審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許無効審判

2020-800121

医薬

審判番号
2020-800121
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2012-546269
登録番号
5190159
請求日
2020年12月17日
審決日
2023年01月13日
公報発行日
2023年05月26日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】東和薬品 株式会社
  • 【請求人代理人】飯田 秀郷
  • 【請求人代理人】森山 航洋
  • 【請求人代理人】保志 周作
  • 【請求人代理人】新保 克芳
  • 【請求人代理人】辻田 朋子
  • 【請求人代理人】村松 大輔
  • 【被請求人】興和 株式会社
  • 【被請求人代理人】特許業務法人アルガ特許事務所
  • 【被請求人代理人】北原 潤一
  • 【被請求人代理人】梶並 彰一郎
審判長/審判官
  • 審判長 木村 敏康
  • 審判官 関 美祝
  • 審判官 冨永 保
分類
P1113.121-ZAA(A61K) / P1113.537-ZAA(A61K) / P1113.536-ZAA(A61K) / P1113.841-ZAA(A61K) / P1113.851-ZAA(A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法135条特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条、特許法第36条第4項第1号、特許法第123条第1項第4号、特許法第134条の2第6項、特許法第134条の2第3項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項、特許法第135条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第5190159号発明「医薬」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 特許第5190159号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項6、7、8、9について訂正することを認める。 特許第5190159号の請求項6、9に係る発明についての特許を無効とする。 特許第5190159号の請求項7、8についての本件審判の請求を却下する。 審判費用は、被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第5190159号(以下「本件特許」という。)は、2012年8月8日を国際出願日として出願(特願2012-546269号)されたものであり、その特許権について、平成25年2月1日に設定登録を受けた(請求項の数9。特許権者:興和株式会社(以下、「被請求人」という。))。 その後、本件の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明についての特許を無効とすることについて、平成30年7月19日に東和薬品株式会社(以下「請求人」という。)から、無効審判の請求がされ(無効2018-800092号、以下「第1次無効審判事件」ということがある。)、当該審判請求については、令和2年2月17日付けで訂正請求書が提出され、令和2年9月18日付けで、「令和2年2月17日付け訂正請求において、特許第5190159号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。特許第5190159号の請求項1ないし2に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決がされ、その後当該審決は確定した。 上記訂正により、請求項3~5は削除された。 その後、令和2年12月17日に請求人から、本件審判の請求がされた。 本件審判の手続の経緯の概要は次のとおりである。 令和2年12月17日付け 審判請求書・甲第1~62号証提出 令和3年 4月26日付け 上申書1(被請求人)(答弁書提出期限の延 長を求めるもの) 令和3年 6月11日付け 上申書2(被請求人)(答弁書提出期限の延 長を求めるもの) 令和3年 7月30日付け 審判事件答弁書1・乙第1~6号証・訂正請 求書提出 令和3年10月11日付け 審理事項通知書 令和3年10月25日付け 上申書3(請求人)・甲第64~70号証提 出(上申書3は審理事項通知に対して回答す るもの) 令和3年10月25日付け 上申書4(被請求人)・乙第7号証提出(上 申書4は審理事項通知に対して回答するもの ) 令和3年11月15日付け 口頭審理陳述要領書(請求人)・甲第71~ 83号証提出 令和3年11月15日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人)・乙第8~ 10号証、乙第11号証の1~10提出 令和3年12月 6日 第1回口頭審理 令和3年12月24日付け 上申書5(被請求人)提出(上申書5は本件 審判事件に関連する特許権侵害に基づく損害 賠償等請求事件、同損害賠償請求事件におけ る提出書面の写しを提出するもの) 令和3年12月27日付け 上申書6(請求人)提出(上申書6は本件審 判事件に関連する特許権侵害に基づく損害賠 償等請求事件、同損害賠償請求事件における 提出書面の写しを提出するもの) 令和4年 1月17日付け 補正許否の決定 令和4年 3月22日付け 審判事件答弁書2 令和4年 3月25日付け 上申書7(請求人)提出(上申書7は本件審 判事件に関連する特許権侵害に基づく損害賠 償等請求事件、同損害賠償請求事件の判決書 の写しを提出するもの) 令和4年 4月 4日付け 営業秘密に関する申出書(被請求人) 令和4年 5月30日付け 上申書8(被請求人)・乙第12~18号証 提出(上申書8は本件審判事件に関連する特 許権侵害に基づく損害賠償等請求控訴事件に おける提出書面の写しを提出するもの) 令和4年 6月17日付け 審決の予告 令和4年 8月22日付け 上申書9(被請求人)・乙第19~23号証 ・訂正請求書提出(上申書9は審決の予告に 対するもの) 令和4年10月 6日付け 弁駁書・甲第84号証提出 上記において、審判事件答弁書、上申書を提出順に「審判事件答弁書1」、「上申書1」などとした。以下、書証は、その証拠番号により、甲第1号証を「甲1」、乙第1号証を「乙1」などともいう。なお、甲9、10は上申書3において撤回され欠番であり、甲11、21、50、57~59、63は欠番である。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 被請求人は、令和4年8月22日に訂正請求書を提出して、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項6、7、8、9について請求項ごとに訂正(以下「本件訂正」という。)することを求めた(なお、令和3年7月30日付け訂正請求書による訂正の請求は、特許法第134条の2第6項の規定により取り下げられたものとみなす。)。 その訂正の内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項6に「水分含量が2.9質量%以下である固形製剤。」と記載されているのを、 「(C)水分含量が1.5~2.9質量%である固形製剤であって、かつ、錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤(但し、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤、及び、アルカリ化物質を含まない固形製剤を除く)。」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項9に「固形製剤が錠剤である、請求項6~8のいずれか1項記載の固形製剤。」と記載されているのを、 「次の成分(A)及び(B): (A)ピタバスタチン又はその塩; (B)クロスポビドン; を含有し、 (C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず、 かつ、水分含量が1.5~2.9質量%である固形製剤であって、かつ、錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤(但し、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除く)。」に訂正する。 2 訂正の適否についての検討 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項6に係る発明における固形製剤の水分含量について、「2.9質量%以下」と上限のみが特定されていたのを、本件訂正後に「1.5~2.9質量%」とすることにより、下限を特定するものである。 また、固形製剤について、「錠剤」とし、「気密包装体に収容される」とし、「但し、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤、及び、アルカリ化物質を含まない固形製剤を除く」とすることにより、固形製剤を限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものであるかについて 訂正事項1は、上記アで述べたとおり、固形製剤の水分含量について「2.9質量%以下」を「1.5~2.9質量%」に改めることによって範囲を限定し、また、本件訂正前の請求項6に記載されていた固形製剤を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 ウ 新規事項の追加の有無について (ア)「1.5~2.9質量%」とする点について 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」ということがある。)の請求項7には、「水分含量が1.5~2.9質量%である」との記載があり、明細書には、「水分含量が1.5~2.9質量%・・・である本発明の固形製剤」(【0025】)との記載がある。 したがって、この点は、本件特許明細書等に記載した事項を総合することにより導かれる事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。 (イ)「錠剤」とする点について 本件特許明細書等の請求項9には、「固形製剤が錠剤である」との記載があり、また明細書には、「本発明において固形製剤の剤形としては、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤が好ましく、錠剤がより好ましく」(【0039】)との記載がある。 したがって、この点は、本件特許明細書等に記載した事項を総合することにより導かれる事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。 (ウ)「気密包装体に収容される」とする点について 本件特許明細書等の明細書には、「本発明は、上記の固形製剤が気密包装体に収容してなる医薬品を提供するものである。」(【0045】)との記載がある。 したがって、この点は、本件特許明細書等に記載した事項を総合することにより導かれる事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。 (エ)「但し、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤、及び、アルカリ化物質を含まない固形製剤を除く」とする点について この点の訂正は、いわゆる「除くクレーム」とする訂正である。 a 「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤」を除くとする点について 本件審判請求において提示された甲12には、「ポリビニルアルコールおよびセルロース誘導体またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるフィルム形成物質を含む、環境影響からの活性物質および1種類以上の医薬賦形剤および/または医薬剤形の保護および安定性を提供するコーティング」(下記摘示12-12、請求項1)、「粒子が請求項1~18に記載のコーティングでコーティングされている、環境影響に敏感な活性物質を含む、コーティングされた粒子」(下記摘示12-12、請求項19)、「医薬剤形であって、(a)請求項19~24に記載の1つ以上のコーティングされた粒子および/または環境影響に敏感な1種類以上の活性物質を含有する1つ以上のコーティングされていない粒子の混合物と、(b)1種類以上の医薬賦形剤と、(c)請求項1~18に記載のコーティング、又は請求項19~24に記載のコーティングされた粒子が医薬剤形に埋め込まれている場合には従来技術で知られている他のコーティングを含む、医薬剤形」(下記摘示12-12、請求項25)、「前記活性物質が、・・・イタバスタチン、・・・からなる群から選択される、請求項25および26に記載の医薬剤形」(下記摘示12-12、請求項27)、「本発明のコーティングという用語は、活性物質、または、マイクロカプセル、微小球、顆粒、ペレットなどの規則的な形状または不規則な形状の粒子の形態の1種以上の医薬賦形剤を含む活性物質、または錠剤、カプセルまたは従来技術で公知の同様な形態からなる群から選択される医薬剤形のいずれかであるコアに直接的に塗布される材料の層である」こと(下記摘示12-6)が記載されており、これらの記載から甲12には、上記除くクレームによって除かれる、「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤」が記載されているといえる。 この訂正事項は、かかる固形製剤を除く訂正であるといえる。 そして、本件訂正前の請求項6に係る固形製剤は、成分(A)及び(B)以外の成分を含有することや、固形製剤、粒子をコーティングすることについて排除していないから、「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤」も含み得るものであった、すなわち、除かれる部分が、本件訂正前の請求項6に係る固形製剤の範囲内のものであったといえる。 また、本件特許明細書等には、任意成分の一つとしてフィルム形成剤が記載され(【0030】、【0034】)、フィルム形成剤としてポリビニルアルコール、アルキルセルロース等のセルロース誘導体が例示されており、当該フィルム形成剤は任意成分であるから、それが含まれていない固形製剤も本件特許明細書等に記載されているといえる。 これらのことから、「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤」を除くとすることは新規事項の追加に該当しない。 してみると、この点は、本件訂正前の請求項6に係る発明について、甲12に記載された事項を除こうとするものであって、本件特許明細書等に記載した事項を総合することにより導かれる事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。 b 「アルカリ化物質を含まない固形製剤」を除くとする点について この点は、実質的に、本件訂正前の請求項6に係る発明について、アルカリ化物質を含む固形製剤とすることと同義である。 本件審判請求において提示された甲1には、「1.安定な医薬剤形であって、環境pHに敏感な1つ以上の活性物質と、環境pHに対する1つ以上の活性物質の安定性を与える1つ以上の医薬賦形剤とを含み、前記医薬剤形は、水分含量が前記医薬剤形全体の重量の3.5重量%未満であり、アルカリ化物質または緩衝剤、またはこれらの組み合わせを含まない、安定な医薬剤形。」(請求項1)との記載があるところ、当該記載から、甲1には、アルカリ化物質を含まない医薬剤形が記載されているといえる。 この訂正事項は、かかる固形製剤を除く訂正であるといえる。 そして、本件訂正前の請求項6に係る固形製剤は、成分(A)及び(B)以外の成分を含有することや、アルカリ化物質を含むことを排除していないから、アルカリ化物質を含む固形製剤も本件訂正前の請求項6に係る固形製剤の範囲内のものであったといえる。 また、本件特許明細書等には、「本発明において固形製剤は、その具体的形態(剤形)に応じて、上記成分以外に当該技術分野において通常用いられている添加剤を含有していてもよい。当該添加剤としては、例えば、・・・pH調整剤・・・を適宜組み合わせて使用することが可能である。」(【0030】)との記載があるところ、pH調整剤には対象物をよりアルカリ側のものとするアルカリ化物質と酸側の物とする酸化物質があることは技術常識であることから、本件特許明細書等には、アルカリ化物質を含む固形製剤が記載されていたといえる。 これらのことから、「アルカリ化物質を含まない固形製剤」を除くことは新規事項の追加に該当しない。 してみると、この点は、本件訂正前の請求項6に係る発明について、甲1に記載された事項を除こうとするものであって、本件特許明細書等に記載した事項を総合することにより導かれる事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。 (オ)請求人の主張について 請求人は上記(エ)bの点について、上申書3、15~17頁において、本件特許明細書等の特許請求の範囲や明細書の記載をみても、「アルカリ化物質」という文言の記載は存在しないこと、本件訂正前の請求項6に係る発明は、アルカリ化物質を含有せずとも、固形製剤中の水分含量を1.5質量~2.9質量%の範囲内に制御しさえすれば、ピタバスタチン又はその塩のラクトン体の生成を抑制して安定性を得ることができる、というものであるのに対し、本件訂正後の請求項6に係る発明は、ラクトン体の生成を抑制し、ピタバスタチン又はその塩の安定性を得るための解決手段として、「水分含量の調整」という解決手段のみならず、「アルカリ化物質」という解決手段をも併せ持つ発明としたものであり、新たな技術的事項を導入したことは明らかであること、第1次無効審判事件において、被請求人が、本件特許の請求項1に係る医薬品について、「アルカリ化物質」である「メタケイ酸アルミン酸マグネシウム」を必須の構成として含有する訂正請求について、令和1年7月1日付け審決の予告において、新規事項の追加に該当するとの判断が既になされていること等から、新規事項の追加である旨主張するが、上述のとおり、アルカリ化物質を含む固形製剤は本件特許明細書等に記載された事項の範囲内であるといえるし、アルカリ化物質とメタケイ酸アルミン酸マグネシウムとは異なる物質であるから、同様に判断することはできない。 したがって、請求人の主張は採用できない。 (カ)まとめ 以上のとおりであるから、訂正事項1は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項7を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものであるかについて 訂正事項2は、本件訂正前の請求項7を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 ウ 新規事項の追加の有無について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項7を削除するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項を総合することにより導かれる事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるとはいえず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的について 訂正事項3は、本件訂正前の請求項8を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものであるかについて 訂正事項3は、本件訂正前の請求項8を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 ウ 新規事項の追加の有無について 訂正事項3は、本件訂正前の請求項8を削除するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項を総合することにより導かれる事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるとはいえず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的について 訂正事項4は、本件訂正前の請求項9が請求項6~8の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して請求項6~8を引用しないものとし、独立形式の請求項へ改めるとともに、本件訂正前の請求項6を直接的に引用する場合、及び本件訂正前の請求項6又は7を引用する請求項8を引用する場合を削除して、本件訂正前の請求項6を引用する請求項7を直接的に引用する場合のみに限定することにより特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第4号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 また、この訂正は、本件訂正前の請求項9に記載の固形製剤について、成分(B)の選択肢であった「カルメロース及びその塩」並びに「結晶セルロース」を削除し、「(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有」しないものとし、「気密包装体に収容される」とし、「但し、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除く」とすることにより、固形製剤を限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものであるかについて 訂正事項4は、上記アで述べたとおり、請求項の引用関係を解消し、また、本件訂正前の請求項6を引用する請求項7を直接的に引用する請求項9に記載されていた固形製剤に限定して、これを更に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 ウ 新規事項の追加の有無について (ア)「1.5~2.9質量%」とする点について 上記(1)ウ(ア)で述べたのと同様の理由により、この点は、本件特許明細書等に記載した事項を総合することにより導かれる事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。 (イ)「カルメロース及びその塩」並びに「結晶セルロース」を削除し、「(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有」しないものとする点について この点は、本件訂正前の請求項9が引用する請求項7が引用する請求項6に成分(B)の選択肢として記載されていた「カルメロース及びその塩」並びに「結晶セルロース」を削除し、それらを含有しないものとするものであるから、本件特許明細書等に記載した事項を総合することにより導かれる事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。 (ウ)「気密包装体に収容される」とする点について 上記(1)ウ(ウ)で述べたのと同様の理由により、この点は、本件特許明細書等に記載した事項を総合することにより導かれる事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。 (エ)「但し、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除く」とする点について 上記(1)ウ(エ)aで述べたのと同様の理由により、この点は、本件特許明細書等に記載した事項を総合することにより導かれる事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。 (オ)まとめ 以上のとおりであるから、訂正事項4は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 (5)一群の請求項と別の訂正単位とする求めについて 本件訂正前の請求項6~9は、請求項7~9が請求項6の記載を引用する関係にあるので、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項に該当するものである。 そして、本件訂正に係る請求では、本件訂正後の請求項6~9のそれぞれについて、いずれも、訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することが求められている。 3 まとめ 以上のとおりであるから、請求項6、7、8、9についての本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合するものである。 よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項6、7、8、9について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2で示したとおり、請求項6、7、8、9についての本件訂正は認められたので、本件特許の請求項6~9に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項6~9に記載された事項により特定される、それぞれ以下のとおりのもの(以下「本件発明6」などといい、併せて「本件発明」ということがある。)である。 「【請求項6】 次の成分(A)及び(B): (A)ピタバスタチン又はその塩; (B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上; を含有し、かつ、 (C)水分含量が1.5~2.9質量%である固形製剤であって、かつ、錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤(但し、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤、及び、アルカリ化物質を含まない固形製剤を除く)。 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 次の成分(A)及び(B): (A)ピタバスタチン又はその塩; (B)クロスポビドン; を含有し、 (C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず、 かつ、水分含量が1.5~2.9質量%である固形製剤であって、かつ、錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤(但し、固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除く)。」 第4 請求人の請求の趣旨、主張する無効理由の概要及び請求人が提出した証拠方法等 1 請求人の請求の趣旨、主張する無効理由の概要 請求人の請求の趣旨は、「特許第5190159号の特許請求の範囲の請求項6ないし9に係る発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」であり、審判請求書、上申書3、口頭審理陳述要領書、弁駁書において、以下の無効理由1~5を主張している(無効理由5は、上申書3において追加して主張された理由であり、当審が令和4年1月17日付けの補正許否の決定において、その補正を許可した。)。 (1)無効理由1 本件発明6~9は、本件出願前に頒布された甲12に記載された発明及び本件出願当時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件発明6~9の特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきである。 (2)無効理由2 本件発明6~9は、本件出願前に頒布された甲62に記載された発明及び本件出願当時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件発明6~9の特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきである。 (3)無効理由3 本件発明6~9について、特許請求の範囲の記載は、その特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 したがって、本件発明6~9の特許は、同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してされたものであって、同法第123条第1項第4号に該当し、無効にすべきである。 (4)無効理由4 本件発明6~9について、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。 したがって、本件発明6~9の特許は、同法第36条第4項第1号の規定を満たさない特許出願に対してされたものであって、同法第123条第1項第4号に該当し、無効にすべきである。 (5)無効理由5 本件発明8について、特許請求の範囲の記載は、その特許を受けようとする発明が明確であるとはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。 したがって、本件発明8の特許は、同法第36条第6項の規定を満たさない特許出願に対してされたものであって、同法第123条第1項第4号に該当し、無効にすべきである。 2 請求人が提出した証拠方法等 証拠方法として、以下の証拠が提出されている。 甲1:国際公開第2004/071402号 甲2:高久史麿ら監修、治療薬マニュアル 2012、株式会社医学書院、2012年1月15日第1刷、623、625頁 甲3:特開2012-144564号公報 甲4:特開2001-206877号公報 甲5:特開2011-144120号公報 甲6:特表2007-512287号公報 甲7:特開平5-246844号公報 甲8:特表2010-533210号公報 甲12:国際公開第2004/071403号 甲13:特表平11-503763号公報 甲14:特表2004-537553号公報 甲15:特表2005-520818号公報 甲16:国際公開第03/105848号 甲17:国際公開第2011/049122号 甲18:特開2012-36163号公報 甲19:特表2004-501121号公報 甲20:特表2005-538097号公報 甲22:特表2006-518354号公報 甲23:特開2011-201915号公報 甲24:国立医薬品食品衛生研究所長、審査報告書、衛研発第2638号、平成15年4月25日 甲25:佐川良寿著、医薬品製剤技術、株式会社シーエムシー出版、2002年7月25日第1刷発行、163~164、172~177頁 甲26:佐川良寿著、継承したい製剤技術の基本原理とノウハウ -粉砕・混合・造粒・乾燥・打錠・表面改質の実践と応用-、株式会社情報機構、2007年1月23日第1刷、203~233頁 甲27:中村正秋ら著、はじめての乾燥技術、日刊工業新聞社、2011年7月30日初版第1刷発行、48~53頁 甲28:中村正秋ら編著、初歩から学ぶ乾燥技術、株式会社工業調査会、2005年7月20日初版第1刷発行、18~24、51~57頁 甲29:特表2004-536826号公報 甲30:特開2007-131647号公報 甲31:特開2007-77174号公報 甲32:特表2009-532343号公報 甲33:特表2011-500558号公報 甲34:特表2012-508230号公報 甲35:特開2006-199632号公報 甲36:再表2010/074223号公報 甲37:第十三改正日本薬局方解説書 通則 製剤総則 一般試験法 1996、通則A-54、A-55 甲38:瀬崎(審決注:「瀬」の右上は「刀」、「崎」の右上は「立」)仁監修、第9巻 医薬品の包装と容器 II、株式会社廣川書店、平成3年10月30日初版発行、311~318頁 甲39:国際公開第2007/031801号 甲40:医薬品インタビューフォーム HMG-CoA還元酵素阻害剤 指定医薬品,処方せん医薬品 リピトールR(審決注:○の中にR。以下同じ。)錠5mg 指定医薬品,処方せん医薬品 リピトールR錠10mg LipitorR、astellas、pfizer、2006年6月(改訂第13版) 甲41:高久史麿ら監修、治療薬マニュアル 2012、株式会社医学書院、2012年1月15日第1刷、622頁 甲42:特許第2774037号公報 甲43:特許第5722034号公報 甲44:欧州特許第1594474号明細書 甲45:特願2012-95518号の出願について平成24年4月19日に提出された上申書 甲46:無効2009-800236の特許審決公報、平成28年8月26日発行 甲47:国際公開第2010/092828号 甲48:国際公開第2012/029913号(甲81と同じ。) 甲49:特許第4981194号公報 甲51:日本医薬品添加剤協会 Safety Dataのウェブサイト(http://www.jpec.gr.jp/detail=normal&date=safetydata/ka/dake7.html) 甲52:KEGG DRUGのウェブサイト(https://www.kegg.jp/dbget-bin/www_bget?D00093+-ja)、(https://www.kegg.jp/kegg/document/help_bget_drug_ja.html)、(https://www.kanehisa.jp/ja/about_kegg_ja.html)、(https://www.kanehisa.jp/ja/) 甲53:特開2012-96998号公報 甲54:特表2010-534644号公報 甲55:BASFジャパンのwebページ(「BASFジャパンの医薬品添加剤」)(「https://www.basf.com/jp/ja/products/pharmaceuticals/pharmaingredients.html」のwebページ(「医薬品原料」のページ)中の「医薬品添加剤製品リスト」をクリックすると、1頁目に表記されるもの) 甲56:特表2009-516681号公報 甲60:総監修掛見喜一郎、最新の製剤技術シリーズNo.1 医薬品のコーティング、日本工業技術連盟、昭和44年12月1日初版発行、1~4頁、33~47頁 甲61:橋田充編、経口投与製剤の処方設計、株式会社薬業時報社、平成10年4月15日発行、97~111頁(甲71と同じ。) 甲62:スロベニア工業所有権公報、SI 21402 A 甲64:特開2003-95939号公報 甲65:特表2005-538104号公報 甲66:特表2011-500811号公報 甲67:特開昭55-47615号公報 甲68:特開平11-269072号公報 甲69:特表2005-536527号公報 甲70:特表2007-530623号公報 甲71:橋田充編、経口投与製剤の処方設計、株式会社薬業時報社、平成10年4月15日発行、97~111頁 甲72:JOURNAL OF PHARMACEUTICAL SCIENCES, VOL.96, NO.5,PP.948-959, MAY 2007 甲73:特表2003-520224号公報 甲74:特開2006-36774号公報 甲75:特表2008-508227号公報 甲76:特表2012-533586号公報 甲77:特開2002-80430号公報 甲78:特開2003-2829号公報 甲79:国際公開第2012/056509号 甲80:特開2013-224285号公報 甲81:国際公開第2012/029913号 甲82:中国特許公開第1969849A号明細書 甲83:平成30年(ワ)第17586号、平成31年(ワ)第7191号、令和2年(ワ)第7989号、令和3年(ワ)第8097号において提出された被告準備書面(15) 甲84:知財高判令和4年9月21日、令和4年(ネ)第10052号 (なお、甲9~11、21、50、57~59、63は欠番である。) 第5 被請求人の答弁の趣旨並びにその主張の概要及び被請求人が提出した証拠方法等 1 被請求人の答弁の趣旨及びその主張の概要 被請求人の答弁の趣旨は、「本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」であり、審判事件答弁書1及び2、上申書4、口頭審理陳述要領書、上申書9において、請求人が主張する無効理由1~5のいずれにも理由がない旨の反論をしている。 2 被請求人が提出した証拠方法等 証拠方法として、以下の証拠が提出されている。 乙1:無効2018-800092号の審決 乙2:特開2001-354565号公報 乙3:財団法人日本公定書協会監修、日本薬局方外医薬品規格 2002、株式会社じほう、平成14年9月30日発行、560~561頁 乙4:日本医薬品添加剤協会訳編、改訂 医薬品添加物ハンドブック、株式会社薬事日報社、2007年2月28日第1刷発行、551頁 乙5:知財高判令和2年7月2日、平成30年(行ケ)第10159号、同年(行ケ)第10153号 乙6:知財高判平成30年5月24日、平成29年(行ケ)第10129号 乙7:請求人が作成した甲12の翻訳文の正誤表 乙8:無効2018-800092号の審決の予告 乙9:知財高判令和元年11月14日、平成30年(行ケ)第10110号、同年(行ケ)第10112号、同年(行ケ)第10155号 乙10:日本医薬品添加剤協会編、医薬品添加物事典 2007、株式会社薬事日報社、2007年7月25日第1刷発行、6、15~17、39~42、44~46、79~83、121、129、166、229、235、274頁 乙11の1:特許第4850426号公報 乙11の2:特許第4816828号公報 乙11の3:特許第4964587号公報 乙11の4:特許第4740945号公報 乙11の5:特許第4507065号公報 乙11の6:特許第4580744号公報 乙11の7:特許第4589018号公報 乙11の8:特許第4713706号公報 乙11の9:特許第3727848号公報 乙11の10:特許第2717638号公報 乙12:令和4年(ネ)第10052号において提出された令和4年5月26日付け控訴理由書 乙13:飯村敏明作成の令和4年5月20日付け意見書 乙14:森部久仁一作成の令和4年5月24日付け見解書(その1) 乙15:梶並彰一郎作成の令和4年5月25日付け報告書 乙16:知財高判平成30年4月13日、平成28年(行ケ)第10182号、同年(行ケ)第10184号 乙17:森部久仁一作成の令和4年5月24日付け見解書(その2) 乙18:西田千紗作成の令和4年5月20日付け試験結果報告書(特許第5190159号 処方例13の錠剤のラクトン体生成率の評価) 乙19:甲12の出願人が、甲12の対応欧州特許出願のオフィスアクションに対して提出した2012年7月26日付けの反論書 乙20:甲12の出願人が、甲12の対応オーストラリア出願のオフィスアクションに対して提出した2011年3月18日付けの意見書 乙21:設樂隆一及び今村玲英子作成の2022年7月7日付け意見書 乙22:清水節作成の2022年7月6日付け意見書(サポート要件について) 乙23:前田健作成の令和4年7月7日付け意見書 第6 当審の判断 当審は、本件発明6及び9についての無効理由1~3は理由があり、無効理由4は理由がないと判断する。 その理由は以下のとおりである。 1 無効理由1及び2について (1)甲各号証の記載事項 本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、甲12、1~8、13~16、18~20、22~24、35~39、49、51、53、60~62、64、66~67、69~70には、以下の記載がある。 ア 甲12(国際公開第2004/071403号)には、以下の記載がある(訳文で示す。)。 12-1)「技術分野 本発明は、製薬業界の分野に関し、より特定的には、環境影響に敏感な活性物質を含む、コーティングされた粒子および医薬剤形に関する。 ・・・ 本発明のコーティングされていない医薬剤形は、本発明のコーティングされた粒子と、1種類以上の医薬賦形剤とを含み、このような粒子のコーティングは、活性物質と1種類以上の医薬賦形剤を環境影響から、特に酸化および/または環境湿度から保護する。」(1頁2行~5行、2頁1行~5行) 12-2)「HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン類)は、特に、環境pH、湿度、光、温度、二酸化炭素および酸素にも敏感な活性物質である。」(6頁7行~8行) 12-3)「スタチン類の中でも、例えば、プラバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、メバスタチンまたはコンパクチン、フルバスタチンまたはフルインドスタチン、セル(セリ)バスタチンまたはリバスタチン、ロスバスタチンまたはビスタスタチン、およびイタバスタチンまたはピタバスタチンまたはニスバスタチンが知られている。」(6頁25行~28行) 12-4)「上述のスタチン類の多くは、特に環境影響、例えば、大気の影響や環境pHに敏感である。従来技術では、特定のスタチンは、酸性環境(低pH値)に敏感であり、ラクトン形態および異なる異性体に分解されることが知られている。例えば、プラバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチンおよびフルバスタチンは、酸性環境では、ラクトン形態に変換される。」(8頁7行~12行) 12-5)「上述の解決策に加え、酸化からの予防は、活性物質の周囲の空間の酸素含有量と、パッケージの壁および蓋を介する酸素の透過性が制御される包装によって達成することができる。」(13頁1行~3行) 12-6)「したがって、本発明の目的は、環境影響に敏感な活性物質を保護し、その結果として安定化し、このような活性物質と1種類以上の医薬賦形剤とを含む医薬剤形を安定化することである。さらに、本発明の目的は、酸化および環境湿度に敏感な活性物質を保護し、その結果として安定化し、このような活性物質と1種類以上の医薬賦形剤とを含む医薬剤形を安定化することである。好ましくは、本発明の目的は、活性物質と酸素との接触を防ぎ、それによって、活性物質の分解生成物(好ましくは酸化分解生成物および医薬賦形剤の分解生成物)の発生を防ぐことによって、環境影響に対して、好ましくは、酸化に対して、スタチンである活性物質を保護し、その結果として安定化することである。 本発明の説明 本発明の第1の目的は、環境影響から、特に、酸化および/または環境湿度から、活性物質および1種類以上の医薬賦形剤および/または医薬剤形の保護を与え、その結果として、安定性を与えるコーティングである。 本発明の文脈において、本発明のコーティングという用語は、活性物質、または、マイクロカプセル、微小球、顆粒、ペレットなどの規則的な形状または不規則な形状の粒子の形態の1種類以上の医薬賦形剤を含む活性物質、または錠剤、カプセルまたは従来技術で公知の同様な形態からなる群から選択される医薬剤形のいずれかであるコアに直接的に塗布される材料の層である。このようなコーティングは、環境影響から、特に、酸化および/または環境湿度から活性物質および1種類以上の医薬賦形剤をそれぞれ保護する。さらに、本発明のコーティングは、環境pH値にかかわらず、胃腸管の全ての部分における活性物質の放出を可能にする。」(15頁7行~16頁11行) 12-7)「本発明の活性物質は、環境影響に敏感であり、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、カプトプリル、クロルプロマジン、モルヒネ、L-アスコルビン酸、ビタミンE、フェニルブタゾン、テトラサイクリンおよびオメプラゾールからなる群から選択される活性物質である。好ましくは、酸化および環境湿度に敏感な本発明の活性物質は、プラバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、イタバスタチン、シンバスタチンおよびロバスタチンからなる群から選択されるHMG-CoAレダクターゼ阻害剤である。 本発明の文脈において、コーティングは、1つ以上のフィルム形成剤を含む材料の層である。適切なフィルム形成剤は、(環境影響に敏感な)粒子に、または活性物質を含む医薬剤形のコアにコーティングの形態で塗布され、環境影響からの、好ましくは酸化および/または環境湿度に対する活性物質の保護を与える任意のフィルム形成剤である。最も好ましくは、このようなフィルム形成剤は、活性物質を酸化から保護する任意のフィルム形成剤である。上述のフィルム形成剤は、ポリビニルアルコール(PVA)およびセルロースの誘導体からなる群から選択される。セルロースの誘導体の中で、フィルム形成剤は、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)またはヒドロキシエチルセルロース(HEC)であり、最も好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)である。」(16頁12行~最終行) 12-8)「本発明の医薬剤形のフィラーは、結晶セルロース(MCC)、結晶セルロースの改変形態、ラクトース、糖類、異なる種類のデンプン、デンプンの改変形態、マンニトール、ソルビトールおよび他のポリオール、デキストリン、デキストランおよびマルトデキストリン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムおよび/またはリン酸水素塩、硫酸塩およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい。フィラーは、医薬剤形の総重量に対して1~99%の濃度で添加される。 本発明の医薬剤形のバインダーは、ラクトース、様々な種類のデンプン、デンプンの改変された形態、デキストリン、デキストランおよびマルトデキストリン、結晶セルロース(MCC)、糖類、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチン、アカシア、トラガカント、ポリビニルピロリドン、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい。バインダーは、医薬剤形の総質量に対して0.5~20%の濃度で添加される。 本発明の医薬剤形の崩壊剤は、架橋したカルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋したポリビニルピロリドン、架橋したカルボキシメチルデンプン、様々な種類のデンプンおよび結晶セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ポラクリリンカリウム、およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい。崩壊剤は、医薬剤形の総質量に対して2~20%の濃度で添加される。 本発明の医薬剤形の滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、カルシウム及び亜鉛、ベヘン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、マグネシウム三ケイ酸、ステアリン酸、パルミチン酸、カルナバロウ、二酸化ケイ素およびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい。滑沢剤または滑剤は、医薬剤形の総質量に対して0.1~10%の濃度で添加される。 本発明の医薬剤形の緩衝化要素は、弱酸と強塩基の塩または強酸と弱塩基の塩、または所定範囲のpHを維持する他の類似物質である。緩衝化要素は、 a)クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ソルビン酸、コハク酸、安息香酸、リン酸、炭酸、硫酸、硝酸、ホウ酸およびケイ酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩; b)強酸または弱酸と組み合わせたアミン(例えば、トロメタミン(TRIS)、EDTA); c)イオン交換体;および d)これらの任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい。 緩衝化要素は、医薬剤形の総質量に対して0~50%の濃度で添加される。 本発明の医薬剤形のアルカリ化要素は、アルカリ作用を有する基を含む有機化合物または無機化合物からなる群から選択され、以下からなる群から選択されてもよい: a)アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の酸化物および水酸化物、周期律表の4、5および/または6族の酸化物、例えば、MgO、MgOH、NaOH、Ca(OH)2; b)アミン、例えば、トロメタミン(TRIS)、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチル-グルカミン、グルコサミン、エチレンジアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン; c)アルカリアミノ酸、例えば、アルギニン、ヒスチジンおよびリシン。 アルカリ化要素は、医薬剤形の総質量に対して0~50%の濃度で添加される。 本発明の医薬剤形の界面活性剤は、イオン性界面活性剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、非イオン性界面活性剤、例えば、様々な種類のポロキサマー(ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのコポリマー)、天然または合成のレシチン、ソルビタンと脂肪酸のエステル(例えば、Span(登録商標)(Atlas Chemie))、ポリオキシエチレンソルビタンと脂肪酸のエステル(例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、例えば、それぞれ、Polysorbate80およびTween(登録商標)(Atlas Chemie))、ポリオキシエチル化水素化ヒマシ油(例えば、Cremophor(登録商標)(BASF))、ポリオキシエチレンステアレート(例えば、Myrj(登録商標)(Atlas Chemie))またはカチオン性界面活性剤、例えば、セチルピリジンクロリド、または上述の界面活性剤の任意の組み合わせからなる群から選択されてもよい。界面活性剤は、医薬剤形の総質量に対して0~15%の濃度で添加される。 固形医薬剤形のための他の要素は、従来技術から知られており、従来からあるものであり、固形医薬剤形の分野において使用されている。これらの他の要素は、着色剤、香味剤および吸着材料からなる群から選択される。 本発明の医薬剤形は、好ましくは、固形医薬剤形である。 本発明の医薬剤形は、環境湿度に感受性の活性物質を含み、医薬品剤形全体の5%未満、好ましくは4%未満、最も好ましくは3%未満の含水量を有する。本発明の医薬剤形は、低湿度で、活性物質HMG-CoAレダクターゼ阻害剤がヒドロキシル酸形態からラクトン形態へと変換するのを防ぎ、すなわち、乾燥時に5%の減量(LODが5%未満)であり、好ましくは、LODが4%未満、最も好ましくは3%未満である。」(23頁22行~26頁13行) 12-9)「本発明のマイクロカプセル、微小球、顆粒、ペレットなどの規則的な形状または不規則な形状の粒子、および錠剤、カプセルなどの医薬剤形は、任意の従来技術で知られている工程を用いて調製することができ、例えば、 -1つ以上のコーティングされた活性物質および/または1つ以上のコーティングされていない活性物質、フィラー、バインダー、緩衝剤、アルカリ化剤、崩壊剤と、必要な場合には、界面活性剤、固形医薬剤形のための他の従来成分の混合物を、適切な混合機で均一にし、・・・混合物を均質化する。得られた混合物を圧縮して錠剤にするか、またはカプセルに充填する。 -1つ以上のコーティングされた治療活性物質および/または1つ以上のコーティングされていない治療活性物質、フィラー、バインダー、緩衝剤、アルカリ化剤、崩壊剤と、必要な場合には、界面活性剤、固形医薬製剤のための他の従来成分の混合物を、適切な混合機で均一にし、・・・混合物を均質化する。得られた混合物を圧縮して錠剤にするか、またはカプセルに充填する。 ・・・ -1つ以上のコーティングされた治療活性物質および/または1つ以上のコーティングされていない治療活性物質、フィラー、バインダー、緩衝剤、アルカリ化剤、崩壊剤と、必要な場合には、界面活性剤、固形医薬製剤のための他の従来成分の混合物を、適切な混合機で均一にし、・・・得られた混合物を均一にし、圧縮して錠剤にするか、またはカプセルに充填する。」(26頁17行~28頁2行) 12-10)「本発明のさらなる目的は、 a)本発明の1つ以上のコーティングされた粒子および/または環境影響に 、好ましくは、酸化および環境湿度に、最も好ましくは酸化に敏感な本 発明の1種類以上の活性物質を含有する1つ以上のコーティングされて いない粒子の混合物と、 b)1種類以上の医薬賦形剤と、 c)1種類以上の活性物質および1種類以上の医薬賦形剤および医薬剤形を 環境影響から、好ましくは酸化および/または環境湿度から、最も好ま しくは酸化から保護する、本発明のコーティング、 または 本発明のコーティングされた粒子が、コーティングされた医薬剤形に埋 め込まれている場合には、従来技術で知られている任意の他のコーティ ングを含む、コーティングされた医薬剤形である。 本発明の文脈におけるコーティングされていない粒子は、本発明のコーティングまたは従来技術において知られている任意の他のコーティングを含まない粒子である。」(22頁3行~20行) 12-11)「実施例8 あるコーティングされた錠剤の組成 8.1.錠剤コア 表20.コアの組成 [図:0001396572000001.jpg] [図:0001396572000002.jpg] 錠剤コアの調製 ラウリル硫酸ナトリウムの溶液を、アトルバスタチンCaの上の温かい空気流に分散させた。得られた顆粒を乾燥させ、ふるい分けした。ProSolv SMCC 90、アルファデンプン化されたコーンスターチ、架橋カルボキシメチルセルロースを均一に混合した。ステアリン酸マグネシウムおよびタルクを添加し、均一に混合し、圧縮して質量200mgの錠剤にした。 8.2.錠剤のコーティング 表21.コーティングの組成 [図:0001396572000003.jpg] コーティング分散物の調製および錠剤コアのコーティング 粘度が25~50mPasのカルボキシメチルセルロースナトリウム(Blanose CMC 7LF PH、Aqualon)(109.00g)と、グリセロール(11.00g)を、混合しつつ、水(2513.60g)に溶解した。得られた分散物を、コア質量に対して8重量%のコーティングが得られるまで、コアに噴霧した。コーティングプロセスの間、錠剤の質量を制御し、これによりコーティングの質量を決定した。 8.3 錠剤のpH値の決定 電位差測定により測定した実施例8の錠剤のpH値は6.7であった。同じ手順で、アトルバスタチンCaとProSolv SMCC 90との混合物(錠剤中のそれらの重量比に等しい比の混合物)のpH値を測定したところ、7.93であった。 活性物質とフィラーProSolv SMCC 90との錠剤と混合物のpH値を、40mgのアトルバスタチンCaのアッセイを含む1個の錠剤の20ml水性分散物中と、上記錠剤中に存在する量の活性物質とフィラーProSolv SMCC 90との混合物の分散物中で決定した。pH値を、組み合わせたマイクロpH電極Methrom 6.0204.100 pH 14/070℃を用いた分析装置720 KFS Titrino Methromで決定した。 8.4.異なる雰囲気における実施例8の医薬剤形中の活性物質の安定性の分析 分解生成物(ラクトンおよび酸化分解生成物)の発生に対する水/湿度および医薬賦形剤の影響を、異なる乾燥剤(乾燥剤なし、シリカゲル、モレキュラーシーブ)を用いたパッケージ(HDPEプラスチック瓶)の中のコーティングされた錠剤を試験することによって評価した。コーティングされた錠剤を、40/75(40℃±2℃、75%RH±5%)の条件下で1ヶ月間保存した。アトルバスタチンの分解生成物(ラクトンおよび酸化分解生成物)のアッセイを液体クロマトグラフィーによって測定した。参照サンプルとして、冷蔵庫(2~8℃)に保存した錠剤を分析した。錠剤中の含水量を、乾燥減量(LOD)を測定することにより、重量測定法により測定した。 表22.40/75(40℃±2℃、75%RH±5%)の条件下で1ヶ月間保存した本発明のコーティングされた錠剤中のアトルバスタチンの分解生成物(ラクトン)のアッセイにおける増加 [図:0001396572000004.jpg] 加速安定性条件下で1ヶ月試験した後、乾燥剤を加えた錠剤では水分率が低いことに起因して、錠剤中のラクトンは、乾燥剤を加えない錠剤(レベルは0.22%)と比較して、かなり少ない割合で生成した(レベル0.05%)。決定された湿度レベル(すなわち、乾燥減量として概算される3.50%未満の水分)の下で、錠剤中で生成したラクトンの割合の差は、有意ではなかった。 表23.40/75(40℃±2℃、75%RH±5%)の条件下で1ヶ月間保存した本発明のコーティングされた錠剤中のアトルバスタチンの分解生成物(酸化分解生成物)のアッセイにおける増加 [図:0001396572000005.jpg] 加速安定性条件下で1ヶ月試験した後、本発明のコーティングされた錠剤中のアトルバスタチンの分解生成物(酸化分解生成物)の増加は、コーティングされていない錠剤よりも有意に小さかった。」(41頁6行~44頁2行) 12-12)「特許請求の範囲 1.ポリビニルアルコールおよびセルロース誘導体またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるフィルム形成物質を含む、環境影響からの活性物質および1種類以上の医薬賦形剤および/または医薬剤形の保護および安定性を提供するコーティング。 ・・・ 19.粒子が請求項1~18に記載のコーティングでコーティングされている、環境影響に敏感な活性物質を含む、コーティングされた粒子。 ・・・ 25.医薬剤形であって、 (a)請求項19~24に記載の1つ以上のコーティングされた粒子および/または環境影響に敏感な1種類以上の活性物質を含有する1つ以上のコーティングされていない粒子の混合物と、 (b)1種類以上の医薬賦形剤と、 (c)請求項1~18に記載のコーティング、又は請求項19~24に記載のコーティングされた粒子が医薬剤形に埋め込まれている場合には従来技術で知られている他のコーティングを含む、医薬剤形。 ・・・ 27.前記活性物質が、プラバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、イタバスタチン、シンバスタチンおよびロバスタチンからなる群から選択されるHMG-CoAレダクターゼ阻害剤、カプトプリル、クロルプロマジン、モルヒネ、L-アスコルビン酸、ビタミンE、フェニルブタゾン、テトラサイクリンおよびオメプラゾールからなる群から選択される、請求項25および26に記載の医薬剤形。 ・・・ 29.以下の群から選択される1種類以上の医薬賦形剤を含む、請求項25~28に記載の医薬剤形。 (a)1種類以上のフィラー;(b)1種類以上のバインダー、(c)1種類以上の崩壊剤、(d)1種類以上の滑沢剤または滑剤、(e)1種類以上の緩衝化要素、(f)1種類以上のアルカリ化要素、(g)1種類以上の界面活性剤および(h)着色剤、香味剤および吸着物質からなる群から選択される従来技術で知られている固形剤形のための他の成分 ・・・ 32.含水量が、前記医薬剤形全体の3重量%未満である、請求項25~31に記載の医薬剤形。」(54頁1行~58頁18行) イ 甲1(国際公開第2004/071402号)には、以下の記載がある(訳文で示す。)。 1-1)「技術分野 本発明は、製薬業界の分野に関し、特に、環境への影響に敏感な活性物質を含む安定な医薬剤形に関する。好ましくは、活性物質は、環境pH、酸化および/または環境湿度に敏感であり、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤の群から選択される。最も好ましくは、活性物質は、アトルバスタチンである。 本発明の安定な医薬剤形は、環境pHに敏感な1つ以上の活性物質と、環境pHに対する1つ以上の活性物質の安定性を与える1つ以上の医薬賦形剤とを含み、上記医薬剤形は、水分含量が医薬剤形全体の重量の3.5重量%未満、好ましくは3重量%未満であり、アルカリ化物質または緩衝剤、またはこれらの組み合わせを含まない。上記医薬剤形は、様々な種類の結晶セルロースおよび結晶セルロースの改変された形態からなる群から選択される1つ以上の賦形剤を含む。」(1頁3行~17行) 1-2)「HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン類)は、特に、環境pH、湿度、光、温度、二酸化炭素および酸素にも敏感な活性物質である。」(5頁9行~10行) 1-3)「スタチンの中でも、例えば、プラバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、メバスタチンまたはコンパクチン、フルバスタチンまたはフルインドスタチン、セル(セリ)バスタチンまたはリバスタチン、ロスバスタチンまたはビスタスタチン、およびイタバスタチンまたはピタバスタチンまたはニスバスタチンが知られている。」(5頁下から5行~3行) 1-4)「本発明の目的は、さらに、低い水分含量の条件下で、すなわち、乾燥減量が3.5%(LODが3.5%未満)、好ましくはLODが3%未満で、アルカリ化物質またはアルカリ化物質または緩衝剤を医薬剤形に添加することなく、驚くべきことに活性物質であるHMG-CoAレダクターゼ阻害剤のヒドロキシル酸形態からラクトン形態への変換を防ぐ医薬剤形である。本発明の安定な医薬剤形は、環境pHに敏感な1つ以上の活性物質と、環境pHに対する1つ以上の活性物質の安定性を与える1つ以上の医薬賦形剤とを含み、上記医薬剤形は、水分含量が医薬剤形全体の重量の3.5重量%未満、好ましくは3重量%未満であり、アルカリ化物質または緩衝剤、またはこれらの組み合わせを含まない。 本発明の安定な医薬剤形の医薬賦形剤は、様々な種類の結晶セルロースおよび結晶セルロースの改変された形態からなる群から選択される。好ましくは、結晶セルロースとコロイド状SiO2の物理的な混合物の群から選択され、最も好ましくは、異なる種類の結晶セルロース、例えば、ProSolv(商標)SMCC(登録商標)90、ProSolv(商標)HD 90およびAvicel(登録商標)PH 200から選択される。」(18頁1行~17行) 1-5)「本発明の医薬剤形は、好ましくは、固形医薬剤形であり、粒子形態、規則的な形状または不規則な形状であってもよく、例えば、粉末、懸濁物用の粉末、顆粒、錠剤およびカプセルである医薬剤形の群から選択される。 本発明の医薬剤形は、1つ以上のコーティングされた活性物質および/または1つ以上のコーティングされていない活性物質と、選択されたフィラーに加え、さらに、以下からなる群から選択される1つ以上の医薬賦形剤を含む。 a)1つ以上のバインダー; b)1つ以上の崩壊剤; c)1つ以上の滑剤; d)1つ以上の界面活性剤; e)および従来技術で知られており、着色剤、香味剤および吸着材料からなる群から選択される固形医薬剤形のための他の要素。 本発明の医薬剤形のバインダーは、様々な種類のデンプン、デンプンの改変された形態、結晶セルロース(MCC)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。 本発明の医薬剤形の崩壊剤は、架橋したカルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋したカルボキシメチルデンプン、様々な種類のデンプンおよび結晶セルロースおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。」(20頁19行~21頁12行) 1-6)「実施例 実施例1 フィルムコーティングされた錠剤の組成 1.1.錠剤コア 表3:コアの組成 [図:0001396572000006.jpg] 錠剤コアの調製 ラウリル硫酸ナトリウムの溶液を、温風の流れのなかアトルバスタチンCaに噴霧した。得られた顆粒を乾燥させ、ふるい分けした。ProSolv SMCC 90、アルファデンプン化したコーンスターチ、架橋したカルボキシメチルセルロースを加え、均一に混合した。ステアリン酸マグネシウムおよびタルクを添加し、均一に混合し、圧縮して重量200mgの錠剤にした。」(26頁1行~表3の下6行) 1-7)「1.2.錠剤のコーティング 表4:コーティングの組成 [図:0001396572000007.jpg] コーティング分散物の調製および錠剤コアのコーティング 粘度が25~50mPasのカルボキシメチルセルロースナトリウム(Blanose CMC 7LF PH、Aqualon)(109.00g)と、グリセロール(11.00g)を、混合しつつ、水(2513.60g)に溶解した。得られた分散物を、コア重量に対して8重量%のコーティングになるまで、コアに噴霧した。このコーティングプロセスの間、錠剤の重量を制御し、コーティング膜を概算した。」(26頁表4の上1行~27頁2行) 1-8)「1.4.異なる雰囲気における実施例1の医薬剤形中の活性物質の安定性の分析 分解生成物(ラクトンおよび酸化分解生成物)の発生に対する水/湿度および医薬賦形剤の影響を、異なる乾燥剤(乾燥剤なし、シリカゲル、モレキュラーシーブ)を用いたパッケージ(HDPEプラスチック瓶)の中のフィルムコーティングされた錠剤を試験することによって評価した。フィルムコーティングされた錠剤を、40/75(40℃±2℃、75%RH±5%)の条件下で1ヶ月間保存した。錠剤中のアトルバスタチンの分解生成物(ラクトンおよび酸化分解生成物)のアッセイを液体クロマトグラフィーによって測定した。参照サンプルとして、冷蔵庫(2~8℃)に保存した錠剤を分析した。錠剤中の水分含量を、乾燥減量(LOD)を測定することにより、重量測定法により測定した。」(27頁14行~最終行) 1-9)「表5:40/75(40℃±2℃、75%RH±5%)の条件下で1ヶ月間保存した本発明の膜コーティングされた錠剤中のアトルバスタチンの分解生成物(ラクトン)のアッセイにおける増加 [図:0001396572000008.jpg] 」(28頁「Table 5」) 1-10)「表6:40/75(40℃±2℃、75%RH±5%)の条件下で1ヶ月間保存した本発明の膜コーティングされた錠剤中のアトルバスタチンの分解生成物(酸化分解生成物)のアッセイにおける増加 [図:0001396572000009.jpg] 」(28頁「Table 6」) 1-11)「2.安定な医薬剤形であって、環境pHに敏感な1つ以上の活性物質と、環境pHに対する1つ以上の活性物質の安定性を与える1つ以上の医薬賦形剤とを含み、医薬賦形剤は異なる種類の結晶セルロースおよび結晶セルロースの改変された形態からなる群から選択され、前記医薬剤形は、前記水分含量が前記医薬剤形全体の重量の3.5重量%未満であり、アルカリ化物質または緩衝剤、またはこれらの組み合わせのいずれも含まない、安定な医薬剤形。」(31頁8行~15行) ウ 甲2(高久史麿ら監修、治療薬マニュアル 2012、株式会社医学書院、2012年1月15日第1刷、623、625頁)には、以下の記載がある。 2-1)「 [図:0001396572000010.jpg] 」(623頁右欄) 2-2)「 [図:0001396572000011.jpg] 」(625頁左欄) エ 甲3(特開2012-144564号公報)には、以下の記載がある。 3-1)「【0002】 現在、高脂血症治療剤や高コレステロール血症治療剤として、HMG-CoA還元酵素阻害活性を有するスタチン類を有効成分とする医薬品が多数開発・上市されている。こうしたスタチン類としては、具体的には例えば、プラバスタチンナトリウム、フルバスタチンナトリウム、アトルバスタチンカルシウム水和物、ピタバスタチンカルシウム、ロスバスタチンカルシウムが挙げられ、これらの化合物はいずれもジヒドロキシカルボン酸(3,5-ジヒドロキシヘプタン酸又は3,5-ジヒドロキシ-6-ヘプテン酸)骨格を共通骨格として有している。」 3-2)「【0003】 上記スタチン類の共通骨格であるジヒドロキシカルボン酸骨格は分子内で環化し、HMG-CoA還元酵素阻害活性の低いラクトン体を生成することが知られている。医薬品製剤中でのラクトン体の生成は、医薬品の有効性の低下や医薬品間での有効性の不均一性の原因ともなり得る。そのため、従来スタチン類の医薬品製剤中での安定性を向上させる試みが種々なされているが、その多くは低pH環境下におけるジヒドロキシカルボン酸骨格の不安定性を考慮して炭酸カルシウムなどの塩基性物質を配合してスタチン類のpH環境を塩基性にする、というものである。具体的には例えば、特許文献1には、フルバスタチンに代表される下記式(a)のHMG-CoAリダクターゼ抑制活性を有する化合物が中性~酸性pHにおいてラクトン体等の分解生成物を生成する旨、及び炭酸カルシウム等のアルカリ性媒体を組み合わせることにより安定化し得る旨記載されている。」 3-3)「【0048】 フィルム形成剤としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロースなどのアルキルセルロース;アルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸又はその塩;カラギーナン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロース;キサンタンガム;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)などのヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどのヒドロキシアルキルセルロースフタレート;プルラン;ポリ酢酸ビニル;ポリ酢酸ビニルフタレート;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上の組み合わせが好ましい。」 オ 甲4(特開2001-206877号公報)には、以下の記載がある。 4-1)「【0002】 【従来の技術】該エージェントは、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoAレダクターゼ(HMG CoAレダクターゼ)の阻害剤として、欧州特許出願第0521471号およびBioorganic and Medicinal Chemistry(1997)、5(2)、第437~444頁に記載されており、かつ高コレステロール血症、高脂血蛋白血症およびアテローム性動脈硬化症の治療のために有用である。 【0003】該エージェントと結びついている問題は、該エージェントが一定の条件下で分解することである。このことにより生成物の調剤および良好な貯蔵期限を有する医薬組成物を得ることが困難になる。形成される主要な分解生成物は、相応する(3R,5S)ラクトン(以下では「ラクトン(the lactone)」と呼ぶ)およびその中で炭素-炭素の二重結合に隣接しているヒドロキシ基が酸化されてケトン官能基になっている酸化生成物(以下では「B2」と呼ぶ)である。」 カ 甲5(特開2011-144120号公報)には、以下の記載がある。 5-1)「【0001】 本発明はHMG-CoAレダクターゼ阻害薬を含有する安定化された経口固形製剤に関する。HMG-CoAレダクターゼ阻害薬は高コレステロール血症の治療に対して有効な薬物であり、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン及びそれらの塩からなる群から選択される。ここでいうHMG-CoAレダクターゼ阻害薬はその薬学上許容される塩、水和物も含み、特定の塩を意味する場合を除き、フリー体で総称する場合もある。 【背景技術】 【0002】 HMG-CoAレダクターゼ阻害薬は一般的に熱、水分及び酸に対し不安定である。これらは共通してヒドロキシ酸を有し、酸性環境下では類縁物質であるラクトン体を生じ易いため、種々の安定化特許が出願されている。 【0003】 特許文献1はアトルバスタチンに対する安定化金属塩添加剤として、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウムのようなアルカリ土類金属塩を用いることが挙げられている。 特許文献2ではアルカリ土類金属塩がアトルバスタチンバイオアベイラビリティーに影響を及ぼすため使用量は極力少量に留めるべきであることが示されている。これらのアルカリ土類金属塩は水分の吸湿を招くため、錠剤のような経口固形剤の場合、高湿度条件下での硬度低下が懸念される。 特許文献3は開環されたヒドロキシ酸構造を有するHMG-CoAレダクターゼ阻害薬を有効成分として含み、その水性分散液もしくは水溶液のpHが9未満であることを特徴とする医薬組成物が記載され、安定化剤として塩基性アミノ酸が挙げられている。また構造中に金属を含む化合物と接触することにより安定性が損なわれるという知見に基づき、一切の金属化合物を排除した製剤例が開示されている。しかし、各HMG-CoAレダクターゼ阻害薬の構造を比較してみても、例えば複素環を有するものとそうでないものがあり、この違いは脂溶性に影響を及ぼし当然、性状にも違いを生じるものと考えられる。然るに、本件実施例ではプラバスタチンナトリウムしか検討されておらず、特許文献1の報告を鑑みると、当該発明がHMG-CoAレダクターゼ阻害薬全般に当てはまるのかは不明である。 特許文献4ではプラバスタチンを含有する錠剤にヒドロキシプロピルメチルセルロースを溶解したコーティング液で下掛けし、更にヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートマレエートまたはヒドロキシプロピルメチルセルローストリメリテートで外層コーティングした製剤がある。 特許文献5では同様にヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートで外層コーティングした製剤が開示されている。これらの外層コーティング剤はカルボキシル基を有するため、酸に不安定なHMG-CoAレダクターゼ阻害薬に直接コーティングできないので下掛けを要し、その工程は煩雑である。 特許文献6ではプラバスタチンナトリウムとD-マンニトールの混合物にアミノアルキルメタクリレートコポリマーまたはエチルセルロースをエタノールに溶かした液を噴霧コーティングし、顆粒を調整することが開示されている。 特許文献7は非晶質アトルバスタチンを含む固体分散物を得るために、溶融加工可能なポリマーを軟化又は溶融させてアトルバスタチンをポリマーの担体中に分散させる。そのため、混合温度は130~180℃と高く、製造条件の制御が難しいと考えられる。 特許文献8は打錠障害を解決するために薬物の粉末又は当該薬物と添加物との混合粉末を造粒し、その造粒物の表面を高分子膜剤で被覆している。実施例11において、アトルバスタチンカルシウム及び軽質無水ケイ酸の造粒物にポリビニルアルコールの水溶液を被覆している。当該発明ではアトルバスタチンカルシウムに対してポリビニルアルコールを組合せた実施例及びその製剤のスティッキング発生レベルスコアしか示されておらず、当該方法で安定な製剤が得られるかは明らかでない。 本発明者らはHMG-CoAレダクターゼ阻害薬、例えばアトルバスタチンが高温環境下や水分を多く含む賦形剤と接触するとラクトン体が増加するなど好ましくない事象が発生することを見出した。本発明者らは特許文献6記載の技術をアトルバスタチンに適用してみたが、医薬品に要求される安定性を満たすものではなかった。 【0004】 【特許文献1】特表平08-505640号公報 【特許文献2】特表2006-527260号公報 【特許文献3】特開2003-055217号公報 【特許文献4】特開2000-159692号公報 【特許文献5】特開2000-264846号公報 【特許文献6】特開2004-339072号公報 【特許文献7】特表2008-521878号公報 【特許文献8】特開2009-089982号公報」 キ 甲6(特表2007-512287号公報)には、以下の記載がある。 6-1)「【0001】 本発明は、有効成分としてHMG-CoAレダクターゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む持続放出性医薬組成物に関し・・・」 6-2)「【0073】 錠剤化された本発明の組成物は、望ましくは水分および光による脱色から保護するために、そして薬剤の苦味をマスクするために、コーティングされる。腸溶性コーティングは乳白剤および着色剤を含み得、あるいは常套の不透明フィルムコーティングは、錠剤核に、所望により腸溶性物質でコートされた後で、適用され得る。 ・・・ 【0075】 本発明の組成物に適用される非機能的フィルムコートには、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、親水性ポリマー、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース等が含まれ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、Opadry、Colorcon Corp.)が好ましい。 有機溶媒ビークルに適用、使用され得る疎水性フィルム形成剤には、例えば、エチルセルロース、セルロースアセテート、ポリビニルアルコール-マレイン酸無水物コポリマー等が含まれる。」 6-3)「【0078】 驚くべきことに、核成分と腸溶性コートの間に位置する非機能的副層が、腸溶性コートとの直接接触により引き起こされる化学的分解から有効成分を保護することが見出された。 【0079】 この特徴は、下記表3において例示される。 【0080】 バッチJO-4286.05Aは、腸溶性コートでのみコーティングした持続放出ピタバスタチン製剤である。 【0081】 バッチJO-4286.06Aは、サブコート(非機能的コート)および腸溶性コートでコーティングした持続放出ピタバスタチン製剤である。 【0082】 安定性試験は、分解産物ラクトンが保護的サブコートなしではより速く形成されることを示す。 [図:0001396572000012.jpg] 」 6-4)「【0018】 本発明のとりわけ好ましい態様においてHMG-CoAレダクターゼ阻害剤(とりわけピタバスタチンカルシウム)またはその薬学的に許容される塩の量は、単位投与形態あたり約1~32mg、好ましくは1~17mgである。」 6-5)「【0128】 実施例1 核(核重量に対する割合):4.18mg(5.225重量%)の薬剤物質、例えばピタバスタチンCa塩、42.82mg(53.525重量%)の微結晶セルロース、4mg(5重量%)のHPMC(3cps)、25mg(31.25重量%)のHPMC(100cps)、3.2mg(4重量%)のノイシリン、0.4mg(0.5重量%)のコロイド状2酸化ケイ素および0.4mg(0.5重量%)のステアリン酸マグネシウムを含む外相。 HPMCサブコート(非機能的コート)(サブコート重量に対する割合):2.856mg(71.4重量%)のヒドロキシプロピルメチルセルロース3cps、0.286mg(7.15重量%)のポリエチレングリコール、0.286mg(7.15重量%)のタルクおよび0.572mg(14.3重量%)のチタンジオキシド。 腸溶性コート(腸溶性コート重量に対する割合):5mg(83.34重量%)のEudragit L30D、0.5mg(8.33重量%)のタルクおよび0.5mg(8.33重量%)のポリエチレングリコール」 6-6)「【0129】 実施例2 核(核重量に対する割合):8.36mg(10.45重量%)の薬剤物質、例えばピタバスタチンCa塩、38.64mg(48.3重量%)の微結晶セルロース、4mg(5重量%)のHPMC(3cps)、25mg(31.25重量%)のHPMC(100cps)、3.2mg(4重量%)のノイシリン、0.4mg(0.5重量%)のコロイド状2酸化ケイ素および0.4mg(0.5重量%)のステアリン酸マグネシウムを含む外相。 HPMCサブコート(非機能的コート)(サブコート重量に対する割合):2.856mg(71.4重量%)のヒドロキシプロピルメチルセルロース3cps、0.286mg(7.15重量%)のポリエチレングリコール、0.286mg(7.15重量%)のタルクおよび0.572mg(14.3重量%)のチタンジオキシド。 腸溶性コート(腸溶性コート重量に対する割合):5mg(83.34重量%)のEudragit L30D、0.5mg(8.33重量%)のタルクおよび0.5mg(8.33重量%)のポリエチレングリコール。」 6-7)「【0131】 実施例4 核(核重量に対する割合):3.135mg(3.92重量%)の薬剤物質、例えばピタバスタチンCa塩、43.865mg(54.83重量%)の微結晶セルロース、4mg(5重量%)のHPMC(3cps)、12.50mg(15.625重量%)のHPMC(100cps)、12.50mg(15.625%)のHPMC(100000cps)、3.2mg(4重量%)のノイシリン、0.4mg(0.5重量%)のコロイド状2酸化ケイ素および0.4mg(0.5重量%)のステアリン酸マグネシウムを含む外相。 HPMCサブコート(非機能的コート)(サブコート重量に対する割合):2.856mg(71.4重量%)のヒドロキシプロピルメチルセルロース3cps、0.286mg(7.15重量%)のポリエチレングリコール、0.286mg(7.15重量%)のタルクおよび0.572mg(14.3重量%)のチタンジオキシド。 腸溶性コート(腸溶性コート重量に対する割合):5mg(83.34重量%)のEudragit L30D、0.5mg(8.33重量%)のタルクおよび0.5mg(8.33重量%)のポリエチレングリコール。」 6-8)「【0132】 実施例5 核(核重量に対する割合):6.27mg(7.84重量%)の薬剤物質、例えばピタバスタチンCa塩、40.73mg(50.91重量%)の微結晶セルロース、4mg(5重量%)のHPMC(3cps)、16.64mg(20.8重量%)のHPMC(100cps)、8.36mg(10.45%)のHPMC(100000cps)、3.2mg(4重量%)のノイシリン、0.4mg(0.5重量%)のコロイド状2酸化ケイ素および0.4mg(0.5重量%)のステアリン酸マグネシウムを含む外相。 HPMCサブコート(非機能的コート)(サブコート重量に対する割合):2.856mg(71.4重量%)のヒドロキシプロピルメチルセルロース3cps、0.286mg(7.15重量%)のポリエチレングリコール、0.286mg(7.15重量%)のタルクおよび0.572mg(14.3重量%)のチタンジオキシド。 腸溶性コート(腸溶性コート重量に対する割合):5mg(83.34重量%)のEudragit L30D、0.5mg(8.33重量%)のタルクおよび0.5mg(8.33重量%)のポリエチレングリコール。」 6-9)「【0133】 実施例6 核(核重量に対する割合):12.54mg(15.675重量%)の薬剤物質、例えばピタバスタチンCa塩、34.46mg(43.075重量%)の微結晶セルロース、4mg(5重量%)のHPMC(3cps)、18.75mg(23.4375重量%)のHPMC(100cps)、6.25mg(7.8125重量%)のHPMC(100000cps)、3.2mg(4重量%)のノイシリン、0.4mg(0.5重量%)のコロイド状2酸化ケイ素および0.4mg(0.5重量%)のステアリン酸マグネシウムを含む外相。 HPMCサブコート(非機能的コート)(サブコート重量に対する割合):2.856mg(71.4重量%)のヒドロキシプロピルメチルセルロース3cps、0.286mg(7.15重量%)のポリエチレングリコール、0.286mg(7.15重量%)のタルクおよび0.572mg(14.3重量%)のチタンジオキシド。 腸溶性コート(腸溶性コート重量に対する割合):5mg(83.34重量%)のEudragit L30D、0.5mg(8.33重量%)のタルクおよび0.5mg(8.33重量%)のポリエチレングリコール。」 ク 甲7(特開平5-246844号公報)には、以下の記載がある。 7-1)「【0005】例えば今回、種々のpHの水溶液中におけるフルバスタチンの分解動力学は以下の通りであることが発見された: 37℃での残存フルバスタチン% pH 1時間後 24時間後 7.8 98.3 98.0 6.0 99.6 97.1 4.0 86.7 25.2 1.0 10.9 0 フルバスタチン及び関連HMG-CoAリダクターゼ化合物の上述した不安定性は、ヘプテン鎖上のβ,δ-ヒドロキシ基が非常に動きやすいこと及び二重結合が存在することによると思われる。即ち中性~酸性pHにおいてこの化合物は脱離又は異性化又は酸化反応を容易に受けて共役不飽和芳香族化合物、並びにトレオ異性体、対応するラクトン、及び他の分解生成物を生成する。」 7-2)「【0048】そのような方法における1つの具体例では、薬剤及びアルカリ性媒体を水でそしやくし、次いで得られた粒子を乾燥する。次いで該粒子の「外部相」を形成させるべく別置した充填剤及び残りの賦形剤を乾燥した粒子と混合して、カプセル化、錠剤化などに適当な組成物とする。 ・・・ 【0050】組成物の貯蔵寿命を延ばすためには、そしやく又は湿式粒状化又は他の水性に基づく方法によつて製造した粒状物を実質的に完全に乾燥する、即ち乾燥時の重量損失(L.O.D.)が3%より大きくない、好ましくは2%より大きくなくなるまで乾燥することが重要である。」 7-3)「【0071】 【実施例】 実施例1 次の処方物を含んでなる20mg且つ3号の経口用フルバスタチンカプセルを調製した: 【0072】 【表1】 表 1 成分 量(mg) フルバスタチン 21.06 炭酸カルシウム、USPa 62.84 炭酸水素ナトリウム、USP 2.00 微結晶セルロース、NFb 23.35 予じめゼラチン化した殿粉、NFc 20.95 精製水、USP q.s.* 別置物 微結晶セルロース 33.88 予じめゼラチン化した殿粉 20.95 タルク、USP 9.43 ステアリン酸マグネシウム、NF 1.05 ────────────────────────── a 重質、沈殿由来 b アビセルpH102、FMC社 c 殿粉1500、カラーコン社 * 工程中に除去 (a) フルバスタチン、炭酸水素ナトリウム2mg、炭酸カルシウム62.84mg、微結晶セルロ-ス23.35mg、及び予じめゼラチン化した殿粉20.95mgを5分間混合し、この混合物を40メツシユのふるいを通過させ、そして更に3分間混合した。 【0073】(b) 混合物を約4分間混合しながらこれに水を添加し、湿つた粒状物を生成せしめた。 【0074】(c) 湿つた粒状物を、入口温度50℃の流動床乾燥器により1.59%のL.O.D.まで乾燥した。」 ケ 甲8(特表2010-533210号公報)には、以下の記載がある。 8-1)「【0002】 フルバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン及びロスバスタチンなどのHMG-CoAレダクターゼ阻害剤は、高リポタンパク血症及びアテローム性動脈硬化症の治療のための、高コレステロール症治療薬として一般に使用されている。しかしながら、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤及び構造的に相関した薬剤(このタイプの化合物は「スタチン」と一般に呼称される)は、ジヒドロキシヘプテン酸部分を含有し、かかるスタチンは、医薬組成物中に製剤化されると、非常に不安定で、分解されやすいことが知られていた。」 8-2)「【0030】 固形の医薬製剤がコーティングされた錠剤の形態である場合には、コーティングは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはメタクリレートポリマーなどの少なくとも1種のフィルム形成剤から調製してもよく、それらは、任意選択で、ポリエチレングリコール、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリエチルなどの少なくとも1種の可塑剤、並びに、顔料、充填剤等などのフィルムコーティング用のその他の従来からの医薬用補助物質を含んでもよい。」 コ 甲13(特表平11-503763号公報)には、以下の記載がある。 13-1)「背景技術 下記の一般式、 [図:0001396572000013.jpg] (式中、Rは有機基を示す。) で示される7-置換-3,5-ジヒドロキシ-6-ヘプテン酸類がHMG-CoA還元酸素阻害作用を有し、高脂血症治療剤や、アテローム性動脈硬化症治療剤として有用であることが知られている(米国特許第4,739,073号、米国特許第5,001,255号、米国特許第4,751,235号、米国特許第4,804,679号、特開平1-279866号)。 しかし、これらの7-置換-3,5-ジヒドロキシ-6-ヘプテン酸類は、低pHにおいて不安定であり、これらの製剤化のためには特別の措置を講じる必要があり、炭酸カルシウムや炭酸ナトリウムなどを用いてpH8以上のアルカリ性媒体を含んでなる製剤化(特開平5-246844号)や、酸化マグネシウム、水酸化ナトリウムなどを用いてpH9以上を付与する塩基性化剤を含有してなる製剤化(特開平2-6406号)などが提案されている。 下記の構造式、 [図:0001396572000014.jpg] で示される (E)-3,5-ジヒドロキシ-7-[4’-4”フルオロフェニル-2’-シクロプロピル-キノリン-3’-イル]-6-ヘプテン酸(以下、NK-104ともいう。)、その塩又はそのエステルは前記一般式で示されるHMG-CoA還元酵素阻害剤の一種であり、高脂血症剤、アテローム性動脈硬化症治療剤として有用であることが知られている(特開平1-279866号)。NK-104も低pHでは不安定であり、製剤化には多くの困難性があった。 従来これらのHMG-CoA還元酵素阻害剤はpH8以上、望ましくはpH9以上で製剤化することが報告されているが、NK-104、その塩又はそのエステルは意外にも高pH領域においても不安定であることが見出された。 したがって、NK-104、その塩又はそのエステルは従来の製剤化の方法では経時的安定性が低く、特に経時的に外観変化が生じるという問題があり、安定な製剤の開発が望まれていた。 発明の開示 本発明者らは、NK-104を含有する安定な医薬組成物を得るべく種々検討した結果、意外にもNK-104は比較的低いpH領域で安定であることを見出し、本発明を完成した。 また、本発明者らは、NK-104を含有する医薬組成物の水溶液もしくは分散液のpHが7以上8以下になるように塩基性物質を添加すると安定なNK-104を含有する医薬製剤が得られることを見出した。 本発明の目的は、NK-104を含有する医薬組成物を水溶液又は分散液にした場合のpHが7以上8以下であるNK-104、その塩又はエステルを含有する医薬組成物を提供するものである。」(3頁9行~5頁2行) 13-2)「NK-104を含有する医薬組成物のpHを調節する際に添加される塩基性物質としては、制酸剤やpH調節剤を用いることができ、例えばメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウム、乾燥水酸化アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、沈降炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム及び炭酸水素ナトリウムのような制酸剤:L-アルギニン、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、クエン酸二ナトリウム、コハク酸ナトリウム、塩化アンモニウム及び安息香酸ナトリウムのようなpH調節剤などを挙げることができる。これらのうちメタケイ酸アルミン酸マグネシウム、L-アルギニン、リン酸水素二カリウムの使用が好ましい。」(5頁20行~6頁2行) 13-3)「崩壊剤としては、例えば低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルボキシスターチナトリウム、カルメロースカルシウム、トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドンなどを単独又は組み合わせて使用することができるが、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースの使用が特に好ましい。」(6頁17行~21行) 13-4)「本発明の組成物は更にコーティングして、フィルムコーティング錠、糖衣錠などとしてもよい。コーティング基剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース類、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE、白糖、プルランなどを使用することができる。」(7頁13行~16行) 13-5)「実施例1 1錠当たり下記組成を有する錠剤を、以下の方法で製造した。 [図:0001396572000015.jpg] 上記組成中のNK-104カルシウム塩からメタケイ酸アルミン酸マグネシウムまでを混合し、均質な粉末混合物を調整し、精製水を適量加え撹拌造粒法にて顆粒化して打錠顆粒とした。この打錠顆粒にステアリン酸マグネシウムを混合して打錠して、NK-104を含有する錠剤を得た。 実施例2 1錠当たり下記組成を有する錠剤を実施例1と同様な方法で製造した。 [図:0001396572000016.jpg] 実施例3 1錠当たり下記組成を有する錠剤を実施例1と同様な方法で製造した。 [図:0001396572000017.jpg] 実施例4 1錠当たり下記組成を有する錠剤を実施例1と同様な方法で製造した。 [図:0001396572000018.jpg] 」(8頁12行~9頁最終行) サ 甲14(特表2004-537553号公報)には、以下の記載がある。 14-1)「【0083】 ある態様において、スタチンはメバスタチン、・・・、NK-104(ピタバスタチン、ニスバスタチン、イタバスタチンとも呼ばれる)・・・。」 14-2)「【0090】 他の態様において、スタチンは・・・NK-104(ピタバスタチン、ニスバスタチン、イタバスタチンとも呼ばれる)・・・。」 14-3)「【0129】 経口的に投与可能な単位投与製剤、例えば錠剤またはカプセル剤は例えば約0.1~約2000mg、または約0.5mg~約500mg、または約0.75~約250mg、または約1~約100mgのアルドステロン受容体アンタゴニスト、および/または約0.01~約500mg、または約 0.75mg~約100mg、または約0.1~約50mgのHMG Co-Aレダクターゼ阻害剤を含有する。」 シ 甲15(特表2005-520818号公報)には、以下の記載がある。 15-1)「【0003】 HMG-CoAレダクターゼインヒビターは、・・・。たとえば、言及され得る化合物としては、・・・ピタバスタチン(pitavastatin)(従前はイタバスタチン(itavastatin))・・・。」 ス 甲16(国際公開第03/105848号)には、以下の記載がある。 16-1)「技術分野 本発明は、HMG-CoA還元酵素阻害剤ピタバスタチン、その塩又はそのエステルを含有する放出制御医薬組成物に関する。 背景技術 ピタバスタチン、その塩又はそのエステルは、優れたHMG-CoA還元酵素阻害活性を有し、高コレステロール血症治療薬として有用であることが知られている・・・。 ・・・本発明の目的は、ピタバスタチン、その塩又はそのエステルの血中濃度を適度に長時間安定に維持し得る放出制御医薬組成物を提供することにある。」(1頁3行~最終行) 16-2)「本発明は、(A)ピタバスタチン、その塩又はそのエステルを含み、少なくとも胃内でそれらの放出を開始する組成物、及び(B)ピタバスタチン、その塩又はそのエステルを含む腸溶性組成物を含有することを特徴とする放出制御医薬組成物を提供するものである。」(2頁18行~21行) 16-3)「組成物(A)に用いられる基剤としては、例えば・・・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルボキシスターチナトリウム、カルメロースカルシウム、トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン等の崩壌剤・・・を配合できる。」(5頁12行~最終行) 16-4)「製造例3 表19の処方により、ピタパスタチン放出制御錠が得られる。すなわち、表19の核錠を調製し、次いでその外層に表19の外層に相当する成分を用いて圧縮成形し、有核錠を得る。 [図:0001396572000019.jpg] 」(31頁下から4行~32頁、表19) セ 甲18(特開2012-36163号公報)には、以下の記載がある。 18-1)「【0005】 しかし、一般にヒドロキシ酸は特に酸性環境下でラクトンを生成しやすい。上記式(1)で示されるHMG-CoAレダクターゼインヒビター及びその水和物(以下、総称して「HMG-CoAレダクターゼインヒビター」という)も、特に酸性環境下で不安定で、長期保存によりラクトンを含む不純物が生成することが知られている。かかる不純物は、HMG-CoAレダクターゼインヒビターの活性を低下させ、また副作用を引き起こし得る。」 ソ 甲19(特表2004-501121号公報)には、以下の記載がある。 19-1)「【0002】 ・・・アトロバスタチン(atorvastatin)、プラバスタチン(pravastatin)、フルバスタチン(fluvastatin)、セリバスタチン(cerivastatin)などといった最終的な医薬製剤中において塩の形態で存在するHMG-CoA還元酵素阻害剤は、ヒドロキシ酸がラクトンに分解される酸性条件下に特に弱い。」 タ 甲20(特表2005-538097号公報)には、以下の記載がある。 20-1)「【0040】 フルバスタチンおよび関連HMG-CoAレダクターゼ化合物の上記の不安定性は、ヘプテン酸鎖上のβ、δ-ヒドロキシ基の過度の不安定性および二重結合の存在によるものと信じられている。その結果、中性から酸性のpHにて、化合物は脱離または異性化または酸化反応を受け、共役不飽和芳香族化合物、ならびにスレオ異性体、対応するラクトン、および他の分解生成物を形成する。」 20-2)「【0060】 本発明の錠剤組成物は、望ましくは、水分および光変色から保護するため、および薬物の苦みをマスクするために、被覆される。腸溶性コーティングは乳白剤および着色剤を含んでいてもよいか、または慣用的オペークフィルムコーティングは、所望により腸溶性物質で被覆された後に、錠核に適用されてもよい。 【0061】 本発明の組成物に添加されるフィルムコーティング組成物中の適当なフィルム形成物の例には、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、親水性ポリマー、たとえばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが含まれ、これらのうちヒドロキシプロピルメチルセルロース(たとえば、Opadry YellowT, Colorcon Corp.)が好適である。有機溶媒ビヒクルを用いて適用され得る疎水性フィルム形成物には、たとえば、エチルセルロース、セルロースアセテート、ポリビニルアルコール-無水マレイン酸コポリマーなどが含まれる。」 20-3)「【0013】 本発明のとりわけ好適な実施態様において、HMG-CoAレダクターゼインヒビターまたは医薬上許容されるその塩の量は、とりわけフルバスタチンに関して、単位投与形態あたり約1~32mg、好ましくは1~16mgである。」 チ 甲22(特表2006-518354号公報)には、以下の記載がある。 22-1)「【0002】 本発明は、ピタバスタチンカルシウムの新規な結晶質形態およびアモルファス形態に関するものである。ピタバスタチンは、NK-104、イタバスタチン(Itavastatin)およびニスバスタチン(Nisvastatin)という名称によっても知られている。ピタバスタチンカルシウムは、化学名:(3R,5S)-7-[2-シクロプロピル-4-(4-フルオロフェニル)キノリン-3-イル]-3,5-ジヒドロキシ-6(E)-ヘプタン酸ヘミカルシウム塩によって知られている。」 22-2)「【0042】 カプセル剤の剤型は、当然、ゼラチンその他の慣用の封入材料で製造し得るカプセル内に、固体組成物を含有することになる。錠剤および散剤は、被覆し得る。錠剤および散剤は、腸溶コーティングで被覆し得る。腸溶被覆された散剤形態は、フタル酸セルロース酢酸エステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタル酸エステル、フタル酸ポリビニルアルコール、カルボキシメチルエチルセルロース、スチレンおよびマレイン酸の共重合体、メタクリル酸およびメタクリル酸メチルの共重合体、ならびに同様の材料を含むコーティングを有してもよく、所望により、それらは、適切な可塑剤および/または増量剤とともに用いることができる。被覆錠剤は、錠剤の表面にコーティングを有し得るか、または腸溶コーティングとともに粉末または顆粒を含む錠剤であり得る。 【0043】 本発明の医薬組成物の好適な単位投与量は、代表的には、新規なピタバスタチンカルシウム形態、または相互のか、もしくはピタバスタチンカルシウムのその他の形態とのその混合物0.5~100mgを含有する。より常用的には、単位投与量のピタバスタチンカルシウム形態の併せた重量は、2.5~80mg、たとえば5、10、20または40mgである。」 ツ 甲23(特開2011-201915号公報)には、以下の記載がある。 23-1)「【0002】 本発明は、ピタバスタチンカルシウムの新規な結晶質形態に関するものである。ピタバスタチンは、NK-104、イタバスタチン(Itavastatin)およびニスバスタチン(Nisvastatin)という名称によっても知られている。ピタバスタチンカルシウムは、化学名:(3R,5S)-7-[2-シクロプロピル-4-(4-フルオロフェニル)キノリン-3-イル]-3,5-ジヒドロキシ-6(E)-ヘプタン酸ヘミカルシウム塩によって知られている。」 テ 甲24(国立医薬品食品衛生研究所長、審査報告書、衛研発第2638号、平成15年4月25日)には、以下の記載がある。 24-1)「 [図:0001396572000020.jpg] 」(2頁) 24-2)「審査報告(1) 平成13年4月17日 1.品目の概要 [販売名]:ニスバスタチンカルシウム、リバロ錠1mg、同2mg ・・・ ロ.物理的化学的性質並びに規格及び試験方法などに関する資料 原薬ニスバスタチンカルシウム((+)-ビス{(3R,5S,6E)-7-[2-シクロプロピル-4-(4-フルオロフェニル)-3-キノリル]-3,5-ジヒドロキシ-6-ヘプテン酸}一カルシウム)は・・・」(4頁) ト 甲35(特開2006-199632号公報)には、以下の記載がある。 35-1)「【0002】 口腔内崩壊錠剤は、消化管内で崩壊して薬物を放出するように設計された錠剤、カプセル剤などの固形製剤の嚥下が困難な患者、高齢者および小児のために服用し易い剤形として、及び服用に際して水を必要としない剤形として開発された。そのため口腔内において短時間に嚥液により全体が崩壊する一方で、包装、出荷、輸送などの取扱い過程において割れ、磨耗に耐えられる硬度(破壊強度)を必要とし、この両者の性質が最適にバランスされていなければならない。またこれら性質は製品の出荷から服用直前まで維持されていなければならないので、防湿性のPTP包装として出荷され、直前にこれを破って服用される。」 ナ 甲36(再表2010/074223号公報)には、以下の記載がある。 36-1)「【0002】 医薬品の多くは、酸素や水蒸気に不安定であり、無包装の状態で放置するとその約4割に何らかの変化が生じ、医薬品の品質上、致命的な問題となることが知られている。そのため、市販医薬品、特に固形製剤のほとんどは、PTP(press through pack)シート等の包装材で包装され、酸素や水蒸気から守られている。近年では、水蒸気バリア性(防湿性)と酸素バリア性に優れたポリ塩化ビニリデンを積層したPTPシートが開発され、実用化されている。」 ニ 甲37(第十三改正日本薬局方解説書 通則 製剤総則 一般試験法 1996、通則A-54、A-55)には、以下の記載がある。 37-1)「35 気密容器とは,通常の取扱い,運搬又は保存状態において,液状又は固形の異物又は水分が侵入せず,内容医薬品の損失,風解,潮解又は蒸発を保護することができる容器をいう. 気密容器の規定がある場合には,密封容器を用いることができる. 注(審決注:□内に注) 気密容器は外国薬局方のtight containerに相当する.気密容器の場合には液体又は固体の異物又は水分から内容医薬品を保護するものであって,気体は通過することもやむを得ない.ガラス瓶,かん,プラスチック容器などがこれに当たる.プラスチック製の包装をほどこしたものなど,ほとんど気密容器に属する. 36 密封容器とは,通常の取扱い,運搬又は保存状態において,気体又は微生物の侵入するおそれのない容器をいう. 注(審決注:□内に注) 外国薬局方のhermetic containerに相当し,容器としては最も厳密な容器である.すなわち,アンプル,バイアル,ものによっては注射剤を封入した注射筒もこれに入る.」(A-55) ヌ 甲38(瀬崎(審決注:「瀬」の右は「刀」の下に「貝」、「崎」の右上は「立」)仁監修、第9巻 医薬品の包装と容器 II、株式会社廣川書店、平成3年10月30日初版発行、311~318頁)には、以下の記載がある。 38-1)「A.品質保護機能 必要な期間(使用期限),固形剤の品質ならびに有効性・安全性を保持するために,温・湿度,酸素,光あるいは振動・衝撃といった各種の外部要因による影響から固形剤を保護する機能が,まずなによりも必要である. (1)バリヤー性 短時間は別として,長期にわたり環境温度の影響を遮断する機能は,容器・包装にはない.しかしながら湿気,ガス(酸素その他)及び光の影響に対する防護機能は,程度の差こそあれ,大部分の容器・包装に備わっている. 1)水蒸気バリヤー性(防湿性) 固形剤は吸・脱湿に伴って表5.2に示すような品質の劣化を起こすことがあり,多くの固形剤にとっていわゆる防湿包装は必須のものとなっている.」(312頁下から2行~314頁4行。ただし、途中の図、表は除く) ネ 甲39(国際公開第2007/031801号)には、以下の記載がある(訳文で示す。)。 39-1)「スタチン類は、高リポタンパク血症およびアテローム性動脈硬化症の治療に有用であるが、8未満のpHで分解を非常に受け易い。8未満のpHで、特に酸性条件下でスタチン類は脱離または異性化または酸化反応を受けて共役不飽和芳香族化合物並びにスレオ異性体、対応するラクトン体及び他の分解生成物を形成する。スタチン類は、ヒドロキシル酸がラクトンに分解される酸性環境(低pH環境)に特に敏感である。HMG-CoAレダクターゼ阻害剤の分解性向は、組成物中に存在する他の活性成分または賦形剤との間で起こり得る相互作用によって促進される可能性がある。」(1頁20行~28行) ノ 甲49(特許第4981194号公報)には、以下の記載がある。 49-1)「【請求項1】 ピタバスタチン又はその塩、及びアルカリ土類金属塩化物を含有する医薬組成物。」 49-2)「【0001】 本発明は、スタチン類などのHMG-CoA還元酵素阻害活性を有する化合物の安定性が良好な医薬組成物に関する。」 49-3)「【0011】 本発明は、スタチン類のラクトン体生成を抑制する新たな手段を提供することを目的とする。」 49-4)「【0012】 本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、驚くべきことに、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩化物が、スタチン類をはじめとする下記一般式(1)で表されるHMG-CoA還元酵素阻害活性を有する化合物のラクトン体生成を抑制する作用を有することを見出し、本発明を完成した。 ・・・ 【0014】 【化3】 [図:0001396572000021.jpg] 【0015】 [式中、Rは有機基を示し、Xは-CH2-CH2-又は-CH=CH-を示す。]」 49-5)「【0041】 本発明において、「アルカリ土類金属塩化物」としては例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。ここで、本明細書において「アルカリ土類金属塩化物」とは、水和物を包含する概念である。 本発明においてアルカリ土類金属塩化物としては、具体的には例えば、塩化カルシウム 無水物、塩化カルシウム 一水和物、塩化カルシウム 二水和物、塩化カルシウム 四水和物、塩化カルシウム 六水和物などの塩化カルシウム;塩化マグネシウム 無水物、塩化マグネシウム 六水和物などの塩化マグネシウムなどが挙げられ、本発明においては、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。 本発明においては、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、塩化カルシウムがより好ましく、塩化カルシウム 二水和物が特に好ましい。 ・・・ 【0043】 本発明の医薬組成物における、化合物(1)又はその塩とアルカリ土類金属塩化物の含有質量比率は特に限定されず、化合物(1)又はその塩の安定性に応じて適宜検討して決定すればよいが、ラクトン体の生成抑制の観点から、化合物(1)又はその塩1質量部に対して、アルカリ土類金属塩化物を無水物換算で0.005~60質量部、更に0.01~40質量部、特に0.02~20質量部含有することが好ましい。特に、化合物(1)又はその塩がピタバスタチン又はその塩である場合においては、ラクトン体の生成抑制、及びラクトン体以外の分解物の生成抑制の観点から、ピタバスタチンカルシウム換算したピタバスタチン又はその塩1質量部に対して、アルカリ土類金属塩化物を無水物換算で0.005~30質量部、更に0.01~20質量部、特に0.02~10質量部含有することが好ましい。」 49-6)「【0075】 [試験例1]ラクトン体の生成抑制試験 実施例1、2及び比較例1~3のフィルム剤について、調製直後及び60℃、1週間保存後のラクトン体の生成率を評価した。 ラクトン体の生成率は、実施例1、2及び比較例1~3のフィルム剤につき、HPLC装置(アライアンス2695セパレーションモジュール及び2996フォトダイオードアレー検出器を装備したHPLCシステム:Waters製)を用いて、ピタバスタチン及びその分解物に由来する総ピーク面積に対する面積百分率として測定した。その結果を、各フィルム剤の組成(フィルム剤1枚当たりの成分量(mg))とともに表1に示す。 【0076】 【表1】 [図:0001396572000022.jpg] 【0077】 表1に示す試験結果より、アルカリ土類金属塩化物を含有しない比較例1においては、時間の経過に伴い多量のラクトン体の生成が確認された。また、アルカリ土類金属塩化物の代わりに塩基性物質である炭酸カルシウムを含有する比較例2、同じく塩基性物質であるメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含有する比較例3においては、ラクトン体の生成量は比較例1と大差なかった。 一方、実施例1、2及び比較例1~3に係るフィルム剤は、いずれもそのpHが8.5前後に調整されたものであるにも拘わらず、アルカリ土類金属塩化物である塩化カルシウムを含有する実施例1、同じくアルカリ土類金属塩化物である塩化マグネシウムを含有する実施例2においては、比較例1~3に比して特異的にラクトン体の生成が抑制されることが明らかとなった。なお、本発明は当該推察に何ら拘泥されるものではないが、同程度のpH環境においてアルカリ土類金属塩化物が特異的にラクトン体の生成を抑制したことから、当該作用はpHの上昇に伴うラクトン体生成抑制とは全く異なるメカニズムによるものであることが推察された。 【0078】 以上の試験結果から、アルカリ土類金属塩化物が、ピタバスタチンをはじめとする化合物(1)又はその塩のラクトン体生成を抑制する作用を有することが明らかとなった。」 ハ 甲51(日本医薬品添加剤協会 Safety Dataのウェブサイト)には、以下の記載がある。 51-1)「和名 結晶セルロース ・・・ 用途 安定(化)剤,滑沢剤,基剤,吸着剤,結合剤,懸濁(化)剤,コーティング剤,糖衣剤,軟化剤,賦形剤,分散剤,崩壊剤,崩壊補助剤、流動化剤」(1行~7行) ヒ 甲53(特開2012-96998号公報)には、以下の記載がある。 53-1)「【0002】 ピタバスタチンなどのスタチン系薬剤は、HMG-CoAリダクターゼ阻害作用を有し、高脂血症治療剤や、アテローム性動脈硬化症治療剤として有用であることが知られている・・・。 【課題を解決するための手段】 ・・・ 【0009】 すなわち本発明は、ピタバスタチン、またはその塩及びフェノフィブラートを含有するカプセル製剤用組成物であって、酸化マグネシウム及び/又は水酸化マグネシウムを配合することを特徴とするカプセル製剤用組成物である。 また、本発明は、ピタバスタチン、またはその塩とフェノフィブラートを含有する組成物に、酸化マグネシウム及び/又は水酸化マグネシウムを配合した組成物をカプセルに充填して得られるカプセル製剤である。 ・・・ 【0017】 本発明のカプセル剤用組成物には、有効成分であるピタバスタチン及びフェノフィブラート並びに酸化マグネシウム及び/又は水酸化マグネシウム以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、カプセル製剤用組成物に通常含有することができるその他の成分を含有することができる。これらの成分としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、滑沢剤等が挙げられる。 【0018】 ・・・上記崩壊剤としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロースカルシウム、トウモロコシデンプン、部分アルファー化デンプン、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドン等を用いることができる。 ・・・ 【0036】 <実施例1(1顆粒カプセル剤)> ・・・ ピタバスタチンカルシウム2g、・・・クロスポビドン5g、・・・を混合し、・・・顆粒を得た。得られた顆粒を1カプセル当たり300mgとなるように1号ゼラチンカプセルに充填し5カプセル調製した。 【0037】 【表1】 [図:0001396572000023.jpg] 」 フ 甲60(総監修掛見喜一郎、最新の製剤技術シリーズNo.1 医薬品のコーティング、日本工業技術連盟、昭和44年12月1日初版発行、1~4頁、33~47頁)には、以下の記載がある。 60-1)「1-2 coatingの目的 ・・・coatingをほどこす理由としては,つぎの5つが考えられる。 ・・・ (3) 大気(水分,酸素,炭酸ガス)から内部の薬品を保護するため ・・・ 1-2-2 大気からの保護 従来のcoatingをほどこさない形では,その主薬が空気中に含まれている水分や,あるいは酸素,炭酸ガスなどによって変質するような場合がある。 このものの表面に,水分やガス類の通過を阻止ないし抑制できるような皮膜を作って,内部の主薬の安定化をはかろうとする試みがなされている。」(2頁下から4行~3頁21行) 60-2)「3 安定化のためのコーティング ・・・ 医薬品にコーティングを施す目的は大別するとつぎの4つである。 1)外観を美しくする。 2)不快な味・臭をマスクする。 3)薬品を安定化する。 4)薬品の作用を制御・調節する。 実際にはこの中のいくつかの目的を兼ねて行われるのが普通であるが,安定化を目的としてコーティングを施されることはかなり多い。すなわち, 1)保存中における薬品の分解の防止。 2)製剤化操作中における水の侵入の防止。 3)薬品の相互反応の防止。 などの場合に用いられる。」(33頁1行~11行) 60-3)「以上のように固形医薬品の安定化を高める目的でコーティングが利用されているが,いずれの場合も耐水性を有し水蒸気・酸素などの透過の少ない皮膜剤を用いてコーティングを施すことによって目的を達することができる。このように医薬品を保護してその分解を防ぐ目的で施すコーティングをProtective Coating(保護コーティング)といい,古くから糖衣操作に際して用いられている。このProtective Coatingは使用する皮膜剤の性質によってその効果が左右されるので、・・・ ここでこのような目的に用いるProtective Coating剤に要求せられる性質を列挙すると, 1)有機溶媒に溶解し,その溶液から皮膜を作ること。 2)皮膜は耐水・耐湿性および防湿性を有すること。 3)皮膜は適当な強度を有し,安定で経時変化を起さないこと。 4)体内で容易に崩壊すること。 5)コーティング操作が容易であること。 6)毒性を有しないこと。 などである。 3-1 Protective Coating剤の種類 以上のようなProtective Coating剤に必要な諸性質をもった皮膜剤を得る1つの方法は,皮膜形成性などの諸性質を有する皮膜剤に体内消化管内で溶解する性質を与える方法で,アミノ基または塩基性を有する置換基を導入して胃の酸性で溶解する性質を与え,またカルボキシル基など酸性基を導入して腸溶性を有する皮膜剤が得られる。・・・ したがって,基礎皮膜剤と導入基の種類,あるいは単量体や共単量体の種類と重合比率などによっていろいろの種類の,いろいろの性質をもった皮膜剤が作られ報告せられている。 ・・・ 3-1-1 胃溶性皮膜剤 胃溶性皮膜剤に関する報告・特許は医薬用コーティング剤の中で最も多い。これらの中で報文の内容から一応Protective Coating剤として用い得ると考えられるものを分類し,代表的なものを例示するとつぎの通りである。 (I) セルローズ誘導体 皮膜性を有するセルローズ誘導体にアミノ基またはアミノ基を有する置換 基を導入したもので,つぎの3つに分けられる。 ・・・ (II) 糖誘導体 例えば,dodecylamino N-lactoside23)のような糖とアミンの反応生成物 で,皮膜強度がやや劣る。 (III) ポリビニール誘導体 高分子化合物にアミノ基を導入したものとしてポリビニールアミン類やポ リビニールアミノアセタール類などポリビニールアルコールが骨核となる ものや,モノマーを重合せしめたものとしてビニールピリジン系重合体な どがその主なものである。 ・・・ 3-2 Protective Coating剤の性質 ・・・ 3-2-3 保護作用 皮膜の保護作用に直接関係するのは耐湿・耐水性であるが実用化せられている皮膜剤の水蒸気透過係数は10-10・g・cm/cm2・sec・cmHg程度のものが多い・・・。」(37頁下から8行~42頁最終行) ヘ 甲61(橋田充編、経口投与製剤の処方設計、株式会社薬業時報社、平成10年4月15日発行、97~111頁)には、以下の記載がある。 61-1)「6 コーティング剤 (1) コーティング剤とは 味をマスクしたり,外気や湿気の遮断,体内での崩壊・溶出の調節(腸溶性,徐放性など)のために,錠剤,顆粒剤などに施す剤皮がコーティング剤である。 (2) コーティング剤の種類 コーティング剤の種類は多く,目的により使い分けられるようになってきている。味のマスク,外気や湿気の遮断には,多層構造の糖衣が古くから用いられており,白糖を主にタルク,沈降炭酸カルシウム,カオリン,硫酸カルシウム,アラビアゴム末などを配合し形を整え,ワックスなどで光沢を与えた製剤としているが,本節では,最近主流となっているフィルムコーティングに使用されるコーティング剤について記述する。 フィルムコーティング剤には,物性や用途により次の種類に分類される。 ○1(審決注:○の中に1。以下同様。) 水溶性コーティング剤 ○2 胃溶性コーティング剤 ○3 腸溶性コーティング剤 ○4 徐放性コーティング剤 ・・・ (3) 水溶性コーティング剤 味のマスク,遮光などを目的として汎用的に使用されるコーティング剤であり,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロースがよく使用されている。 ・・・ (4) 胃溶性コーティング剤 胃液中(pH5.0以下)で速やかに溶け,水には安定で内部の薬物に変化を与えないことを目的とするコーティング剤である。防湿性に富んでいるため湿気に不安定な薬物を含む薬剤のコーティング剤として広く使用されているが,日局12第2追補における崩壊試験法改定で剤皮を施した錠剤の試験液が日局第1液(pH1.2)から水に変更となったことから,胃溶性コーティング剤単独使用では崩壊試験に適合しにくくなったため,水溶性コーティング剤と併用することが多くなった。種類としては,ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート,アミノアルキルメタアクリレートコポリマーEがよく使用されている。 a)ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート ・・・ ・使用法と留意点 エタノールなど一般的な有機溶剤に溶かして使用でき,低粘度で伸びがよいので均一で丈夫な皮膜を形成する。pH5.8以下で溶解し,防湿性に非常に優れている。また,水溶性高分子と混合して水系コーティングを行うことができる。 b)アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE ・・・ ・使用法と留意点 エタノール/水系でコーティングでき,造膜性に優れ強固な膜を形成し,防湿性にも優れている。フィルムはpH5.0以下で溶解し,pH5.0以上で膨潤して薬物を放出する。 (5) 腸溶性コーティング剤 胃の中で変化を受けず,腸で速やかに溶解または崩壊する性質のコーティング剤であり,メタアクリル酸コポリマーL, メタアクリル酸コポリマーLD, ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート,ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートがよく使用されている。 a) メタアクリル酸コポリマーL ・・・ ・使用法と留意点 エタノール/水系でコーティングでき,造膜性に優れ強固な膜を形成し,耐酸性および防湿性にも優れている。・・・ ・・・ (6) 徐放性コーティング剤 水不溶性のコーティング剤であり,皮膜に柔軟性を与えるために可塑剤を添加して使用する。形成膜による水の拡散速度の制御により,製剤の崩壊や薬剤の溶解を制御するため,一定した皮膜を形成させるための製剤技術が必要となる。種類としては,エチルセルロース,エチルセルロース水分散液,アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS,アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチルコポリマーエマルションがよく使用されている。 a)エチルセルロース ・・・ ・使用法と留意点 有機溶剤に溶解して使用する。フィルムは耐衝撃性,防湿性に優れている。可塑剤を加えると軟化温度を示し熱可塑性樹脂となる。」(107頁9行~110頁32行) ホ 甲62(スロベニア工業所有権公報、SI 21402 A)には、以下の記載がある(訳文で示す。)。 62-1)「発明に関する技術分野 本発明は、製薬産業の分野に関し、より詳細には、環境影響に敏感な活性物質を含む、コーティングされた粒子および医薬剤形に関する。 本発明のコーティングされた粒子は、環境影響、特に環境中の酸化と湿度から活性物質を保護するコーティングでコーティングされた活性成分の粒子である。このようなコーティングされた粒子は、コーティングされていない医薬剤形か、またはコーティングされた医薬剤形のいずれかであり、このような剤形のコーティングは、活性物質および医薬賦形剤を環境影響から、特に環境中の酸化と湿度から保護する。」(2頁5行~13行) 62-2)「pH環境、湿度、光、温度、二酸化炭素や、酸素に敏感な活性物質の中には、HGM-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン)がある。」(6頁1行~2行) 62-3)「スタチンの中でも、例えば、プラバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、メバスタチンまたはコンパクチン、フルバスタチンまたはフルインドスタチン、セル(セリ)バスタチン、リバスタチン、ロスバスタチンまたはビサスタチン、およびイタバスタチンまたはピタバスタチンまたはニスバスタチンが知られている。」(6頁18行~20行) 62-4)「前記のスタチンの多くは、例えば大気の影響やpH環境などの環境影響に、特に敏感である。従来技術では、特定のスタチンは、例えば、酸性環境、いわゆる低pH環境に敏感であり、そこでラクトン形態および異なる異性体に分解されることが知られている。このように、例えば、酸性環境では、プラバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチン、およびフルバスタチンは、ラクトン型に変換される。」(7頁19行~23行) 62-5)「一般に、酸化に対する活性物質の敏感性は、高いpHほど高く、低いpHほど低いと考えられているが、これは医薬剤形自体およびそこに含まれる賦形剤に依存する。医薬剤形中の有効成分の酸化は、賦形剤の影響も受ける。これらは、活性物質を濡らすことによって直接、または活性物質への湿度移動によって間接的に酸化を引き起こすことがある。」(8頁22行~26行) 62-6)「前記の解決策に加え、包装空間内における活性物質周囲の酸素量、および包装の壁と蓋の酸素透過性が調節される包装と包装要素を用いた酸化防止について記載されている。窒素中で包装することにより、包装内に含まれる酸素量を減らすことができる。薬剤を使用する場合、最適な包装はブリスターである。」(11頁20行~24行) 62-7)「したがって、本発明は、環境影響に敏感な活性物質を安定化し、このような活性物質および賦形剤を含む医薬剤形を安定化する課題を設定する。さらに、本発明は、酸化に敏感な活性物質を安定化すること、そしてこのような活性物質を含む医薬剤形および賦形剤を安定化する課題を設定する。本発明の利点は、活性物質と環境影響、大気影響、好ましくは酸素との接触を防ぐことにより、環境影響、特に一部の空気要因に対して、より好ましくは酸化に対して、活性物質であるスタチンを安定化することである。これにより、活性物質の分解生成物、好ましくは活性物質の酸化分解生成物、さらに医薬賦形剤の分解生成物の生成が防止される。 発明の説明 本発明の主題は、環境影響、とりわけ大気の影響、特に環境中の酸化と湿度、さらに特化すると酸化に敏感な活性物質を含む、活性物質の粒子および医薬剤形である。この際、活性物質の粒子および/または医薬剤形は、環境影響、とりわけ大気の影響、特に環境中の酸化と湿度、さらに優れては酸化において活性物質の安定化と保護を可能にするコーティングを用いてコーティングされている。 本発明範囲内におけるコーティングされた粒子および/または医薬剤形とは、コーティングされた活性物質の粒子であり、コーティングされた医薬剤形またはコーティングされていない医薬剤形にある。本発明範囲内におけるコーティングされていない粒子とは、本発明のコーティングまたは従来技術で公知の他のコーティングを一切含まず、本発明のコーティングされた医薬剤形に組み込まれている活性物質の粒子である。」(13頁15行~14頁9行) 62-8)「本発明範囲内における活性物質とは、特に環境中の酸化と湿度に敏感であり、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤である活性物質である。このような活性物質は、プラバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、イタバスタチン、シンバスタチンおよびロバスタチンからなる群から選択される。 さらに特化すると、本発明範囲内における活性物質とは、酸化に敏感な活性物質である。HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、カプトプリル、クロルプロマジン、モルフィン、L-アスコルビン酸、ビタミンE、フェニルブタゾン、テトラサイクリンおよびオメプラゾールからなる群から選択される。」(14頁10行~17行) 62-9)「本発明範囲内における、コーティングという用語は、コアに直接的に塗布される被膜あるいは層を意味し、前記コアは、それ自体が活性物質であるか、マイクロカプセル、微小球、顆粒、ペレットまたは従来技術で公知の類似剤形からなる群から選択される規則的な形状または不規則な形状をした、1種類以上の医薬賦形剤を含む活性物質の粒子であるか、あるいは、錠剤、カプセルまたは従来技術で公知の類似医薬からなる群から選択される医薬剤形のいずれかである。このようなコーティングは、酸化から活性物質、医薬賦形剤および医薬剤形を保護するコーティングであってもよい。本発明範囲内において、このようなコーティングは、本発明範囲内のコーティングされた活性物質を含む錠剤、カプセルまたは類似剤形に直接塗布される、他のあらゆる既存フィルムコーティングまたは不溶性コーティングでもよい。 本発明範囲内におけるコーティングは、活性物質の粒子の周囲にある、または医薬剤形のコアの周囲にあるコーティングまたは層であり、1種類以上のフィルム形成剤を含む。適切なフィルム形成剤は、前記の環境影響に敏感な活性物質を含む医薬製剤のコアに、コーティングの形態で塗布される任意のフィルム形成剤である。また前記の環境影響から活性物質を保護し、特に環境中での酸化と湿度から活性物質を保護するものである。最も好ましくは、フィルム形成剤が、酸化から活性物質を保護する任意のフィルム形成剤であることである。このようなフィルム形成剤は、ポリビニルアルコール(PVA)およびセルロース誘導体からなる群から選択される。セルロース誘導体の中で、フィルム形成剤は、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム(Na CMC)またはヒドロキシエチルセルロース(HEC)であり、最も好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム(Na CMC)である。同時に、フィルム形成剤は、組み合わせ可能な関係であれば、1種類以上のフィルム形成剤の組み合わせであってもよい。」(14頁18行~15頁8行)(なお、被請求人は、上申書9の別紙70~71頁において、下線を付した「適切なフィルム形成剤は、前記の環境影響」との記載が、「適切なフィルム形成剤は、活性物質の粒子に、または、前記の環境影響」の誤訳であり、同じく「任意のフィルム形成剤である。また前記の環境影響」との記載が、「任意のフィルム形成剤であり、それは、前記の環境影響」の誤訳であると主張するが、いずれが正しいとしても、以下の判断を左右しない。) 62-10)「本発明の主題である医薬剤形は、1種類以上のコーティングされた活性物質および/または1種類以上の医薬賦形剤の1種類以上のコーティングされていない活性物質の他、さらに1種類以上の医薬賦形剤を含み、これらは以下からなる群から選択される: a)1種類以上のフィラー; b)1種類以上のバインダー; c)1種類以上の崩壊剤; d)1種類以上の滑沢剤; e)1種類以上の緩衝成分; f)1種類以上のアルカリ化成分; g)1種類以上の界面活性剤; h)当技術分野で知られており、着色剤、香味料および吸着剤からなる群から選択される固形医薬剤形用の他成分。」(18頁15行~27行) 62-11)「本発明の医薬剤形のフィラーは、結晶セルロース(MCC)、結晶セルロースの改変形態、ラクトース、糖類、異なる種類のデンプン、デンプンの改変形態、マンニトール、ソルビトールと他のポリオール、デキストリン、デキストランとマルトデキストリン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムおよび/またはリン酸水素カルシウム、硫酸塩およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。 本発明の医薬剤形のバインダーは、ラクトース、異なる種類のデンプン、デンプンの改変形態、デキストリン、デキストランとマルトデキストリン、結晶セルロース(MCC)、糖類、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ゼラチン、アカシアガム、トラガント、ポリビニルピロリドン、ケイ酸アルミニウムマグネシウムおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。 本発明の医薬剤形の崩壊剤は、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルデンプン、異なる種類のデンプンと結晶セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、ポラクリリンカリウムおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される。 ・・・ 本発明の医薬剤形のアルカリ化成分は、アルカリ作用がある基を含む有機化合物または無機化合物からなる群から選択され、これらは以下を含む群から選択される・・・。」(18頁28行~20頁4行) 62-12)「本発明の医薬剤形は、好ましくは、固形医薬剤形である。」(20頁14行) 62-13)「本研究の論点である固形医薬剤形は、以下の方法で調製することができる。: ・1種類以上のコーティングされたおよび/または1種類以上のコーティングされていない活性物質、フィラー、バインダー、緩衝成分、崩壊剤、および必要に応じて、固形医薬剤形用の界面活性剤や他の従来成分の混合物を、適切な混合機で均一に混合する。混合物を適切な圧縮機で圧縮するか、ブリケットマシンまたは従来の打錠機で圧縮し、この圧縮物および/ブリケットを粉砕および/またはふるい分けし、さらにフィラー、崩壊剤、緩衝成分、滑沢剤、潤滑剤、および錠剤またはカプセル用の他の従来の医薬賦形剤を加え、再び均一に混合する。得られた混合物は錠剤にするか、またはカプセルに充填する。; ・1種類以上のコーティングされたおよび/または1種類以上のコーティングされていない活性物質、フィラー、バインダー、緩衝成分、崩壊剤、および必要に応じて、界面活性剤や他の固体医薬剤形用の従来成分の混合物を適切な混合機で均一に混合し、滑沢剤および潤滑剤を再び加え、均一に混合する。得られた混合物は錠剤にするか、カプセルに充填する。;」(21頁6行~20行) 62-14)「実施例8 あるフィルムコーティングされた錠剤の組成 8.1.錠剤コア 表20.コアの組成 [図:0001396572000024.jpg] 錠剤コアの調製 ラウリル硫酸ナトリウム溶液を、温風中でアトルバスタチンCaに噴霧する。得られた顆粒を乾燥し、ふるいにかける。ProSolv SMCC 90、アルファ化コーンスターチ、および架橋カルボキシメチルセルロースを添加し、均一に混合する。ステアリン酸マグネシウムおよびタルクを加えて均一に混合し、空気相対湿度を低く制御した空間内で、質量200mgの錠剤にする。 8.2.錠剤のコーティング 表21.コーティングの組成 [図:0001396572000025.jpg] コーティング用分散液の調製および錠剤コアのコーティング 粘度25~50mPasのカルボキシメチルセルロースナトリウム(Blanose CMC 7LF PH、Aqualon),(109.00g)と、グリセロール(11.00g)を、攪拌しながら水(2513.60g)に溶解した。調製した分散液をコアに噴霧して、コアの質量に対して重量比8%の塗布量を与えた。コーティング工程中に錠剤の質量を制御し、コーティングの塗布量を決定した。 8.3.錠剤のpH値の決定 電位差測定により決定した実施例8の錠剤のpH値は6.7である。アトルバスタチンCaとProSolv SMCC 90の混合物(錠剤中のそれらの重量比に等しい比の混合物)のpH値7.93も、同じ手順により測定した。 錠剤および、活性物質とフィラーProSolv SMCC 90の混合物のpH値は、40mgのアトルバスタチンCaを含む1錠の水性分散液20ml中で、あるいは活性物質とこのような錠剤に存在する量のフィラーProSolv SMCC 90の混合物の分散液で測定した。pH値は、分析装置720KFS Titrino Methromで、マイクロpH複合電極Methrom 6.0204.100pH 14/0.70℃を用いて測定した。 8.4.異なる気体環境下における実施例8の医薬剤形中における活性物質の安定性の分析 分解生成物(ラクトンおよび酸化分解生成物)の生成における、水/湿度および賦形剤の影響は、異なる乾燥剤(乾燥剤なし、シリカゲル、モレキュラーシーブ)を用いて、パッケージ(HDPEプラスチックボトル)内のフィルムコーティングされた錠剤を試験することで評価した。フィルムコーティングされた錠剤は、40/75(40℃±2℃、75%RH±5%)で1か月間保存された。錠剤中のアトルバスタチン分解生成物(ラクトンおよび酸化分解生成物)の含有量は、液体クロマトグラフィー分析方法によって測定した。参照サンプルとして、冷蔵庫(2~8℃)に保存した錠剤を分析した。錠剤中の水分量は、乾燥減量法(LOD)を用いて評価した。 表22.40/75(40℃±2℃、75℃ RH±5%)の条件下で1ヶ月間保存した本発明のフィルムコーティングされた錠剤中のアトルバスタチン分解生成物(ラクトン)の含有量の増加 [図:0001396572000026.jpg] 安定性を高めた条件下で1か月間試験したところ、乾燥剤を添加した錠剤中の水分含有量が少ないため、これらの錠剤中のラクトンは、乾燥剤を含まない錠剤(レベル0.22%)よりもはるかに少ない程度(レベル0.05%)で生成されることがわかった。錠剤中が特定の水分レベル未満では、形成されるラクトンの割合に顕著な差はなく、これは乾燥損失として評価される3.50%未満の水分である。 表23.40/75(40℃±2℃、75℃ RH±5%)の条件下で1か月間保存した本発明のフィルムコーティングされた錠剤中のアトルバスタチン分解生成物(酸化分解生成物)の含有量の増加 [図:0001396572000027.jpg] 加速安定性の条件下での1か月の試験後、本発明のコーティングされた錠剤中のアトルバスタチン分解生成物(酸化分解生成物)の増加は、コーティングされていない錠剤よりも著しく小さいことがわかった。」(35頁下から2行~39頁表23の下3行) 62-15)「特許請求の範囲 1.コーティングされた粒子であって、環境中の酸化および湿度に敏感な活性物質を含み、活性物質の粒子が、環境中の酸化および湿度において活性物質の安定化を可能にするコーティングを用いるコーティングされた粒子。 2.コーティングされた粒子であって、環境中の酸化および湿度に敏感な活性物質を含み、活性物質の粒子が、環境中の酸化および湿度において活性物質の安定化を可能にするコーティングを用いており、コーティングは1種類以上のフィルム形成剤を含むコーティングされた粒子。」(特許請求の範囲の請求項1、2) マ 甲64(特開2003-95939号公報)には、以下の記載がある。 64-1)「【請求項1】 プラバスタチンナトリウムと、2~8重量%のステアリン酸マグネシウム及び水分保持性の賦形剤を含有することを特徴とする安定なプラバスタチンナトリウム錠。 【請求項2】 水分保持性の賦形剤が、乳糖、乳糖造粒物、結晶セルロース、粉末還元麦芽糖水飴、糖アルコール、酢酸カルシウムから選ばれた1種又は2種以上である請求項1に記載の安定なプラバスタチンナトリウム錠。 【請求項3】 結合剤を含み、この結合剤がヒドロキシプロピルセルロース、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、結晶セルロースから選ばれた1種又は2種以上である請求項1に記載の安定なプラバスタチンナトリウム錠。 【請求項4】 崩壊剤を含み、この崩壊剤がカルボキシメチルスターチナトリウム、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、結晶セルロースから選ばれた1種又は2種以上である請求項1に記載の安定なプラバスタチンナトリウム錠。」 64-2)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、高脂血症治療剤であるプラバスタチンナトリウムを有効成分とする安定な錠剤に関するものである。」 64-3)「【0003】このプラバスタチンについては、低pH領域では分解してラクトン体等に変化することから、・・・」 64-4)「【0007】即ち、本発明の発明者らは、高いpHに捕らわれることなく、生体にとって好ましい中性付近で安定なプラバスタチンナトリウム錠の開発について鋭意研究し、その結果、錠剤処方において滑沢剤として汎用されているステアリン酸マグネシウムの添加量を調整することで、容易に安定化が図れることを見出した。又、水分保持性の賦形剤により製剤中の含水量を制御することで、その安定性が著しく向上することを見出し、これらの知見に基づき更に検討を加えて本発明を完成するに至った。 【0008】 【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。 【0009】本発明の安定なプラバスタチンナトリウム錠における主薬はプラバスタチンナトリウムであり、上記のようにHMG-CoAレダクターゼ抑制剤として公知のプラバスタチンのナトリウム塩である。本発明のプラバスタチンナトリウム錠でのプラバスタチンナトリウムの含有量は適宜に決定することができるが、例えば1.4~7.5重量%である。 ・・・ 【0011】本発明のプラバスタチンナトリウム錠では、更に、水分保持性の賦形剤を使用するのであり、この水分保持性の賦形剤としては、例えば、乳糖、乳糖造粒物、結晶セルロース、粉末還元麦芽糖水飴、糖アルコール(D-マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール等)、酢酸カルシウムから選ばれた1種又は2種以上を挙げることができる。」 64-5)「【0013】即ち、本発明は、打錠時の滑沢性を維持する目的で添加するステアリン酸マグネシウムのpHが9前後であることから、その添加量を調整することで、特別に強い塩基性物質などを加えずとも、好ましくはpH7.5~9の範囲で任意のpHに調整することが可能となり、同時に水分保持性の添加剤を加えることで、水がその中に吸着され、その水分中へプラバスタチンナトリウム及びステアリン酸マグネシウムが溶解することで、少なくともpH7.5~9の“ミクロ-pH”を形成し、安定化することを見出したものである。」 ミ 甲66(特表2011-500811号公報)には、以下の記載がある。 66-1)「【請求項5】 前記クラブラン酸カリウムが、粉末としてまたは二酸化ケイ素もしくは微結晶性セルロースとの1:1混合物として調製されている、請求項4記載の製薬組成物。」 66-2)「【0006】 クラブラン酸およびその誘導体または塩(集合的に、クラブラン酸塩と称する)を含有する多くの乾燥製剤の調製は、結合剤、流動促進剤(glidant)、崩壊剤および乾燥剤等のような複雑な配合の賦形剤を含ませて製薬上許容し得る担体を得ることを必要としている。このことは、一部では、クラブラン酸塩が水性媒質中で極めて不安定である高湿気性物質であるという事実による。」 66-3)「【0016】 ・・・クラブラン酸カリウムは、純粋化合物として或いはClavitesseTM、即ち、クラブラン酸カリウムと微結晶性セルロースとの1:1混合物またはクラブラン酸カリウムと二酸化ケイ素との1:1混合物(オランダのDSM Anti-Infectives B.V.社から入手し得る)として供給し得る。」 66-4)「【0056】 ・・・ClavitesseTM中の微結晶性セルロースまたは二酸化ケイ素は、錠剤中の水分を捕捉することによってクラブラン酸カリウムの安定性の増大にさらに寄与しているようである。」 ム 甲67(特開昭55-47615号公報)には、以下の記載がある。 67-1)「1 賦形剤の1部又は全部が結晶セルロースであることを特徴とするニフエジピン固型製剤。」(特許請求の範囲) 67-2)「しかしながら、ニフエジピンは光、温度及び湿気に対して敏感であり、これらによつて褐変し効力が著しく低下する性質がある。」(1頁右下欄3行~5行) 67-3)「・・・賦形剤として結晶セルロースを使用したものは特異的にニフエジピンを安定化する。本発明において、ニフエジピンを固型製剤化するには、結晶セルロースをニフエジピンの約2倍以上、特に好ましくは2.5倍以上使用する。」(4頁左上欄1行~6行) メ 甲69(特表2005-536527号公報)には、以下の記載がある。 69-1)「【0003】 このように、式Iのベンズイミダゾール化合物、特にオメプラゾールは、酸性水溶液において不安定であり、そのためにベンズイミダゾール化合物は、最初、アルカリ性緩衝剤を使用してガレヌス製剤中で配合されていた。」 69-2)「【0009】 意外にも、微結晶セルロースは、式Iで表されるベンズイミダゾール化合物、特にオメプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾールおよびランソプラゾールを安定化することができることが見出された。」 69-3)「【0010】 本発明に従って、式Iで表されるベンズイミダゾール化合物の安定化のために、微結晶セルロースを有効成分を含有するペレットの層に使用する時は、微結晶セルロース粒子のサイズはできるだけ小さい程、特に好都合であり、微結晶セルロースの広い表面との相互作用により安定化が起きるものと推定される。」 モ 甲70(特表2007-530623号公報)には、以下の記載がある。 70-1)「【0001】 本発明は、ペリンドプリルまたはその塩の固形薬学的組成物を調製するためのプロセス、ならびに固形薬学的組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 ACEインヒビター(例えば、ペリンドプリル(Perindopril))は、インビボで実際に活性な物質である、ペリンドプリラット(perindoprilat)のプロドラッグである。特に、錠剤のような固形処方物は、かなりの量の分解を被り、それによって、ペリンドプリルの有効量を減少させる。主な分解経路は、1)エステル基の加水分解、および2)特に、酸性環境下において、ジケトピペラジン(DKP)をもたらす、分子内環化である。 【0003】 ACEインヒビターの固形組成物を安定化させるための種々の試みがなされてきた。 【0004】 特許文献1によれば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩が、ACEインヒビターの処方物を安定化するために使用されてきた。特に、炭酸マグネシウムは、エナラプリル(enalpril)と組み合せた場合に、有効であることが分かった、適切な安定化炭酸塩であることが開示されている。組成物の成分は、湿式造粒によって、所望の錠剤へと加工される。 【0005】 さらに、特許文献2は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩を添加することにより安定化された、塩酸モエキシプリル(moexipril hydrochloride)の処方物を開示する。塩酸モエキシプリルおよびアルカリ反応性の炭酸塩を含む混合物は、湿式造粒により加工され、その結果、安定化の効果は、モエキシプリルのナトリウム塩のインサイチュ形成に起因するようである。さらに、炭酸塩の量が、塩酸モエキシプリルの化学量論上の量よりも多くあるべきであることが開示される。 ・・・ 【0007】 しかし、ペリンドプリルのようなACEインヒビターの安定化された処方物を得るための、上記のアプローチは、いつも水の使用を包含し、この水が、次に安定性の低下を引き起こし得るという欠点を被る。」 70-2)「【0008】 従って、本発明の目的は、従来のプロセスの上記の問題を回避する、ペリンドプリルの固形薬学的組成物を調製するためのプロセス、ならびに、高い安定性を有し、かつ、少量の分解産物のみしか含まないペリンドプリルの固形薬学的組成物を提供することである。」 70-3)「【0031】 ペリンドプリルもしくはその塩を、0.3重量%~5.0重量%の特定の含水量を有する微結晶性セルロースおよび/もしくは無水ラクトースのいずれかと組み合わせて用いることによって、非常に安定な組成物が得られることは、驚くべきことである。このことは、一般に、水のような液体の存在が、湿式造粒工程、または、アルカリ性の安定化剤と酸性のACEインヒビターとの間の中和反応に必要とされる先行技術の教示とは対照的である。」 70-4)「【0036】 ・・・ 実施例1と実施例4との比較は、アルカリ反応性の炭酸塩がない場合でも、低含水量の微結晶性セルロースを用いる実施例4の場合には、ジケトピペラジンの量が減少することを示す。」 (2)引用発明 ア 甲12に記載された発明 甲12には、「ポリビニルアルコールおよびセルロース誘導体またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるフィルム形成物質を含む、環境影響からの活性物質および1種類以上の医薬賦形剤および/または医薬剤形の保護および安定性を提供するコーティング」について記載されているところ(摘示12-12、請求項1)、実施例8として、アトルバスタチンCa、ラウリル硫酸ナトリウム、Prosolv SMCC90、アルファデンプン化されたコーンスターチ、架橋カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルクからなる錠剤コアに、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール及び水からなる分散物でコーティングした錠剤を異なる乾燥剤を用いたHDPEプラスチック瓶にパッケージし、当該錠剤を特定条件下で保存し、錠剤中の水分含量を、乾燥減量(LOD)を測定することにより、重量測定法により測定したことが記載されており、乾燥減量(LOD)、すなわち水分含量が2.73、1.99、1.55又は1.73%であることが記載されている(摘示12-11)。 そして、甲12には、アトルバスタチンがHMG-CoAレダクターゼ阻害剤であることが記載されている(摘示12-7)。 以上、指摘した記載事項を含む上記摘示12-1~12-12に示した記載、特に実施例8の記載からみて、甲12には、 「HMG-CoAレダクターゼ阻害剤であるアトルバスタチンCaと、 ラウリル硫酸ナトリウム、Prosolv SMCC90、アルファデンプン化されたコーンスターチ、架橋カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルクからなる錠剤コアに、 カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール及び水からなる分散物でコーティングした錠剤を乾燥剤を用いたHDPEプラスチック瓶にパッケージした医薬剤形であって、 水分が2.73、1.99、1.55又は1.73%である医薬剤形。」の発明(以下「甲12発明2」という。)が記載されていると認める。 イ 甲62に記載された発明 甲62には、「コーティングされた粒子であって、環境中の酸化および湿度に敏感な活性物質を含み、活性物質の粒子が、環境中の酸化および湿度において活性物質の安定化を可能にするコーティングを用いるコーティングされた粒子」について記載されているところ(摘示62-15、請求項1)、実施例8として、アトルバスタチンCa、ラウリル硫酸ナトリウム、Prosolv SMCC90、アルファ化コーンスターチ、架橋カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルクからなる錠剤コアに、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール及び水からなる分散物でコーティングした錠剤を異なる乾燥剤を用いたHDPEプラスチックボトルにパッケージし、当該錠剤を特定条件下で保存し、錠剤中の水分含量を、乾燥減量法(LOD)を用いて評価したことが記載されており、乾燥減量(LOD)、すなわち水分含量が2.73、1.99、1.55又は1.73%であることが記載されている(摘示62-14)。 そして、甲12には、アトルバスタチンがHMG-CoAレダクターゼ阻害剤であることが記載されている(摘示62-8)。 以上、指摘した記載事項を含む上記摘示62-1~62-15に示した記載、特に実施例8の記載からみて、甲62には、 「HMG-CoAレダクターゼ阻害剤であるアトルバスタチンCaと、 ラウリル硫酸ナトリウム、Prosolv SMCC90、アルファ化コーンスターチ、架橋カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルクからなる錠剤コアに、 カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール及び水からなる分散物でコーティングした錠剤を乾燥剤を用いたHDPEプラスチックボトルにパッケージした医薬剤形であって、 水分が2.73、1.99、1.55又は1.73%である医薬剤形。」の発明(以下「甲62発明」という。)が記載されていると認める。 (3)対比・判断 ア 甲12発明2について(無効理由1に関する。) (ア)本件発明6について 本件発明6と甲12発明2とを対比する。 甲12発明2の「HMG-CoAレダクターゼ阻害剤であるアトルバスタチンCa」と、本件発明6の「(A)ピタバスタチン又はその塩」は、本件訂正後の明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件明細書等」ということがある。)の段落【0002】に「ピタバスタチン又はその塩は、優れたHMG-CoA還元酵素阻害活性を有」すると記載されているところ、還元酵素とレダクターゼは同義であるから、両者は「HMG-CoA還元酵素阻害活性を有する化合物」という点において一致する。 甲12発明2の「Prosolv SMCC90」と「架橋カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム」は、前者が、甲1の摘示1-4の「結晶セルロース、例えばProSolv(商標)SMCC(登録商標)90」との記載にあるように「結晶セルロース」であり、後者の「カルボキシメチルセルロース」が「カルメロース」の別名であることが明らかであるから、本件発明6の「(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上」に相当する。 甲12発明2の「水分が2.73、1.99、1.55又は1.73%である」は、甲12の摘示12-11の「錠剤中の含水量は・・・重量測定法により測定した。」との記載にあるように、重量測定法により測定されているから、重量%で表されるものであり、その値は質量%と同じ値となるから、本件発明6の「(C)水分含量が1.5~2.9質量%である」に相当する。 甲12発明2の「錠剤」の「医薬剤形」は、本件発明6の「錠剤」の「固形製剤」に相当する。 甲12発明2の錠剤を「乾燥剤を用いたHDPEプラスチック瓶にパッケージ」することは、本件明細書等の「【0046】・・・「気密包装体」とは・・・水分の包装体外からの実質的な侵入を抑制し得る包装を意味し、・・・ビン包装・・・等が挙げられる。・・・【0047】気密包装体の包装材料(素材)としては・・・高密度ポリエチレン(HDPE)が特に好ましい。・・・【0052】本発明において、固形製剤を気密包装体に収容する方法は・・・包装体内に固形製剤とともに乾燥剤・・・を投入する手段を用いてもよい」との記載からみて、甲12発明2の「乾燥剤を用いたHDPEプラスチック瓶」と「パッケージ」の各々は、本件発明6の「気密包装体」と「収容」の各々に対応するといえるから、本件発明6の錠剤が「気密包装体に収容される」ことに相当する。 したがって、本件発明6と甲12発明2とは、 「次の成分(A)及び(B): (A)HMG-CoA還元酵素阻害活性を有する化合物; (B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上; を含有し、かつ、 (C)水分含量が1.5~2.9質量%である固形製剤であって、かつ、錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点6-122-1> HMG-CoA還元酵素阻害活性を有する化合物について、本件発明6は、「(A)ピタバスタチン又はその塩」であるのに対し、甲12発明2は、「アトルバスタチンCa」である点 <相違点6-122-2> 本件発明6は、固形製剤がコーティングされていることは特定されておらず、但し書きにおいて、「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤」を「除く」とされているのに対し、甲12発明2は、固形製剤が「カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール及び水からなる分散物でコーティング」されている点 <相違点6-122-3> 本件発明6は、但し書きにおいて、「アルカリ化物質を含まない固形製剤を除く」とされているのに対し、甲12発明2は、そのような固形製剤を除くものではない点 上記各相違点について検討する。 <相違点6-122-1>について a 甲12には、環境影響に敏感な活性物質がアトルバスタチン、イタバスタチン等のHMG-CoAレダクターゼ阻害剤であること(摘示12-2~12-4、12-7、12-12、請求項25、27)、「HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン類)は、特に、環境pH、湿度、光、温度、二酸化炭素および酸素にも敏感な活性物質である。」こと(摘示12-2)、「スタチン類の中でも、例えば、・・・アトルバスタチン、・・・イタバスタチンまたはピタバスタチン・・・が知られている。」こと(摘示12-3)、「上述のスタチン類の多くは、特に環境影響、例えば、大気の影響や環境pHに敏感である。従来技術では、特定のスタチンは、酸性環境(低pH値)に敏感であり、ラクトン形態および異なる異性体に分解されることが知られている。例えば、プラバスタチン、アトルバスタチン、イタバスタチンおよびフルバスタチンは、酸性環境では、ラクトン形態に変換される。」こと(摘示12-3)、「本発明の目的は、環境影響に敏感な活性物質を保護し、その結果として安定化し、このような活性物質と1種類以上の医薬賦形剤とを含む医薬剤形を安定化することである。さらに、本発明の目的は、酸化および環境湿度に敏感な活性物質を保護し、その結果として安定化し、このような活性物質と1種類以上の医薬賦形剤とを含む医薬剤形を安定化することである。好ましくは、本発明の目的は、活性物質と酸素との接触を防ぎ、それによって、活性物質の分解生成物(好ましくは酸化分解生成物および医薬賦形剤の分解生成物)の発生を防ぐことによって、環境影響に対して、好ましくは、酸化に対して、スタチンである活性物質を保護し、その結果として安定化することである。」こと(摘示12-6)、「本発明の活性物質は、環境影響に敏感であり、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤、カプトプリル、クロルプロマジン、モルヒネ、L-アスコルビン酸、ビタミンE、フェニルブタゾン、テトラサイクリンおよびオメプラゾールからなる群から選択される活性物質である。好ましくは、酸化および環境湿度に敏感な本発明の活性物質は、プラバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、イタバスタチン、シンバスタチンおよびロバスタチンからなる群から選択されるHMG-CoAレダクターゼ阻害剤である。」こと(摘示12-7)が記載されている(なお、甲12に記載のイタバスタチンについて、甲12には、「イタバスタチンは、化学的に、(S-(R*,S*-(E)))-7-(2-シクロプロピル-4-(4-フルオロフェニル)-3-キノリニル)-3,5-ジヒドロキシ-6-ヘプテン酸である。」との記載があるところ(7頁22行~23行)、本件明細書等には「ピタバスタチンカルシウム(化学名:(+)-monocalcium bis{(3R,5S,6E)-7-[2-cyclopropyl-4-(4-fluorophenyl)-3-quinolyl]-3,5-dihydroxy-6-heptenoate})」と記載されており(【0002】)、それぞれの化学名からみて、甲12に記載の「イタバスタチン」は、本件発明6の「ピタバスタチン」に相当するといえる。甲14、15、22~24にもイタバスタチン(ニスバスタチン)とピタバスタチンが同じ物質であることが記載されている(摘示14-1、14-2、15-1、22-1、23-1、24-1、24-2)。)。 b そして、甲12には、実施例として、活性成分がアトルバスタチンカルシウムである錠剤について、分解生成物(ラクトン及び酸化分解生成物)のアッセイにおける増加を測定し、その安定性を分析したことが記載されている(摘示12-11)。 c さらに、以下に示すとおり、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン類)の分解生成物(ラクトン体及び酸化分解生成物)の生成は、スタチン類に共通する化学構造(ジヒドロキシカルボン酸(3,5-ジヒドロキシヘプタン酸又は3,5-ジヒドロキシ-6-ヘプテン酸)骨格(以下、「共通骨格」ということがある。))に由来することが本件出願当時の技術常識であったといえる。 (a)アトルバスタチンカルシウム水和物及びピタバスタチンカルシウムの構造式は以下のとおりである(摘示2-1、2-2)。 [図:0001396572000028.jpg] [図:0001396572000029.jpg] (b)一方、甲3には、「現在、高脂血症治療剤や高コレステロール血症治療剤として、HMG-CoA還元酵素阻害活性を有するスタチン類を有効成分とする医薬品が多数開発・上市されている。こうしたスタチン類としては、具体的には例えば、プラバスタチンナトリウム、フルバスタチンナトリウム、アトルバスタチンカルシウム水和物、ピタバスタチンカルシウム、ロスバスタチンカルシウムが挙げられ、これらの化合物はいずれもジヒドロキシカルボン酸(3,5-ジヒドロキシヘプタン酸又は3,5-ジヒドロキシ-6-ヘプテン酸)骨格を共通骨格として有している。」との記載、「上記スタチン類の共通骨格であるジヒドロキシカルボン酸骨格は分子内で環化し、HMG-CoA還元酵素阻害活性の低いラクトン体を生成することが知られている。」との記載があり(摘示3-1、3-2)、甲4には、「該エージェントは、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoAレダクターゼ(HMG CoAレダクターゼ)の阻害剤として、・・・に有用である。・・・該エージェントと結びついている問題は、該エージェントが一定の条件下で分解することである。このことにより生成物の調剤および良好な貯蔵期限を有する医薬組成物を得ることが困難になる。形成される主要な分解生成物は、相応する(3R,5S)ラクトン(以下では「ラクトン(the lactone)」と呼ぶ)およびその中で炭素-炭素の二重結合に隣接しているヒドロキシ基が酸化されてケトン官能基になっている酸化生成物(以下では「B2」と呼ぶ)である。」との記載があり(摘示4-1)、甲5には、「HMG-CoAレダクターゼ阻害薬は・・・、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン及びそれらの塩からなる群から選択される」、「HMG-CoAレダクターゼ阻害薬は一般的に熱、水分及び酸に対し不安定である。これらは共通してヒドロキシ酸を有し、酸性環境下では類縁物質であるラクトン体を生じ易い」との記載があり(摘示5-1)、甲6には、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩を含む持続放出性医薬組成物に関する記載があり、ピタバスタチンの分解産物として、ラクトン及びケトンが記載され(摘示6-1、6-3、【表4】)、甲7には、「フルバスタチン及び関連HMG-CoAリダクターゼ化合物の上述した不安定性は、ヘプテン鎖上のβ,δ-ヒドロキシ基が非常に動きやすいこと及び二重結合が存在することによると思われる。即ち中性~酸性pHにおいてこの化合物は脱離又は異性化又は酸化反応を容易に受けて共役不飽和芳香族化合物、並びにトレオ異性体、対応するラクトン、及び他の分解生成物を生成する。」との記載があり(摘示7-1)、甲8には、「フルバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン及びロスバスタチンなどのHMG-CoAレダクターゼ阻害剤は、・・・使用されている。しかしながら、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤及び構造的に相関した薬剤(このタイプの化合物は「スタチン」と一般に呼称される)は、ジヒドロキシヘプテン酸部分を含有し、かかるスタチンは、医薬組成物中に製剤化されると、非常に不安定で、分解されやすいことが知られていた。」との記載がある(摘示8-1)。また、スタチン類に関する同様の記載は、甲12、13、18~20、39(摘示12-2、13-1、18-1、19-1、20-1、39-1)にもある。 (c)以上の甲各号証の記載から、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン類)の分解生成物(ラクトン体及び酸化分解生成物)の生成は、スタチン類に共通する共通骨格に由来することが本件出願当時の技術常識であったといえ、アトルバスタチンとピタバスタチンについても、当該共通骨格を有するものであり、これら化合物は、分解生成物としてラクトン体及び酸化分解生成物を生成し、該分解生成物の生成は共通骨格部分における化学変化によるものであるといえる。 してみると、甲12に、実施例として具体的に記載された、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤であるアトルバスタチンカルシウムを活性物質とする甲12発明2の医薬剤形について、当該アトルバスタチンカルシウムに代えて、甲12に、アトルバスタチンカルシウムと同様にHMG-CoAレダクターゼ阻害剤であり、共通骨格を有するスタチン類であり、環境pH、湿度、光、温度、二酸化炭素および酸素にも敏感な活性物質であると記載された、甲12に記載のイタバスタチン(本件発明6のピタバスタチン)を用いた医薬剤形とすることは当業者が容易になし得た事項であると認められる。 <相違点6-122-2>について 本件発明6では、コーティングについて特定していないものの、本件明細書等には、「【0039】本発明において、固形製剤は、第十六改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法にしたがって、種々の剤形にすることができる。・・・なお、これらの固形製剤は必要に応じてフィルム、糖衣等でコーティングされていてもよい。」と記載されており、本件発明6の固形製剤はコーティングする態様を当然に含むと理解される。 ここで、甲12発明2の医薬剤形は、錠剤コアに、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール及び水からなる分散物でコーティングした錠剤に関するものであり、「カルボキシメチルセルロースナトリウム」はコーティングを形成する物質であると認められるところ、甲12発明2の「コーティング」は、本件発明6の「フィルム」に相当するといえるから、甲12発明2の「カルボキシメチルセルロースナトリウム」は「セルロース誘導体」である「フィルム形成剤」であるといえ、錠剤コアは「固形製剤」であるといえるから、甲12発明2は、本件発明6で除かれている、「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤」であるといえる。 そこで検討するに、甲12の技術分野の項には、本発明は、コーティングされた粒子および医薬剤形に関するものであることが記載され(摘示12-1)、本発明の説明の項には、本発明の目的は安定性を与えるコーティングであることが記載され(摘示12-6)、コーティングは、1つ以上のフィルム形成剤を含む材料の層であり、適切なフィルム形成剤は、(環境影響に敏感な)粒子に、または活性物質を含む医薬剤形のコアにコーティングの形態で塗布され、環境影響からの、好ましくは酸化および/または環境湿度に対する活性物質の保護を与える任意のフィルム形成剤であり、最も好ましくは、このようなフィルム形成剤は、活性物質を酸化から保護する任意のフィルム形成剤であり、上述のフィルム形成剤は、ポリビニルアルコール(PVA)およびセルロースの誘導体からなる群から選択されると記載され(摘示12-7)、実施例では、いずれもセルロース誘導体が用いられている。 これら記載を含む甲12の記載(摘示12-1~12-12)によれば、甲12発明2における「コーティング」は、酸化や環境湿度等に敏感なスタチン類(HMG-CoAレダクターゼ阻害剤)を保護し、これを安定化するために塗布する層であるところ、適切なフィルム形成剤は、(環境影響に敏感な)粒子に、または活性物質を含む医薬剤形のコアにコーティングの形態で塗布され、環境影響からの、好ましくは酸化および/または環境湿度に対する活性物質の保護を与えるものであり、最も好ましいフィルム形成剤は、活性物質を酸化から保護する任意のフィルム形成剤であると理解され、当該任意のフィルム形成剤のうち、好適なものがポリビニルアルコール(PVA)およびセルロースの誘導体からなる群から選択されるものであると理解するのが自然である。 一方、甲3(摘示3-3)、甲8(摘示8-2)、甲13(摘示13-4)、甲20(摘示20-2)、甲22(摘示22-2)、甲60(摘示60-1~60-3)、甲61(摘示61-1)にも記載のとおり、従来から、固形医薬品の安定性を高める目的で保護コーティングが施され、その材料として様々なもの(ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体ではないアミノアルキルメタアクリレートコポリマーEを含む。)が周知であり、特に、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤のコーティング材料として、カルメロース及びその塩、クロスポビドン等の崩壊剤と共に、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーEを用い得ることが知られていたといえる。 そうすると、甲12発明2の「コーティング」の材料として、「カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール及び水からなる分散物」に代えてアミノアルキルメタアクリレートコポリマーE等の「ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体」を含まない周知のものを採用することで、「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤」を「除く」ものに該当するものとすることは当業者が容易になし得た事項であるといえる。 <相違点6-122-3>について 本件発明6の「アルカリ化物質を含まない固形製剤を除く」とは、「アルカリ化物質」を含む固形製剤とすることを意味すると解されるところ、甲12には、「本発明の医薬剤形のアルカリ化要素は、アルカリ作用を有する基を含む有機化合物または無機化合物からなる群から選択され、以下からなる群から選択されてもよい」(摘示12-8)、「29.以下の群から選択される1種類以上の医薬賦形剤を含む、請求項25~28に記載の医薬剤形。・・・(f)1種類以上のアルカリ化要素」(摘示12-12)との記載があるから、甲12発明2において「アルカリ化物質」を含む固形製剤とすることは、当業者が容易になし得た事項であるといえる。 <効果について> 本件明細書等には、発明の効果として、「【0013】本発明の固形製剤は、ピタバスタチン又はその塩由来のラクトン体生成が抑制され、しかも崩壊性に優れる。したがって、本発明の固形製剤は、有効成分の安定性が良好であるのみならず有効成分の放出と薬効発揮が確実であるから、品質に優れる。また、本発明の医薬品は、本発明の固形製剤が気密保存可能な包装体にて包装され包装体内への水分の侵入が妨げられるため、長期間に渡って包装体内部の固形製剤の水分含量が安定的に保たれ、固形製剤中のピタバスタチン又はその塩由来のラクトン体生成が長期間に渡って抑制され、有用である。」、「【0025】・・・従って、水分含量が1.5~2.9質量%(好適には1.5~2.1質量%、特に好適には1.5~1.9質量%)である本発明の固形製剤は、ラクトン体の生成が抑制され、また、5-ケト体の生成も抑制されるため、固形製剤中のピタバスタチンの安定性が特に良好であるという優れた効果を有する。」と記載されている。 そこで、以下に検討する。 a ラクトン体の生成抑制及び崩壊性について 甲12には、低湿度で、活性物質HMG-CoAレダクターゼ阻害剤がヒドロキシル酸形態からラクトン形態へと変換するのを防ぐこと、酸化および環境湿度に敏感な活性物質を保護し、その結果として安定化すること、活性物質の分解生成物(好ましくは酸化分解生成物および医薬賦形剤の分解生成物)の発生を防ぐことによって、環境影響に対して、好ましくは、酸化に対して、スタチンである活性物質を保護し、その結果として安定化することが記載されており(摘示12-4、12-6、12-8、12-11)、実施例8として、水分含有率が低いことに起因して、錠剤中のラクトンは、乾燥剤を加えない錠剤(レベルは0.22%)と比較して、かなり少ない割合で生成したことが記載されている(摘示12-11)。そして、本件明細書等には、水分含量を2.9質量%とすることによって初めて水分含量を低くすることによってラクトン体の生成も低くなるという関係が認められることを示す記載もない。 また、本件発明6の「カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上」は、崩壊剤として用いられるところ(本件明細書等の【0008】、【0009】等)、崩壊剤を配合すれば崩壊性が優れることも自明である。 b 気密包装体に収容することについて 甲12には、異なる乾燥剤を用いたパッケージ(HDPEプラスチック瓶)の中のコーティングされた錠剤を試験した結果、乾燥剤を加えた錠剤では、水分率が低いことに起因して、錠剤中のラクトンの生成が抑制された旨の記載があり(摘示12-11)、そもそも、気密包装体は、ピタバスタチン又はその塩と、ピタバスタチン又はその塩に影響を与えてラクトン体を生成させる外部の環境(湿度等)との接触を遮断し、又は抑制するものであるから、当該接触の遮断又は抑制により、固形製剤の内部の水分量を長期間にわたって低く維持できることは、自明の事項であるといえる。そうすると、固形製剤が気密包装体に収容されることにより包装体の内部に水分が浸入することが妨げられるため、長期間にわたって固形製剤の水分含量が安定的に保たれ、固形製剤中におけるピタバスタチン又はその塩に由来するラクトン体の生成が長期間にわたって抑制されるとの効果は、当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果であるとはいえない。 c 5-ケト体の生成抑制について 甲12には5-ケト体についての具体的な記載はないものの、酸化及び環境湿度に敏感な活性物質として、アトルバスタチン、イタバスタチンとともに例示されているロスバスタチン(摘示12-7)について、甲4(甲4では化学名(ビス[(E)-7-[4-(4-フルオロフェニル)-6-イソプロピル-2-[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン-5-イル]-(3R,5S)-3,5-ジヒドロキシヘプト-6-エン酸]カルシウム塩)(【0001】)で記載されており、甲12では、ロスバスタチンの化学名が(2:1)(3R,5S,6E)-7-(4-(4-フルオロフェニル)-6-(1-メチルエチル)-2-(メチル(メチルスルホニル)アミノ]-5-ピリミジニル)-3,5-ジヒドロキシ-6-ヘプテン酸]カルシウム塩と記載されており(7頁8行~10行)、化学名からみて、同一の化合物といえる。)には、「形成される主要な分解生成物は、相応する(3R,5S)ラクトン(以下では「ラクトン(the lactone)」と呼ぶ)およびその中で炭素-炭素の二重結合に隣接しているヒドロキシ基が酸化されてケトン官能基になっている酸化生成物(以下では「B2」と呼ぶ)である。」(摘示4-1)との記載があり、また、甲7には、「フルバスタチン及び関連HMG-CoAリダクターゼ化合物の上述した不安定性は、ヘプテン鎖上のβ,δ-ヒドロキシ基が非常に動きやすいこと及び二重結合が存在することによると思われる。即ち中性~酸性pHにおいてこの化合物は脱離又は異性化又は酸化反応を容易に受けて共役不飽和芳香族化合物、並びにトレオ異性体、対応するラクトン、及び他の分解生成物を生成する。」(摘示7-1)との記載があることから、ピタバスタチンのように炭素-炭素の二重結合に隣接するヒドロキシ基を有するスタチン類において、当該二重結合に隣接するヒドロキシ基の酸化等により分解物である5-ケト体が生成されることは、本件出願日当時に知られていたといえる。 当該記載を参考にすると、甲12において、その発生を防ぐとされる酸化分解生成物とは、ピタバスタチンの場合には、ロスバスタチンと同様に、炭素-炭素の二重結合に隣接しているヒドロキシ基を有することから、当該ヒドロキシ基(5位ヒドロキシ基)が酸化された5-ケト体であることは当業者が容易に推認し得ることである。 そして、本件明細書等(【0068】以下の試験例3)には、PTP包装及びアルミピロー包装を施した口腔内崩壊型錠剤(水分含量・1.5~2.9質量%)について、調製直後に0.13~0.14%であった5-ケト体の生成率が、40℃、75%相対湿度の条件下で2か月間保存した結果、0.14~0.18%となった旨の記載がある。しかしながら、上記bで述べたのと同様に、PTP包装及びアルミピロー包装を施した口腔内崩壊型錠剤については、 ピタバスタチン又はその塩と外部の環境(酸素等)との接触が遮断、又は抑制されるといえるところ、上述の点を考慮すれば、当該接触の遮断又は抑制によって、5-ケト体の生成が低く抑えられることは、本件出願日当時の当業者が予測することのできる範囲内のものであるといえ、これが格別顕著なものであるということはできない(なお、本件明細書等には、PTP包装及びアルミピロー包装を施さない固形製剤につき、水分含量を1.5質量%以上とすることにより5-ケト体の生成が抑制されるとの試験結果の記載はない。)。 したがって、本件発明6は当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するとはいえない。 以上のとおり、相違点6-122-1~相違点6-122-3に係る本件発明6の技術的事項は当業者が容易になし得た事項であり、本件発明6が当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するとはいえないから、本件発明6は、本件出願前に頒布された甲12に記載された発明及び本件出願当時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (イ)本件発明9について 本件発明9と甲12発明2とを対比する。 上記(ア)で述べたことを考慮すると、両者は、 「次の成分(A): (A)HMG-CoA還元酵素阻害活性を有する化合物; を含有し、 かつ、水分含量が1.5~2.9質量%である固形製剤であって、かつ、錠剤であって、気密包装体に収容される固形製剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点9-122-1> (A)HMG-CoA還元酵素阻害活性を有する化合物について、本件発明9は、「(A)ピタバスタチン又はその塩」であるのに対し、甲12発明2は、「アトルバスタチンCa」である点 <相違点9-122-2> 本件発明9は、固形製剤がコーティングされていることは特定されておらず、但し書きにおいて、「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤を除く」とされているのに対し、甲12発明2は、固形製剤が「カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール及び水からなる分散物でコーティング」されている点 <相違点9-122-3> 製剤が含有する成分について、本件発明9は、「(B)クロスポビドン;を含有し、(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず」とされているのに対し、甲12発明2は、「ラウリル硫酸ナトリウム、Prosolv SMCC90、アルファデンプン化されたコーンスターチ、架橋カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール」を含有する点 上記各相違点について検討するに、相違点9-122-1~9-122-2は、順に、上記(ア)の相違点6-122-1~6-122-2と同様の相違点であるから、その判断についても上記(ア)で述べたのと同様である。 <相違点9-122-3>について 本件発明9の成分(B)クロスポビドンについて、甲12には、医薬剤形が含む医薬賦形剤として、(a)1種類以上のフィラー;(b)1種類以上のバインダー、(c)1種類以上の崩壊剤、(d)1種類以上の滑沢剤または滑剤、(e)1種類以上の緩衝化要素、(f)1種類以上のアルカリ化要素、(g)1種類以上の界面活性剤および(h)着色剤、香味剤および吸着物質からなる群から選択される従来技術で知られている固形剤形のための他の成分、の群から選択される1種類以上の医薬賦形剤が記載されている(摘示12-12、請求項29)。 そして、甲12には、崩壊剤として具体的に記載された架橋したカルボキシメチルセルロースナトリウム等の7つの物質のうちの1つとして、架橋したポリビニルピロリドン(本件発明9のクロスポビドンに相当する。)が記載されている(摘示12-8)。 また、甲12には、医薬剤形の調製についての記載があり、例示ではあるものの、(治療)活性物質等とともに、崩壊剤を用いて調製する旨の記載があり(摘示12-9)、当該記載においては、「必要な場合には」として記載された界面活性剤、他の従来成分とは異なり、医薬剤形の調製において必ず用いる成分として記載されているといえる。 そして、甲16及び甲53にも記載のとおり(摘示16-1~16-4、53-1)、ピタバスタチンの塩等のスタチン系化合物を含有する固形製剤において、崩壊剤としてクロスポビドンを含有させることは周知である。 してみると、甲12発明2において、崩壊剤としてクロスポビドンを含有するものとすることは当業者が容易になし得た事項である。 本件発明9における、(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有しないとされる点について、甲12発明2の「架橋カルボキシメチルセルロース」、「カルボキシメチルセルロースナトリウム」及び「Prosolv SMCC90」(Prosolv SMCC90については、上記(ア)で述べたとおり、結晶セルロースである。)は、それぞれ、本件発明9において含有しないとされる「カルメロース」、「カルメロースの塩」及び「結晶セルロース」に相当し、甲12発明2における上記各成分は、フィルム形成剤又は医薬賦形剤であると認められるところ、甲12には、フィルム形成剤及び医薬賦形剤として、甲12発明2で用いられている上記各成分以外であって、カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースに該当しない、各種の物質を用いることができることが記載されている(摘示12-7、12-8)。 そして、本件特許の出願時に、甲5(摘示5-1)、甲6(摘示6-2)及び甲20(摘示20-2)に記載されるとおり、水分等から保護するフィルム形成剤として、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルメロース、カルメロースの塩以外のセルロース誘導体は周知であると認められる。 また、甲16及び甲53に記載のとおり(摘示16-1~16-4、53-1)、ピタバスタチンの塩等のスタチン系化合物を含有する固形製剤において、カルメロース及びその塩又は結晶セルロースを含有しないものは周知である。 してみると、甲12発明2において、「架橋カルボキシメチルセルロース」、「カルボキシメチルセルロースナトリウム」及び「Prosolv SMCC90」を、甲12に記載された他の成分又は周知のセルロース誘導体であるフィルム形成剤又は医薬賦形剤と置換することにより、「C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず」とすることは当業者が容易になし得た事項である。 そして、本件発明9が奏する効果の判断については、上記(ア)で述べたのと同様である。 したがって、本件発明9は、本件出願前に頒布された甲12に記載された発明及び本件出願当時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 イ 甲62発明について(無効理由2に関する。) 甲62発明を甲12発明2と比較すると、甲12発明2の「アルファデンプン化されたコーンスターチ」の代わりに、「アルファ化コーンスターチ」が錠剤コアの成分として配合されているが、これらは実質的に同じ物質であると認められるから、甲62発明は実質的に甲12発明2と同一である。また、甲62には、摘示12-8の含水量の点、摘示12-10、摘示12-12(なお、これらの記載は、一致点・相違点の導出に影響しない。)の他は上記アで指摘した甲12の記載と同様の事項が記載されている。なお、甲62発明における水分は重量%で特定されており、質量%と同じであると認める。 したがって、本件発明6と甲62発明との一致点・相違点は、上記ア(ア)で示したのと同様であり、本件発明9と甲62発明との一致点は、上記ア(イ)で示したのと同様であり、本件発明9と甲62発明とは、上記ア(イ)で示した相違点9-122-1、9-122-2と同様の相違点に加えて、相違点9-122-3に代えて、以下の点で相違する。 <相違点9-62-3> 製剤が含有する成分について、本件発明9は、「(B)クロスポビドン;を含有し、(C)カルメロース及びその塩並びに結晶セルロースをいずれも含有せず」とされているのに対し、甲62発明2は、「ラウリル硫酸ナトリウム、Prosolv SMCC90、アルファ化コーンスターチ、架橋カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール」を含有する点 (ア)本件発明6について 相違点6-122-1及び相違点6-122-3と同様の相違点(相違点6-62-1及び相違点6-62-3)の判断については、上記ア(ア)で述べたのと同様である。 相違点6-122-2と同様の相違点(相違点6-62-2)について、甲62の発明に関する技術分野の項には、本発明は、コーティングされた粒子および医薬剤形に関するものであることが記載され(摘示62-1)、発明の説明の項には、活性物質の粒子および/または医薬剤形は、環境影響、とりわけ大気の影響、特に環境中の酸化と湿度、さらに優れては酸化において活性物質の安定化と保護を可能にするコーティングを用いてコーティングされていることが記載され(摘示62-7)、コーティングという用語は、コアに直接的に塗布される被膜あるいは層を意味し、このようなコーティングは、本発明範囲内のコーティングされた活性物質を含む錠剤、カプセルまたは類似剤形に直接塗布される、他のあらゆる既存フィルムコーティングまたは不溶性コーティングでもよく、適切なフィルム形成剤は、前記の環境影響に敏感な活性物質を含む医薬製剤のコアに、コーティングの形態で塗布される任意のフィルム形成剤であること、特に環境中での酸化と湿度から活性物質を保護するものであること、最も好ましくは、フィルム形成剤が、酸化から活性物質を保護する任意のフィルム形成剤であること、このようなフィルム形成剤は、ポリビニルアルコール(PVA)およびセルロース誘導体からなる群から選択されることが記載され(摘示62-9)、実施例では、いずれもセルロース誘導体が用いられている。 上記甲62の記載によれば、甲62発明における「コーティング」は、酸化や環境湿度等に敏感なスタチン類(HMG-CoAレダクターゼ阻害剤)を保護し、これを安定化するために塗布する層であるところ、適切なフィルム形成剤は、環境影響に敏感な活性物質を含む医薬製剤のコアに、コーティングの形態で塗布される任意のフィルム形成剤であり、また、環境影響から活性物質を保護し、特に環境中での酸化と湿度から活性物質を保護するものであり、最も好ましいフィルム形成剤は、活性物質を酸化から保護する任意のフィルム形成剤であると理解され、当該任意のフィルム形成剤のうち、好適なものがポリビニルアルコール(PVA)およびセルロースの誘導体からなる群から選択されるものであると理解するのが自然である。このことは、甲62の請求項1に記載された「環境中の酸化および湿度において活性物質の安定化を可能にするコーティング」について、請求項2において、「コーティングは1種類以上のフィルム形成剤を含む」とされており、フィルム形成剤の種類が特定されていないこととも整合する。 一方、甲3(摘示3-3)、甲8(摘示8-2)、甲13(摘示13-4)、甲20(摘示20-2)、甲22(摘示22-2)、甲60(摘示60-1~60-3)、甲61(摘示61-1)にも記載のとおり、従来から、固形医薬品の安定性を高める目的で保護コーティングが施され、その材料として様々なもの(ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体ではないアミノアルキルメタアクリレートコポリマーEを含む。)が周知であり、特に、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤のコーティング材料として、カルメロース及びその塩、クロスポビドン等の崩壊剤と共に、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーEを用い得ることが知られていたといえる。 そうすると、甲62発明の「コーティング」の材料として、「カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール及び水からなる分散物」に代えてアミノアルキルメタアクリレートコポリマーE等の「ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体」を含まない周知のものを採用することで、「固形製剤又は成分(A)の粒子若しくは成分(A)を含む粒子がポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている固形製剤」を「除く」ものに該当するものとすることは当業者が容易になし得た事項であるといえる。 そして、本件発明6が奏する効果の判断については、上記ア(ア)で述べたのと同様である。 したがって、本件発明6は、本件出願前に頒布された甲62に記載された発明及び本件出願当時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (イ)本件発明9について 相違点9-122-1~9-122-2と同様の相違点(相違点9-62-1~9-62-2)についての判断は、上記ア(ア)で相違点6-122-1及び6-122-2について述べたのと同様である。 相違点9-62-3についての判断は、上記ア(イ)で相違点9-122-3について述べたのと同様である(なお、甲62には、摘示62-10として、摘示12-12の請求項29と同様の記載がある。)。 そして、本件発明9が奏する効果の判断については、上記ア(ア)で述べたのと同様である。 したがって、本件発明9は、本件出願前に頒布された甲62に記載された発明及び本件出願当時の技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (4)被請求人の主張について 被請求人は、 審判事件答弁書1の14、22、25頁、口頭審理陳述要領書19~32頁において、甲12には、ポリビニルアルコール(PVA)およびセルロースの誘導体からなる群から選択されるフィルム形成剤以外に、フィルム形成剤として用いられる材料について何ら記載も示唆もされていないこと、甲12発明2の「医薬剤形がカルボキシメチルセルロースナトリウムをフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている」構成を、「環境影響に敏感な活性物質の粒子若しくは環境影響に敏感な活性物質を含む粒子又はこれらの粒子を含む固形製剤が、(環境影響からの)保護および安定性を提供するポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされた構成」以外の構成とすることについて、当業者には阻害要因がある旨を、 審判事件答弁書1の29、32頁、口頭審理陳述要領書33~43頁において、甲62には、ポリビニルアルコール(PVA)およびセルロースの誘導体からなる群から選択されるフィルム形成剤以外に、フィルム形成剤として用いられる材料について何ら記載も示唆もされていないこと、甲62発明の「医薬剤形がカルボキシメチルセルロースナトリウムをフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされている」構成を、「環境影響に敏感な活性物質の粒子若しくは環境影響に敏感な活性物質を含む粒子又はこれらの粒子を含む固形製剤が、(環境影響からの)保護および安定性を提供するポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む材料の層でコーティングされた構成」以外の構成とすることについて、当業者には阻害要因があることを、 口頭審理陳述要領書28、42頁において、甲12、62に記載された発明においては、「ポリビニルアルコール又はセルロース誘導体をフィルム形成剤として含む」コーティングを、従来技術で知られている他のコーティングに置き換えることは予定されていない旨を 上申書9の別紙47~64頁において、甲12の「上述の膜形成剤は、ポリビニルアルコール(PVA)およびセルロースの誘導体からなる群から選択される。」との記載のうち、「上述の膜形成剤」は「環境影響に対する保護を与える膜形成剤」を指すもので、当該記載は、「ポリビニルアルコール(PVA)およびセルロースの誘導体からなる群から選択される」膜形成剤が、「環境影響に対する保護を与える膜形成剤」であることを説明するものと理解するのが正しいから、甲12には、ポリビニルアルコールやセルロース誘導体以外のフィルム形成剤も用い得ることが記載されているといえるとの判断は誤りである旨、乙19及び乙20を提示して、ポリビニルアルコールやセルロース誘導体以外の材料をフィルム形成剤とするコーティングが甲12における「環境影響からの活性物質の保護および1種類以上の医薬賦形剤および/または医薬剤形の保護および安定性を提供とする」コーティングとなり得るか否かは不明であるから、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤において、ポリビニルアルコールや結晶セルロース誘導体以外の材料をフィルム形成剤とするコーティングが周知であり、一般にコーティング剤は酸化や湿度から内部の活性物質を保護するものであるとはいえない旨、甲12に接した当業者が、「ポリビニルアルコールおよびセルロース誘導体またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるフィルム形成剤」に代えて、環境影響からの、好ましくは酸化および/または環境湿度に対する活性物質の保護を与える任意のフィルム形成剤として、ポリビニルアルコール及びセルロース誘導体以外のフィルム形成剤を用いてみることの動機付けはない旨、甲62についても同様である旨を、主張する。 しかしながら、上記(3)ア(ア)の「<相違点6-122-2>について」で、及び(3)イ(ア)の相違点6-62-2についてで述べたとおりであり、甲12発明2及び甲62発明の「コーティング」の材料として、「カルボキシメチルセルロースナトリウム、グリセロール及び水からなる分散物」に代えてアミノアルキルメタアクリレートコポリマーE等の「ポリビニルアルコールおよびセルロース誘導体」を含まない周知のものを採用することは当業者が容易になし得た事項であり、甲12及び甲62に、ポリビニルアルコール(PVA)およびセルロースの誘導体からなる群から選択されるフィルム形成剤以外に、フィルム形成剤として用いられる材料について何ら記載も示唆もされていないとはいえず、上記阻害要因があるとはいえず、たまたま酸化や湿度から内部の活性物質を保護することができないフィルム形成剤が存在したとしても、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE等のコーティングの材料を用いる動機付けがあり、当該材料を使用することは当業者が容易になし得た事項である。 本件発明9についても同様である。 よって、上記被請求人の主張を採用することはできない。 (5)まとめ 以上のとおりであるから、本件発明6及び9について、無効理由1及び2には理由がある。 2 無効理由3について (1)無効理由3についての請求人の主張の概要 本件明細書等において、ピタバスタチン又はその塩の安定性は、処方例1の口腔内崩壊型錠剤についてのみ確認されているところ、処方例1には、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、塩化カルシウム二水和物及び結晶セルロースが含まれており、これらの成分は、ピタバスタチンカルシウムの安定性に寄与し、また、安定性が維持されているから、これらの成分は必須の成分である。また、本件明細書等の【0067】の記載からみて、気密包装は必須の構成である。 したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、本件特許出願時の技術常識に照らしても、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、塩化カルシウム二水和物及び結晶セルロースを含んでおらず、気密包装体に収容されていない固形製剤についてまで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、本件特許は、特許法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきである。 (審判請求書別紙22~23頁、100~111頁、上申書3の49~62頁、120~136頁、弁駁書の46~47頁、49~67頁) (2)判断の前提 特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件(いわゆる「明細書のサポート要件」)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (3)本件明細書等の記載 本件明細書等には以下の記載がある。 本-1)「【0001】 本発明は、ピタバスタチン又はその塩のラクトン体生成が抑制された固形製剤及び当該固形製剤を用いた医薬品に関する。 【背景技術】 【0002】 いわゆるスタチン類の一種であるピタバスタチンカルシウム(化学名:(+)-monocalcium bis{(3R,5S,6E)-7-[2-cyclopropyl-4-(4-fluorophenyl)-3-quinolyl]-3,5-dihydroxy-6-heptenoate})等のピタバスタチン又はその塩は、優れたHMG-CoA還元酵素阻害活性を有し、高脂血症治療剤、高コレステロール血症治療剤等の有効成分として有用であることが知られている(特許文献1)。 【0003】 上記スタチン類の共通骨格であるジヒドロキシカルボン酸骨格は、脱水縮合反応により分子内で環化し、HMG-CoA還元酵素阻害活性の低いラクトン体を生成することが知られている。医薬品製剤中でのラクトン体の生成は、医薬品の有効性の低下や医薬品間での有効性の不均一性の原因ともなり得る。そのため、ピタバスタチンを含むスタチン類の医薬品製剤中での安定性を向上させる試みが従来より種々なされているが、その多くはスタチン類のpH環境に対する検討であり、具体的には低pH環境下におけるジヒドロキシカルボン酸骨格の不安定性を考慮して炭酸カルシウム等の塩基性物質を配合してスタチン類のpH環境を塩基性にする、というものである(特許文献2、3)。 【0004】 また、特許文献4には、ピタバスタチンカルシウムの結晶性形態Aを乾燥させると、水分が4%以下でアモルファス化して結晶性が低下すること、及びアモルファス化したピタバスタチンカルシウムは保存中の安定性が極めて悪くなることが記載されている。さらに、非特許文献1には、「有効成分の各種条件下における安定性」の項において、低湿度条件下(60℃、30%RH)において水分減少とともに類縁物質の増加が認められた旨、記載されている。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかしながら、特許文献4及び非特許文献1には、ピタバスタチンカルシウムと特定の高い吸湿性を有する崩壊剤とを含有する固形製剤における、吸湿(水分の上昇)に伴う不安定性については一切記載されていない。 【0008】 ところで、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウムなどのカルメロース又はその塩、クロスポビドン、結晶セルロースといった医薬品添加物はいずれも極めて高い吸湿性を有する。そのため固形製剤に配合した場合、吸湿して膨潤する・毛管作用により製剤内部に導水するといった作用を発揮し、固形製剤に良好な崩壊性を付与するため、崩壊剤等として利用されている。 【0009】 固形製剤の崩壊性の向上は、有効成分の放出と薬効発揮をより確実にし、ひいては固形製剤の品質の向上につながるというメリットがある。また、良好な崩壊性を特徴とする固形製剤の一種である口腔内崩壊型の固形製剤においては、水無しに服用できるため場所・時間等を問わず服用でき、服用コンプライアンスの向上につながるというメリットもある。 このようなメリットを考慮して、本発明者はピタバスタチン又はその塩を含有する崩壊性が良好な固形製剤を得るため、カルメロース又はその塩、クロスポビドン、結晶セルロースといった崩壊剤とピタバスタチン又はその塩とを混合したところ、経時的に多量のラクトン体が生成することが判明した。 従って、本発明は、ピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上とを含有する、ラクトン体生成の抑制された固形製剤、及び当該固形製剤を用いた医薬品を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明者は上記課題を解決するにあたり、まずピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上との混合時におけるラクトン体生成の原因・メカニズムにつき鋭意検討したところ、驚くべきことに、混合物中の水分含量とラクトン体量の間に相関があり、水分含量が増加するに従い脱水縮合物であるラクトン体の生成量が増加することが明らかとなった。一方において、特許文献5記載の「製剤の各種条件下における安定性」の項においては、現在販売中の「リバロ錠」の苛酷試験(湿度:25℃、60%RH又は85%RH)での安定性につき“規格範囲内”あるいは“溶出率低下”とされているのみである。これらのことから、上記した崩壊剤との共存によるラクトン体生成の原因・メカニズムは、現在販売中の「リバロ錠」には配合されていない上記特定の崩壊剤の有する高い吸湿性に起因することが示唆された。そして、固形製剤の水分含量を一定値以下とすることによって、ピタバスタチン又はその塩由来のラクトン体生成が抑制できることを見出し、本発明を完成した。 【0011】 すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B): (A)ピタバスタチン又はその塩; (B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上; を含有し、かつ、水分含量が2.9質量%以下である固形製剤を、気密包装体に収容してなる医薬品を提供するものである。 【0012】 また、本発明は、次の成分(A)及び(B): (A)ピタバスタチン又はその塩; (B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上; を含有し、かつ、水分含量が2.9質量%以下である固形製剤を提供するものである。 【発明の効果】 【0013】 本発明の固形製剤は、ピタバスタチン又はその塩由来のラクトン体生成が抑制され、しかも崩壊性に優れる。したがって、本発明の固形製剤は、有効成分の安定性が良好であるのみならず有効成分の放出と薬効発揮が確実であるから、品質に優れる。 また、本発明の医薬品は、本発明の固形製剤が気密保存可能な包装体にて包装され包装体内への水分の侵入が妨げられるため、長期間に渡って包装体内部の固形製剤の水分含量が安定的に保たれ、固形製剤中のピタバスタチン又はその塩由来のラクトン体生成が長期間に渡って抑制され、有用である。」 本-2)「【発明を実施するための形態】 【0014】 ・・・ 本発明においては、ピタバスタチンカルシウム(化学名:(+)-monocalcium bis{(3R,5S,6E)-7-[2-cyclopropyl-4-(4-fluorophenyl)-3-quinolyl]-3,5-dihydroxy-6-heptenoate})が好ましい。 ピタバスタチン又はその塩は公知の化合物であり、例えば、特開平1-279866号公報、米国特許第5856336号明細書等に記載の方法により製造することができる。 【0015】 本発明において、固形製剤における成分(A)の含有量は特に限定されず、服用者の性別、年齢、症状等に応じて適宜検討して決定することができるが、例えば、1投与単位当たり、成分(A)をピタバスタチンカルシウム換算で0.1~16mg、より好適には0.5~12mg、さらに好適には1~8mg、特に好適には1~4mg含有する固形製剤が好ましい。 本発明においては、成分(A)を固形製剤全質量に対して、ピタバスタチンカルシウム換算で0.1~10質量%含有する固形製剤が好ましく、0.2~5質量%含有する固形製剤がより好ましく、0.5~4質量%含有する固形製剤が特に好ましい。 【0016】 本発明において、「カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上(以下、「成分(B)」とも称する)」には、カルメロース、カルメロースの薬学上許容される塩、カルメロースやその薬学上許容される塩の架橋重合物、クロスポビドン及び結晶セルロースが包含される。本発明においては、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。 【0017】 本発明において、固形製剤における成分(B)の含有量は特に限定されず、固形製剤の崩壊性に応じて適宜検討して決定することができる。本発明においては、成分(B)を固形製剤全質量に対して合計で0.1~85質量%含有する固形製剤が好ましく、0.5~70質量%含有する固形製剤がより好ましく、1~60質量%含有する固形製剤が特に好ましい。また、成分(B)をピタバスタチンカルシウム換算した成分(A)1質量部に対しては、合計で0.1~90質量部含有する固形製剤が好ましく、0.5~75質量部含有する固形製剤がより好ましく、1~65質量部含有する固形製剤が特に好ましい。 【0018】 本発明において、「カルメロース及びその塩」には、カルメロースそのもののほか、カルメロースの薬学上許容される塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等)、さらにはカルメロースやその薬学上許容される塩の架橋重合物(クロスカルメロース)も包含される。具体的には例えば、カルメロース、カルメロースカリウム、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム等が挙げられる。本発明においては、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 本発明においては、カルメロース及びその塩として分子量、塩の種類等の異なるいずれのものを用いてもよいが、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウムが好ましく、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウムが特に好ましい。 【0019】 本発明において、カルメロース及びその塩としては市販品を用いてもよく、具体的には例えば、NS-300、ECG-505(以上、五徳薬品社製)、サンローズ(日本製紙ケミカル社製)、セロゲン(三栄源エフ・エフ・アイ社製)、セロゲンシリーズ(第一工業製薬社製)、Ac-Di-Sol(旭化成ケミカルズ社製)、キッコレートND-2HS(ニチリン化学工業社製)等が挙げられる。 【0020】 本発明において、固形製剤におけるカルメロース及びその塩の含有量は特に限定されず、固形製剤の崩壊性に応じて適宜検討して決定することができる。本発明においては、カルメロース及びその塩を固形製剤全質量に対して合計で0.01~25質量%含有する固形製剤が好ましく、0.1~20質量%含有する固形製剤がより好ましく、0.5~15質量%含有する固形製剤が特に好ましい。また、ピタバスタチンカルシウム換算した成分(A)1質量部に対しては、カルメロース及びその塩を合計で0.01~30質量部含有する固形製剤が好ましく、0.1~25質量部含有する固形製剤がより好ましく、0.5~20質量部含有する固形製剤が特に好ましい。 【0021】 本発明に用いられるクロスポビドンは特に限定されず、分子量等の異なるいずれのクロスポビドンを用いてもよく、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。 本発明において、クロスポビドンとしては市販品を用いてもよく、具体的には例えば、クロスポビドン(五協産業社製)、コリドンCL-F、コリドンCL-M、コリドンCL-SF(以上、BASF社製)、ポリプラスドンXL、ポリプラスドンXL-10、ポリプラスドンINF-10(以上、アイエスピー・ジャパン社製)等が挙げられる。 【0022】 本発明において、固形製剤におけるクロスポビドンの含有量は特に限定されず、固形製剤の崩壊性に応じて適宜検討して決定することができる。本発明においては、クロスポビドンを固形製剤全質量に対して0.1~25質量%含有する固形製剤が好ましく、0.5~20質量%含有する固形製剤がより好ましく、1~15質量%含有する固形製剤が特に好ましい。また、ピタバスタチンカルシウム換算した成分(A)1質量部に対しては、クロスポビドンを0.1~30質量部含有する固形製剤が好ましく、0.5~25質量部含有する固形製剤がより好ましく、1~20質量部含有する固形製剤が特に好ましい。 【0023】 本発明に用いられる結晶セルロースは特に限定されず、分子量、粒径等の異なるいずれの結晶セルロースを用いてもよく、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。 本発明において、結晶セルロースとしては市販品を用いてもよく、具体的には例えば、セオラスUFグレード、セオラスKGグレード、セオラスPHグレード(以上、旭化成ケミカルズ社製)等が挙げられる。 【0024】 本発明において、固形製剤における結晶セルロースの含有量は特に限定されず、固形製剤の崩壊性に応じて適宜検討して決定することができる。本発明においては、結晶セルロースを固形製剤全質量に対して0.1~80質量%含有する固形製剤が好ましく、0.5~65質量%含有する固形製剤がより好ましく、1~50質量%含有する固形製剤が特に好ましい。また、ピタバスタチンカルシウム換算した成分(A)1質量部に対しては、結晶セルロースを0.1~85質量部含有する固形製剤が好ましく、0.5~70質量部含有する固形製剤がより好ましく、1~55質量部含有する固形製剤が特に好ましい。 【0025】 本発明の固形製剤は、ラクトン体の生成を抑制するため水分含量が固形製剤全質量に対し2.9質量%以下である必要があるが、ラクトン体の生成抑制の観点から2.1質量%以下であるのがより好ましく、1.9質量%以下であるのが特に好ましい。 なお、後掲の試験例3に記載の通り、本発明の固形製剤の水分含量を1.5質量%以上とした場合、ラクトン体とは別の分解物である5-ケト体の生成を抑制できる。5-ケト体は、特許文献5記載の通りピタバスタチン又はその塩を光に曝すことによって生じる光分解物であることが知られているが、水分との関係についてこれまでに報告はない。 従って、水分含量が1.5~2.9質量%(好適には1.5~2.1質量%、特に好適には1.5~1.9質量%)である本発明の固形製剤は、ラクトン体の生成が抑制され、また、5-ケト体の生成も抑制されるため、固形製剤中のピタバスタチンの安定性が特に良好であるという優れた効果を有する。 【0026】 また、別の観点から、本発明は、ピタバスタチン又はその塩を含有し、かつ、水分含量が1.5質量%以上である固形製剤、好適には、次の成分(A)及び(B): (A)ピタバスタチン又はその塩; (B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上; を含有し、かつ、水分含量が1.5質量%以上である固形製剤を提供するものである。 【0027】 なお、本発明の固形製剤の水分含量は、カールフィッシャー法により測定される。具体的には、第十六改正日本薬局方の水分測定法(カールフィッシャー法)に準拠し、容量滴定法又は電量滴定法を適宜選択して行えばよい。 【0028】 本発明は、成分(A)と、成分(B)を含有する固形製剤の水分含量を調整することによって、成分(A)由来のラクトン体生成を抑制することを一つの特徴とする。ここで、固形製剤の水分含量を調整する手段としては、加湿手段と乾燥手段とが挙げられ、これらの手段を適宜組み合わせることにより本発明に係る水分含量に調整すればよい。 【0029】 加湿手段としては、例えば、湿式造粒操作において練合液として含水溶媒を用いる手段等が挙げられる。 乾燥手段としては、例えば、乾燥装置を用いる手段や乾燥剤を用いる手段が挙げられる。ここで、乾燥装置としては、医薬品や食品の分野で通常使用されているものを用いることができ、具体的には例えば、箱型乾燥機、流動層乾燥機、噴霧乾燥機、凍結乾燥機、真空乾燥機、高周波乾燥機等を挙げることができる。また、乾燥剤としては、医薬品や食品の分野で通常使用されているものを用いることができ、具体的には例えば、シリカゲル、シリカアルミナゲル(例えば、アロフェン)、天然ゼオライト、合成ゼオライト(例えば、モレキュラーシーブ)、生石灰(酸化カルシウム)、ベントナイトクレイ(例えば、モンモリロナイト)、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び酸化マグネシウムから選択される1種以上が挙げられ、これらと活性炭を混合したものであってもよい。本発明においては、固形製剤の水分含量の調整の容易さから、乾燥装置を用いる方法が好ましい。 なお、これらの加湿手段や乾燥手段は、固形製剤の製造途中に行ってもよいし、固形製剤の製造後に行ってもよいが、固形製剤中の水分含量を正確に調整するため、少なくとも固形製剤の製造後に行うのが好ましい。 【0030】 本発明において固形製剤は、その具体的形態(剤形)に応じて、上記成分以外に当該技術分野において通常用いられている添加剤を含有していてもよい。当該添加剤としては、例えば、賦形剤、崩壊剤(成分(B)を除く)、結合剤、滑沢剤、着色剤、可塑剤、フィルム形成剤、難水溶性高分子物質、抗酸化剤、矯味剤、甘味剤、pH調整剤、界面活性剤、香料等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を適宜組み合わせて使用することが可能である。なお、各添加剤の使用量は適宜決定することができる。 【0031】 賦形剤としては、例えば、酸化チタン、・・・使用することができる。 崩壊剤としては、例えば、デンプン、・・・使用することができる。 【0032】 結合剤としては、例えば、・・・使用することができる。 滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、・・・用いることができる。 【0033】 着色剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、・・・使用することができる。 可塑剤としては、例えば、グリセリン、・・・用いることができる。 【0034】 フィルム形成剤としては、例えば、メチルセルロース、・・・用いることができる。 【0035】 難水溶性高分子物質としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、・・・用いることができる。 抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、・・・用いることができる。 【0036】 矯味剤としては、例えば、リモネン、・・・用いることができる。・・・ 【0037】 甘味剤としては、例えば、アスパルテーム、・・・用いることができる。・・・ 【0038】 本発明において、固形製剤のpHは特に限定されるものではないが、4以上、好ましくは4~13、より好ましくは5~12、更に好ましくは6~11、特に好ましくは7~11である。・・・ 【0039】 本発明において、固形製剤は、第十六改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法にしたがって、種々の剤形にすることができる。・・・なお、これらの固形製剤は必要に応じてフィルム、糖衣等でコーティングされていてもよい。 ・・・ 【0040】 本発明において、固形製剤は、その剤形に応じて第十六改正日本薬局方等に記載の公知の方法により、製造することができる。 ・・・ 【0045】 また、本発明は、上記の固形製剤が気密包装体に収容してなる医薬品を提供するものである。固形製剤を気密包装体に収容することにより、包装体外からの水分の侵入が妨げられる結果、包装体内部に存在する固形製剤の水分含量が長期間に渡って安定的に保たれ、結果として固形製剤中の成分(A)由来のラクトン体生成が長期間に渡って抑制される。 本発明の「医薬品」は、気密包装体の内部において固形製剤が2.9質量%以下の水分含量であればよい。すなわち、気密包装体から固形製剤を取り出した直後において、その水分含量が2.9質量%以下であればよく、例えば、気密包装体にて収容する前において固形製剤の水分含量が2.9質量%以上であっても、乾燥剤を同封する等の手段により気密包装体の内部において固形製剤の水分含量が2.9質量%以下となっていれば(すなわち、気密包装体から固形製剤を取り出した直後において、その水分含量が2.9質量%以下となっていれば)本発明の「医薬品」に包含される。 【0046】 本発明において「気密包装体」とは、通常の取扱い、運搬又は保存等の状態において、水分の包装体外からの実質的な侵入を抑制し得る包装を意味し、第十六改正日本薬局方 通則に定義される「気密容器」及び「密封容器」を包含する概念である。当該包装体としては、定形、不定形のいずれのものも用いることができ、具体的には例えば、ビン包装、SP(Strip Package)包装、PTP(Press Through Package)包装、ピロー包装、スティック包装等が挙げられる。本発明においては、さらにこれらを複数組み合わせたものであってもよく、具体的には例えば、固形製剤をまずPTP包装にて包装し、これをさらにピロー包装にて包装する形態が挙げられる。 【0047】 気密包装体の包装材料(素材)としては、防湿性を発揮し得るものであれば特に限定されず、・・・ ビン包装に用いられるビン本体の材料としては例えば、ガラス、プラスチック(ポリエステル、ポリエチレン(低密度(LDPE)、高密度(HDPE)を含む)、・・・等が挙げられる。・・・ 【0052】 本発明において、固形製剤を気密包装体に収容する方法は・・・ 【0053】 本発明の固形製剤は、HMG-CoA還元酵素阻害活性を有するピタバスタチン又はその塩をその構成成分として含有することから、例えば、高脂血症治療剤、高コレステロール血症治療剤、家族性高コレステロール血症治療剤等として利用できる。また、医薬組成物の服用経路としては、経口及び非経口が挙げられ、経口投与が好ましい。さらに、医薬組成物は、1日につき1~4回程度に分けて、食前、食間、食後、就寝前等に服用することができる。」 本-3)「【実施例】 【0057】 以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。 【0058】 [試験例1]高い吸湿性を有する崩壊剤との共存によるラクトン体生成の確認 高い吸湿性を有する崩壊剤との共存下におけるピタバスタチン又はその塩由来のラクトン体生成を確認するため、以下の混合物1~4を調製してポリエチレン製の袋及びアルミ袋に入れ70℃で3日間保存し、混合物調製直後及び70℃、3日保存後の混合物中のラクトン体の生成率を評価した。ラクトン体の生成率は、各混合物につき、HPLC装置(WATERS製2695)を用いて、ピタバスタチン及びその分解物に由来する総ピーク面積に対する面積百分率として測定した。なお、参考のため、ピタバスタチンカルシウムのみ別途70℃、3日保存した場合のラクトン体の生成率も同様に評価した。 【0059】 また、ラクトン体の生成と混合物中の水分含量の相関の有無を確認するため、混合物1~4について、70℃、3日保存後の水分含量を測定した。 水分含量は、第十六改正日本薬局方の水分測定法(カールフィッシャー法)に準拠して、容量滴定法により測定した。結果を表1に示す。 【0060】 <混合物1> ピタバスタチンカルシウム1質量部と、クロスポビドン(BASF社製:商品名 コリドンCL-SF)10質量部とを混合し、混合物1を調製した。 <混合物2> ピタバスタチンカルシウム1質量部と、カルメロースカルシウム(五徳薬品社製:商品名 ECG-505)10質量部とを混合し、混合物2を調製した。 【0061】 <混合物3> ピタバスタチンカルシウム1質量部と、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ社製:商品名 セオラスUF-711)10質量部とを混合し、混合物3を調製した。 <混合物4> ピタバスタチンカルシウム1質量部と、カルメロースナトリウム(第一工業製薬社製:商品名 セロゲンP-815C)10質量部とを混合し、混合物4を調製した。 【0062】 【表1】 [図:0001396572000030.jpg] 【0063】 表1記載の試験結果から、各混合物中の水分含量とラクトン体の生成率との間に相関があり、水分含量が増加するに従って、ラクトン体量が増加することが明らかとなった。そして、クロスポビドン、カルメロースカルシウム、結晶セルロース、カルメロースナトリウムはいずれも高い吸湿性を有することから、ラクトン体の生成はこうした崩壊剤の有する高い吸湿性に起因し、共存する崩壊剤が吸湿してピタバスタチンが水分に曝される結果、ラクトン体が生成するものと推察された。 【0064】 [試験例2]ラクトン体の生成抑制試験 下記の方法により製造した口腔内崩壊型錠剤の水分含量を、真空乾燥にて表3に示す各水分含量に調整した(なお、水分含量の測定方法は下記の通り)。その後、水分含量の調整された各錠剤(100錠)を、予めポケット部分を成形した樹脂シート(住友ベークライト社製:商品名 スミライトVSS-1202-R)のポケット部分に入れ、次いでPTP用アルミ箔(大和化学工業社製:商品名 アルミ箔銀無地)で蓋をしてPTP包装し、得られたPTP包装体を更にアルミラミネート袋(生産日本社製:商品名 ラミジップALシリーズ)でアルミピロー包装した。こうして得られた包装体を40℃、75%相対湿度の条件下で2ヵ月間保存し、錠剤調製直後、1ヶ月保存後及び2ヶ月保存後の、錠剤中のラクトン体の生成率を評価した。ラクトン体の生成率は、各錠剤につき、HPLC装置(SHIMADZU製LC-20シリーズ)を用いて、ピタバスタチン及びその分解物に由来する総ピーク面積に対する面積百分率として測定した。 また、錠剤中の水分含量は、第十六改正日本薬局方の水分測定法(カールフィッシャー法)に準拠して、容量滴定法により測定した。 【0065】 <口腔内崩壊型錠剤の製造> 常法に従い、下記表2記載の成分及び分量(mg)を1錠中に含有する口腔内崩壊型錠剤を製造した。 すなわち、表2中、ピタバスタチンカルシウムから酸化チタンまでの成分を用い、湿式造粒法にて顆粒を製造した。 得られた顆粒、及び表2中キシリトール以下の成分を混合し、打錠することにより、1錠当たり120mgの口腔内崩壊型錠剤を製造した。 【表2】 [図:0001396572000031.jpg] 【0066】 結果を表3に示す。 【表3】 [図:0001396572000032.jpg] 【0067】 表3に示す試験結果から、錠剤の水分含量が2.9質量%以下である場合にラクトン体の生成が顕著に抑制されることが明らかとなった。特に、錠剤の水分含量が2.1質量%以下である場合、40℃、75%相対湿度の条件下で2ヶ月保存後においてもラクトン体の生成率は低く抑えられていた。なお、気密包装(PTP包装、アルミピロー包装)によって包装体外からの水分の侵入が妨げられた結果、40℃、75%相対湿度の条件下で2ヶ月保存後においても各錠剤中の水分含量に変化は認められなかった。 以上の試験結果から、ピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上を含有し、かつ、水分含量が2.9質量%以下である固形製剤においてはラクトン体生成が抑制されることが明らかとなった。また、当該固形製剤が気密包装体に収容されてなる医薬品は水分含量が安定的に維持される結果長期に渡ってラクトン体生成が抑制されることも明らかとなった。 【0068】 [試験例3]5-ケト体の生成抑制試験 試験例2と同一の方法により、種々の水分含量の口腔内崩壊型錠剤をPTP包装、次いでアルミピロー包装して得られた包装体を40℃、75%相対湿度の条件下で2ヶ月間保存し、錠剤調製直後、1ヶ月保存後及び2ヶ月保存後の、錠剤中の5-ケト体の生成率を評価した。5-ケト体の生成率は、各錠剤につき、HPLC装置(SHIMADZU製LC-20シリーズ)を用いて、ピタバスタチン及びその分解物に由来する総ピーク面積に対する面積百分率として測定した。 結果を表4に示す。 【0069】 【表4】 [図:0001396572000033.jpg] 【0070】 表4に示す試験結果から、錠剤の水分含量が1.5質量%以上である場合において5-ケト体の生成が顕著に抑制されることが明らかとなった。なお、気密包装(PTP包装、アルミピロー包装)によって包装体内外の水分の移動が妨げられた結果、40℃、75%相対湿度の条件下で2ヶ月保存後においても各錠剤中の水分含量に変化は認められなかった。 以上の試験結果から、ピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上を含有し、かつ、水分含量が1.5質量%以上である固形製剤においては5-ケト体生成が抑制されることが明らかとなった。 【0071】 [製造例1] 試験例2と同様の方法により、下記表5中、処方例2記載の成分及び分量(mg)を1錠中に含有する口腔内崩壊型錠剤を製造し、箱型乾燥機にて水分含量2.5質量%程度まで乾燥した後、高密度ポリエチレン製のビン(ボトル)に収容して製造例1の医薬品を得る。 【0072】 [製造例2] 試験例2と同様の方法により、下記表5中、処方例3記載の成分及び分量(mg)を1錠中に含有する口腔内崩壊型錠剤を製造し、流動層乾燥機にて水分含量2.4質量%程度まで乾燥した後、予めポケット部分を成形した樹脂シート(住友ベークライト社製:商品名 スミライトVSS-1202)のポケット部分に入れ、次いでPTP用アルミ箔(大和化学工業社製:商品名 アルミ箔銀無地)で蓋をしてPTP包装する。得られたPTP包装体3シート(1シート当たり口腔内崩壊型錠剤を10錠収容する)をさらにアルミピロー包装して製造例2の医薬品を得る。 【0073】 [製造例3] 試験例2と同様の方法により、下記表5中、処方例4記載の成分及び分量(mg)を1錠中に含有する口腔内崩壊型錠剤を製造し、乾燥剤(シリカゲル)と共に1日保存することで水分含量を2.3質量%程度まで乾燥した後、予めポケット部分を成形した樹脂シート(住友ベークライト社製:商品名 スミライトVSS-1104)のポケット部分に入れ、次いでPTP用アルミ箔(大和化学工業社製:商品名 アルミ箔銀無地)で蓋をしてPTP包装する。得られたPTP包装体2シート(1シート当たり口腔内崩壊型錠剤を12錠収容する)をアルミピロー包装して製造例3の医薬品を得る。 【0074】 [製造例4] 試験例2と同様の方法により、下記表5中、処方例5記載の成分及び分量(mg)を1錠中に含有する口腔内崩壊型錠剤を製造し、箱型乾燥機にて水分含量1.8質量%程度まで乾燥した後、予めポケット部分を成形した樹脂シート(住友ベークライト社製:商品名 スミライトVSL-4501)のポケット部分に入れ、次いでPTP用アルミ箔(大和化学工業社製:商品名 アルミ箔銀無地)で蓋をしてPTP包装する。得られたPTP包装体3シート(1シート当たり口腔内崩壊型錠剤を10錠収容する)をさらにアルミピロー包装して製造例4の医薬品を得る。 【0075】 [製造例5] 試験例2と同様の方法により、下記表5中、処方例6記載の成分及び分量(mg)を1錠中に含有する口腔内崩壊型錠剤を製造し、高周波乾燥機にて水分含量1.6質量%程度まで乾燥した後、ガラスビンに収容して製造例5の医薬品を得る。 【0076】 [製造例6] 試験例2と同様の方法により、下記表5中、処方例7記載の成分及び分量(mg)を1錠中に含有する口腔内崩壊型錠剤を製造し、乾燥剤(合成ゼオライト)と共に1日保存することで水分含量を2.2質量%程度まで乾燥した後、ストリップ包装用アルミ箔(日産化工社製)にてSP包装して製造例6の医薬品を得る。 【0077】 【表5】 [図:0001396572000034.jpg] 【0078】 [製造例7] 常法により、下記表6中、処方例8記載の成分及び分量(mg)を1錠中に含有する錠剤を製造し、流動層乾燥機にて水分含量2.3質量%程度まで乾燥した後、予めポケット部分を成形した樹脂シート(住友ベークライト社製:商品名 スミライトVSS-1202)のポケット部分に入れ、次いでPTP用アルミ箔(大和化学工業社製:商品名 アルミ箔銀無地)で蓋をしてPTP包装する。得られたPTP包装体3シート(1シート当たり錠剤を10錠収容する)をさらにアルミピロー包装して製造例7の医薬品を得る。 【0079】 [製造例8] 常法により、下記表6中、処方例9記載の成分及び分量(mg)を1錠中に含有する錠剤を製造し、乾燥剤(シリカゲル)と共に1日保存することで水分含量を1.8質量%程度まで乾燥した後、予めポケット部分を成形した樹脂シート(住友ベークライト社製:商品名 スミライトVSS-1104)のポケット部分に入れ、次いでPTP用アルミ箔(大和化学工業社製:商品名 アルミ箔銀無地)で蓋をしてPTP包装する。得られたPTP包装体2シート(1シート当たり錠剤を12錠収容する)をアルミピロー包装して製造例8の医薬品を得る。 【0080】 [製造例9] 常法により、下記表6中、処方例10記載の成分及び分量(mg)を1錠中に含有する錠剤を製造し、箱型乾燥機にて水分含量1.5質量%程度まで乾燥した後、予めポケット部分を成形した樹脂シート(住友ベークライト社製:商品名 スミライトVSL-4501)のポケット部分に入れ、次いでPTP用アルミ箔(大和化学工業社製:商品名 アルミ箔銀無地)で蓋をしてPTP包装する。得られたPTP包装体3シート(1シート当たり錠剤を10錠収容する)をさらにアルミピロー包装して製造例9の医薬品を得る。 【0081】 [製造例10] 常法により、下記表6中、処方例11記載の成分及び分量(mg)を1錠中に含有する錠剤を製造し、高周波乾燥機にて水分含量2.6質量%程度まで乾燥した後、ガラスビンに収容して製造例10の医薬品を得る。 【0082】 [製造例11] 常法により、下記表6中、処方例12記載の成分及び分量(mg)を1錠中に含有する錠剤を製造し、乾燥剤(合成ゼオライト)と共に1日保存することで水分含量2.1質量%程度まで乾燥した後、ストリップ包装用アルミ箔(日産化工社製)にてSP包装して製造例11の医薬品を得る。 【0083】 [製造例12] 常法により、下記表6中、処方例13記載の成分及び分量(mg)を1錠中に含有する錠剤を製造し、箱型乾燥機にて水分含量1.9質量%程度まで乾燥した後、低密度ポリエチレン製のビン(ボトル)に収容して製造例12の医薬品を得る。 【0084】 【表6】 [図:0001396572000035.jpg] 【0085】 [製造例13] 常法により、下記表7中、処方例14記載の成分及び分量(mg)を1錠中に含有する錠剤を製造し、高周波乾燥機にて水分含量2.7質量%程度まで乾燥した後、ガラスビンに収容して製造例13の医薬品を得る。 【0086】 [製造例14] 常法により、下記表7中、処方例15記載の成分及び分量(mg)を1錠中に含有する錠剤を製造し、乾燥剤(合成ゼオライト)と共に1日保存することで水分含量2.5質量%程度まで乾燥した後、ストリップ包装用アルミ箔(日産化工社製)にてSP包装して製造例14の医薬品を得る。 【0087】 [製造例15] 常法により、下記表7中、処方例16記載の成分及び分量(mg)を1錠中に含有する錠剤を製造し、箱型乾燥機にて水分含量2.0質量%程度まで乾燥した後、低密度ポリエチレン製のビン(ボトル)に収容して製造例15の医薬品を得る。 【表7】 [図:0001396572000036.jpg] 【産業上の利用可能性】 【0088】 本発明によれば、ピタバスタチン又はその塩のラクトン体生成が抑制されることから、有効成分の安定性が良好な医薬を提供することができ、医薬品産業等において利用できる。」 (4)判断 ア 本件発明の課題 本件明細書等には、優れたHMG-CoA還元酵素阻害活性を有し、高脂血症治療剤、高コレステロール血症治療剤等の有効成分として有用であるピタバスタチン又はその塩について、医薬品製剤中でのラクトン体の生成を原因とする不均一性に対する安定性を向上させる試みがなされていたという背景技術が記載されているところ(摘示本-1、【0002】~【0003】)、カルメロース又はその塩、クロスポビドン、結晶セルロースといった、極めて高い吸湿性を有する崩壊剤とピタバスタチン又はその塩とを混合したところ、経時的に多量のラクトン体が生成することが判明したことを前提として、ピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上とを含有する、ラクトン体生成の抑制された固形製剤、及び当該固形製剤を用いた医薬品を提供することが課題である旨が記載されているから(摘示本-1、【0009】)、本件発明の課題は、「ピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上とを含有する、ラクトン体生成の抑制された固形製剤、及び当該固形製剤を用いた医薬品を提供すること」であると認める。 イ 判断 (ア)課題を解決できると認識できる範囲について a 本件明細書等には、「混合物中の水分含量とラクトン体量の間に相関があり、水分含量が増加するに従い脱水縮合物であるラクトン体の生成量が増加することが明らかとなった。・・・固形製剤の水分含量を一定値以下とすることによって、ピタバスタチン又はその塩由来のラクトン体生成が抑制できることを見出し、本発明を完成した。」と記載され(【0010】)、「ラクトン体の生成を抑制するため水分含量が固形製剤全質量に対し2.9質量%以下である必要がある」と記載されている(【0025】)。 しかし、実施例としては、表2で示される、ピタバスタチンカルシウムと結晶セルロース及びクロスポビドンを含有する口腔内崩壊型錠剤について、水分含量とラクトン体の生成率についての試験結果が表3に示され、錠剤の水分含量が2.9質量%以下の1.5質量%、1.9質量%、2.1質量%、及び2.9質量%である場合にラクトン体の生成が顕著に抑制されることが明らかとなった旨の記載(【0064】~【0067】、試験例2、表2、表3)から、処方例1の固形製剤について、上記課題が解決できることを具体的に確認することができるだけで、処方例1以外の処方に基づき製造された固形製剤については、上記課題を解決することができることは具体的に確認されていない。 b ここで、上記表3において、水分含量(質量%)「2.9」と水分含量「3.3」との間には二重線が付され、それらについて明確に区別して記載されていることから、水分含量「2.9」の場合のラクトン体の生成率(%)「0.15」(40℃75%RH1ヶ月後)及び「0.23」(40℃75%RH2ヶ月後)については、本件発明の課題を解決したとする一方で、水分含量「3.3」の場合のラクトン体の生成率(%)「0.23」(40℃75%RH1ヶ月後)及び「0.35」(40℃75%RH2ヶ月後)については、本件発明の課題を解決したといえる程度にラクトン体の生成が抑制されたとはいえないと評価しているものといえる。 c 本件発明の属する医薬品の分野において、医薬品としての品質管理上要求される類縁物質の許容範囲が存在し、医薬品の品質管理上、当該許容範囲に収まるように一定範囲内に類縁物質の生成抑制がされた医薬品を提供することは当業者にとって周知の課題といえるところ、本件明細書等には、課題を解決するための手段の欄に、「一方において、・・・現在販売中の「リバロ錠」の苛酷試験(湿度:25℃、60%RH又は85%RH)での安定性につき“規格範囲内”あるいは“溶出率低下”とされているのみである。これらのことから、上記した崩壊剤との共存によるラクトン体生成の原因・メカニズムは、現在販売中の「リバロ錠」には配合されていない上記特定の崩壊剤の有する高い吸湿性に起因することが示唆された。」との記載があり(【0010】)、医薬品として使用する際の課題を解決することを前提とするものと解される記載がある。 してみると、「ピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上とを含有する、ラクトン体生成の抑制された固形製剤、及び当該固形製剤を用いた医薬品を提供すること」を課題とする(前記ア)本件発明は、ラクトン体を含む類縁物質の生成が一定範囲内に抑制された医薬品を提供するものであることを前提としたものといえる。 d 以上のとおりの本件明細書等の記載等に照らせば、本件発明において、ラクトン体生成が抑制され、課題が解決されたというためには、水分含量を本件発明6及び9の「1.5~2.9質量%」の上限値である「2.9質量%以下」という一定値以下にすることにより、ラクトン体の生成率(40℃75%RH2ヶ月後)が少なくとも0.35未満の値に抑制されたことをいうものと解するのが相当である。 (イ)本件発明が課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かについて 本件発明の課題は、上記アで示したとおりであるところ、その課題の解決とは、本件発明が医薬品を提供する発明であることを前提として、水分含量を上限値の「2.9質量%以下」という一定値以下にすることにより、ラクトン体の生成率(40℃75%RH2ヶ月後)が少なくとも0.35未満の値に抑制されたことをいうものと解されるから、以下、本件発明が、発明の詳細な説明の記載から、上記のような課題を解決できると認識できる範囲のものであるかについて検討する。 a 本件明細書等の発明の詳細な説明には、「本発明者は上記課題を解決するにあたり、まずピタバスタチン又はその塩と、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上との混合時におけるラクトン体生成の原因・メカニズムにつき鋭意検討したところ、驚くべきことに、混合物中の水分含量とラクトン体量の間に相関があり、水分含量が増加するに従い脱水縮合物であるラクトン体の生成量が増加することが明らかとなった。・・・これらのことから、上記した崩壊剤との共存によるラクトン体生成の原因・メカニズムは、現在販売中の「リバロ錠」には配合されていない上記特定の崩壊剤の有する高い吸湿性に起因することが示唆された。そして、固形製剤の水分含量を一定値以下とすることによって、ピタバスタチン又はその塩由来のラクトン体生成が抑制できることを見出し、本発明を完成した。」(【0010】)と記載されているが、本件明細書等には、上記記載以外に、本件発明の固形製剤の水分含量を1.5~2.9質量%にすることによって、ラクトン体の生成率が抑制される具体的な作用機序についての記載はない。 そして、上述のとおり、本件明細書等に記載の試験例2に記載の処方例1の固形製剤については上記課題が解決できることを具体的に確認することができる。 しかし、本件明細書等において、本件発明の実施例としてラクトン体の生成率が確認できる記載は、処方例1の固形製剤についてのみであって、それ以外の本件発明の医薬品について、本件発明の固形製剤の水分含量を2.9質量%以下にした場合のラクトン体の生成率を示した実施例の記載はない。 b 本件発明6は、(A)ピタバスタチン又はその塩、(B)カルメロース及びその塩、クロスポビドン、結晶セルロースの1種以上を、本件発明9は、(A)ピタバスタチン又はその塩、(B)クロスポビドンを、それぞれ含む固形製剤であり、必ずしも結晶セルロースを含むものではない。 本件明細書等の表2の処方例1の成分及び分量として、結晶セルロースが処方例1の口腔内崩壊型錠剤120.0mg中に45.0mg含まれているところ、結晶セルロースについては、一般的に主薬の化学的変化を抑制する安定化剤としての効果があることは周知技術といえること(甲51、66、67、69、70)、甲1には、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン類)の安定性に結晶セルロースが寄与することが開示されていること、処方例1の口腔内崩壊型錠剤に含まれている結晶セルロースの分量は上記安定性を発揮するには十分なものといえることに照らせば、処方例1に基づき製造された口腔内崩壊型錠剤に含有する結晶セルロースがピタバスタチンカルシムの安定性に寄与した可能性を否定できないというべきである。 これに加えて、本件明細書等には、本件発明の固形製剤の水分含量を1.5~2.9質量%とすることによって、ラクトン体の生成が抑制される具体的な作用機序についての記載はない(上記a)。そして、表2の処方例1に基づき製造された口腔内崩壊型錠剤以外の構成について、固形製剤の水分含量を1.5~2.9質量%にすることによって、ラクトン体の生成率がどのようになるか示した実施例の記載もなく、また、処方例1に基づき製造された口腔内崩壊型錠剤の結晶セルロースを除いた構成によってラクトン体の生成率を抑制した医薬品を提供することができるとの技術常識もない。 そして、本件発明6は、B成分の選択肢として結晶セルロース以外にカルメロース及びその塩、クロスポビドンが、本件発明9はB成分としてクロスポビドンが特定されているところ、気密包装体に収容され、所定の水分含量に調整された固形製剤中のピタバスタチンに対する安定化において、カルメロース及びその塩、クロスポビドンが結晶セルロースと同様の作用を有することは、本件明細書等に具体的に確認できるように記載されておらず、出願時の技術常識でもない。 これらを併せて考えれば、本件明細書等の記載から、当業者が、本件発明の固形製剤の水分含量を1.5~2.9質量%にすることにより、結晶セルロースを用いなくても、ラクトン体の生成率(40℃75%RH2ヶ月後)が少なくとも0.35未満の値に抑制された医薬品を提供することができると認識することはできない。 したがって、本件発明6については「(B)カルメロース及びその塩、クロスポピドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上;を含有」するという範囲のうち、結晶セルロースを含有しない場合のものは、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではないというべきである。 さらに、本件発明9は、結晶セルロースを含有しないものであって、そもそも処方例1は本件発明9の実施例でもないから、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではないというべきである。加えて、課題が解決できることが示された処方例1は、120mg中結晶セルロースを45mgと4割もの量で含む処方であり、処方例1で課題を解決できるからといって、その4割にも及ぶ成分を変更したものである、結晶セルロースを含有しない本件発明9について、同様に、当業者が本件発明の課題を解決できると認識することはできないというべきである。 ウ まとめ 以上のことから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということはできない。 したがって、本件発明6及び9は発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。 (5)被請求人の主張について ア 審判事件答弁書1の40~61頁、口頭審理陳述要領書45~65頁における被請求人の主張については以下のとおりである。 (ア)被請求人は、本件課題との関係で、課題の解決とは、本件混合物等について、水分含量を調整しなかった場合に比べて、ラクトン体の生成が低くなることを意味すること、すなわち、本件明細書等では、「本件混合物等において水分含量が低くなるとラクトン体の生成も低くなるという相関関係」(本件相関関係)に着目し、本件混合物等について水分含量を調整しなかった場合に比べて、水分含量を低く調整した場合、とりわけ、水分含量を2.9質量%以下に調整した場合の方が、ラクトン体の生成が低くなることを実証していること、本件明細書等において、試験例2の結果から、本件混合物等について、「水分含量が2.9質量%以下である固形製剤においてはラクトン体生成が抑制されることが明らかとなった」(段落【0067】)と評価していること、他方、本件明細書等には、ラクトン体の生成が「抑制された」か否かについて、ラクトン体の生成量や生成率といった定量的な基準や、これに基づく判断について、何ら記載がなく、また、本件出願日当時において、ラクトン体の生成が「抑制された」か否かについては特定の定量的な基準をもって判断するという技術常識も存在しなかったこと、したがって、本件明細書等に触れた当業者は、「ラクトン体生成の抑制」とは、本件混合物等について、水分含量を調整しなかった場合に比べて、ラクトン体の生成が低くなることを意味するものと理解することを主張する。 しかし、本件明細書等には、「ラクトン体生成の抑制」の意味について、被請求人が主張する、「課題の解決とは、本件混合物等について、水分含量を調整しなかった場合に比べて、ラクトン体の生成が低くなることを意味する」趣旨の記載はない。また、本件明細書等の試験例2は、本件混合物等について水分含量を調整した場合のラクトン体の生成率とこれを調整しなかった場合のラクトン体の生成率について比較したものではなく、水分含量(質量%)「3.3」の場合のラクトン体生成率(%)「0.35」(40℃75%RH2ヶ月後)という具体的な数値と比較した上で、水分含量(質量%)「2.9」の場合について、ラクトン体の生成が抑制されると記載している。これに加えて、本件発明は医薬品を提供する発明であり、ラクトン体を含む類縁物質の生成が一定範囲内に抑制された医薬品を提供するものであることを前提とするものであることに照らせば、本件発明は、ラクトン体の生成率に着目して、本件発明の固形製剤の水分含量を「2.9質量%以下」という一定値以下にすることによりラクトン体の生成率(40℃75%RH2ヶ月後)が少なくとも0.35未満の値以下に抑制されたことをもって課題を解決したと解するのが相当であり(この点については、下記イ(イ)も参照されたい。)、被請求人の上記主張を採用することはできない。 (イ)被請求人は、甲1は、結晶セルロースに関する文献であるところ、甲1にデータの裏付けを伴って具体的に開示された発明は、そもそも、アトルバスタチンカルシウムを主薬とする医薬剤形に係る発明であって、ピタバスタチン又はその塩を主薬とする医薬剤形に係る発明ではないこと、甲1には、結晶セルロースを含む場合と含まない場合を対比して、結晶セルロースが安定性に寄与したかを示す実証実験がなく、アトルバスタチンとの関係でさえも、結晶セルロースが実際に安定性に寄与しているかは不明であること、仮に、甲1には、本件混合物において結晶セルロースがピタバスタチンの安定性に寄与することが開示されていると認められたとしても、当該文献のみをもって、本件出願日当時にそのような技術常識が形成されていたということにはならないこと、仮に、本件混合物において結晶セルロースがピタバスタチンの安定性に寄与することが本件出願日当時に技術常識であったと認められたとしても、そのことをもって、結晶セルロースが処方例1に係る口腔内崩壊型錠剤において「必須のもの」であるという請求人の主張は、明らかに論理の飛躍があることを主張する。 しかしながら、甲1に実施例として記載された有効成分は、アトルバスタチンカルシウムであるものの、甲1には、「本発明は、製薬業界の分野に関し、特に、環境への影響に敏感な活性物質を含む安定な医薬剤形に関する。好ましくは、活性物質は、環境pH、酸化および/または環境湿度に敏感であり、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤の群から選択される」(摘示1-1)こと、「HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン類)は、特に、環境pH、湿度、光、温度、二酸化炭素および酸素にも敏感な活性物質である」(摘示1-2)こと、「スタチンの中でも、例えば、プラバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、メバスタチンまたはコンパクチン、フルバスタチンまたはフルインドスタチン、セル(セリ)バスタチンまたはリバスタチン、ロスバスタチンまたはビスタスタチン、およびイタバスタチンまたはピタバスタチンまたはニスバスタチンが知られている」(摘示1-3)ことが記載されており、そして、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン類)の分解生成物の生成は、スタチン類に共通する共通骨格に由来することが本件出願当時の技術常識であることは、1(3)ア(ア)で述べたとおりであるから、これらの点に鑑みれば、甲1に記載された事項は、ピタバスタチン又はその塩にも当てはまるものといえる。 また、甲1には実証実験についての記載がないという点、甲1のみで本件出願日当時の技術常識が形成されないという点については、結晶セルロースについて、一般的に主薬の化学的変化を抑制する安定化剤としての効果があることは周知技術といえること(上記(4)イ(イ)b)からすれば、甲1に記載の内容は、これに沿うものといえ、実証実験についての記載がないことをもって前記認定を覆すものとはいえない。 さらに、結晶セルロースが処方例1に係る口腔内崩壊型錠剤において「必須のもの」であるという請求人の主張は、明らかに論理の飛躍があるという点については、上記(4)イで述べたとおりである。 したがって、上記主張は採用できない。 イ 上申書9の別紙7~43頁における被請求人の主張については以下のとおりである。 (ア)被請求人は、課題の解決(「ラクトン体生成の抑制」)について、「本件発明において、ラクトン体生成が抑制され、課題が解決されたというためには、水分含量を「2.9質量%以下」という一定値以下にすることにより、ラクトン体の生成率(40℃75%RH2ヶ月後)が少なくとも0.35未満の値に抑制されたことをいうものと解するのが相当である」との点について、乙13や判決も提示して、本件明細書等の記載を離れて殊更高いレベルの「課題及び課題解決」の基準を設定したうえ、サポート要件違反との結論を導いたものであって、本質的に誤っている旨主張する。 しかし、上記(4)イ(ア)で述べたとおり、上記課題にある「ラクトン体生成の抑制された」の技術的意味が、どのようなものであるかを本件明細書等の記載及び出願時の技術常識に基づいて解釈した上で、「課題が解決されたというためには、水分含量を「2.9質量%以下」という一定値以下にすることにより、ラクトン体の生成率(40℃75%RH2ヶ月後)が少なくとも0.35未満の値に抑制されたことをいうものと解するのが相当である」とし、サポート要件について判断している。 したがって、上記主張は採用できない。 (イ)被請求人は、本件明細書等の表3の二重線や【0067】から、本件明細書等は、「水分含量(質量%)が「3.3」の場合のラクトン体の生成率(%)「0.23」(40℃75%RH1ヶ月後)及び「0.35」(40℃75%RH2ヶ月後)については、本件発明の課題を解決したといえる程度にラクトン体の生成が抑制されたとはいえないと評価しているものといえる」とした認定には無理がある旨主張する。 しかし、表3が水分含量とラクトン体の生成率との相関関係をも示しているといえるとしても、表3における二重線はその他の線(単線)とは明らかに異なるから区別して解釈されるべきものであり、さらに、【0010】の「固形製剤の水分含量を一定値以下とすることによって、ピタバスタチン又はその塩由来のラクトン体生成が抑制できることを見出し、本発明を完成した。」、及び【0067】の「表3に示す試験結果から、錠剤の水分含量が2.9質量%以下である場合にラクトン体の生成が顕著に抑制されることが明らかとなった。」との記載からは、本件明細書等では、ラクトン体生成の抑制は、水分含量が2.9質量%以下である場合に達成されると説明されているといえるから、少なくとも水分含量が2.9質量%より多い3.3質量%の場合のラクトン体生成率(0.23%(40℃75%RH1ヶ月後)及び0.35%(40℃75%RH2ヶ月後))では、ラクトン体生成の抑制がされたとはいえないと評価されていると解される。 したがって、上記主張は採用できない。 (ウ)被請求人は、乙14も提示して、本件明細書等において、ラクトン体生成という解決すべき課題(本件課題)を生じさせる成分として位置づけられている結晶セルロースについて、安定性への寄与の可能性を殊更に取り上げ、これを除いた場合の効果が不明であるからサポート要件違反というものであって、そもそも判断手法として誤りというべきである旨主張する。 たしかに、本件明細書等の【0009】に「本発明者はピタバスタチン又はその塩を含有する崩壊性が良好な固形製剤を得るため、カルメロース又はその塩、クロスポビドン、結晶セルロースといった崩壊剤とピタバスタチン又はその塩とを混合したところ、経時的に多量のラクトン体が生成することが判明した。」と記載され、表1には、70℃3日後のラクトン体の生成率(%)について、結晶セルロースを配合した混合物(水分含量10.1%)が0.33であるのに対し、有効成分のみのものが、0.03であることが記載されている。 しかし、本件発明においては、気密包装体に収容すること、水分含量が1.5~2.9質量%とすることを必須の事項とするものであって、水分含量が一定範囲内となるように調整されているといえるところ、前記【0009】の記載はそのような調整下における現象を述べたものであるとはいえず、表1の結果は水分含量が明らかに上記範囲外にあるから、これらの記載が、結晶セルロースがピタバスタチン及びその塩の安定性に寄与していることを否定する根拠にはならない。そして、結晶セルロースがピタバスタチンカルシウムの安定性に寄与した可能性を否定できないことは、上述のとおりである。 したがって、上記主張は採用できない。 (エ)被請求人は、結晶セルロースがピタバスタチンカルシムの安定性に寄与した可能性を否定できないとの判断の根拠とした、a 結晶セルロースについては、一般的に主薬の化学的変化を抑制する安定化剤としての効果があることは周知技術といえること(甲51、66、67、69、70)、b 甲1には、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン類)の安定性に結晶セルロースが寄与することが開示されていること、c 処方例1の口腔内崩壊型錠剤に含まれている結晶セルロースの分量は上記安定性を発揮するには十分なものといえること、についてはいずれも理由がない旨主張する。 しかし、以下のとおりである。 a 甲51の用途の記載が、使用前例がある用途の記載にすぎないとしても、その1番目に「安定(化)剤」が記載されているのであるから、当該用途への使用が示されていることに変わりなく、また、たとえ有効成分が異なるとしても甲66(摘示66-2、66-4)及び甲70(摘示70-1、70-3、70-4)については、水分に不安定な有効成分を結晶セルロースによって安定化することが記載ないし示唆されているといえ、水分含量を所定値以下とすることでピタバスタチン又はその塩を安定化しているといえる本件発明と、結晶セルロースの安定化の作用機序も同様であるといえるから有効成分が異なることをもって周知技術を認定できないとはいえない。 b 甲1は、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン類)の安定性に結晶セルロースが寄与することが開示されている公知文献として示したものであり、他の証拠に同様の事項が記載されていないことは、甲1に記載の技術的事項を否定する根拠とはならない。 c 甲1には、結晶セルロースがHMG-CoAレダクターゼ阻害剤(スタチン類)に安定性を付与することが記載されているといえる(摘示1-4、1-11)一方、本件明細書等に記載の処方例1では、ピタバスタチンカルシウム1.0mgに対して、結晶セルロースが組成中で最大量である45.0mg(組成中37.5%と計算される。)含まれており、微量配合物であるとはいえないから、結晶セルロースの分量は上記安定性を発揮するには十分なものといえる。 したがって、上記被請求人の主張は採用できない。 (オ)被請求人は、本件明細書等にいう「ラクトン体生成の抑制」の意味内容については、相対的に把握することが合理的であり、本件各発明において、課題が解決されて、ラクトン体の生成が抑制されるというのは、「ピタバスタチンと本件崩壊剤を含有する固形製剤において水分含量が2.9質量%以下の場合に、水分含量がそれ以外の場合(水分含量が3.3質量%の場合を含む)と比べて、ラクトン体の生成が抑制されること」(相対的抑制)を意味するものと解するのが相当であること、及び「結晶セルロース」に加え、「メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、塩化ナトリウムニ水和物」を含有しない場合について、追加実験を行った結果を提示し、当該場合でも本件発明の課題を解決できることを主張する。 しかし、本件明細書等の記載から被請求人の主張する相対的な関係が認められるといえるとしても、本件発明の課題を解決することができたといえるためには、固形製剤の水分含量を「2.9質量%以下」という一定値以下にすることによりラクトン体の生成率(40℃75%RH2ヶ月後)が少なくとも0.35未満の値以下に抑制されたことが必要であることは、これまでに述べたとおりである。 また、追加実験については、水分含量が2.2、2.6、3.4質量%である場合の結果しか提示されておらず、本件発明の水分含量の範囲である2.9質量%において、ラクトン体の生成率が0.35%未満であることは確認できないところ、請求人が弁駁書64~66頁で提示した追加実験に関する考察を参酌すると、水分含量が2.9質量%である場合におけるラクトン体の生成率は0.35%未満であるとはいえない。 したがって、結晶セルロースを含有しない場合であっても本件発明の課題を解決できるとはいえない。 よって、上記被請求人の主張は採用できない。 ウ まとめ さらに、被請求人は、上記のほかにも縷々主張するが、それらについても採用できない。 したがって、被請求人の主張は、いずれも採用することはできない。 (6)まとめ 以上のとおりであるから、本件発明6及び9について、無効理由3には理由がある。 3 無効理由4について (1)無効理由4についての請求人の主張の概要 本件特許明細書の発明の詳細な説明は、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、塩化カルシウム二水和物、結晶セルロース及び気密包装体に関する特定を欠く本件特許の特許請求の範囲請求項6及び9に係る発明によって課題を解決できることが当業者において認識できるように十分かつ明確に記載したものではないから、本件特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、本件特許は、特許法第123条第1項第4号の規定により無効とすべきである。 (審判請求書別紙23頁、111~112頁、上申書3の62頁、120~121頁、136~137頁、弁駁書の48~67頁) (2)判断の前提 特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明のいわゆる実施可能要件を規定したものであって、物の発明では、その物を作り、かつ、その物を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、そのような記載が無い場合には、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されていなければならないと解される。 (3)本件明細書等の記載 上記2(3)に示したとおりである。 (4)判断 本件明細書等には、本件発明の各成分及び水分含量について、ピタバスタチン又はその塩(成分A)は公知の化合物であることの記載(摘示本-2、【0014】)、カルメロース及びその塩、クロスポビドン並びに結晶セルロースよりなる群から選ばれる1種以上(成分B)について、それらの含有量、それらの具体例の記載(摘示本-2、【0016】~【0024】)、水分含量についての記載(摘示本-2、【0025】~【0029】)、添加剤、pH、剤形についての記載(摘示本-2、【0030】~【0039】)、製造方法についての記載(摘示本-2、【0040】~【0040】)、気密包装体についての記載(摘示本-2、【0045】~【0052】)があり、さらに、実施例として、表2(処方例1)で示される、ピタバスタチンカルシウムと結晶セルロース及びクロスポビドンを含有する気密包装体に収容される水分含量が1.5~2.9質量%の口腔内崩壊型錠剤について、その具体的な製造方法と水分含量とラクトン体の生成率についての試験結果が示され、錠剤の水分含量が2.9質量%以下である場合にラクトン体の生成が顕著に抑制されることが明らかとなった旨の記載(摘示本-3、【0064】~【0067】、試験例2、表2、表3)、表5~7(処方例2~16)で示される、ピタバスタチンカルシウムと結晶セルロース、クロスポビドン、カルメロース又はその塩を含有する気密包装体に収容される水分含量が1.5~2.7質量%程度の錠剤及びその具体的な製造方法の記載がある(なお、本件発明6及び9は処方例1~16のいずれかに該当する。)。 さらに、本件明細書等には、本件発明の固形製剤が、高脂血症治療剤等として利用できること、その使用方法についての記載がある(摘示本-2、【0053】)。 してみると、本件発明について、本件発明に係る固形製剤を作り、かつ、該製剤を使用する具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか、明細書及び図面の記載及び出願時の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく、その物を作り、その物を使用することができる程度にその発明が記載されているといえる。 したがって、本件発明について、発明の詳細な説明は、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。 (5)請求人の主張について 請求人の主張は、発明の詳細な説明の記載が、請求項に係る発明によって課題を解決できることが当業者において認識できるように十分かつ明確に記載したものではないことを理由とするものであるところ、上記(2)に示したとおり、実施可能要件の判断基準は、発明の詳細な説明の記載が、請求項に係る発明によって課題を解決できることが当業者において認識できるように記載されているか否かには直接関係しないから、そのような理由を前提とする無効理由4に理由があるとすることはできない。 (6)まとめ 以上のとおりであるから、無効理由4には理由がない。 4 無効理由5について 無効理由5は、本件訂正前の請求項8についての理由であるところ,本件訂正により請求項8は削除されたので、当該理由は、対象となる請求項が存在しない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、訂正後の請求項6、7、8、9についての本件訂正を認める。 そして、本件発明6及び9についての特許は、請求人が主張する無効理由4により無効にすべきものとすることはできないが、同無効理由1~3により無効にすべきものである。 また、請求項7及び8に係る審判請求については、本件訂正により対象となる請求項が削除され存在しないから、特許法第135条の規定により却下すべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、そのすべてを被請求人の負担とすべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2020-800121

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ出願・登録の審決2件(出願 特願2012-546269)
  • 2019-800029無効審判 / 2021-01-07 / 却下医薬
    同じ出願番号
  • 2018-800092無効審判 / 2020-09-18 / 請求成立(無効)医薬
    同じ出願番号
同じ当事者の審決90件(東和薬品 株式会社、興和 株式会社)
  • 2019-800029無効審判 / 2021-01-07 / 却下医薬
    同じ当事者: 東和薬品 株式会社、興和 株式会社
  • 2018-800092無効審判 / 2020-09-18 / 請求成立(無効)医薬
    同じ当事者: 東和薬品 株式会社、興和 株式会社
  • 2025-800139無効審判 / 2026-09-04
    同じ当事者: 東和薬品 株式会社
  • 2025-800137無効審判 / 2026-09-04
    同じ当事者: 東和薬品 株式会社
  • 2025-800138無効審判 / 2026-09-04
    同じ当事者: 東和薬品 株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)5,169件(121・A61K、536・A61K、537・A61K ほか)
  • 2018-800071無効審判 / 2019-09-03 / 請求不成立セレコキシブ組成物
    共通の審決分類: 121・A61K、536・A61K、537・A61K、841・A61K ほか1件
  • 2017-800104無効審判 / 2018-12-12 / 請求不成立ランタン化合物を含む医薬組成物
    共通の審決分類: 121・A61K、536・A61K、537・A61K、841・A61K ほか1件
  • 2025-700014異議申立 / 2026-03-27 / 訂正認容硬化性ジェルネイル組成物、ジェルネイルベース層、及び、ジェルネイルを設ける方法
    共通の審決分類: 121・A61K、536・A61K、537・A61K、841・A61K ほか1件
  • 2023-701136異議申立 / 2024-07-01 / 訂正認容高内相W/O型乳化組成物及びこれを利用した化粧料
    共通の審決分類: 121・A61K、536・A61K、537・A61K、841・A61K ほか1件
  • 2022-701023異議申立 / 2024-01-25 / 訂正認容水中油型乳化組成物
    共通の審決分類: 121・A61K、536・A61K、537・A61K、841・A61K ほか1件

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存