特許拒絶査定不服審判
2024-000159
チケット発券システム、およびプログラム
- 審判番号
- 2024-000159
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-148766
- 請求日
- 2024年01月05日
- 審決日
- 2024年08月13日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】playground株式会社
- 【請求人代理人】IPTech弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 篠塚 隆
- 審判官 伊藤 隆夫
- 審判官 野崎 大進
- 分類
- P18 .121-WY (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-148766「チケット発券システム、およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年12月 6日出願公開、特開2022-180492、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2020年(令和2年)5月29日(優先権主張 令和元年5月30日)を国際出願日とする特願2021-522911号の一部を令和4年2月7日に新たな特許出願とした特願2022-16791号の一部を令和4年9月20日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 5年 5月25日 :手続補正書の提出
令和 5年 7月10日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 9月 7日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年10月16日付け:拒絶査定
令和 6年 1月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和5年10月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-2に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2-3に記載された周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2004-104530号公報
2.特開2009-031991号公報
3.特開2007-226441号公報
第3 本願発明
本願請求項1-2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明2」という。)は、令和6年1月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
例示的な生体情報に関する特徴情報を含む特徴量データを格納する特徴量テーブルと、
発券されるチケットの利用者の生体情報に関する特徴情報を取得する利用者特徴情報取得手段と、
前記特徴量テーブルに格納されている前記特徴量データの中から、前記利用者特徴情報取得手段が取得した生体情報に関する特徴情報との類似度が所定の基準を満たす類似特徴量データを特定する類似特徴量データ特定手段と、
前記類似特徴量データ特定手段が特定した類似特徴量データに対応し、かつ前記利用者の顔画像を含まない認証情報(前記利用者の似顔絵を除く)を記録したチケットを発券する発券手段と
を備えるチケット発券システム。」
なお、本願発明2の概要は以下のとおりである。
本願発明2は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。
第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同様。)
「【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、たとえば、MMS(マルチメディアステーション)などに適用される券類発行装置の場合について説明するが、乗車券や定期券のみを発行(販売)する券類発行装置、あるいは、遊園地などの施設の利用券を発行(販売)する券類発行装置などにも適用できることは勿論である。
【0018】
まず、第1の実施の形態について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係るMMSとして使用される券類発行装置の構成を概略的に示すものである。この券類発行装置102は、購入者(利用者)101に対しサービスの提供状況を表示する情報表示部103、購入者101の少なくとも顔を含む画像を取込む画像取込手段としての画像入力部104、購入者101が券類の購入に必要な情報を入力する入力手段としての情報入力部105、画像入力部104により入力された画像から顔の領域を顔画像として検知する顔検知手段としての顔検知部106、情報入力部105により入力された情報に基づき券情報および領収書情報(券面情報)を作成し、この作成した券情報および領収書情報のうち少なくともいずれか一方の券面情報、この例では券情報と顔検知部106により検知された顔画像とを合成して券記録画像を作成する券面情報作成手段および記録画像作成手段としての記録画像作成部107、記録画像作成部107により作成された券記録画像を可視画像として記録することにより第1の券類として券110を発行する記録手段としての第1記録部108、記録画像作成部107により作成された領収書情報を可視画像として記録することにより第2の券類として領収書111を発行する記録手段としての第2記録部109により構成されている。」
「【0027】
図3に、本実施の形態で発行された券301の例を示している。この例では、鉄道機関の乗車券を東京から広島まで購入した場合で、かつ、領収書302が兼用されている場合を示している。この券301は、購入者の顔画像303、券情報304、ロゴマーク305などが表面に印刷記録されている。ロゴマーク305は、管理上の問題やセキュリティ上の問題で、一般的には券や領収書の台紙にプレ印刷されている場合が多いが、券発行時にその他の情報と一緒に可視記録しても差し支えない。購入者の顔記録画像303は、購入時に図1で示した画像入力部104を用いて購入者101の顔を含む画像を取込んだものを画像処理して可視記録したものである。また、券情報304は、同じく購入時に図1で示した情報入力部105に入力した情報に基づいて作成された項目を記録したものである。」
「【0029】
上述した第1の実施の形態のような券301および領収書302を発行することにより、それらのセキュリティ性をより高めることが可能になる。すなわち、券301の表面に購入者101の顔画像303が可視的に記録されているので、券301の盗難や紛失が生じても、第3者が2次利用できにくいためである。また、会員制のサービスで未成年者を対象外している場合などで、未成年者が自分の親の会員証でサービスを受ける心配がある。勿論、対人応対処理の場合はある程度防ぐことが可能であるが、今後、コンビニエンスストアなどように全国展開されている店舗に、この種のサービスを普及させるには非対人(=無人)応対できなければ難しい。そこで、本実施の形態のように、券301や領収書302に購入者101の顔画像303を可視記録することにより、抑止力となり、なりすましを防ぐことになる。」
「【0056】
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態は、前述した第1の実施の形態に対し、さらに、購入者101の顔画像を照合する顔照合手段を追加したものであり、以下、詳細に説明する。
【0057】
図9は、第3の実施の形態に係るMMSとして使用される券類発行装置の構成を概略的に示すものである。なお、前述した第1の実施の形態(図1)と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略し、異なる部分についてだけ詳細に説明する。
【0058】この券類発行装置102は、購入者101に対しサービスの提供状況を表示する情報表示部103、購入者101の少なくとも顔を含む画像を取込む画像入力部104、購入者101が券類の購入に必要な情報を入力する情報入力部105、画像入力部104により入力された画像から顔の領域を顔画像として検知する顔検知部106、顔照合用の顔画像情報(辞書情報)があらかじめ登録されている顔画像情報データベース112、顔検知部106により検知された顔画像を顔画像情報データベース112内の顔画像情報と照合することにより、当該購入者が本人であるか否かを判定する照合手段としての顔照合部113、顔照合部113により当該購入者が本人であると判定されると、情報入力部105により入力された情報に基づき券情報および領収書情報(券面情報)を作成し、この作成した券情報と顔検知部106により検知された顔画像とを合成して券記録画像を作成する記録画像作成部107、記録画像作成部107により作成された券記録画像を可視画像として記録することにより券110を発行する第1記録部108、記録画像作成部107により作成された領収書情報を可視画像として記録することにより領収書111を発行する第2記録部109により構成されている。
【0064】
上述した第3の実施の形態のように顔照合機能を持つことにより、券および領収書のセキュリティ性をより高めることが可能となる。この第3の実施の形態では、特に事前に個人情報を登録するような会員制のシステムに対して会員のなりすましを防ぐことができ、非常に有効である。」
「図3
[図:0001414094000001.jpg]
」
「図9
[図:0001414094000002.jpg]
」
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「MMS(マルチメディアステーション)として使用される券類発行装置102は、購入者101の少なくとも顔を含む画像を取込む画像入力部104、画像入力部104により入力された画像から顔の領域を顔画像として検知する顔検知部106、顔照合用の顔画像情報(辞書情報)があらかじめ登録されている顔画像情報データベース112、顔検知部106により検知された顔画像を顔画像情報データベース112内の顔画像情報と照合することにより、当該購入者が本人であるか否かを判定する照合手段としての顔照合部113、顔照合部113により当該購入者が本人であると判定されると、情報入力部105により入力された情報に基づき券情報(券面情報)を作成し、この作成した券情報と顔検知部106により検知された顔画像とを合成して券記録画像を作成する記録画像作成部107、記録画像作成部107により作成された券記録画像を可視画像として記録することにより券110を発行する第1記録部108により構成され、発行された券301の表面には、購入者101の顔画像303が可視的に記録されているので、券301の盗難や紛失が生じても、第3者が2次利用できにくいため、セキュリティ性をより高めることが可能になり、さらに顔照合機能を持つことにより、券のセキュリティ性をより高めることが可能となる券類発行装置102。」
2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0053】
図3のフローチャートに沿って、登録機能の構成と処理の流れを説明する。
【0054】
登録機能が起動すると、画像入力部10から新規登録者の顔画像(以下、「登録画像」とよぶ。)が入力される(ステップS20)。入力された登録画像は、画像記憶部11に格納される。
【0055】
そして、顔検出部12が登録画像から人の顔を検出し、特徴点検出部13が特徴点を検出し、特徴量ベクトル抽出部14が新規登録者の特徴量のベクトルを算出する(ステップS21~S23)。顔画像から特徴量を抽出する一連の処理については、顔照合時のものと同じである。
【0056】
次に、仮想特徴量ベクトル生成部15が、特徴量変換器記憶部18から特徴量変換器を読み出し(ステップS24)、その特徴量変換器を用いて、ステップS23で得られた特徴量のベクトルを変換する(ステップS25)。変換後のベクトルも特徴量空間内のベク
トルである。
【0057】
同一人を撮影した2枚の顔画像からそれぞれ特徴量のベクトルを算出したとき、両画像の撮影条件が同じなら、ベクトルの傾向(向き、大きさ)もほぼ同じになる。しかし、撮影条件(例えば、照明、顔の向き、表情、年齢、化粧方法、装着物の有無、髪型、画像の解像度など)が異なれば、その条件の相違に応じた傾向の違いがベクトルにも現れる。特徴量変換器によるベクトルの変換は、このような撮影条件の相違によるベクトルの変化を仮想的に求めるものである。換言すれば、特徴量変換器は、ある条件下で撮影された顔画像から得られた特徴量のベクトルを、他の条件下で撮影された同一人の顔画像から得られる特徴量のベクトルに変換するもの、といえる。以下、変換前の条件を「元条件」、変換後の条件を「仮想条件」、変換前の特徴量のベクトルを「元ベクトル」、変換後の特徴量のベクトルを「仮想ベクトル」とよぶ。
【0058】
本実施形態では、元条件が未知であっても元ベクトルから仮想ベクトルに変換することのできる特徴量変換器を予め作成し(具体的な作成方法は後述する)、特徴量変換器記憶部18に格納しておく。
【0059】
上記処理によって元ベクトルから一つ又は複数の仮想ベクトルが生成されたら、登録情報生成部16が、元ベクトルと仮想ベクトルに基づいて(つまり、登録画像から直接抽出された特徴量と変換後の特徴量とに基づいて)新規登録者の顔定義情報を生成し、登録情報記憶部19に登録する(ステップS26)。
【0060】
このようにして生成された顔定義情報は、登録画像の撮影条件(元条件)だけでなく、他の撮影条件(仮想条件)をも考慮したものとなる。よって、元ベクトルのみから顔定義情報を生成するのに比べて、顔定義情報の精度を向上することができ、ひいては顔照合の判定精度の向上を図ることができる。」
「図3
[図:0001414094000003.jpg]
」
したがって、上記引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。
「特徴量変換器により、ある条件(元条件)下で撮影された顔画像から得られた特徴量のベクトル(元ベクトル)を、他の条件(仮想条件)下で撮影された同一人の顔画像から得られる特徴量のベクトル(仮想ベクトル)に変換して、元ベクトルと仮想ベクトルに基づいて(つまり、登録画像から直接抽出された特徴量と変換後の特徴量とに基づいて)新規登録者の顔定義情報を生成し、登録画像の撮影条件(元条件)だけでなく、他の撮影条件(仮想条件)をも考慮した顔定義情報を生成して、顔定義情報の精度を向上する技術。」
3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0044】
図3のフローチャートに沿って、登録機能の構成と処理の流れを説明する。
【0045】
登録機能が起動すると、画像入力部10から新規登録者の顔画像(以下、「登録画像」とよぶ。)が入力される(ステップS20)。入力された登録画像は、画像記憶部11に格納される。
【0046】
そして、顔検出部12が登録画像から人の顔を検出し、特徴点検出部13が特徴点を検出し、顔特徴量ベクトル抽出部14が新規登録者の顔特徴量ベクトルを算出する(ステップS21~S23)。顔画像から特徴量を抽出する一連の処理については、顔照合時のものと同じである。
【0047】
次に、仮想顔特徴量ベクトル生成部15が、特徴量変換器記憶部18から該当する特徴量変換器を読み出し(ステップS24)、その特徴量変換器を用いて、ステップS23で得られた顔特徴量ベクトルを変換する(ステップS25)。
【0048】
特徴量変換器は、特徴量空間内での座標変換を行うものである。同一人を撮影した2枚の顔画像からそれぞれ顔特徴量ベクトルを算出したとき、両画像の撮影条件が同じなら、顔特徴量ベクトルの傾向(向き、大きさ)もほぼ同じになる。しかし、撮影条件(例えば、照明、顔の向き、表情、年齢、化粧方法、装着物の有無、髪型、画像の解像度など)が異なれば、その条件の相違に応じた傾向の違いが顔特徴量ベクトルにも現れる。特徴量変換器による座標変換は、このような撮影条件の相違による顔特徴量ベクトルの変化を仮想的に求めるものである。換言すれば、特徴量変換器は、ある条件下で撮影された顔画像から得られた顔特徴量ベクトルを、他の条件下で撮影された同一人の顔画像から得られる顔特徴量ベクトルに変換するもの、といえる。以下、変換前の条件を「元条件」、変換後の条件を「仮想条件」、変換前の顔特徴量ベクトルを「元ベクトル」、変換後の顔特徴量ベクトルを「仮想ベクトル」とよぶ。
【0049】
特徴量変換器の変換特性は、元条件と仮想条件の組み合わせによって決まる。しかし撮影条件は無数に想定されるため、元条件と仮想条件の組み合わせを全て網羅するのは現実的でない。そこで本実施形態では、元条件と仮想条件の代表的な組み合わせを複数選定し、そのそれぞれについて特徴量変換器を予め作成し(具体的な作成方法は後述する)、特徴量変換器記憶部18に格納しておく。ステップS24では、仮想顔特徴量ベクトル生成部15が、特徴量変換器記憶部18内の複数の特徴量変換器の中から、登録画像の撮影条件と同じ元条件をもつ変換器を選び出し、仮想ベクトルを生成する。
【0050】
なお、登録画像の撮影条件を特定する手法は種々考えられる。例えば、照明条件については「室内/屋外」「明るい/暗い」、顔の向きについては「正面/斜め向き/横向き」のように、複数の条件候補を提示して、ユーザに条件を入力させるようにしてもよい。あるいは、登録画像から得られる特徴量に基づいて撮影条件を自動的に判断するようにしてもよい。
【0051】
上記処理によって元ベクトルから一つ又は複数の仮想ベクトルが生成されたら、登録情報生成部16が、元ベクトルと仮想ベクトルに基づいて(つまり、登録画像から直接抽出された特徴量と変換後の特徴量とに基づいて)新規登録者の顔定義情報を生成し、登録情報記憶部19に登録する(ステップS26)。
【0052】
このようにして生成された顔定義情報は、登録画像の撮影条件(元条件)だけでなく、他の撮影条件(仮想条件)をも考慮したものとなる。よって、元ベクトルのみから顔定義情報を生成するのに比べて、顔定義情報の精度を向上することができ、ひいては顔照合の判定精度の向上を図ることができる。」
「図3
[図:0001414094000004.jpg]
」
したがって、上記引用文献3には、次の技術が記載されていると認められる。
「ある条件下(元条件)で撮影された顔画像から得られた顔特徴量ベクトル(元ベクトル)を、他の条件(仮想条件)下で撮影された同一人の顔画像から得られる顔特徴量ベクトル(仮想ベクトル)に変換するために、元条件と仮想条件の代表的な組み合わせを複数選定し、そのそれぞれについて特徴量変換器を予め作成し、登録画像の撮影条件と同じ元条件をもつ変換器を選び出し、仮想ベクトルを生成する処理によって元ベクトルから一つ又は複数の仮想ベクトルが生成されたら、元ベクトルと仮想ベクトルに基づいて(つまり、登録画像から直接抽出された特徴量と変換後の特徴量とに基づいて)新規登録者の顔定義情報を生成し、登録画像の撮影条件(元条件)だけでなく、他の撮影条件(仮想条件)をも考慮した顔定義情報を生成して、顔定義情報の精度を向上する技術。」
第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明1の「券類発行装置102」は、「MMS(マルチメディアステーション)」として使用され、「券110」を発行するのであるから、本願発明1と同様に「チケット発券システム」と称することができる。
イ 引用発明1における「顔画像情報データベース112」は、「顔照合用の顔画像情報(辞書情報)」があらかじめ登録されおり、ここでいう「顔画像情報」は「生体情報」といえるから、引用発明1と本願発明1はともに、「生体情報に関する情報を含むデータを格納する手段」を有する点で共通する。
ウ 引用発明1の「購入者101」は「発券されるチケットの利用者」といえ、「顔検知部106」は、「購入者101」の「顔画像」を取得するものであるから、引用発明1と本願発明1はともに、「発券されるチケットの利用者の生体情報に関する情報を取得する手段」を備える点で共通する。
エ 引用発明の「顔照合部113」は、「顔検知部106」が取得した「顔画像」と「顔画像情報データベース112」の「顔照合用の顔画像情報(辞書情報)」とを照合し、本願発明1の「類似特徴量データ特定手段」は「特徴量テーブルに格納されている特徴量データの中から、利用者特徴情報取得手段が取得した生体情報に関する特徴情報との類似度が所定の基準を満たす類似特徴量データを特定する」のであるから、両者は「前記発券されるチケットの利用者の生体情報に関する情報を取得する手段」が取得した情報と「前記生体情報に関する情報を含むデータを格納する手段」が格納する情報を比較する手段である点で共通する。
オ 引用発明1の「第1記録部108」が券面に記録する購入者の顔画像(可視画像)は、本人確認のための「認証情報」といえるから、引用発明1と本願発明1はともに、「認証情報を記録したチケットを発券する発券手段」を備える点で共通する。
したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「生体情報に関する情報を含むデータを格納する手段と、
発券されるチケットの利用者の生体情報に関する情報を取得する手段と、
前記発券されるチケットの利用者の生体情報に関する情報を取得する手段が取得した情報と、前記生体情報に関する情報を含むデータを格納する手段が格納する情報を比較する手段と、
認証情報を記録したチケットを発券する発券手段
を備えるチケット発券システム。」
(相違点)
(相違点1)「生体情報に関する情報を含むデータを格納する手段」が、本願発明1は、「例示的な生体情報に関する特徴情報を含む特徴量データ」を格納する「特徴量テーブル」であるのに対し、引用発明1は、「顔照合用の顔画像情報(辞書情報)」を格納する「顔画像情報データベース112」である点。
(相違点2)「発券されるチケットの利用者の生体情報に関する情報を取得する手段」に関して、本願発明1の「利用者特徴情報取得手段」は、「発券されるチケットの利用者の生体情報に関する特徴情報を取得する」のに対し、引用発明1の「顔検知部106」は、「購入者101」の「顔画像」そのものを取得する点。
(相違点3)「前記発券されるチケットの利用者の生体情報に関する情報を取得する手段が取得した情報と、前記生体情報に関する情報を含むデータを格納する手段が格納する情報を比較する手段」に関して、本願発明1の「類似特徴量データ特定手段」は、「前記特徴量テーブルに格納されている前記特徴量データの中から、前記利用者特徴情報取得手段が取得した生体情報に関する特徴情報との類似度が所定の基準を満たす類似特徴量データを(比較)特定する」のに対し、引用発明1の「顔照合部113」は、「顔検知部106」が取得した「顔画像」と「顔画像情報データベース112」の「顔照合用の顔画像情報(辞書情報)」を(比較)照合する点。
(相違点4)本願発明1の「発券手段」は、「前記類似特徴量データ特定手段が特定した類似特徴量データに対応し、かつ前記利用者の顔画像を含まない認証情報(前記利用者の似顔絵を除く)を記録したチケットを発券する」のに対し、引用発明の「第1記録部108」は、認証情報として「顔画像」そのものを記録した券を発行する点。
(2)相違点についての判断
上記相違点1-相違点4について、あわせて検討する。
本願発明1は、「・・・顔認証を利用してチケットの保有者を確認する従来の手法では、正規の保有者の顔の情報として、顔の画像や顔の特徴量がチケットに記録される。顔の画像や顔の特徴量は、保有者自身の個人情報であるところ、これらをチケットに記録した場合、個人情報が意図せず第三者に渡る可能性があるため、個人情報の保護やセキュリティの観点で問題視されることがあった。・・・」(本願明細書【0004】)という課題を解決するために、「例示的な生体情報に関する特徴情報を含む特徴量データ」を「特徴量テーブル」に格納するというもので、ここでいう「例示的な生体情報に関する特徴情報を含む特徴量データ」は、
「・・・記憶部22は、・・・(中略)・・・例示的な生体情報に関する特徴情報を含む特徴量データを識別情報である特徴IDと対応付けて格納する特徴量テーブル22B等を記憶する。・・・(中略)・・・特徴量テーブル22Bは、実在しない人物の顔の画像に基づく特徴量データ(例えば、絵やコンピュータグラフィックス等により生成した顔から算出した顔の特徴を表す情報)を含んでよい。また、特徴量テーブル22Bは、顔の画像に基づくことなく演算により生成された特徴量データを含んでもよい。演算により特徴量データを生成する場合、特徴量データにより表すことのできる特徴量空間内に、等しい密度で特徴量データが分布するように特徴量データを生成するとよい。・・・」(本願明細書【0045】)
「サーバ2は、利用者の顔画像について、特徴量テーブル22Bに含まれるすべての特徴量データとの一致度を算出し、一致度が最も高いものを類似度が所定の条件を満たす特徴量データ特定してもよい。あるいは、特徴量データを1つずつ任意の順番で照会し、類似度が所定の条件を満たす(例えば、一致度が所定値以上となる)特徴量データが1つ見つかった時点で、その特徴量データを類似特徴量データとして特定し、更なる照会を行わないようにしてもよい。・・・」(本願明細書【0039】)
等の記載から、利用者の顔画像そのものから得られる特徴情報を「特徴量データ」としたものではなく、利用者の顔画像とは直接関係のないサンプル的に事前準備した「特徴量データ」のことを意味するものと解される。
一方、引用発明1は、「発行された券301の表面には、購入者101の顔画像303が可視的に記録されているので、券301の盗難や紛失が生じても、第3者が2次利用できにくいため、セキュリティ性をより高めることが可能になり、さらに顔照合機能を持つことにより、券のセキュリティ性をより高めることが可能となる」というものであるから、券の表面には、購入者の顔画像が可視的に記録されることが前提であり、「顔照合部113」が行う「顔画像情報(辞書情報)」との照合は、「顔検知部106」が取得した顔画像が本人のものであるかを事前登録した「顔画像情報(辞書情報)」により確認するものである。
そうすると、本願発明1の「チケット」に記録される利用者の「認証情報」と、引用発明1の「券」に記録される購入者の「顔画像」とは、いずれも本人確認のための情報という点では共通するものの、個人情報保護の観点において、その技術的意義が全く異なるものである。(仮に、「顔画像」が「似顔絵」であったとしても同様。)
してみれば、引用発明1の「顔照合部113」に、引用文献2-3に記載の技術を適用しても、本願発明1の構成に至らないことは明らかである。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2-3に記載の技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2.本願発明2について
本願発明2も、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2-3に記載の技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1-2は、当業者が引用発明1及び引用文献2-3に記載の技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-000159