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特許無効審判

2023-800004

医薬品

審判番号
2023-800004
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2016-550377
登録番号
6236167
請求日
2023年01月13日
審決日
2025年04月08日
公報発行日
2026年09月25日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】東亜薬品 株式会社
  • 【請求人代理人】古城 春実
  • 【請求人代理人】牧野 知彦
  • 【被請求人】興和 株式会社
  • 【被請求人代理人】弁理士法人アルガ特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 原田 隆興
  • 審判官 吉田 佳代子
  • 審判官 田中 耕一郎
分類
P1113.121-ZAA(A61K) / P1113.537-ZAA(A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法123条1項2号特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第134条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第134条の2第6項、特許法第131条の2第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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上記当事者間の特許第6236167号発明「医薬品」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 特許第6236167号の特許請求の範囲を、令和6年8月5日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕及び〔3、4〕について訂正することを認める。 特許第6236167号の請求項1~4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 主な手続の経緯 本件特許第6236167号(以下「本件特許」という。)は、平成27年9月25日(優先権主張 平成26年9月25日)に出願され、平成29年11月2日に特許権の設定登録がなされたものである。 これに対して、請求人から、令和5年1月13日提出の審判請求書によって、本件特許の請求項1乃至4に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める旨の本件特許無効審判が請求された。 以後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。 令和5年 5月22日 審判事件答弁書及び訂正請求書の提出 (被請求人) 同年11月29日付け 審理事項通知書 令和6年 2月 1日 口頭審理陳述要領書の提出 (請求人及び被請求人) 同年 2月15日 口頭審理 同年 5月29日付け 審決の予告 同年 8月 5日 上申書及び訂正請求書の提出(被請求人) 同年10月 4日 弁駁書の提出 (請求人) 同年10月23日付け 補正許否の決定及び審尋 (被請求人宛) 同年11月27日 審判事件答弁書及び回答書の提出 (被請求人) 以下において、令和5年5月22日提出の審判事件答弁書を「第1答弁書」といい、令和6年11月27日提出の審判事件答弁書を「第2答弁書」という。 なお、令和5年5月22日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第134条の2第6項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正請求について 1 訂正の内容 令和6年8月5日提出の訂正請求書による訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)の趣旨は、「特許第6236167号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」というものであり、本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。 2 訂正事項 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「収容されてなる、医薬製剤。」と記載されているのを、「収容されてなり、水性組成物中のリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量が、水性組成物100mL当たりフリー体として0.4gであり、容器が、点眼剤用容器である、医薬製剤。」と訂正する。 (請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「容器が、点眼剤用容器である、」と記載されているのを、「水性組成物のpHが4~9であり、ポリオレフィン系樹脂製容器がポリエチレン製容器である、」と訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「含有する水性組成物」と記載されているのを、「含有し、水性組成物中のリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量が、水性組成物100mL当たりフリー体として0.4gである水性組成物」と訂正する。 (請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4も同様に訂正する。) (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「である」と記載されているのを、「であり、60℃で3ヶ月間保存したときに色差計(分光測色計CM-700d:コニカミノルタセンシング(株))で測定した保存前後の色差(ΔYI)を5未満とする」と訂正する。 3 一群の請求項について 訂正事項1及び2に係る訂正前の請求項1及び2に関し、請求項2は、請求項1の記載を引用する関係にあり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるから、訂正前の請求項1及び2に対応する訂正後の請求項1及び2は、特許法第134条の2第3項に規定する「一群の請求項」である。 訂正事項3及び4に係る訂正前の請求項3及び4に関し、請求項4は、請求項3の記載を引用する関係にあり、訂正事項3によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正されるから、訂正前の請求項3及び4に対応する訂正後の請求項3及び4は、特許法第134条の2第3項に規定する「一群の請求項」である。 4 訂正の適否についての判断 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る特許発明の発明特定事項である水性組成物について、訂正前では特定していなかったリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量を「水性組成物100mL当たりフリー体として0.4g」に限定するとともに、訂正前の請求項1に係る特許発明の発明特定事項である容器について「点眼剤用」に限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る特許発明の発明特定事項である水性組成物について、訂正前では特定していなかったリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量を「水性組成物100mL当たりフリー体として0.4g」に限定するとともに、訂正前の請求項1に係る特許発明の発明特定事項である容器について「点眼剤用」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。 すなわち、段落【0026】には、「水性組成物中の前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量」と記載されている。さらに、段落【0044】、【0048】の表1、3には、試験例1、2で調製された水性組成物100mL当たりのリパスジル1塩酸塩2水和物の分量について「フリー体として0.4g」と記載されている。また、段落【0017】には、「[4]前記ポリオレフィン系樹脂製容器が、点眼剤用容器である、[1]~[3]のいずれか記載の医薬製剤。」と記載されているから、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、「水性組成物のpHが4~9であり、」との記載により訂正後の請求項2に係る発明における組成物のpHを限定するとともに、訂正前の請求項2に係る特許発明の発明特定事項である容器について「ポリエチレン製」に限定するものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項2は、組成物のpHを限定するとともに、訂正前の請求項2に係る特許発明の発明特定事項である容器について「ポリエチレン製」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。すなわち、段落【0032】には、「水性組成物のpHは特に限定されないが、4~9が好ましく、4.5~8がより好ましく、5~7が特に好ましい。」と記載されている。また、段落【0035】には、「ポリオレフィン系樹脂としては・・・ポリエチレン(より詳細には例えば低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレンを含む)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンなど) ・・・等が挙げられ・・・る。」と記載されている。 以上から、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的について 訂正事項3は、訂正前の請求項3に係る特許発明の発明特定事項である水性組成物について、訂正前では特定していなかったリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量を「水性組成物100mL当たりフリー体として0.4g」に限定するものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項3は、訂正前の請求項3に係る特許発明の発明特定事項である水性組成物について、訂正前では特定していなかったリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量を「水性組成物100mL当たりフリー体として0.4g」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。 すなわち、段落【0026】には、「水性組成物中の前記一般式(1)で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量」と記載されている。さらに、段落【0044】、【0048】の表1、3には、試験例1、2で調製された水性組成物100mL当たりのリパスジル1塩酸塩2水和物の分量について「フリー体として0.4g」と記載されているから、当該訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的について 訂正事項4は、訂正前の請求項4に係る特許発明の発明特定事項である方法について、「60℃で3ヶ月間保存したときに色差計(分光測色計CM-700d:コニカミノルタセンシング(株))で測定した保存前後の色差(ΔYI)を5未満とする」ものに限定するものである。 したがって、訂正事項4は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 上記アに記載したとおり、訂正事項4は、訂正前の請求項4に係る特許発明の発明特定事項である方法について、「60℃で3ヶ月間保存したときに色差計(分光測色計CM-700d:コニカミノルタセンシング(株))で測定した保存前後の色差(ΔYI)を5未満とする」ものに限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。 したがって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項4は、願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。 すなわち、段落【0043】、【0047】には、試験例1、2の評価基準について「得られた各医薬製剤を、60℃で3ヶ月間保存し、保存前後での色差(ΔYI)を色差計(分光測色計CM-700d:コニカミノルタセンシング(株))を用いて測定し、ΔYIの値が5以上のものを×、5未満のものを○と評価した。」と記載されている。さらに、段落【0045】、【0049】の表2、4には、リパスジルを含有する水性組成物がポリエチレン樹脂製容器又はポリプロピレン樹脂製容器に収容された医薬製剤についての評価結果が「○(ΔYI:5未満)」であったことが示されているから、訂正事項4は、新たな技術的事項を導入するものではない。 上記のとおりであるから、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 5 独立特許要件について 全ての請求項に対して特許無効審判が請求されているので、特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される要件(独立特許要件)は課されない。 6 まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであって、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。 よって、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕及び〔3、4〕について訂正することを認める。 第3 訂正発明 上記第2のとおり、本件訂正が認められたので、本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、請求項の番号に従い、「訂正発明1」~「訂正発明4」といい、まとめて「訂正発明」ということもある。)。 「【請求項1】 リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する水性組成物が、ポリエチレン及びポリプロピレンから選ばれる1種以上のポリオレフィン系樹脂製容器に収容されてなり、水性組成物中のリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量が、水性組成物100mL当たりフリー体として0.4gであり、容器が、点眼剤用容器である、医薬製剤。 【請求項2】 水性組成物のpHが4~9であり、ポリオレフィン系樹脂製容器がポリエチレン製容器である、請求項1記載の医薬製剤。 【請求項3】 リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有し、水性組成物中のリパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量が、水性組成物100mL当たりフリー体として0.4gである水性組成物を、ポリエチレン及びポリプロピレンから選ばれる1種以上のポリオレフィン系樹脂製容器に収容する工程を含む、水性組成物の変色の抑制方法。 【請求項4】 容器が、点眼剤用容器であり、60℃で3ヶ月間保存したときに色差計(分光測色計CM-700d:コニカミノルタセンシング(株))で測定した保存前後の色差(ΔYI)を5未満とする、請求項3記載の方法。」 第4 当事者の主張、及び、提出した証拠方法 1 請求人の主張する無効理由、及び、提出した証拠方法 (1)請求人の主張する無効理由 請求人は、請求人が提出した、審判請求書、口頭審理陳述要領書及び弁駁書によれば、特許第6236167号の特許請求の範囲の請求項1~4に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、以下の無効理由を主張し、証拠方法として、甲第1号証~甲第32号証(枝番を含む。)(以下、各々、「甲1」、「甲2」・・・「甲32」といい、合わせて「甲号証」ということがある。)を提出している。 なお、弁駁書において、審判請求の理由が追加されたところ、当審は、令和6年10月23日付けの補正許否の決定により、特許法第131条の2第2項の規定に基づき許可すると決定した。 ア 審判請求書における無効理由の概要 以下の「無効理由1」は、合議体が番号付けした。 無効理由1(進歩性) 訂正発明1~4は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、訂正発明1~4に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 イ 弁駁書における無効理由の概要(令和6年10月23日付けの補正許否の決定により許可されたもの。) 以下の「無効理由2」及び「無効理由3」は、合議体が番号付けした。 無効理由2(明確性) 訂正発明1~4はいずれも、下記(ア)の点で、特許請求の範囲の記載により、特許を受けようとする発明が明確ではない。よって、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、訂正発明1~4に係る特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 (ア) 訂正発明における「0.4g」とは、文字どおり「0.4000・・・g」という小数点以下の四捨五入を考慮しない数値のみを意味しているのか、小数点以下の2桁目等のいずれかを四捨五入したものを意味しているのかがわからず、そのいずれを採用するかによって「0.4g」に含まれる範囲が変わるから、訂正発明は明確でない。 無効理由3(サポート要件) 訂正発明1~4はいずれも、下記(イ)の点で、発明の詳細な説明に記載したものではない。 よって、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、訂正発明1~4に係る特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 (イ) 訂正発明における「0.4g」が、小数点以下の何桁目かを四捨五入したものであるとしても、本件明細書にはその点が開示されていないから、訂正発明は、本件明細書に記載したものではない。 (2)提出した証拠方法 甲1:特許第6236167号公報(本件特許) 甲2:Current Eye Research,2014年,Vol.39,No.8,pp.813-822 甲3:特願2016-550377号に対する平成29年6月8日付け拒絶理由通知書 甲4:Michael J. Akers,“Drug Delivery:Parenteral Route”,Encyclopedia of PHARMACEUTICAL TECHNOLOGY,Third Edition,Volume 2,James Swarbrick編, PharmaceuTech,Inc.発行,2007年,pp.1266-1278 甲5:栗田隆、「点眼薬の安定性」、眼科New Insight 第2巻、“点眼薬-常識と非常識-”、株式会社メジカルビュー社発行、1996年3月10日(第2刷)、15~23頁 甲6:点眼剤、株式会社南山堂発行、1984年6月20日、29~30頁 甲7:第十六改正日本薬局方解説書、東京廣川書店発行、2011年、A-107~A-112頁 甲8:PDA Journal of GMP and Validation in Japan,2001年,Vol.3,No.2,pp.97-103 甲9:第十六改正日本薬局方解説書、東京廣川書店発行、2011年、B-621~B-644頁 甲10の1:「抗アレルギー点眼剤パタノール(R) (合議体注:(R)は、原文では上付きの丸囲みされたRである。以下同じ。)点眼液0.1%」の医薬品インタビューフォーム、2009年12月改定(新様式第5版)、表紙、6~8頁 甲10の2:「角結膜上皮障害治療用点眼剤ヒアレイン(R)点眼液0.1% ヒアレイン(R)ミニ点眼液0.1% ヒアレイン(R)点眼液0.3% ヒアレイン(R)ミニ点眼液0.3%」の医薬品インタビューフォーム、2010年11月(改訂第7版)、表紙、29~30頁 甲10の3:「プロスタグランジンF2α誘導体 緑内障・高眼圧症治療剤 処方せん医薬品 キサラタン(R)点眼液0.005%」の医薬品インタビューフォーム、2012年7月(改訂第9版)、表紙、7~10頁 甲10の4:「炭酸脱水酵素阻害剤/β-遮断剤配合剤 緑内障・高眼圧症治療剤 コソプト(R)配合点眼液」の医薬品インタビューフォーム、2014年8月改訂(改訂第9版)、表紙、36~37頁 甲10の5:「アドレナリンα2受容体作動薬 緑内障・高眼圧症治療剤 アイファガン(R)点眼液0.1%」の医薬品インタビューフォーム、2013年5月(改訂第4版)の表紙、38~40頁 甲10の6:「プロスタグランジンF2α誘導体 緑内障・高眼圧症治療剤 劇薬、処方せん医薬品(・・・)タプロス(R)点眼液0.0015% 劇薬、処方せん医薬品(・・・)タプロス(R)ミニ点眼液0.0015%」の医薬品インタビューフォーム、2013年10月(改訂第8版)の表紙、40~41頁 甲10の7:「ドライアイ治療剤(ムチン/水分分泌促進点眼剤)処方せん医薬品(注意-医師等の処方せんにより使用すること)ジクアス(R)点眼液3%」の医薬品インタビューフォーム、2014年9月(改訂第7版)の表紙、35~36頁 甲10の8:「抗アレルギー点眼剤 アレジオン(R)点眼液0.05%」の医薬品インタビューフォーム、2014年8月(第3版)の表紙、35~36頁 甲11:特願2016-550377号における平成29年10月11日受付意見書 (以上、審判請求書に添付。) 甲12:薬剤学、2015年1月、Vol.75,No.1,pp.65-71(合議体注:発行年月については、https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jpstj/75/1/_contents/-char/ja参照) 甲13:病院薬学、1998年、Vol.24,No.6,pp.595-600 甲14:「グラナテック点眼液0.4%」の医薬品製造販売承認申請書、興和株式会社、平成25年10月10日申請 甲15:「新医薬品の製造又は輸入の承認申請に際し承認申請書に添付すべき資料の作成要領について」、厚生労働省医薬局審査管理課長通知、平成13年6月21日医薬審発第899号、平成15年7月1日薬食審査発第0701004号一部改正、平成16年5月25日薬食審査発第0525003号一部改正 甲16:「安定性試験ガイドラインについて」、厚生省薬務局新医薬品課長通知、平成6年4月21日薬新薬第30号、平成9年5月28日薬審第422号一部改正、平成9年5月28日薬審第425号一部改正、平成11年4月8日医薬審第666号一部改正 甲17:第十六改正日本薬局方、平成23年3月24日、目次、3~21頁 甲18:河嶋洋一、「点眼薬の設計思想」、眼科New Insight 第2巻、“点眼薬-常識と非常識-”、株式会社メジカルビュー社発行、1996年3月10日(第2刷)、6~9頁 甲19:「ケタス点眼液,アイビナール点眼液(イブジラスト)に関する資料」、杏林製薬株式会社、萬有製薬株式会社、目次、1~2頁 甲20:「医薬品関連医療事故防止対策の強化・徹底について」、厚生労働省医薬食品局長通知、平成16年6月2日薬食発第0602009号 甲21:「○眼科用薬製造(輸入)承認基準について」、厚生省薬務局長通知、昭和61年7月29日薬発第623号 甲22:「ポリ塩化ビニル製の医療用具から溶出する可塑剤(DEHP)について」、厚生労働省医薬局安全対策課長通知、平成14年10月17日医薬安発第1017001号 甲23:「医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン」、平成30年度厚生労働行政推進調査事業、平成30年12月 甲24:「点眼剤の適正使用ハンドブック-Q&A-」第2版、公益社団法人 東京医薬品工業協会 点眼剤研究会、関西医薬品協会 点眼剤研究会、令和4年12月 (以上、口頭審理陳述要領書に添付。) 甲25:国際公開第2012/105674号 甲26:特開2014-224090号公報(平成26年(2014年)12月4日公開) 甲27:「製剤研究報告書 件名:特許6236167号の無効審判に向けた検討-医療用点眼剤容器の水分損失率の測定」と題する報告書-、東亜薬品株式会社作成、2024年10月3日 甲28:「新医薬品の規格及び試験方法の設定について」、厚生労働省医薬局審査管理課長通知、平成13年5月1日医薬審発第568号 甲29:「炭酸脱水酵素阻害剤/β-遮断剤配合剤 緑内障・高眼圧症治療剤 コソプト(R)配合点眼液」の医薬品インタビューフォーム、2014年8月改訂(第9版)の表紙、6~8頁 甲30:「Rhoキナーゼ阻害薬-緑内障・高眼圧症治療剤-リパスジル塩酸塩水和物点眼液処方箋医薬品 グラナテック(R)点眼液0.4%」(合議体注:注記は省略した。)の医薬品インタビューフォーム、2023年9月改訂(第13版)の表紙、6~8頁 甲31:「“色”を測定する|測定のことを“即”知りたい「ソクシリ」キーエンス」のアーカイブ、2017年、https://web.archive.org/web/20171002084925/https://www.keyence.co.jp/ss/imagemeasure/sokushiri/news/006/ 甲32:分光測色計CM-700d/CM-600dの製品情報、コニカミノルタジャパン株式会社 甲33:「H1ブロッカー点眼剤 リボスチン点眼液0.025%」の医薬品インタビューフォーム、2013年8月(新様式第10版)の表紙、5~6頁 (以上、弁駁書に添付。) なお、上記甲号証のうち、甲1、甲3、甲11、甲23、甲24、甲30、甲31の公開日は本件特許の出願後であり、甲12、甲26の公開日は本件特許の優先日後であり、甲27の作成日は本件特許の出願後であり、甲14、甲19、甲32の公開日は不明である。 2 被請求人の主張、及び、提出した証拠方法 被請求人は、被請求人が提出した、第1答弁書、口頭審理陳述要領書、上申書及び第2答弁書によれば、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、請求人の本件特許が無効であるとの主張には理由がない旨を主張し、証拠方法として、乙第1号証~乙第24号証(枝番を含む。)(以下、各々、「乙1」、「乙2」・・・「乙24」といい、合わせて「乙号証」ということがある。)を提出している。 (証拠方法) 乙1:「○点眼剤用プラスチック容器の規格及び試験法について」、厚生省薬務局長通知、平成8年3月28日薬発第336号 乙2:ファルマシア、1977年、Vol.13,No.2,pp134-138 乙3:「アレルギー性結膜炎治療剤ケタス(R)点眼液0.01%」の医薬品インタビューフォーム、2019年2月改訂(第7版) 乙4:「散瞳剤 フェニレフリン塩酸塩点眼液ネオシネジンコーワ5%点眼液」の医薬品インタビューフォーム、2020年8月改訂(第5版) 乙5の1:ゼリア新薬工業株式会社「AZ抗菌 エーゼット抗菌目薬」の外箱、2013年頃 乙5の2:参天製薬株式会社「サンテ40」の外箱、2013年頃 乙5の3:ノバルティスファーマ株式会社「サジデンAL点眼薬」の外箱、2012年頃 乙5の4:「アイビット目薬CL」の外箱、2010年頃 乙5の5:「NewマイティアCLクール」の外箱、2013年頃 乙5の6:ライオン株式会社「スマイル40メディクリア」の外箱、2013年頃 乙5の7:久光製薬株式会社「眼涼アルファーストEX」の外箱、2012年頃 乙5の8:第一三共ヘルスケア株式会社「NEW AG EYES COOL」の外箱、2012年頃 乙5の9:「アニッシュ抗菌」の外箱、2015年5月頃 乙5の10:佐藤製薬株式会社「ノアールSG」の外箱、2014年1月頃 乙6:点眼薬容器の製品情報、阪神グループ、2023年検索 乙7の1:特開2005-247802号公報 乙7の2:特開2005-255688号公報 乙7の3:特開2007-23020号公報 乙7の4:特開2012-144509号公報 乙7の5:特開2013-10755号公報 乙7の6:特開2013-10756号公報 乙7の7:特開2013-227343号公報 乙7の8:国際公開第2013/129315号 乙7の9:特開2002-293746号公報 乙8の1:「Lubcar Eye Drops」の商品紹介ウェブページ、2023年検索 乙8の2:「Eye Drops 10ml Ocutears」の商品紹介ウェブページ、2023年検索 乙8の3:「MOXED-KT Eye Drops」の商品紹介ウェブページ、2023年検索 乙8の4:「EYE/EAR FLOMED-D Eye Drop」の商品紹介ウェブページ、2023年検索 乙9:医薬品の包装設計、杉原 正泰編著、株式会社南山堂発行、1984年、290-291頁 乙10:実験成績証明書、興和株式会社作成、2023年5月16日 (以上、第1答弁書に添付。) 乙11:「医薬品製造販売指針 2015」、株式会社じほう発行、2015年3月30日、56、66~76、96頁 乙12:「安定性試験ガイドラインの改定について」、厚生労働省医薬局審査管理課長通知、平成15年6月3日医薬審発第0603001号 乙13:「医薬品の承認申請について」、厚生労働省医薬品食品局長通知、平成26年11月21日薬食発1121第2号 乙14:「○医薬品の製造(輸入)承認申請に際して添付すべき安定性試験成績の取扱いについて」、厚生省薬務局審査・新医薬品課長連名通知、平成3年2月15日薬審第43号 乙15:第十七改正日本薬局方、平成28年3月7日、9、16頁 (以上、口頭審理陳述要領書に添付。) 乙16:成形加工、2009年、21巻5号、234~240頁 乙17:「ガスバリア入門講座 基礎編7」と題するウェブページのアーカイブ、https://web.archive.org/web/20081120041254/http:/www.soarnol.com/jpn/solution/solution060309.html 乙18:特許・実用新案審査ハンドブック 「第III部 第2章 新規性・進歩性」の項目「3202」(合議体注:右下に「(2021.5)」との記載あり。) 乙19の1:「角結膜上皮障害治療用点眼剤 日本薬局方 精製ヒアルロン酸ナトリウム点眼液 ヒアレイン(R)点眼液0.1% ヒアレイン(R)ミニ点眼液0.1% ヒアレイン(R)点眼液0.3% ヒアレイン(R)ミニ点眼液0.3%」の医薬品インタビューフォーム、2018年7月(改訂第11版)、表紙、4~6頁 乙19の2:「炭酸脱水酵素阻害剤/β-遮断剤配合剤 緑内障・高眼圧症治療剤 日本薬局方 ドルゾラミド塩酸塩・チモロールマレイン酸塩点眼液 処方箋医薬品 コソプト(R)配合点眼液 コソプト(R)ミニ配合点眼液」(合議体注:注記は省略した。)の医薬品インタビューフォーム、2022年2月(第20版)の表紙、7~9頁 乙19の3:「アドレナリンα2受容体作動薬 緑内障・高眼圧症治療剤 アイファガン(R)点眼液0.1%」の医薬品インタビューフォーム、2020年10月改訂(第7版)の表紙、8~10頁 乙19の4:「プロスタグランジンF2α誘導体 緑内障・高眼圧症治療剤 タフルプロスト点眼液 劇薬、処方箋医薬品 タプロス(R)点眼液0.0015% タプロス(R)ミニ点眼液0.0015%」(合議体注:注記は省略した。)の医薬品インタビューフォーム、2022年1月(第16版)の表紙、7~9頁 乙19の5:「ドライアイ治療剤(ムチン/水分分泌促進点眼剤) ジクアホソルナトリウム点眼液 処方箋医薬品 ジクアス(R)点眼液3%」(合議体注:注記は省略した。)の医薬品インタビューフォーム、2023年3月(第13版)の表紙、7~9頁 乙19の6:「抗アレルギー点眼剤 エピナスチン塩酸塩点眼液 アレジオン(R)点眼液0.05%」の医薬品インタビューフォーム、2023年7月(第11版)の表紙、5~6頁 (以上、上申書に添付。) 乙20:分光測色計 CM-700d/600d 取扱説明書、コニカミノルタ株式会社、表紙、32~39頁 乙21:1996 ANNUAL BOOK OF ASTM STANDARDS, SECTION 8,“Plastics” , VOLUME 08.01,Plastics(I):D256-D2343, 1996年, p.503 乙22:特開平10-99104号公報 乙23:特開昭48-83980号公報 乙24:特開平7-304670号公報 (以上、第2答弁書に添付。) なお、上記乙号証のうち、乙3、乙4、乙15、乙18、乙19の1~乙19の6の公開日は本件特許の出願後であり、乙11、乙13の公開日は本件特許の優先日後であり、乙10の作成日は本件特許の出願後である。 また、乙5の1~乙5の8、乙5、乙17の10の公開日は本件特許の優先日前であると推認され、乙5の9の公開日は本件特許の優先日後であると推認され、乙6、乙8の1~乙8の4、乙20の公開日は不明である。 第5 証拠の記載事項 1 甲号証の記載事項 甲2、甲4~甲10の8、甲12~甲18、甲28~甲33には、以下の記載がある。下線は当審で付したものもある。外国語で記載された号証については、当審合議体による訳文を記載する。 甲2 (甲2a)813頁の「要約」 「要約 目的:実験動物の眼圧(IOP)、眼球分布、及び房水動態に対する選択的Rho関連コイルドコイル含有プロテインキナーゼ(ROCK)阻害剤であるK-115の局所点眼を評価すること。 方法:K-115によるキナーゼ阻害を生化学的アッセイにより測定した。 アルビノのウサギとサルにおいて、K-115の局所点眼後、眼圧計を使用してIOPをモニタリングした。[14C]K-115の眼内分布は、全頭オートラジオグラフィーによって測定された。水流量は蛍光光度法により測定した。総流出能力とブドウ膜強膜流出は、それぞれ2レベル定圧灌流とフルオレセインイソチオシアネートデキストランを使用する灌流技術によって測定された。 結果:生化学的アッセイにより、K-115がROCKに対して選択的かつ強力な阻害効果を有することが示された。ウサギでは、K-115の局所点眼注入により、用量依存的にIOPが有意に低下した。局所点眼の1時間後に最大のIOP低下が観察され、0.5%でベースラインIOPから8.55±1.09mmHg(平均±SE)の低下であった。サルでは、局所点眼の2時間後に最大のIOP低下が観察され、0.4%でベースラインIOPから4.36±0.32mmHgの低下であり、0.005%ラタノプロストよりも有意に強かった。全頭オートラジオグラフィーでは、同側の眼に[14C]K-115を点眼してから15分後に放射能レベルが最大になることが示された。0.4%K-115の単回点眼は房水流量またはブドウ膜強膜流出には影響を示さなかったが、溶媒で処理したウサギの眼と比較して従来の流出能力を2.2倍大幅に増加させた。 結論:これらの結果は、選択的で強力なROCK阻害剤であるK-115点眼液が新規で強力な抗緑内障薬であることを示した。」 (甲2b)814頁左欄下から8行~右欄6行 「K-115の化学構造を図1に示す。K-115は当研究所で合成したものである。Y-27632は、Calbiochem社(カリフォルニア州サンディエゴ)から、HA-1077はEnzo Life Science社(ニューヨーク州ファーミングデール)から購入した。・・・局所点眼試験のため、K-115は臨床に用いる保存剤を含有する溶媒に溶解した。 [14C]K-115(・・・)(図1)は、Quotient Bioreseach社(・・・)によって合成され、K-115点眼薬のビヒクルに溶解された。」 「 [図:0001438630000001.jpg] 図1 K-115及び[14C]K-115の化学構造。*位置は14Cによって均一にラベルされている。」 (甲2c)814頁右欄本文7~815頁左欄10行 「キナーゼ阻害アッセイ 組換えROCK(ROCK1及びROCK2)、タンパク質キナーゼA(PKA触媒α/PPKACA)、及びカルモジュリン依存性タンパク質キナーゼ(CaMKII)は、Carna Biosciences(神戸、日本)から購入した。精製タンパク質キナーゼC(PKC)は、Promega(マディソン、WI)から購入した。ROCK1(0.75ng/μL)及びROCK2(0.5ng/μL)は、100mmol/LのKCl、10mmol/LのMgCl2、0.1mmol/LのEGTA、30μmol/LのLong S6 キナーゼ基質ペプチド、及び、1μmol/LのATP含む全量40μLの50mmol/LのTris-HCl緩衝液(pH7.5)中で、様々な濃度のK-115、Y-27632、又は、HA-1077とともに25℃90分間でインキュベートした。・・・インキュベーション後、40μLのKinase-Glo発光キナーゼアッセイ溶液(Promega、マディソン、WI)を加え、25℃で10分間維持し、ルミノメーターを使用して相対光単位(RLU)を測定した。試験化合物がない場合のRLUを100%(コントロール値)に設定し、酵素も化合物もない場合のRLUを0%(規標準値)に設定した。そして、各濃度の試験化合物を添加したRLUから反応率(コントロールに対する%)を計算し、SAS(・・・)を使用したロジスティック回帰分析によって50%阻害濃度(IC50)を決定した。」 (甲2d)815頁左欄13~15行 「ウサギを用いた実験では、50μLの溶媒若しくは濃度0.0625%、0.125%、0.25%又は0.5%のK-115を片眼に点眼した。」 (甲2e)816頁右欄本文1~18行 「結果 K-115によるキナーゼ阻害 K-115のキナーゼ阻害特性を評価した。K-115はROCKに対して阻害効果を示した。ROCK2(0.019μmol/L;95%CI 0.017-0.021μmol/L)に対するK-115の50%阻害濃度(IC50)は、ROCK1に対するもの(0.051μmol/L;95%CI 0.041-0.064μmol/L)よりも2.68倍低かった (阻害効果が高かった)。・・・これらの結果は、K-115がROCKに対して非常に選択的で強力な阻害剤であることを示している。結果は表1にまとめられている。」 (甲2f)816頁右欄下から5行~818頁左欄15行 「サルの眼におけるIOP測定 サルでは、0.1%から0.4%の濃度でK-115を局所点眼すると、用量依存的にIOPが低下した(図3A-C)。K-115の投与2時間後に最大IOPの減少が観察された。対照的に、ラタノプロストの局所点眼はIOPを低下させ、最大効果は投与後4時間で観察された(図3D)。初期値と比較したIOP低下(平均±SE)は、それぞれ0.1%、0.2%、0.4%K-115で2.29±0.24mmHg(p<0.05、初期値に対するダネットの多重比較)、3.28±0.28mmHg(p<0.01)、4.36±0.32mmHg(p<0.001)、0.005%ラタノプロストで2.50±0.16mmHg(p<0.01)であった(図3E)。さらに、K-115は用量依存的に眼圧低下の持続時間を示し、0.4%群では点眼後6時間まで有意な低下効果が観察された。0.2%及び0.4%のK-115は、サルの眼においてラタノプロストと比較して強力かつ迅速な眼圧低下効果を示した。」 (甲2g)817頁 Figure 3 「 [図:0001438630000002.jpg] 図3 K-115の局所投与がサルの眼のIOPに及ぼす影響。K-115又はラタノプロストを片方の眼に点眼した。反対側の眼は治療しなかった(n=8)。IOPの変化の経時変化。(A)0.1%、(B)0.2%、(C)0.4%K-115、(D)0.005%ラタノプロスト。投与前及び点眼後の各時点でのIOPは、点眼側 (●) の結果と比較され、各時点での治療眼及び未治療眼(○)の結果と比較された。データは平均値(mmHg)±SEである。所見の有意性はダネットの多重比較検定によって評価された。点眼側の初期(0時間)値と比較した*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。(E)最大眼圧低下。データは平均値(mmHg)±SEである。所見の有意性はダネットの多重比較検定によって評価された。***p<0.001はラタノプロストに対するものである。」(合議体注:図中の外国語は翻訳を省略した。) (甲2h)821頁左欄本文下から6~最終行 「まとめると、選択的かつ強力なROCK阻害剤であるK-115は、局所点眼による流出能力の増大によって眼圧を低下させる効果があることが示された。この新しい作用機序は、緑内障治療における単独療法だけでなく併用療法によるIOP管理にも応用されるであろう。」 甲4 (甲4a)1266頁左欄1~14行 「イントロダクション 小容量注入(SVI)は、「100mlよりも少ない容量を含むことがラベルされた容器にパッケージされた注射」を意味すると米国薬局方24[1]において定義されている。したがって、バイアル、アンプル、シリンジ、カートリッジ、ボトルといったあらゆる100mlよりも少ない容器にパッケージされるすべての無菌製品は、ここに分類される。スクイズ可能なプラスチック容器にパッケージされた点眼のための製品は、注射というより眼に局所的に適用されるものであるが、容器サイズが100mlよりも少ないという点において小容量注入に分類される(・・・)。」 (甲4b)1267頁左欄2段落 「眼科用製品(9) 眼科用医薬品には、眼の角膜表面に局所的に投与される溶液、懸濁液、ゲル、または軟膏の薬物が含まれる。眼科用製品には、LVIサイズの洗浄液も含まれる。緑内障、感染症、炎症、その他の目の病気を治療するための眼科用医薬品製品には、さまざまな種類がある。眼科用製品は無菌である必要があるが、局所的に適用されるため、発熱物質を含まない必要はない。点眼のための溶液及び懸濁液は、通常、簡単に投与できるよう、スクイズ可能な低密度ポリエチレン容器にパッケージされる。」 (甲4c)1276頁左欄1段落 「パッケージング パッケージングシステムは明らかに非経口製品の不可欠な部分であり、製品製剤の物理的および化学的安定性の長期的な保護と維持を提供する。パッケージングは、医薬品のより便利な送達 (例: シリンジ、デュアルチャンバーバイアル) を提供し、薬物投与のより適切な制御 (例: カートリッジ) を提供することにより、薬物送達ツールとしても使用できる。パッケージングは粒子汚染の主な原因であり、製品の物理的および化学的劣化に寄与する可能性がある。パッケージング成分が製品に浸出したり、製品が吸着または吸収される可能性がある。パッケージングシステムの主な種類は、ガラス、ゴム、プラスチックである。眼科軟膏用の金属チューブについてはここでは扱わない。主なSVIパッケージングシステムには、ガラス密封アンプル、ゴム密封バイアル、プレフィルドシリンジ、カートリッジ及びガラス又はプラスチック製の小容量および大容量ボトルが含まれる。」 (甲4d)1277頁左欄最終段落 「プラスチック プラスチックパッケージは、点眼薬の剤形にとって常に重要であり、注射剤の剤形でも一般的になっている。プラスチックボトルは、人々が目に薬の液滴を適用できるようにするために使用される。LVI用のプラスチックボトルは長年使用されてきた。SVI用のプラスチック製バイアルは、次代を担うものとなる可能性がある。プラスチックパッケージはコスト削減、ガラス破損によるトラブルの解消、使いやすさの向上などのメリットがある。他のパッケージシステムと同様に、プラスチック配合物は製品と相互作用し、物理的および化学的安定性の問題を引き起こす可能性がある。プラスチック配合物はゴム配合物ほど複雑ではなく、その成分の浸出性の可能性が低い傾向がある。しかし、可塑剤浸出液は、LVIバッグや投与装置に使用されるポリ塩化ビニル容器などのポリマーでよく知られている。眼科製品に最も一般的に使用されるプラスチックポリマーは低密度ポリエチレンである。他のSVIでは、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリアミド (ナイロン)、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニルなどのコポリマーと同様に、ポリオレフィン配合物が広く使用されている。」 甲5 (甲5a)17頁の表1 「 [図:0001438630000003.jpg] 」 (甲5b)20頁「点眼瓶・包装の選択」の項 「 点眼薬の安定性の確保は,・・・特に,光による影響に対しては「遮光」により安定性を維持することも必要である。薬物がどの波長に特に不安定かにより,適切な遮光波長特性を持つ点眼瓶や遮光袋の選択がなされることになる。」 (甲5c)21頁「点眼薬の安定性は点眼瓶内での話である」の項、表3 「 点眼瓶の材質としては,通常,ポリプロピレン(PP),ポリエチレン(PE),ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリカーボネート(PC)などが使用される。これらは,ガス,水分,光に対する透過性がそれぞれ異なる[表3]。また容器中に架橋剤,活性剤,可塑剤,酸化防止剤,紫外線吸収剤,着色剤,未反応のプラスチックモノマーなどを含むため,これらの溶出により製剤の安定性も影響を受ける。したがって点眼薬の中味を別の点眼瓶に移すことは,薬物の安定性そのものの変化につながるため,非常識なことと考えてよい。」 「 [図:0001438630000004.jpg] 」 (甲5d)23頁2~5行 「 表4をみると,遮光保存の必要な製品が意外に多いことがわかる。したがって,外箱に入っている間はよいが,開封後は保管場所に注意を払う必要がある。ただし,遮光保存をうたっていない製品についても,直射日光の下に置かないほうがよいことはいうまでもない。」 (甲5e)18頁「IV.安定性を向上させる工夫」の項 「 点眼薬の大半は水性点眼液であるため,常に加水分解の脅威にさらされている。また点眼容器も透明に近いため,光の影響を受けやすい。通常,1本の点眼液は数週間にわたって使用されるが,使用のたびに,空気が出入りすると酸化を受けやすくなる。点眼薬の設計にあたっては,このような安定性によって不利に働く条件を克服する工夫が必要となる。」 (甲5f)20頁「着色と含量低下」の項 「 機器分析とは異なり,点眼薬の着色現象は,それが目にみえる変化であるだけに注目されやすい。しかし,点眼薬がたとえ着色しても,薬物の量自体はほとんど減っていないこともある。・・・」 甲6 (甲6a)29頁「1)材質」の項 「1)材質 容器の本体にはガラス製のものとプラスチック製のものがあり,ノズルやキャップの材質については表2-1のとおりである.」 (甲6b)30頁の表2-1 「 [図:0001438630000005.jpg] 」 甲7 (甲7a)A-107頁「6.1 点眼剤」の項 「(1)点眼剤は,結膜嚢などの眼組織に適用する,液状,又は用事溶解若しくは用事懸濁して用いる固形の無菌製剤である.[注3](2)本剤を製するには,通例,有効成分に添加剤を加え,溶剤などに溶解若しくは懸濁して一定容量としたもの,又は有効成分に添加剤を加えたものを容器に充てんする.・・・」 (甲7b)A-112頁7~18行 「容器:点眼用の容器として種々の形の点眼瓶が考案されているが,微生物侵入阻止性,透湿性,透ガス性,耐薬品性,成形性,透明性などに注意が必要である.・・・ プラスチック製のものは,加熱減菌ができないこと,可塑性添加剤の溶出,通気性,透湿性の可能性があること,水分の揮散や一部の薬品,添加物などを吸着するなどの欠点を有するものであるが,最近はかなり透明性の高い樹脂が開発され,繁用されている.点眼剤に用いられる容器の素材としてポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート,ポリアクリレート),ポリカーポネートが用いられている.」 (甲7c)A-112頁26~29行 「[日局](合議体注:原文では「日局」の四角囲み。以下同じ。)でも[13局](合議体注:原文では「13局」の四角囲み。以下同じ。)から一般試験法にプラスチック製医薬品容器試験法が収載され,安全性に関する各種の試験法が記載されている.特に点眼剤用プラスチック容器は,平成8年3月28日薬発第336号で点眼剤用プラスチック製容器の規格及び試験法が定められている.」 甲8 (甲8a)97頁右欄1~5行 「一般に点眼剤は直接容器のほとんどがプラスチック製であり,その素材の多くは水蒸気透過の小さいポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP)が使用されているが,・・・」 甲9 (甲9a)B-640頁の「解説」の3~21行 「(1)プラスチック製医薬品容器試験法への流れ 今日プラスチックは医療の場において,ディスポーザプル製品としての注射筒,各種カテーテルやチュープなどの例をあげるまでもなく,容器,用具並びに包装材料,更には着衣などの各種雑貨を含めた幅広い分野に普及し,定着している. そのなかで,プラスチックを用いた医療容器は,形態としてブリスター包装,ストリップシート,ユニットパック包装,ボトルタイプ,シリンジタイプ,バッグなどがあり,錠剤,カプセル剤,散剤,顆粒剤,坐剤,液剤,シロップ剤,点眼薬,ローション剤,注射剤などの容器として用いられている.また,用いられる素材も多種多様で,ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン酢酸ビニル共重合体,エチレンビニルアルコール共重合体,ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン,ポリスチレン,ポリカーポネート,ポリエチレンテレフタレート,ポリ酢酸ビニル,環状ポリオレフィンなどである. 従来,わが国におけるプラスチック容器に関する規定は,[8局]より導入された「輸液用プラスチック容器試験法」と昭和48年9月26日薬発第958号「点眼プラスチック容器及び試験法」があり,特に「輸液用プラスチック容器試験法」は,[日局]に唯一収載されたプラスチック容器に関する試験法であったため,輸液として用いる注射剤に使用する内容500ml以上のポリエチレン製,ポリプロピレン製又はポリ塩化ビニル製容器を対象としたものであったにもかかわらず,「点眼用プラスチック容器及び試験法」をはじめ,薬事法第42条に基づいて規定された各種医療用具基準や輸液以外の他の医薬品容器の化学的・生物学的安全性の判断基準として利用されてきた.」 (甲9b)B-641頁6~10行 「最近,外国薬局方や国際的な規格基準との調和がすすめられているが,外国の代表的な薬局方である[USP],[EP]では,プラスチック容器の規定が輸液に限定されていない. このような現状を踏まえて,[日局]では[13局]から輸液用容器のみではなく,すべての医薬品製剤を対象としたプラスチック製医薬品容器の基本要件と試験法を明確化することとなった.」 甲10の1~甲10の8 (甲10の1~甲10の8) 本件特許の優先日当時、種々の点眼剤において、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの容器が用いられていることが記載されている。 甲10の1 (甲10の1a)表紙 「 [図:0001438630000006.jpg] 」 (甲10の1b)7頁の項目「3」 「 [図:0001438630000007.jpg] 」 甲10の3 (甲10の3a)8頁の項目「3」 「 [図:0001438630000008.jpg] 」 甲12 (甲12a)67頁左欄下から4行~右欄下から7行 「3.pHならびに浸透圧 各製品のpH規格の年代別の推移をFig.3に示す.1984年発売のアドソルボカルビン(R) 点眼液1%および2%のpH3.5~5.5を除き,pH4以下の規格を持つ点眼液はなく,pH4~8のレンジ内であった.また,すべての製品の浸透圧は0.6~1.6のレンジであった. 日局の製剤総則,点眼剤には「本剤には,涙液と等張にするため塩化ナトリウム又はそのほかの添加剤を,また,pHを調節するため酸又はアルカリを加えることができる」と記載されているが,特にpH,浸透圧の規定はない.健康なヒトの涙液はpH7.4前後で,浸透圧は血清と等しく,塩化ナトリウムの0.9w/v%溶液に相当している.涙液には緩衝能があり,しかも涙液による希釈が急速に行われるため,点眼剤のpH,浸透圧を必ずしも涙液のpH,浸透圧に調整する必要はなく,一般的には,pH5から8.5程度の点眼液でも通常の点眼量(1から2滴)ではほとんど刺激はない. また,浸透圧に関しては,塩化ナトリウムに換算して0.6~2.0w/v%の範囲で不快感はあまりないと言われている7).各製品もほぼこれに準じた形で処方設計されており,この傾向は今後も変わらないものと考えられる.」 甲13 (甲13a)596頁左欄~597頁左欄の「実験の部」 「実験の部 1.試料 本実験に用いた5ml入りの点眼液の薬品名,販売会社名およびロット番号を表1に示した.なお,実験に用いた43製品は各製薬会社から購入して使用した. ・・・ 4.pHの測定 pHは点眼剤を開栓または調製直後にpHメーター(・・・)を用いて常温で測定した.測定は3回行い,その平均値を用いた. ・・・」 (甲13b)596頁「表1」 「 [図:0001438630000009.jpg] 」 (甲13c)599頁右欄本文3行~600頁左欄2行 「 測定したpHは3.7-8.2と広範囲に観察され(図4),これらの値は添付文書に記載された値と一致した.・・・しかしながら、pHが2以下または11以上で著しい細胞破壊を示すものも,その中間のpHでは明らかな細胞障害性はみられないことから14),今回検討した点眼剤はpHによる問題はないと考えられた.」 (甲13d)599頁「図4」 「 [図:0001438630000010.jpg] 」 甲14 (甲14a)1~2頁の表 「 [図:0001438630000011.jpg] [図:0001438630000012.jpg] 」 (甲14b)11頁1行~12頁3行 「 [図:0001438630000013.jpg] ・・・ [図:0001438630000014.jpg] [図:0001438630000015.jpg] 」 (甲14c)15頁の次の頁 「 [図:0001438630000016.jpg] 」 甲15 (甲15a)1頁5~6行 「・・・新医薬品の製造又は輸入の承認申請に際し承認申請書に添付すべき資料(以下「承認申請書に添付すべき資料」という。)の作成については,下記によることとした・・・」 (甲15b)1頁「第一 趣旨」の項3~4行 「・・・「コモン・テクニカル・ドキュメント(国際共通化資料)」(以下「CTD」という。)が合意された。・・・」 (甲15c)1~2頁「第三 承認申請書に添付すべき資料の構成」の項 「I.承認申請書に添付すべき資料は以下の要領でまとめること。 ・・・ 2.第2部(資料概要) ・・・ (3)品質に関する概括資料 ・・・ 3.第3部(品質に関する文書)(・・・) ・・・ II.第2部から第5部までの資料は,CTDに関するガイドラインに基づき作成すること。」 (甲15d)別紙3の目次「第2部 CTDの概要(サマリー)」の項 「2.3 品質に関する概括資料 緒言 2.3.S 原薬(品名,製造業者) ・・・ 2.3.S.7 安定性(品名,製造業者) ・・・ 2.3.P 製剤(品名,剤型) ・・・ 2.3.P.8 安定性(品名,剤型)」 (甲15e)別紙3の目次「第3部 品質に関する文書」の項 「3.1 第3部目次 3.2 データ又は報告書 3.2.S 原薬(品名,製造業者) ・・・ 3.2.S.7 安定性(品名,製造業者) ・・・ 3.2.P 製剤(品名,剤型) ・・・ 3.2.P.8 安定性(品名,剤型)」 甲16 (甲16a)別紙「安定性試験ガイドライン」の「1.まえがき」の項 「1.まえがき ・・・ (3) 新有効成分含有医薬品について,やむを得ず製剤のみを承認申請する場合においても,原薬に関する安定性試験成績を提出する。」 (甲16b)別紙「安定性試験ガイドライン」の「3.原薬の安定性試験」の項 「3.原薬の安定性試験 (1) 一般的事項 原薬の安定性に関する資料は,その医薬品の安定性に関する基礎的な情報を得るために欠くことのできないものである。」 (甲16c)別紙「安定性試験ガイドライン」の「4.製剤の安定性試験」の項 「4.製剤の安定性試験 (1) 一般的事項 製剤の安定性試験は,原薬の反応性及び特性,並びに原薬の安定性試験の成績を十分考慮に入れて実施する。保存中に生ずると予測される変化及び安定性試験の対象となる測定項目の選定根拠を添付資料に記載する。」 (甲16d)別紙「安定性試験ガイドライン」の「6.用語の定義」の項 「・・・ (注7)製剤の加速試験において,中間的な条件での加速試験を実施するのは例えば,次のような品質の変化があった場合である。 ・・・ 2 特定の分解生成物が規格値を超えた場合 3 pHが規格値を逸脱した場合 ・・・ 5 色,相分離,再懸濁性,1回当りの噴霧量,ケーキング,硬度等が規格から逸脱した場合 ・・・」 (甲16e)「別記」の項 「別記 測定項目 承認申請書の規格及び試験方法欄に設定する項目のうち,保存により影響を受け易いと判断される項目のほか,医薬品の物性に関する変化,製剤特性に関する変化等安定性を検討するために有効な試験項目について行うことを原則とする。 長期保存試験,加速試験及び苛酷試験のそれぞれの目的に応じた試験項目について行う。 例えば,下記のような項目が挙げられる。 1)原薬については,含量(力価),分解生成物の量,性状,溶状,光学的純度等 2)製剤については,含量(力価),分解生成物の量,性状,製剤の有する特性等 ・・・」 甲17 (甲17a)3頁左欄 「通則 ・・・ 5 日本薬局方の医薬品の適否は,その医薬品各条の規定,通則,生薬総則,製剤総則及び一般試験法の規定によって判定する.・・・」 (甲17b)4頁右欄~5頁左欄 「・・・ 37 容器とは,医薬品を入れるもので,栓,ふたなども容器の一部である.容器は内容医薬品に規定された性状及び品質に対して影響を与える物理的,化学的作用を及ぼさない. ・・・ 41 遮光とは,通常の取扱い,運搬又は保存状態において,内容医薬品に規定された性状及び品質に対して影響を与える光の透過を防ぎ,内容医薬品を光の影響から保護することができることをいう. ・・・」 (甲17c)9頁左欄~右欄 「製剤総則 [1]製剤通則 ・・・ (6)添加剤は,製剤に含まれる有効成分以外の物質で,有効成分及び製剤の有効性を高める,製剤化を容易にする,品質の安定化を図る,又は使用性を向上させるなどの目的で用いられる.製剤には,必要に応じて,適切な添加剤を加えることができる.ただし,用いる添加剤はその製剤の投与量において薬理作用を示さず、無害でなければならない。また,添加剤は有効成分の治療効果を妨げるものであってはならない. ・・・ (10)製剤の容器・包装は,製剤の品質確保と共に,適正な使用及び投与時の安全確保に適したものとする.空気中の酸素などから製剤の品質を保護するために,脱酸素剤を装てんすることや,容器などに低気体透過性の材料を用いることができる. 湿気が品質に影響を与えるおそれのある製剤では,乾燥剤を装てんすることや,容器などに水分透過の少ない材料を用いるなど防湿包装とすることができる. また,水分の蒸散により品質が変化するおそれのある製剤では,容器などに低水蒸気透過性の材料を用いることができる. 一回使用量ずつ包装したものは分包品と称する. (11)製剤は,別に規定するもののほか,室温で保存する.製剤の品質に光が影響を与える場合,遮光して保存する.」 (甲17d)15頁右欄~16頁左欄「6.1 点眼剤」の項 「6.1 点眼剤 ・・・ (3)本剤を製するに用いる溶剤,又は本剤に添付された溶解液などは,本剤の使用に際して無害なものでなければならない.また,本剤の治療効果を妨げるものであってはならない. 溶剤を分けて次の2種類とする. (i)水性溶剤:水性点眼剤の溶剤には,精製水又は適切な水性溶剤を用いる.添付する溶解液には,滅菌精製水又は滅菌した水性溶剤を用いる. (ii)非水性溶剤:非水性点眼剤の溶剤には,通例,植物油を用いる.また,適切な有機溶媒も非水性溶剤として用いることができる. (4)本剤又は本剤に添付された溶解液などには,別に規定するもののほか,着色だけを目的とする物質を加えてはならない. (5)本剤には,涙液と等張にするため塩化ナトリウム又はそのほかの添加剤を,また,pHを調節するため酸又はアルカリを加えることができる. (6)本剤及び添付された溶解液などは,別に規定するもののほか,無菌試験法(4.06)に適合する. (7)本剤で多回投与容器に充てんするものは,微生物の発育を阻止するに足りる量の適切な保存剤を加えることができる. ・・・ (11)本剤に用いる容器は,通例,点眼剤の不溶性異物検査法(6.11)の試験に支障をきたさない透明性のある気密容器とする.製剤の品質に水分の蒸散が影響を与える場合は,低水蒸気透過性の容器を用いるか,又は低水蒸気透過性の包装を施す.」 甲18 (甲18a)9頁「II.点眼薬の製剤設計」の項、図2 「II.点眼薬の製剤設計 ・・・通常の製剤設計は前述の角膜透過性への影響を十分考慮し,図2のような流れでなされる。このフローチャートに沿って,前述したように水性点眼薬の開発を第一にめざすわけであるが,ここでは水性点眼薬において処方される等張化剤,緩衝剤,可溶化剤,安定化剤,防腐剤,粘稠化剤についての概略を説明する。」 「 [図:0001438630000017.jpg] 」 甲28 (甲28a)「3.2.2 新製剤」の項目「a)」 「3.2.2 新製剤 次に挙げる試験方法と判定基準は、概ねすべての新製剤に適用し得ると考えられる。 a)性状(Description) 剤形についての定性的な記述(例えば、大きさ、形状及び色)が必要である。製造工程であるいは保存中にこれらの特性が変化する場合には、その変化について検討を行い、適切な措置を取るべきである。どのような性状であれば許容し得るかを、判定基準として設定する必要がある。保存中に色が変化する場合には、定量的な方法を用いて設定するのが適切であろう。」 甲29 (甲29a)7頁の項目「5」 「 [図:0001438630000018.jpg] 」 甲30 (甲30a)7頁の項目「6」 「 [図:0001438630000019.jpg] 」 甲31 (甲31a)「色の3属性「色相」「明度」「彩度」を理解しましょう」の項目 「 [図:0001438630000020.jpg] 」 (甲31b)「色を数値として定量化する」の項目 「 [図:0001438630000021.jpg] 」 (甲31c)「ものづくりの現場で「色差」の判断」の項目 「 [図:0001438630000022.jpg] 」 甲32 (甲32a)「仕様」の項目 「 [図:0001438630000023.jpg] ・・・ [図:0001438630000024.jpg] ・・・」 甲33 (甲33a)5~6頁の表中の項目「4」 「 [図:0001438630000025.jpg] [図:0001438630000026.jpg] 」 2 乙号証の記載事項 乙1、乙3~乙9、乙11、乙12、乙14、乙19の1~乙21には、以下の記載がある。 乙1 (乙1a)1頁2~5行、10~14行 「・・・今般,第一三改正日本薬局方一般試験法「プラスチック製医薬品容器試験法」が定められたこと及び参考情報「プラスチック製医薬品容器」が示されたことを踏まえ、通知の点眼剤用プラスチック容器の規格及び試験法を別添のように改め、・・・ 記 「点眼剤用プラスチック容器の規格及び試験法」は、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート)、ポリカーボネート、ポリエチレン又はポリプロピレンを材質とする点眼剤用容器に適用する。これら以外の材質の容器、添加剤を変更する等の場合には、日局の参考情報「プラスチック製医薬品容器」に準拠し、試験項目等を規定すること。」 乙3 (乙3a)6頁の項目「5」 「 [図:0001438630000027.jpg] 」 (乙3b)30頁の項目「5」 「 [図:0001438630000028.jpg] 」 乙4 (乙4a)5頁の項目「10」の「(4)」 「 [図:0001438630000029.jpg] 」 乙5~乙8の4 (乙5~乙8の4) 本件特許の優先日当時、種々の点眼剤において、ポリエステル、ポリ塩化ビニルなどの容器が用いられていることが記載されている。 乙9 (乙9a)290頁下から14~最終行 「・・・最近,やはり透明性の良いUPとPETが使用されているが,同じ形の瓶で,PCとUP,PETの透湿性を比較すると,表8-5のようになり,PCの透湿性を1とすると,UPが半分,PETでは3分の1となる.20°,65%RHでこの瓶の経時透湿は表8-6のようになる.PCの場合は明らかに水分の飛びが大きい.このためPC容器の場合は,ピロー包装するのが一般的である.こういった透湿性の面からPCに代わってUPやPET容器の使用が増加しつつある. 一方, 点眼剤は水溶液であるので,化学反応も進行しやすく, 成分の安定性も一般に固形製剤より悪い.酸化による分解反応にも十分に注意を払う必要があり,できる限り気体,特に酸素ガス透過の少ない容器が望ましい.プラスチック・フィルムでのガス透過性は,測定法により大幅に異なり一概に比較できないが,PCの酸素透過性を1としたときの,大よその比較を行うと,表8-7のようになる.PVCが最もすぐれ,PET,UPがこれに次ぎ,PC,PP,PEはやや劣っているといえる.」 (乙9b)291頁 表8-5~表8-7 「 [図:0001438630000030.jpg] 」 乙11 (乙11a)65頁のタイトル 「第3章 医療用医薬品の製造販売承認申請書の作成」 (乙11b)70頁「4)成分及び分量又は本質欄の記載例」 「配合目的 (1)(合議体注:(1)は丸の中に1) 配合成分の配合目的を明らかにするため,有効成分,基剤,賦形剤等(・・・)の別を明確に記載することが必要である。 [図:0001438630000031.jpg] 」 (乙11c)73~74頁「容器の材質」の項 「容器又は被包(以下容器等という)については,直接の容器等及び中請医薬品の安定性を確保する上で重要な容器等の材質を記載する。(・・・)」 (乙11d)96頁「容器の記載の共通事項」の項 「(10)容器の記載(合議体注:(10)は丸の中に10) 容器(被包)は,製品の安定性と深く関連しており,品質管理面等から,直接の容器(被包)の材質等の記載が求められている。 その具体的記載内容としては,内袋を含めた直接の容器(被包)が明らかにされればよく,例えば,プラスチック容器であれば,プラスチックの主成分の種類(ポリエチレン,ポリ塩化ビニル等),特性(着色の有無等)を明らかにすれば,通常十分であり,プラスチック中の添加剤の記載は不要である。」 乙12 (乙12a)「安定性試験ガイドライン」の「1. 序論」の「1.1. ガイドラインの目的」の項 「1.1. ガイドラインの目的 本ガイドラインはICH安定性ガイドラインの改定版であり、EC、日本及び米国3極内において新有効成分含有医薬品の原薬及び製剤の承認申請を行うときに必要な安定性試験成績を示したものであり、3極以外の地域における承認申請や当該地域への輸出のための承認申請のための試験を対象とすることを必ずしも目的としているものではない。 本ガイドラインは、新有効成分含有医薬品の原薬及び製剤の安定性試験成績の主要部分を示したものである・・・」 (乙12b)「安定性試験ガイドライン」の「2. ガイドライン」の「2.1. 原薬」の項 「2.1. 原薬 2.1.1. 一般的事項 原薬の安定性に関する資料は、その医薬品の安定性を系統的に評価するために欠くことのできないものである。」 (乙12c)「安定性試験ガイドライン」の「2. ガイドライン」の「2.2. 製剤」の項 「2.2. 製剤 2.2.1. 一般的事項 製剤の正式な安定性試験は、原薬の挙動及び特性、原薬の安定性試験の成績並びに治験薬の処方検討から得られる経験を十分考慮に入れて計画する。保存中に生ずると予測される変化及び正式な安定性試験の対象となる測定項目の選定根拠を添付資料に記載する。」 (乙12d)「安定性試験ガイドライン」の「2. ガイドライン」の「2.2.7.1 一般的な製剤」の項 「2.2.7.1 一般的な製剤 ・・・ 一般に、製剤に関する「明確な品質の変化」とは、次に掲げる場合である。 ・・・ 2.特定の分解生成物が判定基準を超えた場合 3.外観、物理的項目及び機能性試験が判定基準から逸脱した場合(例えば、色、相分離、再懸濁性、ケーキング、硬度、1回当りの投与量)、・・・」 (乙12e)「安定性試験ガイドライン」の「3. 用語集」の項 「・・・ 製剤(Drug product) 剤形に処方され、市販される形の最終的な直接包装に容れられた医薬品原薬(Drug substance) 未処方の医薬品有効成分であり、製剤を製造するためには添加剤とともに処方されうるもの。 ・・・」 乙14 (乙14a)1頁本文1~5行 「医薬品の製造(輸入)承認申請に際して添付すべき安定性試験成績についての取扱いについては,・・・また,安定性試験実施方法のガイドラインについては別紙2としてとりまとめた・・・」 (乙14b)「別紙2 安定性試験実施方法のガイドライン」の「別記」 「測定項目 承認申請書の規格及び試験方法欄に設定する項目のうち、保存により影響を受け易いと判断される項目のほか、医薬品の物性に関する変化、製剤特性に関する変化等安定性を検討するために有効な試験項目について行うことを原則とする。 苛酷試験、長期保存試験及び加速試験のそれぞれの目的に応じた試験項目について行うこと。例えば、左記のような項目が挙げられる。 1)原薬については、含量(力価)、分解生成物の量、性状、溶状、光学的純度等 2)製剤については、含量(力価)、分解生成物の量、性状、製剤の有する特性等 3)製剤の剤形に応じて検討すべき項目の例 ・・・ pH・・液状製剤・・・等 重量変化・・プラスチック容器を用いた液剤・・・等 ・・・」 (乙14c)「別紙2 安定性試験実施方法のガイドライン」の「4 苛酷試験」 「4 苛酷試験 ・・・ 保存条件・・・ 製剤:温度(*5)、湿度(*8)及び光(*7)の三条件を考慮し、条件を設定すること。・・・ 測定項目・・承認申請書の規格及び試験方法の欄に設定する試験項目のうち保存により影響を受け易い項目並びにその他分解生成物の検索及び品質管理上必要と判断される項目(*11)(別記に例示) ・・・」 乙19の1 (乙19の1a)5頁の項目「5」 「 [図:0001438630000032.jpg] 」 乙19の2 (乙19の2a)8頁の項目「6」 「 [図:0001438630000033.jpg] 」 乙19の3 (乙19の3a)9頁の項目「6」 「 [図:0001438630000034.jpg] 」 乙19の4 (乙19の4a)8頁の項目「6」 「 [図:0001438630000035.jpg] 」 乙19の5 (乙19の5a)8頁の項目「6」 「 [図:0001438630000036.jpg] 」 乙19の6 (乙19の6a)6頁の項目「6」 「 [図:0001438630000037.jpg] 」 乙20 (乙20a)表紙 「 [図:0001438630000038.jpg] 」 (乙20b)35頁 「 [図:0001438630000039.jpg] ・・・ [図:0001438630000040.jpg] ・・・」 (乙20c)36頁) 「 [図:0001438630000041.jpg] ・・・ [図:0001438630000042.jpg] ・・・」 乙21 (乙21a)503頁1~8行 「最終ASTM指定:D 1925 - 70(再承認 1988) プラスチックの黄色度指数の標準試験方法 この試験方法は、主に、均質で蛍光を発しない、ほぼ無色透明又はほぼ白色の半透明または不透明プラスチックの日光照射下での黄色度(又は黄色度の変化)を測定することを目的とする。 以前は、プラスチックに関するASTM委員会D-20の管轄下にあったこの試験方法は、1995年に廃止され、ほぼ白色の不透明材料の白色度及び黄色度指数の試験方法E313に置き換えられた。」(合議体注:注記は省略した。) 第6 当審の判断 当審は、訂正発明1~4の特許は、無効理由1によって無効にすべきものであり、無効理由2、3によっては無効とすることはできない、と判断する。 その理由は、以下のとおりである。 1 無効理由1(進歩性)について (1)甲号証及び乙号証の記載事項 甲号証及び乙号証には、以下の事項が記載されていると認められる。 ア 医薬としての使用が予定されている化学物質を有効成分とする医薬品を製造し、販売し、又は使用するためには、当該化学物質からなる「原薬」の安定性試験成績及び「製剤」の安定性試験成績を含む資料を添付した申請書類を提出し、薬事承認を受ける必要がある(甲15a~e、甲16a~e、乙12a~e、乙14a、乙14b)。 イ 「液体製剤」の承認申請に必要な安定性試験は、「原薬」、「賦形剤などの添加剤」及び「容器の材質等」を特定してなされる(甲7a、乙12e)(参考:甲14a、甲14b(公開日不明)、乙11b~d(優先日後公知))。 ウ 「原薬」の承認申請に必要な安定性試験と「液体製剤」の承認申請に必要な安定性試験は、それぞれ独立した試験であるから、「原薬」の安定性にかかわらず、「液体製剤」自体の安定性試験結果を承認申請書に添付しなければならない(甲15a~e、甲16a~c、甲16e、乙12a~c、乙14b)。 エ 製剤の設計変更に関し、薬事承認を受けるためには、日本薬局方に則って、添加剤や容器について検討する必要があり、日本薬局方に適合するまで試行錯誤を繰り返す(甲17a~d、甲18a)。 オ 医薬品を収容できる容器の材質には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)といった種々のものが知られている(甲4b、d、甲5c、甲6b、甲7a、甲8a、甲9a、甲10の1~甲10の8、乙1a、乙3a、乙3b、乙4a、乙5~乙8の4)(参考:甲14b(公開日不明)、乙3a、乙3b、乙4a、乙11d(優先日後公知))。 カ 遮光保存をうたっていない点眼薬についても、直射日光を避けるなどの遮光保存が求められるものであって(甲5d)、薬物がどの波長に特に不安定かにより,適切な遮光波長特性を持つ点眼瓶や遮光袋の選択がなされる(甲5b)。ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などが使用される点眼瓶(プラスチック製容器)には、紫外線吸収剤などの添加剤が含まれることがある(甲5c)。 なお、プラスチック製容器中に添加剤が含まれていたとしてもその旨が明記されないのが実情である(参考:乙11c、乙11d(優先日後公知))。 キ 1mLあたりリパスジル塩酸塩水和物4.896mg(リパスジルとして4.0mg)を含有する点眼剤である製剤(グラナテック点眼液0.4%)は、精製水を含む組成物であって、滅菌済みの紫外線吸収剤含有ポリプロピレン(PP)製の容器に充てんされて、承認審査に付された(甲14a、甲14b(公開日不明))。当該点眼剤である製剤(グラナテック点眼液0.4%)は、ポリプロピレン(PP)製容器に充てんされたときよりも、紫外線吸収剤含有ポリプロピレン(PP)製容器に充てんされたときの方が光に安定である(合議体が職権により探知した、甲14の医薬品製造販売承認申請書に対応する審議結果報告書(平成26年9月11日 医薬食品局審査管理課、https://www.pmda.go.jp/drugs/2014/P201400129/270072000_22600AMX01307_A100_1.pdf)(以下「甲14審議結果報告書」という。)の4頁「(2)製剤」の「1)」及び「4)」。)。 ク 上記イ~エについては、「医薬品(医薬製剤)」の承認審査に関する本件特許の優先日当時の技術常識として、両当事者間に争いがないことが確認されている事項である(第1回口頭審理調書)。 ケ 点眼剤の安定性を評価するための、苛酷試験、加速試験、長期保存試験といった試験は、40℃で26週間(甲10の1b)、25℃で3ヶ月、50℃で30日(甲10の3a)、40℃で3ヶ月(甲29a)、60℃で3ヶ月(甲33a)といった種々の条件下で行われている。 なお、本件特許の出願後においても、各試験について、60℃で3ヶ月(乙3a)、60℃で1ヶ月、40℃で6ヶ月(乙19の1a、乙19の3a)、60℃で2週間、40℃で6ヶ月(乙19の2a、乙19の4a)、60℃で2ヶ月、40℃で6ヶ月(乙19の5a、乙19の6a)といった種々の条件下で行われている。 コ 点眼剤の安定性を評価するための指標として、分解生成物、pH、色、浸透圧比、重量変化といった種々の性状や特性の変化が用いられている(甲16d、甲28a、甲33a、乙12d、乙14b、乙14c)(参考:甲30a(出願後公知)、乙19の1a、乙19の2a、乙19の3a、乙19の4a、乙19の5a、乙19の6a(優先日後公知))。 サ 「色差式」とは、任意の色についての色合いを表す「色相」、明るさを表す「明度」、鮮やかさを表す「彩度」に基づいて、色の違いを意味する「色差」を算出する計算式である(甲31a~甲31c(出願後公知))。 シ 「CM-700d/600d」という分光測色計(乙20a)における「色差式」は、「ΔE*ab:ΔE*ab(CIE1976)色差式」、「ΔE*94:ΔE*(CIE1994)色差式」、「ΔE00:ΔE2000(CIE2000)色差式」等から選択されるものであり(甲32a、乙20b(ともに公開日不明))、黄色という特定の色についての「黄色度」というインデックスを意味する「YI」は、「YI(E313-73):黄色度(ASTM E313-73)」と「YI(D1925):黄色度(ASTM D1925)」から選択されるものである(甲32a、乙20c(ともに公開日不明))。 (2)甲2発明の認定 甲2a~甲2cによれば、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。 「下記の構造式で表されるK-115を含有する局所点眼液。 [図:0001438630000043.jpg] 」(以下「甲2発明1」という。) 「下記の構造式で表されるK-115を、K-115点眼薬のビヒクルに溶解させる工程からなる、K-115を含有する局所点眼液製造方法。 [図:0001438630000044.jpg] 」(以下「甲2発明2」という。) (3)訂正発明1について ア 対比 訂正発明1と甲2発明1とを対比する。 甲2発明1の「K-115」は、その構造式からみて、「4-フルオロ-5-[[(2S)-2-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル]イソキノリン」の1塩酸塩2水和物、すなわちリパスジルの1塩酸塩2水和物である(本件特許の明細書【0021】~【0024】)から、訂正発明1の「リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物」に相当する。 甲2発明1の「局所点眼液」と訂正発明1の「水性組成物」は、「組成物」である点に限り、一致する。 したがって、訂正発明1と甲2発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する組成物。」 <相違点> 相違点1 訂正発明1は、組成物が「水性組成物」であるのに対し、甲2発明1では、対応する事項が特定されていない点。 相違点2 訂正発明1は、組成物が「ポリエチレン及びポリプロピレンから選ばれる1種以上のポリオレフィン系樹脂製容器に収容されてなり」、「容器が、点眼剤用容器である、医薬製剤」であるのに対し、甲2発明1では、対応する事項が特定されていない点。 相違点3 訂正発明1は、組成物中の「リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量」が、組成物「100mL当たりフリー体として0.4g」であるのに対し、甲2発明1では、対応する事項が特定されていない点。 イ 当審の判断 (ア)相違点1について 甲2には、様々な濃度のK-115を組換えROCKという酵素とともにTris-HCl緩衝液(pH7.5)中でインキュベートすることによって、組換えROCKに対する50%阻害濃度(IC50)を決定したこと(甲2c、甲2e)、K-115が選択的かつ強力なROCK阻害剤(甲2h)であって、動物実験において眼圧を低下させる効果が確認されたこと(甲2a、甲2d、甲2f~甲2h)が記載されている。 ここで、「Tris-HCl緩衝液(pH7.5)」は、トリスヒドロキシメチルアミノメタンと塩酸を含む水性組成物であって、当該分野において生体分子を用いる実験においてよく用いられる緩衝液であることは、当業者に明らかな技術的事項である。 そうすると、甲2に接した当業者は、甲2に記載された「K-115」は水性組成物となりうるもので、水性組成物中にあることでROCK阻害活性(眼圧低下効果)を発揮する化合物であると理解する。 一方、甲2には「K-115」を含む組成物が「油性組成物」であることは記載されておらず、「K-115」を含む組成物を「油性組成物」とすることが技術常識であったという事情も見あたらない。 したがって、甲2に記載された「K-115」を含む組成物は、動物実験(甲2f~甲2h)で用いられた組成物も含めて、いずれも「水性組成物」であると解することが相当であって、承認審査に付されたリパスジル製剤が精製水を含む組成物であること(上記(1)キ)とも整合するものである。 したがって、相違点1は、実質的な相違点ではない。 相違点1が実質的な相違点であるとしても、甲2には、「K-115」が水性組成物中でROCK阻害活性を示すことが記載されている(甲2c、甲2e)から、当業者は、相違点1に係る訂正発明1の構成に容易に到達し得たといえる。 (イ)相違点2について 一般に、医薬としての使用が予定されている化学物質は、当該化学物質を有効成分とする医薬品を製造し、販売し、又は使用することを前提とするものであって、当該化学物質を有効成分とする医薬品を製造し、販売し、又は使用するためには、当該化学物質からなる「原薬」の安定性試験成績及び「製剤」の安定性試験成績を含む資料を添付した申請書類を提出し、薬事承認を受ける必要があることは、当業者に自明の事項である(上記(1)ア、ウ)。 また、ある化学物質を有効成分とする「製剤」の承認申請に必要な安定性試験には、「原薬」、「賦形剤などの添加剤」及び「容器の材質等」を特定する必要があることも当業者の技術常識である(上記(1)イ、ク)。 ここで、リパスジルは、抗緑内障薬という点眼薬としての使用が予定されていた化学物質である(甲2a、甲2b)。 そうすると、リパスジルを有効成分とする「点眼薬」という「製剤」として薬事承認を受けるためには、当業者には、承認審査の要求を満たすための「点眼剤用容器」を選択しようとする動機付けがある。 一方、本件特許の優先日当時において、医薬品を収容できる容器の材質として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)といった種々のものが知られていた(上記(1)オ~キ)。 そして、本件特許の優先日当時において、リパスジルを有効成分とする点眼薬の容器として、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)といったポリオレフィン系樹脂製容器を用いることを妨げる特段の事情は見あたらない。 そうすると、当業者は、甲2発明1において、リパスジルを有効成分とする点眼薬に用いる容器の材質として、種々の材質を検討し(上記(1)エ)、周知のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)を選択して、相違点2に係る訂正発明1の構成に容易に到達し得たといえる。 (ウ)相違点3について リパスジルの1塩酸塩2水和物の分子量は「395.88」であって、リパスジルの1塩酸塩2水和物の濃度「4.896mg/1mL」は、リパスジルの濃度「4.0mg/1mL」に相当する(甲14審議結果報告書の2頁目)。ここで、リパスジルの濃度「4.0mg/1mL」は、リパスジルについて「組成物100mL当たりのフリー体として0.4g」と同義である。 そうすると、甲2において眼圧低下の活性を示した「0.4%の濃度のK-115」は、リパスジルについて組成物100mL当たりのフリー体としての含有量として換算するとおよそ「0.33g」(=0.4(%)×4.0(1mL中のリパスジルの量(mg))/4.896(1mL中のリパスジルの1塩酸塩2水和物(K-115)の量(mg)))となる。同様にして、リパスジルの1塩酸塩2水和物である「K-115」の濃度(%)は、組成物100mL当たりのフリー体としての含有量(g)として換算することができる。 したがって、甲2には、K-115(リパスジル1塩酸塩2水和物)の濃度を、0.0625%(0.05g)(合議体注:括弧内は、水性組成物100mL当たりフリー体の量に換算した値。以下同じ。)、0.125%(0.10g)、0.25%(0.20g)、0.5%(0.41g)としてウサギに局所点眼した場合においても、0.1%(0.08g)、0.2%(0.16g)、0.4%(0.33g)としてサルに局所点眼した場合においても、用量依存的に眼圧(IOP)が低下したことが記載されているといえる(甲2a、甲2d、甲2f、甲2g)。 ここで、点眼剤における有効成分の濃度は、所望の効果を奏することが期待できる範囲において当業者が設定する設計事項であるところ、一般に、ヒトに適用することを前提とする点眼液を調製するにあたり、ウサギやサルの用量に基づいて、有効成分の濃度を設計することは、当業者に自明の技術的事項である。 そうすると、K-115が用量依存的に眼圧(IOP)を低下させるという甲2に記載の知見に接した当業者は、ヒトにおける眼圧低下作用の向上を期待して、ウサギやサルの用量に基づいて、眼圧低下作用が期待される濃度を設計しようとするのが自然であるから、甲2に開示されたリパスジルの濃度である「0.0625%(0.05g)、0.125%(0.10g)、0.25%(0.20g)、0.5%(0.41g)」や「0.1%(0.08g)、0.2%(0.16g)、0.4%(0.33g)」に基づいて、相違点3に係る訂正発明1の構成に容易に到達し得たといえる。 (エ)効果について a 本件特許の明細書の記載 本件特許の明細書の試験例1には、リパスジル1塩酸塩2水和物を0.4896g(フリー体として0.4g)含有する水性組成物を、ポリオレフィン系樹脂製容器であるポリエチレン(PE)製容器又はポリプロピレン(PP)製容器に収容し、60℃で3ヶ月保存し、保存前後での色差(ΔYI)を、色差計(分光測色計CM-700d:コニカミノルタセンシング(株))を用いて測定したところ、ポリエチレン(PE)製容器のΔYIが「4.07」、ポリプロピレン(PP)製容器のΔYIが「4.42」であったのに対し、同じ組成の水性組成物を、ポリ塩化ビニル(PVC)製容器に収容し、同じ条件で保存した保存前後での色差(ΔYI)を同じ色差計で測定したところ、「7.45」であったことが記載されている(本件特許の明細書【0043】~【0046】)。 本件特許の明細書の試験例2は、試験例1の「無水リン酸二水素ナトリウム」を「ホウ酸」に代えた水性組成物を、ポリオレフィン系樹脂製容器であるポリエチレン(PE)製容器又はポリプロピレン(PP)製容器に収容し、試験例1と同じ条件で、保存前後での色差(ΔYI)を測定したところ、それぞれ「4.15」、「4.64」であったことが記載されている(本件特許の明細書【0047】~【0050】)。 そうすると、本件特許の明細書の試験例1には、ポリエチレン(PE)製容器又はポリプロピレン(PP)製容器を用いた場合には、ポリ塩化ビニル(PVC)製容器を用いた場合と比較して、高温で長期間保存した場合でも相対的に変色が生じ難いこと、すなわち、変色の点で保存安定性に優れることが記載されているといえる。 しかし、本件特許の明細書には、保存条件を「60℃3ヶ月」としたことの技術的な理由も、「色差(ΔYI)」の値を「5以上のものを×」、「5未満のものを○」と評価したことの技術的な理由も記載されていない。 b 効果についての当審の判断 点眼剤といった化学物質を含む組成物の「安定性」を評価するための指標には、「色の変化」が含まれていることは当業者に周知の技術的事項である(上記(1)コ)から、「安定性」を評価する指標として、「色の変化」、すなわち「変色」に着目することは自然なことである。 また、リパスジルを有効成分とする「点眼薬」という「製剤」として薬事承認を受けるためには、当業者は「容器の材質」を検討して特定した「製剤」の安定性試験を行う必要があることは、上記(イ)で説示したとおりである。 そうすると、本件特許の明細書に記載された効果(上記a)は、当業者が必ず行う「製剤」の安定性試験によって自ずと明らかになる効果を確認したに過ぎないものである。 そして、たとえ、本件特許の明細書において、ポリエチレン(PE)製容器又はポリプロピレン(PP)製容器を用いた場合に、ポリ塩化ビニル(PVC)製容器を用いた場合と比較して、高温で長期間保存した場合でも相対的に変色が生じ難いことが記載されているとしても、保存条件を「60℃3ヶ月」としたことの技術的な理由も、「色差(ΔYI)」の値を「5以上のものを×」、「5未満のものを○」と評価したことの技術的な理由も記載されていない以上、上記の判断が左右されるものではない。 c 効果についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件特許の明細書に記載された効果(上記a)は、訂正発明1の進歩性の存在を推認できるような予測困難かつ格別顕著な効果であるとはいえない。 ウ まとめ 以上のとおりであるから、訂正発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)訂正発明2について 訂正発明2は、訂正発明1の医薬製剤について、「ポリオレフィン系樹脂製容器」を「ポリエチレン製容器」に限定するとともに、「水溶性組成物のpHが4~9」であることを特定するものである。 訂正発明2と甲2発明1とを対比すると、上記(3)アで示した一致点の点で一致し、相違点1、相違点3の点で相違し、さらに以下の相違点2’、相違点4の点で相違する。 <相違点> 相違点2’ 訂正発明2は、組成物が、「ポリオレフィン系樹脂製容器である」「ポリエチレン製容器」「に収容されてなり」、「容器が、点眼剤用容器である、医薬製剤」であるのに対し、甲2発明1では、対応する事項が特定されていない点。 相違点4 訂正発明2は、「水性組成物のpHが4~9」であるのに対し、甲2発明1では、対応する事項が特定されていない点。 相違点2’について検討する。 相違点2’は、実質的に相違点2と同じである。 したがって、上記(3)イ(イ)で説示したのと同様に、当業者は、甲2発明1において、リパスジルを有効成分とする点眼薬に用いる容器の材質として、種々の材質を検討し(上記(1)エ)、周知のポリエチレン(PE)を選択して、相違点2’に係る訂正発明2の構成に容易に到達し得たといえる。 相違点4について検討する。 本願優先日当時において、ヒトの眼に局所的に適用される点眼液のpHは、刺激や細胞障害性がみられないpH4~8程度とすることが、当業者に知られた技術的事項であったといえる(甲13a~d)。 そうすると、点眼薬としての使用が予定されている甲2発明1の水性組成物のpHを、当該知られた技術的事項に基づいて調整し、相違点4に係る訂正発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 相違点1及び相違点3については、上記(3)イ(ア)及び(ウ)で説示したのと同様に、当業者が容易になし得たことである。 そして、その効果も格別なものとはいえない。 (5)訂正発明3について ア 対比 訂正発明3と甲2発明2とを対比する。 甲2発明2の「K-115」は、その構造式からみて、「4-フルオロ-5-[[(2S)-2-メチル-1,4-ジアゼパン-1-イル]スルホニル]イソキノリン」の1塩酸塩2水和物、すなわちリパスジルの1塩酸塩2水和物である(本件特許の明細書【0021】~【0024】)から、訂正発明3の「リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物」に相当する。 甲2発明2の「局所点眼液」と訂正発明1の「水性組成物」は、「組成物」である点に限り、一致する。 甲2発明2の「局所点眼液製造方法」における局所点眼液は、通常、製造直後ではなく必要時に使用されるものであるから、必要となるときまでは何らかの容器に収容されて保管されるものである。そうすると、甲2発明2の「局所点眼液製造方法」に「容器に収容する工程」が含まれることは自明である。 したがって、訂正発明3と甲2発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物を含有する組成物を容器に収容する工程を含む、方法。」 <相違点> 相違点5 訂正発明3は、組成物が「水性組成物」であるのに対し、甲2発明2では、対応する事項が特定されていない点。 相違点6 「容器に収容する工程を含む、方法」について、訂正発明3では、容器が「ポリエチレン及びポリプロピレンから選ばれる1種以上のポリオレフィン系樹脂製容器」であり、方法が「水性組成物の変色の抑制方法」であるのに対し、甲2発明2では、容器の材質が特定されない「局所点眼液製造方法」である点。 相違点7 訂正発明3は、組成物中の「リパスジル若しくはその塩又はそれらの溶媒和物の含有量」が、組成物「100mL当たりフリー体として0.4g」であるのに対し、甲2発明2では、対応する事項が特定されていない点。 イ 当審の判断 (ア)相違点5についての当審の判断 相違点5は、相違点1と実質的に同じである。 したがって、上記(3)イ(ア)における説示と同様に、相違点5は、実質的な相違点ではないか、相違点5が実質的な相違点であるとしても、当業者は、相違点5に係る訂正発明3の構成に容易に到達し得たといえる。 (イ)相違点6についての当審の判断 上記(3)イ(イ)における説示と同様に、当業者は、リパスジルを有効成分とする点眼薬に用いる容器の材質として、種々の材質を検討し(上記(1)エ)、周知のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)を選択し得たといえる。 また、一般に、化学物質を含む組成物は、容器に収容することによって、容器に収容しない場合と比較して、安定性が向上するものであって、化学物質を含む組成物である点眼剤は、光や酸素による影響を受けることがあるため、適切な容器を選択することによって、このような安定性にとって不利に働く条件を克服することができることは、当業者に知られた技術的事項である(甲5e、甲5f)。 さらに、点眼剤といった化学物質を含む組成物の「安定性」を評価するための指標には、「色の変化」が含まれていることは当業者に周知の技術的事項である(上記(1)コ)から、「安定性」を評価する指標として、「色の変化」、すなわち「変色」に着目することは自然なことである。ここで、「色の変化」が少ないほど、すなわち「変色」が抑制されているほど、安定性が向上しているといえる。 そうすると、当業者は、甲2発明2において、リパスジルを含有する組成物をポリエチレン(PE)製やポリプロピレン(PP)製の容器といった周知の容器に収容することによって、容器に収容しない場合と比較して、安定性が向上し、おのずと「変色の抑制」が達成されることで、相違点6に係る訂正発明3の構成に容易に到達し得たといえる。 (ウ)相違点7についての当審の判断 相違点7は、相違点3と実質的に同じである。 したがって、上記(3)イ(ウ)における説示と同様に、当業者は、相違点7に係る訂正発明3の構成に容易に到達し得たといえる。 (エ)効果について 上記(3)イ(エ)で説示したのと同様に、技術常識を考慮しても、本件特許の明細書に記載された効果は、訂正発明3の進歩性の存在を推認できるような予測困難かつ格別顕著な効果とまではいえない。 オ まとめ 以上のとおりであるから、訂正発明3は、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6)訂正発明4について 訂正発明4は、訂正発明3の容器が、「点眼剤用容器である」ことを特定するとともに、「60℃で3ヶ月間保存したときに色差計(分光測色計CM-700d:コニカミノルタセンシング(株))で測定した保存前後の色差(ΔYI)を5未満とする」ことを特定するものである。 ア 対比 訂正発明4と甲2発明2とを対比すると、上記(5)アで示した一致点の点で一致し、相違点5、相違点7の点で相違し、さらに以下の相違点6’、相違点8の点で相違する。 <相違点> 相違点6’ 「容器に収容する工程を含む、方法」について、訂正発明4では、容器が「ポリエチレン及びポリプロピレンから選ばれる1種以上のポリオレフィン系樹脂製容器」である「点眼剤用容器」であり、方法が「水性組成物の変色の抑制方法」であるのに対し、甲2発明2では、容器の材質と用途が特定されない「局所点眼液製造方法」である点。 相違点8 訂正発明4では、「60℃で3ヶ月間保存したときに色差計(分光測色計CM-700d:コニカミノルタセンシング(株))で測定した保存前後の色差(ΔYI)を5未満とする」ことが特定されているのに対し、甲2発明2では、対応する事項が特定されていない点。 イ 当審の判断 (ア)相違点6’についての当審の判断 容器が「ポリエチレン及びポリプロピレンから選ばれる1種以上のポリオレフィン系樹脂製容器」であり、方法が「水性組成物の変色の抑制方法」である点については、上記(5)イ(イ)で説示したのと同様に、当業者が容易になし得たことであるし、容器が「点眼剤用容器」である点については、上記(3)イ(イ)で説示したのと同様に、当業者が容易になし得たことである。 (イ)相違点8についての当審の判断 相違点8に係る「60℃で3ヶ月間保存したときに色差計(分光測色計CM-700d:コニカミノルタセンシング(株))で測定した保存前後の色差(ΔYI)を5未満とする」という発明特定事項は、訂正請求書(8頁c)において説明されるとおり、本件特許の明細書の段落【0043】、【0045】、【0047】及び【0049】の記載に基づくものである。 そして、本件特許の明細書の上記段落の記載によれば、「60℃で3ヶ月間保存したときに色差計(分光測色計CM-700d:コニカミノルタセンシング(株))で測定した保存前後の色差(ΔYI)」は、「リパスジルを含有する水性組成物の変色を抑制する」という訂正発明の技術的課題を解決できているかを確認するために採用された指標の一つであるから、「60℃で3ヶ月間保存したときに色差計(分光測色計CM-700d:コニカミノルタセンシング(株))で測定した保存前後の色差(ΔYI)を5未満とする」という発明特定事項は、訂正発明4の方法において、特定の色差計を用いて色差の変化を測定する工程を特定するものではなく、訂正発明4における組成物の安定性の程度を特定するものと認められる。 そこで、以下、「60℃で3ヶ月間保存したときに色差計(分光測色計CM-700d:コニカミノルタセンシング(株))で測定した保存前後の色差(ΔYI)を5未満とする」という指標で特定された組成物の安定性の技術的意義について、検討する。 a 「60℃で3ヶ月間」の保存条件について 保存安定性を評価するための保存条件は、当業者が周知の条件(上記(1)コ)に基づいて選択、設定する設計事項であるし、「60℃で3ヶ月」とすることも薬事承認上における安定性試験の保存条件として当業者に知られた技術的事項である(上記(1)ケ、特に、甲33a)。また、本件特許の明細書をみても、「60℃で3ヶ月」という保存条件が、「60℃で3ヶ月」以外の保存条件と比べて何らかの特別な技術的意義がある条件であることの説明は見あたらない。 b 「色差計(分光測色計CM-700d:コニカミノルタセンシング(株))で測定した保存前後の色差(ΔYI)」について 「色差計(分光測色計CM-700d:コニカミノルタセンシング(株))」は、遅くとも本件特許の優先日前である2001年4月から2024年9月の間に生産されていた装置(分光測色計CM-700dに関するウェブページ、https://www.konicaminolta.jp/instruments/products/discontinued/の「分光測色計 CM-700d/CM-600d」の欄、及び、同ウェブページ、https://www.konicaminolta.jp/instruments/support/faq/detail/p64/)であって、「YI」で表される「黄色度」のインデックスを測定できる(上記(1)シ、甲32a、乙20c)装置であるから、保存前後で「色差計(分光測色計CM-700d:コニカミノルタセンシング(株))」により測定した「YI」の差である「ΔYI」は、本願優先日当時の当業者が容易に測定することができる指標である。 なお、このことは、本件特許の明細書においても、特段の支障なく「色差計(分光測色計CM-700d:コニカミノルタセンシング(株))」を用いて「ΔYI」の測定が行われている(【0043】~【0050】)こととも整合する。 c 「色差(ΔYI)を5未満とする」ことについて 化学物質や保存条件といった条件の相違によって「変色」等の経時変化の指標が異なることがあることは、当業者に自明の技術的事項であって、「変色」が「抑制」されたことを客観的に表すために、保存前後の色差の値に基づいて評価の基準値を設定することは、当業者が適宜なし得たことである。そして、本件特許の明細書をみても、「保存前後の色差(ΔYI)を5未満とする」ことに臨界的意義があることの説明がなく、何らの検証もされていない。 d 小括 上記a~cで説示したとおりであるから、相違点8に係る「60℃で3ヶ月間保存したときに色差計(分光測色計CM-700d:コニカミノルタセンシング(株))で測定した保存前後の色差(ΔYI)を5未満とする」という発明特定事項は、色の変化が小さいほど保存安定性が高く、水性組成物の変色が抑制されている、ということを、周知の技術的事項によって特定するに過ぎないものであって、それ以上の技術的意義がある発明特定事項であるとはいえない。 したがって、上記(3)で説示したのと同様に、当業者は、甲2発明2において、リパスジルを含有する組成物をポリエチレン(PE)製やポリプロピレン(PP)製の容器といった周知の容器に収容することによって、相違点8に係る訂正発明4の構成に容易に到達し得たといえる。 (ウ)相違点5及び相違点7についての当審の判断 相違点5及び相違点7については、上記(5)イ(ア)及び(ウ)で説示したのと同様に、当業者が容易になし得たことである。 (エ)効果について 上記(3)イ(エ)で説示したのと同様に、技術常識を考慮しても、本件特許の明細書に記載された効果は、訂正発明4の進歩性の存在を推認できるような予測困難かつ格別顕著な効果とまではいえない。 (7)小括 以上のとおり、訂正発明1~4は、甲2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (8)被請求人の主張と当審の判断 ア 被請求人の主張について 被請求人は、リパスジルの含有量が、訂正発明1では「水性組成物100mL当たりフリー体として0.4g」であるのに対し、甲2に記載の発明では「0.05g、0.10g、0.20g、0.41g、0.08g、0.16g、0.33g」である点を「相違点A」、訂正発明1では「ポリエチレン及びポリプロピレンから選ばれる1種以上のポリオレフィン系樹脂製容器に収容」されているのに対し、甲2に記載の発明では容器の材質が特定されていない点を「相違点B」として(上申書5頁1~9行)、第1答弁書、上申書及び第2答弁書において、概略、以下のように主張する。 (ア)相違点Aについて 甲2においては、K-115(リパスジル1塩酸塩2水和物)の濃度を、0.0625%(水性組成物100mL当たりフリー体として0.05g)、0.125%(同0.10g)、0.25%(同0.20g)、0.5%(同0.41g)としてウサギに局所点眼した場合においても、0.1%(同0.08g)、0.2%(同0.16g)、0.4%(同0.33g)としてサルに局所点眼した場合においても、用量依存的に眼圧(IOP)が低下したことが記載されているから、K-115を0.0625%(同0.05g)~0.5%(同0.41g)の濃度範囲で用量依存的に眼圧(IOP)が低下するという知見に接した当業者は、更なる眼圧低下作用の改善を期待して、K-115を、眼圧低下作用が最も期待される0.5%(同0.41g)よりも高い濃度としようとするのが自然であって、それよりも低い濃度である「水性組成物100mL当たりフリー体として0.4g」としようとする動機付けは一切ない(上申書5~6頁の「(2)相違点Aについて」、第2答弁書4~5頁の「(2)1)相違点Aについて」)。 (イ)相違点Bについて 本件特許の優先日当時において、製剤の安定化との関連が深いとされる容器のガス透過性について、プラスチックフィルムの中ではポリ塩化ビニル(PVC)が最も低くて優れており、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)は劣るとされていた(乙9a等)から、製剤の安定性への影響を考慮して容器の材質を選択する場合には、ガス透過性の高いポリエチレンやポリプロピレン製の容器は、安定性を満足させにくいものと考えむしろその使用を回避するはずである(第1答弁書7頁最終行~8頁2行、上申書6~7頁「(3)相違点B(・・・)について」の「1)」、第2答弁書5~7頁「(2)2)相違点Bについて」)。 (ウ)訂正発明の効果について 本件特許の明細書の表2、4及び2017年10月11日付意見書の表Aに示されるように、PVCやPETの容器と比較して、ポリエチレン製容器、ポリプロピレン製容器のみが格別な変色抑制効果を示すから、本件訂正発明は、高温で長期間保存したときの変色を抑制できる、という有利な効果を奏するものであるし、そもそも、本件訂正発明1は、リパスジルを含有する水性組成物を実際に高温で保存してみなければ決して把握することができない課題であって、甲2等に一切記載されていない課題を解決したものであるから、当業者が予測できない効果を奏するものである(第1答弁書7~11頁の第2(4)及び(5)、上申書8~10頁の(4)、第2答弁書7~8頁の「(2)3)本件訂正発明1の効果について」)。 イ 当審の判断 (ア)上記ア(ア)の被請求人の主張について 上記(3)イ(ウ)で説示したように、一般に、ヒトに適用することを前提とする点眼液を調製するにあたり、ウサギやサルの用量に基づいて、有効成分の濃度を設計することは、当業者に自明の技術的事項であり、K-115が用量依存的に眼圧(IOP)を低下させるという甲2に記載の知見に接した当業者は、ヒトにおける眼圧低下作用の向上を期待して、ウサギやサルにおいて眼圧低下作用が得られた種々の用量に基づいて、ヒトにおける眼圧低下作用が期待される濃度を設計しようとするのが自然であるから、「水性組成物100mL当たりフリー体として0.4g」としようとする動機付けがある。 したがって、上記ア(ア)の被請求人の主張は採用することができない。 (イ)上記ア(イ)の被請求人の主張について 本件特許の優先日当時において、医薬品を収容できる容器の材質として、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)が少なからず用いられていた(上記(1)オ~キ)ことからみて、製剤の安定性への影響を考慮して容器の材質を選択する場合であっても、ガス透過性の高いポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)製の容器の使用が回避されていたとはいえないし、本件特許の優先日当時において、リパスジルを有効成分とする点眼薬の容器として、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)といったポリオレフィン系樹脂製容器を用いることを妨げる特段の事情も見あたらない。 したがって、上記ア(イ)の被請求人の主張は採用することができない。 (ウ)上記ア(ウ)の被請求人の主張について 点眼液を「60℃3ヶ月」といった高温で長期間保存する条件での安定性を評価すること(上記(1)ケ、特に、甲33a)や、点眼剤といった化学物質を含む組成物の「安定性」を評価するための指標には「色の変化」が含まれていること(上記(1)コ)は、当業者に周知の技術的事項であるから、リパスジルを含有する水性組成物の「高温で長期間保存したときの変色を抑制」という課題は、当業者が容易に把握できることである。 そして、本件特許の明細書の表2、4及び2017年10月11日付意見書の表Aに示される効果は、上記(3)イ(エ)で説示したように、当業者が予測し得る範囲を超えるものではなく、訂正発明の進歩性の存在を推認できるような予測困難かつ格別顕著な効果であるとはいえない。 したがって、上記ア(ウ)の被請求人の主張は採用することができない。 ウ まとめ 以上のとおりであるから、上記被請求人の主張は、いずれも採用することができない。 2 無効理由2(明確性)について 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるかという観点から判断されるべきである。 ここで、点眼液における有効成分の含有量は、小数点以下のない数字であれば自然数と単位(例えば、1mg、3%)で表記し、小数点以下に0以外の数字がある場合には、その数字までの小数と単位(例えば、1.1mg、0.1%)で表記することが一般的(第4の1(2)の甲10の1~甲10の8の標題、甲10の1a)であって、四捨五入する桁数まで表記するような厳密な表記が求められていないことが、本件特許の出願時の技術常識であったといえる。 したがって、訂正発明における「0.4g」は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 よって、請求人の主張する無効理由2(明確性)は、理由がない。 3 無効理由3(サポート要件)について 本件特許の明細書には、訂正発明における「水性組成物100mL当たりフリー体として0.4g」が記載されている(【0044】【表1】、【0048】【表3】)し、「フリー体に換算して0.05~5w/v%」(水性組成物100mL当たりフリー体として0.05~5gに相当)という範囲も記載されている(【0026】)。 したがって、訂正発明は、本件特許の明細書に記載されたものである。 よって、請求人の主張する無効理由3(サポート要件)は、理由がない。 第7 むすび 以上のとおり、訂正発明1~4の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により被請求人の負担とする。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-800004

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