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特許異議申立

2023-701398

製鉄原料の山積み方法

審判番号
2023-701398
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-011072
登録番号
7299027
請求日
2023年12月27日
審決日
2024年03月13日
公報発行日
2024年04月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】日鉄環境株式会社
  • 【権利者代理人】近藤 利英子
  • 【権利者代理人】菅野 重慶
  • 【権利者代理人】竹山 圭太
  • 【権利者代理人】岡田 薫
  • 【異議申立人】埴田 眞一
審判長/審判官
  • 審判長 中屋 裕一郎
  • 審判官 尾崎 和寛
  • 審判官 平城 俊雅
分類
P1651.121-Y (B65G) / P1651.537-Y (B65G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7299027号発明「製鉄原料の山積み方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7299027号の請求項1~8に係る特許を維持する。

理由

理 由 1 手続の経緯 特許第7299027号の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成31年1月25日(優先権主張 平成30年9月5日)に出願され、令和5年6月19日にその特許権の設定登録がされ、令和5年6月27日に特許掲載公報が発行された。その後その特許に対し、令和5年12月27日に特許異議申立人埴田眞一(以下、「特許異議申立人」という。)から異議申立がされたものである。 2 本件発明 特許第7299027号の請求項1~8の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 [本件発明1] 「原料ヤードに製鉄原料を山積みする方法であって、 前記原料ヤードに山積みされる前の製鉄原料及び山積みされた後の製鉄原料の少なくとも一方の製鉄原料に、有効成分としての高分子凝集剤の含有量が0.1~2質量%であるとともに水の含有量が90~99.9質量%である希薄液を添加する工程を含む、製鉄原料の山積み方法。」 [本件発明2] 「前記原料ヤードに山積みされる前の前記製鉄原料に前記希薄液を添加する工程と、 前記希薄液が添加された前記製鉄原料を前記原料ヤードに山積みする工程と、 を含む請求項1に記載の製鉄原料の山積み方法。」 [本件発明3] 「前記原料ヤードに山積みされた後の前記製鉄原料に前記希薄液を添加する工程を含む請求項1又は2に記載の製鉄原料の山積み方法。」 [本件発明4] 「前記希薄液は、前記製鉄原料に添加されるときの形態が水中油滴型エマルジョン状又は水溶液状の液体である請求項1~3のいずれか1項に記載の製鉄原料の山積み方法。」 [本件発明5] 「前記希薄液は、前記高分子凝集剤と、分散媒である硫酸塩水溶液とを含有する水性分散液を、前記高分子凝集剤の濃度が0.1~2質量%となる量の水で希釈し、撹拌して得られた希薄液である請求項1~4のいずれか1項に記載の製鉄原料の山積み方法。」 [本件発明6] 「前記希薄液は、前記高分子凝集剤として、アクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体、アクリル酸又はその塩の重合体、及びアクリルアミド重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する請求項1~5のいずれか1項に記載の製鉄原料の山積み方法。」 [本件発明7] 「前記製鉄原料の全質量に対する前記高分子凝集剤としての添加割合が0.0001~0.05質量%の量で前記希薄液を前記製鉄原料に添加する請求項1~6のいずれか1項に記載の製鉄原料の山積み方法。」 [本件発明8] 「前記製鉄原料への前記希薄液の添加量を、前記希薄液が添加された後の前記製鉄原料の含水率が8~25質量%となる量に制御する請求項1~7のいずれか1項に記載の製鉄原料の山積み方法。」 3 申立理由の概要 特許異議申立人は、主たる証拠として次の甲第1号証及び従たる証拠として次の甲第2号証~甲第7号証を提出し、本件の請求項1~8に係る特許は特許法第29条体2項の規定に違反してされたものであるから、本件の請求項1~8に係る特許を取り消すべきものである旨、並びに、本件の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件の請求項1、3~8に係る特許を取り消すべきものである旨、及び、本件の請求項1~8の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件の請求項1~8に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 甲第1号証:特開2012-214292号公報 甲第2号証:特開2015-196573号公報 甲第3号証:国際公開第2014/058074号 甲第4号証:特開2013-23374号公報 甲第5号証:特開2004-160329号公報 甲第6号証:特開昭56-127524号公報 甲第7号証:三原恒美、光上義道 「エマルジョン型高分子凝集剤」 神鋼パンテツク技法 Vol.1 34 No.3 49頁~51頁 1990年 4 各甲号証の記載 (1)甲第1号証 甲第1号証には次の記載がある(下線は、当審で付したものであり、以下同様である。)。 「【0001】 本技術は、石炭及び/又は鉄鉱石スラリーの改質方法、並びにこれにより改質された原料の製造方法に関する。」 「【0013】 本技術は、石炭及び/又は鉄鉱石、及びそのスラリーに、水溶性高分子化合物を添加し、混合するものである。このとき、前記水溶性高分子化合物の添加し、混合した後に、更に無機金属塩を添加し、混合するのが、好ましい。 【0014】 処理対象である石炭及び/又は鉄鉱石スラリーとは、少なくとも石炭及び/又は鉄鉱石を含むスラリーである。そして、これには、更にコークスやスラグ等の製鉄原料として使用されるものが含まれていてもよい。」 「【0018】 本技術に用いる水溶性高分子化合物は、例えば、合成水溶性高分子化合物、半合成水溶性高分子化合物及び天然水溶性高分子化合物等が挙げられる。なお、以下のこれらのものを1種で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。 【0019】 前記合成水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸又はその塩、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルメチルエーテル;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸アミド、マレイン酸イミド、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸等の共重合物又はその塩等が挙げられる。この塩としては、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩等が挙げられる。」 「【0022】 また、前記水溶性高分子化合物は、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性の何れでもよい。このうち、魚類への毒性が少ないアニオン性及びノニオン性が好ましく、更にアニオン性が好ましい。 【0023】 前記水溶性高分子化合物のうち、合成水溶性高分子化合物が好ましい。 前記合成水溶性高分子化合物は、アニオン性モノマーとノニオン性モノマーの1種又は2種以上を構成成分とする単独重合体又は共重合体が好適である。 前記アニオン性基(アニオン性モノマー)としては、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボン酸(モノマー);スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸等のスルホン酸(モノマー)等が例示される。 また、前記ノニオン性基(ノニオン性モノマー)としては、例えば、アクリルアミド(モノマー)やメタクリルアミド(モノマー)等が例示される。 【0024】 更に、前記合成水溶性高分子化合物のうち、アクリル酸系及び/又はアクリルアミド系ポリマーが好ましい。 前記アクリル酸系及び/又はアクリルアミド系ポリマーとしては、例えば、アクリル酸単重合物、アクリルアミド単独重合物、アクリル酸/アクリルアミド共重合物、ポリアクリルアミドの部分加水分解物、アクリル酸/アクリルアミド/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリル酸/マレイン酸共重合物等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。このうち、アクリル酸/アクリルアミド共重合物、アクリルアミド単独重合物、ポリアクリルアミドの部分加水分解物が、高分子量であるので、好ましい。 前記アクリルアミド系又はアクリル酸系ポリマーの平均分子量は、好ましくは1,000,000~10,000,000、より好ましくは5,000,000~9,000,000(固有粘度法)とするのが好適である。 また、アニオン性高分子の場合、前記アクリル酸系及び/又はアクリルアミド系ポリマーを生成する際のアクリル酸単位の含有量は、使用する単量体の全合計量(100モル%)に対して、好ましくは5モル%以上、より好ましくは20~100モル%とするのが好適である。 【0025】 前記水溶性高分子化合物を使用するときの状態としては、特に限定されず、粉末状、液体状又はエマルジョン状で使用するのが好適である。特に処理対象の水分を増加させずに使用できる粉末状とエマルジョン状で使用するのが好適である。更に、スラリーの改質効果と流動性増大のマッチポンプの発生を少なくすることができるエマルジョン状(好ましくは、W/O型エマルジョン状)で使用するのが好適である。W/O型エマルジョン状の水溶性高分子化合物は、公知の手法(例えば、特公昭52-039417号公報、特開昭51-41090号公報)にて製造することができる。」 「【0038】 本技術の改質の機構について述べる。 前記石炭及び/又は鉄鉱石、並びにそのスラリーに、本技術の水溶性高分子(好適にはエマルジョン状態)を添加した後に(油分を含むスラリーの場合、好適には添加後放置した後に)、混合・攪拌すると、調湿石炭及び/又は鉄鉱石並びにこのスラリーに含まれる水分を含みながら水溶性高分子物質が、水分の存在下で石炭及び/又は鉄鉱石並びにこのスラリー中に分散する。 この前記石炭及び/又は鉄鉱石スラリー等の前記対象物には、石炭や鉄鉱石を高濃度に含有しているものの、その後、水の存在下で、水溶性高分子化合物と石炭及び/又は鉄鉱石と架橋し、造粒化が可能である。造粒することで、この粒子中に水分を拘束し、スラリーの流動性が抑制されるようになる。しかも、改質された物はスラリーの塑性流動性の改善によって症状の改質がみられるようになる。スラリーになる前の石炭及び/又は鉄鉱石でも、本技術の水溶性高分子(好適にはエマルジョン状態)を水の存在下で使用することにより、これらの改質ができる。よって、改質された鉄鉱石等は、その後水と接触してもスラリー化が抑制されるので、取り扱いが容易である。 更に、本技術の水溶性高分子化合物の他、無機金属塩を添加攪拌することで、造粒物の自立性を促進させることができる。これにより、より安定的な造粒物となる。」 「【0046】 以上のとおり、本技術の水溶性高分子化合物は、対象物に水の存在下で添加し、混合することで、石炭及び/又は鉄鉱石の原料を改質すること;石炭及び/又は鉄鉱石スラリーを改質することが可能である。また、本技術の水溶性高分子化合物を使用することで改質された石炭及び/又は鉄鉱石の原料を製造することも可能である。 そして、本技術の水溶性高分子化合物は、石炭及び/又は鉄鉱石原料の改質剤;このスラリーの改質剤等の改質剤(以下、「改質剤」ともいう)を製造するために使用することが可能である。該改質剤には、必要に応じて、無機金属塩、乳化剤、界面活性剤等の任意成分を配合してもよい。この任意成分は、該改質剤の補助剤として使用することが可能であり、該改質剤と同時に又は別々に使用してもよい。なお、これら各剤は、液体、固体、粉末等の何れの状態でもよい。 ここで、本技術の対象物として、例えば、石炭及び/又は鉄鉱石(以下、「鉄鉱石等」ともいう)、含水の鉄鉱石等、及び鉄鉱石等のスラリー等が挙げられ、スラリーになる前のものでもよい。 そして、本技術の石炭及び/又は鉄鉱石の原料の改質方法、該スラリーの改質方法において、上述の水溶性高分子化合物(更に、無機金属塩)を、そのまま又は水溶液にして前記対象物に使用することが可能である。また、上述の水溶性高分子化合物(更に、無機金属塩)を、改質剤として、対象物に使用することも可能である。例えば、本技術の改質剤は、石炭及び/又は鉄鉱石、またそのスラリーに添加・混合することで、より良好な性状(水抜け、軽さ、造粒形状等)の改質物を得ることが可能である。また、処理方法の一例として、鉄鉱石等を、水溶液状態の本技術の改質剤等で処理してもよいし、含水の鉄鉱石等を、粉体状の本技術の改質剤等で処理してもよい。 なお、「本技術の水溶性高分子化合物及びその水溶液、並びに本技術の水溶性高分子化合物を含有する改質剤」を、「本技術の改質剤等」ともいう。 【0047】 よって、本技術は、石炭及び/又は鉄鉱石に、水の存在下で本技術の改質剤等を添加し、混合する、石炭及び/又は鉄鉱石の改質方法;改質された原料の製造方法を提供することも可能である。 この改質方法;改質された原料の製造方法の各条件は、上述した石炭及び/又は鉄鉱石スラリー改質方法;改質された原料の製造方法の各条件と同様であればよい。 なお、前記「水の存在下で」とは、上記「石炭及び/又は鉄鉱石スラリーの含水率」と同様の含水率になるように、石炭及び/又は鉄鉱石中に水が存在していればよい。また、上記「石炭及び/又は鉄鉱石スラリー1m3」を、「水の存在下の石炭及び/又は鉄鉱石1m3」に読み替えて行えば良い。 【0048】 本技術の改質剤等の使用場所は、石炭及び/又は鉄鉱石を、水の存在下で本技術の改質剤等を添加し、混合することが可能な場所であれば、特に限定されない。例えば、上述のとおり、鉱山の現場ヤード;破粉砕等の処理施設;野積み等の貯蔵保管場;ベルトコンベア、船、貨車等の搬送手段;製鉄所等の使用施設等が挙げられる。 本技術の改質剤等の使用手段として、例えば、前記対象物に本技術の改質剤等を添加(散布等)、攪拌することが可能な装置;混練機を備えた搬送手段において、搬送されている前記対象物に本技術の改質剤等を添加(散布等)し、混練することが可能な装置等が挙げられる。 【0049】 より具体的には、搬送・山積み等のための連続改質処理システム等として、前記対象物を、ヤードへ山積みする際又は船、トラック等へ移送する際の、搬送手段(例えば、ベルトコンベア等)に混練機を備え、該混練機にて、搬送されている前記対象物に本技術の改質剤等を添加・混練すること;前記対象物(例えば、調湿鉄鉱石等)を船内に又は船内から搬送する手段に混練機を備え、搬出搬入の際に前記対象物に本技術の改質剤等を添加・混練して、搬送手段に積載すること等が挙げられる。 また、船、貨車、トラック等の搬送手段に混合装置を設け、搬送中に本技術の改質剤等を前記対象物に添加・混合すること等も挙げられる。 また、保管・貯蔵の際に、前記対象物を攪拌(混合)できるような機械や装置にて本技術の改質剤等を添加・混練すること等が挙げられる。 【0050】 さらに、以下に例を挙げるが、これに限定されるものではない。ベルトコンベアで搬送している流動性が高いスラリーのコンベアからの落下時に本技術の改質剤等を散布し、パイリング等にバックホウで攪拌処理する方法。トラック、船等で搬送した流動性の高いスラリーに、本技術の改質剤等を添加し、混合処理する方法。湿潤の石炭及び/又は鉄鉱石を船内からバケットでベルトコンベアへ搬出する段階における混練機によって、本技術の改質剤等を連続的に添加し、混合処理する方法。ヤードへパイリングする際の混練機によって、鉄鉱石等に、本技術の改質剤等を連続的に添加し、混合処理する方法。」 上記甲第1号証の記載より、甲第1号証には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 [甲1発明] 「石炭及び/又は鉄鉱石をヤードへ山積みする際、石炭及び/又は鉄鉱石を、水の存在下で水溶性高分子化合物を添加し、混合する工程を含む、 石炭及び/又は鉄鉱石のヤードへの山積み方法。」 (2)甲第2号証 甲第2号証には次の記載がある。 「【0001】 本発明は、水分を含む鉱石や石炭等の含水バラ物を、運搬船やはしけ(艀)などから橋形クレーンやアンローダまたは連続式アンローダ(または、単にアンローダ等という)のバケットによって荷揚げする時、湧水が発生することによって起こるベルトコンベア上の荷揚げ障害を解消するために開発された、含水バラ物への薬液添加装置に関する。」 「【0011】 本発明は、上記した現状に鑑み開発されたもので、含水バラ物の荷揚げの際に不可避的に発生するスラリー状の湧水によるベルトコンベア上の荷揚げ障害を解消するための、含水バラ物への薬液添加装置を提案することを目的とする。」 「【0019】 以下、本発明を、図面を用いて具体的に説明する。 本発明の装置は、図2に示すように、鉱石や石炭(または、単に「鉱石類」と言う)を含む含水バラ物(または、単に「バラ物」と言う)を、橋形クレーンやアンローダのグラブバケットを用いて、貨物船から、アンローダ機内のホッパーまたは、直接ベルトコンベア上に荷揚げし、さらに、ベルトコンベア(または、「BC」と言う)で、含水バラ物を、その保管場所であるヤードまで搬送する際に、薬液を添加する装置である。」 「【0036】 〔搬送可能となる原理〕 図8(a)および(b)は、粉体:Pを含む懸濁湧水に含まれる水:Wmと、それに添加される高分子凝集剤:Aを示すものである。このAがP+Wmに添加されると、図8(c)に示すように、WmとPの一部が、高分子凝集剤:Aにおける分子鎖の枝状に広がったポリマー:Bに絡め捕られるようにして凝結し、図8(d)に示すような粒径の小さい凝結粒子7の幾つかを形成する。その後、混合(ジャンクション部位での落下混合を含む)と共に、その凝結粒子7の複数個が、やがて凝集(集合)して、図8(e)に示すような粒径の大きな凝集粒子8へと成長する。従って、本発明における含水バラ物の凝集物とは、上記した凝集粒子と凝結粒子とが任意の比率(いずれかが100%であっても良い)で構成されているものである。なお、本発明における%表示は、特に断らない限り、mass%を意味する。 【0037】 図8(e)に示したような段階になると、Wmは固化した状態となって、バラ物に付着する付着状態となる。かかる状態となることにより、バラ物は、ベルトコンベアでの搬送が容易となって、懸濁湧水自体もバラ物と共に、ベルトコンベアから溢流することなく搬送することができ、もって、原料ヤードなどへのバラ物の送給がトラブル無くできるようになるのである。 また、本発明における薬液を構成する成分は、N,C,Hといった、次工程の焼結機での焼成の際に燃え、製品中に残らないものなので、薬液分離の必要が要らない。従って、本発明は、薬液分離の工程がいらないというメリットを有している。」 「【0039】 〔高分子凝集剤〕 本発明では、高分子凝集剤を主成分とした薬剤を薬液として使用する。あるいは薬剤が固体状であれば、溶液に分散させ薬液として使用する。 また、上記高分子凝集剤としては、高分子のもつ静電気力または水素結合によって、粉体に吸着活性を生じて粉体間架橋作用を起すもので、固粒化構造を形成して凝結粒子(凝集物)を形成させる効果を有するものであれば、いずれも使用可能である。例えば、粉末、頼粒状または液状の有機系凝集剤である、ポリアクリルアミド系(アルリルアミドとアクリル酸ナトリウムを共重合したもの)、ポリビニルアミジン系、両性高分子系の凝集剤などは、凝結作用のみならず、凝集作用を発揮するので好ましい。なお、公知の無機系凝集剤をさらに混ぜて併用することとしてもよい。 さらに、上記高分子凝集剤として、アクリル酸カチオンポリマー、アクリルアミド系カチオンポリマー、メタクリル酸系ポリマー、メタクリル酸アミノエステルカチオンポリマー、アミジンポリマー、アニオン性W/O型エマルジョンポリマーなどを使用することもできる。 【0040】 本発明において、高分子凝集剤が主成分であるとは、一般に、凝集効果があると認められている量以上の高分子凝集剤を含有している薬剤を指し、通常は高分子凝集剤40%程度以上の含有量の薬剤である。勿論、高分子凝集剤:100%のものを、そのまま薬剤として用いても構わない。 なお、薬剤が固体状、または液体であって薄めて使用するものの場合、溶液は、水、有機溶媒が挙げられ、溶質は、C,H,N,Oの重合体、溶媒は、炭化水素系溶媒(C,H,Oのみ)が挙げられる。」 (3)甲第3号証 甲第3号証には次の記載がある。 「[0001] 本発明は、水分を含む鉱石や石炭等の含水バラ物を、運搬船やはしけ(艀)などから橋形クレーンやアンローダまたは連続式アンローダのバケットによって荷揚げする時、湧水が発生することによって起こるベルトコンベア上の荷揚げ障害を解消するために開発された、含水バラ物の荷揚げ処理方法に関する。」 「[0011] 本発明は、上記した現状に鑑み開発されたもので、含水バラ物の荷揚げの際に不可避的に発生するスラリー状の湧水によるベルトコンベア上の荷揚げ障害を解消するための、含水バラ物の荷揚げ処理方法を提案することを目的とする。」 「[0024] そこで、本発明では、バラ物の含水率が高く、荷役能率が悪化する時、アンローダ機(連続式アンローダ機含む)内のホッパー内に装入されたバラ物、またはベルトコンベア上に荷揚げされたバラ物に対して、高分子凝集剤を添加して粒子の凝結・凝集を起こさせて粒状化させる、すなわち凝集物とすることで、湧水をバラ物とともに搬送することを可能とし、荷揚げ作業の中断を防止し、荷揚げ効率の向上を図るようにした。即ち、本発明に従えば、鉱石類等の含水バラ物2と共に懸濁湧水3を、正確にはその懸濁湧水3の構成成分を、固体状態(凝集物)にして、ベルトコンベアによる搬送を可能とするのである。 なお、本発明における含水率(量)は、バラ物の質量に対する水分量の比率である。 [0025] 〔搬送可能となる原理〕 図2(a)および(b)は、粉体:Pを含む懸濁湧水に含まれる水:Wmと、それに添加される高分子凝集剤:Aを示すものである。このAがP+Wmに添加されると、図2(c)に示すように、WmとPの一部が、高分子凝集剤:Aにおける分子鎖の枝状に広がったポリマー:Bに絡め捕られるようにして凝結し、図2(d)に示すような粒径の小さい凝結粒子7の幾つかを形成する。その後、混合(ジャンクション部位での落下混合を含む)と共に、その凝結粒子7の複数個が、やがて凝集(集合)して、図2(e)に示すような粒径の大きな凝集粒子8へと成長する。従って、本発明における含水バラ物の凝集物とは、上記した凝集粒子と凝結粒子とが任意の比率(いずれかが100%であっても良い)で構成されているものである。なお、本発明における%表示は、特に断らない限り、mass%を意味する。 [0026] 図2(e)に示したような段階になると、Wmは固化した状態となって、バラ物に付着する付着状態となる。かかる状態となることにより、バラ物は、ベルトコンベアでの搬送が容易となって、懸濁湧水自体もバラ物と共に、ベルトコンベアから溢流することなく搬送することができ、もって、原料ヤードなどへのバラ物の送給がトラブル無くできるようになるのである。 また、本発明における薬液を構成する成分は、N,C,Hといった、次工程の焼結機での焼成の際に燃え、製品中に残らないものなので、薬液分離の必要が要らない。従って、本発明は、薬液分離の工程がいらないというメリットを有している。」 「[0032] 〔高分子凝集剤〕 本発明では、高分子凝集剤を主成分とした薬剤を薬液として使用する。あるいは薬剤が固体状であれば、溶液に分散させ薬液として使用する。 また、上記高分子凝集剤としては、高分子のもつ静電気力または水素結合によって、粉体に吸着活性を生じて粉体間架橋作用を起すもので、固粒化構造を形成して凝結粒子(凝集物)を形成させる効果を有するものであれば、いずれも使用可能である。例えば、粉末、頼粒状または液状の有機系凝集剤である、ポリアクリルアミド系(アルリルアミドとアクリル酸ナトリウムを共重合したもの)、ポリビニルアミジン系、両性高分子系の凝集剤などは、凝結作用のみならず、凝集作用を発揮するので好ましい。なお、公知の無機系凝集剤をさらに混ぜて併用することとしてもよい。 さらに、上記高分子凝集剤として、アクリル酸カチオンポリマー、アクリルアミド系カチオンポリマー、メタクリル酸系ポリマー、メタクリル酸アミノエステルカチオンポリマー、アミジンポリマー、アニオン性W/O型エマルジョンポリマーなどを使用することもできる。 [0033] 本発明において、高分子凝集剤が主成分であるとは、一般に、凝集効果があると認められている量以上の高分子凝集剤を含有している薬剤を指し、通常は高分子凝集剤40%程度以上の含有量の薬剤である。勿論、高分子凝集剤:100%のものを、そのまま薬剤として用いても構わない。 なお、薬剤が固体状、または薄めて使用する場合、溶液は、水、有機溶媒が挙げられ、溶質は、C,H,N,Oの重合体、溶媒は、炭化水素系溶媒(C,H,Oのみ)が挙げられる。」 (4)甲第4号証 甲第4号証には次の記載がある。 「【0001】 本発明は、水分を含む鉱石や石炭等のバラ物をこれらの運搬船やはしけ(艀)などから橋形クレーンやアンローダによって荷揚げする時、湧水が発生することによって起こる荷揚げ障害を解消するために開発された含水バラ物の荷揚げ方法に関する。」 「【0007】 そこで、本発明の目的は、含水バラ物の荷揚げの際に不可避に発生する湧水ならびに懸濁湧水の効果的な処理方法を提案することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 従来技術が抱えている上述した問題を克服することができ、かつ上記目的を達成する上で有効な解決手段として、本発明は、鉱石や石炭の如き含水バラ物を貨物船から橋形クレーンやアンローダのグラブバケットを使って荷揚げするに当たり、荷揚げ作業時に、湧水中に粉体が懸濁した状態の懸濁湧水が生成した場合に、その懸濁湧水に対し、高分子凝集剤を添加して粒子の凝結・凝集を起こさせてから、バラ物とともに荷揚げを行なうことを特徴とする含水バラ物の荷揚げ方法を提案する。 【0009】 上記の本発明に係る荷揚げ方法については、 (1)前記高分子凝集剤は、懸濁湧水量の0.4~1.0mass%程度を添加すること、 (2)前記懸濁湧水発生位置に高分子凝集剤を添加すると共に、他の部位のバラ物を混ぜること、 (3)前記高分子凝集剤とともに懸濁湧水溜まりの近傍にあるバラ物を混ぜて攪拌することにより、凝結粒子、凝集粒子を生成させてから荷揚げすること、 (4)バラ物と高分子凝集剤を含む懸濁湧水重量の比を示す粉体比率を7以上とすること、 が、より好ましい解決手段を提供できるものと考えられる。」 「【0014】 そこで本発明では、前記懸濁湧水が発生したとき、前記窪み4内の懸濁湧水に対し、水溶性の高分子凝集剤を所定量添加し、好ましくは混ぜ合わせて該懸濁湧水中の粉体を凝結、凝集させて粒状化させることで、荷揚げ効率の向上を図るようにした。即ち、本発明方法に従えば、鉱石類等のバラ物2と共に、その懸濁湧水構成成分を固体状態にして同時に荷揚げするようにしたのである。」 「【0018】 本発明で使用する水溶性の高分子凝集剤としては、懸濁湧水にこの薬剤を添加することによって、高分子のもつ静電気力および水素結合によって粉体に吸着活性を生じ、粉体間架橋作用を起すことにより、固粒化構造を形成し、まず、凝結粒子を形成させる類のものが使用可能である。例えば、粉末、顆粒状または液状の有機系凝集剤であるポリアクリルアミド系(アルリルアミドとアクリル酸ナトリウムを共重合したもの)、ポリビニルアミジン系、両性高分子系の凝集剤などは、凝結作用のみならず、凝集作用を発揮するので好ましい。勿論、無機系凝集剤と混ぜて併用してもよい。」 「【0021】 この実験の結果を表1に示す。攪拌を伴わない高分子凝集剤の添加は効果が少なく、攪拌(30~80sec)を伴うとき、とくに粉鉱比が7以上の懸濁湧水に対し、0.4~1.0mass%に相当する量の高分子凝集剤(濃度0.4~1.0mass%)を添加した場合によい効果が現れた。」 「【0024】 【表1】 [図:0001409191000001.jpg] 」 (5)甲第5号証 甲第5号証には次の記載がある。 「【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、各種の汚泥、例えば河川・湖沼及び港湾の浚渫土を脱水機を使用して脱水処理する方法に関する。」 「【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは、従来法の欠点を克服し、浚渫土を安価に、かつ効率的に脱水処理する方法を確立すべく、鋭意研究を重ね、本発明を完成するに至った。本発明の処理方法は、汚泥に、第一の工程で、アニオン性高分子凝集剤の希薄溶液を添加し、フロックを形成させ、第二の工程で、ラインミキサー等の高性能攪拌機を使用し、機械破砕にてフロックを0.5mm以下に破砕した後、第三の工程でアニオン性高分子凝集剤水溶液を添加し、フロックを再形成させ、第四の工程で、無機凝集剤を添加してフロックを疎水化後、脱水機を使用して、脱水処理物を得る汚泥処理方法である。上記汚泥は、アニオン性高分子凝集剤のポリマー分子を、十分に広がらせるため、予めアルカリ剤を添加し、pHを8~11に調整しておくことがのぞましい。本発明は、各種の汚泥に適用できる。」 「【0010】 第一の工程で使用されるアニオン性高分子凝集剤は、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリルアミド・アクリル酸共重合物に代表されるアニオン性ポリマーであれば、何れを用いても良いが、中でもアニオン性が強い、より分子量の高い、例えば分子量1200万~1800万の高分子凝集剤が好ましい。希薄水溶液のポリマー濃度は、水100容量部に対し0.05重量部~0.2重量部の何れの濃度を用いても良いが、浚渫土の乾燥固形分100重量部に対し、0.01~0.5重量部の範囲になる様に調整されなければならない。 【0011】 第三の工程で使用されるアニオン性高分子凝集剤は、弱アニオン性のものとしては、ポリアクリルアミド、ポリビニールアルコール、無水マレイン酸重合物、ポリアクリル酸エステル、グアガム等があり、中及び高アニオン性としては、アクリルアミドとアクリル酸塩の共重合物、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸等があり、これらの誘導体類も用いることができる。これら高分子凝集剤の分子量としては、1200~1800万程度のものが優れた効果を発揮する。また、アニオン性高分子凝集剤は、粉末品を浚渫土の乾燥固形分100重量部に対し、0.01~1.0重量部の範囲添加するか、又は海水100容量部に対し、0.3~0.90重量部の範囲で溶解した溶液を浚渫土の乾燥固形分100重量部に対し、粉末換算にして0.01~1.0重量部の範囲で添加しても良い。固形分含有量40%以上の液状タイプのアニオン性高分子凝集剤を、浚渫土の乾燥固形分100重量部に対し、0.05~1.0重量部の範囲で添加しても良い。」 (6)甲第6号証 甲第6号証には次の記載がある。 「本発明は、貯炭場に積み上げ貯蔵する石炭の発塵及び山崩れを防止する方法に関する。」(第1頁左欄第第10行~第11行) 「本発明は、上記の如き従来の方法の欠点を除去し、貯炭表層部の払出し等に影響されずに発塵を防止し、且つ貯炭の山崩れを防止することの可能な貯炭場の発塵、山崩れ防止方法を提供するものである。 本発明の方法は、貯炭場にて石炭を荷揚げ貯蔵する工程の途中(スタッカー等により積み上げる前)において、石炭に固結剤を添加混練して、貯炭の山の全体或いは外層部を適宜な深さまで固結させることにより、発塵及び山崩れを防止するものである。」(第1頁右欄第7行~第17行) 「石炭は、アンローダー等の荷投機械により荷揚げされ、ベルトコンベヤーによって貯炭位置にまで運ばれる。次に石炭は水及び薬液散布の出来るキサー内を通過させられ、ここで適当に希釈された固結剤溶液を添加、混錬される。固結剤と混練された石炭はミキサーを出て、スタツカーによって所定の場所に山積みされる。 固結剤の添加は、貯炭の一山全体を払出すまで発塵、山崩れの防止効果を持続させようとすれば、積み上げの初期から山全体に対して行い、又、山が低くなれば山崩れの危険はなくなるので、例えば高さの(或いは積み上げ量の)何割まで払出すまでその効果の持続を期待するかによつて、山積みの初期には固結剤の添加を行わず、途中又は後半から積み上げられる分に添加するようにしてもよい。 前記固結剤としては、酢酸ビニル希釈水溶液、酢酸ビニル・アクリル共重合体の水溶液が用いられるが、これに限るものではない。」(第1頁右欄最下行~第2頁左上欄第19行) 「本発明の方法によれば、固結剤は貯炭内部の所望の深さまで、要すれば山全体にまで行きわたるので、貯炭は山積みにした状態において、表面部のみならず内部まで固結し、従つて防塵効果も高く、表層部の貯炭払出しによつて効果の減殺されることもなく、特に降雨、地震等による山崩れの防止のために極めて有効である。」(第2頁左上欄最下行~右上欄第6行) 「表-1は、例えば同一の固結剤の使用量によつて、0.5%濃度の固結剤希釈水溶液を添加して、最高高さ10mの固結層即ち100%の石炭固結割合を得ることも出来るし、或いは最高高さ頂部より3.6m下の位置が固結剤無添加の部分の頂部となるようにして、山積みの外層部に1.0%濃度の固結剤水溶液を添加して、石炭の量の50%(前記外層部の量の割合)までを固結させることも出来ることを示す。その条件は操業の状態により適宜選択出来る。 貯炭の山の表面硬度の測定結果によれば、固結剤の濃度を高くした方が表面硬度は高くなるが、山全体の安定性は固結割合の高い方がよくなる。 以上述べたように、本発明の方法によれは、大きな設備費を要せずに、容易に、積み上げられた石炭をその表層から適宜の深部まで固結させることが出来、貯炭場における発塵及び山崩れの防止のために極めて有効である。」(第2頁左下欄第1行~第18行) よ (7)甲第7号証 甲第7号証には次の記載がある。 「エマルジョン型高分子凝集剤は油中水型で前者に属するものである。これを溶解すると反転して後者の水中油型の存在状態となる。」(第49頁左欄第21行~第23行) 5 当審の判断 (1)特許法第29条第2項について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「石炭及び/又は鉄鉱石」は、本件発明1の「製鉄原料」に相当し、甲1発明の「ヤード」は、石炭及び/又は鉄鉱石を山積みする場所であるから、本件発明1の「原料ヤード」に相当する。 甲1発明において、「石炭及び/又は鉄鉱石を、水の存在下で水溶性高分子化合物を添加し、混合する工程」は、「石炭及び/又は鉄鉱石をヤードへ山積みする際」行われるものであるから、甲1発明の「石炭及び/又は鉄鉱石」は、ヤードに山積みされる前のものであるといえる。また、甲1発明の「水溶性高分子化合物」は、水の存在下で石炭及び/又は鉄鉱石と架橋し、石炭及び/又は鉄鉱石を造粒化するものであり(甲第1号証の段落【0038】)、例として、アクリル酸/アクリルアミド共重合物があげられているから(甲第1号証の段落【0053】)、本件発明1の「高分子凝集剤」に相当する。したがって、甲1発明の「石炭及び/又は鉄鉱石をヤードへ山積みする際、石炭及び/又は鉄鉱石を、水の存在下で水溶性高分子化合物を添加し、混合する工程」は、本件発明1の「前記原料ヤードに山積みされる前の製鉄原料及び山積みされた後の製鉄原料の少なくとも一方の製鉄原料に、有効成分としての高分子凝集剤の含有量が0.1~2質量%であるとともに水の含有量が90~99.9質量%である希薄液を添加する工程」との対比において、「前記原料ヤードに山積みされる前の製鉄原料及び山積みされた後の製鉄原料の少なくとも一方の製鉄原料に、有効成分としての高分子凝集剤を添加する工程」との限度で一致する。 以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点] 「原料ヤードに製鉄原料を山積みする方法であって、 前記原料ヤードに山積みされる前の製鉄原料及び山積みされた後の製鉄原料の少なくとも一方の製鉄原料に、有効成分としての高分子凝集剤を添加する工程を含む、製鉄原料の山積み方法。」 [相違点] 高分子凝集剤に関し、本件発明1が「高分子凝集剤の含有量が0.1~2質量%である」とするとともに、「水の含有量が90~99.9質量%である希薄液」としているのに対し、甲1発明の「水溶性高分子化合物」は、「水の存在下」で添加されるとされているものの、水溶性高分子化合物の含有量については本件発明1のような特定がされていない点。 (イ)判断 上記4(2)~(7)から、原料ヤードに山積みする前及び山積みされた後の製鉄原料の少なくとも一方の製鉄原料に、有効成分としての高分子凝集剤の含有量が0.1~2質量%であるとともに水の含有量が90~99.9質量%である希薄液を添加するという技術的事項は、甲第2号証~甲第7号証のいずれにも記載も示唆もされていない。また、かかる技術的事項が当業者にとって自明であるとの証拠もない。 なお、甲第6号証には、貯炭場の発塵、山崩れ防止方法として、貯炭場(原料ヤード)における石炭(製鉄原料)の積み上げ前に予め該石炭に濃度0.5%の酢酸ビニル希釈水溶液、酢酸ビニル・アクリル共重合体の水溶液などの固結剤を添加し混合して石炭の山全体に対して固結剤を行きわたらせる工程を含む貯炭場の発塵、山崩れ防止方法が記載されているといえる(上記4(6))。 しかしながら、甲第6号証に記載された貯炭場の発塵、山崩れ防止方法は、製鉄原料といえる石炭に固結剤である濃度0.5%の酢酸ビニル希釈水溶液、酢酸ビニル・アクリル共重合体の水溶液などを添加するものであり、濃度0.5%の酢酸ビニル希釈水溶液、酢酸ビニル・アクリル共重合体は、固着剤(粒子同士を固着させる接着剤)であって、本件発明1~8における「高分子凝集剤」(懸濁している粒子を凝集させ、さらに無数の活性基により吸着・架橋することで大きく強固なブロックを形成するもの)とはいえない。 したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証~甲第5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできないばかりが、甲1発明及び甲第2号証~甲第7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 この点に関し、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「原料ヤードにベルトコンベヤーにより搬送されるスラリー状の製鉄原料を凝集、固化してその流出を防止する(すなわち、スラリー状の製鉄原料の流動性を低下させる)ために、製鉄原料に、高分子凝集剤を凝集効果を奏する量で含有する希薄水溶液添加する点は、甲第2号証及び甲第3号証に記載されている(以下、それぞれ「甲2記載事項○1」及び「甲3記載事項○1」という。)。(当審注:異議申立書において、○1は、○の中に数字の1とされている。)また、スラリー状の製鉄原料を凝集させるために、高分子凝集剤の含有量が0.4~1.0質量%程度である希薄液を用いることができる点は、甲第4号証に記載されており(以下、「甲4記載事項」という。)、汚泥(スラリー)注の土粒子を凝集させるために、高分子凝集剤の含有量が0.05~0.2質量%程度である希薄液を用いることができる点は、甲第5号証に記載されている(以下、「甲5記載事項」という。)。そして、甲第2号証~甲第4号証に記載された処理方法はいずれも、甲1発明と同様に、スラリー状の製鉄原料を高分子凝集剤で凝集、固化してその流動性を低下させるものであり、甲5号証に記載された処理方法もスラリー状の粒子を高分子凝集剤で凝集、固化してその流動性を低下させるものであることから、甲2記載事項○1、甲3記載事項○1、甲4記載事項及び甲5記載事項を甲1発明に適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。」と主張する(第42頁第19行~第43頁第9行)。 しかしながら、甲第2号証及び甲第3号証に記載されている、製鉄原料に添加される高分子凝集剤は、高分子凝集剤40%程度以上の含有量の薬剤、あるいは、高分子凝集剤100%の薬剤であり(甲第2号証の段落【0040】、甲第3号証の段落[0033])、製鉄原料に添加される高分子凝集剤として高分子凝集剤の含有量が0.4~1.0質量%程度である希薄液ではなく、しかも、製鉄原料に添加される高分子凝集剤として高分子凝集剤の含有量が0.4~1.0質量%程度である希薄液を用いることは示唆されていない。また、甲第4号証は、主に礫状の鉄鉱石類から分離した粉体が分散し懸濁した状態の懸濁湧水(スラリー化する懸濁湧水)に対して、添加対象である懸濁湧水に対する高分子凝集剤の含有量が0.4~1.0mass%(質量%)となるように高分子凝集剤を添加し、さらに、この懸濁湧水を攪拌することにより、高分子凝集剤を添加した懸濁湧水をグラブバケット等で掴める程度の強度を持つ凝集体とする技術的事項を開示するにとどまり(甲第4号証の段落【0021】、【0024】)、スラリー化する懸濁湧水ではなく、製鉄原料に、高分子凝集剤の含有量が0.4~1.0質量%程度である希薄液を添加し、製鉄原料を高分子凝集剤で凝集、固化してその流動性を低下させることは記載も示唆もされていない。さらに、甲第5号証は、例えば、河川・湖沼及び港湾の浚渫土を脱水機を使用して脱水処理する方法を開示するもので、高分子凝集剤を添加し凝集・固化する対象は河川・湖沼及び港湾の浚渫土(汚泥)であり、製鉄原料を対象とするものではないし、製鉄原料を対象とすることが示唆されているともいえない。 このように、甲第2号証~甲第5号証に記載された技術的事項は、相違点に係る本件発明1の構成を開示ないし示唆するものではない。 したがって、特許異議申立人の上記主張には理由がない。 イ 本件発明2~8について 本件発明2~8は、本件発明1をさらに限定したものである。 本件発明1が、上記アのとおり、甲1発明及び甲第2号証~甲第5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできないばかりが、甲1発明及び甲第2号証~甲第7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件発明1をさらに限定した本件発明2~8も、甲1発明及び甲第2号証~甲第5号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできないばかりが、甲1発明及び甲第2号証~甲第7号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (2)特許法第36条第4項第1号について ア 特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件特許の発明の詳細な説明の記載に関し、次の理由により、本件発明1、3~8は取り消されるべきと主張する。 「請求項1に係る発明のうち「山積みされた後の製鉄原料」に希薄液を添加する工程を含むものについては、山崩れを抑制するためには、希薄液中の高分子凝集剤を山積みされた後の製鉄原料の全体に満遍なくいきわたらせる必要がある。 本件特許明細書には、原料ヤードに山積みされる前の製鉄原料に希薄液を添加(した後、混合)する実施形態に対応する実施例が記載されているに過ぎず、山積みされた後の製鉄原料に希薄液を添加することのみで山崩れを抑制できることは具体的に示されていない。 この点に関連して、本件特許明細書には、「製鉄原料に、上述した好適な希薄液が添加されると、希薄液中の水溶性重合体の一種である高分子凝集剤が製鉄原料中の自由水にも溶解する。そして、製鉄原料中の原料粒子に高分子凝集剤の吸着に基づく接着架橋作用が起こり、その作用により、原料粒子どうしが凝集して粗大化され、その粗大粒子の間隙に上記自由水の大部分が捕捉されると考えられる。その結果、製鉄原料は、流動性が低下して、見かけ上、団粒状又は団塊状の外観に改質され、原料粒子と自由水部分が少なくなったような外観となり、山崩れが生じにくくなる。上記間隙は非常に小さく、また、上記好適な高分子凝集剤は、雨水や湧水等を浸透しにくい性質を有するため、希薄液の添加後かつ山積み後の製鉄原料は、降雨等による水と出会っても混ざり合わないで、そのままの形状を保ちやすい。」(段落0042)と記載されている。 この記載によれば、山積みされた後の製鉄原料の外層部から添加された希薄液中の高分子凝集剤は、表層部から順次、製鉄原料を疑集して粗大化させて、粗大粒子の間隙を非常に小さくし、また、表層部で製鉄原料に吸着した凝集高分子凝集剤も水を浸透し難い性質を有する。そうであれば、その後に添加される高分子凝集剤の希薄液は山の内部に浸透し難くなり、その結果、山積みされた後の製鉄原料に添加される希薄液中の高分子凝集剤が製鉄原料の全体にいきわたることはないものと理解される。 本件特許明細書には、他に、山積みされた後の製鉄原料に添加される希薄液中の高分子凝集剤が、撹拌混合等の操作なしで製鉄原料の全体にいきわたることが合理的に理解できる説明はない。 結果として、発明の詳細な説明において、撹拌混合等の操作によらず「原料ヤードに山積みされた後の製鉄原料に添加された高分子凝集剤の希薄液を製鉄原料の全体にいきわたらせる」手段は、その具体的構成が何ら記載されておらず、かつ周知のものでもないから、いわゆる当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。請求項3~8に係る発明についても同様である。」(第50頁第17行~第51頁第23行) イ 当審の判断 (ア)本件の請求項1には請求項1に係る発明、すなわち、本件発明1として、「原料ヤードに製鉄原料を山積みする方法であって、前記原料ヤードに山積みされる前の製鉄原料及び山積みされた後の製鉄原料の少なくとも一方の製鉄原料に、有効成分としての高分子凝集剤の含有量が0.1~2質量%であるとともに水の含有量が90~99.9質量%である希薄液を添加する工程を含む、製鉄原料の山積み方法。」と記載されている。 かかる記載からは、本件発明1を実施するには、「原料ヤードに山積みされる前の製鉄原料及び山積みされた後の製鉄原料の少なくとも一方の製鉄原料に、有効成分としての高分子凝集剤の含有量が0.1~2質量%であるとともに水の含有量が90~99.9質量%である希薄液を添加する工程」(すなわち、製鉄原料に所定の高分子凝集剤の希薄液を添加すること)が実施できればよく、本件の発明の詳細な説明には、かかる請求項1の記載に対応して、「すなわち、本発明の一実施形態の製鉄原料の山積み方法(以下、「本方法」と記載することがある。)は、原料ヤードに製鉄原料を山積みする方法に関する。そして、本方法では、原料ヤードに山積みされる前の製鉄原料及び山積みされた後の製鉄原料の少なくとも一方の製鉄原料に、有効成分としての高分子凝集剤の含有量が0.1~2質量%である希薄液を添加する工程を含む。」(段落【0018】)と記載されていることからすれば、当業者であればかかる工程(製鉄原料に所定の高分子凝集剤の希薄液を添加すること)を実施することは十分可能であるといえる。 (イ)また、本件特許明細書の段落【0042】の記載を根拠とした異議申立人の主張に関しては、原料粒子どうしが凝集して粗大化され、その粗大粒子の間隙に上記自由水の大部分が捕捉され、その結果、製鉄原料は、流動性が低下して、見かけ上、団粒状又は団塊状の外観に改質され、原料粒子と自由水部分が少なくなったような外観となり、山崩れが生じにくくなるという本件特許明細書の段落【0042】に記載の作用を奏するには、高分子凝集剤の吸着に基づく接着架橋作用が起こる必要があるところ、かかる高分子凝集剤の吸着に基づく接着架橋作用を発揮するまでの反応時間が存在することが、当業者における技術常識といえることからすれば(すなわち、製鉄原料に高分子凝集剤の希薄液を添加したら直ちに、製鉄原料の、流動性が低下して、見かけ上、団粒状又は団塊状の外観に改質されるものとはいえず、製鉄原料が、見かけ上、団粒状又は団塊状の外観に改質されるまでにはある程度の時間が必要であるといえることからすれば)、山積みされた後の製鉄原料の外層部から添加された際、表層部において高分子凝集剤の吸着に基づく接着架橋作用が発現されるまでの間に、高分子凝集剤の希薄液は、製鉄原料の山の内部に浸透し、その結果、製鉄原料と希薄液との混合をせずとも、山積みされた後の製鉄原料に添加される希薄液中の高分子凝集剤を製鉄原料の全体にいきわたらせることができるといえる。これに関連して本件特許明細書の段落【0019】には「上記工程によって、製鉄原料に希薄液が添加されると、希薄液中の高分子凝集剤が製鉄原料の全体にいきわたり、・・・(以下、省略)」と記載され、また、段落【0020】には、「本方法では、上記希薄液を使用するため、製鉄原料と希薄液との混合は必須ではないが、・・・(以下、省略)」(段落【0020】)と記載されていることからも、当業者における技術常識をもってすれば、山積みされた後の製鉄原料に、高分子凝集剤の希薄液を添加することによって、希薄液中の高分子凝集剤を山積みされた後の製鉄原料の全体にいきわたらせることができるといえる。 したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 (ウ)上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、特許異議申立人の、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、請求項1、3~8に係る特許を取り消すべきものである旨の主張には理由がない。 (3)特許法第36条第6項第1号について ア 特許異議申立人の主張 特許異議申立人は、特許異議申立書において、本件特許の特許請求の範囲の記載に関し、次の理由(i)~(iii)により、本件発明1~8は取り消されるべきと主張する。 「(i)・・・本件特許発明は、山積みされた製鉄原料中の水分に起因する流動性により山崩れを生じるという課題を、希薄な高分子凝集剤溶液を用いて、山積みされた製鉄原料の全体に満遍なくいきわたらせ、その凝集作用により製鉄原料を凝集させその流動性を均一に低下させることにより解決しようとするものと認められる。・・・中略・・・実施例においては、いずれも、容器内の山積みされる前の製鉄原料(に相当するサンプル)に高分子凝集剤の希薄液を添加した後、容器を転倒撹拌して製鉄原料と希薄液とを混合する操作を行った後に、模擬的に山積みした状態にして崩れやすさについて確認試験を行っている(試験例1.2、2.2、3.2、4.3~4.5、5.2~5.7、5.11~5.13、5.17~5.19)。製鉄原料への希薄液の添加方式は例示されているものの、例示された添加方式で希薄液を製鉄原料に添加しさえすれば、撹拌・混合せずとも、希薄液中の高分子凝集剤が製鉄原料の全体に満遍なくいきわたると理解できる合理的説明は本件特許明細書に見出せない。・・・中略・・・製鉄原料に、0.1~2質量%の高分子凝集剤の希薄液を添加する工程を含むことのみでは、上記の課題を解決することができるとは当業者といえども理解し得ず、よって請求項1には、希薄液中の高分子凝集剤を製鉄原料の全体に満遍なくいきわたらせるという、課題を解決するための手段が反映されておらず、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている。したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。請求項2~8に係る発明についても同様である。」(第51頁第27行~第55頁第19行) 「(ii) 請求項1に係る発明のうち「山積みされた後の製鉄原料」に希薄液を添加する工程を含むものでは、希薄液は、原料ヤードに山積みされた後の製鉄原料に添加される。すなわち、希薄液は、山積みされた製鉄原料の外層部から添加されことになる。・・・中略・・・段落0042の記載によれば、山積みされた後の製鉄原料の外層部から添加された希薄液中の高分子凝集剤は、表層部から順次、製鉄原料を凝集して粗大化させて、粗大粒子の間隙を非常に小さくし、また、表層部で製鉄原料に吸着した凝集高分子凝集剤も水を浸透し難い性質を有する。そうであれば、その後に添加される高分子凝集剤の希薄液は山の内部に浸透し難くなり、その結果、山積みされた後の製鉄原料に添加される希薄液中の高分子凝集剤が製鉄原料の全体に満遍なくいきわたることはないものと理解される。そして、この記載に反して、表層部で高分子凝集剤により形成された製鉄原料の粗大粒子の層を希薄液が容易に透過し得るのであれば、降雨時にも雨水が山の内部にまで浸透して流動性が増大し、山崩れを生じてしまうと理解される。そうすると、請求項1に係る発明のうち「山積みされた後の製鉄原料」に希薄液を添加する工程を含むものは、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている。したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。請求項3~8に係る発明についても同様である。」(第55頁第21行~第56頁第25行) 「(iii)請求項1には、高分子凝集剤を特定することなく、「製鉄原料に、有効成分としての高分子凝集剤の含有量が0.1~2質量%である希薄液を添加する」と規定されている一方で、実施例において具体的に効果が示されている高分子凝集剤は、特定のアクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体のみである。ここで、参考資料1から明らかなように、ポリアクリルアミド、アクリル酸を主成分とする高分子凝集剤に限っても、粘度が幅広く分布し、例えば0.3%水溶液で7mPa・s(醤油やウスターソース程度の粘度)から2,680mPa・s (1%グアーガム水溶液程度の粘度)のものまで存在する。また、粘度は濃度が高くなると急激に上昇するため、0.3%水溶液で2,680mPa・sの粘度を示すアクリル酸ナトリウム・アクリルアミド共重合体の2%水溶液の粘度は20,000mPa・sを超える粘度(ハチミツ~水あめ程度の粘度)を示すと考えられる。そうすると、請求項1に係る発明には、たとえ製鉄原料への添加後に撹拌混合しても、製鉄原料の全体に満遍なくいきわたらない高分子凝集剤を用いる実施形態が包含されていると認められる。すなわち、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えている。したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。請求項2~8に係る発明についても同様である。」(第56頁第27行~第57頁第17行) イ 当審の判断 (ア)(i)及び(ii)について 上記(2)イ(イ)で述べたように、製鉄原料において、高分子凝集剤の希薄液の添加により山崩れが生じにくくなるためには、原料粒子どうしが凝集して粗大化され、その粗大粒子の間隙に上記自由水の大部分が捕捉されるように高分子凝集剤の吸着に基づく接着架橋作用が起こる必要があるところ、かかる高分子凝集剤の吸着に基づく接着架橋作用を発揮するまでの反応時間が存在することが、当業者における技術常識といえることからすれば(すなわち、製鉄原料に高分子凝集剤の希薄液を添加したら直ちに、製鉄原料の、流動性が低下して、見かけ上、団粒状又は団塊状の外観に改質されるものとはいえないことからすれば)、山積みされた後の製鉄原料の外層部から添加された際、表層部において高分子凝集剤の吸着に基づく接着架橋作用が発現されるまでの間に、高分子凝集剤の所定の希薄液は、製鉄原料の山の内部に浸透し、その結果、製鉄原料と希薄液との混合をせずとも、山積みされた後の製鉄原料に添加される希薄液中の高分子凝集剤を製鉄原料の全体にいきわたらせることができるといえる。 本件特許明細書の段落【0019】には「上記工程によって、製鉄原料に希薄液が添加されると、希薄液中の高分子凝集剤が製鉄原料の全体にいきわたり、・・・(以下、省略)」と記載され、また、段落【0020】には、「本方法では、上記希薄液を使用するため、製鉄原料と希薄液との混合は必須ではないが、・・・(以下、省略)」(段落【0020】)と記載されていることからも、当業者における技術常識をもってすれば、本件特許の請求項1に記載された発明特定事項により、山積みされた後の製鉄原料に、高分子凝集剤の所定の希薄液を添加すれば、希薄液中の高分子凝集剤を山積みされた後の製鉄原料の全体にいきわたらせることができることが示されているといえる。 したがって、本件特許の請求項1~8の記載は、希薄液中の高分子凝集剤を製鉄原料の全体に満遍なくいきわたらせる手段が記載されているといえるから、特許異議申立人の上記(i)及び(ii)の主張には理由がない。 (イ)(iii)について 本件特許の請求項1には、発明特定事項として「製鉄原料に、有効成分としての高分子凝集剤の含有量が0.1~2質量%であるとともに水の含有量が90~99.9質量%である希薄液を添加する」との記載がある。この発明特定事項の「希薄液」は、特許文献1で具体的に開示された方法で使用された高分子凝集剤を40質量%程度含有する液(本件特許明細書の段落【0013】)よりも、相当程度、高分子凝集剤の濃度をうすめたものといえる。 この発明特定事項に関して、本件特許明細書の段落【0019】には、「上記工程によって、製鉄原料に希薄液が添加されると、希薄液中の高分子凝集剤が製鉄原料の全体にいきわたり、高分子凝集剤の凝集作用により、製鉄原料が凝集し、凝集した製鉄原料の間隙に水分が捕捉されることで、含水状態の製鉄原料の流動性が低下する。これにより、製鉄原料中の水分に起因する流動性による山崩れを抑制することができる。」と記載されている。 特許異議申立人は、本件発明には、製鉄原料の全体に満遍なくいきわたらないような粘度が高いものを用いる実施形態が包含されていると主張する。確かに、液の粘度が高くなるほど製鉄原料の全体にいきわたりにくくはなる。高分子凝集剤によっては、その含有量が0.1~2質量%の希薄液にしたとしても粘度が高いために製鉄原料の全体に満遍なく完全にいきわたりらないものがあるかもしれないが、そのような高分子凝集剤であっても、特許文献1のように含有量が40質量%程度の液として使う場合よりも、含有量が0.1~2質量%という、相当程度うすめた希薄液にして使う方が、より広い範囲にいきわらせることができることは当業者には明らかであり、含有量が40質量%程度の液よりも、含有量が0.1~2質量%の方が本件特許明細書の段落【0019】の効果を奏することが期待できる。また、希薄液にしても十分に低い粘度にならない高分子凝集剤を使うことはそもそも考えにくいが、粘度が十分に低くならい場合でも、希薄液を製鉄材料に添加する範囲や、製鉄材料の山積みの高さ等の調整により、製鉄原料と希薄液との混合をせずとも、希薄液を十分より広くいきわたらせることも可能である。 そうすると、上記発明特定事項を有する本件発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているとまではいえない。 したがって、特許異議申立人の上記(iii)の主張にも理由がない。 6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701398

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