド10は、ワークを把持する。・・・ロボットアームの制御範囲内に設置されたワークを把持できる位置姿勢へロボットアーム11を動かす。そして、ロボットハンド部10は、制御部12に対するユーザ操作により、ロボットハンド10の把持機構を利用してワークの把持を行う。」と記載されていることから、ロボットアーム11が、ワークを、前記ロボットアーム11に取り付けられたロボットハンド10を使用して把持していると認められる。
(オ)【0032】に「ステップS303において、計測部14は、ワークの位置姿勢を認識するための計測情報の取得を行う。」と記載されていることから、ワークがロボットハンド10に把持されている間に、計測部14が前記ワークの位置姿勢を認識していると認められる。
(カ)【0033】に「ステップS304において、ワーク位置姿勢取得部15は、計測部14から取得した計測情報に基づいてワークの位置姿勢認識を行う。具体的には、ワーク位置姿勢取得部15は、センサ座標系におけるワークの位置姿勢を表す6つのパラメータを算出する。」と記載され、【0034】に「そして算出されたパラメータをセンサ座標系からワーク座標系へと座標変換する。・・・このとき、センサ座標系XS=[XS,YS,ZS]Tからワーク座標系XW=[XW,YW,ZW]Tへの変換は、4×4行列TWSを用いて以下のように表すことができる。
XW’=TwsXS’ (式3)」と記載されていることから、ワークの計測部14に対する位置姿勢(Tws)を算出していると認められる。
(キ)【0038】に「ロボットハンド10の把持位置姿勢を教示するためには、ロボットハンド10がワークを把持している状態で、ロボットハンド座標系におけるワーク座標系の位置姿勢を表す6つのパラメータを算出すればよい。」と記載され、【0040】に
「THWTWS=THRTRS (式5)
式5において、THR、TRS、TWSは上記のステップS301、S302、S303で記録しておいた6つのパラメータより算出可能である。したがって、THWは以下により求めることができる。
THW=THRTRS(TWS)-1 (式6)」と記載されていることから、計測部14及びロボットアーム11の互いに対する位置姿勢(TRS)及びワークの計測部14に対する位置姿勢(TWS)に少なくとも部分的に基づいて、ワークのロボットハンド10に対する位置姿勢(THW)を算出していると認められる。
(ク)【0040】に「さらに算出したTHWより、ワーク座標系とロボットハンド座標系との相対位置姿勢を表す6つのパラメータを求める。・・・ここで算出した6つのパラメータを把持位置姿勢として記録する。」と記載されていることから、上記(ア)のシステムは、情報処理装置1に関連付けられた何らかの記憶手段を有しており、当該記憶手段に前記ワークの前記ロボットハンド10に対する位置姿勢(THW)を記録させていると認められる。
(ケ)【0041】に
「これにより、ビジョンシステムにより認識した任意の三次元位置姿勢のワークに対して、そのワークを把持できるロボットハンドの位置姿勢を計算することができる。具体的には、ビジョンシステムで認識したワークの位置姿勢をTWS’とすると、そのワークを把持できるロボットハンドの位置姿勢THR’は、把持位置姿勢の6パラメータにより表現されるTHWを用いて以下で算出できる。
THR’=THWTWS’(TRS)-1 (式7)」と記載されていることから、記録された前記ワークの前記ロボットハンド10に対する位置姿勢(THW)に少なくとも部分的に基づいてビジョンシステムにより認識した任意の三次元位置姿勢のワークの把持を、ロボットハンド10が行っていると認められる。
ウ 上記ア、イから、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ワークの把持位置姿勢を教示する方法であって、
情報処理装置1及び制御部12が、計測部14及びロボットアーム11を、前記計測部14によって位置姿勢が認識される位置姿勢認識のためのワークが前記ロボットアーム11によって前記計測部14から見えるように構成することと、
前記情報処理装置1が、前記計測部14及び前記ロボットアーム11の、互いに対する位置姿勢(TRS)を算出することと、
前記ロボットアーム11が、前記位置姿勢認識のためのワークを、前記ロボットアーム11に取り付けられたロボットハンド10を使用して把持することと、
前記ロボットハンド10に把持された前記位置姿勢認識のためのワークが、前記計測部14によって位置姿勢が認識される所定位置に存在するように、前記情報処理装置1及び制御部12が前記ロボットアーム11を動かすことと、
前記位置姿勢認識のためのワークが前記ロボットハンド10に把持されている間に、前記計測部14が前記位置姿勢認識のためのワークの位置姿勢を認識することと、
前記位置姿勢認識のためのワークの、前記計測部14に対する位置姿勢(Tws)を前記情報処理装置1が算出することと、
前記計測部14及び前記ロボットアーム11の、互いに対する位置姿勢(TRS)、及び、前記位置姿勢認識のためのワークの、前記計測部14に対する位置姿勢(Tws)に少なくとも部分的に基づいて、前記位置姿勢認識のためのワークの、前記ロボットハンド10に対する位置姿勢(THW)を、前記情報処理装置1が算出することと、
前記情報処理装置1が、前記情報処理装置1に関連付けられた記憶手段に前記位置姿勢認識のためのワークの、前記ロボットハンド10に対する位置姿勢(THW)を記録させることと、
記録された前記位置姿勢認識のためのワークの、前記ロボットハンド10に対する位置姿勢(THW)に少なくとも部分的に基づいて、ビジョンシステムにより認識した任意の三次元位置姿勢のワークの把持を、前記ロボットハンド10が行うことと
を含む、方法。」
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「ワーク」は、前者の「ワーク」に相当し、以下同様に、「教示する」は「プログラムする」に、「情報処理装置1及び制御部12」は「コンピューティングデバイス」に、「計測部14」は「スキャナ」に、「ロボットアーム11」及び/又は「ロボットハンド10」は「ロボット」に、「計測部14及びロボットアーム11」は「スキャナ及びロボットを有するロボットシステム」に、「情報処理装置1に関連付けられた記憶手段」は「コンピューティングデバイスに関連付けられたメモリ」に、「記録させる」は「記憶させる」に、それぞれ相当する。
(イ)引用発明の「位置姿勢認識のためのワーク」は本件補正発明の「第1のワーク」に相当し、同様に「ビジョンシステムにより認識した任意の三次元位置姿勢のワーク」は「第2のワーク」に相当する。
(ウ)引用発明の「計測部14によって位置姿勢が認識される」は本件補正発明の「スキャナによってスキャンされる」に相当し、同様に「前記位置姿勢認識のためのワークの位置姿勢を認識する」は「前記第1のワークをスキャンする」に相当する。
(エ)引用発明の「ロボットアーム11に取り付けられたロボットハンド10を使用して把持する」は本件補正発明の「ロボットに取り付けられたエンドエフェクタを使用してピックする」に相当し、同様に「ロボットハンド10に把持され」は「エンドエフェクタに取り付けられ」に相当する。
(オ)引用発明の「前記計測部14及び前記ロボットアーム11の、互いに対する位置姿勢(TRS)」は本件補正発明の「(前記スキャナ及び前記ロボットの、互いに対する)第1の姿勢」に相当し、同様に「前記位置姿勢認識のためのワークの、前記計測部14に対する位置姿勢(Tws)」は「(前記第1のワークの、前記スキャナに対する)第2の姿勢」に相当する。また、「位置姿勢」を「算出する」ことは、その機能・作用からみて「姿勢」を「判定する」ことに相当する。
(カ)引用発明の「前記位置姿勢認識のためのワークの、前記ロボットハンド10に対する位置姿勢(THW)」は本件補正発明の「(前記第1のワークの、前記ロボットに対する)第3の姿勢」に相当し、同様に「記録された前記位置姿勢認識のためのワークの、前記ロボットハンド10に対する位置姿勢(THW)」は「前記第1のワークに対して確立された前記ロボットの前記第3の姿勢」に相当する。
(キ)本件補正発明は、ワークをピック及び設置する際の、ワークの姿勢に対するロボット及び/又はエンドエフェクタの位置姿勢をプログラムするものであり、上記(ア)のとおり、引用発明の「教示する」は本件補正発明の「プログラムする」に相当することから、引用発明の「ワークの把持位置姿勢を教示する」と本件補正発明の「ワークのピック及び設置をプログラムする」とは、「ワークの把持位置姿勢をプログラムする」という限りにおいて共通する。
(ク)引用発明の「ビジョンシステムにより認識した任意の三次元位置姿勢のワークの把持を、前記ロボットハンド10が行う」と本件補正発明の「第2のワークのピック及び設置を、前記ロボットが行う」とは、「第2のワークのピックを、前記ロボットが行う」という限りにおいて共通する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「ワークの把持位置姿勢をプログラムする方法であって、
コンピューティングデバイスが、スキャナ及びロボットを有するロボットシステムを、前記スキャナによってスキャンされる第1のワークが前記ロボットによって前記スキャナから見えるように構成することと、
前記コンピューティングデバイスが、前記スキャナ及び前記ロボットの、互いに対する第1の姿勢を判定することと、
前記ロボットが、前記第1のワークを、前記ロボットに取り付けられたエンドエフェクタを使用してピックすることと、
前記エンドエフェクタに取り付けられた前記第1のワークが、前記スキャナによってスキャンされる所定位置に存在するように、前記コンピューティングデバイスが前記ロボットを動かすことと、
前記第1のワークが前記エンドエフェクタに取り付けられている間に、前記スキャナが前記第1のワークをスキャンすることと、
前記第1のワークの、前記スキャナに対する第2の姿勢を前記コンピューティングデバイスが判定することと、
前記第1の姿勢及び前記第2の姿勢に少なくとも部分的に基づいて、前記第1のワークの、前記ロボットに対する第3の姿勢を、前記コンピューティングデバイスが判定することと、
前記コンピューティングデバイスが、前記コンピューティングデバイスに関連付けられたメモリに前記第3の姿勢を記憶させることと、
前記第1のワークに対して確立された前記ロボットの前記第3の姿勢に少なくとも部分的に基づいて第2のワークのピックを、前記ロボットが行うことと
を含む、方法。」
【相違点】
本件補正発明は、「ワークのピック及び設置をプログラム」して、「第2のワークのピック及び設置」を行うのに対し、引用発明は、「ワークの把持位置姿勢(ピック)を教示(プログラム)」して、「ビジョンシステムにより認識した任意の三次元位置姿勢のワーク(第2のワーク)の把持(ピック)」を行うものの、「ワーク」の「設置」については記載されていない点。
(4)判断
以下、上記(3)イの【相違点】について検討する。
ア ロボットによってワークをピックした後に当該ワークを所望の三次元位置姿勢に設置することは一般的に行われていることであり、引用発明において、ロボットハンド10が把持した(ピックした)ワークを所望の三次元位置姿勢に設置することに、何ら困難性はない。
そして、把持したワークを所望の三次元位置姿勢に設置するために、ロボットアーム11やロボットハンド10を自動制御するように適宜の方法でプログラムすることも、当業者であれば容易に想到し得たことである。
イ したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(5)請求人の主張について
審判請求書の請求の理由(以下、単に「請求の理由」という。)における主張について検討する。
ア 主張1.「引用文献1に記載の発明によれば、・・・「ロボットアーム先端に取り付けたロボットハンドでまずワークを安定的に把持した状態を作った後で」、「把持したワークがセンサ(計測部)により観測」されることとなるので、本願発明に係る「前記ロボットが、前記第1のワークを、前記ロボットに取り付けられたエンドエフェクタを使用してピック」した上でスキャナによってスキャンされた「前記エンドエフェクタに取り付けられている」「前記第1のワーク」の「前記スキャナに対する第2の姿勢」は判定できるかもしれないが、「前記スキャナによってスキャンされる第1のワークが前記ロボットによって前記スキャナから見えるように構成」した上で判定した「前記スキャナ及び前記ロボットの、互いに対する第1の姿勢」を判定することができない。」(審判請求書14ページ下から2行目~15ページ下から8行目。)
反論:引用文献の段落【0024】には、「把持したワークがセンサ(計測部)により観測しやすい位置姿勢へロボットアームを移動する」ことが記載されており、段落【0025】には、計測部14、ロボットアーム11の互いに対する位置姿勢を表すTRSを算出することにつき記載されている。
そして、上記(2)イ(イ)及び(ウ)における説示も併せて踏まえると、「前記スキャナによってスキャンされる第1のワークが前記ロボットによって前記スキャナから見えるように構成すること」、及び「前記スキャナ及び前記ロボットの、互いに対する第1の姿勢を判定すること」は、引用文献に記載されていると認める。
さらに、審判請求書において請求人は、「前記スキャナによってスキャンされる第1のワークが前記ロボットによって前記スキャナから見えるように構成」した上で判定した「前記スキャナ及び前記ロボットの、互いに対する第1の姿勢」を判定することができない。」と主張するが、「前記スキャナによってスキャンされる第1のワークが前記ロボットによって前記スキャナから見えるように構成」することと、「前記スキャナ及び前記ロボットの、互いに対する第1の姿勢」を判定することとの順番は、本件補正発明において何ら特定されていない 。
よって、審判請求書における請求人の主張は採用できない。
イ 主張2.「本願発明に係る「第2のワーク」に関し「「・・・、ビジョンシステムにより認識した任意の三次元位置姿勢のワークに対して、そのワークを把持できるロボットハンドの位置姿勢を計算することができる。具体的には、ビジョンシステムで認識したワークの位置姿勢をTWS’とすると、そのワークを把持できるロボットハンドの位置姿勢THR’は、把持位置姿勢の6パラメータにより表現されるTHWを用いて以下で算出できる。」との記載が見いだせる」と指摘されているが、この記載(段落0041)によれば「第2のワーク」が「第1のワーク」とは別個に「ビジョンシステムにより認識」される必要があるので、上記補正に係る本願発明のように、「前記第1のワークに対して確立された前記ロボットの前記第3の姿勢に少なくとも部分的に基づいて第2のワークのピック及び設置を、前記ロボットが行うこと」まではできない。」(審判請求書15ページ下から7行目~16ページ4行目。)
反論:上記(2)イ(ケ)において説示したとおり、引用文献の段落【0041】に
「これにより、ビジョンシステムにより認識した任意の三次元位置姿勢のワークに対して、そのワークを把持できるロボットハンドの位置姿勢を計算することができる。具体的には、ビジョンシステムで認識したワークの位置姿勢をTWS’とすると、そのワークを把持できるロボットハンドの位置姿勢THR’は、把持位置姿勢の6パラメータにより表現されるTHWを用いて以下で算出できる。
THR’=THWTWS’(TRS)-1 (式7)」と記載されていることから、記録された前記ワーク(第1のワーク)の前記ロボットハンド10に対する位置姿勢(THW)(第3の姿勢)に少なくとも部分的に基づいてビジョンシステムにより認識した任意の三次元位置姿勢のワーク(第2のワーク)の把持(ピック)を、ロボットハンド10(ロボット)が行っていると認められるから、引用文献には、少なくとも「前記第1のワークに対して確立された前記ロボットの前記第3の姿勢に少なくとも部分的に基づいて第2のワークのピックを、前記ロボットが行うこと」が開示されていると認められる。
よって、審判請求書における請求人の主張は採用できない。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和7年2月12日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~16に係る発明は、令和6年9月12日にされた手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち請求項1に対する理由は、原査定に示される、令和6年3月5日付け拒絶理由通知書に記載した次の理由1によるものである。
【理由1(進歩性)】
この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開2015-199155号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、各項目を実行する主体を明確化した事項、第1のワークのエンドエフェクタへの取り付けに関する限定事項、及び、第3の姿勢についての限定事項にかかる構成を削除するとともに、「前記第2のワークは前記第1のワークと同様であること」の構成を付加したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、前記第2の[理由]2(3)イに記載された【相違点】のほかに次の【相違点2】で相違する。
【相違点2】
本願発明は、「前記第2のワークは前記第1のワークと同様である」のに対し、引用発明は、当該事項について不明である点。
5 判断
【相違点】についての判断は、前記第2の[理由]2(4)に記載した判断のとおりである。
また、上記【相違点2】について検討すると、引用発明は、「位置姿勢認識のためのワーク」(第1のワーク)のロボットハンド10に対する位置姿勢に少なくとも部分的に基づいて、「ビジョンシステムにより認識した任意の三次元位置姿勢のワーク」(第2のワーク)の把持を前記ロボットハンド10が行うものであることから、引用発明においては、「位置姿勢認識のためのワーク」(第1のワーク)と「ビジョンシステムにより認識した任意の三次元位置姿勢のワーク」(第2のワーク)とが同様であることを前提としていることは明らかである。(「ビジョンシステムにより認識した任意の三次元位置姿勢のワーク」(第2のワーク)の把持位置姿勢をロボットハンド10に教示する際、事前に把持位置姿勢を認識(学習)する「位置姿勢認識のためのワーク」(第1のワーク)を「ビジョンシステムにより認識した任意の三次元位置姿勢のワーク」(第2のワーク)と同様にしないと、適切な教示ができないことは明らかである。)
よって、上記【相違点2】は実質的な相違点とはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-002164