審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許無効審判

2023-800015

エピナスチン又はその塩を含有する水性組成物

審判番号
2023-800015
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2022-110987
登録番号
7118579
請求日
2023年02月28日
審決日
2024年08月30日
公報発行日
2025年01月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】日新製薬 株式会社
  • 【請求人代理人】宮嶋 学
  • 【請求人代理人】浅野 真理
  • 【請求人代理人】高田 泰彦
  • 【請求人代理人】柏 延之
  • 【請求人代理人】二枝 翔司
  • 【請求人】テイカ製薬 株式会社
  • 【請求人代理人】宮嶋 学
  • 【請求人代理人】浅野 真理
  • 【請求人代理人】高田 泰彦
  • 【請求人代理人】柏 延之
  • 【請求人代理人】二枝 翔司
  • 【請求人】東和薬品 株式会社
  • 【請求人代理人】宮嶋 学
  • 【請求人代理人】浅野 真理
  • 【請求人代理人】高田 泰彦
  • 【請求人代理人】柏 延之
  • 【請求人代理人】二枝 翔司
  • 【請求人】ロートニッテン 株式会社
  • 【請求人代理人】宮嶋 学
  • 【請求人代理人】浅野 真理
  • 【請求人代理人】高田 泰彦
  • 【請求人代理人】柏 延之
  • 【請求人代理人】二枝 翔司
  • 【被請求人】参天製薬 株式会社
  • 【被請求人代理人】品川 永敏
  • 【被請求人代理人】呉 英燦
  • 【被請求人代理人】水原 正弘
  • 【被請求人代理人】森 俊之
  • 【被請求人代理人】秦野 正和
審判長/審判官
  • 審判長 原田 隆興
  • 審判官 前田 佳与子
  • 審判官 田中 耕一郎
分類
P1113.121-YAA(A61K) / P1113.537-YAA(A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法135条特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第44条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第135条、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第7118579号発明「エピナスチン又はその塩を含有する水性組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 特許第7118579号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、4について訂正することを認める。 特許第7118579号の請求項1、2及び4に係る発明についての本件審判の請求は成り立たない。 特許第7118579号の請求項3に係る発明についての本件審判の請求を却下する。 審判費用は、請求人らの負担とする。

理由

理 由 第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨 1 請求の趣旨 請求人ら(日新製薬株式会社、テイカ製薬株式会社、東和薬品株式会社及びロートニッテン株式会社の4名)が提出した審判請求書、口頭審理陳述要領書、令和5年9月28日提出の上申書及び令和6年5月15日提出の弁駁書によれば、請求の趣旨は、「特許第7118579号の特許請求の範囲の請求項1~4に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」というものである。 なお、以下では、上記4名の請求人らを総称して「請求人」と記載する。 2 答弁の趣旨 被請求人 参天製薬株式会社が提出した審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書、令和5年9月28日提出の上申書及び令和6年3月25日提出の上申書によれば、答弁の趣旨は、「(1)本件無効審判の請求は成り立たない。(2)審判費用は、請求人の負担とする。との審決を求める。」というものである。 以下、被請求人 参天製薬株式会社を、「被請求人」と記載する。 第2 手続の経緯 本件特許第7118579号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明についての出願(以下「本願」という。)は、令和2年4月16日を出願日とする特願2020-73507号(以下「原出願」という。)の一部を、令和3年10月15日に特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2021-169635号)とし、さらにその一部を、令和4年7月11日に特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(特願2022-110987号)としたものであり、令和4年8月5日に特許権の設定登録(請求項の数 4)がなされた。 本件無効審判の請求、及び以後の主な手続の経緯は下記のとおりである。 令和5年 2月28日 審判請求書の提出(請求人) 同年 6月12日 審判事件答弁書の提出(被請求人) 同年 7月26日付け 審理事項通知書 同年 8月31日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人) 同年 8月31日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人) 同年 9月21日 口頭審理 同年 9月28日 上申書の提出(請求人) 同年 9月28日 上申書の提出(被請求人) 令和6年 1月17日付け 審決の予告 同年 3月25日 訂正請求書及び上申書の提出(被請求人) 同年 5月15日 弁駁書の提出(請求人) 第3 訂正請求について 1 訂正の内容 令和6年3月25日提出の訂正請求書における訂正請求の趣旨は、「特許第7118579号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」というものであり、当該訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、一群の請求項ごとに下記のとおり訂正するものである。なお、下線部は訂正箇所を示す。 (1)一群の請求項1~3についての訂正 ア 訂正事項1 訂正前の特許請求の範囲の請求項1において、 「【請求項1】 0.1%(w/v)の濃度のエピナスチン又はその塩、第四級アンモニウム化合物、緩衝剤、等張化剤、pH調節剤のみを含有する眼科用水性組成物であって、エピナスチン又はその塩に対する第四級アンモニウム化合物の含有比率が、エピナスチン又はその塩の含有量1重量部に対して0.05重量部以下であり、第四級アンモニウム化合物以外の防腐剤を含有しない、眼科用水性組成物。」と記載されているのを、 「【請求項1】 0.1%(w/v)の濃度のエピナスチン又はその塩、第四級アンモニウム化合物、緩衝剤、等張化剤、pH調節剤のみを含有する眼科用水性組成物であって、エピナスチン又はその塩に対する第四級アンモニウム化合物の含有比率が、エピナスチン又はその塩の含有量1重量部に対して0.03~0.05重量部であり、第四級アンモニウム化合物以外の防腐剤を含有せず、第四級アンモニウム化合物が、塩化ベンザルコニウムである、眼科用水性組成物。」に訂正する。 イ 訂正事項2 訂正前の特許請求の範囲の請求項2において、 「【請求項2】 エピナスチン又はその塩に対する第四級アンモニウム化合物の含有比率が、エピナスチン又はその塩の含有量1重量部に対して0.03重量部以下である、請求項1に記載の眼科用水性組成物。」と記載されているのを、 「【請求項2】 エピナスチン又はその塩に対する第四級アンモニウム化合物の含有比率が、エピナスチン又はその塩の含有量1重量部に対して0.03重量部である、請求項1に記載の眼科用水性組成物。」に訂正する。 ウ 訂正事項3 訂正前の特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (2)請求項4についての訂正 エ 訂正事項4 訂正前の特許請求の範囲の請求項4において、 「【請求項4】 0.1%(w/v)の濃度のエピナスチン又はその塩、塩化ベンザルコニウム、緩衝剤、等張化剤、pH調節剤のみを含有する眼科用水性組成物であって、塩化ベンザルコニウムの濃度が0.005%(w/v)以下であり、塩化ベンザルコニウム以外の防腐剤を含有しない、眼科用水性組成物。」と記載されているのを、 「【請求項4】 0.1%(w/v)の濃度のエピナスチン又はその塩、塩化ベンザルコニウム、緩衝剤、等張化剤、pH調節剤のみを含有する眼科用水性組成物であって、塩化ベンザルコニウムの濃度が0.003~0.005%(w/v)であり、塩化ベンザルコニウム以外の防腐剤を含有しない、眼科用水性組成物。」に訂正する。 2 訂正の適否についての判断 (1)訂正事項1について ア 訂正事項1の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「エピナスチン又はその塩に対する第四級アンモニウム化合物の含有比率が、エピナスチン又はその塩の含有量1重量部に対して0.05重量部以下であり」という記載における「0.05重量部以下」という範囲に下限値を追加して、より狭い「0.03~0.05重量部」という範囲に限定するとともに、訂正前の請求項1の「第四級アンモニウム化合物」を、その下位概念の化合物である「塩化ベンザルコニウム」に限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 訂正事項1は、上記アのとおり、特許請求の範囲を減縮する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無 訂正事項1の、「0.05重量部以下」という範囲を「0.03~0.05重量部」という範囲に限定する訂正は、願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)に「本発明の水性組成物において、第四級アンモニウム化合物の含有比率は、・・・例えば、その含有比率の上限は、エピナスチン又はその塩の含有量1重量部に対して・・・0.03~0.05重量部が特に好ましい。」(【0026】)という記載があること、及び、本件明細書に記載されている実施例2の製剤は、「エピナスチン又はその塩」である「エピナスチン塩酸塩」を0.1%(w/v)、及び「第四級アンモニウム化合物」である「塩化ベンザルコニウム」を0.003%(w/v)を含有しており(【0057】【表1】)、当該製剤は、「エピナスチン塩酸塩」の含有量1重量部に対して「塩化ベンザルコニウム」を0.03重量部含有する製剤であること、に基づくものである。 そして、訂正事項1の、「第四級アンモニウム化合物」を「塩化ベンザルコニウム」に限定する訂正は、本件明細書の「本発明の水性組成物において、含有される第四級アンモニウム化合物は、・・・より好ましくは塩化ベンザルコニウムである。」(【0023】)という記載、及び上記実施例2の製剤は「第四級アンモニウム化合物」として「塩化ベンザルコニウム」を含有すること、に基づくものである。 したがって、訂正事項1は、新規事項を追加するものではない。 (2)訂正事項2について ア 訂正事項2の目的 訂正事項2は、訂正前の請求項2の「エピナスチン又はその塩に対する第四級アンモニウム化合物の含有比率が、エピナスチン又はその塩の含有量1重量部に対して0.03重量部以下であり」における「0.03重量部以下」を「0.03重量部」に限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 なお、訂正後の請求項2は、訂正後の請求項1の記載を引用しているので、上記(1)で説示したとおり、訂正後の請求項2の「第四級アンモニウム化合物」は「塩化ベンザルコニウム」に限定されている。 イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 訂正事項2は、上記アのとおり、特許請求の範囲を減縮する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無 訂正事項2は、上記アのとおり、「0.03重量部以下」を「0.03重量部」に限定する訂正であるから、新規事項を追加するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項3の記載を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではなく、また、新規事項を追加するものではない。 (4)訂正事項4について ア 訂正事項4の目的 訂正事項4は、訂正前の請求項4の「塩化ベンザルコニウムの濃度が0.005%(w/v)以下であり」における「0.005%(w/v)以下」という範囲に下限値を追加して、より狭い「0.003~0005%(w/v)」という範囲に限定する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 訂正事項4は、上記アのとおり、特許請求の範囲を減縮する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 ウ 新規事項の有無 訂正事項4は、本件明細書に、「本発明の水性組成物において、第四級アンモニウム化合物の含有量は、・・・。その含有量の下限は、・・・0.003%(w/v)以上がさらに好ましい。」(【0025】)という記載があること、及び、本件明細書に記載されている実施例2の製剤は、「エピナスチン又はその塩」である「エピナスチン塩酸塩」を0.1%(w/v)、及び「第四級アンモニウム化合物」である「塩化ベンザルコニウム」を0.003%(w/v)を含有する製剤であること(【0057】【表1】)、に基づくものである。 したがって、訂正事項4は、新規事項を追加するものではない。 3 独立特許要件について 全ての請求項に対して無効審判が請求されているので、訂正事項1~4に関し、特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される要件(独立特許要件)は適用されない。 4 訂正請求についてのむすび 以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであって、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。 よって、本件訂正は、訂正の要件を全て満たすものであるから、これを認める。 第4 本件訂正発明 上記第3のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、下記のとおりのものである。 「【請求項1】 0.1%(w/v)の濃度のエピナスチン又はその塩、第四級アンモニウム化合物、緩衝剤、等張化剤、pH調節剤のみを含有する眼科用水性組成物であって、エピナスチン又はその塩に対する第四級アンモニウム化合物の含有比率が、エピナスチン又はその塩の含有量1重量部に対して0.03~0.05重量部であり、第四級アンモニウム化合物以外の防腐剤を含有せず、第四級アンモニウム化合物が、塩化ベンザルコニウムである、眼科用水性組成物。 【請求項2】 エピナスチン又はその塩に対する第四級アンモニウム化合物の含有比率が、エピナスチン又はその塩の含有量1重量部に対して0.03重量部である、請求項1に記載の眼科用水性組成物。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 0.1%(w/v)の濃度のエピナスチン又はその塩、塩化ベンザルコニウム、緩衝剤、等張化剤、pH調節剤のみを含有する眼科用水性組成物であって、塩化ベンザルコニウムの濃度が0.003~0.005%(w/v)であり、塩化ベンザルコニウム以外の防腐剤を含有しない、眼科用水性組成物。」 以下、本件訂正後の請求項1、2及び4に係る発明を、番号順に「本件訂正発明1」等といい、これらをまとめて「本件訂正発明」ということがある。 第5 当事者の主張及び証拠方法 1 請求人の主張及び証拠方法 (1)請求人の主張 請求人は、審判請求書の提出時に下記無効理由1~4を主張し、証拠方法として、下記(2)に記載する甲号証を提出した。 なお、下記無効理由1~4の要旨における「本件発明」は、本件訂正前の請求項1~4に係る発明を意味する。 [無効理由1(甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如)]の要旨 本件発明1~4はいずれも、甲第1号証の記載に適宜甲第2号証~甲第29号証を参酌することで、出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 [無効理由2(甲第2号証を主引用例とする進歩性欠如)]の要旨 本件発明1~4はいずれも、甲第2号証の記載、並びに甲第1号証及び甲第3号証~甲第29号証を参酌することで、出願前に当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、本件特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。 [無効理由3(明確性要件違反)]の要旨 本件発明1~4はいずれも、特許請求の範囲の記載により、特許を受けようとする発明が明確ではないから、本件特許に係る出願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。よって、本件特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 [無効理由4(サポート要件違反)]の要旨 本件発明1~4はいずれも、特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件特許に係る出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。よって、本件特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。 (当審合議体注) 本願は特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願であるため、無効理由1~4は、「出願前」は「原出願日前」を意味するという前提で判断した。そして、以下では「本願の原出願日当時」を「本願の出願日当時」と記載する。 (2)請求人の証拠方法 請求人は、証拠方法として、甲第1号証~甲第39号証(枝番含む)を提出した。以下、各甲号証を、甲号証の番号順に「甲1」、「甲2」・・・のように記載する。 ・甲1:「アレジオン点眼液0.05%に関する資料(アレジオン点眼液0.05%の申請書等行政情報及び添付文書に関する情報からの抜粋)」,参天製薬株式会社,2013年12月20日頃 (当審合議体注:下記「第7の1(1)」で説示するように、甲1が公開された時期は、2013年12月20日頃であると、推認できる。) ・甲1の2:「アレジオン点眼液の組織中放射線濃度推移データを用いたAUCの算出」,株式会社化合物安全性研究所,2023年2月22日 ・甲1の3:「新医薬品の承認審査に係る情報の公表に関する取り扱いについて」,薬機発第0325004号,2013年3月25日,<URL>https://www.pmda.go.jp/files/000204879.pdf ・甲1の4:「アレジオン(R)点眼液0.05%」のインタビューフォーム(第7版),参天製薬株式会社,2017年2月,第1頁 (当審合議体注:「(R)」は「R」の丸囲い文字を意味する。以下同様である。) ・甲2:特表2003-514021号公報 ・甲3:「アレジオン(R)点眼液0.05%」の添付文書(新様式第1版),参天製薬株式会社,2013年11月頃 ・甲4:「アレルギー性結膜疾患」,薬局,2014年4月,Vol.65,No.5,p.80-86 ・甲4の2:日本医書出版協会のウェブページ,2023年2月24日(出力日),<URL>https://www.medbooks.or.jp/journal/?p_key=21003 ・甲5:「アレジオン(R)LX点眼液0.1%」の添付文書(第1版),参天製薬株式会社,2019年11月頃 ・甲6:「アレジオン(R)LX点眼液0.1%」のインタビューフォーム(第2版),参天製薬株式会社,2019年11月 ・甲7:特表2018-70500号公報 ・甲7の2:特許第6134853号公報,2017年5月24日(発行日) ・甲8:「特集 薬剤性角膜上皮障害 5 塩化ベンザルコニウム」,眼科,2015年,Vol.57,No.7,p.931-936 ・甲9:「防腐剤とその眼に与える影響」,眼科,1989年,Vol.31,No.1,p.43-48 ・甲9の2:J-globalのウェブページ,2023年2月28日(出力日), <URL>https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=200902093827741361#%7B%22category%22%3A%220%22%2C%22keyword%22%3A%22%E9%AB%98%E6%A9%8B%20%E4%BF%A1%E5%A4%AB%22%7D ・甲10:「点眼液の防腐剤としての塩化ベンザルコニウムの抗菌力についての検討」,医療薬学,2003年,Vol.29,No.3,p.341-345 ・甲11:「0.0015%タフルプロスト点眼液のベンザルコニウム塩化物濃度の最適化検討-眼表面安全性と保存効力の視点から-」,2010年,薬学雑誌,130巻6号,p.867-871 ・甲11の2:J-STAGEのウェブページ,2023年2月24日(出力日), <URL>https://www.jstage.jst.go.jp/browse/yakushi/130/6/_contents/-char/ja ・甲12:「特集 防腐剤の功罪-その功について-」,Ophthalmology Update,1993年,Vol.8,No.3,p.3-7 ・甲13:「特集 防腐剤の功罪-その罪について-」,Ophthalmology Update,1993年,Vol.8,No.3,p.8-11 ・甲14:特開2016-135780号公報 ・甲15:大橋 裕一(編),眼科New Insight 第2巻「点眼薬-常識と非常識-」,株式会社 メジカルビュー社,1994年7月29日,p.6,7,30,31,56-65 ・甲16:庄司 純(編著),「点眼薬クリニカルブック 第2版」,金原出版株式会社,2015年11月25日,p.4-12 ・甲17:石岡 みさき(著),「点眼薬の選び方 第2版」,日本医事新報社,2020年2月10日,p.10-11,17-19 ・甲18:眼科診療プラクティス編集委員(編),「眼科薬物治療ガイド」,株式会社 文光堂,2004年9月29日,p.424-425,428-434,442-444 ・甲19:渡辺 善照ほか(編),「標準薬剤学-医療の担い手としての薬剤師をめざして-(改訂第4版)」,株式会社 南江堂,2017年4月30日,p.225-226 ・甲20:特表2015-521182号公報 ・甲21:「アレルギー性結膜炎患者に対するエピナスチン点眼液の改良製剤の検討」,臨床眼科,70巻4号,2016年,p.535-541 ・甲22:「眼内薬物動態と全身移行」,薬局,2014年4月,Vol.65,No.5,p.29-36 ・甲22の2:日本医書出版協会のウェブページ,2023年2月24日(出力日),<URL>https://www.medbooks.or.jp/journal/?p_key=21003 ・甲23:特表2018-521000号公報 ・甲24:「ラット角膜上皮剥離モデルを用いた点眼薬の角膜傷害性評価:粘稠化剤添加に伴うベンザルコニウム塩化物角膜傷害性の変化」,2012年7月1日,薬学雑誌,Vol.132,No.7,p.837-843 ・甲24の2:J-STAGEのウェブページ,2023年2月24日(出力日), <URL>https://www.jstage.jst.go.jp/browse/yakushi/132/7/_contents/-char/ja ・甲25:MR JUSTICE ARNOLD, [2019]EWHC 1085 (Pat) Case Nos:HP-2017-000079,HP-2018-000009, IN THE HIGH COURT OF JUSTICE BUSINESS AND PROPERTY COURTS INTELLECTUAL PROPERTY LIST (CHANCERY DIVISION) PATENTS COURT, 3 May 2019 ・甲26:寺田 弘 外1名(編集),「続医薬品の開発 4巻 薬物の生体膜輸送と組織標的化〔II〕」,株式会社 廣川書店,1991年4月25日,p.390-396 ・甲27:根木 昭 外4名(編集),「眼科プラクティス 23.眼科薬物治療 A to Z」,株式会社 文光堂,2008年10月30日(第2刷),序文,p.566 ・甲28:“Efficacy and tolerability of ophthalmic epinastine: A randomized, double-masked, parallel-group, active- and vehicle-controlled environmental trial in patients with seasonal allergic conjunctivitis”, Clinical Therapeutics, 2004, Vol.26, No.1, p.29-34 ・甲28の2:Science Directのウェブページ,2023年2月24日(出力日), <URL>https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0149291804900033 ・甲29:“Efficacy of olopatadine HCI 0.1%, ketotifen fumarate 0.025%, epinastine HCI 0.05%, emedastine 0.05% and fluorometholone acetate 0.1% ophthalmic solutions for seasonal allergic conjunctivitis: a placebo-controlled environmental trial”, Acta Ophthalmologica, 2009, Volume 87, Issue 5, p.549-554 ・甲29の2:Wiley Online Libraryのウェブページ,2023年2月24日(出力日), <URL>https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1755-3768.2008.01265.x <以上、審判請求書に添付> ・甲30の1:特願2001-537955の平成23年5月24日付け意見書、2011年5月24日提出 (当審合議体注:「特願2001-537955」は、甲2の出願番号である。) ・甲30の2:特願2001-537955の平成23年5月24日付け手続補正書、2011年5月24日提出 (当審合議体注:「特願2001-537955」は、甲2の出願番号である。) ・甲31:EP1231920B1、2007年2月7日(公開日) ・甲32:AU200111381B2、2001年5月30日(公開日) ・甲33:岡田弘晃、吉野廣祐(監修)、「製剤の達人による製剤技術の伝承 製剤設計・製造技術の新たな潮流」、株式会社 じほう、平成29年(2017年)5月20日発行、p.441-456 ・甲34:特開2012-180346号公報 ・甲35:陳述書、作成者:東和薬品株式会社知的財産部 八久義雄、作成日、2023年8月29日 ・甲36:承認簿(医薬品承認情報)、施行年月日:2022年2月15日、「承認番号:30400AMX00073000 販売名:エピナスチン塩酸塩LX点眼液0.1%「ニットー」、薬効コード:131、有効成分名:540264 エピナスチン塩酸塩1.0 mg、業者名:東亜薬品株式会社、業者コード:480018000」 ・甲37:「点眼剤の後発医薬品の生物学的同等性試験実施に関する基本的考え方について」、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課、平成30年(2018年)11月29日頃、表紙、(別添)の「点眼薬における生物学的同等性の評価に関する考え方」の項目 ・甲38:フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」、2018年10月8日、「塩化ベンゼトニウム」の項目、 <URL>https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E5%A1%A9%E5%8C%96%E3%83%99%E3%83%B3%E3%82%BC%E3%83%88%E3%83%8B%E3%82%A6%E3%83%A0&oldid=70203254 <以上、口頭審理陳述要領書に添付> ・甲39:「口頭審理請求人説明資料」 <以上、令和5年9月28日付け上申書に添付> 2 被請求人の主張及び証拠方法 (1)被請求人の主張 被請求人は、本件無効審判の請求が成り立たない理由として、請求人が主張する無効理由1~4にはいずれも理由がない旨を主張するとともに、下記(2)に記載する乙号証を提出した。 (2)被請求人の証拠方法 被請求人は、証拠方法として、乙第1号証~乙第19号証を提出した。以下、各乙号証を、乙号証の番号順にそれぞれ「乙1」、「乙2」・・・のように記載する。 ・乙1:特許・実用新案審査基準 第III部第2章第3節 新規性・進歩性の審査の進め方,特許庁,平成27年9月16日 ・乙2:「アレジオン(R)点眼液0.05%」の添付文書、参天製薬株式会社、2016年5月(改訂日) ・乙3:“Pharmacokinetics, efficacy and safety profiles of preserved and preservative-free tafluprost in healthy volunteers”, Acta Ophthalmologica, 2008, Vol.86, S242, p.7-13, <URL>https://doi.org/10.1111/j.1755-3768.2008.01380.x ・乙4:“Comparable corneal penetration into rabbit aqueous humour with preserved and preservative free tafluprost”, Acta Ophthalmologica, 2008, Vol.86, Issue s241, p.23左欄の「235-5」 ・乙5:“The influence of non-ionic detergents and other surfactants on human corneal permeability”, Exp. Eye Res., 1971, Vol.11, p.43-48, <URL>https://doi.org/10.1016/S0014-4835(71)80063-5 ・乙6:“Meta analysis about the efficacy and safety of anti-ocular hypertension eye drops without benzalkonium chloride”, Asian Pacific Journal of Tropical Medicine, 2013, Vol.6, No.12, p.1004-1008, <URL>https://doi.org/10.1016/S1995-7645(13)60181-9 ・乙7:“Preservative-free versus preserved latanoprost eye drops in patients with open-angle glaucoma or ocular hypertension”, Current Medical Research and Opinion, 2016, Vol.32, No.8, p.1457-1463, <URL>https://doi.org/10.1080/03007995.2016.1202818 ・乙8:“Efficacy and safety of preservative-free latanoprost eyedrops, compared with BAK-preserved latanoprost in patients with ocular hypertension or glaucoma”, British Journal of Ophthalmology, 2013, Vol.97, No.2, p.196-200, <URL>http://dx.doi.org/10.1136/bjophthalmol-2012-302121 ・乙9:“Travoprost 0.004% With and Without Benzalkonium Chloride: A Comparison of Safety and Efficacy”, J Glaucoma, 2007, Vol.16, No.1, p.98-103, <URL>http://dx.doi.org/10.1097/01.ijg.0000212274.50229.c6 ・乙10:特表2011-521943号公報 ・乙11:国際公開第2016/072440号 ・乙12:再公表特許(A1)WO2011/034192号,2013年2月14日(発行日) ・乙13:特表2014-509602号公報 ・乙14:「Pranoprofenの眼内薬物動態と抗炎症作用への併用散瞳剤の影響(第3報)-透過性因子の検索-」,日本眼科学会雑誌,平成4年(1992年),96巻,11号,p.1379-1386 ・乙15:特開2022-63252号公報,令和4年4月21日(公開日) ・乙16:「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第二版)-点眼治療のポイント-」,アレルギー,2014年,Vol.63,No.8,p.1103-1109 ・乙17:「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版)」,日本眼科学会雑誌,令和3年(2021年),125巻,8号,p.741-785, <URL>https://www.nichigan.or.jp/member/journal/guideline/detail.html?itemid=429&dispmid=909 ・乙18:実験成績証明書、作成者:参天株式会社 阪中浩二氏,令和5年2月13日(作成日) <以上、審判事件答弁書に添付> ・乙19:「口頭審理 資料」 <以上、令和5年9月28日付け上申書に添付> 第6 本件明細書の記載 1 本件明細書には、「有効成分としてエピナスチン又はその塩を含有する、組織、特に眼組織への移行性を向上させた水性組成物を提供することは興味深い課題である」こと(【0010】)、及び「エピナスチン又はその塩と、特定の含有量に調整された第四級アンモニウム化合物とを含有する水性組成物を、眼に点眼投与した場合にエピナスチンの眼組織への移行性が向上することを見出し、本発明の完成に至った」こと(【0011】)が記載されている。 2 また、本件明細書には、本件訂正発明の「エピナスチン」の化学構造について、以下の記載がある。 「本発明において、「エピナスチン」とは、化学名(±)-3-Amino-9,13b-dihydro-1H-dibenz[c,f]imidazo[1,5-a]azepineで表される化合物であり、また下記式: 【化1】 [図:0001418107000001.jpg] で表される化合物である。」(【0016】) 3 そして、本件明細書には、以下の記載がある。 「【0057】 試験例 1.眼内動態試験 (1)被験製剤の調製 下表1の濃度になるように、エピナスチン塩酸塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム水和物を水に溶解し、pH調節剤(希塩酸および/または水酸化ナトリウム)と水を加えて全量を10mLとし、濾過滅菌を行うことにより、実施例1の製剤(pH7.0)を調製した。 また、実施例1の製剤の調製方法と同様の方法にて、下表1の実施例2及び比較例1の製剤を調製した。 【表1】 [図:0001418107000002.jpg] 【0058】 (2)試験方法 各被験製剤50μLを15分間隔で計3回、ウサギの眼にそれぞれ点眼投与し、最終点眼から0.25時間、0.5時間、1時間、2時間および4時間後の時点で屠殺処分後の眼球を摘出した。各時点においてその角膜中および房水中のエピナスチン濃度を測定し、AUC(血中濃度-時間曲線下面積)を算出した。なお、AUCは、PhoenixWinNonlin(登録商標)v8.1を用いたSparsesampling解析により算出した。 【0059】 (3)試験結果及び考察 試験結果を表2に示す。なお、表中の"Mean"は平均値、"SE"は標準誤差、"N"はサンプル数を表し、これらは汎用的な統計処理により算出されるものである。 【表2】 [図:0001418107000003.jpg] 【0060】 表2に示されるように、第四級アンモニウム化合物である塩化ベンザルコニウムを含有する実施例1及び実施例2は、塩化ベンザルコニウムを含有しない比較例1と比べて、角膜および房水中のエピナスチンの移行量が増大することが確認された。従って、本発明の水性組成物は顕著に眼組織への移行性を向上させることが示された。」(【0057】~【0060】) 4 上記1~3から、本件訂正発明の「第四級アンモニウム化合物」及び「塩化ベンザルコニウム」は、「眼科用水性組成物」中の「エピナスチン又はその塩」の眼組織への移行性を向上させるため、という用途で本質的に用いられている、と認められる。 5 なお、上記3の「1.眼内動態試験」では、「眼科用水性組成物」をウサギに「点眼投与」しており、「第四級アンモニウム化合物」として「塩化ベンザルコニウム」が用いられているので、以下では、本件訂正発明の「眼科用水性組成物」及び「第四級アンモニウム化合物」を、それぞれ「眼科用水性組成物(点眼液)」及び「第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム)」と記載することがある。 第7 証拠の記載事項 以下に、主な証拠の記載事項、及びそれらの記載事項から認定できる事項を示す。 証拠の原文が外国語の場合は必要に応じて日本語訳を記載する。また、証拠の摘記において、四角い太枠線及び太い下線は当事者が付したものである。そして、原文に付されていない細い下線は、当審合議体が付したものである。 1 甲1(「アレジオン点眼液0.05%に関する資料(アレジオン点眼液0.05%の申請書等行政情報及び添付文書に関する情報からの抜粋)」,参天製薬株式会社,2013年12月20日頃」)について (1)甲1の記載事項 甲1の3(「新医薬品の承認審査に係る情報の公表に関する取り扱いについて」)の「2.(5)」の項目には、新医薬品の承認後、審査報告書は承認後直ちに、資料概要は遅くとも承認から3ヶ月後には公表することが目標とされているという趣旨の記載がある。 そうすると、甲1が公開された時期は、「アレジオン(R)点眼液0.05%」の承認日である2013年9月20日(甲1の4を参照。)の3ヶ月後である同年12月20日頃であり、本願の原出願日の前であると、推認できる。 そして、甲1には、以下の事項が記載されている。 (甲1a) 「1.5.2 開発の経緯 本剤の開発の経緯を図1.5.2-1に示す。 エピナスチン塩酸塩の合成方法、物理化学的特性、規格及び試験方法、安定化試験等の原薬開発は、BI社により行われた。また、第I相試験で使用した処方の開発はBI社が、第II相試験以降で使用した処方の開発は株式会社ニデック(以下、ニデック社)が実施した。第II相試験以降の臨床試験に使用した0.05%DE-114点眼液は申請製剤と同一の処方である。製剤の規格及び試験方法の設定、製剤の安定性等に関する試験は参天製薬株式会社が行った。」(「1.5 開発の経緯」の項目の1-6行) (甲1b) 「 以上より、0.05%DE-114点眼液はアレルギー性結膜炎に対して有用な薬剤であると判断し、下記の内容で製造販売承認申請を行うに至った。 申請品目 アレジオン(R)点眼液0.05% 効能・効果 アレルギー性結膜炎 用法・用量 通常、1日1滴、1日4回(朝、昼、夕方及び就寝前)点眼する。」(「1.5 開発の経緯」の項目のp.5の下から9行-5行) (甲1c) 「1.5.2.1.3 薬理試験 モルモットに0.025%、0.05%及び0.1%DE-114点眼液を単回点眼し、ヒスタミン誘発による結膜の血管透過性亢進に対する効果を検討した結果、DE-114点眼液は、ヒスタミン投与の15分前点眼では0.025%以上、ヒスタミン投与の6時間前点眼では0.05%以上の用量で血管透過性亢進を有意に抑制した。・・・。 抗ヒスタミン作用以外のアレルギー性結膜炎に対する作用の検証試験として、抗OVA血清で受動感作したラットにDE-114点眼液を2回点眼し、抗原誘発による結膜肥満細胞の脱顆粒を有意に抑制した。また、受動感作ラットの摘出結膜からの抗原刺激によるヒスタミン遊離は、0.05%、0.1%、0.3%及び0.5%DE-114点眼後の結膜組織で有意な減少が認められた。これらの結果から、DE-114点眼液は、肥満細胞の脱顆粒を抑制することによって、結膜からのヒスタミンをはじめとするメディエーター遊離抑制作用を示す可能性が示唆された。」(「1.5 開発の経緯」のp.8-9の「1.5.2.1.3 薬理試験」の項目) (甲1d) 「 [図:0001418107000004.jpg] 」(「1.8 添付文書(案)」の項目のp.2左欄) (2)甲1に記載された発明 甲1は、アレジオン点眼液0.05%の申請書等行政情報及び添付文書に関する情報から抜粋した資料であり、当該点眼液の開発の経緯において、第II相試験以降の臨床試験に使用した「0.05%DE-114点眼液」は申請製剤と同一の処方である(甲1a)。 そうすると、「0.05%DE-114点眼液」の申請製剤に相当する「販売名 アレジオン点眼液0.05%」の〔組成・性状〕及び〔効能・効果〕」の記載(甲1b、甲1d)から、甲1には下記の発明が記載されていると認められる。 「0.05%(w/v)のエピナスチン塩酸塩、ベンザルコニウム塩化物液、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、pH調節剤、エデト酸ナトリウム水和物からなる、アレルギー性結膜炎の治療に用いられる点眼液。」(以下「甲1発明」という。) 2 甲2(特表2003-514021)について (1)甲2の記載事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 (甲2a) 「【請求項1】 必要によりそのラセミ体、鏡像異性体及び薬理学的に許容されるその酸付加塩の形態であってもよいエピナスチンを、溶液の0.005~0.5mg/mlの濃度で含む局所的に投与可能な水溶液。 【請求項2】 エピナスチン塩酸塩を含む請求の範囲第1項記載の溶液。 【請求項3】 生理学的に許容される緩衝剤を用いて6.5~7.2のpHに調整される請求の範囲第1項又は第2項記載の溶液。 【請求項4】 さらに防腐剤を含む請求の範囲第3項記載の溶液。 【請求項5】 好中球及び好酸球が眼球の結膜又は鼻粘膜の組織に流入するのを抑制するための請求の範囲第1項から第4項のいずれか一項に記載の溶液の使用。」(請求項1~5) (甲2b) 「 【0003】 発明の課題 従って、本発明の課題は、好中球及び好酸球が眼球の結膜及び鼻粘膜の組織に流入するのを抑制して、LPRの発生を低減又は防止し、従って活性の長期の持続によって特徴付けられる局所的に投与可能な溶液を提供することである。 発明の詳細な説明 驚いたことに、必要によりそのラセミ体、鏡像異性体及び薬理学的に許容されるその酸付加塩の形態であってもよいエピナスチンを含む局所的に投与可能な水溶液が好中球及び好酸球の眼球の結膜及び鼻粘膜の組織への流入を抑制して、LPRの発生を低減又は防止し、従って活性の長期の持続によって特徴付けられるため、これを使用して本発明の課題を解決できることがわかった。 化合物エピナスチン(3-アミノ-9,13b-ジヒドロ-1H-ジベンゾ[c,f]イミダゾール[1,5-a]アゼピン)及びその酸付加塩は、ドイツ特許出願第P 30 08 944.2号に最初に記載される。 好中球及び好酸球の流入の抑制剤としてエピナスチンを含む局所的に投与される溶液の効果は、いわゆるラットの受動眼球アナフィラキシーモデルを用いて証明された。」(【0003】) (甲2c) 「 【0005】 結果: 本発明のエピナスチン溶液(0.05から0.5%)で予め処理された動物は、その結膜内の好中球の著しく低下した含量を有した。本発明のエピナスチン溶液で予め処理された動物は、その結膜内のリンパ球の著しく低下した含量を有した(p<0.01)。本発明のエピナスチン溶液で予め処理した動物において、肥満細胞脱顆粒の約35%抑制を決定した(p<0.01)。 従って、本発明は、必要によりそのラセミ体、鏡像異性体及び薬理学的に許容されるその付加塩の形態であってもよいエピナスチンを、0.005~0.5、好ましくは0.02~0.1、最も好ましくは0.03~0.07mg/mlの溶液濃度で含む局所的に投与される水溶液に関する。 本発明によれば、エピナスチン塩酸塩を含む上述の局所的に投与される水溶液が好ましい。 好適な水溶性溶媒は生理学的に許容される水溶性溶媒であり、生理学的に許容される塩類溶液が特に好ましい。 【0006】 本発明によれば、一般に0.005~0.5、好ましくは0.02~0.1、最も好ましくは0.03~0.07mg/mlの必要によりそのラセミ体、鏡像異性体及び薬理学的に許容されるその酸付加塩の形態であってもよいエピナスチン、その他に主要なキャリアとして生理食塩水を含む局所的に投与される溶液を調製するのが好ましい。本発明の溶液のpHは、好適な緩衝剤システムによって6.5~7.2の範囲内に維持するのが好ましい。また、製剤は、従来の医薬的に許容される賦形剤、防腐剤、安定剤及び/又は浸透プロモーターを含んでもよい。 本発明の溶液に使用してもよい好ましいキャリアは純水であり、好ましくは生理食塩水である。 本発明の要旨を下記の事項に限定することなく、本発明で使用される賦形剤としては、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロキサマー(poloxamers)、カルボキシメチルセルロース、カルボマー及びヒドロキシエチルセルロースのような増粘剤(viscosity agents)が挙げられる。 本発明の要旨を下記の事項に限定することなく、本発明の溶液に使用される好ましい防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀及び硝酸フェニル水銀が挙げられる。 【0007】 浸透プロモーターは、・・・であってもよい。 溶液の張性(tonicity)を調整するために必須の、又は所望する物質を添加してもよい。このような物質としては、塩、特に塩化ナトリウム、・・・本発明はこれらに限定されない。 種々の緩衝剤及び物質を使用して、pHを調整してもよいが、得られた製剤は生理学的に許容されなければならない。これらの緩衝剤としては、酢酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、燐酸緩衝剤及びホウ酸緩衝剤が挙げられる。」(【0005】~【0007】) (甲2d) 「 【0008】 同様に、本発明で使用してもよい生理学的に許容される酸化防止剤としては、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソール及びブチル化ヒドロキシトルエンが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。 本発明の溶液に添加してもよいその他のキャリア成分は、キレート剤である。好ましいキレート剤は、エデト酸二ナトリウム(Na-EDTA)であるが、その他のキレート剤もエデト酸二ナトリウムに代えて、又はこれと共に使用してもよい。 上述の局所的に投与される本発明の水溶液は、結膜又は鼻粘膜のいずれかに施してもよい。眼科の使用のための溶液は、本発明の目的の鼻用途のための溶液と等しい重要性である。 本発明は、上記の本発明の溶液だけでなく、好中球及び好酸球が眼球の結膜の組織又は鼻粘膜の組織に流入するのを抑制するための上述の局所的に投与される水溶液の使用に関する。」(【0008】) (甲2e) 「 【0009】 また、本発明は、アレルギー反応において好中球及び好酸球の眼球の結膜又は鼻粘膜の組織への流入の抑制に治療上の有用性がある、眼球の結膜又は鼻粘膜の疾患を治療するための、局所的に投与される本発明の水溶液を生成するための、必要によりそのラセミ体、鏡像異性体及び薬理学的に許容されるその酸付加塩の形態であってもよいエピナスチンの使用に関する。 LPRを抑制するための上述の使用が好ましく、初めに挙げた疾病を治療するために、この製剤を使用することは特に好ましい。表1に示される実施例は、それに制限することなく本発明を説明する。 【0010】 【表1】 [図:0001418107000005.jpg] 」(【0009】~【0010】) (当審合議体注:「LPR」は「遅延相反応」を意味する。) (2)甲2に記載された発明 甲2には、必要によりそのラセミ体、鏡像異性体及び薬理学的に許容されるその酸付加塩の形態であってもよいエピナスチンを、溶液の0.005~0.5mg/mlの濃度で含む局所的に投与可能な水溶液(甲2aの【請求項1】、甲2c)について記載されており、「溶液の0.005~0.5mg/mlの濃度」は、溶液の0.0005~0.05g/100mLの濃度に相当する。 また、甲2には、上記「局所的に投与可能な水溶液」を、「好中球及び好酸球が眼球の結膜」に流入するのを抑制するための」という用途に用いること(甲2aの【請求項4】、甲2b、甲2d)が記載されている。 そして、甲2の実施例1の【表1】(甲2e)に記載されている、エピナスチン塩酸塩の濃度が0.0005~0.05g/100mLの範囲である溶液のうち、エピナスチン塩酸塩の濃度が0.0500g/100mLである「溶液1」の記載から、甲2には、下記の発明が記載されていると認められる。 「エピナスチン塩酸塩0.0500g/100mL、Na-EDTA0.0500g/100mL、塩化ナトリウム0.5000g/100mL、リン酸二水素ナトリウム二水和物0.7800g/100mL、塩化ベンザルコニウム0.0101g/100mL、水酸化ナトリウム0.0001g/100mL、及び水99.4198g/100mLからなる、好中球及び好酸球が眼球の結膜の組織に流入するのを抑制するための、局所的に投与される水溶液。」(以下「甲2発明」という。) 3 主な甲号証(甲1及び甲2以外)の記載事項 (1)甲3(「アレジオン(R)点眼液0.05%」の添付文書(新様式第1版),参天製薬株式会社,2013年11月頃)には、以下の事項が記載されている。 (甲3a) 「 [図:0001418107000006.jpg] 」(p.(1)) (甲3b) 「 [図:0001418107000007.jpg] 」(p.(1)) (2)甲4(「アレルギー性結膜疾患」,薬局,2014年4月,Vol.65,No.5,p.80-86)には、以下の事項が記載されている。 (甲4a) 「 [図:0001418107000008.jpg] 」 (p.81の「表1」) (甲4b) 「 [図:0001418107000009.jpg] 」(p.83の「表2」) (3)甲5(「アレジオン(R)LX点眼液0.1%」の添付文書(第1版),参天製薬株式会社,2019年11月頃)には、以下の事項が記載されている。 (甲5a) 「 [図:0001418107000010.jpg] 」(p.1) (甲5b) 「 [図:0001418107000011.jpg] 」(p.1) (4)甲6(「アレジオン(R)LX点眼液0.1%」のインタビューフォーム(第2版),参天製薬株式会社,2019年11月)には、以下の事項が記載されている。 (甲6a) 「 [図:0001418107000012.jpg] 」(p.1) (甲6b) 「 [図:0001418107000013.jpg] 」(p.6) (5)甲7(特表2018-70500号公報)には、以下の事項が記載されている。 (甲7a) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 0.075%(w/v)超の濃度のエピナスチン又はその塩を含有する点眼液であって、実質的に防腐剤および防腐作用を有する成分を含有しない、点眼液。 【請求項2】 0.1%~5.0%(w/v)の濃度のエピナスチン又はその塩を含有する、請求項1記載の点眼液。 【請求項3】 エピナスチン又はその塩が、エピナスチン塩酸塩である、請求項1または2 に記載の点眼液。 【請求項4】 防腐剤および防腐作用を有する成分が、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン又はその塩、ホウ酸、ホウ砂、およびエデト酸又はその塩からなる群から選択される少なくとも一つの成分である、請求項1記載の点眼液。 【請求項5】 有効成分として0.075%(w/v)超の濃度のエピナスチン又はその塩のみを含有し、添加物として緩衝剤、等張化剤、pH調節剤のみを含有する、点眼液。 【請求項6】 0.1%~5.0%(w/v)の濃度のエピナスチン又はその塩を含有する、請求項5記載の点眼液。 【請求項7】 エピナスチン又はその塩が、エピナスチン塩酸塩である、請求項5または6に記載の点眼液。 【請求項8】 緩衝剤がリン酸又はその塩である請求項5~7のいずれか1項に記載の点眼液。 【請求項9】 等張化剤がイオン性等張化剤である請求項5~8のいずれか1項に記載の点眼液。」(【特許請求の範囲】) (甲7b) 「【0007】 本発明者らは、防腐剤および防腐作用を有する成分のいずれも添加されていない、またはそれらの量が減量されたエピナスチン又はその塩を含有する点眼液を見出すために鋭意研究を行ったところ、点眼液中のエピナスチン又はその塩の濃度を0.075%(w/v)超とすることにより、実質的に防腐剤または防腐作用を有する成分を含有することなく、十分な防腐効果が得られることを見出し、本発明に至った。具体的に、本発明は以下を提供する。 (1)0.075%(w/v)超の濃度のエピナスチン又はその塩を含有する点眼液であって、実質的に防腐剤および防腐作用を有する成分を含有しない、点眼液。 (2)0.1%~5.0%(w/v)の濃度のエピナスチン又はその塩を含有する、(1)に記載の点眼液。 (3)エピナスチン又はその塩が、エピナスチン塩酸塩である、(1)または(2)に記載の点眼液。 (4)防腐剤および防腐作用を有する成分が、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン又はその塩、ホウ酸、ホウ砂、およびエデト酸又はその塩からなる群から選択される少なくとも一つの成分である、(1)に記載の点眼液。・・・。 ・・・ 【0021】 本発明において、点眼液にpH調節剤を配合する場合のpH調節剤は、医薬品の添加物として使用可能なpH調節剤を適宜配合することができるが、例えば、酸又は塩基であり、酸としては例えば、塩酸、リン酸、クエン酸、酢酸等、塩基としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。・・・。」(【0007】及び【0021】) (甲7c) 「【0033】 実施例3 1mL中 エピナスチン塩酸塩 1mg リン酸二水素ナトリウム 2.5mg リン酸水素二ナトリウム水和物 12.2mg 塩化ナトリウム 4.7mg 希塩酸 適量 水酸化ナトリウム 適量 精製水 適量 pH 6.7」 【0034】 実施例4 1mL中 エピナスチン塩酸塩 2mg リン酸二水素ナトリウム 2.5mg リン酸水素二ナトリウム水和物 12.2mg 塩化ナトリウム 4.5mg 希塩酸 適量 水酸化ナトリウム 適量 精製水 適量 pH 6.7 【0035】 比較例1 1mL中 エピナスチン塩酸塩 0.5mg リン酸二水素ナトリウム 2.5mg リン酸水素二ナトリウム水和物 12.2mg 塩化ナトリウム 5mg 希塩酸 適量 水酸化ナトリウム 適量 精製水 適量 pH 6.7 【0036】 比較例2 1mL中 エピナスチン塩酸塩 0.75mg リン酸二水素ナトリウム 2.5mg リン酸水素二ナトリウム水和物 12.2mg 塩化ナトリウム 4.7mg 希塩酸 適量 水酸化ナトリウム 適量 精製水 適量 pH 6.7 」(【0033】~【0036】) (甲7d) 「【0037】 2.試験方法 接種菌として以下の菌株を使用した。 細菌: 大腸菌,Escherichia Coli ATCC 8739(E.coliともいう) 緑膿菌,Pseudomonas aeruginosa ATCC 9027(P.aeruginosaともいう) 黄色ブドウ球菌,Staphylococcus aureus ATCC 6538(S.aureusともいう) 酵母菌およびカビ類: カンジダ,Candida albicans ATCC 10231(C.albicansともいう) クロコウジカビ,Aspergillus brasiliensis ATCC16404 (A.brasiliensisともいう) 【0038】 各製剤からなる試験試料中の菌液濃度が105~106個/mL(5菌種共)となるように、接種菌液を試験試料に接種した。具体的には、107~108cfu/mLとなるように接種菌液を調製し、この接種菌液を105~106cfu/mLとなるように、実施例1~4及び比較例1~2の製剤からなる試験試料に各接種菌液を接種し、均一に混合し試料とした。これらの試料を遮光下20~25℃に保存し、各サンプリングポイント(7日後、14日後、又は28日後)において、各試料からマイクロピペットで1mLを採取し、生菌数を測定した。各サンプリングポイントでは、試料溶液の蓋を空けてサンプリングを実施し、蓋を閉める操作を行った。 【0039】 3.試験結果及び考察 試験結果を表1および表2に示す。表1および表2の試験結果は、生菌数を測定したときの菌数(A)に対する接種時の菌数(B)の比(B/A)の常用対数値で示しており、たとえば、値が「1」の場合には、検査時の生菌数が接種菌数の10%に減少したことを示している。 試験の合否判定について、細菌種(E.coli、P.aeruginosa、S.aureus)に対しては、播種7日後に1.0以上、かつ14日後または28日後に3.0以上であること、および真菌種(C.albicans、A.brasiliensis)に対しては、播種7日後と比較して播種14日後または28日後の数値が減少していないこと、をいずれも満たす時に適合とした。 (甲7e) 「【0040】 【表1】 [図:0001418107000014.jpg] 」(【0040】) (甲7f) 「【0041】 【表2】 [図:0001418107000015.jpg] 」(【0041】) (甲7g) 「【0042】 表1および表2に示されるように、エピナスチン又はその塩を含有する実施例1~4の製剤は、防腐剤および防腐作用を有する成分を含有しないにもかかわらず、いずれの菌に対しても十分な防腐効果を示した。これに対して、比較例1および比較例2の製剤は、十分な防腐効果を有さないことが示された。これにより、0.075%(w/v)超の濃度のエピナスチンまたはその塩を含有する本発明の点眼液は、防腐剤および防腐作用を有する成分を含有しなくても、マルチドーズ型点眼液として、繰り返し容器を開閉して使用可能であることが示唆された。」(【0042】) (6)甲8(「特集 薬剤性角膜上皮障害 5 塩化ベンザルコニウム」,眼科,2015年,Vol.57,No.7,p.931-936)には、以下の事項が記載されている。 (甲8a) 「塩化ベンザルコニウムは,世界中で販売されている点眼液の防腐剤として最も多く用いられている薬剤である。」(p.931左欄2-4行) (甲8b) 「塩化ベンザルコニウムは、角膜上皮細胞に作用して,その透過性を亢進させる作用を有する。これは角膜上皮細胞のバリア機能の破綻とほぼ同意語であるが,解釈の仕方によっては,点眼液が眼内に到達しやすくなるととらえることができる。事実,塩化ベンザルコニウムを含まない緑内障点眼液は,それを含むものと比較して(有意ではないものの)前房内濃度が低い傾向にあることが示されている2)。 塩化ベンザルコニウムは,比較的安価で,細菌・真菌に対して幅広い抗菌効果を有し,細胞毒性もそれほど強くないことなどもあり,点眼液に含まれる防腐剤として最も多く添加されている。しかしながら,塩化ベンザルコニウムを含んだ点眼液は,アレルギー症状によって接触性皮膚炎を引き起こすことや,角結膜上皮障害の原因となる可能性があることも知られている。中でも角結膜上皮障害は,点眼液に含まれる塩化ベンザルコニウムの濃度が高いほど引き起こされやすいこともあるために,点眼液に含まれる塩化ベンザルコニウムの濃度をなるだけ引き下げる努力がなされている。」(p.932左欄最終段落~同頁右欄2段落) (甲8c) 「点眼液に含まれる塩化ベンゼルコニウムは,一般に0.001~0.002%程度が用いられる。当然ながら塩化ベンザルコニウムの濃度が高いほど角膜上皮傷害を引き起こしやすい。」(p.933左欄6-9行) (甲8d) 「(3)角膜に優しい塩化ベンザルコニウムへの変更 塩化ベンザルコニウムは,側鎖(アルキル鎖)の長さにより分子量だけではなく毒性や抗菌作用が異なる(図7)。塩化ベンザルコニウムはC8~C18(主にC12~C18)の側鎖を持つ混合物である。C18のように分子量が大きくなれば疎水性の部分が増えることになり,細胞膜を構成する脂質との結合が強くなるため,抗菌効果が高くなる9)。同時に分子量が大きくなるほど角膜毒性も大きくなるほか,沈殿物を形成しやすくなる。そのため塩化ベンザルコニウムによる角膜上皮障害を軽減するためにはC12の割合を増やすほうがよいと考えられている。しかし,C12のみからなる塩化ベンザルコニウムは,C12~C18の混合物からなるものに比べてはるかに高価であるという問題がある。さらに各点眼液に含まれる塩化ベンザルコニウムの中でC12が含まれる割合は公表されていないために,どの点眼液を選べばよいのかわからないという問題もある。」(p.935左欄2段落) (当審合議体注:「(3)」は「黒四角中の白抜き文字の3」である。) (甲8e) [図:0001418107000016.jpg] 」(p.935右欄の「図7」) (7)甲9(「防腐剤とその眼に与える影響」,眼科,1989年,Vol.31,No.1,p.43-48)には、以下の事項が記載されている。 (甲9a) 「2. 逆性石けん類cationic surface active agents 1) 塩化ベンザルコニウムbenzalkonium chloride alkylbenzyldimethyl ammonium chlorideの混合物でC8~C18までが使用されている。分子量はC12(C22H40CIN)で 354.02 である。水に良く溶ける物質で,常温では長期にわたつて安定であり,加熱にも耐える。芽胞のない細菌や真苗類に広い抗菌性を示す。通常,0.002~0.01%の濃度で用いられる。 殺菌的に作用し,その機序は酵素蛋白の変性にあるともいわれ,あるいは本剤の陽イオンが菌体中の必須イオンを追い出すことにあるともいわれ,定かではない。Greenは,細胞膜の溶解作用を抗菌活性の機序として挙げている5)。界面活性剤なので,薬物の眼組織への透過性を促進し,眼内への移行濃度を高める作用がある。 ・・・ 2) 塩化ベンゼトニウムbenzethonium chloride C27H42ClNO2:448.09 水に良く溶け,無臭で化学的に安定であり,抗菌性,有効濃度,他剤との配合性など塩化ベンザルコニウムにほとんど等しい。組織障害性にしても,家兎角膜temperature reversal effectに影響を及ぼし4),培養細胞への毒性も塩化ベンザルコニウムに近似している。 3) 塩化セチルピリジウムcetylpyridinium chloride C21H36ClN・H2O:358.0 白色粉末で水に溶けやすい。塩化ベンザルコニウムや塩化ベンゼトニウムと同様4級アンモニウム塩に属するが,これらよりやや抗菌活性は低い。0.01~0.05%の濃度で用いられ,細胞毒性も前二者に良く似ている4,18)。 」(p.43右欄の「2. 逆性石けん類cationic surface active agents」~p.44左欄2行、及びp.44右欄下から7行~p.45左欄8行) (甲9b) 「ヒト眼組織由来の培養細胞を用いた著者の実験では0.005%,すなわち50μg/ml程度を許容限度とした13)~15)。抗菌力を有する濃度を最低0.002%とみて,点眼液に添加する防腐剤として用いるためには0.002から0.005%までの濃度が妥当との見解が有力である。」(p.44右欄2-8行) (8)甲10(「点眼液の防腐剤としての塩化ベンザルコニウムの抗菌力についての検討」,医療薬学,2003年,Vol.29,No.3,p.341-345)には、以下の事項が記載されている。 (甲10a) 「国内の市販の点眼液に繁用されている塩化ベンザルコニウム添加濃度50μg/mlで十分にグラム陽性菌による汚染を抑制できると考えられる.」(p.343右欄下から10行-8行) (当審合議体注:50μg/mlは、0.005%(w/v)である。) (甲10b) 「緑内障,アレルギー疾患,ドライアイなど患者は長期にわたって点眼液を使用しており,数種類の点眼液を使用している患者も稀ではない.塩化ベンザルコニウムの角膜蓄積などを考慮に入れ,今回の実験結果から判断すると,塩化ベンザルコニウムの点眼液に添加する濃度は12.5μg/mlないしは25μg/mlが適切であると考える.」(p.344右欄2-8行) (当審合議体注:12.5μg/ml及び25μg/mlは、それぞれ0.00125%(w/v)及び0.0025%(w/v)である。) (9)甲11(「0.0015%タフルプロスト点眼液のベンザルコニウム塩化物濃度の最適化検討-眼表面安全性と保存効力の視点から-」,2010年,薬学雑誌,130巻6号,p.867-871)には、以下の事項が記載されている。 (甲11a) 「これら細胞障害性試験及び保存効力試験の結果から,タフルプロスト点眼液のBAKC12濃度としては,0.0005-0.003%の範囲で配合することが望ましいことが示唆された(Fig.3).」(p.870右欄4段落)(当審合議体注:BAKC12の構造は下記(甲11b)を参照。) (甲11b) 「 [図:0001418107000017.jpg] 」(p.868右欄の「Fig.1」) (10)甲12(「特集 防腐剤の功罪-その功について-」,Ophthalmology Update,1993年,Vol.8,No.3,p.3-7)には、以下の事項が記載されている。 (甲12a) 「 [図:0001418107000018.jpg] 」(p.4の「表1」)(当審合議体注:50μg/mlは、0.005%(w/v)である。) (甲12b) 「点眼薬中のBAKは一般に50μgであるから十分効力があり,この結果から判断するとその濃度は10~20μgで十分であるように思われる.」(p.5の下から3行-最下行) (当審合議体注:10~20μg/mlは、0.001~0.002%(w/v)である。) (11)甲13(「特集 防腐剤の功罪-その罪について-」,Ophthalmology Update,1993年,Vol.8,No.3,p.8-11)には、以下の事項が記載されている。 (甲13a) 「はじめに 眼組織に対する防腐剤の細胞毒性が臨床的に問題になるのは,主として点眼薬による障害である.点眼は眼科の代表的な治療手段であるだけに,組成の1つである防腐剤の果たす役割は“両刃の刃”であることを十分に理解する必要がある.防腐剤のもつ界面活性作用は細胞膜の透過性を高め,膜破壊,細胞質の変性を起こす.細胞増殖の抑制,細胞接着性低下,過敏性の発現などが個々の防腐剤の薬理作用,使用濃度,作用時間に応じて惹起される.」(p.8の「はじめに」の項目の1段落) (甲13b) 「 [図:0001418107000019.jpg] 」(p.9の「表1」及び「表2」) (12)甲14(特開2016-135780号公報)には、以下の事項が記載されている。 (甲14a) 「【請求項1】 次の一般式(1) [図:0001418107000020.jpg] で表される化合物若しくはその塩又はそれらの溶媒和物と、第4級アンモニウム型界面活性剤とを含有する、水性組成物。 【請求項2】 一般式(1)で表される化合物が、リパスジルである、請求項1記載の水性組成物。 【請求項3】 第4級アンモニウム型界面活性剤が、ベンザルコニウム塩化物及びベンゾドデシニウム臭化物よりなる群から選ばれる1種以上である、請求項1又は2記載の水性組成物。 【請求項4】 点眼剤である、請求項1~3のいずれか1項記載の水性組成物。」 (甲14b) 「【0003】 そのため、水性組成物には、防腐剤(殺菌剤)を配合して防腐効果を持たせることが多い。防腐剤としては例えば、パラベン類や、ベンザルコニウム塩化物等の第4級アンモニウム型界面活性剤等が用いられる。 しかしながら、こうした防腐剤には細胞毒性等の問題点があることも指摘されており(例えば、非特許文献1)、例えば水性組成物を点眼剤として用いた場合には角膜損傷をきたすおそれもあることから、その使用量は極力最低限に留めたい。 この点、複数種の成分の組み合わせの協力作用により優れた防腐効果を奏する水性組成物の処方が確立できれば、その分だけ各種防腐剤単独での使用量を低減させることが出来るため、ひいてはより安全性の高い水性組成物の提供が可能となる。」(【0003】) (甲14c) 「【0032】 ・・・中でも、第4級アンモニウム型界面活性剤としてベンザルコニウム塩化物を用いる場合においては、優れた防腐効果を得る観点から、水性組成物全容量に対して、0.0001~0.01w/v%含有するのが好ましく、0.0005~0.005w/v%含有するのがより好ましく、0.0005~0.002w/v%含有するのが特に好ましい。・・・。」(【0032】) (甲14d) 「【0073】 <リパスジル及びベンザルコニウムを含有する製剤サンプル(表中において、「リパスジル+ベンザルコニウム」と表記する。)> 100mL当たり、リパスジル1塩酸塩2水和物 0.4896g(リパスジルのフリー体として0.4g)、ベンザルコニウム塩化物 0.001g(0.001w/v%)、無水リン酸二水素ナトリウム 0.4g、グリセリン 2.136g、水酸化ナトリウム 適量(pH 6.0)及び滅菌精製水(残余)を含有する水性組成物を調製し、フィルター滅菌して製剤サンプルとした。・・・。」(【0073】) (13)甲15(大橋裕一(編),眼科New Insight 第2巻 「点眼薬-常識と非常識-」,株式会社 メジカルビュー社,1994年7月29日,p.6,7,30,31,56-65)には、以下の事項が記載されている。 (甲15a) 「III.眼内移行を修飾する因子 薬物の眼内移行を修飾する因子として,薬物側の要因,製剤側の要因,投与方法,および生体側の要因の4つがある。 ■薬物側の要因 角膜透過性に関連する薬物自体の性質として,まず分配係数があげられる。分子サイズは小さいほうが移行はよいが,眼科領域で使用されている薬物の分子量は一般的に小さく,これで差が出ることはまずない。また,高張とならない限りは,薬物濃度の高いほうが移行はよい。 ■製剤側の要因 ・・・ また、点眼薬に添加されている防腐剤も薬物の移行動態に影響を及ぼす。最も多く使用されている防腐剤は四基アンモニウム化合物である塩化ベンザルコニウム(BAC)であるが,低濃度においても薬物の透過性に大きな影響を与える、BACは界面活性剤の一種であり,生体膜への作用や涙液層の不安定化10)により薬物の透過を促進するからである。」 」(p.30の下から3行~p.31の21行) (甲15b) 「 [図:0001418107000021.jpg] 」(p.31の[図5]) (甲15c) 「防腐剤を使用するとある程度の汚染防止効果は期待できるが、必ずしも万全でないことは銘記すべきである。また,防腐剤は濃度や作用時間に依存して角膜上皮障害を起こすため,長時間使用の点眼薬やコンタクトレンズ,洗浄,保存液などへの防腐剤添加には慎重な態度が望まれる。」(p.58の下から9行~5行) (甲15d) 「I.点眼薬と角膜透過性 点眼薬の眼内移行性については,p.24「点眼薬の眼組織内移行およびドラッグデリバリーシステム」の章で詳しく説明されているので,ここでは,製剤設計に大きくかかわりの生じる因子についてのみ述べる。 結膜のう内に投与された薬物は,図1に示す経路に沿って角膜および結膜を透過し,眼内の各組織へ移行する。このうち,角膜を透過する経路が主要経路であるので1),以下に列挙した角膜の透過性に影響を与える因子を知っておくことは製剤設計上,非常に重要なことである。」(p.6の下から2行~p.7の6行)(当審合議体注:「結膜のう」の「のう」は、原文では、(甲15b)の[図5]、及び(甲15e)の[図1]に記載されている漢字である。以下同様。) (甲15e) 「 [図:0001418107000022.jpg] 」(p.7の[図1]) (14)甲16(庄司純(編著),「点眼薬クリニカルブック第2版」,金原出版株式会社,2015年11月25日,p.4-12)には、以下の事項が記載されている。 (甲16a) 「(5)防腐剤の多面性 (a)防腐剤の歴史 日本では1930年代からワクチンの保存剤として利用されて以来,また点眼剤の防腐剤として長く使用されていたチメサロール(商品名で,正式な化学名はエチル水銀チオサリチル酸ナトリウム)が1970年代に入って,有機水銀化合物の使用の是非の問題から,順次ほかの防腐剤(表3)に置き換わってきた歴史がある。 その中で,もっとも多く使用されているのが,ベンザルコニウム塩化物(BAKあるいはBACと略される:臨床ワンポイント:ベンザルコニウム塩化物)である。チメサロールとBAKの共通点としては,水に可溶で安定性が高く,また殺菌作用が高く,また殺菌作用が強く点眼刺激がないという点である。さらに,点眼液のpHに影響を受けないという利点もあり,防腐剤として主流的行きを占めてきた。しかしながら,近年ではBAKの角膜障害が論じられるようになり,BAK自体の工夫やBAKから他の新しい防腐剤システムへの変更など,さらに防腐剤フリー点眼容器製品の開発につながっている。」(p.9右欄の「(5)防腐剤の多面性」の「(a)防腐剤の歴史」の項目) (当審合議体注:「(5)」は「黒四角中に白抜き文字の5」であり、「(a)」は「黒四角中に白抜き文字のa」である。) (甲16b) 「臨床ワンポイント ベンザルコニウム塩化物 ベンザルコニウム塩化物は,陽イオン界面活性剤の一種で,C6H5CH2N+(CH3)2R・Cl-(R=C8H17~C18H37:炭素数が偶数の長鎖アルキル)の構造式で表される(下図)。ベンザルコニウム塩化物の作用は,細菌細胞膜の蛋白質を変性させることにより殺菌性を発揮する。アルキル側鎖がC8H17やC10H21のものは殺菌作用は弱く,C12H25以上であれば,殺菌作用に大きな差はないとされている。逆性石鹸や陽性石鹸として手指,粘膜,機器の消毒などに用いられている。 点眼剤中には防腐剤として添加されているが,点眼液にはアルキル側鎖がC12,C14,C16のベンザルコニウム塩化物が混在したものが用いられている。アルキル側鎖がC12単独のベンザルコニウム塩化物は角膜毒性が少ないとされ2,3),参天製薬が特許を取得し,自社の製品(ヒアレイン(R)点眼液,ジクアス(R)点眼液,タプロス(R)点眼液など)で使用している。 アルキル側鎖部分は石油成分から蒸留により得ており,石油成分には炭素数の偶数のものだけで,奇数のものは存在しない。 [図:0001418107000023.jpg] 」(p.10の「臨床ワンポイント ベンザルコニウム塩化物」の項目) (甲16c) 「一般的に論じられている防腐剤の功罪では,患者の使用中の二次汚染を防止する「功」の部分と,角膜に対する細胞毒性を示すリスクがある「罪」の部分が議論されるが,主成分の角膜透過性に及ぼすもうひとつの重要な役割についても合わせて評価する必要がある。 ラタノプロストやトラポプロストのようなプロスタグランジン系化合物の場合,点眼剤中のBAKの有無で,房水中濃度が50~60%に変化することが知られている4)。 BAKによる角膜最表層上皮細胞間に存在するタイトジャンクションの開閉に対する直接的な影響(可逆的な変化)とラタノプロストなどのカルボン酸残基のマイナスイオンとBAKのプラスイオンによるイオン対形成による物性変化の影響などが,BAKの角膜透過性向上への機序として考えられている。」(p.10の下から3行~p.11の9行)(当審合議体注:「BAK」は塩化ベンザルコニウムである。) (甲16d) 「次にホウ酸は緩衝剤であり,等張化剤であるとともに殺菌作用はないが静菌作用を有する防腐剤でもある。この静菌作用を利用し,他の添加剤と併用することでBAKに代わる新しい防腐剤システムを構築する流れがある。」(p.11の下から9行-7行) (15)甲17(石岡みさき(著),「点眼薬の選び方第2版」,日本医事新報社,2020年2月10日,p.10-11,17-19)には、以下の事項が記載されている。 (甲17a) 「3 防腐剤について 点眼薬の防腐剤としてよく使われているのはベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウムとも呼ばれ,略称はBAKあるいはBAC)で,界面活性剤や逆性石けんとして知られているものです。防腐剤としての働きのほか,薬剤の角膜透過性を上げるため房水中の薬剤濃度を上げることができますが,時に角膜上皮障害を起こすことが問題となります3)。」(p.10のタイトル~1段落) (16)甲18(眼科診療プラクティス編集委員(編),眼科薬物治療ガイド,株式会社 文光堂,2004年9月29日,p.424-425,428-434,442-444)には、以下の事項が記載されている。 (甲18a) 「 現在,わが国で使用されている市販点眼薬に含まれる防腐剤のうち,最もよく用いられているのは,塩化ベンザルコニウム(BAK)である.塩化ベンザルコニウムの化学構造式を図2に示すがアルキル鎖長(C8-C18)の異なるものの混合物で,アルキル鎖長の違いにより,角膜への安全性,殺菌力,配合変化などが異なり(表4),それぞれの特性を持った塩化ベンザルコニウム単一品の使用も試されている.」(p.425左欄の「III 防腐剤の功罪」の2段落) (甲18b) 「 [図:0001418107000024.jpg] 」(p.425右欄の「図2」) (甲18c) 「 [図:0001418107000025.jpg] 」(p.425右欄の「表4」) (甲18d) 「 [図:0001418107000026.jpg] 」(p.425右欄の「表5」 (甲18e) 「薬剤の角膜透過には,その分子量と極性が重要な因子である.分子量が100以下の薬剤は角膜上皮の透過性が高い.分子量が500以上になるとその透過性はきわめて低下する.」(p.428右欄の下から11行-8行) (甲18f) 「また,点眼薬の防腐剤として広く用いられている塩化ベンゼルコニウムはイオン性界面活性剤であり,角膜上皮バリア機能を低下させるため,薬物の角膜透過性は促進される.」(p.429左欄4-7行) (17)甲19(渡辺善照(編),「標準薬剤学-医療の担い手としての薬剤師をめざして-(改訂第4版),株式会社 南江堂,2017年4月30日,p.225-226) (甲19a) 「 [図:0001418107000027.jpg] 」(p.226の「表47」の「逆性石ケン類(陽イオン界面活性剤)」の欄) (18)甲20(特表2015-521182号公報)には、以下の事項が記載されている。 (甲20a) 「【0007】 活性物質の浸透を改善するために、しばしば、塩化ベンザルコニウムのような第四級アンモニウム化合物が、点眼で使用されており、これは同時に保存剤としても働く。塩化ベンザルコニウムは、眼の角膜を、深い細胞層まで攻撃し、損傷することが判明している。また、DMSO、グリココール酸ナトリウム、フシジン酸ナトリウム等の他の浸透増進剤も、損傷作用を有する。」(【0007】) (甲20b) 「【0136】 実験3:ポジティブコントロール-リンゲル液中の0.001%塩化ベンザルコニウムの、60分おきの滴下による塗布 EVEITシステムによるウサギ角膜の準備と培養。準備は、死後8時間までに行われた。培養は、32℃および95%を超える空気湿度で行われた。まばたきのシミュレーションは、60分の間隔で、角膜頂点に培地(38μl)を塗布することによって行われた。準備の24時間後、培養物は、器官培養の生理学的な活力を伴う成功的な培養を確認する品質テスト(肉眼的にフルオレセイン染料を含むか、および、光干渉断層撮影(OCT)による)にかけられた。続いて、試験物質BAC0.001%は、角膜に3日間にわたり60分の間隔で繰り返し塗布された(38μl)。試験物質の塗布は、培地の塗布と交互に行われた(30分おき)。試験過程の記述は、肉眼検査およびOCTにより毎日行われた。角膜培養物は、100μlのフルオレセインナトリウムの水溶液(5mg/ml)とともに、1日1回、60秒間インキュベートされた。続いて、フルオレセインは、リンゲル液を用いて角膜表面から完全に洗い流された。洗い流し後、角膜培養物は、32℃・100%の空気湿度にて、インキュベーター内で60分間静置された。この期間において、前房内で培地の交換は行われなかった。前房ボリュームは、60分間の待機時間後に完全に交換された。この時点で人工前房中に見つけられたフルオレセインの物質量は、側光法で測定された。 【0137】 結果:OCTにおいて、上皮の層厚の有意な減少が、BAC0.001%の最初の塗布から48時間後に検出できる。最初の塗布後72時間で、上皮は構造的にほぼ崩壊し、もはや閉鎖層を形成しない。この上皮の欠損のため、この時点での角膜の膨張は、生理学的コンディション下において他で観察される程度を有意に越えた。肉眼検査の緑の着色は、人工前房内の少量のフルオレセインによって一部もたらされ、これは並列に実施された浸透測定に起因する。しかしながら、最初の塗布後48時間と72時間で、上皮は有意にフルオレセイン-陽性である。」(【0136】~【0137】) (甲20c) 「【0142】 II. 滴下塗布による人工前房中へのフルオレセイン浸透の定量的評価 フルオレセインの浸透:コントロール物質(培地[実験1]、HYLO-COMOD(登録商標)[実験2]および塩化ベンザルコニウム0.001%[実験3];図1) 図1では、模擬眼前房において確認されたフルオレセインの物質量が、上記コントロール物質の最初の塗布後の時間においてプロットされている。0時点における初期値は、最初の塗布の直前に測定された。続いて、さらなる値が、24時間ごとに測定された。まばたきのシミュレーションのために、60分間隔で、培地のみが角膜上皮に滴下塗布された場合、角膜の浸透性は、3日間の培養期間の間に約50%増加する。まばたきのシミュレーションの間に、さらにHYLO-COMOD(登録商標)が角膜に滴下塗布される場合、この増加は完全に抑制されうる。HYLO-COMOD(登録商標)の代わりに、浸透促進剤である塩化ベンザルコニウム(0.001%)が、培地の塗布と交互に角膜に塗布される場合、フルオレセインの測定される浸透は、150%を超えて著しく増加する。この試験は、EVEITの全ての時点において上皮を通じたフルオレセインの浸透は低く、洗浄剤として作用し、閉鎖帯の上皮の完全性を変更する、塩化ベンザルコニウム(保存剤)による化学的変化の結果として、試験期間にわたり継続的に高まる浸透増加が実証できることを示す。これは、長時間の塗布において塩化ベンザルコニウムによってもたらされる累積的且つ広範な損傷を示す。」(【0142】) (19)甲21(「アレルギー性結膜炎患者に対するエピナスチン点眼液の改良製剤の検討」,臨床眼科,70巻4号,2016年,p.535-541)には、以下の事項が記載されている。 (甲21a) 「 緒言 エピナスチン塩酸塩点眼液は,メディエーター遊離抑制作用とヒスタミンH1受容体拮抗作用を併せもつアレルギー性結膜炎の点眼治療薬である。発売開始時の製剤には防腐剤としてベンザルコニウム塩化物(benzalkonium chloride;BAK)が添加されていたが,2014年12月にホウ酸を含有する製剤へ処方変更され,添付文書から含水性ソフトコンタクトレンズ(soft contact lens:SCL)装用時の注意事項に関する記載が削除された。 BAKは点眼液に添加される代表的な防腐剤であるが,高濃度では細胞障害性を有することが知られている1,2)。」(p.535の「緒言」の1段落全文~2段落3行目) (20)甲22(「眼内薬物動態と全身移行」,薬局,2014年,Vol.65,No.5,p.29-36)には、以下の事項が記載されている。 (甲22a) 「 [図:0001418107000028.jpg] 」(p.30の「図1」) (甲22b) 「[2]角膜透過促進剤 角膜透過を促進するため,種々の透過促進剤が検討されている.点眼剤に用いられる添加剤で,キレート剤であるエデト酸(EDTA),防腐剤である塩化ベンザルコニウム,塩化セチルピリジウム,非イオン性界面活性剤であるポリソルベート80などで透過促進効果が明らかにされている.これら添加剤は,全ての薬物に対して角膜透過促進効果が認められていない.しかし,一般に,透過促進剤は可逆的な作用といわれているが角膜組織を変化させて薬物の透過性を促進する.そのため,現在のところ,上記添加剤を角膜透過促進剤として使用している実施例は存在しない.」(p.34右欄の1段落) (当審合議体注:「[2]」は「2」の黒四角囲いである。) (21)甲23(特表2018-521000号公報)には、以下の事項が記載されている。 (甲23a) 「【請求項1】 眼用組成物であって、約4~約8のpDで眼用薬剤と重水を含み、ここで、眼用薬剤はムスカリン性アンタゴニストではなく、眼用薬剤は一重項酸素の生存期間を延ばさない、眼用組成物。 ・・・ 【請求項9】 眼用組成物は更に、モル浸透圧濃度調整剤、防腐剤、緩衝剤、等張化剤、pD調整剤、又はそれらの組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の眼用組成物。 ・・・ 【請求項11】 防腐剤は、塩化ベンザルコニウム、セトリモニウム、過ホウ酸ナトリウム、安定化されたオキシクロロ複合体、SofZia、ポリクォータニウム-1、クロロブタノール、エデト酸二ナトリウム、ポリヘキサメチレンビグアニド、又はそれらの組み合わせから選択される、ことを特徴とする請求項9に記載の眼用組成物。」(【請求項1】、【請求項9】、【請求項11】) (甲23b) 「【0016】 幾つかの実施形態において、眼用組成物は防腐剤を更に含む。幾つかの実施形態において、防腐剤は、塩化ベンザルコニウム、セトリモニウム、過ホウ酸ナトリウム、安定化されたオキシクロロ複合体、SofZia、ポリクォータニウム-1、クロロブタノール、エデト酸二ナトリウム、ポリヘキサメチレンビグアニド、又はそれらの組み合わせから選択される。」(【0016】) (甲23c) 「 [図:0001418107000029.jpg] 」(【図1】) (22)甲25(MR JUSTICE ARNOLD, [2019]EWHC 1085 (Pat) Case Nos:HP-2017-000079,HP-2018-000009, IN THE HIGH COURT OF JUSTICE BUSINESS AND PROPERTY COURTS INTELLECTUAL PROPERTY LIST (CHANCERY DIVISION) PATENTS COURT, 3 May 2019)には、以下の事項が記載されている。 (甲25a) 「73.主な争点は、BAKが眼科用医薬品の角膜透過性、ひいてはバイオアベイラビリティを高めるということが一般に知られていたかどうかということである。 74.Morgan教授の意見は、BAKがいくつかの薬物の角膜透過性を高めることは一般的な知識であったというものであった。彼の意見は、4つの教科書によって裏付けられている。 ・・・ 75.Diamond博士の証拠によれば、博士はAdler’sを読んでいたことは認めるが、それ以来忘れてしまったということである。さらに、BEH社の4人の同僚に尋ねたところ、BAKが角膜への浸透性を向上させるという記述を覚えている者はいなかった。しかし、BAKの効果について知りたい熟練した眼科医は、Adler’sを読めばすぐに分かることだと、彼は認めたのである。他の教科書のいずれかを参照したとしても、結果は同じであった。 76.したがって、BAKが防腐効果だけでなく浸透促進剤としても作用することは、熟練した眼科医の一般常識の一部であったと判断する。仮に私が間違っていたとしても、BAKを含む製剤を含むプロジェクトに従事する熟練した眼科医にとって、その情報を確認することは自明であった。 77.教科書は、BAKが常にこのような効果を持つことを示唆しているわけではないが、BAKが有効な薬物クラスとそうでない薬物クラスを特定しているわけではないことに留意されたい。むしろ、伝わってくるメッセージは、それがBAKの一般的な特性であるということである。」 (「73.」~「77.」の項目) (23)甲27(根木昭 外4名(編集),「眼科プラクティス 23.眼科薬物治療 A to Z」,株式会社 文光堂,2008年10月30日(第2刷),序文,p.566)には、以下の事項が記載されている。 (甲27a) 「■点眼された薬物の眼内移行経路 結膜のう内に点眼された薬物の眼内移行ルートを図1に示してある.二つの経路が考えられており,一つは角膜を介する経路であり,もう一方は結膜を介して眼内に移行する経路である.そのうち,角膜上皮を浸透して房水,虹彩・毛様体,硝子体などに分布する経路が主流である.」 (p.566左欄の「■点眼された薬物の眼内移行経路」の1-6行) (甲27b) 「 [図:0001418107000030.jpg] 」(p.566右欄の「図1」) (24)甲33(岡田弘晃、吉野廣祐(監修)、「製剤の達人による製剤技術の伝承 製剤設計・製造技術の新たな潮流」、株式会社 じほう、平成29年(2017年)5月20日発行、p.441-456)には、以下の事項が記載されている。 (甲33a) 「点眼剤開発の基礎 森島 健司 POINT 点眼剤開発のポイント 点眼された薬物が効果を発揮するには,さまざまな眼組織を移行して疾患部位に到達する必要があり,眼内移行性を十分に考慮に入れた製剤設計が必要である。そのためには薬物の眼内移行に影響を及ぼす因子を十分に把握し,優れた移行性を達成することで有効性を高めるとともに,敏感な眼組織に対する安全性も十分に配慮されなくてはならない。 ・・・。」(p.441のタイトル及び「POINT」の項目) (甲33b) 「3.2 点眼剤の特性 点眼剤側の眼内移行に及ぼす要因は,pH,イオン強度,表面張力,浸透圧,粘性,薬物濃度などである。 ・・・ 点眼剤の表面張力もその角膜透過性に影響を与えることがある16)。界面活性剤などは涙液外層の脂質層を破壊し,軽度の上皮細胞剥離を伴う末梢微小絨毛の喪失を引き起こす17)。このことが角膜上皮のバリア機能を低下させ,薬物の角膜透過性を増加させると考えられ,点眼薬の保存剤に汎用されている界面活性作用のあるベンザルコニム塩化物も,生体膜への作用や涙液層の不安定化により,薬物の透過を促進させることがある。 ・・・。」(p.445の「3.2 点眼剤の特性」の項目) (25)甲34(特開2012-180346号公報)には、以下の事項が記載されている。 (甲34a) 「【請求項1】 親水性薬物およびベンザルコニウムハロゲン化物を含有し、浸透圧比が0.5以下である水性組成物。 ・・・ 【請求項6】 親水性薬物が下記式(1)で表される化合物またはその塩である、請求項1または2に記載の水性組成物。 【化1】 [図:0001418107000031.jpg] 」(請求項1、請求項6) (甲34b) 「【0038】 <実施例1:親水性薬物の房水への薬物移行性試験> 本発明の水性組成物(以下、「本発明製剤」ともいう)および比較対象の水性組成物(以下、「比較製剤」ともいう)を用いて、親水性薬物の房水移行性について検討をした。尚、親水性薬物として、前記式(1)で示される化合物、すなわち(4-{3-[6-アミノ-9-((2R,3R,4S,5S)-5-シクロプロピルカルバモイル-3,4-ジヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)―9H-プリン-2-イル]-2-プロピニル}-ピペリジン-1-カルボン酸メチルエステル)(以下、「本化合物」ともいう)を使用した。 【0039】 (1-1)本発明製剤および比較製剤の調製 ・本発明製剤1(ベンザルコニウム塩化物(以下、「BAK」ともいう) 0.005w/v% 低張[浸透圧比:0.25]) 濃グリセリン0.47gに精製水90mLを加え溶解した。溶解後、リン酸二水素ナトリウム0.15g、本化合物0.01gを加え溶解させた。さらに、0.1w/v% BAK溶液5mLを加え攪拌し、水酸化ナトリウムおよび塩酸をそれぞれ適量加え、製剤のpHを6.0付近とした後、精製水を適量加えて全量を100mLとし、0.01w/v%の本化合物を含む本発明製剤とした。浸透圧比は、第十五改正日本薬局方の浸透圧測定法(オスモル濃度測定法)の項に順じ浸透圧を測定して算出した。 【0040】 本発明製剤1の調製方法と同様の方法にて、表1に示す本発明製剤および比較製剤を調製した。」(【0038】~【0040】) (甲34c) 「【表1】 [図:0001418107000032.jpg] 」(【0041】【表1】) (甲34d) 「【0042】 (1-2)試験方法 上記(1-1)で調製した各製剤をJW系雄性白色ウサギに単回点眼したときの、点眼後1および2時間における房水中の本化合物の濃度をLC-MS/MS法で測定した(1時点4眼)。 【0043】 (投与方法および測定方法) 1)各製剤を角膜上にマイクロマンで50μL点眼した。点眼後、約30秒間保持した。2)所定時間に無麻酔下で、ウサギを固定器に入れた状態で耳静脈よりペントバルビタール製剤(商品名:ソムノペンチル注射液)約4mLを注入して致死させた。 3)眼球を突出させ、生理食塩液で洗浄した後、房水を採取した。 4)採取した房水は、1眼あたり50μLを使用して前処理を行なった後、LC-MS/MS法で測定し、4眼の平均値を結果に示した。 【0044】 (1-3)試験結果 LC-MS/MS法で測定した結果(Cmax)を表2に示す。」(【0042】~【0044】) (甲34e) 「【表2】 [図:0001418107000033.jpg] 」(【0045】【表2】) (甲34f) 「【0046】 (1-4)考察 表2に示したとおり、本発明製剤1~8における本化合物の房水移行性は、比較製剤1~3に対して、顕著に向上した。以上から、本発明製剤は、親水性薬物の薬物作用部位への移行性が顕著に向上させたことが分かる。」(【0046】) (26)甲35(陳述書、作成者:東和薬品株式会社知的財産部 八久義雄、作成日、2023年8月29日)は、本件特許に関する侵害訴訟である「大阪地裁 事件番号:令和5年(ワ)4975、原告:東亜薬品株式会社、被告:参天製薬株式会社」の事件記録の内容についての陳述書である。 そして、甲35には、以下の事項が記載されている。 (甲35a) 「東亜薬品株式会社(以下、「東亜薬品」といいます)が参天製薬株式会社(以下、「参天製薬」といいます)に対し、東亜薬品が厚生労働省より製造販売承認(承認番号:30400AMXO0073000、施工年月日:2022/02/15)を取得している「エピナスチン塩酸塩Lx点眼液0.1%『ニットー』」(以下、「東亜製剤」といいます)が参天製薬の保有する各特許(第7118579号を含む)に対し先使用権を有する旨を主張して、2023年5月3日付けで大阪地方裁判所に提訴している特許権侵害差止請求権不存在確認請求事件(令和5年(ワ)第4975号)の事件記録を閲覧しましたので、その内容についてご報告いたします。」(p.1の1段落) (甲35b) 「1.閲覧目的 東亜薬品が先使用権を主張するために提出している承認申請書や添付文書案等において開示している生物学的同等性試験等の記載を閲覧することで、後発品である東亜製剤と参天製薬のアレジオンLX点眼液0.1%(以下、「先発製剤」といいます)の処方の相違(0.025mg/mlの塩化ベンザルコニウムの有無)が、両剤の薬効に影態を及ぼさないことを確認すること。 2.東亜製剤と先発製剤の処方について (1) 東亜製剤の処方(エピナスチン塩酸塩LX点眼液0.1%「ニットー」) 東亜製剤の処方に関し、承認申請時に提出している添付文書案、PMDAへの医薬品事前面談質問申込書、製品標準書総括と題する資料に記載がありました。 1ml中 ・エピナスチン塩酸塩 1mg ・リン酸二水素ナトリウム水和物 2.52mg ・リン酸水素ナトリウム水和物 12.2mg ・塩化ベンザルコニウム 0.025mg ・塩化ナトリウム 5.1mg ・pH調節剤(塩酸、水酸化ナトリウム) 適量 ・溶剤(精製水) 適量 (2)先発製剤の処方(アレジオンLX点眼液0.1%) 先発製剤の処方に関し、PMDAへの医薬品事前面談質問申込書の中に記載がありました。 1ml中 ・エピナスチン塩酸塩 1mg ・リン酸二水素ナトリウム水和物 2.52mg ・リン酸水素ナトリウム水和物 12.2mg ・塩化ナトリウム 5.1mg ・pH調節剤(塩酸、水酸化ナトリウム) 適量 ・溶剤(精製水) 適量 以上のとおり、先発製剤には塩化ベンザルコニウムを含有しておらず、東亜製剤と先発製剤との処方上の相違は、塩化ベンザルコニウム(0.025mg/m1)の有無のみとなっている。」(p.1-2の「1.」及び「2.」の項目) (甲35c) 「3.生物学的同等性の評価 ・・・ [図:0001418107000034.jpg] ・・・ [図:0001418107000035.jpg] 」(p.2-3の「3.」の項目) (甲35d) 「4.考察 以上のとおり、東亜製剤と先発製剤との処方上の相違は、塩化ベンザルコニウム0.025mg/mlの添加の有無のみであるところ、両剤は生物学的に同等であることが認められ東亜製剤の製造販売承認が認められていることから、上記塩化ベンザルコニウムの有無の違いは、両剤の薬効に影響を及ぼすものではないことが、公に確認されたものと考えます。」(p.3の「4.」の項目) (27)甲26(寺田弘 外1名(編集),「続 医薬品の開発 4巻 薬物の生体膜輸送と組織標的化〔II〕」,株式会社 廣川書店,1991年4月25日,p.390-396)には、以下の事項が記載されている。 (甲26a) 「 [図:0001418107000036.jpg] 」(p.390の「図5.172」) (甲26b) 「B.眼疾患 結膜のう内に投与された薬物は,外眼部(結膜,角膜,強膜)や前眼部(房水,虹彩,毛様体)へは良好な移行を示すが,内眼部(硝子体,網脈絡膜)への移行はごくわずかであり,主として外眼部疾患及び前眼部疾患に適用される. a)外眼部疾患 角膜や結膜の疾患であり,感染症や炎症など皮膚疾患と類似している.抗菌薬及び抗炎症薬などが治療に用いられるが,作用部位が角膜あるいは結膜であることから,角膜透過や結膜透過はそれほど薬効に関与しない.むしろ,乾性角結膜炎keratoconjunctivitis sicca に用いられる人工涙液artificial tear 型点眼液では結膜のう内での滞留性が重要となる. b)前眼部疾患 虹彩,毛様体及び水晶体などにおける疾患であり,感染症や炎症以外に緑内障glaucoma や白内障 cataractなど眼科特有の疾患がある.抗菌薬,抗炎症薬,抗緑内障薬あるいは抗白内障薬などが用いられる.また,治療薬ではないが,散瞳薬あるいは縮瞳薬といった眼科検査薬も前眼部で作用を発揮する.これらの治療薬や検査薬の効果を十分に得るためには,薬物の角膜及び結膜透過性を高める工夫が必要となる.したがって,これら前眼部に作用する眼科用剤が角膜・結膜の透過性に最も関係が深い.」(p.393の「B.眼疾患」の項目) (甲26c) 「図5.176の模式図に示したように,結膜のう内に投与された薬物は主として角膜及び結膜の透過にはじまり眼内各組織へ移行するが,そのうち特に角膜透過が主要経路となる. ・・・ [図:0001418107000037.jpg] 」(p.394の下から2~1行、p.396の「図5.176」) 4 主な乙号証の記載事項 (1)乙2(「アレジオン(R)点眼液0.05%」の添付文書、参天製薬株式会社、2016年5月(改訂日))には、以下の事項が記載されている。 (乙2a) 「 [図:0001418107000038.jpg] 」(p.1) (乙2b) 「 [図:0001418107000039.jpg] 」(p.1)(当審合議体注:上記〔組成・性状〕の「添加物」の欄において、5番目に記載されている成分は「エデト酸ナトリウム水和物」であると認められる。) (2)乙3(“Pharmacokinetics, efficacy and safety profiles of preserved and preservative-free tafluprost in healthy volunteers”, Acta Ophthalmologica, 2008, Vol.86, S242, p.7-13)には、以下の事項が記載されている。 (乙3a) 「 [図:0001418107000040.jpg] 図2 保存剤を含む又は含まないタフルプロスト0.0015% 点眼薬の投与後のタフルプロスト酸の血漿濃度曲線(平均±SEM)。(A)は1日目の単回投与、(B)は8日目の反復投与の結果を示す。SEM=標準誤差平均。」(p.10の「Fig.2」) (乙3b) 「 [図:0001418107000041.jpg] 表1 タフルプロスト0.0015%点眼薬の保存剤を含む又は含まない製剤の単回(1日目)及び反復(8日目)投与後の薬物動態パラメーター。」(p.11の「Table.1」) (乙3c) 「本実験で観察された防腐剤含有タフルプロスト及び防腐剤不含タフルプロストの薬物動態プロファイル間の同等性は、防腐剤含有タフルプロスト0.0015%点眼液と防腐剤不含タフルプロスト0.0015%点眼液の一回点眼後の房水中のタフルプロストの酸形が同濃度であったことを立証した、以前のウサギのインビボ実験の結果と一致している(Pellinen & Lokkila 2008)。」(p.11右欄4-14行) (3)乙4(“Comparable corneal penetration into rabbit aqueous humour with preserved and preservative free tafluprost”, Acta Ophthalmologica, 2008, Vol.86, p.23左欄の「235-5」)には、以下の事項が記載されている。 (乙4a) 「ウサギおよびヒト実験は、高濃度のBAKは角膜上皮に影響を及ぼすので、浸透性が悪い薬物の角膜浸透性を亢進することを示している。しかしながら、BAKが浸透性に影響を及ぼさないことを示す矛盾する証拠が存在する。」(「235-5」の「Objectives」の2-6行) (乙4b) 「BAKは、タフルプロストのウサギ房水への角膜浸透に影響を及ぼさない。」(「235-5」の「Conclusions」の3-5行) (4)乙6(“Meta analysis about the efficacy and safety of anti-ocular hypertension eye drops without benzalkonium chloride”, Asian Pacific Journal of Tropical Medicine, 2013, Vol.6, No.12, p.1004-1008)には、以下の事項が記載されている。 (乙6a) 「眼内圧低下作用にはBAKの有無に関わらず点眼剤間で有意な差はないが、後者のほうが安全性が高い。」(p.1004の「Abstract」の「Conclusions」の1-2行) (乙6b) 「 [図:0001418107000042.jpg] 」(p.1005の「Table 1」) (当審合議体注:乙6aは、「Table 1」に記載された、トラボプロスト等の点眼液(2003~2010に報告)における塩化ベンザルコニウム(BAK)の有無による影響についての分析に基づく結論である。) (5)乙7(“Preservative-free versus preserved latanoprost eye drops in patients with open-angle glaucoma or ocular hypertension”, Current Medical Research and Opinion, 2016, Vol.32, No.8, p.1457-1463)には、以下の事項が記載されている。 (乙7a) 「防腐剤フリーのラタノプロストが、BAK防腐剤含有製剤と比べて、刺激性に違いはなく全ての時点で同様の薬効を示したことは、第III相臨床開発への進行を可能にした。」 (p.1457の「Abstract」の「Conclusions」) (6)乙8(“Efficacy and safety of preservative-free latanoprost eyedrops, compared with BAK-preserved latanoprost in patients with ocular hypertension or glaucoma”, British Journal of Ophthalmology, 2013, Vol.97, No.2, p.196-200)には、以下の事項が記載されている。 (乙8a) 「防腐剤フリーのラタノプロストは、BPLと同一の薬効を有し、局所刺激性は改善された。」 (p.196の「Abstract」の「Conclusions」の1-2行) (当審合議体注:「BPL」は塩化ベンザルコニウムを含むラタノプロスト製剤(benzalkonium chloride(BAK)-preserved latanoprost(Xalatan))である。) (乙8b) 「ラタノプロストは、0.02%の塩化ベンザルコニウム(BAK)防腐剤を含有する0.005%点眼液として市販され、そのBAKの濃度は、他のほとんどの緑内障点眼液の2倍の量である。」(p.196の右欄3-6行) (7)乙9(“Travoprost 0.004% With and Without Benzalkonium Chloride: A Comparison of Safety and Efficacy”, J Glaucoma, 2007, Vol.16, No.1, p.98-103)には、以下の事項が記載されている。 (乙9a) 「BACを含まないトラボプロスト0.004%製剤は、BAC含有トラボプロスト0.004%製剤と安全性及び薬効共に同等である。」(p.98の「Conclusions」の項目) (8)乙10(特表2011-521943号公報)には、以下の事項が記載されている。 (乙10a) 「【請求項1】 活性成分としてPGF2α類縁体を含んでなる高眼圧症及び緑内障を治療するための点眼水溶液であって、前記点眼水溶液は、本質的にポリエチレンから成る容器内に非イオン性界面活性剤と、安定化剤とを含み、かつ実質的に保存剤を含まない、前記点眼水溶液。」(【請求項1】) (当審合議体注:「PG」はプロスタグランジンを意味する。) (乙10b) 「【0003】 (保存剤) 点眼組成物には、細菌及び真菌に十分な抗菌作用を示す保存剤が伝統的に使用されている。これに加えて、成分と相互作用することによって、例えば成分をビヒクル若しくは基剤中に均質に分散又は溶解させることによって、組成物を安定にする、好ましくは均質化及び安定化するために保存剤が必要である(EP0969846、EP1916002及びEP1547599参照)。最近では、市販の点眼液で最も一般的に使用されている保存剤は塩化ベンザルコニウム(BAK)及び他の四級アンモニウム塩である。点眼液用の他の医薬的に許容できる保存剤は、例えばホウ酸-ポリオール-塩化亜鉛(EP 1115 406)又は酸化塩素化合物(EP 1 905 453)、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、p-ヒドロキシ安息香酸エチル及びp-ヒドロキシ安息香酸ブチルである。 しかし、保存剤は角結膜障害の主要原因としても知られており、安全目的のためには、塩化ベンザルコニウム(BAK)等の保存剤の濃度ができるだけ低いことが好ましい。保存剤が入っていない点眼液も開発されている。 ・・・ 【0008】 (発明の詳細な説明) 非イオン性界面活性剤は、その可溶化効果のため及び容器の樹脂壁へのPGF2α類縁体の吸収を防止するために本発明の点眼液に添加される。・・・非イオン性界面活性剤の好ましい例はポリソルベート80[ポリ(オキシエチレン)ソルビタンモノオレアート]である。他の好ましい非イオン性界面活性剤はポリオキシエチレン水素化ヒマシ油60及びポリオキシル40ステアラートである。・・・発明者らは、高すぎる濃度の非イオン性界面活性剤は角膜上皮層に刺激作用を及ぼし、点眼液のプロスタグランジンの生物学的利用能に有害作用を及ぼすことを見い出した。例えばタフルプロストの場合、上限0.5%の非イオン性界面活性剤ポリソルベート80が可能である。」(【0003】~【0008】) (乙10c) 「【実施例2】 【0016】 1)0.01%のBAK及び0.05%のポリソルベート80を含む保存0.0015%タフルプロスト点眼液、又は 2)0.20%のポリソルベート80を含む非保存0.0015%タフルプロスト点眼液、又は 3)0.05%のポリソルベート80を含む非保存0.0015%タフルプロスト点眼液の単回点眼後のウサギ房水内のタフルプロストの酸形の濃度を調べた。・・・ 結果(時点毎の各試験溶液についてN=8)を図4に示す。結果から、非イオン性界面活性剤の量が、眼に関する生物学的利用能に影響を及ぼすことが分かる。非イオン性界面活性剤の量が一定の限界を超えると、房水への活性薬の浸透が減少し始める。従って、非イオン性界面活性剤の量は、一方で容器壁へのPGF2α類縁体の吸収を最小限にし、かつ他方で眼に関する生物学的利用能を最大にするようにバランスを取らなければならない。」(【実施例2】【0016】) (乙10d) 「【図4】 [図:0001418107000043.jpg] 」(【図4】) (乙10e) 「【図4】点眼液中BAK保存0.0015%タフルプロスト[BAK(+)]、0.20%のTween 80を含む非保存0.0015%タフルプロスト点眼液[BAK(-) 0.2% Tween 80]、又は0.05%のTween 80を含む非保存0.0015%タフルプロスト点眼液[BAK(-) 0.05% Tween 80]の単回点眼後のウサギ房水内のタフルプロストの酸形の濃度を示す。棒は、各時点のタフルプロスト酸形濃度の平均の標準誤差を示し、アスタリスクは[BAK(-) 0.2% Tween 80]及び[BAK(-) 0.05% Tween 80]溶液間のタフルプロストの酸形濃度の統計的に有意な差異を表す(N=8でp<0.05)」(【0007】の【図4】の説明) (9)乙11(国際公開第2016/072440号)には、以下の事項が記載されている。 (乙11a) 「[0031] ・・・ [試験例3]薬物移行性試験 本発明における眼科用水性組成物を用いて、デキサメタゾンの房水移行性について検討した。 (試料調製) 実施例4、9~16: 表3に示す処方に従って、試験例1と同様にして実施例4、9~16の各点眼液を調製した。 (試験方法) 実施例4、9~16の各点眼液をJW系雄性白色ウサギに単回点眼したときの房水中デキサメタゾン濃度をLC-MS/MS法で測定した。 (投与方法および測定方法) 1)各点眼液を角膜上にマイクロマンで50μL点眼した。 2)所定時間に無麻酔下で、ウサギを固定器に入れた状態で耳静脈よりペントバルビタール製剤(商品名:ソムノペンチル注射液)を注入して安楽死させた。 3)眼球を生理食塩液で洗浄した後、房水を採取した。 4)採取した房水は、1眼あたり50μLを使用して前処理を行なった後、LC-MS/MS法で房水中デキサメタゾン濃度を測定した。 [0032] (試験結果) 房水中デキサメタゾン濃度(Cmax、4または6眼の平均値)を表3に示す。 表3 (単位:g/100mL) [図:0001418107000044.jpg] 表3に示したとおり、実施例4、9~16の点眼液は、デキサメタゾンの高い房水移行性を示した。」([0031]~[0032]) (乙11b) 「[0024] ・・・ 本発明における眼科用水性組成物は、必要に応じて医薬品の添加剤として使用可能な保存剤を配合することができる。保存剤としては、医薬として許容される範囲内であれば特に制限されるものではないが、例えば、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、塩化ベンザルコニウム、・・・ホウ酸、ホウ砂などが挙げられる。・・・」([0024]) (10)乙12:再公表特許(A1)WO2011/034192号,2013年2月14日(発行日) (乙12a) 「【0078】 [試験例7]チモロールの房水移行性試験 WO99/22715において、チモロールマレイン酸塩及びソルビン酸が配合された点眼液をウサギの眼に点眼した場合、チモロールマレイン酸塩の点眼液よりも房水へのチモロールの移行性が亢進することが記載されている。 実施例1及び比較例15(表9)をウサギの左右眼に投与し、最高濃度到達時点(Tmax)である0.5時間において、房水中チモロール濃度を測定した。実施例1及び比較例15の投与後0.5時間における房水中チモロール濃度(平均値±標準偏差、n=10)はそれぞれ3491±1448ng/mL及び3239±1675ng/mLを示し、統計学的に有意な差は認められなかった。 以上のことから、Tmaxにおいて実施例1及び比較例15を投与後の房水中チモロール濃度は同程度であり、ラタノプロストが添加されても、ソルビン酸によるチモロールの移行性が亢進することについては影響がないことが確認された。」(【0078】) (乙12b) 「【0079】 【表9】 [図:0001418107000045.jpg] 」(【0079】) (乙12c) 「【0034】 さらに本発明の水性点眼剤には、本発明の特徴及び点眼剤の安定性を損なわない範囲で、必要に応じて点眼剤に通常添加される添加剤を含有させることができる。・・・ベンザルコニウム塩化物、・・・エデト酸ナトリウム、ホウ酸等の保存剤・・・。」(【0034】) (11)乙13(特表2014-509602号公報)には、以下の事項が記載されている。 (乙13a) 「【0176】 シクロスポリンの角膜への浸透 シクロスポリン(CsA)製剤の角膜へのおよび角膜を通した浸透を測定するために、生体外実験を行った。手短に、ウサギからの角膜を取り、37℃にてインキュベートし、カルボゲン(carbogen)(95/5 酸素/炭酸)でかん流したUssing拡散セルにマウントした。およそ3 mlサンプルをチャンバーのドナー側に置き、3 mlリンゲル液(6.5g NaCl, 0.42g KCl, 0.25g CaCl2および1モルの重炭酸ナトリウム/リットル;等張液pH 7.2)をチャンバーのレセプター側に置いた。 200μlレセプター相を適当な時点にて集めることにより角膜を通した浸透を測定した。ゼロ時点および8時間(実験の終了時点)にて、ドナー相からの100μlのサンプルを分析のために採った。 角膜を集め、小孔部および上皮部に分けた。角膜部のシクロスポリンを50/50 メタノール/水中に抽出後に分析した。レセプターチャンバー、角膜およびドナーチャンバー中のCsAレベルをHPLC分析により測定した。 用いた製剤は実施例1に基づいた。以下の表はこの製剤になされた改変を概説する。 【0177】 FN番号 概要 1 実施例1と同様 2 1% w/w Tween 20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)を添加した実施例1 3 カルボマーなし、0.01%塩化ベンザルコニウム(BAC) 4 ヒマシ油を中鎖トリグリセリドの代わりとする 5 1% Brij 58(ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル)を添加した実施例1 処方の代替説明: [図:0001418107000046.jpg] 【0178】 結果 角膜に見られ、角膜を通してレセプターチャンバーに通過するCsA(シクロスポリンA)の総量を以下に概述する。 【表4】 [図:0001418107000047.jpg] ** 流動物を時間と相関できなかったため、データなし 【0179】 これらのデータから以下の結論をなすことができる: 1.Brij 58の1%の存在により、CsAの角膜への浸透について有意な肯定的効果を示した。 2.脂溶性CsAについてビヒクルとしてのヒマシ油の使用からあまり良好でない浸透結果が観察された。 3.Tween 20の使用により、CsAの角膜へのおよび角膜を通した浸透についてわずかに有害な効果を示した。 4.塩化ベンザルコニウムの存在により、CsAの浸透について有意な効果を示さない。」(【0176】~【0179】) (乙13b) 「【0108】 ・・・ 防腐剤:塩化ベンザルコニウム・・・」(【0108】) (12)乙14(「Pranoprofenの眼内薬物動態と抗炎症作用への併用散瞳剤の影響(第3報)-透過性因子の検索-」,日本眼科学会雑誌,平成4年(1992年),96巻,11号,p.1379-1386)には、以下の事項が記載されている。 (乙14a) 「 要約 散瞳剤(ミドリンP(R),MP)併用による非ステロイド性抗炎症剤pranoprofen(PPF)点眼後の眼内濃度上昇機序について,MP成分溶液を用いて透過性因子を検索した.MP成分中の保存剤であるbenzalkonium chloride,chlorobutanolやtropicamideの併用点眼の影響はないが,phenylephrine(PHE)の併用でPPF眼内濃度は2~3倍に増加した.前房水PHE濃度はPPFの併用点眼で3倍有意に増加し,PPFの分配係数はPHEとの混合溶液中で有意に増加した.MP併用によるPPF眼内濃度の上昇は,酸性化合物であるPPFと塩基性化合物であるPHEとのイオン対輸送によると考えられた.」(「要約」の項目) (乙14b) 「実験I:PPF眼内濃度に対するMP各成分溶液併用の影響 1. 保存剤の影響 MP各成分溶液併用時の角膜PPF濃度を図1に示した.生食群のPPF濃度に対しMP,MP-BZK-CB群では,有意な濃度増加を示し(p<0.01),濃度比はそれぞれ1.8および2.0倍であった.BZK+CB群のPPF濃度は,生食群と同等で増加はなかった.」(p.1381右欄4-11行) (当審合議体注:「BZK+CB」は、塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)+クロロブタノール(chlorobutanol)である。) (乙14c) 「 [図:0001418107000048.jpg] 」(p.1381の「図1」) (乙14d) 「 PPF眼内濃度は,保存剤成分であるBZKとCB併用点眼では増加せず,MPから保存剤成分であるBZKとCBを除いた溶液の併用点眼により,PPF単独点眼に比べ2.0~2.9倍の有意な増加を示した.このことより,MPに含まれる濃度のBZKおよびCBはPPF眼内濃度を上昇させる原因物質ではないことが明らかとなった.」(p.1384右欄の3段落) (乙14e) 「 BZKが角膜上皮障害により薬物の角膜透過性を亢進させる報告2)3)はあるが,BZK 0.01%を含有するMPを頻回点眼しても角膜上皮に何ら障害は認められなかった.BZKとCBの併用点眼によりPPF眼内濃度が増加しなかったことからも,MP成分中のBZK 0.01%は角膜上皮を障害せず,PPF眼内濃度を上昇させる原因物質ではないと考えられる.」(p.1385右欄の2段落) (13)乙15(特開2022-63252号公報,令和4年4月21日(公開日)には、以下の事項が記載されている。なお、乙15は、原出願の出願日(令和2年4月16日)の後、本願の出願日(令和4年7月11日)の前に、公開されたものである。 (乙15a) 「【0006】 ブリモニジン及び/又はその塩を目の充血を緩和又は抑制する眼科用液体製剤として製剤化するためには、高い安定性を有している必要があり、またブリモニジン及び/又はその塩の作用部位である結膜への移行性を有している必要がある。また、マルチドーズの眼科用液体製剤には、品質保持の観点から保存剤が通常配合される。一方で、ブリモニジン及び/又はその塩を含む眼科用液体製剤に、保存剤を添加すると、結膜移行性の指標となるブリモニジン及び/又はその塩の油層への移行量が低下するという課題に直面した。」(【0006】) (乙15b) 「【0075】 [試験例3]ブリモニジン酒石酸塩のウサギ結膜移行量の測定 1.試験点眼液の調製 精製水にホウ酸(富士フイルム和光純薬株式会社)、ホウ砂(ナカライテスク株式会社)及びブリモニジン酒石酸塩(Hinewy Pharma.Tech.Co.,Ltd)を添加して溶解し、さらに適宜ベンザルコニウム塩化物(富士フイルム和光純薬株式会社)、及びタウリン(富士フイルム和光純薬株式会社)を添加して溶解した。溶解後、全ての処方においてpH調整剤(1mol/L 塩酸又は0.1N NaOH)によりpHを調整し、表9に記載の溶液を調製し、比較例9、比較例10及び実施例22の試験点眼液を得た。なお、表中の数値はpHを除きw/v%である。 【表9】 [図:0001418107000049.jpg] 」(【0075】) (乙15c) 「【0077】 3.結膜移行量の決定 (i)結膜を浸漬しない試験点眼液及び(ii)2.結膜移行試験7)で得られた検体のブリモニジン酒石酸塩含量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法にて測定し、(i)と(ii)の差から1検体あたりの結膜移行量を求め、さらに2.結膜移行試験4)で測定した結膜重量から、個体ごとに結膜1gあたりに移行したブリモニジン酒石酸塩含量を求め、4例の平均値を結膜移行量とした。 タウリン配合によるブリモニジン酒石酸塩の結膜への移行量増加率(Crate)を下記式に従って算出した。 [図:0001418107000050.jpg] [式中、Csampleは実施例又は比較例のブリモニジン酒石酸塩の結膜移行量、C比較例9は比較例9のブリモニジン酒石酸塩の結膜移行量とした。] 【0078】 【表10】 [図:0001418107000051.jpg] 【0079】 試験例1でオクタノール層への移行性(脂溶性)が調べられた保存剤とアミノ酸類の組み合わせのうち、代表的なタウリンとベンザルコニウム塩化物の組み合わせについて、実際の結膜への移行性について調べた。オクタノール層への移行性の結果と同様に、ベンザルコニウム塩化物の添加によりブリモニジン酒石酸塩の結膜移行量は低下するが、さらにタウリンを添加することでブリモニジン酒石酸塩の結膜移行量の低下が抑制された。よって、試験例1でオクタノール層への移行性が向上した保存剤とアミノ酸類の組み合わせについて、ウサギ結膜への移行性も向上するものと推定できる。」(【0077】~【0079】) (14)乙16(「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第二版)-点眼治療のポイント-」,アレルギー,2014年,Vol.63,No.8,p.1103-1109)には、以下の事項が記載されている。 (乙16a) 「 [図:0001418107000052.jpg] 」(p.1104の「図1」) (乙16b) 「 [図:0001418107000053.jpg] 」(p.1105の「表2」) (乙16c) 「2)春季カタル アレルギー性結膜疾患のなかでも角膜病変も伴うことがあり,治療に難渋するのは,春季カタル,アトピー性角結膜炎といった重症型アレルギー性結膜疾患である.春季カタルやアトピー性角結膜炎では,即時相の反応とともに,結膜局所でのTリンパ球からの各種サイトカインが関与し,活性化好酸球の脱顆粒によって局所に遊離した塩基性たんぱくによる角膜障害や結膜の増殖性変化など遅発相の関与が考えられている.」(p.1106左欄の2段落) (15)乙17(「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版)」,日本眼科学会雑誌,令和3年(2021年),125巻,8号,p.741-785)には、以下の事項が記載されている。 (乙17a) 「 [図:0001418107000054.jpg] 」(p.748の「図2-1」) (乙17b) 「 [図:0001418107000055.jpg] 」(p.757の「表2-5」) (16)乙18(実験成績証明書、作成者:参天株式会社 阪中浩二氏,令和5年2月13日(作成日))には、以下の事項が記載されている。 (乙18a) 「(1)被験製剤の調製 下表の濃度になるように、本件特許第6963651号明細書の段落【0057】の(1)被験製剤の調製に準じて、被験製剤1(塩化ベンザルコニウム)、被験製剤2(塩化ベンゼトニウム)および対照製剤(第四級アンモニウム化合物なし)を調製した。なお、浸透圧については、各製剤いずれも等張となるように調製した。 [図:0001418107000056.jpg] 」(p.1-2の「5.実験内容」の「(1)被験製剤の調製」の項目) (乙18b) 「6.実験結果 被験製剤1(塩化ベンザルコニウム)および対照製剤(塩化ベンザルコニウムなし)の結果を下表1に示し、被験製剤2(塩化ベンゼトニウム)および対照製剤(塩化ベンゼトニウムなし)の結果を下表2に示す。なお、表中の"Mean"は平均値、"SE"は標準誤差,"N"はサンプル数を表し,これらは汎用的な統計処理により算出されるものである。 [図:0001418107000057.jpg] 」(p.2-3の「6.実験結果」の項目) 第8 本願の出願日当時の技術常識等 1 点眼薬における防腐剤の使用量について 点眼薬における防腐剤の使用量について、下記(1)~(4)の事項が知られていた。 (1)防腐剤の果たす役割は“両刃の刃”であって、防腐剤のもつ界面活性作用は細胞膜の透過性を高め,膜破壊,細胞質の変性を起こすこと(甲13a)。 (2)防腐剤には細胞毒性等の問題点があり、例えば水性組成物を点眼剤として用いた場合には角膜損傷をきたすおそれもあることから、その使用量は極力最低限に留めたいこと(甲14b)。 (3)防腐剤は濃度や作用時間に依存して角膜上皮障害を起こすため,長時間使用の点眼薬等への防腐剤添加には慎重な態度が望まれること(甲15c)。 (4)防腐剤である塩化ベンザルコニウムは、眼の角膜を、深い細胞層まで攻撃し、損傷することが判明していること(甲20a)。 (5)上記(1)~(4)から、防腐剤により生じる膜破壊、細胞質の変性、角膜上皮障害等の障害を回避するために、点眼薬中の塩化ベンザルコニウム等の防腐剤の使用量を極力最低限にすることは、本願の出願日当時の技術常識であったといえる。 なお、以下では、本願の出願日当時の技術常識を「技術常識」と略して記載する。 2 「第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム)」を、有効成分の「眼組織への移行性を向上させるため」に用い得ることが知られていたとはいえないことについて (1)点眼液中の塩化ベンザルコニウムが薬剤の角膜透過性を促進する性質及び薬剤の眼組織への移行性を向上させる性質を有すること自体は知られていた(甲13bの表1、甲15a、甲17a、甲18f、甲19a、甲22b、甲25a、甲33b等)。 (2)他方、薬剤の角膜透過性や眼組織への移行性は、防腐剤等の添加剤だけではなく、薬剤それ自体の分配係数や分子量、薬剤それ自体の濃度等にも影響されること(甲15a、甲18e)、そして、塩化ベンザルコニウムが薬剤の角膜透過を促進する性質を有することを踏まえた上で、「現在のところ,上記添加剤を角膜透過促進剤として使用している実施例は存在しない」という考察があること(甲22b)も知られていた。 (3)薬剤の種類によっては、塩化ベンザルコニウムが薬剤の角膜透過性を促進し、眼組織への移行性を向上させたとはいえないことに関する、下記ア~カの事項が知られていた。 ア タフルプロスト点眼液において、塩化ベンザルコニウムの有無は、タフルプロストの角膜透過性に影響しないこと(乙3、乙4)。 イ 塩化ベンザルコニウムの有無は、トラボプロスト、ラタノプロスト等の有効成分の薬効に影響を与えないこと(乙6~乙9)。 ウ 乙11aにおける実施例9(塩化ベンザルコニウム有り)と実施例4(塩化ベンザルコニウムなし)との比較から、デキサメタゾンの角膜への移行が塩化ベンザルコニウムによって促進されるとはいえないこと。 エ チモロールの房水移行が塩化ベンザルコニウムによって亢進されているとはいえないことを示す実験結果(乙12)。 オ シクロスポリンの角膜への浸透が塩化ベンザルコニウムによって亢進されているとはいえないことを示す実験結果(乙13)。 カ プラノプロフェンの角膜への浸透が塩化ベンザルコニウムによって亢進されているとはいえないことを示す実験結果(乙14)。 (4)さらに、塩化ベンザルコニウムによる薬剤の角膜透過性促進について、下記ア~ウの事項が知られていた。 ア 甲20には、塩化ベンザルコニウムを0.001%の濃度で含有するリンゲル液をウサギ角膜に3日間にわたり60分の間隔で繰り返し塗布した実験において、角膜上皮の層厚の有意な減少が検出され、角膜上皮が構造的にほぼ崩壊し、もはや閉鎖層を形成しなかったこと(甲20b)、及び、塩化ベンザルコニウム(0.001%)を角膜に塗布することにより、フルオレセインの浸透が著しく増加したこと(甲20c)が記載されている。 イ 甲34には、親水性薬物である、式(1)で示される化合物(甲34a、以下「化合物(1)」という。)を0.01%(w/v)及び塩化ベンザルコニウム(BAK)を0.005%(w/v)含有し浸透圧比が0.94である比較製剤2では、化合物(1)の房水移行性が0.284(Cmax,ng/mL)であったのに対し、BAKを含有しない以外は比較製剤2と同一組成であり浸透圧比が0.93である比較製剤1では、化合物(1)の房水移行性が0.187(Cmax,ng/mL)であったことが記載されており(甲34b~甲34e)、当該記載からは、比較製剤2(BAKあり)の方が、比較製剤1(BAKなし)よりも、化合物(1)の房水移行性が若干高かったことが読み取れる。 しかし、甲34の発明に該当する「本発明製剤」は、化合物(1)及びBAKを含有し浸透圧比が0.5以下である製剤である(甲34a)。そして、甲34には、化合物(1)を0.01%(w/v)及びBAKを0.005%(w/v)含有し浸透圧比が0.5以下である本発明製剤1~3、5、7及び8では、化合物(1)の房水移行性がそれぞれ1.29、1.35、1.04、0.814、1.94及び4.72(Cmax,ng/mL)であるのに対し、化合物(1)を0.01%(w/v)及びBAKを0.005%(w/v)含有し浸透圧比が0.94である比較製剤2(BAKあり)では、化合物(1)の房水移行性が0.284(Cmax,ng/mL)であったこと(甲34b~甲34e)も記載されており、当該記載からは、浸透圧比が0.5以下である「本発明製剤」は、浸透圧比が0.5超えの比較製剤2(BAKあり)よりも、化合物(1)の房水移行性がかなり高かったことが読み取れる。 (5)ここで、上記(4)アについて、甲20における、上記フルオレセインの浸透が増加したという結果は、塩化ベンザルコニウム(0.001%)が角膜上皮を著しく損傷した結果を示すものであって、塩化ベンザルコニウム(0.001%)を「薬剤の眼組織への移行性を向上させるため」という用途に特段の支障なく実際に用い得ることを示す結果ではない。 また、上記(4)イについて、甲34の発明の範囲外に過ぎない比較製剤1及び2を見比べて、比較製剤2(BAKあり)の方が化合物(1)の房水移行性が若干高かったことが読み取れたとしても、当業者は、甲34の発明に該当する「本発明製剤」の浸透圧比が0.5以下であることに着目するといえるが、製剤にBAKを0.005%(w/v)含有させて、化合物(1)以外の各種の親水性薬物の房水移行性も向上させることに着目するとはいえない。 そうすると、上記(1)~(4)及び他の甲号証及び乙号証の記載を参酌しても、本願の出願日当時、点眼液中の「第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム)」を、薬剤の「眼組織への移行性を向上させるため」という用途に特段の支障なく実際に用い得ることが知られていたとはいえない。 3 「エピナスチン又はその塩」を「0.1%(w/v)」含有する点眼液は、実質的に防腐剤及び防腐作用を有する成分を含有しなくても、十分な防腐効果を示すことについて (1)2013年11月に販売開始当時のエピナスチン塩酸塩を0.05%(w/v)含有する点眼液(販売名 アレジオン点眼液0.05%)は、ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)を含有していたが(甲3b)、2014年12月に、ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)に代えてホウ酸を含有する製剤に処方変更された(甲21a)。 そして、2016年5月に改訂された「販売名 アレジオン点眼液0.05%」の添付文書には、塩化ベンザルコニウムを含有せず、ホウ酸を含有する組成が記載されている(乙2b)。 (2)点眼液中のエピナスチン又はその塩の濃度を0.075%(w/v)超とすることにより、実質的に防腐剤または防腐作用を有する成分を含有することなく、十分な防腐効果が得られること、そして、具体的に、エピナスチン塩酸塩を1mg/1mL(すなわち「0.1%(w/v)」)の濃度で含有し、実質的に防腐剤及び防腐作用を有する成分を含有しない点眼液が、十分な防腐効果を示したこと(甲7c、甲7d、甲7fの実施例3、甲7g)。 (3)2019年11月には、エピナスチン塩酸塩を「0.1%(w/v)」の濃度で含有し、塩化ベンザルコニウム及びホウ酸をいずれも含有しない、すなわち防腐剤を含有しない点眼液の販売が、既に開始されていた(甲5及び甲6の「アレジオン(R)点眼液0.1%」)。 (4)上記(1)~(3)から、本願の出願日当時、「エピナスチン又はその塩」を「0.1%(w/v)」含有する点眼液が、実質的に防腐剤及び防腐作用を有する成分を含有しなくても十分な防腐効果を示すことは、技術常識であったといえる。 4 有効成分である薬剤が「エピナスチン又はその塩」である点眼液中の「塩化ベンザルコニウム」の濃度について (1)甲2には、エピナスチン塩酸塩を0.01、0.05又は0.1g/100ml(すなわち0.01、0.05又は0.1%(w/v))の濃度で含有する溶液が記載されているところ、これらの溶液は「好中球及び好酸球が眼球の結膜に流入するのを抑制するための」「局所的に投与可能な水溶液」(甲2aの【請求項4】、甲2b、甲2d)であるから、点眼液として用いられる溶液である。 そして、甲2には、上記各溶液が、「防腐剤」として用いられている「塩化ベンザルコニウム」(甲2cの【0006】)を、0.0101g/100ml(すなわち0.0101%(w/v))の濃度で含有することが記載されており(甲2e)、上記各溶液について、エピナスチン塩酸塩の含有量1重量部に対する「塩化ベンザルコニウム」の比率を計算すると、それぞれ1.01重量部、0.202重量部、0.101重量部になるが、これらの数値はいずれも本件訂正発明で特定される上記比率の上限である「0.05重量部」よりも2倍以上大きい値である。 (2)甲4には、エピナスチン塩酸塩を有効成分とする販売名「アレジオン(R)」の点眼液において、「防腐剤」として用いられている「塩化ベンザルコニウム」(BAC)の濃度が0.003%であることが記載されている(甲4a、甲4b)。 しかし、甲4には、当該点眼液中のエピナスチン塩酸塩の濃度は記載されていない。 そして、甲4の発行年(2014年)の時点では、エピナスチン塩酸塩を0.1%(w/v)含有する「販売名 アレジオンLX点眼液0.1%」(販売開始 2019年11月、甲5a)は販売されていなかったのであるから、甲4に記載されている販売名「アレジオン(R)」の点眼液中のエピナスチン塩酸塩の濃度は「0.1%(w/v)」ではない。 仮に、甲4の発行年(2014年)の時点で「アレジオン(R)点眼液0.05%」(甲1、甲3)が販売されていたことを考慮して、甲4に記載されている販売名「アレジオン(R)」の点眼液が「アレジオン(R)点眼液0.05%」(すなわち、エピナスチン塩酸塩の濃度が0.05%(w/v)である点眼液)であるとして、エピナスチン塩酸塩の含有量1重量部に対する「塩化ベンザルコニウム」の比率を計算すると、0.06重量部になるが、この数値は本件訂正発明で特定される上記比率の上限である「0.05重量部」よりも大きい値である。 (3)上記(1)及び(2)から、有効成分である薬剤が「エピナスチン又はその塩」である点眼液中の、「防腐剤」として用いられる「塩化ベンザルコニウム」の濃度が0.003%である点眼液自体は知られていたが、「エピナスチン又はその塩」の濃度が「0.1%(w/v)」であり、かつ「塩化ベンザルコニウム」の濃度が0.005%(w/v)以下である点眼液が知られていたとはいえず、「エピナスチン又はその塩」の含有量1重量部に対する「塩化ベンザルコニウム」の比率に着目することが知られていたともいえない。 5 上記4以外の点眼液中の「塩化ベンザルコニウム」の濃度について (1)甲4には、「防腐剤」として用いられている「塩化ベンザルコニウム」の濃度が、 販売名「パタノール(R)」(有効成分 オロパタジン塩酸塩)、販売名「ザジテン(R)」(有効成分 ケトチフェンフマル酸塩)及び販売名「インタール(R)」(有効成分 クロモグリク酸ナトリウム)の点眼液中では0.01%であり、 販売名「リザベン(R)」(有効成分 トラニラスト)、販売名「アレギサール(R)/ペミラストン(R)」(有効成分 ペミロラストカリウム)及び販売名「アイビナール(R)/ケタス(R)」(有効成分 イブジラスト)の点眼液中では0.005%であり、 販売名「リボスチン(R)」(有効成分 レボカバスチン)の点眼液中では0.003%であることが記載されている。 ただし、甲4には、「有効成分である薬剤」の含有量1重量部に対する「塩化ベンザルコニウム」の比率に着目して、当該比率が「0.05重量部以下」の範囲になるように「塩化ベンザルコニウム」を含有させることについての記載はない。 (2)甲11には、0.0015%タフルプロストを含有する点眼液において、「防腐剤」として用いられている「塩化ベンザルコニウム」を0.0005~0.003%(甲11a)用いることが記載されており、当該記載に基づいて、タフルプロストの含有量1重量部に対する塩化ベンザルコニウムの比率を計算すると0.333~2重量部(すなわち「0.05重量部」の6.7~40倍)になる。 (3)甲14には、リパスジルを含有する点眼液において、「防腐剤」として用いられているベンザルコニウム塩化物を0.0001~0.01w/v%、0.0005~0.005w/v%、0.0005~0.002w/v%(甲14c)用いることが記載されている。 そして、甲14の実施例では、リパスジル1塩酸塩2水和物0.4896g(リパスジルのフリー体として0.4g)に対してベンザルコニウム塩化物0.001g(0.001w/v%)が用いられており、当該実施例の記載に基づいて、リパスジル1塩酸塩2水和物の含有量1重量部に対する「塩化ベンザルコニウム」(ベンザルコニウム塩化物)の比率を計算すると0.002重量部(すなわち「0.05重量部」以下)になる。 (4)乙8には、0.02%の塩化ベンザルコニウム(BAK)防腐剤を含有する0.005%ラタノプロスト点眼液が市販されていること(乙8b)が記載されており、当該記載に基づいて、ラタノプロストの含有量1重量部に対する「塩化ベンザルコニウム」の比率を計算すると4重量部(すなわち「0.05重量部」の80倍)になる。 (5)乙10には、タフルプロストを0.0015%及び「防腐剤」として用いられている塩化ベンザルコニウム(BAK)を0.01%含有する点眼液(乙10c)が記載されており、当該点眼液の記載に基づいて、タフルプロストの含有量1重量部に対する「塩化ベンザルコニウム」(BAK)の比率を計算すると6.67重量部(すなわち「0.05重量部」の133倍)になる。 (6)乙11には、レボフロキサシン1/2水和物0.5(g/100ml)、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム0.1(g/100ml)、及び「防腐剤」として用いられている「塩化ベンザルコニウム」0.005(g/100ml)を含有する点眼液(乙11aの実施例9、乙11b)が記載されている。 そして、当該点眼液の記載に基づいて、レボフロキサシン1/2水和物及びデキサメタゾンリン酸エステルナトリウムの合計含有量の1重量部に対する「塩化ベンザルコニウム」の比率を計算すると0.008重量部(すなわち「0.05重量部」以下)になる。 (7)乙12には、ラタノプロスト0.005(g/100ml)、チモロールマレイン酸0.68(g/100ml)、及び「防腐剤」として用いられているベンザルコニウム塩化物0.02(g/100ml,w/v%)を含有する点眼液(乙12b)が記載されている。 そして、当該点眼液の記載に基づいて、ラタノプロスト及びチモロールマレイン酸の合計含有量の1重量部に対する「塩化ベンザルコニウム」(ベンザルコニウム塩化物)の比率を計算すると0.029重量部(すなわち「0.05重量部」以下)になる。 (8)乙13には、シクロスポリン0.05%、及び「防腐剤」として用いられている「塩化ベンザルコニウム」0.03%を含有する点眼液(乙13aの【表3】の「FN3」、乙13b)が記載されている。 そして、シクロスポリンの含有量の1重量部に対する「塩化ベンザルコニウム」の比率を計算すると0.6重量部(すなわち「0.05重量部」の12倍)になる。 (9)甲8~10、甲12、甲13及び甲19には、それぞれ「防腐剤」として用いられている「塩化ベンザルコニウム」を、点眼液中に、0.001~0.002%程度(甲8c)、0.002~0.01%(甲9a)、0.002~0.005%(甲9b)、50μg/ml(0.005%(w/v))(甲10a)、12.5μg/ml~25μg/ml(0.00125%(w/v)~0.0025%(w/v))(甲10b)、50μg/ml(0.005%(w/v))(甲12a)、10~20μg/ml(0.001~0.002%(w/v))(甲12b)、O.002~0.01%(甲13b)、0.002~0.01%(甲19a)の濃度で含有することが記載されている。 しかし、上記各甲号証には、点眼液中の「有効成分である薬剤」が具体的に特定されていない。 (10)上記(1)~(9)から、本願の出願日当時、「防腐剤」として用いられる「塩化ベンザルコニウム」を0.005%(w/v)以下の濃度で含有する点眼液自体、及び「有効成分である薬剤」に対する「防腐剤」として用いられる「塩化ベンザルコニウム」の比率が「0.05重量部」以下である点眼液自体は知られていたといえるが、その一方で、点眼液中の「有効成分である薬剤」の種類によって上記「塩化ベンザルコニウム」の濃度が異なり、「有効成分である薬剤」に対する上記「塩化ベンザルコニウム」の比率が異なる場合があることも知られていたといえる。 そして、上記(1)~(9)及び他の甲号証及び乙号証のいずれにも、点眼液中の「有効成分である薬剤」の含有量1重量部に対する「塩化ベンザルコニウム」の比率に着目することについての記載はない。 (当審合議体注) 上記第8で説示した事項を踏まえて、無効理由1~4について判断する。 本件訂正により請求項3が削除されたため、本件訂正発明1、2及び4についての特許が、無効理由1~4によって無効とすることができるか否かについて、判断する。 そして、事案に鑑み、無効理由3(第9)、無効理由1(第10)、無効理由2(第11)、無効理由4(第12)の順に判断する。 第9 無効理由3(明確性要件違反)について 1 無効理由3の概要 請求人が主張する無効理由3の概要は、以下のとおりである(審判請求書のp.166-169等)。なお、下記概要における「本件発明」は、本件訂正前の請求項1~4に係る発明を意味する。 本件発明では、添加物として、第四級アンモニウム化合物、緩衝剤、等張化剤、pH調節剤のみを含有すること、並びに第四級アンモニウム以外の防腐剤を含有しないことが規定されており、配合成分の組成が厳密に制限されている。本件発明の必須成分である「緩衝剤」、「等張化剤」、「pH調節剤」及び「防腐剤」について、本件明細書には、これらの各配合成分はいずれも例示の形で記載されているに過ぎず、これらの各配合成分の示す範囲が一義的に固定されていないばかりか、相互に重複するものも多く存在する。そして、技術常識からも、これらの各配合成分の示す範囲が一律に定義できているとは到底認められないので、本件発明は不明確である。 2 当審合議体の判断 (1)「緩衝剤」、「等張化剤」、「pH調節剤」及び「防腐剤」は、いずれも点眼液等の眼科用水性組成物の添加剤として一般的に用いられる技術的用語である。そして、本件明細書には、これらの添加剤の定義に関する下記ア~エの記載がある。 ア 緩衝剤について 「【0032】 本発明の水性組成物に緩衝剤を配合する場合の緩衝剤は、医薬品の添加剤として使用可能な緩衝剤を適宜配合することができ、例えば、リン酸又はその塩、ホウ酸又はその塩、炭酸又はその塩、クエン酸又はその塩、酢酸又はその塩、酒石酸又はその塩、ε-アミノカプロン酸又はその塩、グルタミン酸又はその塩或いは有機アミン等が挙げられ、これらの水和物又は溶媒和物であってもよい。 リン酸又はその塩としては、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム(以下、リン酸水素ナトリウムともいう)、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等が挙げられ、これらの水和物であってもよい。 ホウ酸又はその塩としては、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)、ホウ酸カリウム等が挙げられ、これらの水和物であってもよい。 炭酸又はその塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、これらの水和物であってもよい。 クエン酸又はその塩としては、クエン酸、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム等が挙げられ、これらの水和物であってもよい。 酢酸又はその塩としては、酢酸、酢酸ナトリウム等が挙げられ、これらの水和物であってもよい。 酒石酸又はその塩としては、酒石酸、酒石酸一ナトリウム、酒石酸二ナトリウム等が挙げられ、これらの水和物であってもよい。 ε-アミノカプロン酸又はその塩としては、ε-アミノカプロン酸、ε-アミノカプロン酸ナトリウム、ε-アミノカプロン酸塩酸塩等が挙げられ、これらの水和物であってもよい。 グルタミン酸又はその塩としては、グルタミン酸、グルタミン酸一ナトリウム、グルタミン酸二ナトリウム、グルタミン酸塩酸塩等が挙げられ、これらの水和物であってもよい。 有機アミンとしては、トロメタモール等が挙げられ、これらの水和物であってもよい。」 イ 等張化剤について 「【0038】 本発明の水性組成物に等張化剤を配合する場合の等張化剤は、医薬品の添加剤として使用可能な等張化剤を適宜配合することができ、例えば、イオン性等張化剤、非イオン性等張化剤等が挙げられる。 イオン性等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等が挙げられる。 非イオン性等張化剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、マルトース、スクロース、キシリトール等が挙げられる。 本発明の水性組成物に等張化剤を配合する場合の等張化剤の含有量は、等張化剤の種類などにより適宜調整することができるが、0.001~10%(w/v)が好ましく、0.01~5%(w/v)がより好ましく、0.1~3%(w/v)がさらに好ましく、0.2~1%(w/v)が特に好ましい。」 ウ pH調節剤について 「【0042】 本発明の水性組成物にpH調節剤を配合する場合のpH調節剤は、医薬品の添加剤として使用可能なpH調節剤を適宜配合することができるが、例えば、酸又は塩基であり、酸としては例えば、塩酸、リン酸等、塩基としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。」 エ 防腐剤について 「【0040】 本発明の水性組成物に防腐剤を配合する場合の防腐剤は、医薬品の添加剤として使用可能な防腐剤を適宜配合することができ、例えば、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、亜塩素酸ナトリウム又はクロロブタノール等が挙げられる。」 オ 上記ア~エから、本件明細書には、「緩衝剤」、「等張化剤」、「pH調節剤」及び「防腐剤」は、いずれも医薬品の添加剤として使用可能なものであることが記載され、さらに、それぞれの具体例も記載されているといえる。 そうすると、点眼液等の眼科用水性組成物に使用可能な添加剤に関する技術常識を参酌すれば、本件明細書の記載から、本件訂正発明における「緩衝剤」、「等張化剤」、「pH調節剤」及び「防腐剤」それぞれの技術的意味、及びそれぞれに包含される化合物を当業者は理解できるといえるので、本件訂正発明における「緩衝剤」、「等張化剤」、「pH調節剤」及び「防腐剤」の示す範囲はいずれも明確である。 (2)請求人の主張について 請求人は、例えば、添加剤として複数の機能を有する化合物であるホウ酸、リン酸、ポリエチレングリコールが処方に含まれる場合には、これらがそれぞれ、どの用途の成分に相当するのか判断できない、という主張をしている(審判請求書のp.167-168)。 そこで、上記主張について検討する。 ア 製剤中の添加剤として、複数の機能を有する添加剤を用いることは、一般的に行われている。 そして、例えばホウ酸、リン酸、ポリエチレングリコールについては、それぞれ以下の解釈が可能である。 イ ホウ酸について 本件明細書において、「ホウ酸」は、「緩衝剤」(【0032】)の具体例として記載されているが、「現在、日本で上市されているアレジオン(登録商標)点眼液0.05%は、エピナスチン塩酸塩を有効成分とする点眼液であり、防腐剤として塩化ベンザルコニウムを添加しない代わりに、ホウ酸が添加されている」(【0003】)という記載もあり、「ホウ酸」は、「防腐剤」としても用いられる添加剤であることは技術常識である(甲7aの【請求項4】、甲7bの【0007】の(4)、甲16d)。 そうすると、本件明細書における「ホウ酸」は、「緩衝剤」及び「防腐剤」の両方の機能を有する添加剤であり、「第四級アンモニウム化合物以外の防腐剤」に相当する。 ウ リン酸について 本件明細書において、「リン酸」は、「緩衝剤」(【0032】)の具体例及び「pH調節剤」(【0042】)の具体例として記載されているので、本件明細書における「リン酸」は、「緩衝剤」及び「「pH調節剤」の両方の機能を有する添加剤である。 そうすると、本件訂正発明の処方に「リン酸」が存在し、「リン酸」以外の「緩衝剤」は存在せず、「リン酸」以外の「pH調節剤」も存在しない場合、当該処方中の「リン酸」は、「緩衝剤」及び「pH調節剤」の両方の機能を有する添加剤として用いられているといえる。 また、本件訂正発明の処方に「リン酸」が存在し、「リン酸」以外の「緩衝剤」は存在せず、「リン酸」以外の「pH調節剤」は存在する場合は、当該処方中の「リン酸」は、「緩衝剤」の機能を有する添加剤として用いられているといえる。 そして、本件訂正発明の処方に「リン酸」が存在し、「リン酸」以外の「緩衝剤」は存在するが、「リン酸」以外の「pH調節剤」は存在しない場合は、当該処方中の「リン酸」は、「pH調節剤」の機能を有する添加剤として用いられているといえる。 エ ポリエチレングリコールについて 本件明細書において、「ポリエチレングリコール」は、「等張化剤」の具体例(【0038】)及び「粘稠化剤」の具体例(【0034】)として記載されているので、本件明細書における「ポリエチレングリコール」は、「等張化剤」及び「粘稠化剤」の両方の機能を有する添加剤である。 そうすると、本件訂正発明の処方に「ポリエチレングリコール」が存在し、「ポリエチレングリコール」以外の「等張化剤」は存在しない場合は、当該処方中の「ポリエチレングリコール」は、「等張化剤」の機能を有する添加剤として用いられているといえる。 オ 上記ア~エのとおり、本件訂正発明の処方に存在する、複数の機能を有する添加剤について、いずれの機能を有する添加剤として用いられているのかを、当業者は理解できるといえるので、本件訂正発明における「緩衝剤」、「等張化剤」、「pH調節剤」及び「防腐剤」の示す範囲は、いずれも明確であるから、上記請求人の主張を採用することはできない。 (3)無効理由3の判断のまとめ 以上のとおり、本件訂正発明1、2及び4の記載は明確であるから、本件訂正発明1、2及び4についての特許は、無効理由3により無効とすることはできない。 第10 無効理由1(甲1号証を主引用例とする進歩性欠如)について 1 無効理由1の概要 請求人が主張する無効理由1の概要は、以下のとおりである(審判請求書のp.134-145等)。なお、下記概要における「本件発明」は、本件訂正前の請求項1~4に係る発明を意味する。 甲1からは、0.1%DE-114点眼液に係る以下の発明が認定できる。 「0.1%(w/v)の濃度のエピナスチン塩酸塩を有効成分とし、添加物として塩化ベンザルコニウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、pH調節剤、エデト酸ナトリウムからなる、アレルギー性結膜炎の治療に用いられる点眼液。」 そして、本件発明は、甲1の記載に、適宜甲2~甲29を参酌することで、本願の原出願日前に当業者が容易に発明することができたものである。 2 当審合議体の判断 (1)本件訂正発明1について ア 本件訂正発明1と甲1発明との対比 (ア)甲1発明は、上記第7の1(2)で認定した下記の発明である。 「0.05%(w/v)のエピナスチン塩酸塩、ベンザルコニウム塩化物液、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、pH調節剤、エデト酸ナトリウム水和物からなる、アレルギー性結膜炎の治療に用いられる点眼液。」 (イ)甲1発明の「エピナスチン塩酸塩」、「ベンザルコニウム塩化物」及び「点眼液」は、それぞれ本件訂正発明1の「エピナスチン又はその塩」、「塩化ベンザルコニウム」及び「眼科用水性組成物」に相当する。 また、甲1発明の「リン酸二水素ナトリウム」及び「塩化ナトリウム」は、それぞれ本件訂正発明1の「緩衝剤」及び「等張化剤」に相当する。 (ウ)甲1発明の「エデト酸ナトリウム水和物」は、本件明細書では安定化剤の具体例(【0039】)として記載されている添加剤である。 しかし、甲2には「好ましいキレート剤は、エデト酸二ナトリウム(Na-EDTA)である」(甲2d)という記載があり、甲7には「防腐剤および防腐作用を有する成分が、塩化ベンザルコニウム、・・・およびエデト酸又はその塩からなる群から選択される少なくとも一つの成分」(甲7aの【請求項4】)という記載があり、甲23の「防腐剤は、塩化ベンザルコニウム、・・・エデト酸二ナトリウム、・・・、又はそれらの組み合わせから選択される」(甲23b)という記載がある。 これらの記載から、エデト酸又はその塩は、安定化剤、キレート剤、防腐剤という複数の機能を有する添加剤であるといえるので、甲1発明の「エデト酸ナトリウム水和物」は、本件訂正発明1において「含有しない」ことが特定されている「第四級アンモニウム化合物以外の防腐剤」に相当する。 (エ)上記(ア)~(ウ)から、本件訂正発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、下記のとおりであると認められる。 <一致点> 「エピナスチン又はその塩、塩化ベンザルコニウム、緩衝剤、等張化剤、pH調節剤を含有する、眼科用水性組成物。」 <相違点1> エピナスチン又はその塩の濃度が、本件訂正発明1では「0.1%(w/v)」であるのに対し、甲1発明では、「0.05%(w/v)」である点。 <相違点2> 本件訂正発明1は、「第四級アンモニウム化合物以外の防腐剤を含有しない」ものであるのに対し、甲1発明は、「第四級アンモニウム化合物以外の防腐剤」である「エデト酸ナトリウム水和物」を含有する点。 <相違点3> 本件訂正発明1では、「塩化ベンザルコニウム」を「エピナスチン又はその塩の含有量1重量部に対して0.03~0.05重量部」の比率で含有することが特定されているのに対し、甲1発明では、このような特定がされていない点。 なお、甲1発明の「ベンザルコニウム塩化物」は塩化ベンザルコニウムと同義であるので、以下では、甲1発明の「ベンザルコニウム塩化物」を「ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)」と記載することがある。 イ 相違点1の検討 (ア)甲1には、エピナスチン塩酸塩を0.025%、0.05%及び0.1%の濃度で含有するDE-114点眼液を単回点眼したモルモットにおいて、ヒスタミン投与の6時間前点眼では、0.05%以上の用量でヒスタミン誘発による結膜の血管透過性亢進を有意に抑制したこと、及び、受動感作ラットの摘出結膜からの抗原刺激によるヒスタミン遊離は、エピナスチン塩酸塩を0.05%、0.1%、0.3%及び0.5%の濃度で含有するDE-114点眼後の結膜組織で有意な減少が認められたことが記載されている(甲1c)。 これらの記載から、本願の出願日当時、エピナスチン塩酸塩を0.05%以上の濃度で含有する点眼液には、ヒスタミン誘発による結膜の血管透過性亢進を有意に抑制する作用及び抗原刺激によるヒスタミン遊離を有意に抑制する作用があることが知られていたといえる。 (イ)本願の出願日当時、エピナスチン塩酸塩を1mL中に1mgの濃度すなわち0.1%(w/v)の濃度で含有するアレルギー性結膜炎治療用の点眼液が既に市販されていたのであるから(甲5、甲6)、エピナスチン塩酸塩を0.1%(w/v)の濃度で含有する点眼液を特段の支障なく治療用途に用い得ることも知られていたといえる。 (ウ)上記(ア)及び(イ)から、エピナスチン塩酸塩によって、特段の支障なく、さらに高い治療作用が得られることを期待して、甲1発明の点眼液中のエピナスチン塩酸塩の濃度を「0.05%(w/v)」から「0.1%(w/v)」に高めて、甲1発明を相違点1に係る本件訂正発明1の構成を備えたものにすることを、当業者は容易に想到し得たといえる。 ウ 相違点2及び3の検討 (ア)防腐剤により生じる膜破壊、細胞質の変性、角膜上皮障害等の障害を回避するために、点眼薬中の塩化ベンザルコニウム等の防腐剤の使用量を極力最低限にすることは、技術常識である(上記第8の1)。 また、「エピナスチン又はその塩」を「0.1%(w/v)」含有する点眼液が、実質的に防腐剤及び防腐作用を有する成分を含有しなくても十分な防腐効果を示すことも、技術常識である(上記第8の3)。 これらの技術常識から、甲1発明を、エピナスチン塩酸塩の濃度を「0.1%(w/v)」に高めた点眼液にした際に、当該点眼液から防腐剤及び防腐作用を有する成分を除去するとしても、「エデト酸ナトリウム水和物」のみを除去して、「ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)」は除去しないこと(相違点2)を当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (イ)本件訂正発明1の「第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム)」が、「眼科用水性組成物」中の「エピナスチン又はその塩」の眼組織への移行性を向上させるため、という用途で本質的に用いられていることは、上記第5で説示したとおりである。 これに対し、甲1には、甲1発明の「ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)」の用途を説明する記載はないが、塩化ベンザルコニウムが点眼液で用いられる代表的な「防腐剤」であることは技術常識であるから(甲2cの【0006】、甲4b、甲7aの【請求項4】、甲8a、甲9a、甲10a等)、甲1発明の「ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)」は、「防腐剤」の用途で用いられていると解される。 そして、本願の出願日当時、点眼液中の「第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム)」を、薬剤の「眼組織への移行性を向上させるため」という用途に特段の支障なく実際に用い得ることが知られていたとはいえない(上記第8の2)のであるから、甲1発明を、エピナスチン塩酸塩の濃度を「0.1%(w/v)」に高めた点眼液にした際に、当該点眼液から「エデト酸ナトリウム水和物」のみを除去して、「ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)」は除去せずに「エピナスチン又はその塩」の眼組織への移行性を向上させるために当該点眼液に含有させること(相違点2)を、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)本願の出願日当時、「エピナスチン又はその塩」の濃度が「0.1%(w/v)」であり、かつ「塩化ベンザルコニウム」の濃度が0.005%(w/v)以下である点眼液が知られていたとはいえず、「エピナスチン又はその塩」の含有量1重量部に対する「塩化ベンザルコニウム」の比率に着目することが知られていたともいえないことは、上記第8の4で説示したとおりである。 また、本願の出願日当時、点眼液中の「有効成分である薬剤」の種類によって「塩化ベンザルコニウム」の濃度が異なり、「有効成分である薬剤」に対する上記「塩化ベンザルコニウム」の比率が異なる場合があることは知られていたが、点眼液中の「有効成分である薬剤」の含有量1重量部に対する「塩化ベンザルコニウム」の比率に着目することが知られていたとはいえないことは、上記第8の5で説示したとおりである。 そうすると、甲1発明を、エピナスチン塩酸塩の濃度を「0.1%(w/v)」に高めた点眼液にした際に、当該点眼液から「エデト酸ナトリウム水和物」のみを除去して「ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)」は除去せずに含有量を一定値以下にすること、及び、「エピナスチン又はその塩」の含有量1重量部に対する「塩化ベンザルコニウム」の比率に着目して、当該点眼液に、「塩化ベンザルコニウム」を「エピナスチン又はその塩の含有量1重量部に対して0.03~0.05重量部」の比率で含有させること(相違点3)を、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (エ)以上(ア)~(ウ)のとおりであるから、甲1発明を、エピナスチン塩酸塩の濃度を「0.1%(w/v)」に高めた点眼液にした際に、 (i)当該点眼液から「エデト酸ナトリウム水和物」のみを除去して、 (ii)「ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)」は除去せずに「エピナスチン又はその塩」の眼組織への移行性を向上させるために当該点眼液に含有させて、 (iii)「エピナスチン又はその塩」の含有量1重量部に対する「ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)」の比率を「0.03~0.05重量部」にすることによって、 甲1発明を相違点2及び3に係る本件訂正発明1の構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 エ 以上ア~ウのとおりであるから、甲1に記載された発明(甲1発明)に、甲1~甲29の記載を参酌することにより、相違点1~3に係る本件訂正発明1の構成を備えたものを得ることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 オ 本件訂正発明1の効果について (ア)本件明細書の試験例の「1.眼内動態試験」(上記第6の3)には、実施例1にエピナスチン塩酸塩を0.1%(w/v)及び塩化ベンザルコニウムを0.005%(w/v)含む点眼液、実施例2にエピナスチン塩酸塩を0.1%(w/v)及び塩化ベンザルコニウムを0.003%(w/v)含む点眼液が記載されており、エピナスチン塩酸塩の含有量1重量部に対する塩化ベンザルコニウムの比率は、実施例1の点眼液では0.05重量部、実施例2の点眼液では0.03重量部である。 そして、上記試験例には、実施例1の点眼液及び2の点眼液は、塩化ベンザルコニウムを含まない比較例1の点眼液と比較して、角膜中及び房水中のエピナスチンの濃度から算出したAUC[ng・hr/g]が高かったという実験結果が記載されており、当該実験結果から、塩化ベンザルコニウムを含有させたことによって、エピナスチンの眼組織への移行量が増大したという効果(以下「本件訂正発明1の効果」という。)が得られたといえる。 (イ)これに対し、本願の出願日当時、点眼液中の「第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム)」を、薬剤の「眼組織への移行性を向上させるため」という用途に特段の支障なく実際に用い得ることが知られていたとはいえないのであるから(上記第8の2)、点眼液中の「第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム)」を本件訂正発明1で特定された比率で含有させることによって得られた本件訂正発明1の効果が、当業者が予測し得た範囲のものであるとはいえない。 (2)本件訂正発明2について ア 本件訂正発明2は、本件訂正発明1における「エピナスチン又はその塩に対する第四級アンモニウム化合物の含有比率」を、「エピナスチン又はその塩の含有量1重量部に対して」、「0.03~0.05重量部」の下限値である「0.03重量部」に限定するものである。 そして、上記(1)ア~エで説示した理由と同様の理由により、甲1に記載された発明(甲1発明)に、甲1~甲29の記載を参酌することにより、本件訂正発明2の構成を備えたものを得ることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 イ また、上記(1)オで説示した理由と同様の理由により、本件訂正発明2の効果が、当業者が予測し得た範囲のものであるとはいえない。 (3)本件訂正発明4について ア 本件訂正発明4と甲1発明との対比 甲1発明の「エピナスチン塩酸塩」、「ベンザルコニウム塩化物」及び「点眼液」は、それぞれ本件訂正発明4の「エピナスチン又はその塩」、「塩化ベンザルコニウム」及び「眼科用水性組成物」に相当する。 甲1発明の「リン酸二水素ナトリウム」及び「塩化ナトリウム」は、それぞれ本件訂正発明4の「緩衝剤」及び「等張化剤」に相当する。 甲1発明の「エデト酸ナトリウム」は、上記(1)ア(ウ)で説示した理由により、本件訂正発明4において「含有しない」ことが特定されている「第四級アンモニウム化合物以外の防腐剤」に相当する。 そうすると、本件訂正発明4と甲1発明との一致点及び相違点は、下記のとおりである。 <一致点> 「エピナスチン又はその塩、塩化ベンザルコニウム、緩衝剤、等張化剤、pH調節剤を含有する、眼科用水性組成物。」 <相違点4> エピナスチン又はその塩の濃度が、本件訂正発明4では「0.1%(w/v)」であるのに対し、甲1発明では、「0.05%(w/v)」である点。 <相違点5> 本件訂正発明4は、「塩化ベンザルコニウム以外の防腐剤を含有しない」ものであるのに対し、甲1発明は、「塩化ベンザルコニウム以外の防腐剤」である「エデト酸ナトリウム」を含有する点。 <相違点6> 本件訂正発明4は、塩化ベンザルコニウムを「0.003~0.005%(w/v)」の濃度で含有することが特定されているのに対し、甲1発明では、このような特定がされていない点。 イ 相違点4の検討 相違点4は、相違点1と同一であるので、上記(1)イの「相違点1の検討」で説示した理由により、甲1発明を相違点4に係る本件訂正発明4の構成を備えたものにすることを、当業者は容易に想到し得たといえる。 ウ 相違点5及び6の検討 (ア)相違点5は相違点2と同一であり、上記(1)ウ(ア)で説示した理由により、甲1発明を、エピナスチン塩酸塩の濃度を「0.1%(w/v)」に高めた点眼液にした際に、当該点眼液から「エデト酸ナトリウム水和物」のみを除去して、「ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)」は除去しないこと(相違点5)を当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (イ)上記(1)ウ(イ)で説示した理由により、甲1発明を、エピナスチン塩酸塩の濃度を「0.1%(w/v)」に高めた点眼液にした際に、当該点眼液から「エデト酸ナトリウム水和物」のみを除去して、「ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)」は除去せずに「エピナスチン又はその塩」の眼組織への移行性を向上させるために当該点眼液に含有させることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)上記(1)ウ(ウ)で説示した理由により、甲1発明を、エピナスチン塩酸塩の濃度を「0.1%(w/v)」に高めた点眼液にした際に、当該点眼液から「エデト酸ナトリウム水和物」のみを除去して「ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)」は除去せずに含有量を一定値以下にすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (エ)そして、甲1発明を、エピナスチン塩酸塩の濃度を「0.1%(w/v)」に高めた点眼液にした際に、「ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム:第四級アンモニウム化合物)」の濃度を「0.003~0.005%(w/v)」にすること(相違点6)は、「塩化ベンザルコニウム」を「エピナスチン又はその塩の含有量1重量部に対して0.03~0.05重量部」の比率で含有すること(相違点3)と実質的に同等であるから、上記(1)ウで説示した理由と同様の理由により、上記「0.003~0.005%(w/v)」にすること(相違点6)を、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (オ)以上(ア)~(エ)のとおりであるから、甲1発明を、エピナスチン塩酸塩の濃度を「0.1%(w/v)」に高めた点眼液にした際に、 (i)当該点眼液から「エデト酸ナトリウム水和物」のみを除去して、 (ii)「ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)」は除去せずに「エピナスチン又はその塩」の眼組織への移行性を向上させるために当該点眼液に含有させて、 (iii)「ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)」の濃度を「0.003~0.005%(w/v)」にすることによって、 甲1発明を相違点5及び6に係る本件訂正発明4の構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 エ 以上ア~ウのとおりであるから、甲1に記載された発明(甲1発明)に、甲1~甲29の記載を参酌することにより、相違点4~6に係る本件訂正発明4の構成を備えたものを得ることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 オ 本件訂正発明4の効果について 上記(1)オで説示した理由と同様の理由により、点眼液中の「第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム)」を、本件訂正発明4で特定された範囲の濃度で含有させることによって得られた本件訂正発明4の効果が、当業者が予測し得た範囲のものであるとはいえない。 (4)請求人の主張について 請求人は、無効理由1について下記ア~ウの趣旨の主張をしているので、順次検討する。なお、請求人の下記主張における「本件発明」は、本件訂正前の請求項1~4に係る発明を意味する。 ア 甲第1号証には、0.05%DE-114点眼液のみならず0.1%DE-114点眼液に関しても具体的に開示され、実際に、(ヒトに適用することを想定した)ウサギを用いた眼刺激性などの毒性試験や健康成人男性を対象とした安全性試験もなされている。 そして、上記試験の趣旨、及び、0.1%DE-114点眼液と0.05%DE-114点眼液とは「DE-114点眼液」という同一の名称が用いられていることから、0.1%DE-114点眼液は、有効成分であるエピナスチン塩酸塩の濃度以外に関しては、0.05%DE-114点眼薬と同一の処方であると、合理的に考えられる。 さらに、本件発明で「0.1%(w/v)の濃度のエピナスチン又はその塩」が構成として明記されているのであるから、本件発明との対比に必要な技術的構成について過不足なく認定し、適切な新規性・進歩性判断を行うためには、甲1に記載されている0.1%DE-114点眼液、すなわちエピナスチン塩酸塩が「0.1%(w/v)濃度」である点眼液を引用発明として認定することは、必要不可欠である。 以上を踏まえれば、甲第1号証に記載の発明(甲1発明)としては、 「0.1%(w/v)の濃度のエピナスチン塩酸塩を有効成分とし、添加物として塩化ベンザルコニウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化ナトリウム、pH調節剤、エデト酸ナトリウムからなる、アレルギー性結膜炎の治療に用いられる点眼液。」が認定されるべきである。 (口頭審理陳述要領書p.2-3、6-7) 上記アの主張について検討する。 甲1には、0.025%、0.05%、0.1%、0.3%及び0.5%DE-114点眼液が記載されているところ(甲1c)、0.05%DE-114点眼液におけるエピナスチン塩酸塩の濃度及び「エピナスチン塩酸塩以外の成分」は記載されている(甲1b、甲1d)のに対し、0.025%、0.1%、0.3%及び0.5%DE-114点眼液における「エピナスチン塩酸塩以外の成分」は記載されていない。 そして、同一名称である医薬組成物は、前臨床試験、第I相試験、第II相試験のような臨床試験段階の違いや、試験に使用された時期の違いに関係なく、有効成分及び「有効成分以外の成分」が必ず全て同一である、という技術常識があるとはいえないのであるから、0.025%、0.1%、0.3%及び0.5%DE-114点眼液における「エピナスチン塩酸塩以外の成分」が、0.05%DE-114点眼液における「エピナスチン塩酸塩以外の成分」と必ず全て同一であるとまではいえない。 そして、上記(1)~(3)で説示したように、0.05%DE-114点眼液の記載に基づいて認定した甲1発明が、本件訂正発明との対比(すなわち一致点及び相違点の認定)に必要な技術的構成を過不足なく含む発明であることは明らかである。 よって、請求人の上記アの主張を参酌しても、甲1発明の認定(上記第6の1(2))に誤りはない。 イ 甲4には、抗アレルギー点眼剤の防腐剤の種類及び濃度について、「アレジオン(R) BAC 0.003%」、及び「BAC:塩化ベンザルコニウム」(甲4b)という記載がある。 そして、甲4が発行された2014年4月当時には、ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)を含有する「アレジオン(R)点眼液0.05%」(甲3b、2013年11月に販売開始)が販売されており、当該「アレジオン(R)点眼液0.05%」が、ベンザルコニウム塩化物(塩化ベンザルコニウム)塩化ベンザルコニウムに代えてホウ酸を含有する製剤に処方変更された時期は2014年12月である(甲21a)。 したがって、甲4には、2013年11月に薬価収載がなされ販売が開始された「アレジオン(R)点眼液0.05%」における塩化ベンザルコニウムの配合量が0.003%であることを示している。 さらに、甲1の記載によれば、「第II相試験以降の臨床試験に使用した0.05%DE-114点眼液は申請製剤と同一の処方である」(甲1a)から、甲1に記載されている0.05%DE-114点眼液、並びにその有効成分濃度違いの0.1%DE-114点眼液、0.3%DE-114点眼液、0.5%DE-114点眼液はいずれも塩化ベンザルコニウム濃度を0.003%含有すると考えるのが合理的である。 (審判請求書p.136-137) 上記イの主張について検討する。 販売開始時期からみて、甲4に記載されている「アレジオン(R)」が「アレジオン(R)点眼液0.05%」である可能性が高いとはいえるものの、甲4には「アレジオン(R)」の販売開始時期及びエピナスチン塩酸塩の濃度がいずれも記載されていないのであるから、当該「アレジオン(R)」が「アレジオン(R)点眼液0.05%」であると認定することはできない。 仮に、上記「アレジオン(R)」が「アレジオン(R)点眼液0.05%」すなわち甲1に記載されている「0.05%DE-114点眼液」であるとしても、同一名称である医薬組成物は、前臨床試験、第I相試験、第II相試験のような臨床試験段階の違いや、試験に使用された時期の違いに関係なく、「有効成分以外の成分」の種類及び濃度が必ず全て同一である、という技術常識があるとはいえないのであるから、エピナスチン塩酸塩の濃度が異なる0.05%DE-114点眼液、0.1%DE-114点眼液、0.3%DE-114点眼液、0.5%DE-114点眼液がいずれも塩化ベンザルコニウムを0.003%という同一濃度で含有しているとまではいえない。 よって、請求人の上記イの主張を採用することはできない。 ウ 角膜上皮細胞を透過した薬物は、角膜から房水へと移行する経路しか存在しないのであるから(甲15、甲27等)、塩化ベンザルコニウムによる角膜上皮細胞の透過性向上により、本件明細書に記載された角膜及び房水においてエピナスチンのAUCが増加することは自明である。 したがって、本件明細書に記載の効果は、塩化ベンザルコニウムの界面活性効果などに基づく角膜上皮細胞の透過性向上等から自明に導かれる現象であって、何ら予測困難な点は存在しない。 (審判請求書p.149) 上記ウの主張について検討する。 上記第8の2で説示したように、本願の出願日当時、点眼液中の「第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム)」を、薬剤の「眼組織への移行性を向上させるため」という用途に特段の支障なく実際に用い得ることが知られていたとはいえない。 したがって、本件訂正発明の「0.1%(w/v)の濃度のエピナスチン又はその塩、第四級アンモニウム化合物、緩衝剤、等張化剤、pH調節剤のみを含有する眼科用水性組成物」において、「第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム)」を、本件訂正発明で特定された比率又は濃度で含有させることによって「エピナスチンの眼組織への移行量が増大した」という本件訂正発明の効果(上記2(1)オ、(2)ウ、(3)オ)を、当業者が予測し得たとはいえない。 よって、請求人の上記ウの主張を採用することはできない。 (5)無効理由1についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正発明1、2及び4は、甲1に記載された発明(甲1発明)に、甲1~甲29の記載を参酌することにより、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって、本件訂正発明1、2及び4についての特許は、無効理由1により無効とすることはできない。 第11 無効理由2(甲2を主引用例とする進歩性欠如)について 1 無効理由2の概要 請求人が主張する無効理由2の概要は、以下のとおりである(審判請求書のp.152-169等、特にp.152-153及びp.157-159)。なお、下記概要における「本件発明」は、本件訂正前の請求項1~4に係る発明を意味する。 甲2の【表1】の溶液4の記載から、甲2には、「0.1%(w/v)の濃度のエピナスチン塩酸塩、塩化ベンザルコニウム、リン酸二水素ナトリウムニ水和物、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、エデト酸ニナトリウム(Na―EDTA)からなる溶液であって、エピナスチン塩酸塩に対する塩化ベンザルコニウムの含有比率が、エピナスチン塩酸塩の含有量1重量部に対して0.101重量部である、アレルギー性結膜炎等の眼アレルギー治療のために眼球の結膜に局所的に投与される水溶液。」の発明が記載されている。 また、甲2の【表1】の溶液7の記載から、「0.1%(w/v)の濃度のエピナスチン塩酸塩、塩化ベンザルコニウム、リン酸二水素ナトリウムニ水和物、塩化ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロースからなる溶液であって、エピナスチン塩酸塩に対する塩化ベンザルコニウムの含有比率が、エピナスチン塩酸塩の含有量1重量部に対して0.101重量部である、アレルギー性結膜炎等の眼アレルギー治療のために眼球の結膜に局所的に投与される水溶液。」の発明が記載されている。 そして、甲2に記載された発明の塩化ベンザルコニウム濃度は、その防腐剤としての効果を発揮する上で必要な濃度を明らかに超えており、角膜上皮障害も懸念される濃度であり、その防腐効果と角膜上皮障害とのバランスから適切な濃度範囲に設定すべき積極的な動機付けを見出すことができるので、本件発明1~4は、甲2の記載並びに甲1並びに甲3~甲29を参酌することで、本願の原出願日前に当業者が容易に発明することができたものである。 2 当審合議体の判断 (1)本件訂正発明1について ア 本件訂正発明1と甲2発明との対比 甲2発明は、上記第7の2(2)で認定した下記の発明である。 「エピナスチン塩酸塩0.0500g/100mL、Na-EDTA0.0500g/100mL、塩化ナトリウム0.5000g/100mL、リン酸二水素ナトリウム二水和物0.7800g/100mL、塩化ベンザルコニウム0.0101g/100mL、水酸化ナトリウム0.0001g/100mL、及び水99.4198g/100mLからなる、好中球及び好酸球が眼球の結膜の組織に流入するのを抑制するための、局所的に投与される水溶液。」 甲2発明の「エピナスチン塩酸塩」、「塩化ベンザルコニウム」及び「好中球及び好酸球が眼球の結膜の組織に流入するのを抑制するための、局所的に投与される水溶液点眼液」は、それぞれ本件訂正発明1の「エピナスチン又はその塩」、「塩化ベンザルコニウム」及び「眼科用水性組成物」に相当する。 甲2発明の「リン酸二水素ナトリウム二水和物」、「塩化ナトリウム」及び「水酸化ナトリウム」は、それぞれ本件訂正発明1の「緩衝剤」、「等張化剤」及び「pH調節剤」に相当する。 甲2発明の「Na-EDTA」すなわちエデト酸二ナトリウム(甲2d)は、上記第9の2(1)ア(ウ)で説示した理由により、本件訂正発明1において「含有しない」ことが特定されている「第四級アンモニウム化合物以外の防腐剤」に相当する。 そうすると、本件訂正発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、下記のとおりである。 <一致点> 「エピナスチン又はその塩、塩化ベンザルコニウム、緩衝剤、等張化剤、pH調節剤を含有する、眼科用水性組成物。」 <相違点7> エピナスチン又はその塩の濃度が、本件訂正発明1では「0.1%(w/v)」であるのに対し、甲2発明では、「0.05%(w/v)」である点。 <相違点8> 本件訂正発明1は、「第四級アンモニウム化合物以外の防腐剤を含有しない」ものであるのに対し、甲2発明は、「第四級アンモニウム化合物以外の防腐剤」である「エデト酸ナトリウム」を含有する点。 <相違点9> 本件訂正発明1では、「塩化ベンザルコニウム」を「エピナスチン又はその塩の含有量1重量部に対して0.03~0.05重量部」の濃度で含有することが特定されているのに対し、甲2発明ではこのような特定がされていない点。 イ 相違点7の検討 相違点7は相違点1と実質的に同一であり、上記第10の2(1)イの「相違点1の検討」で説示した理由と同様の理由により、甲2発明を相違点7に係る本件訂正発明1の構成を備えたものにすることを、当業者は容易に想到し得たといえる。 ウ 相違点8及び9の検討 (ア)相違点8は相違点2と同一であり、上記第10の2(1)ウ(ア)で説示した理由と同様の理由により、甲2発明を、エピナスチン塩酸塩の濃度を「0.1%(w/v)」に高めた点眼液にした際に、当該点眼液から「Na-EDTA」のみを除去して、「塩化ベンザルコニウム」は除去しないこと(相違点8)を当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (イ)上記第10の2(1)ウ(イ)で説示した理由と同様の理由により、甲2発明を、エピナスチン塩酸塩の濃度を「0.1%(w/v)」に高めた点眼液にした際に、当該点眼液から「Na-EDTA」のみを除去して、「塩化ベンザルコニウム」は除去せずに「エピナスチン又はその塩」の眼組織への移行性を向上させるために当該点眼液に含有させることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)上記第10の2(1)ウ(ウ)で説示した理由と同様の理由により、甲2発明を、エピナスチン塩酸塩の濃度を「0.1%(w/v)」に高めた点眼液にした際に、当該点眼液から「Na-EDTA」のみを除去して、「エピナスチン又はその塩」の含有量1重量部に対する「塩化ベンザルコニウム」の比率に着目して当該比率を「0.03~0.05重量部」にすること(相違点9)を、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (エ)以上(ア)~(ウ)のとおりであるから、甲2発明を、エピナスチン塩酸塩の濃度を「0.1%(w/v)」に高めた点眼液にした際に、 (i)当該点眼液から「Na-EDTA」のみを除去して、 (ii)「塩化ベンザルコニウム」は除去せずに「エピナスチン又はその塩」の眼組織への移行性を向上させるために当該点眼液に含有させて、 (iii)「エピナスチン又はその塩」の含有量1重量部に対する「塩化ベンザルコニウム」の比率に着目して当該比率を「0.03~0.05重量部」にすることによって、 甲2発明を相違点8及び9に係る本件訂正発明1の構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 エ 以上ア~ウのとおりであるから、甲2に記載された発明(甲2発明)に、甲1~甲29の記載を参酌することにより、相違点7~9に係る本件訂正発明1の構成を備えたものを得ることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 オ 本件訂正発明1の効果について 上記第10の2(1)オで説示した理由と同様の理由により、本件訂正発明1による効果が、当業者が予測し得た範囲のものであるとはいえない。 (2)本件訂正発明2について ア 本件訂正発明2は、本件訂正発明1における「エピナスチン又はその塩に対する第四級アンモニウム化合物の含有比率」を、「エピナスチン又はその塩の含有量1重量部に対して」、本件訂正発明1の「0.03~0.05重量部」における下限値である「0.03重量部」に限定するものである。 そして、上記(1)ア~エで説示した理由と同様の理由により、甲2に記載された発明(甲2発明)に、甲1~甲29の記載を参酌することにより、本件訂正発明2の構成を備えたものを得ることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 イ また、上記第10の2(1)オで説示した理由と同様の理由により、本件訂正発明2の効果が、当業者が予測し得た範囲のものであるとはいえない。 (3) 本件訂正発明4について ア 本件訂正発明4と甲2発明との対比 甲2発明の「エピナスチン塩酸塩」及び「好中球及び好酸球が眼球の結膜の組織に流入するのを抑制するための、局所的に投与される水溶液点眼液」は、それぞれ本件訂正発明4の「エピナスチン又はその塩」及び「眼科用水性組成物」に相当する。 甲2発明の「リン酸二水素ナトリウム二水和物」、「塩化ナトリウム」及び「水酸化ナトリウム」は、それぞれ本件訂正発明4の「緩衝剤」、「等張化剤」及び「pH調節剤」に相当する。 甲2発明の「Na-EDTA」すなわちエデト酸二ナトリウム(甲2d)は、、上記第9の2(1)ア(ウ)で説示した理由により、本件訂正発明4において「含有しない」ことが特定されている「第四級アンモニウム化合物以外の防腐剤」に相当する。 そうすると、本件訂正発明4と甲2発明との一致点及び相違点は、下記のとおりである。 <一致点> 「エピナスチン又はその塩、塩化ベンザルコニウム、緩衝剤、等張化剤、pH調節剤を含有する、眼科用水性組成物。」 <相違点10> エピナスチン又はその塩の濃度が、本件訂正発明4では「0.1%(w/v)」であるのに対し、甲2発明では、「0.05%(w/v)」である点。 <相違点11> 本件訂正発明4は、「塩化ベンザルコニウム以外の防腐剤を含有しない」ものであるのに対し、甲2発明は、「塩化ベンザルコニウム以外の防腐剤」である「エデト酸ナトリウム」を含有する点。 <相違点12> 本件訂正発明4は、塩化ベンザルコニウムを「0.003~0.005%(w/v)」の濃度で含有することが特定されているのに対し、甲2発明では、このような特定がされていない点。 イ 相違点10の検討 相違点10は相違点7と同一であり、上記(1)イで説示した理由と同様の理由により、甲2発明を相違点10に係る本件訂正発明4の構成を備えたものにすることを、当業者は容易に想到し得たといえる。 ウ 相違点11及び12の検討 (ア)相違点11は相違点8と同一であり、上記(1)ウ(ア)で説示した理由と同様の理由により、甲2発明を、エピナスチン塩酸塩の濃度を「0.1%(w/v)」に高めた点眼液にした際に、当該点眼液から「Na-EDTA」のみを除去して、「塩化ベンザルコニウム」は除去しないこと(相違点11)を当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (イ)上記第10の2(1)ウ(イ)で説示した理由と同様の理由により、甲2発明を、エピナスチン塩酸塩の濃度を「0.1%(w/v)」に高めた点眼液にした際に、当該点眼液から「Na-EDTA」のみを除去して、「塩化ベンザルコニウム」は除去せずに「エピナスチン又はその塩」の眼組織への移行性を向上させるために当該点眼液に含有させることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)上記第10の2(1)ウ(ウ)で説示した理由と同様の理由により、甲2発明を、エピナスチン塩酸塩の濃度を「0.1%(w/v)」に高めた点眼液にした際に、当該点眼液から「Na-EDTA」のみを除去して、「塩化ベンザルコニウム」の含有量を一定値以下にすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (エ)そして、甲2発明を、エピナスチン塩酸塩の濃度を「0.1%(w/v)」に高めた点眼液にした際に、「塩化ベンザルコニウム」の濃度を「0.003~0.005%(w/v)」にすること(相違点12)は、「塩化ベンザルコニウム」を「エピナスチン又はその塩の含有量1重量部に対して0.03~0.05重量部」の濃度で含有すること(相違点9)と実質的に同等であるから、上記第10の2(1)ウで説示した理由と同様の理由により、上記に「0.003~0.005%(w/v)」すること(相違点12)を、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (オ)以上(ア)~(エ)のとおりであるから、甲2発明を、エピナスチン塩酸塩の濃度を「0.1%(w/v)」に高めた点眼液にした際に、 (i)当該点眼液から「Na-EDTA」のみを除去して、 (ii)「塩化ベンザルコニウム」は除去せずに「エピナスチン又はその塩」の眼組織への移行性を向上させるために当該点眼液に含有させて、 (iii)「塩化ベンザルコニウム」の濃度を「0.003~0.005%(w/v)」にすることによって、 甲2発明を相違点10及び11に係る本件訂正発明4の構成を備えたものとすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 エ 以上ア~ウのとおりであるから、甲2に記載された発明(甲2発明)に、甲1~甲29の記載を参酌することにより、相違点10~13に係る本件訂正発明4の構成を備えたものを得ることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 オ 本件訂正発明4の効果について 上記第10の2(1)オで説示した理由と同様の理由により、本件訂正発明4の効果が、当業者が予測し得た範囲のものであるとはいえない。 (4)請求人の主張について 請求人は、無効理由2について下記の趣旨の主張をしているので、検討する。なお、請求人の下記主張における「本件発明」は、本件訂正前の請求項1~4に係る発明を意味する。 本件発明1において「0.1%(w/v)の濃度のエピナスチン又はその塩」が構成として明記されているのであるから、両発明の対比及び判断を誤りなくすることができるように、本件発明に示された技術的思想と対比する上で必要な限度で、刊行物の記載に基づいて、そこに示された技術的思想を表す構成を認定すること、すなわち、溶液4、溶液7を主引用発明としてエピナスチン塩酸塩が「0.1%(w/v)」の点眼液を認定することは、当然許されることである。 むしろ、本件発明との対比に必要な技術的構成について過不足なく認定し、適切な新規性・進歩性判断を行うために、このような引用発明の認定は必要不可欠であると言える。 以上のことから、本件発明1との対比においては、溶液1ではなく、溶液4ないしこれと同じくエピナスチン塩酸塩が「0.1%(w/v)」の濃度である溶液7を主引用発明として認定し、これらに基づく本件発明1の新規性・進歩性を検討するのが妥当と考えられる。 (口頭審理陳述要領書のp.12) 上記主張について検討する。 甲2には、「必要によりそのラセミ体、鏡像異性体及び薬理学的に許容されるその酸付加塩の形態であってもよいエピナスチンを、溶液の0.005~0.5mg/mlの濃度で含む局所的に投与可能な水溶液。」(甲2aの【請求項1】)、「本発明は、・・・エピナスチンを、0.005~0.5、好ましくは0.02~0.1、最も好ましくは0.03~0.07mg/mlの溶液濃度で含む局所的に投与される水溶液に関する。」(甲2cの【0005】)、及び「本発明は、アレルギー反応において好中球及び好酸球の眼球の結膜又は鼻粘膜の組織への流入の抑制に治療上の有用性がある、眼球の結膜又は鼻粘膜の疾患を治療するための、局所的に投与される本発明の水溶液を生成するための、・・・エピナスチンの使用に関する。」(甲2eの【0009】)という記載がある。 これらの記載から、甲2に記載されている発明の技術思想は、アレルギー反応において好中球及び好酸球の眼球の結膜又は鼻粘膜の組織への流入の抑制に治療上の有用性を示す、上記エピナスチンを0.005~0.5mg/mlの溶液濃度(すなわち0.0005%~0.05%(w/v)の濃度)で含む局所的に投与可能な水溶液を提供することであると解するのが自然である。 そして、上記(1)~(3)で説示したように、甲2の実施例の溶液1の記載に基づいて認定した甲2発明が、本件訂正発明との対比(すなわち一致点及び相違点の認定)に必要な技術的構成を過不足なく含む発明であることは明らかである。 よって、請求人の上記主張を参酌しても、甲2発明の認定(上記第6の2(2))に誤りはない。 (5)無効理由2についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正発明1、2及び4は、甲1~甲29の記載を参酌することにより、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって、本件訂正発明1、2及び4についての特許は、無効理由2により無効とすることはできない。 第12 無効理由4(サポート要件違反)について 1 無効理由4のサポート要件違反の概要 無効理由4のサポート要件違反の概要は、以下のとおりである(審判請求書のp.169-179等)。なお、下記概要における「本件発明」は、本件訂正前の請求項1~4に係る発明を意味する。 (1)本件発明の課題は、エピナスチン点眼液自体の薬効を改善させることであるから、本件発明により、エピナスチンの角膜透過性が向上して、角膜及び房水中のエピナスチンの移行量が増大しても、アレルギー性結膜炎の治療に何ら寄与しないのであるから、課題を解決したことにはならない。 (2)本件発明1~3では、エピナスチン又はその塩の含有量1重量部に対する、第四級アンモニウムの含有比率の下限値が特定されておらず、本件発明4では塩化ベンザルコニウムの濃度の下限値が特定されておらず、本件発明の効果を、下限値が特定されていない範囲にまで一般化・抽象化し得るとは認められない。 (3)本件発明の「第四級アンモニウム化合物」について、本件発明1、2では「第四級アンモニウム化合物」の具体的な種類が特定されておらず、本件発明3では「塩化ベンザルコニウム・・・塩化ポリオロニウムからなる群より選択される1種以上」に特定され、本件発明4では「塩化ベンザルコニウム」に特定されている。 しかし、塩化ベンザルコニウム中の脂肪鎖の長さが、薬剤の角膜透過性の亢進効果に影響することは明らかであるので、本件発明の効果を、脂肪鎖の長さが特定されていない塩化ベンザルコニウム、及び塩化ベンザルコニウム以外の各種の「第四級アンモニウム化合物」についてまで、一般化・抽象化し得るとは認められない。 2 当審合議体の判断 (1)サポート要件の判断基準について 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か、また、発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも、当業者が技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。 (2)本件訂正発明が解決すべき課題 本件明細書の発明の詳細な説明(以下「発明の詳細な説明」という。)の記載(特に【0010】)によれば、本件訂正発明が解決すべき課題(以下「本件課題」という。)は、優れた薬効をもたらすために、有効成分である「エピナスチン又はその塩」の、特に「眼組織への移行性を向上させた」眼科用水性組成物を提供することであると認められる。 (3)本件訂正発明によって本件課題を解決できるか否かの検討 ア 発明の詳細な説明の試験例(第6の3、【0057】~【0060】)には、実施例1としてエピナスチン塩酸塩を0.1%(w/v)及び塩化ベンザルコニウムを0.005%(w/v)含む点眼液、実施例2としてエピナスチン塩酸塩を0.1%(w/v)及び塩化ベンザルコニウムを0.003%(w/v)含む点眼液が記載されている(下記【表1】を参照。)。 【表1】 [図:0001418107000058.jpg] そして、上記試験例には、実施例1及び2の点眼液は、塩化ベンザルコニウムを含まない比較例1の点眼液と比較して、角膜中及び房水中のエピナスチンの濃度から算出したAUC[ng・hr/g]が高かったという実験結果が記載されている(下記【表2】を参照。)。 【表2】 [図:0001418107000059.jpg] イ 上記アの実施例1及び2の点眼液は、「エピナスチン塩酸塩」(エピナスチン又はその塩)、「塩化ベンザルコニウム」(第四級アンモニウム)、「リン酸二水素ナトリウム及びリン酸水素ナトリウム水和物」(緩衝剤)、「塩化ナトリウム」(当張化剤)、「希塩酸/水酸化ナトリウム」(pH調節剤)のみを含有し、「第四級アンモニウム化合物以外の防腐剤を含有しない」点眼液であって、「エピナスチン塩酸塩」の含有量1重量部に対する「塩化ベンザルコニウム」の比率は、実施例1で0.05重量部、実施例2で0.03重量部であり、「塩化ベンザルコニウム」の濃度は、実施例1で0.005%(w/v)重量部、実施例2で0.003%(w/v)重量部である。 すなわち、実施例1及び2の点眼液は、本件訂正発明1における、「エピナスチン塩酸塩」の含有量1重量部に対する「塩化ベンザルコニウム」の比率の上限値(0.05重量部)及び下限値(0.03重量部)をそれぞれ満たすとともに、本件訂正発明4における、「塩化ベンザルコニウム」の濃度の上限値(0.005%(w/v))及び下限値(0.003%(w/v))をそれぞれ満たし、実施例2の点眼液は、本件訂正発明2における「エピナスチン塩酸塩」の含有量1重量部に対する「塩化ベンザルコニウム」の比率である「0.03重量部」を満たしているので、実施例1及び2の点眼液は、いずれも本件訂正発明の「眼科用水性組成物」に相当する。 そして、上記アの「実施例1及び2の点眼液は、・・・角膜中及び房水中のエピナスチンの濃度から算出したAUC[ng・hr/g]が高かった」という実験結果は、実施例1及び2の点眼液によって、エピナスチンの、角膜及び房水中への移行性が向上したことを示す結果であり、角膜及び房水はいずれも「眼組織」である(甲22a、甲23c、甲26a)。 ウ そうすると、上記ア及びイから、本件訂正発明の「眼科用水性組成物」によって、「エピナスチン又はその塩」の「眼組織への移行性」が向上し、本件課題を解決できることを、当業者は認識できるといえる。 (4)請求人の主張について 請求人は、無効理由4について下記ア(ア)及び(イ)、並びにイの趣旨の主張(上記1(1)~(3)以外の主張)をしているので、順次検討する。なお、下記主張における「本件発明」は、本件訂正前の請求項1~4に係る発明を意味する。 ア(ア)本件明細書の「優れた薬効をもたらすために有効成分の組織、特に眼組織への移行性を向上させることは非常に有用であり、有効成分としてエピナスチン又はその塩を含有する、組織、特に眼組織への移行性を向上させた水性組成物を提供することは興味深い課題である。」(段落【0010】)という記載から、本件発明の終局的な目的は、エピナスチン点眼液自体の薬効を改善させることである。 然るところ、その作用効果に関し、本件明細書の段落【0057】~【0060】において、角膜及び房水中のエピナスチンの移行量が増大することが述べられているが、他の組織への移行量やエピナスチンの薬効の向上に関する記載は存在しない。 そして、仮に、本件明細書に記載のとおり、角膜及び房水中のエピナスチンの移行量が増大するとしても、このことは本件発明に係る製剤の効能効果として想定されているアレルギー性結膜炎の治療(【0047】)に何ら寄与するものではないので、本件発明が、その技術的課題を解決したことにならないことは言うまでもない。(審判請求書p.171) ア(イ)審決予告で挙げられた、重症型アレルギー性結膜疾患である春季カタル(VKC)やアトピー性角結膜炎(AKC)であっても、エピナスチンの薬効を十分に発揮するためには角膜ではなく結膜(の外眼部)に移行することが好ましいことには変わりがなく、角膜ないし房水のAUCが上昇することにほり、そのような角膜病変(塩基性たんぱくによる角膜傷害)が改善するとは到底考えられない。 アレルギー性結膜炎は、結膜に炎症を起こす典型的な外眼部疾患であり、主な作用部位は結膜の外眼部であるから、(白内障や緑内障などの前眼部疾患とは異なり)、角膜であれ結膜であれ、その透過はほとんど薬効に影響がない。(令和6年5月15日提出の弁駁書のp.7~8、下線は請求人が付したものである。) 上記ア(ア)及び(イ)の主張について検討する。 (i)本件課題が、優れた薬効をもたらすために、有効成分である「エピナスチン又はその塩」の、特に「眼組織への移行性を向上させた」眼科用水性組成物を提供することであることは、上記(2)で説示したとおりである。 ここで、発明の詳細な説明には、「本発明の水性組成物を眼科用製剤として使用する場合は、特にアレルギー性結膜炎の治療として有用である。」(【0047】)という記載があり、上記「・・・として使用する場合は、」及び「特に・・・」という記載から、発明の詳細な説明では、エピナスチンの作用部位を結膜のみに限定しておらず、エピナスチンによる治療対象疾患をアレルギー性結膜炎のみに限定することを意図する記載はないのであるから、本件課題における「薬効」は、アレルギー性結膜炎の治療効果のみに限定されてはいないと解される。 (ii)本願の出願日当時、エピナスチン塩酸塩を0.05%以上の濃度で含有する点眼液には、ヒスタミン誘発による結膜の血管透過性亢進を有意に抑制する作用が確認され、肥満細胞の脱顆粒を抑制することによって、結膜からのヒスタミンをはじめとするメディエーター遊離抑制作用を示す可能性が示唆されたこと(甲1c)が知られていた。 (iii)また、甲15に「結膜のう内に投与された薬物は,・・・このうち,角膜を透過する経路が主要経路である。」(甲15d)、甲26に「結膜のう内に投与された薬物は主として角膜及び結膜の透過にはじまり眼内各組織へ移行するが,そのうち特に角膜透過が主要経路となる.」(甲26c)、及び甲27に「結膜のう内に点眼された薬物の眼内移行ルートを・・・角膜上皮を浸透して房水,虹彩・毛様体,硝子体などに分布する経路が主流である」(甲27a)と記載されているように、点眼投与後の薬物が各種の眼組織に移行する経路として、角膜を透過する経路が主要な経路であることは技術常識である。 上記技術常識から、本件訂正発明によって、点眼投与後に角膜や房水中に移行したエピナスチンが、さらに虹彩、毛様体等の各種の眼組織(甲22a、甲23c、甲26a)にまで到達し得ること、すなわちエピナスチンが到達し得る各種の眼組織の範囲が拡張されるとともに、各種の眼組織に到達し得るエピナスチンの量が増加することを、当業者は認識できるといえる。 そして、エピナスチンによる薬効は、到達した各種の眼組織において期待できると解するのが自然であるから、例えば、春季カタルやアトピー性角結膜炎といった、角膜病変を伴うことがある重症型アレルギー性結膜疾患(乙16a及びc、乙17a及びb)のように、角膜及びその近傍を含む部位における疾患に対してもエピナスチンによる薬効がもたらされ得ることを、当業者は認識できるといえる。 (iv)上記(i)~(iii)のとおりであるから、請求人の上記ア(ア)及び(イ)の主張を採用することはできない。 イ 本件明細書の段落【0057】~【0060】には、角膜及び房水中のエピナスチンの移行量に関する実験データが記載されているが、実施例において、具体的にどのような構造の塩化ベンザルコニウムを用いたのかについての記載はない。 しかしながら、本願の出願日当時、下記(ア)及び(イ)のとおり、塩化ベンザルコニウムはそこに含まれる脂肪鎖の長さによってその界面活性効果(角膜透過性の亢進効果)が大きく異なることが知られていた。 (ア)甲13では、塩化ベンザルコニウムの界面活性作用による細胞膜の透過性亢進に関し、0.001~0.01%(w/v)で薬効を高めることが記載されているが、言うまでもなくその界面活性作用は化合物の構造(化合物の各部分の水溶性、脂溶性)によって大きく異なるのであるから、塩化ベンザルコニウム中の脂肪鎖の長さが角膜透過性の亢進効果に影響することは明らかであり、その結果、当然に角膜や房水への移行量にも影響することになる。 (イ)甲8、甲16及び甲18に、塩化ベンザルコニウムには炭素数8~18の長さの異なるアルキル基のものが存在し、炭素数が小さいほど角膜障害性が低いことが記載されていることからも、塩化ベンザルコニウム中の脂肪鎖の長さが角膜透過性の克進効果に影響することは明らかであり、当然に角膜や房水への移行量もその炭素数に依存することになる。 したがって、仮に、本件明細書の段落【0057】~【0060】の結果から、何らかの技術的事項が読み取れるとしても、本件明細書の実施例では、塩化ベンザルコニウムについてそもそもどのような構造のものを用いたか記載されておらず、その効果が、炭素数8~18の長さの異なるアルキル基を含めた塩化ベンザルコニウム一般に当てはまるとは認識できないのであるから、塩化ベンザルコニウムに限定されている本件発明4も含めて、本件発明はサポート要件を充足していない。(審判請求書p.176-177) 上記イの主張について検討する。 本願の出願日当時、点眼液にはアルキル側鎖がC12,C14,C16の塩化ベンザルコニウム(ベンザルコニウム塩化物)が混在したものが用いられていること(甲16b)が知られていたのであるから、発明の詳細な説明の実施例でも、アルキル側鎖がC12,C14,C16の塩化ベンザルコニウムの混合物が用いられていると解するのが自然である。 そして、アルキル側鎖がC12,C14,C16のいずれであるかによって、本件訂正発明の効果に多少の差異が生じる可能性があるとしても、塩化ベンザルコニウムの主要骨格は共通しているのであるから、本件課題を解決できないといえるほどの差異が生じるとはいえない。 よって、請求人の上記イの主張を採用することはできない。 (5)無効理由4についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正発明1、2及び4は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、本件特許に係る出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。 よって、本件訂正発明1、2及び4についての特許は、無効理由4によって、無効にすることはできない。 第13 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正後の請求項1、2及び4に係る発明についての特許は、請求人の主張する無効理由1~4によって無効とすることはできない。 そして、請求項3は、本件訂正により削除されたため、本件訂正後の請求項3に係る発明についての審判請求は、不適法な請求であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第135条の規定により、これを却下する。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2023-800015

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決60件(テイカ製薬 株式会社、ロートニッテン 株式会社、参天製薬 株式会社 ほか)
  • 2017-800003無効審判 / 2020-07-14 / 請求不成立イソブチルGABAまたはその誘導体を含有する鎮痛剤
    同じ当事者: 日新製薬 株式会社、東和薬品 株式会社
  • 2025-800139無効審判 / 2026-09-04
    同じ当事者: 東和薬品 株式会社
  • 2025-800137無効審判 / 2026-09-04
    同じ当事者: 東和薬品 株式会社
  • 2025-800138無効審判 / 2026-09-04
    同じ当事者: 東和薬品 株式会社
  • 2023-800061無効審判 / 2025-09-24 / 請求成立(無効)メトホルミン治療に不適切な患者における糖尿病の治療
    同じ当事者: 日新製薬 株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)5,109件(121・A61K、537・A61K)
  • 2016-800112無効審判 / 2025-06-11 / 請求成立(無効)セレコキシブ組成物
    共通の審決分類: 121・A61K、537・A61K
  • 2021-800005無効審判 / 2025-05-07 / 請求成立(無効)ワクチンアジュバントの製造の間の親水性濾過
    共通の審決分類: 121・A61K、537・A61K
  • 2023-800004無効審判 / 2025-04-08 / 請求成立(無効)医薬品
    共通の審決分類: 121・A61K、537・A61K
  • 2022-800038無効審判 / 2024-06-14 / 訂正認容デクスメデトミジンを用いて小児患者を治療する方法
    共通の審決分類: 121・A61K、537・A61K
  • 2022-800061無効審判 / 2024-03-29 / 請求不成立エピナスチン又はその塩を含有する水性組成物
    共通の審決分類: 121・A61K、537・A61K

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存